(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用正極および非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20230911BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230911BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230911BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230911BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20230911BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/525
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0566
(21)【出願番号】P 2020525755
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2019024176
(87)【国際公開番号】W WO2019244906
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-08-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/023467
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光央
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】畑中 博幸
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-118920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/131
H01M4/139
H01M4/62
H01M10/052
H01M10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムとニッケルを含む正極活物質粒子が凝集した正極活物質体と、
直径が1μm以下の導電材粒子、および、pH調整剤を含み、前記導電材粒子以外に導電性を有する物質を含まず、前記正極活物質体同士を連結する連結部と、
水溶性又は水分散性のバインダーと、
集電体とを有し、
プレス加工された非水電解液二次電池用正極であり、
電子顕微鏡により撮影された前記非水電解液二次電池用正極の表面の少なくとも1つの電子顕微鏡画像において、それぞれ、前記連結部は、その表面に、
pH調整剤が存在しておらず前記導電材粒子が露出することにより前記導電材粒子の粒状感のある粒状感表面部と、前記pH調整剤が露出した部分を含むことにより前記粒状感表面部よりも粒状感のない非粒状感表面部とを有
し、
前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像に含まれる第1の電子顕微鏡画像に対して、前記電子顕微鏡画像を凹部を示す暗領域と凸部を示す明領域に区別する二値化処理を行った場合に、
前記第1の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率は、前記第1の電子顕微鏡画像全体に占める前記暗領域の面積の比率より小さく、
前記第1の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率は、前記第1の電子顕微鏡画像全体に占める前記暗領域の面積の比率より大きく、
前記第1の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率は、前記第1の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率の半分以下である非水電解液二次電池用正極。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像の各々において、前記非粒状感表面部は、前記導電材粒子の少なくとも一部を覆った前記pH調整剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池用正極。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像の各々における前記粒状感表面部の面積および前記非粒状感表面部の面積が、それぞれ、前記直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解液二次電池用正極。
【請求項4】
前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像に含まれ、拡大倍率、電子像の種類および加速電圧が同じであって撮影対象が異なる第2の電子顕微鏡画像および第3の電子顕微鏡画像において、それぞれ、前記連結部の表面に、前記粒状感表面部と前記非粒状感表面部が確認され、
前記第2の電子顕微鏡画像および前記第3の電子顕微鏡画像に対して、それぞれ、前記電子顕微鏡画像を凹部を示す暗領域と凸部を示す明領域に区別する二値化処理を行った場合に、
前記第2の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、前記第3の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率よりも小さいことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極。
【請求項5】
前記第1の電子顕微鏡画像および前記第2の電子顕微鏡画像の少なくとも一方の各々における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部の面積が、前記直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上であり、
前記第1の電子顕微鏡画像および前記第3の電子顕微鏡画像の少なくとも一方の各々における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部の面積が、前記直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上であることを特徴とする請求項
1~4のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極。
【請求項6】
前記第1の電子顕微鏡画像又は前記第2の電子顕微鏡画像の一方である第4の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、
前記第4の電子顕微鏡画像全体に占める前記暗領域の面積の比率、および、
前記第4の電子顕微鏡画像と電子像の種類および加速電圧が同じであって撮影対象が異なる前記非水電解液二次電池用正極の表面が撮影された第5の電子顕微鏡画像を、前記二値化処理して得られた、前記第5の電子顕微鏡画像全体に占める前記暗領域の面積の比率の少なくとも一方より小さいことを特徴とする請求項
1~5のいずれか1項のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極。
【請求項7】
前記第1の電子顕微鏡画像又は前記第3の電子顕微鏡画像の一方である第6の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、
前記第6の電子顕微鏡画像全体に占める前記暗領域の面積の比率、および、
前記第6の電子顕微鏡画像と電子像の種類および加速電圧が同じであって撮影対象が異なる前記非水電解液二次電池用正極の表面が撮影された第7の電子顕微鏡画像を、前記二値化処理して得られた、前記第7の電子顕微鏡画像全体に占める前記暗領域の面積の比率の少なくとも一方以上であることを特徴とする請求項
1~6のいずれか1項のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極。
【請求項8】
前記第1の電子顕微鏡画像および前記第2の電子顕微鏡画像の少なくとも一方における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、10%未満であることを特徴とする請求項
1~7のいずれか1項のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極。
【請求項9】
前記第1の電子顕微鏡画像および前記第3の電子顕微鏡画像の少なくとも一方における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、10%以上であることを特徴とする請求項
1~
8のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極。
【請求項10】
少なくとも1つの前記電子顕微鏡画像において、前記非粒状感表面部に、前記pH調整剤が存在し、前記導電材粒子が露出していないことを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極。
【請求項11】
前記非水電解液二次電池用正極の表面における少なくとも部分的に一致しない複数箇所が撮影された複数の前記電子顕微鏡画像において、それぞれ、前記連結部の表面に、前記粒状感表面部と前記非粒状感表面部が確認されることを特徴とする請求項1~
10のいずれか1項に記載の電解液二次電池用正極。
【請求項12】
前記正極活物質粒子に含まれる金属元素に占めるニッケルの割合が、50モル%以上であることを特徴とする請求項1~
11のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極 。
【請求項13】
前記正極活物質粒子に含まれる金属元素に占めるニッケルの割合が、80モル%以上であることを特徴とする請求項1~
12のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極 。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の前記非水電解液二次電池用正極と、負極と、非水電解液とを備える非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムとニッケルを含む正極活物質を使用した非水電解液二次電池用正極および非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の非水電解液二次電池の正極には、リチウム(Li)を含む正極活物質が使用されている。近年、正極活物質として、リチウムとニッケル(Ni)を含む正極活物質が注目されている(例えば特許文献1参照)。ニッケルを含む正極活物質を使用することによって、非水電解液二次電池の充放電容量が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムとニッケルを含む正極活物質を使用した非水電解液二次電池の電池特性をさらに高めつつ、耐久性も高めたいという要望がある。電池特性とは、例えば、充放電効率である。
【0005】
本発明は、リチウムとニッケルを含む正極活物質を使用した従来の非水電解液二次電池用正極に比べて、電池特性を高めつつ、電池の耐久性を高めることができる、リチウムとニッケルを含む正極活物質を使用した非水電解液二次電池用正極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特許文献1の非水電解液二次電池用正極は、有機溶媒系バインダーが使用されている。リチウムとニッケルを含む正極活物質を用いた非水電解液二次電池用正極としては、水分散性又は水溶性のバインダーを用いたものも開発されているが、ニッケルを高濃度で含むものは実用化には至っていない。
本願発明者らは、リチウムとニッケルを含む正極活物質を含む従来の非水電解液二次電池用正極について研究した。従来の有機溶媒系バインダーを用いた正極、又は、従来の水分散性又は水溶性のバインダーを用いた正極において、正極活物質体同士が、導電材粒子を含む連結部によって連結されている。ここで、正極活物質体とは、正極活物質の一次粒子が凝集したものである。また、ここでの連結部に含まれる導電材粒子とは、直径が1μm以下の導電性を有する物質である。以下の説明における導電材粒子も、直径が1μm以下の導電性を有する物質を意味する。従来の正極の表面の電子顕微鏡画像において、従来の正極の連結部は、ほぼ導電材粒子だけで構成されている。従来の正極の表面の電子顕微鏡画像において、連結部の表面のほぼ全体に粒状感がある。この電子顕微鏡画像において、連結部に、導電材粒子同士の隙間が存在する。正極活物質体同士が、連結部に加えてバインダーによって連結されていてもよい。
【0007】
本願発明者らは、水溶性又は水分散性バインダーを用いた非水電解液二次電池用正極を材料や手順を変えて作製してみた。その結果、正極の表面の電子顕微鏡画像において、連結部が、粒状感のある部分と粒状感のない部分の両方を有するような非水電解液二次電池用正極を作製することができた。正極の表面の電子顕微鏡画像において、連結部の表面における粒状感のある部分は、従来と同様、ほぼ導電材粒子だけで構成される。粒状感のある部分には、導電材粒子同士の隙間が存在する。正極の表面の電子顕微鏡画像において、連結部の表面における粒状感の無い部分は、ほぼpH調整剤で構成されることがわかった。このpH調整剤は、導電材粒子を覆っている。つまり、連結部の表面の一部において、導電材粒子がpH調整剤で覆われている。言い換えると、連結部の表面の一部は、導電材粒子を覆ったpH調整剤で構成されている。
【0008】
従来、リチウムイオンの移動の自由度の確保のためには、連結部に電解液が入り込むことが可能な隙間があることが良いと考えられていた。つまり、従来、非水電解液二次電池の充放電効率の向上のためには、連結部の表面に導電材粒子の粒状感があることが良いと考えられていた。ところが、本願発明者らは、連結部の表面に、導電材粒子の粒状感がある部分と、粒状感のない部分の両方が存在することで、従来の正極よりも電池特性を高められることに気付いた。さらに、連結部は、その表面に、粒状感のない部分を有することで、従来の正極よりも電池の耐久性を高められることに気付いた。
【0009】
連結部の表面における粒状感の無い部分、即ち、導電材粒子がpH調整剤で覆われている箇所では、連結部に電解液が浸み込みにくくなる。しかし、連結部の表面における粒状感のある部分は、電解液が浸み込みやすい。そのため、連結部の表面に粒状感のない部分があっても、リチウムイオンの移動の自由度を従来の正極と同程度に確保できることがわかった。
さらに、連結部の表面の一部において導電材粒子がpH調整剤で覆われていることで、電池の充電時および放電時に正極活物質体が膨張又は収縮しても、連結部における導電材粒子同士の連結が、従来の正極よりも切れにくくなることがわかった。それにより、連結部による電子の伝導性が向上して、電池の電極抵抗が低くなる。
これらの結果、従来の非水電解液二次電池よりも、充放電効率が向上する。
【0010】
連結部の表面の一部が、導電材粒子を覆ったpH調整剤で構成されていることにより、正極活物質体の一部が連結部に固定された状態となる。そのため、電池の充電時および放電時に正極活物質体が膨張又は収縮しても、正極活物質体のクラックが、従来の正極よりも生じにくいことがわかった。クラックが生じた正極活物質体は電池の充電および放電に寄与できない。したがって、正極活物質体のクラックの発生が抑制されたことで、電池の使用による充放電効率の低下が抑制される。また、従来の非水電解液二次電池に比べて、正極活物質体のクラックの発生による正極の劣化を抑制できる。
【0011】
また、連結部の表面の一部において導電材粒子がpH調整剤で覆われていることから、連結部の正極活物質体に接触している表面層の一部においても、導電材粒子がpH調整剤で覆われていると推定できる。それにより、電解液が連結部を通って正極活物質体の表面に接しにくくなる。つまり、連結部に対する電解液の浸みこみやすさを確保しつつ、電解液が連結部を通って正極活物質体に接触するのを抑制できる。電解液が正極活物質体に接しにくいことにより、高電圧で電池が使用される場合でも電解液が電気分解しにくくなる。よって、従来の非水電解液二次電池に比べて、高電圧で電池を使用しても、電解液の電気分解による電池の劣化を抑制できる。
【0012】
(1)本発明の非水電解液二次電池用正極は、リチウムとニッケルを含む正極活物質粒子が凝集した正極活物質体と、直径が1μm以下の導電材粒子、および、pH調整剤を含み、前記導電材粒子以外に導電性を有する物質を含まず、前記正極活物質体同士を連結する連結部と、水溶性又は水分散性のバインダーと、集電体とを有し、プレス加工された非水電解液二次電池用正極である。電子顕微鏡により撮影された前記非水電解液二次電池用正極の表面の前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像において、それぞれ、前記連結部は、その表面に、pH調整剤が存在しておらず前記導電材粒子が露出することにより前記導電材粒子の粒状感のある粒状感表面部と、前記pH調整剤が露出した部分を含むことにより前記粒状感表面部よりも粒状感のない非粒状感表面部とを有する。前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像に含まれる第1の電子顕微鏡画像に対して、前記電子顕微鏡画像を凹部を示す暗領域と凸部を示す明領域に区別する二値化処理を行った場合に、前記第1の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率は、前記第1の電子顕微鏡画像全体に占める前記暗領域の面積の比率より小さく、前記第1の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率は、前記第1の電子顕微鏡画像全体に占める前記暗領域の面積の比率より大きく、前記第1の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率は、前記第1の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率の半分以下である。
【0013】
この構成によると、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部が確認される。粒状感表面部は、導電材粒子の粒状感がある。非粒状感表面部は、粒状感表面部よりも粒状感がない。非粒状感表面部では、ほぼ全域において、導電材粒子を覆うpH調整剤で構成されている。つまり、連結部の表面の一部において、導電材粒子がpH調整剤で覆われている。言い換えると、連結部の表面の一部が、導電材粒子を覆ったpH調整剤で構成されている。一方、粒状感表面部では、ほぼ全域において、導電材粒子が露出している。
【0014】
導電材粒子がpH調整剤で覆われている箇所では、連結部に電解液が浸み込みにくくなる。しかし、連結部は、粒状感の無い部分だけでなく、粒状感のある部分も有する。粒状感のある部分には、電解液が浸み込みやすい。そのため、連結部の表面に粒状感のない部分があっても、リチウムイオンの移動の自由度を従来の正極と同程度に確保できる。
さらに、連結部の表面の一部において導電材粒子がpH調整剤で覆われていることで、電池の充電時および放電時に正極活物質体が膨張又は収縮しても、連結部における導電材粒子同士の連結が、従来の正極よりも切れにくくなる。それにより、連結部による電子の伝導性が向上して、電池の電極抵抗が低くなる。
これらの結果、従来の非水電解液二次電池よりも、充放電効率が向上する。
【0015】
連結部の表面の一部が、導電材粒子を覆ったpH調整剤で構成されていることで、正極活物質体の一部は連結部により固定された状態となる。そのため、電池の充電時および放電時に正極活物質体が膨張又は収縮しても、正極活物質体のクラックが従来の正極よりも生じにくい。したがって、正極活物質体のクラックの発生が抑制されたことで、電池の使用による充放電効率の低下が抑制される。また、従来の非水電解液二次電池に比べて、正極活物質体のクラックの発生による正極の劣化を抑制できる。
【0016】
また、連結部の表面の一部において、導電材粒子がpH調整剤で覆われていることから、連結部の正極活物質体に接触している表面層の一部においても、導電材粒子がpH調整剤で覆われていると推定できる。それにより、電解液が連結部を通って正極活物質体の表面に接しにくくなる。つまり、連結部に対する電解液の浸みこみやすさを確保しつつ、電解液が連結部を通って正極活物質体に接触するのを抑制できる。電解液が正極活物質体に接しにくいことにより、高電圧で電池が使用される場合でも電解液が電気分解しにくくなる。よって、従来の非水電解液二次電池に比べて、高電圧で電池を使用しても、電解液の電気分解による電池の劣化を抑制できる。
【0017】
以上により、正極の表面の電子顕微鏡画像において、連結部が、その表面に、粒状感のある粒状感表面部と、粒状感表面部より粒状感の無い非粒状感表面部とを有することで、リチウムとニッケルを含む正極活物質体を使用した従来の非水電解液二次電池用正極に比べて、電池特性を高めつつ、電池の耐久性を高めることができる。
【0018】
(2)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)の構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像の各々において、前記非粒状感表面部は、前記導電材粒子の少なくとも一部を覆った前記pH調整剤を含む。
【0019】
上記構成によると、非粒状感表面部の少なくとも一部で、導電材粒子がpH調整剤により覆われている。連結部は、その表面に、上記非粒状感表面部を有することにより、連結部における導電材粒子同士の連結が切れにくくなるため、充放電効率を高められる。さらに、正極活物質体にクラックが発生しにくくなるため、正極の劣化を抑制できる。加えて、電解液が電気分解しにくくなるため、電池の劣化を抑制できる。
【0020】
(3)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)又は(2)の構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像の各々における前記粒状感表面部の面積および前記非粒状感表面部の面積が、それぞれ、前記直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。
【0021】
上記構成によると、電子顕微鏡画像における粒状感表面部の面積および非粒状感表面部の面積がある程度大きい。よって、粒状感表面部および非粒状感表面部を有することにより得られる効果を、より確実に得ることができる。
【0023】
前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像に含まれる第1の電子顕微鏡画像に対して、前記電子顕微鏡画像を凹部を示す暗領域と凸部を示す明領域に区別する二値化処理を行った場合に、前記第1の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、前記第1の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率よりも小さいことにより、以下の効果が得られる。
粒状感がない領域は、二値化処理による暗領域の比率が小さい。そのため、ある1つの電子顕微鏡画像(第1の電子顕微鏡画像)において、非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率よりも小さくなる傾向にある。電子顕微鏡画像(第1の電子顕微鏡画像)を二値化処理することにより、第1の電子顕微鏡画像から目視で判断する非粒状感表面部および粒状感表面部の粒状感の有無と程度を、非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率および粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率という数値によって比較できる。
【0024】
(4)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(3)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像に含まれ、拡大倍率、電子像の種類および加速電圧が同じであって撮影対象が異なる第2の電子顕微鏡画像および第3の電子顕微鏡画像において、それぞれ、前記連結部の表面に、前記粒状感表面部と前記非粒状感表面部が確認され、前記第2の電子顕微鏡画像および前記第3の電子顕微鏡画像に対して、それぞれ、前記電子顕微鏡画像を凹部を示す暗領域と凸部を示す明領域に区別する二値化処理を行った場合に、前記第2の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、前記第3の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率よりも小さい。
【0025】
粒状感がない領域は、二値化処理による暗領域の比率が小さい。そのため、ある電子顕微鏡画像(第2の電子顕微鏡画像)における非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、別の電子顕微鏡画像(第3の電子顕微鏡画像)における粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率よりも小さくなる傾向にある。第2の電子顕微鏡画像および第3の電子顕微鏡画像を二値化処理することにより、正極の表面の離れた位置にある非粒状感表面部および粒状感表面部の目視で判断される粒状感の程度を、非粒状感表面部の暗領域の比率および粒状感表面部の暗領域の比率という数値によって比較できる。
【0026】
(5)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(4)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記第1の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部の面積が、前記直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上であり、前記第1の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部の面積が、前記直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。
前記第2の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部の面積が、前記直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上であり、前記第3の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部の面積が、前記直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。
【0027】
上記構成によると、電子顕微鏡画像における非粒状感表面部において、二値化処理により暗領域の面積の比率を求める領域がある程度大きい。また、電子顕微鏡画像における粒状感表面部において、二値化処理により暗領域の面積の比率を求める領域がある程度大きい。よって、非粒状感表面部と粒状感表面部の目視で判断される粒状感の程度を、暗領域の面積の比率によって確実に数値化できる。そのため、特に粒状感がない部分と、粒状感のない部分の粒状感の程度を数値で比較できるという効果が確実に得られる。
【0028】
(6)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(5)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記第1の電子顕微鏡画像又は前記第2の電子顕微鏡画像の一方である第4の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、前記第4の電子顕微鏡画像全体に占める前記暗領域の面積の比率、および、前記第4の電子顕微鏡画像と電子像の種類および加速電圧が同じであって撮影対象が異なる前記非水電解液二次電池用正極の表面が撮影された第5の電子顕微鏡画像を、前記二値化処理して得られた、前記第5の電子顕微鏡画像全体に占める前記暗領域の面積の比率の少なくとも一方より小さい。
【0029】
正極の表面の電子顕微鏡画像(第4の電子顕微鏡画像および第5の電子顕微鏡画像)には、正極活物質体同士の隙間、正極活物質体と連結部との隙間、および、連結部の一部と連結部の他の部分との隙間が存在する。電子顕微鏡画像におけるこのような隙間は、二値化処理によって暗領域に含まれる。電子顕微鏡画像全体に占める暗領域の面積の比率は、ゼロよりもある程度大きい。ある電子顕微鏡画像(第4の電子顕微鏡画像)における非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、その電子顕微鏡画像(第4の電子顕微鏡画像)又はその電子顕微鏡画像と異なる第5電子顕微鏡画像全体に占める暗領域の面積の比率より小さい。よって、非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、大き過ぎない。それにより、連結部における導電材粒子同士の連結が切れにくくなるため、充放電効率を高められる。さらに、正極活物質体にクラックが発生しにくくなるため、正極の劣化を抑制できる。加えて、電解液が電気分解しにくくなるため、電池の劣化を抑制できる。
【0030】
(7)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(6)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記第1の電子顕微鏡画像又は前記第3の電子顕微鏡画像の一方である第6の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、前記第6の電子顕微鏡画像全体に占める前記暗領域の面積の比率、および、前記第6の電子顕微鏡画像と電子像の種類および加速電圧が同じであって撮影対象が異なる前記非水電解液二次電池用正極の表面が撮影された第7の電子顕微鏡画像を、前記二値化処理して得られた、前記第7の電子顕微鏡画像全体に占める前記暗領域の面積の比率の少なくとも一方以上である。
【0031】
正極の表面の電子顕微鏡画像(第6の電子顕微鏡画像および第7の電子顕微鏡画像)には、正極活物質体同士の隙間、正極活物質体と連結部との隙間、および、連結部の一部と連結部の他の部分との隙間が存在する。電子顕微鏡画像におけるこのような隙間は、二値化処理によって暗領域に含まれる。そのため、電子顕微鏡画像全体に示す暗領域の面積の比率は、ゼロよりも大きいものの、極端に大きくなることはない。ある電子顕微鏡画像(第6の電子顕微鏡画像)における粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、その電子顕微鏡画像(第6の電子顕微鏡画像)又はその電子顕微鏡画像と異なる第7の電子顕微鏡画像全体に占める暗領域の面積の比率以上である。よって、粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、小さ過ぎない。それにより、連結部に電解液が浸みこみやすくなるため、連結部におけるリチウムイオンの移動の自由度を確保できる。よって、非粒状感表面部による電池の充放電効率の向上を妨げない。
【0032】
(8)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(7)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記第1の電子顕微鏡画像および前記第2の電子顕微鏡画像の一方における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、10%未満である。
【0033】
上記構成によると、非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、大き過ぎない。それにより、連結部における導電材粒子同士の連結が切れにくくなるため、充放電効率を高められる。さらに、正極活物質体にクラックが発生しにくくなるため、正極の劣化を抑制できる。加えて、電解液が電気分解しにくくなるため、電池の劣化を抑制できる。
【0034】
(9)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(8)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記第1の電子顕微鏡画像および前記第3の電子顕微鏡画像の少なくとも一方における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、10%以上である。
【0035】
上記構成によると、粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、小さ過ぎない。それにより、連結部に電解液が浸みこみやすくなるため、連結部におけるリチウムイオンの移動の自由度を確保できる。よって、非粒状感表面部による電池の充放電効率の向上を妨げない。
【0037】
(10)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(9)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。少なくとも1つの前記電子顕微鏡画像において、前記非粒状感表面部に、前記pH調整剤が存在し、前記導電材粒子が露出していない。
【0038】
この構成によると、非粒状感表面部に、導電材粒子が露出していないため、非粒状感表面部に導電材粒子の粒状感がほぼ存在しない。これにより、連結部が非粒状感表面部を有することにより得られる上記効果が得られる。
【0039】
(11)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(10)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記非水電解液二次電池用正極の表面における少なくとも部分的に一致しない複数箇所が撮影された複数の前記電子顕微鏡画像において、それぞれ、前記連結部の表面に、前記粒状感表面部と前記非粒状感表面部が確認される。
