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特許7346406シソ発酵抽出物を含む睡眠障害の予防、改善または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】シソ発酵抽出物を含む睡眠障害の予防、改善または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/535 20060101AFI20230911BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20230911BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20230911BHJP
   A61K 36/064 20060101ALI20230911BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230911BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230911BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230911BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
A61K36/535
A61K35/742
A61K35/747
A61K36/064
A61P25/20
A23L33/105
A23L2/00 F
C11B9/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020529766
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2018014558
(87)【国際公開番号】W WO2019107844
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】10-2017-0163476
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0078853
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515131404
【氏名又は名称】アジュ ユニバーシティー インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】AJOU UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】ジョン イスク
(72)【発明者】
【氏名】ギム テホ
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-061091(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1185833(KR,B1)
【文献】特開2006-036696(JP,A)
【文献】特開2006-062998(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146844(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047777(WO,A1)
【文献】特開2002-371480(JP,A)
【文献】特開2005-075753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/535
A61K 35/742
A61K 35/747
A61K 36/064
A61K 8/9789
A61K 8/9728
A61K 8/99
A61Q 13/00
A61Q 19/00
A61P 25/20
A23L 33/105
C11B 9/00
A23L 2/52
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シソ(Perilla frutescens)の葉の抽出発酵物を含む経口投与用の睡眠障害の予防または治療用薬学的組成物であって、
前記抽出発酵物は、前記シソの葉の抽出物がバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、又はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で発酵されたものである、睡眠障害の予防または治療用薬学的組成物
【請求項2】
前記抽出発酵物は、水、C1~C4の有機溶媒またはこれらの混合物を溶媒として抽出した後、発酵菌株で発酵させることを特徴とする請求項1に記載の睡眠障害の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記発酵は、5℃~80℃で30分~10日間行うことを特徴とする請求項に記載の睡眠障害の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記睡眠障害は、入眠障害、熟眠障害、中途覚醒、早期覚醒、不眠症、悪夢、夢遊病、嗜眠症、睡眠時異常行動、過眠症(hypersomnia)、睡眠発作、呼吸関連睡眠障害、無呼吸症、概日リズム睡眠障害(circadian rhythm sleep disorders)、錯睡眠(parasomnia)、レストレスレッグス症候群および周期性四肢運動障害よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の睡眠障害の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
シソ(Perilla frutescens)の葉の抽出発酵物を含む睡眠障害の予防または改善用健康機能食品組成物であって、
前記抽出発酵物は、前記シソの葉の抽出物がバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、又はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で発酵されたものである、睡眠障害の予防または改善用健康機能食品組成物
【請求項6】
シソ(Perilla frutescens)の葉の抽出発酵物を含む経口投与用の睡眠改善用組成物であって、
前記抽出発酵物は、前記シソの葉の抽出物がバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、又はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で発酵されたものである、睡眠改善用組成物
【請求項7】
前記組成物は、食品組成物、医薬品組成物および医薬部外品組成物よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上の組成物であることを特徴とする請求項6に記載の睡眠改善用組成物。
【請求項8】
