IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マリンクロット ホスピタル プロダクツ アイピー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-1型肝腎症候群患者の治療方法 図1
  • 特許-1型肝腎症候群患者の治療方法 図2
  • 特許-1型肝腎症候群患者の治療方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】1型肝腎症候群患者の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20230911BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230911BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20230911BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230911BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20230911BHJP
   G01N 33/70 20060101ALI20230911BHJP
   A61K 38/095 20190101ALI20230911BHJP
   C07K 14/76 20060101ALN20230911BHJP
   C07K 7/00 20060101ALN20230911BHJP
【FI】
A61K38/08 ZNA
A61P13/12
A61K38/38
A61P43/00 121
G01N33/49 A
G01N33/49 W
G01N33/70
A61K38/095
C07K14/76
C07K7/00
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021102221
(22)【出願日】2021-06-21
(62)【分割の表示】P 2019155678の分割
【原出願日】2015-10-22
(65)【公開番号】P2021155433
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】62/068,357
(32)【優先日】2014-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/151,384
(32)【優先日】2015-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516160429
【氏名又は名称】マリンクロット ホスピタル プロダクツ アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】クーラム ジャミル
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン クリス パッパス
(72)【発明者】
【氏名】ジム ポテンジアーノ
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-159356(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0058265(US,A1)
【文献】特表2010-502979(JP,A)
【文献】特表2013-532635(JP,A)
【文献】GASTROENTEROLOGY,2008年,Vol.134, No.5,pp.1360-1368
【文献】Am J Kidney Dis,2012年,Vol.59, No.6,pp.874-885
【文献】Journal of Hepatology,2014年01月,Vol.60,pp.955-961
【文献】Journal of Hepatology,2009年,Vol.51,pp.475-482
【文献】Critical Care,2005年,Vol.9, No.2,pp.212-222
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00 -38/58
C07K 14/00 -19/00
A61P 1/00 -43/00
A61K 31/00 -31/327
G01N 33/48 -33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者の腎機能を改善させる方法において使用するための組成物であって、前記患者は、顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御不能の感染を有しておらず、前記組成物は、テルリプレシンを含み、前記方法は、
前記HRS-1を有する患者に、3日間まで6時間ごとに0.5mg~1mgのテルリプレシンが投与されるように前記組成物を投与することと;
3日間の投与後に前記患者において血清クレアチニンを測定することと;
前記測定した血清クレアチニンをベースライン血清クレアチニンレベルと比較することと
を含み、
血清クレアチニンが少なくとも30%低下した場合、6時間ごとに0.5mg~1mgのテルリプレシンが投与されるように前記組成物の投与を継続し;
血清クレアチニンが低下したが、30%未満の低下である場合、6時間ごとに2mgのテルリプレシンが投与されるように前記組成物を投与し;
血清クレアチニンが前記ベースライン血清クレアチニンレベルであるかまたは前記ベースライン血清クレアチニンレベルを上回る場合、前記組成物の投与を中止し、
前記組成物は、前記患者に静脈投与され、
HRS-1を有する前記患者は、全身性炎症反応症候群(SIRS)に関する以下の3つの基準(i)~(iii):
(i)白血球数が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超のいずれか、
(ii)心拍数が分当たり90拍超、及び
(iii)HCO3<23mmol/LまたはPaCO2<32mmHgまたは分当たりの呼吸数>20
のうちの少なくとも2つを満たす、組成物。
【請求項2】
≦1.5mg/dlの血清クレアチニンレベルに達するまで、前記組成物がさらに投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記患者への前記組成物の投与がHRS-1を反転させる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が最大14日間投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物がIVボーラス注射として投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記IVボーラス注射が2分にわたる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記患者への前記組成物の投与が、1つまたは複数の合併症因子の反転をもたらす、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
1つまたは複数の合併症因子の反転が、前記組成物の投与を起点とする90日以内の関連合併症による死亡率を減少させる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記患者が、HRSの反転、HRSの反転の確認、および/または、SCrにおける25%を上回る改善を経験する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記患者が全身性炎症反応症候群(SIRS)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、各日に、一日当たり最大100g以下のアルブミンと組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記患者が冠状動脈疾患、循環過負荷、肺水腫、または治療抵抗性気管支痙攣を有する場合、前記テルリプレシンの量が増やされない、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記患者が非虚血性有害事象を有する場合、前記方法がさらに投与を中断することを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記方法が、前記非虚血性有害事象が消散した後に、同じまたはより低い用量でのテルリプレシンの投与を再開することをさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2015年4月22日に出願された米国特許出願第62/151,384号及び2014年10月24日に出願された米国特許出願第62/068,357号の優先権を主張し、これらの内容全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示の原理及び実施形態は、概して1型肝腎症候群患者の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1型肝腎症候群(1型HRSまたはHRS-1)は、任意の他の原因が存在しない場合において後期の肝硬変患者に発生する急性腎不全である。1型肝腎症候群は、3か月以内で80%を超える高い死亡率を有する腎不全の急速な発症によって特徴づけられる。腎不全は肝硬変の合併症として識別されており、急性腎不全により肝硬変の患者が予後不良に至ることが知られている。様々な場合において、腎不全は、血液量減少、進行中の感染を伴わない肝腎症候群、または進行中の感染を伴う肝腎症候群が原因となり得る。残念なことに、1型HRS患者は肝臓移植を待機中に腎不全で死亡する場合がある。1型HRSを反転させるためのテルリプレシン治療からどの患者が最大限に利益を受けられるであろうかを判定する方法は、現在存在しない。
【0004】
肝腎症候群(HRS)は、腎臓の血管収縮、血管抵抗の低下をもたらす内臓及び末梢動脈の血管拡張、ならびに門脈圧亢進が原因となる低い糸球体濾過率によって表される。HRSは、腹水、血清クレアチニンレベル>133μmol/l(1.5mg/dL)、利尿剤の休薬及びアルブミンによる容積拡張から少なくとも2日後に血清クレアチニンレベルの改善(≦133μmol/lレベルへの低下)が見られないこと、ならびにショック及び実質性腎臓疾患の不在によって表される。1型HRSは、血清クレアチニンの初期レベルから2週間未満で>226μmol/l(2.56mg/dL)に倍加することによって表される。
【0005】
正常なクレアチニンレベルは、男性で0.7~1.3mg/dL、女性で0.6~1.1mg/dLの範囲である。クレアチニン1mg/dlは88.4μmol/lに相当する。
【0006】
ある特定の機序は、肝硬変患者において有効動脈血液量及び比較的正常の動脈圧を維持するように働くが、ナトリウム及び溶質非含有水分の保持などの腎機能に影響を及ぼし、腎臓内血管収縮及び低灌流を引き起こすことによって、腹水症及び浮腫ならびに腎不全をもたらす恐れがある。腹水(acite)は、門脈高血圧及び内臓動脈の血管拡張の組合せに起因する可能性があり、これは腸の毛管血管の圧力及び浸透性を変え、保持された液体の腹腔内貯留を促進する。
【0007】
腹水形成に寄与する因子は、有効動脈血液量の低下をもたらす内臓血管拡張である。門脈高血圧も、硬変肝臓の門脈血流に対する肝臓の抵抗が増加することに起因するものであり、内臓血管拡張を誘導し得る。溶質非含有の腎臓水分排出及び腎臓血管収縮における顕著な障害が存在する可能性があり、これがHRSをもたらす。