【0040】
この構成によると、正極の表面の離れた複数箇所において、連結部は、非粒状感表面部と粒状感表面部を有する。よって、連結部の非粒状感表面部および粒状感表面部は、電子顕微鏡画像の撮影の仕方によって偶然にできたものではない。
【0041】
(12)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(11)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記正極活物質粒子に含まれる金属元素に占めるニッケルの割合が、50モル%以上である。
【0042】
この構成によると、非水電解液二次電池用正極を用いた非水電解液二次電池の充放電容量をより高めることができる。
【0043】
(13)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(12)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記正極活物質粒子に含まれる金属元素に占めるニッケルの割合が、80モル%以上である。
【0044】
この構成によると、非水電解液二次電池用正極を用いた非水電解液二次電池の充放電容量をより一層高めることができる。
【0045】
(14)本発明の非水電解液二次電池は、上述の(1)~(13)のいずれかの非水電解液二次電池用正極と、負極と、非水電解液とを備えることを特徴とする。
【0046】
(17)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(4)の構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記第1の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率は、前記第1の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率の半分以下であることが好ましい。
【0047】
上記構成によると、第1の電子顕微鏡画像おける非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、大き過ぎない。それにより、連結部における導電材粒子同士の連結が切れにくくなるため、充放電効率を高められる。さらに、正極活物質体にクラックが発生しにくくなるため、正極の劣化を抑制できる。加えて、電解液が電気分解しにくくなるため、電池の劣化を抑制できる。
また、第1の電子顕微鏡画像おいて、非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率の半分以下であるとは、言い換えると、第1の電子顕微鏡画像において、粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が、非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率の2倍以上である。したがって、粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、小さ過ぎない。それにより、連結部に電解液が浸みこみやすくなるため、連結部におけるリチウムイオンの移動の自由度を確保できる。よって、非粒状感表面部による電池の充放電効率の向上を妨げない。
【0048】
(18)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(5)の構成に加えて以下の構成を有することが好ましい。前記第2の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、前記第3の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率の半分以下であることが好ましい。
【0049】
上記構成によると、第2の電子顕微鏡画像おける非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、大き過ぎない。それにより、連結部における導電材粒子同士の連結が切れにくくなるため、充放電効率を高められる。さらに、正極活物質体にクラックが発生しにくくなるため、正極の劣化を抑制できる。加えて、電解液が電気分解しにくくなるため、電池の劣化を抑制できる。
また、第2の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が、第3の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率の半分以下であるとは、言い換えると、第3の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の少なくとも一部に占める前記暗領域の面積の比率が、第2の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率の2倍以上である。したがって、粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、小さ過ぎない。それにより、連結部に電解液が浸みこみやすくなるため、連結部におけるリチウムイオンの移動の自由度を確保できる。よって、非粒状感表面部による電池の充放電効率の向上を妨げない。
【0050】
(19)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(18)のいずれかの構成に加えて以下の構成を有することが好ましい。前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像の各々における前記粒状感表面部が、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域を含み、前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像の各々における前記非粒状感表面部の面積が、前記粒状感表面部における、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む前記領域の面積以上である。
【0051】
上記構成によると、電子顕微鏡画像における粒状感表面部の面積および非粒状感表面部の面積がある程度大きい。よって、粒状感表面部および非粒状感表面部を有することにより得られる効果を、より確実に得ることができる。
【0052】
(20)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(19)のいずれかの構成に加えて以下の構成を有することが好ましい。前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像の各々における前記粒状感表面部が、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域を含み、前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像の各々における前記非粒状感表面部が、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域を含む。
【0053】
上記構成によると、電子顕微鏡画像における粒状感表面部の面積および非粒状感表面部の面積がある程度大きい。よって、粒状感表面部および非粒状感表面部を有することにより得られる効果を、より確実に得ることができる。
【0054】
(21)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(4)の構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記第1の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部が、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域を含み、前記第1の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部の面積が、前記粒状感表面部における、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む前記領域の面積以上である。
【0055】
上記構成によると、電子顕微鏡画像における粒状感表面部において、二値化処理により暗領域の面積の比率を求める領域がある程度大きい。また、電子顕微鏡画像における非粒状感表面部において、二値化処理により暗領域の面積の比率を求める領域がある程度大きい。よって、粒状感表面部と非粒状感表面部の目視で判断される粒状感の程度を、暗領域の面積の比率によって確実に数値化できる。そのため、特に粒状感がない部分と、粒状感のない部分の粒状感の程度を数値で比較できるという効果が確実に得られる。
【0056】
(22)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(4)の構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記第1の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部が、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域であり、前記第1の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部が、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域である。
【0057】
上記構成によると、電子顕微鏡画像における粒状感表面部において、二値化処理により暗領域の面積の比率を求める領域がある程度大きい。また、電子顕微鏡画像における非粒状感表面部において、二値化処理により暗領域の面積の比率を求める領域がある程度大きい。よって、粒状感表面部と非粒状感表面部の目視で判断される粒状感の程度を、暗領域の面積の比率によって確実に数値化できる。そのため、特に粒状感がない部分と、粒状感のない部分の粒状感の程度を数値で比較できるという効果が確実に得られる。
【0058】
(23)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(5)の構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記第3の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部が、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域を含み、前記第2の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部の面積が、前記粒状感表面部における、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域である。
【0059】
上記構成によると、電子顕微鏡画像における非粒状感表面部において、二値化処理により暗領域の面積の比率を求める領域がある程度大きい。また、電子顕微鏡画像における粒状感表面部において、二値化処理により暗領域の面積の比率を求める領域がある程度大きい。よって、非粒状感表面部と粒状感表面部の目視で判断される粒状感の程度を、暗領域の面積の比率によって確実に数値化できる。そのため、特に粒状感がない部分と、粒状感のない部分の粒状感の程度を数値で比較できるという効果が確実に得られる。
【0060】
(24)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(5)の構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記第3の電子顕微鏡画像における前記粒状感表面部の前記少なくとも一部が、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域を含み、前記第2の電子顕微鏡画像における前記非粒状感表面部の前記少なくとも一部が、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む。
【0061】
上記構成によると、電子顕微鏡画像における非粒状感表面部において、二値化処理により暗領域の面積の比率を求める領域がある程度大きい。また、電子顕微鏡画像における粒状感表面部において、二値化処理により暗領域の面積の比率を求める領域がある程度大きい。よって、非粒状感表面部と粒状感表面部の目視で判断される粒状感の程度を、暗領域の面積の比率によって確実に数値化できる。そのため、特に粒状感がない部分と、粒状感のない部分の粒状感の程度を数値で比較できる効果が確実に得られる。
【0062】
(25)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(24)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。前記少なくとも1つの電子顕微鏡画像は、2,000倍以上8,000倍以下の拡大倍率で撮影された画像である。
【0063】
電子顕微鏡画像の拡大倍率が、2,000倍以上8,000倍以下であることにより、電子顕微鏡画像における粒状感の有無を目視で確認できる。
【0064】
(26)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(25)のいずれかの構成に加え、以下の構成を有することが好ましい。前記正極がシート状である。直径3mmの円筒形マンドレルを使用し、JIS K5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験において、前記正極活物質体および前記連結部が前記集電体から剥離されないような接続強度で、前記正極活物質体および前記連結部が前記集電体に接続されている。
【0065】
この構成によると、非水電解液二次電池の製造過程および使用時に、正極活物質体および連結部が集電体から剥離しにくい。また、剥離の要因となる集電体の腐食が生じていない。これらにより、非水電解液二次電池用正極を用いた非水電解液二次電池の充放電効率の低下を抑制できる。よって、非水電解液二次電池の耐久性が高い。なお、「JIS K5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験」とは、塗膜の機械的性質に関する試験方法の一種であって、円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験である。
【0066】
(27)本発明の1つの観点によると、本発明の非水電解液二次電池用正極は、上記(1)~(26)のいずれかの構成に加え、以下の構成を有することが好ましい。前記非水電解液二次電池用正極を用いてハーフセルを作製した場合に、前記ハーフセルの25±2℃での正極活物質粒子の重量当たりの0.1C放電容量が、前記正極活物質粒子の材質、前記正極活物質粒子の径および前記正極活物質体の径に依存する最大放電容量の90%以上である。
【0067】
この構成によると、非水電解液二次電池用正極を用いて作製されたハーフセルの0.1C放電容量は、実用化に十分に耐えることができるレベルである。
【0068】
<用語の定義>
本発明において、「正極活物質粒子」とは、正極活物質の一次粒子である。本発明において、「正極活物質体」とは、正極活物質の一次粒子が凝集して形成された二次粒子である。
【0069】
本発明において、「導電材粒子」とは、球状またはほぼ球状の物に限らない。本発明において、「導電材粒子」は、例えば、棒状であってもよく、板状であってもよい。本発明において、「導電材粒子」は、複数の粒が凝集することにより一つの塊になったものでもよい。
【0070】
本発明において、「粒状」とは、球状またはほぼ球状の物に限らない。本発明において、「粒状」とは、複数の粒が凝集した一つの塊状のものでもよい。
【0071】
本発明において、「直径が1μm以下の導電材粒子」は、直径が1μm以下である、導電性を有する物質である。
本発明の導電材粒子と同じ種類の物質の直径が公知である場合、本発明の「導電材粒子の直径」は、本発明の導電材粒子と同じ種類の物質の公知の直径であってもよい。導電材粒子が公知の物質と同じ種類であるかは、例えば、導電材粒子の組成および公知の物質の組成、又は、電子顕微鏡に写った導電材粒子の形状および公知の物質の形状から判断される。公知の直径とは、例えば、文献又は辞典に記載された直径である。
本発明の「導電材粒子の直径」は、電子顕微鏡画像に映っている導電材粒子の輪郭(外形)から得られる直径であってもよい。
例えば、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、導電材粒子の表面が映っているとき、本発明の「導電材粒子の直径」は、その電子顕微鏡画像に映ったその導電材粒子の輪郭(外形)に囲まれた面積と同一面積を有する円の直径でもよい。電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の面積相当径を算出することにより、導電材粒子の直径が簡易に得られる。
非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、導電材粒子の表面が映っているとき、本発明の「導電材粒子の直径」は、その電子顕微鏡画像に映ったその導電材粒子の最大長さでもよい。電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の最大長さを測定することにより、導電材粒子の直径が簡易に得られる。
非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、2つ以上の導電材粒子の表面が映っているとき、2つ以上の導電材粒子の直径のうち、最も大きい直径が1μm以下である。
導電材粒子の二次元の形状は、円形状でもよく、円形状でなくてもよい。導電材粒子の二次元の形状とは、導電材粒子をある方向から見たときの導電材粒子の形状、または、導電材粒子の断面の形状である。例えば、非水電解液二次電池用正極の表面および/または断面の電子顕微鏡画像に映った導電材粒子は、円形状でもよく、円形状でなくてもよい。導電材粒子の三次元の形状は、球状でもよく、球状でなくてもよい。
直径が1μm以下の導電材粒子が、導電材粒子の径方向に対して直交する方向に厚さを有する場合、「直径が1μm以下の導電材粒子」は、厚さが1μmを超える導電材粒子でもよく、厚さが1μm以下の導電材粒子でもよい。直径が1μm以下の導電材粒子が、導電材粒子の径方向に対して交差する方向に長尺である場合、「直径が1μm以下の導電材粒子」は、長手方向長さが1μmを超える導電材粒子でもよく、長手方向長さが1μm以下の導電材粒子でもよい。導電材粒子の径方向に対して交差する方向に長尺であるとは、例えば、導電材粒子の径方向に対して直交する方向に長尺であることでもよい。
【0072】
「直径が1μm以下の導電材粒子」は、例えば、カーボンブラック、微小なグラファイトおよびカーボンナノチューブである。カーボンブラック、微小なグラファイトおよびカーボンナノチューブは、直径が1μm以下の導電材粒子であることが公知である。連結部に、直径が1μm以下の導電材が1種類だけ含まれていてもよい。連結部に、直径が1μm以下の導電材粒子が2種類以上含まれていてもよい。例えば、連結部は、その表面に、カーボンブラック、微小なグラファイトおよびカーボンナノチューブから選択される1種類または2種類以上の導電材粒子の粒状感がある部分を有してもよい。
【0073】
「直径が1μm以下の導電材粒子」がカーボンブラックである場合、カーボンブラックは、ドメインでもよく、アグリゲートでもよい。アグリゲートは、ドメインが凝集した凝集体である。アグリゲートは複数のドメインが鎖状に連結したストラクチャー構造である。ドメインが球状である場合、ドメインの直径として、球の直径を用いることができる。ドメインが球状でない場合、ドメインの直径として、例えば、ドメインの最大長さを用いることができる。ドメインの直径は、1μm以下である。ドメインの直径としてドメインの最大長さを用いる場合、ドメインの最大長さは1μm以下である。アグリゲートが球状である場合、アグリゲートの直径として、球の直径を用いることができる。アグリゲートが球状でない場合、アグリゲートの直径として、例えば、アグリゲートの最大長さを用いることができる。アグリゲートの直径は、1μm以下である。アグリゲートの直径としてアグリゲートの最大長さを用いる場合、アグリゲートの最大長さは1μm以下である。
連結部において、ドメインは、ドメイン単独で存在してもよく、アグリゲートの一部として存在してもよく、アグロメレートの一部として存在してもよい。アグロメレートとは、アグリゲートが凝集した凝集体である。連結部において、アグリゲートは、アグリゲート単独で存在してもよく、アグロメレートの一部として存在してもよい。
【0074】
微小なグラファイトが球状である場合、微小なグラファイトの直径として、球の直径を用いてもよい。微小なグラファイトが球状でない場合、微小なグラファイトの直径として、例えば、そのグラファイトの最大長さを用いてもよい。微小なグラファイトの直径は、1μm以下である。微小なグラファイトの直径として微小なグラファイトの最大長さを用いる場合、微小なグラファイトの最大長さが1μm以下である。
【0075】
カーボンナノチューブは、単層あるいは多層のグラフェンが同軸管状になった物質である。グラフェンは、グラフェンシートと呼ばれることがある。グラフェンは、炭素原子の六員環が平面状又は略平面状に連なった構造を有する。グラフェンにおいて、炭素原子の六員環が平面状に連なった面の直径は1μm以上である。したがって、グラフェンは、「直径が1μm以下の導電材粒子」でない。しかし、単層あるいは多層のグラフェンが同軸管状になったカーボンナノチューブは、筒状に形成されている。カーボンナノチューブの筒の直径は1μm以下であるため、カーボンナノチューブは「直径が1μm以下の導電材粒子」である。なお、導電材粒子が筒状である場合、導電材粒子の筒の軸方向長さは、導電材粒子の直径ではない。したがって、筒状のカーボンナノチューブの軸方向長さは、導電材粒子の直径ではない。
連結部にカーボンナノチューブが含まれる場合、カーボンナノチューブは、軸が直線状に延在した状態で存在してもよく、軸が直線状でない状態で存在してもよい。軸が直線状でない状態とは、例えば、軸が湾曲した状態でもよく、軸が折れ曲がった状態でもよい。
カーボンナノチューブの軸方向に直交する面においてカーボンナノチューブの輪郭(外形)が円形である場合、カーボンナノチューブの直径として、カーボンナノチューブの軸方向に直交する面におけるカーボンナノチューブの輪郭の直径を用いることができる。この場合、カーボンナノチューブの軸方向に直交する面におけるカーボンナノチューブの輪郭の直径は、カーボンナノチューブの軸方向に直交する面の外径である。ここで、カーボンナノチューブの軸方向に直交する面とは、カーボンナノチューブの各位置において、各位置における軸方向に直交する面である。カーボンナノチューブの軸が直線状である場合、カーボンナノチューブのすべての位置において、軸方向が同じ方向である。カーボンナノチューブの軸が直線状でない場合、カーボンナノチューブの各位置における軸方向が同じ方向でないことがある。
カーボンナノチューブの軸方向に直交する面におけるカーボンナノチューブの輪郭が円形でない場合、カーボンナノチューブの直径として、例えば、カーボンナノチューブの軸方向に直交する面におけるカーボンナノチューブの輪郭に囲まれた面積と同一面積に相当する円の直径を用いてもよく、カーボンナノチューブの軸方向に直交する面におけるカーボンナノチューブの輪郭の最大長さを用いてもよい。カーボンナノチューブの直径は、1μm以下である。カーボンナノチューブの直径として、カーボンナノチューブの軸方向に直交する面におけるカーボンナノチューブの輪郭の最大長さを用いる場合、カーボンナノチューブの輪郭の最大長さは1μm以下である。通常、カーボンナノチューブの軸方向に直交する面におけるカーボンナノチューブの直径は、100nm以下である。通常、カーボンナノチューブの軸方向に直交する面におけるカーボンナノチューブの輪郭の最大長さは、100nm以下である。カーボンナノチューブとして、例えば軸方向の長さが10μm以下のカーボンナノチューブがある。上述したように、カーボンナノチューブの軸方向長さはカーボンナノチューブの直径でない。したがって、カーボンナノチューブの軸方向の長さは10μmを超えてもよい。カーボンナノチューブの軸方向長さが1μmを超えてもよい。カーボンナノチューブの軸方向長さが1μmを超えても、カーボンナノチューブの直径は1μm以下であるため、カーボンナノチューブは、直径が1μm以下の導電材粒子に含まれる。
【0076】
本発明において、「直径が1μm以下の導電材粒子、および、pH調整剤を含み、前記導電材粒子以外に導電性を有する物質を含まない連結部」とは、連結部が、直径が1μm以下の導電材粒子、および、pH調整剤を含むことである。「直径が1μm以下の導電材粒子、および、pH調整剤を含み、前記導電材粒子以外に導電性を有する物質を含まない連結部」とは、連結部が、直径が1μm以下の導電材粒子以外の導電性を有する物質を含まないことである。本発明において、「正極活物質と、連結部と、バインダーと、集電体とを有する非水電解液二次電池用正極」における「連結部」はバインダーを含まない。
【0077】
本発明において、「直径が1μm以下の導電材粒子、および、pH調整剤を含む連結部」とは、連結部が、直径が1μm以下の導電材粒子を2つ以上含んでいる。2つ以上の直径が1μm以下の導電材粒子は同じ種類の導電材粒子でもよく、異なる種類の導電材粒子でもよい。
【0078】
連結部が「直径が1μm以下の導電材粒子を含む連結部」であるか否かは、以下の方法で判断できる。以下の条件のいずれかを満たすときに、連結部が「直径が1μm以下の導電材粒子を含む連結部」であると判断できる。
第1の条件は、連結部に1種類の導電材粒子が含まれる場合に、連結部に含まれる複数の導電材粒子のうち、少なくとも1つの導電材粒子の直径が1μm以下である。
第2の条件は、連結部に複数種類の導電材粒子が含まれる場合、連結部に含まれる各種類の複数の導電材粒子のうち、少なくとも1つの導電材粒子の直径が1μm以下である。つまり、同じ種類の複数の導電材粒子のうち、少なくとも1つの導電材粒子の直径が1μm以下であって、且つ、各種類の少なくとも1つの導電材粒子の直径が1μm以下である。
【0079】
連結部に含まれる導電材粒子の直径が1μm以下であるか否かは、以下の方法で判断できる。以下の条件の少なくとも1つを満たすときに、連結部に含まれる少なくとも1つの導電材粒子の直径が1μm以下であると判断できる。
第1の条件は、連結部に含まれる導電材粒子と同じ種類の物質の直径が公知である場合に、その公知の直径が1μm以下である。つまり、この場合は、公知の直径を、本発明における「導電材粒子の直径」とする。導電材粒子が公知の物質と同じ種類であるかの判断の定義は、上記と同様である。
第2の条件は、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像に、少なくとも1つの導電材粒子の表面が映っている場合に、その少なくとも1つの導電材粒子の輪郭に囲まれた面積と同一面積を有する円の直径が1μm以下である。つまり、この場合は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の輪郭に囲まれた面積と同一面積を有する円の直径を、本発明における「導電材粒子の直径」とする。
第3の条件は、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像に、少なくとも1つの導電材粒子の表面が映っている場合に、その少なくとも1つの導電材粒子の最大長さが1μmである。つまり、この場合は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の最大長さを、本発明における「導電材粒子の直径」とする。
【0080】
本発明において、「連結部に含まれるpH調整剤」は、上記(1)を満たすpH調整剤であれば、pH調整剤の種類は限定されない。
本発明において、「連結部に含まれるpH調整剤」は、1種類の化合物だけを含んでいてもよく、2種類以上の化合物を含んでいてもよい。
本発明において、「pH調整剤を含む連結部」とは、1種類のpH調整剤を含む連結部であってもよく、2種類以上のpH調整剤を含む連結部であってもよい。
【0081】
本発明において、「導電材粒子の少なくとも一部を覆ったpH調整剤」とは、1個の導電材粒子の少なくとも一部を覆ったpH調整剤でもよく、2個以上の導電材粒子のそれぞれの少なくとも一部を覆ったpH調整剤でもよい。
【0082】
本発明において、「正極活物質体同士を連結する連結部」とは、正極活物質体同士の間に存在し、この2つの正極活物質体に接続された部分だけを指すのではない。連結部は、正極活物質体同士の間に存在し、且つ、この2つの正極活物質体に接続された第1部分と、この第1部分と繋がる第2部分も含む。第2部分は、いずれか2つの正極活物質体の間に配置されつつ、この2つの正極活物質体の一方又は両方に接続されなくてもよい。正極が有する連結部は、1つである。連結部は、独立した複数の部分で構成されていてもよく、全て繋がった1つの物であってもよい。
【0083】
本発明において、「水溶性のバインダー」とは、水に溶解可能なバインダーである。本発明において、「水分散性のバインダー」とは、水に分散可能なバインダーである。
【0084】
本発明において、「非水電解液」とは、非水溶媒(水を含まない溶媒)に電解質を溶解させた電解液である。本発明において、「二次電池」とは、充電および放電を繰り返し可能な電池である。本発明において、「非水電解液二次電池」とは、非水電解液を備えた二次電池である。
【0085】
本発明において、「非水電解液二次電池用正極の表面」とは、非水電解液二次電池用正極において正極活物質体および連結部が存在する面である。「非水電解液二次電池用正極の表面」は、集電体だけが存在する面ではない。
【0086】
本発明において、「電子顕微鏡画像」とは、連結部を観察できるように加速電圧などの撮影条件を適切に設定して電子顕微鏡で撮影した画像である。本発明において「電子顕微鏡写真」は、バインダーが映らない条件で撮影された画像であってもよく、バインダーが映る条件で撮影された画像でもよい。本発明において、「電子顕微鏡画像」は、バインダーが映っていない電子顕微鏡でもよく、バインダーが映っている電子顕微鏡でもよい。「バインダーが映っていない電子顕微鏡」とは、バインダーの存在しない部分を撮影した画像という意味ではない。
【0087】
本発明において、「1つの電子顕微鏡画像において、連結部は、その表面に、粒状感表面部と、非粒状感表面部とを有する」とは、1つの電子顕微鏡画像において、連結部が、その表面に、1つの非粒状感表面部と、上述の(1)の構成要件を満たす1つの粒状感表面部とを有する場合に限らない。1つの電子顕微鏡画像において、連結部が、その表面に、1つの非粒状感表面部と、上述の(1)の構成要件を満たす2つ以上の粒状感表面部を有してもよい。複数の粒状感表面部のうちのいずれか2つの粒状感表面部は、部分的に重複してもよい。本発明において、「粒状感表面部」は、上述の(1)の構成要件を満たせば、連結部内に自由に設定できる。つまり、粒状感表面部は、この粒状感表面部と粒状感の程度がほぼ同じ領域に隣り合っていてもよい。また、粒状感表面部は、この粒状感表面部と粒状感の程度が異なる領域に隣り合っていてもよい。粒状感表面部は、この粒状感表面部と粒状感の程度が同じ領域と隣り合わないように設定してもよい。粒状感表面部の少なくとも一部が、連結部の他の領域と隣り合っていなくてもよい。粒状感表面部の少なくとも一部が、連結部以外の物質と隣り合っていてもよい。粒状感表面部の一部が、連結部の他の部分、正極活物質体およびバインダーと隣り合っていなくてもよい。
【0088】
本発明において、「1つの電子顕微鏡画像において、連結部は、その表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部とを有する」とは、1つの電子顕微鏡画像において、連結部が、その表面に、1つの粒状感表面部と、上述の(1)の構成要件を満たす1つの非粒状感表面部とを有する場合に限らない。1つの電子顕微鏡画像において、連結部が、その表面に、1つの粒状感表面部と、上述の(1)の構成要件を満たす2つ以上の非粒状感表面部を有してもよい。1つの電子顕微鏡画像において、連結部が、その表面に、2つ以上の非粒状感表面部を有してもよい。複数の非粒状感表面部のうちのいずれか2つの非粒状感表面部は、部分的に重複してもよい。本発明において、「非粒状感表面部」とは、上述の(1)の構成要件を満たせば、連結部内に自由に設定できる。つまり、非粒状感表面部は、この非粒状感表面部と粒状感の程度が同じ領域に隣り合っていてもよい。また、非粒状感表面部は、この非粒状感表面部と粒状感の程度が異なる領域に隣り合っていてもよい。非粒状感表面部は、この非粒状感表面部と粒状感の程度が同じ領域と隣り合わないように設定してもよい。非粒状感表面部の少なくとも一部が、連結部における他の領域と隣り合っていなくてもよい。非粒状感表面部の少なくとも一部が、連結部以外の物質と隣り合っていてもよい。非粒状感表面部の一部が、連結部の他の部分、正極活物質体およびバインダーと隣り合っていなくてもよい。
【0089】
本発明において、「少なくとも1つの電子顕微鏡画像において、それぞれ、連結部は、その表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部とを有する」とは、1つの電子顕微鏡画像だけにおいて、連結部が、その表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部とを有する場合を含む。さらに、複数の電子顕微鏡画像において、それぞれ、連結部が、その表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部とを有する場合も含む。後者の場合、複数の電子顕微鏡画像でそれぞれ確認される非粒状感表面部は、同じ領域を撮影したものであってもよく、異なる領域を撮影したものであってもよい。同様に、複数の電子顕微鏡画像でそれぞれ確認される粒状感表面部は、同じ領域を撮影したものであっても異なる領域を撮影したものであってもよい。