シソ(Perilla frutescens)の葉の抽出発酵物を含む経口投与用の睡眠補助剤であって、
前記抽出発酵物は、前記シソの葉の抽出物がバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、又はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で発酵されたものである、睡眠補助剤
【請求項9】
経口投与用の睡眠障害治療用組成物の製造時におけるシソ(Perilla frutescens)の葉の抽出発酵物の使用であって、
前記抽出発酵物は、前記シソの葉の抽出物がバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、又はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で発酵されたものである、使用
【請求項10】
前記抽出発酵物は、水、C1~C4の有機溶媒またはこれらの混合物を溶媒として抽出した後、発酵菌株で発酵させたことを特徴とする請求項に記載の使用。
【請求項11】
前記発酵は、5℃~80℃で30分~10日間行うことを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記睡眠障害は、入眠障害、熟眠障害、中途覚醒、早期覚醒、不眠症、悪夢、夢遊病、嗜眠症、睡眠時異常行動、過眠症(hypersomnia)、睡眠発作、呼吸関連睡眠障害、無呼吸症、概日リズム睡眠障害(circadian rhythm sleep disorders)、錯睡眠(parasomnia)、レストレスレッグス症候群および周期性四肢運動障害よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項に記載の使用。
【請求項13】
睡眠障害の予防または治療に使用するための、経口投与用のシソ(Perilla frutescens)の葉の抽出発酵であって、
前記抽出発酵物は、前記シソの葉の抽出物がバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、又はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で発酵されたものである、シソ(Perilla frutescens)の葉の抽出発酵物
【請求項14】
前記抽出発酵物は、水、C1~C4の有機溶媒またはこれらの混合物を溶媒として抽出した後、発酵菌株で発酵させたことを特徴とする請求項13に記載のシソ(Perilla frutescens)の葉の抽出発酵物。
【請求項15】
前記発酵は、5℃~80℃で30分~10日間行うことを特徴とする請求項14に記載のシソ(Perilla frutescens)の葉の抽出発酵物。
【請求項16】
前記睡眠障害は、入眠障害、熟眠障害、中途覚醒、早期覚醒、不眠症、悪夢、夢遊病、嗜眠症、睡眠時異常行動、過眠症(hypersomnia)、睡眠発作、呼吸関連睡眠障害、無呼吸症、概日リズム睡眠障害(circadian rhythm sleep disorders)、錯睡眠(parasomnia)、レストレスレッグス症候群および周期性四肢運動障害よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項13に記載のシソ(Perilla frutescens)の葉の抽出発酵物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月10日に出願された韓国特許出願第10-2017-0163476号およびその韓国内優先権主張出願として2018年07月06日に出願された韓国特許出願第10-2018-0078853号をすべて優先権として主張し、前記明細書全体は、本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠障害の予防または治療用薬学的組成物ないし健康機能食品組成物に関する。
【0003】
また、本発明は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠改善用組成物、繊維ないし香料組成物に関する。
【0004】
また、本発明は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を睡眠障害患者に投与する段階を含む睡眠障害の治療方法に関する。
【0005】
また、本発明は、睡眠障害治療用組成物の製造または睡眠障害の予防または治療に使用するためのシソ(Perilla frutescens)発酵抽出物の用途に関する。
【背景技術】
【0006】
睡眠とは、目を閉じたまま意識活動が休む状態をいう。これは、ヒトが昼間の間活動しながら使用したエネルギーを補充し、身体活動によって積もった疲労を回復する重要な過程であると同時に、ヒトの成長に必ず必要な成長ホルモンが最も多く分泌される時間である。また、人体の生命維持のためのすべての生理的機能を総括する所である脳が適切な活動の均衡を維持するためには、必ず休息が必要であり、このような休息は、ほとんど睡眠時間になされる。最近、米国胸部学会は、成人の一日睡眠時間を6~9時間にすることを推奨した。
【0007】
しかしながら、現代人の消耗的であり、忙しい日常、人口の高齢化などに伴って、睡眠に問題が発生して治療を受ける患者の数は、最近数年間増加しており、今後も持続的に増加すると予想される。睡眠に関連して発生した障害は、直接的に健康を害するが、最近の研究によれば、睡眠が不足する場合、糖尿病、心臓疾患、肥満にかかる危険が増加することになる。2004年に発刊されたジャーナル「Sleep」の研究では、平均的に夜に5時間以下で睡眠をとった女性は、7時間睡眠をとった女性に比べて死亡率が有意に高かった。
【0008】
現在、多くの睡眠障害を治療するために、睡眠薬、精神安定剤、ストレス緩和剤などの投与が一般的な治療法として使用されている。しかしながら、このような薬剤を4週間以上長期服用をする場合には、依存性および薬物副作用の問題点を示し、老人や妊婦の場合、前記のような薬物の投与が制限されることがある。したがって、前記薬物の他に副作用が少なく、睡眠障害の治療ないし睡眠の質を効果的に改善させることができる天然物質からなる薬剤の開発の必要性が台頭している。
【0009】
シソ(Perilla frutescens)は、シソ科の一年生植物であって、せき、痰、咽喉炎、消化不良、おでき、マヒ症状、糖尿病、腰痛など多様な疾病の治療に使用され、抗菌効果または抗癌効果があることが知られている。
【0010】
日本国特許出願第2004-219382号は、安眠を促進する作用を有する組成物およびこれを含有する飲料に関し、シソの葉の抽出物を含んでいる。前記組成物を摂取する場合、睡眠時間が延びるなど安眠を誘導する効果があることが開示されている。
【0011】
