IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-医療デバイス 図1
  • 特許-医療デバイス 図2
  • 特許-医療デバイス 図3
  • 特許-医療デバイス 図4
  • 特許-医療デバイス 図5
  • 特許-医療デバイス 図6
  • 特許-医療デバイス 図7
  • 特許-医療デバイス 図8
  • 特許-医療デバイス 図9
  • 特許-医療デバイス 図10
  • 特許-医療デバイス 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3205 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
A61B17/3205
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021565311
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2019050205
(87)【国際公開番号】W WO2021124578
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(72)【発明者】
【氏名】多田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】桑野 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】バリット ジョン
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-269460(JP,A)
【文献】特開2013-146559(JP,A)
【文献】米国特許第05490860(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔内の物体を除去する医療デバイスであって、
回転可能である駆動シャフトと、
前記駆動シャフトを回転可能に収容する外管と、
前記駆動シャフトの先端部に連結されて物体を切削する切削部と、
前記駆動シャフトを回転可能に収容し、外周面または内周面に第1の対向面を有する第1のハウジングと、
前記第1の対向面と対向する第2の対向面を有し、前記外管の基端部に連結される第2のハウジングと、
前記第1の対向面および前記第2の対向面の間に位置する移動部材と、を有し、
前記第1の対向面または前記第2の対向面に周方向へ第1の溝部が形成され、
前記移動部材は、前記第1の溝部に収容され、
前記移動部材の一部は、前記第1の溝部から突出し、
前記第1の溝部と対向する前記第1の対向面または前記第2の対向面は、前記駆動シャフトの軸心に沿って形成されて、前記移動部材と当接可能な当接部を有し、
前記第2のハウジングは前記駆動シャフトの軸心を中心に前記第1のハウジングに対して回転可能で、
前記移動部材は、前記第1の溝部の端部または前記当接部の端部に当接することで、前記第2のハウジングは前記第1のハウジングに対する回転を制限される医療デバイス。
【請求項2】
前記第1の溝部は、突出部または凹部が形成されている請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記第1の溝部は、少なくとも2つの前記突出部を有する請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記第1の溝部は、前記第1の対向面または前記第2の対向面に螺旋状に形成される請求項1~3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記第1の溝部と対向する前記第1の対向面または前記第2の対向面は、第2の溝部が形成され、前記当接部は、前記第2の溝部の内壁面である請求項1~4のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記第1の対向面は、前記第1のハウジングの外周面に形成され、
前記第2の対向面は、前記第2のハウジングの内周面に形成され、
前記第2のハウジングは、前記第2の溝部から径方向の外側へ延在して前記第2のハウジングの外面へ貫通する貫通孔が形成され、
前記移動部材は、前記貫通孔に配置されて当該貫通孔の内部を移動可能である補助部材を有する請求項に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記第1の溝部および/または前記第2の溝部の幅および/または深さは、溝部の延在方向の端部へ向かって小さくなる請求項5または6に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記第2の溝部および/または第1の溝部に配置されて前記移動部材を付勢する付勢部材を有する請求項~7のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項9】
生体管腔内の物体を除去する医療デバイスであって、
回転可能である駆動シャフトと、
前記駆動シャフトを回転可能に収容する外管と、
