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特許7346452合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取る方法および該方法を実現するための装置
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  • 特許-合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取る方法および該方法を実現するための装置 図1
  • 特許-合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取る方法および該方法を実現するための装置 図2
  • 特許-合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取る方法および該方法を実現するための装置 図3
  • 特許-合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取る方法および該方法を実現するための装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取る方法および該方法を実現するための装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 4/04 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
D01D4/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020561686
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019060711
(87)【国際公開番号】W WO2019211181
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】201810418948.7
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアント シューマッハー
(72)【発明者】
【氏名】レン シャンミン
(72)【発明者】
【氏名】シガン リー
(72)【発明者】
【氏名】スドン ヤン
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-039404(JP,A)
【文献】特開2017-082376(JP,A)
【文献】特開昭61-055207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 - 13/02
B08B 1/00 - 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための方法であって、ポリマ溶融物を、紡糸ポンプを通して搬送し、前記ポリマ溶融物を押し出してそれぞれ複数の糸を形成する複数の紡糸口金へと供給し、前記糸を、巻取り装置により巻き取って複数のパッケージを形成し、前記紡糸口金を、紡糸口金ノズルプレートの掻取りにより定期的にメンテナンスする方法において、前記紡糸口金のうちの少なくとも1つの紡糸口金のメンテナンスを、機械制御ユニットに接続されている掻取りボタンを手動で押すことにより開始し、前記機械制御ユニットが、掻取りロボットへと伝達される制御命令を発信し、前記掻取りボタンを手動で押した後に、巻取り装置が巻取り状態にあるか否かを前記機械制御ユニットが確認し、種々異なる確認結果に基づいて、前記掻取りロボットに種々異なる制御命令を送信することを特徴とする、合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための方法。
【請求項2】
前記巻取り装置が巻取り状態にあることを前記機械制御ユニットが確認した場合に、該機械制御ユニットは、巻管が満管になるまで掻取り動作を待機するための信号を前記掻取りロボットに送信する、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記巻取り装置が巻取り状態にないことを前記機械制御ユニットが確認した場合に、前記機械制御ユニットが、掻取り動作を即座に開始するための信号を前記掻取りロボットに送信する、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記掻取りロボットは、ベースステーションから外へ移動することができ、幾つかのメンテナンス位置のうちの1つのメンテナンス位置に停止することができ、自身を位置決めすることができる、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
