IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-位相同期回路 図1
  • 特許-位相同期回路 図2
  • 特許-位相同期回路 図3
  • 特許-位相同期回路 図4
  • 特許-位相同期回路 図5
  • 特許-位相同期回路 図6
  • 特許-位相同期回路 図7
  • 特許-位相同期回路 図8
  • 特許-位相同期回路 図9
  • 特許-位相同期回路 図10
  • 特許-位相同期回路 図11
  • 特許-位相同期回路 図12
  • 特許-位相同期回路 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】位相同期回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/26 20060101AFI20230911BHJP
   H03L 7/08 20060101ALI20230911BHJP
   H03L 7/085 20060101ALI20230911BHJP
   H03M 1/12 20060101ALN20230911BHJP
   H03M 1/38 20060101ALN20230911BHJP
【FI】
H03K5/26 P
H03L7/08 102
H03L7/085
H03M1/12 C
H03M1/38
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020503392
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2019005554
(87)【国際公開番号】W WO2019167670
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2018037428
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】有坂 直也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】江藤 慎一郎
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第9285778(US,B1)
【文献】特開2017-163546(JP,A)
【文献】特開平9-153773(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0191035(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K5/26
H03L7/08-7/14
H03M1/12-1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの容量を含み、前記2つの容量から発生した電圧の比較結果を出力するSAR-ADCと、
前記2つの容量に電流をチャージする電流源と、
前記2つの容量のうちの一方の容量と前記電流源の間に配置され、基準周波数の第1のクロックと前記第1のクロックより高い周波数である第2のクロックとの位相差を表す位相差信号が供給される第1のスイッチと、
前記2つの容量のうちの他方の容量と前記電流源の間に配置され、前記第2のクロックが供給される第2のスイッチと
を備え
前記電流源は、前記第1のスイッチの動作に基づいて、前記位相差信号に応じた時間、前記一方の容量に電流をチャージし、前記第2のスイッチの動作に基づいて、前記第2のクロックのクロック1周期の時間、前記他方の容量に電流をチャージする
位相同期回路。
【請求項2】
前記一方の容量は、前記位相差信号に応じた電圧を発生させ、前記他方の容量は、前記第2のクロックに応じた電圧を発生させる
請求項1に記載の位相同期回路。
【請求項3】
前記一方の容量と前記他方の容量の比は、1対1である
請求項2に記載の位相同期回路。
【請求項4】
前記電流源は、前記一方の容量に電流をチャージする第1の電流源と、前記他方の容量に電流をチャージする第2の電流源により構成される
請求項2に記載の位相同期回路。
【請求項5】
前記他方の容量は、前記一方の容量のN倍の容量であり、
前記第2の電流源は、前記第1の電流源のN倍の電流をチャージする
請求項4に記載の位相同期回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、位相同期回路に関し、特に、消費電力を低減することができるようにした位相同期回路に関する。
【背景技術】
【0002】
今後到来するIoT時代へ向けてLSIの低電力化が要求されている。LSIに搭載されるアナログブロックの消費電力のうち、局部発振器の消費電力は、大きな割合を占める。局部発振器は、PLL回路で構成され、最近ではADPLL(All-Digital-PLL)回路が用いられる場合がある。
【0003】