しかしながら、シソ抽出物を微生物で発酵させた組成物の睡眠障害の治療ないし睡眠改善など睡眠の質を上昇させる効果については、現在まで研究されたり報告されたことがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これより、本発明者らは、シソ発酵抽出物は、入眠潜時を短縮させ、総睡眠時間を増加させる効果があり、これは、従来、睡眠障害の治療などに使用される薬物と比較してその効果に優れていることを確認し、本発明を完成した。
【0013】
したがって、本発明の目的は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠障害の予防または治療用薬学的組成物ないし予防または改善用健康機能食品組成物を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠改善用組成物、繊維ないし香料組成物を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を睡眠障害患者に投与する段階を含む睡眠障害の治療方法を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、睡眠障害治療用組成物の製造または睡眠障害の予防または治療に使用するためのシソ(Perilla frutescens)発酵抽出物の用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、本発明は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠障害の予防または治療用薬学的組成物を提供することができる。
【0018】
本発明は、また、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を睡眠障害患者に投与する段階を含む睡眠障害の治療方法を提供することができる。
【0019】
本発明は、また、睡眠障害治療用組成物の製造時に使用するためのシソ(Perilla frutescens)発酵抽出物の用途を提供することができる。
【0020】
本発明は、また、睡眠障害の予防または治療に使用するための、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を提供することができる。
【0021】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記発酵抽出物は、シソの葉、幹、花、実および全草よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上の部位から抽出されるものでありうる。
【0022】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記発酵抽出物は、水、C~Cの有機溶媒またはこれらの混合物を溶媒として抽出した後、発酵菌株で発酵させたものでありうる。
【0023】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記発酵菌株は、枯草菌、乳酸菌および酵母よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上の菌株からなるものでありうる。
【0024】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記枯草菌は、バチルス(Bacillus)属であり、前記乳酸菌は、ラクトバチルス(Lactobacillus)属であり、酵母は、サッカロミセス(Saccharomyces)属でありうる。
【0025】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記発酵は、5℃~80℃で30分~10日間行うものでありうる。
【0026】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記睡眠障害は、入眠障害、熟眠障害、中途覚醒、早期覚醒、不眠症、悪夢、夢遊病、嗜眠症、睡眠時異常行動、過眠症(hypersomnia)、睡眠発作、呼吸関連睡眠障害、無呼吸症、概日リズム睡眠障害(circadian rhythm sleep disorders)、錯睡眠(parasomnia)、レストレスレッグス症候群および周期性四肢運動障害よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上のものでありうる。
【0027】
本発明は、また、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠障害の予防または改善用健康機能食品組成物を提供することができる。
【0028】
本発明は、また、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠改善用組成物を提供することができる。
【0029】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記組成物は、食品組成物、化粧品組成物、染料組成物、医薬品組成物および医薬部外品組成物よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上の組成物でありうる。
【0030】
本発明は、また、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠補助剤を提供することができる。
【0031】
本発明は、また、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠改善用繊維を提供することができる。
【0032】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記繊維は、シソ発酵抽出物で染色されたものでありうる。
【0033】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記繊維は、寝具類、衣類、カーテン類、カーペット類、上履き類、タオル類、壁紙類、繊維材質の室内カバー用品類、人形類および眼帯類よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上の製品に含まれるものでありうる。
【0034】
本発明は、また、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む香料組成物を提供することができる。
【0035】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記組成物は、香水類、アロマ類、オイル類、芳香剤類、洗剤類および皮膚外用剤類よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上の製品に含まれるものでありうる。
【0036】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0037】
上述したように、従来技術において睡眠障害などの治療のために処方する睡眠薬または鎮静剤などの薬物は、持続的に投与する場合、依存性ないし薬物副作用などが発生する限界点が存在した。これを克服するための方案として、植物由来天然物質を利用しながらも、睡眠障害などの治療効果に優れた組成物の開発が要求されているのが現状である。
