(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】引き戸を動かすための弾性補償要素を備えたキャリッジ
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
E05D15/06 119
(21)【出願番号】P 2020554146
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2019000101
(87)【国際公開番号】W WO2019192749
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】102018000004273
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519206287
【氏名又は名称】テルノ・スコレヴォリ・エスピーエー・ユニペルソナレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テルノ、ジョバンニ
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実公昭35-008768(JP,Y1)
【文献】実開昭56-088860(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0037427(US,A1)
【文献】西独国特許出願公開第03602440(DE,A1)
【文献】西独国特許出願公開第02819396(DE,A1)
【文献】米国特許第04457046(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00-15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁(48)又は天井(54)に固定され、押し出し成形された構造材(28)のスライドシート(44)に配置され、スライドドア(42)を移動するための1又は複数対のホイール(14)を備えたキャリッジ(10)であって、
キャリッジは、プラスチック、金属又は他の適切な材料で作られた支持体(12)を備え、支持体は、ホイール(14)の対がリベット(16)で接続されている前記キャリッジの重量支持フレームを構成し、
前記ホイールのそれぞれは、支持体(12)の側面の1つに配置されるとともに、前記側面に沿って構成された凹部(24)に配置され且つ他とは独立して可動な弾性要素(20)と組み合わされ、前記キャリッジが押し出し成形された構造材(28)のスライドシート(44)に沿って移動する際に遭遇する不規則性又は変形に応じて、いくつかの方向、即ち垂直方向及び角度方向に他とは独立して移動可能であるキャリッジ。
【請求項2】
弾性要素(20)は、四角形又は円形の断面を有するワッシャからなり、その中央の孔(22)は、これが取り付けられるリベット(16)の直径以上の直径を有する請求項1に記載のキャリッジ。
【請求項3】
弾性要素(20)は、支持体(12)のそれぞれの凹部(24)に配置され、
凹部(24)は、少なくとも部分的に、リベット(16)の通過のための支持体(12)の孔(18)の周りに配置された複数の杭(26)
の形態で放射状に構成された複数の隆起によって区切られる請求項1に記載のキャリッジ。
【請求項4】
ホイール(14)
の支持体(12)は、実質的に長方形の平面を有する不規則な角柱形状を規定し、前記ホイール(14)は
、転がり面に沿ってプラスチックコーティングが施されている請求項3に記載のキャリッジ。
【請求項5】
前記キャリッジのスライドシート(44)が構成される押し出し成形された構造材(28)は、前記構造材の上部ベース(34)及び下部ベース(36)に対して直交して配向された反対側の側壁(30、32)を備え、前記下部ベースには、これが接続されている前記スライドドア(42)の方向に下向きに突出するステム(40)の通過のために、長手方向に延びる中央スロット(38)が構成されている請求項1に記載のキャリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き戸(sliding doors)を動かすための弾性補償要素(elastic compensation elements)を備えたキャリッジに関する。より具体的には、本発明は、キャリッジをスライドさせる押出構造材(extruded profiles)の不規則性を補正することができる弾性要素を備え、特に、引き戸を移動するのに適した上記キャリッジに関し、これにより、顕著に現れることがある望ましくないノイズ現象を回避できる。
【背景技術】
【0002】
