(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】レーダターゲットシミュレーションデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20230911BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20230911BHJP
【FI】
G01S7/40 152
G01S7/40 186
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2021111310
(22)【出願日】2021-07-05
(62)【分割の表示】P 2016208259の分割
【原出願日】2016-10-25
【審査請求日】2021-07-05
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501374208
【氏名又は名称】ローデ ウント シュヴァルツ ゲーエムベーハー ウント コンパニ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100096758
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100114845
【氏名又は名称】高橋 雅和
(74)【代理人】
【識別番号】100148781
【氏名又は名称】高橋 友和
(72)【発明者】
【氏名】シェリフ アハメド
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ホイエル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス レイル
(72)【発明者】
【氏名】ウド レイル
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06067041(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1357596(KR,B1)
【文献】特表2001-524676(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014217524(DE,A1)
【文献】特開2003-307561(JP,A)
【文献】特開2003-315442(JP,A)
【文献】特開平11-044756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのトラフィックシナリオを使用した、少なくとも1つのレーダセンサ(39)を備えた自律的車両(37)のためのシステムあって、
メモリ(31)と、
レーダシナリオシミュレータ(32)と、
少なくとも2つのアンテナ(33a、33b)と、
光学シナリオシミュレータ(34)と、
スクリーン(35)とを備え、
前記メモリ(31)は、前記少なくとも1つのトラフィックシナリオを記憶し、前記少なくとも1つのトラフィックシナリオを前記レーダシナリオシミュレータ(32)及び前記光学シナリオシミュレータ(34)に同時に提供するように構成され、
前記レーダシナリオシミュレータ(32)は、前記少なくとも2つのアンテナ(33a、33b)によって前記自律的車両(37)の前記少なくとも1つのレーダセンサ(39)から第1の数のレーダ信号を受信することによって、前記少なくとも1つのトラフィックシナリオに従って前記第1の数のレーダ信号を操作し、第2の数の被操作レーダ信号を生成することにより前記少なくとも1つのトラフィックシナリオをシミュレートすることによって、また、前記少なくとも2つのアンテナ(33a、33b)によって前記第2の数の被操作レーダ信号を前記自律的車両(37)の前記少なくとも1つのレーダセンサ(39)に送信することによって、前記少なくとも1つのトラフィックシナリオのレーダ表現を提供するように構成され、
前記光学シナリオシミュレータ(34)は、前記少なくとも1つのトラフィックシナリオの光学表現を前記スクリーン(35)上に同時に提供するように構成され、
前記スクリーン(35)上に提供される前記光学的表現は、センサデータの正しい融合のためのレーダ参照点(23a、23b、23c)を含む、
システム。
【請求項2】
フィードバックユニット(36)をさらに含み、
前記フィードバックユニット(36)は、前記自律的車両(37)の少なくとも1つの電子制御ユニット(38)の情報を受信するように構成され、
前記情報は、加速、減速、またはステアリングに関する情報を含み、前記レーダシナリオシミュレーター(32)および前記光学シナリオシミュレーター(34)に対して同時に情報をフィードバックするように構成され、