【0090】
本発明において、「粒状感がある」とは、電子顕微鏡画像において、表面が粒状であることを視認できることを意味する。言い換えると、「粒状感がある」とは、電子顕微鏡画像において、表面に凹凸があることを視認できることを意味する。本発明において、「導電材粒子の粒状感がある」とは、電子顕微鏡画像において、本発明の導電材粒子のサイズと同レベルのサイズの凸を含む凹凸を視認できることを意味する。導電材粒子のサイズと同レベルのサイズの凸を含む凹凸とは、凸の頂点の間隔が導電材粒子の長さと同じ又は導電材粒子の長さに近い大きさであることを意味する。導電材粒子の三次元形状が球状である場合および/又は導電材粒子の二次元形状が円形状である場合、導電材粒子のサイズと同レベルのサイズの凸を含む凹凸とは、凸の頂点の間隔が導電材粒子の直径と同じ又は導電材粒子の直径に近い大きさであることを意味する。本発明において、「導電材粒子の粒状感がある粒状感表面部」とは、電子顕微鏡画像において、導電材粒子のサイズと同レベルのサイズの少なくとも1つの凸を含む凹凸が視認できる領域である。本発明における粒状感表面部という名称は、粒状表面部に変えてもよい。
本発明において、「導電材粒子の粒状感がある」および「粒状感がある」とは、電子顕微鏡画像において、導電材粒子の輪郭(外形)を目視により確認できることであってもよい。
【0091】
本発明において、「粒状感がない」とは、電子顕微鏡画像において、表面が粒状であることを視認できないことを意味する。本発明において、「粒状感表面部よりも粒状感がない」とは、電子顕微鏡画像において、本発明の導電材粒子のサイズと同レベルのサイズの凸を含む凹凸を視認できないことを意味する。導電材粒子のサイズと同レベルのサイズの凸を含む凹凸の定義は、上記と同様である。本発明における非粒状感表面部という名称は、非粒状表面部に変えてもよい。
【0092】
本発明において、「粒状感表面部よりも粒状感がない非粒状感表面部」とは、1つの電子顕微鏡画像における1つの非粒状感表面部が、同じ電子顕微鏡画像における1つの粒状感表面部よりも導電材粒子の粒状感がないことを意味する。1つの電子顕微鏡画像における1つの非粒状感表面部が、同じ電子顕微鏡画像における2つ以上の粒状感表面部よりも導電材粒子の粒状感がなくてもよい。1つの電子顕微鏡画像における1つの非粒状感表面部が、同じ電子顕微鏡画像における全ての粒状感表面部よりも導電材粒子の粒状感がなくてもよい。
本発明において、「粒状感表面部よりも粒状感がない」とは、目視により輪郭(外形)を確認できる導電材粒子の数が、粒状感表面部において目視により輪郭(外形)を確認できる導電材粒子の数よりも少ないことであってもよい。
本発明において、非粒状感表面部において目視により輪郭(外形)を確認できる導電材粒子の数が、粒状感表面部において目視により輪郭(外形)を確認できる導電材粒子の数よりも少ない場合、非粒状感表面部において、導電材粒子の輪郭(外形)を目視により確認できてもよく、導電材粒子の輪郭(外形)を目視により確認できなくてもよい。
粒状感が比較される2つの領域の面積は同じあってもよく、異なってもよい。粒状感が比較される2つの領域の面積はほぼ同じであることが好ましい。
【0093】
本発明において、「電子顕微鏡画像における粒状感表面部の面積が、直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である」とは、以下の3つの態様のいずれであってもよい。第1の態様は、電子顕微鏡画像における粒状感表面部の面積が、その粒状感表面部に含まれる、直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。粒状感表面部に直径が1μm以下の導電材粒子が複数種類含まれている場合、「導電材粒子の直径の1/2」とは、複数種類の導電材粒子のうち径が最も大きい導電材粒子の直径の1/2である。
第2の態様は、電子顕微鏡画像における粒状感表面部の面積が、電子顕微鏡画像における他の粒状感表面部に含まれる、直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。他の粒状感表面部に直径が1μm以下の導電材粒子が複数種類含まれている場合、「導電材粒子の直径の1/2」とは、複数種類の導電材粒子のうち径が最も大きい導電材粒子の直径の1/2である。
第3の態様は、電子顕微鏡画像における粒状感表面部の面積が、電子顕微鏡画像における非粒状感表面部に含まれる、直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。非粒状感表面部に直径が1μm以下の導電材粒子が複数種類含まれている場合、「導電材粒子の直径の1/2」とは、複数種類の導電材粒子のうち径が最も大きい導電材粒子の直径の1/2である。
【0094】
本発明において、「電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の面積が、直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である」とは、以下の3つの態様のいずれであってもよい。
第1の態様は、電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の面積が、その非粒状感表面部に含まれる、直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。非粒状感表面部に直径が1μm以下の導電材粒子が複数種類含まれている場合、「導電材粒子の直径の1/2」とは、複数種類の導電材粒子のうち径が最も大きい導電材粒子の直径の1/2である。
第2の態様は、電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の面積が、電子顕微鏡画像における他の非粒状感表面部に含まれる、直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。他の非粒状感表面部に直径が1μm以下の導電材粒子が複数種類含まれている場合、「導電材粒子の直径の1/2」とは、複数種類の導電材粒子のうち径が最も大きい導電材粒子の直径の1/2である。
第3の態様は、電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の面積が、電子顕微鏡画像における粒状感表面部に含まれる、直径が1μm以下の少なくとも一つの導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。粒状感表面部に直径が1μm以下の導電材粒子が複数種類含まれている場合、「導電材粒子の直径の1/2」とは、複数種類の導電材粒子のうち径が最も大きい導電材粒子の直径の1/2である。
【0095】
本発明において、「電子顕微鏡画像を凹部を示す暗領域と凸部を示す明領域に区別する二値化処理」とは、電子顕微鏡画像の明度又は輝度を閾値と比較して、電子顕微鏡画像の明度又は輝度を二値化する画像処理である。閾値は、電子顕微鏡画像において明らかに凹部である領域と、明らかに凸部である領域とを区別できる値であればよい。つまり、電子顕微鏡画像において明らかに凸部である領域を、暗領域に含めてしまうような閾値を使った二値化処理は、本発明における電子顕微鏡画像の二値化処理に含まれない。閾値は、電子顕微鏡画像ごとに変更してもよい。また、異なる電子顕微鏡画像に対して同じ閾値を用いてもよい。閾値は、非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率、粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率および電子顕微鏡画像全体に占める暗領域の面積の比率のそれぞれの算出において変更してもよい。また、非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率、粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率および電子顕微鏡画像全体に占める暗領域の面積の比率の算出に同じ閾値を用いてもよい。非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率と粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率を比較する場合、非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率の算出に用いる閾値と粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率の算出に用いる閾値は同じであることが好ましい。非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率と電子顕微鏡画像全体に占める暗領域の面積の比率を比較する場合、非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率の算出に用いる閾値と電子顕微鏡画像全体に占める暗領域の面積の比率の算出に用いる閾値は同じであることが好ましい。この場合の両者の閾値は異なっていてもよい。粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率と電子顕微鏡画像全体に占める暗領域の面積の比率を比較する場合、粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率の算出に用いる閾値と電子顕微鏡画像全体に占める暗領域の面積の比率の算出に用いる閾値は同じであることが好ましい。この場合の両者の閾値は異なっていてもよい。
「電子顕微鏡画像に対して二値化処理する」とは、電子顕微鏡画像全体に対して二値化処理することと、電子顕微鏡画像の一部に対して二値化処理することを含む。
【0096】
本発明において、「第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率よりも小さい」とは、第1の電子顕微鏡画像における1つの非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が、第1の電子顕微鏡画像における1つの粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率よりも小さいことを意味する。第1の電子顕微鏡画像における1つの非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が、第1の電子顕微鏡画像における2以上の粒状感表面部のそれぞれの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率よりも小さくてもよい。第1の電子顕微鏡画像における1つの非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が、第1の電子顕微鏡画像における全ての粒状感表面部のそれぞれの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率よりも小さくてもよい。
【0097】
本発明において、「第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部」とは、第1の電子顕微鏡画像における1つの非粒状感表面部の一部でもよく、第1の電子顕微鏡画像における1つの非粒状感表面部全体でもよい。本発明において、「第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部」が第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の一部である場合、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の一部は、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部内に自由に設定できる。つまり、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の一部は、第1の電子顕微鏡画像において暗領域の面積の比率がこの非粒状感表面部の一部とほぼ同じ領域に隣り合っていてもよい。第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の一部は、第1の電子顕微鏡画像において暗領域の面積の比率がこの非粒状感表面部の一部と異なる領域に隣り合っていてもよい。第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の一部は、第1の電子顕微鏡画像においてこの非粒状感表面部の一部と粒状感の程度がほぼ同じ領域に隣り合っていてもよい。第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の一部は、第1の電子顕微鏡画像においてこの非粒状感表面部の一部と粒状感の程度が異なる領域に隣り合っていてもよい。
本発明における「第2の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部」および「第4の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部」についても同じ定義が適用される。
【0098】
本発明において、「第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部」とは、第1の電子顕微鏡画像における1つの粒状感表面部の一部でもよく、第1の電子顕微鏡画像における1つの粒状感表面部全体でもよい。本発明において、「第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部」が第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の一部である場合、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の一部は、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部内に自由に設定できる。つまり、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の一部は、第1の電子顕微鏡画像において暗領域の面積の比率がこの粒状感表面部の一部とほぼ同じ領域に隣り合っていてもよい。第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の一部は、第1の電子顕微鏡画像において暗領域の面積の比率がこの粒状感表面部の一部と異なる領域に隣り合っていてもよい。第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の一部は、第1の電子顕微鏡画像においてこの粒状感表面部の一部と粒状感の程度が同じ領域に隣り合っていてもよい。第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の一部は、第1の電子顕微鏡画像においてこの粒状感表面部の一部と粒状感の程度が異なる領域に隣り合っていてもよい。
本発明における「第3の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部」および「第6の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部」についても同じ定義が適用される。
【0099】
本発明において、「電子顕微鏡画像における非粒状感表面部」は、その電子顕微鏡画像を二値化処理した場合に、少なくとも一部が、暗領域を有していてもよく、暗領域を有していなくてもよい。本発明において、「電子顕微鏡画像における粒状感表面部」は、その電子顕微鏡画像を二値化処理した場合に、少なくとも一部が、暗領域を有していてもよく、暗領域を有していなくてもよい。
【0100】
本発明において、「第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の面積」とは、この非粒状感表面部内に凹部を示す暗領域が有る場合、この暗領域の面積を含んでもよい。非粒状感表面部は、連結部の表面に存在する領域である。したがって、非粒状感表面部の少なくとも一部の面積は、連結部の表面の一部の面積である。
本発明における「第2の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の面積」および「第4の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の面積」についても同じ定義が適用される。
【0101】
本発明において、「第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の面積」とは、この粒状感表面部内に凹部を示す暗領域が有る場合、この暗領域の面積を含んでもよい。粒状感表面部は、連結部の表面に存在する領域である。したがって、粒状感表面部の少なくとも一部の面積は、連結部の表面の一部の面積である。
本発明における「第3の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の面積」および「第6の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の面積」についても同じ定義が適用される。
【0102】
第1の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に複数の非粒状感表面部が確認される場合、上述の(4)、(6)、(7)、(8)および(17)では、「第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率」と、他の比率又は数値との大小関係を特定している。上述の(4)、(6)、(7)、(8)および(17)における「第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率」と、他の比率又は数値との大小関係は、少なくとも1つの非粒状感表面部について成立する。第1の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認される全ての非粒状感表面部についてこの関係が成立してもよい。
【0103】
第1の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に複数の粒状感表面部が確認される場合、上述の(4)、(6)、(7)、(8)および(17)では、「第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率」と、他の比率又は数値との大小関係を特定している。上述の(4)、(6)、(7)、(8)および(17)における「第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率」と、他の比率又は数値との大小関係は、少なくとも1つの粒状感表面部について成立する。第1の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認される全ての粒状感表面部についてこの関係が成立してもよい。
【0104】
本発明において、「第2の電子顕微鏡画像と第3の電子顕微鏡画像は、撮影対象が異なる」とは、第2の電子顕微鏡画像の撮影対象の少なくとも一部が、第3の電子顕微鏡画像の撮影対象の少なくとも一部と異なることを意味する。なお、正極の表面の一部を撮影した場合、電子顕微鏡画像の撮影対象とは、その一部分だけをいい、この表面の他の部分は含まない。第2の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部のみが、第3の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部と同じであってもよい。
【0105】
本発明における「電子像の種類」は、電子顕微鏡によって検出される信号電子の種類によって決まる。例えば、試料から放出された二次電子が電子顕微鏡によって検出された場合、電子像の種類は二次電子像である。試料から放出された反射電子が電子顕微鏡によって検出された場合、電子像の種類は反射電子像である。
【0106】
本発明において、「第2の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が、第3の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率よりも小さい」とは、第2の電子顕微鏡画像における1つの非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が、第3の電子顕微鏡画像における1つの粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率よりも小さいことを意味する。第2の電子顕微鏡画像における1つの非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が、第3の電子顕微鏡画像における2つ以上の粒状感表面部のそれぞれの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率よりも小さくてもよい。第2の電子顕微鏡画像における1つの非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が、第3の電子顕微鏡画像における全ての粒状感表面部のそれぞれの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率よりも小さくてもよい。
【0107】
第2の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に複数の非粒状感表面部が確認される場合、本発明における「第2の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率」と他の比率又は数値との大小関係のうち、上述の(4)以外は、少なくとも1つの非粒状感表面部について成立する。第2の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認される全ての非粒状感表面部についてこの関係が成立してもよい。
【0108】
第3の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に複数の粒状感表面部が確認される場合、本発明における「第3の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率」と他の比率又は数値との大小関係のうち、上述の(4)以外は、少なくとも1つの粒状感表面部について成立する。第2の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認される全ての粒状感表面部についてこの関係が成立してもよい。
【0109】
本発明において、「第5の電子顕微鏡画像は、第4の電子顕微鏡画像と撮影対象が異なる」とは、第5の電子顕微鏡画像の撮影対象の少なくとも一部が、第4の電子顕微鏡画像の撮影対象の少なくとも一部と異なることを意味する。なお、正極の表面の一部を撮影した場合、電子顕微鏡画像の撮影対象とは、その一部分だけをいい、この表面の他の部分は含まない。第4の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部のみが、第5の電子顕微鏡画像の撮影対象の全部又は一部と同じであってもよい。第5の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部のみが、第4の電子顕微鏡画像の撮影対象の全部又は一部と同じであってもよい。例えば、第4の電子顕微鏡画像は、第5の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部を、第5の電子顕微鏡画像の拡大倍率より大きい拡大倍率で撮影したものであってもよい。
本発明における「第7の電子顕微鏡画像は、第6の電子顕微鏡画像と撮影対象が異なる」ことの定義も上記と同様である。
【0110】
第4の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に複数の非粒状感表面部が確認される場合、本発明における「第4の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率」と他の比率又は数値との大小関係のうち、上述の(6)以外は、少なくとも1つの非粒状感表面部について成立する。第4の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認される全ての非粒状感表面部についてこの関係が成立してもよい。
【0111】
第6の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に複数の粒状感表面部が確認される場合、本発明における「第6の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率」と他の比率又は数値との大小関係のうち、上述の(7)以外は、少なくとも1つの粒状感表面部について成立する。第6の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認される全ての粒状感表面部についてこの関係が成立してもよい。
【0112】
本発明における「第5の電子顕微鏡画像」は、粒状感表面部と非粒状感表面部が確認される電子顕微鏡画像であってもよく、粒状感表面部又は非粒状感表面部が確認される電子顕微鏡画像であってもよく、粒状感表面部と非粒状感表面部のいずれも確認されない電子顕微鏡画像であってもよい。本発明における「第7の電子顕微鏡画像」は、粒状感表面部と非粒状感表面部が確認される電子顕微鏡画像であってもよく、粒状感表面部又は非粒状感表面部が確認される電子顕微鏡画像であってもよく、粒状感表面部と非粒状感表面部のいずれも確認されない電子顕微鏡画像であってもよい。
【0113】
第2の電子顕微鏡画像の撮影対象は、第1の電子顕微鏡画像の撮影対象と同じでもよく、異なってもよい。第2の電子顕微鏡画像の撮影対象が第1の電子顕微鏡画像の撮影対象と同じ場合、第3の電子顕微鏡画像の撮影対象は、第1の電子顕微鏡画像の撮影対象と異なる。第2の電子顕微鏡画像の撮影対象が第1の電子顕微鏡画像の撮影対象と異なる場合、第3の電子顕微鏡画像の撮影対象は、第1の電子顕微鏡画像の撮影対象と同じでもよく、異なってもよい。つまり、第3の電子顕微鏡画像の撮影対象は、第1の電子顕微鏡画像の撮影対象と同じでもよく、異なってもよい。
【0114】
第4の電子顕微鏡画像が第1の電子顕微鏡画像である場合、第5の電子顕微鏡画像の撮影対象は、第1の電子顕微鏡画像の撮影対象と異なる。この場合、第5の電子顕微鏡画像の撮影対象は、第2の電子顕微鏡画像又は第3の電子顕微鏡画像の撮影対象と同じでもよく、異なってもよい。第4の電子顕微鏡画像が第2の電子顕微鏡画像の場合、第5の電子顕微鏡画像の撮影対象は、第2の電子顕微鏡画像の撮影対象と異なる。この場合、第5の電子顕微鏡画像の撮影対象は、第1の電子顕微鏡画像又は第3の電子顕微鏡画像の撮影対象と同じでもよく、異なってもよい。
【0115】
第6の電子顕微鏡画像が第1の電子顕微鏡画像である場合、第7の電子顕微鏡画像の撮影対象は、第1の電子顕微鏡画像の撮影対象と異なる。この場合、第7の電子顕微鏡画像の撮影対象は、第2の電子顕微鏡画像又は第3の電子顕微鏡画像の撮影対象と同じでもよく、異なってもよい。第6の電子顕微鏡画像が第3の電子顕微鏡画像の場合、第7の電子顕微鏡画像の撮影対象は、第3の電子顕微鏡画像の撮影対象と異なる。この場合、第7の電子顕微鏡画像の撮影対象は、第1の電子顕微鏡画像又は第2の電子顕微鏡画像の撮影対象と同じでもよく、異なってもよい。
【0116】
本発明において、「直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域」とは、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含むことを目視で確認できる領域である。目視で確認できるとは、例えば、電子顕微画像において目視で確認できるものでもよい。
【0117】
本発明において、「非粒状感表面部が、直径が1μm以下の導電材粒子を含む」とは、非粒状感表面部において、直径が1μm以下の導電材粒子を目視で確認することができるおよび/または非粒状感表面部において、直径が1μm以下の導電材粒子が露出していることである。「粒状感表面部が、直径が1μm以下の導電材粒子を含む」の定義についても、同様である。
【0118】
本発明において、「25±2℃での正極活物質粒子の重量当たりの0.1C放電容量」とは、25±2℃の環境下で、0.1Cの定電流定電圧充電(CCCV)を行った後、0.1Cの定電流放電を行った場合の正極活物質粒子の重量当たりの放電容量である。ここでの0.1Cの定電流定電圧充電とは、0.1Cの定電流で充電終止電圧まで充電してから、充電終止電圧で充電終止電流まで充電することである。0.1Cの定電流放電とは、0.1Cの定電流で放電終止電圧まで放電することである。0.1Cは、定電流放電した場合に10(=1/0.1)時間で放電終了となる電流値である。充電終止電圧とは、過充電による二次電池の機能低下に至る前の充電を行える充電電圧の最高値である。充電終止電流は、定電圧充電時に充電を終了する最小の充電電流である。放電終止電圧とは、過放電による二次電池の機能低下に至る前の放電を行える放電電圧の最低値である。放電容量とは、電池から取り出された電気量である。本明細書において、放電容量と充電容量の総称を、充放電容量という。充電容量は、電池が蓄えることができる電気量である。本明細書において、放電容量を充電容量により除算した割合を充放電効率という。充放電効率は、下記式によって示される。充放電効率の単位は、「%」である。
充放電効率=(放電容量÷充電容量)×100
電池の充放電効率が高い場合、電池の充放電容量を高いまま維持できる。電池の充放電効率が高い場合、電池の充放電容量も高い傾向にあるといえる。
本明細書において、初回充放電効率とは、初回の充放電における放電容量を、初回の充放電における充電容量により除算した割合である。電池の初回充放電効率が高い場合、電池の充放電容量も高い傾向にあるといえる。
【0119】
本発明において、「非水電解液二次電池用正極を用いて作製されたハーフセル」とは、正極として非水電解液二次電池用正極を用い、負極としてリチウムを使用したセルである。以下において、「非水電解液二次電池用正極を用いて作製されたハーフセル」を「正極のハーフセル」又は「正極ハーフセル」と称することがある。
【0120】
本発明において、「25±2℃での正極活物質粒子の重量当たりの0.1C放電容量が、最大放電容量の90%以上である」とは、25±2℃での正極活物質粒子の重量当たりの0.1C放電容量が、25±2℃での正極活物質粒子の重量当たりの0.1C放電容量の理論上の最大値の90%以上であることを意味する。本明細書において、25±2℃での正極活物質粒子の重量当たりの0.1C放電容量の理論上の最大値を、0.1C最大放電容量と称する場合がある。非水電解液二次電池の正極活物質粒子の重量当たりの0.1C最大放電容量は、正極活物質粒子の材質、正極活物質粒子の径および正極活物質体の径に依存する。例えば、正極活物質粒子がニッケルとコバルトとマンガンを含む場合、ニッケルの比率が大きいほど、正極活物質粒子の重量当たりの0.1C最大放電容量は大きくなる傾向がある。また、正極活物質粒子の径および正極活物質体の径の少なくとも一方の径が小さいほど、0.1C最大放電容量は大きくなる傾向がある。なお、0.1C以外の放電レートの放電容量も、正極活物質粒子の材質、正極活物質粒子の径および正極活物質体の径に依存する。
【0121】
下記の表1に、正極活物質粒子の種類(材質)ごとの0.1C最大放電容量を示す。表1に示す0.1C最大放電容量は、25±2℃の環境下で、電流0.1C、充電終止電圧4.3V、充電終止電流0.02Cで定電流定電圧充電を行った後、電流0.1C、放電終止電圧3.0Vで定電流放電を行った場合の正極活物質粒子重量当たりの放電容量である。表1に示す0.1C最大放電容量は、正極活物質粒子の径および正極活物質体の径を特定せずに算出したものである。表1に示す0.1C最大放電容量は、正極活物質粒子の径および正極活物質体の径が、正極活物質粒子の材質に応じた一般的な範囲である場合の値である。表1に示す0.1C最大放電容量は、正極のハーフセルを用いて測定された0.1C放電容量である。
【0122】
【0123】
ここで、「NCM」は、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの略称である。「NCM111」は、ニッケルとコバルトとマンガンを1:1:1の比率で含む。「NCM523」は、ニッケルとコバルトとマンガンを5:2:3の比率で含む。「NCM622」は、ニッケルとコバルトとマンガンを6:2:2の比率で含む。「NCM811」は、ニッケルとコバルトとマンガンを8:1:1の比率で含む。「NCA」は、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムの略称である。表1の「NCA」は、ニッケルとコバルトとアルミニウムを80:15:5で含む。例えば、正極活物質粒子が「NCM111」であって、0.1C放電容量が144mAh/gの場合、正極活物質粒子の径および正極活物質体の径を特定しなくても、0.1C放電容量が理論上の最大値の90%以上であるといえる。
【0124】
正極が表1に示す正極活物質粒子以外の正極活物質粒子を用いて作製された場合、その正極を用いて作製された電池の0.1C最大放電容量を、表1に示す0.1C最大放電容量を用いて求めることができる。
例えば、「NCM7,1.5,1.5」の0.1C最大放電容量を算出する場合を例に挙げて説明する。「NCM7,1.5,1.5」は、ニッケルとコバルトとマンガンを7:1.5:1.5の比率で含む。理論上、「NCM622」を50wt%と「NCM811」を50wt%とを混合すると、「NCM7,1.5,1.5」が得られる。そのため、以下の式から「NCM7,1.5,1.5」の0.1C最大放電容量を求めることができる。
「NCM7,1.5,1.5」の0.1C最大放電容量
=175(NCM622の0.1C最大放電容量の中間値)×0.5+195(NCM811の0.1C最大放電容量の中間値)×0.5
=185[mAh/g]
【0125】
