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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】高分子処理用工程液
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230911BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20230911BHJP
   C11D 7/28 20060101ALI20230911BHJP
   C11D 7/34 20060101ALI20230911BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/304 622Q
H01L21/304 622J
C11D7/50
C11D7/28
C11D7/34
C11D7/32
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021200074
(22)【出願日】2021-12-09
(65)【公開番号】P2022093306
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173172
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パン・スン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】カン・ハン-ビョル
(72)【発明者】
【氏名】キム・ソン-シク
(72)【発明者】
【氏名】キム・テ-ヒ
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0101511(KR,A)
【文献】特開2020-189927(JP,A)
【文献】特表2017-519862(JP,A)
【文献】国際公開第2009/013987(WO,A1)
【文献】特開2006-009006(JP,A)
【文献】特開2009-212383(JP,A)
【文献】特表2010-515246(JP,A)
【文献】特開2006-295118(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0073288(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 7/50
C11D 7/28
C11D 7/34
C11D 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性非プロトン性溶媒、フッ素系化合物、含硫黄化合物、および水を含む高分子処理用工程液であって、
前記水を前記高分子処理用工程液の総重量に対して4重量%未満で含み、
前記含硫黄化合物は、下記化学式1-1~3のいずれか1つで表される化合物を1種以上含むものであり、
前記化学式3で表される化合物は、2-メルカプトチアゾリン、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、および2-メルカプトベンゾチアゾールからなる群より選択される1種以上である、高分子処理用工程液。
【化1】

(前記化学式1-1または前記化学式1-2において、
は、チオール基で置換もしくは非置換の炭素数3~12の直鎖または分枝鎖アルキル基、チオール基またはハロゲンで置換もしくは非置換の炭素数3~12の環状炭化水素基である。)
【化2】

(前記化学式2において、
~R およびR は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、または二重結合を含む炭素数2~5の不飽和炭化水素基であり、
は、直接連結または炭素数1~5のアルキレン基である。)
【化3】

(前記化学式3において、
およびR は、互いに連結されて脂環族または芳香族の単環または多環の環を形成してもよく、前記単環または多環の環は、窒素(N)、酸素(O)または硫黄(S)から選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでもよいし、1つ以上の置換基で置換されていてもよい。)
【請求項2】
前記化学式1-1で表される化合物は、プロパン-1-チオール、ブタン-1-チオール、ペンタン-1-チオール、ヘキサン-1-チオール、ヘプタン-1-チオール、オクタン-1-チオール、デカン-1-チオール、ドデカン-1-チオール、2-メチルプロパン-1-チオール、2-メチルプロパン-2-チオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、2-エチル-1-ヘキサンチオール、1,3-プロパンジチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、フェニルメタンチオール、2-フェニルエタンチオール、4-(tert-ブチル)フェニルメタンチオー
ル、およびフルフリルメルカプタンからなる群より選択される1種以上である、請求項に記載の高分子処理用工程液。
【請求項3】
前記化学式1-2で表される化合物は、ジエチルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、ジイソプロピルジスルフィド、ジイソアミルジスルフィド、ジアミルジスルフィド、ジブチルジスルフィド、ジイソブチルジスルフィド、ジ-tert-ブチルジスルフィド、メ
チルプロピルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジドデシルジスルフィド、ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ジスルフィド、およびジ-tert-ドデシルジスル