【0008】
様々な場合において、INR>1.5、腹水症、及び脳症を含めた肝臓の代償不全の徴候が存在し得る。低ナトリウム血症も肝硬変及び腹水を有する患者に頻繁にみられる合併症であり、病的状態の増大に付随する。
【0009】
全身性炎症反応症候群(SIRS)は必ずしも感染には関連しない炎症性反応であるが、初期にローカルサイトカインを産生する非特異的発作が原因となり得る。SIRSは通常、以下の4つの判定基準によって特徴づけられる:(1)深部体温が36℃(96.8°F)未満または38℃(100.4°F)超、(2)心拍数が分当たり90拍超、(3)分当たり20呼吸超の頻呼吸(高い呼吸数)または動脈血二酸化炭素(CO2)分圧が4.3kPa(32mmHg)未満、及び(4)白血球数が4000細胞/mm(4x109細胞/L)未満または12,000細胞/mm(12x109細胞/L)超;または、未熟好中球(棒状核球)が10%超存在(3%超の棒状核球はバンデミア(bandemia)または「左方移動」と呼ばれる)。これらの判定基準のうちの2つ以上が存在するときにSIRSと診断され得る。
【0010】
敗血症は感染に対する全身性の炎症反応と定義され、敗血症ショックは、補液蘇生に対して抵抗性の低血圧または高乳酸塩血症と合併した敗血症である。
【0011】
HRS及びSIRSにかかっている患者の死亡率は約70%であり、かなり高いと言える。
【0012】
末期肝疾患及び全身性炎症反応を有する患者に複数の研究が行われてきた。そのような研究の1つであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、HEPATOLOGY, Vol. 46, No. 6, 2007に開示されているThabut et al.による「Model for End-Stage Liver Disease Score and Systemic Inflammatory Response Are Major Prognostic Factors in Patients with Cirrhosis and Acute Functional Renal Failure」という題の研究では、感染の有りまたは無しを含めたSIRS判定基準の存在は、肝硬変及び急性機能的腎不全の患者における主要な独立した予後因子であると結論付けられている。
【0013】
HRS及びSIRSの存在は、短期間内に適切な薬物療法で効果的に治療しない場合、通常は短い余命を意味する。従って、特定の症状を示す患者に最も効果的な治療を識別し、その患者が可能な限り迅速に妥当なレジメンを開始することが最も重要である。
【0014】
テルリプレシンは長期の効果を有するバソプレシンの合成類似体であり、ペプチド性のバソプレシンVIa受容体アゴニストとして作用する。テルリプレシンは、3つのアミノ酸残基でN末端を拡張することによって調製されるバソトシン誘導体であり、低血圧管理における血管作動薬として使用する。テルリプレシンは、ペプチドシンセサイザを用いて液相または固相においてアミノ酸を段階的に互いに結合させることによって合成することができる。テルリプレシンは、リシン-バソプレシンへと低速で代謝するプロドラッグであり、この方法で長期の生物学的効果をもたらす。テルリプレシンの半減期は、6時間(作用持続期間2~10時間)であり、わずか6分のバソプレシン(作用持続期間30~60分)の短い半減期とは対照的である。
【0015】
注入用製剤におけるテルリプレシンの化学構造を、以下に示す。
【化1】
活性成分N-[N-(N-グリシルグリシル)グリシル]-8-L-リシンバソプレシンは合成的に作られた8-リシンバソプレシンのホルモン前駆体であり、12アミノ酸で構成され、第4と第9アミノ酸の間にジスルフィド架橋を伴う環状ノナペプチドの特徴的な環構造を有する。3つのグリシル-アミノ酸が8-リシン-バソプレシンの1(システイン)位で置換されている。この8-リシン-バソプレシンのN末端伸張によって、活性成分の代謝分解速度が著しく減少するが、これはグリシル分子が迅速なN末端酵素分解を阻害するためである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】HEPATOLOGY, Vol. 46, No. 6, 2007、 Thabut et al.、Model for End-Stage Liver Disease Score and Systemic Inflammatory Response Are Major Prognostic Factors in Patients with Cirrhosis and Acute Functional Renal Failure
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、テルリプレシンがある特定の判定基準を示す患者には非常に有効であるが、この判定基準を満たさない患者には有効ではないという驚くべき発見のために、重篤状態の患者に対する不必要な薬物投与を避けるものである。ほとんどの薬物療法の場合と同様、副作用及び合併症が問題となり得る。テルリプレシン関連で予想される警告及び注意事項には、虚血が含まれる。(心臓、胃腸、及び皮膚の)虚血性事象がテルリプレシンの投与後に発生する恐れがあり、一時的な中断、用量の減量、または恒久的中止が必要となり得る。アンギナ、ECGの変化、消化器系出血を伴う激しい腹痛、末梢性チアノーゼ及び四肢痛が所見に含まれ得る。さらに、平滑筋に対し収縮作用があるため、テルリプレシンは重度の喘息または慢性の閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者には慎重に使用するべきである。これらの障害を有する患者がテルリプレシン投与を受ける場合は、注意深くモニターし、任意の気管支痙攣を症候的に治療するべきである。また、テルリプレシンを妊婦に投与すると、著しい子宮活性の増加及び子宮内膜の血流減少を引き起こすため、胎児に害をもたらす恐れがある。HRS-1患者が重篤状態であり、かつテルリプレシンが副作用を有し得ることから、患者がテルリプレシンに反応する見込みがあるかを判定しそういった患者のみを治療することは極めて有益でありかつ救命措置でさえあり得る。というのは、テルリプレシンがHRS-1患者の33-60%に有効なことが知られているからである。(Krag et al. Adv Ther. 2008; 25(11):1105-1140を参照)10%超の患者に見られる有害反応には、嘔吐、腹痛、悪心、下痢、腸管虚血、呼吸困難、くしゃみ、肺水腫及び水分過負荷が含まれた。HRS-1によってすでに脆弱状態にある患者にとっては、この全ての状態が有害となり得るであろう。
【0018】
本開示の原理及び実施形態は、概して、HRS-1反転を得るためにテルリプレシンを投与することによってHRS-1患者を治療する方法に関する。1つまたは複数の実施形態では、反応判定基準は、患者のテルリプレシン投与に対する反応が改善する見込みを示すという新しく有用な機能を提供する。
【0019】
本開示の一部の態様はHRS-1を治療する方法に関し、この方法は、HRS-1を有する複数の患者を識別することと、前記複数の患者のうちの第1の患者が、以下の3つの判定基準:
(i)白血球数(WBC)が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超、
(ii)心拍数が分当たり90拍(BPM)超、及び
(iii)血中二酸化炭素分圧(PaCO2)<32mmHg、または血中重炭酸塩(HCO3)レベル<23mmol/L
のうちの少なくとも2つを示すと判定することと、第1の患者が少なくとも3つの判定基準のうちの少なくとも2つを示すことを理由に、第1の患者のHRS-1がテルリプレシンでの治療に反応する可能性が高いと判定することと、第1の患者におけるHRS-1を治療するのに有効な量のテルリプレシンを第1の患者に投与することと、複数の患者のうちの第2の患者が3つの判定基準のうちのわずか1つまたは0を示すと判定することと、第2の患者が少なくとも3つの判定基準のうちの少なくとも2つを示さないことを理由に、第2の患者のHRS-1がテルリプレシンでの治療に反応する可能性が低いと判定することと、第2の患者をテルリプレシンでの治療から除外することとを含む。
【0020】
様々な実施形態では、第2の患者にテルリプレシン以外の治療が投与される。
【0021】
様々な実施形態では、判断基準(iii)はHCO3レベル<23mmol/Lであり、これは代替的にHCO3レベル<21mmol/Lであってもよい。
【0022】
様々な実施形態では、テルリプレシンの投薬量は1~28日間に1日当たり2.0mg~12.0mgの範囲である。この方法は、テルリプレシン投与の1~28日の間に第1の患者が血清クレアチニン(SCr)レベルの減少を有するかを判定することも含み得る。
【0023】
様々な実施形態では、第1の患者に投与されるテルリプレシンの量は、4~6時間ごとに約0.5mg~約2.0mgの範囲である。一部の実施形態では、テルリプレシンは、0.5mg~2.0mgの範囲で4~6時間に1回、単回用量として投与される。
【0024】
様々な実施形態では、患者のHRS-1を治療する方法は、テルリプレシン投与の最初の1~4日の間に第1の患者が血清クレアチニン(SCr)レベル減少を有するかを判定することをさらに含む。
【0025】
様々な実施形態では、患者のHRS-1を治療する方法は、治療の最初の1~4日の間に第1の患者がSCrレベルの減少を示さない場合は、第1の患者へのテルリプレシン投与を中止することを含む。
【0026】
様々な実施形態では、患者のHRS-1を治療する方法は、治療の最初の1~4日の間に第1の患者がSCrレベルの減少を示す場合は、第1の患者へのテルリプレシン投与を追加の3~12日間継続することを含む。
【0027】
様々な実施形態では、第1の患者へのテルリプレシン投与は、SCrレベルの≦1.5mg/dlへの低下として定義されるHRS-1反転をもたらす。
【0028】
様々な実施形態では、患者のRS-1を治療する方法は、患者がテルリプレシンを投与される期間の各日に、アルブミン一日当たり最大100g以下で第1の患者を治療することを含む。
【0029】
様々な実施形態では、テルリプレシンによる治療から除外されるHRS-1患者、またはテルリプレシン治療を中止した患者は、ノルエピネフリン、バソプレシン、またはミドドリン及びオクトレオチドの組合せなどの、1つまたは複数の他の薬理学的薬剤で治療してもよい。複数の実験的薬剤が、HRSの患者の腎機能改善にいくらかの効果を示した。これらの薬剤には、N-アセチルシステイン、ミソプロストール(プロスタグランジンE1及び腎血管拡張薬の合成類似体)、及び(ET)aエンドセリン受容体アンタゴニストであるBQ123を含む。BQ123は、以下の配列の5アミノ酸からなる環状ペプチドである:D-トリプタミン-D-アスパラギン酸-L-プロリン-D-バリン-L-ロイシン。別の選択肢は、経頸静脈的肝内門脈体循環シャント(TIPS)であり、これは肝血管に挿入して血流の流れを変え、それによって門脈圧を減少させる、自己拡張可能な金属ステントである。透折形態での腎臓支持は、特に薬理学的療法が失敗する場合に、HRS-1患者の急性水分過負荷を管理するために一般に開始される。末期の肝硬変及びHRSに対する唯一の有効かつ恒久的治療は、肝臓移植である。
【0030】
本開示の態様は、肝疾患に関連する腎機能障害の治療のためのテルリプレシンの有効性を増加させる方法であって、末期肝疾患及び腎機能障害を有する複数の患者を識別することと、この複数の患者を検査して各患者が以下の3つの判定基準(i)~(iii):
