(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】防火剤を含む粉末化された組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 21/02 20060101AFI20230911BHJP
C11B 9/00 20060101ALN20230911BHJP
【FI】
C09K21/02
C11B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2020529447
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2019055091
(87)【国際公開番号】W WO2019170528
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-01-17
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マリー オズボーン
(72)【発明者】
【氏名】バベシュ マンダネ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-509698(JP,A)
【文献】特開2013-051964(JP,A)
【文献】特表2005-521767(JP,A)
【文献】特開2000-008041(JP,A)
【文献】特開2014-051457(JP,A)
【文献】特開昭60-054308(JP,A)
【文献】特開昭58-085809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K21/00-21/14
C11D1/00-19/00
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの乾燥された顆粒を含む粉末化された組成物であって、前記顆粒がポリマーマトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルを含む油相を含み、前記マトリックス中で、前記香料オイルまたは風味オイルの少なくとも一部がコアシェルマイクロカプセル中に封入されており、前記粉末化された組成物がタルクを含む防火剤を含有することを特徴とする、前記粉末化された組成物。
【請求項2】
(i) ポリマーマトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルで作られている少なくとも1つの乾燥顆粒と、
(ii) タルクを含む防火剤と
を含み、ここで、粉末化された組成物の顆粒とタルクとの間の質量比は、10:90~90:10に含まれる、請求項1に記載の粉末化された組成物。
【請求項3】
顆粒とタルクとの間の質量比が、30:70~60:4
0に含まれる、請求項2に記載の粉末化された組成物。
【請求項4】
前記粉末化された組成物が、最小着火エネルギー(MIE)≧300mJを有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の粉末化された組成物。
【請求項5】
前記マトリックス中で、香料オイルまたは風味オイルの全体がコアシェルマイクロカプセル中に封入されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の粉末化された組成物。
【請求項6】
前記マトリックス中で、香料オイルまたは風味オイルの少なくとも一部がコアシェルマイクロカプセル中に封入されておらず、且つ該油相の少なくとも一部がコアシェルマイクロカプセル中に封入されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の粉末化された組成物。
【請求項7】
固化防止
剤をさらに含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の粉末化された組成物。
【請求項8】
前記ポリマーマトリックスが、マルトデキストリン、加工デンプンまたはそれらの混合物を含む水溶性ポリマーで作られていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の粉末化された組成物。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に定義された粉末化された組成物の製造方法であって、タルクを含む防火剤と、ポリマーマトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルを含む顆粒とを乾式混合して、粉末化された組成物を形成する段階を含む、前記方法。
【請求項10】
顆粒が、水溶性ポリマー中の香料オイルまたは風味オイルの水性エマルションを噴霧乾燥させて、乾燥された顆粒を形成することによって得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ポリマーマトリックスと、前記マトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルとで作られている顆粒を含み、前記マトリックス中で、前記香料オイルまたは風味オイルの少なくとも一部がコアシェルマイクロカプセル中に封入されている粉末化された組成物中での、前記組成物の操作の間の爆発の激しさを低減するためのタルクの使用。
【請求項12】
請求項1から8までのいずれか1項で定義された粉末化された組成物を含む、粉末化された消費者製
品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送達系の分野に関する。より具体的には、ポリマーマトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルを有する顆粒を含む粉末化された組成物であって、防火剤を含有する前記粉末化された組成物に関する。本発明において定義される防火剤はタルクを含み、それは前記組成物が製造され、取り扱われるか、または供与される際の粉塵爆発のリスクを防ぐ。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは香料および風味付け産業において大々的に用いられている。それらは賦香成分または風味付け成分のための送達系を構成し、且つ非常に多数の用途において有利に使用できる。有効物質、例えば賦香成分または風味付け成分の封入は、そこに封入されている成分を「攻撃性」、例えば酸化または湿分に対して保護することと、他方では、連続した放出を通じて感覚的な効果を誘導するための風味または芳香の放出の動力学の特定の制御を可能にすることとを同時にもたらす。
【0003】