フィドからなる群より選択される1種以上である、請求項に記載の高分子処理用工程液。
【請求項4】
前記化学式2で表される化合物は、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、2-(トリメチルシリル)エタンチオール、トリメチル(2-メチルスルファニルエチル)シラン、(3-メルカプトプロピル)メチルジメトキシシラン、および(エチルチオ)トリメチルシランからなる群より選択される1種以上である、請求項に記載の高分子処理用工程液。
【請求項5】
前記フッ素系化合物は、フッ化アルキルアンモニウム、フッ化アルキルホスホニウム、およびフッ化アルキルスルホニウムからなる群より選択される1種以上の化合物を含むものである、請求項1に記載の高分子処理用工程液。
【請求項6】
前記フッ化アルキルアンモニウムは、下記化学式4-1または4-2で表される化合物を含むものである、請求項に記載の高分子処理用工程液。
【化4】

(前記化学式4-1において、
~R12は、それぞれ独立して、炭素数3~10のアルキル基であり、
前記化学式4-2において、
13~R15は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である。)
【請求項7】
前記フッ化アルキルホスホニウムは、下記化学式5で表される化合物を含むものである、請求項に記載の高分子処理用工程液。
【化5】

(前記化学式5において、
16~R19は、それぞれ独立して、炭素数1~22の脂肪族炭化水素、または炭素数6~20の芳香族炭化水素である。)
【請求項8】
前記フッ化アルキルスルホニウムは、下記化学式6で表される化合物を含むものである、請求項に記載の高分子処理用工程液。
【化6】

(前記化学式6において、
20~R22は、それぞれ独立して、炭素数1~22の脂肪族炭化水素、炭素数6~20の芳香族炭化水素である。)
【請求項9】
前記極性非プロトン性溶媒は、ケトン系、アセテート系、アミド系、ピリジン系、モルホリン系、ピロリドン系、ウレア系、ホスフェート系、スルホキシド系、ニトリル系、カーボネート系、オキサゾリドン系、ピペラジン系、およびフラン系溶媒からなる群より選択される1種以上を含むものである、請求項1に記載の高分子処理用工程液。
【請求項10】
組成物の総重量に対して、
前記極性非プロトン性溶媒66~99.45重量%;
前記フッ素系化合物0.1~20重量%;および
前記含硫黄化合物0.01~10重量%;を含む、請求項1に記載の高分子処理用工程液。
【請求項11】
前記高分子処理用工程液は、シリコーン系高分子を除去するものである、請求項1に記載の高分子処理用工程液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着ポリマーに対する除去力を向上させながらも金属層の損傷を最小化できる高分子処理用工程液に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造工程において、半導体ウエハ(以下、「ウエハ」ともいう)の表面に電子回路などを形成した後、ウエハの厚さを薄くするためにウエハの裏面研削(バックグラインディング)を行う場合がある。この場合、ウエハ回路面の保護、ウエハの固定などのために、通常、ウエハの回路面にシリコーン高分子などの接着ポリマーを介して支持体を付着させる。支持体をウエハの回路面に付着させると、ウエハの裏面研削後に厚さが薄くなったウエハを補強することができ、ウエハの研削面に裏面電極などを形成することもできる。
【0003】
前記ウエハの裏面研削、裏面電極形成などの工程が完了すれば、ウエハの回路面から支持体を除去し、接着ポリマーを剥離して除去し、ウエハを切断してチップを製作する。
【0004】
一方、最近は、ウエハを貫通して設ける貫通電極(例えば、シリコン貫通電極)を用いたチップ積層技術が開発されている。このチップ積層技術によれば、従来のワイヤの代わりに貫通電極を用いて複数のチップの電子回路を電気的に接続するので、チップの高集積化、動作の高速化を図ることができる。このチップ積層技術を利用する場合、複数のチップが積層された集合体の厚さを薄くするためにウエハの裏面研削を行う場合が多く、それによって、支持体や接着ポリマーを用いる機会が増加する。
【0005】
ところが、通常、ウエハの回路面に接着ポリマーを介して支持体を付着させた後、前記ウエハと支持体との強固な付着のために熱硬化を実施するため、接着ポリマーを剥離する場合、硬化した接着ポリマーが支持体およびウエハの回路面に残存する場合が発生する。そのため、前記ウエハの回路面に残存する硬化した接着ポリマーを効率的に除去しながらもウエハや金属膜に対する損傷は防止できる手段が必要である。
【0006】
一方、大韓民国公開特許第10-2014-0060389号は、接着ポリマー除去用組成物に関する発明であるが、網状高分子に対する除去速度が遅かったり、線状高分子の除去性が低下し、金属層の損傷が発生する問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国公開特許第10-2014-0060389号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を改善するためのものであって、半導体製造工程においてウエハの回路面に残存する接着ポリマーに対する除去力を向上させながらも金属層の損傷を最小化できる高分子処理用工程液を提供することを目的とする。
