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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/537 20060101AFI20230911BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20230911BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
A61F13/537 320
A61F13/534 110
A61F13/537 220
A61F13/535 200
A61F13/535 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021526959
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2020024295
(87)【国際公開番号】W WO2020262274
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2019118641
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】古川 大介
(72)【発明者】
【氏名】池田 奈津紀
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-046021(JP,A)
【文献】特開2019-058739(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131014(WO,A1)
【文献】特開2018-086148(JP,A)
【文献】特開2007-144104(JP,A)
【文献】特開2020-120710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の供給方向の上流側から下流側へ供給される液体を吸収する吸収性物品であって、
前記液体を吸収可能な第1吸収層および拡散層を含む第1吸収体と、
前記第1吸収体に対して前記供給方向の下流側に積層するように配置され、前記第1吸収層に対して前記供給方向の下流側に配置され、前記液体を吸収可能な第2吸収層を含む第2吸収体と、
を備えており、
前記拡散層は、前記第1吸収層と前記第2吸収層との間に介在し、前記液体を前記第2吸収層の面が広がる方向へ拡散し、
前記第1吸収層は、前記液体を吸収可能な吸収性樹脂を含んでおり、
前記第1吸収層は、前記吸収性樹脂を含む吸収領域と、前記吸収領域よりも前記吸収性樹脂の密度が低く、前記拡散層への液体の通過を許容する通過領域とを含み、
前記第2吸収層は、その全範囲にわたって前記液体を吸収可能な吸収性樹脂を含んでおり、
前記吸収性樹脂を含む前記第2吸収層は、前記通過領域に対して供給方向の下流側に存在し、
前記通過領域は、前記第1吸収層および前記拡散層を含む前記第1吸収体を厚さ方向に貫通する空間部によって形成されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記第1吸収体は、基材と、前記吸収性樹脂とを備えており、
前記第1吸収層は、前記吸収性樹脂と、前記基材における前記吸収性樹脂を保持する保持部分とで構成されている
請求項に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記空間部は、前記第1吸収体を複数の部分に分割するスリットによって形成されている、
請求項に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記保持部分は、前記基材が起毛された起毛部分であり、
前記吸収性樹脂は、前記起毛部分に保持されている、
請求項2または3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記拡散層は、前記第2吸収層の全範囲を覆うように広がっている、
請求項1~のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記通過領域および前記第2吸収層は、前記供給方向に積層するように配置されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吸収する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体などから出る液体を吸収する吸収性物品として種々の吸収性物品がある。たとえば、特許文献1記載の吸収性物品は、不織布等の繊維シートからなる基材と当該基材に保持された液体吸収性能が高い高吸収性樹脂とによって構成された吸収層を備えている。このような吸収性物品を人体の肌面に密着するように装着することにより、人体などから出る尿などの液体を吸収層で吸収することが可能である。