前記駆動シャフトの先端部に連結されて物体を切削する切削部と、
前記駆動シャフトを回転可能に収容する第1のハウジングと、
前記外管の基端部に連結されて前記駆動シャフトの軸心を中心に前記第1のハウジングに対して回転可能である第2のハウジングと、
前記第1のハウジングに連結される第1の連結部および前記第2のハウジングに連結される第2の連結部を有する柔軟な制限ワイヤと、を有し、
前記制限ワイヤは、前記第2のハウジングが前記第1のハウジングに対して所定の回転量を超えて回転することを制限する医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体管腔の物体を除去するための医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内のプラークや血栓などによる狭窄部の治療方法は、バルーンにより血管を拡張する方法や、網目状またはコイル状のステントを血管の支えとして血管内に留置する方法などが挙げられる。しかしながら、これらの方法は、石灰化により硬くなっている狭窄部や、血管の分岐部で生じている狭窄部を治療することは、困難である。このような場合においても治療が可能な方法として、プラークや血栓などの狭窄物を切削して除去する方法がある。
【0003】
例えば特許文献1には、回転することで血管内の物体を切削する切削部を備えたデバイスが記載されている。このデバイスは、先端部のみにガイドワイヤルーメンが配置されたラピッドエクスチェンジ型である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9788854号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のデバイスにおいて、切削部を回転可能に保持している先端部が回転すると、ガイドワイヤがデバイスの基端部に絡まりやすい。また、デバイスが回転しすぎると、捩れて破損する可能性がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、切削部を駆動する駆動シャフトを回転可能に覆う外管の回転量を、所定の範囲に制限できる医療デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る医療デバイスは、生体管腔内の物体を除去する医療デバイスであって、回転可能である駆動シャフトと、前記駆動シャフトを回転可能に収容する外管と、前記駆動シャフトの先端部に連結されて物体を切削する切削部と、前記駆動シャフトを回転可能に収容し、外周面または内周面に第1の対向面を有する第1のハウジングと、前記第1の対向面と対向する第2の対向面を有し、前記外管の基端部に連結される第2のハウジングと、前記第1の対向面および前記第2の対向面の間に位置する移動部材と、を有し、前記第1の対向面または前記第2の対向面に周方向へ第1の溝部が形成され、記移動部材は、前記第1の溝部に収容され、記移動部材の一部は、前記第1の溝部から突出し、前記第1の溝部と対向する前記第1の対向面または前記第2の対向面は、前記駆動シャフトの軸心に沿って形成されて、前記移動部材と当接可能な当接部を有し、前記第2のハウジングは前記駆動シャフトの軸心を中心に前記第1のハウジングに対して回転可能で、前記移動部材は、前記第1の溝部の端部または前記当接部の端部に当接することで、前記第2のハウジングは前記第1のハウジングに対する回転を制限される。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した医療デバイスは、移動部材が第1の溝部の端部または当接部の端部に当接するまでは、第2のハウジングが第1のハウジングに対して回転可能である。そして、移動部材が、第1の溝部の端部または当接部の端部に当接することで、第2のハウジングは第1のハウジングに対する回転を制限される。このため、切削部を駆動する駆動シャフトを回転可能に収容する外管の回転量を、所定の範囲に制限できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る医療デバイスおよび駆動デバイスを示す平面図である。
図2】第1実施形態に係る医療デバイスの基端部を示す断面図である。
図3】医療デバイスの先端部を示す断面図である。
図4】第1実施形態に係る医療デバイスの基端部を示す図であり、(A)は第2のハウジングを断面図で示し、他の部位を平面図で示す図、(B)は図4(A)のA-A線に沿う断面図である。
図5】第2のハウジングを第1のハウジングに対して基端側から見て時計回りに回転させた状態を示す図であり、(A)は第2のハウジングを断面図で示し、他の部位を平面図で示す図、(B)は図5(A)のB-B線に沿う断面図である。
図6】第2のハウジングを第1のハウジングに対して基端側から見て反時計回りに回転させた状態を示す図であり、(A)は第2のハウジングを断面図で示し、他の部位を平面図で示す図、(B)は図6(A)のC-C線に沿う断面図である。
