(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】色材分散液、着色樹脂組成物及びその硬化物、カラーフィルタ、並びに表示装置
(51)【国際特許分類】
C09B 67/46 20060101AFI20230911BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20230911BHJP
C09B 63/00 20060101ALI20230911BHJP
C09B 11/20 20060101ALN20230911BHJP
【FI】
C09B67/46 A
C09B67/20 L
C09B63/00
C09B11/20
(21)【出願番号】P 2020550223
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2019034743
(87)【国際公開番号】W WO2020071041
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2018187602
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】大友 知亜紀
(72)【発明者】
【氏名】岡田 政人
(72)【発明者】
【氏名】小倉 教弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽平
(72)【発明者】
【氏名】和田 はるな
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/144521(WO,A1)
【文献】特開2017-2191(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145627(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/171193(WO,A1)
【文献】特開2013-225091(JP,A)
【文献】特開2001-164142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/10
G02B 5/20
G02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と、酸性分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記色材が、下記一般式(1)で表される色材及び下記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含み、
前記酸性分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む、色材分散液。
【化1】
(一般式(1)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にヘテロ原子が含まれていてもよい。B
c-はc価のポリ酸アニオンを表す。R
i~R
vは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
iiとR
iii、R
ivとR
vが結合して環構造を形成してもよい。R
vi及びR
viiは各々独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。Ar
1は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR
i~R
vii及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
a及びcは2以上の整数、b及びdは1以上の整数を表す。eは0又は1であり、eが0のとき結合は存在しない。f及びgは0以上4以下の整数を表し、f+e及びg+eは0以上4以下である。複数あるe、f及びgはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化2】
(一般式(2)中、R
I~R
VIは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
IとR
II、R
IIIとR
IV、R
VとR
VIが結合して環構造を形成してもよい。R
VII及びR
VIIIは各々独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。Ar
2は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表し、複数あるR
I~R
VIII及びAr
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。E
m-はm価のポリ酸アニオンを表す。
mは2以上の整数を表す。jは0又は1であり、jが0のとき結合は存在しない。k及びlは0以上4以下の整数を表し、k+j及びl+jは0以上4以下である。複数あるj、k及びlはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化3】
(一般式(I)中、L
1は、直接結合又は2価の連結基、R
1は、水素原子又はメチル基、R
2は、水酸基、炭化水素基、-[CH(R
3)-CH(R
4)-O]
x1-R
5、-[(CH
2)
y1-O]
z1-R
5、又は-O-R
6で示される1価の基であり、R
6は、炭化水素基、-[CH(R
3)-CH(R
4)-O]
x1-R
5、-[(CH
2)
y1-O]
z1-R
5、-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-OH、又は、-CH
2-C(R
11)(R
12)-CH
2-OHで示される1価の基である。
R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
5は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH
2CHO、-CO-CH=CH
2、-CO-C(CH
3)=CH
2又は-CH
2COOR
13で示される1価の基であり、R
13は水素原子又は炭素原子数が1個以上5個以下のアルキル基である。R
7、R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は、エーテル結合及びエステル結合から選択される1種以上を有する炭化水素基であり、R
7及びR
9は、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、当該環状構造が更に置換基R
14を有していてもよく、R
14は、炭化水素基、又は、エーテル結合及びエステル結合から選択される1種以上を有する炭化水素基である。前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。Xは、水素原子又は有機カチオンを表す。x1は1以上18以下の整数、y1は1以上5以下の整数、z1は1以上18以下の整数を表す。)
【請求項2】
前記レーキ色材の含有量が、前記レーキ色材及び前記フタロシアニン顔料の合計含有量に対して20質量%以上85質量%以下である、請求項1に記載の色材分散液。
【請求項3】
前記酸性分散剤が、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含むAブロックと(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むBブロックとを含むブロック共重合体を、更に含む、請求項1又は2に記載の色材分散液。
【請求項4】
色材と、酸性分散剤と、バインダー成分と、溶剤とを含有する着色樹脂組成物であって、
前記色材が、下記一般式(1)で表される色材及び下記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含み、
前記酸性分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む、着色樹脂組成物。
【化4】
(一般式(1)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にヘテロ原子が含まれていてもよい。B
c-はc価のポリ酸アニオンを表す。R
i~R
vは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
iiとR
iii、R
ivとR
vが結合して環構造を形成してもよい。R
vi及びR
viiは各々独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。Ar
1は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR
i~R
vii及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
a及びcは2以上の整数、b及びdは1以上の整数を表す。eは0又は1であり、eが0のとき結合は存在しない。f及びgは0以上4以下の整数を表し、f+e及びg+eは0以上4以下である。複数あるe、f及びgはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化5】
(一般式(2)中、R
I~R
VIは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
IとR
II、R
IIIとR
IV、R
VとR
VIが結合して環構造を形成してもよい。R
VII及びR
VIIIは各々独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。Ar
2は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表し、複数あるR
I~R
VIII及びAr
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。E
m-はm価のポリ酸アニオンを表す。
mは2以上の整数を表す。jは0又は1であり、jが0のとき結合は存在しない。k及びlは0以上4以下の整数を表し、k+j及びl+jは0以上4以下である。複数あるj、k及びlはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化6】
(一般式(I)中、L
1は、直接結合又は2価の連結基、R
1は、水素原子又はメチル基、R
2は、水酸基、炭化水素基、-[CH(R
3)-CH(R
4)-O]
x1-R
5、-[(CH
2)
y1-O]
z1-R
5、又は-O-R
6で示される1価の基であり、R
6は、炭化水素基、-[CH(R
3)-CH(R
4)-O]
x1-R
5、-[(CH
2)
y1-O]
z1-R
5、-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-OH、又は、-CH
2-C(R
11)(R
12)-CH
2-OHで示される1価の基である。
R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
5は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH
2CHO、-CO-CH=CH
2、-CO-C(CH
3)=CH
2又は-CH
2COOR
13で示される1価の基であり、R
13は水素原子又は炭素原子数が1個以上5個以下のアルキル基である。R
7、R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は、エーテル結合及びエステル結合から選択される1種以上を有する炭化水素基であり、R
7及びR
9は、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、当該環状構造が更に置換基R
14を有していてもよく、R
14は、炭化水素基、又は、エーテル結合及びエステル結合から選択される1種以上を有する炭化水素基である。前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。Xは、水素原子又は有機カチオンを表す。x1は1以上18以下の整数、y1は1以上5以下の整数、z1は1以上18以下の整数を表す。)
【請求項5】
前記レーキ色材の含有量が、前記レーキ色材及び前記フタロシアニン顔料の合計含有量に対して20質量%以上85質量%以下である、請求項4に記載の着色樹脂組成物。
【請求項6】
前記バインダー成分が、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤とを含み、感光性である、請求項4又は5に記載の着色樹脂組成物。
【請求項7】
前記酸性分散剤が、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含むAブロックと(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むBブロックとを含むブロック共重合体を、更に含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の着色樹脂組成物。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載の着色樹脂組成物の硬化物。
【請求項9】
透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、前記着色層の少なくとも一つが、色材と、酸性分散剤とを含み、前記色材が、下記一般式(1)で表される色材及び下記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含み、前記酸性分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む、カラーフィルタ。
【化7】
(一般式(1)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にヘテロ原子が含まれていてもよい。B
c-はc価のポリ酸アニオンを表す。R
i~R
vは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
iiとR
iii、R
ivとR
vが結合して環構造を形成してもよい。R
vi及びR
viiは各々独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。Ar
1は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR
i~R
vii及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
a及びcは2以上の整数、b及びdは1以上の整数を表す。eは0又は1であり、eが0のとき結合は存在しない。f及びgは0以上4以下の整数を表し、f+e及びg+eは0以上4以下である。複数あるe、f及びgはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化8】
(一般式(2)中、R
I~R
VIは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
IとR
II、R
IIIとR
IV、R
VとR
VIが結合して環構造を形成してもよい。R
VII及びR
VIIIは各々独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。Ar
2は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表し、複数あるR
I~R
VIII及びAr
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。E
m-はm価のポリ酸アニオンを表す。
mは2以上の整数を表す。jは0又は1であり、jが0のとき結合は存在しない。k及びlは0以上4以下の整数を表し、k+j及びl+jは0以上4以下である。複数あるj、k及びlはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化9】
(一般式(I)中、L
1は、直接結合又は2価の連結基、R
1は、水素原子又はメチル基、R
2は、水酸基、炭化水素基、-[CH(R
3)-CH(R
4)-O]
x1-R
5、-[(CH
2)
y1-O]
z1-R
5、又は-O-R
6で示される1価の基であり、R
6は、炭化水素基、-[CH(R
3)-CH(R
4)-O]
x1-R
5、-[(CH
2)
y1-O]
z1-R
5、-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-OH、又は、-CH
2-C(R
11)(R
12)-CH
2-OHで示される1価の基である。
R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
5は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH
2CHO、-CO-CH=CH
2、-CO-C(CH
3)=CH
2又は-CH
2COOR
13で示される1価の基であり、R
13は水素原子又は炭素原子数が1個以上5個以下のアルキル基である。R
7、R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は、エーテル結合及びエステル結合から選択される1種以上を有する炭化水素基であり、R
7及びR
9は、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、当該環状構造が更に置換基R
14を有していてもよく、R
14は、炭化水素基、又は、エーテル結合及びエステル結合から選択される1種以上を有する炭化水素基である。前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。Xは、水素原子又は有機カチオンを表す。x1は1以上18以下の整数、y1は1以上5以下の整数、z1は1以上18以下の整数を表す。)
【請求項10】
前記レーキ色材の含有量が、前記レーキ色材及び前記フタロシアニン顔料の合計含有量に対して20質量%以上85質量%以下である、請求項9に記載のカラーフィルタ。
【請求項11】
前記酸性分散剤が、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含むAブロックと(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むBブロックとを含むブロック共重合体を、更に含む、請求項9又は10に記載のカラーフィルタ。
【請求項12】
前記請求項9~11のいずれか1項に記載のカラーフィルタを有することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色材分散液、着色樹脂組成物及びその硬化物、カラーフィルタ、並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。モバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)の普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。また、最近においては、自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。これらの画像表示装置の性能においては、コントラストや色再現性の向上といったさらなる高画質化が望まれている。
【0003】
これらの液晶表示装置や有機発光表示装置には、カラーフィルタが用いられる。例えば液晶表示装置のカラー画像の形成は、カラーフィルタを通過した光がそのままカラーフィルタを構成する各画素の色に着色されて、それらの色の光が合成されてカラー画像を形成する。その際の光源としては、従来の冷陰極管のほか、白色発光の有機発光素子や白色発光の無機発光素子が利用される場合がある。また、有機発光表示装置では、色調整などのためにカラーフィルタを用いる。
【0004】
近年の傾向として、画像表示装置の省電力化が求められており、バックライトの利用効率を向上させるためにカラーフィルタの高輝度化が特に求められている。特にモバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)では大きな課題である。
【0005】
ここで、カラーフィルタは、一般的に、基板と、基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンを含む着色層と、各着色パターンを区画するように基板上に形成された遮光部とを有している。
このような着色層の形成方法として、色材を分散させた色材分散液に硬化性バインダー成分等を添加した着色樹脂組成物を基材に塗布し硬化する方法などが知られている。
色材分散液は、高コントラストな着色層を安定して得るために、色材の分散性や保存安定性が求められている。また、カラーフィルタの高コントラスト化や高輝度化の要求に伴って、色材として、微細化した顔料を使用したり、より高透過率な染料やレーキ色材を使用する検討が行われている。このような色材分散液から得られた着色層は、顔料のみを使用した場合よりも製造工程における各種耐性が劣る場合があった。
【0006】
特許文献1には、複数の染料骨格が架橋基によって架橋された2価以上のカチオンと、2価以上のアニオンを含む特定の色材を用いたカラーフィルタ等が開示されている。上記色材は耐熱性に優れており、当該色材を用いたカラーフィルタは高コントラストで、耐溶剤性及び電気信頼性に優れていると記載されている。
【0007】
特許文献2には、色材と、特定の酸性リン化合物基を有する構成単位を有する重合体と、溶剤として比較的極性の高い溶剤と比較的極性の低い溶剤の少なくとも2種の溶剤とを組み合わせた色材分散液が開示されている。上記色材分散液は、分散性及び保存安定性に優れ、長期保管後であっても高コントラストで、耐熱性及び耐溶剤性に優れた塗膜を形成可能であると記載されている。また、特許文献2には、実施例17と比較例25及び26において、特許文献1の特定の色材に相当するレーキ色材と、市販のピグメントブルー15:6とを、質量比90:10で混合して色材として用い、特定の酸リン構造を有する構成単位を有する重合体か、塩基性分散剤のいずれかによって前記色材を分散させた色材分散液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2012/144521号
【文献】特開2017-2191号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら特許文献1の特定の色材を用いても、顔料に比べると耐熱性が劣るため、カラーフィルタ製造工程における高温加熱(ポストベーク)後に、色度が変化し易く、また、最終的に得られる着色層の輝度は未だ十分ではなく、更なる向上が求められている。
本発明者らは、高温加熱後の色度変化を抑制したり、最終的に得られる着色層の輝度を向上させるために、特許文献1の特定の色材のようなレーキ色材と、顔料とを混合して用いることを考えた。しかしながら、特許文献2のように、特許文献1の特定の色材のようなレーキ色材と、市販で多く流通しているピグメントブルー15:6のようなフタロシアニン顔料とを混合する場合に、前記レーキ色材とフタロシアニン顔料の合計100質量部に対して、フタロシアニン顔料の含有量を10質量部よりも多くしようとすると、分散性や保存安定性が著しく悪くなるため、フタロシアニン顔料の含有量を多くできず、前記特定のレーキ色材とフタロシアニン顔料とを所望の範囲で混合して着色樹脂組成物を製造することは困難であった。
また、特許文献2に記載されているような従来技術の着色層では、基板密着性と塗膜均一性が未だ不十分であり、更なる基板密着性と塗膜均一性の向上が求められていた。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、所定のレーキ色材とフタロシアニン顔料とを所望の範囲で混合しても分散性と保存安定性に優れ、且つ、基板密着性と塗膜均一性が向上した着色層を形成可能な色材分散液、及び着色樹脂組成物、及び前記着色層を備えたカラーフィルタ、及び、当該カラーフィルタを用いた表示特性に優れた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る色材分散液は、色材と、酸性分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記色材が、下記一般式(1)で表される色材及び下記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含み、
前記酸性分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む。
【0012】
【化1】
(一般式(1)中、各符号は後述のとおりである。)
【0013】
【化2】
(一般式(2)中、各符号は後述のとおりである。)
【0014】
【化3】
(一般式(I)中、各符号は後述のとおりである。)
【0015】
本発明に係る着色樹脂組成物は、色材と、酸性分散剤と、バインダー成分と、溶剤とを含有する着色樹脂組成物であって、
前記色材が、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含み、
前記酸性分散剤が、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む。
【0016】
本発明は、前記本発明に係る着色樹脂組成物の硬化物を提供する。
本発明は、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、前記着色層の少なくとも一つが、色材と、酸性分散剤とを含み、前記色材が、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含み、前記酸性分散剤が、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む、カラーフィルタを提供する。
【0017】