ADPLL回路はデジタル設定周波数データFCW(frequency command word)と外部からの基準周波数から、DCO周波数を、DCO周波数=FCW×基準周波数の関係を満足するように生成する。DCO周波数と基準周波数の比をFCWに合わせるため、ADPLL回路は、DCO周波数信号Fdcoと基準周波数信号Frefの整数位相差を検知するカウンタ回路と、小数位相差を検知するTDC回路(Time-to-Digital-Converter)を有する。
【0004】
カウンタ回路は、Frefの1周期内にFdcoが何周期入力されるかをカウントすることで整数位相差を検知するので、Frefの1周期の間、常時動作していなければならない。これに対し、TDC回路はFrefとFdcoのエッジの位相差を検出すれば良いので、Frefの1周期の間、常時動作し続ける必要はなく、間欠動作することが可能である。間欠動作を行うことによって時間あたりの平均消費電流が小さくなるため、低電力化を図ることができる。
【0005】
TDC回路はFdcoをインバータ回路数段で遅延させ、Frefの立ち上がりエッジをラッチ回路で捕えることで位相差を検出する。この構成はシンプルであるが、FrefとFdcoの位相差が大きいときに遅延を生成するために多数のインバータ回路を動作させる必要があり、消費電流の増加を招くため、低電力動作が難しい。
【0006】
そこで、非特許文献1には、消費電力の増加を改善するようにしたTDC回路が提案されている。TDC回路は、PD(Phase-Detector)でFrefとFdcoの位相差信号を生成し、位相差信号の時間だけCP(Charge-Pump)から容量C1に電流チャージして電圧VFを得るように構成される。
【0007】
また、TDC回路は、電圧VFを得た後、CPから容量C2に電流チャージして電圧VRAMPを生成し、SS-ADC(Single-Slope ADC)で、電圧VFと電圧VRAMPが交差するまでのFdcoのパルス数をカウント(カウント数:n)するように構成される。容量C1と容量C2が1:Nのため、電圧VFと電圧VRAMPの傾きは、N:1となるので、n/NがAD変換値となり、FrefとFdcoの位相差になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Somnath Kundu, Bongjin Kim, Chris H. Kim、"19.2 A 0.2-to-1.45GHz Subsampling Fractional-N All-Digital MDLL with Zero-Offset Aperture PD-Based Spur Cancellation and In-Situ Timing Mismatch Detection"、2016 IEEE International Solid-State Circuits Conference、February 3, 2016、[online][平成30年1月25日検索]、インターネット〈URL:http://www.ee.umn.edu/groups/VLSIresearch/papers/2016/ISSCC16_MDLL.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1の提案では、FrefとFdcoの位相差が大きいとき、電圧VFと電圧VRAMPを得るまでにFdco数クロックに渡ってCPが動作し続けることが必要であった。このため、Fref1周期間における間欠率が低くなり、十分な低電力化をすることが困難であった。
【0010】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、消費電力を低減することができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本技術の一側面の位相同期回路は、2つの容量を含み、前記2つの容量から発生した電圧の比較結果を出力するSAR-ADCと、前記2つの容量に電流をチャージする電流源と、前記2つの容量のうちの一方の容量と前記電流源の間に配置され、基準周波数の第1のクロックと前記第1のクロックより高い周波数である第2のクロックとの位相差を表す位相差信号が供給される第1のスイッチと、前記2つの容量のうちの他方の容量と前記電流源の間に配置され、前記第2のクロックが供給される第2のスイッチとを備え、前記電流源は、前記第1のスイッチの動作に基づいて、前記位相差信号に応じた時間、前記一方の容量に電流をチャージし、前記第2のスイッチの動作に基づいて、前記第2のクロックのクロック1周期の時間、前記他方の容量に電流をチャージする
【0012】