(i)白血球数が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超のいずれか、
(ii)心拍数が分当たり90拍超、及び
(iii)(a)PaCO2<32mmHg、または(b)HCO3レベル<23mmol/L、または(c)分当たり20呼吸超の頻呼吸のいずれかの各々を満たすかを判定することと、複数の患者のうちの第1の患者が3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たすと判定することと、第1の患者が3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たすことを理由に、第1の患者が3つの判定基準のうちのわずか1つまたは0を示した場合に比べて、第1の患者の腎機能がテルリプレシンによる治療時に改善する可能性がより高いと判定することと、第1の患者の腎機能を改善するのに有効な量のテルリプレシンを第1の患者に投与することと、複数の患者のうちの第2の患者が3つの判定基準のうちのわずか1つまたは0を満たすと判定することと、第2の患者が3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たさないことを理由に、第2の患者が3つの判定基準のうちの少なくとも2つを示した場合に比べて、第2の患者の腎機能がテルリプレシンによる治療に反応する可能性がより低いと判定することと、第2の患者をテルリプレシンでの治療から除外することとを含む。
【0031】
様々な実施形態では、複数の患者が肝硬変を有すると識別され、その実施形態の一部では、その患者は同じくBまたはCのチャイルドピュースコアを有するものとしても識別される。
【0032】
様々な実施形態では、テルリプレシンによる治療中に第1の患者を検査して、第1の患者の腎機能がテルリプレシンによる治療前の患者の腎機能と比べて改善しているかを判定する。
【0033】
様々な実施形態では、判定基準(iii)はHCO3レベル<23mmol/Lであり、これは代替的にHCO3レベル<21mmol/Lであってもよい。
【0034】
様々な実施形態では、テルリプレシンの有効性を増加させる方法は、複数の患者のうちの第3の患者が顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御不能の感染を有すると判定することと、顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御不能の感染の存在を理由に第3の患者をテルリプレシン投与から除外することとをさらに含む。
【0035】
様々な実施形態では、この方法には複数の患者がチャイルドピュースコアBまたはCの肝硬変を有すると判定することが含まれる。
【0036】
様々な実施形態では、4時間~6時間の期間にわたって第1の患者に投与されるテルリプレシンの投薬量は0.5mg~約2.0mgの範囲である。
【0037】
様々な実施形態では、テルリプレシンは持続的静脈内点滴として第1の患者に投与される。
【0038】
様々な実施形態では、第1の患者に投与されるテルリプレシンの投薬量は各24時間の投与期間にわたって4.0mgを超えない。
【0039】
様々な実施形態では、テルリプレシンの有効性を増加させる方法は、第1の患者にテルリプレシン投与を開始する前の2日以内に第1の患者のベースライン血清クレアチニンレベルを測定することと、テルリプレシン投与の開始後4日以内に第1の患者を少なくとも1回検査して第1の患者の血清クレアチニンレベルがベースラインレベルと比べて低下したかを判定することとをさらに含む。
【0040】
様々な実施形態では、テルリプレシン投与開始後の第1の患者の血清クレアチニンレベルの検査が第1の患者の血清クレアチニンレベルがベースラインレベルと比べて低下したことを示す場合は第1の患者へのテルリプレシン投与を継続し、第1の患者が血清クレアチニンレベルの低下を示さない場合は投与が中止される。
【0041】
様々な実施形態では、第1の患者の血清クレアチニンレベルがベースラインレベルと比べて低下したことが示される場合は患者へのテルリプレシン投与が追加の3日~12日間(例えば、3~8日)継続される。様々な実施形態では、血清クレアチニンレベルが検査されて<1.5mg/dLに低下したことが示される。様々な実施形態では、患者へのテルリプレシン投与は、<1.5mg/dLのSCr値が少なくとも1つ得られるまで継続してもよい。様々な実施形態では、HRS反転が13日目または14日目に最初に達成された場合は、それぞれ最大15日または16日まで治療期間を延長してもよい。
【0042】
本開示の態様は、HRS-1を治療するための方法であって、HRS-1を有する複数の患者を診断することと、複数の患者のうち第1及び第2の患者が顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御不能な感染を有しないと判定することと、第1及び第2の患者を検査して、各々が以下の3つの判定基準(i)~(iii):
(i)白血球数が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超のいずれか、
(ii)心拍数が分当たり90拍超、及び
(iii)(a)血中二酸化炭素分圧(PaCO2)<32mmHg、または(b)血中重炭酸塩(HCO3)レベル<23mmol/L、または(c)分当たり20呼吸超の頻呼吸のいずれか
の各々を満たすかを判定することと、第1の患者が3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たすと判定することと、第1の患者が3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たすことを理由に、第1の患者が3つの判定基準のうちのわずか1つまたは0を示した場合に比べて、第1の患者の腎機能がテルリプレシンによる治療時に改善する可能性がより高いと判定することと、第1の患者が3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たすとの判定から2日以内に第1の患者にテルリプレシン投与を開始することであって、テルリプレシンが第1の患者の血清クレアチニンレベルを少なくとも1.0mg/dL減少させるのに有効な量で静脈内投与される、開始することと、第2の患者が3つの判定基準のうちのわずか1つまたはゼロを満たすと判定することと、第2の患者が3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たさないことを理由に、第2の患者が3つの判定基準のうちの少なくとも2つを示した場合に比べて、第2の患者の腎機能がテルリプレシンによる治療に反応する可能性がより低いと判定することと、第2の患者をテルリプレシンでの治療から除外することとを含む、方法に関する。
【0043】
様々な実施形態では、第2の患者にテルリプレシン以外の治療が投与される。第2の患者は、ノルエピネフリン、バソプレシン、またはミドドリン及びオクトレオチドの組合せのうちの1つまたは複数で治療してもよく、及び/または経頸静脈的肝内門脈体循環シャントを提供してもよい。代替的にまたは加えて、第2の患者は、一部の実施形態では腎臓透折で治療する。
【0044】
様々な実施形態では、判定基準(iii)はHCO3レベル<23mmol/Lであり、代替的にHCO3レベル<21mmol/Lであってもよい。
【0045】
様々な実施形態では、第1の患者はテルリプレシンを静脈内に4~6時間ごとに16日間投与される。
【0046】
様々な実施形態では、テルリプレシンは、ボーラスまたは低速静脈内注入で投与され得る。一実施形態では、開示されている本発明で1型HRS患者を治療する方法は、必要に応じて1回または複数回繰り返され得る。一態様では、1型HRSが初回治療の中止後に再発する場合、テルリプレシンは、同じ用量レジメンを用いて追加の1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、または3週間以下の間再投与してもよい。別の態様では、テルリプレシンはHRS-1反転の2日後、または血清クレアチニンレベルが初めて≦1.5mg/dLに達したときに中止することができる。
【0047】
本開示の態様は、他のHRS-1患者と比べてテルリプレシンによる治療に対して反応する見込みが増加しているHRS-1患者の下位集団を識別する方法であって、HRS-1を有しかつ顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御不能な感染を有しない複数の患者を識別することと、この複数の患者のうちの各々の患者について、以下の3つの変数(a)~(c):
変数(a):白血球数;
変数(b):分あたりの心拍数;
変数(c):血中のHCO3レベルもしくはPaCO2レベルまたは分当たりの呼吸数;
のうちの少なくとも2つを測定することと、この複数の患者内で、以下の3つの基準(i)~(iii):
(i)白血球数が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超のいずれか、
(ii)心拍数が分当たり90拍超、及び
(iii)HCO3<23mmol/LまたはPaCO2<32mmHgまたは分当たりの呼吸数>20
のうちの少なくとも2つを満たす1人以上の患者を含む下位集団を識別することであって、この複数の患者のうちの他の患者は、3つの判定基準のうちのわずか1つまたはゼロを満たすために下位集団に入らない、識別することと、下位集団における1人以上の患者が、下位集団に入らない複数の患者のうちの他の患者と比べて、テルリプレシンによる治療に反応する見込みが増加していると判定することとを含む、方法に関する。
【0048】
様々な実施形態では、テルリプレシンに反応する見込みが増加しているHRS-1患者を識別する方法は、少なくとも1人の患者の血清クレアチニンレベルを治療開始後に測定することと、この少なくとも1人の患者の血中の血清クレアチニンレベルがテルリプレシンによる治療時に低下したことを観測することとをさらに含む。
【0049】
様々な実施形態では、複数の患者のうち、3つの判定基準のうちのわずか1つまたはゼロを満たす患者は下位集団に入らず、テルリプレシン治療から除外される。
【0050】
様々な実施形態では、判定基準(iii)はHCO3レベル<23mmol/Lであり、これは代替的にHCO3レベル<21mmol/Lであってもよい。
【0051】
本開示の別の態様は、以下の3つの判定基準(i)~(iii):
(i)白血球数が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超のいずれか、
(ii)心拍数が分当たり90拍超、及び
(iii)HCO3<23mmol/LまたはPaCO2<32mmHgまたは分当たりの呼吸数>20
のうちの2つ以上を満たす患者における、HRS-1治療のためのテルリプレシンの使用であって、テルリプレシンの使用量が、ベースラインに比べて少なくとも25%の血清クレアチニンの減少、HRS反転、及び/またはHRS反転の確認をもたらすのに有効である、使用に関する。
【0052】
本開示の別の態様は、1型肝腎症候群にかかっている患者の治療を担当する医療提供者にテルリプレシンを供給することと、(a)1型肝腎症候群にかかっている、(b)顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御不能な感染を有しない、及び(c)以下の3つの判定基準(i)~(iii):