【0003】
上記の構成の吸収性物品には、吸収量を増加させるために、複数の吸収層を重ね合わせた構造が考えられる。
【0004】
しかし、吸収層を重ね合せた構造では、人体の肌面に近い1層目の吸収層が最初に吸水し、高吸収性樹脂が膨潤するので、1層目の吸収層の液体供給方向の下流側(非肌面側)に位置する2層目以降の吸収層への液体の流れを阻害する、いわゆるゲルブロック現象が発生するおそれがある。ゲルブロック現象が発生した場合、下流側の吸収層への液体の供給が停滞するので、下流側の吸収層の吸収能力を十分に活用できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2017-131014号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、複数の吸収層が積層された構造において、液体の供給方向の下流側の吸収層の吸収能力を十分に活用することが可能な吸収性物品を提供することを目的とする。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の吸収性物品は、所定の供給方向の上流側から下流側へ供給される液体を吸収する吸収性物品であって、前記液体を吸収可能な第1吸収層および拡散層を含む第1吸収体と、前記第1吸収体に対して前記供給方向の下流側に積層するように配置され、前記第1吸収層に対して前記供給方向の下流側に配置され、前記液体を吸収可能な第2吸収層を含む第2吸収体と、を備えており、前記拡散層は、前記第1吸収層と前記第2吸収層との間に介在し、前記液体を前記第2吸収層の面が広がる方向へ拡散し、前記第1吸収層は、前記液体を吸収可能な吸収性樹脂を含んでおり、前記第1吸収層は、前記吸収性樹脂を含む吸収領域と、前記吸収領域よりも前記吸収性樹脂の密度が低く、前記拡散層への液体の通過を許容する通過領域とを含み、前記第2吸収層は、その全範囲にわたって前記液体を吸収可能な吸収性樹脂を含んでおり、前記吸収性樹脂を含む前記第2吸収層は、前記通過領域に対して供給方向の下流側に存在し、前記通過領域は、前記第1吸収層および前記拡散層を含む前記第1吸収体を厚さ方向に貫通する空間部によって形成されている、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る通過領域が空間部で形成されているCラップの吸収性物品の全体構成を示す平面図である。
図2図1の吸収性物品の横断面図である。
図3】(a)~(d)は図2の第1吸収体および第2吸収体の形成方法の手順を示す工程説明図である。
図4】本発明の第1実施形態の変形例に係る通過領域が空間部で形成されているGラップの吸収性物品の全体構成を示す平面図である。
図5図4の吸収性物品の横断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る通過領域が吸収性樹脂を保持していない基材の部分で構成されているCラップの吸収性物品の全体構成を示す平面図である。
図7図6の吸収性物品の横断面図である。
図8】(a)~(d)は図7の第1吸収体の形成方法の手順を示す工程説明図である。
図9】本発明の第2実施形態の変形例に係る通過領域が吸収性樹脂を保持していない基材の部分で構成されているGラップの吸収性物品の全体構成を示す平面図である。
図10図1の吸収性物品の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0010】
(第1実施形態)
図1~2に示される本発明の第1実施形態に係る吸収性物品1は、所定の供給方向の上流側からから下流側へ(図2では吸収性物品1の上端から下端へ)供給される液体を吸収することが可能な構成を有する。具体的には、吸収性物品1は、第1吸収体2と、第2吸収体3と、外装体4と、トップシート5とを備えている。
【0011】
なお、図2では、吸収性物品1の各構成要素の個々の形態を容易に理解できるように各構成要素は上下方向に若干離間して図示されているが、実際の吸収性物品1では各構成要素は互いに密着している。後述の図5図7、および図9についても同様である。
【0012】