本技術の一側面においては、2つの容量を含み、前記2つの容量から発生した電圧の比較結果を出力するSAR-ADCと、前記2つの容量に電流をチャージする電流源と、前記2つの容量のうちの一方の容量と前記電流源の間に配置され、基準周波数の第1のクロックと前記第1のクロックより高い周波数である第2のクロックとの位相差を表す位相差信号が供給される第1のスイッチと、前記2つの容量のうちの他方の容量と前記電流源の間に配置され、前記第2のクロックが供給される第2のスイッチとが備えられる。前記電流源は、前記第1のスイッチの動作に基づいて、前記位相差信号に応じた時間、前記一方の容量に電流がチャージされ、前記第2のスイッチの動作に基づいて、前記第2のクロックのクロック1周期の時間、前記他方の容量に電流がチャージされる。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、消費電力を低減することができる。
【0014】
なお、本明細書に記載された効果は、あくまで例示であり、本技術の効果は、本明細書に記載された効果に限定されるものではなく、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本技術を適用したADPLL回路の構成例を示すブロック図である。
図2】ADPLL回路の動作を説明する図である。
図3】本技術と比較するための従来のTDC回路について説明する図である。
図4】基準周波数信号FrefとDCO周波数信号Fdcoの小数位相差の求め方を説明する図である。
図5】N=70、n=69の場合の従来のTDC回路の構成例を示す図である。
図6図5のTDC回路の動作を説明する図である。
図7図1のTDC回路の構成例を示す回路図である。
図8図7のTDC回路の動作を説明する図である。
図9図7のTDC回路の第1の変形例を示す回路図である。
図10図9のTDC回路の動作を説明する図である。
図11図7のTDC回路の第2の変形例を示す回路図である。
図12図11のTDC回路の動作を説明する図である。
図13】ADPLL回路を含む無線通信装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(ADPLL回路)
2.第2の実施の形態(無線通信装置)
【0017】
< 1.第1の実施の形態 >
<本技術のADPLL回路の構成例>
図1は、本技術を適用した位相同期回路としてのADPLL(ALL Digital PLL)回路の構成例を示すブロック図である。
【0018】
図1に示されるADPLL回路1は、デジタル設定周波数データFCW(frequency command word)と外部からの基準周波数から、DCO(DigitalControledOscrator)周波数=FCW×基準周波数の関係を満足するDCO周波数を生成する。DCO周波数は、基準周波数よりも高い周波数である。デジタル設定周波数データFCWは、DCO周波数を設定するために用いられるデータであり、ADPLL回路1を含む装置の制御部などから供給される。
【0019】
ADPLL回路1は、カウンタ回路11、TDC(Time to Digital Counter)回路12、デジタル演算回路13、およびVCO(Voltage Contorolled Oscillator)14から構成される。
【0020】
基準周波数信号Frefは、カウンタ回路11とTDC回路12に供給される。デジタル設定周波数データFCWは、デジタル演算回路13に供給される。
【0021】
カウンタ回路11は、外部から供給された基準周波数信号Frefと、VCO14から供給されたDCO周波数信号Fdcoの整数位相差を検知し、検知した整数位相差を表す信号をデジタル演算回路13に出力する。
【0022】
TDC回路12は、外部から供給された基準周波数信号Frefと、VCO14から供給されたDCO周波数信号Fdcoの小数位相差を検知し、検知した小数位相差を表す信号をデジタル演算回路13に出力する。
【0023】
デジタル演算回路13は、カウンタ回路11とTDC回路12から供給された位相差を表す信号を、デジタル設定周波数データFCWを時間積分して得られた位相情報と比較し、比較結果を、デジタルフィルタを通してVCO14に出力する。
【0024】
VCO14は、デジタル演算回路13から供給された比較結果に応じた発振周波数の信号を、DCO周波数信号Fdcoとして、図示せぬ後段に出力する。DCO周波数信号Fdcoは、カウンタ回路11とTDC回路12にフィードバックされる。
【0025】
<ADPLL回路の動作例>
図2は、ADPLL回路の動作を説明する図である。
【0026】
図2においては、デジタル設定周波数データFCW=3.2の場合の例が示されている。上から順に、基準周波数信号Frefの信号波形、DCO周波数信号Fdcoの信号波形、カウンタ回路11において検知される整数位相、TDC回路12において検知される小数位相が示されている。また、デジタル演算回路13において位相比較が行われる整数位相+小数位相の値とデジタル設定周波数データFCWの整数倍の値が示されている。
【0027】