また、任意組成の0.1C最大放電容量を算出する場合について説明する。理論上、任意組成の正極活物質粒子が、「NCM111」をa1[wt%]と、「NCM523」をa2[wt%]と、「NCM622」をa3[wt%]と、「NCM811」をa4[wt%]と、NCAをa5[wt%]とを混合することによって得られる場合、任意組成の正極活物質粒子は以下の式から求められる。
任意組成の0.1C最大放電容量
=155(NCM111の0.1C最大放電容量の中間値)×(a1/100)
+165(NCM523の0.1C最大放電容量の中間値)×(a2/100)
+175(NCM622の0.1C最大放電容量の中間値)×(a3/100)
+195(NCM811の0.1C最大放電容量の中間値)×(a4/100)
+195(NCAの0.1C最大放電容量の中間値)×(a5/100)
但し、0≦a1<100
0≦a2<100
0≦a3<100
0≦a4<100
0≦a5<100
a1+a2+a3+a4+a5=100
【0126】
本明細書において、複数の選択肢のうちの少なくとも1つ(一方)とは、複数の選択肢から考えられる全ての組み合わせを含む。複数の選択肢のうちの少なくとも1つ(一方)とは、複数の選択肢のいずれか1つであってもよく、複数の選択肢の全てであってもよい。例えば、AとBとCの少なくとも1つとは、Aのみであってもよく、Bのみであってもよく、Cのみであってもよく、AとBであってもよく、AとCであってもよく、BとCであってもよく、AとBとCであってもよい。
【0127】
本発明の非水電解液二次電池用正極および非水電解液二次電池は、請求の範囲において数を特定しておらず、英語に翻訳された場合に単数で表示される要素を、複数有していてもよい。本発明の非水電解液二次電池用正極および非水電解液二次電池は、請求の範囲において数を特定しておらず、英語に翻訳された場合に単数で表示される要素を、1つだけ有していてもよい。
【0128】
本発明において、含む(including)、有する(comprising)、備える(having)およびこれらの派生語は、列挙されたアイテムおよびその等価物に加えて追加的アイテムをも包含することが意図されて用いられている。
本発明において、取り付けられた(mounted)、接続された(connected)、結合された(coupled)、支持された(supported)という用語は、広義に用いられている。具体的には、直接的な取付、接続、結合、支持だけでなく、間接的な取付、接続、結合および支持も含む。さらに、接続された(connected)および結合された(coupled)は、物理的又は機械的な接続/結合に限られない。それらは、直接的なまたは間接的な電気的接続/結合も含む。
【0129】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0130】
本明細書において、「好ましい」という用語は非排他的なものである。「好ましい」は、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。本明細書において、「好ましい」と記載された構成は、少なくとも、上記(1)の構成により得られる上記効果を奏する。また、本明細書において、「してもよい」という用語は非排他的なものである。「してもよい」は、「してもよいがこれに限定されるものではない」という意味である。本明細書において、「してもよい」と記載された構成は、少なくとも、上記(1)の構成により得られる上記効果を奏する。
【0131】
本発明では、上述した好ましい構成を互いに組み合わせることを制限しない。本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されたまたは図面に図示された構成要素の構成および配置の詳細に制限されないことが理解されるべきである。本発明は、後述する実施形態以外の実施形態でも可能である。本発明は、後述する実施形態に様々な変更を加えた実施形態でも可能である。また、本発明は、後述する変形例を適宜組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0132】
本発明のリチウムとニッケルを含む正極活物質を使用した非水電解液二次電池用正極は、リチウムとニッケルを含む正極活物質を使用した従来の非水電解液二次電池用正極に比べて、電池特性を高めつつ、電池の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【
図1】本発明の実施形態の非水電解液二次電池用正極の斜視図と表面の一部拡大図と電子顕微鏡画像の模式図と従来の非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像の模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の具体例の非水電解液二次電池用正極が適用された非水電解液二次電池の断面斜視図である。
【
図3】本発明の実施例1の正極の表面の場所Xの2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図4】本発明の実施例1の正極の表面の場所Yの4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図5】本発明の実施例1のプレス加工前の正極の表面の場所Zおよび場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図6】本発明の実施例2の正極の表面の場所Xの2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図7】本発明の実施例2の正極の表面の場所Yの4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図8】本発明の実施例2のプレス加工前の正極の表面の場所Zおよび場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図9】比較例1の正極の表面の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図10】比較例1のプレス加工前の正極の表面の6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図11】比較例2の正極の表面の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図12】比較例2のプレス加工前の正極の表面の6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図13】比較例3の正極の表面の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図14】比較例3のプレス加工前の正極の表面の6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図15】本発明の実施例3の正極の表面の場所Xの2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図16】本発明の実施例3の正極の表面の場所Yの4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図17】本発明の実施例3のプレス加工前の正極の表面の場所Zおよび場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図18】比較例4の正極の表面の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図19】比較例4のプレス加工前の正極の表面の6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図20】本発明の実施例4の正極の表面の場所Xの2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図21】本発明の実施例4の正極の表面の場所Yの4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図22】本発明の実施例4のプレス加工前の正極の表面の場所Zおよび場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【
図23】比較例5の正極の表面の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0134】
(本発明の実施形態)
以下、本発明の実施形態の非水電解液二次電池用正極1について、
図1を参照しつつ説明する。以下、非水電解液二次電池用正極1を、単に、正極1と称する場合がある。非水電解液二次電池用正極1は、正極活物質体2と、バインダー3と、連結部5と、集電体6とを有する。正極活物質体2は、リチウムとニッケルを含む正極活物質粒子2aが凝集してなる。バインダー3は、水溶性又は水分散性である。連結部5は、正極活物質体2同士を連結している。連結部5は、導電材粒子4およびpH調整剤7を含む。導電材粒子4は、直径が1μm以下である、導電性を有する物質である。連結部5は、導電材粒子4以外に導電性を有する物質を含まない。非水電解液二次電池用正極1は、正極1の厚み方向にプレス加工されている。正極1の厚み方向とは、集電体6の厚み方向である。
【0135】
図1には、正極1の構成図に加えて、正極1の表面を電子顕微鏡で撮影して得られた電子顕微鏡画像Aの模式図が表示されている。電子顕微鏡画像Aに、バインダー3が映っていない。つまり、電子顕微鏡画像Aは、バインダー3が映らない条件で撮影された画像である。電子顕微鏡画像の撮影条件には、加速電圧、対象物と撮影部との間の距離、撮影倍率、電子像の種類等がある。
図1の電子顕微鏡画像Aに、バインダー3は映っていない。
図1の電子顕微鏡画像Aに、バインダー3が映っていてもよい。電子顕微鏡画像Aを含む少なくとも1つの電子顕微鏡画像において、それぞれ、連結部5は、その表面に、導電材粒子4の粒状感のある粒状感表面部5bと、粒状感表面部5bよりも粒状感のない非粒状感表面部5aとを有する。非粒状感表面部5aは、導電材粒子4を覆うpH調整剤7で構成される。つまり、連結部5の表面の一部において、導電材粒子4がpH調整剤7で覆われている。一方、粒状感表面部5bは、ほぼ全域において導電材粒子4が露出している。
【0136】
図1には、比較対象として、リチウムとニッケルを含む正極活物質体22を有する従来の非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像Bの模式図も表示されている。正極活物質体22同士を連結する連結部25は、ほぼ導電材粒子24から構成されている。電子顕微鏡画像Bにおいて、正極活物質体22同士を連結する連結部25の表面は、全体的に導電材粒子24の粒状感を有する。つまり、電子顕微鏡画像Bにおいて、連結部25の表面は、粒状感のない部分を有さない。電子顕微鏡画像Bにおいて、連結部25の表面全体に、導電材粒子24が露出している。
【0137】
電子顕微鏡画像Aにおいて、導電材粒子4がpH調整剤7で覆われている箇所では、連結部5に電解液が浸み込みにくくなる。しかし、連結部5は、粒状感の無い部分だけでなく、粒状感のある部分も有する。粒状感のある部分には、電解液が浸み込みやすい。したがって、連結部5の表面に粒状感のない部分があっても、リチウムイオンの移動の自由度を従来の正極と同程度に確保できる。
さらに、連結部5の表面の一部において導電材粒子4がpH調整剤7で覆われていることで、電池の充電時および放電時に正極活物質体2が膨張又は収縮しても、連結部5における導電材粒子4同士の連結が、従来の正極よりも切れにくくなる。それにより、連結部5による電子の伝導性が向上して、電池の電極抵抗が低くなる。
これらの結果、従来の非水電解液二次電池よりも、充放電効率が向上する。
【0138】
連結部5の表面の一部において導電材粒子4がpH調整剤7で覆われていることで、正極活物質体2の一部は連結部5により固定された状態となる。そのため、電池の充電時および放電時に正極活物質体2が膨張又は収縮しても正極活物質体2のクラックが、従来の正極よりも生じにくい。したがって、正極活物質体2のクラックの発生が抑制されたことで、電池の使用による充放電効率の低下が抑制される。また、従来の非水電解液二次電池に比べて、正極活物質体2のクラックの発生による正極の劣化を抑制できる。
【0139】
また、連結部5の表面の一部において、導電材粒子4がpH調整剤7で覆われていることから、連結部5の正極活物質体2に接触している表面層の一部においても、導電材粒子4がpH調整剤7で覆われていると推定できる。それにより、電解液が連結部5を通って正極活物質体2の表面に接しにくくなる。つまり、連結部5に対する電解液の浸みこみやすさを確保しつつ、電解液が連結部5を通って正極活物質体2に接触するのを抑制できる。電解液が正極活物質体2に接しにくいことにより、高電圧で電池が使用される場合でも電解液が電気分解しにくくなる。よって、従来の非水電解液二次電池に比べて、高電圧で使用しても、電解液の電気分解による電池の劣化を抑制できる。
【0140】
以上により、正極1の表面の電子顕微鏡画像において、連結部5は、その表面に、粒状感のある粒状感表面部5bと粒状感の無い非粒状感表面部5aとを有することで、リチウムとニッケルを含む正極活物質体を使用した従来の非水電解液二次電池用正極に比べて、電池特性を高めつつ、電池の耐久性を高めることができる。
【0141】
(本発明の実施形態の具体例)
次に、本発明の実施形態の具体例の非水電解液二次電池用正極1について、
図1を参照しつつ説明する。基本的に、本発明の実施形態の具体例は、上述した本発明の実施形態の特徴を全て有している。
【0142】
非水電解液二次電池用正極1は、シート状である。非水電解液二次電池用正極1は、正極活物質体2と、バインダー3と、連結部5と、集電体6とを有する。連結部5は、正極活物質体2同士を連結している。連結部5は、複数の導電材粒子4およびpH調整剤7を含む。導電材粒子4は、直径が1μm以下である、導電性を有する物質である。連結部5は、導電材粒子4以外に導電性を有する物質を含まない。非水電解液二次電池用正極1は、リチウムイオンを吸蔵可能および放出可能に構成されている。非水電解液二次電池用正極1は、非水電解液二次電池用正極1の製造過程においてプレス加工されている。非水電解液二次電池用正極1は、正極1の厚み方向にプレス加工されている。
【0143】
バインダー3は、正極活物質体2同士を接続している。バインダー3は、連結部5の一部分と、連結部5の他の一部分とを接続している。バインダー3は、正極活物質体2と連結部5を接続している。バインダー3は、正極活物質体2の一部および連結部5を集電体6に接続している。バインダー3は、導電材粒子4同士を接続していてもよい。バインダー3は、水に溶解可能なバインダー又は水に分散可能なバインダーである。以下において、水に溶解可能なバインダーおよび水に分散可能なバインダーを水系バインダーと総称することがある。水系バインダーは、例えば、アクリル系樹脂を主成分とするアクリル系バインダーである。非水電解液二次電池用正極1の表面において、バインダー3は、部分的に、連結部5に覆われていてもよい。
【0144】
正極活物質体2は、一次粒子である正極活物質粒子2aが凝集して形成された二次粒子である。正極活物質粒子2aおよび正極活物質体2は、粒子状である。正極活物質体2は、リチウムとニッケルを含む複合酸化物を含んでいる。正極活物質体2は、リチウムとニッケルに加えて、他の金属を含んでいてもよい。つまり、正極活物質体2は、リチウムとニッケルと他の金属を含む複合酸化物を含んでいてもよい。
【0145】
正極活物質体2のニッケル含有量は、30mol%以上である。正極活物質体2のニッケル含有量は、30mol%でもよく、50mol%でもよく、80mol%でもよい。正極活物質体2のニッケル含有量は、正極活物質粒子2aのニッケル含有量と同じである。正極活物質体2のニッケル含有量とは、正極活物質粒子2aに含まれる金属元素に占めるニッケルの割合である。
【0146】
導電材粒子4は、粒子状でもよく、粒子状以外の形状でもよい。導電材粒子4は、球状でもよく、球状以外の形状でもよい。直径が1μm以下の導電材粒子4は、例えば、カーボンブラック、微小なグラファイトおよびカーボンナノチューブである。カーボンブラックは、ドメインでもよく、アグリゲートでもよい。
【0147】
例えば、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像にカーボンブラックの表面が映っている場合、その電子顕微鏡画像に映ったカーボンブラックの表面の面積と同一面積を有する円の直径は1μm以下である。例えば、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像にカーボンブラックの表面が映っている場合、その電子顕微鏡画像に映ったカーボンブラックの表面の最大長さは1μm以下である。例えば、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像にカーボンブラックの表面が映っている場合、その電子顕微鏡画像に映ったカーボンブラックの輪郭で囲まれた領域の面積と同一面積を有する円の直径は1μm以下である。例えば、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像にカーボンブラックの表面が映っている場合、その電子顕微鏡画像に映ったカーボンブラックの輪郭の最大長さは1μm以下である。
例えば、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像に微小なグラファイトの表面が映っている場合、その電子顕微鏡画像に映った微小なグラファイトの表面の面積と同一面積を有する円の直径は1μm以下である。例えば、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像に微小なグラファイトの表面が映っている場合、その電子顕微鏡画像に映った微小なグラファイトの表面の最大長さは1μm以下である。例えば、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像に微小なグラファイトの表面が映っている場合、その電子顕微鏡画像に映った微小なグラファイトの輪郭に囲まれた領域の面積と同一面積を有する円の直径は1μm以下である。例えば、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像に微小なグラファイトの表面が映っている場合、その電子顕微鏡画像に映った微小なグラファイトの表面の最大長さは1μm以下である。
【0148】
例えば、導電材粒子4が、軸方向に長いカーボンナノチューブである場合、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像にカーボンナノチューブの軸方向に直交する表面が映っているとき、その電子顕微鏡画像に映ったカーボンナノチューブの軸方向に直交する表面の面積と同一面積を有する円の直径は1μm以下である。
例えば、導電材粒子4が、軸方向に長いカーボンナノチューブである場合、非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像にカーボンナノチューブの軸方向に直交する表面が映っているとき、その電子顕微鏡画像に映ったカーボンナノチューブの最大長さは1μm以下である。
【0149】
導電材粒子4の厚さは1μmを超えてもよく、導電材粒子4の厚さは1μm以下でもよい。導電材粒子4の長手方向長さは1μmを超えてもよく、導電材粒子4の長手方向長さは1μm以下でもよい。連結部5に、1種類の導電材粒子4だけが含まれていてもよく、複数種類の導電材粒子4が含まれていてもよい。
【0150】
連結部5に含まれるpH調整剤7の種類は、限定されない。pH調整剤7は、例えば、酸性化合物、塩基性化合物、弱酸性化合物、弱塩基性化合物、塩酸化合物、硝酸化合物、硫酸化合物、有機酸および無機酸のうちの少なくとも1つである。pH調整剤7は、上記に例示した化合物に限定されない。
【0151】
集電体6は、アルミニウムを含んでいることが好ましい。集電体6は、例えば、アルミニウム箔であってもよい。集電体6は、例えば、アルミニウムを含むアルミニウム合金の金属箔であってもよい。集電体6は、アルミニウムを含んでいなくてもよい。
【0152】
図1には、正極1の表面の電子顕微鏡画像Aの模式図を表示している。電子顕微鏡画像Aは、バインダー3が映らない条件で撮影された画像である。具体的には、電子顕微鏡画像Aは、加速電圧が5kV以上20kV以下で撮影された画像である。
図1の電子顕微鏡画像Aに、バインダー3が映っていない。電子顕微鏡画像Aは、バインダー3がほぼ映らない条件で撮影された画像でもよい。
図1の電子顕微鏡画像Aに、バインダー3が映っていてもよい。電子顕微鏡画像Aは、例えば、走査型電子顕微鏡によって撮影された電子顕微鏡画像でもよく、電界放射型走査電子顕微鏡によって撮影された電子顕微鏡画像でもよい。電子顕微鏡画像Aは二次電子像であるが、電子像の種類は二次電子像に限らない。例えば、電子顕微鏡画像Aは反射電子像でもよい。
【0153】
図1の電子顕微鏡画像Aに、複数の正極活物質体2と連結部5が存在する。
図1の電子顕微鏡画像Aの模式図において、連結部5は、独立した複数の部分で構成されているが、この構成に限らない。1つの電子顕微鏡画像において、連結部5は、全て繋がった1つの物であってもよい。
【0154】
電子顕微鏡画像Aにおいて、連結部5は、その表面に、導電材粒子4の粒状感のある粒状感表面部5bと、粒状感表面部5bよりも粒状感のない非粒状感表面部5aとを有する。電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bは、連結部5の他の部分から独立している。電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bは、粒状感表面部5bと粒状感の程度が同じ領域と隣り合っていない。電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bは、粒状感表面部5bと粒状感の程度が異なる領域と隣り合っていない。また、電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aは、連結部5の他の部分から独立している。電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aは、非粒状感表面部5aと粒状感の程度が同じ領域と隣り合っていない。電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aは、非粒状感表面部5aと粒状感の程度が異なる領域と隣り合っていない。
【0155】
電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bは、ほぼ導電材粒子4から構成されている。電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aは、ほぼpH調整剤7から構成されている。pH調整剤7は、少なくとも1つの導電材粒子4の少なくとも一部を覆っている。
電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bに、複数の導電材粒子4が確認される。電子顕微鏡画像Aにおいて、複数の導電材粒子4が露出している。電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bに、複数の導電材粒子4の粒状感がある。バインダー3が映っていない電子顕微鏡画像Aの連結部5の表面において、複数の導電材粒子4の粒状感がある部分とは、電子顕微鏡画像Aにおいて、複数の導電材粒子4が露出し、且つ、露出した複数の導電材粒子4が電子顕微鏡画像Aに映っていないバインダー3によって接続された部分であってもよい。バインダー3が映っている電子顕微鏡画像Aの連結部5の表面において、複数の導電材粒子4の粒状感がある部分とは、電子顕微鏡画像Aにおいて、複数の導電材粒子4が露出し、且つ、露出した複数の導電材粒子4が電子顕微鏡画像Aに映っているバインダー3によって接続された部分であってもよい。
電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aに、pH調整剤7が確認される。電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aに、導電材粒子4は確認されない。電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aに、導電材粒子4の粒状感がない。
粒状感表面部5bに確認される導電材粒子4も、非粒状感表面部5aに確認されるpH調整剤7に覆われた導電材粒子4も、同じように分散している。そのため、粒状感表面部5bの粒状感と非粒状感表面部5aの粒状感との相違は、導電材粒子4の分散の仕方によって生じるものではない。
【0156】
電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aの面積および粒状感表面部5bの面積は、それぞれ、導電材粒子4の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上であることが好ましい。
【0157】
導電材粒子4の直径は、粒状感表面部5bに確認される1つまたは複数の導電材粒子4の直径でもよい。導電材粒子4の直径は、連結部5において粒状感表面部5b以外の粒状感表面部に確認される1つまたは複数の導電材粒子4の直径でもよい。導電材粒子4の直径は、粒状感表面部5bに確認される少なくとも1つの導電材粒子4と、連結部5において粒状感表面部5b以外の粒状感表面部に確認される少なくとも1つの導電材粒子4の直径でもよい。
非粒状感表面部5aに導電材粒子4が確認される場合、導電材粒子4の直径は、非粒状感表面部5aに確認される1つまたは複数の導電材粒子4の直径でもよい。連結部5において非粒状感表面部5a以外の非粒状感表面部5aに導電材粒子4が確認される場合、導電材粒子4の直径は、連結部5において非粒状感表面部5a以外の非粒状感表面部に確認される1つまたは複数の導電材粒子4の直径でもよい。
【0158】
電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bは、導電材粒子4を10個以上含む領域を含むことが好ましい。電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aの面積は、粒状感表面部5bにおいて導電材粒子4を10個以上含む領域の面積以上であることが好ましい。或いは、電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aは、導電材粒子4を10個以上含む領域であってもよい。
【0159】
電子顕微鏡画像Aの拡大倍率は、2,000倍以上8,000倍以下が好ましい。電子顕微鏡画像Aの拡大倍率は、例えば、3,000倍以上であってもよく、4,000倍以上であってもよく、5,000倍以上であってもよく、6,000倍以上であってもよく、7,000倍以上であってもよい。電子顕微鏡画像Aの拡大倍率は、例えば、7,000倍以下であってもよく、6,000倍以下であってもよく、5,000倍以下であってもよく、4,000倍以下であってもよく、3,000倍以下であってもよい。電子顕微鏡画像Aの拡大倍率は、4,000倍以上が特に好ましい。1つの電子顕微鏡画像Aにおいて、連結部5は、1つ又は複数の粒状感表面部5bを有する。1つの電子顕微鏡画像Aにおいて、連結部5は、1つ又は複数の非粒状感表面部5aを有する。電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bに、複数の導電材粒子4が露出している。電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aに、複数の導電材粒子4が露出していない。電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aに、pH調整剤7が確認される。非粒状感表面部5aに、少なくとも1つの導電材粒子4が露出していてもよい。非粒状感表面部5aに、少なくとも1つの導電材粒子4が露出している場合、非粒状感表面部5aに露出している導電材粒子4の数は、粒状感表面部5bに露出している導電材粒子4の数より少ない。非粒状感表面部5aに、導電材粒子4とpH調整剤7とが確認されてもよい。非粒状感表面部5aに少なくとも1つの導電材粒子4が確認される場合、非粒状感表面部5aに確認される導電材粒子4の数は、粒状感表面部5bに確認される導電材粒子4の数より少ない。非粒状感表面部5aに少なくとも1つの導電材粒子4が確認される場合、非粒状感表面部5aに、輪郭が確認される導電材粒子4の数は、粒状感表面部5bに輪郭が確認される導電材粒子4の数より少ない。
【0160】
連結部5のこれらの特徴は、正極1の表面において少なくとも部分的に一致しない複数箇所が撮影された複数の電子顕微鏡画像(図示せず)で確認される。つまり、正極1の表面の離れた複数箇所において、それぞれ、連結部5は、その表面に、粒状感表面部5bと非粒状感表面部5aとを有する。よって、連結部5が有する粒状感表面部5bおよび非粒状感表面部5aは、電子顕微鏡画像の撮影の仕方によって偶然にできたものではない。複数の電子顕微鏡画像でこの特徴を確認できれば、連結部5がその表面に粒状感表面部5b又は非粒状感表面部5aを有さない電子顕微鏡画像があってもよい。
【0161】
粒状感表面部5bにおける導電材粒子4の粒状感は、従来の正極の連結部25の導電材粒子24の粒状感と同程度である。電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bに、複数の導電材粒子4が確認される。粒状感表面部5bに確認される導電材粒子4の粒状感は、従来の正極の連結部25の導電材粒子24の粒状感と同程度である。粒状感の程度を比較する粒状感表面部5bと従来の正極の連結部25の領域とは、面積がほぼ同じである。
【0162】
電子顕微鏡画像Aに対して二値化処理を行うことで、電子顕微鏡画像Aを、正極1の表面における凹部を示す暗領域と、正極1の表面における凸部を示す明領域に区別できる。また、この二値化処理を行うことで、暗領域の面積を算出できる。また、明領域の面積を算出することもできる。
【0163】
本実施形態の具体例において、電子顕微鏡画像Aの正極活物質体2の表面は、ほぼ全体が二値化処理によって明領域に含まれる。電子顕微鏡画像Aには、正極活物質体2同士の隙間、正極活物質体2と連結部5との隙間、および、連結部5の一部と連結部5の他の部分との隙間が存在する。なお、このような隙間の奥には、正極1の表面の電子顕微鏡画像Aで確認できなくても、正極活物質体2又は連結部5が存在する。電子顕微鏡画像Aにおけるこのような隙間において、電子顕微鏡画像Aの二値化処理によって画像の輝度又は明度が閾値以下となる部分は、暗領域に含まれる。電子顕微鏡画像Aにおけるこのような隙間は、電子顕微鏡画像Aの二値化処理によって画像の輝度又は明度が閾値を超える部分を含んでいてもよい。電子顕微鏡画像A全体に占める暗領域の面積の比率Rcは、ゼロよりある程度大きいものの、極端に大きくなることはない。電子顕微鏡画像Aに占める暗領域の面積の比率Rcは、例えば15%程度である。
【0164】
電子顕微鏡画像Aにおける粒状感表面部5bの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率をRbとする。電子顕微鏡画像Aにおける非粒状感表面部5aの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率をRaとする。電子顕微鏡画像Aの粒状感表面部5bにおける導電材粒子4同士の間の凹部は、二値化処理によって暗領域に含まれる。そのため、電子顕微鏡画像Aにおける粒状感表面部5bの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率Rbは、ゼロより大きい。一方、非粒状感表面部5aは、粒状感表面部5bより粒状感がないため、電子顕微鏡画像Aにおける非粒状感表面部5aの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率Raは小さい。電子顕微鏡画像Aの非粒状感表面部5aの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率Raは、ゼロであってもよく、ゼロよりも大きくてもよい。
【0165】
電子顕微鏡画像Aにおける非粒状感表面部5aの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率Raは、電子顕微鏡画像Aにおける粒状感表面部5bの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率Rbよりも小さい。電子顕微鏡画像Aを二値化処理することにより、電子顕微鏡画像Aから目視で判断する非粒状感表面部5aおよび粒状感表面部5bの粒状感の有無と程度を、非粒状感表面部5aの暗領域の面積の比率Raおよび粒状感表面部5bの暗領域の面積の比率Rbという数値によって比較することができる。
【0166】
暗領域の面積の比率を算出する、電子顕微鏡画像Aにおける非粒状感表面部5aの少なくとも一部は、電子顕微鏡画像Aにおける非粒状感表面部5aの一部でもよく、電子顕微鏡画像Aにおける非粒状感表面部5aの全体でもよい。暗領域の面積の比率を算出する、電子顕微鏡画像Aにおける粒状感表面部5bの少なくとも一部は、電子顕微鏡画像Aにおける粒状感表面部5bの一部でもよく、電子顕微鏡画像Aにおける粒状感表面部5bの全体でもよい。非粒状感表面部5aにおいて暗領域の面積の比率を算出する領域の面積と、粒状感表面部5bにおいて暗領域の面積の比率を算出する領域の面積とは、同じでもよく、異なってもよい。非粒状感表面部5aにおいて暗領域の面積の比率を算出する領域の面積と、粒状感表面部5bにおいて暗領域の面積の比率を算出する領域の面積とは、ほぼ同じであることが好ましい。
【0167】
暗領域の面積の比率を算出する、電子顕微鏡画像Aにおける非粒状感表面部5aの少なくとも一部の面積は、導電材粒子4の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上であることが好ましい。導電材粒子4の直径は、非粒状感表面部5aの面積および粒状感表面部5bの面積において説明した導電材粒子4の直径と同じである。
【0168】
