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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】屈折率整合製剤
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/34 20060101AFI20230911BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20230911BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
G02B21/34
G02B1/04
G01N1/28 U
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020536723
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 US2018050392
(87)【国際公開番号】W WO2019051466
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】62/557,028
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514078933
【氏名又は名称】ライフ テクノロジーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ヨーク アダム
(72)【発明者】
【氏名】ウェルチ エリック
(72)【発明者】
【氏名】キャッシュ ダニエル
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02419425(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0167956(US,A1)
【文献】特開2001-125006(JP,A)
【文献】特開昭51-062839(JP,A)
【文献】特開昭55-104311(JP,A)
【文献】特表2012-533090(JP,A)
【文献】特開2009-031688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
G01N 33/48-33/98
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的標本を基材にマウントするための屈折率整合(RIM)溶液であって、
a)0.27~0.34の、モル屈折率(RLL)の対モル体積(Vm)比を有する水溶性ポリマーであって、
(i)N-RアクリルアミドここでRが、メチル、エチル、プロピル、またはイソプロピルある);N,N-ジメチルアクリルアミドN,N-ジエチルアクリルアミドもしくはそれらの組み合わせ、のモノマー残基を含むポリ(アクリルアミド)またはN-Rメタクリルアミド(ここでRが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはHである);N,N-ジメチルメタクリルアミド;N,N-ジエチルメタクリルアミド;N-2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド;もしくはそれらの組み合わせ、のモノマー残基を含むポリ(メタクリルアミド)である非荷電性水溶性ポリマー、または
(ii)ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ナトリウム-4-スチレンスルホネート)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルエチルアミノアクリレート)、ポリ(アリルアミン)、ポリ[ビス(2-クロロエチル)エーテル-co-1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]尿素]、およびポリ(ビニルスルホン酸、ナトリウム塩)から選択される荷電性水溶性ポリマー
である、水溶性ポリマーと、
b)ポリオールと、
c)水または緩衝液と
を含み、
前記水溶性ポリマー対前記ポリオールの質量比が0.318:1~4:1であり、
1.36以上の屈折率を有する、前記RIM溶液。
【請求項2】
前記屈折率が、1.60以下である、請求項1に記載のRIM溶液。
【請求項3】
生物学的標本を基材にマウントする方法であって、
前記基材上に前記生物学的標本を配置することと、
前記生物学的標本を請求項1または請求項2に記載のRIM溶液と接触させて、マウントされた試料を提供することとを含む、方法。
【請求項4】
前記マウントされた試料を乾燥させることをさらに含み、それにより前記水溶性ポリマーが固化して、固化したポリマーを提供する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶性ポリマーが、室温で約48時間以内、室温で24時間以内、または約40℃の温度で約4時間以内に固化する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記固化したポリマーの前記屈折率が、1.47を超える、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
顕微鏡で前記基材上の前記生物学的標本を視覚化することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーが、前記非荷電性水溶性ポリマーである、請求項1に記載のRIM溶液。
【請求項9】
前記非荷電性水溶性ポリマーが、ポリ(N-メチルメタクリルアミド)(PMMAm)である、請求項8に記載のRIM溶液。
【請求項10】
前記水溶性ポリマーが、前記荷電性水溶性ポリマーである、請求項1に記載のRIM溶液。
【請求項11】
前記水溶性ポリマーが、約1kDa~約100kDaの重量平均分子量を有する、請求項1に記載のRIM溶液。
【請求項12】
前記水溶性ポリマーが、約1kDa~約20kDaの重量平均分子量を有する、請求項1に記載のRIM溶液。
【請求項13】
前記水溶性ポリマーが、約20kDa~約100kDaの重量平均分子量を有する、請求項1に記載のRIM溶液。
【請求項14】
前記水溶性ポリマーが、約48kDa~約80kDaの重量平均分子量を有する、請求項1に記載のRIM溶液。
【請求項15】
前記ポリオールが、ポリビニルアルコール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、チオジエタノール、チオジプロパノール、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載のRIM溶液。
【請求項16】
酸化防止剤をさらに含む、請求項1に記載のRIM溶液。
【請求項17】
1質量%以下の前記酸化防止剤を含む、請求項16に記載のRIM溶液。
【請求項18】
前記酸化防止剤が、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸、3-カルボキシプロキシル、ヒドロキノン、メキノール、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、カフェ酸、パラフェニレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、またはそれらの組み合わせである、請求項16に記載のRIM溶液。
【請求項19】
生物学的標本を基材にマウントするためのキットであって、
a)請求項1に記載の屈折率整合(RIM)溶液と、
b)前記生物学的標本を前記基材にマウントするための指示書と
を含む、キット。
【請求項20】
前記基材が、顕微鏡スライド、キュベット、ウェルまたはディッシュである、請求項3に記載の方法または請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記生物学的標本が、細胞、組織、3D細胞培養物、または生物全体である、請求項3に記載の方法または請求項19に記載のキット。
【請求項22】
前記生物学的標本が、蛍光染料または蛍光タンパク質で標識されている、請求項3に記載の方法または請求項19記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年9月11日に出願された米国仮特許出願第62/557,028号からの優先権を主張し、これはあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
屈折率整合(refractive index matching)(RIM)製剤、生物学的標本(例えば、細胞および組織)を基材にマウントするためのそれらの使用、およびRIM製剤に組み込まれた生物学的標本を視覚化する方法について説明する。
【背景技術】
【0003】
生物学的標本は、多くの場合、光学顕微鏡による検査のために、ガラス顕微鏡スライドなどの光学的に透明な基材上にマウントされる。典型的に、マウントプロセスは、「封入剤(mounting medium)」または「マウンタント(mountant)」とも呼ばれるマウント溶液(mounting solution)に生物学的標本(例えば、固定細胞または組織)を懸濁し、次いで標本を基材の表面上に堆積させ、それにより標本をマウント溶液に組み込むことを必要とする。マウント溶液および組み込まれた標本は、典型的にカバースライドの下で調査の前に任意に乾燥される。封入剤は、標本を物理的な損傷から保護し、標本の長期保存を可能にする。
【0004】
封入剤の選択は、試料および基材の種類によって決まる。封入剤は、液体であり得るか、または硬化して永続的なマウンタントになり得る。さらに、封入剤は、理想的には標本と反応せず、経時的に結晶化または暗転しない。標本が染料で染色されている場合、マウンタントはまた、染料を退色または漂白させることもない。蛍光染料で標識された生物学的標本の場合、好適なマウンタントの選択は、多くの場合、光漂白を最小限に抑える能力によって決まる。好適なマウンタントは、初期蛍光強度の消光を最小限に抑えながら、フルオロフォアの光漂白を効果的に低減する必要がある。不可逆的な光漂白による蛍光の損失は、特に標的分子の存在量が少ない場合、または励起光が高強度もしくは長時間の場合、感度の大幅な低減につながる可能性がある。適切なマウンタントの選択における別の要因は、その光学的透明度である。光学的透明度は、マウンタントの透明度だけでなく、マウンタント、試料、およびガラス、または他の基材の屈折率(RI)の整合度によっても影響される。生物学的標本の場合、水性封入剤が一般に選択される。しかしながら、市販の水性封入剤は、標本の屈折率に適切に整合しない。例えば、細胞および組織は、典型的に1.35~1.42のRIを有する。これらの封入剤のRIは、顕微鏡のスライドおよびカバースリップで使用されるガラスのRI(1.50~1.54)を下回り、生物学的標本のRIとも整合しないため、これらの封入剤では最適な光学的透明度が得られない。したがって、調査中のガラスおよび/または生物学的標本のRIにより密接に整合するRIを有する生物学的標本をマウントするための改良された製剤が必要である。