基準周波数信号Frefの1つ目の立ち上がりエッジ付近では、DCO周波数信号Fdcoの整数位相は0であり、小数位相も0である。したがって、デジタル演算回路13において、整数位相+小数位相「0」と、デジタル設定周波数データFCWの整数倍「0」の位相比較が行われる。
【0028】
基準周波数信号Frefの2つ目の立ち上がりエッジ付近では、DCO周波数信号Fdcoの整数位相は3であり、小数位相は0.2である。したがって、デジタル演算回路13において、整数位相+小数位相「3.2」と、デジタル設定周波数データFCWの整数倍「3.2」の位相比較が行われる。
【0029】
基準周波数信号Frefの3つ目の立ち上がりエッジ付近では、DCO周波数信号Fdcoの整数位相は6であり、小数位相は0.4である。したがって、デジタル演算回路13において、整数位相+小数位相「6.4」と、デジタル設定周波数データFCWの整数倍「6.4」の位相比較が行われる。
【0030】
なお、立ち上がりエッジの4つ目以降の処理も同様に行われるが、繰り返しになるので、説明を省略する。
【0031】
<本技術と比較するための従来例の説明>
図3は、本技術と比較するための従来のTDC回路について説明する図である。
【0032】
図3に示されるTDC回路は、PD(Phase Locked Loop)21、CP(Charge Pump)22、およびSS-ADC(Single-Slope ADC)23で構成される。
【0033】
PD21は、基準周波数信号FrefとDCO周波数信号Fdcoの位相差信号ΦF(0乃至2π)を生成する。
【0034】
CP22は、位相差信号ΦFが供給される間、内部に設けられた図示せぬ容量C1に電流チャージする。CP22による電流チャージにより、容量C1に発生した位相差情報電圧である電圧VFがSS-ADC23に出力される。
【0035】
SS-ADC23は、容量C2(C1:C2=1:N(N≧2))、電流源31、比較器32、および積分器33から構成される。容量C1から出力された電圧VFは、比較器32に供給される。
【0036】
電流源31は、容量C2に電流チャージする。電流源31の電流チャージにより、容量C2に発生した周期情報電圧である電圧VRAMPが比較器32に出力される。
【0037】
比較器32は、電圧VFと電圧VRAMPを比較し、比較結果を積分器33に出力する。
【0038】
積分器33は、電圧VFと電圧VRAMPが交差するまでのDCO周波数信号Fdcoのパルス数をカウント(カウント数:n(n≧1))し、演算結果Doutを出力する。
【0039】
容量C1と容量C2が1:Nのため、電圧VFと電圧VRAMPの傾きは、N:1となる。n/NがAD変換値となり、基準周波数信号FrefとDCO周波数信号Fdcoの位相差になる。
【0040】
図3において、構成図の下には、位相差信号ΦFの信号波形、DCO周波数信号Fdcoの信号波形、基準周波数信号Frefの信号波形、容量C1に発生する電圧VFのSlope、および容量C2に発生する電圧VRAMPのSlope(Slope ratio N:1)が示されている。
【0041】
TDC回路の動作について説明する。PD21は、基準周波数信号Frefの立ち上がりエッジの時刻t2からDCO周波数信号Fdcoの次の立ち上がりエッジの時刻t3までの時間、位相差信号ΦFを生成し、CP22に出力する。
【0042】
CP22は、位相差信号ΦFが供給される間、すなわち、位相差信号ΦFの立ち上がりエッジの時刻t12からDCO周波数信号Fdcoの次の立ち上がりエッジの時刻t13までの間、容量C1に電流チャージすることで、容量C1に電圧VFが発生する。
【0043】
容量C1への電流チャージ終了後、1周期待機した後のDCO周波数信号Fdcoの立ち上がりエッジの時刻t14に、電流源31からの電流によって容量C2がチャージされることで、容量C2に電圧VRAMPが発生する。
【0044】
比較器32において電圧VRAMPと電圧VFが一致するまで、積分器33はDCO周波数信号Fdcoのパルス数(図1の場合、2π)をカウント(カウント数:n(n≧1))する。電圧VRAMPと電圧VFが一致したときのDCO周波数信号Fdcoの立ち上がりエッジの時刻t32に、容量C2への電流源31の電流チャージが終了され、積分器33はカウントを終了して、演算結果Doutを出力する。
【0045】
図4は、基準周波数信号FrefとDCO周波数信号Fdcoの小数位相差の求め方を説明する図である。
【0046】
図4の例においては、Slope ratio 4:1の場合が示されている。
【0047】
上段には、位相差信号ΦFがπ/2、DCO周波数信号Fdcoが2π、演算結果Doutが1のときの例が示されている。すなわち、DCO周波数信号Fdcoの1カウントを4で割った値0.25が位相差信号ΦFの値となる。
【0048】
中段には、位相差信号ΦFがπ、DCO周波数信号Fdcoが2π、演算結果Doutが2のときの例が示されている。すなわち、DCO周波数信号Fdcoの2カウントを4で割った値0.5が位相差信号ΦFの値となる。
【0049】