現在、これらの分野におけるマイクロカプセルの多数の有利な特性は、特にそれらのマイクロカプセルが粉末化された形態(顆粒と称される)である場合、それらの製造、輸送、保管および取り扱いの間に考慮に入れなければならない他の特性とは対立している。実際に、そのような送達系は、それらの性質に起因して、特にそれらが揮発性且つ易燃性の物質を封入するという事実に起因して、可燃性の粉塵を構成し、それは空気または他の酸素含有ガス中に分散される場合、容易に着火する混合物を形成することがある。それらの顆粒は残念ながら爆発傾向を有する。
【0004】
この問題は、顆粒の製造の間だけでなく、そのような顆粒が添加される消費者製品を製造するための工場の環境下での顆粒の操作の間にも重要になる。
【0005】
製品の危険な特性を知るためのパラメータの1つは定数K-Stであり、これは、閉じられた系における可燃性の粉塵の最大の爆発挙動を表す。
【0006】
定数K-Stの値と、粉塵の危険物クラス:St-1(低爆発性)からSt-3(高爆発性)までとの間には、よく確立された対応がある。
【0007】
St-1~St-3のクラスの1つへの粉塵の分類が、爆発の激しさのみの記述であることに留意すべきである。それは、大抵の場合、噴霧乾燥による、一度形成された顆粒の操作の間の、粉塵の着火感度または粉塵爆発の可能性の指標にはならない。
【0008】
これが、粉末化された材料において危害分析を行って爆発のリスクを評価する際に、他のパラメータである最小着火エネルギー(MIE)も考慮に入れなければならない理由である。
【0009】
粉塵のMIEは、火花ギャップを超えて放電した場合、大気圧、周囲温度、および可能な最低の乱流で、一連の10回の連続した試験において、最も着火しやすい粉塵または空気混合物に着火するためにはちょうど十分ではない、キャパシタ内に蓄えられる電気的エネルギーの最低量として定義される。MIEは、静電気の放電または他のそのような着火源による粉塵雲の着火のし易さの指標である。MIEはジュール(J)で測定される。
【0010】
非常に低いMIE値を有する成分は、爆発を開始するために非常に少ない量のエネルギーで十分であることを意味する。
【0011】
試験のプロトコルは、ASTM-E2019, VDI-2263, Center for Chemical Process Safety CCPS Publication G-95, Guidelines for Safe Handling of Powders and Bulk Solids(著作権) 2005(米国化学工学研究所による)、およびthe Operating Instructions for the MIKE-3 apparatus(製造元:Kuehner AG, Birsfelden, CH)(C.CesanaおよびR.Siwekによる)に記載されている。
【0012】
特定の化合物(防火剤と称される)が、粉末化された組成物の爆発のリスクを最小化できることは先行技術から公知である。
【0013】
国際公開第03/043728号(WO03/043728A1)は、ポリマーの担体材料内に分散されるかまたは吸収される防火剤を有する賦香顆粒または風味付け顆粒を開示している。しかしながら、この文献内に開示される防火剤は、顆粒の量に比して大量に使用しなければならない。
【0014】
さらには、保管条件に依存して、顆粒は高湿度条件に暴露されることができ、且つ長期間安定でなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、安全な条件下で製造および/または取り扱いができる、費用対効果が大きく且つ安定な粉末化された組成物を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の粉末化された組成物は、製造および/または取り扱いの間、(水溶性ポリマーマトリックス中に分散された油相で作られている)顆粒の爆発のリスクを防ぐ防火剤としてタルクを含むので、この課題を解決する。
【0017】
発明の説明
意外なことに、粉末化された組成物中でのタルクを含む新たな防火剤の存在が、可能な爆発の激しさを低減できることが判明した。特に、工場の環境下での取り扱いおよび供与の間に、可能な爆発の激しさを低減するために有効な量でタルクを顆粒と直接的に混合できることが示された。従って、その新たな防火剤を含む粉末化された組成物のMIE値は、顆粒の量に比して多量のタルクを使用することなく、効果的に高められる。
【0018】
非常に意外なことに、この新たな爆発抑制剤は本発明の顆粒を含む粉末の吸湿性も低減させ、なぜなら、高湿度条件下で安定な組成物を得るために、粉末化された組成物の製造の間に少量の固化防止剤しか添加する必要がないか、または添加する必要すらないからである。
【0019】
従って、本発明は、費用対効果が大きく、高温且つ高湿度条件下で安定であり、且つ安全に製造および/または取り扱いできる粉末化された組成物を提供する。
【0020】
従って、本発明の第1の対象は、少なくとも1つの乾燥された顆粒を含む粉末化された組成物であって、前記顆粒がポリマーマトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルを含み、前記粉末化された組成物がタルクを含む防火剤を含有することを特徴とする、前記粉末化された組成物である。
【0021】
本発明の第2の対象は、上記で定義された粉末化された組成物の製造方法であって、タルクを含む防火剤と、ポリマーマトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルを含む顆粒とを乾式混合して、粉末化された組成物を形成する段階を含む、前記方法である。
【0022】
本発明の第3の対象は、上記で定義された粉末化された組成物の製造方法であって、タルクを含む防火剤を、水溶性ポリマー中の香料オイルまたは風味オイルの水性エマルションに添加する段階、および得られたエマルションを噴霧乾燥させて、粉末化された組成物を形成する段階を含む、前記方法である。
【0023】
本発明の他の対象は、ポリマーマトリックスと、前記マトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルとで作られている顆粒を含む粉末化された組成物中でのタルクを含む防火剤の、前記組成物の操作の間の爆発の激しさを低減するための使用である。
【0024】
本発明の最後の対象は、上記で定義された粉末化された組成物を含む、粉末化された消費者製品、好ましくはドライシャンプー、タルカムパウダー、粉末洗剤、洗剤ビーズ、固体のセントブースター、猫用トイレ砂、粉末毛染め剤、制汗剤組成物、脱臭組成物の形態での粉末化された消費者製品である。
【0025】
発明の詳細な説明
特段記載されない限り、パーセンテージ(%)は、組成物の質量%を示すことを意味する。
【0026】
本発明において定義される「顆粒」は、ポリマーマトリックス内に分散された疎水性の有効成分を含む送達系に関する。本発明によれば、疎水性の有効成分は、香料オイルまたは風味オイルを含み、それがコアシェルのマイクロカプセル中に封入されていてもよいし、且つ/またはマトリックス中に自由に分散されていても(つまり、コアシェルのマイクロカプセル中に封入されていなくても)よい。