暗領域の面積の比率を算出する、電子顕微鏡画像Aにおける粒状感表面部5bの少なくとも一部は、導電材粒子4を10個以上含む領域であることが好ましい。暗領域の面積の比率を算出する、電子顕微鏡画像Aにおける非粒状感表面部5aの面積は、導電材粒子4を10個以上含む粒状感表面部5bの面積以上であることが好ましい。或いは、暗領域の面積の比率を算出する、電子顕微鏡画像Aにおける非粒状感表面部5aの面積は、導電材粒子4を10個以上含む領域であってもよい。
【0169】
比率Raと比率Rbとのこの大小関係は、1つの電子顕微鏡画像Aだけでなく、正極1の表面における少なくとも部分的に一致しない複数箇所が撮影された複数の電子顕微鏡画像(図示せず)で成立する。この複数の電子顕微鏡画像でこの関係が成立すれば、この関係が成立しない電子顕微鏡画像があってもよい。電子顕微鏡画像によっては、粒状感を確認できる粒状感表面部5bであっても、二値化処理により明領域しか有さない場合がある。つまり、比率Rbが、ゼロ又はゼロに近い値となる。この場合、比率Rbと比率Raが同じか、比率Rbが比率Raより小さくなる。
【0170】
例えば、電子顕微鏡画像Aにおける非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Raは、電子顕微鏡画像Aにおける粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rbの半分以下であってもよい。この関係は、1つの電子顕微鏡画像Aだけでなく、正極1の表面における少なくとも部分的に一致しない複数箇所が撮影された複数の電子顕微鏡画像(図示せず)で成立してもよい。少なくとも1つの電子顕微鏡画像でこの関係が成立する場合に、この関係が成立しない電子顕微鏡画像があってもよい。つまり、比率Raが比率Rbの半分以下となる電子顕微鏡画像と、比率Raが比率Rbの半分を超える電子顕微鏡画像の両方があってもよい。
【0171】
例えば、電子顕微鏡画像Aにおける非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Raは、15%未満であってもよく、10%未満であってもよい。この場合、非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Raは大き過ぎない。正極1の表面における少なくとも部分的に一致しない複数箇所が撮影された複数の電子顕微鏡画像(図示せず)において、比率Raが上記数値範囲内であってもよい。また、比率Raが15%未満となる電子顕微鏡画像と、比率Raが15%以上となる電子顕微鏡画像の両方があってもよい。比率Raが10%未満となる電子顕微鏡画像と、比率Raが10%以上となる電子顕微鏡画像の両方があってもよい。
【0172】
例えば、電子顕微鏡画像Aにおける粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rbは、10%以上であってもよく、15%以上であってもよい。この場合、粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rbは小さ過ぎない。正極1の表面における少なくとも部分的に一致しない複数箇所が撮影された複数の電子顕微鏡画像(図示せず)において、比率Rbが上記数値範囲内であってもよい。また、比率Rbが10%以上となる電子顕微鏡画像と、比率Rbが10%未満となる電子顕微鏡画像の両方があってもよい。比率Rbが15%以上となる電子顕微鏡画像と、比率Rbが15%未満となる電子顕微鏡画像の両方があってもよい。
【0173】
電子顕微鏡画像Aにおける非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Raは、電子顕微鏡画像Aの暗領域の比率Rcより小さくてもよい。上述したように、電子顕微鏡画像Aの暗領域の比率Rcは、極端に大きくなることはない。そのため、非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Raは大き過ぎない。正極1の表面における少なくとも部分的に一致しない複数箇所が撮影された複数の電子顕微鏡画像(図示せず)において、この関係が成立してもよい。この関係が成立する電子顕微鏡画像と、この関係が成立しない電子顕微鏡画像の両方があってもよい。電子顕微鏡画像Aは、本発明における第4の電子顕微鏡画像に相当する。
【0174】
電子顕微鏡画像Aにおける粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rbは、電子顕微鏡画像Aの暗領域の比率Rc以上であってもよい。上述したように、電子顕微鏡画像Aの暗領域の比率Rcは、ゼロよりもある程度大きい。そのため、粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rbは小さ過ぎない。正極1の表面における少なくとも部分的に一致しない複数箇所が撮影された複数の電子顕微鏡画像(図示せず)において、この関係が成立してもよい。この関係が成立する電子顕微鏡画像と、この関係が成立しない電子顕微鏡画像の両方があってもよい。
【0175】
非粒状感表面部5aの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率Raが大き過ぎないことにより、以下の効果が得られる。連結部5における導電材粒子4同士の連結が切れにくくなるため、充放電効率を高められる。さらに、正極活物質体2にクラックが発生しにくくなるため、正極1の劣化を抑制できる。加えて、電解液が電気分解しにくくなるため、電池の劣化を抑制できる。
粒状感表面部5bの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率Rbが小さ過ぎないことにより、連結部5に電解液が浸みこみやすくなる。それにより、連結部5におけるリチウムイオンの移動の自由度を確保できる。よって、非粒状感表面部5aによる電池の充放電効率の向上を妨げない。
【0176】
電子顕微鏡画像Aを二値化処理するときの閾値は、以下であることが好ましい。なお、以下において、「非粒状感表面部5aの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率Ra」を「非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Ra」と称し、「粒状感表面部5bの少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率Rb」を「粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rb」と称し、「電子顕微鏡画像Aに占める暗領域の比率Rc」を「電子顕微鏡画像Aの暗領域の比率Rc」と称することがある。
【0177】
非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Raと粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rbを比較する場合、非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Raの算出に用いる二値化処理の閾値と、粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rbの算出に用いる二値化処理の閾値は同じであることが好ましい。例えば、電子顕微鏡画像Aの二値化処理により得られる非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Raは、同じ閾値を用いた電子顕微鏡画像Aの二値化処理により得られる粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rbよりも小さい。電子顕微鏡画像Aの二値化処理により得られる非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Raは、同じ閾値を用いた電子顕微鏡画像Aの二値化処理により得られる粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rbの半分以下であることが好ましい。
【0178】
非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Raと電子顕微鏡画像Aの暗領域の比率Rcを比較する場合、非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Raの算出に用いる閾値と電子顕微鏡画像Aの暗領域の比率Rcの算出に用いる閾値は同じであることが好ましい。例えば、電子顕微鏡画像Aの二値化処理により得られる非粒状感表面部5aの少なくとも一部の暗領域の比率Raは、同じ閾値を用いた電子顕微鏡画像Aの二値化処理により得られる電子顕微鏡画像Aの暗領域の比率Rcよりも小さいことが好ましい。
【0179】
粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rbと電子顕微鏡画像Aの暗領域の比率Rcを比較する場合、粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rbの算出に用いる閾値と電子顕微鏡画像Aの暗領域の比率Rcの算出に用いる閾値は同じであることが好ましい。例えば、電子顕微鏡画像Aの二値化処理により得られる粒状感表面部5bの少なくとも一部の暗領域の比率Rbは、同じ閾値を用いた電子顕微鏡画像Aの二値化処理により得られる電子顕微鏡画像Aの暗領域の比率Rcよりも大きいことが好ましい。
【0180】
非水電解液二次電池用正極1は、例えば、以下の方法で製造される。
正極活物質体2と、水溶性又は水分散性のバインダー3と、導電材粒子4と、水を含む溶媒又は分散媒と、pH調整剤7とを混合し、スラリーを作製する。バインダー3が水溶性の場合、溶媒100wt%に対して50wt%以上が水であることが好ましい。pH調整剤7は、例えば、酸性化合物、塩基性化合物、弱酸性化合物、弱塩基性化合物、塩酸化合物、硝酸化合物、硫酸化合物、有機酸および無機酸のうちの少なくとも1つである。pH調整剤7は、上記に例示した化合物に限定されない。スラリーは、増粘剤等の種々の添加剤を含んでいてもよい。増粘剤として、例えば、セルロース誘導体、アクリル樹脂等を用いることができる。なお、増粘剤は上記に例示した増粘剤に限定されない。作製したスラリーを集電体6に塗布する。その後、スラリーを乾燥させる。スラリーの乾燥温度は、例えば、pH調整剤7の蒸発温度より低いことが好ましい。スラリーの乾燥温度は、例えば50℃~130℃程度である。得られる正極1が所望の電極密度となるように、乾燥させたスラリーおよび集電体6を、集電体6の厚み方向にプレスする。これにより、非水電解液二次電池用正極1が得られる。
図1に示す電子顕微鏡画像Aは、バインダー3および増粘剤が映らない条件で撮影された画像である。
図1に示す電子顕微鏡画像Aには、バインダー3および増粘剤は、電子顕微鏡画像Aに現れていない。
【0181】
図2は、本発明の実施形態の具体例の非水電解液二次電池用正極1を用いて作製される非水電解液二次電池11の断面模式図である。
図2に示す非水電解液二次電池11は、上記実施形態の非水電解液二次電池用正極1を用いて作製される非水電解液二次電池の一例である。
【0182】
非水電解液二次電池11は、非水電解液二次電池用正極1と、負極12と、2枚のセパレータ13、容器14と、蓋15と、図示しない非水電解液とを備える。正極1、負極12および2枚のセパレータ13は、角筒状の容器14に収容されている。正極1、負極12および2枚のセパレータ13は、角柱状に巻回されている。セパレータ13には非水電解液が含浸されている。容器14の開口は、蓋15によって閉じられている。
【0183】
負極12は、リチウムイオンを吸蔵可能および放出可能に構成されている。負極12は、負極活物質を含む。負極活物質に、例えば、炭素材料、合金および金属酸化物から選択される1つ又は2つ以上を用いることができる。セパレータ13は、正極1と負極12とを絶縁する。セパレータ13は、電解液を保持可能に構成されている。非水電解液は、非水溶媒(水を含まない溶媒)と電解質とを含む。電解質は水を含まない溶媒に溶解している。負極12、セパレータ13、容器14、蓋15および非水電解液等には、一般的な非水電解液二次電池に用いられているものを使用することができる。
【0184】
非水電解液二次電池11の25±2℃での正極活物質粒子の重量当たりの0.1C放電容量は、正極活物質粒子2aの材質、正極活物質粒子2aの径および正極活物質体2の径に依存する最大放電容量の90%以上である。0.1C放電容量が最大放電容量の90%以上である場合、非水電解液二次電池11は実用化に十分に耐えることができるレベルである。
【0185】
非水電解液二次電池用正極1を用いて、JIS K5600-5-1に準拠し、直径3mmの円筒形マンドレルを使用した耐屈曲性試験を行った場合、正極活物質体2および連結部5は集電体6から剥離されない。つまり、非水電解液二次電池用正極1において、正極活物質体2および連結部5は、この耐屈曲性試験で剥離されないような接続強度で、集電体6に接続されている。そのため、非水電解液二次電池用正極1を用いて非水電解液二次電池11を製造する過程および非水電解液二次電池11の使用時に、正極活物質体2および連結部5が集電体6から剥離しにくい。また、剥離の要因となる集電体6の腐食が生じていない。集電体6の腐食がないため、非水電解液二次電池11の耐久性が高い。
【0186】
非水電解液二次電池11は、例えば、以下の方法で製造される。
正極1と負極12の間にセパレータ13が介在するように、正極1、負極12、および2枚のセパレータを巻回する。そして、巻回したものを容器14に収容する。容器14に非水電解液を注入することにより、セパレータ13に非水電解液を含浸させる。容器14の開口を蓋15により閉じる。
【0187】
非水電解液二次電池用正極1が用いられた非水電解液二次電池11は、リチウムとニッケルを含む正極活物質体を使用した従来の非水電解液二次電池に比べて、充放電効率を高めつつ、耐久性を高めることができる。
【0188】
本発明は、上述した実施形態およびその具体例に限られるものではなく、請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。以下、本発明の実施形態の変更例について説明する。なお、上述した構成と同じ構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。後述する変更例は、適宜組み合わせて実施可能である。
【0189】
実施形態の具体例において、電子顕微鏡画像Aの正極活物質体2の表面は、ほぼ全体が二値化処理によって明領域に含まれる。しかし、本発明の正極活物質体は、表面に窪みを有していてもよい。つまり、正極の表面の電子顕微鏡画像において、正極活物質体の表面の一部が、二値化処理によって暗領域に含まれてもよい。この場合、電子顕微鏡画像に占める暗領域の面積の比率は大きくなる。粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、電子顕微鏡画像に占める暗領域の面積の比率より小さくてもよい。粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は、電子顕微鏡画像に占める、正極活物質体の表面の暗領域を除く電子顕微鏡画像の暗領域の面積の比率以上であることが好ましい。
【0190】
電子顕微鏡画像において、粒状感表面部の大部分において導電材粒子が露出していれば、粒状感表面部は、非粒状感表面部との境界以外の部分に、導電材粒子が露出していない部分を若干有していてもよい。
【0191】
電子顕微鏡画像において、非粒状感表面部の大部分において導電材粒子が露出していなければ、非粒状感表面部は、粒状感表面部との境界以外の部分に、導電材粒子が露出している部分を若干有していてもよい。
【0192】
実施形態の具体例では、電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bは、連結部5の他の部分から独立している。しかし、電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bは、連結部5の他の部分と繋がっていてもよい。電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bは、粒状感表面部5bと同じ粒状感の領域と隣り合っていてもよい。電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bは、粒状感表面部5bと粒状感の程度が異なる領域と隣り合っていてもよい。電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bは、暗領域の比率が粒状感表面部5bの暗領域の比率Rbとほぼ同じ領域と隣り合っていてもよい。電子顕微鏡画像Aにおいて、粒状感表面部5bは、暗領域の比率が粒状感表面部5bの暗領域の比率Rbと異なる領域と隣り合っていてもよい。
【0193】
実施形態の具体例では、電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aは、連結部5の他の部分から独立している。しかし、電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aは、連結部5の他の部分と繋がっていてもよい。電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aは、非粒状感表面部5aと粒状感の程度が同じ領域と隣り合っていてもよい。電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aは、非粒状感表面部5aと粒状感の程度が異なる領域と隣り合っていてもよい。電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aは、暗領域の比率が非粒状感表面部5aの暗領域の比率Raとほぼ同じ領域と隣り合っていてもよい。電子顕微鏡画像Aにおいて、非粒状感表面部5aは、暗領域の比率が非粒状感表面部5aの暗領域の比率Raと異なる領域と隣り合っていてもよい。
【0194】
実施形態の具体例では、1つの電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率と粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率の大小関係について述べた。
本発明において、拡大倍率、電子像の種類および加速電圧が同じであって撮影対象が異なる第1の電子顕微鏡画像および第2の電子顕微鏡画像において、それぞれ、連結部の表面に、非粒状感表面部と粒状感表面部が確認される場合、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率より小さくてもよい。第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率と、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率との比較によって、正極の表面の離れた位置にある非粒状感表面部と粒状感表面部の目視で判断される粒状感の程度を、暗領域の面積の比率によって数値化できる。そのため、例えば、特に粒状感がない部分と、粒状感のない部分の粒状感の程度を数値で比較できる。1つの第2の電子顕微鏡画像に対して上記の大小関係を満たす第1の電子顕微鏡画像の数は、複数であってもよい。1つの第1の電子顕微鏡画像に対して上記の大小関係を満たす第2の電子顕微鏡画像の数は、複数であってもよい。
また、拡大倍率、電子像の種類および加速電圧が同じであって撮影対象が異なる第1の電子顕微鏡画像および第2の電子顕微鏡画像において、それぞれ、連結部の表面に、非粒状感表面部と粒状感表面部が確認される場合、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率の半分以下でもよい。この大小関係が成立する場合、非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率は大き過ぎない。また、粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が小さ過ぎない。それにより、実施形態の具体例で述べた効果が得られる。1つの第2の電子顕微鏡画像に対して上記の大小関係を満たす第1の電子顕微鏡画像の数は、複数であってもよい。1つの第1の電子顕微鏡画像に対して上記の大小関係を満たす第2の電子顕微鏡画像の数は、複数であってもよい。
第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率の算出に用いる閾値と、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率の算出に用いる閾値は同じであることが好ましい。
なお、ここでの第2の電子顕微鏡画像は、本発明における第3の電子顕微鏡画像に相当し、ここでの第1の電子顕微鏡画像は、本発明における第2の電子顕微鏡画像に相当する。
【0195】
上述した、拡大倍率、電子像の種類および加速電圧が同じであって撮影対象が異なる第1の電子顕微鏡画像および第2の電子顕微鏡画像において、以下であることが好ましい。
第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の面積および第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の面積は、直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上であることが好ましい。
導電材粒子の直径は、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部に確認される少なくとも1つの導電材粒子の直径でもよく、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部に確認される少なくとも1つの導電材粒子の直径でもよく、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部に確認される少なくとも1つの導電材粒子の直径でもよく、第2の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部に確認される少なくとも1つの導電材粒子の直径でもよい。導電材粒子の直径は、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部、および第2の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも1つに確認される少なくとも1つの導電材粒子の直径でもよい。
或いは、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部は、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域であることが好ましい。第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の面積は、第1の電子顕微鏡画像又は第2の電子顕微鏡画像における、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む粒状感表面部の面積以上であることが好ましい。或いは、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部は、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域であることが好ましい。
暗領域の面積の比率を算出する、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の面積、および、暗領域の面積の比率を算出する、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の面積は、直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上であることが好ましい。
或いは、暗領域の面積の比率を算出する、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部は、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域であることが好ましい。暗領域の面積の比率を算出する、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の面積は、第1の電子顕微鏡画像又は第2の電子顕微鏡画像における、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む、粒状感表面部の少なくとも一部の面積以上であることが好ましい。或いは、暗領域の面積の比率を算出する、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部は、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域であることが好ましい。
第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率の算出に用いる閾値と、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率の算出に用いる閾値は同じであることが好ましい。
【0196】
実施形態の具体例では、1つの電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率と同じ電子顕微鏡画像の暗領域の比率の大小関係について述べた。
本発明において、非粒状感表面部と粒状感表面部が確認された第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率は、第2の電子顕微鏡画像の暗領域の比率より小さくてもよい。但し、第2の電子顕微鏡画像は、正極の表面が撮影された電子顕微鏡画像であって、第1の電子顕微鏡画像と電子像の種類および加速電圧が同じで撮影対象が異なる。第1の電子顕微鏡画像と第2の電子顕微鏡画像の拡大倍率は同じであってもよく、異なっていてもよい。第2の電子顕微鏡画像は、非粒状感表面部と粒状感表面部が確認されてもよく、確認されなくてもよい。この大小関係が成立する場合、非粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が大き過ぎない。それにより、実施形態の具体例で述べた効果が得られる。1つの第2の電子顕微鏡画像に対して上記の大小関係を満たす第1の電子顕微鏡画像の数は、複数であってもよい。1つの第1の電子顕微鏡画像に対して上記の大小関係を満たす第2の電子顕微鏡画像の数は、複数であってもよい。
第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率の算出に用いる閾値と、第2の電子顕微鏡画像の暗領域の比率の算出に用いる閾値は同じであることが好ましい。
なお、ここでの第2の電子顕微鏡画像は、本発明における第5の電子顕微鏡画像に相当し、ここでの第1の電子顕微鏡画像は、本発明における第4の電子顕微鏡画像に相当する。
【0197】
実施形態の具体例では、1つの電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率と同じ電子顕微鏡画像の暗領域の比率の大小関係について述べた。
本発明において、非粒状感表面部と粒状感表面部が確認された第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率は、第2の電子顕微鏡画像の暗領域の比率以上であってもよい。但し、第2の電子顕微鏡画像は、正極の表面が撮影された電子顕微鏡画像であって、第1の電子顕微鏡画像と電子像の種類および加速電圧が同じで撮影対象が異なる。第1の電子顕微鏡画像と第2の電子顕微鏡画像の拡大倍率は同じであってもよく、異なっていてもよい。第2の電子顕微鏡画像は、非粒状感表面部と粒状感表面部が確認されてもよく、確認されなくてもよい。この大小関係が成立する場合、粒状感表面部の少なくとも一部に占める暗領域の面積の比率が小さ過ぎない。それにより、実施形態の具体例で述べた効果が得られる。1つの第2の電子顕微鏡画像に対して上記の大小関係を満たす第1の電子顕微鏡画像の数は、複数であってもよい。1つの第1の電子顕微鏡画像に対して上記の大小関係を満たす第2の電子顕微鏡画像の数は、複数であってもよい。
なお、ここでの第2の電子顕微鏡画像は、本発明における第7の電子顕微鏡画像に相当し、ここでの第1の電子顕微鏡画像は、本発明における第6の電子顕微鏡画像に相当する。
【0198】
上述した、電子像の種類および加速電圧が同じであって撮影対象が異なる第1の電子顕微鏡画像および第2の電子顕微鏡画像において、以下であることが好ましい。
第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の面積および粒状感表面部の面積は、直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上であることが好ましい。
導電材粒子の直径は、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部に確認される少なくとも1つの導電材粒子の直径でもよく、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部に確認される少なくとも1つの導電材粒子の直径でもよく、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部に確認される少なくとも1つの導電材粒子の直径でもよく、第2の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部に確認される少なくとも1つの導電材粒子の直径でもよい。
或いは、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部は、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域であることが好ましい。第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の面積は、第1の電子顕微鏡画像又は第2の電子顕微鏡画像における、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む粒状感表面部の面積以上であることが好ましい。或いは、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部は、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域であることが好ましい。
暗領域の面積の比率を算出する、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の面積および暗領域の面積の比率を算出する、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の面積は、直径が1μm以下の導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上であることが好ましい。
或いは、暗領域の面積の比率を算出する、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部は、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域であることが好ましい。暗領域の面積の比率を算出する、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の面積は、第1の電子顕微鏡画像又は第2の電子顕微鏡画像における、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む、粒状感表面部の少なくとも一部の面積以上であることが好ましい。或いは、暗領域の面積の比率を算出する、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部は、直径が1μm以下の導電材粒子を10個以上含む領域であることが好ましい。
【0199】
本発明において、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率より小さくなるような第1の電子顕微鏡画像はなくてもよい。
本発明において、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が第1の電子顕微鏡画像の少なくとも一部の暗領域の比率より小さくなるような第1の電子顕微鏡画像はなくてもよい。
本発明において、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が第1の電子顕微鏡画像の暗領域の比率以上となるような第1の電子顕微鏡画像はなくてもよい。
本発明において、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率の半分以下となるような第1の電子顕微鏡画像はなくてもよい。
【0200】
本発明において、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率より小さくなるような第1の電子顕微鏡画像と第2の電子顕微鏡画像はなくてもよい。
本発明において、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が、第2の電子顕微鏡画像の暗領域の比率より小さくなるような第1の電子顕微鏡画像と第2の電子顕微鏡画像はなくてもよい。
本発明において、第1の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が、第2の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率の半分以下となるような第1の電子顕微鏡画像と第2の電子顕微鏡画像はなくてもよい。
【0201】
本発明において、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が、第2の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率以上となるような第1の電子顕微鏡画像と第2の電子顕微鏡画像はなくてもよい。
本発明において、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が、第2の電子顕微鏡画像の暗領域の比率以上となるような第1の電子顕微鏡画像と第2の電子顕微鏡画像はなくてもよい。