下段には、位相差信号ΦFが2π、DCO周波数信号Fdcoが2π、演算結果Doutが4のときの例が示されている。すなわち、DCO周波数信号Fdcoの4カウントを4で割った値1が位相差信号ΦFの値となる。
【0050】
図5は、2つの容量の比が1:N(N=70)、積分器のカウント数n=69の場合の従来のTDC回路の構成例を示す図である。
【0051】
図5に示されるTDC回路は、CP22、SS-ADC23、および正規化部51で構成される。図5の例において、下部の矢印の範囲が各部の構成を示しており、PD21は省略されている。
【0052】
CP22は、電流源31、スイッチ41、および容量CFから構成される。
【0053】
SS-ADC23は、電流源31、スイッチ42、容量CR、比較器32、ラッチ回路43、積分器33、ラッチ回路44、ラッチ回路45、および演算器46から構成される。
【0054】
電流源31は、トランジスタMp1およびMp2から構成され、スイッチ41および42の切り替えによりCP22とSS-ADC23で共有される。
【0055】
位相差信号ΦFが供給される間、スイッチ41がオン状態となり、電流源31からの電流によって容量CFがチャージされることで、容量CFに発生した電圧VFが比較器32に供給される。
【0056】
また、ラッチ回路43からイネーブル信号ENが供給される間、スイッチ42がオン状態となり、電流源31からの電流によって容量CR(CF:CR=1:70)がチャージされることで、容量CRに発生した電圧VRAMPが比較器32に供給される。
【0057】
比較器32は、電圧VFと電圧VRAMPを比較し、電圧VFと電圧VRAMPが一致した場合、Stop信号を、ラッチ回路43に出力する。
【0058】
ラッチ回路43は、位相差信号ΦFの供給終了時に出力されたStart信号が供給されると、イネーブル信号ENをスイッチ42に出力する。
【0059】
積分器33は、DCO周波数信号Fdcoのパルス数をカウントし、カウント数をラッチ回路44および45に出力する。
【0060】
ラッチ回路44は、位相差信号ΦFの供給終了時に出力されたStart信号が供給されたときのカウント数(後述する図6の14)を保持し、所定のタイミングで、演算器46に出力する。
【0061】
ラッチ回路45は、比較器32から出力されたStop信号が供給されたときのカウント数(後述する図6の83)を保持し、所定のタイミングで、演算器46に出力する。
【0062】
演算器46は、ラッチ回路44から供給された値とラッチ回路45から供給された値との差分である演算結果Doutを正規化部51に出力する。
【0063】
正規化部51は、乗算器47からなる。乗算器47は、演算器46から供給された演算結果Doutに、1/70を乗算して得られた正規化結果DFを後段に出力する。
【0064】
図6は、図5のTDC回路の動作を説明する図である。
【0065】
図6においては、上から順に、基準周波数信号Frefの信号波形、位相差信号ΦFの信号波形、イネーブル信号ENの信号波形、容量CFに発生する電圧VFのSlope、および容量CRに発生する電圧VRAMPのSlope(Slope ratio1:70)が示されている。なお、どちらのSlopeも、誤差などの影響により、実線に示されるように実際にはリニアではない。ただし、同じ条件下であるので、電圧の比較の際には、破線に示されるように、誤差などが除去されたリニアのSlopeが用いられる。
【0066】
また、Slopeの下に、積分器33のカウント値、演算結果Doutの値、および正規化結果DFの値が示されている。
【0067】
Frefの立ち上がりエッジの時刻t51から位相差信号ΦFが供給される間、電流源31からの電流によって容量CFがチャージされ、容量CFに電圧VFが発生する。積分器33は、DCO周波数信号Fdcoの開始からDCO周波数信号Fdcoのパルス数をカウントし、カウント数を、ラッチ回路44および45に出力し続けている。ラッチ回路44は、位相差信号ΦFの供給終了時に出力されたStart信号によるイネーブル信号ENの立ち上がりエッジの時刻t52のカウントの値(14)を保持する。
【0068】
比較器32は、電圧VFと電圧VRAMPを比較し、電圧VFと電圧VRAMPが一致したときの時刻t61に、Stop信号を、ラッチ回路45に出力する。ラッチ回路45は、時刻t61のカウントの値(83)を保持する。
【0069】
演算器46は、ラッチ回路44から供給された値(14)とラッチ回路45から供給された値(83)との差分である演算結果Dout(69)を正規化部51に出力する。
【0070】
乗算器47は、演算器46から供給された演算結果Dout(69)に、1/70を乗算して得られた正規化結果DF(69/70)を後段に出力する。
【0071】