【0009】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に述べた課題に制限されず、述べていないさらに他の課題は以下の記載から通常の技術者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、極性非プロトン性溶媒、フッ素系化合物、および含硫黄化合物を含む、高分子処理用工程液を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、極性非プロトン性溶媒、フッ素系化合物、および含硫黄化合物を含むことにより、半導体製造工程においてウエハの回路面に残存する接着ポリマーに対する除去力を向上させながらも金属層のダメージは防止できる高分子処理用工程液を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、極性非プロトン性溶媒、フッ素系化合物、および含硫黄化合物を含む、高分子処理用工程液に関し、半導体ウエハの回路面や金属層上に残存する接着ポリマーに対する除去力を向上させながらも金属層のダメージは防止することができる。
【0013】
前記接着ポリマーは、シリコーン系樹脂を含むものであって、線状の非反応性ポリジメチルシロキサン系高分子だけでなく、硬化により網状高分子を形成するポリオルガノシロキサン樹脂を含むことができる。
【0014】
本発明において、高分子処理用工程液は、高分子洗浄液、高分子剥離液、および高分子エッチング液を含むもので、高分子洗浄液が最も好ましい。
【0015】
本願明細書全体において、アルキル基とは、単一結合により連結された炭化水素基を意味する。
【0016】
<高分子処理用工程液>
本発明の高分子処理用工程液は、極性非プロトン性溶媒、フッ素系化合物、および含硫黄化合物を含むことができ、その他、添加剤をさらに含むことができる。
【0017】
また、本発明による高分子処理用工程液は、人為的に水が投入されないものであって、実質的に水を含まないことが好ましい。ただし、必要に応じてフッ素系化合物の水和物が使用可能であり、これによって、結果的に少量の水を含むことができる。この場合、前記少量の水は、組成物の総重量に対して4重量%未満で含まれ、水を任意に投入する場合、シリコーン樹脂などの高分子に対する除去性が低下し、金属膜の損傷は増加する問題が発生しうる。
【0018】
さらに、本発明の高分子処理用工程液は、アルコール系化合物などのように分子構造内にヒドロキシド(-OH)グループを含む化合物を含まないことが好ましい。分子構造内にヒドロキシドグループを含む場合、フッ素系化合物の活性を阻害してシリコーン樹脂の除去性を低下させる問題が発生しうる。
【0019】
(A)極性非プロトン性溶媒
本発明の高分子処理用工程液は、1種以上の極性非プロトン性溶媒を含み、必要に応じて2種以上の極性非プロトン性溶媒が共に使用可能であり、前記極性非プロトン性溶媒は、シリコーン高分子を膨張させ、フッ素系化合物と分解されたシリコーン高分子を溶解させる役割を果たす。
【0020】
本発明の極性非プロトン性溶媒は、ケトン系、アセテート系、アミド系、ピリジン系、モルホリン系、ピロリドン系、ウレア系、ホスフェート系、スルホキシド系、ニトリル系、カーボネート系、オキサゾリドン系、ピペラジン系、およびフラン系溶媒からなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0021】
一方、一般的に知られた溶媒である水またはアルコール系化合物(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、イソプロピルアルコールなど)の場合、フッ素イオンと水素結合をして高分子の除去が難しいため、本発明による高分子処理用工程液の溶媒は、実質的に水およびアルコール系化合物を含まないことが好ましい。
【0022】
前記ケトン系溶媒は、下記化学式7-1で表される化合物を含むものであってもよい:
【0023】
【化1】
【0024】
前記化学式7-1において、R23およびR24は、それぞれ独立して、C1~C18の直鎖または分枝鎖の脂肪族炭化水素基であり、R23およびR24の炭素数の合計は2個以上30個未満であることが好ましい。
【0025】
例えば、前記ケトン系溶媒としては、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、4-メチル-2-ペンタノン、5-メチル-2-ヘキサノン、または2,6-ジメチル-4-ヘキサノンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
前記アセテート系溶媒としては、例えば、メチルアセテート、エチルアセテート(EA)、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、N-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、sec-ブチルアセテート、アミルアセテート、ペンチルアセテート、イソペンチルアセテート、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルアセテート、エトキシエチルアセテート、メトキシブチルアセテート(MBA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ビニルアセテート、またはエチルエトキシプロピオネート(EEP)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記アミド系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、N-エチル-N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルブチルアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジメチルペンタンアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、またはN,N-ジブチルプロパンアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