図1~2に示される吸収性物品1は、トップシート5、第1吸収体2および第2吸収体3が上下方向に積層された状態で、これらトップシート5、第1吸収体2および第2吸収体3が外装体4によってC字状に覆われた、いわゆるCラップ形態を有している。図12に示される吸収性物品1の長手方向の両端部9は、外装体4または他のシートで覆われている。図2の外装体4の両端の折曲部4aは、トップシート5に接着などによって固定されている。
【0013】
外装体4およびトップシート5は、液体を通す性質を有し、不織布や薄い紙(ティッシュ)などによって製造されている。なお、図1~2のCラップの形態の場合には、液体が外装体4の両端の折曲部4aの間の隙間を通ることが可能であるので、外装体4は、液体を通さない樹脂などで製造されてもよい。
【0014】
吸収性物品1は、トップシート5を液体の供給側、たとえば人体の肌面などに接触させ、人体などから出る尿などの液体をトップシート5を通して第1吸収体2および第2吸収体3の順に通す(すなわち図2における下方向に通す)構造になっている。
【0015】
第1吸収体2は、液体を吸収可能な第1吸収層2aと、拡散層2bとを有する。第1吸収層2aは、第1吸収体2における供給方向の上流側(図2では上側)を向く面に部分的に形成されている。これにより、図2に示される第1吸収体2の上面側の部分が第1吸収層2aを構成し、下面側の部分が拡散層2bを構成する。
【0016】
第1吸収体2は、スリット8によって2つに分割され、スリット8内部(すなわち、第1吸収体2の分割された2つの部分の間)に液体の通過領域となる空間部6が形成されている。
【0017】
したがって、第1吸収層2aは、液体を吸収可能な吸収性樹脂を含む層であって、吸収性樹脂を含む吸収領域2a1と、拡散層2bへの液体の通過を許容する通過領域として空間部6を含む構造になっている。空間部6は、吸収性樹脂が存在しないので、吸収領域2a1よりも吸収性樹脂の密度が低い通過領域を形成する。通過領域となる空間部6は、第1吸収体2をその厚さ方向(図2の上下方向)に貫通している。
【0018】
第1実施形態の空間部6は、吸収性物品1の全長(図1に示される吸収性物品1の長手方向の全長)に亘って形成されているが、吸収性物品1の全長のうちの一部の区間だけ形成されていてもよい。また、空間部6は、吸収性物品1の長手方向(図1の上下方向)に延びる帯状だけでなく、当該吸収性物品1の幅方向に延びる帯状、または複数の貫通孔が点在するものでもよい。
【0019】
吸収性樹脂を含む吸収領域2a1の厚さは、空間部6の幅(図2の横方向の幅)よりも小さくなるように設定されているのが好ましい。その場合、吸収領域2a1が水を吸収して膨張しても、空間部6が閉じるおそれが低減する。
【0020】
拡散層2bは、第1吸収層2aと第2吸収体3の後述の第2吸収層3aとの間に介在し、液体を第2吸収層3aの面が広がる方向へ拡散する層である。拡散層2bは、第2吸収層3aの全範囲を覆うように広がっている。
【0021】
第2吸収体3は、第1吸収体2に対して供給方向の下流側(図2における下側)に積層するように配置されている。
【0022】
第2吸収体3は、液体を吸収可能な吸収性樹脂を含む第2吸収層3aと、吸収性樹脂を含まないベース層3bとを有する。第2吸収層3aは、第1吸収層2aに対して拡散層2bを挟んで、供給方向の下流側に配置されている。第2吸収層3aは、第1吸収層2aの全域をカバーする広さを有する。
【0023】
上記の第1吸収体2および第2吸収体3は、図3(a)~(d)に示される手順で製造される。
【0024】
まず、図3(a)~(b)に示されるように、通水性を有する不織布などからなる基材11の上側を起毛して基材11を構成する短繊維を立たせた起毛部分11aを形成する。このとき、基材11の下側部分11bは、起毛部分11aの短繊維を支持する。
【0025】
ついで、図3(c)に示されるように、粒子状の吸収性樹脂12を起毛部分11aの全体に分散して保持(担持または捕捉)させる。なお、このとき吸収性樹脂12が起毛部分11aから脱落しないように接着剤を散布してもよい。
【0026】
上記の吸収性樹脂12の保持によって、図3(d)に示されるように、起毛部分11aによって構成される吸収性樹脂を含む第1吸収層2aと、下側部分11bによって構成される吸収性樹脂を含まない不織布のみの拡散層2bとを含む第1吸収体2が形成される。そののち、第1吸収体2をスリット8で2つに分割して通過領域となる上記の空間部6が形成される。
【0027】
なお、上記の拡散層2bは、不織布のみで形成されているが、吸収性樹脂の密度が第1吸収層2aよりも疎であればよい。
【0028】