引き戸の使用はよく知られており、特に、邪魔になったり利用可能なスペースを損なったりすることなく2つの環境を分離する目的で広く使用されている。なぜなら、引き戸は、開く段階では壁に作られた特別なシートに収納された格納式で、開放段階では角度を付けて突出せず、通路の開口部が作られている壁と平行にスライドする。
【0003】
前記引き戸の移動は、伝統的に開口部の上部に配置され、かつ、通常はドアの上端に接続されるガイド内をスライドする特別なキャリッジによって実行される。キャリッジのスライドガイドは、通常、押し出し成形されたアルミニウム構造材(aluminium profile)で構成され、縦方向に延びるシートが、キャリッジを収容するとともに、反対側でキャリッジの動きを区切っている。
【0004】
この分野で現在使用されている第1のタイプのキャリッジは、剛性構造を備えていることを必要とし、この構造において、それに接続された車輪のペアは、固定された位置にあり、常に互いに平行に維持されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この既知の解決策は、次の事実に由来する重大な欠点を示し、キャリッジのスライドガイドを成す押し出し成形されたアルミニウム構造材は、完全に直線的ではなく、それらの延長に沿って変形する可能性があり、かかる欠陥は、キャリッジの動きに起因する騒音、振動、きしみ音を引き起こし、特に不快である。
【0006】
このような変形は、例えば、固定が不正確であるため、或いは、相対的な接続プレートの非垂直位置の関数として、スライドガイドの設置時に押し出し成形されたアルミニウム構造材で発生する可能性がある。
【0007】
上記した欠点を克服するように設計された第2のタイプの引き戸用キャリッジは、それらが2つ以上の部分に分割されることを提案している。この場合、車輪のペアは、しっかりと固定されておらず、押し出し成形されたアルミニウム構造材の不規則性に適応するように軸を回転させることができる。
【0008】
これにより、上記のアルミニウム構造材ですべての車輪が常にサポートされ、固定された車輪を使用した場合と比較して、キャリッジのスライドが大幅に向上する。ただし、この解決策では、キャリッジの構造を2つの部分で構成する必要があることに関連する重大な欠点も明らかになる。実際、この構造はキャリッジ自体の必然的な弱体化につながる。よって、これは限られた重量のドアが存在する場合にのみ使用できる。この重量制限によれば、例えば、少なくとも80kgの重量容量を必要とするガラス又はクリスタル製のドアが存在する場合、このようなキャリッジを使用することができない。
【0009】
DE2819396A1には、サポート用ブラケットに取り付けられ、ガイド上をスライドする、引き戸用のローラを構成する解決策が開示されている。このローラは、共通の軸上で互いに接続されたディスクで形成され、弾性層の介在により、上記ブラケットに挿入された支持ピンに取り付けられている。
【0010】
特許DE3602440において、キャリッジに誘導された荷重は、ボルトでねじ込まれたピンで支えられている。支持ピンは、弾性リングで取り付けられたキャリッジのスライドローラを支持するサスペンションプレートの横穴に半径方向のクリアランスを有して配置されている。
【0011】
本発明の目的は、上記で不満を述べた欠点を克服することである。
より具体的には、本発明の目的は、押し出し成形されたアルミニウム構造材のスライディングシート(sliding seat)に沿って存在する可能性のある不規則性に関連する問題を効果的かつ完全に補償することができる引き戸用のキャリッジを提供し、これにより、個々のキャリッジの移動中に生じるノイズ現象や振動、きしみ音などの発生を回避することにある。
本発明の更なる目的は、モノブロックキャリッジ(monobloc carriage)を提供し、これにより、特に頑丈であって、重量のあるドアでさえ効果的に支持することにある。
本発明の別のそれほど重要ではない目的は、各車輪が他の車輪とは独立して振動して、スライディングシートの起こり得る不規則性に適応することができる、移動する引き戸用のキャリッジを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、容易かつ経済的に製造されることに加えて、経時的に高レベルの信頼性を確保するのに適した引き戸を移動するためのキャリッジをユーザに利用可能にすることにある。
これら及び他の目的は、主請求項に従って、本発明の引き戸を移動させるためのキャリッジによって達成される。本発明の引き戸を動かすためのキャリッジの構造及び機能的特徴は、好ましい非限定的な実施形態を示す添付の図面を参照する以下の詳細な説明からより明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明のキャリッジの側面図を概略的に示す。
【
図2】
図2は、同じキャリッジの