【発明の概要】
【0005】
水溶性ポリマーであって、当該ポリマーが、0.27~0.34のモル屈折率(RLL)対モル体積(Vm)比を有する、水溶性ポリマーと、ポリオールと、を含む屈折率整合(RIM)溶液が提供される。一態様では、水溶性ポリマーであって、当該ポリマーが、0.27~0.34のモル屈折率(RLL)対モル体積(Vm)比を有する、水溶性ポリマーと、ポリオールと、を含む屈折率整合(RIM)溶液が提供され、水溶性ポリマー対ポリオールの質量比が、0.125:1~4:1である。ある特定の実施形態では、水溶性ポリマー対ポリオールの質量比は、0.318:1~4:1である。RIM溶液は、水または緩衝液をさらに含むことができる。RIM溶液は、1.33以上(例えば、1.333~1.530、または1.330~1.420)の屈折率(RI)を有することができる。ある特定の実施形態では、RIM溶液のRIは、1.36以上である。ある特定の実施形態では、RIM溶液のRIは、1.38以上である。さらに他の実施形態では、RIM溶液のRIは、1.47以上である。典型的に、RIM溶液のRIは、1.60以下である。
【0006】
別の態様では、生物学的標本を基材上に堆積させることと、生物学的標本を本明細書に開示されるRIM溶液と接触させて、マウントされた試料を提供することと、を含む、生物学的標本を基材上にマウントする方法が提供される。本明細書に記載される方法、マウントされた生物学的標本、またはキットのいずれにおいても、基材は、顕微鏡スライド、キュベット、ウェル、イメージングチャンバー、またはディッシュであり得る。生物学的標本の代表例としては、細胞、組織、3D細胞培養物(例えば、スフェロイド/オルガノイド)、または生物全体(例えば、ミバエ、虫、ゼブラフィッシュ)が挙げられる。任意に、生物学的標本は、蛍光染料または蛍光タンパク質で標識される。この方法は、マウントされた試料を乾燥させることをさらに含み、それにより水溶性ポリマーが固化して、固化したポリマーを提供する。水溶性ポリマーは、約48時間以内、または室温で24時間以内、または約40°Cの温度で約4時間以内に固化し得る。固化したポリマーのRIは、1.47を超えることがある。ある特定の実施形態では、固化したポリマーのRIは、1.48~1.54である。ある特定の実施形態では、固化したポリマーのRIは、1.50~1.525である。この方法は、顕微鏡で基材上の生物学的標本を視覚化することをさらに含み得る。
【0007】
さらに別の態様では、水溶性ポリマーであって、当該ポリマーが、0.27~0.34のモル屈折率(RLL)対モル体積(Vm)比を有する、水溶性ポリマーと、ポリオールと、を含む固化したマウンタントが提供され、水溶性ポリマー対ポリオールの質量比が、0.125:1~4:1である。固化したマウンタント中の水溶性ポリマー対ポリオールの質量比は、0.5:1以上であり得る。固化したマウンタントは、1.47以上の屈折率を有し得る。いくつかの実施形態では、固化したマウンタントの屈折率は、1.47より大きい。ある特定の実施形態では、水溶性ポリマーであって、当該ポリマーが、0.27~0.34のモル屈折率(RLL)対モル体積(Vm)比を有する、水溶性ポリマーと、ポリオールと、を含む固化したマウンタントが提供され、水溶性ポリマー対ポリオールの質量比が、0.318:1~4:1であり、固化したマウンタントが、1.48以上の屈折率を有する。本明細書に開示されているRIM溶液または固化したマウンタントのRIは、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、またはイマージョンオイルの屈折率(例えば、1.48~1.50、または1.50~1.52、または1.52~1.54)に整合させるのに理想的である。
【0008】
開示された製剤に使用される水溶性ポリマーは、非荷電性であり得る。例えば、非荷電性水溶性ポリマーは、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、またはポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)であり得る。ある特定の実施形態では、非荷電性水溶性ポリマーは、N-RアクリルアミドまたはN-Rメタクリルアミド(ここでRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはHである);N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,Nジエチルメタクリルアミド;N-2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド);またはそれらの組み合わせ、のモノマー残基を含む。ある特定の実施形態では、非荷電性水溶性ポリマーは、ポリ(N-メチルメタクリルアミド)(PMMAm)である。あるいは、開示された製剤に使用される水溶性ポリマーは、荷電性であり得る。代表的な荷電性水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ナトリウム-4-スチレンスルホネート)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルエチルアミノアクリレート)、ポリ(アリルアミン)、ポリ[ビス(2-クロロエチル)エーテル-co-1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]尿素]、またはポリ(ビニルスルホン酸、ナトリウム塩)が挙げられる。ある特定の実施形態では、水溶性ポリマーは、ポリオールではない。水溶性ポリマーは、約1kDa~約100kDaの重量平均分子量を有し得る。ある特定の実施形態では、重量平均分子量は、約1kDa~約20kDa、または約20kDa~約100kDa、または約48kDa~約80kDaである。水溶性ポリマーはまた、本明細書に記載される荷電性または非荷電性モノマーの2つ以上から形成されるコポリマーであり得、コポリマーは、例えば、ランダム、勾配、ブロック、またはグラフトコポリマーであり得る。
【0009】
本明細書に開示されるマウント製剤はまた、ポリオール、例えばポリビニルアルコール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、チオジエタノール、チオジプロパノール、またはそれらの組み合わせを含むこともできる。任意に、製剤は、酸化防止剤(例えば、約1質量%以下)、例えば、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸、3-カルボキシプロキシル、ヒドロキノン、メキノール、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、カフェ酸、パラフェニレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、またはそれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0010】
さらに別の態様では、基材上に配置された生物学的標本を含む、マウントされた生物学的標本が提供され、この生物学的標本は、本明細書に開示されるように、固化したマウンタントに組み込まれる。
【0011】
さらに別の態様では、本明細書に開示されるような屈折率整合(RIM)溶液と、生物学的標本を基材上にマウントするための指示書と、を含む、生物学的標本を基材上にマウントするためのキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】試料8および13について、屈折率の変化を時間の関数として示すプロットである。
図2】試料8、10、および13について、軸方向分解能を焦点深度の関数として示すプロットである。
図3】試料8、10、および13について、横方向分解能を焦点深度の関数として示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で言及された全ての特許、出願、公開された出願、および他の刊行物は、それら全体が参照により組み込まれる。このセクションに記載の定義が、参照により本明細書に組み込まれる特許、出願、公開された出願および他の刊行物に記載の定義と相反する、またはそうでなければ矛盾する場合、このセクションに記載の定義は、参照により本明細書に組み込まれる以下の定義よりも優先される。
【0014】
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」のことを意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、数値を記載するために使用されるとき、文脈が明らかにそうでないと指示しない限り、その数値の最大±15%までの範囲を包含する。
【0016】
組成物および方法は、様々な構成要素または工程を「含む」(「含むがこれに限定されない」と解釈される)という意味で説明されるが、組成物および方法は様々な構成要素および工程「から本質的になる」または「からなる」こともでき、そのような用語は、本質的に閉じたメンバー群を定義するものとして解釈されるべきである。
【0017】
本明細書で使用される場合、「屈折率」または「RI」は、光が特定の媒体を通ってどれだけ速く移動するかの尺度である。空気および水など、異なるRI値を有する2つの媒体間を光が移動すると、光が移動する経路が曲がり、画像を歪める。屈折率はまた、真空内の光の波長に対して放射の速度および波長がどれだけ低減するかの尺度でもある。RIは、2つの速度の比であるため、無次元である。
【0018】