以上、従来のTDC回路においては、図5および図6を参照して上述したように、基準周波数信号FrefとDCO周波数信号Fdcoの位相差が大きい場合、電圧VRAMPと電圧VFを得るためにDCO周波数信号Fdco数クロックに渡ってCPまたは電流源を動作し続けることが必要となる。これによって、基準周波数信号Fref1周期における間欠率が低くなって、十分な低電力化ができない。
【0072】
<本技術のTDC回路>
図7は、図1のTDC回路の構成例を示す回路図である。
【0073】
図7のTDC回路12は、電流源111、PD112、スイッチ113-1および113-2、並びに、2つの容量を有するSAR(Successive Approximation)_ADC114から構成される。
【0074】
電流源111は、スイッチ113-1を介して、SAR_ADC114の2つの容量のうちの一方の容量であるキャパシタ131-1に電流チャージする。また、電流源111は、スイッチ113-2を介して、SAR_ADC114の2つの容量うちの他方の容量であるキャパシタ131-2に電流チャージする。
【0075】
PD112は、フリップフロップ回路からなる。PD112は、基準周波数信号FrefとDCO周波数信号Fdcoの位相差信号ΦFを生成する。PD112は、生成した位相差信号ΦFをスイッチ113-1に出力する。これにより、位相差信号ΦFが供給される間だけスイッチ113-1がオン状態となる。スイッチ113-1がオン状態のとき、電流源111による電流がキャパシタ131-1にチャージされ、キャパシタ131-1に電圧VFが発生する。
【0076】
電流源111による電流のキャパシタ131-1へのチャージ後、DCO周波数信号Fdcoが1周期(1クロック)分、スイッチ113-2に供給される。これにより、DCO周波数信号Fdcoの1周期(1クロック)分、スイッチ113-2がオン状態となる。スイッチ113-2がオン状態のとき、電流源111による電流がキャパシタ131-2にチャージされ、キャパシタ131-2に電圧VRAMPが発生する。
【0077】
SAR_ADC114は、キャパシタ131-1に発生した電圧VFとキャパシタ131-2に発生した電圧VRAMPの比較結果に基づくAD変換結果を出力する。
【0078】
SAR_ADC114は、比較器121、SAR論理回路122、キャパシタ131-1、キャパシタ131-2、インバータ132-1、およびインバータ132-2から構成される。
【0079】
比較器121は、電圧VF/電圧VRAMPを比較し、比較結果(H/L)をSAR論理回路122に出力する。
【0080】
SAR論理回路122は、比較器121から供給された比較結果を演算し、演算結果を、図示せぬ外部に出力する。SAR論理回路122は、インバータ132-1および132-2を制御することで、キャパシタ131-1および131-2のH/Lを制御する。
【0081】
キャパシタ131-1の容量は、C1であり、キャパシタ131-2容量は、C2(C1:C2=1:1)である。
【0082】
インバータ132-1は、SAR論理回路122の制御に基づいて、キャパシタ131-1のH/Lを制御する。インバータ132-2は、SAR論理回路122の制御に基づいて、キャパシタ131-2の容量のH/Lを制御する。
【0083】
なお、キャパシタ131-1およびインバータ132-1の組、キャパシタ131-2およびインバータ132-2の組は、1つずつに限らず、複数で構成されてもよい。ただし、キャパシタ131-1およびインバータ132-1の組とキャパシタ131-2およびインバータ132-2の組の容量の比は1:1である。
【0084】
<TDC回路の動作>
図8は、図7のTDC回路の動作を説明する図である。
【0085】
図8においては、上から順に、基準周波数信号Frefの信号波形、DCO周波数信号Fdcoの信号波形、位相差信号ΦFの信号波形、キャパシタ131-1(C1)に発生する電圧VFのSlope、およびキャパシタ131-2(C2)に発生する電圧VRAMPのSlopeが示されている。
【0086】
基準周波数信号Frefの立ち上がりエッジの時刻T1から位相差信号ΦFが供給される間、スイッチ113-1がオン状態となる。電流源111による電流が、キャパシタ131-1にチャージされ、キャパシタ131-1に電圧VFが発生する。1周期待機後、次のDCO周波数信号Fdcoの立ち上がりエッジの時刻T3から1周期、DCO周波数信号Fdcoが供給されるので、スイッチ113-2がオン状態となる。電流源111による電流が、キャパシタ131-2にチャージされ、キャパシタ131-2に電圧VRAMPが発生する。
【0087】
その後、次の立ち上がりエッジの時刻T5から、SAR論理回路122は、インバータ132-1および132-2を制御することで、キャパシタ131-1および131-2のH/Lを制御する。これにより、電圧を1度発生しただけで、比較器121において電圧VFと電圧VRAMPの値が逐次比較され、比較結果が、例えば、H,L,H,L,L,H,・・・というように出力される。
【0088】