図1のA-A線に沿う断面図である。
【
図3】
図3は、一対の車輪の不整合状態における本発明のキャリッジの側面図を概略的に示す。
【
図4】
図4は、同じキャリッジの
図3の線A-Aに沿った断面を概略的に示す。
【
図5】
図5は、本発明のキャリッジの分解概略図である。
【
図6】
図6は、部分断面図で、それがスライドする押し出し成形された構造材に配置され、上が壁に、下がドアに拘束されている同じキャリッジを概略的に示している。
【
図7】
図7は、部分断面図で、それがスライドする押し出し成形された構造材に配置され、上が天井に、下がドアに拘束されている同じキャリッジを概略的に示している。
【
図8】
図8は、押し出し成形された構造材で構成されたスライディングシート内の、及び、このシートに存在する可能性のある不規則性の関数としての、キャリッジ、特に車輪の可能な限り多くの相対的な配置例を示している。
【
図9】
図9は、押し出し成形された構造材で構成されたスライディングシート内の、及び、このシートに存在する可能性のある不規則性の関数としての、キャリッジ、特に車輪の可能な限り多くの相対的な配置例を示している。
【
図10】
図10は、押し出し成形された構造材で構成されたスライディングシート内の、及び、このシートに存在する可能性のある不規則性の関数としての、キャリッジ、特に車輪の可能な限り多くの相対的な配置例を示している。
【
図11】
図11は、押し出し成形された構造材で構成されたスライディングシート内の、及び、このシートに存在する可能性のある不規則性の関数としての、キャリッジ、特に車輪の可能な限り多くの相対的な配置例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~
図5を最初に参照すると、
図1及び
図3の参照符号10によって全体的に示される本発明のスライドドア(引き戸)を移動するためのキャリッジは、プラスチック、金属又は他の適切な材料で作られた支持体12を備えている。実質的に長方形の平面を有する不規則な角柱形状を規定する前記支持体12は、少なくとも2対のホイール(車輪)14が接続されているキャリッジ10の重量支持フレームを構成する。
【0014】
2対のホイールは、支持体12の長さの方向に適切に離間されており、各対の各ホイールは、前記支持体の側面の1つに配置されている。ホイール14は、通常、鋼製ベアリングでできており、ゴム引きされているか、転がり面に沿ってプラスチックコーティングが施されている。特に
図5から分かるように、ホイール(又は、ベアリング)14は、対応する貫通孔18を備えた支持体12に横方向に係合する従来のリベット16によって対で互いに接続されている。
【0015】
本発明によれば、ホイール(又は、ベアリング)14のそれぞれは、前記ホイールと支持体12との間に配置された弾性要素20に対になっている。弾性要素20は、好ましくは四角形又は円形の断面を有するワッシャからなり、その中央の孔22は、これが取り付けられるリベット16の直径以上の直径を有する。
【0016】
各リベット16は、2つのホイール(又は、ベアリング)14を互いに接続し、同時に弾性要素20を圧縮する。好ましくは、弾性要素20は、支持体12のそれぞれの凹部24に配置され、少なくとも部分的に、例えば前記支持体12の貫通孔18の周りに配置された小さな杭(peg)26の形態で半径方向に配置された複数の隆起によって区切られる。
【0017】
ホイール(又は、ベアリング)14と支持体12との間に挿入された弾性要素20は、
図6~
図11の参符符号28によって示される、押し出し成形された構造材28の延長に沿って遭遇する変形又は不規則性のために、スライドされるキャリッジ10が引き起こす振動を吸収することを意図している。よって、ノイズは、個々のホイール(又は、ベアリング)14が他とは独立して振動する可能性と組み合わされた弾性リング20の存在によって実質的に低減される。
【0018】
キャリッジ10のこの最後の特徴は、理論的寸法に関して押し出し中に起こり得るそれらの輪郭の拡大及び狭小化から始めて、押し出し成形された構造材に通常見られる様々な形態の変形を克服することを可能にする。平行な側面の角度偏差についても同じことが言える。
【0019】
図の好ましい実施形態では、押し出し成形された構造材28は、その中でスライドしてドアの上端に接続するキャリッジ10に一般的に使用される既知のタイプのものである。前記構造材28は、実質的に規則的な四角形の断面を定義し、反対側の側壁30及び32は、上部ベース34及び下部ベース36に対して互いに平行で直交している。
【0020】
長手方向に延びる中央スロット38が下部ベース36に構成され、これにより、ステム40が、
図6及び
図7の参照符号42で示される下のドア42の方向に突出し、既知の方法でその上端に接続することを可能にしている。