フィードバックされた前記情報を使用して、前記レーダシナリオシミュレーター(32)は、前記少なくとも1つのトラフィックシナリオのレーダ表現を対応して適応させ、前記光学シナリオシミュレータ(34)は、前記少なくとも1つのトラフィックシナリオの光学表現を対応して同時に適応させる、
請求項1に記載のシステム(30)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのトラフィックシナリオのそれぞれは、経時的に変化し、および/またはリアルタイムで変化可能であり、および/または時間的に制限がなく、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1または2に記載のシステム(30)。
【請求項4】
前記自律的車両(37)の他のシステムを操作するための手段を含み、
前記他のシステムはレーザ、超音波、および/または赤外線センサーを含み、
前記他のシステムを操作するための手段は、前記少なくとも1つのトラフィックシナリオに従って動的に位置決めされる、可動式反射板を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム(30)。
【請求項5】
前記レーダシナリオシミュレータ(32)によって提供されるレーダ表現に関して、
雨および/または雪および/または風を含む気象条件がシミュレートされ、
および/または
他の車両のレーダセンサーおよび/またはトラフィック管理システムのレーダを含む干渉物がシミュレートされる、
請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム(30)。
【請求項6】
気象条件に関して、雨および/または雪は、前記自律的車両(37)に送り返される操作されたレーダ信号を重畳するノイズによって表現され、
および/または、
風は、操作されたレーダ信号のフェージングによって表現される、
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも1つのレーダシナリオに関して被試験デバイス(2)を試験するためのレーダターゲットシミュレーション方法であって、
メモリ装置(11a、31)を介して、前記被試験デバイス(2)に関する少なくとも1つのレーダシナリオを格納し、前記少なくとも1つのレーダシナリオをレーダシナリオシミュレータ(12、32)に提供するステップと、
前記被試験デバイス(2)から第1の数のレーダ信号を受信するステップ、
前記第1の数のレーダ信号をシミュレートし、光学的表現を提供し、結果として第2の数の操作されたレーダ信号を生成するステップ、
前記第2の数の操作されたレーダ信号を前記被試験デバイス(2)に送信するステップを含み、
前記光学的表現は、レーダシステム及び光学システムからのセンサデータの正しい融合のためのレーダ参照点(23a、23b、23c)を含む、
方法。
【請求項8】
前記被試験デバイス(2)から前記第1の数のレーダ信号を受信し、前記被試験デバイス(2)に前記第2の数の操作されたレーダ信号を送信するために、最後に少なくとも2つのアンテナ(13、33a、33b)が使用され、
前記少なくとも2つのアンテナ(13、33a、33b)の使用は、ビームフォーミングを可能にする、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのレーダシナリオは、少なくとも2つのレーダターゲットを含む、請求項7または8に記載のレーダターゲットシミュレーション方法。
【請求項10】
前記第1の数のレーダ信号は前記少なくとも2つのアンテナ(13、33a、33b)を介して受信され、前記第2の数の操作されたレーダ信号は少なくとも前記2つのアンテナ(13、33a、33b)を介して送信され、前記少なくとも2つのアンテナ(13、33a、33b)は、2次元アンテナアレイ(13)および3次元アンテナアレイのうちの1つを形成する、
請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の数のレーダ信号は、チャープ信号、周波数ホッピング信号、ドプラー信号、および任意の他のタイプのレーダ信号のうちの1つまたは複数を含む、請求項7から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の数の操作されたレーダ信号は、チャープ信号、周波数ホッピング信号、ドプラー信号、および任意の他のタイプのレーダ信号のうちの1つまたは複数を含む、請求項7から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の数のレーダ信号の操作は、周波数、遅延、および振幅の1つまたは複数の調整に基づく、請求項7から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の数のレーダ信号の操作は角度に関するものであり、前記被試験デバイス(2)への第2の数の操作されたレーダ信号の送信のために所望の角度位置を有する少なくとも前記2つのアンテナのうち対応するアンテナを選択することによって達成される、
