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特許7346384リング紡績機の動作方法およびリング紡績機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】リング紡績機の動作方法およびリング紡績機
(51)【国際特許分類】
   D01H 1/244 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
D01H1/244
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020511326
(86)(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 IB2018056079
(87)【国際公開番号】W WO2019038631
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】01056/17
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590005597
【氏名又は名称】マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH-8406 Winterthur,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト インゴルト
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-518966(JP,A)
【文献】特開平08-301523(JP,A)
【文献】特開2007-122252(JP,A)
【文献】特開平02-229227(JP,A)
【文献】特開平05-117924(JP,A)
【文献】特開平06-207332(JP,A)
【文献】特開2000-064127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 1/244
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスピンドル(8)を備えるリング紡績機(1)の動作方法であって、前記スピンドル(8)は、スピンドルベンチ(22)上に配置されており、かつそれぞれ1つの電気駆動部(9)を含んでおり、
各電気駆動部(9)は分散型コントロールモジュール(10)を有しており、前記分散型コントロールモジュール(10)は前記電気駆動部(9)と相互作用し、かつデータバス(13,14)を用いた、上位レベルの中央コントロール装置(12)との通信のための手段を有している方法において、
複数の分散型コントロールモジュール(10)に割り当てられたセクションモジュール(11)が少なくとも1つ設けられており、
前記セクションモジュール(11)は、前記分散型コントロールモジュール(10)から、前記電気駆動部(9)の電流形状に関する情報を受け取って評価し、これにより回転子の速度、前記回転子の状態、前記スピンドル(8)の動作状態、軸受の状態もしくは軸受の損傷またはオイルレベルに関する情報を受け取り、
回転子の速度、前記回転子の状態、前記スピンドル(8)の動作状態、軸受の状態もしくは軸受の損傷またはオイルレベルに関する前記情報は、前記中央コントロール装置(12)を介して予知保全用のシステム(24)に転送され
ことを特徴とする、リング紡績機(1)の動作方法。
【請求項2】
割り当てられた分散型コントロールモジュール(10)からの、電気駆動部(9)の電流形状に関する前記情報が前記セクションモジュール(11)によって照会され、前記分散型コントロールモジュール(10)から前記セクションモジュール(11)に送信され、前記セクションモジュール(11)において評価される、請求項1記載のリング紡績機(1)の動作方法。
【請求項3】
電気駆動部(9)の電流形状に関する前記情報が、割り当てられた分散型コントロールモジュール(10)によって評価され、前記分散型コントロールモジュール(10)から、前記分散型コントロールモジュール(10)に割り当てられた前記セクションモジュール(11)に送信される、請求項1記載のリング紡績機(1)の動作方法。
【請求項4】
前記セクションモジュール(11)は、割り当てられたすべての分散型コントロールモジュール(10)に順々に照会し、前記情報を得て、評価する、請求項1から3までのいずれか1項記載のリング紡績機(1)の動作方法。
【請求項5】
前記評価は、平均値形成またはフーリエ変換を含んでいる、請求項1から4までのいずれか1項記載のリング紡績機(1)の動作方法。
【請求項6】