図7】第2実施形態に係る医療デバイスの基端部を示す図であり、(A)は第2のハウジングを断面図で示し、他の部位を平面図で示す図、(B)は図7(A)のD-D線に沿う断面図である。
図8】第2のハウジングを第1のハウジングに対して基端側から見て時計回りに回転させた状態を示す図であり、(A)は第2のハウジングを断面図で示し、他の部位を平面図で示す図、(B)は図8(A)のE-E線に沿う断面図である。
図9】第3実施形態に係る医療デバイスの基端部を示す図であり、(A)は第2のハウジングを断面図で示し、他の部位を平面図で示す図、(B)は図9(A)のF-F線に沿う断面図である。
図10】第4実施形態に係る医療デバイスの基端部を示す図であり、(A)は第2のハウジングおよび移動部材を断面図で示し、他の部位を平面図で示す図、(B)は図10(A)のG-G線に沿う断面図である。
図11】医療デバイスの変形例を示す断面図であり、(A)は第1の変形例、(B)は第2の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面における各部材の大きさや比率は、説明の都合上誇張され実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
【0011】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る医療デバイス10は、急性下肢虚血や深部静脈血栓症において、血管内に挿入され、血栓、プラーク、アテローム、石灰化病変等を破壊して除去する処置に用いられる。本明細書では、デバイスの血管に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。なお、除去する物体は、必ずしも血栓、プラーク、アテローム、石灰化病変に限定されず、生体管腔内や体腔内に存在し得る物体は、全て該当し得る。
【0012】
医療デバイス10は、図1に示すように、駆動力を発生させる駆動デバイス100に連結されて駆動される。医療デバイス10および駆動デバイス100は、1つの医療システム1を構成する。
【0013】
医療デバイス10は、図1~3に示すように、長尺であって回転駆動される駆動シャフト20と、駆動シャフト20を収容する外管30と、血栓等の物体を切削する切削部40とを備えている。医療デバイス10は、さらに、駆動シャフト20の基端部を回転可能に保持する第1のハウジング50と、外管30の基端部に連結される第2のハウジング60とを備えている。医療デバイス10は、さらに、第1のハウジング50および第2のハウジング60の間に配置される移動部材70と、駆動シャフト20の内部に配置される内管80とを備えている。
【0014】
駆動シャフト20は、回転力を切削部40に伝達する。駆動シャフト20は、切削した物体を基端側へ搬送するための吸引ルーメン22(内腔)が形成されている。駆動シャフト20は、軸心Xを有する長尺な管状の駆動管21と、駆動管21の基端部に固定される回転入力部24とを備えている。
【0015】
駆動管21は、外管30を貫通し、先端部に切削部40が固定されている。駆動管21の基端部は、第2のハウジング60の内部に位置している。駆動管21は、回転入力部24を介して、後述する回転駆動軸121により回転駆動される。駆動管21は、先端に、吸引対象物であるデブリ(切削した血栓等)が入り込む入口部26を有している。駆動管21の基端は、内腔が塞がれており、回転入力部24に固定されている。駆動管21は、第2のハウジング60の内部に位置する基端部の側面に、吸引ルーメン22が開口する導出部25を有している。導出部25は、入口部26から駆動管21の内部に入ったデブリが排出される出口である。
【0016】
駆動管21は、柔軟で、かつ基端側から作用する回転の動力を先端側に伝達可能な特性を有する。駆動管21は、全体が1つの部材で構成されてもよく、または複数の部材で構成されてもよい。駆動管21は、部位によって剛性を調節するために、螺旋状のスリットや溝をレーザー加工等により形成されてもよい。また、駆動管21の先端部と基端部は、異なる部材で構成されてもよい。
【0017】
駆動管21の構成材料は、例えば、ステンレス、ニッケルチタン合金のような形状記憶合金、銀・銅・亜鉛などからなる合金(銀蝋成分)、金・錫などからなる合金(半田成分)、タングステンカーバイドなどの強硬合金、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。また、複数の材料によって構成されてもよく、線材などの補強部材が埋設されてもよい。
【0018】
回転入力部24は、駆動管21の基端に固定される略円柱状の部材である。回転入力部24は、駆動デバイス100の回転駆動軸121と連結して回転の動力を受け取る部材である。回転入力部24の基端部は、回転駆動軸121が嵌合する嵌合凹部27を備えている。
【0019】
内管80は、可撓性を備える管体であり、駆動シャフト20の内部に配置される。内管80は、駆動シャフト20の内部を流れるデブリにより、駆動シャフト20の内周面が損傷することを抑制する。内管80は、駆動シャフト20の内周面に固定されてもよいが、固定されなくてもよい。なお、内管80は、設けられなくてもよい。