請求項10に記載の方法。
【請求項15】
雨および/または雪および/または風を含む気象条件がシミュレートされる、
および/または
特に他の車両のレーダセンサーおよび/またはトラフィック管理システムのレーダを含む干渉物がシミュレートされる、
請求項7から
14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験デバイスを試験するためのレーダターゲットシミュレーションデバイス等の試験デバイス及びレーダターゲットシミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーダセンサを使用する高度運転者支援システム(ADAS:advanced driver assistance systems)の数が増加している時代に、こうしたレーダセンサを試験するための試験デバイス及び試験方法の必要性が増加している。
【0003】
特許文献1(米国特許第4,660,041号)は、シーンシミュレーション信号をターゲット探索レーダに送信するアンテナシステムのアレイを含むデバイスを開示する。しかし、記憶容量の不足に基づいて、デバイスは、柔軟性を欠き、また、単に単一の―永久的に結び付けられる―シーンをシミュレートするデバイスの能力の結果として実践上の適切性又は適用可能性を欠く試験結果を提供する。これに加えて、柔軟性の前記欠如は、中間周波数信号がフィードバックされなければならないことによって強調される。
【0004】
それでも、例えば、最も効率的でかつ柔軟性のある方法で複数の異なるレーダシナリオに関してレーダセンサ等の被試験デバイスを調査することは、非常に重要である。その理由は、この方法においてだけ、フィールドでのセンサの適切な機能を保証する実践指向性のある結果が得られる可能性があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、必要とされるものは、実践指向性の高い試験結果をもたらす、最も効率的でかつ柔軟性がある方法で被試験デバイス(例えば、レーダセンサ)を試験するためのアプローチである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、有利には、実践指向性の高い試験結果をもたらす、最も効率的でかつ柔軟性がある方法で被試験デバイス(例えば、レーダセンサ)を試験するための試験デバイス及び試験方法を提供することによって、先の要求及び必要性等に対処する。
【0008】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのレーダシナリオに関して被試験デバイスを試験するためのレーダターゲットシミュレーションデバイスが提供される。レーダターゲットシミュレーションデバイスは、記憶ユニット、レーダシナリオシミュレーションユニット、及び少なくとも2つのアンテナを備える。記憶ユニットは、対応する被試験デバイスに関する少なくとも1つのレーダシナリオを記憶し、少なくとも1つのレーダシナリオをレーダシナリオシミュレーションユニットに提供するように構成される。更に、レーダシナリオシミュレーションユニットは、少なくとも2つのアンテナを使用して被試験デバイスから第1の数のレーダ信号を受信することによって、少なくとも1つのレーダシナリオに従って第1の数のレーダ信号を操作し、その結果第2の数の被操作レーダ信号をもたらすことによって、また、少なくとも2つのアンテナを使用して第2の数の被操作レーダ信号を被試験デバイスに送信することによって、少なくとも1つのレーダシナリオをシミュレートするように構成される。
【0009】
レーダターゲットシミュレーションデバイスの一実施形態によれば、少なくとも1つのレーダシナリオは、少なくとも2つのレーダターゲットを備える。
【0010】
レーダターゲットシミュレーションデバイスの更なる実施形態によれば、少なくとも2つのアンテナは、2次元アンテナアレイ又は3次元アンテナアレイを形成する。
【0011】
レーダターゲットシミュレーションデバイスの更なる実施形態によれば、第1の数のレーダ信号は、チャープ信号、周波数ホッピング信号、ドプラー信号、任意の他の種類の信号、又はそれらの組合せを含む。
【0012】
レーダターゲットシミュレーションデバイスの更なる実施形態によれば、第2の数の被操作レーダ信号は、チャープ信号、周波数ホッピング信号、ドプラー信号、任意の他の種類の信号、又はそれらの組合せを含む。
【0013】
レーダターゲットシミュレーションデバイスの更なる実施形態によれば、第1の数のレーダ信号を操作することは、信号周波数、信号遅延、信号振幅、又はそれらの組合せ、の調整に基づく。