前記ピリジン系溶媒は、下記化学式7-2で表される化合物を含むものであってもよい:
【0029】
【化2】
【0030】
前記化学式7-2において、R25~R27は、それぞれ独立して、水素、C1~C10の直鎖または分枝鎖の脂肪族炭化水素基、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、またはI)、アルデヒド基(-CHO)、アセトアルデヒド基(-COCH)、C1~C4のアルコキシ基、ビニル基、アセチレン基、シアノ基(-CN)またはメチルスルフィド基(-SCH)であってもよい。
【0031】
例えば、前記ピリジン系溶媒としては、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、4-エチルピリジン、4-プロピルピリジン、4-イソプロピルピリジン、4-アミルピリジン、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,5-ルチジン、3,4-ルチジン、3,5-ルチジン、または2,4,6-トリメチルピリジンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
前記モルホリン系溶媒は、下記化学式7-3で表される化合物を含むものであってもよい:
【0033】
【化3】
【0034】
前記化学式7-3において、R28は、水素;C1~C6の直鎖または分枝鎖の脂肪族炭化水素基;ビニル基;シアノ基(-CN);3級アミンによって置換されたC1~C4の脂肪族炭化水素基;C1~C4のアルキル基、シアノ基(-CN)、ハロゲン基(例えば、F、Cl、Br、またはI)またはアルデヒド基(-CHO)によって置換されたフェニル基またはピリジン基であり、Xは、酸素または-NR29-であり、R29は、C1~C4の脂肪族炭化水素基である。
【0035】
例えば、前記モルホリン系溶媒としては、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-アリールモルホリン、N-ブチルモルホリン、またはN-イソブチルモルホリンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
前記ピロリドン系溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、またはN-ビニルピロリドン(NVP)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
前記ウレア系溶媒は、下記化学式7-4で表される化合物を含むものであってもよい:
【0038】
【化4】
【0039】
前記化学式7-4において、Xは、酸素または-NR29-であり、R29およびR30は、それぞれ独立して、C1~C6の直鎖、分枝鎖または環状脂肪族炭化水素基;またはビニル基、フェニル基、アセチレン基、メトキシ基、またはジメチルアミノ基が置換されたC1~C4の脂肪族炭化水素基である。
【0040】
例えば、前記ウレア系溶媒としては、テトラメチルウレア、テトラエチルウレア、またはテトラブチルウレアなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
前記ホスフェート系溶媒は、下記化学式7-5で表される化合物を含むものであってもよい:
【0042】
【化5】
【0043】
前記化学式7-5において、R31~R33は、それぞれ独立して、C1~C8の直鎖または分枝鎖の脂肪族炭化水素基;隣接する酸素と共に環を形成するC3~C8の2価の脂肪族炭化水素基;非置換またはC1~C4の脂肪族炭化水素基によって置換されたフェニル基;ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、またはI)によって置換されたC2~C4の脂肪族炭化水素基またはハロゲンによって置換されたフェニル基である。
【0044】
例えば、前記ホスフェート系溶媒としては、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリアミルホスフェート、またはトリアリルホスフェート(triallyl phosphate)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
前記スルホキシド系溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジブチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルホキシド、またはメチルフェニルスルホキシドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
前記ニトリル系溶媒としては、例えば、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、アセトニトリル、トリメチルアセトニトリル、またはフェニルアセトニトリルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
前記カーボネート系溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート(PC)、またはビニレンカーボネートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