【0027】
「マイクロカプセル」または「コアシェルのマイクロカプセル」(本発明においては区別せずに使用される)は、ポリマーシェルによって封入された疎水性の有効成分のオイルに基づくコアを含む送達系に関する。
【0028】
特定の実施態様によれば、マトリックス中に分散される油相の少なくとも一部がマイクロカプセル中に封入される場合に、顆粒はマイクロカプセルを含むと理解されるべきである。
【0029】
本発明によれば、「封入されていないオイル」は、ポリマーマトリックス内に単に取り込まれている(または自由に分散されている)が、マイクロカプセル中に封入はされていないオイルに関する。
【0030】
これに対し、本発明によれば、「封入されたオイル」は、マイクロカプセル中に封入されたオイルに関する。
【0031】
封入されていないオイルは第1の疎水性の有効成分を含み、封入されたオイルは、前記第1の疎水性成分と同一または異なっていてよい第2の疎水性の有効成分を含む。
【0032】
本発明によれば、「平均直径」または「平均サイズ」との文言は区別なく使用される。
【0033】
平均サイズd(v,0.5)は、レーザー回折粒径分析器によって測定される。
【0034】
本発明は今回、粉末化された組成物の、その製造の間またはその取り扱いの間の、おそらくは空気中でのその浮遊によって誘発される爆発の激しさを、タルクを含む防火剤の使用のおかげで低減させる方法を見出した。これは、そのような送達系が主に高揮発性成分で構成され、ひいては可燃性の粉塵を構成することを考慮すると、非常に有利である。
【0035】
さらには、本発明の粉末化された組成物は、着火に対してあまり敏感ではない、つまり、低減された爆発傾向を示すことが証明されている。この特徴は測定でき且つ最小着火エネルギーまたはMIEパラメータを通じて表現される。
【0036】
粉末化された組成物
従って、本発明の第1の対象は、少なくとも1つの乾燥された顆粒を含む粉末化された組成物であって、前記顆粒がポリマーマトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルを含み、前記粉末化された組成物がタルクを含む防火剤を含有することを特徴とする、前記粉末化された組成物である。
【0037】
1つの実施態様によれば、粉末化された組成物は、300mJ、または300mJを上回る最小着火エネルギー(MIE)値を有する。MIE≧300mJを有する粉末化された組成物が、放電によって着火されないとみなすことができる。
【0038】
本発明の本質的な特徴の1つは、粉末化された組成物が防火剤としてタルクを含むことである。
【0039】
防火剤は、乾燥された顆粒に追加して添加されて、粉末化された組成物を形成することもできるし(従って、顆粒とタルクとの配合物が形成される)、且つ/またはポリマーマトリックス内の顆粒中に存在することもできる。後者はどちらかと言えば顆粒自体の製造に関する安全性についての利益を示す一方で、前者はどちらかと言えば顆粒の取り扱いおよび消費者製品中への供与に関する安全性についての利益を示す。
【0040】
1つの実施態様によれば、粉末化された組成物は、
(i) ポリマーマトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルで作られている少なくとも1つの乾燥顆粒と、
(ii) タルクを含む防火剤と
を含み、ここで、粉末化された組成物中の顆粒とタルクとの間の質量比は、10:90~90:10、好ましくは30:70~60:40、およびより好ましくは40:60~55:45に含まれる。
【0041】
他の実施態様によれば、粉末化された組成物は、
・ ポリマーマトリックスと、
・ 前記マトリックス中に分散されている香料オイルまたは風味オイルを含む油相と
で作られている少なくとも1つの顆粒を含み、ここで、タルクを含む防火剤が前記ポリマーマトリックス内に分散されている。
【0042】
本発明において定義される顆粒は、水溶性ポリマーマトリックス中に分散された少なくとも1つの香料オイルまたは風味オイルを含む油相の存在に基づく。
【0043】
「水溶性ポリマーマトリックス中に分散された」とは、油相が、封入されていない(自由に分散された)形態でマトリックス内に分散されているか、および/または封入された形態で(マイクロカプセル内に封入されて)マトリックス内に分散されていることを意味する。
【0044】
本発明において定義される顆粒は、好ましくは15マイクロメートルを上回る、より好ましくは35~300マイクロメートルの平均粒径を有する。
【0045】
1つの実施態様によれば、油相の少なくとも一部はマトリックス中に自由に分散されている(つまり、マイクロカプセル中に封入されていない)。
【0046】
特定の実施態様によれば、油相の全体がコアシェルマイクロカプセルに封入されていない(つまり、マトリックス中に自由に分散している)。
【0047】
他の実施態様によれば、油相の少なくとも一部がマイクロカプセル中に封入されている。特定の実施態様によれば、油相の少なくとも一部がマイクロカプセル中に封入されており、且つ少なくとも一部はコアシェルマイクロカプセル中に封入されていない(つまり、マトリックス中に自由に分散している)。
【0048】
他の特定の実施態様によれば、油相の全体がマイクロカプセル中に封入されている。
【0049】
疎水性の有効成分
「疎水性の有効成分」とは、水を混合される際に二相の分散液を形成する任意の有効成分(単独の成分または成分の混合物)を意味する。
【0050】
本発明の好ましい態様において、疎水性の有効成分は、1を上回る、より好ましくは2を上回るlog Pによって定義される。
【0051】
好ましくは、疎水性の有効成分は、疎水性の有効成分の総質量に対して少なくとも90質量%の少なくとも1のlog Pを有する化合物を含み、より好ましくは、それは少なくとも90質量%の少なくとも2のlog Pを有する成分を含む。さらにより好ましくは、疎水性の有効成分は、疎水性の有効成分の総質量に対して少なくとも99質量%の少なくとも1のlog Pを有する成分を含み、最も好ましくは、それは少なくとも99質量%の少なくとも2のlog Pを有する成分を含む。本発明について、log Pは、EPI suite v3.10、2000 米国環境保護庁を使用する計算により得られる、計算されたlog Pとして定義される。
【0052】