【0014】
レーダターゲットシミュレーションデバイスの更なる実施形態によれば、角度に関して第1の数のレーダ信号を操作することは、第2の数の被操作レーダ信号を送信するため、所望の角度位置を有するそれぞれの数の少なくとも2つのアンテナを選択することによって達成される。
【0015】
レーダターゲットシミュレーションデバイスの更なる実施形態によれば、レーダ参照点を含む、少なくとも1つのレーダシナリオの光学表現が提供される。
【0016】
更なる例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのレーダシナリオに関して被試験デバイスを試験するためのレーダターゲットシミュレーション方法が提供される。レーダターゲットシミュレーション方法は、対応する被試験デバイスに関する少なくとも1つのレーダシナリオを記憶し、少なくとも1つのレーダシナリオを提供すること、及び、被試験デバイスから第1の数のレーダ信号を受信することによって、少なくとも1つのレーダシナリオに従って第1の数のレーダ信号を操作し、その結果第2の数の被操作レーダ信号をもたらすことによって、また、第2の数の被操作レーダ信号を被試験デバイスに送信することによって、少なくとも1つの提供されるレーダシナリオをシミュレートすることを含む。
【0017】
レーダターゲットシミュレーション方法の一実施形態によれば、少なくとも1つのレーダシナリオは、少なくとも2つのレーダターゲットを含む。
【0018】
レーダターゲットシミュレーション方法の更なる実施形態によれば、第1の数のレーダ信号は少なくとも2つのアンテナを使用して受信され、同様に、第2の数の被操作レーダ信号は前記少なくとも2つのアンテナを使用して送信される。有利には、前記少なくとも2つのアンテナは、2次元アンテナアレイ又は3次元アンテナアレイを形成する。
【0019】
レーダターゲットシミュレーション方法の更なる実施形態によれば、第1の数のレーダ信号は、チャープ信号、周波数ホッピング信号、ドプラー信号、任意の他の種類の信号か、又はそれらの組合せを含む。
【0020】
レーダターゲットシミュレーション方法の更なる実施形態によれば、第2の数の被操作レーダ信号は、チャープ信号、周波数ホッピング信号、ドプラー信号、任意の他の種類の信号、又はそれらの組合せを含む。
【0021】
レーダターゲットシミュレーション方法の更なる実施形態によれば、第1の数のレーダ信号を操作することは、信号周波数、信号遅延、信号振幅、又はそれらの組合せ、の調整に基づく。
【0022】
レーダターゲットシミュレーション方法の更なる実施形態によれば、角度に関して第1の数のレーダ信号を操作することは、第2の数の被操作レーダ信号を送信するため、所望の角度位置を有するそれぞれの数の少なくとも2つのアンテナを選択することによって達成される。
【0023】
レーダターゲットシミュレーション方法の更なる実施形態によれば、レーダ参照点を含む、少なくとも1つのレーダシナリオの光学表現が提供される。
【0024】
更なる例示的な実施形態によれば、システムが提供される。システムは、被試験デバイスと、少なくとも1つのレーダシナリオに関して被試験デバイスを試験するためのレーダターゲットシミュレーションデバイスとを備え、レーダターゲットシミュレーションデバイスは、記憶ユニット、レーダシナリオシミュレーションユニット、及び少なくとも2つのアンテナを備える。更に、記憶ユニットは、対応する被試験デバイスに関する少なくとも1つのレーダシナリオを記憶し、少なくとも1つのレーダシナリオをレーダシナリオシミュレーションユニットに提供するように構成される。更に、レーダシナリオシミュレーションユニットは、少なくとも2つのアンテナを使用して被試験デバイスから第1の数のレーダ信号を受信することによって、少なくとも1つのレーダシナリオに従って第1の数のレーダ信号を操作し、その結果第2の数の被操作レーダ信号をもたらすことによって、また、少なくとも2つのアンテナを使用して第2の数の被操作レーダ信号を被試験デバイスに送信することによって、少なくとも1つのレーダシナリオをシミュレートするように構成される。
【0025】
更なる例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのトラフィックシナリオを使用して自律的車両を訓練するための訓練システムは、メモリと、レーダシナリオシミュレータと、少なくとも2つのアンテナと、光学シナリオシミュレータと、スクリーンとを備える。メモリは、少なくとも1つのトラフィックシナリオを記憶し、少なくとも1つのトラフィックシナリオをレーダシナリオシミュレータ及び光学シナリオシミュレータに同時に提供するように構成される。更に、レーダシナリオシミュレータは、少なくとも2つのアンテナによって自律的車両の少なくとも1つのレーダセンサから第1の数のレーダ信号を受信することによって、少なくとも1つのトラフィックシナリオに従って第1の数のレーダ信号を操作し、第2の数の被操作レーダ信号を生成することにより少なくとも1つのトラフィックシナリオをシミュレートすることによって、また、少なくとも2つのアンテナによって第2の数の被操作レーダ信号を自律的車両の少なくとも1つのレーダセンサに送信することによって、少なくとも1つのトラフィックシナリオのレーダ表現を提供するように構成され、光学シナリオシミュレータは、少なくとも1つのトラフィックシナリオの光学表現をスクリーン上に同時に提供するように構成される。