本発明は、前記本発明に係るカラーフィルタを有する表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所定のレーキ色材とフタロシアニン顔料とを所望の範囲で混合しても分散性と保存安定性に優れ、且つ、基板密着性と塗膜均一性が向上した着色層を形成可能な色材分散液、及び着色樹脂組成物、及び前記着色層を備えたカラーフィルタ、及び、当該カラーフィルタを用いた表示特性に優れた表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の表示装置の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の表示装置の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る色材分散液、着色樹脂組成物、カラーフィルタ、表示装置について、順に詳細に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことをいう。
本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0021】
I.色材分散液
本発明に係る色材分散液は、色材と、酸性分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記色材が、下記一般式(1)で表される色材及び下記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含み、
前記酸性分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む。
【0022】
【化4】
(一般式(1)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にヘテロ原子が含まれていてもよい。B
c-はc価のポリ酸アニオンを表す。R
i~R
vは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
iiとR
iii、R
ivとR
vが結合して環構造を形成してもよい。R
vi及びR
viiは各々独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。Ar
1は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR
i~R
vii及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
a及びcは2以上の整数、b及びdは1以上の整数を表す。eは0又は1であり、eが0のとき結合は存在しない。f及びgは0以上4以下の整数を表し、f+e及びg+eは0以上4以下である。複数あるe、f及びgはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0023】
【化5】
(一般式(2)中、R
I~R
VIは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
IとR
II、R
IIIとR
IV、R
VとR
VIが結合して環構造を形成してもよい。R
VII及びR
VIIIは各々独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。Ar
2は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表し、複数あるR
I~R
VIII及びAr
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。E
m-はm価のポリ酸アニオンを表す。
mは2以上の整数を表す。jは0又は1であり、jが0のとき結合は存在しない。k及びlは0以上4以下の整数を表し、k+j及びl+jは0以上4以下である。複数あるj、k及びlはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0024】
【化6】
(一般式(I)中、L
1は、直接結合又は2価の連結基、R
1は、水素原子又はメチル基、R
2は、水酸基、炭化水素基、-[CH(R
3)-CH(R
4)-O]
x1-R
5、-[(CH
2)
y1-O]
z1-R
5、又は-O-R
6で示される1価の基であり、R
6は、炭化水素基、-[CH(R
3)-CH(R
4)-O]
x1-R
5、-[(CH
2)
y1-O]
z1-R
5、-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-OH、又は、-CH
2-C(R
11)(R
12)-CH
2-OHで示される1価の基である。
R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
5は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH
2CHO、-CO-CH=CH
2、-CO-C(CH
3)=CH
2又は-CH
2COOR
13で示される1価の基であり、R
13は水素原子又は炭素数が1個以上5個以下のアルキル基である。R
7、R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は、エーテル結合及びエステル結合から選択される1種以上を有する炭化水素基であり、R
7及びR
9は、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、当該環状構造が更に置換基R
14を有していてもよく、R
14は、炭化水素基、又は、エーテル結合及びエステル結合から選択される1種以上を有する炭化水素基である。前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。Xは、水素原子又は有機カチオンを表す。x1は1以上18以下の整数、y1は1以上5以下の整数、z1は1以上18以下の整数を表す。)
【0025】
本発明の実施形態に係る色材分散液は、所定のレーキ色材とフタロシアニン顔料とを所望の範囲で混合しても分散性と保存安定性に優れ、且つ、基板密着性と塗膜均一性が向上した着色層を形成可能である。また、本発明の実施形態に係る色材分散液によれば、所定のレーキ色材とフタロシアニン顔料とを所望の範囲で混合しても分散性と保存安定性に優れ、且つ、基板密着性と塗膜均一性が向上した着色層を形成可能な着色樹脂組成物を得ることができる。
【0026】
市販で多く流通しているピグメントブルー15:6のようなフタロシアニン顔料は、後述する比較例4でも示されるように、分散剤として、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を用いると、分散性が悪く、また保存安定性も悪かった。分散剤として、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を用い、レーキ色材と、市販で多く流通しているフタロシアニン顔料とを混合する場合、後述する比較例5でも示されるように、フタロシアニン顔料の含有量を少し増加しただけで分散性や保存安定性が著しく悪くなるため、フタロシアニン顔料の含有量を多くできず、特許文献1の特定の色材のようなレーキ色材とフタロシアニン顔料とを所望の範囲で混合して着色樹脂組成物を製造することは困難であった。
それに対して、本発明では、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材に、塩基性処理されたフタロシアニン顔料を組み合わせ、且つ、分散剤として前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む酸性分散剤を用いることにより、所定のレーキ色材とフタロシアニン顔料とを所望の範囲で混合しても分散性と保存安定性に優れた色材分散液を得ることができる。塩基性処理されたフタロシアニン顔料を組み合わせて用いると、分散性と保存安定性が優れるようになるのは、フタロシアニン顔料の表面に存在する塩基性化合物由来のカチオン部によって、酸性分散剤の酸性基との吸着作用が特に強くなるからと推定される。また、前記レーキ色材も造塩化合物であることから酸性分散剤の酸性基との吸着作用が強いと推定される。前記レーキ色材及び前記塩基性処理されたフタロシアニン顔料が共に、良好に分散剤で被覆されるため、所望の範囲で混合しても分散性と保存安定性に優れると推定される。
また、下記一般式(1)で表される色材及び下記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材に、塩基性処理されたフタロシアニン顔料を組み合わせ、且つ、分散剤として前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む酸性分散剤を用いることにより、基板密着性と塗膜均一性が向上した着色層を形成可能である。この作用としては、中でも特に、前記塩基性処理されたフタロシアニン顔料が、酸性分散剤の酸性基と吸着作用が強くて顔料表面が均一に酸性分散剤で被覆されることにより、色材分散性が向上して色材分散液や樹脂組成物が低粘度化し、樹脂組成物の流動性が良好になることから均一な塗膜を作製し易くなり、塗膜の均一性も向上したのではないかと推定される。また、分散剤がリン酸基やカルボン酸基等の酸性基を有することで、色材表面だけでなく、基板表面の極性基(例えば、ガラス基板表面のSi-OH基)とも結合しやすくなることで基板密着性が向上したと推定される。
【0027】
本発明に係る色材分散液は、少なくとも、色材と、酸性分散剤と、溶剤とを含有するものであり、効果が損なわれない範囲で、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような色材分散液の各成分について順に詳細に説明する。
【0028】
[色材]
本発明において、色材は、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含むことを特徴とする。
【0029】
<前記レーキ色材>
本発明において用いられるレーキ色材は、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材である。
【0030】
前記一般式(1)で表される色材は、2価以上のアニオンと、2価以上のカチオンとを含むため、当該色材の凝集体においては、アニオンとカチオンが単に1分子対1分子でイオン結合しているのではなく、イオン結合を介して複数の分子が会合する分子会合体を形成し得ることから、見かけの分子量が、従来のレーキ顔料の分子量に比べて格段に増大する。このような分子会合体の形成により固体状態での凝集力がより高まり、熱運動を低下させ、イオン対の解離やカチオン部の分解を抑制でき、従来のレーキ顔料に比べて退色し難いと推定される。
【0031】
前記一般式(1)におけるAは、N(窒素原子)と直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO(酸素原子)、S(硫黄原子)、N(窒素原子)等のヘテロ原子が含まれていてもよいものである。すなわち、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有し、炭素鎖中にO、S、N等のヘテロ原子が含まれてもよい脂肪族炭化水素基、又は、Nと直接結合する末端に脂肪族炭化水素基を有し、炭素鎖中にO、S、N等のヘテロ原子が含まれてもよい芳香族基を表す。Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないため、カチオン性の発色部位が有する色調や透過率等の色特性は、連結基Aや他の発色部位の影響を受けず、単量体と同様の色を保持することができる。
【0032】
Aにおいて、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基は、Nと直接結合する末端の炭素原子がπ結合を有しなければ、直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよく、末端以外の炭素原子が不飽和結合を有していてもよく、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、O、S、Nが含まれていてもよい。例えば、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基等が含まれていてもよく、水素原子が更にハロゲン原子等に置換されていてもよい。
また、Aにおいて上記脂肪族炭化水素基を有する芳香族基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基を有する、単環又は多環芳香族基が挙げられ、置換基を有していてもよく、O、S、Nが含まれる複素環であってもよい。
中でも、骨格の堅牢性の点から、Aは、環状の脂肪族炭化水素基又は芳香族基を含むことが好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基としては、シクロヘキサン、シクロペンタン、ノルボルナン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、アダマンタンを含む基等が挙げられる。また、芳香族基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環を含む基等が挙げられる。例えば、Aが2価の有機基の場合、炭素数1~20の直鎖、分岐、又は環状のアルキレン基や、キシリレン基等の炭素数1~20のアルキレン基を2個置換した芳香族基等が挙げられる。
【0033】
本発明においては、堅牢性と、分子運動の自由度を両立して、耐熱性を向上する点から、Aが、2個以上の環状脂肪族炭化水素基を有し、Nと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれてもよい脂肪族炭化水素基であることが好ましい。Aは、2個以上のシクロアルキレン基を有し、Nと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれてもよい脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、中でも、2個以上の環状脂肪族炭化水素基が直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基で連結した構造を有することが更に好ましい。
2個以上ある環状脂肪族炭化水素基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、例えば、前記環状の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられ、中でもシクロヘキサン、シクロペンタンが好ましい。
【0034】
本発明においては、耐熱性の点から、中でも、前記Aが、下記一般式(1a)で表される置換基であることが好ましい。
【0035】
【化7】
(一般式(1a)中、R
xiは置換基として炭素数1以上4以下のアルキル基、又は炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有してもよい炭素数1以上3以下のアルキレン基を表し、R
xii及びR
xiiiは各々独立に炭素数1以上4以下のアルキル基、又は炭素数1以上4以下のアルコキシ基を表し、pは1以上3以下の整数を、q及びrは各々独立に0以上4以下の整数を表す。R
xi、R
xii、R
xiii及びrが複数ある場合、当該複数あるR
xi、R
xii、R
xiii及びrは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0036】
堅牢性と、発色部位の熱運動との両立に優れ、耐熱性が向上する点から、Rxiにおける炭素数1以上3以下のアルキレン基であることが好ましい。このようなアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられ、中でもメチレン基又はエチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
炭素数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。
また、炭素数1以上4以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられ、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。
【0037】
Rxii及びRxiiiにおける、炭素数1以上4以下のアルキル基、及び、炭素数1以上4以下のアルコキシ基は、前記Rxiが有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0038】
一般式(1a)において、シクロヘキサン(シクロヘキシレン基)は2個以上4個以下、即ち、pが1以上3以下であることが、耐熱性の点から好ましく、中でもpが1以上2以下であることがより好ましい。
またシクロヘキシレン基が有する置換基Rxii及びRxiiiの置換数は、特に限定されないが、耐熱性の点から、1個以上3個以下であることが好ましく、1個以上2個以下であることがより好ましい。即ちq及びrが1以上3以下の整数であることが好ましく、q及びrが1以上2以下の整数であることが好ましい。
【0039】
このような連結基Aの好適な具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
【0041】
Ri~Rvにおけるアルキル基は、特に限定されない。例えば、炭素数1~20の直鎖、分岐状又は環状のアルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数が1~8の直鎖又は分岐のアルキル基であることが挙げられ、炭素数が1~5の直鎖又は分岐のアルキル基であることが、輝度及び耐熱性の点から挙げられ、Ri~Rvにおけるアルキル基がエチル基又はメチル基であることが挙げられる。アルキル基が有してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基等が挙げられ、置換されたアルキル基としては、ベンジル基のようなアラルキル基等が挙げられる。
Ri~Rvにおけるアリール基は、特に限定されない。例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基が有してもよい置換基としては、例えばアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
中でも化学的安定性の点からRi~Rvとしては、各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、フェニル基、又は、RiiとRiii、RivとRvが結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環を形成していることが好ましい。
【0042】
耐熱性の点からは、Rii~Rvのうち少なくとも一つが、置換基を有してもよいシクロアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましい。Rii~Rvのうち少なくとも一つが、シクロアルキル基、又は、アリール基を有することにより、立体障害による分子間相互作用が低減するため、発色部位の熱に対する影響を抑制できるため、耐熱性に優れていると考えられる。
【0043】
耐熱性の点からは、Rii~Rvのうち少なくとも一つが、下記一般式(1b)又は、下記一般式(1c)で表される置換基であることが好ましい。
【0044】
【化9】
(一般式(1b)中、R
xiv、R
xv、及びR
xviは各々独立に水素原子、置換基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルコキシ基を表す。)
【0045】
【化10】
(一般式(1c)中、R
xvii、R
xviii、及びR
xixは各々独立に水素原子、置換基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルコキシ基を表す。)
【0046】
Rxiv、Rxv、Rxvi、Rxvii、Rxviii、及びRxixにおける炭素数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。また、炭素数1以上4以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられ、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。
前記アルキル基及びアルコキシ基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
【0047】
前記一般式(1b)で表される置換基を有する場合、耐熱性の点から、Rxiv、Rxv、及びRxviの少なくとも一つが、置換基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルコキシ基であることが好ましく、Rxiv及びRxvの少なくとも一つが、置換基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0048】
また前記一般式(1c)で表される置換基を有する場合、耐熱性の点から、Rxvii、Rxviii、及びRxixの少なくとも一つが、置換基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルコキシ基であることが好ましく、Rxvii及びRxviiiの少なくとも一つが、置換基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0049】
一般式(1b)で表される置換基、及び、一般式(1c)で表される置換基の好適な具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
【0051】
Rvi及びRviiは各々独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。Rvi及びRviiにおけるアルキル基としては、特に限定されないが、炭素数が1以上8以下の直鎖、又は分岐を有するアルキル基であることが好ましく、炭素数が1以上4以下のアルキル基であることがより好ましい。炭素数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。アルキル基が有してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。
また、Rvi及びRviiにおけるアルコキシ基としては、特に限定されないが、炭素数が1以上8以下の直鎖、又は分岐を有するアルコキシ基であることが好ましく、炭素数が1以上4以下のアルコキシ基であることがより好ましい。炭素数1以上4以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられ、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。アルコキシ基が有してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。
Rvi及びRviiにおけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
Rvi及びRviiの置換数、即ち、f及びgはそれぞれ独立に0以上4以下の整数を表し、中でも0以上2以下であることが好ましく、0以上1以下であることがより好ましい。複数あるf及びgはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、Rvi及びRviiは、トリアリールメタン骨格、又は、キサンテン骨格内の共鳴構造を有する芳香環のいずれの部位に置換されていてもよいが、中でも、-NRiiRiii又は-NRivRvで表されるアミノ基の置換位置を基準にメタ位に置換されていることが好ましい。
【0052】
Ar1における2価の芳香族基は特に限定されない。Ar1における芳香族基は、炭素環からなる芳香族炭化水素基の他、複素環基であってもよい。芳香族炭化水素基における芳香族炭化水素としては、ベンゼン環の他、ナフタレン環、テトラリン環、インデン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の縮合多環芳香族炭化水素;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環式炭化水素が挙げられる。当該鎖状多環式炭化水素においては、ジフェニルエーテル等のように鎖状骨格中にO、S、Nを有していてもよい。一方、複素環基における複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール等の5員複素環;ピラン、ピロン、ピリジン、ピロン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員複素環;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ-ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環が挙げられる。これらの芳香族基は更に置換基として、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、及び、これらで置換されていても良いフェニル基等を有していてもよい。
【0053】
1分子内に複数あるRi~Rvii及びAr1は、同一であっても異なっていてもよい。Ri~Rvii及びAr1の組み合わせにより、所望の色に調整することができる。
【0054】
Aにおける価数aは、カチオンを構成する発色性カチオン部位の数であり、aは2以上の整数である。このレーキ色材においては、カチオンの価数aが2以上であるため、耐熱性に優れており、中でも、カチオンの価数aが3以上であることが好ましい。aの上限は特に限定されないが、製造の容易性の点から、aが4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
【0055】