また、第1吸収体2と同様の手順で、吸収性樹脂を含む第2吸収層3aと、吸収性樹脂を含まない不織布のみのベース層3bとを含む第2吸収体3を形成することが可能である。なお、第2吸収体3の場合にはスリット8は形成されない。
【0029】
(第1実施形態の特徴)
(1)
第1実施形態の吸収性物品1は、液体を吸収可能な第1吸収層2aと、第1吸収層2aに対して供給方向の下流側(図2では下側)に配置され、液体を吸収可能な第2吸収層3aと、第1吸収層2aと第2吸収層3aとの間に介在し、液体を第2吸収層3aの面が広がる方向へ拡散する拡散層2bとを備えている。第1吸収層2aは、液体を吸収可能な吸収性樹脂を含んでいる。第1吸収層2aは、吸収性樹脂を含む吸収領域2a1と、吸収領域2a1よりも吸収性樹脂の密度が低く、拡散層2bへの液体の通過を許容する通過領域としての空間部6とを含む。
【0030】
この構成では、液体の所定の供給方向の上流側から下流側へ(図2では吸収性物品1の上端から下端へ)第1吸収層2aに液体が供給されたときに、液体の一部が第1吸収層2aの吸収領域2a1に吸収され、液体の残りが、図2の矢印Wに示されるように、第1吸収層2aの通過領域となる空間部6を通過して第1吸収層2aと第2吸収層3aとの間に介在する拡散層2bに供給される。詳細に言えば、第1吸収層2aに液体が供給されたときには、第1吸収層2aの吸収性樹脂が膨潤して第1吸収層2a内の隙間を埋めてしまうまでは、液体は、空間部6だけでなく、第1吸収層2aも通過して拡散層2b(およびその下流側の第2吸収層3a)に供給される。
【0031】
拡散層2bに供給された液体は、拡散層2bによって第2吸収層3aの面が広がる方向へ拡散し、第2吸収層3aに吸収される。これにより、上流側の第1吸収層2aにおける液体の流れを阻害するゲルブロックの影響を受けずに、液体の供給方向の下流側の第2吸収層3aの吸収能力を十分に活用することが可能である。
【0032】
(2)
第1実施形態の吸収性物品1では、第1吸収体2は、第1吸収層2aを含む。第2吸収体3は、第1吸収体2に対して供給方向の下流側に積層するように配置され、第2吸収層3aを含む。第1吸収層2aは、第1吸収体2における供給方向の上流側を向く部分に含まれている。拡散層2bは、第1吸収体2および第2吸収体3の互いに対向する部分における第1吸収体2および第2吸収体3のうちの少なくとも一方の部分として、第1吸収体2の下側部分に含まれている。
【0033】
この構成では、第1吸収層2aが第1吸収体2における供給方向の上流側を向く部分に含まれ、拡散層2bが第1吸収体2および第2吸収体3の互いに対向する部分における第1吸収体2および第2吸収体3のうちの少なくとも一方の部分に含まれる。これにより、第1吸収体2および第2吸収体3を積層することによって、第1吸収層2a、拡散層2bおよび第2吸収層3ag積層した吸収性物品1を容易に製造することが可能である。
【0034】
なお、拡散層2bは、第1吸収体2および第2吸収体3の互いに対向する部分における第1吸収体2および第2吸収体3のうちの少なくとも一方の部分に含まれていればよい。したがって、図2のように第1吸収体2の下側部分に拡散層2bが含まれる代わりに、第2吸収体3の上側部分に拡散層が含まれて下側部分に第2吸収層3aが含まれてもよい。または、第1吸収体2の下側部分および第2吸収体3の上側部分の両方に拡散層が含まれてもよい。
【0035】
(3)
第1実施形態の吸収性物品1では、第1吸収体2は、基材11と、吸収性樹脂12とを備えており、第1吸収層2aは、吸収性樹脂12と、基材11における吸収性樹脂12を保持する保持部分としても起毛部分11aとで構成されている。通過領域は、第1吸収体2を厚さ方向に貫通する空間部6によって形成されている。
【0036】
この構成では、吸収性樹脂12の密度調整をしなくても、第1吸収体2を厚さ方向に貫通する空間部6によって、通過領域を容易に形成することが可能である。しかも、通過領域が空間部6によって形成されているので、通過領域の配置や大きさの変更を容易に行うことが可能であり、設計自由度が高い。
【0037】
(4)
第1実施形態の吸収性物品1では、空間部6は、第1吸収体2を複数の部分に分割するスリット8によって形成されている。
【0038】
この構成では、通過領域となる空間部6が第1吸収体2を複数の部分に分割するスリット8によって形成されている。そのため、スリット8によって通過領域となる溝状の空間部6を容易に形成することが可能である。しかも、空間部6の幅を容易に変更することが可能であり、設計自由度がさらにより高い。
【0039】
(5)
