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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】摩擦力可変シューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/22 20060101AFI20230911BHJP
   A61H 3/00 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
A43B13/22 A
A61H3/00 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021559098
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 US2020026881
(87)【国際公開番号】W WO2020206428
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】62/829,254
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】タイラー・ススコ
(72)【発明者】
【氏名】エリオット・ホークス
(72)【発明者】
【氏名】エリン・スローン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ライアン・デヴリン
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0260535(US,A1)
【文献】特開平11-137305(JP,A)
【文献】特表2013-539673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/00 - 13/42
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦力可変シューズであって、
ミッドソールと、
少なくとも第1の高摩擦面と少なくとも第1の低摩擦面とを有するアウトソールであって、垂直地面反力(GRF)が低い場合に前記第1の低摩擦面が突出し、かつ前記第1の高摩擦面がGRFの増加に応じて突出する、アウトソールと、
を備えており、
前記第1の低摩擦面は、前記摩擦力可変シューズを地面の上をスライド可能にするように構成されていることを特徴とする摩擦力可変シューズ。
【請求項2】
前記第1の低摩擦面に対して垂直方向に隣接して配置される圧縮性層をさらに含み、前記圧縮性層は、GRFの増加に応じて圧縮されることを特徴とする請求項1に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項3】
少なくとも前記第1の低摩擦面は、複数の低摩擦面を含み、複数の前記低摩擦面の各々は、複数の圧縮性層のうちの1つと関連付けられていることを特徴とする請求項2に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項4】
複数の前記低摩擦面および複数の前記圧縮性層は、円筒形の形状を有することを特徴とする請求項3に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項5】
前記圧縮性層は前記ミッドソールに配置されていることを特徴とする請求項2に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項6】
前記第1の低摩擦面は前記アウトソールの前方部分に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項7】
少なくとも前記第1の低摩擦面は、前記アウトソールの外側の周りに延在する第1の脚部および第2の脚部を有する連続した馬蹄形状であることを特徴とする請求項6に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項8】
前記第1の高摩擦面は、前記馬蹄形状の低摩擦面の前記第1の脚部と前記第2の脚部との間に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項9】
少なくとも前記第1の低摩擦面は、第1の低摩擦面および少なくとも第2の低摩擦面を含むことを特徴とする請求項6に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項10】
前記第1の低摩擦面は、前記第2の低摩擦面の反対側に配置されることを特徴とする請求項9に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項11】