一般式(A)で表されるカチオンは、耐熱性に優れ、加熱時の色変化が抑制され易い点から、分子量が1200以上であることが好ましく、1300以上であることが好ましい。
【0056】
一般式(1)で表される色材において、アニオン部(Bc-)は、高輝度で耐熱性に優れる点から、c価のポリ酸アニオンであって、2価以上のアニオンである。
【0057】
複数のオキソ酸が縮合したポリ酸アニオンとしては、イソポリ酸アニオン(MmOn)c-であってもヘテロポリ酸アニオン(XlMmOn)c-であってもよい。上記イオン式中、Mはポリ原子、Xはヘテロ原子、mはポリ原子の組成比、nは酸素原子の組成比を表す。ポリ原子Mとしては、例えば、Mo、W、V、Ti、Nb等が挙げられる。またヘテロ原子Xとしては、例えば、Si、P、As、S、Fe、Co等が挙げられる。また、一部にNa+やH+等の対カチオンが含まれていてもよい。
中でも、耐熱性に優れる点から、タングステン(W)及びモリブデン(Mo)より選択される1種以上の元素を有するポリ酸であることが好ましい。
このようなポリ酸としては、例えば、イソポリ酸である、タングステン酸イオン[W10O32]4-、モリブデン酸イオン[Mo6O19]2-や、ヘテロポリ酸である、リンタングステン酸イオン[PW12O40]3-、[P2W18O62]6-、ケイタングステン酸イオン[SiW12O40]4-、リンモリブデン酸イオン[PMo12O40]3-、ケイモリブデン酸イオン[SiMo12O40]4-、リンタングストモリブデン酸イオン[PW12-sMosO40]3-(sは1以上11以下の整数)、[P2W18-tMotO62]6-(tは1以上17以下の整数)、ケイタングストモリブデン酸イオン[SiW12-uMouO40]4-(uは1以上11以下の整数)等が挙げられる。タングステン(W)及びモリブデン(Mo)の少なくとも1種を含むポリ酸としては、耐熱性の点、及び原料入手の容易さの点から、上記の中でもヘテロポリ酸であることが好ましく、更にリン(P)を含むヘテロポリ酸であることがより好ましい。
さらに、リンタングストモリブデン酸イオン[PW10Mo2O40]3-、[PW11Mo1O40]3-、リンタングステン酸イオン[PW12O40]3-、のいずれかであることが耐熱性の点からさらに好ましい。
【0058】
一般式(1)におけるbはカチオンの数を、dは分子会合体中のアニオンの数を示し、b及びdは1以上の整数を表す。bが2以上の場合、分子会合体中に複数あるカチオンは、1種単独であっても、2種以上が組み合わされていてもよい。また、dが2以上の場合、分子会合体中に複数あるアニオンは、1種単独であっても、2種以上が組み合わされていてもよい。
【0059】
一般式(1)におけるeは、0又は1の整数であり、eが0のとき結合は存在しない。e=0はトリアリールメタン骨格を表し、e=1はキサンテン骨格を表す。複数あるeは同一であっても異なっていてもよい。本発明に用いられる一般式(1)で表されるレーキ色材においては、少なくともトリアリールメタン骨格を含むものが好適に用いられる。
なお、一般式(1)で表されるレーキ色材としては、例えば、国際公開第2012/144520号パンフレット、国際公開第2018/003706号パンフレットを参考にして調製することができる。
【0060】
一方、一般式(2)中、RI~RVIは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、RIとRII、RIIIとRIV、RVとRVIが結合して環構造を形成してもよいものである。RI~RVIは各々、前述の一般式(1)のRi~Rvと同様であって良い。
一般式(2)中、RVII及びRVIIIは各々独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表すが、これらも前述の一般式(1)のRvi及びRviiと同様であって良い。
一般式(2)中、Ar2は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表すが、当該Ar2は、前述の一般式(1)のAr1のうち、芳香族複素環基と同様であって良い。
また、一般式(2)中、Em-はm価のポリ酸アニオンを表すが、当該m価のポリ酸アニオンは、前述の一般式(1)のc価のポリ酸アニオンと同様であって良い。
【0061】
一般式(2)中、mは、カチオンの数及びアニオンの数を示し、2以上の整数を表す。一般式(2)中に複数あるカチオンは、1種単独であっても、2種以上が組み合わされていてもよい。また、アニオンについても、1種単独であっても、2種以上が組み合わされていてもよい。
一般式(2)中、jは0又は1であり、jが0のとき結合は存在しない。一般式(2)中のjは、前述の一般式(1)のeと同様であって良い。また、一般式(2)中のk及びlは、前述の一般式(1)のf及びgと同様であって良い。
なお、一般式(2)で表されるレーキ色材としては、例えば、特開2017-16099号公報を参考にして調製することができる。
【0062】
<塩基性処理されたフタロシアニン顔料>
本発明で用いられる塩基性処理されたフタロシアニン顔料は、塩基性化合物に由来する構造を有するフタロシアニン顔料をいう。
塩基性化合物に由来する構造を有するフタロシアニン顔料としては、例えば、塩基性部位を有する色材誘導体等の塩基性化合物を含むフタロシアニン顔料が好適なものとして挙げられる。
【0063】
塩基性処理に用いられるフタロシアニン顔料としては、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と組み合わせて用いられることから、青色フタロシアニン顔料であることが好ましく、比較的輝度に優れる点から、銅フタロシアニン顔料が好ましい。塩基性処理に用いられる銅フタロシアニン顔料としては、粗製銅フタロシアニン顔料であっても良いし、α型、β型、γ型、ε型などの結晶構造を有する銅フタロシアニン顔料であっても良い。塩基性処理に用いられる銅フタロシアニン顔料としては、中でも、分散安定性に優れる点から、ε型の結晶構造を有する銅フタロシアニン顔料、及びβ型の結晶構造を有する銅フタロシアニン顔料よりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0064】
本発明において塩基性処理には、塩基性部位を有する色材誘導体や、塩基性部位を有する無色化合物の誘導体が好適に用いられる。
本発明において、塩基性部位を有するとは、置換基として塩基性基を有する態様、置換基において酸性基と塩基性化合物とが塩形成している態様等が挙げられる。
本発明で色材誘導体又は無色化合物の誘導体が有する塩基性部位としては、例えば、アミノ基、スルホン酸アンモニウム塩、又は、アミノ基を有するスルホンアミド基、アミノ基を有するアミド基、塩基性複素環基等が挙げられる。
本発明で色材誘導体が有する塩基性部位は、色材の水素原子が前記塩基性部位で置換されている態様で含まれていても良いし、色材に連結基を介して前記塩基性部位が置換されている態様で含まれていても良い。色材に連結基を介して前記塩基性部位が置換されている態様としては、例えば、色材に炭素数1~20の炭化水素基や、炭化水素基を有する置換基が置換され、当該炭化水素基の水素原子が前記塩基性部位で置換されている態様が挙げられる。無色化合物の誘導体の塩基性部位の態様も、色材誘導体の塩基性部位の態様と同様であって良い。
【0065】
前記アミノ基としては、-NRaRbで表され、ここでRa及びRbはそれぞれ独立に、水素原子、又は-NRa’Rb’で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基が挙げられ、Ra’及びRb’はそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~30の炭化水素基が挙げられる。
【0066】
前記スルホン酸アンモニウム塩としては、-SO3
-・NHRcRdRe+で表され、ここでRc、Rd、及びReはそれぞれ独立に、水素原子、前記アミノ基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基が挙げられる。
前記アミノ基を有するスルホンアミド基としては、中でも、-SO2NH-(CH2)m-NRfRgで表される基(ここで、Rf、及びRgはそれぞれ独立に、水素原子、前記アミノ基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基、又は、互いに結合して隣接する窒素原子と共に塩基性複素環を形成したものを示し、mは1~15の整数を示す)であることが、色材分散性の点から好ましい。
前記アミノ基を有するアミド基としては、中でも、-CONH-(CH2)m’-NRjRkで表される基(ここで、Rj、及びRkはそれぞれ独立に、水素原子、前記アミノ基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基、又は、互いに結合して隣接する窒素原子と共に塩基性複素環を形成したものを示し、m’は1~15の整数を示す)であることが、色材分散性の点から好ましい。
【0067】
前記Ra、Rb、Ra’、Rb’、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rj、及びRkにおいて、炭素数1~30の炭化水素基としては、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの組み合わせが挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、ベンジル基等が挙げられる。
前記Ra、Rb、Ra’、Rb’、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rj、及びRkはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~25の炭化水素基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基であることがより好ましく、水素原子又は直鎖状或いは分岐状の炭素数1~6のアルキル基であることがより更に好ましい。
前記m及びm’は1~15の整数を示すが、中でも2~8が好ましく、特に3~6が好ましい。
また、Rf、Rg、Rj及びRkにおいて、互いに結合して隣接する窒素原子と共に塩基性複素環を形成した構造は、複素環に更に窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含んでいても良く、例えば、モルホリン、ピペリジン、ピリジン、トリアジン、チアゾール等が挙げられる。
また、塩基性部位としての前記塩基性複素環基としては、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピリジノ基、トリアジノ基等が挙げられる。
【0068】
前記誘導体が有する塩基性部位としては、中でも、酸性分散剤と相互作用しやすい点から、スルホン酸アンモニウム塩、又は、アミノ基を有するスルホンアミド基が好ましく、中でも、前記-SO2NH-(CH2)m-NRfRgで表される基であることが好ましい。
また、前記誘導体が有する塩基性部位は、色材又は無色化合物1分子に対して少なくとも1個有すれば良く、特に限定されないが、色材分散性の点から、1個又は2個有することが好ましい。前記誘導体が有する塩基性部位が色材又は無色化合物に置換されている位置は特に限定されない。
【0069】
塩基性部位を有する色材誘導体に用いられる色材は、公知の色材を適宜選択して用いることができるが、塩基性処理に用いられるフタロシアニン顔料と吸着し易い構造を有することが好ましく、同一又は類似の色素骨格や、相互作用し易い構造を有することが好ましい。また、塩基性処理に用いられるフタロシアニン顔料の色味を損なわない色材が好ましい。
【0070】
塩基性部位を有する色材誘導体としては、中でも青色色材誘導体であることが好ましい。
塩基性部位を有する色材誘導体に用いられる青色色材とは、P/V比((組成物中の色材全質量)/(組成物中の色材以外の固形分全質量)比)=0.2で2.5μmの塗膜を形成し分光透過率スペクトルを測定した場合に、420nm透過率が20%以上且つ520nm透過率が10%以上且つ580nm透過率が10%未満の色材が用いられる。
色材を単体で塗膜化して測色するためには、色材に適当なバインダー成分及び溶剤を配合して塗工液を調製し、透明基板上に塗工して乾燥し、必要に応じて硬化させればよい。バインダー成分としては、測色を行い得る透明な塗膜を形成できる限り、非硬化性の熱可塑性樹脂組成物を用いても良いし、光硬化性(感光性)又は熱硬化性の樹脂組成物を用いても良い。また、後述する本発明の着色樹脂組成物において、色材として青色色材のみ含有する組成物を用いることで、色材として青色色材のみ含有する塗膜を形成し、測色を行うこともできる。具体的には例えば、後述の実施例1の樹脂組成物に用いられた色材以外の固形分を、バインダー成分とすることができる。必要に応じて、色材分散液を調製しても良く、後述の実施例1と同様にして色材分散液と着色樹脂組成物を各々調製し、後述の実施例の光学性能を評価する際の硬化膜と同様にして、硬化膜を作製しても良い。
バインダー成分を含む、測色を行い得る透明な塗膜としては、例えば、膜厚2.0μmで、380nm以上780nm以下における分光透過率スペクトルの透過率が95%以上であることを目安にすることができる。
なお、分光透過率スペクトルは、分光測定装置(例えば、オリンパス製 顕微分光光度計 OSP-SP200)を用いて測定することができる。
塩基性部位を有する色材誘導体に用いられる青色色材としては、フタロシアニン系色材、トリアリールメタン系色材、アンスラキノン系色材、ナフトール系色材、ベンズイミダゾロン系色材等を用いることができるが、色味や耐熱性の点からフタロシアニン系色材を用いることが好ましい。フタロシアニン系色材としては、カラーインデックスで示されるピグメントブルー(PB)15、PB15:1、PB15:2、PB15:3、PB15:4、PB15:5、PB15:6などの銅フタロシアニン、PB16、PB75、PB79などが挙げられる。
中でも、分散性と輝度が向上する点から、塩基性部位を有する色材誘導体に用いられる色材としては、塩基性処理に用いられるフタロシアニン顔料と同じ骨格を有するフタロシアニン系色材を用いることが好ましい。
また、中でも、分散性と輝度が向上する点から塩基性部位を有する色材誘導体に用いられる青色色材としては、銅フタロシアニンを用いることが好ましい。
【0071】
塩基性部位を有する無色化合物の誘導体に用いられる無色化合物は、フタロシアニン顔料に、当該無色化合物の誘導体を用いて塩基性処理しても、塩基性処理前後でフタロシアニン顔料の色が変化しない化合物を目安とすることができる。塩基性処理前後のフタロシアニン顔料の測色は、前記青色色材の場合と同様に行うことができる。具体的には、塩基性処理前後のフタロシアニン顔料を各々用いて、後述の実施例1と同様にして色材分散液と着色樹脂組成物を各々調製し、後述の実施例の光学性能を評価する際の硬化膜と同様にして、硬化膜を各々作製する。後述の実施例に記載の方法により各硬化膜の色度を測定し、塩基性処理前のフタロシアニン顔料を含有する硬化膜の色度(L0、a0、b0)と塩基性処理後のフタロシアニン顔料を含有する硬化膜の色度(L1、a1、b1)の色差ΔEab={(L1-L0)2+(a1-a0)2+(b1-b0)2}1/2が、10未満の場合には色が変化しないとする。
【0072】
塩基性部位を有する無色化合物の誘導体に用いられる無色化合物としては、例えば400nm以下の波長領域に吸収極大をもつ有機化合物が挙げられ、適宜選択して用いることができる。当該無色化合物は、塩基性処理に用いられるフタロシアニン顔料と吸着し易い構造を有することが好ましく、相互作用し易い構造を有することが好ましい。当該無色化合物としては、例えばナフタレン系、トリアジン系等の縮合環化合物や複数の芳香族環が結合している芳香族多環化合物を用いることができる。トリアジン系の芳香族多環化合物としては、例えば、トリアジン環に、フェニルアミノ基等の芳香族炭化水素基を有する置換基が3つ置換された構造が挙げられる。中でも、分散性と輝度が向上する点からトリアジン系の芳香族多環化合物を用いることが好ましい。
【0073】
塩基性部位を有する色材誘導体は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、色材をスルホン化した後に、アンモニアや有機アミンで塩形成させる方法、又は、色材の置換基をスルホンアミド化する方法により製造することができる。
具体的には例えば、濃硫酸または発煙硫酸中に色材を添加し、加熱してスルホン化を行う。次いで、この反応溶液を大量の氷水中へ注入して析出するスルホン化誘導体をフィルタープレス等で濾別、水洗する。得られたスルホン化誘導体の水ペーストを多量の水へ再分散し、塩基性化合物により中和、より具体的にはpHが7になるまでアンモニア又は有機アミン水溶液を添加して、スルホン酸をアンモニア又は有機アミンで造塩する方法が挙げられる。この後、濾別、水洗、乾燥、粉砕の工程を経て、粉末状の塩基性部位を有する色材誘導体を得ることができる。
【0074】
塩基性部位を有する色材誘導体のスルホンアミド化又は有機アミン塩を形成する際に用いられる有機アミンとしては、具体的には例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、第2ブチルアミン、第3ブチルアミン、イソブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、n-プロピルメチルアミン、イソプロピルメチルアミン、1,1,7,7-テトラメチル-1,4,7-トリアザヘプタン、1,1,7,7-テトラエチル-1,4,7-トリアザヘプタン、1,1,7,7-テトラプロピル-1,4,7-トリアザヘプタン、1,1,7,7-テトライソプロピル-1,4,7-トリアザヘプタン、1,1,7,7-テトラブチル-1,4,7-トリアザヘプタン、1,1-ジメチル-1,5-ジアザペンタン、1,1-ジエチル-1,5-ジアザペンタン、1,1-ジイソプロピル-1,5-ジアザペンタン、1,1-ジブチル-1,5-ジアザペンタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塩基性部位を有する無色化合物の誘導体も、塩基性部位を有する色材誘導体と同様に、従来公知の方法により製造することができる。
【0075】
塩基性化合物に由来する構造を有するフタロシアニン顔料として、例えば、塩基性部位を有する色材誘導体を含むフタロシアニン顔料を調製する方法としては、例えば、塩基性部位を有する色材誘導体と、フタロシアニン顔料とを乾式粉砕後、更に塩基性部位を有する色材誘導体を混合する方法が挙げられる。この場合乾式粉砕機としてはボールミル、振動ミル、アトライター等が使用でき、粉砕温度は20~130℃で自由に設定できる。
また、塩基性部位を有する色材誘導体を含むフタロシアニン顔料を調製する方法としては、塩基性部位を有する色材誘導体と、フタロシアニン顔料と、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸アンモニウム等の水溶性の無機塩と、グリコール系有機溶剤等の水溶性の有機溶剤を混合し、ソルベントソルトミリング法でニーダータイプの研磨機により混練りする方法等が挙げられる。
色材分散前に予め、塩基性処理されたフタロシアニン顔料を調製乃至準備し、色材を分散することにより、色材分散性を向上することができる。
【0076】
塩基性部位を有する色材誘導体又は無色化合物の誘導体を含むフタロシアニン顔料において、塩基性部位を有する色材誘導体又は無色化合物の誘導体の含有量は、分散性及び保存安定性の点から、フタロシアニン顔料100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが更に好ましく、8質量部以上であることがより更に好ましい。一方、塩基性部位を有する色材誘導体又は無色化合物の誘導体の含有量は、輝度に優れる点から、フタロシアニン顔料100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることが更に好ましい。
【0077】
塩基性処理されたフタロシアニン顔料であることは、例えば、質量分析、元素分析、表面分析、電位差滴定、及びこれらの組み合わせを用いて適宜分析することができる。より具体的には例えば、塩基性処理されたフタロシアニン顔料を、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤やN-メチルピロリドン等の溶剤で洗浄した後に、洗浄後のフタロシアニン顔料を質量分析し、塩基性部位を有する色材誘導体等所望の塩基性化合物に由来する構造由来のピークが検出されることにより確認できる。
【0078】
<他の色材>
本発明に用いられる色材は、必須成分として前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含むが、本発明の効果を損なわない範囲で、色調を調整するために、更に他の色材を組み合わせて用いてもよい。
他の色材としては公知の顔料、染料、レーキ色材等を、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0079】
他の色材としては、中でも他の青色色材、紫色色材、赤色色材が好ましく用いられるがこれらに限定されるものではない。
他の青色色材として、前記フタロシアニン顔料とは異なる公知の有機青色顔料、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材とは異なるトリアリールメタン系レーキ色材等。
紫色色材として、C.I.ピグメントバイオレット1、14、15、19、23、29、32、33、36、37、38等の公知の有機紫色顔料。
赤色乃至赤紫色色材として、キサンテン染料及び前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材とは異なるキサンテン系染料のレーキ色材等。
【0080】
<色材の含有割合>
本発明の色材分散液において、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料との各含有割合、更にその他の色材を用いる場合の含有割合は、後述の着色樹脂組成物で用いられる含有割合とすることが好ましい。具体的には以下の含有割合で用いられることが好ましい。但し、色材分散液は、適宜2種以上混合して用いて、着色樹脂組成物を製造することができるため、後述の着色樹脂組成物で用いられる含有割合としなくても用いることもできる。
【0081】
本発明の色材分散液において、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材の含有量は、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材及び前記フタロシアニン顔料の合計含有量に対して20質量%以上85質量%以下であることが、カラーフィルタ製造工程における高温加熱工程(ポストベーク)後の着色層の色度変化を抑制し、輝度を向上させながら、所望の線幅でパターンを形成可能な点から好ましい。
本発明者らは、フタロシアニン顔料のみを用いて青色着色層を形成しようとすると、設計通りの着色層が形成されない場合があるとの知見を得た。これは、青色フタロシアニン顔料は、光開始剤の吸収波長(ラジカル発生波長)である300nm前後を吸収してしまうため、光重合反応が十分に進まず、露光時に着色層内部の硬化不足が発生していると推定される。それに対して、フタロシアニン顔料に、前記特定のレーキ色材を、前記特定の割合で組み合わせて用いることにより、前記特定のレーキ色材が300nm前後の波長を吸収し難いことから、ネガ型感光性バインダー成分を組み合わせて青色着色層用の感光性着色樹脂組成物としても、露光時に着色層内部の硬化不足が生じ難く、所望の線幅でパターンを形成し易くなると推定される。
更に、フタロシアニン顔料に、前記特定の一般式(1)で表される色材を、特定の割合で組み合わせて用いることにより、前記特定の一般式(1)で表される色材による色度変化を抑制しつつ、透過率を向上でき、カラーフィルタ製造工程における高温加熱(ポストベーク)後に最終的に得られる着色層の輝度を向上させることが出来ると推定される。
【0082】
中でも、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材の含有量が、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材及び前記フタロシアニン顔料の合計含有量に対して、輝度と所望の線幅でのパターニングの容易性の点から、30質量%以上であることが好ましく、更に40質量%以上であることが好ましく、一方で、耐熱性の点から、80質量%以下であることが好ましく、更に75質量%以下であることが好ましく、基板密着性がより向上する点から、また感光性樹脂組成物にした場合の現像性が向上する点から、55質量%以下であることがより更に好ましい。
【0083】
また、本発明の色材分散液においては、本発明の効果が損なわれない範囲で、色材中に、フタロシアニン顔料及び前記一般式(1)で表される色材以外の他の色材を更に含んでいても良いが、フタロシアニン顔料及び前記一般式(1)で表される色材の合計含有量は、色材全量に対して、70質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、90質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがより更に好ましい。
【0084】
本発明に用いられる色材の平均一次粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる色材の種類によっても異なるが、10nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましく、15nm以上60nm以下であることがより好ましい。色材の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明の色材分散液を用いて製造されたカラーフィルタを備えた表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
【0085】