本発明によれば、疎水性の有効成分は、香料オイルまたは風味オイルを含む。本発明については、「風味または香料」との用語は、風味および/または香料産業において現在使用されている、天然由来と合成由来との両方の風味または香料成分または組成物を包含する。これは、単独の化合物および混合物を含む。前記風味成分または香料成分の特定の例は、現在の文献、例えばFenaroli’s Handbook of flavour ingredients, 1975, CRC Press; Synthetic Food adjuncts, 1947、M.B.Jacobs著、Van Nostrand編;またはPerfume and Flavor Chemicals、S.Arctander著、1969年、モントクレア、ニュージャージー(米国)で見つけることができる。現在の風味付けおよび/または賦香成分の多くの他の例を、特許および利用可能な一般的な文献内で見つけることができる。この風味付けおよび/または賦香成分は、溶剤、補助剤、添加剤および/または他の成分、一般に風味および香料産業において現在使用されているものとの混合物の形態で存在してよい。
【0053】
「風味付け成分」とは、風味または味を消費者製品に付与すること、または前記消費者製品の味および/または風味もしくはその質感あるいは口当たりを改質することができるものとして、着香分野の当業者に周知である。
【0054】
「賦香成分」とは、本願においては、表面に適用された際に快い効果を付与するために賦香調製物または組成物中で有効成分として使用される化合物と理解される。換言すれば、賦香性のものであるとしてみなされるべきであるそのような化合物は、香料産業の分野の当業者によって、良い方向に、もしくは心地良いように、組成物の臭いまたは物品または表面の臭いを付与または修正することができ、且つ、単に臭いを有するだけではないと認識されなければならない。さらには、この定義は、必ずしも臭いを有するわけではないが、しかし賦香組成物、賦香された物品または表面の臭いを変調し、結果としてかかる組成物、物品または表面の臭いのユーザーによる感知を修正できる化合物を含むことも意味する。それは、悪臭中和成分および組成物も含有する。用語「悪臭中和成分」は、本願においては、悪臭、即ち、人間の鼻に対して不快または攻撃的である臭いの感知を、悪臭を中和および/またはマスキングすることによって低減できる化合物を意味する。特定の実施態様において、それらの化合物は公知の悪臭を引き起こすキーとなる化合物と反応する能力を有する。該反応は、悪臭材料が空気によって運ばれる水準の低減をもたらし、その結果、悪臭の感知の低減をもたらす。従って、1つの実施態様において、疎水性の有効成分は、少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、および最も好ましくは少なくとも40%の、25℃で少なくとも0.007Paの、好ましくは25℃で少なくとも0.1Paの、より好ましくは25℃で少なくとも1Paの、および最も好ましくは25℃で少なくとも10Paの蒸気圧を有する化合物を含み、全てのパーセンテージは疎水性の有効成分の総質量に対する質量によって定義される。これらの基準に合致する化合物は一般に揮発特性を有するとしてみなされ、ひいては臭いまたは風味を有する。従って、本発明の方法は、大量の揮発性成分の効率的な封入を可能にする。本発明の好ましい実施態様において、疎水性の有効成分は、上述の閾値のいずれかを下回る揮発性に起因して無臭のままであるいかなる化合物も含まない。
【0055】
本発明については、蒸気圧は計算によって決定される。従って、「EPI suite」; 2000 米国環境保護庁内に開示される方法を使用して、疎水性の有効成分の特定の化合物または成分の蒸気圧の値を決定する。
【0056】
粉末化された組成物中の疎水性の有効成分の量は、好ましくは組成物の総質量に対して10~90質量%、より好ましくは15~60質量%に含まれる。
【0057】
特定の実施態様によれば、油相の少なくとも一部は、コアシェルマイクロカプセル中に、顆粒の総質量に対して好ましくは3~70%、好ましくは5~50%に含まれる量で封入される。
【0058】
コアシェルマイクロカプセル(存在する場合)
本発明において定義されるコアシェルマイクロカプセルは、ポリマーシェルと、香料オイルまたは風味オイルを含むオイルに基づくコアとを含む。
【0059】
本発明のマイクロカプセルのポリマーシェルの性質は多様であってよい。限定されない例として、シェルはポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、ウレアホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートまたは芳香族ポリオールで架橋されたメラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミンウレア樹脂、メラミングリオキサール樹脂、ゼラチン/アラビアゴムシェル壁、およびそれらの混合物からなる群から選択される材料で作られていることができる。
【0060】
1つの実施態様によれば、マイクロカプセルのシェルは、メラミンホルムアルデヒド樹脂、または少なくとも1つのポリイソシアネートまたは芳香族ポリオールで架橋されたメラミンホルムアルデヒド樹脂系である。
【0061】
他の実施態様によれば、マイクロカプセルのシェルは、ポリウレア系である。
【0062】
シェルはハイブリッド、つまり有機・無機、例えば少なくとも2種の架橋された無機粒子で構成されるハイブリッドシェル、またはポリアルコキシシランマクロモノマー組成物の加水分解および縮合反応から得られるシェルであってもよい。
【0063】
1つの実施態様によれば、シェルはアミノプラストコポリマー、例えばメラミンホルムアルデヒドまたはウレアホルムアルデヒド、または架橋されたメラミンホルムアルデヒドまたはメラミングリオキサールを含む。
【0064】
特定の実施態様によればコアシェルマイクロカプセルは、以下の段階:
1) 香料オイルを少なくとも2つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1つのポリイソシアネートと混合して、油相を形成する段階、
2) アミノプラスト樹脂および任意に安定剤を水中に分散または溶解させて水相を形成する段階、
3) 前記油相を前記水相に添加して、水中油型の分散液を形成する段階、ここで、前記油相と前記水相とを混合することにより、平均液滴サイズは1~100マイクロメートルに含まれる、
4) 硬化段階を実施して、前記マイクロカプセルの壁を形成する段階、および
5) 最終的な分散液を任意に乾燥させて、乾燥されたコアシェルマイクロカプセルを得る段階
を含む方法によって得られる架橋されたメラミンホルムアルデヒドマイクロカプセルである。
【0065】
この方法は、国際公開第2013/092375号(WO2013/092375)および国際公開第2015/110568号(WO2015/110568)内により詳細に記載され、それらの内容は参照をもって本願内に含まれるものとする。
【0066】