【0038】
本発明によるシソ(Perilla frutescens)発酵抽出物は、シソ由来抽出物を枯草菌などの多様な微生物を用いて発酵させたものであって、入眠潜時を有意的に短縮させ、総睡眠時間を有意的に増加させる効果があるので、睡眠障害の予防、改善、治療ないし睡眠改善用組成物として効果的である。
【0039】
本発明の「睡眠障害(sleep disorder)」は、睡眠に関連した疾病であって、睡眠が様々な要因によって障害を示す症状を意味する。原因によって区分できるが、情緒的要因が原因である場合、「非器質性睡眠障害(nonorganic sleep disorder)」、身体的要因が原因である場合、「器質性睡眠障害(organic sleep disorder)」と称する。
【0040】
本発明の「睡眠改善」は、前記睡眠障害と関連した症状およびその他に円滑に睡眠を行うことができない症状が質的または量的に緩和されるすべての効果を意味する。
【0041】
本発明の「入眠潜時(sleep latency)」は、深い睡眠に入るまでに要する時間を意味する。眠りに入るが、深い睡眠に入ることは難しい睡眠障害を「入眠障害」という。
【0042】
本発明の「総睡眠時間」は、睡眠が維持される時間を意味する。
【0043】
本発明の「シソ発酵抽出物」は、シソ抽出物をまず製造した後、発酵菌株を用いて抽出物を発酵させたものを意味する。
【0044】
したがって、本発明は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠障害の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0045】
シソ(Perilla frutescens)は、エゴマとも呼ばれ、抗菌ないし抗癌効果があると知られている。カリフォルニアロールまたはスシなどご飯にする料理に使用されることがあり、食べ物の色を出したり、織物などを染色するのに染料として使用されることがある。
【0046】
シソ発酵抽出物を製造するために、まず、シソ抽出物を製造する。これは、シソの葉、幹、花または実などの地上部ないし全草から抽出することができるが、好ましくは、シソの葉、幹、花または実などの地上部から抽出することが好ましく、最も好ましくは、シソの葉から抽出することが最も好ましい。抽出溶媒は、水、C~Cの有機溶媒またはこれらの混合物でありうるが、水またはC~Cのアルコールであることが好ましく、より好ましくは、水、メタノール、エタノールまたはプロパノールであることが好ましく、最も好ましくは、水を溶媒とすることが最も好ましい(実施例1)。
【0047】
前記シソ抽出物を発酵させるのに使用できる発酵菌株は、枯草菌、乳酸菌または酵母を利用することができ、好ましくは、前記枯草菌は、バチルス(Bacillus)属、乳酸菌は、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、酵母は、サッカロミセス(Saccharomyces)属であることが、シソ抽出物の睡眠改善効果を増進させるのに好ましい。
【0048】
前記枯草菌は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ロンガム(Bacillus longum)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・シルクランス(Bacillus circulans)およびバチルス・ポリミキサ(Bacillus polymyxa)よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上のバチルス(Bacillus)属菌であり得る。
【0049】
前記乳酸菌は、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上のラクトバチルス(Lactobacillus)属菌であり得る。
【0050】
前記酵母は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)、サッカロミセス・エリプソイデウス(Saccharomyces ellipsoideus)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・サケ(Saccharomyces sake)、サッカロミセス・コレアヌス(Saccharomyces coreanus)、サッカロミセス・リポリティカ(Saccharomyces lipolytica)、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)およびサッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上のサッカロミセス(Saccharomyces)属菌であり得る。
【0051】
発酵条件は、5℃~80℃で30分~10日間行うことが好ましく、より好ましくは、20℃~40℃で3日~8日間行うことが好ましく、最も好ましくは、22℃~30℃で4日~6日間行うことが最も好ましい(実施例1)。
【0052】
前記シソ発酵抽出物の投与経路は、経口または非経口で可能であり、非経口の場合、皮膚外用、注射、経皮または鼻腔などの経路で投与することができるが、これに限定されるものではない。本発明のシソ発酵抽出物の投与によって睡眠障害と関連した症状を緩和させることができ、その他、睡眠が改善される効果を得ることができるので、世界的に推奨される、あるいは、個人が所望する睡眠時間を充足することができる。
【0053】
本発明の前記睡眠障害は、睡眠と関連して非正常な症状を示すすべての障害を意味するが、好ましくは、入眠障害、熟眠障害、中途覚醒、早期覚醒、不眠症、悪夢、夢遊病、嗜眠症、睡眠時異常行動、過眠症(hypersomnia)、睡眠発作、呼吸関連睡眠障害、無呼吸症、概日リズム睡眠障害(circadian rhythm sleep disorders)、錯睡眠(parasomnia)、レストレスレッグス症候群および周期性四肢運動障害よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上であることが好ましいが、これに限定されない。
【0054】
本発明の薬学的組成物は、経口または非経口の様々な剤形でありうる。前記組成物を剤形化する場合には、一つ以上の緩衝剤(例えば、食塩水またはPBS)、抗糖尿剤、静菌剤、キレート化剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン)、充填剤、増量剤、結合剤、アジュバント(例えば、アルミニウムヒドロキシド)、懸濁剤、濃厚剤、湿潤剤、崩解剤または界面活性剤、希釈剤または賦形剤を使用して調製することができる。