(i)白血球数が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超のいずれか、
(ii)心拍数が分当たり90拍超、及び
(iii)HCO3<23mmol/LまたはPaCO2<32mmHgまたは分当たりの呼吸数>20
のうちの2つ以上を満たす、患者を治療するための推奨基準を医療提供者に提供することとを含む、方法に関する。
【0053】
本開示の実施形態のさらなる特色、性質及び様々な利点は、以下の発明を実施するための形態を添付の図面と併せて検討することでより明らかになるであろう。添付の図面は、出願人が考慮した最良の形態を例示するものでもあり、全体を通して同様の参照文字列は同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】テルリプレシン治療プロトコールの例示的な実施形態を図示する。
図2】テルリプレシン治療プロトコールの例示的な実施形態を図示する。
図3】テルリプレシン治療プロトコールの例示的な実施形態からの予想外な結果のセットを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本開示の原理及び実施形態は、テルリプレシンを含む治療プロトコールを伴っての、患者の腎臓状態を改善する方法に関する。従って、本開示の種々の実施形態は、テルリプレシンまたはテルリプレシン及びアルブミンで患者を治療する方法を提供する。
【0056】
本開示の実施形態では、患者がかかっている特定の疾患及び/または症候群を決定するために患者を評価し、テルリプレシン投与から利益を得ることになる患者のための治療レジメンを開始する。
【0057】
様々な実施形態では、患者はHRSなどの、急性腎不全と合併した末期肝疾患を有し、テルリプレシンで治療される。
【0058】
様々な実施形態では、末期肝疾患は、肝硬変または劇症肝不全であり得る。様々な実施形態では、末期肝疾患は腎機能障害と合併する。
【0059】
本開示の一態様は、HRS反転の可能性増加によって表されるようなテルリプレシン治療への反応改善を示す患者の診断方法に関連する。
【0060】
1つまたは複数の実施形態では、テルリプレシン治療レジメンに反応する見込みが増加しているHRS-1患者を識別する方法は、末期肝疾患(live disease)及び腎機能障害を有する患者を識別することと、この患者がSIRSの3つの判定基準のうちの少なくとも2つを示すこともするかを判定することであって、3つの反応判定基準には(1)白血球数(WBC)が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超、(2)心拍数が分当たり90拍(BPM)超、及び(3)HCO3<21mmol/L(HCO3は、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)<32mmHgの反応判定基準に近い代替測定値と考えられている)が含まれる、判定することとを含む。様々な実施形態では、心拍数>85BPM及び/またはHCO3<23mmol/Lを反応判定基準として適用することができる。
【0061】
本開示の態様は、以下の3つの反応判定基準:
(a)白血球数(WBC)が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超であること、
(b)心拍数が分当たり90拍(BPM)超、及び
(c) HCO3<21mmol/L(HCO3は、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)<32mmHgの反応判定基準に近い代替測定値と考えられている)、のうちの少なくとも2つを示すこともする患者におけるHRS-1治療で使用するためのテルリプレシンに関する。様々な実施形態では、テルリプレシンの1つまたは複数の単回投薬量が対象に投与され、それによってHRS-1を治療する。
【0062】
様々な実施形態では、テルリプレシンの投薬は、一連の単回用量として約0.5mg~約2.0mgの範囲で4~6時間ごとに患者に投与され、それによって患者はテルリプレシン約0.5mg~約2.0mgの範囲で単回用量を受け、4~6時間後に別の単回用量を受ける。様々な実施形態では、患者は24時間にわたって4~6用量を受けてもよく、各々の用量は約0.5mg~約2.0mgの範囲である。様々な実施形態では、合計投薬量は24時間にわたって4.0mgを超えない。
【0063】
図1に示すような、テルリプレシン治療プロトコールの一実施形態を介した、患者を治療する方法の例示的な実施形態。
【0064】
様々な実施形態では、最初に末期肝疾患を有すると識別される患者であってこの疾患に対し血管拡張薬が腎機能の改善をもたらす可能性のある患者を検査して、患者の肝硬変及び腎不全の程度を判定する。
【0065】
110では、患者はまず末期肝疾患(live disease)及び腎機能障害を有すると識別される。様々な実施形態では、患者は肝硬変または劇症肝不全にかかっている可能性があり、肝硬変を有すると識別される患者はチャイルドピュースコアA、B、またはCを有し得る。様々な実施形態では、肝硬変を有すると識別されかつチャイルドピュースコアBまたはCを有する患者は、テルリプレシン治療を実施可能な候補と考えられ得る。様々な実施形態では、肝硬変を有すると識別されかつチャイルドピュースコアCを有する患者は、テルリプレシン治療を実施可能な候補と考えられ得る。[0062]様々な末期肝疾患の合併症、特に肝硬変の合併症が認識され、これらは顕著な予後不良を有する。
【0066】
1つまたは複数の実施形態では、テルリプレシンの投薬を含む治療プロトコールは、驚くべきことに血管拡張などの1つまたは複数の合併症因子の反転をもたらし、治療を起点とする90日以内の関連合併症による死亡率を減少させる。
【0067】
1つまたは複数の実施形態では、テルリプレシン治療プロトコールは、末期肝疾患及び腎機能障害を有する患者を識別することであって、識別される患者がテルリプレシン投与を含む治療から利益を受け得る、識別することと、この患者が3つの反応判定基準のうちの少なくとも2つを示すこともするかを判定することと、腎機能の改善(腎機能の改善はベースラインからの少なくとも25%のSCr減少によって表される)、HRS反転(Scrレベルの≦1.5mg/dlへの低下として定義される)、及び/またはHRS反転の確認(少なくとも48時間隔てた2つの血清クレアチニン値≦1.5mg/dlとして定義される)をもたらすために有効な量のテルリプレシンの1日投薬量をこの患者に投与することによってテルリプレシン治療を開始することとを含む。
【0068】
1つまたは複数の実施形態では、テルリプレシン投薬量は、単回投与当たり約mg~約10mg、または0.5mg~約5.0mg、または0.5mg~約2.0mg、または0.5mg~約mg、または約1.0mg~約2.0mgの範囲であってよい。様々な実施形態では、注入は低速ボーラス注入として2分にわたって静脈内投与してもよく、投与を4~6時間ごとに繰り返してもよい。療法の4日目(最低限10投与後)にSCrが低下していたがベースライン値から30%未満の低下である場合、用量を6時間(±30分)ごとに2mg(8mg/日)に増やしてもよい。対象が冠状動脈疾患を有していた場合、または循環過負荷、肺水腫、もしくは治療抵抗性気管支痙攣の臨床状況においては、用量を増やすことができない。様々な実施形態では、非虚血性有害事象のために投薬を中断した場合は、テルリプレシンを同じまたはより低い用量(すなわち、6時間ごとに0.5~1mg)で再開することができる。
【0069】
180では、末期肝疾患及び腎機能障害と診断されない患者がテルリプレシン治療から除外される。
【0070】
1つまたは複数の実施形態では、患者は3つの特定の反応判定基準について検査し、判断基準には、(1)白血球数(WBC)が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超であるか、(2)患者が分当たり90拍(BPM)超の心拍を有するか、及び/または(3)患者が分当たり20呼吸超の頻呼吸またはHCO3<21mmol/L(HCO3は、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)<32mmHgの反応判定基準に近い代替測定値と考えられている)を有するか、を判定することが含まれる。様々な実施形態では、患者が2つ以上の反応判定基準を有するかを判定する際に、患者の深部体温36℃(96.8°F)未満または38℃(100.4°F)超という反応判定基準は、測定されることも考慮されることもない。様々な実施形態では、判定基準は任意の順序で検査してよい。
【0071】
120では、患者は、患者のWBCが<4,000または>12,000細胞/mmであるかを判定する検査を受ける。様々な実施形態では、この検査は、患者の白血球が4000細胞/mm(4x109細胞/L)未満または12,000細胞/mm(12x109細胞/L)超であるかを判定することに特に向けられている。様々な実施形態では、患者のWBCが<5,000または>12,000細胞/mm3である場合は、患者は反応判定基準を満たすとみなされることになる。様々な実施形態では、患者は10%超の未熟好中球(棒状核球)の有無を調べるための検査を受けない。様々な実施形態では、WBCを判定する検査方法は、当技術分野で知られている任意の方法であってよい。
【0072】
患者が4,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBCを有しないことが見出される場合であっても他の2つの反応判定基準を満たす場合は、患者はまだSIRSと診断される可能性がある。
【0073】
様々な実施形態では、WBC<4,000または>12,000の細胞/mm3を有する患者は、反応判定基準を満たすとみなされる。
【0074】
130では、4,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBCを有しない患者は、心拍数が>90BPMであるかを判定するための検査を受ける。患者の心拍数が>90BPMである場合、この患者は反応判定基準を満たすとみなされることになる。様々な実施形態では、心拍数>85BPMの患者は反応判定基準を満たすとみなされることになる。患者の心拍数を判定する検査方法は、当技術分野で知られている任意の方法であってよい。
【0075】
様々な実施形態では、WBCが5,000~12,000細胞/mm3の範囲外の患者は、心拍数が>90BPMであるかを判定するための検査を受ける。患者の心拍数が>90BPMである場合、この患者は反応判定基準を満たすとみなされることになる。様々な実施形態では、心拍数>85BPMの患者は反応判定基準を満たすとみなされることになる。
【0076】
185では、WBC<4,000または>12,000細胞/mm3及び>90BPMの心拍数を両方示さない患者は、3つの反応判定基準のうちの2つに適格でないとみなされ、従ってテルリプレシンで治療するための要件を満たさない。3つの反応判断基準のうちの少なくとも2つを満たさない患者は、テルリプレシン治療から除外される。このような患者は、代わりに、ノルエピネフリン、バソプレシン、またはミドドリン及びオクトレオチドの組合せなどの1つまたは複数の他の薬理学的薬剤で治療することができる。代替的にまたは加えて、以下のうちのいずれかを使用してもよい:N-アセチルシステイン、ミソプロストール、及び/またはBQ123。別の選択肢は、経頸静脈的肝内門脈体循環シャント(TIPS)である。透折形態での腎臓支持は、特に薬理学的療法が失敗する場合に、HRS-1患者の急性水分過負荷を管理するために一般に開始される。末期の肝硬変及びHRSに対する唯一の有効かつ恒久的治療は、肝臓移植である。