複数の糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための装置であって、少なくとも1つの紡糸ポンプおよび複数の紡糸口金を有する紡糸装置と、取外し可能に保持された前記紡糸口金を収容するための紡糸ビームと、前記糸を巻き取って複数のパッケージを形成するための巻取り装置と、少なくとも前記巻取り装置の巻取り制御ユニットに接続されている機械制御ユニットとを備え、前記紡糸ポンプが、紡糸ポンプ制御ユニットにより制御されている、複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための装置であって、前記機械制御ユニットに掻取りボタンが接続されていて、前記機械制御ユニットが、掻取りロボットのロボット制御ユニットに接続されていて、前記掻取りロボットが前記紡糸口金に対して平行なラインに沿って運動可能であり、前記機械制御ユニットが、前記巻取り装置の前記巻取り制御ユニットに接続されている確認ユニットを有していて、これにより前記巻取り装置が巻取り状態にあるかを確認することができることを特徴とする、複数の糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取る方法と、該方法を実現するための装置とに関する。
【0002】
背景技術
溶融紡糸システムでは、溶融された状態の熱可塑性プラスチックが、紡糸口金ノズルプレートの口金細孔により、運転圧を加えられながら、噴出される。重力方向に沿って噴射される連続する長い溶融物は、強制的な冷却空気を負荷されて連続的なフィラメントを形成する。冷却空気の影響下で、モノマまたは低重合体は、紡糸口金の、紡糸口金ノズルプレート表面上に留まり、凝固して汚れまたは粘結材料を形成する傾向にある。したがって、紡糸口金ノズルプレートを定期的にクリーニングすることが必要である。通常は、1つの紡糸ゾーンには、1人のオペレータが配属されている。このオペレータは、この紡糸ゾーンの紡糸口金ノズルプレートの掻取りを担っている。掻取りの一般的なワークフローは、まず紡糸口金ノズルプレートの表面のこすり落とし、次いで紡糸口金ノズルプレートの表面へのシリコーンオイルの吹付け、その後に2回目のこすり落とし、次いで2回目のシリコーンオイルの吹付けである。通常、各紡糸位置が紡糸口金ノズルプレートを備えた5~10個の紡糸ゾーンの紡糸口金を有しているという通常の構成を考慮すると、オペレータにより引き受けられる過酷な掻取りタスクは、低効率という欠点を伴っている。
【0003】
発明の内容
現存する技術の欠点を熟慮して、本発明は、上述の問題を解決するために、合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取る方法と、この方法を実現するための装置とを提供する。この目的を達成するために使用される技術的な解決手段を以下に挙げる。
【0004】
合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための方法であって、ポリマ溶融物を、紡糸ポンプを通して搬送し、ポリマ溶融物を押し出してそれぞれ複数の糸を形成する複数の紡糸口金へと供給し、糸を、巻取り装置により巻き取って複数のパッケージを形成し、紡糸口金を、紡糸口金ノズルプレートの掻取りにより定期的にメンテナンスする方法において、紡糸口金のうちの少なくとも1つの紡糸口金のメンテナンスを、機械制御ユニットに接続されている掻取りボタンを手動で押すことにより開始し、機械制御ユニットが、掻取りロボットへと伝達される制御命令を発信する、方法。
【0005】
オペレータを掻取りロボットにより置換することにより、自動的な紡糸口金ノズルプレートの掻取りが達成される。掻取りロボットに紡糸制御システムが統合されていることにより、オペレータは、掻取りロボットの掻取り動作の開始を決定することができる。
【0006】
さらに、掻取りボタンを手動で押した後に、巻取り装置が巻取り状態にあるか否かを機械制御ユニットが確認し、種々異なる確認結果に基づいて、掻取りロボットに種々異なる制御命令を送信する。
【0007】
巻取り装置におけるパッケージ形成に影響を与えずに紡糸口金ノズルプレートの掻取りを実施しなければならないので、掻取りロボットが掻取り動作を開始する前に、機械制御ユニットは、巻取り装置の状態を認識している必要がある。上述の理由により、巻取り装置が巻取り状態にあることを機械制御ユニットが確認すると、機械制御ユニットは、巻管が満管になるまで掻取り動作を待機するための信号を掻取りロボットに送信する。別の可能性は、巻取り装置が巻取り状態にないことを機械制御ユニットが確認した場合に、機械制御ユニットが、掻取り動作を即座に開始するための信号を掻取りロボットに送信することである。