また、色材分散液中の色材の平均分散粒径は、用いる色材の種類によっても異なるが、10nm以上150nmの範囲内であることが好ましく、15nm以上60nm以下の範囲内であることがより好ましい。
色材分散液中の色材の平均分散粒径は、少なくとも溶剤を含有する分散媒体中に分散している色材粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、色材分散液に用いられている溶剤で、色材分散液をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA-EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分布粒径は、体積平均粒径である。
【0086】
本発明の色材分散液において、色材の含有量は、特に限定されない。色材の含有量は、分散性及び分散安定性の点から、色材分散液中の固形分全量に対して、5質量%以上80質量%以下、より好ましくは8質量%以上70質量%以下の割合で配合することが好ましい。
特に色材濃度が高い塗膜乃至着色層を形成する場合には、色材分散液中の固形分全量に対して、30質量%以上80質量%以下、より好ましくは40質量%以上75質量%以下の割合で配合することが好ましい。
尚、本発明において固形分は、上述した溶剤以外のもの全てであり、溶剤中に溶解しているモノマー等も含まれる。
【0087】
[酸性分散剤]
本発明に用いられる酸性分散剤は、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む。
酸性分散剤として、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を用いると、前記レーキ色材の分散性と耐熱性を向上し、加熱後のレーキ色材の色度変化を抑制可能であり、且つ、前記フタロシアニン顔料の分散性及び保存安定性を向上し、基板密着性と塗膜均一性が向上した着色層を形成可能である。
前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体はエチレン性不飽和モノマー重合体であるため、ポリエーテル系やポリエステル系重合体と比較して骨格の耐熱性が高く、且つ、当該重合体中に複数存在する酸性リン化合物基(-P(=O)(-R2)(OH))及びその塩(-P(=O)(-R2)(O-X+))が、微粒子化された色材の表面に対する吸着力が強いものと推定される。また、色材表面が酸性リン化合物基及びその塩の少なくとも一種で被覆された状態になると、パーオキシラジカルなどの活性酸素によるレーキ色材の色素骨格への攻撃(水素引き抜きや置換反応など)が抑制され、レーキ色材の劣化(酸化劣化)が抑制されると推定される。
【0088】
<前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体>
一般式(I)において、L1は、直接結合又は2価の連結基である。ここでL1が直接結合とは、リン原子が、連結基を介することなく主鎖骨格の炭素原子に直接結合していることを意味する。
L1における2価の連結基としては、主鎖骨格の炭素原子と、リン原子とを連結可能であれば、特に制限はない。L1における2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、水酸基を有する、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、アリーレン基、-CONH-基、-COO-基、-NHCOO-基、エーテル基(-O-基)、チオエーテル基(-S-基)、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。なお、本発明において、2価の連結基の結合の向きは任意である。すなわち、2価の連結基に-CONH-が含まれる場合、-COが主鎖の炭素原子側で-NHが側鎖のリン原子側であっても良いし、反対に、-NHが主鎖の炭素原子側で-COが側鎖のリン原子側であっても良い。
【0089】
中でも、分散性の点から、一般式(I)におけるL1は、-CONH-基、又は、-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましい。
例えば、L1が-COO-基を含む2価の連結基である場合、L1が、-COO-L1’-基(ここで、L1’は、水酸基を有していても良い炭素数が1個以上8個以下のアルキレン基、-[CH(RL11)-CH(RL12)-O]x-、又は-[(CH2)y-O]z-(CH2)y-O-、-[CH(RL13)]w-O-、であり、RL11、RL12及びRL13は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、又は水酸基である。xは1以上18以下の整数、yは1以上5以下の整数、zは1以上18以下の整数、wは1以上18以下の整数を表す。)であることが好ましい。
【0090】
L1’における炭素数が1個以上8個以下のアルキレン基は、直鎖状、分岐状、又は環状のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基、各種オクチレン基などであり、一部の水素が水酸基に置換されていても良い。
xは1以上18以下の整数、好ましくは1以上4以下の整数、より好ましくは1以上2以下の整数であり、yは1以上5以下の整数、好ましくは1以上4以下の整数、より好ましくは2又は3である。zは1以上18以下の整数、好ましくは1以上4以下の整数、より好ましくは1以上2以下の整数である。wは1以上18以下の整数、好ましくは1以上4以下の整数である。
【0091】
一般式(I)におけるL1の好適な具体例としては、例えば、-COO-CH2CH(OH)CH2-O-、-COO-CH2CH2-O-CH2CH(OH)CH2-O-、-COO-CH2C(CH2CH3)(CH2OH)CH2-O-等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
R2における炭化水素基としては、例えば、炭素数が1個以上18個以下のアルキル基、炭素数が2個以上18個以下のアルケニル基、アラルキル基、及びアリール基などが挙げられる。
前記炭素数が1個以上18個以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。
前記炭素数が2個以上18個以下のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基などを挙げることができる。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、得られたポリマーの反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アリール基の炭素数は、6個以上24個以下が好ましく、更に6個以上12個以下が好ましい。
また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アラルキル基の炭素数は、7個以上20個以下が好ましく、更に7個以上14個以下が好ましい。
前記アルキル基やアルケニル基は置換基を有していても良く、当該置換基としては、F、Cl、Brなどのハロゲン原子、ニトロ基等が挙げられる。
また、前記アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数が1個以上4個以下の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、前記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
前記R2において、x1は前記xと、y1は前記yと、z1は前記zと同様である。
R5~R12における炭化水素基としては、例えば、前記R2における炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0093】
R7、R8、R9、R10、R11及びR12における、エーテル結合及びエステル結合から選択される1種以上を有する炭化水素基とは、-R’-O-R”、-R’-(C=O)-O-R”、又は-R’-O-(C=O)-R”(R’及びR”は、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基)で表される基である。1つの基の中に、エーテル結合及びエステル結合を2つ以上有していてもよい。炭化水素基が1価の場合としては、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が挙げられ、炭化水素基が2価の場合としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせの基が挙げられる。
【0094】
R7とR9が結合して環構造を形成する場合、環構造を形成する炭素数は、5個以上8個以下であることが好ましく、6であること、即ち6員環であることがより好ましく、シクロヘキサン環を形成することが好ましい。
置換基R14における、炭化水素基、又は、エーテル結合及びエステル結合から選択される1種以上を有する炭化水素基は、前記R7、R8、R9、R10、R11及びR12におけるものと同様のものとすることができる。
【0095】
分散される粒子の分散性及び分散安定性に優れる点から、前記R2が、水酸基、炭化水素基、-[CH(R3)-CH(R4)-O]x1-R5、-[(CH2)y1-O]z1-R5、又は-O-R6で示される1価の基であることが好ましく、水酸基、メチル基、エチル基、ビニル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、-[CH(R3)-CH(R4)-O]x1-R5、-[(CH2)y1-O]z1-R5、又は-O-R6で示される1価の基、R3及びR4がそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R5が-CO-CH=CH2又は-CO-C(CH3)=CH2であるものがより好ましく、中でも、R2が、置換基を有していてもよいアリール基、ビニル基、メチル基及び水酸基がより好ましい。
【0096】
また、耐アルカリ性が向上する点から、R2は、炭化水素基、-[CH(R3)-CH(R4)-O]x1-R5、又は、-[(CH2)y1-O]z1-R5で示される1価の基であることが好ましい。リン原子に炭素原子が直接結合した構造を有する場合には、加水分解され難いため耐アルカリ性に優れた樹脂層を形成可能と推定される。中でも、R2は、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、-[CH(R3)-CH(R4)-O]x1-R5、又は、-[(CH2)y1-O]z1-R5で示される1価の基、R3及びR4がそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R5が-CO-CH=CH2又は-CO-C(CH3)=CH2であるものが耐アルカリ性に優れ、且つ、分散される粒子の分散性及び分散安定性に優れる点から好ましい。中でも、R2は、置換基を有していてもよいアリール基が分散性の点からより好ましい。
【0097】
また、一般式(I)において、Xは、水素原子又は有機カチオンを表す。有機カチオンとは、カチオン部分に炭素原子を含むものをいう。有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アミニジウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン及びトリアルキルアンモニウムカチオン等のアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン等のスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等のホスホニウムカチオン等が挙げられる。中でも、プロトン化された含窒素有機カチオンであることが、分散性とアルカリ現像性の点から好ましい。
中でも、有機カチオンがエチレン性不飽和二重結合を有する場合には、硬化性を付与することができる点から好ましい。
【0098】
一般式(I)で表される構成単位は、重合体中に、1種類単独で含まれていても良く、2種以上含まれていても良い。
【0099】
重合体において、一般式(I)で表される構成単位のうち、Xが水素原子の構成単位と、Xが有機カチオンの構成単位の両方の構成単位を含んでいてもよい。当該両方の構成単位を含む場合、良好な分散性、及び分散安定性が発揮されるのであればよく、特に制限はないが、Xが有機カチオンの構成単位数の割合は、一般式(I)で表される構成単位の合計の構成単位数に対して0以上50モル%以下であることが好ましい。
【0100】
一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体の合成方法は特に限定されない。一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体は、例えば、特開2017-2191号公報を参照して合成することができる。一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体は、エポキシ基及び環状エーテル基の少なくとも一方を側鎖に有する重合体と、酸性リン化合物との反応生成物であって、酸性リン化合物基の少なくとも一部が塩を形成していてもよい重合体であることが好ましい。
【0101】
本発明の実施形態において一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体は、分散性の点から更に溶剤親和性部位を有することが好ましい。このような重合体としては、中でも、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種と、下記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体であるか、又は、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種と、下記一般式(III)で表される構成単位とを有するブロック共重合体であることが、分散性、及び保存安定性に優れ、長期保管後であっても高コントラストな塗膜を形成可能な点から好ましい。
【0102】
【化12】
(一般式(II)中、L
2は、直接結合又は2価の連結基、R
21は、水素原子又はメチル基、Polymerは、下記一般式(IV)で表される構成単位を有するポリマー鎖を表す。
一般式(III)中、R
22は、水素原子又はメチル基、R
23は、炭化水素基、-[CH(R
24)-CH(R
25)-O]
x2-R
26、-[(CH
2)
y2-O]
z2-R
26、-[CO-(CH
2)
y2-O]
z2-R
26、-CO-O-R
26’又は-O-CO-R
26”で示される1価の基、R
24及びR
25は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、R
26は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH
2CHO又は-CH
2COOR
27で示される1価の基であり、R
26’は、炭化水素基、-[CH(R
24)-CH(R
25)-O]
x2’-R
26、-[(CH
2)
y2’-O]
z2’-R
26、-[CO-(CH
2)
y2’-O]
z2’-R
26で示される1価の基であり、R
26”は炭素数が1個以上18個以下のアルキル基、R
27は水素原子又は炭素数が1個以上5個以下のアルキル基である。前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
x2及びx2’は1以上18以下の整数、y2及びy2’は1以上5以下の整数、z2及びz2’は1以上18以下の整数を示す。)
【0103】
【化13】
(一般式(IV)中、R
31は水素原子又はメチル基であり、R
32は炭化水素基、-[CH(R
33)-CH(R
34)-O]
x3-R
35、-[(CH
2)
y3-O]
z3-R
35、-[CO-(CH
2)
y3-O]
z3-R
35、-CO-O-R
36又は-O-CO-R
37で示される1価の基、R
33及びR
34は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、R
35は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH
2CHO又は-CH
2COOR
38で示される1価の基、R
36は、炭化水素基、-[CH(R
33)-CH(R
34)-O]
x4-R
35、-[(CH
2)
y4-O]
z4-R
35、-[CO-(CH
2)
y4-O]
z4-R
35で示される1価の基、R
37は炭素数が1個以上18個以下のアルキル基、R
38は水素原子又は炭素数が1個以上5個以下のアルキル基であり、前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
nは5以上200以下の整数を示す。x3及びx4は1以上18以下の整数、y3及びy4は1以上5以下の整数、z3及びz4は1以上18以下の整数を示す。)
【0104】
(グラフト共重合体)
前記一般式(II)において、L2は、直接結合又は2価の連結基である。L2における2価の連結基としては、エチレン性不飽和二重結合由来の炭素原子とポリマー鎖を連結可能であれば、特に制限はない。L2における2価の連結基としては、例えば、前記L1における2価の連結基と同様のものが挙げられる。
【0105】
前記一般式(II)において、Polymerは、前記一般式(IV)で表される構成単位を有するポリマー鎖を表す。
式(IV)中、R32における炭化水素基としては、炭素数が1個以上18個以下のアルキル基、炭素数が2個以上18個以下のアルケニル基、アラルキル基、又はアリール基であることが好ましい。これらは、例えば、前記のR2と同様のものが挙げられる。
【0106】
R35は、水素原子、あるいは炭素数が1個以上18個以下のアルキル基、アラルキル基、アリール基、-CHO、-CH2CHO又は-CH2COOR38で示される1価の基が好ましく、R36は、炭素数が1個以上18個以下のアルキル基、アラルキル基、アリール基、-[CH(R33)-CH(R34)-O]x4-R35、-[(CH2)y4-O]z4-R35、-[CO-(CH2)y4-O]z4-R35で示される1価の基が好ましい。R37は、炭素数が1個以上18個以下のアルキル基であり、R38は水素原子又は炭素数が1個以上5個以下のアルキル基を示す。
前記R35及びR36のうちの炭素数が1個以上18個以下のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記のR2と同様のものが挙げられる。
前記R37及びR38のうちのアルキル基は、前記のR2と同様のものが挙げられる。
前記R35、R36、R37及びR38が、芳香環を有する基である場合、当該芳香環はさらに置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば炭素数が1個以上5個以下の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、F、Cl、Br等のハロゲン原子などが挙げられる。
なお、前記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
前記R32及びR36において、x3及びx4は前記xと、y3及びy4は前記yと、z3及びz4は前記zと同様である。
【0107】
さらに、前記R32、R35、R36、R37及びR38は、前記グラフト共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、更に、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基によって置換されたものとしてもよい。また、これらの置換基を有するグラフト共重合体を合成した後に、当該置換基と反応する官能基と重合性基とを有する化合物を反応させて、重合性基を付加したものとしてもよい。例えば、カルボキシル基を有するグラフト共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させたり、イソシアネート基を有するグラフト共重合体にヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたりして、重合性基を付加することができる。
【0108】
一般式(IV)で表される構成単位に含まれるポリマー鎖は、前記した構成単位の中でもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルシクロヘキサンなど由来の構成単位を有するものが好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではない。
【0109】
本発明の実施形態において、前記R32及びR36としては、中でも、後述する有機溶剤との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、色材分散液に使用する有機溶剤に合わせて適宜選択されれば良い。具体的には、例えば前記有機溶剤が、色材分散液の有機溶剤として一般的に使用されているエーテルアルコールアセテート系、エーテル系、エステル系などの有機溶剤を用いる場合には、メチル基、エチル基、イソブチル基、n-ブチル基、2-エチルヘキシル基、2-エトキシエチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。
ここで、前記R32及びR36をこのように設定する理由は、前記R32及びR36を含む構成単位が、前記有機溶剤に対して溶解性を有し、前記モノマーの酸性リン化合物基及びその塩の部位が色材等の粒子に対して高い吸着性を有するものであることにより、色材等の粒子の分散性、及び安定性を特に優れたものとすることができるからである。
【0110】
Polymerにおけるポリマー鎖の質量平均分子量Mwは、500以上15000以下の範囲内であることが好ましく、1000以上8000以下の範囲内であることがより好ましい。前記範囲であることにより、分散剤としての十分な立体反発効果を保持できるとともに、立体効果による色材等の粒子の分散に要する時間の増大を抑制することもできる。
【0111】
また、Polymerにおけるポリマー鎖は、目安として、組み合わせて用いられる有機溶剤に対して、23℃における溶解度が50(g/100g溶剤)以上であることが好ましい。
【0112】
前記ポリマー鎖は、単独重合体でもよく、共重合体であってもよい。また、一般式(II)で表される構成単位に含まれるポリマー鎖は、グラフト共重合体において、1種単独でも良く、2種以上混合していても良い。
【0113】
前記グラフト共重合体の全構成単位に対して、前記一般式(I)で表される構成単位は、その合計が3質量%以上80質量%以下の割合で含まれていることが好ましく、10質量%以上70質量%以下がより好ましく、20質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。グラフト共重合体中の一般式(I)で表される構成単位の合計含有量が前記範囲内にあれば、グラフト共重合体中の粒子との親和性部位の割合が適切となり、かつ有機溶剤に対する溶解性の低下を抑制できるので、色材等の粒子に対する吸着性が良好となり、優れた分散性、及び分散安定性が得られる。また、前記グラフト共重合体の酸性リン化合物基が色材周辺に安定的に局在化することができるため、耐熱性やコントラストに優れたカラーフィルタが得られる。
一方、前記グラフト共重合体の全構成単位に対して、前記一般式(II)で表される構成単位は、20質量%以上97質量%以下の割合で含まれていることが好ましく、25質量%以上95質量%以下がより好ましく、40質量%以上90質量%以下がさらに好ましい。
なお、前記構成単位の含有割合は、一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種、及び一般式(II)で表される構成単位を有するグラフト共重合体を合成する際の仕込み量から算出される。
【0114】
また、前記グラフト共重合体の質量平均分子量Mwは、1000以上500000以下の範囲内であることが好ましく、3000以上400000以下の範囲内であることがより好ましく、5000以上300000以下の範囲内であることがさらに好ましい。前記範囲であることにより、色材等の粒子を均一に分散させることができる。
なお、本発明において質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー製のHLC-8220GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw:8×105(F-80)、Mw:4×105(F-40)、Mw:2×105(F-20)、Mw:1×105(F-10)、Mw:4×104(F-4)、Mw:2×104(F-2)、Mw:5×103(A-5000)、Mw:2.5×103(A-2500)、Mw:1×103(A-1000)、Mw:5×102(A-500)(以上、東ソー製)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー製)として行われたものである。
【0115】
本発明の実施形態に用いられる前記グラフト共重合体は、前記一般式(I)で表される構成単位及び前記一般式(II)で表される構成単位以外に、更に他の構成単位を有していても良い。前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも一種を誘導するエチレン不飽和モノマー等と共重合可能な、エチレン不飽和モノマーを適宜選択して共重合し、他の構成単位を導入することができる。
【0116】
(ブロック共重合体)
一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも一種を含むブロック部中、一般式(I)で表される構成単位は、合計で、3個以上含まれることが好ましい。中でも、分散性を良好なものとし、耐熱性を向上する点から、3個以上200個以下含むことが好ましく、3個以上50個以下含むことがより好ましく、更に3個以上30個以下含むことがより好ましい。