なお、電圧VFと電圧VRAMPの中央の値は、比較器の同相入力電圧(任意)である。
【0089】
以上のように、本技術においては、キャパシタ131-1および131-2の容量比が1:1であり、また、SAR-ADCが用いられる。これにより、従来の電圧VRAMPに相当するAD変換時のフルスケール電圧を得るための動作は、電流源をDCO周波数信号Fdcoの1周期(1クロック)動作させるのみでよい。したがって、基準周波数信号Frefの周期に対して高い間欠率を得ることが可能であり、基準周波数信号FrefとDCO周波数信号Fdcoの位相差の大きさに間欠率が依存することがない。
【0090】
ここで、電流源をDCO周波数信号Fdcoの1クロック動作させると説明したが、1クロック以上であれば、何クロックであってもよい。
【0091】
これに対して、図3乃至図5で上述した従来のTDC回路においては、電圧VRAMPを得るために、電流源を、DCO周波数信号Fdcoの2クロック以上動作させることが必要であった。また、従来のTDC回路では、基準周波数信号FrefとDCO周波数信号Fdcoの位相差が大きい場合には、電圧VRAMPを得るために電流源を動作させる期間が延びてFref1周期における間欠率が下がることがあり得る。したがって、本技術のTDC回路は、従来のTDC回路よりも低電力動作可能となる観点で優位である。
【0092】
<第1の変形例>
図9は、図7のTDC回路の第1の変形例を示す回路図である。
【0093】
図9のTDC回路12は、電流源111の代わりに、電流源161-1および161-2が追加された点が、図7のTDC回路12と異なる。それ以外の構成は、基本的に図7の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0094】
電流源161-1および161-2は、カレントミラー比が1:1であり、キャパシタ131-1および131-2に、それぞれ、電流チャージする。
【0095】
<TDC回路の動作>
図10は、図9のTDC回路の動作を説明する図である。
【0096】
図10においては、上から順に、基準周波数信号Frefの信号波形、DCO周波数信号Fdcoの信号波形、位相差信号ΦFの信号波形、キャパシタ131-1(C1)に発生する電圧VFのSlope、およびキャパシタ131-2(C2)に発生する電圧VRAMPのSlopeが示されている。
【0097】
基準周波数信号Frefの立ち上がりエッジの時刻T11から位相差信号ΦFが供給される間、スイッチ113-1がオン状態となる。電流源161-1による電流が、キャパシタ131-1にチャージされ、キャパシタ131-1に電圧VFが発生する。直後のDCO周波数信号Fdcoの立ち上がりエッジの時刻T12から1周期、DCO周波数信号Fdcoが供給されるので、スイッチ113-2がオン状態となる。電流源161-2による電流が、キャパシタ131-2にチャージされ、キャパシタ131-2に電圧VRAMPが発生する。
【0098】
電圧の発生以降のTDC回路の動作は、図8の例と基本的に同様であるので、その説明は省略される。
【0099】
以上のように、図9のTDC回路の場合、電圧VRAMPの電流チャージを1周期待つことなく、電圧VFと電圧VRAMPを同時にチャージすることができるので、図7のTDC回路よりも早くAD変換結果が得られる。
【0100】
<第2の変形例>
図11は、図7のTDC回路の第2の変形例を示す回路図である。
【0101】
図11のTDC回路12は、キャパシタ131-1および131-2の容量が1:Nである点と、電流源111の代わりに、電流源181-1および181-2が追加された点が、図7のTDC回路12と異なる。それ以外の構成は、基本的に図7の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0102】
すなわち、電流源181-1および181-2は、カレントミラー比が1:Nであり、それぞれ、容量がC1であるキャパシタ131-1、および容量がC2(=N×C1)であるキャパシタ131-2に電流チャージする。
【0103】
<TDC回路の動作>
図12は、図11のTDC回路の動作を説明する図である。
【0104】
図12においては、上から順に、基準周波数信号Frefの信号波形、DCO周波数信号Fdcoの信号波形、位相差信号ΦFの信号波形、キャパシタ131-1(C1)に発生する電圧VFのSlope、およびキャパシタ131-2(C2)に発生する電圧VRAMPのSlopeが示されている。
【0105】
基準周波数信号Frefの立ち上がりエッジの時刻T21から位相差信号ΦFが供給される間、スイッチ113-1がオン状態となる。電流源181-1による電流が、キャパシタ131-1にチャージされ、キャパシタ131-1に電圧VFが発生する。直後のDCO周波数信号Fdcoの立ち上がりエッジの時刻T22から1周期、DCO周波数信号Fdcoが供給されるので、スイッチ113-2がオン状態となる。電流源181-2による電流が、キャパシタ131-2にチャージされ、キャパシタ131-2に電圧VRAMPが発生する。