【0008】
さらに、掻取りロボットはベースステーションから外へ移動することができ、幾つかのメンテナンス位置のうちの1つのメンテナンス位置に停止することができ、自身を位置決めすることができる。掻取りロボットは、掻取りを行っていない時間中に紡糸ゾーンに隣接するベースステーションに配置されている。オペレータが、対応する紡糸位置の掻取りボタンを押し下げた後に、掻取りロボットは自己位置決めの形式で対応する紡糸位置へと移動する。
【0009】
上述の方法を達成するために、本発明はさらに、紡糸口金ノズルプレートの自動的な掻取りを達成することができる、複数の糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための装置を提供する。この装置は、少なくとも1つの紡糸ポンプおよび複数の紡糸口金を有する紡糸装置と、取外し可能に保持された紡糸口金を収容するための紡糸ビームと、糸を巻き取って複数のパッケージを形成するための巻取り装置と、少なくとも巻取り装置の巻取り制御ユニットに接続されている機械制御ユニットとを備えている。紡糸ポンプは、紡糸ポンプ制御ユニットによって制御されていて、機械制御ユニットに掻取りボタンが接続されていて、機械制御ユニットは、掻取りロボットのロボット制御ユニットに接続されている。掻取りロボットは、紡糸口金に平行なラインに沿って運動可能である。
【0010】
さらに、機械制御ユニットは、巻取り装置の巻取り制御ユニットに接続されている確認ユニットを有していて、これにより、巻取り装置が巻取り状態にあるかを確認することができる。種々異なる確認結果に基づいて、機械制御ユニットは、掻取りロボットのロボット制御ユニットに異なる制御命令を送信する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】掻取りロボットがベースステーションに配置されている場合に、本発明に係る合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための装置を概略的に示す正面図である。
図2】掻取りロボットが掻取り位置にある場合に、本発明に係る合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための装置を概略的に示す正面図である。
図3】掻取りロボットが掻取り動作の開始前に掻取り位置にある場合の、本発明に係る合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための装置を概略的に示す部分的な側面図である。
図4】掻取りロボットが掻取り動作の開始後に掻取り位置にある場合の、本発明に係る合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための装置を概略的に示す部分的な側面図である。
【0012】
本発明を実施するための形態
図1は、本発明に係る合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための装置の正面図を概略的に示しており、例示的に、隣接する2つの紡糸装置1,1.1,2を示している。紡糸装置1.1の下の巻取り装置は、紡糸装置1.2の下の巻取り装置14と同一の構成を有しているので、単純にするために紡糸装置1.2の下の巻取り装置14のみが示されている。
【0013】
紡糸装置1.1,1.2の構造が同一であるので、紡糸装置1.2を例にして以下に説明する。紡糸装置1.2は、加熱機能を有する紡糸ビーム23を含んでいる。紡糸ビーム23の下面には、複数の紡糸口金6.1~6.5が保持されている。この実施形態では、5つの紡糸口金が、紡糸ビーム23の下面において保持されている。マルチポンプとして設計されている紡糸ポンプ2.1が、紡糸ビーム23上に配置されている。紡糸ポンプ2.1は、個別の溶融物配管を介して紡糸口金6.1~6.5に接続されている。溶融物配管と、取外し可能な紡糸口金6.1~6.5とは、紡糸ビーム23内に配置されていて、これにより、溶融物が噴出される前に溶融している状態に保たれることを保証することができる。溶融した状態にあるポリマ溶融物は、紡糸ポンプ2.1により形成された圧力を加えられながら、配管を介して紡糸口金6.1~6.5へと搬送される。紡糸ポンプ2.1は、紡糸ポンプ駆動装置3.1により駆動制御されている。紡糸ポンプ駆動装置3.1は、紡糸ポンプ制御ユニット4.1により制御されている。紡糸口金6.1~6.5は、紡糸口金ノズルプレート内に複数の紡糸口金細孔を有している。この紡糸口金細孔から溶融物が噴出される。図示しない冷却装置の冷却作用を受けて、溶融物は、紡出された後に連続的なフィラメント束となる。
