(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】N-メチル(メタ)アクリルアミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 231/02 20060101AFI20230911BHJP
C07C 233/09 20060101ALI20230911BHJP
C07C 231/24 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
C07C231/02
C07C233/09 B
C07C231/24
(21)【出願番号】P 2021504272
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2019069082
(87)【国際公開番号】W WO2020020698
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-03-16
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルツェル トレスコフ
(72)【発明者】
【氏名】ドリス ザール
(72)【発明者】
【氏名】トアベン シュッツ
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン クリル
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-512217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)無水(メタ)アクリル酸をメチルアミンと反応させること、
b)前記メチルアミンの含水率が<
1重量%であること、
c)無水(メタ)アクリル酸:アミンの化学量論比が
1:1~1:2未満
の範囲内であること、を特徴とする、N-メチル(メタ)アクリルアミドの製造方法。
【請求項2】
前記
反応は、安定剤の存在下で行われることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記安定剤は、フェノチアジン、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリラート、ベンゼン-1,4-ジアミン、N,N’-混合フェニルおよびトリル誘導体(DTPD)、2,6-ジ-tert-ブチル-アルファ-(ジメチルアミノ)-p-クレゾール、tert-ブチルカテコール、ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルセバカート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンN-オキシル、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項
2記載の方法。
【請求項4】
全反応物の添加終了後の
反応混合物の含水率が、5重量%未
満であることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記反応が、極性非プロトン溶媒中で実施されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記メチルアミンが、純物質として、液体形態で、または気体形態で、添加されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
メチルアミンが、ガスとして添加されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
無水(メタ)アクリル酸
:アミンの化学量論比が1:1であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
(メタ)アクリル酸副生成物が、蒸留により除去または分離されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記無水(メタ)アクリル酸を、-20℃~100
℃の温度で、メチルアミンと反応させること特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記無水(メタ)アクリル酸を、絶対圧力0.5bar~10
barで、メチルアミンと反応させることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-メチル(メタ)アクリルアミドの製造方法に関する。
【0002】
N-メチル(メタ)アクリルアミドは、酸ハロゲン化物とメチルアミンとを反応させて製造することができる。しかしこの場合、さらなる1当量の塩基が必要であり、それによって、形成されたハロゲン化水素が捕捉される。疑念がある場合には、この塩基はメチルアミン自体であり、2当量のメチルアミンを要することになるので、該製造法の経済的存立可能性にマイナスに影響する。
【0003】