第1実施形態の吸収性物品1では、図3(a)~(d)に示されるように、第1吸収体2の基材11は、吸収性樹脂12を保持する保持部分として、基材11が起毛された起毛部分11aを有している。吸収性樹脂12は、起毛部分11aに保持されている。
【0040】
この構成では、吸収性樹脂12は、第1吸収体2における起毛部分11aに保持されているので、当該基材11から脱落しにくい。したがって、吸収性樹脂12を基材11に安定して保持することが可能である。また、吸収性樹脂12が通過領域である空間部6へ移動するおそれも低減する。
【0041】
(6)
第1実施形態の吸収性物品1では、図2に示されるように、拡散層2bは、第2吸収層3aの全範囲を覆うように広がっている。そのため、拡散層2bを介して第2吸収層3aの全範囲に液体を円滑に拡散することが可能であり、第2吸収層3aの吸収能力を十分に活用することが可能である。
【0042】
(7)
第1実施形態の吸収性物品1では、通過領域としての空間部6および第2吸収層3aは、供給方向に積層するように配置されている。そのため、通過領域(空間部6)から第2吸収層3aへの液体の流れを円滑に行うことが可能である。
【0043】
(第1実施形態の変形例)
(A)
上記第1実施形態では、吸収性物品1が第1吸収体2および第2吸収体3を備え、第1吸収体2が第1吸収層2aおよび拡散層2bを有し、第2吸収体3が第2吸収層3aを有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の変形例として例えば、第1吸収層、拡散層、および第2吸収層が1つの部材に一体形成されてもよいし、または、それぞれ別の部材で形成して積層されてもよい。
【0044】
(B)
第1実施形態の拡散層2bは、図3(a)~(b)に示される不織布からなる基材11における吸収性樹脂が含まれていない層で構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、液体を第2吸収層3aの面が広がる方向に拡散できる層であれば他の形態でもよい。したがって、本発明の変形例として、拡散層は、パイプ状の通路または空孔を含む層で形成されていてもよい。
【0045】
(C)
上記第1実施形態の吸収性物品1は、トップシート5、第1吸収体2および第2吸収体3を積層してC字状に外装体4で覆ったCラップの形態を有しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図4~5に示されるように、トップシート5を用いないGラップの形態であってもよい。すなわち、図4~5に示されるように、外装体4の両側の折曲部4aが互いに重なり合って第1吸収体2の上面を覆うGラップの形態にしてもよい。この構成にすれば、トップシート5を省略でき、吸収性物品1の構造が簡単になる。
【0046】
(第2実施形態)
図6~7に示される本発明の第2実施形態に係る吸収性物品1は、第1実施形態の吸収性物品1と比較して、通過領域が空間部6の代わりに第1吸収体2の基材で構成された通過領域7で構成されている点で異なる。その他の点では、第2実施形態に係る吸収性物品1の構成と第1実施形態の吸収性物品1の構成と共通しているので、説明を省略する。
【0047】
すなわち、第2実施形態では、第1吸収層2aは、吸収性樹脂12と、基材11における吸収性樹脂12を保持する保持部分としての起毛部分11aで構成されている。第1吸収体2は、第1吸収層2aにおいて吸収領域2a1よりも吸収性樹脂の密度が低くなるように当該吸収性樹脂の密度が調製された通過領域7を有する。例えば、後述するように、通過領域7となる部分だけ吸収性樹脂が分散されないようにマスク13(図8(c)参照)で遮蔽しておくことにより、通過領域7は吸収性樹脂を含まなくなるので、吸収領域2a1よりも吸収性樹脂の密度が低くすることが可能になる。また、マスク13の代わりにメッシュなどを用いれば、通過領域7にも吸収領域2a1よりも低い密度で吸収性樹脂を分散させることも可能である。
【0048】
第2実施形態の通過領域7は、吸収性物品1の全長(図6に示される吸収性物品1の長手方向の全長)に亘って形成されているが、吸収性物品1の全長のうちの一部の区間だけ形成されていてもよい。また、通過領域7は、吸収性物品1の長手方向に延びる帯状だけでなく、当該吸収性物品1の幅方向に延びる帯状、または複数の小さい領域が点在するものでもよい。
【0049】
図6に示される通過領域7は、第1吸収層2aの面内において、吸収性物品1の方向に延びる帯状の領域として形成されている。
【0050】