【0077】
140では、WBCが4,000~12,000細胞/mm3の範囲外または>90BPMの心拍数である患者は、分当たりの呼吸数>20またはHCO3<21mmol/Lであるかを判定する検査を受ける。患者が分当たりの呼吸数>20またはHCO3<21mmol/Lであれば、この患者は反応判定基準を満たすとみなされることになる。様々な実施形態では、HCO3<23mmol/Lの患者が反応判定基準を満たすとみなされることになる。患者の呼吸数またはHCO3を判定する検査方法は、当技術分野で知られている任意の方法であってよい。
【0078】
様々な実施形態では、WBCが5,000~12,000細胞/mm3の範囲外の患者は、分当たりの呼吸数>20の呼吸数またはHCO3<21mmol/Lであるかを判定するための検査を受ける。患者が分当たりの呼吸数>20の呼吸数またはHCO3<21mmol/Lであれば、この患者は反応判定基準を満たすとみなされることになる。様々な実施形態では、HCO3<23mmol/Lの患者が反応判定基準を満たすとみなされることになる。
【0079】
1つまたは複数の実施形態では、患者が4,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBCを有しかつ分当たりの呼吸数>20またはHCO3<21mmol/Lを有する場合、この患者は3つの反応判定基準のうちの2つに適格であるとみなされ、従って、別途除外されない限り、テルリプレシンで治療するための要件を満たす。
【0080】
1つまたは複数の実施形態では、患者が>90BPMの心拍数を有しかつ分当たりの呼吸数>20の呼吸数またはHCO3<21mmol/Lを有する場合、この患者は3つの反応判定基準のうちの2つに適格であるとみなされ、従って、別途除外されない限り、テルリプレシンで治療するための要件を満たす。
【0081】
135では、4,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBCを有するが分当たりの呼吸数>20またはHCO3<21mmol/Lを有しない患者は、心拍数が>90BPMであるかを判定するための検査を受ける。患者の心拍数が>90BPMである場合、この患者は反応判定基準を満たすとみなされることになる。様々な実施形態では、心拍数>85BPMの患者は反応判定基準を満たすとみなされることになる。
【0082】
1つまたは複数の実施形態では、患者が5,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBCを有するが分当たりの呼吸数>20またはHCO3<21mmol/Lを有しない場合、この患者は心拍数が>90BPMであるかを判定するための検査を受ける。患者の心拍数が>90BPMである場合、この患者は反応判定基準を満たすとみなされることになる。様々な実施形態では、心拍数>85BPMの患者は反応判定基準を満たすとみなされることになる。
【0083】
1つまたは複数の実施形態では、患者が分当たりの呼吸数>20の呼吸数またはHCO3<21mmol/L、>90BPMの心拍数を有しかつ分当たりの呼吸数>20の呼吸数またはHCO3<21mmol/Lを有する場合、この患者は3つの反応判定基準のうちの2つに適格であるとみなされ、従って、別途除外されない限り、テルリプレシンで治療するための要件を満たす。
【0084】
186では、(1)分当たりの呼吸数>20の呼吸数またはHCO3<21mmol/Lを示さずかつ(2)>90BPMの心拍数を示さない患者は、3つの反応判定基準のうちの少なくとも2つに適格でないとみなされ、従ってテルリプレシンで治療するための要件を満たさない。3つの反応判断基準のうちの少なくとも2つを満たさない患者は、テルリプレシン治療から除外される。このような患者のための任意選択の代替的治療は上に記載されている。
【0085】
例示的な実施形態のために反応判定基準の検査がある特定の順序で論じられてきたが、検査は任意の特定の順序で行うことができる。
【0086】
1つまたは複数の実施形態では、患者の体温はテルリプレシンへの患者の反応を判定する正確な目安にならない可能性があるため、体温は反応判定基準ではない。様々な実施形態では、患者の体温は反応判定基準のセットから除外される。
【0087】
150では、腎機能障害を伴う末期肝疾患患者は、3つの反応判断基準のうちの少なくとも2つに適格であり、テルリプレシンを開始する。様々な実施形態では、テルリプレシンを患者に1~4日間投与する。様々な実施形態では、患者は有害事象を経験しなければテルリプレシンを4日間投与される。様々な実施形態では、テルリプレシンは静脈点滴として患者に投与される。
【0088】
1つまたは複数の実施形態では、テルリプレシン治療プロトコールは、テルリプレシン約0.1mg~約10mg、または0.5mg~約5.0mg、または0.5mg~約2.0mg、または約0.5mg~約1.0mg、または約1.0mg~約2.0mgの範囲の投薬量を患者に約4時間~約6時間にわたって静脈点滴として投与することを含む。
【0089】
1つまたは複数の実施形態では、患者はテルリプレシンを静脈点滴として約4~6時間ごとに1~4日間静脈内投与される。様々な実施形態では、テルリプレシンは少なくとも4日投与され得る。
【0090】
1つまたは複数の実施形態では、患者はテルリプレシンを低速ボーラスとして2分にわたって約4~6時間ごとに1~4日間静脈内投与される。様々な実施形態では、テルリプレシンは少なくとも4日投与され得る。
【0091】
160では、テルリプレシンを投与している患者に対し、1~4日の投与中に少なくとも1回検査をして、患者がテルリプレシンに反応しているかを判定する。様々な実施形態では、患者はベースラインを確立するためにテルリプレシン投与開始前に1回検査をして1~4日のテルリプレシン投与中に1回検査をしてもよく、あるいはベースラインを確立するためにテルリプレシン投与開始前に1回検査をして4日のテルリプレシン投与の終了時に1回検査をしてもよい。様々な実施形態では、患者の血清クレアチニンレベルが減少しているかを判定するために患者のクレアチニンレベルを測定する。ここで、患者の血清クレアチニンレベル減少がベースライン初期値から約1.0mg/dL以上、または約1.0mg/dL~約2.0mg/dLの範囲、または約1.7mg/dLの減少は腎機能の改善を示し、この患者がテルリプレシンに反応していることを示す。
【0092】
様々な実施形態では、腎機能の改善は、テルリプレシンを受けている患者における約25%の血清クレアチニンレベル減少によって表される。
【0093】
1つまたは複数の実施形態では、患者は、テルリプレシン投与開始後4日間の各日について1日に1回または2日に1回血清クレアチニンレベルの測定を受けてもよく、テルリプレシン投与の第1日に行われる測定を記録しベースラインクレアチニンレベルとして用いてもよい。
【0094】
様々な実施形態では、この方法は、1~4日のテルリプレシン投与中に患者のSCrレベルを検査することと、1~4日のテルリプレシン投与終了までに患者のSCrレベルが減少するかを判定することとを含む。
【0095】
血清クレアチニンレベルは当技術分野で知られている任意の方法で、例えばアルカリ性ピクリン酸塩を使用するヤッフェ反応で、測定してもよい。
【0096】
GFRは、イヌリン、イオヘキソール、イオタラメート、及びCr51-EDTAなどの外来性マーカーのクリアランス研究によって直接測定するか、または同位体希釈質量分析(IDMS)に基づく参照方法に由来するクレアチニン検査方法を用いた推定糸球体濾過率(eGFR)によって測定することができる。
【0097】
170では、血清クレアチニンレベルの減少により証明されるテルリプレシン投与に対する陽性反応を示す患者には、約0.1mg~約10mg、または0.5mg~約5.0mg、または0.5mg~約2.0mg、または約0.5mg~約1.0mg、または約1.0mg~約2.0mgの範囲の投薬量でテルリプレシンを継続する。様々な実施形態では、患者に投与する量は測定された血清クレアチニンレベル(複数可)に基づいて調整することができる。様々な実施形態では、テルリプレシンを投与されている患者は、テルリプレシンを受けている全期間にわたり血清クレアチニンレベルをモニターされ得る。1つまたは複数の実施形態では、患者の血清クレアチニンレベルは、患者がテルリプレシン治療に引き続き陽性反応していることを確認するために毎日、または2日に1回、または3日に1回、または4日に1回検査され得る。
【0098】
様々な実施形態では、最初の2~3日の治療中のSCr低下が<1.5mg/dLである場合は、テルリプレシン投薬量を患者へのテルリプレシン投与2~3日後に約0.5mgから約1.0mgに約1.0mgから約2.0mgに増やしてもよい。
【0099】
様々な実施形態では、患者が回復を示すまで、または患者がもう改善を示さないようになるまで、投薬を4~6時間ごとに1日以上の期間反復してもよい。テルリプレシンは、約2日~約16日の範囲の期間、または約4日~約8日の範囲の期間、患者に投与することができる。様々な実施形態では、期間は約7日間の範囲にある。様々な実施形態では、テルリプレシン治療は、著効があるまで継続してもよい。様々な実施形態では、テルリプレシンによる患者の治療期間は1~28日であり得る。
【0100】
190では、4日間の終わりまでにいかなる改善も示さない患者には、テルリプレシンを中止し得る(改善は、テルリプレシンが投与される1~4日にわたっての血清クレアチニンレベルの低下によって表される)。様々な実施形態では、患者は、治療に対する反応を表す血清クレアチニンレベルの低下があるかを判定するために、治療開始後の第3日または第4日に検査してもよい。
【0101】
1つまたは複数の実施形態では、感染が疑われる場合、患者は投与開始前に、実証された感染または疑わしい感染の抗感染療法を2日間受ける。様々な実施形態では、患者は抗感染療法を受けてからテルリプレシン治療プロトコールを開始され得る。
【0102】
図2は、テルリプレシン治療プロトコールの例示的な実施形態を図示している。
【0103】
本開示の原理及び実施形態は、HRS-1及び3つの反応判断基準のうちの2つ以上が識別された患者に静脈内投与としてのテルリプレシンを4~6時間ごとに提供することにも関する。
【0104】
1つまたは複数の実施形態では、患者は(1)白血球数(WBC)<4または>12細胞/μL、(2)心拍数(HR)>分当たり90拍(bpm)、及び(3)HCO3<21mmol/Lについて検査を受ける。
【0105】
非SIRS患者は、上述の反応判定基準のうちの2未満を有する対象として定義される。
【0106】
様々な実施形態では、体温は反応判定基準として使用されない。
【0107】
1つまたは複数の実施形態では、テルリプレシンは、特定の症状のセットを呈する患者に、腎臓の血管収縮を緩和し、腎機能を改善(血清クレアチニンレベルにおける初期のベースラインからの約1.7mg/dLの低下によって表される)するために、投与する。
【0108】
210では、末期肝疾患を呈している可能性のある1人以上の患者を検査して、腹水を伴う肝硬変にかかっているかと血清クレアチニンレベル>133μmol/lであるかとを判定する。HRSを有すると識別されている患者をさらに検査し及び/または患者の病歴を調べて、1型HRSを表すところの初期の血清クレアチニンレベルが2週間未満で226μmol/lに倍加したかを判定する。
【0109】