【0014】
フィラメント束に延伸を加えるために、2つのゴデット7が紡糸装置1.2の下に配置されている。フィラメント束は、ゴデット駆動装置8によりそれぞれ駆動されている2つのゴデット7の周囲に部分的に巻き掛けられる。
【0015】
延伸されたフィラメント束を受け取るために、巻取り装置14がフィラメント束を巻き取るために使用される。巻取り装置14は、2つの巻管軸11,12を有しているように設計されている。巻管軸11,12は、回転可能な回転フレーム13上に保持されているので、巻管軸11,12は交互に巻取り状態にあり、これによって糸の巻取りの連続性が保証されている。巻管軸11は、巻管軸駆動装置11.1により駆動されている。巻管軸12は、巻管軸駆動装置12.1により駆動されている。回転フレーム13は、回転フレーム駆動装置13.1により駆動されている。綾巻きパッケージを得るために、巻取り装置14の入口領域には、綾振り装置9が配置されている。この綾振り装置9は、各糸のための綾振り糸ガイドを提供する。綾振り装置14は、綾振り装置駆動装置9.1により駆動されている。巻管軸駆動装置11.1,巻管軸駆動装置12.1、回転フレーム駆動装置13.1および綾振り装置駆動装置9.1は、巻取り制御ユニット15により制御されている。
【0016】
紡糸ポンプ2.1および巻取り装置14の駆動装置を制御しかつ検出するために、装置には、機械制御ユニット16がさらに備えられている。機械制御ユニット16は、好適には、PCの形のマイクロプロセッサにより構成されている。機械制御ユニット16は、紡糸ポンプ制御ユニット4.1および巻取り制御ユニット15に接続されている。
【0017】
本発明の目的を達成するために、装置には掻取りロボット19がさらに設けられている。掻取りロボット19は、紡糸口金6.1~6.5の配列方向に対して平行な方向に沿って運動することができる。掻取りロボット19は、紡糸口金6.1~6.5の配列方向に対して平行であるガイドレール20上に可動に配置されている。非作動状態では、掻取りロボット19は、紡糸領域外のベースステーションに配置されている。ベースステーションは、掻取りロボット19が各掻取りタスクの終了後に最終的に戻る場所である。ガイドレール20の長さは、全ての紡糸装置の紡糸口金をカバーするように選択されている。図1の正面図から見ると、ガイドレール20の高さは、紡糸口金6.1~6.5よりも低い。
【0018】
図3は、掻取りロボット19が掻取り動作の開始前に掻取り位置にある状態の、本発明に係る合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための装置の部分的な側面図を概略的に示している。掻取りロボット19は、紡糸ビーム23の下の位置にあるが、掻取りを行っていない時間中には掻取りロボット19が通常の紡出されたフィラメントに干渉しないように、外側の近傍にある。掻取りロボット19の上端部の2つの面には、走行ホイール22が組み付けられている。この走行ホイール22は、図示しないモータにより駆動されている。走行ホイール22は、モータ駆動されてガイドレール20の長手方向に沿って運動することができる。掻取りロボット19の、フィラメントに面した1つの面には、伸縮するために制御可能な第1の入れ子式の伸縮アーム25が設けられている。第1の伸縮アーム25の端部には、ベース26が設けられている。このベース26は、同様に伸縮するために制御可能な第2の入れ子式の伸縮アーム27を内部に有している。掻取りエレメント24.1が、第2の伸縮アーム27の端部に配置されている。掻取りロボット19は、ロボット制御ユニット28により制御されている。図3に示したように、紡糸口金6.1は、紡糸ビーム23の下面に保持されている。紡糸口金6.1の下部には、紡糸口金ノズルプレート29.1が設けられている。紡糸口金ノズルプレート29.1は、紡糸ビーム23の外側にあるので、掻取りロボット19は、紡糸口金ノズルプレート29.1の下面を掻き取ることができる。
【0019】
掻取りロボット19が所望の紡糸装置1.1または1.2へと移動することができるようにするために、各紡糸位置1.1,1.2には、図1に図示されている掻取りボタン5.1,5.2が設けられている。この掻取りボタン5.1,5.2は、機械制御ユニット16にそれぞれ電気的に接続されている。機械制御ユニット16は、ワイヤレス信号エミッタ(無線信号送信器)18を有しているので、制御命令信号を送信することができる。対応してロボット制御ユニット28にはワイヤレス信号受信器21が設けられているので、ワイヤレス信号エミッタ18からの制御命令信号を受信することができる。ロボット制御ユニット28は、制御命令信号に応じて掻取りロボット19の動作を制御する。