本発明において、第1の電子顕微鏡画像における粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が、第2の電子顕微鏡画像における非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率の2倍以上となるような第1の電子顕微鏡画像と第2の電子顕微鏡画像はなくてもよい。
【0202】
本発明において、非粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が10%未満となるような電子顕微鏡画像はなくてもよい。
本発明において、粒状感表面部の少なくとも一部の暗領域の比率が10%以上となるような電子顕微鏡画像はなくてもよい。
【0203】
本発明において、非水電解液二次電池用正極は、直径が1μm以下の導電材粒子に加えて、直径が1μmを超える導電性を有する物質を含んでいてもよい。直径が1μmを超える導電性を有する物質は、連結部に含まれない。直径が1μmを超える導電性を有する物質は、少なくとも一部が連結部に埋設していてもよく、連結部から独立していてもよい。「直径が1μm以下の導電材粒子以外の導電性を有する物質」とは、例えば、直径が1μmを超える球状又は塊状の導電性を有する物質である。
【0204】
本発明の実施形態およびその具体例の非水電解液二次電池用正極はシート状である。しかし、本発明の非水電解液二次電池用正極は、シート状以外の形状であってもよい。
【0205】
本発明の非水電解液二次電池は、複数の非水電解液二次電池用正極と複数の負極が、セパレータを介して重ねられた構成であってもよい。
【0206】
本発明の実施形態の具体例の非水電解液二次電池11の容器14は角筒状であるが、本発明の非水電解液二次電池の容器の形状は角筒状でなくてもよい。例えば、非水電解液二次電池用正極と負極と2枚のセパレータを円柱状に巻回した場合、非水電解液二次電池の容器は円筒状でもよい。
【実施例】
【0207】
次に、本発明の実施例1~4および比較例1~5の非水電解液二次電池用正極について説明する。実施例1~4は、
図1に示す非水電解液二次電池用正極1の一例である。
【0208】
先ず、実施例1~4の非水電解液二次電池用正極と比較例1~5の非水電解液二次電池用正極の作製方法について説明する。
実施例1、実施例2および比較例1において、正極活物質体として、ニッケル含有量が80mol%のニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(NCA)を用いた。実施例1、実施例2および比較例1ともに、この正極活物質体を大気中に1日放置した。その後、正極活物質体と、アクリル系バインダーと、アセチレンブラックおよびグラファイトと、溶媒または分散媒としての水と、弱酸性化合物および/又は弱塩基性化合物等のpH調整剤と、増粘剤等の添加剤とを混合することにより、スラリーを作製した。実施例1、実施例2および比較例1の各々において、作製されたスラリーを電池のスラリーとして使用できるように、混合物のpH、粘度等に応じて、pH調整剤と増粘剤の種類と量を調整した。アセチレンブラックは、直径が1μm以下の導電材粒子である。以下において、アセチレンブラックを、単に「導電材粒子」と称することがある。グラファイトは、直径が1μmを超える、導電性を有する物質である。アクリル系バインダーは、水系バインダーの一種である。その後、スラリーを集電体(アルミニウム箔)に塗布した。その後、スラリーを乾燥させた。乾燥させたスラリーと集電体を、集電体の厚み方向にプレス加工した。これにより非水電解液二次電池用正極が得られた。実施例1、実施例2および比較例1において、スラリーに混合したpH調整剤の種類は異なる。
本明細書において、大気は、地球の表層をおおう気体であり、且つ、成分、湿度および温度などが人為的に調整されていないものとする。ここで、成分とは、例えば、窒素や酸素等の比率である。また、本明細書において、空気は、大気の成分、湿度および温度などの要素の少なくとも1つが人為的に調整されたものでもよく、人為的に調整されていないものでもよい。大気は、空気の一種である。
【0209】
次に、比較例2の非水電解液二次電池用正極の作製方法について説明する。
正極活物質体として、実施例1、実施例2および比較例1と同じく、ニッケル含有量が80mol%のニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(NCA)を用いた。この正極活物質体を大気中に1日放置した。その後、正極活物質体と、アクリル系バインダーと、アセチレンブラックと、グラファイトと、分散媒としての水とを混合した。混合時に、炭酸ガスを通気させた。これにより、スラリーを作製した。その後、スラリーを集電体(アルミニウム箔)に塗布した。その後、スラリーを乾燥させた。実施例1、実施例2および比較例1と同じ電極密度の正極が得られるように、乾燥させたスラリーと集電体を、集電体の厚み方向にプレス加工した。これにより非水電解液二次電池用正極が得られた。比較例2において、スラリーに混合したpH調整剤の種類は、実施例1、実施例2および比較例1と異なる。
【0210】
次に、比較例3の非水電解液二次電池用正極の作製方法について説明する。
正極活物質体として、実施例1、2および比較例1、2と同じく、ニッケル含有量が80mol%のニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(NCA)を用いた。正極活物質体と、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)と、アセチレンブラックおよびグラファイトと、分散媒としてのNMP(N-メチルー2-ピロリドン)とを混合し、スラリーを作製した。PVDFは、有機溶媒系バインダーの一種である。その後、スラリーを集電体(アルミニウム箔)に塗布した。その後、スラリーを乾燥させた。実施例1、実施例2、比較例1および比較例2の正極と同じ電極密度の正極が得られるように、乾燥させたスラリーと集電体を、集電体の厚み方向にプレス加工した。これにより非水電解液二次電池用正極が得られた。比較例3の正極の作製は、従来の有機溶媒系バインダーを含む正極を作製する環境とは異なり、低湿度環境において行われた。低湿度環境は、湿度の低い空気が存在する環境である。低湿度環境において、正極活物質体は空気中の水とほぼ触れない。それにより、従来の有機溶媒系バインダーを含む正極の作製時とは異なり、スラリー作製前と、スラリー作製中を含む電極作製時に、正極活物質体が大気とほぼ触れなかった。
【0211】
次に、実施例3の非水電解液二次電池用正極の作製方法について説明する。
正極活物質体として、ニッケル含有量が50mol%のニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)を用いた。この正極活物質体を用いた以外は、実施例1、実施例2および比較例1と同じ手順および同じ材質で非水電解液二次電池用正極を作製した。但し、実施例3において、スラリーに混合したpH調整剤の種類は、実施例1、実施例2および比較例1と異なる。
【0212】
次に、比較例4の非水電解液二次電池用正極の作製方法について説明する。
正極活物質体として、実施例3と同じく、ニッケル含有量が50mol%のニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)を用いた。この正極活物質体を用いた以外は、比較例3と同じ手順および同じ材質で非水電解液二次電池用正極を作製した。
【0213】
次に、実施例4の非水電解液二次電池用正極の作製方法について説明する。
正極活物質体として、ニッケル含有量が33mol%のニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)を用いた。この正極活物質体を用いた以外は、実施例1、実施例2、実施例3および比較例1と同じ手順および同じ材質での非水電解液二次電池用正極を作製した。実施例4において、スラリーに混合したpH調整剤の種類は、実施例3と同じである。
【0214】
次に、比較例5の非水電解液二次電池用正極の作製方法について説明する。
正極活物質体として、実施例4と同じく、ニッケル含有量が33mol%のニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)を用いた。この正極活物質体を用いた以外は、比較例3と同じ手順および同じ材質で非水電解液二次電池用正極を作製した。
【0215】
実施例1~4と比較例1~5の非水電解液二次電池用正極を用いて非水電解液二次電池を作製した。作製方法は、本発明の実施形態の具体例で述べた方法と同じである。実施例1~4と比較例1~5において、負極、セパレータ、および非水電解液の種類は全て同じとした。
【0216】
実施例1~4と比較例1~5の非水電解液二次電池用正極を用いてハーフセル(単極)のCR2032型コイン電池を作製した。一般的な正極ハーフセル(正極単極)と同じく、負極の代わりに、リチウムを使用した。
【0217】
走査型電子顕微鏡によって、実施例1~4と比較例1~5の非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像を、バインダーおよび添加剤が全く映らないかほぼ映らない条件で撮影した。実施例1~4の正極の表面の撮影箇所は、異なる2箇所(場所Xと場所Y)とした。比較例1~5の正極の表面の撮影箇所は、1箇所とした。また、参考として、実施例1~4と比較例1~4のプレス加工前の正極の表面の電子顕微鏡画像を撮影した。プレス加工前の正極の表面の電子顕微鏡画像は、実施例1~4と比較例1~4の非水電解液二次電池用正極の作製時において、プレス加工前に撮影された画像である。実施例1~4のプレス加工前の正極の表面の撮影箇所は、異なる2箇所(場所Zと場所W)とした。比較例1~4のプレス加工前の正極の表面の撮影箇所は、1箇所とした。
【0218】
実施例1~4と比較例1~5の撮影条件は全て同じとした。実施例1~4と比較例1~5の電子顕微鏡画像は、二次電子像である。走査型電子顕微鏡の加速電圧は、20kVとした。
図3~23は、実施例1~4と比較例1~5の、プレス加工前およびプレス加工後の非水電解液二次電池用正極の表面の電子顕微鏡画像である。
図3~23に示す電子顕微鏡画像は、拡大倍率が2,000倍、4,000倍および6,000倍で撮影されたものである。
図3~23の電子顕微鏡画像に、バインダーおよび添加剤が映っていない。
【0219】
<1>電子顕微鏡画像の画像解析
[正極活物質体のニッケル含有量が80mol%]
〈実施例1〉
図3は、実施例1の正極の表面の一部である場所Xの電子顕微鏡画像である。
図3の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図3の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部である。
図3の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図3の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部であり、
図3の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部でもある。
図3の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と、正極活物質体同士を連結する連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、導電材粒子の粒状感のある粒状感表面部と、粒状感表面部よりも粒状感のない非粒状感表面部が確認された。
図3の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図3の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
図3の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、粒状感表面部を線で囲んだ。
図3の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、非粒状感表面部を線で囲んだ。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部に、導電材粒子は露出していなかった。線で囲んだ非粒状感表面部に、導電材粒子以外の物質が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部より、粒状感がない。
【0220】
線で囲んだ粒状感表面部および線で囲んだ非粒状感表面部は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。線で囲んだ粒状感表面部は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子を10個以上含む領域である。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部において電子顕微鏡画像に映った導電材粒子を10個以上含む領域より大きい。導電材粒子は粒状感表面部でも非粒状感表面部でも同じように分散している。そのため、線で囲んだ非粒状感表面部も、導電材粒子を10個以上含む領域であると考えられる。
【0221】
図4は、実施例1の正極の表面の一部である場所Yの電子顕微鏡画像である。場所Yは、場所Xと異なる。場所Yの全体は、場所Xの少なくとも一部と一致しない。また、場所Yの一部は、場所Xの少なくとも一部と一致しない。
図4の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図4の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部である。
図4の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部が確認された。
図4の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図4の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
図4の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、粒状感表面部を線で囲んだ。
図4の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、非粒状感表面部の1つを線で囲んだ。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部において、導電材粒子以外の物質が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部より、粒状感がない。
【0222】
図3および
図4の各電子顕微鏡画像をそれぞれ二値化処理することにより、各電子顕微鏡画像における非粒状感表面部、粒状感表面部および電子顕微鏡全体のそれぞれに占める暗領域の面積の比率を算出した。電子顕微鏡画像の輝度値は、0以上255以下で表した。凹部を示す暗領域と凸部を示す明領域の境界となる輝度値を、二値化処理の閾値とした。
図3および
図4の各電子顕微鏡画像における非粒状感表面部、粒状感表面部および電子顕微鏡全体のそれぞれに占める暗領域の面積の比率を算出するときの二値化処理の閾値は同じにした。さらに、同じ場所の電子顕微鏡画像に対して使用する閾値は同じにした。具体的には、
図3に示す場所Xの2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、二値化処理で用いた閾値は、輝度値101とした。
図4に示す場所Yの4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、二値化処理で用いた閾値は、輝度値48とした。二値化処理および暗領域の比率の計算には、画像解析ソフト「ImageJ」を用いた。実施例2~4および比較例1~5でも同様のソフトを使用した。以下の説明において、二値化処理によって算出された、ある領域に占める暗領域の面積の比率を、ある領域の暗領域の比率という。なお、電子顕微鏡画像の輝度値の範囲は、0以上255以下以外の範囲としてもよい。
【0223】
表2は、
図3および
図4に示す各電子顕微鏡画像の二値化処理の結果を示している。
【0224】
【0225】
図3の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図4の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれにおいて、非粒状感表面部の暗領域の比率は、粒状感表面部の暗領域の比率より小さい。
図3の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図4の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの非粒状感表面部の暗領域の比率は、
図3の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図4の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの粒状感表面部の暗領域の比率より小さい。
【0226】
図3の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図4の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの非粒状感表面部の暗領域の比率は、
図3の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図4の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より小さい。
【0227】
図3の2,000倍および4,000倍の電子顕微鏡画像と
図4の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの粒状感表面部の暗領域の比率は、
図3の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図4の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
図3の6,000倍の電子顕微鏡画像の粒状感表面部の暗領域の比率は、
図3の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図4の6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
図3の6,000倍の電子顕微鏡画像の粒状感表面部の暗領域の比率は、
図4の4,000倍の電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率と同じである。
【0228】
図5は、実施例1のプレス加工前の正極の表面の一部である場所Zおよび場所Wの電子顕微鏡画像である。場所Zは、場所Wと異なる。場所Zの全体は、場所Wの少なくとも一部と一致しない。また、場所Zの一部は、場所Wの少なくとも一部と一致しない。場所Zの6,000倍の電子顕微鏡画像および場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と連結部が確認された。場所Zの6,000倍の電子顕微鏡画像および場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部が確認された。
図5の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図5の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
場所Zの6,000倍の電子顕微鏡画像において、粒状感表面部と非粒状感表面部を線で囲んでいる。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部に、導電材粒子は露出していなかった。線で囲んだ非粒状感表面部に、導電材粒子以外の物質が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部より、粒状感がない。
場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像において、粒状感表面部と非粒状感表面部を線で囲んでいる。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部において、導電材粒子以外の物質が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部より、粒状感がない。
【0229】
このことから、プレス加工後に撮影された
図3および
図4の正極の表面の電子顕微鏡画像に確認された非粒状感表面部は、プレス加工前に既に存在したことがわかる。したがって、実施例1の正極において、非粒状感表面部は、正極をプレス加工したときに導電材粒子が押し潰されたことによって形成されたものではない。
【0230】
〈実施例2〉
図6は、実施例2の正極の表面の一部である場所Xの電子顕微鏡画像である。
図6の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図6の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部である。
図6の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図6の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部であり、
図6の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部でもある。
図6の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と、正極活物質体同士を連結する連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、導電材粒子の粒状感のある粒状感表面部と、粒状感表面部よりも粒状感のない非粒状感表面部が確認された。
図6の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図6の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
図6の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、粒状感表面部を線で囲んだ。
図6の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、非粒状感表面部を線で囲んだ。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部において、導電材粒子以外の物質が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部より、粒状感がない。
【0231】
線で囲んだ粒状感表面部および線で囲んだ非粒状感表面部は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。線で囲んだ粒状感表面部は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子を10個以上含む領域である。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部において電子顕微鏡画像に映った導電材粒子を10個以上含む領域より大きい。導電材粒子は粒状感表面部でも非粒状感表面部でも同じように分散している。そのため、線で囲んだ非粒状感表面部も、導電材粒子を10個以上含む領域であると考えられる。
【0232】
図7は、実施例2の正極の表面の一部である場所Yの電子顕微鏡画像である。場所Yは、場所Xと異なる。場所Yの全体は、場所Xの少なくとも一部と一致しない。また、場所Yの一部は、場所Xの少なくとも一部と一致しない。
図7の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図7の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部ではない。
図7の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部が確認された。
図7の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図7の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
図7の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、粒状感表面部を線で囲んだ。
図7の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、非粒状感表面部の1つを線で囲んだ。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部において、導電材粒子以外の物質が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部より、粒状感がない。
【0233】
図6および
図7の各電子顕微鏡画像を二値化処理することにより、各電子顕微鏡画像における非粒状感表面部、粒状感表面部および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出した。電子顕微鏡画像の輝度値は、0以上255以下で表した。
図6および
図7の各電子顕微鏡画像における非粒状感表面部、粒状感表面部および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出するときの二値化処理の閾値は同じにした。さらに、
図6および
図7に示す各電子顕微鏡画像に対して使用する閾値は同じにした。実施例2において、二値化処理で用いた閾値は、輝度値117とした。
【0234】
表3は、
図6および
図7に示す各電子顕微鏡画像の二値化処理の結果を示している。
【0235】
【0236】
図6の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図7の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれにおいて、非粒状感表面部の暗領域の比率は、粒状感表面部の暗領域の比率より小さい。
図6の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図7の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの非粒状感表面部の暗領域の比率は、
図6の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図7の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの粒状感表面部の暗領域の比率より小さい。
【0237】
図6の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図7の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの非粒状感表面部の暗領域の比率は、
図6の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図7の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より小さい。
【0238】
図6の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図7の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの粒状感表面部の暗領域の比率は、
図6の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図7の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
【0239】
図8は、実施例2のプレス加工前の正極の表面の一部である場所Zおよび場所Wの電子顕微鏡画像である。場所Zは、場所Wと異なる。場所Zの全体は、場所Wの少なくとも一部と一致しない。また、場所Zの一部は、場所Wの少なくとも一部と一致しない。場所Zの6,000倍の電子顕微鏡画像および場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と連結部が確認された。場所Zの6,000倍の電子顕微鏡画像および場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部が確認された。
図8の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図8の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
場所Zの6,000倍の電子顕微鏡画像および場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれにおいて、粒状感表面部と非粒状感表面部を線で囲んでいる。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部において、導電材粒子以外の物質が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部より、粒状感がない。
【0240】
このことから、プレス加工後に撮影された
図6および
図7の正極の表面の電子顕微鏡画像に確認された非粒状感表面部は、プレス加工前に既に存在したことがわかる。したがって、実施例2の正極において、非粒状感表面部は、正極をプレス加工したときに導電材粒子が押し潰されたことによって形成されたものではない。
【0241】
〈比較例1〉
図9は、比較例1の正極の表面の一部の電子顕微鏡画像である。
図9の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図9の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部である。
図9の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図9の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部であり、
図9の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部でもある。
図9の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と、正極活物質体同士を連結する連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、全体的に導電材粒子の粒状感を有していた。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、粒状感のない部分を有していなかった。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面全体に、導電材粒子が露出していた。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面全体に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
図9の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の一部分を線で囲んだ。
線で囲んだ連結部の一部分は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。線で囲んだ連結部の一部分は、導電材粒子を10個以上含む領域である。
【0242】
図9の各電子顕微鏡画像を二値化処理することにより、各電子顕微鏡画像における、線で囲んだ連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出した。電子顕微鏡画像の輝度値は、0以上255以下で表した。
図9の各電子顕微鏡画像における、連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出するときの二値化処理の閾値は同じにした。比較例1において、二値化処理で用いた閾値は、輝度値117とした。
【0243】
表4は、
図9に示す各電子顕微鏡画像の二値化処理の結果を示している。
【0244】
【0245】
図9の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれにおいて、連結部の一部分の暗領域の比率は、電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
図9の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの連結部の一部分の暗領域の比率は、
図9の2,000倍、4,000倍および6,000倍のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
【0246】
図10は、比較例1のプレス加工前の正極の表面の電子顕微鏡画像である。
図10の6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と連結部が確認された。
図10の6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、全体的に導電材粒子の粒状感を有していた。連結部の表面全体に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
【0247】
比較例1の正極において、プレス加工前とプレス加工後のいずれにおいても、連結部の表面は、全体的に粒状感を有していた。このことから、正極を作製する過程で行われたプレス加工は、比較例1の連結部の表面の粒状感に影響しないと考えられる。