【0020】
外管30は、駆動シャフト20を回転可能に収容する外管本体31と、外管本体31の先端部の側面に固定される先端チューブ32とを備えている。
【0021】
外管本体31は、管体であり、外管本体31の基端部が第2のハウジング60に固定されている。なお、外管本体31の基端部は、第2のハウジング60に直接固定されてもよく、もしくは継手53に固定され、継手53が第2のハウジング60に固定されることで間接的に固定されてもよい。外管本体31の先端部は、切削部40の基端側に位置している。外管本体31は、先端部に、所定の角度で曲がる湾曲部34を有している。湾曲部34は、外管本体31を回転させることで、外管本体31の先端の向きを変更するために利用できる。
【0022】
先端チューブ32は、外管本体31の先端部の外周面に固定されている。先端チューブ32は、内部にガイドワイヤを挿入可能なガイドワイヤルーメン33を有している。したがって、医療デバイス10は、先端部にのみガイドワイヤルーメン33が形成されるラピッドエクスチェンジ型のデバイスである。
【0023】
外管本体31および先端チューブ32の構成材料は、特に限定されないが、例えばステンレス、ニッケルチタン合金のような形状記憶合金、チタン、銀・銅・亜鉛などからなる合金(銀蝋成分)、金・錫などからなる合金(半田成分)、タングステンカーバイドなどの強硬合金、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、もしくは各種エラストマー、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK、ポリイミド、などが好適に使用できる。また、外管本体31は、複数の材料によって構成されてもよく、線材などの補強部材が埋設されてもよい。
【0024】
切削部40は、血栓、プラークや石灰化病変等の物体を切削して小さくする部材である。したがって、“切削”とは、接触する物体に力を作用させて、物体を小さくすることを意味する。切削における力の作用方法や、切削後の物体の形状や形態は、限定されない。切削部40は、上述した物体を切削できる強度を有している。切削部40は、駆動管21の先端部に固定されている。切削部40は、駆動管21よりも先端側へ突出する円筒である。切削部40の先端は、鋭利な刃41を備えている。なお、刃41の形状は、特に限定されない。切削部40は、刃41ではなく、微小な砥粒を多数有してもよい。
【0025】
切削部40の構成材料は、血栓を切削できる程度の強度を有することが好ましく、例えば、ステンレス、チタン、ダイヤモンド、セラミックス、ニッケルチタン合金のような形状記憶合金、タングステンカーバイドなどの強硬合金、銀・銅・亜鉛などからなる合金(銀蝋成分)、ハイス鋼、などが好適に使用できる。切削部40の構成材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのエンジニアリングプラスチック等の樹脂でもよい。
【0026】
移動部材70は、図2、4に示すように、第1のハウジング50と第2のハウジング60の相対的な回転を、所定の範囲内に制限する部材である。移動部材70は、第1のハウジング50と第2のハウジング60の間に配置される球体である。なお、移動部材70の形状は、球体に限定されない。第1のハウジング50と第2のハウジング60が相対的に回転するとは、第1のハウジング50が止まって第2のハウジング60が回転する場合、第2のハウジング60が止まって第1のハウジング50が回転する場合、第1のハウジング50と第2のハウジング60の両方が回転するが回転速度が異なる場合を含む。
【0027】
第1のハウジング50は、医療デバイス10の基端部に配置される。第1のハウジング50は、駆動デバイス100に連結されて、駆動デバイス100から回転駆動力および吸引力を受ける部位である。第1のハウジング50は、第2のハウジング60に周方向へ摺動可能に接続されるハウジング本体51と、内側接続部52と、継手53と、吸引ポート54と、第1のシール部55または第1のベアリングと、第2のシール部56または第2のベアリングとを備えている。第1のベアリングの外周面に第1のシール部55が位置してもよい。第2のベアリングの外周面に第2のシール部56が位置してもよい。ハウジング本体51には、駆動管21が回転可能に貫通する内部空間51Aが形成されている。吸引ポート54は、駆動デバイス100の吸引チューブ131を接続可能である。吸引ポート54は、内部空間51Aと連通している。外管30および第2のハウジング60を貫通する駆動管21の基端部は、内部空間51Aに位置している。駆動管21の導出部25は、内部空間51Aに位置している。このため、吸引チューブ131から吸引ポート54に作用する陰圧は、導出部25から駆動管21の内部に作用する。ハウジング本体51の基端側には、駆動管21の外周面と接触する第1のシール部55が配置されている。ハウジング本体51の先端側には、駆動管21の外周面と接触する第2のシール部56が配置されている。第1のシール部55および第2のシール部56は、内部空間51Aの陰圧が逃げることを抑制する。第1のベアリングおよび第2ベアリングは、駆動シャフト20の回転を滑らかにする。