前記第1の低摩擦面は前記アウトソールの内側部分に配置され、かつ前記第2の低摩擦面は前記アウトソールの外側部分に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項12】
少なくとも前記第1の高摩擦面は、第1の高摩擦面と第2の高摩擦面とを含むことを特徴とする請求項1に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項13】
少なくとも前記第1の高摩擦面は、前記第2の高摩擦面の前方に配置されていることを特徴とする請求項12に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項14】
少なくとも前記第1の高摩擦面は、複数の高摩擦面を含むことを特徴とする請求項1に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項15】
複数の非圧縮性層をさらに含み、前記非圧縮性層の各々は、前記複数の高摩擦面の1つに関連付けられていることを特徴とする請求項14に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項16】
摩擦力可変シューズであって、
ミッドソールと、
少なくとも第1の高摩擦面と少なくとも第1の低摩擦面とを有するアウトソールであって、歩行の遊脚相の間に前記第1の低摩擦面が突出し、かつ歩行の立脚相の間に前記第1の高摩擦面が地面に接触し、
前記第1の低摩擦面は、前記摩擦力可変シューズを地面の上をスライド可能にするように構成されていることを特徴とする摩擦力可変シューズ。
【請求項17】
第2の低摩擦面をさらに含み、前記第1の低摩擦面は、前記第2の低摩擦面の反対側に配置されていることを特徴とする請求項16に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項18】
前記第1の低摩擦面は前記アウトソールの内側部分に配置され、かつ前記第2の低摩擦面は前記アウトソールの外側部分に配置されていることを特徴とする請求項17に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項19】
前記第1の低摩擦面は、前記摩擦力可変シューズの前方部分の周りに延在する馬蹄形状であることを特徴とする請求項16に記載の摩擦力可変シューズ。
【請求項20】
前記第1の高摩擦面は、少なくとも前記第1の低摩擦面の前記馬蹄形状の内部の領域に配置されていることを特徴とする請求項19に記載の摩擦力可変シューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、「VARIABLE FRICTION SHOE」との名称で2019年4月4日付で出願された米国仮出願第62/829,254号の利益を主張しており、当該出願は参照により本明細書に組み込まれる。優先権の主張がなされている。
【背景技術】
【0002】
本発明は、履物、特に、下垂足などの遊脚中に床を支障なく通過することが困難な状態に悩んでいる人々を支援するように設計された履物に関する。
【0003】
下垂足は、足首の背屈を制限する運動障害であり、歩行の遊脚相およびバランスを複雑にする。これは、神経損傷、または脳卒中、脳性麻痺、末梢神経疾患、脳腫瘍もしくは多発性硬化症などの疾患に共通して発生する。
【0004】
脳卒中、多発性硬化症、脳腫瘍、末梢神経疾患および脳性麻痺の症状は患者によって異なるが、各グループにおいて一部の患者は下垂足を経験することがあり、前脛骨筋および/または下腿三頭筋の正常な機能が損なわれたため、背屈することができない、つまり、つま先をすねへ向けて持ち上げることができないことを特徴とする。それは、リズミカルな歩行の遊脚相を抑制し、足を引きずったり転倒したりする可能性を高め、かつ患者の歩行を意識して観察することを強制し、典型的には異常な歩行パターンとして現れる。
【0005】
支援技術とは、所望される機能で人を補助することを意図されたデバイスを指す。歩行に関して利用可能なデバイスは、前脛骨筋に適用される機能的電気刺激(FES)または固定の足首-足装具(AFO)を含む。リハビリテーション技術とは、当該技術を使用して健康的な動作を復元することを意図されたデバイスを指す。ロボットリハビリテーションデバイスは、下垂足を伴う人々を対象にし始めている。例えば、マサチューセッツ工科大学(MIT)における研究者は、歩行の遊脚相の間の自由な動きを可能にし、床を支障なく通行することができないために根本的に失われたリズム性を一時的に回復するMIT-Skywalkerを開発した。Skywalkerおよび他のロボットリハビリテーションデバイスは、有望であるが、コスト、複雑さ、携帯性という3つの改善点がある。リハビリテーションは繰り返すことで最も効力を発する。