前記分散型コントロールモジュール(10)は、前記スピンドル(8)、前記回転子の速度の閉ループ制御および糸張力の閉ループ制御のために、割り当てられた前記電気駆動部(9)の電流信号の情報を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載のリング紡績機(1)の動作方法。
【請求項7】
前記予知保全用のシステム(24)は、自動発注システム(25)と接続されており、必要なスペア部品を発注する、請求項1から6までのいずれか1項記載のリング紡績機(1)の動作方法。
【請求項8】
必要なメンテナンスが、前記リング紡績機(1)のディスプレイ(20)または前記予知保全用のシステム(24)に表示される、請求項1から7までのいずれか1項記載のリング紡績機(1)の動作方法。
【請求項9】
前記情報は、負荷制限であり、
前記セクションモジュール(11)は、前記負荷制限に基づいて、糸切れまたはクリープスピンドルを求める、
請求項1からまでのいずれか1項記載のリング紡績機(1)の動作方法。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法を実施するリング紡績機(1)であって、
それぞれ1つの電気駆動部(9)を含んでいる複数のスピンドル(8)を備え、
各電気駆動部(9)は分散型コントロールモジュール(10)を有しており、前記分散型コントロールモジュール(10)は、前記電気駆動部(9)と相互作用し、かつデータバス(13,14)を用いた、上位レベルの中央コントロール装置(12)との通信のための手段を有しているリング紡績機(1)において、
複数の分散型コントロールモジュール(10)に割り当てられたセクションモジュール(11)が少なくとも1つ設けられており、前記セクションモジュール(11)は、前記分散型コントロールモジュール(10)と通信するための手段を有しており、
前記セクションモジュール(11)は、回転子の速度、前記回転子の状態、前記スピンドル(8)の動作状態、軸受の状態もしくは軸受の損傷またはオイルレベルに関する情報を求めるための手段を含み、
前記中央コントロール装置(12)は、回転子の速度、前記回転子の状態、前記スピンドル(8)の動作状態、軸受の状態もしくは軸受の損傷またはオイルレベルに関する情報を、前記中央コントロール装置(12)を介して予知保全用のシステム(24)に転送するために、予知保全用のシステム(24)への通信のための手段を有している
ことを特徴とする、リング紡績機(1)。
【請求項11】
前記セクションモジュール(11)または前記分散型コントロールモジュール(10)は、上述した前記情報を評価するための手段を有しており、前記手段は、前記情報の平均値形成またはフーリエ変換のための手段を含んでいる、請求項10記載のリング紡績機(1)。
【請求項12】
前記セクションモジュール(11)は、割り当てられた分散型コントロールモジュール(10)の照会のための手段を有している、請求項10または11記載のリング紡績機(1)。
【請求項13】
前記リング紡績機は、必要なメンテナンスおよび個々のメンテナンスステップを表示するために、ディスプレイ(20)を含んでいる、請求項10から12までのいずれか1項記載のリング紡績機(1)。
【請求項14】
前記スピンドル(8)は、機械的な軸受および/または磁気的な軸受を有している、請求項10から13までのいずれか1項記載のリング紡績機(1)。
【請求項15】
予知保全用のシステム(24)を含んでいる
ことを特徴とする、請求項10から14までのいずれか1項記載のリング紡績機(1)を少なくとも1つ含んでいる複数の繊維機械。
【請求項16】
コンピュータプログラム製品であって、
前記コンピュータプログラム製品は、リング紡績機(1)の内部メモリに直接的にロード可能であり、かつソフトウェアコードセクションを含んでおり、前記ソフトウェアコードセクションによって、前記コンピュータプログラム製品が前記リング紡績機(1)上で実行されるときに、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法のステップが実施される
ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念に記載されたリング紡績機の動作方法およびリング紡績機に関する。
【0002】
従来技術
ベルト駆動部に代わる単錘駆動部を備えるリング紡績機は、従来のベルト駆動部に比べて様々な理由で実際には今日まだ定着してはいないが、すでに長い間知られている。これに相応して、この分野には多くの刊行物があり、これらの刊行物はとりわけ、駆動コンセプトまたは機械フレーム、すなわちスピンドルベンチへのこの種のスピンドルユニットの取り付けを扱っている。例えば、スイス国特許出願公開第698768号明細書は、単錘駆動部を備えるこの種の紡績機を開示している。欧州特許出願公開第1191132号明細書および欧州特許出願公開第389849号明細書も同様に、単錘駆動部を備える紡績機を開示している。