さらなる製造法が、独国特許出願公開第4027843号明細書に、N置換アクリルアミドおよびメタクリルアミドの連続的な製造法として一般論的に記載されている。この方法では、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルと脂肪族または芳香族アミンとをモル比1:≧2で、連続モードで反応させることにより、対応するN置換アクリルアミドおよびメタクリルアミドを得る。酸塩化物を用いる製造法と同様に、この方法は2当量のアミンを要し、したがって原子効率は限られている。この反応は触媒を必要としないものの、>150℃、かつ圧力約160barという厳しい条件下で進行する。化学量論量の無水メタクリル酸よりも多くのアミンを用いてN-メチルメタクリルアミドを製造した場合、真空下で不安定な塩が形成される。これが後続の後処理中に分解するので真空を維持できず、温度は制御不能なほど上昇し、最終的に生成物が重合する。
【0004】
同様に、独国特許出願公開第102011089363号明細書も、同様に対応する酸無水物およびアルキルアミンから進行する、N-アルキル(アルキル)アクリルアミドの製造法を開示している。同明細書で特許請求しているのは、アミンの水溶液添加、および生成物回収前の溶液の中和である。N-メチル(メタ)アクリルアミドの製造では、水溶液中の製造は非常に不利である。N-メチル(メタ)アクリルアミドは液体であって、どのような比率でも水に溶解するので、抽出が極めて困難であり得、沸点が類似しているために蒸留分離で大量の損失が生じる。しかしアミン水溶液の使用は、中間生成物として形成される酸のアンモニウム塩を水の存在下で解離平衡させるという点で、重大な利点を有する。その結果、系中に常時微量のアミンが存在し、それが無水物と反応し得るので、全体的な収率は>95%に達する。
【0005】
国際公開第2010/021956号は、同様に対応する酸無水物およびアルキルアミンから進行する、N-アルキル(アルキル)アクリルアミドの製造法を開示している。同明細書で特許請求しているのは、無水物を、最初から水溶液に装入された形態のアミンに添加することである。この方法変化形態は相当な発熱性を伴い、それゆえ変色が生じることがある。さらに、独国特許出願公開第102011089363号明細書と同様の欠点が存在する。
【0006】
対処された課題は、N-メチル(メタ)アクリルアミドを製造するための特に経済的に信頼性の高い方法を提供することであった。
【0007】
この課題は、無水(メタ)アクリル酸とメチルアミンとを水の非存在下で反応させることによるN-メチル(メタ)アクリルアミドの製造方法により解決された。
【0008】
より具体的には、この課題は、
a)無水(メタ)アクリル酸をメチルアミンと反応させること、
b)メチルアミンの含水率が、<10重量%であること、
c)無水物:アミンの化学量論比が、1:2未満であること、
を特徴とするN-メチル(メタ)アクリルアミドの製造方法により解決された。
【0009】
驚くべきことに、本発明の方法は、実質的に定量的な収量を実現すること、および純物質を得る後処理での損失が特に少ないことが判明した。そのうえ、(メタ)アクリル酸副生成物を無水物製造の開始物質として再利用できるので、反応の原子効率は完全であり、したがって特に高効率であるのみならず、非常に持続可能性が高い。
【0010】
本発明の方法は、反応が実質的に無水である場合に、特に有利に実施できることが判明している。
【0011】
さらに、この反応は、触媒を添加しなくても実施できることが判明しており、このことは、方法の経済的存立可能性のさらなる改善につながる。
【0012】
本明細書では、「(メタ)アクリル酸」という表記は、メタクリル酸エステル、たとえばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル他、およびアクリル酸エステル、たとえばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル他の双方、ならびに両者の混合物を意味する。
【0013】
触媒
反応は、触媒の非存在下で実施することができる。反応は、触媒を添加しなくても十分に速い。
【0014】
無水(メタ)アクリル酸
使用される無水(メタ)アクリル酸は、無水メタクリル酸または無水アクリル酸である。
【0015】
安定剤
無水(メタ)アクリル酸は、好ましくは、安定した形態で使用される。好適な安定剤は、フェノチアジン、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリラート、ベンゼン-1,4-ジアミン、N,N’-混合フェニルおよびトリル誘導体(DTPD)、2,6-ジ-tert-ブチル-アルファ-(ジメチルアミノ)-p-クレゾール、tert-ブチルカテコール、ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルセバカート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンN-オキシル、およびそれらの混合物である。
【0016】
ある量の安定剤が、無水(メタ)アクリル酸と一緒に溶液として反応器に反応開始時に導入されるか、または最初に装入されるか、または無水(メタ)アクリル酸の後に添加される。