患者が所有できるかまたは少なくとも臨床治療の訪問以外で定期的に使用できるデバイスは、より多くのリハビリテーショントレーニングを可能にする。現在、費用効果が高くかつ毎日の独立した使用に有用なリハビリテーションの解決法が存在しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの態様によれば、摩擦力可変シューズは、ミッドソールおよびアウトソールを含む。アウトソールは、少なくとも第1の高摩擦面と少なくとも第1の低摩擦面とを含み、第1の低摩擦面は、垂直地面反力(GRF)が低い場合に突出したままであり、高摩擦面は、GRFの増加に応じて突出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1a】いくつかの実施形態に基づく摩擦力可変シューズの側面図である。
図1b】いくつかの実施形態に基づく摩擦力可変シューズの垂直投影図である。
図2a】いくつかの実施形態に基づく摩擦力可変シューズの側面図である。
図2b】いくつかの実施形態に基づく摩擦力可変シューズの垂直投影図である。
図3a】いくつかの実施形態に基づく無負荷状態の摩擦力可変シューズの断面図である。
図3b】いくつかの実施形態に基づく負荷状態の摩擦力可変シューズの断面図である。
図4a】いくつかの実施形態に基づく典型的な様子を比較した摩擦力可変シューズの性能を示すグラフである。
図4b】いくつかの実施形態に基づく典型的な様子を比較した摩擦力可変シューズの性能を示すグラフである。
図4c】いくつかの実施形態に基づく典型的な様子を比較した摩擦力可変シューズの性能を示すグラフである。
図5a】いくつかの実施形態に基づく摩擦力可変シューズの底面図である。
図5b】いくつかの実施形態に基づく非圧縮状態の摩擦力可変シューズの側面図である。
図5c】いくつかの実施形態に基づく圧縮状態の摩擦力可変シューズの側面図である。
図6】いくつかの実施形態に基づく摩擦力可変シューズの分解図である。
図7a】いくつかの実施形態に基づく摩擦力可変シューズの底面図である。
図7b】いくつかの実施形態に基づく非圧縮状態の摩擦力可変シューズの側面図である。
図7c】いくつかの実施形態に基づく圧縮状態の摩擦力可変シューズの側面図である。
図8a】いくつかの実施形態に基づく摩擦力可変シューズの底面図である。
図8b】いくつかの実施形態に基づく非圧縮状態の摩擦力可変シューズの側面図である。
図8c】いくつかの実施形態に基づく圧縮状態の摩擦力可変シューズの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの態様によれば、様々な歩行段階中の、さまざまなレベルの地面との摩擦力を提供する摩擦力可変シューズが本明細書に開示されている。本開示の目的のために、歩行は遊脚相と立脚相とに区分される。遊脚相の間、摩擦力可変シューズは、シューズのアウトソールから突出するかまたは延在する低摩擦面を呈する。歩行の立脚相の間、摩擦力可変シューズはシューズのアウトソールにおいて高摩擦面を呈し、地面に対して滑るのを防ぐ。いくつかの実施形態では、摩擦力可変シューズのアウトソールは、シューズと地面との間の接触を提供するよう構成された底面を含み、底面は高摩擦面である。例えば、底面は、高摩擦面を提供するために、複数の材料やトラックなどの形状を利用してもよい。アウトソールは、圧縮性材料と低摩擦性材料とを保持する1つ以上の柱部または孤立部をさらに含む。歩行の遊脚部分の間、垂直地面反力(GRF)が低い場合、圧縮性材料は非圧縮状態になり、低摩擦性材料がアウトソールの高摩擦面から突出することを可能にする。歩行の立脚相の間、垂直GRFが高い場合、圧縮性材料は圧縮状態にあり、それによって高摩擦面が地面と接触するように低摩擦性材料はアウトソールの高摩擦面内に後退する。
【0009】
図1aおよび図1bは、それぞれ、いくつかの実施形態に基づく摩擦力可変シューズの側面図および垂直投影図である。摩擦力可変シューズ100は、上部101と、ミッドソール102と、高摩擦面108と、低摩擦面106と、圧縮性材料104と、を含む。図1aに示される実施形態では、複数対の円筒形の圧縮性材料104および低摩擦性材料106が、利用される構成要素を例示するために分解図で示されている。図1bに示される実施形態では、複数対の円筒形の圧縮性材料108’および低摩擦性材料106’が、ミッドソール102’の高摩擦面108’内に設置された状態で示されている。いくつかの実施形態では、圧縮性材料104および低摩擦性材料106の孤立部またはパッチは、摩擦力可変シューズ100の底部に沿って均等に分布されている。他の実施形態では、圧縮性材料104および低摩擦性材料106の孤立部またはパッチは、歩行の遊脚相の間に地面と最も接触しやすい箇所に配置される。例えば、一実施形態では、圧縮性材料104および低摩擦性材料106の柱部は、主に、歩行の遊脚相の間にシューズが最も地面に擦り付けられやすいシューズ100の前方部分に配置される。