他の実施態様によれば、シェルは、ポリウレア系、例えば限定されずにイソシアネート系モノマーと、アミン含有架橋剤、例えば炭酸グアニジンおよび/またはグアナゾールとから作られているポリウレア系である。好ましいポリウレア系のマイクロカプセルは、少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1つのポリイソシアネートと、アミン(例えば水溶性グアニジン塩およびグアニジン)、コロイド安定剤または乳化剤からなる群から選択される少なくとも1つの反応物質との間の重合の反応生成物であるポリウレア壁、および封入された香料を含む。しかしながら、アミンの使用は省略してもよい。
【0067】
他の実施態様によれば、シェルは例えば限定されずにポリイソシアネートおよびポリオールから作られるポリウレタン系、ポリアミド、ポリエステル等である。
【0068】
特定の実施態様によれば、コロイド安定剤は、0.1~0.4%のポリビニルアルコール、0.6~1%のビニルピロリドンおよび四級化ビニルイミダゾールのカチオン性コポリマー(全てのパーセンテージはコロイド安定剤の総質量に対する質量によって定義されている)の水溶液を含む。他の実施態様によれば、乳化剤は、好ましくはポリアクリレート(および特にアクリルアミドとのコポリマー)、アラビアゴム、ダイズタンパク質、ゼラチン、カゼイン酸ナトリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるアニオン性または両親媒性バイオポリマーである。
【0069】
特定の実施態様によれば、ポリイソシアネートは、好ましくはフェニル、トルイル、キシリル、ナチフルまたはジフェニル部分を含む、芳香族ポリイソシアネートである。好ましい芳香族ポリイソシアネートはビウレット、およびポリイソシアヌレート類、より好ましくはトルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレート(Bayerから商品名Desmodur(登録商標)RCとして市販)、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(Bayerから商品名Desmodur(登録商標)L75として市販)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学から商品名Takenate(登録商標)D-110Nとして市販)である。特定の実施態様によれば、ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学から商品名Takenate(登録商標)D-110Nとして市販)である。
【0070】
コアシェルマイクロカプセルの水性分散液/スラリーの調製は当業者に周知である。1つの態様において、前記マイクロカプセル壁の材料は、任意の適した樹脂を含むことができ、特にメラミン、グリオキサール、ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル等を含む。適した樹脂は、アルデヒドおよびアミンの反応生成物を含み、適したアルデヒドはホルムアルデヒドおよびグリオキサールを含む。適したアミンはメラミン、ウレア、ベンゾグアナミン、グリコールウリルおよびそれらの混合物を含む。適したメラミンは、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、イミノメラミンおよびそれらの混合物を含む。適したウレアは、ジメチロールウレア、メチル化ジメチロールウレア、ウレアレソルシノールおよびそれらの混合物を含む。製造のために適した材料は、以下の会社の1つ以上から得ることができる: Solutia Inc.(セントルイス、ミズーリ、米国)、Cytec Industries(ウェストパターソン、ニュージャージー、米国)、 Sigma-Aldrich(セントルイス、ミズーリ、米国)。
【0071】
特定の実施態様によれば、コアシェルマイクロカプセルはホルムアルデヒド不含のカプセルである。アミノプラストホルムアルデヒド不含のマイクロカプセルスラリーの典型的な調製方法は、以下の段階:
1) 下記a)~c)の反応生成物を含む、または下記a)~c)を一緒に反応させることにより得られるオリゴマー組成物を調製する段階:
a) メラミンの形態、またはメラミンと、2つのNH2官能基を含む少なくとも1つのC1~C4-化合物との混合物の形態のポリアミン成分、
b) グリオキサール、C4~C6-2,2-ジアルコキシエタナールおよび任意にグリオキサレートの混合物であって、グリオキサール/C4~C6-2,2-ジアルコキシエタナールのモル比が1/1~10/1に含まれる前記混合物の形態でのアルデヒド成分、および
c) プロトン酸触媒、
2) 水中油型分散液を調製する段階、ここで液滴のサイズは1~600μmに含まれ、且つ
i. オイル、
ii. 水媒体、
iii. 段階1で得られた少なくとも1つのオリゴマー組成物、
iv. 下記:
A) C4~C12-芳香族または脂肪族ジイソシアネートまたはトリイソシアネート、およびそれらのビウレット、トリウレット、トリマー、トリメチロールプロパン付加物、およびそれらの混合物、および/または
B) 式
A-(オキシラン-2-イルメチル)n
[前記式中、nは2または3を意味し、且つAは任意に2~6個の窒素原子および/または酸素原子を含むC2~C6-基を表す]
のジオキシランまたはトリオキシラン、
から選択される少なくとも1つの架橋剤、
v. 任意に、2つのNH2官能基を含むC1~C4-化合物
を含む、
3) 前記分散液を加熱する段階、
4) 前記分散液を冷却する段階
を含む。この方法は、国際公開第2013/068255号(WO2013/068255)内により詳細に記載され、その内容は参照をもって本願内に含まれるものとする。
【0072】
他の実施態様によれば、マイクロカプセルのシェルは、ポリウレア系またはポリウレタン系である。ポリウレア系またはポリウレタン系マイクロカプセルスラリーの調製方法の例は、例えば国際公開第2007/004166(WO2007/004166)、欧州特許第2300146号明細書(EP2300146)、欧州特許第2579976号明細書(EP2579976)内に記載され、その内容も参照をもって本願内に含まれるものとする。典型的には、ポリウレア系またはポリウレタン系マイクロカプセルスラリーの調製方法は、以下の段階:
a) 少なくとも2つのイソシアネート基を有する少なくとも1つのポリイソシアネートをオイル中に溶解して、油相を形成する段階、
b) 乳化剤またはコロイド安定剤の水溶液を調製して水相を形成する段階、
c) 前記油相を前記水相に添加して、水中油型分散液を形成する段階、ここで、平均液滴サイズは1~500μm、好ましくは5~50μmに含まれる、
d) 界面重合を引き起こすために十分な条件を適用し、スラリーの形態でマイクロカプセルを形成する段階
を含む。
【0073】
本発明によれば、封入の後、マイクロカプセルの性質がどうであろうと、カプセルの内部コアは、香料オイルで構成されるコアオイルのみで作られていることが理解されるべきである。
【0074】