本明細書では、「水溶性」は、化合物が、当業者によって知られている生物学的または分子検出システムにおいて使用されるものを含む、水または水系溶液または緩衝液などの水性溶液に溶解または分散できることを意味するように使用される。化合物は、10mg/mL以上の濃度で水性製剤に溶解できる場合、水溶性とみなされる。100mg/mL以上の濃度で水性系に溶解できる化合物は、水溶性が高いとみなされる。1mg/mL以下の濃度で水性系に溶解できる化合物は、不良な水溶性を有するとみなされる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「生物学的標本」または「生物学的試料」は、細胞、3D細胞培養物(例えば、スフェロイドおよびオルガノイド)、組織、生物全体(例えば、ハエ、虫、ゼブラフィッシュ)、無細胞抽出物などの血液学的、細胞学的、および組織学的標本、または体液試料(例えば、血液または喀痰)を包含する。組織標本は、器官組織を含む、任意の種類の神経組織、上皮組織、筋肉組織、および結合組織であり得る。生物学的試料は、植物または動物(例えば、ヒト、マウス、ハエ、虫、魚、カエル、真菌等)からのものであり得る。
【0020】
本明細書では、基材上に標本をマウントする際に使用するための製剤について説明する。記載されている製剤は、標本の保護および保存のための硬化封入剤を提供する水性基剤系である。製剤は、基材上の、任意に蛍光標識され得る細胞および組織試料に直接適用することができ、乾燥すると硬化し得る。製剤は、カバースリップなしで硬化し得るため、マウントされた標本を保護するためにカバースリップを使用する必要がなくなる。本明細書に開示されるマウント製剤は、標本を基材上の所定の位置に保持し、それにより、その後の調査のために基材上の生物学的標本を安定化し、保存する。例えば、マウントした後、生物学的標本を顕微鏡下で撮像することができる。開示された製剤は、これらの製剤を生物学的試料の封入剤として使用するのに理想的なものにする、好ましい光学特性を有する。特に、開示された製剤は、高い屈折率を呈する。標本および封入剤のRIが、画質に大きな影響を与え得ることが知られている。例えば、標本と周囲のマウンタントとの間のRIの差は、標本が顕微鏡下でどのように見えるかに影響を及ぼし得る。標本と周囲の媒体との間のRIの差が大きい場合、標本と封入剤との界面で光の強い屈折が生じる可能性がある。RIの大きな差は、光が屈折するためアーチファクトを引き起こす可能性があり、標本の詳細を不明瞭にし得る。対照的に、標本と封入剤との間のRIのわずかな差は、光の屈折を低減することができ、多くの種類の標本を顕微鏡下でより明るく、かつ/またはより透明に見えるようにする。
【0021】
本明細書では、生物学的試料の屈折率、ならびに顕微鏡で一般的に使用される基材、レンズ、カバースリップ、および他の構成要素の屈折率と整合し得る製剤が提供される。したがって、本明細書に記載される製剤は、顕微鏡の対物レンズのガラス、ならびに顕微鏡カバースリップのガラス、またはイマージョンオイルなどの試料の顕微鏡撮像で一般的に使用される他のコンポーネントのRIと整合する屈折率(RI)を有する。高いRIを有することにより、開示された製剤は、光の屈折に起因する顕微鏡画像の歪みを最小限に抑え、これらの製剤を、顕微鏡画像の歪みを最小限に抑えるために典型的に使用されるような高倍率および/またはイマージョンオイルでの使用に好適なものにする。乾燥した後、本製剤は、既存のハードマウント製剤の硬いRIを超えるRIを有するが、試料と染料(存在する場合)の光漂白を低減する。例えば、本明細書に記載される特定の製剤は、1.47以上のRIを有することができ、これは当業者に知られている標準的なハードマウント製剤よりも著しく高い。
【0022】
本明細書で提供される製剤は、乾燥した後も光学的に透明であり、生物学的標本と化学的に適合性があり、長期間保存した後でも生物学的標本を傷つけたり分解したりしない。記載される製剤はまた、高倍率および3D再構成(Zスタック)画像の明瞭さを改善し、球面収差または散乱光を低減することができ、それにより複数深度でのより明瞭な画像の取り込みを可能にする。好ましい物理的および光学的特性により、本製剤は、標本内の深度でのフルオロフォアの視覚化に使用されるもの(例えば、共焦点蛍光顕微鏡)などの一連の顕微鏡技法を使用し、様々な種類の生物学的標本(例えば、組織および細胞)の3次元撮像で実装され得る。さらに、開示された製剤はまた、低泡形成を呈し、乾燥時に他の市販の硬化マウンタントよりも収縮が少なく、乾燥および/または凍結時にひび割れない。マウンタントは、硬化しても変色または収縮しないため、スライドをマウントしてから数週間~数ヶ月でも高品質の画像を撮影可能にする。本明細書に開示される製剤はまた、細胞撮像用途で一般的に使用される蛍光染料の消光を最小限に抑えることができる。例えば、退色防止試薬を含む製剤は、染料の消光に耐えることができ、蛍光プローブで染色された細胞および組織を撮像するために特に有用である。上記の属性のユニークな組み合わせにより、記載された製剤は、染色された生物学的試料の長期保存に特に有用である。
【0023】
本明細書で提供される屈折率整合(RIM)製剤は、1つ以上の水溶性成分(例えば、水溶性ポリマー)を含み得る。本明細書で提供されるRIM製剤は、2つ以上の水溶性成分を含み得る。ある特定の実施形態では、製剤は、少なくとも2つの水溶性成分を含む。水溶性成分は、水性媒体に含まれ得るため、製剤は生物学的標本での使用に適している。生物学的標本を含む製剤は、直接撮像され得るか、または撮像の前に乾燥させて製剤から水を除去することができる。
【0024】
本明細書で提供されるRIM製剤は、撮像用途(例えば、ソーダ石灰ガラスもしくはホウケイ酸ガラスから作製されたものなどの顕微鏡スライド)で典型的に使用される基材またはイマージョンオイルの屈折率と整合する屈折率を呈する。本明細書に記載される製剤のRIM特性は、画質を改善することができ、記載された製剤を撮像用途での使用に理想的なものにする。本明細書で提供されるRIM製剤は、当業者に知られている標準的なマウント製剤と比較して非常に高いRIを呈する。典型的に、開示された製剤が固化した後の屈折率は、1.45を超える。驚くべきことに、開示された製剤は、1.45以上のRIを有する光学的に透明なマウント製剤を提供することができる。ある特定の実施形態では、マウンタントのRIは、1.45~1.47である。他の実施形態では、1.47以上(例えば、1.47~1.50、または1.50~1.52、または1.52~1.54)のRIを有するマウンタントが提供される。ある特定の実施形態では、製剤のRIは、約1.47~約1.53である。ある特定の実施形態では、マウンタントのRIは、約1.50~約1.52である。
【0025】
約1.50~1.52のRI範囲を呈する組織などの生物学的試料の場合、同じRI範囲を有する硬化したマウンタントを提供できる製剤を利用することが望ましい場合がある。したがって、開示されたRIM組成物で使用するのに好適な水溶性成分は、乾燥した後、典型的に1.45以上、例えば1.45~1.60のRIを有する。いくつかの実施形態では、RIは、1.45~1.50である。他の実施形態では、RIは、1.50~1.53である。他の実施形態では、RIは、1.53~1.55である。さらに他の実施形態では、水溶性成分のRIは、1.55~1.60である。典型的に、マウンタントの調製に使用される溶液のRIは、硬化したマウンタントのRIよりわずかに低い。したがって、本明細書ではまた、RIM溶液も提供され、RIM溶液は、1.33以上の屈折率(例えば、1.333~1.530、または1.330~1.420)を有する。
【0026】
水溶性成分(複数可)は、水溶性ポリマーであり得る。ある特定の実施形態では、製剤は、ポリオールをさらに含み得る。多くの種類のポリマーのRI値は、文献に見出すことができる。RIデータが利用できない場合、特定のポリマーのRIは、式1を使用してローレンツ・ローレンツ理論に基づいて測定または計算することができ、式中、nは屈折率であり、RLLおよびVmは、それぞれポリマーの繰り返し単位のモル屈折およびモル体積である。式1から計算されるRIは、波長に依存し、典型的に589nm(ナトリウムd-ライン)の波長で報告される。
LL/Vm=(n2-1)/(n2+2)(式1)
【0027】
多くの種類のポリマーのRLLおよびVm値は、文献に見出され得るか、または当業者に知られている方法を使用してグループ寄与効果から推定され得る。本明細書に記載されるように、RIM製剤での使用に好適な水溶性ポリマーのRLL/Vm比は、典型的に、約0.27~約0.34の範囲である。ある特定の実施形態では、水溶性ポリマーを含む屈折率整合(RIM)製剤が本明細書で提供され、ポリマーは、0.27~0.34のモル屈折(RLL)対モル体積(Vm)比を有し、それによりRIM溶液は、1.45~1.60の屈折率を有する。ある特定の実施形態では、0.284~0.314の範囲のRLL/Vm比を有する水溶性ポリマーを含む製剤は、約1.48~約1.54の屈折率を有するRIM製剤を提供する。
【0028】
開示されたRIM製剤で使用するための水溶性ポリマーおよびコポリマーは、中性または荷電性であり得る。例えば、水溶性ポリマーは、中性(すなわち、非荷電性)ポリマーであり得、それにより試料中に存在する染料および/または細胞タンパク質との相互作用が最小限になる。例示的な中性の水溶性ポリマーとしては、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、およびポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)が挙げられる。例示的なアクリルアミドおよびメタクリル系ポリマーは、例えば、N-RアクリルアミドまたはN-Rメタクリルアミド(ここでRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、もしくはH;N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,Nジエチルメタクリルアミド、N-2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)などのモノマー単位の残基、あるいはこれらのモノマー単位の組み合わせを含み得る。ある特定の実施形態では、非荷電性水溶性ポリマーは、ポリ(N-メチルメタクリルアミド)(PMMAm)である。例えば、PMMAmなどの中性ポリマーを含む製剤は、既存の市販のハードマウント製剤でよく見られるように、発泡しないか、または長期気泡を形成しないため、気泡形成のリスクが非常に少ない試料の上にピペットで移すことができる。中性ポリマーを含む製剤は、24時間未満で硬化する可能性があり、そのようなポリマーを、本明細書に開示されるように、RIM溶液の調製に特に有用にする。例えば、PMMAmを含む製剤は、およそ3時間で固化して、1.52のRIを有する硬化したマウンタントを提供することができる。
【0029】