【0010】
いくつかの実施形態では、圧縮性材料104は、軟質弾性発泡体から構成され、かつ低摩擦性材料106は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成される。他の実施形態では、立脚相の間に加えられる力に応じて圧縮性材料104に所望の圧縮率特性を提供しかつ遊脚相の間にシューズを地面に擦り付けることができるようにする低摩擦性材料に低摩擦力を提供する他の材料が利用されてもよい。とりわけ、これら材料は、垂直GRFが比較的低い場合、低摩擦性材料106が遊脚相の間は依然として飛び出たままとなるように選択され、当該低摩擦性材料106は、高摩擦面108が地面と接触できる(つまりそれによって低摩擦性材料106が高摩擦面108からもはや飛び出ずまたは突出しない)ように、歩行の立脚相の間に提供されるより高い垂直GRFによって圧縮される。
【0011】
図2aおよび図2bは、本発明の別の実施形態に基づく摩擦力可変シューズ200および200’の側面図および垂直投影図をそれぞれ示す。摩擦力可変シューズ200(および200’)は、この場合も同様に、上部201と、アウトソール202と、高摩擦性材料210と、複数の孤立部またはパッチと、を含み、孤立部またはパッチは、中空の円筒形ブッシング204と、圧縮性材料206と、低摩擦性材料208とを含む。図2aに示される実施形態では、中空の円筒形ブッシング204と圧縮性材料206と低摩擦性材料208とは、各々の相対的位置を例示する分解図で示されている。図2bに示される実施形態では、中空の円筒形ブッシング204’は、中空の円筒形ブッシング204’の内部での圧縮性材料206’および低摩擦性材料208’の位置を例示する断面図で示されている。図2bに示される実施形態はまた、アウトソール202’および高摩擦面210’の内部における円筒形ブッシング204’と圧縮性材料206’と低摩擦性材料208’との相対的位置を例示する。
【0012】
いくつかの実施形態では、圧縮性材料206および低摩擦性材料208は、中空の円筒形ブッシング204内に収容されている。図2aおよび図2bに示される実施形態では、低摩擦性材料208はデルリンから構成され、圧縮性材料は軟質弾性発泡体から構成され、かつ中空の円筒形直線状ブッシング204はプラスチックである。他の実施形態では、他のタイプの材料が利用されてもよい。この場合も同様に、これら材料は、垂直GRFが比較的低い場合は低摩擦性材料208が遊脚相の間は依然として飛び出るように選択されており、かつ低摩擦性材料208は、高摩擦面210が地面と接触できる(つまりそれによって低摩擦性材料208がもはや高摩擦面210から飛び出ずまたは突出しない)ように、歩行の立脚相の間に提供されるより高い垂直GRFによって圧縮される。
【0013】
図3aおよび図3bは、それぞれ(歩行の遊脚相の間と推定される)非圧縮状態および(歩行の立脚相の間と推定される)圧縮状態における摩擦力可変シューズを例示する断面図である。図3aおよび図3bには、圧縮性材料302と、低摩擦性材料304と、高剛性の高摩擦性材料306とが示される。図3aに示されるように、遊脚状態の間は垂直GRFは比較的低く、圧縮性材料302は大部分が非圧縮状態のままであることが可能である。その結果、低摩擦性材料304は、高摩擦面または高摩擦性材料306を越えて突出する。歩行の遊脚相の間、下垂足を患う人は、遊脚相の間に不注意でシューズを地面に接触させる可能性がある。これが発生する場合、低摩擦性材料304は地面に接触して、シューズが引っ掛かるのではなく地面の上をスライド可能にする。着用者が歩行の立脚相に入る場合、着用者が体重を足へ移行させるにつれて垂直GRFが増加する。垂直GRFの増加は、圧縮性材料302を圧縮させ、それによって、高摩擦性材料306が地面と接触するように低摩擦性材料304が後退可能となる。いくつかの実施形態では、高摩擦性材料306は、圧縮性材料302よりも実質的に大きい剛性を有する。いくつかの実施形態では、高剛性材料306は、高摩擦性材料でもある。いくつかの実施形態では、高剛性材料306は、歩行の立脚相の間に地面と接触する(参照符号で分類されていない)高摩擦性材料から分離されている。この実施形態では、高摩擦性材料は、高剛性材料306の底部外面に配置され得る。
【0014】