【0026】
少なくとも1つのトラフィックシナリオを使用して自律的車両を訓練するための訓練システムの一実施形態によれば、訓練システムはフィードバックユニットを更に備える。フィードバックユニットは、自律車両の少なくとも1つの電子制御ユニットの情報であって、加速、減速、又はステアリングに関する情報を含む、情報を受信し、情報をレーダシナリオシミュレータ及び光学シナリオシミュレータに同時にフィードバックするように構成され、レーダシナリオシミュレータは少なくとも1つのトラフィックシナリオのレーダ表現に相応して適合し、光学シナリオシミュレータは少なくとも1つのトラフィックシナリオの光学表現に相応して同時に適合する。
【0027】
本発明の更に他の態様、特徴、及び利点は、本発明を実施するため企図されるベストモードを含む、幾つかの特定の実施形態及び実装態様を単に示すことによって、以下の詳細な説明から容易に明らかになる。本発明は、同様に、他の実施形態及び異なる実施形態が可能であり、その幾つかの詳細は全て、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の明らかな点に関して修正され得る。したがって、図面及び説明は、本質的に例証的であると見なされ、制限的であると見なされない。
【0028】
本発明の実施形態は、添付図面の図において、制限としてではなく、例として示される。図面において、同様の参照数字は同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の例示的な実施形態によるレーダターゲットシミュレーションデバイスを示す図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による被試験デバイス及びレーダターゲットシミュレーションデバイスを備えるシステムを示す図である。
【
図3】本発明の例示的な実施形態による自律的車両を訓練するための訓練システムを示す図である。
【
図4】本発明の例示的な実施形態によるレーダターゲットシミュレーション方法を示すフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実践指向性の高い試験結果をもたらす、最も効率的でかつ柔軟性がある方法で被試験デバイス(例えば、レーダセンサ)を試験するための試験デバイス及び試験方法が述べられる。以下の説明において、説明のため、多数の特定の詳細が述べられて、本発明の完全な理解を提供する。しかし、本発明が、これらの特定の詳細なしで又は等価な配置構成を持って実践されてもよい。他の事例において、よく知られている構造及びデバイスがブロック図で示されて、本発明を不必要に曖昧にすることを回避する。
【0031】
認識されるように、(本明細書で参照される)モジュール又はコンポーネントは、ソフトウェアコンポーネント(複数可)からなってもよく、ソフトウェアコンポーネント(複数可)は、メモリ又は他のコンピュータ可読記憶媒体に記憶され、各デバイスの1つ又は複数のプロセッサ又はCPUによって実行される。しかし、同様に認識されるように、モジュールは、代替的に、ハードウェアコンポーネント(複数可)か、ファームウェアコンポーネント(複数可)か、或は、ハードウェアコンポーネント、ファームウェアコンポーネント、及び/又はソフトウェアコンポーネントの組合せであってよい。更に、本明細書で述べる種々の例示的な実施形態に関して、機能のうちの或る機能が、或るコンポーネント又はモジュール(又はその組合せ)によって実施されるものとして述べられるが、こうした説明は、例として提供され、そのため、制限的であることを意図されない。したがって、任意のこうした機能は、本発明の精神及び全体的な範囲から逸脱することなく、他のコンポーネント又はモジュール(又はその組合せ)によって実施されるものと想定されてもよい。更に、本明細書で述べる方法、プロセス、及びアプローチは、処理回路要素を使用してプロセッサ実装されてもよく、処理回路要素は、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は、本明細書で述べるシステム及び/又は方法を実装するように構成又はプログラムされよう動作可能な他のデバイスを備えてもよい。ソフトウェア命令を実行するよう動作可能であるこうしたデバイス上で実装するため、本明細書で述べるフロー図及び方法は、コンピュータメモリストアに記憶される実行可能ソフトウェア等のコンピュータ可読媒体に記憶されるプロセッサ命令に実装されてもよい。