【0003】
駆動装置は、回転作用を有する電気駆動モータを含んでいる。この電気駆動モータは、例えばガイドローラの形態で設けられた、駆動モータのシャフトの端側に設けられたマニピュレーターを介して、糸、繊維、不織布または編成品に作用を及ぼす。さらに典型的には、特に、糸、繊維、不織布または編成品の位置を検出するために使用される様々な外部センサならびに付加的なアクチュエータ要素が設けられている。付加的なアクチュエータ要素は例えば、糸、繊維、編成品もしくは不織布に予張力をかけるまたはこれらを位置付けるために使用される。回転作用を有する電気駆動モータは通常、全体的に弾性的に支持されて設けられており、これによって一方では共振の問題から駆動装置を保護し、他方では高速時にも十分な作動安定性と耐久性とを保証する。
【0004】
電気駆動モータの開ループ制御もしくは閉ループ制御のために、分散型コントロールモジュールが設けられている。機能的に、さらに通常は空間的にも、駆動装置の一部として設けられている分散型コントロールモジュールも、外部センサおよび付加的なアクチュエータ要素と相互作用する。分散型コントロールモジュールは、適切な通信手段を介して上位レベルの中央コントロール装置と接続されている。
【0005】
中央コントロール装置は、特に繊維機械の複数の駆動装置を調整する。基本的に、繊維機械におけるこのような駆動装置の使用は、長年にわたって有効であることが実証されてきたが、分散して構成されたシステムは比較的大きく、高価であり、かつ組み立ておよびメンテナンスの点で手間がかかる。
【0006】
欧州特許出願公開第2999096号明細書は、少なくとも1つの駆動装置を備える繊維機械に関し、この駆動装置は、回転作用を有する電気駆動モータを含んでおり、この電気駆動モータは、いずれの場合にも部分的に駆動モータのハウジングによって包囲されている固定子を備えている。この固定子は少なくとも1つのコイルを有している。電気駆動モータはさらに、駆動モータの軸に、固定子に関して回転可能に保持されている回転子と、この軸に対する少なくとも1つの軸受とを備えている。この軸受は、少なくとも駆動モータの個々の機能部品を支持する弾性的な手段と、駆動モータに割り当てられた分散型コントロールモジュールとを含んでいる。この分散型コントロールモジュールは、一方では駆動モータと相互作用し、他方では駆動装置の少なくとも1つのセンサと相互作用し、さらには上位レベルの中央コントロール装置と通信するための手段を有している。ここで、軸を支持するために設けられている少なくとも1つの軸受は、弾性的な手段を介して、柔軟に、固定子に関して、ハウジングに次のように支持されている。すなわち、軸が回転子とともに、固定子に対して可動に保持されており、電気的な同期モータが駆動モータとして設けられており、第1のセンサを介してハウジングに対する軸の位置が検出可能であり、かつ/または第2のセンサを介して軸の回転角度が検出可能であるように支持されている。
【0007】
国際公開第2009132469号は、単錘駆動部を備える紡績機を開示しており、この紡績機は、制御部が4つのプリント回路基板を含んでおり、これらのプリント回路基板それぞれが複数のスピンドル駆動電子機器ユニットを含んでいることを特徴とする。ここでエネルギーの供給と、スピンドル駆動電子機器ユニットとの通信とは、ライン経路を介してこれらのプリント回路基板上で行われる。ここで、1つの基板はセクション基板として形成されており、このセクション基板は、セクション電子機器ユニットと1つまたは複数の接続インターフェースとを含んでおり、外部通信機器、電源ならびにプリント回路基板は相互に直列に接続されている。
【0008】
ここで、関連するスピンドル駆動電子機器ユニットもしくはセクション電子機器ユニットは、例えば、以下の機能の1つまたは複数を自律的に実行するように設計されている。すなわち、糸切れ検出、繊維束の停止、単錘駆動部の制御、単錘駆動部の熱監視、繊維束の切り替え、スピンドル速度測定、糸張力測定、割り当てられた自動移動機との通信、巻返し部操作者ガイド、障害表示、手動スイッチおよび/またはその他のセンサ機能である。有利には、糸切れおよび/または糸張力の上昇は、各スピンドル駆動電子機器ユニットによって、各作業部に割り当てられた電気モータ駆動部の電流もしくは消費電力を介して特定可能である。機械制御ユニット自体によって、例えば、動作開始および/またはシーケンス制御が行われる。これは例えば、通常の停止時にも、停電の場合の緊急停止時にも有効である。