【0106】
電圧の発生以降は、図8の例と基本的に同様であるので、その説明は省略される。
【0107】
以上のように、図11のTDC回路においては、電圧VRAMPの電流チャージを1周期待つことなく、電圧VFと電圧VRAMPを同時にチャージすることができるので、図7のTDC回路の場合よりも早くAD変換結果が得られる。
【0108】
本技術によれば、電流源からの電流チャージ時間を短くできることで間欠率を向上し、低電力化可能となる。
【0109】
本技術の位相同期回路は、例えば、高周波の無線通信装置に用いられる。
【0110】
< 2.第2の実施の形態 >
<無線通信装置の構成例>
図13は、ADPLL回路1を含む無線通信装置200の構成例を示すブロック図である。無線通信装置200は、ADPLL回路1、変調部201、送信ミキサ202、基準信号発振器203、受信ミキサ204、および復調部205から構成される。
【0111】
ADPLL回路1は、基準信号発振器203から出力される基準信号に基づいて、所望の周波数の第1局部信号および第2局部信号を、送信ミキサ202および受信ミキサ204にそれぞれ出力する。なお、基準信号発振器203は、例えば水晶振動子を用いて構成される。
【0112】
送信ミキサ202には、変調部400により変調されたベースバンドの送信信号と、ADPLL回路1により出力された第1局部信号とが供給される。送信ミキサ202は、供給された送信信号と第1局部信号とに基づいてアップコンバートし、ベースバンドの送信信号(BB送信信号)を高周波送信信号(RF送信信号)に変換する。なお、高周波送信信号は、図13に不図示のアンテナを介して送信される。
【0113】
なお、上記説明においては、無線通信装置に用いる例を説明したが、無線通信装置に限らず、本技術は、RF回路などに適用することができる。
【0114】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0115】
本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0116】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0117】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
2つの容量を含み、前記2つの容量から発生した電圧の比較結果を出力するSAR-ADCと、
前記2つの容量に電流をチャージする電流源と、
前記2つの容量のうちの一方の容量と前記電流源の間に配置され、基準周波数の第1のクロックと前記第1のクロックより高い周波数である第2のクロックとの位相差が供給される第1のスイッチと、
前記2つの容量のうちの他方の容量と前記電流源の間に配置され、前記第2のクロックが供給される第2のスイッチと
を備える位相同期回路。
(2)
前記電流源は、前記第1のスイッチの動作に基づいて、前記位相差に応じた時間、前記一方の容量に電流をチャージし、前記第2のスイッチの動作に基づいて、前記第2のクロックに応じた時間、前記他方の容量に電流をチャージする
前記(1)に記載の位相同期回路。
(3)
前記第2のクロックに応じた時間は、クロック1周期以上の時間である
前記(2)に記載の位相同期回路。
(4)
前記一方の容量は、前記位相差に応じた電圧を発生させ、前記他方の容量は、前記第2のクロックに応じた電圧を発生させる
前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の位相同期回路。
(5)
前記一方の容量と前記他方の容量の比は、1対1である
前記(4)に記載の位相同期回路。
(6)
前記電流源は、前記一方の容量に電流をチャージする第1の電流源と、前記他方の容量に電流をチャージする第2の電流源により構成される
前記(4)に記載の位相同期回路。
(7)
前記他方の容量は、前記一方の容量のN倍の容量であり、
前記第2の電流源は、前記第1の電流源のN倍の電流をチャージする
前記(6)に記載の位相同期回路。
【符号の説明】
【0118】
1 ADPLL回路, 11 カウンタ回路, 12 TDC回路, 13 デジタル演算回路, 14 VCO, 111 電流源, 112 PD, 113-1および113-2 スイッチ, 114 SAR_ADC, 121 比較器, 122 SAR_論理回路, 131-1および131-2 キャパシタ, 132-1および132-2 インバータ, 161-1および161-2 電流源, 181-1および181-2 電流源, 200 無線通信装置, 201 変調部, 202 送信ミキサ, 203 基準信号発振器, 204 受信ミキサ, 205 復調部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13