【0055】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、一つ以上の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン(とうもろこしデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプンなどを含む)、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチル-セルロースまたはゼラチンなどを混ぜて調製される。例えば、活性成分を固体賦形剤と配合した後、これを粉砕し、適合した補助剤を添加した後、顆粒混合物に加工することによって、錠剤または糖衣錠剤を収得することができる。また、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどのような潤滑剤も使用される。
【0056】
経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤またはシロップ剤などが該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤または保存剤などが含まれ得る。また、場合によって架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはナトリウムアルギネートなどを崩解剤として添加することができ、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤および防腐剤などをさらに含むことができる。
【0057】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁溶剤、乳剤、凍結乾燥製剤または坐剤などが含まれる。非水性溶剤および懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としては、ウィテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用され得る。
【0058】
本発明の薬学的組成物は、経口または非経口で投与され得、非経口投与時に皮膚外用;腹腔内、直腸、静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射する注射剤;経皮投与剤;または鼻腔吸入剤の形態で当業界に公知された方法によって剤形化することができる。
【0059】
前記注射剤の場合には、必ず滅菌されなければならないし、バクテリアおよび真菌のような微生物の汚染から保護されなければならない。注射剤の場合、適合した担体の例としては、これに限定されないが、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、これらの混合物および/または植物油を含む溶媒または分散媒質でありうる。より好ましくは、適合した担体としては、ハンクス溶液、リンガー液、トリエタノールアミンが含有されたPBS(phosphate buffered saline)または注射用滅菌水、10%エタノール、40%プロピレングリコールおよび5%デキストロースのような等張溶液などを使用することができる。前記注射剤を微生物の汚染から保護するためには、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどのような多様な抗菌剤および抗真菌剤をさらに含むことができる。また、前記注射剤は、多くの場合、糖またはナトリウムクロリドのような等張剤をさらに含むことができる。
【0060】
経皮投与剤の場合、軟こう剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、外用液剤、パスタ(paste)剤、リニメント剤、エアロール剤などの形態が含まれる。前記で経皮投与は、薬学組成物を局所的に皮膚に投与して薬学組成物に含有された有効な量の活性成分が皮膚内に伝達されることを意味する。
【0061】
吸入投与剤の場合、本発明によって使用される抽出物は、適合した推進剤、例えば、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適合した気体を使用して、加圧パックまたは煙霧機からエアゾールスプレーの形態で便利に伝達することができる。加圧エアゾールの場合、投薬単位は、計量された量を伝達するバルブを提供して決定することができる。例えば、吸入器または吹込み機に使用されるゼラチンカプセルおよびカートリッジは、化合物、およびラクトースまたはデンプンのような適合した粉末基剤の粉末混合物を含有するように剤形化することができる。非経口投与用剤形は、すべての製薬化学に一般的に公知された処方書である文献(Remington’s Pharmaceutical Science、15th Edition、1975 Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania 18042,Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0062】
本発明の薬学的組成物は、薬剤学的に有効な量で投与するが、薬剤学的に有効な量は、医学的治療に適用可能な合理的な恵み/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定され得る。本発明の組成物は、個別治療剤として投与したり、他の治療剤と併用して投与され得、従来の治療剤とは順次または同時に投与され得、単一または多重投与され得る。すなわち、本発明の組成物の総有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与され得、多重投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与され得る。上記した要素をすべて考慮して副作用なしに最小の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定され得る。
【0063】
本発明の薬学的組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度によってその範囲が多様である。一日投与量としては、非経口投与時にシソ発酵抽出物を基準として一日に体重1kg当たり好ましくは0.01~200mg、より好ましくは0.1~120mgの量で投与されるように、そして、経口投与時は、本発明のシソ発酵抽出物を基準として一日に体重1kg当たり好ましくは0.01~200mg、より好ましくは0.01~20mgの量で投与されるように1~数回に分けて投与することができる。しかしながら、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などによって増減することができるので、前記投与量がいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0064】
本発明の組成物は、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療および生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用することができる。