一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも一種は、色材親和性部位として機能すれば良く、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。2種以上の構成単位を含む場合には、一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも一種を含むブロック部内は2種以上の構成単位がランダムに配列していてもよい。
【0117】
前記ブロック共重合体中、一般式(I)で表される構成単位の合計の含有割合は、前記ブロック共重合体の全構成単位に対して、5質量%以上80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。
前記範囲内にあれば、ブロック共重合体中の粒子との親和性部位の割合が適切となり、かつ有機溶剤に対する溶解性の低下を抑制できるので、色材等の粒子に対する吸着性が良好となり、優れた分散性、及び分散安定性が得られる。また、前記ブロック共重合体の酸性リン化合物基が色材周辺に安定的に局在化することができるため、耐熱性やコントラストに優れたカラーフィルタが得られる。
なお、前記構成単位の含有割合は、前記ブロック共重合体を合成する際の仕込み量から算出される。
【0118】
前記ブロック共重合体は、前記一般式(III)で表される構成単位を含むブロック部を有することにより、溶剤親和性を良好にし、色材の分散性及び分散安定性が良好で、且つ耐熱性も良好で、更に耐NMP性に優れたものとなる。
【0119】
一般式(III)において、R23は、炭化水素基、-[CH(R24)-CH(R25)-O]x2-R26、-[(CH2)y2-O]z2-R26、-[CO-(CH2)y2-O]z2-R26、-CO-O-R26’又は-O-CO-R26”で示される1価の基である。
R23における炭化水素基としては、前記R2で示したものと同様のものとすることができる。
【0120】
また、前記R26は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH2CHO又は-CH2COOR27で示される1価の基であり、R12’は、炭化水素基、-[CH(R24)-CH(R25)-O]x2’-R26、-[(CH2)y2’-O]z2’-R26、-[CO-(CH2)y2’-O]z2’-R26で示される1価の基であり、R26”は炭素数が1個以上18個以下のアルキル基、R27は水素原子又は炭素数が1個以上5個以下のアルキル基であり、前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
前記R26における炭化水素基は、前記R2で示したものと同様のものとすることができる。
前記R23及びR26’において、x2及びx2’は前記xと、y2及びy2’は前記yと、z2及びz2’は前記zと同様である。
また、前記一般式(III)で表される構成単位中のR23は、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0121】
前記R23及びR26’としては、中でも、後述する溶剤との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、例えば、前記R32及びR36と同様のものが挙げられる。
また、前記R23、R26、R26’、R26’’及びR27は、前記ブロック共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基によって置換されたものとしてもよく、また、前記ブロック共重合体の合成後に、前記置換基を有する化合物と反応させて、前記置換基を付加させてもよい。また、これらの置換基を有するブロック共重合体を合成した後に、当該置換基と反応する官能基と重合性基とを有する化合物を反応させて、重合性基を付加したものとしてもよい。例えば、グリシジル基を有するブロック共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させたり、イソシアネート基を有するブロック共重合体にヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたりして、重合性基を付加することができる。
【0122】
一般式(III)で表される構成単位を含むブロック部を構成する構成単位の数は特に限定されないが、溶剤親和性部位と色材親和性部位が効果的に作用し、色材分散液の分散性を向上する点から、10以上200以下であることが好ましく、20以上100以下であることがより好ましく、更に30以上80以下であることがより好ましい。
【0123】
前記ブロック共重合体中、一般式(III)で表される構成単位の含有割合は、前記ブロック共重合体の全構成単位に対して、30質量%以上95質量%以下であることが好ましく、40質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
なお、前記構成単位の含有割合は、前記ブロック共重合体を合成する際の仕込み量から算出される。
【0124】
一般式(III)で表される構成単位を含むブロック部は、溶剤親和性部位として機能するように選択されれば良く、一般式(III)で表される構成単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。本発明の実施形態においては、一般式(III)で表される構成単位が2種以上の構成単位を含む場合に、前記一般式(III)で表される構成単位を含むブロック部内は2種以上の構成単位がランダムに配列していてもよい。
【0125】
分散剤として用いられるブロック共重合体において、一般式(I)で表される構成単位及び一般式(I’)で表される構成単位から選択される少なくとも一種を含むブロック部の構成単位のユニット数mと、一般式(III)で表される構成単位を含むブロック部の構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.01以上1以下の範囲内であることが好ましく、0.1以上0.7以下の範囲内であることが、色材の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0126】
前記ブロック共重合体の結合順としては、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも一種を含むブロック部及び一般式(III)で表される構成単位を含むブロック部を有し、色材を安定に分散することができるものであればよく、特に限定されないが、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも一種を含むブロック部が前記ブロック共重合体の一端のみに結合したものであることが、色材との相互作用に優れ、分散剤同士の凝集を効果的に抑えることができる点から好ましい。
【0127】
前記ブロック共重合体の質量平均分子量は、特に限定されないが、分散性を良好なものとし、耐熱性に優れる点から、2500以上500000以下であることが好ましく、3000以上400000以下であることがより好ましく、更に6000以上300000以下であることがより好ましい。
【0128】
前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体の酸価は、前記色材の分散性及び保存安定性の点から、20mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましく、40mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。一方で、現像性に優れる点から、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体の酸価は150mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
なお、本発明において酸価は、試料1g中に含まれる酸成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をいい、JIS K 0070:1992に従って測定することができる。
【0129】
<その他の酸性分散剤>
本発明の色材分散液において、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体とは異なる、その他の酸性分散剤が、更に含まれていても良い。
その他の酸性分散剤としては、酸性基を有する分散剤が挙げられる。ここで酸性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、若しくはリン酸基等が挙げられるが、その他の酸性分散剤の分散剤に含まれる酸性基としては、中でもカルボキシ基であることが、分散性に優れる点から好ましい。
【0130】
その他の酸性分散剤の酸価は、分散性に優れる点から、40mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることがより好ましく、70mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。一方で、現像残渣抑制の点から、その他の酸性分散剤の酸価は200mgKOH/g以下であることが好ましく、190mgKOH/g以下であることがより好ましく、180mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0131】
本発明において、その他の酸性分散剤としては、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体と組み合わせて用いることにより、現像残渣の抑制性が向上する点から、カルボキシ基を有する高分子分散剤であることが好ましく、中でも、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体と組み合わせて用いることにより、現像残渣の抑制性が向上し、且つ、塗膜の均一性がより良好になる点から、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含むAブロックと(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むBブロックとを含むブロック共重合体を、更に含むことが好ましい。
【0132】
(カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含むAブロックと(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むBブロックとを含むブロック共重合体)
以下、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含むAブロックと(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むBブロックとを含むブロック共重合体を、単に、「カルボキシ基含有ブロック共重合体」という場合がある。
{Aブロック}
Aブロックは、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含むポリマーブロックである。
Aブロックに用いられるカルボキシ基含有エチレン不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー、ビニル安息香酸等のカルボキシ基を有するビニルモノマー等が挙げられる。
なお、エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位とは、エチレン性不飽和モノマーのラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合が炭素-炭素単結合になった構成単位をいう。
【0133】
Aブロックにおいて2種以上の構成単位が含まれる場合は、各構成単位はAブロック内において、ランダム共重合、ブロック共重合等の何れの態様で含まれていてもよく、均一性の観点からランダム共重合の態様で含有されていることが好ましい。
【0134】
Aブロックは、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位が、Aブロックの全構成単位に対して40質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位のみから構成されているポリマーブロックであることがより更に好ましい。
【0135】
Aブロックは、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位のみから構成されていてもよいし、BブロックよりもAブロックの酸性度が強くなる範囲において、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとは異なるエチレン性不飽和モノマーに由来する構成単位が含まれていてもよい。Aブロックにカルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとは異なるエチレン性不飽和モノマーに由来する構成単位を含む場合は、Aブロックの全構成単位に対して、60質量%以下にすることが好ましく、30質量%以下にすることがより好ましい。前記カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとは異なるエチレン性不飽和モノマーとしては、後述するBブロックに用いられる構成単位が挙げられる。
【0136】
Aブロックの含有量は、分散性及び分散安定性の点から、ブロック共重合体の全構成単位に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが好ましく、一方で、95質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0137】
{Bブロック}
Bブロックは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むポリマーブロックである。
Bブロックに用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、前記一般式(IV)で表される構成単位に含まれるポリマー鎖に用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと同様であって良く、1種又は2種以上混合して使用される。
Bブロックには、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位の他に、他のエチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含んでいても良い。他のエチレン性不飽和モノマー由来の構成単位としては、前記一般式(III)で表される構成単位のうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位とは異なる構成単位が挙げられる。
【0138】
Bブロックにおいて2種以上の構成単位が含まれる場合は、各構成単位はBブロック内において、ランダム共重合、ブロック共重合等の何れの態様で含まれていてもよく、均一性の観点からランダム共重合の態様で含有されていることが好ましい。例えば、Bブロックが、b1ブロックからなる構成単位とb2ブロックからなる構成単位との共重合体により形成されていてもよい。
【0139】
Bブロックは、酸性基を有するエチレン性不飽和モノマー由来の構成単位が、Bブロックの全構成単位に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。本発明において、Bブロックは、酸性基を有するエチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含まないポリマーブロックであることがより更に好ましい。
【0140】
前記カルボキシ基含有ブロック共重合体は、ABブロック共重合体であっても良いし、BABブロック共重合体であっても良い。ブロック共重合体がBABブロック共重合体である場合の2つのBブロックの互いの含有比率は、分散性の点から、質量比で(50:50)~(70:30)の範囲内で調整することが好ましい。
【0141】
前記カルボキシ基含有ブロック共重合体の酸価は、分散性の点から、30mgKOH/g以上250mgKOH/g以下の範囲内であることが好ましく、ブロック共重合体の酸価がこの範囲になるように、Aブロックにカルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位が含まれることが好ましい。酸価は50mgKOH/g以上であることが好ましく、70mgKOH/g以上であることがより好ましい。酸価は200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0142】
前記カルボキシ基含有ブロック共重合体の質量平均分子量(Mw)は、分散性の点から、5,000以上100,000以下であることが好ましい。Mwは8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましい。Mwは80,000以下であることがより好ましく、70,000以下であることがさらに好ましい。
【0143】
前記カルボキシ基含有ブロック共重合体の分子量分布は、2未満であることが好ましく、1.5未満であることがより好ましく、1.3未満であることがさらに好ましい。なお、本発明において、分子量分布とは(質量平均分子量(Mw))/(数平均分子量(Mn))によって求められるものである。分子量分布が大きいほど、設計したポリマーの分子量に比べて、分子量の小さいものや、分子量の大きいものが含まれることになり、色材の分散性を悪くする傾向があることから、分子量分布が小さい方が好ましい。
【0144】
前記カルボキシ基含有ブロック共重合体の製造方法としては、従来公知のブロック共重合体の製造方法を適宜選択して用いることができる。均一な組成のポリマーが製造しやすい点から、リビング重合法を用いることが好ましく、リビング重合法としては、有機酸触媒とシリル系開始剤を用いる方法(GTP法)、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP法)、硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法(RAFT法)、有機テルル化合物を用いる方法(TERP法)等の方法が挙げられる。
【0145】
<酸性分散剤の含有割合>
酸性分散剤として、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体と、当該重合体は異なるその他の酸性分散剤とを組み合わせて用いる場合、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体と、当該重合体とは異なるその他の酸性分散剤との含有割合は、適宜選択して用いることができる。中でも、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体と、当該重合体とは異なるその他の酸性分散剤との質量比は、色材中に含まれる前記一般式(1)で表される色材及び下記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料との質量比と同様になるように用いることが、分散性と現像残渣抑制の点から好ましい。
すなわち、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材の含有量が、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材及び前記フタロシアニン顔料の合計含有量に対して20質量%以上85質量%以下である場合、酸性分散剤における前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体の含有量は、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体及び当該重合体とは異なるその他の酸性分散剤の合計含有量に対して20質量%以上85質量%以下であることが分散性と現像残渣抑制の点から好ましい。
【0146】
色材分散液において酸性分散剤の含有割合は適宜調整すればよいが、分散性及び保存安定性の点から、色材100質量部に対して、5質量部以上80質量部以下とすることが好ましく、20質量部以上70質量部以下とすることがより好ましい。
また、色材分散液において酸性分散剤の含有量は、分散性及び分散安定性の点から、色材分散液中の固形分全量に対して、3質量%以上45質量%以下、より好ましくは5質量%以上35質量%以下の割合で配合することがより好ましい。
【0147】
[溶剤]
本発明に用いられる溶剤としては、色材分散液中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されない。溶剤は単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
溶剤の具体例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、ヒドロキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸エチル、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、酪酸イソブチル、酪酸n-ブチル、乳酸エチル、シクロヘキサノールアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、カルビトールアセテートなどのカルビトールアセテート系溶剤;プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート等のジアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ-ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;テトラヒドロフランなどの環状エーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N-ヘプタン、N-ヘキサン、N-オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中ではグリコールエーテルアセテート系溶剤、カルビトールアセテート系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エステル系溶剤が他の成分の溶解性の点で好適に用いられる。中でも、本発明に用いる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、カルビトールアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、及び、3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選択される1種以上であることが、他の成分の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
【0148】
本発明の色材分散液は、以上のような溶剤を、当該溶剤を含む色材分散液全量に対して、通常、55質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましく、中でも65質量%以上90質量%以下の範囲内であることが好ましく、70質量%以上88質量%以下の範囲内であることがより好ましい。溶剤が少なすぎると、粘度が上昇し、分散性が低下しやすい。また、溶剤が多すぎると、色材濃度が低下し、目標とする色度座標に達成することが困難な場合がある。
【0149】
[その他の成分]
本発明の色材分散液には、本発明の効果が損なわれない限り、更に必要に応じて、分散補助樹脂、その他の成分を配合してもよい。
分散補助樹脂としては、例えば後述する着色樹脂組成物で例示されるアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂の立体障害によって色材粒子同士が接触しにくくなり、分散安定化することやその分散安定化効果によって分散剤を減らす効果がある場合がある。
また、その他の成分としては、例えば、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0150】
本発明の色材分散液は、後述する着色樹脂組成物を調製するための予備調製物として用いられる。すなわち、色材分散液とは、後述の着色樹脂組成物を調製する前段階において予備調製される、P/V(組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比の高い色材分散液である。具体的には、(組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比は通常1.0以上である。色材分散液と、後述する各成分とを混合することにより、分散性に優れた用着色樹脂組成物を調製することができる。
【0151】
[色材分散液の製造方法]
本発明において、色材分散液の製造方法は、前記色材が、前記分散剤により、溶剤中に分散された色材分散液が得られる方法であれば特に限定されない。
例えば、本発明に係る色材分散液の製造方法は、前記色材を準備する工程と、前記分散剤を準備する工程と、溶剤中、前記分散剤の存在下で、前記色材を分散する工程とを有するものが挙げられる。溶剤中、前記分散剤の存在下で、2種以上の色材を共分散しても良いし、1種以上の色材を分散乃至共分散した後、2種以上の色材分散液を混合することにより本発明の色材分散液を得ても良い。