【0009】
しかし、これらの実施形態の欠点は、特に単錘駆動部において、中央コントロール装置の通信が保証されなければならないということである。これは、既存の通信手段を介しては不可能である。さらに、単錘駆動部の場合には、今までのところ、中央コントロール装置において、スピンドル、スピンドルの状態または紡糸の状況に関する、さらなる情報を取得し、特に予知保全に使用することは不可能である。
【0010】
本発明の説明
本発明の課題はさらに、スピンドルの状態に関する情報が提供され、これを予知保全に使用できる、単錘駆動部を備える繊維機械、特にリング紡績機を実現することである。
【0011】
上述の課題は、
・多数の分散型コントロールモジュールに割り当てられたセクションモジュールが少なくとも1つ設けられており、
・ここでセクションコントロールモジュールは、分散型コントロールモジュールから、回転子の速度、回転子の状態、スピンドルの動作状態、軸受の状態もしくは軸受の損傷またはオイルレベルに関する情報を受け取る
ようにされた、請求項1の上位概念に相当する方法によって解決される。
【0012】
上述の課題は、
・多数の分散型コントロールモジュールに割り当てられたセクションモジュールが少なくとも1つ設けられており、
・ここでセクションモジュールは、分散型コントロールモジュールと通信するための手段を有しており、
・セクションモジュールは、回転子の速度、回転子の状態、スピンドルの動作状態、軸受の状態もしくは軸受の損傷またはオイルレベルに関する情報を求めるための手段を含んでいる
ようにされた、請求項の上位概念に相当するリング紡績機によっても解決される。
【0013】
割り当てられた分散型コントロールモジュールからの、電気駆動部の負荷制限および/または電流形状に関する情報はセクションモジュールによって照会され、分散型コントロールモジュールからセクションモジュールに送信され、セクションモジュールで評価される。択一的な実施形態では、電気駆動部の負荷制限および/または電流形状に関する情報が、割り当てられた分散型コントロールモジュールによって評価され、このコントロールモジュールから、この分散型コントロールモジュールに割り当てられたセクションモジュールに送信されてよい。有利には、セクションモジュールは、割り当てられたすべての分散型コントロールモジュールに順々に照会し、情報を得て、評価することができるだろう。セクションモジュールは有利には、割り当てられた分散型コントロールモジュールに照会するための、相応する手段を有するだろう。
【0014】
評価は、平均値形成またはフーリエ変換を含み得る。フーリエ変換の範囲において、特に短時間フーリエ変換、ガボール変換、高速フーリエ変換もしくは離散フーリエ変換がトレーニングにおいて、離散コサイン変換または離散サイン変換として使用可能である。ウェーブレット変換の場合、特に、離散ウェーブレット変換、高速ウェーブレット変換、ウェーブレットパケット変換もしくは定常ウェーブレット変換が使用される。同様に、信号の離散的な静的パラメータを使用することができ、周波数領域における信号の変換を省くことができる。特に、期待値、絶対偏差、分散、歪度、過剰もしくは共分散等のランダム変数がパラメータとして使用される。信号が相関、特に相互相関もしくは自己相関することも可能である。最後に、変換された信号と静的パラメータとの組み合わせを表すことができる。共通の意図は、特に、パターン認識の範囲において、実際の測定信号と基準信号状態とを比較することである。ここで基準信号は、1つまたは複数の隣接するスピンドルの情報から作成され得る、またはメモリから読み出され得る。これは特に、問題とされている信号の類似性に関する情報に基づいて、信号から作成され、機能ツールにおいて結合される特定の機能に基づいて行われる。
【0015】
分散型コントロールモジュールは有利には、電気駆動部の負荷投入に基づいて、糸切れを確認し、これを、割り当てられたセクションモジュールに通知することができる。ここでセクションモジュールは、コントロールモジュールでの負荷制限もしくは糸切れについて、メンテナンスキャリッジに情報を伝達するための、通信のための手段を有している。さらに、コントロールモジュールは有利には、スピンドル、回転子の速度の閉ループ制御または糸張力の閉ループ制御のために、電気駆動部の電流信号からの情報を使用することができる。
【0016】