【0248】
〈比較例2〉
図11は、比較例2の正極の表面の一部の電子顕微鏡画像である。
図11の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図11の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象と異なる。
図11の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の全体は、
図11の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の少なくとも一部と一致しない。
図11の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部は、
図11の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の少なくとも一部と一致しない。
図11の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図11の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象と異なる。
図11の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の全体は、
図11の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の少なくとも一部と一致しない。
図11の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部は、
図11の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の少なくとも一部と一致しない。
図11の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図11の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部である。
図11の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と、正極活物質体同士を連結する連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、全体的に導電材粒子の粒状感を有していた。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、粒状感のない部分を有していなかった。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面全体に、導電材粒子が露出していた。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面全体に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図11の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の一部分を線で囲んだ。
線で囲んだ連結部の一部分は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。線で囲んだ連結部の一部分は、導電材粒子を10個以上含む領域である。
【0249】
図11の各電子顕微鏡画像を二値化処理することにより、各電子顕微鏡画像における、線で囲んだ連結部の一部分および電子顕微鏡全体のぞれぞれの暗領域の比率を算出した。電子顕微鏡画像の輝度値は、0以上255以下で表した。
図11の2,000倍の電子顕微鏡画像における、連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出するときの二値化処理の閾値は、輝度値112とした。
図11の4,000倍の電子顕微鏡画像における、連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出するときの二値化処理の閾値は、輝度値101とした。
図11の6,000倍の電子顕微鏡画像における、連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出するときの二値化処理の閾値は、輝度値101とした。
【0250】
表5は、
図11に示す各電子顕微鏡画像の二値化処理の結果を示している。
【0251】
【0252】
図11の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれにおいて、連結部の一部分の暗領域の比率は、電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
図11の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの連結部の一部分の暗領域の比率は、
図11の2,000倍、4,000倍および6,000倍のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
【0253】
図12は、比較例2のプレス加工前の正極の表面の電子顕微鏡画像である。
図12の6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と連結部が確認された。
図12の6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、全体的に導電材粒子の粒状感を有していた。プレス加工前とプレス加工後のいずれにおいても、連結部の表面は、粒状感を有していた。
図12の電子顕微鏡画像において、連結部の表面全体に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
【0254】
比較例2の正極において、プレス加工前とプレス加工後のいずれにおいても、連結部の表面は、全体的に粒状感を有していた。このことから、正極を作製する過程で行われたプレス加工は、比較例2の連結部の表面の粒状感に影響しないと考えられる。
【0255】
〈比較例3〉
図13は、比較例3の正極の表面の一部の電子顕微鏡画像である。
図13の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図13の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部である。
図13の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図13の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部であり、
図13の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部でもある。
図13の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と、正極活物質体同士を連結する連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、全体的に導電材粒子の粒状感を有していた。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、粒状感のない部分を有していなかった。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面全体に、導電材粒子が露出していた。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面全体に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
図13の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の一部分を線で囲んだ。
線で囲んだ連結部の一部分は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。線で囲んだ連結部の一部分は、導電材粒子を10個以上含む領域である。
【0256】
図13の各電子顕微鏡画像を二値化処理することにより、各電子顕微鏡画像における、線で囲んだ連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出した。電子顕微鏡画像の輝度値は、0以上255以下で表した。
図13の各電子顕微鏡画像における、連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出するときの二値化処理の閾値は同じにした。比較例3において、二値化処理で用いた閾値は、輝度値117とした。
【0257】
表6は、
図13に示す各電子顕微鏡画像の二値化処理の結果を示している。
【0258】
【0259】
図13の2,000倍および4,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれにおいて、連結部の一部分の暗領域の比率は、電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
図13の6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の一部分の暗領域の比率は、電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より小さい。
【0260】
図13の2,000倍の電子顕微鏡画像の連結部の一部分の暗領域の比率は、
図13の4,000倍および6,000倍のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より小さい。
図13の4,000倍の電子顕微鏡画像の連結部の一部分の暗領域の比率は、
図13の2,000倍および6,000倍のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より小さい。
図13の6,000倍の電子顕微鏡画像の連結部の一部分の暗領域の比率は、
図13の2,000倍の電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
図13の6,000倍の電子顕微鏡画像の連結部の一部分の暗領域の比率は、
図13の4,000倍の電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より小さい。
【0261】
図14は、比較例3のプレス加工前の正極表面の電子顕微鏡画像である。
図14の6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と連結部が確認された。
図14の6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、全体的に導電材粒子の粒状感を有していた。プレス加工前とプレス加工後のいずれにおいても、連結部の表面は、粒状感を有していた。
図14の電子顕微鏡画像において、連結部の表面全体に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
【0262】
比較例3の正極において、プレス加工前とプレス加工後のいずれにおいても、連結部の表面は、全体的に粒状感を有していた。このことから、正極を作製する過程で行われたプレス加工は、比較例3の連結部の表面の粒状感に影響しないと考えられる。
【0263】
[正極活物質体のニッケル含有量が50mol%]
〈実施例3〉
図15は、実施例3の正極表面の一部である場所Xの電子顕微鏡画像である。
図15の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図15の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部である。
図15の6,000倍の電子顕微鏡画像は、
図15の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部であり、
図15の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部でもある。
図15の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と、正極活物質体同士を連結する連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、導電材粒子の粒状感のある粒状感表面部と、粒状感表面部よりも粒状感のない非粒状感表面部が確認された。
図15の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図15の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
図15の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、粒状感表面部を線で囲んだ。
図15の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、非粒状感表面を線で囲んだ。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部において、導電材粒子以外の物質が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部より、粒状感がない。
【0264】
線で囲んだ粒状感表面部および線で囲んだ非粒状感表面部は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。線で囲んだ粒状感表面部は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子を10個以上含む領域である。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部において電子顕微鏡画像に映った導電材粒子を10個以上含む領域より大きい。導電材粒子は粒状感表面部でも非粒状感表面部でも同じように分散している。そのため、線で囲んだ非粒状感表面部も、導電材粒子を10個以上含む領域であると考えられる。
【0265】
図16は、実施例3の正極の表面の一部である場所Yの電子顕微鏡画像である。場所Yは、場所Xと異なる。場所Yの全体は、場所Xの少なくとも一部と一致しない。また、場所Yの一部は、場所Xの少なくとも一部と一致しない。
図16の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図16の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部ではない。
図16の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部が確認された。
図16の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図16の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
図16の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、粒状感表面部を線で囲んだ。
図16の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、非粒状感表面部の1つを線で囲んだ。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部において、導電材粒子以外の物質が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部より、粒状感がない。
【0266】
図15および
図16の各電子顕微鏡画像を二値化処理することにより、各電子顕微鏡画像における非粒状感表面部、粒状感表面部および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出した。電子顕微鏡画像の輝度値は、0以上255以下で表した。
図15および
図16の各電子顕微鏡画像における非粒状感表面部、粒状感表面部および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出するときの二値化処理の閾値は同じにした。さらに、
図15および
図16に示す各電子顕微鏡画像に対して使用する閾値は同じにした。実施例3において、二値化処理で用いた閾値は、輝度値84とした。
【0267】
表7は、
図15および
図16に示す各電子顕微鏡画像の二値化処理の結果を示している。
【0268】
【0269】
図15の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図16の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれにおいて、非粒状感表面部の暗領域の比率は、粒状感表面部の暗領域の比率より小さい。
図15の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図16の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの非粒状感表面部の暗領域の比率は、
図15の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図16の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの粒状感表面部の暗領域の比率より小さい。
【0270】
図15の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図16の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの非粒状感表面部の暗領域の比率は、
図15の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図16の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より小さい。
図15の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図16の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの粒状感表面部の暗領域の比率は、
図15の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図16の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
【0271】
図17は、実施例3のプレス加工前の正極の表面の一部である場所Zおよび場所Wの電子顕微鏡画像である。場所Zは、場所Wと異なる。場所Zの全体は、場所Wの少なくとも一部と一致しない。また、場所Zの一部は、場所Wの少なくとも一部と一致しない。場所Zの6,000倍の電子顕微鏡画像および場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と連結部が確認された。場所Zの6,000倍の電子顕微鏡画像および場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部が確認された。場所Zの6,000倍の電子顕微鏡画像および場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれにおいて、粒状感表面部と非粒状感表面部を線で囲んでいる。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部において、導電材粒子以外の物質が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部より、粒状感がない。
図17の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
【0272】
このことから、プレス加工後に撮影された
図15および
図16の正極の表面の電子顕微鏡画像において確認された非粒状感表面部は、プレス加工前に既に存在したことがわかる。したがって、実施例3の正極において、非粒状感表面部は、正極をプレス加工したときに導電材粒子が押し潰されたことによって形成されたものではない。
【0273】
〈比較例4〉
図18は、比較例4の正極の表面の一部の電子顕微鏡画像である。
図18の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図18の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象と異なる。
図18の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の全体は、
図18の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の少なくとも一部と一致しない。
図18の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部は、
図18の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の少なくとも一部と一致しない。
図18の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図18の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象と異なる。
図18の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の全体は、
図18の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の少なくとも一部と一致しない。
図18の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部は、
図18の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の少なくとも一部と一致しない。
図18の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図18の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部である。
図18の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と、正極活物質体同士を連結する連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、全体的に導電材粒子の粒状感を有していた。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、粒状感のない部分を有していなかった。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面全体に、導電材粒子が露出していた。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面全体に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図18の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の一部分を線で囲んだ。
線で囲んだ連結部の一部分は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。線で囲んだ連結部の一部分は、導電材粒子を10個以上含む領域である。
【0274】
図18の各電子顕微鏡画像を二値化処理することにより、各電子顕微鏡画像における、線で囲んだ連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出した。電子顕微鏡画像の輝度値は、0以上255以下で表した。
図18の2,000倍の電子顕微鏡画像における、連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出するときの二値化処理の閾値は、輝度値80とした。
図18の4,000倍の電子顕微鏡画像における、連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出するときの二値化処理の閾値は、輝度値101とした。
図18の6,000倍の電子顕微鏡画像における、連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出するときの二値化処理の閾値は、輝度値101とした。
【0275】
表8は、
図18に示す各電子顕微鏡画像の二値化処理の結果を示している。
【0276】
【0277】
図18の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれにおいて、連結部の一部分の暗領域の比率は、電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
図18の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの連結部の一部分の暗領域の比率は、
図18の2,000倍、4,000倍および6,000倍のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
【0278】
図19は、比較例4のプレス加工前の正極の表面の電子顕微鏡画像である。
図19の6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と連結部が確認された。
図19の6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、全体的に導電材粒子の粒状感を有していた。プレス加工前とプレス加工後のいずれにおいても、連結部の表面は、粒状感を有していた。
図19の電子顕微鏡画像において、連結部の表面全体に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図19の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
【0279】
比較例4の正極において、プレス加工前とプレス加工後のいずれにおいても、連結部の表面は、全体的に粒状感を有していた。このことから、正極を作製する過程で行われたプレス加工は、比較例4の連結部の表面の粒状感に影響しないと考えられる。
【0280】
[正極活物質体のニッケル含有量が33mol%]
〈実施例4〉
図20は、実施例4の正極表面の一部である場所Xの電子顕微鏡画像である。
図20の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図20の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部である。
図20の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図20の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部であり、
図20の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部でもある。
図20の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と、正極活物質体同士を連結する連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、導電材粒子の粒状感のある粒状感表面部と、粒状感表面部よりも粒状感のない非粒状感表面部が確認された。
図20の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図20の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
図20の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、粒状感表面部を線で囲んだ。
図20の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、非粒状感表面部を線で囲んだ。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部において、導電材粒子以外の物質が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部より、粒状感がない。
【0281】
線で囲んだ粒状感表面部および線で囲んだ非粒状感表面部は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。線で囲んだ粒状感表面部は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子を10個以上含む領域である。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部において電子顕微鏡画像に映った導電材粒子を10個以上含む領域より大きい。導電材粒子は粒状感表面部でも非粒状感表面部でも同じように分散している。そのため、線で囲んだ非粒状感表面部も、導電材粒子を10個以上含む領域であると考えられる。
【0282】
図21は、実施例4の正極の表面の一部である場所Yの電子顕微鏡画像である。場所Yは、場所Xと異なる。場所Yの全体は、場所Xの少なくとも一部と一致しない。また、場所Yの一部は、場所Xの少なくとも一部と一致しない。
図21の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図21の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部でもある。
図21の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部が確認された。
図21の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、粒状感表面部を線で囲んだ。
図21の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、非粒状感表面部の1つを線で囲んだ。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部において、導電材粒子以外の物質が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部は、線で囲んだ粒状感表面部より、粒状感がない。
【0283】
図20および
図21の各電子顕微鏡画像をそれぞれ二値化処理することにより、各電子顕微鏡画像における非粒状感表面部、粒状感表面部および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出した。電子顕微鏡画像の輝度値は、0以上255以下で表した。
図20および
図21の各電子顕微鏡画像における非粒状感表面部、粒状感表面部および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出するときの二値化処理の閾値は同じにした。さらに、
図20および
図21に示す各電子顕微鏡画像に対して使用する閾値は同じにした。実施例4において、二値化処理で用いた閾値は、輝度値117とした。
【0284】
表9は、
図20および
図21に示す各電子顕微鏡画像の二値化処理の結果を示している。
【0285】
【0286】
図20の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図21の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれにおいて、非粒状感表面部の暗領域の比率は、粒状感表面部の暗領域の比率より小さい。
図20の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図21の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの非粒状感表面部の暗領域の比率は、
図20の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図21の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの粒状感表面部の暗領域の比率より小さい。
【0287】
図20の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図21の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの非粒状感表面部の暗領域の比率は、
図20の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図21の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より小さい。
【0288】
図20の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの粒状感表面部の暗領域の比率は、
図20の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図21の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
図21の4,000倍の電子顕微鏡画像の粒状感表面部の暗領域の比率は、
図20の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像と
図21の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より小さい。
図21の6,000倍の電子顕微鏡画像の粒状感表面部の暗領域の比率は、
図20の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より大きい。