あるいは、水溶性ポリマーは、荷電性ポリマー(例えば、高分子電解質)であり得る。荷電性ポリマーは、同等の分子量の中性ポリマーよりも水に溶けやすく、粘性が高くなり得る。したがって、荷電性ポリマーは、そのような特性が望まれるマウント製剤に使用されるとき、ある特定の利点を有し得る。荷電性ポリマーは、正または負の全体電荷を帯び得る。例示的な荷電性水溶性ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ナトリウム-4-スチレンスルホネート)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルエチルアミノアクリレート)、ポリ(アリルアミン)、ポリ[ビス(2-クロロエチル)エーテル-co-1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]尿素]、またはポリ(ビニルスルホン酸、ナトリウム塩)が挙げられる。
【0030】
水溶性ポリマーの分子量は、マウンタントの望ましい特性およびその意図される用途に基づいて選択され得る。例えば、ポリマーの分子量は、製剤の粘性に影響する。一般に、分子量は、取り扱いが容易でありながら十分に粘性があり、それにより基材上の所定の位置に留まることができる製剤を達成するために選択される。開示された製剤で使用するためのポリマーは、典型的に、ある範囲の分子量を含む。分子量(MW)範囲の下限は、製剤中のポリマーの所望の溶解度に基づいて選択され得、分子量の範囲の上限は、乾燥時に硬化表面を形成する能力に基づいて選択され得る。例えば、分子量が低すぎる場合、製剤は、乾燥時に硬いフィルムを形成しない場合がある。一般に、水溶性ポリマーは、約1kDa~約100kDa、例えば1kDa~15kDa、または15kDa~20kDa、または20kDa~40kDa、または40kDa~80kDa、または80kDa~100kDaの重量平均分子量を有し得る。ある特定の実施形態では、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、約48kDa~約80kDaである。高分子量ポリマー(例えば、約15kDaを超える)を含む製剤は、生物学的標本の完全性を維持する穏やかな条件下で容易に固化し得る。いくつかの実施形態では、RIM製剤は、より低分子量の水溶性ポリマー(例えば、20kDa未満)を実装して、より柔らかく、より粘性のマウンタントを実装することができる。より柔らかいマウンタントは、適用に応じて、ある特定の種類の試料をマウントするためにある特定の利点を提供することができる。例えば、乾燥時間の延長を最小限に抑える必要がある場合、または製剤からの試料の回収が所望される場合は、200ミクロンを超える厚さの標本に、より柔らかいマウンタントを使用することができる。
【0031】
RIM製剤は、1つ以上のポリオールをさらに含むことができる。「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシル基を含む化合物を指す。ある特定の実施形態では、ポリオールは、100以上のヒドロキシル基を有する。他の実施形態では、ポリオールは、1000以上のヒドロキシル基を有する。ある特定の実施形態では、ポリオールは、2500以下のヒドロキシル基を有する。RIMポリマーの可塑化を助けるために、ポリオールを製剤に含めることができ、それによりマウントフィルムが乾燥しても、過度に脆性にならないか、またはひび割れ始めることがない。蒸発しないポリオールは、フィルムにいくらかの永続的な体積を提供することもでき、それによりフィルムが薄くなりすぎるのを防ぐ。理想的には、乾燥フィルムは、未乾燥フィルムと同様の体積を維持する。これにより、乾燥した材料の収縮による標本の変形を防ぐことができる。乾燥したフィルムの構造を維持することは、様々な温度(例えば、室温、4oC、および-20oC)での試料の保管および保存にも重要である。ポリオールはまた、生物学的標本および/もしくは基材、またはマウントされたシステム中の他の構成要素のRIに近いRIを有する必要がある(例えば、1.46~1.60)。いくつかの実施形態では、RIは、1.47~1.54である。例示的なポリオールとしては、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、ポリビニルアルコール、糖、例えばマンニトール、ソルビトール、エリスリトール、チオジエタノール、チオジプロパノール等が挙げられる。典型的に、ポリオールは、水溶性ポリマーとは異なる。しかしながら、ある特定の製剤では、ポリマーおよびポリオールは同じ組成を有すると考えられる。ポリマーおよびポリオールの分子量は、同じでも異なっていてもよい。代表的な実施形態では、例えば、PVAは、ポリオールおよび水溶性ポリマーの両方として使用され得るが、PVAの2つの形態の分子量は異なる。
【0032】
本明細書で提供されるRIM製剤は、水溶性ポリマーおよびポリオールの組み合わせを含むことができる。製剤中の水溶性ポリマー対ポリオールの比は変化する可能性があり、乾燥したハードマウンタントの屈折率に影響し得る。典型的に、ハードマウンタントの調製を意図した製剤は、0.125以上の水溶性ポリマー対ポリオールの質量比を含む。ある特定の実施形態では、水溶性ポリマー対ポリオールの質量比は、0.125:1~4:1の範囲である。ある特定の実施形態では、水溶性ポリマー対ポリオールの質量比は、0.125:1~1:1、1:1~2:1、2:1~3:1、または3:1~4:1である。ある特定の製剤では、水溶性ポリマー対ポリオールの質量比は、1:1~3:1である。ある特定の製剤では、水溶性ポリマー対ポリオールの質量比は、約0.5:1である。
【0033】
RIM製剤は、水性成分(例えば、水または緩衝液)をさらに含むことができ、水溶性ポリマー(複数可)およびポリオール(複数可)は、水性成分に溶解される。水性成分は、生物学的標本およびマウント製剤の成分を溶解および/または水和するのに役立つ。例えば、トリス、PBS、ホウ酸塩等の、当業者に知られている任意の生物学的に適合性の緩衝液を本明細書に記載される製剤に使用することができる。7.4を超える製剤のpHを維持する緩衝液は、例えば、蛍光染料が存在する場合など、ある特定の製剤において特に有用である。
【0034】
記載された製剤は、追加のクリアリング剤を必要とせずに試料の透明度を改善することができる。しかしながら、クリアリング剤を任意に組織試料の撮像に使用して、画質をさらに改善することができる。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書で開示されるRIM製剤は、クリアリング剤と組み合わせて使用することができる。蛍光物質を含む試料の場合、多くのフルオロフォアおよび蛍光タンパク質、ならびに本RIM製剤との適合性を考慮して、水性クリアリング剤を実装することが好ましい場合がある。例示的なクリアリング剤としては、例えば、有機溶媒系および水性洗剤系の試薬、グリセロールまたはチオグリセロール溶液、単糖類および多糖類(例えば、フルクトースおよびスクロース)、尿素溶液、ならびに市販の試薬が挙げられる。
【0035】
本明細書で提供されるRIM製剤は、わずか2~3日で試料上に沈殿物を形成することが知られている一般的に使用されるマウンタントとは対照的に、沈殿物の形成に抵抗する。本明細書に記載されるRIM製剤はまた、試料および/または蛍光標識材料が存在する場合、光漂白を防ぐ。蛍光染料で染色された生物学的標本のマウントおよび撮像に好適な製剤は、保存または調査時に染色された試料の劣化または光漂白を最小限に抑えるための退色防止剤をさらに含み得る。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるRIM製剤は、任意に1つ以上の退色防止試薬を含み、約1質量%以下でRIM製剤に含めることができる。退色防止剤は、当業者に周知であり、酸化防止剤、例えば、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸、3-カルボキシプロキシル、ヒドロキノン、メキノール、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、カフェ酸、パラフェニレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン]、他のニトロキシドなど、またはそれらの組み合わせを含む。
【0036】
RIM製剤は、長期保存中のポリマーおよび/もしくはポリオールの分解を防止するため、ならびに/または細菌の増殖を防止もしくは最小化するために、例えば防腐剤などの追加の成分をさらに含むことができる。好適な防腐剤としては、かなりの量の可視光を吸収しないか、または製剤のRIを低下させないものが挙げられる。代表的な防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、安息香酸、またはアジ化ナトリウムが挙げられ、典型的に2質量%未満の濃度で製剤中に存在する。染料などの追加の成分も、本明細書で提供されるRIM製剤に含めることができる。ある特定の実施形態では、RIM製剤は、細胞を染色するための蛍光染料を含むことができる。ある特定の実施形態では、染料は、例えば、ヘキスト33342またはDAPIなどの細胞の核を染色することができる。
【0037】
また本明細書では、RIM封入剤中の基材上にマウントされた試料が提供される。例えば、生物学的標本は、本明細書に記載されるように、基材上にマウントされ、RIM製剤に組み込まれ得る。基材は、RIM溶液を支持または含有するのに好適な表面を有する任意の材料であり得る。例えば、基材は、平滑または粗い表面を有することができ、平坦であり得るか、または空洞もしくはくぼみ(例えば、製剤を収容するためのウェル)を含み得る。ある特定の実施形態では、基材は、RIM溶液が基材に吸収されないように、比較的滑らかで無孔質の表面を有する。基材は、光学的に透明または不透明であり得、最終的な最終用途に応じて、様々な材料から作製することができる。顕微鏡用途の場合、例えば、基材は光学的に透明であり得る。基材は、例えば、ガラスまたはポリマーを含む任意の適切な材料から作製することができる。代表的な基材としては、例えば、顕微鏡スライド、キュベット、ウェル、カバースリップ、またはディッシュなどの光学および撮像用途で一般的に使用されるものが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、マウントされた試料は、透明な基材(例えば、顕微鏡スライド)、生物学的標本(例えば、組織)、および試料を取り囲み、それを基材に付着させる固化したRIM製剤を含むことができる。任意に、カバースリップを固化したマウントされた試料の上に配置することができる。マウントされたスライド上の固化した製剤の量は、生物学的標本を取り囲み、それを基材および/またはカバースリップに付着させるのに十分である。