有利には、単錘駆動部から得られた、回転子の速度、回転子の状態、スピンドルの動作状態、軸受の状態もしくは軸受の損傷またはオイルレベルに関する情報は、中央コントロール装置を介して予知保全用のシステムに転送可能である。予知保全用のシステムは有利には、適切なアルゴリズムを有しており、これによって、1つまたは多数のデータの時間的推移、スピンドルによって測定された種々データの相互比較(相互相関)およびデータベースに格納されているデータとの比較に基づいて、単錘駆動部、リングトラベラ等のどの要素がいつ交換されなければならないのかが予測される。システムには、このようなデータを格納するためにメモリも含まれる。このシステムによって、操作者は必要なメンテナンスを事前に計画することができる。さらに予知保全用のシステムは、自動発注システムとともに使用可能であり、これによって、スペア部品および摩耗部品の必要な発注を行うことができ、これらは適時、メンテナンスに利用できる。
【0017】
電気的な同期モータまたは非同期モータまたはブラシレスDCモータが、スピンドルの電気駆動部として設けられていてよい。スピンドルは、機械的な軸受および/または磁気的な軸受を有し得る。
【0018】
本発明は、リング紡績機の内部メモリに直接的にロード可能であり、ソフトウェアコードセクションを含んでいることを特徴とするコンピュータプログラム製品にも関し、これらのソフトウェアコードセクションによって、このコンピュータプログラム製品がリング紡績機上で実行されるときに、本発明の方法に関する先行する請求項の1つに記載された方法のステップが実施される。
【0019】
本発明のさらなる利点を、以下の実施例に記載する。本発明にとって重要な特徴のみが示されている。異なる図において、同じ特徴には同じ参照符号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】単錘駆動部を備えるリング紡績機の概略図である。
図2】リング紡績機の通信システムの概略図である。
【0021】
本発明を実施する方法
図1は、互いに隣接して配置された多数の巻返し部2を有する、本発明のリング紡績機1を概略的に示している。巻返し部2は、リング紡績機1の長手方向Xにおいて、頭部3と足部3との間に配置されている。リング紡績機1の頭部3および足部3は、機械の動作に必要な軸受、駆動部、制御部等を含むことができる。さらに、例えば、図1に概略的に示されている2つの巻返し部2で見て取れるように、各巻返し部2は、ドラフト装置5の上方に配置されており、粗糸6が巻き付けられている粗糸ボビン4からなる。粗糸6は粗糸ボビン4からドラフト装置5を介して走行し、そこで延伸され、糸形成要素に案内される。回転するトラベラもしくはリングトラベラが、完成した糸をコップ7に巻きつける。コップ7は、スピンドル8に載置されている。
【0022】
図2は、リング紡績機1の通信システムを概略的に示している。リング紡績機1は、スピンドル8を駆動するために、スピンドル8を駆動する単錘駆動部9を有している。単錘駆動部9として、電気駆動部、例えば電気的な同期モータ、非同期モータ、ブラシレスDCモータ等、または同等のモータが使用される。分散型コントロールモジュール10に、各単錘駆動部9が割り当てられている。
【0023】
スピンドル8、単錘駆動部9およびコントロールモジュール10は、リング紡績機1のスピンドルベンチ22に配置されている。スピンドルベンチ22は概略的にのみ示されており、スピンドルベンチ22上に存在する構成部分は、相応に図2において、この要素内に位置する。スピンドルベンチ22は有利には可動に支持されている。電気駆動部9の接続部は複数の接続ケーブルを有しており、これらはスピンドルベンチ22上で統合され、スピンドルベンチの終端部で電源に接続されている。電気駆動部9への接続が、プラグ接続によって実現されるのは有利である。
【0024】
コントロールモジュール10は、単錘駆動部9を監視し、上位レベルの制御部からの命令を実行するというタスクを有している。本発明では、単錘駆動部9の複数の分散型コントロールモジュール10が統合されていてよい。多数の分散型コントロールモジュール10、例えば64個のコントロールモジュール10は、上位レベルのセクションコントロールモジュール11と通信する。セクションコントロールモジュール11のうちの2つが、図2に例として示されている。しかし、セクションコントロールモジュール11の数は、破線のコントロールモジュール10によって示されているように、スピンドル8の数に依存する。セクションモジュール11は、コントロールモジュール10からの情報を処理し、この情報を転送する。複数の分散したセクションコントロールモジュール11は、リング紡績機1の1つの上位の中央コントロールモジュール12と通信する。中央コントロールモジュール12は、すべての機械データを有し、これらを統計的に処理および視覚化する中央機械制御部である。この目的のために、ディスプレイ20が中央コントロールモジュール12に接続されている。ここで機械データがユーザによって、ディスプレイ20を介して照会可能である。このようなデータをモバイルアプリケーションに転送することもできる。