【0017】
メチルアミン
メチルアミンは、液体形態で、気体形態で(たとえば独国ハーナウのGHC Gerling, Holz + Coのモノメチルアミン)、または無水溶媒、たとえばTHF、MTBE、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、もしくはジエチルエーテル中で、使用され得る。メチルアミン水溶液は、この方法には適さない。
【0018】
好ましくは、メチルアミンの含水率は、<10重量%、好ましくは<5重量%、より好ましくは<1重量%、もっとも好ましくは<0.1重量%である。
【0019】
好ましくは、全反応物の添加終了後の反応混合物の含水率は、<10重量%、好ましくは<5重量%、より好ましくは<1重量%、もっとも好ましくは<0.1重量%である。
【0020】
溶媒
反応は、無溶媒でも溶媒存在下でも生じさせることができる。好適な溶媒は、THF、MTBE、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、ニトロメタン、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン、またはトルエン、およびそれらの混合物の群より選択される。
【0021】
反応条件
反応は、-20℃~100℃、好ましくは0℃~80℃、より好ましくは20℃~50℃の温度で引き起こされる。
【0022】
望ましくない副生成物の形成を避けるために、特に低い温度を用いて、(メタ)アクリル酸エステルの二重結合へのアミンのマイケル付加を防止する。
【0023】
無水(メタ)アクリル酸を、絶対圧力0.5bar~10bar、好ましくは1bar~5barで、メチルアミンと反応させる。
【0024】
反応時間は、0.1~10時間、好ましくは0.5~5時間の範囲である。
【0025】
化学量論
無水(メタ)アクリル酸:アミンの化学量論比は、1:2未満、好ましくは1:1.5未満、より好ましくは1:1.1未満、もっとも好ましくはちょうど1:1である。
【0026】
周囲圧力が用いられるさらなる方法のバージョンでは、メチルアミンを反応溶液中に泡立たせることも可能である。この場合、すべてのメチルアミンが反応するわけではない。反応の成功に重要なのは、無水(メタ)アクリル酸に対する、反応するアミンの過剰が、0.5~1.5であることである。
【0027】
中和および後処理:
得られた粗生成物を、反応終了直後に、中和の必要なく、分別蒸留によって後処理することができる。
【0028】
好ましい方法の変化形態
無水(メタ)アクリル酸を最初にオートクレーブに装入し、オートクレーブをねじ式に閉める。鋼製メチルアミンガスボトルをオートクレーブにコイルVAフィードパイプで接続し、メチルアミンの導入後の重量の減少を観察する。
【0029】
メチルアミンの導入を、約4g/3分の供給速度で、室温で開始する。反応は強発熱性である。温度は40℃(35℃±5℃)を超えてはならない。混合物をアセトン-ドライアイス混合物で冷却する。メチルアミンの流量調節速度を6g/3分に高める。化学量論量のメチルアミンを導入したら、ボトルを閉め、コンジットに残ったガスを10分間放置して反応させてから、冷却をやめ、オートクレーブを排気する。
【0030】
代替方法は、溶媒存在下での反応である。無水(メタ)アクリル酸および好適な溶媒、たとえばMTBEを最初に装入し、冷却する。メチルアミンガスを約2℃~10℃で導入する。反応は弱発熱性である。
【0031】
この温度では反応が徐々にしか進行しないので、ガスをより高速で導入してもよい。底部温度を50℃まで上昇させることができる。無水(メタ)アクリル酸が検出されなくなったら、導入を終了する。溶媒を、たとえばロータリー・エバポレーターで排出させる。残渣を蒸留する。
【0032】
本発明により製造されたN-メチル(メタ)アクリルアミドは、ポリマーの水溶性を高めるための(メタ)アクリル酸エステルポリマーのコポリマーとして使用できる。
【0033】
以下に挙げる例は、本発明をよりわかりやすくするために提供されるが、本発明をそれらに開示される特徴に限定するものではない。
【0034】
本例で使用されている無水メタクリル酸はすべて、2000ppmの2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノールで安定化させたものである。
【0035】
実施例1:N-メチルメタクリルアミドの製造
反応式:
【化1】
【0036】
装置:ガラスインサートを備えた2lオートクレーブ、Ni-Cr-Ni熱電対、ガスフィード:金属、鋼製メチルアミンガスボトル、圧力計、アセトン/ドライアイス浴
混合物:
6.0mol 無水メタクリル酸=940.2g
6.0mol メチルアミン、ガス=186.4g
理論収量:(=開始重量)1126.6g
【0037】
手順:オートクレーブのガラスインサートに無水メタクリル酸を最初に装入し、オートクレーブをねじ式に閉める。鋼製メチルアミンガスボトルを秤に乗せ、コイルVAフィードパイプでオートクレーブに接続し、したがってメチルアミンの導入後の重量の減少を観察することができる。