図21の6,000倍の電子顕微鏡画像の粒状感表面部の暗領域の比率は、
図21の4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より小さい。
【0289】
図22は、実施例4のプレス加工前の正極の表面の一部である場所Zおよび場所Wの電子顕微鏡画像である。場所Zは、場所Wと異なる。場所Zの全体は、場所Wの少なくとも一部と一致しない。また、場所Zの一部は、場所Wの少なくとも一部と一致しない。場所Zの6,000倍の電子顕微鏡画像および場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と連結部が確認された。場所Zの6,000倍の電子顕微鏡画像および場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部が確認された。場所Zの6,000倍の電子顕微鏡画像および場所Wの6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれにおいて、粒状感表面部と非粒状感表面部を線で囲んでいる。線で囲んだ粒状感表面部のほぼ全域において、導電材粒子が露出していた。線で囲んだ非粒状感表面部に、導電材粒子は露出していなかった。
図22の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図22の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、直径が1μmを超えるグラファイトは確認されない。
【0290】
このことから、プレス加工後に撮影された
図20および
図21の正極の表面の電子顕微鏡画像において確認された非粒状感表面部は、プレス加工前に既に存在したことがわかる。したがって、実施例4の正極において、非粒状感表面部は、正極をプレス加工したときに導電材粒子が押し潰されたことによって形成されたものではない。
【0291】
〈比較例5〉
図23は、比較例5の正極の表面の一部の電子顕微鏡画像である。
図23の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図23の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部である。
図23の6,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象は、
図23の2,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部であり、
図23の4,000倍の電子顕微鏡画像の撮影対象の一部でもある。
図23の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像に、正極活物質体と、正極活物質体同士を連結する連結部が確認された。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、全体的に導電材粒子の粒状感を有していた。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面は、粒状感のない部分を有していなかった。各倍率の電子顕微鏡画像において、連結部の表面全体に、導電材粒子が露出していた。
図23の各電子顕微鏡画像において、連結部の表面に確認された導電材粒子は、粒状のアセチレンブラックである。
図23の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の一部分を線で囲んだ。
線で囲んだ連結部の一部分は、電子顕微鏡画像に映った導電材粒子の直径の1/2を2乗したものに円周率を乗じることによって得られた値の10倍以上である。線で囲んだ連結部の一部分は、導電材粒子を10個以上含む領域である。
【0292】
図23の各電子顕微鏡画像を二値化処理することにより、各電子顕微鏡画像における、線で囲んだ連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出した。電子顕微鏡画像の輝度値は、0以上255以下で表した。
図23の各電子顕微鏡画像における、連結部の一部分および電子顕微鏡全体のそれぞれの暗領域の比率を算出するときの二値化処理の閾値を同じにした。比較例5において、二値化処理で用いた閾値は、輝度値117とした。
【0293】
表10は、
図23に示す各電子顕微鏡画像の二値化処理の結果を示している。
【0294】
【0295】
図23の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれにおいて、連結部の一部分の暗領域の比率は、電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より小さい。
図23の2,000倍、4,000倍および6,000倍の電子顕微鏡画像のそれぞれの連結部の一部分の暗領域の比率は、
図10の2,000倍、4,000倍および6,000倍のそれぞれの電子顕微鏡画像全体の暗領域の比率より小さい。
【0296】
<2>電池性能の評価
実施例1~4および比較例1~5の非水電解液二次電池の性能を評価した。
【0297】
<2-1>0.1C放電容量比
作製したCR2032型電池を用い、実施例1~4および比較例1~5の正極ハーフセルの0.1C放電容量を電圧4.3~3.0Vの範囲でそれぞれ測定した。正極ハーフセルの0.1C放電容量は、正極活物質粒子の重量当たりの0.1C放電容量である。それぞれの正極ハーフセルの0.1C放電容量は、25±2℃の環境下で測定した。
正極活物質体のニッケル含有量が80mol%の実施例1、2および比較例1~3において、有機溶媒系バインダーを使用した比較例3の正極ハーフセルの0.1C放電容量を、各材料における0.1C最大放電容量とした。実施例1、2および比較例1~3の測定された結果に基づいて下記式により0.1C放電容量比を算出した。その結果を表11に示す。
0.1C放電容量比=(0.1C放電容量/0.1C最大放電容量)×100
正極活物質体のニッケル含有量が50mol%の実施例3および比較例4において、有機溶媒系バインダーを使用した比較例4の正極ハーフセルの0.1C放電容量を、各材料における0.1C最大放電容量とした。実施例3および比較例4の測定された結果に基づいて上記式により0.1C放電容量比を算出した。その結果を表12に示す。
正極活物質体のニッケル含有量が33mol%の実施例4および比較例5において、有機溶媒系バインダーを使用した比較例5の正極ハーフセルの0.1C放電容量を、各材料における0.1C最大放電容量とした。実施例4および比較例5の測定された結果に基づいて上記式により0.1C放電容量比を算出した。その結果を表13に示す。
【0298】
<2-2>0.1C初回充放電効率
CR2032型電池を用い、実施例1~4および比較例1~5の正極ハーフセルの初回の充放電における0.1C充電容量および0.1C放電容量をそれぞれ測定した。25±2℃の環境下で、電流0.1C、充電終止電圧4.3Vおよび充電終止電流0.02Cの条件で定電流定電圧充電を行い、0.1C充電容量を測定した。その後、0.1Cの定電流で放電終止電圧3.0Vまで放電させて0.1C放電容量を測定した。測定結果に基づいて下記の式により0.1C初回充放電効率を算出した。その結果を表11~13に示す。
0.1C初回充放電効率=(0.1C放電容量÷0.1C充電容量)×100
【0299】
<2-3>0.2C充放電効率
CR2032型電池を用い、実施例1~4および比較例1~5の正極ハーフセルの充放電における0.2C充電容量および0.2C放電容量をそれぞれ測定した。25±2℃の環境下で、初回の0.1C充放電を行った後、電流0.2C、充電終止電圧4.3Vおよび充電終止電流0.02Cの条件で定電流定電圧充電を行い、0.2C充電容量を測定した。その後、0.2Cの定電流で放電終止電圧3.0Vまで放電させて0.2C放電容量を測定した。測定結果に基づいて下記の式により0.2C充放電効率を算出した。その結果を表11~13に示す。
0.2C充放電効率=(0.2C放電容量÷0.2C充電容量)×100
【0300】
<2-4>3C/0.2C放電容量比
CR2032型電池を用い、実施例1~4および比較例1~5の正極ハーフセルの0.2C放電容量および3C放電容量を電圧4.3~3.0Vの範囲でそれぞれ測定した。25±2℃の環境下で定電流定電圧充電を行った後、放電終止電圧3.0Vまで放電させて3C放電容量および0.2C放電容量をそれぞれ測定した。定電流定電圧充電は、電流0.2C、充電終止電圧4.3Vおよび充電終止電流0.02Cの条件で行った。3C放電容量は、3Cの電流で放電終止電圧まで放電した場合に取り出された電気量である。3Cは、定電流放電した場合に1/3時間で放電終了となる電流値である。0.2C放電容量は、0.2Cの電流で放電終止電圧まで放電した場合に取り出された電気量である。0.2Cは、定電流放電した場合に5(=1/0.2)時間で放電終了となる電流値である。測定結果に基づいて下記の式により3C/0.2C放電容量比を算出した。その結果を表11~13に示す。
3C/0.2C放電容量比=(3C放電容量比/0.2C放電容量比)×100
3C/0.2C放電容量比が小さいほど、正極の抵抗が大きい。
【0301】
<2-5>単極20サイクル目の容量維持率
CR2032型電池を用い、実施例1~4および比較例1~5の正極ハーフセル(正極単極)の充電と放電を繰り返す試験を行った。1回の充電と放電を1サイクルとカウントし、各正極ハーフセルにこのサイクルを20回行った。1サイクル目の放電時の放電容量と、20サイクル目の放電時の放電容量を測定した。測定結果に基づいて下記式により容量維持率を算出した。その結果を表11~13に示す。
単極20サイクル目の容量維持率=(20サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0302】
<2-6>屈曲剥離試験
実施例1~4および比較例1~5の正極の屈曲剥離試験を行った。屈曲剥離試験は、JIS K5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験を採用した。この試験には、直径3mmの円筒形マンドレルを備えた屈曲試験装置を使用した。試験は以下のような手順で行った。まず、マンドレルが集電体に接するように正極の試料片を試験装置に配置した。その後、マンドレルに沿って正極の試料片を折り曲げた。そして、集電体の剥離の有無を目視で確認した。その結果を表11~13に示す。
【0303】
<2-7>剥離強度
実施例1~4および比較例1~5の正極を使って、剥離試験を行った。正極にテープを貼付けた後、テープを正極から引き剥がした。テープを正極から引き剥がすとき、正極に対するテープの角度が180°となるようにした。正極活物質体および連結部が集電体から剥離したときの剥離強度を測定した。剥離強度が6[N/m]を超える場合、正極活物質体および連結部と集電体との接続強度が高い。この場合、電極が腐食していないと判断できる。その結果を表11~13に示す。
【0304】
表11は、ニッケル含有量が80mol%の正極活物質体を用いた実施例1、2および比較例1~3の電池性能の評価結果を示している。表12は、ニッケル含有量が50mol%の正極活物質体を用いた実施例3および比較例4の電池性能の評価結果を示している。表13は、ニッケル含有量が33mol%の正極活物質体を用いた実施例4および比較例5の電池性能の評価結果を示している。
【0305】
【0306】
【0307】
【0308】
表11~13から、以下のことがわかった。
[正極活物質体のニッケル含有量が80mol%]
表11から、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例1および実施例2の0.1C放電容量比は、90%以上であり、実用化レベルであった。
連結部が全体的に粒状感を有する比較例1の0.1C放電容量比は90%未満であり、実用化レベルに至らなかった。
連結部が全体的に粒状感を有する比較例2および比較例3の0.1C放電容量比は、90%以上であり、実用化レベルであった。
【0309】
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例1および実施例2の0.1C初回充放電効率は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例1、比較例2および比較例3の0.1C初回充放電効率より高かった。
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例1および実施例2の0.2C充放電効率は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例1、比較例2および比較例3の0.2C充放電効率より高かった。
【0310】
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例1および実施例2の3C/0.2C放電容量比は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例1および比較例2の3C/0.2C放電容量比より高かった。したがって、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例1および実施例2の正極の抵抗値は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例1および比較例2の正極の抵抗値より低いと推測される。比較例1および比較例2の正極は、水系バインダーを用いて作製された正極である。
【0311】
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例1の3C/0.2C放電容量比は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例3の3C/0.2C放電容量比と同じであった。そのため、実施例1の正極の抵抗値は、比較例3の正極の抵抗値と同等であると推測される。比較例3の正極は、有機溶媒系バインダーを用いて作製された正極である。
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例2の3C/0.2C放電容量比は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例3の3C/0.2C放電容量比より低いが、その差は1%であった。したがって、実施例2の正極の抵抗値は、比較例3の正極の抵抗値より高いが、実施例2の正極の抵抗値と比較例3の正極の抵抗値の差は小さいと推測される。
【0312】
有機溶媒系バインダーを用いて作製された比較例3の正極は、従来の正極を作製する環境とは異なり、低湿度環境下で正極活物質体が空気中の水分とほぼ触れないように細心の注意を払って作製されている。
従来、リチウムとニッケルを含む正極活物質体は、水に対して不安定であることが知られている。リチウムとニッケルを含む正極活物質体は、水と混合することで変質しやすい傾向があることが知られている。また、リチウムとニッケルを含む正極活物質体を空気に曝すと、リチウムとニッケルを含む正極活物質体は空気中の水分によって変質する。空気中の水分により一部が変質した正極活物質体を用いて正極を製造した場合、正極活物質体中には、依然として正極活物質粒子が変質した物質が残っている。正極活物質体中に正極活物質粒子が水分により変質した物質が存在することで、正極の抵抗値は高くなる。
【0313】
従来の正極の製造方法により正極を製造した場合、実施例1、実施例2、比較例1および比較例2の正極を作製した環境と同様に、正極活物質体が大気に比較的長時間触れている。よって、従来の正極に含まれる正極活物質体中に、正極活物質粒子が水分により変質した物質が存在する。そのため、従来の方法により作製された正極の抵抗値は高い。
【0314】
一方、比較例3の正極は、低湿度環境下で正極活物質体が空気中の水分とほぼ触れないように細心の注意を払って作製された。そのため、有機溶媒系バインダーを用いて作製された比較例3の正極の正極活物質体は、従来の、有機溶媒系バインダーを用いて作製された正極の正極活物質体と異なり、水による変質が殆ど生じていない。
したがって、比較例3の正極の抵抗値は、従来の、有機溶媒系バインダーを用いて作製された正極の抵抗値より低い。
また、従来の正極の正極活物質体が大気に比較的長時間触れているため、水分による変質の程度が大きいと考えられる。そのため、正極活物質体が水により殆ど変質していない比較例3の正極の抵抗値と、従来の正極の抵抗値は、ある程度の差があると考えられる。
【0315】
実施例1の正極の抵抗値は、この比較例3の正極の抵抗値と同等であると推測される。よって、実施例1の正極の抵抗値は、従来の、有機溶媒系バインダーを含む正極の抵抗値より低いと推測される。
実施例2の正極の抵抗値は、この比較例3の正極の抵抗値より高いが、実施例2の正極の抵抗値と比較例3の正極の抵抗値の差は小さいと推測される。したがって、実施例2の正極の抵抗値は、従来の、有機溶媒系バインダーを含む正極の抵抗値より低いと考えられる。
【0316】
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例1および実施例2の単極20サイクル目の容量維持率は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例1~3の単極20サイクル目の容量維持率より高かった。したがって、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例1および実施例2の正極の耐久性は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例1~3の正極の耐久性より高いことがわかった。
【0317】
屈曲剥離試験において、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例1および実施例2と、連結部が全体的に粒状感を有する比較例1~3のいずれも、正極活物質体および連結部が集電体から剥離しなかった。このことから、実施例1、実施例2および比較例1~3の正極のいずれも、正極の加工性が高いことがわかった。さらに、剥離試験において、実施例1、実施例2および比較例1~3の剥離強度は、6[N/m]を超えた。屈曲剥離試験と剥離試験の結果から、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例1および実施例2の正極と連結部が全体的に粒状感を有する比較例1~3の正極のいずれにおいても、正極活物質体および連結部と集電体との接続強度が高いため、集電体が腐食していないと判断できる。
【0318】
上述した電池特性の評価結果から、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例1および実施例2の充放電効率は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例1~3の充放電効率より高いことがわかった。
また、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例1および実施例2の電池の耐久性は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例1~3の電池の耐久性より高いことがわかった。
したがって、実施例1および実施例2は、比較例1~3と比較し、電池特性が高い上に、電池の耐久性が高いことがわかった。
【0319】
なお、表11の電池特性の結果から、比較例3は、比較例1および比較例2より、電池特性が高い上に、耐久性が高いと考えられる。この理由として下記が考えられる。
比較例1および比較例2の正極を作製するときは、正極活物質体が大気に比較的長時間触れた。しかし、比較例3の正極は、比較例1および比較例2の正極を作製した環境と異なり、低湿度環境下で、正極活物質体が空気中の水分とほぼ触れないように細心の注意を払って作製された。したがって、比較例3の正極活物質体は、比較例1および比較例2の正極活物質体より、空気中の水分に触れた量が少ない。
また、比較例1および比較例2の正極は、水系バインダーを用いて作製されているため、比較例1および比較例2の正極の作製時に、正極活物質体がバインダーに含まれる水に触れている。しかし、比較例3の正極は、水を含まない有機溶媒系バインダーを用いて作製されている。したがって、比較例3の正極は、バインダーによる水の影響を受けていない。
上記から、比較例3の正極活物質体は、比較例1および比較例2の正極活物質体より、水による変質が少ないと考えられる。そのため、比較例3の正極は、比較例1および比較例2の正極より、電池特性が高い上に、耐久性が高いと考えられる。
【0320】
上記から、実施例1および実施例2は、比較例1~3と比較し、電池特性が高い上に、電池の耐久性が高いことに加えて、正極活物質体の水による変質の影響が少ない比較例3よりも、電池特性が高い上に、電池の耐久性が高いことがわかった。
【0321】
実施例1および実施例2の正極の表面において、プレス加工前およびプレス加工後のいずれにおいても、連結部に、非粒状感表面部と粒状感表面部が確認された。この連結部を有する実施例1および実施例2は、プレス加工前およびプレス加工後のいずれも連結部が全体的に粒状感を有する比較例1~3より、電池特性が高い上に、電池の耐久性が高かった。
【0322】
[正極活物質体のニッケル含有量が50mol%]
表12から、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3の0.1C放電容量比と、連結部が全体的に粒状感を有する比較例4の0.1C放電容量比は、90%以上であり、実用化レベルであった。
【0323】
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3の0.1C初回充放電効率は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例4の0.1C初回充放電効率より高かった。
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3の0.2C充放電効率は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例4の0.2C充放電効率より高かった。
【0324】
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3の3C/0.2C放電容量比は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例4の3C/0.2C放電容量比より高かった。したがって、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3の正極の抵抗値は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例4の正極の抵抗値より低いと推測される。
【0325】
比較例4の正極は、有機溶媒系バインダーを用いて作製された。また、比較例4の正極は、比較例3の正極と同様に、低湿度環境で作製された。そのため、正極作製時に正極活物質体が大気に比較的長時間触れる従来の方法で作製された正極の正極活物質体に比べて、比較例4の正極活物質体は水による変質が殆ど生じていない。したがって、有機溶媒系バインダーを用いて作製された比較例4の正極の抵抗値は、従来の、有機溶媒系バインダーを用いて作製された正極の抵抗値より低いと考えられる。
実施例3の正極の抵抗値は、この比較例4の正極の抵抗値より低いと推測される。よって、実施例4の正極の抵抗値は、従来の、有機溶媒系バインダーを含む正極の抵抗値より低いと推測される。
【0326】
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3の単極20サイクル目の容量維持率は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例4の単極20サイクル目の容量維持率より高かった。したがって、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3の正極の耐久性は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例4の正極の耐久性より高いことがわかった。
【0327】
屈曲剥離試験において、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3および連結部が全体的に粒状感を有する比較例4のいずれも、正極活物質体および連結部が集電体から剥離しなかった。このことから、実施例3および比較例4の正極のいずれも、加工性が高いことがわかった。さらに、剥離試験において、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3および連結部が全体的に粒状感を有する比較例4の剥離強度は、6[N/m]を超えた。屈曲剥離試験と剥離試験の結果から、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3および連結部が全体的に粒状感を有する比較例4のいずれにおいても、正極活物質体および連結部と集電体との接続強度が高いため、集電体が腐食していないと判断できる。
【0328】
上述した電池特性の評価結果から、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3の充放電効率は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例4の充放電効率より高いことがわかった。
また、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3の電池の耐久性は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例4の電池の耐久性より高いことがわかった。
したがって、実施例3は、比較例4と比較し、電池特性が高い上に、電池の耐久性が高いことがわかった。
【0329】
なお、ここでは、正極作製時に正極活物質体が大気に比較的長時間触れる従来の方法により、有機溶媒系バインダーを用いて作製された正極の電池特性について評価していない。
また、比較例1および比較例2のように、正極作製時に正極活物質体が大気に比較的長時間触れる従来の方法により、水系バインダーを用いて作製された正極の電池特性について評価していない。
しかし、従来の方法により作製された正極の正極活物質体は、低湿度環境で作製された比較例4の正極活物質体より、空気中の水分に触れている。また、水系バインダーを用いて作製された正極の正極活物質体は、有機系バインダーを用いた比較例4の正極活物質体と異なり、バインダーに含まれる水に触れている。したがって、従来の方法により作製された正極の正極活物質体は、低湿度環境で作製された比較例4の正極活物質体より、水により変質している。
そのため、比較例4の電池特性は、従来の方法により有機溶媒系バインダーを用いて作製された正極の電池特性および従来の方法により水系バインダーを用いて作製された正極の電池特性より高いと推測される。
【0330】
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3は、この比較例4より、電池特性が高い上に、電池の耐久性が高い。したがって、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例3は、従来の正極の作製方法で製造された正極より、電池特性が高い上に、電池の耐久性が高いと考えられる。
【0331】
[正極活物質体のニッケル含有量が33mol%]
表13から、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4の0.1C放電容量比と、連結部が全体的に粒状感を有する比較例5の0.1C放電容量比は、90%以上であり、実用化レベルであった。
【0332】
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4の0.1C初回充放電効率は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例5の0.1C初回充放電効率より高かった。
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4の0.2C充放電効率は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例5の0.2C充放電効率と同じであった。
【0333】
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4の3C/0.2C放電容量比は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例5の3C/0.2C放電容量比より高かった。したがって、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4の正極の抵抗値は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例5の正極の抵抗値より低いと推測される。
【0334】
比較例5の正極は、有機溶媒系バインダーを用いて作製された。また、比較例5の正極は、比較例3および比較例4の正極と同様に、低湿度環境で作製された。そのため、正極作製時に正極活物質体が大気に比較的長時間触れる従来の方法で作製された正極の正極活物質体に比べ、比較例5の正極活物質体は水による変質が殆ど生じていない。したがって、有機溶媒系バインダーを用いて作製された比較例5の正極の抵抗値は、従来の、有機溶媒系バインダーを用いて作製された正極の抵抗値より低いと考えられる。
実施例4の正極の抵抗値は、この比較例5の正極の抵抗値より低いと推測される。よって、実施例4の正極の抵抗値は、従来の、有機溶媒系バインダーを含む正極の抵抗値より低いと推測される。
【0335】
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4の単極20サイクル目の容量維持率は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例5の単極20サイクル目の容量維持率より高かった。したがって、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4の正極の耐久性は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例5の正極の耐久性より高いことがわかった。
【0336】
屈曲剥離試験において、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4および連結部が全体的に粒状感を有する比較例5のいずれも、正極活物質体および連結部が集電体から剥離しなかった。このことから、実施例4および比較例5の正極のいずれも、加工性が高いことがわかった。さらに、剥離試験において、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4および連結部が全体的に粒状感を有する比較例5の剥離強度は、6[N/m]を超えた。屈曲剥離試験と剥離試験の結果から、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4および連結部が全体的に粒状感を有する比較例5のいずれにおいても、正極活物質体および連結部と集電体との接続強度が高いため、集電体が腐食していないと判断できる。
【0337】
上述した電池特性の評価結果から、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4の充放電効率は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例5の充放電効率より高いことがわかった。
また、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4の電池の耐久性は、連結部が全体的に粒状感を有する比較例5の電池の耐久性より高いことがわかった。
したがって、実施例4は、比較例5と比較し、電池特性が高い上に、電池の耐久性が高いことがわかった。
【0338】
なお、ここでは、正極作製時に正極活物質体が大気に比較的長時間触れる従来の方法により、有機溶媒系バインダーを用いて作製された正極の電池特性および正極作製時に正極活物質体が大気に比較的長時間触れる従来の方法により、水系バインダーを用いて作製された正極の電池特性について評価していない。
しかし、実施例3および比較例4で説明したように、有機溶媒系バインダーを用いて、低湿度環境で作製された比較例5の電池特性は、従来の方法により有機溶媒系バインダーを用いて作製された正極の電池特性および従来の方法により水系バインダーを用いて作製された正極の電池特性より高いと推測される。
【0339】
連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4は、この比較例5より、電池特性が高い上に、電池の耐久性が高い。したがって、連結部に非粒状感表面部が確認された実施例4は、従来の正極の作製方法で製造された正極より、電池特性が高い上に、電池の耐久性が高いと考えられる。
【0340】
表11、表12および表13に示す電池特性の評価結果から、正極活物質体のニッケル含有量が33mol%、50mol%および80mol%のいずれの場合も、連結部に非粒状感表面部が確認された正極の充放電効率は、連結部が全体的に粒状感を有する正極の充放電効率より高いことがわかった。また、連結部に非粒状感表面部が確認されたが確認された正極を用いて作製された電池の耐久性は、連結部が全体的に粒状感を有する正極を用いて作製された電池の耐久性より高いことがわかった。
【0341】
なお、電子顕微鏡画像は省略するが、実施例1~4の正極の表面の8,000倍の電子顕微鏡画像において、正極活物質体と連結部を確認することができた。8,000倍の電子顕微鏡画像において、連結部の表面に、粒状感表面部と非粒状感表面部を確認することができた。粒状感表面部に、複数の粒状のアセチレンブラックが確認された。
【符号の説明】
【0342】
1 非水電解液二次電池用正極
2 正極活物質体
2a 正極活物質粒子
3 バインダー
4 導電材粒子
5 連結部
5a 粒状感表面部
5b 非粒状感表面部
6 集電体
7 pH調整剤
11 非水電解液二次電池
12 負極
13 セパレータ
14 容器
15 蓋