【0025】
中央コントロールモジュール12とセクションコントロールモジュール11との間には機械データバス13が設けられており、セクションコントロールモジュール11と分散型コントロールモジュール10との間にはセクションデータバス14が設けられている。セクションデータバス14は、コントロールモジュール10とセクションコントロールモジュール11との間の通信を担当し、これを介してセクションモジュール11からの命令がコントロールモジュール10に伝達され、スピンドル8の電気駆動部9の動作状態または測定データがコントロールモジュール10からセクションコントロールモジュール11に導かれる。
【0026】
付加的に、かつデータバス13、14とは独立して、デジタル通信ネットワーク15が設けられており、これによって、中央コントロールモジュール12と分散型コントロールモジュール10とが互いに通信する。この通信ネットワーク15を介して、時間的にクリチカルであり、かつ安全に関連する情報が、中央コントロール装置12からセクションコントロールモジュール11を通って(破線)、コントロールモジュール10に直接的に転送される。通信ネットワーク15を介して電気駆動部9のすべての分散型コントロールモジュール10が、同時に、中央コントロール装置12によってコンタクト可能であり、例えば、デジタル通信ネットワーク15を介して、中央コントロール装置12から、例えば開始信号/停止信号または加速勾配または減速勾配を制御するための命令が分散型コントロールモジュール10に送信され得る。
【0027】
図2は、さらに命令要素および通知要素17を示しており、各単錘駆動部9に厳密に1つの命令要素および通知要素17が割り当てられている。これらの命令要素および通知要素は、操作要素17の形態でリング紡績機のリングベンチ23上に配置されている。複数のコントロールモジュール16は、セクション命令バス19を介して命令要素および通知要素17と接続されており、これらの上位にある。機械命令バス18は、コントロールモジュール16と中央モジュール12との間の通信を手当する。コントロールモジュール10がエラーを確認すると、このような情報はバスシステム14、13、18、19を介して、割り当てられた通知要素17に送信され、そこで表示される。ここで操作者は、命令要素17でリングベンチ23に命令(例えば、開始または停止)を入力することができ、これはその後、バスシステム14、13、18、19を介してコントロールモジュール10に送り返される。
【0028】
単錘駆動部9の分散型コントロールモジュール10から、消費電流(負荷制限)に基づいて、糸切れまたはクリープスピンドルが求められる。機械的な軸受の場合には、電流形状に基づいて、速度、回転子の速度、回転子の状態、スピンドルの動作状態、軸受の状態もしくは軸受の損傷、オイルレベル等を特定することができる。スピンドル8に磁気的な軸受が設けられている場合には、付加的に、アクティブな磁気的な軸受の消費電流を介して、コップ7の重量が特定可能である。負荷制限およびそれに関連する糸切れの場合には、特定の分散型コントロールモジュール10がこれをセクションコントロールモジュール11に通知することができる。しかし、セクションモジュール11が、割り当てられたすべての分散型コントロールモジュール10に順々に照会することもできる。このようにして得られた情報は次に、順々に評価され、動作状態が求められる。
【0029】
セクションモジュール11は、得られた情報を求めるために、得られた情報を評価する(計算)手段を有している。計算手段は、消費電流の平均二乗根を形成し、電流形状の変換を行う手段を含んでいる。信号を時間領域から周波数領域に変換するために特に、フーリエ変換、ウェーブレット変換もしくは経験的モード分解を主要構成要素とするヒルベルト・ファン変換が使用される。フーリエ変換の範囲内で、特に短時間フーリエ変換、ガボール変換、高速フーリエ変換もしくは離散フーリエ変換がトレーニングにおいて、離散コサイン変換または離散サイン変換として使用可能である。ウェーブレット変換の場合、特に、離散ウェーブレット変換、高速ウェーブレット変換、ウェーブレットパケット変換もしくは定常ウェーブレット変換が使用される。同様に、信号の離散的な静的パラメータが使用可能であり、周波数領域における信号の変換を省くことができる。特に、期待値、絶対偏差、分散、歪度、過剰もしくは共分散等のランダム変数がパラメータとして使用される。信号が相関、特に相互相関もしくは自己相関することも可能である。最後に、変換された信号と静的パラメータとの組み合わせを表すことができる。共通の意図は、特に、パターン認識の範囲において、実際の測定信号と基準信号状態とを比較することである。ここで基準信号は、1つまたは複数の隣接するスピンドルの情報から作成されるか、またはメモリから読み出される。これは特に、問題にされている信号の類似性に関する情報に基づいて、信号から作成され、機能ツールにおいて結合される特定の機能に基づいて行われる。