【0065】
本発明の薬学組成物は、また、シソ発酵抽出物を有効成分として含む外用剤の剤形で提供することができる。本発明の睡眠改善または睡眠治療用薬学的組成物を皮膚外用剤として使用する場合、さらに、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤およびゲル化剤、軟化剤、抗糖尿剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型乳化剤、非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性活性剤、親油性活性剤または脂質小胞など皮膚外用剤に通常使用される任意の他の成分のような皮膚科学分野において通常使用される補助剤を含有することができる。また、前記成分は、皮膚科学分野において一般的に使用される量で導入され得る。
【0066】
本発明の睡眠改善または睡眠治療用薬学的組成物が皮膚外用剤として提供される場合、これに制限されるものではないが、軟膏、パッチ、ゲル、クリームまたは噴霧剤などの剤形でありうる。
【0067】
また、本発明は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠障害の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0068】
前記シソ発酵抽出物は、前記薬学的組成物に使用されたものと同一なので、説明はその記載に代わる。
【0069】
前記健康機能食品の種類には、特別な制限はない。その例としては、ドリンク剤、肉類、ソーセージ、パン、ビスケット、モチ、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、アルコール飲料およびビタミン複合剤、乳製品および乳加工製品などがあり、通常の意味における健康機能食品を全部含む。
【0070】
本発明のシソ発酵抽出物は、食品にそのまま添加したり、他の食品または食品成分と共に使用され得、通常の方法によって適切に使用され得る。有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)によって適合に決定され得る。一般的に、健康食品中の前記化合物の量は、全体食品重量の0.1~90重量部で加えることができる。しかしながら、健康および衛生を目的としたり、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下であってもよく、安全性の面において何らの問題もないので、有効成分は、前記範囲以上の量で使用されることもできる。
【0071】
本発明の健康機能性飲料組成物は、指示された割合で必須成分として本発明の化合物を含有すること他には、他の成分に特別な制限がなく、通常の飲料のように、様々な香味剤または天然炭水化物などを更なる成分として含有することができる。上述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えばマルトース、スクロースなど;およびポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。上述したもの以外の香味剤として天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えばレバウジオシドA、グリシルリジンなど)および合成香味剤(サッカリン、アスパルタムなど)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、本発明の組成物100当たり一般的に約1~20g、好ましくは、約5~12gである。
【0072】
前記の他に、本発明のシソ発酵抽出物は、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。その他に、本発明のシソ発酵抽出物は、天然果物ジュースおよび果物ジュース飲料および野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は、独立して、または組み合わせて使用することができる。このような添加剤の比率は、そんなに重要なものではないが、本発明のシソ発酵抽出物100重量部当たり0.1~約20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【0073】
また、本発明は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠改善用組成物を提供する。
【0074】
前記シソ発酵抽出物は、前記薬学的組成物に使用されたものと同一なので、説明はその記載に代わる。
【0075】
本発明の前記組成物は、食品組成物、化粧品組成物、染料組成物、医薬品組成物および医薬部外品組成物よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上の組成物であることが好ましいが、これに限定されない。
【0076】
化粧品組成物に製剤化される場合、前記シソ発酵抽出物の含量は、化粧品組成物の総重量に対して0.0001~10重量%であり、好ましくは0.01~5.0重量%である。最小の皮膚癌の改善または予防効果を達成することができるように、シソ発酵抽出物の含量は、前記最小値以上であることが好ましく、過量添加による使用感の低下および各種剤形への適用可能性を考慮してシソ発酵抽出物の含量は、前記最大値以下であることが好ましい。この際、シソ発酵抽出物の含量は、剤形または化粧品組成物に含有される成分の含量によって前記範囲内で適切に調節することが好ましい。
【0077】
本発明の化粧品組成物に含まれる成分は、有効成分としてのシソ発酵抽出物以外に化粧品組成物に通常用いられる成分を含み、例えば抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料および香料のような通常の補助剤、そして担体を含む。
【0078】
本発明の化粧品組成物は、当業界において通常製造されるいかなる剤形でも製造され得、例えば柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、ジェル、パウダー、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイル、ボディーエッセンスなどの化粧品に剤形化され得る。
【0079】
本発明の剤形が、ペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが用いられる。
【0080】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーが用いられ、特にスプレーである場合には、さらにクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進体を含むことができる。
【0081】