【0032】
更に、本明細書で使用されるコンピュータ可読媒体又はコンピュータ媒体等に言及する用語は、実行のためにコンピュータのプロセッサ又はプロセッサモジュール又はコンポーネントに命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。こうした媒体は、限定はしないが、非一時的不揮発性媒体及び揮発性媒体を含む多くの形態をとってもよい。不揮発性媒体は、例えば、光ディスク媒体、磁気ディスク媒体、又は電気ディスク媒体(例えば、固体ディスクすなわちSSD)を含む。揮発性媒体は、ランダムアクセスメモリすなわちRAM等のダイナミックメモリを含む。コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピー若しくはフレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD ROM、CDRW、DVD、任意の他の光媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、イレーザブルPROM、フラッシュEPROM、任意の他のメモリチップ若しくはカートリッジ、又はコンピュータがそこからデータを読出す可能性がある任意の他の媒体を含む。
【0033】
種々の形態のコンピュータ可読媒体が、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関わってもよい。例えば、本発明の少なくとも一部を実施するための命令は、リモートコンピュータの磁気ディスク上に最初に保持されてもよい。こうしたシナリオにおいて、リモートコンピュータは、命令を主メモリ内にロードし、モデムを使用する電話回線を通じて命令を送信する。ローカルコンピュータシステムのモデムは、電話回線上でデータを受信し、赤外線送信機を使用して、データを赤外線信号に変換し、携帯情報端末(PDA)及びラップトップ等の可搬型コンピューティングデバイスに赤外線信号を送信する。可搬型コンピューティングデバイス上の赤外線検出器は、赤外線信号によって保持された情報及び命令を受信し、データをバス上に置く。バスは、データを主メモリに変換し、主メモリから、プロセッサは、命令を取出し実行する。主メモリによって受信される命令は、任意選択で、プロセッサが実行する前又は後に記憶デバイス上に記憶されてもよい。
【0034】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、少なくとも1つのレーダシナリオに関して、レーダセンサ等の被試験デバイスを試験するためのレーダターゲットシミュレーションデバイス1を示す。例えば、被試験レーダセンサデバイスは、車に統合された高度運転者支援システムの一部であってよい。レーダターゲットシミュレーションデバイス1は、記憶ユニット11a、レーダシナリオシミュレーションユニット12、及び、y×xアンテナアレイ13を形成するy*xアンテナA(y,x)を備える。
【0035】
更に、記憶ユニット11aは、対応する被試験デバイスに関する少なくとも1つのレーダシナリオを記憶する。この目的のために、記憶ユニット11aは、y*x記憶セルSC(y,x)を含む記憶コンテンツ11bを含み、各記憶セルSC(y,x)は、各アンテナA(y,x)に対応し、また、幾つかのパラメータを含み、幾つかのパラメータは、それぞれ、周波数、遅延、振幅、角度、又はそれらの組合せ等の異なるレーダ特性の調整に関しており、また、種々の被試験デバイス及びレーダシナリオを考慮している。
【0036】
記憶ユニット11aが、レーダシナリオシミュレーションユニット12のために記憶コンテンツ11bの形態で各情報を提供した後、レーダシナリオシミュレーションユニット12は、少なくとも1つのレーダシナリオをシミュレートし、少なくとも1つのレーダシナリオのそれぞれは、有利には、歩行者、車、バス等のような少なくとも2つのレーダターゲットを含んでもよい。
【0037】
この目的のために、レーダシナリオシミュレーションユニット12は、アンテナアレイ13を使用して被試験デバイスから第1の数のレーダ信号を受信する。その後、レーダシナリオシミュレーションユニット12は、信号周波数、信号遅延、信号振幅、角度、又はそれらの組合せについての上述した調整を考慮して、少なくとも1つのレーダシナリオに従って第1の数のレーダ信号を操作し、それが、第2の数の被操作レーダ信号をもたらす。その後、レーダシナリオシミュレーションユニット12は、アンテナアレイ13を使用して第2の数の被操作レーダ信号を被試験デバイスに送信する。