図4aから図4cは、本発明の様々な実施形態を利用する様々な定量化可能な態様に基づく患者の改善状態を示すグラフである。特に図4aは、さまざまなバージョンの摩擦力可変シューズを使用した歩行速度の変化率を例示し;図4bは、さまざまなバージョンの摩擦力可変シューズを使用して到達した対地速度に関する最大変化率を例示し;図4cは、さまざまなバージョンの摩擦力可変シューズを使用した股関節角度の変化率を例示する。図4aから図4cに示される結果は、摩擦力可変シューズの第1のモデルおよび第2のモデル、400でラベル付けされた第1の摩擦力可変シューズおよび402でラベル付けされた第2の摩擦力可変シューズの試験を例示する。第1の摩擦力可変シューズは、(例えば図1aから図1bに示されるように)低摩擦性材料の薄層を備える軟質弾性発泡体を有するパッチを利用する。第2の摩擦力可変シューズは、軟質弾性発泡体に取り付けられたデルリンペグを有するパッチを利用しており、デルリンペグは、丸みのある縁部を備える円筒形状のものであり、かつ中空の円筒形直線状ブッシングによって支持される。
【0015】
図4aに示されるように、第1および第2のバージョンの摩擦力可変シューズの両方が、摩擦力が変動しないシューズ(例えば通常のテニスシューズまたはスニーカー)よりも改善された快適な歩行速度を大部分の参加者に提供した。第2の摩擦力可変シューズは第1の摩擦力可変シューズと比較してわずかに改善された性能を示している。
【0016】
同様に図4bに示されるように、第1および第2のバージョンの摩擦力可変シューズの両方が、摩擦力が変動しないシューズ(例えば摩擦力変動シューズと同じ形状の制御されたランニングスニーカー)を超える対地速度に関する改善された最大値を大部分の参加者に提供しており、第2の摩擦力可変シューズは第1の摩擦力可変シューズと比較して改善された性能を示している。
【0017】
図4cは、第1および第2のバージョンの摩擦力可変シューズの両方を利用する大部分の参加者にとって、参加者の股関節角度が減少したことを例示する。歩行を進めるために、一部の障害のある人は分回し歩行を採用する。こうした人々にとって、前額面の股関節角度が大きいほど、補償がより大きくなり、ひいては身体運動のレベルがより高くなる。両方のバージョンのシューズが股関節角度を改善したが、第2のバージョンは前額面の股関節角度を減らすことによって、わずかにより良い性能を提供した。
【0018】
ここで図5aから図5cを参照すると、いくつかの実施形態に基づく摩擦力可変シューズ500が例示されている。特に、図5aは摩擦力可変シューズ500の底面図であり、図5bは、(歩行の遊脚相の間と推定される)非圧縮状態の摩擦力可変シューズ500の側面図であり、図5cは、(歩行の立脚相の間と推定される)圧縮状態のシューズ500の側面図である。
【0019】
図5aに示される実施形態では、摩擦力可変シューズ500は、ミッドソール510とアウトソール502とを含み、アウトソール502は続いて低摩擦面504と高摩擦面506とを含む。低摩擦面504は、アウトソール502の前方部分の周りに馬蹄形状で延在している。歩行の遊脚相の間、低摩擦面504は突出している(つまり高摩擦面506に対して依然として飛び出ている)。地面に擦り付けられる場合、低摩擦面504は、シューズが地面にわたってスライドできるようにする。低摩擦面504(または隣接する圧縮性材料)は、歩行の立脚相の間に提供されるより高い垂直GRFによって圧縮されて、高摩擦面506が突出することを可能にする(つまりそれによって低摩擦面504はもはや高摩擦面506から飛び出ずまたは突出しない)。図5aに示される実施形態では、高摩擦面506は、低摩擦面504の馬蹄形の間の領域で、シューズの中央部分に配置されている。他の実施形態では、高摩擦面506および低摩擦面504の互いに対する位置は変更されてもよい。例えば、変更された配置は図6図7a、および図8aに示される。なお、いずれの場合においても動作原理は同じである。低摩擦面504は、GRFが比較的低い場合には歩行の遊脚部分の間は突出したままであり、かつ低摩擦面504がGRFの増加に応じて後退すると、その結果、アウトソール502の高摩擦面506は、歩行の立脚相の間は地面と接触する。
【0020】
図5bは、非圧縮状態の摩擦力可変シューズ500の側面図であり、図5cは、圧縮状態の摩擦力可変シューズ500の側面図である。歩行の遊脚相の間は典型的である-ほとんどないかまたはまったくない地面反力(GRF)に応じて、低摩擦面504は突出する(つまり高摩擦面506に対して飛び出る)。その結果、シューズは、歩行の遊脚相の間は引っ掛かることなく、低摩擦面504を介して地面に沿ってスライド可能となる。増加するGRFが(歩行の立脚相への移行に応じて)摩擦力可変シューズ500に付与されると、図5cに示されるように、低摩擦面504に垂直に隣接して配置された(見えない)圧縮性材料が圧縮される。その結果、高摩擦面506は突出して地面に接触するようになり、それによって接触した表面にわたってシューズがスリップすることが防止される。
【0021】