本発明において定義される顆粒は、内側のコアの香料オイルによって、および/または壁によって変化し得るマイクロカプセルを含有できる(異なる化学的性質または同じ化学的性質であるが異なるプロセスパラメータ、例えば架橋温度または時間)。
【0075】
本発明の特定の実施態様によれば、マイクロカプセルは、非イオン性多糖類、カチオン性ポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択される外側のコーティングを有する。
【0076】
そのようなコーティングは、洗浄工程の間の基材上のカプセルの堆積および保持を促進することを助けるので、洗浄段階/泡立ての際に破壊されていないかなりの部分のカプセルが基材(肌、紙、布)に移り、乾燥後に擦ってカプセルが破壊されたときに香料の放出のために利用可能となる。
【0077】
非イオン性の多糖類ポリマーは当業者に周知である。好ましい非イオン性多糖類は、ローカストビーンガム、キシログルカン、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアー、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される。
【0078】
カチオン性ポリマーも当業者に周知である。好ましいカチオン性ポリマーは、少なくとも0.5meq/g、より好ましくは少なくとも約1.5meq/gであるが、好ましくは約7meq/g未満、より好ましくは約6.2meq/g未満のカチオン電荷密度を有する。カチオン性ポリマーのカチオン電荷密度を、米国薬局方の窒素測定のための化学的試験の下に記載されるキエルダール法によって測定できる。好ましいカチオン性ポリマーは、ポリマー主鎖の部分を構成できるかまたはそこに直接的に接続する側方の置換基に保持されていてよい第一級、第二級、第三級および/または第四級アミン基を含む単位を含有するものから選択される。カチオン性ポリマーの質量平均分子量(Mw)は、好ましくは10000~2Mダルトン、より好ましくは50000~3.5Mダルトンである。
【0079】
特定の実施態様によれば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、四級化N,N-ジメチルアミノメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、四級化ビニルイミダゾール(3-メチル-1-ビニル-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド)、ビニルピロリドン、アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、ヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドデンプンおよびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドに基づくカチオン性ポリマーを使用する。好ましくは、コポリマーは、ポリクオタニウム-5、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-28、ポリクオタニウム-43、ポリクオタニウム-44、ポリクオタニウム-46、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、ヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドデンプンおよびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドからなる群から選択されるべきである。
【0080】
市販の製品の特定の例として、Salcare(登録商標)SC60(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリドとアクリルアミドとのカチオン性コポリマー、製造元: BASF)またはLuviquat(登録商標)、例えばPQ 11N、FC 550またはStyle(ポリクオタニウム-11~68、またはビニルピロリドンの四級化されたコポリマー、製造元: BASF)、またはさらにJaguar(登録商標)(C13SまたはC17、製造元:Rhodia)を挙げることができる。
【0081】
ポリマーマトリックス
本発明において定義されるポリマーマトリックスは水溶性のポリマーマトリックスである。
【0082】
任意の水溶性ポリマーを本発明のために使用できる。
【0083】
「水溶性ポリマー」は、本発明については、水中で一相の溶液を形成する任意のポリマーを包含するとして意図されている。好ましくは、それは、20質量%の高さ、より好ましくは50%質量%の高さの濃度で水中に溶解された場合に一相の溶液を形成する。最も好ましくは、それは、任意の濃度で水中に溶解された場合に、一相を形成する。
【0084】
好ましくは、水溶性ポリマーは炭水化物を含む。例えば、水溶性ポリマーは単糖類、オリゴ糖類および/または多糖類を含み、ここで接頭辞のオリゴおよび多(ポリ)は以下に定義されるとおりである。
【0085】
本発明の実施態様において、水溶性ポリマーはモノマー、オリゴマーまたはポリマーの担体材料、またはそれらの2つ以上の混合物を含む。オリゴマー担体は、2~10個のモノマー単位が共有結合によってつながっている担体である。例えば、オリゴマー担体が炭水化物である場合、そのオリゴマー担体は、ほんの少しの例を挙げると、スクロース、ラクトース、ラフィノース、マルトース、トレハロース、フラクトオリゴ糖であってよい。
【0086】
モノマー担体材料の例は例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、フコース、ソルビトール、マンニトールである。
【0087】
ポリマー担体は、共有結合によってつながった10個より多くのモノマー単位を有する。その限定されない例は、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デキストリン、マルトデキストリン、天然または加工デンプン、植物ガム、ペクチン、キサンタン、アルギネート、カラゲナン、またはさらにはセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロース、および揮発性物質を封入するために一般的に現在使用される全ての材料を含む。好ましくは、ポリマー担体はマルトデキストリンを含む。最も好ましくは、それはマルトデキストリンおよび加工デンプン、例えばアルケニルコハク酸デンプンを含む。
【0088】
ポリマーマトリックスは好ましくは、顆粒の総質量に対して25~50質量%の量で存在する。
【0089】
防火剤
本発明の粉末化された組成物は、とりわけ、タルクを含む防火剤を含有するという事実によって特徴付けられる。特定の実施態様において、防火剤はタルクからなる。
【0090】