前記オキサゾリドン系溶媒としては、例えば、2-オキサゾリドン、3-メチル-2-オキサゾリドンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
前記ピペラジン系溶媒としては、例えば、ジメチルピペラジン、ジブチルピペラジンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
前記フラン系溶媒は、下記化学式7-6または7-7で表される化合物を含むものであってもよい:
【0051】
【化6】
【0052】
前記化学式7-6および7-7において、R34~R39は、それぞれ独立して、水素;またはアルコキシ基、シアノ基またはハロゲンによって置換されるか非置換のC1~C5の直鎖または分枝鎖の脂肪族炭化水素基、またはアルコキシ基、シアノ基またはハロゲンによって置換されたC1~C5のアルキル基であってもよい。
【0053】
例えば、前記フラン系溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、(テトラヒドロフラン-2イル)アセトニトリル、テトラヒドロフルフリルクロライド、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン、フラン、2-メチルフラン、2-エチルフラン、2-プロピルフラン、2-ブチルフラン、2-ペンチルフラン、3-メチルフラン、2,3-ジメチルフラン、2,5-ジメチルフラン、2-シアノフラン、または2,5-ジシアノフランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
前記極性非プロトン性溶媒は、高分子処理用工程液の総重量に対して66~99.89重量%含まれ、好ましくは70~99.45重量%含まれる。前記極性非プロトン性溶媒が66重量%未満で含まれると、金属膜が損傷する問題が発生することがあり、99.89重量%を超える場合は、電子部品に付着したシリコーン系樹脂を効果的に除去できない問題が発生することがある。
【0055】
(B)フッ素系化合物
本発明の高分子処理用工程液は、1種以上のフッ素系化合物を含み、前記フッ素系化合物は、シリコーン高分子の環を切って分子量を減少させる役割を果たす。
【0056】
本発明のフッ素系化合物は、フッ化アルキルアンモニウム、フッ化アルキルホスホニウム、およびフッ化アルキルスルホニウムからなる群より選択される化合物を1種以上含むことができる。
【0057】
前記フッ化アルキルアンモニウムは、下記化学式4-1または4-2で表される化合物を含むものであってもよい:
【0058】
【化7】
【0059】
前記化学式4-1において、R~R12は、それぞれ独立して、炭素数3~10のアルキル基である。前記R~R12が炭素数2以下のアルキル基の場合、溶媒に対するフッ素系化合物の溶解度が低下し、混合してすぐに析出が発生したり、やや時間が経過した後に析出が発生する問題が発生する。
【0060】
【化8】
【0061】
前記化学式4-2において、R13~R15は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である。
【0062】
例えば、前記フッ化アルキルアンモニウムとしては、テトラブチルアンモニウムビフルオライド(TBAF・HF)、テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)、テトラオクチルアンモニウムフルオライド(TOAF)、またはベンジルトリメチルアンモニウムフルオライド(BTMAF)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
また、前記フッ化アルキルアンモニウムは、フッ化アルキルアンモニウムフルオライド・n(HO)のように、水和物形態で存在してもよいし、ここで、nは5以下の整数である。その例としては、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオライドハイドレート、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオライドトリハイドレート、またはベンジルトリメチルアンモニウムフルオライドハイドレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
さらに、前記フッ化アルキルホスホニウムは、下記化学式5で表される化合物を含むものであってもよい:
【0065】
【化9】
【0066】
前記化学式5において、R16~R19は、それぞれ独立して、炭素数1~22の脂肪族炭化水素、または炭素数6~20の芳香族炭化水素である。
【0067】
例えば、前記フッ化アルキルホスホニウムとしては、テトラブチルホスホニウムフルオライド、トリエチルオクチルホスホニウムフルオライド、またはセチルトリメチルホスホニウムフルオライドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
また、前記フッ化アルキルスルホニウムは、下記化学式6で表される化合物を含むものであってもよい:
【0069】
【化10】
【0070】
前記化学式6において、R20~R22は、それぞれ独立して、炭素数1~22の脂肪族炭化水素、炭素数6~20の芳香族炭化水素である。
【0071】
例えば、前記フッ化アルキルスルホニウムとしては、トリブチルスルホニウムフルオライド、トリオクチルスルホニウムフルオライド、またはn-オクチルジメチルスルホニウムフルオライドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