驚くべきことに、HRS-1と3つの反応判定基準のうちの少なくとも2つとを有する患者は、非SIRSのHRS-1患者に比べて、HRS反転の徴候によって表されるようなテルリプレシン治療に対する反応の改善を示した。HRSの徴候には、血清クレアチニンレベルが含まれ得る。
【0110】
220では、患者がHRS-1にかかっていると識別された際に、この患者を検査して、同じ患者がSIRSを表す3つの判断基準のうちの少なくとも2つを示すかを判定する(3つの判定基準には、(1)WBC<4または>12細胞/μL、(2)HR>90bpm、及び(3)HCO3<21mmol/Lが含まれる)。
【0111】
様々な実施形態では、HRS-1に加えて3つの反応判定基準のうちの少なくとも2つを示すと識別されない患者は、テルリプレシン治療プロトコールから除外される。驚くべきことに、HRS-1を有しかつ3つの反応判定基準のうちの少なくとも2つを示す患者は、図3に示すように、非SIRSのHRS-1患者に比べて、HRS反転の徴候によって表されるようなテルリプレシン治療に対する反応の改善を示した。
【0112】
230で、HRS-1を有しかつ少なくとも2つの反応判定基準を示すと識別された患者を検査して、この患者が制御不能な感染、敗血症、または敗血症ショックも有し得るかを判定し、制御不能な感染、敗血症、または敗血症ショックを示すと識別された患者はテルリプレシン治療プロトコールから除外される。
【0113】
240では、HRS-1を有し、かつ3つの反応判断基準のうちの少なくとも2つを有し、かつ制御不能な感染、敗血症、または敗血症ショックを有しない患者にテルリプレシン治療を開始する。1つまたは複数の実施形態では、テルリプレシン治療は、患者がHRS-1と3つの反応判断基準のうちの少なくとも2つとを両方有すると最初に診断されてから48時間以内に開始される。様々な実施形態では、患者が制御不能な感染、敗血症、または敗血症ショックを有するか有しないかの判定が、HRS-1および反応判定基準についての最初の診断から48時間後に行われる場合、治療プロトコールは最初の診断から48時間以内に開始され、制御不能な感染、敗血症、または敗血症ショックの発症または判定があれば治療を終了することができる。
【0114】
様々な実施形態では、患者についてのベースライン血清クレアチニンレベルは、患者にテルリプレシン投与を開始する前に決定することができ、テルリプレシン投与は、ベースライン血清クレアチニンレベルの決定から2日以内にまたは3日以内に、または4日以内に開始される。様々な実施形態では、患者が、事前に決定されたベースライン血清クレアチニンレベルと比べて血清クレアチニンレベルの減少を示すかを判定するために、患者は、テルリプレシン投与開始から4日以内に少なくとも1日に1回検査され得る。
【0115】
250では、患者のテルリプレシン治療が開始され、患者がテルリプレシンの投薬を受ける。1つまたは複数の実施形態では、テルリプレシンは低速注入として24時間にわたって患者に投与することができ、この24時間にわたる投薬量は約2.0mg~約12mgの範囲であってよい。様々な実施形態では、この24時間にわたる投薬量は約2.0mg~約4.0mgの範囲であり得る。様々な実施形態では、テルリプレシンは、約4時間から約6時間続きかつ約0.5mg~約2.0mgの投薬量を含む、持続的静脈内(IV)点滴として投与される。
【0116】
1つまたは複数の実施形態では、テルリプレシンは約0.5mg~約2.0mgの投薬量として4~6時間ごとに低速ボーラス注入として2分にわたって静脈内投与され得る。
【0117】
1つまたは複数の実施形態では、テルリプレシンはHRS-1と3つの反応判断基準のうちの少なくとも2つとを示す患者を治療するために使用される。様々な実施形態では、患者は、HRS-1患者を治療するためのテルリプレシンを使用する前に、制御不能な感染、敗血症、または敗血症ショックを有しないことを判定するための検査も受ける。
【0118】
様々な実施形態では、テルリプレシン投薬は持続的静脈内供給として提供される。
【0119】
1つまたは複数の実施形態では、テルリプレシンの投薬量は1mgとして6時間ごとに低速ボーラス注入として2分にわたって静脈内投与される。
【0120】
様々な実施形態では、テルリプレシン投薬はボーラスとしては提供しない。
【0121】
テルリプレシンは4日以下の間患者に投与することができ、患者はテルリプレシン治療に反応しているかを判定するためにこの4日の各日に検査を受けてもよい。様々な実施形態では、テルリプレシン治療への反応は、患者の血清クレアチニンレベルの変化によって表され得るが、その徴候はベースラインからの少なくとも25%のSCr減少であり得る。様々な実施形態では、テルリプレシンは少なくとも4日投与され得る。
【0122】
260では、血清クレアチニンの変化量はテルリプレシンによる治療の4日後に決定し、血清クレアチニンレベルが改善している場合はテルリプレシンによる治療が継続される。様々な実施形態では、治療の4日後における血清クレアチニンレベルの十分な改善は、血清クレアチニンレベルの少なくとも1.0mg/dLの低下、または血清クレアチニンレベルの約1.7mg/dLの低下によって表される。
【0123】
様々な実施形態では、先の1~4日にわたって改善が示された場合は、患者は追加の3日~8日間テルリプレシンを受ける。様々な実施形態では、先の1~4日にわたって改善が示された場合は、患者は追加の3日~4日間テルリプレシンを受ける。
【0124】
様々な実施形態では、患者が血清クレアチニンレベルの減少を示す場合は、患者へのテルリプレシン投与は、最初の4日を越えて追加の3日~12日間継続される。様々な実施形態では、患者へのテルリプレシン投与は、SCr値<1.5mg/dLが少なくとも1つ得られるまで継続してもよい。様々な実施形態では、HRS反転が13日目または14日目に最初に達成された場合は、それぞれ最大15日または16日まで治療期間を延長してもよい。様々な実施形態では、テルリプレシンによる患者の治療期間は1~28日であり得る。様々な実施形態では、血清クレアチニンレベルの減少は、少なくとも1%または少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%のSCrの減少によって表され得る。[00120]1つまたは複数の実施形態では、患者はテルリプレシン治療プロトコールを始める前に、及び/または患者がHRS-1、3つの反応判定基準のうちの少なくとも2つを有することの判定の前に、アルブミンを投与された可能性がある。様々な実施形態では、患者へのテルリプレシン投与を開始する7日~2日前に、アルブミンを患者に投与することができる。様々な実施形態では、アルブミン治療は、患者体重1kg当たりアルブミン1グラム~1日当たりアルブミン最大100グラムを患者に投与することを含む。様々な実施形態では、アルブミンは約20g/日~約50g/日の範囲で投与してもよく、患者にテルリプレシンを投与する期間にアルブミンを投与してもよい。
【0125】
3つの反応判断基準のうちの少なくとも2つを示すHRS-1患者をテルリプレシンで治療する方法の非制限的実施形態は、このような治療を必要とする患者にテルリプレシンの投薬量を1日当たり2.0mg~12.0mgの範囲で1~28日間、または1日当たり2.0mg~4.0mgの範囲で1~7日間投与することを含み、この投薬量は、持続的静脈内供給としてまたは低速ボーラス注入として投与してもよい。
【0126】
本開示の実施形態は、HRS-1を有し2つ以上の反応判定基準を満たす患者を6時間ごとにテルリプレシン1用量で治療することにも関し、HRS-1反転を達成するための用量は、約0.5mg~2.0mgの範囲で3~8日間とする。
【0127】
本開示の実施形態は、患者がHRS-1と3つの反応判断基準のうちの少なくとも2つとを呈し、ただし敗血症、敗血症ショック、または制御不能な感染を伴わないと判定してから48時間以内にテルリプレシン治療を開始することにも関する。
【0128】
本開示の別の態様は、医薬製品を配布する方法に関する。
【0129】
1つまたは複数の実施形態では、配布する方法は、1型肝腎症候群にかかっている患者の治療を担当し得る医療提供者にテルリプレシンを供給することを含む。様々な実施形態では、患者は顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御されていない感染を有しない。様々な実施形態では、この方法は、1型肝腎症候群にかかっており顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御されていない感染を有さずかつ(1)白血球数(WBC)が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超、(2)心拍数が分当たり90拍(BPM)超、または(3)HCO3<21mmol/Lのうちの少なくとも2つを有する患者を、Scrを減少させるのに有効な量のテルリプレシンを用いて治療するための推奨基準を医療提供者に提供することを含む。1つまたは複数の実施形態では、医療提供者はこの推奨基準に従い、HRS-1にかかっているが顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御されていない感染にはかかっておらずかつ(1)白血球数(WBC)が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超、(2)心拍数が分当たり90拍(BPM)超、または(3)HCO3<21mmol/Lのうちの少なくとも2つを有する患者に対して、SCrを減少させるのに有効な量のテルリプレシンを用いて治療を施す。
【0130】
図3は、例示的な治療プロトコールによってもたらされた意外な結果を示す。
【0131】
1型HRSにおけるテルリプレシンの有効性を評価するために、無作為化、プラセボ対照、二重盲検研究が行われた。研究の目的は、静脈内アルブミンを受けている成人1型HRS患者の治療における、プラセボと比べての静脈内テルリプレシンの有効性及び安全性を判定することである。肝硬変、腹水、及び2007 International Ascites Club (IAC)の診断判定基準(Salerno F, Gerbes A, Gines P, Wong F, Arroyo V., Diagnosis, prevention and treatment of hepatorenal syndrome in cirrhosis, Gut. 2007; 56:1310-1318)に基づく1型HRSの診断を有する18才以上の男女が参加資格を有していた。SCrレベル>2.5mg/dLと、2週間以内でのSCr倍加または2週間以内での倍加に等しいもしくはそれより大きな勾配を有する軌跡を示すSCrレベルの経時的変化とを有する患者が登録された。
【0132】