本発明の剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が用いられ、例えば水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0082】
本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリールアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステルおよびポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガまたはトラカントなどが用いられる。
【0083】
本発明の剤形が界面-活性剤含有クレンジングである場合には、担体成分として脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが用いられる。
【0084】
また、本発明は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠補助剤を提供する。
【0085】
前記シソ発酵抽出物は、前記薬学的組成物に使用されたものと同一なので、その記載に代わる。
【0086】
前記睡眠補助剤は、睡眠薬とは異なって、専門家の処方なしに購入できる睡眠誘導または鎮静効果がある一般医薬品を意味する。
【0087】
また、本発明は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む睡眠改善用繊維を提供する。
【0088】
前記シソ発酵抽出物は、前記薬学的組成物に使用されたものと同一なので、その記載に代わる。
【0089】
本発明の前記繊維は、シソ発酵抽出物を原料として製造されたり、染料として使用して染色されたり、噴射などで繊維の表面にシソ発酵抽出物が付着されたものなど、シソ発酵抽出物によって睡眠改善効果を示すすべての繊維を意味し、好ましくはシソ発酵抽出物を染料として使用して染色した繊維であることが好ましい。
【0090】
前記繊維は、睡眠環境に影響を及ぼすことができる製品に全部使用され得、好ましくは寝具類、衣類、カーテン類、カーペット類、上履き類、タオル類、壁紙類、繊維材質の室内カバー用品類、人形類および眼帯類よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上の製品に含まれることが好ましいが、これに限定されない。
【0091】
前記寝具類は、寝るのに必要な布団(掛け布団、敷き布団)、枕またはクッションなどを意味し、衣類は、寝るときに着ることができる寝巻、下着または靴下などを意味し、繊維材質の室内カバー用品類は、椅子または机など家具や装飾品、器具などを汚染その他の理由で覆って保管するために使用する繊維材質のカバー類を意味するが、これに限定されない。
【0092】
また、本発明は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を含む香料組成物を提供する。
【0093】
前記シソ発酵抽出物は、前記薬学的組成物に使用されたものと同一なので、その記載に代わる。
【0094】
前記香料は、アロマ(aroma)など香りを出すのに使用するすべての物質を意味する。
【0095】
前記香料組成物は、シソ発酵抽出物によって睡眠改善効果を示すことができ、香りを出す用途に使用される製品であれば、制限なしに含まれ得るが、好ましくは、香水類、 香りのろうそく類、オイル類、芳香剤類、洗剤類および皮膚外用剤類よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上の製品に含まれることが好ましい。前記皮膚外用剤は、石鹸、洗顔剤または入浴剤など入浴するのに必要な製品を全部含むが、これに限定されない。
【0096】
前記製品に含まれるシソ発酵抽出物の量は、当業界における通常の技術によって目的とする効果を奏するために適切に調節して含むことができる。
【0097】
また、本発明は、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を睡眠障害患者に投与する段階を含む睡眠障害の治療方法を提供する。
【0098】
前記シソ発酵抽出物および睡眠障害は、前記薬学的組成物のシソ発酵抽出物および睡眠障害と同一なので、説明はその記載に代わる。
【0099】
また、本発明は、睡眠障害治療用組成物の製造時に使用するためのシソ(Perilla frutescens)発酵抽出物の用途を提供する。
【0100】
前記シソ発酵抽出物および睡眠障害は、前記薬学的組成物のシソ発酵抽出物および睡眠障害と同一なので、その記載に代わる。
【0101】
また、本発明は、睡眠障害の予防または治療に使用するための、シソ(Perilla frutescens)発酵抽出物を提供する。
【0102】
前記シソ発酵抽出物および睡眠障害は、前記薬学的組成物のシソ発酵抽出物および睡眠障害と同一なので、その記載に代わる。
【発明の効果】
【0103】
したがって、本発明は、シソ発酵抽出物は、発酵しないシソ抽出物に比べて入眠潜時を有意的に短縮させ、総睡眠時間を有意的に増加させるので、睡眠障害の予防、改善、治療ないし睡眠改善用組成物として効果的であり、睡眠障害の治療方法にも効果的に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1図1は、シソ抽出物(シソ-W)またはシソ発酵抽出物(シソ-B)を投与したマウスにペントバルビタール(pentobarbital)を投与して睡眠を誘導した後、入眠潜時の測定結果を示す。対照群は、生理食塩水を、Dia(陽性対照群)は、ジアゼパム(diazepam)を投与した。シソ発酵抽出物を投与した場合、入眠潜時が最も短く、これは、シソ抽出物ないし陽性対照群よりも有意的に減少した数値であることを確認することができた。
図2図2は、シソ抽出物(シソ-W)またはシソ発酵抽出物(シソ-B)を投与したマウスにペントバルビタール(pentobarbital)を投与して睡眠を誘導した後、総睡眠時間の測定結果を示す。対照群は、生理食塩水を、Dia(陽性対照群)は、ジアゼパム(diazepam)を投与した。シソ発酵抽出物を投与した場合、総睡眠時間がシソ抽出物に比べて有意的に増加したことを確認することができた。
図3図3は、シソ抽出物(シソ-W)またはシソ発酵抽出物(シソ-B、シソ-L、シソ-S)を投与したマウスにペントバルビタール(pentobarbital)を投与して睡眠を誘導した後、入眠潜時の測定結果を示す。対照群は、生理食塩水を投与した。シソ抽出物に比べてシソ発酵抽出物をそれぞれ投与した場合、入眠潜時が有意的に減少することを確認することができた。
図4図4は、シソ抽出物(シソ-W)またはシソ発酵抽出物(シソ-B、シソ-L、シソ-S)を投与したマウスにペントバルビタール(pentobarbital)を投与して睡眠を誘導した後、総睡眠時間の測定結果を示す。対照群は、生理食塩水を投与した。シソ抽出物に比べてシソ発酵抽出物をそれぞれ投与した場合、総睡眠時間が有意的に増加したことを確認することができた。
【発明を実施するための形態】