【0038】
本明細書に開示されるマウントされた生物学的試料は、存在する場合、試料または蛍光染色剤を劣化または退色させることなく室温以下で保存すると、数ヶ月(例えば、5ヶ月以上)安定であり得る。
【0039】
試料は、組織、細胞、血液等を含むが、これらに限定されない任意の生物学的材料であり得る。生物学的試料は、基材にマウントする前に蛍光染料(複数可)または蛍光タンパク質で染色され得る。生物学的標本の染色に適した蛍光タンパク質は、当技術分野で周知であり、例えば、限定されないが、GFP、RFP、mCherry等が挙げられる。生物学的標本に一般的に使用される蛍光染料としては、例えば、ホウ素ジピロメテン(4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン)、シアニン、キサンテン、スルホン化ピレン、ローダミン、クマリン、およびそれらの誘導体が挙げられる。例示的な有機染料としては、BODIPY染料、クマリン(例えば、パシフィックブルー、パシフィックグリーン、およびパシフィックオレンジ(Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)から入手可能))、ローダミン、ロードール、フルオレセイン、チオフルオレセイン、アミノフルオレセイン、カルボキシフルオレセイン、クロロフルオレセイン、メチルフルオレセイン、スルホフルオレセイン、アミノロードル、カルボキシロードール、クロロロードール、メチルロードール、スルホロードール、アミノローダミン、カルボキシローダミン、クロロローダミン、メチルローダミン、スルホローダミン、シリコンローダミン、およびチオローダミン、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、メロシアニン、シアニン(例えば、シアニン2、シアニン3、シアニン3.5、シアニン5、シアニン5.5、シアニン7)、オキサジアゾール誘導体、ピリジルオキサゾール、ニトロベンゾキサジアゾール、ベンゾキサジアゾール、ピレン誘導体、カスケードブルー、オキサジン誘導体、ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170、アクリジン誘導体、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー、アリールメチン誘導体、キサンテン染料、スルホン化キサンテン染料、スルホン化ピレン、オーラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、テトラピロール誘導体、ポルフィリン、フタロシアニン、ビリルビン、およびビス-ベンズイミド(ヘキスト染色)が挙げられる。ある特定の実施形態では、有機染料は、近赤外染料、例えば、CY5.5(GE Healthcare Life Sciences,Pittsburgh,PA)、IRDYE 800(Li-Cor,Lincoln,NE)、DYLIGHT 750(Thermo Fisher Scientific)もしくはインドシアニングリーン(ICG)など、またはシアニン染料、例えば、シアニン2、シアニン3、シアニン3.5、シアニン5、シアニン5.5、シアニン7などである。ある特定の実施形態では、有機染料は、キサンテンまたはスルホン化キサンテン染料、例えば商品名ALEXA FLUOR 594、ALEXA FLUOR 633、ALEXA FLUOR 647、およびALEXA FLUOR 700(Thermo Fisher Scientific)で市販されているものである。好適な市販の染料の追加の例としては、ALEXA FLUOR 405、ALEXA FLUOR 488、およびALEXA FLUOR PLUS二次抗体(Thermo Fisher Scientific)が挙げられる。
【0040】
マウントされた試料は、直接調査され得るか、または本明細書に記載される方法を使用して硬化させて、固化したマウンタントに組み込まれた生物学的標本を提供することができる。有利に、マウントされ、硬化された試料の屈折率は、基材(例えば、顕微鏡スライド)およびカバースリップのRIと整合し、通常は1.47を超え、典型的には1.48~1.54の範囲である。例えば、標本を含む固化したマウンタントは、1.48~1.54(例えば、1.48~1.50、または1.50~1.52、または1.52~1.54)の範囲であり得る屈折率を有し得る。
【0041】
さらに本明細書では、生物学的標本を基材上にマウントする方法が提供される。代表的な方法には、生物学的標本を基材上に堆積させ、次いで生物学的標本をRIM溶液と接触させて、マウントされた試料を提供することが含まれる。マウントした後、試料を直接調査(例えば、顕微鏡を使用して撮像)することができる。しかしながら、試料は、典型的に、使用中およびその後の保存中の保護のために(例えば、カバースリップで)覆われている。次いで、生物学的標本を含む製剤を撮像するか、またはその後に乾燥させることができる。試料の乾燥(本明細書では「硬化」とも呼ばれる)は、RIM製剤から水を除去し、それによりマウンタントの硬化をもたらす。水溶性ポリマーを含む製剤の場合、水の除去により、本明細書で「ハードマウンタント」または「ハードマウント」製剤と呼ばれる固化した製剤が得られる。硬化したマウンタントは、ある特定のレベルの粘性および/または弾性を依然として維持できるため、過度に脆性にならないか、またはひび割れないことを理解されたい。
【0042】
製剤の種類および望ましい硬化のレベルに応じて、マウントされた試料は、一連の異なる硬化レジメンに供され得る。特定の製剤を硬化するのに必要な温度および時間は、例えば、製剤中の水溶性成分の種類、分子量、濃度、ならびに望ましい硬化の程度を含む、様々な要因に依存する。さらに、硬化のための条件は、試料がカバースリップで覆われているか、または大気に開放されているかに依存する。
【0043】
乾燥は、周囲温度(例えば、室温)または高温で実施され得る。ある特定の実施形態では、硬化は、生物学的標本への損傷および/または製剤中の水溶性成分への分解を防ぐために、約40oCを下回る温度で起こる。水溶性ポリマーを含む製剤では、ポリマーは、24時間以内、または場合によっては10時間以下、または4時間以内でも固化し得る。20kDa以上の分子量を有する水溶性ポリマーを含むある特定の製剤では、本明細書に開示されているように、乾燥は、カバースリップの非存在下で4時間以内に約40oCを下回る温度で達成され得る。
【0044】
本明細書で提供されるマウント製剤は、組織および血液を含む顕微鏡スライド上への血液学的、組織学的、および細胞学的試料のマウントを含むがこれらに限定されない、様々な組織化学、免疫化学、および細胞化学適用で使用され得る。記載されたRIM製剤を使用して、血液、細胞、組織、あるいは他の生体液の試料または材料(研究および/もしくは診断目的のための顕微鏡検査を促進するために染色された材料を含むがこれらに限定されない)などの、基材上にマウントされた標本を提供することができる。本明細書に開示される方法に従って調製されたマウントされた生物学的標本は、当該分野で周知の撮像技法を使用して視覚化され得る。撮像は、例えば、光学顕微鏡を使用して実行され得る。本明細書に記載されるマウント製剤の高いRIおよび光学的透明度により、標準的なマウンタントを使用する場合よりも深い深度(例えば、100μm以下、例えば、1~100μm)および高い解像度で生物学的試料を撮像できる。例えば、蛍光標識された標的は、100μmまで検出可能であり、解像度は、同様の深度まで維持される。
【0045】
試料は、標準のICC/IHCプロトコルを使用して調製され得る。マウントする前にアルコール(例えば、メタノールおよびエタノール)中でさらに脱水すると、乾燥時間を低減することができる。試料をマウントした後、乾燥剤の存在下で乾燥すると、乾燥時間を短縮することもできる。試料をマウンタントでコーティングしてそれを覆い、カバースリップなしで乾燥させることができる。次いで、マウントされた試料は、カバースリップなしで直接撮像され得るか、または少量のグリセロールで覆われ、撮像の前に覆われ得る。溶液または懸濁液ベースの試料および組織試料を含むがこれらに限定されない、任意の好適な生物学的試料を、本明細書に開示される方法を使用して評価することができる。ある特定の実施形態では、試料は、細胞または消化された細胞およびその断片を含む。細胞は死んでいる(例えば、固定されている)か、または生きている可能性がある。本明細書に開示されるRIM製剤で処理され得る生物学的材料の追加の例としては、3D細胞培養物(スフェロイド/オルガノイド)または生物全体(例えば、ミバエ、虫、ゼブラフィッシュ)が挙げられる。
【0046】
本明細書に記載されるRIM製剤を使用して、限定されないが、植物、微生物、動物、土、血液および血漿試料、ならびに土壌粒子および地質試料を含むが、これらに限定されない他の種類の非生物有機および無機材料を含む異なる材料の特徴を、客観的な構造の明瞭さ、定義、または分解能を失うことなく識別することができる。
【0047】
細胞中の異なる成分を識別するために、染色を使用して、化学組成に基づいて特定の構造間のコントラストを提供することができる。本明細書に開示されるRIM溶液は、細胞を染色するために典型的に使用される蛍光染料を干渉しない。したがって、ある特定の実施形態では、生物学的標本は、本明細書に開示されるものを含むがこれらに限定されない蛍光染料で標識され得る。例えば、試料は、特定の親和性分子(例えば、抗体)によって認識され、それに結合され得る表面抗原(例えば、細胞表面受容体)を発現する細胞を含むことができる。細胞は、細胞の表面上の抗原を親和性分子に結合して、複合体で標識された細胞を形成するための条件下で、親和性分子(例えば、抗原)に付着したフルオロフォアを含む複合体で処理することができる。あるいは、フルオロフォアは、細胞内、例えば細胞質内、または細胞小器官もしくは細胞膜内に含まれ得る。さらに、本明細書で提供されるRIM製剤は、染色された細胞および組織の撮像に使用することができ、蛍光免疫組織化学(IHC)用途で特に有用である。
【0048】
標本を準備する一般的な方法は、標本を溶液内に完全に浸すのに十分な量のマウント溶液に、任意に染色され得る標本を浸すことを必要とする。次いで、標本を基材(例えば、顕微鏡スライド、キュベット、またはウェル)に適用する。任意に、マウントされた標本を、硬化するまで(例えば、室温~最大約40℃で)乾燥させることができる。カバースリップを、試料の硬化前または硬化後に標本全体に適用することができる。硬化したマウントされた試料は、無期限に保存することができる。あるいは、マウントされた試料を調査する、例えば、顕微鏡下で視覚化することができる。マウント製剤は、蛍光顕微鏡および対物レンズ、例えば落射蛍光、広視野、共焦点、誘導放出減少(STED)、および構造化照明顕微鏡(SIM)などに対応している。RIM製剤の優れた光学特性により、標本は透明に見え、透明度を損なうことなく細胞および組織のより深い層の視覚化を可能にする。