中でも、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材を、溶剤中、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体の存在下で分散させた色材分散液aを調製し、一方で、前記塩基性処理されたフタロシアニン顔料を、溶剤中、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含むAブロックと(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むBブロックとを含むブロック共重合体の存在下で分散させた色材分散液bを調製し、前記色材分散液aと前記色材分散液bとを混合することにより、本発明の色材分散液を製造することが、色材の分散性、保存安定性、基板密着性及び塗膜の均一性が良好になり易い点から好ましい。
【0152】
上記製造方法において色材は、従来公知の分散機を用いて分散することができる。
分散機の具体例としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03mm以上3.0mm以下が好ましく、より好ましくは0.05以上2.0mm以下である。
【0153】
II.着色樹脂組成物
本発明に係る着色樹脂組成物は、色材と、酸性分散剤と、バインダー成分と、溶剤とを含有する着色樹脂組成物であって、
前記色材が、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含み、
前記酸性分散剤が、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む、着色樹脂組成物であることを特徴とする。
【0154】
本発明の着色樹脂組成物は、前述の色材分散液における説明と同様の作用によって、所定のレーキ色材とフタロシアニン顔料とを所望の範囲で混合しても分散性と保存安定性に優れ、且つ、基板密着性と塗膜均一性が向上した着色層を形成可能であるという効果を有する。
【0155】
本発明の着色樹脂組成物は、色材と、分散剤と、バインダー成分と、溶剤とを少なくとも含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。以下、本発明の着色樹脂組成物に含まれる各成分について説明するが、色材、分散剤、及び溶剤については、上記本発明の色材分散液において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
以下、このような本発明の着色樹脂組成物の各成分について、順に詳細に説明する。
【0156】
[バインダー成分]
本発明の着色樹脂組成物は、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与するためにバインダー成分を含有する。塗膜に充分な硬度を付与するために、硬化性バインダー成分を含有することが好ましい。硬化性バインダー成分としては、特に限定されず、従来公知のカラーフィルタの着色層を形成するのに用いられる硬化性バインダー成分を適宜用いることができる。
硬化性バインダー成分としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線等により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含む光硬化性バインダー成分や、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性樹脂を含む熱硬化性バインダー成分を含むものを用いることができる。
【0157】
着色層を形成する際にフォトリソグラフィー工程を用いる場合には、アルカリ現像性を有する感光性バインダー成分が好適に用いられる。なお、感光性バインダー成分に、熱硬化性バインダー成分を更に用いてもよい。
感光性バインダー成分としては、ポジ型感光性バインダー成分とネガ型感光性バインダー成分が挙げられる。ポジ型感光性バインダー成分としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂と、感光性付与成分としてo-キノンジアジド基含有化合物とを含んだ系等が挙げられる。
【0158】
一方、ネガ型感光性バインダー成分としては、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤を少なくとも含有する系が好適に用いられる。
本発明に係る着色樹脂組成物においては、ネガ型感光性バインダー成分であることが、フォトリソグラフィー法によって既存のプロセスを用いて簡便にパターンを形成できる点から好ましい。
以下、ネガ型感光性バインダー成分を構成する、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤について、具体的に説明する。
【0159】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は酸性基を有するものであり、バインダー樹脂として作用し、かつパターン形成する際に用いられるアルカリ現像液に可溶性であるものの中から、適宜選択して使用することができる。
本発明において、アルカリ可溶性樹脂とは、酸価が40mgKOH/g以上であることを目安にすることができる。
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、酸性基、通常カルボキシ基を有する樹脂であり、具体的には、例えば、カルボキシ基を有するアクリル系共重合体及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。
【0160】
これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシ基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有する場合には、カラーフィルタ製造時における樹脂組成物の硬化工程において、当該アルカリ可溶性樹脂同士、乃至、当該アルカリ可溶性樹脂と多官能モノマー等の光重合性化合物が架橋結合を形成し得る。硬化膜の膜強度がより向上して現像耐性が向上し、また、硬化膜の熱収縮が抑制されて基板との密着性に優れるようになる。
アルカリ可溶性樹脂中に、エチレン性二重結合を導入する方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、アルカリ可溶性樹脂が有するカルボキシ基に、分子内にエポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法や、水酸基を有する構成単位を共重合体に導入しておいて、分子内にイソシアネート基とエチレン性二重結合とを備えた化合物を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法などが挙げられる。
【0161】
また、アルカリ可溶性樹脂は、着色層の密着性が優れる点から、更に炭化水素環を有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂に嵩高い基である、炭化水素環を有することにより硬化時の収縮が抑制され、基板との間の剥離が緩和し、基板密着性が向上する。
このような炭化水素環としては、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、及びこれらの組み合わせが挙げられ、炭化水素環がアルキル基、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
炭化水素環は、1価の基として含まれていても良いし、2価以上の基として含まれていても良い。
【0162】
炭化水素環の具体例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン(ジシクロペンタン)、アダマンタン等の脂肪族炭化水素環;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等の芳香族炭化水素環;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環や、カルド構造(9,9-ジアリールフルオレン);これらの基の一部が置換基によって置換された基等が挙げられる。
上記置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0163】
炭化水素環として、脂肪族炭化水素環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、得られた着色層の輝度が向上する点から好ましい。
また、前記カルド構造を含む場合には、着色層の硬化性が向上し、色材の退色を抑制し、耐溶剤性(NMP膨潤抑制)が向上する点から特に好ましい。
【0164】
カルボキシ基を有する構成単位を有するアクリル系共重合体、及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂は、例えば、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー、及び必要に応じて共重合可能なその他のモノマーを、公知の方法により(共)重合して得られた(共)重合体である。
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0165】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシ基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のカルボキシ基含有共重合体であることが好ましく、カルボキシ基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位と、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のカルボキシ基含有共重合体であることがより好ましい。
【0166】
炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンなどが挙げられ、現像後の着色層の断面形状が加熱処理においても維持される効果が大きい点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びスチレンから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0167】
当該カルボキシ基含有共重合体は、更にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等、エステル基を有する構成単位等の他の構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、着色樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
【0168】
当該カルボキシ基含有共重合体は、各構成単位の仕込み量を適宜調整することにより、所望の性能を有するアルカリ可溶性樹脂とすることができる。
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、良好なパターンが得られる点から、モノマー全量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、現像後のパターン表面の膜荒れ等を抑制する点から、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0169】
また、アルカリ可溶性樹脂としてより好ましく用いられる、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のカルボキシ基含有共重合体において、エポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物はカルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量に対して、10質量%以上95質量%以下であることが好ましく、15質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0170】
カルボキシ基含有共重合体の好ましい質量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~50,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000~20,000である。1,000以上では硬化後のバインダー機能が向上し、50,000以下だとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が良好となる。
【0171】
カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を酸無水物と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が適している。
エポキシ化合物、不飽和基含有モノカルボン酸、及び酸無水物は、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としても、分子内に、前記炭化水素環を有することが好ましく、中でも、カルド構造を含むものが、着色層の硬化性が向上し、色材の退色を抑制し、また着色層の残膜率が高くなる点から好ましい。
カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0172】
アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点から、酸価が30mgKOH/g以上のものを選択して用いることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点、及び基板への密着性の点から、酸価が40mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、中でも、50mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0173】
アルカリ可溶性樹脂の側鎖にエチレン性不飽和基を有する場合のエチレン性不飽和結合当量は、硬化膜の膜強度が向上して現像耐性が向上し、基板との密着性に優れるといった効果を得る点から、100~2000の範囲であることが好ましく、特に、140~1500の範囲であることが好ましい。該エチレン性不飽和結合当量が、2000以下であれば現像耐性や密着性に優れている。また、100以上であれば、前記カルボキシ基を有する構成単位や、炭化水素環を有する構成単位などの他の構成単位の割合を相対的に増やすことができるため、現像性や耐熱性に優れている。
ここで、エチレン性不飽和結合当量とは、上記アルカリ可溶性樹脂におけるエチレン性不飽和結合1モル当りの質量平均分子量のことであり、下記数式(1)で表される。
【0174】
数式(1)
エチレン性不飽和結合当量(g/mol)=W(g)/M(mol)
(数式(1)中、Wは、アルカリ可溶性樹脂の質量(g)を表し、Mはアルカリ可溶性樹脂W(g)中に含まれるエチレン性二重結合のモル数(mol)を表す。)
【0175】
上記エチレン性不飽和結合当量は、例えば、JIS K 0070:1992に記載のよう素価の試験方法に準拠して、アルカリ可溶性樹脂1gあたりに含まれるエチレン性二重結合の数を測定することにより算出してもよい。
【0176】
着色樹脂組成物において用いられるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量としては特に制限はないが、着色樹脂組成物の固形分全量に対してアルカリ可溶性樹脂は好ましくは5質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは8質量%以上40質量%以下の範囲内である。アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、充分なアルカリ現像性が得られ、また、アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、現像時に膜荒れやパターンの欠けを抑制できる。
【0177】
<光重合性化合物>
着色樹脂組成物において用いられる光重合性化合物は、光開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が好適に用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、従来公知のものの中から適宜選択して用いればよい。具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0178】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の着色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、光重合性化合物が、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート等が好ましい。トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェートのようなリン原子含有多官能(メタ)アクリレートを用いると、レーキ色材の退色が抑制されやすく、ポストベーク後の輝度を向上させやすい点から好ましい。
【0179】
着色樹脂組成物において用いられる上記光重合性化合物の含有量は、特に制限はないが、着色樹脂組成物の固形分全量に対して光重合性化合物は好ましくは5質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上50質量%以下の範囲内である。光重合性化合物の含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み、露光部分が現像時の溶出を抑制でき、また、光重合性化合物の含有量が上記上限値以下であるとアルカリ現像性が十分である。
【0180】
<光開始剤>
本発明の着色樹脂組成物において用いられる光開始剤としては、特に制限はなく、従来知られている各種開始剤の中から、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
光開始剤としては、芳香族ケトン類、ベンゾインエーテル類、ハロメチルオキサジアゾール化合物、α-アミノケトン、ビイミダゾール類、N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、ハロメチル-S-トリアジン系化合物、チオキサントン等を挙げることができる。光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール2量体等のビイミダゾール類、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物、2-(4-ブトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-S-トリアジン等のハロメチル-S-トリアジン系化合物、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパノン、1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2-n-ブトキシエチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、4-ベンゾイル-メチルジフェニルサルファイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルフォリニル)-1-プロパノンなどが挙げられる。
中でも、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(例えば、ハイキュアABP、川口薬品製)、ジエチルチオキサントンが好ましく用いられる。更に2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンのようなα-アミノアセトフェノン系光開始剤とジエチルチオキサントンのようなチオキサントン系光開始剤を組み合わせることが感度調整、水染みを抑制し、現像耐性が向上する点から好ましい。
【0181】
本発明において、光開始剤は、感度を向上させる観点から、中でも、オキシムエステル系光開始剤を含むことが好ましい。オキシムエステル系光開始剤を用いることにより、細線パターンを形成する際に、面内の線幅のばらつきが抑制され易い。更に、オキシムエステル系光開始剤を用いることにより、現像耐性が向上し、水染み発生抑制効果が高くなる傾向がある。なお、水染みとは、アルカリ現像性を高くする成分を用いると、アルカリ現像後、純水でリンスした後に、水が染みたような跡が発生することをいう。このような水染みは、ポストベーク後に消えるので製品としては問題がないが、現像後にパターニング面の外観検査において、ムラ異常として検出されてしまい、正常品と異常品の区別がつかないという問題が生じる。そのため、外観検査において検査装置の検査感度を下げると、結果として最終的なカラーフィルタ製品の歩留まり低下を引き起こし、問題となる。
当該オキシムエステル系光開始剤としては、分解物による着色樹脂組成物の汚染や装置の汚染を低減する点から、中でも、芳香環を有するものが好ましく、芳香環を含む縮合環を有するものがより好ましく、ベンゼン環とヘテロ環を含む縮合環を有することがさらに好ましい。
オキシムエステル系光開始剤としては、1,2-オクタジオン-1-[4-(フェニルチオ)-、2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、特開2000-80068号公報、特開2001-233842号公報、特表2010-527339、特表2010-527338、特開2013-041153等に記載のオキシムエステル系光開始剤の中から適宜選択できる。市販品として、カルバゾール骨格を有するイルガキュアOXE-01(BASF製)、アデカアークルズNCI-831(ADEKA社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料社製)、ジフェニルスルフィド骨格を有するアデカアークルズNCI-930(ADEKA社製)、TR-PBG-345、TR-PBG-3057(以上、常州強力電子新材料社製)、フルオレン骨格を有するTR-PBG-365(常州強力電子新材料社製)、SPI-04(三養製)などを用いても良い。特にジフェニルスルフィド骨格又はフルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を用いることが輝度を向上させる点から好ましい。またカルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を用いることは感度の高い点から好ましい。
またオキシムエステル系光開始剤を2種類以上併用することは、感度の異なる2種以上のオキシムエステル化合物を適宜選択して組み合わせることにより、良好な感度を維持しつつ、パターン形成の際の線幅を調整することができ、更に、現像耐性や輝度が向上しやすく、水染み発生抑制効果が高い点で好ましい。特にジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤2種類の併用又は、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤とフルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を併用することは耐熱性が高くなり、輝度が向上し易い点から好ましい。
【0182】
なお、少ない露光量でパターニングするために高感度な光開始剤を使用する場合、ラジカル発生後、未露光部までラジカルが移動してしまう。そのため、着色層をパターニングする際に、同時に着色層に所望の微小孔を形成する際に、露光部分の内部にある未露光部の形状を保ちつつ、かつ未露光部周辺部をビリツキなく形成することは困難であった。それに対して、本発明の色材の組み合わせに、フルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を用いると、着色層をパターニングする際に、同時に着色層に所望の微小孔を形成し易いというメリットがある。中でも、フルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤と、フェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤とを併用すると、輝度、及び感度を大きく低下させることなく、微小孔の形状を向上しやすい点から好ましい。着色層に所望の微小孔を形成しやすい場合には、本発明の着色樹脂組成物は、例えば、反射型カラーフィルタを形成するために、TFT基板上に着色層を形成し、同時に当該着色層に導通のためのスルーホールを形成する用途にも適している。なお、「ビリツキ」とは、パターン端部の直線乃至曲線が不均一となって寸法精度が悪化する不具合をいう。
【0183】
また、オキシムエステル系光開始剤に、前記α-アミノアセトフェノン系光開始剤を組み合わせて用いることが、水染みを抑制し、また、感度向上の点から、好ましい。α-アミノアセトフェノン系のような3級アミン構造を有する光開始剤は、分子内に酸素クエンチャーである3級アミン構造を有するため、開始剤から発生したラジカルが酸素により失活し難く、感度を向上させることができるからである。
また、オキシムエステル系光開始剤に、チオキサントン系光開始剤を組み合わせることが感度調整、水染みを抑制し、現像耐性が向上する点から好ましく、オキシムエステル系光開始剤を2種類以上と、チオキサントン系光開始剤を組み合わせることが輝度、現像耐性が向上し、感度調整をしやすく、水染み発生抑制効果が高く、現像耐性が向上する点で好ましい。
【0184】
本発明の着色樹脂組成物において用いられる光開始剤の合計含有量は、本発明の効果が損なわれない限り特に制限はないが、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、好ましくは0.1質量%以上12.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上8.0質量%以下の範囲内である。この含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み露光部分が現像時に溶出することを抑制し、一方上記上限値以下であると、得られる着色層の黄変性が強くなって輝度が低下することを抑制できる。