第2実施形態の第1吸収体2は、図8(a)~(d)に示される手順で製造される。
【0051】
まず、図8(a)~(b)に示されるように、上記の第1実施形態の図3(a)~(b)と同様に、通水性を有する不織布などからなる基材11の上側を起毛して基材11を構成する短繊維を立たせて起毛部分11aを形成する。このとき、基材11の下側部分11bは、短繊維を支持する。
【0052】
ついで、図8(c)に示されるように、通過領域7となる所定の部分の上方にマスク13を設置し、その状態で、粒子状の吸収性樹脂12を起毛部分11aにおける吸収領域2a1となる部分のみに部分的に分散して保持する。
【0053】
これにより、図8(d)に示されるように、起毛部分11aおよび吸収性樹脂12を含む吸収領域2a1および吸収性樹脂を含まない通過領域7を含む第1吸収層2aと、下側部分11bによって構成される吸収性樹脂を含まない不織布のみの拡散層2bとを含む第1吸収体2が形成される。
【0054】
これによって、第2実施形態の不織布製の基材11からなる通過領域7を含む第1吸収体2を製造することが可能になる。
【0055】
(第2実施形態の特徴)
(1)
第2実施形態の吸収性物品1では、第1吸収体2は、第1吸収層2aにおいて吸収領域2a1よりも吸収性樹脂の密度が低くなるように当該吸収性樹脂の密度が調製された通過領域7を有する。そのため、液体の所定の供給方向の上流側から下流側へ(図7では吸収性物品1の上端から下端へ)第1吸収層2aに液体が供給されたときに、液体の一部が第1吸収層2aの吸収領域2a1に吸収され、液体の残りが、図7の矢印Wに示されるように、第1吸収層2aの通過領域7を通過して第1吸収層2aと第2吸収層3aとの間に介在する拡散層2bに供給される。
【0056】
詳細に言えば、この第2実施形態においても、第1吸収層2aに液体が供給されたときには、第1吸収層2aの吸収性樹脂が膨潤して第1吸収層2a内の隙間を埋めてしまうまでは、液体は、通過領域7だけでなく、第1吸収層2aの吸収領域2a1も通過して拡散層2b(およびその下流側の第2吸収層3a)に供給される。
【0057】
拡散層2bに供給された液体は、拡散層2bによって第2吸収層3aの面が広がる方向へ拡散し、第2吸収層3aに吸収される。これにより、上流側の第1吸収層2aにおける液体の流れを阻害するゲルブロックの影響を受けずに、液体の供給方向の下流側の第2吸収層3aの吸収能力を十分に活用することが可能である。
【0058】
(2)
第2実施形態の吸収性物品1では、第1吸収体2は、基材11と、吸収性樹脂12とを備えている。第1吸収層2aは、吸収性樹脂12と、基材11における吸収性樹脂12を保持する保持部分としての起毛部分11aで構成されている。通過領域7は、第1吸収層2aにおいて吸収領域2a1よりも吸収性樹脂12の密度が低くなるように当該吸収性樹脂12の密度が調製されている部分である。そのため、第1吸収体2の基材11に保持させる吸収性樹脂12の密度を部分的に調製することによって、吸収領域2a1および通過領域7を含む第1吸収層2aを容易に形成することが可能である。
【0059】
(3)
第2実施形態の吸収性物品1では、通過領域7は、第1吸収層2aの面内で延びる帯状の領域である。そのため、第1吸収層2aにおいて通過領域7を容易にかつ広範囲に形成することが可能である。また、帯状の通過領域7の幅を変更することにより通過領域7を通過する液体の量を容易に変えることが可能である。
【0060】
(4)
また、第2実施形態の吸収性物品1においても、の第1実施形態の吸収性物品1と共通の構成によって、上記(第1実施形態の特徴)(2)、および(5)~(7)の作用効果を奏することが可能である。
【0061】
(第2実施形態の変形例)
(A)
第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、本発明の変形例として、第1吸収層、拡散層、および第2吸収層が1つの部材に一体形成されてもよいし、それぞれ別の部材で形成して積層されてもよい。
【0062】
(B)
第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、本発明の変形例として、拡散層は、パイプ状の通路または空孔を含む層で形成されていてもよい。
【0063】
(C)
第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、図9~10に示されるように、トップシート5を用いないGラップの形態であってもよい。すなわち、図9~10に示されるように、外装体4の両側の折曲部4aが互いに重なり合って第1吸収体2の上面を覆うGラップの形態にしてもよい。この構成にすれば、図6~7に示されるトップシート5を省略でき、吸収性物品1の構造が簡単になる。