他の実施態様によれば、タルクを、炭酸ナトリウム、ゼオライト、硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される他の防火剤と組み合わせて使用する。
【0091】
理論に束縛されるものではないが、出願人は、タルクが顆粒との配合物として存在する実施態様によれば、タルクは粉塵雲中で顆粒の表面を覆うことができ、従って爆発のリスクを低減するという見解である。
【0092】
従って、1つの実施態様によれば、タルクは顆粒の平均粒径よりも小さい平均粒径を有する。好ましくは、タルクは5~50マイクロメートル、好ましくは10~20マイクロメートルに含まれる平均粒径を有する。
【0093】
固化防止剤
粉末化された組成物は、粉末の流動性を高めるために、固化防止剤、好ましくは疎水性および/または親水性シリカを含むことができる。
【0094】
前記粉末化された組成物は湿潤条件下で良好な安定性を示すので、少量の固化防止剤しか必要とされないか、またはさらには固化防止剤が必要とされない。
【0095】
特定の実施態様によれば、粉末化された組成物中の固化防止剤の量は、組成物の総質量に対して1~15質量%、好ましくは2.5~10質量%含まれる。
【0096】
他の特定の実施態様によれば、粉末化された組成物は、固化防止剤不含である。
【0097】
粉末化された組成物の製造方法
粉末化された組成物について記載された実施態様は、前記組成物の製造方法にも該当する。
【0098】
本発明において定義される粉末化された組成物を製造するためにはいくつかの選択肢がある。
【0099】
1つの実施態様によれば、タルクが顆粒との配合物として存在する場合、粉末化された組成物の製造方法は、タルクを含む防火剤と、ポリマーマトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルを含む顆粒とを乾式混合して、粉末化された組成物を形成する段階を含む。
【0100】
乾式混合後、顆粒はタルクの層によって覆われ、それが(配合物の形態で)得られた粉末化された組成物の操作の間に顆粒の爆発のリスクを防ぐ。
【0101】
乾燥された顆粒を得るための方法に関しては限定されない。
【0102】
それらの方法の中で、例えば、有効成分を封入するための周知の方法である噴霧乾燥を挙げることができる。
【0103】
しかしながら、他の乾燥方法、例えば押出、流動床、または特定の基準に合致する材料(担体、乾燥剤)を使用した室温での乾燥すら挙げることもできる(例えば国際公開第2017134179号(WO2017134179)参照)。
【0104】
1つの実施態様によれば、前記組成物は、香料オイルまたは風味オイルの水溶性ポリマー中での水性エマルションを噴霧乾燥させる段階を含む方法により得られる噴霧乾燥された顆粒を含有する。
【0105】
より具体的には、油相が、マトリックス中に自由に分散されている少なくとも一部を含む場合、乾燥された顆粒は、以下の段階:
(i) 水溶性ポリマーを含む水相を調製する段階、
(ii) 香料オイルまたは風味オイルを含む油相を調製し、前記油相と前記水相とを混合してエマルションを得る段階、
(iii) 任意に、段階(ii)のエマルションと、オイルに基づくコアおよびポリマーシェルを有する少なくとも1つのマイクロカプセルを含むマイクロカプセルスラリーとを混合する段階、および
(iv) 段階(iii)のスラリーを乾燥、好ましくは噴霧乾燥させて、噴霧乾燥された顆粒を得る段階
を含む方法によって得られる。
【0106】
油相が、マトリックス中に封入されている少なくとも一部を含む場合、乾燥された粒子は、以下の段階:
(i) 水溶性ポリマーを含む水相を調製する段階、
(ii) 任意に、香料オイルまたは風味オイルを含む油相を調製し、前記油相と前記水相とを混合してエマルションを得る段階、
(iii) 段階(i)の水相または段階(ii)のエマルションと、オイルに基づくコアおよびポリマーシェルを有する少なくとも1つのマイクロカプセルを含むマイクロカプセルスラリーとを混合する段階、および
(iv) 段階(iii)のスラリーを乾燥、好ましくは噴霧乾燥させて、噴霧乾燥された顆粒を得る段階
を含む方法によって得られる。
【0107】
特定の実施態様によれば、固化防止剤を、上述の方法の段階(iii)および/または段階(iv)の間、および/または段階(iv)の後に添加する。
【0108】
他の実施態様によれば、タルクが顆粒中に存在する場合、粉末化された組成物の製造方法は、タルクを含む防火剤を、水溶性ポリマー中の香料オイルまたは風味オイルの水性エマルションに添加する段階、および得られたエマルションを噴霧乾燥させて、粉末化された組成物を形成する段階を含む。
【0109】
上記の実施態様に記載される方法によって得られる粉末化された組成物も、本発明の対象である。
【0110】
粉末化された組成物の爆発の激しさを低減する方法
本発明の他の対象は、ポリマーマトリックスと前記マトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルとで作られている顆粒を含む粉末化された組成物中での、前記組成物の操作の間の爆発の激しさを低減するためのタルクの使用である。
【0111】
本発明の他の対象は、ポリマーマトリックスと、前記マトリックス中に分散された香料オイルまたは風味オイルとで作られている顆粒を含む粉末化された組成物の爆発の激しさを低減する方法であって、以下の段階:
・ 粉末化された組成物に、タルクを含む防火剤を添加する段階、および/または
・ タルクを含む防火剤を、粉末化された組成物の顆粒内および/または内部に取り込む段階、および/または
・ タルクを含む防火剤と、粉末化された組成物とを混合する段階
を含む、前記方法である。
【0112】
粉末化された消費者製品
本発明のマイクロカプセルは、多くの用途分野において、および消費者製品内で有利に使用され得る。マイクロカプセルを、粉末化された消費者製品に適用可能な粉末形態で使用できる。
【0113】
上記で定義されたマイクロカプセルまたは上記で定義された賦香組成物を含む消費者製品、好ましくはランドリーケア製品、ホームケア製品、ボディケア製品、スキンケア製品、ヘアケア製品、空気ケア製品、または衛生製品の形態での消費者製品も、本発明の対象である。
【0114】
本発明の他の対象は、
(a) 消費者製品の総質量に対して2~65質量%の少なくとも1つの界面活性剤、
(b) 上記で定義された粉末化組成物
を含む粉末化された消費者製品である。(c) 任意に上記で定義されたマイクロカプセルとは異なる香料粉末も、本発明による対象である。
【0115】
特定の実施態様によれば、前記消費者製品は、ドライシャンプー、タルカムパウダー、粉末洗剤、洗剤ビーズ、固体のセントブースター、猫用トイレ砂、粉末毛染め剤、制汗剤組成物、脱臭組成物からなる群から選択される。
【0116】