いくつかの用途に関し、低摩擦面504が連続的またはほぼ連続的であるという利点は、低摩擦面504と高摩擦面506との間の急な移行がより少ないことである。いくつかの実施形態では、別の利点は、高摩擦面506に対する低摩擦面504のサイズは、歩行の遊脚相および立脚相のいずれかの間で低摩擦面504および/または高摩擦面506が亀裂に引っ掛かるのを防止することである。いくつかの実施形態では、低摩擦面504は連続的である。他の実施形態では、低摩擦面504は連続的ではない。例えば、低摩擦面504は、第1の低摩擦面および第2の低摩擦面を含んでもよい。例えば、図6に示される実施形態は、第1および第2の低摩擦面に分離された低摩擦面を例示する。
【0022】
図6は、いくつかの実施形態に基づいて利用される複数の層を例示する摩擦力可変シューズ600の分解図である。明瞭化のために、この図面にはシューズの上部は表示されていない。いくつかの実施形態では、アウトソール602は最上層であり、摩擦力可変シューズ600の全長に沿って延在する。いくつかの実施形態では、アウトソール602は、少なくとも第1の圧縮性層604aを受け入れるよう構成された少なくとも第1の凹部を含む。図6に示される実施形態では、アウトソール602は、両側において互いからシューズの前方部分へ向けて配置される第1のくぼみおよび第2のくぼみを含む。他の実施形態では、第1のくぼみおよび第2のくぼみは互いに接続されてもよく、例えばシューズの前方に沿って配置された馬蹄形(例えば図5aに示されるように馬蹄形)の単一のくぼみを形成してもよい。いくつかの実施形態では、圧縮性材料604a、604bは、それぞれ第1および第2の凹部に配置されている。いくつかの実施形態では、圧縮性材料604a、604bは、圧縮性材料604a、604bがGRFに応じて(アウトソール602よりも多く)圧縮するように、アウトソール602よりも圧縮性が高い。
【0023】
アウトソール602および圧縮性層604a、604bに隣接して中間層606が存在しており、中間層606は、低摩擦面608(この例では第1および第2の低摩擦面608a、608b)を含む。いくつかの実施形態では、低摩擦面608a、608bは、圧縮性材料604a、604bおよび関連する凹部と同一の広がりを有する。他の実施形態では、低摩擦面608a、608bは、対応する圧縮性層604a、604bよりも表面積がわずかに小さい。いくつかの実施形態では、中間層606は、摩擦力可変シューズ600の前方部分に沿ってのみ延在する。いくつかの実施形態では、低摩擦面608a、608bは、低摩擦面608a、608bが非圧縮状態で底層610を越えて突出することを保証する(下層610に対する)高さまたは厚さを含む。いくつかの実施形態では、低摩擦面608aおよび608bは、中間層606と同じ材料から作られる。いくつかの実施形態では、低摩擦面608aおよび608bと中間層606は一体的である。他の実施形態では、低摩擦面608aおよび608bは、異なる材料から作られており、低摩擦面608aおよび608bのみが低摩擦面を備えるかまたは呈する。
【0024】
底層610は、中間層に隣接して配置され、中間層は、底層610とアウトソール602との間に配置される。いくつかの実施形態では、底層610は、底層610を低摩擦面608aと608bとの間に配置することを可能にする所定の幅によって画定される。いくつかの実施形態では、底層610の長さは、アウトソール602の全長に沿って延在する。他の実施形態では、底層610は、(例えば図6に示されるように)アウトソール602の一部に沿って延在してもよい。底層610の底面には、高摩擦面612が配置される。
【0025】
上述のように、歩行の遊脚相の間、摩擦力可変シューズ600にGRFが付与されない場合、低摩擦面608aおよび608bは、高摩擦面612に対して依然として突出するかまたは飛び出ている。この歩行の遊脚相の間での地面との偶発的な接触(例えば地面に対する擦り付け)は、低摩擦面608aおよび/または608bを地面と接触させ、低摩擦面は、シューズが地面に沿ってスライドして引っ掛からないようにすることができる。ユーザが歩行の立脚相に移行するにつれて増加するGRFに応じて圧縮性層604a、604bは圧縮され、その結果、低摩擦面608aは、高摩擦面612に対して突出したポジションから後退する。圧縮性層604aおよび604bの圧縮の結果として、高摩擦面612は地面と接触させられて、シューズが地面/表面に沿ってスライドすることを防止する。
【0026】
図6に示される実施形態では、圧縮性層604aおよび604bと低摩擦面608aおよび608bとは、シューズの前方部分の外側部分および内側部分に配置されている。他の実施形態では、これらの層および表面の位置は、用途に応じて変更されてもよい。例えばいくつかの実施形態では、圧縮性層604aおよび604bと低摩擦面608aおよび608bとは、例えば、図5aから図5cに示されるように、馬蹄の形態で連続していてもよい。他の実施形態-図7a、図7bおよび図8a、図8bに関して記載された実施形態など-では、他の形状が利用されてもよい。
【0027】