【0038】
例として、信号周波数、ここではドプラー周波数、信号遅延、及び信号振幅、ここでは信号減衰の調整が使用されて、実際のレーダターゲットの所望の速度、距離、及びレーダ反射断面積(RCS:radar cross section)をシミュレートしてもよく、異なる角度は、第2の数の被操作レーダ信号を被試験デバイスに送信するために、アンテナアレイ13の各アンテナを選択することによってシミュレートされる。
【0039】
この文脈において、アンテナアレイ13の複数のアンテナは、有利には、被試験デバイスの主放射方向に関して異なる角度で配置される。
【0040】
更に有利には、第2の数の被操作レーダ信号を被試験デバイスに送信するために少なくとも2つのアンテナが使用されるが、被試験デバイスから第1の数のレーダ信号を受信するために少なくとも1つのアンテナだけで十分であることになることが述べられるべきである。これに加えて、少なくとも2つのアンテナの使用は、有利には、ビームフォーミングを可能にする。
【0041】
更に、図に示さないアンテナアレイ13の外側の複数のアンテナは、被試験デバイスの主放射方向に関して同じ角度であるが、被試験デバイスに対して異なる距離に配置されてもよく、それが、有利には、3次元アンテナアレイをもたらす場合がある。
【0042】
図2は、本発明の例示的な実施形態による被試験デバイス及びレーダターゲットシミュレーションデバイスを備えるシステム20を示す。レーダターゲットシミュレーションデバイス1は、有利には、スクリーン22上でシミュレートされる少なくとも1つのレーダシナリオの光学表現を提供する。更に有利には、スクリーン22上に提供される光学表現は、レーダ参照点23a、23b、23cを含む。
【0043】
更に、システム20は、レーダターゲットシミュレーションデバイス1及びスクリーン22に加えて、被試験デバイス2を備える。例として、スクリーン22が被試験デバイス2とレーダターゲットシミュレーションデバイス1との間に位置付けられることによって、スクリーン22は、レーダ信号21a、21bに関して透明である。
【0044】
レーダ信号21aが被試験デバイス2によってレーダターゲットシミュレーションデバイス1に送信された後、レーダターゲットシミュレーションデバイス1は、少なくとも1つのレーダシナリオをシミュレートし、その光学表現を提供し、対応する被操作レーダ信号21bを被試験デバイス2に返送する。
【0045】
有利には、被試験デバイス2によって送信されるレーダ信号21a及び被試験デバイス2に返送される対応する被操作レーダ信号21bに関して、一方で、任意の種類の同期化、及び、他方で、任意の種類の中間周波数信号をフィードバックすることの必要性はない。
【0046】
更に有利には、少なくとも1つのレーダシナリオは、経時的に変化してもよい。更に、少なくとも1つのレーダシナリオは、リアルタイムに変化可能であってよく、かつ/又は時間的に制限されなくてよい。
【0047】
こうして、また、レーダ参照点23a、23b、23cを使用して、レーダシステム及び光学システムからのセンサデータの正しい融合が、最も効率的でかつ正確な方法で試験され得、それは、レーダ技法及び光学技法を組合せるシステムの数が増加する観点から有利である。更に、リアルライフシナリオ用の検出アルゴリズムは、同様に、効率的でかつ正確に訓練されて、フィールドにおけるレーダターゲットの適切な検出及び識別を保証し得る。
【0048】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、少なくとも1つのトラフィックシナリオを使用して自律的車両37を訓練するための訓練システム30を示す。訓練システム30は、メモリ31、レーダシナリオシミュレータ32、2つのアンテナ33a及び33b、光学シナリオシミュレータ34、スクリーン35、及びフィードバックユニット36を備える。
【0049】
メモリ31は、少なくとも1つのトラフィックシナリオを記憶し、少なくとも1つのトラフィックシナリオを、レーダシナリオシミュレータ32及び光学シナリオシミュレータ34に同時に提供するように構成される。
【0050】
有利には、少なくとも1つのトラフィックシナリオはそれぞれ、経時的に変化してもよく、リアルタイムに変化してもよく、時間的に制限されなくてもよく、又は、それらの任意の組合せであってよい。
【0051】
更に、レーダシナリオシミュレータ32は、少なくとも1つのトラフィックシナリオのレーダ表現を提供するように構成される。この目的のために、アンテナ33a及び33bのうちの、少なくとも1つのアンテナ、ここでは、ただ1つのアンテナによって、レーダシナリオシミュレータ32は、自律的車両37のレーダセンサ39からレーダ信号を受信し、相応してレーダセンサ39から受信されるレーダ信号を操作することによって少なくとも1つのトラフィックシナリオをシミュレートし、通常、両方のアンテナ33a及び33bを使用して自律的車両のレーダセンサ39に被操作レーダ信号を返送する。