【0049】
記載されたRIM製剤はまた、組織試料を基材上にマウントするためにも理想的である。試料の厚さ、細胞外物質の存在、および試薬の浸透は、バックグラウンド蛍光、および不良な画像解像度、および撮像深度の減少をもたらし得るため、組織全体のマウントおよび撮像はこれまで困難であった。記載された製剤は、それがカバースリップおよび組織試料を通過する際に光の屈折を減少させることができ、より高い解像度およびより深い深度への撮像を可能にする。開示された製剤は、試料の透明性を改善するため、組織試料での使用に特に有利である。
【0050】
本明細書に記載されるように、RIM製剤を使用して顕微鏡スライド上に組織試料をマウントするための代表的な方法が提供される。組織は、固定または非固定であり得る切片化試料または全体試料であり得る。一般に、組織試料は、顕微鏡スライドの表面上に堆積され、本明細書に開示されるRIM製剤が、試料に適用される。次いで、マウントされた試料を乾燥させて、過剰な水分を除去し、それにより製剤が固化する。この方法で使用される封入剤の量は異なり得るが、一般的には組織の表面を濡らすように選択される。必要に応じて、既知の方法を使用して、余分な封入剤を除去することができる。スライド表面上にマウントされた後、マウントされた試料は、熱の印加を伴うか、または伴わずに(例えば、室温または高温で)乾燥させることができる。真空ポンプおよび/または乾燥剤を使用することによって、乾燥を促進することができる。乾燥した後、組織はスライドにしっかりと付着し、試料はマウンタント内に組み込まれる。必要に応じて、追加量の製剤を添加し、乾燥プロセスを繰り返すことができる。
【0051】
さらに本明細書では、試料のその後の撮像および/または保存のために、生物学的試料を基材にマウントするためのキットが提供される。したがって、さらに別の態様では、本明細書に開示されるような屈折率整合(RIM)溶液と、生物学的標本を基材上にマウントするための指示書と、を含む、生物学的標本を基材上にマウントするためのキットが提供される。任意に、例えばグリセロールなどの共マウンタントを含む追加の成分をキットに含めることができる。
【0052】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証するために含まれている。以下の実施例に開示されている技法は、本発明の実施において十分に機能することが発明者(複数可)によって発見された技法を表しており、したがってその実施のための好ましい様式を構成すると考えることができることを当業者は理解されたい。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、開示された特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、また本明細書の範囲から逸脱することなく、同様のまたは類似する結果をさらに得ることができることを理解されたい。
【実施例
【0053】
本明細書で提供される実施例は、特に明記しない限り、以下の一般的な方法を利用する。乾燥前後の全てのマウンタント製剤の屈折率を、ランプ動作波長ナトリウムDライン(589.3nm)を備えたABBE-3L屈折計(Thermo Fisher Scientific)で測定した。ポリ(N-メチルメタクリルアミド)(PMMAm)の分子量は、5mMのLiBrをメタノール/ジメチルホルムアミド(50/50v/v%)を溶離液として、Wyatt Technology CorporationのminiDAWN(登録商標)TREOS(登録商標)多角度光散乱(MALS)を備えたTSkgel(登録商標)HHr有機サイズ排除カラム(TOSOH Bioscience LLC,King of Prussia,PA)、およびOptilab(登録商標)T-rEX示差屈折計検出器(Santa Barbara,CA)を使用する使用標準ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定される、重量平均分子量(Mw)として報告されている。
【0054】
実施例1
マウンタント試料の屈折率を測定する
乾燥試料に関する屈折率測定は、300μLの試料を屈折計プリズム上に慎重に広げた後、マウンタントを最大24時間乾燥させることによって測定した。マウンタント溶液を乾燥させて透明フィルムにした後、屈折率を測定した。
【0055】
実施例2
マウント手順
生物学的標本(例えば、30μm未満の厚さを有する培養された単層細胞および組織切片)は、十分な量のマウンタント、典型的には1~3滴(30~100μL)を、完全に覆われるかまたは浸されるまで基材上に配置された標本に適用することによって基材上にマウントされる。生物学的標本は、非染色であり得るか、または当業者に周知の手順を使用して、マウントする前に染色することができる。次いで、標本を18mm×18mmのカバースリップで覆い、余分なマウンタントをカバースリップの端から拭き取るか、ピペットで取り除く。マウントされた標本は、室温で24~96時間乾燥させることができるが、40℃もの高い温度が許容される。マウントされた標本が完全に乾燥した後、標本を、当業者に周知の蛍光顕微鏡法を使用して撮像することができる。あるいは、カバースリップを適用する前に、マウントされた標本を乾燥させることができる。カバースリップなしで乾燥させると、ハードセットマウンタントの乾燥を促進することができる。カバースリップなしでは、乾燥には40℃で約30分、室温で約4時間を要し得る。マウンタントが乾燥した後、水、さらなるマウンタント、エタノール、またはグリセロールなどの接触液を乾燥したマウンタント上に置き、次いでカバースリップを標本上に置くことによって、カバースリップをマウントされた標本上に適用することができる。
【0056】
以下のプロトコルを、30~100μm、およびより厚い生物学的標本をマウントするために使用することができる。カバースリップをマウントする前に、マウンタントを室温まで2時間温める。カバースリップの端を軽く叩くか、または実験用ワイプ上でスライドさせることによって、試料から余分な液体を除去する。スライドマウント標本の場合、2~3滴または60~100μLのマウンタントを標本に直接適用し、気泡が入らないように慎重にカバースリップをマウンタントの上に下ろす。ウェルプレートまたは培養ディッシュで染色された標本の場合は、試料を顕微鏡スライドに慎重に移動させる。スライドへの10μLのマウンタントの添加は、試料を所定の位置に操作するのに役立ち得る。3-D培養細胞またはスフェロイドの場合、チップの端部を除去した1mLピペットを使用して、3-D培養物またはスフェロイドを顕微鏡スライドに移動させる。試料の完全性を確保するために、適切なスペーサーを備えた顕微鏡スライド上に緩衝液とともに3-D培養物を置く。スペーサーは、必要なマウンタントの量を最小限に抑えながら、試料に十分なスペースを確保する必要がある。縁部が開いているスペーサーは、試料の硬化時間を減少させる。必要に応じて、カバースリップを軽く叩いて気泡を除去する。マウンタントがカバースリップの縁部まで満たされない場合は、ピペットを使用して、カバースリップの下に追加のマウンタントを適用する。軽く叩いて、試料の周囲から気泡を除去する。試料を十分に覆うことができないと、マウンタントの収縮につながり、撮像領域を低減し得る。マウントされた試料を平らで乾燥した表面上に置き、暗所で室温で硬化させる。最適な結果を得るために、試料を少なくとも48時間硬化させる。
【0057】
30~100μm、およびより厚い標本は、以下のプロトコルを使用してより迅速に硬化させることができる。カバースリップをマウントする前に、マウンタントを室温まで2時間温める。カバースリップの端を軽くたたくか、または実験用ワイプ上でスライドさせることによって、試料から余分な液体を除去する。スライドマウント標本の場合は、2~3滴または60~100μLのマウンタントを標本に直接適用する。スライドを慎重に前後に傾けて、マウンタントを標本上に均一に分散させる。18mm×18mmの領域に2~3滴または60~100μLのマウンタントを広げるようにする。ピペット先端の縁部を使用して、気泡を除去し、マウンタントを広げるのをやさしく助けることができる。ウェルプレートまたは培養ディッシュで染色された標本の場合は、試料を顕微鏡スライドに慎重に移動させる。スライドへの10μLのマウンタントの添加は、試料を所定の位置に操作するのに役立ち得る。3-D培養細胞またはスフェロイドの場合、チップの端部を除去した1mLピペットを使用して、3-D培養物またはスフェロイドを顕微鏡スライドに移動させる。試料の完全性を確保するために、適切なスペーサーを備えた顕微鏡スライド上に緩衝液とともに3-D培養物を置く。スペーサーは、必要なマウンタントの量を最小限に抑えながら、試料に十分なスペースを確保する必要がある。培養液から余分な緩衝液を除去し、スペーサーの高さと表面積に応じて、2~3滴または60~100μLのマウンタントを標本に直接適用する。この時点ではカバースリップを適用しない。試料をカバースリップなしで室温で16~24時間、光から保護して硬化させる。16~24時間後、硬化したマウンタントおよび標本の上部に10μLのグリセロールを適用する。カバースリップを適用し、所定の位置に押し込み、存在する場合は叩いて泡を除去する。カバースリップを1~3時間、またはカバースリップが動かなくなるまで硬化させる。
【0058】
実施例3
ポリビニルピロリドン(PVP)を用いた封入剤の配合
0.50gのグリセロール(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ)、1.00gのPVP(Mw=55,000g/mol、TCI America Portland,OR)、61mgの2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3,プロパンジオール(TRIS塩基、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)、および3.8mLの脱イオン水を、20mLの磁気攪拌棒を備えたシンチレーションバイアルに添加することによって、封入剤を配合した。溶液を、60℃の水浴中で500rpmで撹拌し、PVPの完全な溶解が観察されるまで加熱した。ポリマーの溶解後、使用前にバイアルを室温まで冷却させた。RIは、実施例1に記載されるように測定した(表1、試料2を参照)。