図7aから図7cに関して、摩擦力可変シューズ700は、低摩擦面704および高摩擦面702を異なる形状で設けられている。とりわけ図7aは、摩擦力可変シューズ700のアウトソール701の底面図であり、図7bは非圧縮状態の側面図であり、図7cは圧縮状態の側面図である。図1aおよび図1bに示される実施形態とは対照的に、図7aから図7cで提供される実施形態は、低摩擦面704によって互いから分離された高摩擦面702の複数の孤立部を利用する。図7bおよび図7cに示されるように、低摩擦面704は、図7bに示されるようにGRFが低い場合(つまり歩行の遊脚相の間)、高摩擦面702の複数の孤立部に対して突出したままである。低摩擦面704とミッドソールとの間に配置される圧縮性材料(図示せず)は、GRFの増加に応じて圧縮される。逆に、(低摩擦面704に関連付けられた圧縮性材料に対する)非圧縮性材料は、複数の高摩擦面702の各々に垂直方向に隣接して配置される。垂直GRFの増加に応じて、低摩擦面704に垂直方向において隣接する圧縮性材料は圧縮し、複数の高摩擦面702に垂直方向において隣接する非圧縮性材料は圧縮しない。結果として、複数の高摩擦面702は、図7cに示されるように、低摩擦面704に対して突出するかまたは少なくとも同一の広がりを有するポジションへ移行する。力および圧縮の増加に応じて、低摩擦面704のポジションは、低摩擦面704が歩行の立脚相の間で複数の高摩擦面702からもはや飛び出すかまたは突出することがないように、複数の高摩擦面702に対して変更される。図7cに示されるように、高摩擦面702は、必ずしも低摩擦面704に対して飛び出すかまたは突出する必要はないが、高摩擦面702が地面に接触できるように配置されている。
【0028】
図8aから図8cに関し、摩擦力可変シューズ800は、さまざまな形状の低摩擦面802および高摩擦面804a、804bが設けられている。とりわけ図8aは、摩擦力可変シューズ800のアウトソール801の底面図であり、図8bは非圧縮状態の側面図であり、図8cは圧縮状態の側面図である。図1aおよび図1bに示される実施形態とは対照的に、図8aから図8cで提供される実施形態は、低摩擦面または層802によって分離された第1の高摩擦面または領域804aと第2の高摩擦面または領域804bとを利用する。図8bおよび図8cに示されるように、低摩擦面802は、図8bに示されるようにGRFが低い場合(つまり歩行の遊脚相の間)、第1の高摩擦面または領域804aおよび第2の高摩擦面または領域804bに対して突出したままである。低摩擦面802に垂直方向において隣接して配置された圧縮性材料(図示せず)は、歩行の立脚相の間のGRFの増加に応じて圧縮される。逆に、第1の高摩擦面804aおよび第2の高摩擦面804bに垂直方向において隣接して配置された非圧縮性材料は(圧縮性材料に対して)圧縮されない。増加した力および圧縮の結果として、低摩擦面802のポジションは、低摩擦面802が歩行の立脚相の間に複数の高摩擦面804aおよび804bからもはや飛び出さずあるいは突出しないように、複数の高摩擦面804aおよび804bに対して変更される。図8cに示されるように、高摩擦面804aおよび804bは、必ずしも低摩擦面802に対して突出したり飛び出したりする必要はないが、高摩擦面804aおよび804bの一方または両方が地面に接触できるように配置されている。
【0029】
本発明は例示的な実施形態を参照して説明されたが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更がなされてもよくかつその要素について同等物が代用されてもよいことが理解されるだろう。加えて、特定の状況または材料を、その本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の教示に適合するよういくつかの変更がなされてもよい。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されないが、本発明は、添付の特許請求の範囲内のすべての実施形態を含むようが意図されている。
【符号の説明】
【0030】
100 摩擦力可変シューズ
101 上部
102、102’ ミッドソール
104 圧縮性材料
106、106’ 低摩擦面、低摩擦性材料
108 、108’ 高摩擦面
200、200’ 摩擦力可変シューズ
201 上部
202、202’ アウトソール
204、204’ 円筒形ブッシング
206、206’ 圧縮性材料
208、208’ 低摩擦性材料
210 高摩擦性材料
210’ 高摩擦面
302 圧縮性材料
304 低摩擦性材料
306 高摩擦性材料
500 摩擦力可変シューズ
502 アウトソール
504 低摩擦面
506 高摩擦面
510 ミッドソール
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c