前記フッ素系化合物は、高分子処理用工程液の総重量に対して0.1~20重量%含まれ、好ましくは0.5~17重量%含まれる。前記フッ素系化合物が0.1重量%未満で含まれる場合、電子部品などに付着したシリコーン系樹脂を効果的に除去できない問題が発生することがあり、20重量%を超える場合は、経時による水分含有量が増加して、むしろシリコーン樹脂の除去性能の低下およびフッ化物の増加による金属膜にダメージの発生が増加することがある。
【0073】
(C)含硫黄化合物
本発明の高分子処理用工程液は、接着剤の下部に露出する金属膜質に対する損傷を減少させるために1種以上の含硫黄化合物を含み、前記含硫黄化合物は、チオール基(-SH)を含むことが好ましい。また、含硫黄化合物は、高分子処理用工程液の高分子除去性能は阻害することなく金属防食効果を提供することができる。
【0074】
本発明において、含硫黄化合物が後述する化学式1~3の構造を逸脱する場合、例えば、-OHまたは-NH-、NHを含む場合、フッ素系化合物と水素結合を形成して高分子の除去性能が急激に低下する問題が発生し、本発明の目的に符合できなくなる。
【0075】
本発明の含硫黄化合物は、本発明の組成物に含まれる極性非プロトン性溶媒およびフッ素系化合物のほかに、追加的に含まれる成分である。
【0076】
前記含硫黄化合物は、下記化学式1-1~3のいずれか1つで表される化合物を1種以上含むものであってもよい。
【0077】
【化11】
【0078】
前記化学式1-1または前記化学式1-2において、Rは、チオール基で置換もしくは非置換の炭素数3~12の直鎖または分枝鎖アルキル基、チオール基またはハロゲンで置換もしくは非置換の炭素数3~12の環状炭化水素基であり、前記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素である。
【0079】
例えば、前記化学式1-1で表される含硫黄化合物としては、プロパン-1-チオール、ブタン-1-チオール、ペンタン-1-チオール、ヘキサン-1-チオール、ヘプタン-1-チオール、オクタン-1-チオール、デカン-1-チオール、ドデカン-1-チオール、2-メチルプロパン-1-チオール、2-メチルプロパン-2-チオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、2-エチル-1-ヘキサンチオール、1,3-プロパンジチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、フェニルメタンチオール、2-フェニルエタンチオール、4-(tert-ブチル)フェニルメタンチオール、またはフルフリルメルカプタンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
例えば、前記化学式1-2で表される含硫黄化合物としては、ジエチルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、ジイソプロピルジスルフィド、ジイソアミルジスルフィド、ジアミルジスルフィド、ジブチルジスルフィド、ジイソブチルジスルフィド、ジ-tert-ブチルジスルフィド、メチルプロピルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジドデシルジスルフィド、ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ジスルフィド、またはジ-tert-ドデシルジスルフィドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記化学式1-2で表される含硫黄化合物は、チオール基を含有する化合物(例えば、前記化学式1-1で表される化合物)の酸化によって形成されるものであってもよい。
【0081】
【化12】
【0082】
前記化学式2において、R~RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、または二重結合を含む炭素数2~5の不飽和炭化水素基であり、Rは、直接連結または炭素数1~5のアルキレン基である。
【0083】
例えば、前記化学式2で表される含硫黄化合物としては、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、2-(トリメチルシリル)エタンチオール、トリメチル(2-メチルスルファニルエチル)シラン、(3-メルカプトプロピル)メチルジメトキシシラン、または(エチルチオ)トリメチルシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
【化13】
【0085】
前記化学式3において、RおよびRは、互いに連結されて脂環族または芳香族の単環または多環の環を形成してもよく、前記単環または多環の環は、窒素(N)、酸素(O)または硫黄(S)から選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでもよいし、1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0086】
また、前記化学式3で表される含硫黄化合物は、RおよびRは互いに連結されて環を形成することにより硫黄原子と共鳴構造を有することができ、前記共鳴構造によってチオール基を含むことができる。
【0087】
例えば、前記化学式3で表される含硫黄化合物としては、2-メルカプトチアゾリン、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、または2-メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
前記含硫黄化合物は、高分子処理用工程液の総重量に対して0.01~10重量%含まれ、好ましくは0.05~7重量%含まれる。前記含硫黄化合物が0.01重量%未満で含まれる場合、下部に露出する金属膜質に対するダメージを十分に抑制できない問題が発生し、10重量%を超える場合は、前記接着剤の除去性が低下する問題が発生しうる。