除外判定基準は、肝硬変及び腹水から二次的に生じた機能的腎障害を有する個人であって、安全にテルリプレシン投与を受けられかつこの実薬研究期間を通して生存し得る個人、に限定した患者サンプルをもたらすことを目的にしていた。オリジナルの除外判定基準の中には全身の炎症性反応症候群(SIRS)患者のための除外判定基準があり、これは以下の知見のうちの2つ以上の存在として定義される:(1)体温>38℃または<36℃;(2)心拍数>90/分;(3)呼吸数>20/分またはPaCO2<32mmHg;(4)白血球数>12,000細胞/μLまたは<4,000/μL。これは、制御不能な感染を有する患者を登録することへの懸念に基づいていた。しかし、非代償性肝疾患の患者は制御不能な感染または敗血症の非存在下でSIRS判定基準を有することが多く、かつ2つ以上のSIRS判定基準の存在は予後不良に結びついているということも認識されていた(Thabut, et al., ”Model for End-Stage Liver Disease Score and Systemic Inflammatory Response Are Major Prognostic Factors in Patients with Cirrhosis and Acute Functional Renal Failure, ” HEPATOLOGY, Vol. 46, No. 6, Dec. 2007, pp. 1872-1882)。さらに、1型HRSの定義についてのIAC判定基準により、進行中の細菌感染を有するが敗血症または制御不能な感染ではない患者について1型HRSを有するとみなすことが可能になる(Salerno F, Gerbes A, Gines P, Wong F, Arroyo V., Diagnosis, prevention and treatment of hepatorenal syndrome in cirrhosis, Gut. 2007; 56:1310-1318)。試験プロトコールは、実証された感染または疑わしい感染に対する2日間の抗感染療法を要件とし、根底にある肝臓代償不全または他の非感染臨床状況が任意のSIRS判定基準の説明になる可能性が最も高いと思われる条件下で登録できるようにした。このアプローチは、1型HRSの対象の登録を過度に限定することなく、深刻な感染のリスクが高い患者を登録する可能性を最小限にするものと考えられた。
【0133】
治療に選択された患者は、1型HRSの判定基準を臨床的に満たしていた(IACによる1型HRSの判定基準では、敗血症ではない進行中の細菌感染を有する患者は、感染に関連する腎機能障害とは対照的に、1型HRSとみなせるようにしている)。患者が抗生物質治療を受けたにもかかわらず制御不能な感染の明らかな所見をとどめていた場合、HRSの診断はなされなかった。
【0134】
実薬研究期間中、盲検研究薬による治療は、SCr値<1.5mg/dLが少なくとも
48時間を隔てるかまたは14日以下で2回得られるまで継続した。HRS反転が13または14日目に最初に達成された場合、治療期間を最大でそれぞれ15または16日に延長した。実薬治療群の患者は、6時間ごとに2分にわたる低速ボーラス注入としてテルリプレシン1mgの静脈内投与を受けた。実薬研究期間中の用量増加、研究中止、治療続行及び治療完了のための判定基準が提供された。プラセボ(凍結乾燥マンニトール溶液6mL)群患者のための用量レジメンはテルリプレシンのレジメンと同一であった。経過観察期間は研究治療終了後に開始し、研究治療開始から90日後に完結した。生存率、腎置換療法、及び移植術が評価された。
【0135】
本研究における患者のSIRS下位群は、研究データベースから入手可能な3つの判定基準のうちの2つ以上を有する任意の対象として定義され、この判定基準には以下のものが含まれた:(1)WBC<4または>12細胞/μL;(2)HR>90bpm及び(3)HCO3<21mmol/L。後半の判定基準は、SIRS判定基準PaCO2<32mmHgの近似値に相当した。この近似値は、PaCO2値が入手可能なHRSの患者で観測されたHCO3ならびに、非代償性肝疾患及びPaCO2<32mmHgを有する患者で観測されたHCO3計算値に由来した。非SIRS下位群は、上述の判定基準2つ未満を有する対象として定義された。SIRS及び非SIRS下位群におけるテルリプレシン反応を解析して、SIRSの状態がテルリプレシンの有効性に任意の効果を与えたかを判定した。
【0136】
合計196人の患者を研究に登録した。登録された患者196人のうち、最初に58人がWBC<4または>12細胞/μL、HR>90bpm、及びHCO3<21mmol/Lを含めたSIRS判定基準のうちの2つ以上を有すると識別され、この集団がSIRS下位群として識別された。SIRS下位群を定義する判定基準に基づくと、SIRS下位群では非SIRS下位群及び研究全体の母集団に比べてベースラインWBC及び心拍数がわずかに高く、重炭酸塩がわずかに低かった。分析結果を図3に示す。
【0137】
非代償性肝疾患を有する患者は制御されていない感染または敗血症の非存在下でSIRSを有することが多く、かつ2つ以上のSIRS判定基準の存在は予後不良を伴うということも認識されていた。
【0138】
1つまたは複数の実施形態では、HRS反転はSCrレベルの≦1.5mg/dlへの減少として表され、HRS反転の確認は少なくとも48時間隔てた2つのSCr値≦1.5mg/dlとして定義される。
【0139】
図3に示すように、HRS-1と、テルリプレシン治療プロトコールにおけるSIRSの3つの反応判断基準のうちの少なくとも2つとを有すると識別される患者は、HRS反転の確認(32.1%対3.3%、p<0.005)、HRS反転(42.9%対6.7%、p<0.002)、及び腎機能(SCrのベースラインからの変化、mg/dL、-1.7対-0.5、p<0.0001)においてプラセボと比べての統計的に有意な増加を示した。それとは対照的に、HRS-1とSIRS判定基準のうちの2つ未満とを有する患者群においては、HRS反転の確認ではプラセボに対し14.5%対17.4%、HRS反転ではプラセボに対し15.9%対18.8%、そして腎機能変化ではプラセボに対し-0.8対-0.7mg/dLであった。これらの結果は、SIRS判定基準のうちの2つ以上が存在すれば患者がテルリプレシンによる治療に対して正の反応を有する可能性がより高いことを意味するということを表す。
【0140】
加えて、治療群において、HRS-1と2つ以上のSIRS判定基準とを有する患者は、HRS-1にかかっているがSIRSの3つの反応判断基準のうちの少なくとも2つを有しなかった患者に匹敵する全体生存率を示した(57.1%対58%)。
【0141】
本明細書の開示は特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は本開示の原理及び応用の例示に過ぎないことが理解されるべきである。本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく本開示の装置、システム、及び方法に様々な変更及び変形が行われ得ることは、当業者には明らかであろう。従って、本開示には、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内での変更及び変形が含まれることが意図されている。
【0142】
本明細書全体における「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」または「ある実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特色、構造、材料、または特徴が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。従って、本明細書全体の様々な箇所にある「1つまたは複数の実施形態では」、「ある特定の実施形態では」、「一実施形態では」または「ある実施形態では」は、必ずしも本開示における同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特色、構造、材料、または特徴は、1つまたは複数の実施形態における任意の好適な方法で組み合わせることができる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
1型肝腎症候群(HRS-1)の治療方法であって、
HRS-1を有する複数の患者を識別することと、
前記複数の患者のうちの第1の患者が、以下の3つの判定基準:
(i)白血球数(WBC)が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超、
(ii)心拍数が分当たり90拍(BPM)超、及び
(iii)血中二酸化炭素分圧(PaCO)<32mmHg、または血中重炭酸塩(HCO)レベル<23mmol/L
のうちの少なくとも2つを示すと判定することと、
前記第1の患者が少なくとも前記3つの判定基準のうちの少なくとも2つを示すことを理由に、前記第1の患者のHRS-1がテルリプレシンでの治療に反応する可能性が高いと判定することと、
前記第1の患者におけるHRS-1を治療するのに有効な量のテルリプレシンを前記第1の患者に投与することと、
前記複数の患者のうちの第2の患者が前記3つの判定基準のうちのわずか1つまたは0を示すと判定することと、
前記第2の患者が少なくとも前記3つの判定基準のうちの少なくとも2つを示さないことを理由に、前記第2の患者のHRS-1がテルリプレシンでの治療に反応する可能性が低いと判定することと、
前記第2の患者をテルリプレシンでの治療から除外することとを含む、前記治療方法。(項目2)
テルリプレシン以外の治療が前記第2の患者に投与される、項目1に記載の方法。
(項目3)
判定基準(iii)がHCOレベル<23mmol/Lである、項目1に記載の方法。
(項目4)
判定基準(iii)がHCOレベル<21mmol/Lである、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記第1の患者に投与されるテルリプレシンの量が、1~28日間に1日当たり2.0mg~12.0mgの範囲である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記第1の患者に投与されるテルリプレシンの量が、4~6時間ごとに約0.5mg~約2.0mgの範囲である、項目5に記載の方法。
(項目7)
テルリプレシン投与の最初の1~4日の間に前記第1の患者が血清クレアチニンレベル減少を有するかを判定することを含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
テルリプレシン投与の最初の1~4日の間に前記第1の患者が血清クレアチニンレベルの減少を示さない場合は、前記第1の患者へのテルリプレシン投与を中止することを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
テルリプレシン投与から最初の1~4日の間に前記第1の患者が血清クレアチニンレベルの減少を示す場合は、前記第1の患者へのテルリプレシン投与を追加の3~12日間継続することを含む、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記第1の患者へのテルリプレシン投与が血清クレアチニンレベルを≦1.5mg/dlに低下させる、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記患者がテルリプレシンを投与される期間の各日に、アルブミン一日当たり最大100g以下で前記第1の患者を治療することを含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
肝疾患に関連する腎機能障害の治療のためのテルリプレシンの有効性を増加させる方法であって、
末期肝疾患及び腎機能障害を有する複数の患者を識別することと、
前記複数の患者を検査して各患者が以下の3つの判定基準(i)~(iii):
(i)白血球数が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超のいずれか、
(ii)心拍数が分当たり90拍超、及び
(iii)(a)血中二酸化炭素分圧(PaCO)<32mmHg、または(b)血中重炭酸塩(HCO)レベル<23mmol/L、または(c)分当たり20呼吸超の頻呼吸のいずれか