好ましくは、前記消費者製品は、0.05質量%~、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.2~5質量%の本発明の粉末化された組成物を含み、前記パーセンテージは消費者製品の総質量に対して定義されている。当然、上記の濃度をそれぞれの製品における所望の嗅覚効果に従って適合させてよい。
【0117】
本発明をここで以下の実施例を用いて説明するが、該実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0118】
例1
防火剤を含む粉末化された組成物の製造方法
A. ポリマーマトリックス中に自由に分散された油相を有する顆粒Aの製造
以下の組成のエマルションを、噴霧乾燥機Buechi(製造元: スイス)内で噴霧乾燥させて(空気の入口温度を215℃に設定、且つスループットを1時間あたり500mlに設定、空気の出口温度を105℃に設定した)、以下の組成を有する噴霧乾燥された顆粒を得た(表1参照)。
【0119】
【0120】
【0121】
1) Firmenich SA、スイス
2) 3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール、Givaudan SA、ヴェルニエ、スイス
3) 1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、International Flavors&Fragrances、米国
4) Firmenich SA、スイス
5) メチルジヒドロジャスモネート、Firmenich SA、スイス
6) Firmenich SA、スイス。
【0122】
B. コアシェルマイクロカプセル中に部分的に封入された油相を有する顆粒Bの製造
【表3】
【0123】
a) 表4参照(香料1B)
1) Takenate(登録商標)D110N(酢酸エチル中で75%の活性溶液)
2) Ciba製のAlcapsol、水中で20%の溶液
3) Cytec製のCymel 385とCymel 9370との90/10のブレンド、両方とも水中で70%の溶液
4) Ciba製のSalcare SC60、水中で3%の溶液
5)=純粋なメラミン/ホルムアルデヒド樹脂(2)で使用された量の70%)/香料オイルの量。
【0124】
【0125】
ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、製造元: 三井化学)を、香料オイル(上記表4参照)で構成されるコアオイルと混合することによって油相を調製した。前記油相は2%のTakenate(登録商標)D-110Nと、98%のコアオイルとからなった。カプセル化し、Takenate D-110Nを使用してメラミンホルムアルデヒド壁を架橋させた後、未反応のポリイソシアネートがコアオイル中に残留する水準は非常に低かったので、カプセルの内部コアは、香料オイルで構成されるコアオイルのみで作られていた。
【0126】
カプセルスラリーを製造するために、アクリルアミドおよびアクリル酸コポリマー、および2つのメラミンホルムアルデヒド樹脂の配合物を、水中で溶解して水相を形成した。次いで、香料プレミックスオイルをこの溶液に添加し、酢酸を用いてpHを5に調節した。温度を2時間、90℃へと高めて、カプセルを硬化させた。この時点で、カプセルが形成され、架橋され、且つ安定であった。次いで、Salcare SC60(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド/アクリルアミドコポリマー)の水中で3%の溶液を前記混合物中に80℃で添加して、2時間、80℃で反応させた。次いで、通常行われるとおり残留する遊離ホルムアルデヒドを捕捉するための薬剤としてのアミノプラストカプセルと共に、エチレン尿素の溶液(水中で50質量%)を添加した。最終的なスラリーは、該スラリーの質量に対して約3%(質量/質量)のエチレン尿素を含有し、前記混合物を室温に冷却させた。水酸化ナトリウムを用いて最終的なpHを7に調節した。
【0127】
以下の組成のエマルションを、噴霧乾燥機Buechi(製造元: スイス)内で噴霧乾燥させて(空気の入口温度を215℃に設定、且つスループットを1時間あたり500mlに設定、空気の出口温度を105℃に設定した)、以下の組成を有する噴霧乾燥された顆粒を得た(表5参照)。
【0128】
【0129】
1) CapsulTM、Ingredion
2) マルトース、Lehmann&Voss
3) シリカ、Evonik
4) 表2参照。
【0130】
顆粒Bとタルクとの間で乾式混合を行う(50:50)。
【0131】
例2
粉末化された組成物のMIE性能
顆粒Aと種々の量での種々の防火剤との間で乾式混合を行い、配合物I、配合物IIおよび比較用配合物IIIおよびIVを得た(表6参照)。
【0132】
最小着火エネルギー(MIE)を、種々の配合物について測定した。
【0133】
最小着火エネルギーを、MIKE-3装置(Cesana AG、Baiergasse 56、CH-4126 Bettingen(バーゼル)、スイス)において測定した。その試験のプロトコルは、ASTM-E2019, VDI-2263, Center for Chemical Process Safety CCPS Publication G-95, Guidelines for Safe Handling of Powders and Bulk Solids(著作権) 2005(米国化学工学研究所による)、およびthe Operating Instructions for the MIKE-3 apparatusに記載されている。
【0134】
MIEを測定するために使用された試験のプロトコルは、ASTM-E2019, VDI-2263, Center for Chemical Process Safety CCPS Publication G-95, Guidelines for Safe Handling of Powders and Bulk Solids(著作権) 2005(米国化学工学研究所による)、およびthe Operating Instructions for the MIKE-3 apparatus(製造元:Kuehner AG, Birsfelden, CH)(C.CesanaおよびR.Siwekによる)に記載されている。
【0135】
結果を下記の表に示す。
【0136】
【0137】
1) 無水硫酸ナトリウム、製造元 Birla Cellulosic、インド
2) 無水硫酸ナトリウム、製造元 MSM、スペイン
3) タルク(ケイ酸マグネシウム)、製造元 Hi Tech Minerals&Chemicals、インド
4) 例1参照。
【0138】
表6から、タルクの使用は、配合物が、同量またはより大量の、より低いMIE値をもたらす硫酸ナトリウムを用いて配合された配合物に比して、噴霧乾燥された粉末を高レベルで配合(配合物Iにおいては50%)される配合物を可能にすると結論づけることができる。