【0052】
特に被操作レーダ信号を返送するための1つだけではでないアンテナの使用によって、ドプラー等の効果は、有利にはシミュレートされる可能性がある。
【0053】
更に、光学シナリオシミュレータ34は、メモリ31に記憶された少なくとも1つのトラフィックシナリオの光学表現をスクリーン35上に同時に提供するように構成される。例えば、スクリーン35上に提供される光学表現を使用して、自律的に運転するための車両37の光学追跡システムが試験されてもよい。
【0054】
この文脈において、また、例として、訓練システム30は、更に、レーザセンサ、超音波センサ、及び赤外線センサ等のような、自律的車両37の、他のシステム、例えばセンサを同様に操作するための手段を備えてもよい。例えば、こうしたセンサは、少なくとも1つのトラフィックシナリオに従って動的に位置決めされる可動反射板を使用して操作されてもよい。
【0055】
更に、訓練システム30のフィードバックユニット36は、自律的車両37の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)38に接続される。ECU38は、自律的車両37の、センサ、ここではレーダセンサ39からデータを採取して、加速、減速、ステアリング、又はそれらの任意の組合せに関する制御情報を計算する。ECU38に接続されるフィードバックユニット36は、前記制御情報を受信し、制御情報をレーダシナリオシミュレータ32及び光学シナリオシミュレータ34に同時にフィードバックするように構成される。
【0056】
ここで、フィードバックされる制御情報を使用して、レーダシナリオシミュレータ32及び光学シナリオシミュレータ34は、相応して、少なくとも1つのトラフィックシナリオのレーダ表現及び光学表現に同時に適合し得る。
【0057】
更に、特に、レーダシナリオシミュレータ32によって提供されるレーダ表現に関して、雨、雪、風等のような天候状況が、有利にはシミュレートされてもよい。例えば、雨及び雪は、自律的車両37に返送される被操作レーダ信号に重なるノイズによって表現されてもよいのに対して、風は、被操作レーダ信号のフェージングによって表現されてもよい。これに加えて、自律的車両37、ここでは、その自動運転アルゴリズムを、特に安全面に関して訓練するために、他の車両のレーダセンサ、トラフィック管理システムのレーダ等のような干渉物が、考慮され、したがって、シミュレートもされるべきである。
【0058】
見てわかるように、本発明の訓練システムは、有利には、実際には実験所において、自律的車両37、ここでは、その自動運転アルゴリズムを訓練することを可能にする。したがって、本発明の訓練システムを使用して、フィールド、ここでは、道路における高価かつ危険な試験が、有利には、回避され得る。
【0059】
図4は、本発明の例示的な実施形態によるレーダターゲットシミュレーション方法を示すフローチャートを示す。第1のステップS400にて、対応する被試験デバイスに関する少なくとも1つのレーダシナリオが記憶される。第2のステップS401にて、少なくとも1つのレーダシナリオは、シミュレーションのために提供され、シミュレーションは、以下のステップS402~S404を使用して達成されることになる。ステップS402にて、第1の数のレーダ信号は被試験デバイスから受信される。その後、第4のステップS403にて、第1の数のレーダ信号は、ステップS401において提供された少なくとも1つのレーダシナリオに従って操作され、それは、第2の数の被操作レーダ信号をもたらす。ステップS404にて、第2の数の被操作レーダ信号は被試験デバイスに送信される。
【0060】
本発明の種々の実施形態が上述されたが、種々の実施形態が制限としてではなく、例として提示されたことが理解されるべきである。開示される実施形態に対する多数の変更が、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、本明細書の開示に従って行われ得る。そのため、本発明の範囲は、上述した実施形態のうちの任意の実施形態によって制限されるべきでない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物に従って規定されるべきである。
【0061】
本発明は1つ又は複数の実装態様に関して示し述べられたが、本明細書及び添付図面を読み理解すると、等価な変更及び修正を、当業者が思い付くであろう。更に、本発明の特定の特徴が幾つかの実装態様のうちの1つの実装態様だけに関して開示されたが、こうした特徴は、任意の所与の又は特定の用途にとって所望でかつ有利であるように、他の実装態様の1つ又は複数の他の特徴と組合されてもよい。