【0089】
(D)その他の添加剤
本発明の高分子処理用工程液の高分子除去性能を阻害しない範囲で前記成分のほかにこの分野にて通常使用される腐食防止剤、界面活性剤などの成分をさらに含むことができる。
【0090】
前記腐食防止剤は、樹脂の除去時に金属含有下部膜の腐食を効果的に抑制するために使用されるものであって、一般的に各種供給源から商業的に入手可能であり、追加の精製なしに使用できる。
【0091】
前記界面活性剤は、洗浄特性強化のために使用できる。例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤を用いることができるが、なかでも特に、湿潤性に優れ、気泡の発生がより少ない非イオン性界面活性剤を用いることが好ましく、これらは1種または2種以上を混合して使用可能である。
【0092】
また、本発明は、本発明による高分子処理用工程液を用いたデバイスからの高分子の除去方法を提供する。本発明による高分子の除去方法は、本発明による高分子処理用工程液について記述された内容をすべて適用可能であり、重複する部分については詳細な説明を省略したが、その説明が省略されたとしても同様に適用可能である。
【0093】
具体的には、前記高分子の除去方法は、デバイスウエハを薄くする工程で使用されるシリコーン接着剤のような高分子を除去するためのものであって、デバイスウエハを薄くする工程は、キャリアウエハとデバイスウエハとの間にシリコーン接着剤とシリコーン離型層を形成して半導体基板を薄くする工程を含む。前記シリコーン離型層は、工程後にキャリアウエハを除去する過程で分離の起こる位置でデバイスウエハの破損を生じない。前記シリコーン接着剤は、デバイスウエハとキャリアウエハとを接着するものであって、硬化過程を経る。このような工程後、硬化した高分子を本発明による高分子処理用工程液を用いて除去する。
【0094】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されない。
【実施例
【0095】
実施例1~26および比較例1~5:高分子処理用工程液の製造
下記表1および2に記載の成分および組成比によって高分子処理用工程液を製造した。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
実験例1:薄膜基板の除去性評価-網状高分子
硬化したシリコーン高分子が50μmの厚さにコーティングされたウエハを2×2cmの大きさに切断して用い、25℃の組成液を400rpmで回転させながら用意されたサンプルを1分間浸漬し、IPA(isopropyl alcohol)洗浄後に乾燥した。評価後、SEMで硬化したシリコーン高分子の膜厚さを測定した。その後、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で残存するシリコーン系樹脂の膜厚さを測定して除去速度を算出し、下記表3および4にまとめた。
【0099】
除去速度(μm/min)=[評価前の厚さ(μm)-評価後の厚さ(μm)]/評価時間(min)
実験例2:薄膜基板の除去性評価-線状PDMS
ポリジメチルシロキサンのプレポリマーと硬化剤とを所定の質量比で混合したブレンドをシリコンウエハ上にスピンコーティングし、2×2cmの大きさに切断して用い、25度(℃)の組成液を400rpmで回転させながら用意されたサンプルを1分間浸漬し、IPA洗浄後に乾燥した。評価後、光学顕微鏡とSEMでウエハ表面の残留物を観察した。残留物の発生の有/無によって、下記の基準で下記表3および4に表記した。
【0100】
<評価基準>
○:残留物無し
X:残留物有り
実験例3:金属のダメージ評価1
Sn、Sn/Ag合金、Sn/Au合金、Sn/Ag/Cu合金などからなる1011個のバンプボール(Bump ball)が形成されたウエハを2×2cmの大きさに切断して用い、25℃の組成液を400rpmで回転させながら用意されたサンプルを30分間浸漬した後、IPA洗浄後に乾燥した。評価後、SEMでBump ball damageの個数を確認し、発生個数を下記表3および4にまとめた。
【0101】
実験例4:金属のダメージ評価2
また、アルミニウム薄膜が形成されたウエハを2×2cmの大きさに切断して用い、25℃の組成液を400rpmで回転させながら用意されたサンプルを30分間浸漬し、IPA洗浄後に乾燥した。そして、評価後、光学顕微鏡でパッドディフェクト(Defect)を確認し、下記の評価基準による結果を下記表3および4にまとめた。
【0102】
<評価基準>
○:表面モルフォロジー変化および変色無し
△:変色有り
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
前記表3および4を参照すれば、本願による実施例1~26の高分子処理用工程液は、含硫黄化合物を含むことにより、シリコーン系網状高分子および線状高分子に対する除去性に優れるだけでなく、金属に対するダメージも著しく低下することを確認することができた。特に、含硫黄化合物の中でも化学式1-1~3の構造を満足する含硫黄化合物を用いた実施例1~23の場合、高分子除去能に優れかつ、バンプボールダメージが5個以下であったり全く発生せず、Alダメージも発生しておらず、金属損傷防止効果がさらに優れていることを確認することができた。
【0106】
一方、極性非プロトン性溶媒なしにフッ素系化合物のみ使用された比較例2では高分子の除去が不可能であり、フッ素系化合物と極性非プロトン性溶媒を含んでいても含硫黄化合物が使用されなかったり他の添加剤が使用された場合にはバンプボールダメージの個数が著しく増加し、アルミニウムに対する損傷も確認された。