【0038】
メチルアミンの導入を、約4g/3分の流量調節速度で、室温で開始する。反応は強発熱性である。温度は40℃(35℃±5℃)を超えてはならない。混合物をアセトン-ドライアイス混合物で冷却する。メチルアミンの流量調節速度を6g/3分に高めるが、これ以上は可能でない。なぜならば、ガラスインサートゆえに熱伝導性が低く、冷却されるためである。化学量論量のメチルアミン(186.4g、6mol)を導入したら、ボトルを閉め、コンジットに残ったガスを10分間放置して反応させてから、冷却をやめ、オートクレーブを排気する。
【0039】
収量:1125g
生成物のGC、方法:(GC:DB5、30m、Φ 0.25mm、膜厚0.25μm、50℃、3分等温、14℃/分→280℃、8分等温;det:280℃、inj.:250℃)
【表1】
【0040】
実施例2:蒸留によるN-メチルメタクリルアミドの後処理
装置:沸騰キャピラリーを備えた2l三ツ口丸底フラスコ、Pt100温度センサー、8×8ラシヒリングを備えた30cmミラー塔、自動式塔頭部(分液器)、還流冷却器、コイル冷却器、パーキントライアングル器具、受け器、油浴、真空ポンプ、圧力計
混合物:
1122g 実施例1のN-メチルメタクリルアミド
22.4mg 4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル(rad.)(20ppm)
224.4mg ヒドロキノンモノメチルエーテル(200ppm)
1122mg オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(1000ppm)
【0041】
【0042】
【0043】
実施例3:溶媒中のN-メチルメタクリルアミドの製造
装置:精密ガラススターラー(Teflonスリーブ)を備えた1l四ツ口丸底フラスコ、Pt100温度センサー、ガス入口(Teflon)、セーフティボトルとしての洗浄瓶を有するTeflonのガス出口、還流冷却器、鋼製メチルアミンガスボトル、フューム・フードに直接入る廃気コンジット、添加空気としての圧縮空気のフィード、アセトン/ドライアイス冷却浴
混合物:
1.0mol 無水メタクリル酸=156.4g
250ml メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)
1.0mol メチルアミン、ガス
理論収量:99.1g
【0044】
手順:無水メタクリル酸およびMTBEを最初に装入し、冷却する。メチルアミンガスを約2℃~10℃で導入する。反応は弱発熱性である。
【0045】
この温度では反応が非常に緩慢にしか進行しないので、ガスをより速く導入して、底部温度を50℃まで上昇させてもよい。無水メタクリル酸が検出されなくなったら、導入を終了する。MTBEを、ロータリー・エバポレーター(RE)で、浴温度60℃で、圧力を200mbarまで下げて排出する。
200mbarの留出物:151.5g
200mbarの残渣:181.7g
【0046】
残渣(180g)に、1000ppmのオクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、500ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル、および20ppmの4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル(rad.)を添加して、15cmのビグリューカラムにて減圧下で蒸留する。
【0047】
【0048】
分析:(GC:DB5、30m、Φ0.25mm、膜厚0.25μm、50℃、3分等温、14℃/分→280℃、8分等温;det:280℃、inj.:250℃)
【表5】
【0049】
GC分析による収量:89.9gのN-メチルメタクリルアミド=理論の90.7%
【0050】
比較例1:過剰メチルアミンガス中のN-メチルメタクリルアミドの製造
装置:精密ガラススターラー(Teflonスリーブ)を備えた1l四ツ口丸底フラスコ、Pt100温度センサー、セーフティボトルとしての洗浄瓶を有するTeflonのガスフィード、ガス入口(Teflon)、還流冷却器、鋼製メチルアミンガスボトル、フューム・フードに直接入る廃気コンジット、添加空気としての圧縮空気のフィード、アセトン/ドライアイス冷却浴
混合物:
1.0mol 無水メタクリル酸=156.4g
250ml メチルtert-ブチルエーテル
およそ2mol メチルアミン、ガス
N-メチルメタクリルアミド理論収量:99.1g
【0051】
手順:無水メタクリル酸およびMTBEを最初に装入し、勢いよく撹拌しながらメチルアミンガスを導入する。GCにより変換を観察する。無水メタクリル酸が検出されなくなっても、まだ発熱反応が生じているので、メチルアミンをさらに導入する。発熱反応が弱くなったらすぐに導入を終了する。撹拌を停止した後、2つの相が生じる。MTBEを、ロータリー・エバポレーターで、浴温度60℃で、圧力を200mbarまで下げて排出する。
200mbarの留出物:177.1g