【0021】
図1及びとりわけ
図2は、キャリッジ10のホイール(又は、ベアリング)14の対が正確に位置合わせされた状態にあり、互いに完全に平行である状況を示しており、前記キャリッジは、不規則性または変形なしに、押し出し成形された構造材28の一部に沿って滑っている。
【0022】
図3及び
図4特に後者は、キャリッジ10の一対のホイール(又は、ベアリング)14のホイールの一方が軸外位置にあり、他方に対して角度的に持ち上げられている例示的な状況を示している。前記キャリッジは、前記ホイールが載っているベースに沿って不規則性を有する押し出し成形された構造材28の部分上を滑っている。ホイール(又は、ベアリング)14は互いに独立しているので、この不規則性は、圧縮されてキャリッジが不規則性に適応することを可能にする弾性要素20の存在のおかげで自動的に補償される。
【0023】
図8~
図11は、キャリッジ10が押し出し成形された構造材28の内側に、それ自体を見つけることができる可能な限り多くの条件を概略的に表している。上記の不規則性は一般に軽微であるものの、それでもノイズを生成するには十分である。
【0024】
図8は、押し出し成形された構造材28の内側に存在する参照符号44で示されるスライドシート内のキャリッジ10の正常な状態及び完全な位置合わせを想定している。押し出し成形された構造材28の反対側の側壁30,32は、実際には、上部ベース34に対して90°に正確に配向されており、この状況は、構造材自体に不規則性或いは変形がないことを示している。
【0025】
図9は、押し出し成形された構造材28の延長部に不規則な状態があることを想定しており、これは、一方の側で側壁30と上部ベース34との間の90°の角度を強調しているが、反対側では、代わりに、側壁32および上部ベース34との間の90°の角度を定義している。ここで示されている値は一例であるが、最小寸法の異常でさえ、キャリッジ10の正しいスライドにとって重要であり、弾性要素20の使用により、これらの異常が補償されることを強調するために使用される。
【0026】
図9は、押し出し成形された構造材28の側壁30,32の両方が上部ベース34に対して完全に直交していない更なる可能な状態を示している。片側が89°、反対側が91°で、前の仮説よりも重要な不規則性を構成する。しかしながら、各ホイール(又は、ベアリング)14と支持体12との間に弾性要素20を配置する規定があるとすると、前記車輪が互いに独立していることに加えて、この場合、シート44に感知できるほどの騒音なしに、キャリッジ10の正しいスライドを確実にすることも容易に補償することができる。
【0027】
本発明による弾性要素20の使用によりいずれの場合でも補償することができる、押し出し成形された構造材28の可能な形成欠陥のさらなる例が
図11に示され、ここで、前記の側壁30,32の両方において、構造材は、上部ベース34に対して90°ではなく91°で等しく閉じられている。
【0028】
完全を期すために、
図6及び
図7は、本発明によるキャリッジ10の使用に関連してドア42を固定するための2つの可能な代替の解決策を提案している。詳細には、
図6は、従来のブラケット46、及び、1又は複数の拡張プラグ56による、前記キャリッジ10がスライドする押し出し成形された構造材28の壁への固定を示している。
【0029】
この場合、ドア42は、壁48に対して片持ち梁のままであり、一方、既知の解決策によれば、ドア42は、底部で、床52に固定されたスキッド(skid)50等上をスライドする。
図6では、キャリッジ10がスライドする押し出し成形された構造材28は、代わりに、従来の拡張プラグ56によって天井54に固定されている。
【0030】
上記から分かるように、本発明が達成する利点は明らかである。
本発明のスライドドア42を移動させるためのキャリッジ10において、一対のホイール(又は、ベアリング)14の各ホイールと支持体10との間に弾性要素20を配置することにより、押し出し成形された構造材28の形成不規則性を効果的に補償することができる。前記キャリッジがスライドするシート44は、強調された騒音の迷惑な現象を回避する。この補償は、前記ホイールが互いに独立しており、前記押し出し成形された構造材28の前述の不規則性の変化に従って必要に応じて個別に振動することができるという事実のおかげで部分的に達成される。
【0031】
非限定的な例としてのみ与えられた、その実施形態の1つを特に参照して上で説明された本発明にもかかわらず、多くの修正及び変形は、上記の説明に照らして当業者には明らかであるように思われる。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲及び当該範囲内にあるすべての修正及び変形を包含することを開始する。