【0020】
さらに、機械制御ユニット16は、確認ユニット(checking unit)17を有している。確認ユニット17は、巻取り装置14の巻取り制御ユニット15に接続されているので、巻取り装置14の作業状態を確認することができる。確認ユニット17の確認結果に基づいて、機械制御ユニット16は、対応する制御命令信号を掻取りロボット19のロボット制御ユニット28へと送信する。
【0021】
以下は、本発明に係る合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための方法の詳細な説明である。まず、どの紡糸位置の紡糸口金ノズルプレート29.1を掻き取るべきかの判断が経験および観察に基づいて行われる。次いで、オペレータが、対応する紡糸位置の掻取りボタンを押す。掻取りボタン5.1を例にとる。掻取りボタン5.1は、機械制御ユニット16の確認ユニット17に電気信号を伝達する。次いで、確認ユニット17は、巻取り装置14の巻取り制御ユニット15との通信を実施し、これにより巻取り装置14が巻取り作業状態にあるか否かを判断することができる。巻取り装置14が巻取り作業状態にないことを確認ユニット17が検出すると、つまり紡糸口金6.1~6.5からフィラメントが紡出されていないことを確認ユニット17が検出すると、次いで機械制御ユニット16は、ワイヤレス信号エミッタ18を介して、ロボット制御ユニット28のワイヤレス信号受信器21へと即座に掻取り動作を開始する制御命令信号を送信する。一方、機械制御ユニット16は、紡糸装置1.2の位置に関する信号を、掻取りロボット19のロボット制御ユニット28へと送信する。ロボット制御ユニット28の制御下にある掻取りロボット19は、掻取りタスクを実行するために、対応する紡糸装置1.2の位置に自身を位置決めする。巻取り装置14が巻取り作業状態にあることを確認ユニット17が検出した場合、次いで機械制御ユニット16は、巻管が満管になるまで掻取り動作を待機する制御命令信号を掻取りロボット19に送信する。確認ユニット17は、巻取り制御ユニット15が巻管の巻取り終了の信号を送信するまで、巻取り制御ユニット15との通信を維持する。次いで、機械制御ユニット16は、プロセス中断を開始し、紡糸ポンプ2.1を停止するために、紡糸ポンプ制御ユニット4.1と通信する。並行して、機械制御ユニット16は、ロボット制御ユニット28と通信するので、ロボット制御ユニット28は、移動および掻取り動作を開始するために、掻取りロボット19を制御する。
【0022】
図4は、掻取りロボットが掻取り動作の開始後に掻取り位置にある状態の、本発明に係る合成糸を溶融紡糸し、かつ巻き取るための装置の部分的な側面図を概略的に示している。図4により示されているように、掻取りロボット19が、掻取りが必要である紡糸位置に到達すると、掻取りエレメント24.1が紡糸口金6.1の真下の位置へと達するまで、図示しない駆動装置の動作により第1の伸縮アーム25が外方へと伸びる。第2の伸縮アーム27は、図示しない駆動装置の作用により、掻取りエレメント24.1が紡糸口金ノズルプレート29.1の下面に接触するまで上方へと伸びる。掻取りエレメント24.1は、好適には、回転可能なブラシと、シリコーンオイルを噴射することができるインジェクタとから成っている。掻取りエレメント24.1は、以下の順序を実行するように制御可能である:第1のこすり落とし(scrape)-第1のシリコーンオイル噴射-第2のこすり落とし-第2のシリコーンオイル噴射。
【0023】
図2は、掻取りロボットが、掻取りを必要とする紡糸位置にそれ自体を自己位置決めした状態の、本発明に係る装置の正面図を概略的に示す。好適には、掻取りロボット19は、間隔を置いて配置された5つの掻取りエレメント24.1~24.5を有している。各掻取りエレメント24.1~24.5は、5つの紡糸口金ノズルプレートを同時に掻き取ることができるように、紡糸口金6.1~6.5とそれぞれ整列することができ、このことは、掻取り効率を向上させることができ、各紡糸位置のための掻取り時間を短縮することができる。
【0024】
掻取りタスクの終了後に、第1の伸縮アーム25および第2の伸縮アーム27は、図示しない駆動装置の動作により収縮し、掻取りロボット19は、ロボット制御ユニット28によって制御されてベースステーションに戻るように移動する。
図1
図2
図3
図4