【0028】
継手53は、第1のハウジング50を第2のハウジング60に回転可能に連結する部位である。継手53は、外周面にリング状の継手凸部53Aが形成されている。第1のハウジング50の継手53より先端側には、第1のハウジング50と第2のハウジング60の間を密封する第3のシール部68が設けられる。なお、第3のシール部68は、継手53上や継手53より基端側に設けられてもよい。
【0029】
内側接続部52は、ハウジング本体51の先端側に配置されて、ハウジング本体51に固定されている。内側接続部52は、略円筒形状であり、外周面に、第2のハウジング60に対向する第1の対向面57を備えている。第1の対向面57は、螺旋状の第1の溝部58を備えている。螺旋の中心軸と直交する面に対して螺旋がなす角度である螺旋角θは、0°を超えて90°未満であり、好ましくは1°~45°、より好ましくは5°~30°である。第1の溝部58が螺旋を描く方向は、特に限定されない。第1の溝部58が、駆動シャフト20の軸心Xを中心として周方向へ延在する角度(延在角度)は、特に限定されないが、例えば360°以上であり、好ましくは720°以上であり、より好ましくは800°以上である。第1の溝部58の延在角度は、360°以上であれば、第2のハウジング60を、第1のハウジング50に対して1回転させることができ、第1のハウジング50に固定される外管30を、周方向における全ての方向へ向けることができる。第1の溝部58の延在角度は、720°以上であれば、第2のハウジング60を、第1のハウジング50に対して回転方向の両方向(基端側または先端側から見て時計回りおよび反時計回りの両方向)へ1回転させることができる。第1の溝部58の延在角度は、800°以上であれば、第2のハウジング60を、第1のハウジング50に対して回転方向の両方向へ確実に1回転させることができる。第1の溝部58の延在角度は、大きすぎないことで、ガイドワイヤが外管30の基端側に絡まり難くなり、かつ外管30が捩れ難くなる。第1の溝部58の延在角度は、特に限定されないが、例えば1440°以下である。なお、第1の溝部58の延在角度は、360°未満であってもよい。第1の溝部58の延在角度が360°未満である場合、第1の溝部58は、螺旋角θを有さず(θ=0)に軸心Xと直交する面で延在してもよい。第1の溝部58は、延在角度が360°未満であれば、軸心Xと直交する面で延在しても端部同士が連通しないため、延在方向の端部を形成できる。第1の溝部58の深さは、球体である移動部材70の直径よりも浅く、例えば、移動部材70の直径の半分程度である。第1の溝部58の延在方向と直交する断面における第1の溝部58の表面の形状は、円弧形状であり、移動部材70の半径よりも多少大きな曲率半径を有している。これにより、球体である移動部材70は、第1の溝部58に沿って転がりながら円滑に移動できる。なお、第1の溝部58の表面の断面形状は、円弧形状に限定されない。
【0030】
第1の溝部58は、延在角度の略中央に、延在方向へ並ぶ2つの突出部59を有している。2つの突出部59は、第1の溝部58の深さよりも低い高さで形成される。2つの突出部59は、第1の溝部58に沿って移動する移動部材70が抵抗を受けつつ乗り越えられる高さで形成される。2つの突出部59の間は、医療デバイス10を使用する前の初期状態において、移動部材70が配置される初期位置である。なお、図11(A)に示す第1の変形例のように、突出部59は、弾性部材59Aによって支持されてもよい。これにより、移動部材70が突出部59を超える際に、弾性部材59Aが収縮する。このため、移動部材70は、突出部59を、円滑に超えることができる。また、図11(B)に示す第2の変形例のように、第1の溝部58は、突出部59を有さずに、凹部59Bを有してもよい。凹部59Bは、移動部材70を保持できるため、移動部材70が配置される初期位置として有効である。
【0031】
第2のハウジング60は、図2、4に示すように、第1のハウジング50の先端側に配置されている。第2のハウジング60は、外管30を回転させるために、術者が指で回転操作する部位である。第2のハウジング60は、駆動シャフト20が回転可能に貫通する通路61と、外側接続部62とを備えている。通路61の先端部または継手53には、外管30の基端部が連結されている。また、通路61の内周面には、第1のハウジング50の継手凸部53Aが摺動可能に嵌るリング状の継手凹部63が形成されている。これにより、第2のハウジング60は、第1のハウジング50に対して相対的に回転可能であるが、相対的に軸方向へ移動不能である。
【0032】