200mbarの残渣:215.0g
【表6】
【0052】
ロータリー・エバポレーターの残渣180gに、1000ppmのオクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、500ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル、および20ppmの4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル(rad.)を添加して、15cmのビグリューカラムにて減圧下で蒸留する。
【0053】
メタクリル酸メチルアンモニウムが分解されるため、塔底温度40℃からはもう圧力を維持できない。塔底温度90℃からは、受け器および装置内にミストが生じる。このことは、アミンと酸との反応の明白な兆候である。留出物が得られた直後に塔底に固形物が生じ、混合物は10分以内に完全に重合する。
【0054】
【0055】
比較例2:メチルアミン水溶液からのN-メチルメタクリルアミドの製造
装置:精密ガラスサーベルスターラーを備えた2l四ツ口丸底フラスコ、500ml滴下漏斗、Pt-100液相温度計、還流冷却器、冷却浴
混合物:
6.15mol 無水メタクリル酸=961.5g
6.15mol メチルアミン、H2O中40%=477.4g
理論収量:609.65g
【0056】
手順:
無水メタクリル酸を最初に装入し、撹拌しながら10℃未満に冷却する。次いでメチルアミンの計量添加を開始する(発熱反応、氷浴での冷却、および少々のミスト形成)。滴加および冷却は、温度が10℃よりも上昇しないように行う。滴加の終了後(4時間)、さらに2時間撹拌を続け、さらに反応させる。冷却をやめる。
【0057】
後処理:
混合物(1419g)に、1000ppmのオクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、500ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル、および20ppmの4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル(rad.)を添加して、ロータリー・エバポレーターで濃縮する。
フラスコ内残渣:229.7g
35mbarの留出物、浴80℃ 340.8g
5mbarの留出物、浴80℃ 273.4g
0mbarの留出物、浴80℃~95℃ 531.6g
【0058】
GC分析:(DB5、30m、Φ0.25mm、膜厚0.25μm、50℃、3分等温、14℃/分→280℃、8分等温;det:280℃、inj.:250℃)
【表8】
【0059】
水相を中和せず、簡単な蒸留後、水とメタクリル酸との混合物としての生成物を410.2g(理論の67.3%)単離することが可能であり、およそ230gの固形物が残る。5mbarおよび1mbarの留出物(805g、生成物は399g)を比較例3で分別蒸留する。
【0060】
比較例3:メタクリル酸水溶液からのN-メチルメタクリルアミドの蒸留
装置:1l三ツ口丸底フラスコ、沸騰キャピラリー、6×6ラシヒリングを備えた30cmミラー塔、リービッヒ冷却器、クライゼン器具、パーキントライアングル器具、受け器、油浴、真空ポンプ
混合物:805g 比較例2の留出物
66.5mg ヒドロキノンモノメチルエーテル(100ppm)
665mg オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(1000ppm)
33.3mg 2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール(50ppm)
【0061】
手順:
【表9】
第1の留分 156.3g
第2の留分 48.5g(白濁留出物、「小塊状物」)
液相を陶製吸引フィルターで濾過する。濾液→292.5g→GC
フィルターケークのサンプルをMeOHに溶解→307g→ポリマー
【0062】
GC分析:(Meth.F241、DB5、30m、Φ 0.25mm、膜厚0.25μm、50℃、3分等温、14℃/分→280℃、8分等温;det:280℃、inj.:250℃)
【表10】
【0063】
水とメタクリル酸とは非常にしっかりと単離できたが、メチルアミン水溶液を用いて製造した生成物は重合するので、90分の蒸留後はN-メチルメタクリルアミドが25%ほどしか存在しなかった。
【0064】
比較例4:メチルアミン水溶液からのN-メチルメタクリルアミドの製造、抽出による後処理
装置:比較例2に同じ
混合物:
2.5mol F49(18770-45、96.61%;1000ppm S49)=398.9g
2.5mol N-メチルアミン、H2O中40%=194.1g
2.5mol アンモニア、25%=170g
理論収量:247.8g
【0065】
手順:粗生成物の製造は比較例2に同じ
粗生成物を部分冷却しながらNH3溶液で中和する。相分離はなかった。
【0066】