【0064】
<実施形態のまとめ>
前記実施形態をまとめると以下のとおりである。
【0065】
前記実施形態にかかる吸収性物品は、所定の供給方向の上流側から下流側へ供給される液体を吸収する吸収性物品であって、前記液体を吸収可能な第1吸収層および拡散層を含む第1吸収体と、前記第1吸収体に対して前記供給方向の下流側に積層するように配置され、前記第1吸収層に対して前記供給方向の下流側に配置され、前記液体を吸収可能な第2吸収層を含む第2吸収体と、を備えており、前記拡散層は、前記第1吸収層と前記第2吸収層との間に介在し、前記液体を前記第2吸収層の面が広がる方向へ拡散し、前記第1吸収層は、前記液体を吸収可能な吸収性樹脂を含んでおり、前記第1吸収層は、前記吸収性樹脂を含む吸収領域と、前記吸収領域よりも前記吸収性樹脂の密度が低く、前記拡散層への液体の通過を許容する通過領域とを含み、前記第2吸収層は、その全範囲にわたって前記液体を吸収可能な吸収性樹脂を含んでおり、前記吸収性樹脂を含む前記第2吸収層は、前記通過領域に対して供給方向の下流側に存在し、前記通過領域は、前記第1吸収層および前記拡散層を含む前記第1吸収体を厚さ方向に貫通する空間部によって形成されている、ことを特徴とする。
【0066】
かかる構成では、所定の供給方向の上流側から下流側へ第1吸収層に液体が供給されたときに、液体の一部が第1吸収層の吸収領域に吸収され、液体の残りが第1吸収層の通過領域を通過して第1吸収層と第2吸収層との間に介在する拡散層に供給される。拡散層に供給された液体は、拡散僧によって第2吸収層の面が広がる方向へ拡散し、第2吸収層に吸収される。これにより、上流側の第1吸収層における液体の流れを阻害するゲルブロックの影響を受けずに、液体の供給方向の下流側の第2吸収層の吸収能力を十分に活用することが可能である。また、吸収性樹脂の密度調整をしなくても、第1吸収体を厚さ方向に貫通する空間部によって、通過領域を容易に形成することが可能である。しかも、通過領域が空間部によって形成されているので、通過領域の配置や大きさの変更を容易に行うことが可能であり、設計自由度が高い。
【0069】
上記の吸収性物品において、前記第1吸収体は、基材と、前記吸収性樹脂とを備えており、前記第1吸収層は、前記吸収性樹脂と、前記基材における前記吸収性樹脂を保持する保持部分とで構成されているのが好ましい。
【0071】
上記の吸収性物品において、前記空間部は、前記第1吸収体を複数の部分に分割するスリットによって形成されているのが好ましい。
【0072】
かかる構成では、通過領域となる空間部が第1吸収体を複数の部分に分割するスリットによって形成されている。そのため、スリットによって通過領域となる溝状の空間部を容易に形成することが可能である。しかも、空間部の幅を容易に変更することが可能であり、設計自由度がさらにより高い。
【0077】
上記の吸収性物品において、前記保持部分は、前記基材が起毛された起毛部分であり、前記吸収性樹脂は、前記起毛部分に保持されているのが好ましい。
【0078】
かかる構成では、吸収性樹脂は、第1吸収体における起毛部分に保持されているので、当該基材から脱落しにくい。したがって、吸収性樹脂を基材に安定して保持することが可能である。また、吸収性樹脂が通過領域へ移動するおそれも低減する。
【0079】
上記の吸収性物品において、前記拡散層は、前記第2吸収層の全範囲を覆うように広がっているのが好ましい。
【0080】
かかる構成では、拡散層が第2吸収層の全範囲を覆うように広がっているので、拡散層を介して第2吸収層の全範囲に液体を円滑に拡散することが可能であり、第2吸収層の吸収能力を十分に活用することが可能である。
【0081】
上記の吸収性物品において、前記通過領域および前記第2吸収層は、前記供給方向に積層するように配置されているのが好ましい。
【0082】
かかる構成によれば、通過領域から第2吸収層への液体の流れを円滑に行うことが可能である
【0083】
以上のように、本実施形態の吸収性物品によれば、複数の吸収層が積層された構造において、液体の供給方向の下流側の吸収層の吸収能力を十分に活用することができる。
図1
図2
図3
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図5
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図9
図10