【0185】
<酸化防止剤>
本発明に係る着色樹脂組成物は、更に酸化防止剤を含有することが、耐熱性が向上し、色材の退色が抑制され、輝度が向上する点から好ましい。本発明に係る着色樹脂組成物は、オキシムエステル系光開始剤と組み合わせて酸化防止剤を含むことにより、硬化膜に微小孔を形成する際に硬化性を損なうことなく微小孔内の過度なラジカル連鎖反応を制御できるため、所望の形状の微小孔をより容易に形成することができる。
本発明に用いられる酸化防止剤としては、特に限定されず、従来公知のものの中から適宜選択すればよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられ、耐熱性の点及び微小孔の形状を良好にする点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。国際公開第2014/021023号に記載されているような潜在性酸化防止剤であっても良い。
【0186】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:商品名:IRGANOX1010、BASF社製)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名:イルガノックス3114、BASF製)、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル)メシチレン(商品名:イルガノックス1330、BASF製)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP-S、住友化学製)、6,6’-チオビス(2-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:イルガノックス1081、BASF製)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル(商品名:イルガモド195、BASF製)等が挙げられる。中でも、耐熱性及び耐光性の点から、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:商品名:IRGANOX1010、BASF社製)が好ましい。
【0187】
酸化防止剤の含有量としては、着色樹脂組成物中の固形分全量に対して、酸化防止剤が0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、耐熱性及び耐光性に優れている。一方、上記上限値以下であれば、本発明の着色樹脂組成物を高感度の感光性樹脂組成物とすることができる。
【0188】
酸化防止剤を前記オキシムエステル系光開始剤と組み合わせて用いる場合、酸化防止剤の含有量としては、前記オキシムエステル系光開始剤の合計量100質量部に対して、酸化防止剤が1質量部以上250質量部以下であることが好ましく、3質量部以上80質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上65質量部以下であることがより更に好ましい。上記範囲内であれば、上記組み合わせの効果に優れている。
【0189】
<任意添加成分>
本発明の着色樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を含むものであってもよい。添加剤としては、例えば、メルカプト化合物、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
界面活性剤及び可塑剤の具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のものが挙げられる。
【0190】
<着色樹脂組成物における各成分の配合割合>
色材の合計の含有量は、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、3質量%以上65質量%以下、より好ましくは4質量%以上60質量%以下の割合で配合することが好ましい。上記下限値以上であれば、着色樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0μm以上5.0μm以下)に塗布した際の着色層が充分な色濃度を有する。また、上記上限値以下であれば、保存安定性に優れると共に、充分な硬度や、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、色材の含有量は、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、15質量%以上65質量%以下、より好ましくは25質量%以上60質量%以下の割合で配合することが好ましい。
分散剤の合計の含有量としては、色材を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、着色樹脂組成物の固形分全量に対して1質量%以上40質量%以下用いることができる。更に、着色樹脂組成物の固形分全量に対して2質量%以上30質量%以下の割合で配合するのが好ましく、特に3質量%以上25質量%以下の割合で配合するのが好ましい。上記下限値以上であれば、色材の分散性及び分散安定性に優れ、着色樹脂組成物の保存安定性により優れている。また、上記上限値以下であれば、現像性が良好なものとなる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、分散剤の含有量は、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、2質量%以上25質量%以下、より好ましくは3質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
バインダー成分の合計含有量は、着色樹脂組成物の固形分全量に対して5質量%以上90質量%以下、好ましくは10質量%以上80質量%以下の割合で配合するのが好ましい。
また、溶剤の含有量は、着色層を精度良く形成することができる範囲で適宜設定すればよい。該溶剤を含む着色樹脂組成物の全量に対して、通常、55質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましく、中でも、65質量%以上88質量%以下の範囲内であることがより好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0191】
本発明の着色樹脂組成物においては、P/V比((組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比)は、青色着色樹脂組成物とする場合には、所望の発色の観点から、P/V比は0.10以上であることが好ましく、更に0.15以上であることが好ましく、より更に0.2以上であることが好ましい。一方、パターニング特性等に優れる点から、0.65以下であることが好ましく、0.50以下であることがより好ましく、0.45以下であることがより更に好ましい。
【0192】
<着色樹脂組成物の製造方法>
本発明の着色樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、前記本発明の色材分散液に、バインダー成分と、必要に応じてその他の成分を添加し、公知の混合手段を用いて混合することにより得ることができる。或いは、前記分散剤を用いて、各色材の色材分散液とを各々準備し、各々の色材分散液と、バインダー成分と、必要に応じてその他の成分を、公知の混合手段を用いて混合することにより得ることができる。
【0193】
本発明の着色樹脂組成物は、所定のレーキ色材とフタロシアニン顔料とを所望の範囲で混合しても分散性と保存安定性に優れ、且つ、基板密着性と塗膜均一性が向上した着色層を形成可能であることから、カラーフィルタ用途に好適に用いられる。
【0194】
III.硬化物
本発明に係る硬化物は、前記本発明に係る着色樹脂組成物の硬化物である。
本発明に係る硬化物は、バインダー成分の硬化性に合わせて、適宜選択して製造することができる。例えば、感光性バインダー成分を用いる場合には、前記本発明に係る着色樹脂組成物の塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させたのち、露光、及び必要に応じて現像することにより得ることができる。塗膜の形成、露光、及び現像の方法としては、例えば、後述する本発明に係るカラーフィルタが備える着色層の形成において用いられる方法と同様の方法とすることができる。また、例えば、熱硬化性バインダー成分を用いる場合には、前記本発明に係る着色樹脂組成物の塗膜を必要に応じてパターニングして塗布し、該塗膜を乾燥させたのち、加熱することにより得ることができる。
また、本発明に係る硬化物は、所定のレーキ色材とフタロシアニン顔料とを所望の範囲で混合しても分散性と保存安定性に優れ、且つ、基板密着性と塗膜均一性が向上したものであり、カラーフィルタの着色層として好適に用いられる。
【0195】
IV.カラーフィルタ
本発明に係るカラーフィルタは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、前記着色層の少なくとも一つが、色材と、酸性分散剤とを含み、前記色材が、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含み、前記酸性分散剤が、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む、カラーフィルタである。
【0196】
本発明に係るカラーフィルタは、前記着色層の少なくとも一つが、色材と、酸性分散剤とを含み、前記色材が、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含み、前記酸性分散剤が、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含むことにより、分散性と保存安定性に優れ、且つ、基板密着性と塗膜均一性が向上した着色層を備えており、高輝度で耐熱性が向上したカラーフィルタである。前記特定の色材が、前記特定の分散剤に分散されていることにより、分散性及び保存安定性が向上し、着色層の輝度及び耐熱性が向上する。また、基板密着性が向上した着色層は、パターニングプロセスで微細なパターンを形成しても、塗膜が剥離し難く、製造時の管理やコストの負担を軽減できる。また、塗膜均一性が向上すると、大型基板においても色ムラが低減されたカラーフィルタを得ることができる。
このような本発明に係るカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0197】
[着色層]
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、少なくとも1つが、色材と、酸性分散剤とを含み、前記色材が、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含み、前記酸性分散剤が、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む、着色層である。
着色層は、通常、後述する透明基板上の遮光部の開口部に形成され、通常3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、着色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1μm以上5μm以下の範囲であることが好ましい。
【0198】
当該着色層は、例えば、前記着色樹脂組成物が感光性樹脂組成物の場合、下記の方法により形成することができる。カラーフィルタに用いられる前記着色層は、前述した色材と、酸性分散剤と、溶剤と、バインダー成分を含有し、前記色材が、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材と、塩基性処理されたフタロシアニン顔料とを含み、前記酸性分散剤が、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む、着色樹脂組成物を用いて形成されることが好ましく、当該着色樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。
まず、着色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法などの塗布手段を用いて後述する透明基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び多官能モノマー等を光重合反応させて、感光性の塗膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用する着色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0199】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶剤にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、着色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0200】
[遮光部]
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。遮光部は、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜であっても良い。或いは、遮光部は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層であってもよい。遮光性粒子を含有させた樹脂層の場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。
【0201】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2μm以上0.4μm以下程度で設定され、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5μm以上2μm以下程度で設定される。
【0202】
[透明基板]
透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板、フレキシブルガラス等の可撓性やフレキシブル性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。このようなカラーフィルタに用いられる透明基板は、通常、表面に極性基を有する。
本発明の着色樹脂組成物の基板密着性が向上する点から、透明基板としては、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の二酸化ケイ素を含む基板であることが好ましい。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、カラーフィルタの用途に応じて、例えば50μm以上1mm以下程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには液晶材料を配向させるための配向膜や、柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。本発明のカラーフィルタは、前記例示された構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタに用いられている公知の構成を適宜選択して用いることができる。
【0203】
V.表示装置
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有することを特徴とする。本発明において表示装置の構成は特に限定されず、従来公知の表示装置の中から適宜選択することができ、例えば、液晶表示装置や、有機発光表示装置などが挙げられる。
【0204】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明に係るカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。
図2は、本発明の表示装置の一例を示す概略図であり、液晶表示装置の一例を示す概略図である。
図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この
図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0205】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
【0206】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
【0207】
[有機発光表示装置]
本発明に係る有機発光表示装置は、前述した本発明に係るカラーフィルタと、有機発光体とを有することを特徴とする。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。
図3は、本発明の表示装置の他の一例を示す概略図であり、有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0208】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この
図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0209】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
酸価は、JIS K 0070:1992に記載の方法に準ずる方法により求めた。
質量平均分子量(Mw)は、前述の本発明の測定方法に従って、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0210】
(合成例1:レーキ色材1の合成)
(1)中間体1の合成
特開2018-3013号に記載の中間体A-2、中間体B-1、及び化合物1-3の製造方法を参照して、下記化学式(a)で示される中間体1を得た(収率87%)。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):677(+)、2価
・元素分析値:CHN実測値 (81.81%、7.31%、5.85%);理論値(81.77%、7.36%、5.90%)
【0211】
【0212】
(2)レーキ色材1の合成
関東化学製12タングストリン酸・n水和物2.59g(0.76mmol)をメタノール40mL、水40mLの混合液に加熱溶解させ、前記中間体1 1.6g(1.19mmol)を加え、1時間攪拌した。沈殿物を濾取し、水で洗浄した。得られた沈殿物を減圧乾燥して下記化学式(b)で示されるレーキ色材1を(収率95%)得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・31P NMR(d-dmso、ppm)δ-15.15
・MS(MALDI) (m/z):1355(M+)、2879(MH2
-)
・元素分析値:CHN実測値 (35.55%、3.24%、2.61%);理論値(35.61%、3.20%、2.57%)
・蛍光X線分析:MoW実測比 (0%、100%);理論値(0%、100%)
【0213】
【0214】
(合成例2:レーキ色材2の合成)
(1)中間体2の合成
国際公開第2012/144521号に記載の中間体3及び中間体4の製造方法を参照して、下記化学式(c)で示される中間体2を15.9g(収率70%)得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):511(+)、2価
・元素分析値:CHN実測値 (78.13%、7.48%、7.78%);理論値(78.06%、7.75%、7.69%)
【0215】
【0216】
(2)レーキ色材2の合成
中間体2 5.00g(4.58mmol)を水300mlに加え、90℃で溶解させ中間体2溶液とした。次に日本無機化学工業製リンタングステン酸・n水和物 H3[PW12O40]・nH2O(n=30) 10.44g(3.05mmol)を水100mLに入れ、90℃で攪拌し、リンタングステン酸水溶液を調製した。先の中間体2溶液にリンタングステン酸水溶液を90℃で混合し、生成した沈殿物を濾取し、水で洗浄した。得られたケーキを乾燥して下記化学式(d)で表されるレーキ色材2を13.25g(収率98%)を得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。(モル比W/Mo=100/0)
・MS(ESI) (m/z):510(+)、2価
・元素分析値:CHN実測値 (41.55%、5.34%、4.32%);理論値(41.66%、5.17%、4.11%)
また、リンタングステン酸のポリ酸構造がレーキ色材2となった後も保たれていることを31P-NMRにより確認した。
【0217】
【0218】
(合成例3:塩基性処理フタロシアニン顔料1の合成)
反応容器中、クロロスルホン酸300質量部および銅フタロシアニン30質量部を加え、完全に溶解した後、塩化チオニル24質量部を加え、徐々に昇温して101℃で3時間反応させた。その反応液を氷水9000質量部中に注入し、撹拌後、濾過、水洗した。得られたプレスケーキを水300質量部でスラリーとした後、1,1-ジエチル-1,5-ジアザペンタン13質量部を加え、65℃で4時間撹拌した後、濾過、水洗、乾燥し、表面処理に用いられる塩基性部位を有する青色色材誘導体1を得た。得られた塩基性部位を有する青色色材誘導体1について、下記化学式(e)の構造であることを確認した。
・TOF-MS:768.35
【0219】
【0220】
市販のC.I.Pigment Blue15:6(ε型銅フタロシアニン顔料、DIC製 FASTOGEN BLUE A510)100質量部と、前記塩基性部位を有する青色色材誘導体1の5質量部とをアトライターで60℃にて1.5時間乾式粉砕した。この粉砕生成物に、更に前記塩基性部位を有する青色色材誘導体1の5質量部を混合することにより、目的とする塩基性処理されたフタロシアニン顔料である、塩基性処理フタロシアニン顔料1を得た。
【0221】
(合成例4:塩基性処理フタロシアニン顔料2の合成)
合成例3の塩基性処理フタロシアニン顔料1の合成において、前記塩基性部位を有する青色色材誘導体1で表面処理する顔料として、市販のC.I.Pigment Blue15:6を用いる代わりに、市販のC.I.Pigment Blue15:3(β型銅フタロシアニン顔料、DIC製、FASTOGEN BLUE SFJ-SD)を用いた以外は、合成例3と同様にして、塩基性処理フタロシアニン顔料2を得た。
【0222】
(合成例5:塩基性処理フタロシアニン顔料3の合成)
合成例3において、青色色材誘導体1の合成法のうち、1,1-ジエチル-1,5-ジアザペンタン13質量部を用いる代わりに、1,1-ジイソプロピル-1,5-ジアザペンタンを16質量部用いた以外は、青色色材誘導体1の合成方法と同様にして、青色色材誘導体2を合成した。
得られた塩基性部位を有する青色色材誘導体2について、下記化学式(f)の構造であることを確認した。
・TOF-MS:796.4
【0223】
【0224】
合成例3の塩基性処理フタロシアニン顔料1の合成において、青色色材誘導体1の代わりに青色色材誘導体2を用いた以外は、合成例3と同様にして、塩基性処理フタロシアニン顔料3を得た。
【0225】
(合成例6:塩基性処理フタロシアニン顔料4の合成)
合成例3において、青色色材誘導体1の合成法のうち、1,1-ジエチル-1,5-ジアザペンタン13質量部を用いる代わりに、1,1-ジブチル-1,5-ジアザペンタンを19質量部用いた以外は、青色色材誘導体1の合成方法と同様にして、青色色材誘導体3を合成した。
得られた塩基性部位を有する青色色材誘導体3について、下記化学式(g)の構造であることを確認した。
・TOF-MS:824.15
【0226】
【0227】
合成例3の塩基性処理フタロシアニン顔料1の合成において、青色色材誘導体1の代わりに青色色材誘導体3を用いた以外は、合成例3と同様にして、塩基性処理フタロシアニン顔料4を得た。
【0228】
(合成例7:酸性分散剤A1(前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体)の合成)
(1)マクロモノマーMM-1の合成
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(略称PGMEA)80.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。メタクリル酸メチル50.0質量部、メタクリル酸-n-ブチル30.0質量部、メタクリル酸ベンジル20.0質量部、2-メルカプトエタノール4.0質量部、PGMEA30質量部、α,α’-アゾビスイソブチロニトリル(略称AIBN)1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工製)8.74質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.125質量部、p-メトキシフェノール0.125質量部、及びPGMEA10質量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーMM-1の49.5質量%溶液を得た。得られたマクロモノマーMM-1は、GPC測定の結果、質量平均分子量(Mw)4010、数平均分子量(Mn)1910、分子量分布(Mw/Mn)2.10であった。
【0229】
(2)グラフト共重合体A1の合成