【0030】
択一的な実施形態では、コントロールモジュール10は、動作状態を評価するために、上記の(計算)手段を有している。ここでこれらは、さらなる処理のために、結果を割り当てられたセクションモジュール11に送信する。さらに、コントロールモジュール10は、スピンドル8、回転子の速度の閉ループ制御および糸張力の閉ループ制御のために、電気駆動部9の電流信号からの情報を使用することができる。
【0031】
図1に示されているメンテナンスキャリッジ21は、例えば糸切れまたは他の欠陥を取り除くために、リング紡績機1の巻返し部の長手方向xに沿って移動する。コントロールモジュール10またはセクションモジュール11が上記の様式(消費電流、負荷制限等)で糸切れ、クリープスピンドルまたはその他の機能エラーを確認すると、巻返し部2について、メンテナンスキャリッジに情報を伝達することができる。次に、メンテナンスキャリッジはこの巻返し部2へ移動し、例えば糸を組み直すか、他の様式で欠陥を取り除く。連絡は、例えば、メンテナンスキャリッジに情報を伝達するバス13、14を介して、中央コントロールモジュール12に送られる。
【0032】
有利には、単錘駆動部から得られた、回転子の速度、回転子の状態、スピンドル8の動作状態、軸受の状態もしくは軸受の損傷またはオイルレベルに関する情報は、紡績機1自体に表示される、かつ/または中央コントロール装置12を介して予知保全用のシステム24に転送される。
【0033】
予知保全用のシステム24は適切なアルゴリズムを有しており、これによって、1つまたは多数のデータの時間的推移、スピンドルによって測定された種々のデータの相互比較(相互相関)およびデータベースに格納されているデータとの比較に基づいて、単錘駆動部9、リングトラベラ等のどの要素がいつ交換されなければならないのかが予測される。システム24には、このようなデータを格納するためにメモリも含まれる。大量のデータ(ビッグデータ)で動作するこのようなシステムは、例えば国際公開第2018/055508号から知られている。
【0034】
予知保全用のシステム24はさらにディスプレイを含んでおり、これは、個々の機械、とりわけリング紡績機1が表示される、紡績工場の中央ディスプレイである。ここで操作者に、機械の必要なメンテナンスについて事前に情報が伝達され、操作者は必要なメンテナンスを計画する。予知保全用のシステム24は、どの機械でどのメンテナンスをいつ実行しなければならないかの操作指導および表示を含む、すべての必要なメンテナンス情報を含んでいる。このような情報は、リング紡績機1に送信され、リング紡績機1で局部的なディスプレイ20に表示されてもよい。操作者が必要なメンテナンスステップを完了するとすぐに、操作者はこれをディスプレイ20または中央ディスプレイに入力し、作業の完了をコンファームする。
【0035】
予知保全用のシステム24はさらに、自動発注システムとともに使用可能であり、したがって、スペア部品および摩耗部品の必要な発注を行うことができ、これらはリング紡績機1の単錘駆動部9のメンテナンスに適時に利用できる。
【0036】
本発明は、リング紡績機1の内部メモリに直接的にロード可能であり、ソフトウェアコードセクションを含んでいることを特徴とするコンピュータプログラム製品にも関する。これらのソフトウェアコードセクションによって、リング紡績機1上でこのコンピュータプログラム製品が実行されるときに、本発明の方法に関する先行する請求項の1つに記載された方法のステップが実施される。
【符号の説明】
【0037】
1 リング紡績機
2 巻返し部
リング紡績機1の頭部
リング紡績機1の足部
4 粗糸ボビン
5 ドラフト装置
6 粗糸
7 コップ
8 スピンドル
9 スピンドル8の単錘駆動部
10 単錘駆動部9の分散型コントロールモジュール
11 セクションコントロールモジュール
12 中央コントロールモジュール
13 機械データバス
14 セクションデータバス
15 デジタル通信ネットワーク
16 命令要素および通知要素17のコントロールモジュール
17 命令要素および通知要素、操作ユニット
18 機械命令バス
19 セクション命令バス
20 ディスプレイ
21 メンテナンスキャリッジ
22 スピンドルベンチ
23 リングベンチ
24 予知保全用のシステム
25 発注システム
図1
図2