【0059】
実施例4
ポリビニルアルコール(PVA)を用いた封入剤の配合
0.50gのグリセロール、61mgのTRIS塩基、1.00gのPVA(Mw約23,000g/mol、Sekisui America Corporation,Secaucus,NJ,USA)、および3.8mLの脱イオン水を、20mLの磁気攪拌棒を備えたシンチレーションバイアルに添加することによって、封入剤を配合した。PVAの完全な溶解が観察されるまで、実施例3に記載されるように溶液を撹拌し、加熱した。ポリマーの溶解後、使用前にバイアルを室温まで冷却させた。RIは、実施例1に記載されるように測定した(表1、試料8を参照)。
【0060】
実施例5
ポリ(N-メチルメタクリルアミド)(PMMAm)を用いた封入剤の配合
0.50gのグリセロール、61mgのTRIS塩基、1.00gのPMMAm(Mw=100,000g/mol)、および3.8mLの脱イオン水を、20mLの磁気攪拌棒を備えたシンチレーションバイアルに添加することによって、封入剤を配合した。PMMAmの完全な溶解が観察されるまで、実施例3に記載されるように溶液を撹拌し、加熱した。ポリマーの溶解後、使用前にバイアルを室温まで冷却させた。RIは、実施例1に記載されるように測定した(表1、試料14を参照)。
【0061】
実施例6
様々なポリマー/グリセロール質量比を用いた封入剤の配合
実施例3~5に記載されているように、水溶性ポリマーとしてPVP、PVA、およびPMMAmを使用して、封入剤を配合した。さらに、ポリマー対グリセロールの質量比は、0.5~2.0まで変化した。マウンタントの最終体積を希釈して、DI水で5mLの一定体積にした。ポリマーの完全な溶解が観察されるまで、実施例3に記載されるように溶液を撹拌し、加熱した。ポリマーの溶解後、使用前にバイアルを室温まで冷却させた。RIは、実施例1に記載されるように測定した(PVPについては表1、試料1、2、3および4;PVAについては試料7、8および10;ならびにPMMAmについては試料14、15、17、18および20を参照)。表1の試料1、2、3、4、7、8、10、14、15、17、18、および20のデータを参照すると、乾燥した封入剤のRIは、ポリマー対グリセロールの比が増加するにつれて著しく増加し、これは、文献に報告されている試験したポリマーのRI(すなわち、1.530 PVP、1.50 PVA、および1.540 PMMAm)が純粋なグリセロールのRI(25℃で1.4722)を超えるため予想されていた。しかしながら、ポリマー濃度がある特定の閾値を超えると、乾燥したマウンタントの物理的および光学的特性が大幅に低下し、ポリマーに応じて、顕微鏡用途に使用できなくなるフィルムになることもある(例えば、試料23を参照)。しかしながら、製剤中のポリオールが多すぎると、乾燥した材料が脂性または油性になり、カバースリップが試料に十分に付着しなくなる。ある特定のポリマーの場合、この閾値は、約0.125:1以上(例えば、PVPおよびPVA)であり、ごく少量のポリマーのみが、使用可能な高RIMフィルムを製造するために必要とされる。しかしながら、他のポリマーの場合、製剤中のポリマーが多すぎると、フィルムの品質が低下し、他の欠点が生じる可能性がある。例えば、PMMAmを実装する製剤の場合、製剤中のいくらかのポリオールの存在は、ポリマーを可塑化するのに役立ち、それにより特に低温で保存した場合にポリマーが過度に脆性にならないか、またはひび割れない。したがって、PMMAm系製剤の場合、水溶性ポリマー対ポリオールの質量比は、約4:1以下(例えば、0.125:1~4:1)である。ポリマーの種類に関係なく、ポリオールはまた、乾燥したマウンタントに一定レベルの永続的な体積を与え、生物学的試料(例えば、細胞)が過度に圧縮されるのを防ぐことができる。例えば、ポリオールを含まないPVAフィルムは、典型的に乾燥してもひび割れないが、フィルムは非常に収縮するため、細胞が圧縮される。
【0062】
実施例7
様々なポリマー/ジグリセロール質量比での封入剤の配合
ポリオールとしてグリセロールの代わりにジグリセロール(Alfa Aesar,Tewksbury,MA)を使用したことを除いて、実施例6に記載されるように封入剤を配合した。ポリマー対ジグリセロールの質量比は、0.5~2.0まで変化した。マウンタントの最終体積を、DI水で5mLの一定体積にした。ポリマーの完全な溶解が観察されるまで、実施例3に記載されるように溶液を撹拌し、加熱した。ポリマーの溶解後、使用前にバイアルを室温まで冷却させた。RIは、実施例1に記載される手順に従って測定した(PVPについては表1、試料5および6;PVAについては試料9、11および12;ならびにPMMMAmについては試料13、16、および19を参照)。表1を参照すると、試験されたポリマーのRIは、純粋なジグリセロールのRI(20℃で1.4850)を超えるため、ポリマー対ジグリセロールの比が増加するにつれて、乾燥封入剤のRIは増加した。さらに、ジグリセロールで調製した封入剤は、グリセロールを使用して調製した場合よりもわずかに高いRIを有していた。
【0063】
実施例8
様々なポリマー分子量を有する封入剤の配合
ポリマーの重量を以下のように変化させたことを除いて、実施例3~5に記載されるように封入剤を配合した。PVP(10,000g/mol~55,000g/mol)、PVA(13,000g/mol~31,000g/mol)、およびPMMAm(33,000g/mol~100,000g/mol)。ポリマー対ポリオールの質量比は、0.5~2.0まで変化した。マウンタントの最終体積を希釈して、DI水で5mLの一定体積にした。ポリマーの完全な溶解が観察されるまで、実施例3に記載されるように溶液を撹拌し、加熱した。ポリマーの溶解後、使用前にバイアルを室温まで冷却させた。RIは、実施例1に記載される手順に従って測定した(PVPについては表1、試料1~6;PVAについては試料7~12;ならびにPMMMAmについては試料13~20を参照)。興味深いことに、ポリマーの分子量は、ポリオールの種類およびポリマー対ポリオールの比が一定に保たれた場合、RIに統計的に有意な影響を与えなかった。
【0064】
実施例9
ポリマーのみを用いた封入剤の配合
グリセロールまたはジグリセロール添加剤を製剤から省いたことを除いて、実施例3~5に記載されるように封入剤を配合した。マウンタントの最終体積を希釈して、DI水で5mLの体積にした。ポリマーの完全な溶解が観察されるまで、実施例3に記載のように溶液を撹拌および加熱した。ポリマーの溶解後、使用前にバイアルを室温まで冷却させた。RIは、実施例1に記載の手順に従って測定された(表1、試料21~23を参照)。試料23のRIは、乾燥したマウンタントのひび割れのために測定できなかった(NM)。グリセロールまたはジグリセロールを含まない試料のデータは、製剤中のポリオールの存在により、恐らく乾燥したポリマーフィルムが可塑化または軟化するために、フィルムが過度に脆性になるか、または収縮しすぎるのを防ぐことができることを示している。
【表1】
【0065】
実施例10
ポリマーおよび退色防止剤を用いた封入剤の配合
0.55gのグリセロール、1.10gのPMMAm(Mw=60,000g/mol)、122mgの2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3,プロパンジオール(TRIS塩基)、および5.0mLの脱イオン水を、20mLの磁気攪拌棒を備えたシンチレーションバイアルに添加することによって、封入剤を配合した。PMMAmの完全な溶解が観察されるまで、実施例3に記載されるように溶液を撹拌し、加熱した。ポリマーの完全溶解後、9.7mgの安息香酸(7.94mmol)および19mgの亜硫酸ナトリウム(15mmol)を、それぞれ防腐剤および退色防止剤として添加した。全ての安息香酸が溶解するまで、溶液を60℃でさらに30分間撹拌した。溶解した後、バイアルを室温まで冷却し、体積をDI水で10mLまで希釈した。実施例1に記載される手順に従ってRIを測定した(24時間後、21℃でRI=1.5146)。この製剤のRI値は、表1に提示される試料18または試料13に最も類似している。実施例8は、MWが統計的にRI値に影響を与えないこと、およびジグリセロール対グリセロールの使用がRI値をわずかに増加させることを示している。試料13および試料18と比較して、現在の試料の1.5146のRI値は、退色防止剤および防腐剤の添加が最終的なRI値に与える影響があったとしてもごくわずかであることを示唆している。
【0066】
実施例11
経時的な屈折率測定
RIの変化を時間の関数として追跡するために、屈折率を5日間にわたって監視した。実施例1に記載されるように、様々なマウント製剤を評価し、5日間にわたって様々な時点で測定を繰り返した。屈折率は、最初の5時間で劇的に増加し、その後プラトーになり、24時間後も同様のままであった(試料8および13の図1を参照)。
【0067】
実施例12
共焦点顕微鏡を使用した軸方向分解能測定のためのサブミクロン蛍光微小球のマウント
本明細書に開示されたマウント製剤の様々な焦点深度での軸方向分解能は、サブ分解能蛍光微小球の点広がり関数を使用して共焦点顕微鏡で検出される。PS-Speck(商標)顕微鏡ポイントソースキット(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)からの1.7μLの175nm緑色蛍光微小球(505/515励起/放射)を、200μLのマウンタント試料に分散させ、次いで20分間超音波処理する。超音波処理の後、100μLの各試料をエタノールで洗浄した18mm×18mmのカバースリップ上にピペットで移し、カバースリップをピンセットで前後に傾けることによって全体に広げる。封入剤試料を、カバースリップ上で40℃で1時間乾燥させた。乾燥した後、10μLのグリセロールをスライド上に置き、次いで各カバースリップをグリセロール液滴上に静かに置くことによって、カバースリップを標準顕微鏡スライド上に固定化した。カバースリップを、室温で約20分間スライド上に固定化させた。
【0068】