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA85.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。前記マクロモノマーMM-1溶液67.34質量部(固形分33.33質量部)、メタクリル酸グリシジル(略称GMA)16.67質量部、n-ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA25.0質量部、AIBN0.5質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部 、PGMEA10.0質量部 の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体A1の25.0質量%溶液を得た。得られたグラフト共重合体A1は、GPC測定の結果、質量平均分子量(Mw)10570、数平均分子量(Mn)4370、分子量分布(Mw/Mn)2.42であった。
【0230】
(3)前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体(酸性分散剤A1)の製造
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA27.80質量部、フェニルホスホン酸(製品名「PPA」日産化学製)9.27質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。
前記グラフト共重合体A1の100.0質量部を30分かけて滴下し、2時間加熱攪拌することで、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体(酸性分散剤A1)溶液(固形分25.0質量%)を得た。得られた酸性分散剤A1のGMAとPPAのエステル化反応の進行は、酸価測定と1H-NMR測定によって確認した(エポキシ由来のピークが消失していることを確認)。得られた酸性分散剤A1の酸価は98mgKOH/gであった。
【0231】
(合成例8:酸性分散剤A2(前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体)の合成)
(1)ブロック共重合体A2の合成
特許第5895925号に記載の合成例6を参照し、メタクリル酸メチル(MMA)50質量部、メタクリル酸-n-ブチル(BMA)30質量部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)20質量部のブロックと、メタクリル酸グリシジル(GMA)25質量部のブロックとを有するジブロック共重合体の40質量%PGMEA溶液を得た。得られたブロック共重合体A2は、質量平均分子量(Mw)9470、数平均分子量(Mn)7880、分子量分布(Mw/Mn)は1.20であった。
(2)前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体(酸性分散剤A2)の製造
反応器に、ブロック共重合体A2 100.0質量部、PGMEA86.70質量部、フェニルホスホン酸(PPA)8.90質量部を仕込み、90℃で2時間撹拌することで、前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体(酸性分散剤A2)溶液(固形分25質量%)を得た。ブロック共重合体A2のGMAとPPAのエステル化反応の進行は、酸価測定と1H-NMR測定によって確認した。得られた酸性分散剤A2の酸価は65mgKOH/gであった。
【0232】
(合成例9:酸性分散剤B1(カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含むAブロックと(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むBブロックとを含むブロック共重合体)の合成)
国際公開2016/132863号に記載の実施例1を参照し、MMA20質量部、BMA40質量部のブロックと、アクリル酸(MAA)20質量部、BMA20質量部のブロックと、MMA20質量部、BMA40質量部のブロックとを有する、トリブロック共重合体を合成した。得られたブロック共重合体は、質量平均分子量(Mw)11000、分子量分布(Mw/Mn)1.50、酸価130mgKOH/gだった。
【0233】
(合成例10:酸性分散剤B2(カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含むAブロックと(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むBブロックとを含むブロック共重合体)の合成)
モノマー仕込み比を下記組成に変更したこと以外は、合成例9と同様にして、MMA30質量部、BMA40質量部のブロックと、アクリル酸(MAA)10質量部、BMA20質量部のブロックと、MMA20質量部、BMA40質量部のブロックとを有する、トリブロック共重合体を合成した。得られたブロック共重合体は、質量平均分子量(Mw)15500、分子量分布(Mw/Mn)1.35,酸価80mgKOH/gだった。
【0234】
(合成例11:塩基性分散剤1の合成)
反応器に、PGMEA51.13質量部と3級アミノ基を含むブロック共重合体(商品名:BYK-LPN6919、ビックケミー製)(アミン価120mgKOH/g、固形分60質量%)30.00質量部(固形分18.00質量部)を仕込み、PPAを3.04質量部(ブロック共重合体の3級アミノ基に対して0.5モル当量)を加え、40℃で30分攪拌することで塩型アミン系ブロック共重合体(塩基性分散剤1)溶液(固形分25質量%)を調製した。
【0235】
(合成例12:アルカリ可溶性樹脂Aの合成)
重合槽に、PGMEAを150質量部仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、メタクリル酸(MAA)22質量部、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)64質量部及びパーブチルO(日油株式会社製)6質量部、連鎖移動剤(n-ドデシルメルカプタン)2質量部を1.5時間かけて連続的に滴下した。その後、100℃を保持して反応を続け、上記主鎖形成用混合物の滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p-メトキシフェノール0.1質量部を添加して重合を停止した。
次に、空気を吹き込みながら、エポキシ基含有化合物としてメタクリル酸グリシジル(GMA)14質量部を添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミン0.8質量部を添加して110℃で15時間付加反応させ、アルカリ可溶性樹脂A溶液(質量平均分子量(Mw)9,000、酸価90mgKOH/g、固形分40質量%)を得た。
【0236】
(調製例1:感光性バインダー成分CR-1の調製)
合成例12で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)36.5質量部に対して、光重合性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アロニックスM402(東亜合成製))21.9質量部、開始剤としてイルガキュア907(BASF製、α-アミノアセトフェノン系光開始剤)1.1質量部、SPI-04(三養製、フルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤)1.3質量部、カヤキュアーDETX-S(日本化薬製、チオキサントン系光開始剤)0.3質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF製)0.8質量部、PGMEA38.1質量部を加えて、感光性バインダー成分CR-1を得た。
【0237】
(実施例1)
(1)色材分散液B1
(1-1)レーキ色材1の色材分散液B1a1の調製
合成例1のレーキ色材1 10質量部と、合成例7の酸性分散剤A1溶液 20質量部(有効固形分 5.0質量部)と、合成例12のアルカリ可溶性樹脂A 7.5質量部(有効固形分 3.0質量部)と、PGMEA 62.5質量部とを混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで4時間分散し、色材分散液B1a1を得た。
(1-2)塩基性処理フタロシアニン顔料1の色材分散液B1b1の調製
合成例3の塩基性処理フタロシアニン顔料1 10質量部と、合成例9の酸性分散剤B1溶液 16.7質量部(有効固形分 5.0質量部)と、合成例12のアルカリ可溶性樹脂A 7.5質量部(有効固形分 3.0質量部)と、PGMEA 65.8質量部とを混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで6時間分散し、色材分散液B1b1を得た。
(1-3)色材分散液B1の調製
前記(1-1)で得られた色材分散液B1a1を2質量部に対して、前記(1-2)で得られた色材分散液B1b1を98質量部混合することにより、色材分散液B1を調製した。
(2)着色樹脂組成物B1
色材分散液B1 16.7質量部、調製例1の感光性バインダー成分CR-1 24.0質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製) 0.3質量部、PGMEA 59.0質量部を混合し、実施例1の着色樹脂組成物B1を得た。
【0238】
(実施例2~13)
(1)色材分散液B2~B13
表1に示した色材比率(質量比)になるように、色材分散液B1a1と色材分散液B1b1との混合割合を変更した以外は、実施例1と同様にして、色材分散液B2~B13を調製した。
(2)着色樹脂組成物B2~B13
実施例1において、色材分散液B1の代わりに、色材分散液B2~B13をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、着色樹脂組成物B2~B13を得た。
【0239】
(実施例14~21)
(1)色材分散液B14~B21
実施例1の(1-1)と同様にして、色材分散液B1a1を得た。
実施例1の(1-1)において、合成例1のレーキ色材1の代わりに、合成例2のレーキ色材2を用いた以外は同様にして、色材分散液B2a1を得た。
また、実施例1の(1-1)において、合成例7の酸性分散剤A1溶液の代わりに、合成例8の酸性分散剤A2溶液を用いた以外は同様にして、色材分散液B1a2を得た。
更に、実施例1の(1-2)と同様にして、色材分散液B1b1を得た。
実施例1の(1-2)において、合成例3の塩基性処理フタロシアニン顔料1の代わりに、合成例4の塩基性処理フタロシアニン顔料2を用いた以外は同様にして、色材分散液B2b1を得た。
実施例1の(1-2)において、合成例3の塩基性処理フタロシアニン顔料1の代わりに、合成例5の塩基性処理フタロシアニン顔料3を用いた以外は同様にして、色材分散液B3b1を得た。
実施例1の(1-2)において、合成例3の塩基性処理フタロシアニン顔料1の代わりに、合成例6の塩基性処理フタロシアニン顔料4を用いた以外は同様にして、色材分散液B4b1を得た。
また、実施例1の(1-2)において、合成例9の酸性分散剤B1溶液の代わりに、合成例10の酸性分散剤B2溶液を用いた以外は同様にして、色材分散液B1b2を得た。
表2に示した色材比率(質量比)になるように、色材分散液B1a1、B2a1又はB1a2と、色材分散液B1b1、B2b1、B3b1、B4b1又はB1b2との混合割合を変更した以外は、実施例1と同様にして、色材分散液B14~B21を調製した。
(2)着色樹脂組成物B14~B21
実施例1において、色材分散液B1の代わりに、色材分散液B14~B21をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、着色樹脂組成物B14~B21を得た。
【0240】
(実施例22)
(1)色材分散液B22
合成例1のレーキ色材1 5.0質量部と、合成例3の塩基性処理フタロシアニン顔料1 5.0質量部と、合成例7の酸性分散剤A1溶液 20質量部(有効固形分 5.0質量部)と、合成例12のアルカリ可溶性樹脂A 7.5質量部(有効固形分 3.0質量部)と、PGMEA 62.5質量部とを混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで6時間分散し、色材分散液B22を得た。
(2)着色樹脂組成物B22
実施例1において、色材分散液B1の代わりに、色材分散液B22をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、着色樹脂組成物B22を得た。
【0241】
(実施例23~24)
(1)色材分散液B23~B24
実施例22において、色材の含有比率と、レーキ色材の種類について、表2に示したように変更した以外は、実施例22と同様にして、色材分散液B23~B24を調製した。
(2)着色樹脂組成物B23~B24
実施例1において、色材分散液B1の代わりに、色材分散液B23~B24をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、着色樹脂組成物B23~B24を得た。
【0242】
(比較例1及び5)
(1)色材分散液CB1及びCB5
実施例22において、塩基性処理フタロシアニン顔料1の代わりに、市販のピグメントブルー15:6(DIC 製 FASTOGEN BLUE A510)を用い、色材の含有比率を、表2に示したように変更した以外は、実施例22と同様にして、色材分散液CB1及びCB5を調製した。
(2)着色樹脂組成物CB1及びCB5
実施例1において、色材分散液B1の代わりに、色材分散液CB1及びCB5をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、着色樹脂組成物CB1及びCB5を得た。
【0243】
(比較例2)
(1)色材分散液CB2
比較例1において、合成例7の酸性分散剤A1溶液を用いる代わりに、合成例11の塩基性分散剤1溶液に変更した以外は、比較例1と同様にして、色材分散液CB2を調製した。
(2)着色樹脂組成物CB2
実施例1において、色材分散液B1の代わりに、色材分散液CB2を用いた以外は、実施例1と同様にして、着色樹脂組成物CB2を得た。
【0244】
(比較例3)
(1)色材分散液CB3
実施例22において、塩基性処理フタロシアニン顔料1を用いず、合成例1のレーキ色材1 10質量部用いた以外は、実施例22と同様にして、色材分散液CB3を調製した。
(2)着色樹脂組成物CB3
実施例1において、色材分散液B1の代わりに、色材分散液CB3をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、着色樹脂組成物CB3を得た。
【0245】
(比較例4)
(1)色材分散液CB4
実施例22において、合成例1のレーキ色材1及び塩基性処理フタロシアニン顔料1を用いず、市販のピグメントブルー15:6(DIC 製 FASTOGEN BLUE A510)を10質量部用いた以外は、実施例22と同様にして、色材分散液CB4を調製した。
(2)着色樹脂組成物CB4
実施例1において、色材分散液B1の代わりに、色材分散液CB4をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、着色樹脂組成物CB4を得た。
【0246】
[評価方法]
<分散性>
実施例及び比較例で得られた色材分散液についてそれぞれ、調製直後の初期粘度を測定した。なお粘度は、振動式粘度計を用いて、25.0±0.5℃における粘度を測定した。
(分散性評価基準)
AA:粘度が5cP未満
A: 粘度が5cP以上10cP未満
B: 粘度が10cP以上15cP未満
C: 粘度が15cP以上20cP未満
D: 粘度が20cP以上
ただし、色材分散液の溶剤を含めた合計質量に対して、色材を10質量%としたときの値である。
【0247】
<保存安定性>
実施例及び比較例で得られた色材分散液についてそれぞれ、調製直後の初期粘度と、25℃で7日間保存後の粘度を測定し、粘度変化を確認した。
(保存安定性評価基準)
A:保存前後の粘度の差の絶対値が測定誤差範囲内(0.5cP未満)
B:保存前後の粘度の差の絶対値が 0.5cP以上1.0cP未満
C:保存前後の粘度の差の絶対値が1.0cP以上
ただし、色材分散液の溶剤を含めた合計質量に対して、色材を10質量%としたときの値である。
【0248】
<光学性能>
実施例及び比較例の着色樹脂組成物をそれぞれ、厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、ポストベーク後の色度がy=0.100になるようにスピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射し、次いで230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークすることによってすることによって硬化膜(青色着色膜)を得た。得られた着色基板の色度(x、y)、輝度(Y)をオリンパス社製「顕微分光測定装置OSP-SP200」を用いて測定した。
【0249】
<基板密着性>
各実施例及び比較例で得られた硬化膜(青色着色膜)について、JIS K 5600-5-6に準拠したクロスカット試験を行い、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後、硬化膜の剥がれの有無を観察し、下記評価基準により評価した。
(基板密着性評価基準)
AA:どの格子の目も剥がれがない
A: カットの線に沿って硬化膜が剥がれている箇所はあるが、格子全体が剥がれている箇所はない
B: 格子全体が剥がれている箇所があり、剥がれの専有面積が25%未満
C: 格子全体が剥がれている箇所があり、剥がれの専有面積が25%以上
【0250】
<塗膜均一性>
実施例及び比較例の着色樹脂組成物をそれぞれ、クロム蒸着した100mm角のガラス基板に、スピンコーターを用いて塗布した。塗布した基板を減圧乾燥機に入れ、30Paで減圧乾燥を行った。このように作製した硬化膜を干渉縞検査灯(ナトリウムランプ)を用いて観察し、塗膜に発生する乾燥ムラの有無を目視評価した。
(塗膜均一性評価基準)
A:硬化膜にムラが無い
B:硬化膜全体の50%未満の範囲に軽微なムラがある
C:硬化膜全体の50%以上の範囲にムラがある
【0251】
<現像性>
実施例及び比較例の着色樹脂組成物をそれぞれ、厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。この着色層に、線幅1μmから100μmまでの独立細線パターンフォトマスクを介して、超高圧水銀灯を用いて、60mJ/cm2の紫外線で露光することにより、ガラス基板上に厚さ2.0μmの着色層を形成した。
次いで、0.05質量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液を現像液として、スピン現像し、現像液に接液させた後に純水で洗浄することで現像処理し、パターン形成を行い、現像性を評価した。上記現像処理において、未露光部が溶解し除去されるまでの時間を測定した。現像の終了は、目視により観察し、現像時間について下記基準で判定した。
(現像性評価基準)
AA:40秒未満
A: 40秒以上60秒未満
B: 60秒以上80秒未満
C: 80秒以上
【0252】
<線幅シフト>
実施例及び比較例の着色樹脂組成物をそれぞれ、厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて膜厚が3μmになるように塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った後、開口幅が90μmである細線パターン(線幅シフト評価用パターン)と開口寸法90μm×300μmの独立細線内の中央に20μm×20μmのクロムマスクを配置したパターン(微小孔評価用パターン)を有するフォトマスクパターンを介して、超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いてシャワー現像し、230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークした。ガラス基板に形成された着色層細線パターンの独立細線のうち、フォトマスクの開口幅が90μmで、設計線幅を95μmとした時の実際に測定した独立細線の幅(線幅)を測定し、下記基準で評価した。
(線幅シフト評価基準)
下記式により、設計線幅からのずれである線幅シフト値(μm)を算出した。
線幅シフト値(μm)=測定した線幅(μm)-95(μm)
A:線幅シフト値が-2μm以上2μm以下
B:線幅シフト値が-4μm以上-2μm未満
C:線幅シフト値が-4μm未満又は2μm超過
設計線幅からのずれが小さいほど所望の線幅でパターンを形成できると評価される。
【0253】
<加熱工程後の色度変化(ΔEab)>
実施例及び比較例の着色樹脂組成物をそれぞれ、厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、ポストベーク後の色度がy=0.100になるようにスピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射することによって硬化膜(青色着色膜)を得た。得られた膜を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、オリンパス(株)社製「顕微分光測定装置OSP-SP200」を用いて、この着色膜の色度(L0、a0、b0)を測定した。その後、前記着色膜を更に230℃のクリーンオーブンで150分間ポストベークし、得られた着色膜の色度(L1、a1、b1)を再び測定した
下記式により、230℃30分後から150分後にかけての着色膜の色度変化を評価した。
ΔEab={(L1-L0)2+(a1-a0)2+(b1-b0)2}1/2
(ΔEab評価基準)
AA:ΔEabが3以下
A: ΔEabが3超過5以下
B: ΔEabが5超過7以下
C: ΔEabが7超過10以下
D: ΔEabが10超過
【0254】
<現像残渣評価>
実施例及び比較例の着色樹脂組成物をそれぞれ、厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて60℃で3分間乾燥することにより、厚さ2.5μmの着色層を形成した。上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて60秒間シャワー現像した。上記着色層の形成後のガラス基板の未露光部(50mm×50mm)を、目視により観察した後、エタノールを含ませたレンズクリーナー(東レ社製、商品名トレシーMKクリーンクロス)で十分に拭き取り、そのレンズクリーナーの着色度合いを目視で観察した。
(現像残渣評価基準)
A:目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーが全く着色しなかった
B:目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーの着色がわずかに確認された
C:目視により現像残渣がわずかに確認され、レンズクリーナーの着色が確認された
D:目視により現像残渣が確認され、レンズクリーナーの着色が確認された
【0255】
【0256】
【表2】
表1及び表2において、色材比率は、全色材量を100とした時の比率、分散剤比率は、全分散剤量を100とした時の比率である。
【0257】
[結果のまとめ]
表の結果から、前記一般式(1)で表される色材及び前記一般式(2)で表される色材からなる群から選択される少なくとも1種のレーキ色材に、塩基性処理されたフタロシアニン顔料を組み合わせ、且つ、分散剤として前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体を含む酸性分散剤を組み合わせて用いた実施例1~24は、所定のレーキ色材とフタロシアニン顔料とを所望の範囲で混合しても分散性と保存安定性に優れ、且つ、基板密着性と塗膜均一性が向上した着色層を形成可能であることが示された。
一方、フタロシアニン顔料として、塩基性処理されていない市販のフタロシアニン顔料を用いた比較例1及び5では、当該フタロシアニン顔料の含有量を少し増加させただけで分散性及び保存安定性が悪化していくことが示された。更に、フタロシアニン顔料として、塩基性処理されていない市販のフタロシアニン顔料を用いた比較例1及び5では、実施例に比べて基板密着性と塗膜均一性が劣るものであった。
フタロシアニン顔料として、塩基性処理されていない市販のフタロシアニン顔料を用い、更に分散剤として塩基性分散剤を用いた比較例2では、色材の分散性及び保存安定性が悪く、基板密着性と塗膜均一性が劣るものであり、更に、現像性と加熱後の色度変化及び現像残渣の点からも劣るものであった。
フタロシアニン顔料を用いずに、レーキ色材のみを用いた比較例3では、実施例と比べて分散性に劣り、且つ、基板密着性と塗膜均一性が劣るものであった。
塩基性処理されていない市販のフタロシアニン顔料のみを前記一般式(I)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する重合体で分散させた比較例4では、初期粘度が高すぎて、評価可能な塗膜を形成するに至らなかった。
【0258】
実施例の中でも、実施例1~13を比較すると、前記レーキ色材の含有量が、前記レーキ色材及び前記フタロシアニン顔料の合計含有量に対して20質量%以上85質量%以下であると、高温加熱工程後の色度変化が抑制されながら、線幅シフトが抑制されて所望の線幅でパターンを形成可能な点から好ましいものであることが示された。
また、実施例1~13と実施例22~24とを比較すると、前記酸性分散剤が、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を含むAブロックと(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むBブロックとを含むブロック共重合体を、更に含むと、現像残渣の抑制性が向上することが示された。
【符号の説明】
【0259】
1 基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルタ
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
50 有機保護層
60 無機酸化膜
71 透明陽極
72 正孔注入層
73 正孔輸送層
74 発光層
75 電子注入層
76 陰極
80 有機発光体
100 有機発光表示装置