の各々を満たすかを判定することと、
前記複数の患者のうちの第1の患者が前記3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たすと判定することと、
前記第1の患者が前記3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たすことを理由に、前記第1の患者が前記3つの判定基準のうちのわずか1つまたは0を示した場合に比べて、前記第1の患者の腎機能がテルリプレシンによる治療時に改善する可能性がより高いと判定することと、
前記第1の患者の腎機能を改善するのに有効な量のテルリプレシンを前記第1の患者に投与することと、
前記複数の患者のうちの第2の患者が前記3つの判定基準のうちのわずか1つまたは0を満たすと判定することと、
前記第2の患者が前記3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たさないことを理由に、前記第2の患者が前記3つの判定基準のうちの少なくとも2つを示した場合に比べて、前記第2の患者の腎機能がテルリプレシンによる治療に反応する可能性がより低いと判定することと、
前記第2の患者をテルリプレシンでの治療から除外することとを含む、前記治療方法。(項目13)
テルリプレシンによる治療中に第1の患者を検査して、前記第1の患者の腎機能がテルリプレシンによる治療前と比較して改善されているかを判定する、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記第2の患者にテルリプレシン以外の治療が投与される、項目12に記載の方法。
(項目15)
判定基準(iii)がHCOレベル<23mmol/Lである、項目12に記載の方法。
(項目16)
判定基準(iii)がHCOレベル<21mmol/Lである、項目12に記載の方法。
(項目17)
前記複数の患者のうちの第3の患者が顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御不能の感染を有すると判定することと、顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御不能の感染の存在を理由に前記第3の患者をテルリプレシンによる治療から除外することとを含む、項目12に記載の方法。
(項目18)
前記複数の患者がチャイルドピュースコアBまたはCの肝硬変を有すると判定することを含む、項目12に記載の方法。
(項目19)
4時間~6時間の期間にわたって前記第1の患者に投与されるテルリプレシンの投薬量が約0.5mg~約2.0mgの範囲である、項目12に記載の方法。
(項目20)
前記テルリプレシンが持続的静脈内点滴として前記第1の患者に投与される、項目12に記載の方法。
(項目21)
前記第1の患者に投与されるテルリプレシンの投薬量が各24時間の投与期間にわたって4.0mgを超えない、項目12に記載の方法。
(項目22)
前記第1の患者に前記テルリプレシン投与を開始する前の2日以内に前記第1の患者のベースライン血清クレアチニンレベルを測定することと、前記テルリプレシン投与の開始後4日以内に前記第1の患者を少なくとも1回検査して前記第1の患者の血清クレアチニンレベルが前記ベースラインレベルと比べて低下したかを判定することとを含む、項目12に記載の方法。
(項目23)
前記テルリプレシン投与開始後の前記第1の患者の血清クレアチニンレベルの検査が前記第1の患者の血清クレアチニンレベルが前記ベースラインレベルと比べて低下したことを示す場合は前記第1の患者への前記テルリプレシン投与を継続し、前記第1の患者の血清クレアチニンレベルが前記ベースラインレベルと比べて低下しなかった場合は前記投与が中止される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記第1の患者の血清クレアチニンレベルが前記ベースラインレベルと比べて低下したことが示される場合は前記第1の患者へのテルリプレシン投与が追加の3日~8日間継続される、項目23に記載の方法。
(項目25)
テルリプレシンによる治療の後、第1の患者の血清クレアチニンレベルが検査されて≦1.5mg/dLであることが見出される、項目12に記載の方法。
(項目26)
HRS-1を治療するための方法であって、
HRS-1を有する複数の患者を診断することと、
前記複数の患者のうち第1及び第2の患者が顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御不能な感染を有しないと判定することと、
前記第1及び第2の患者を検査して、各々が以下の3つの判定基準(i)~(iii):
(i)白血球数が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超のいずれか、
(ii)心拍数が分当たり90拍超、及び
(iii)(a)血中二酸化炭素分圧(PaCO)<32mmHg、または(b)血中重炭酸塩(HCO)レベル<23mmol/L、または(c)分当たり20呼吸超の頻呼吸のいずれか
の各々を満たすかを判定することと、
前記第1の患者が前記3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たすと判定することと、
前記第1の患者が前記3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たすことを理由に、前記第1の患者が前記3つの判定基準のうちのわずか1つまたは0を示した場合に比べて、前記第1の患者の腎機能がテルリプレシンによる治療時に改善する可能性がより高いと判定することと、
前記第1の患者が前記3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たすとの判定から2日以内に前記第1の患者にテルリプレシン投与を開始することであって、前記テルリプレシンが前記第1の患者の血清クレアチニンレベルを少なくとも1.0mg/dL減少させるのに有効な量で静脈内投与される、前記開始することと、
前記第2の患者が前記3つの判定基準のうちのわずか1つまたはゼロを満たすと判定することと、
前記第2の患者が前記3つの判定基準のうちの少なくとも2つを満たさないことを理由に、前記第2の患者が前記3つの判定基準のうちの少なくとも2つを示した場合に比べて、前記第2の患者の腎機能がテルリプレシンによる治療に反応する可能性がより低いと判定することと、
前記第2の患者をテルリプレシンでの治療から除外することとを含む、前記治療方法。(項目27)
前記第2の患者にテルリプレシン以外の治療が投与される、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記第2の患者がノルエピネフリン、バソプレシン、またはミドドリン及びオクトレオチドの組合せのうちの1つまたは複数で治療される、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記第2の患者が経頸静脈的肝内門脈体循環シャントを提供される、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記第2の患者が腎臓透折で治療される、項目27に記載の方法。
(項目31)
判定基準(iii)がHCOレベル<23mmol/Lである、項目27に記載の方法。
(項目32)
判定基準(iii)がHCOレベル<21mmol/Lである、項目27に記載の方法。
(項目33)
前記第1の患者がテルリプレシンを4~6時間ごとに4日間静脈内投与される、項目27に記載の方法。
(項目34)
他のHRS-1患者と比べてテルリプレシンによる治療に対して反応する見込みが増加しているHRS-1患者の下位集団を識別する方法であって、
1型肝腎症候群を有しかつ顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御不能な感染を有しない複数の患者を識別することと、
前記複数の患者のうちの各々の患者について、以下の3つの変数(a)~(c):
変数(a):白血球数;
変数(b):分あたりの心拍数;
変数(c):血中のHCOレベルもしくはPaCOレベルまたは分当たりの呼吸数;
のうちの少なくとも2つを測定することと、
前記複数の患者内で、以下の3つの基準(i)~(iii):
(i)白血球数が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超のいずれか、
(ii)心拍数が分当たり90拍超、及び
(iii)HCO<23mmol/LまたはPaCO<32mmHgまたは分当たりの呼吸数>20
のうちの少なくとも2つを満たす1人以上の患者を含む下位集団を識別することであって、前記複数の患者のうちの他の患者は、前記3つの判定基準のうちのわずか1つまたはゼロを満たすために前記下位集団に入らない、前記識別することと、
前記下位集団における前記1人以上の患者が、前記下位集団に入らない前記複数の患者のうちの前記他の患者と比べて、テルリプレシンによる治療に反応する見込みが増加していると判定することとを含む、前記方法。
(項目35)
前記下位集団のうちの少なくとも1人の患者をテルリプレシンで治療することと、前記少なくとも1人の患者の血清クレアチニンレベルを治療開始後に測定することと、前記少なくとも1人の患者の血中の血清クレアチニンレベルがテルリプレシンによる治療時に低下したことを観測することとを含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記3つの判定基準のうちのわずか1つまたはゼロを満たすために前記下位集団に入らない、前記複数の患者のうちの前記患者をテルリプレシン治療から除外することを含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
判定基準(iii)がHCOレベル<23mmol/Lである、項目34に記載の方法。
(項目38)
判定基準(iii)がHCOレベル<21mmol/Lである、項目34に記載の方法。
(項目39)
以下の3つの判定基準(i)~(iii):
(i)白血球数が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超のいずれか、
(ii)心拍数が分当たり90拍超、及び
(iii)HCO<23mmol/LまたはPaCO<32mmHgまたは分当たりの呼吸数>20
のうちの2つ以上を満たす患者における、HRS-1治療のためのテルリプレシンの使用であって、
テルリプレシンの使用量が、ベースラインから少なくとも25%の血清クレアチニンの減少、HRS反転、及び/またはHRS反転の確認をもたらすのに有効である、前記使用。
(項目40)
医薬製品を配布する方法であって、
1型肝腎症候群にかかっている患者の治療を担当する医療提供者にテルリプレシンを供給することと、
(a)1型肝腎症候群にかかっている、(b)顕性の敗血症、敗血症ショック、または制御不能な感染を有しない、及び(c)以下の3つの判定基準(i)~(iii):
(i)白血球数が4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mm超のいずれか、
(ii)心拍数が分当たり90拍超、及び
(iii)HCO<23mmol/LまたはPaCO<32mmHgまたは分当たりの呼吸数>20
のうちの2つ以上を満たす患者を、前記患者の血清クレアチニンレベルを減少させるのに有効な量のテルリプレシンを用いて治療するための推奨基準を前記医療提供者に提供することとを含む、前記方法。
図1
図2
図3