各試料の軸方向および横方向の分解能は、共焦点顕微鏡によって決定した。個々の微小球のZ-スタックを、Plan-Apochromat 63×/1.4 NA Oil対物レンズを使用し、Zeiss(商標)LSM 710共焦点顕微鏡上で収集し、x、y方向に42nm、およびz方向に100nmの速度でサンプリングした。各試料を撮像する前に、対物レンズを、最初に1.518のRI(23℃でe-ライン(546nm)により測定)を有するCarl Zeiss Immersol(商標)518Fイマージョンオイル(Carl Zeiss,Inc.,Thornwood,NY)で覆った。各試料について、カバースリップから100μmまでの範囲の焦点深度で、組み込まれた微小球を撮像した。マウントされた試料の領域全体(すなわち、左、中央、および右)の異なる位置で、各試料の全ての焦点深度で3つの微小球を撮像した。ImageJ MetroloJプラグインを使用して、各試料の軸方向(z)および横方向(x、y)の分解能を計算した。プロットされたデータ(図2および図3)は、試料8、10、および13の焦点深度の関数としての軸方向および横方向の分解能を示す。図2に見られるように、軸方向分解能は、RIがイマージョンオイルのRIに近いほど改善される(すなわち、値が低くなる)。改善された軸方向分解能は、試料13(1.5172)>試料8(1.4927)>試料10(1.4687)に従い、試料13は、100μmの焦点深度で試料10に対して軸方向分解能を1.54倍改善した。予想されたように、各焦点深度での各試料間の横方向分解能にほとんど差はない(図3)。この実施例では、イマージョンオイルのRIに整合するポリマーの種類およびポリマー/ポリオール比の操作により、乾燥した封入剤の完全性を維持しながら、最大軸方向分解能を達成するためのRIの調整が示されている。
【0069】
本明細書で言及された米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公開の全ては、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。さらなる実施形態を提供するために必要に応じて様々な特許、出願および刊行物の概念を採用するために、実施形態の態様を修正することができる。
【0070】
上記の詳細な説明に照らして、これらおよび他の変更を実施形態に加えることができる。一般に、以下の条項および特許請求の範囲において、使用される用語は、条項および特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、全ての可能な実施形態とともに、このような条項および特許請求の範囲が権利を保有する等価物の全範囲を含むように解釈されるべきである。したがって、条項および特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。実施形態は、以下の番号付き条項に従ってもよい。
1.屈折率整合(RIM)溶液であって、
a)水溶性ポリマーであって、ポリマーが、0.27~0.34のモル屈折率(RLL)対モル体積(Vm)比を有する、水溶性ポリマーと、
b)ポリオールであって、水溶性ポリマーのポリオールに対する質量比が0.318:1~4:1である、ポリオールと、
c)水または緩衝液とを含み、
1.36以上の屈折率を有する、RIM溶液。
2.屈折率が、1.60以下である、条項1に記載のRIM溶液。
3.生物学的標本を基材にマウントする方法であって、
基材上に生物学的標本を配置することと、
生物学的標本を条項1または条項2に記載のRIM溶液と接触させて、マウントされた試料を提供することと、を含む、方法。
4.マウントされた試料を乾燥させることをさらに含み、それにより水溶性ポリマーが固化して、固化したポリマーを提供する、条項3に記載の方法。
5.水溶性ポリマーが、室温で約48時間以内、または室温で24時間以内、または約40°Cの温度で約4時間以内に固化する、条項4に記載の方法。
6.固化したポリマーの屈折率が、1.47(例えば、1.48~1.54、または1.50~1.525)を超える、条項4に記載の方法。
7.顕微鏡を用いて基材上の生物学的標本を視覚化することをさらに含む、条項1~6のいずれか1項に記載の方法。
8.水溶性ポリマー及びポリオールを含む、固化したマウンタントであって、ポリマーが、0.27~0.34のモル屈折率(RLL)対モル体積(Vm)比を有し、水溶性ポリマーのポリオールに対する質量比が、0.318:1~4:1であり、固化したマウンタントが、1.48以上の屈折率を有する、固化したマウンタント。
9.水溶性ポリマー対ポリオールの質量比が、0.5:1以上である、条項8に記載の固化したマウンタント。
10.屈折率が、1.47より大きい、条項8または9に記載の固化したマウンタント。
11.水溶性ポリマーが、非荷電性である、条項1~10のいずれか1項に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
12.非荷電性水溶性ポリマーが、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、またはポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)である、条項11に記載のRIM溶液。
13.非荷電性水溶性ポリマーが、N-RアクリルアミドまたはN-Rメタクリルアミド(ここでRが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはHである);N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,Nジエチルメタクリルアミド;N-2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド);またはそれらの組み合わせ、のモノマー残基を含む、条項11に記載のRIM溶液。
14.非荷電性水溶性ポリマーが、ポリ(N-メチルメタクリルアミド)(PMMAm)である、条項11に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
15.水溶性ポリマーが、荷電性である、条項1~14のいずれか1項に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
16.荷電性水溶性ポリマーが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ナトリウム-4-スチレンスルホネート)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルエチルアミノアクリレート)、ポリ(アリルアミン)、ポリ[ビス(2-クロロエチル)エーテル-co-1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]尿素]、またはポリ(ビニルスルホン酸、ナトリウム塩)である、条項15に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
17.水溶性ポリマーが、約1kDa~約100kDaの重量平均分子量を有する、条項1~16のいずれか1項に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
18.水溶性ポリマーが、約1kDa~約20kDaの重量平均分子量を有する、条項1~17のいずれか1項に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
19.水溶性ポリマーが、約20kDa~約100kDaの重量平均分子量を有する、条項1~18のいずれか1項に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
20.水溶性ポリマーが、約48kDa~約80kDaの重量平均分子量を有する、条項1~19のいずれか1項に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
21.屈折率が、1.48~1.50、または1.50~1.52、または1.52~1.54である、条項1~20のいずれか1項に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
22.RIM溶液または固化したマウンタントの屈折率が、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、またはイマージョンオイルの屈折率と整合する、条項1~21のいずれか1項に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
23.水溶性ポリマーが、ポリオールではない、条項1~22のいずれか1項に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
24.ポリオールが、ポリビニルアルコール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、マンニトール、ソルビトール、チオジエタノール、チオジプロパノール、またはそれらの組み合わせである、条項1~23のいずれか1項に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
25.酸化防止剤をさらに含む、条項1~24のいずれか1項に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
26.1質量%以下の酸化防止剤を含む、条項25に記載のRIM溶液または固化したマウンタント。
27.酸化防止剤が、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸、3-カルボキシプロキシル、ヒドロキノン、メキノール、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、カフェ酸、パラフェニレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、またはそれらの組み合わせである、条項26に記載のRIM溶液。
28.基材上に配置された生物学的標本を含む、マウントされた生物学的標本であって、生物学的標本が、条項1~27のいずれか1項に記載の固化したマウンタントに組み込まれている、マウントされた生物学的標本。
29.生物学的標本を基材にマウントするためのキットであって、
a)条項1~28のいずれか1項に記載の屈折率整合(RIM)溶液と、
b)生物学的標本を基材にマウントするための指示書と、を含む、キット。
30.基材が、顕微鏡スライド、キュベット、ウェル、またはディッシュである、条項1~29のいずれか1項に記載の方法、マウントされた生物学的標本、またはキット。
31.生物学的標本が、細胞、組織、3D細胞培養(例えば、スフェロイド/オルガノイド)、または生物全体(例えば、ミバエ、虫、ゼブラフィッシュ)である、条項1~30のいずれか1項に記載の方法、マウントされた生物学的標本、またはキット。
32.生物学的標本が、蛍光染料または蛍光タンパク質で標識されている、条項1~31のいずれか1項に記載の方法、マウントされた生物学的標本、またはキット。
図1
図2
図3