次いで混合物をMTBEで抽出する(GCではメタクリル酸のみ存在)。これに続いて、毎回300mlのメタクリル酸メチル(MMA)で3回、そして毎回200mlのMMAでまた3回、抽出する(最後の抽出物中、生成物がまだ4%存在している)。合わせたMMA相をロータリー・エバポレーターにて減圧下で(浴温度60℃)濃縮し、その際、H2Oの飛沫同伴がなおも存在する。
収量:115.8g
【0067】
GC分析:20.4% メタクリル酸、69.28% N-メチルメタクリルアミド
水/メタクリル酸およびN-メチルメタクリルアミド系は、互いに非常に似ている。抽出で生成物を回収することはできるが、極めて手間がかかり、収量も低い。
【0068】
比較例5:メチルアミン水溶液によるN-メチルメタクリルアミドの製造、およびKOHでの残渣の中和
装置:精密ガラスサーベルスターラーを備えた2l四ツ口丸底フラスコ、500ml滴下漏斗、Pt-100液相温度計、還流冷却器、氷浴
混合物:
6.0mol 無水メタクリル酸=938.1g
6.0mol メチルアミン、H2O中40%=465.9g*
理論収量:594.8g
【0069】
手順:無水メタクリル酸を最初に装入し、10℃未満に冷却する。次いでメチルアミンの計量添加を開始する(発熱反応、氷/H2Oでの冷却、および少々のミスト形成)。滴加および冷却は、温度が10℃よりも上昇しないように行う。滴加の終了後、混合物をさらに2時間撹拌し、さらに反応させる。冷却をやめる。
【0070】
一晩保管した後(混合物は薄い黄色になる)、混合物を4lフラスコに移し、5.9molのKOHで中和する(H2O中50%、滴下漏斗で添加、H2O浴で冷却、2滴のフェノールフタレイン溶液の添加)→pH6.5。
【0071】
次いで、陶製吸引フィルターを用いて濾過して沈殿固形物を吸引により除去し、濾液に1000ppmのオクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、500ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル、および20ppmの4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル(rad.)(理論収量のN-メチルメタクリルアミドに基づく)を添加して、ロータリー・エバポレーターにて減圧下で濃縮する(浴温度は最高80℃、圧力は以下を参照)。
吸引フィルター上残渣 77.5g(b)
フラスコ内残渣 1026.2g(a)
【0072】
GC分析:(DB5、30m、Φ0.25mm、膜厚0.25μm、50℃、3分等温、14℃/分→280℃、8分等温;det:280℃、inj.:250℃)
【表11】
【0073】
留分中の生成物の質量を確認するために、正確に画定された量のジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを添加し、積分値の比較により、正確な質量を決定する。
【0074】
水相をKOHで中和すると、蒸留後、希釈水溶液として144.9g(理論の29.6%)の生成物しか単離できない。
【0075】
比較例6:メチルアミン水溶液によるN-メチルメタクリルアミドの製造、およびNaOHでの残渣の中和
装置:精密ガラスサーベルスターラーを備えた2l四ツ口丸底フラスコ、500ml滴下漏斗、Pt-100液相温度計、還流冷却器、冷却浴
混合物:
6.0mol 無水メタクリル酸=938.1g
6.0mol メチルアミン、H2O中40%=465.9g*
理論収量:594.8g
【0076】
手順:無水メタクリル酸を最初に装入し、10℃未満に冷却する。次いでメチルアミンの計量添加を開始する(発熱反応、氷/H2Oでの冷却、および少々のミスト形成)。滴加および冷却は、温度が10℃よりも上昇しないように行う。滴加の終了後、さらに2時間撹拌を続け、さらに反応させる。冷却をやめる。
【0077】
次に、混合物を4lフラスコに移し、H2O浴で冷却しながら5.9molのH2O中50%NaOH(236gのNaOH、236gのH2O*)を滴下漏斗で添加することにより中和し、2滴のフェノールフタレイン溶液も添加し、最高pH6.5~pH7.0とする。
【0078】
陶製吸引フィルターを用いて濾過して沈殿固形物を除去する→固形物が蝋状であるため、濾過は非常にうまくいかない。
濾液:1634g
【0079】
分析のため、GCバイアル中で1.5gの濾液を内部標準と混合し、それを用いてN-メチルメタクリルアミドの含有率を決定する:
GC分析により計算された生成物含有率:理論の36.4%~99.9%。
【0080】
濾液をロータリー・エバポレーターにて減圧下で濃縮する(1)。冷却器で凝縮(凍結)させた凝縮物を一晩かけて融解させ、翌日、フラスコ内残渣を、浴温度80℃、1mbarで、再度濃縮して乾燥させる(2)。こうするうちに、かなりの量の固形物が沈殿する。得られた留出物をGCにより分析する。
【0081】
GC:(DB5、30m、Φ0.25mm、膜厚0.25μm、50℃、3分等温、14℃/分→280℃、8分等温;det:280℃、inj.:250℃)
【表12】
【0082】
水相をNaOHで中和すると、蒸留後、希釈水溶液として144.9g(理論の24.4%)の生成物しか単離できない。