【0105】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明しようとする。これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものと解されないことは、当業界における通常の知識を有する者において自明だろう。
【0106】
[実施例1]
シソ抽出物およびその発酵物の製造
シソの葉を80℃で熱水抽出し、121℃で20分間滅菌した(シソ-W)。滅菌されたシソ熱水抽出物を枯草菌、乳酸菌または酵母で発酵して、シソ発酵抽出物を製造した。
【0107】
具体的に、枯草菌としてバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、乳酸菌としてラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)または酵母としてサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のうち一種をそれぞれシソ抽出物に接種した後、温度25℃、湿度80%の環境で140rpmで振とう培養して5日間発酵して、最終的にシソバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)発酵物(シソ-B)、シソラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)発酵物(シソ-L)およびシソサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)発酵物(シソ-S)の発酵抽出物を製造した。
【0108】
[実施例2]
シソ発酵抽出物の睡眠改善効果
<2-1>従来鎮静剤との睡眠改善効果の比較
シソ発酵抽出物と従来販売されている鎮静剤の睡眠改善効果を入眠潜時および総睡眠時間で比較して確認しようとした。
【0109】
具体的に、ICRマウス((株)オリエントバイオ)に09%生理食塩水、前記実施例1で製造したシソ抽出物(シソ-W)またはその発酵抽出物(シソ-B)10mg/kg、ジアゼパム(diazepam;明仁製薬株式会社)1mg/kgをそれぞれ経口投与した。試験物質の投与30分後、睡眠を誘導するために、神経安定剤であるペントバルビタール(pentobarbital;HANLIM製薬株式会社)を45mg/kgで腹腔投与した。ペントバルビタールの投与後、各試験物質の投与群別に深い睡眠に入るまでに要する時間(入眠潜時)と総睡眠維持時間(総睡眠時間)を測定した。生理食塩水とジアゼパムは、それぞれ対照群および陽性対照群として使用した。
【0110】
その結果、図1に示されたように、対照群の入眠潜時(325秒)に比べて、シソ-Wを投与した場合、入眠潜時が約20%短縮(261秒)され、シソ-Bを投与した場合、入眠潜時が45%短縮(180秒)されて、シソ-Wに比べてさらに有意的に短縮されたことを確認した。特に、シソ発酵抽出物の場合、陽性対照群であるジアゼパムを使用した場合(220秒)より10%以上短縮された入眠潜時を示すことが確認されて、有意的な効果を確認した。
【0111】
また、図2に示されたように、対照群の総睡眠時間(46分)に比べて、シソ-Wを投与した場合、総睡眠時間が約123%増加(57分)し、シソ-Bを投与した場合は、総睡眠時間が約148%増加(68分)して、シソ-Wに比べてさらに有意的に増加したことを確認した。
【0112】
<2-2>発酵菌株別の睡眠改善効果の比較
シソ抽出物を発酵させた発酵菌株別に睡眠改善効果に差異があるか否かを確認しようとした。発酵菌株としては、枯草菌、乳酸菌または酵母を使用した。
【0113】
具体的に、0.9%生理食塩水、前記実施例1で製造したシソ抽出物(シソ-W)またはその発酵抽出物(シソ-B、シソ-L、シソ-S)10mg/kgを用いて前記実施例<2-1>と同じ方法で入眠潜時と総睡眠時間を測定した。
【0114】
その結果、図3に示されるように、対照群の入眠潜時(350秒)に対して、シソ-Wを投与した場合は、入眠潜時が約25%短縮(261秒)された。シソ発酵抽出物であるシソ-Bを投与した場合は、約49%(180秒)、シソ-Lを投与した場合は、約44%(198秒)、シソ-Sを投与した場合は、約42%(206秒)短縮されたことが分かった。すなわち、シソ抽出物を投与した場合よりシソ発酵抽出物を投与した場合、入眠潜時が有意的に短縮され、その中でも、枯草菌を使用して発酵させた場合、効果が最も優れていることを確認することができた。
【0115】
また、図4に示されるように、対照群の総睡眠時間(46分)に比べて、シソ-Wを投与した場合、総睡眠時間が約123%(57分)増加したことが分かり、シソ発酵抽出物であるシソ-Bを投与した場合は、約148%(68分)、シソ-Lを投与した場合は、約139%(64分)およびシソ-Sを投与した場合は、約141%(65分)増加したことが分かった。すなわち、シソ抽出物を投与した場合よりシソ発酵抽出物を投与した場合、総睡眠時間が有意的に増加し、その中でも、枯草菌を使用して発酵させた場合、効果が最も優れていることを確認することができた。
【0116】
[製造例]
1.健康機能性飲料の製造
ビタミン 0.5重量%
食物繊維 4.0重量%
液状果糖 93.0重量%
乳化剤 1.0重量%
香料 0.5重量%
シソ発酵抽出物 1.0重量%
【0117】
前記組成物に総用量が50mlになるように精製水を混合する。混合液を2~3μmフィルタに通過させて浮遊物を除去した最終混合液を90~93℃で15~20秒間殺菌して50mlの瓶に充填し、80~85℃で15~20分間後殺菌して、健康機能性飲料製品を完成した。
【0118】
2.スキンの製造
ヒドロキシエチレンセルロース(2%水溶液) 12.0重量%
キサンタンガム(2%水溶液) 2.0重量%
1,3-ブチレングリコール 6.0重量%
グリセリン 4.0重量%
ヒアルロン酸ナトリウム(1%水溶液) 5.0重量%
イオン交換水 73.0重量%
シソ発酵抽出物 3.0重量%
【0119】
通常の化粧水の製造方法で化粧水を製造した。
【0120】
3.芳香剤の製造
95%エタノール 65.0~75.0重量%
シソ発酵抽出物 25.0~35.0重量%
【0121】
前記エタノールとシソ発酵抽出物を混合した後、常温で12~20分間撹拌して、芳香剤を製造した。
【0122】
4.入浴剤の製造
炭酸水素ナトリウム 70.0重量%
無水硫酸ナトリウム 29.0重量%
シソ発酵抽出物 1.0重量%
【0123】
前記炭酸水素ナトリウムと無水硫酸ナトリウムをV型ミキサーで均一になるまで撹拌した後、前記シソ発酵抽出物を加えて、さらに均一になるまで十分に撹拌して、入浴剤を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0124】
したがって、本発明は、シソ発酵抽出物は、発酵しないシソ抽出物に比べて入眠潜時を有意的に短縮させ、総睡眠時間を有意的に増加させるので、睡眠障害の予防、改善、治療ないし睡眠改善用組成物として効果的であり、睡眠障害の治療方法にも効果的に使用され得るので、産業上の利用可能性が大きい。
図1
図2
図3
図4