外側接続部62は略筒状に形成されており、第1のハウジング50の内側接続部52を覆っている。外側接続部62の外周面は、術者が回転操作するために触れる操作部64である。外側接続部62の内周面は、第1のハウジング50の第1の対向面57と対向する第2の対向面65が形成されている。第2の対向面65は、駆動シャフト20の軸心Xに沿って延在する第2の溝部66が形成されている。第2の溝部66の延在方向は、軸心Xと平行である。なお、駆動シャフト20の軸心Xに沿って延在する第2の溝部66の延在方向は、軸心Xと平行でなくてもよい。第2の溝部66は、移動部材70に当接して移動部材70を押すことができる当接部67を有している。当接部67は、基端側から見て、第2の溝部66の時計回り側の内壁面である第1の当接部67Aと、第2の溝部66の反時計回り側の内壁面である第2の当接部67Bとを有している。第1の当接部67Aおよび第2の当接部67Bは、第1のハウジング50および第2のハウジング60の径方向において、移動部材70の最も径方向の外側の位置よりも、径方向の内側に配置される。これにおり、第1の当接部67Aおよび第2の当接部67Bは、移動部材70に当接できる。
【0033】
第2の溝部66の深さは、球体である移動部材70の直径よりも浅く、例えば、移動部材70の直径の半分程度である。第2の溝部66の延在方向と直交する断面における第2の溝部66の表面の形状は、円弧状であり、移動部材70の半径よりも多少大きな曲率半径を有している。これにより、球体である移動部材70は、第1の溝部58に沿って転がりながら円滑に移動できる。なお、第2の溝部66の表面の断面形状は、円弧状に限定されない。第2の溝部66が軸心Xと平行な方向へ延在する範囲と、第2の溝部66が軸心Xと平行な方向へ延在する範囲は、重なる範囲を有する。移動部材70は、この重なる範囲内で移動可能である。本実施形態では、第2の溝部66が軸心Xと平行な方向へ延在する範囲内に、第1の溝部58の全てが納まっている。なお、第1の溝部58が軸心Xと平行な方向へ延在する範囲内に、第2の溝部66の全てが納まってもよい。
【0034】
内側接続部52、外側接続部62および移動部材70の構成材料は、例えば、ステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合体)、ポリイミドなどが好適に使用できる。
【0035】
次に、駆動デバイス100について説明する。
駆動デバイス100は、図1に示すように、回転力を発生させる駆動部120と、吸引力を発生させる吸引部130とを備えている。駆動部120および吸引部130は、外部電源から供給される電力により駆動される。なお、駆動デバイス100は、駆動部120および吸引部130を駆動するための電池が設けられてもよい。
【0036】
駆動部120は、回転駆動軸121と、回転駆動軸121を回転させる第1のモータ122とを備えている。第1のモータ122の回転速度は、特に限定されないが、例えば5,000~200,000rpmである。
【0037】
吸引部130は、吸引チューブ131と、ポンプ132と、第2のモータ133と、廃液パック135とを備えている。吸引チューブ131は、医療デバイス10の吸引ポート54に接続可能である。ポンプ132は、第2のモータ133により駆動されて、吸引チューブ131に陰圧を作用させる。また、ポンプ132は、吸引チューブ131を介して吸引した流体を、廃液パック135へ排出する。
【0038】
なお、駆動デバイス100の構成は、上述の例に限定されない。例えば、回転力を発生させる機構と、吸引力を発生させる機構は、別々のデバイスであってもよい。
【0039】
次に、第1実施形態に係る医療デバイス10の使用方法を、血管内の血栓、石灰化病変等の病変部を破壊して吸引する場合を例として説明する。
【0040】
初めに、術者は、ガイドワイヤW(図3を参照)を血管に挿入し、病変部の近傍へ到達させる。次に、術者は、医療デバイス10のガイドワイヤルーメン33に、ガイドワイヤWの基端を挿入する。この後、ガイドワイヤWをガイドとして、医療デバイス10を病変部の近傍へ到達させる。
【0041】
術者は、切削部40の位置を周方向へ変更したい場合に、第1のハウジング50を保持した状態で、第2のハウジング60の操作部64を回転させる。例えば、図5に示すように、基端側から見て第2のハウジング60が第1のハウジング50に対して時計回りに回転すると、第2のハウジング60に連結された外管30も時計回りに回転する。これにより、外管30の湾曲部34の方向が変わり、切削部40の位置を変更できる。
【0042】
第2のハウジング60が第1のハウジング50に対して時計回りに回転すると、第2のハウジング60に形成される第2の溝部66の、第2のハウジング60の回転方向と反対側(反時計回り側)の第2の当接部67Bが、第1の溝部58に収容された移動部材70に当接する。これにより、移動部材70は当接部67により押されて、第1の溝部58を周方向へ移動する。また、移動部材70は、第2の溝部66を基端側へ移動する。このとき、移動部材70は球体であるために転がることができ、第1の溝部58および第2の溝部66を円滑に移動できる。移動部材70は、2つの突出部59の間の基準位置に保持された初期状態から、第1の溝部58を移動して突出部59を超える。このとき、移動部材70は、突出部59から抵抗を受けるため、術者は、第1のハウジング50が初期状態から回転したことを手や指の感覚(触覚)で認識できる。また、移動部材70が突出部59を超える際に音を発する場合には、術者は、第1のハウジング50が初期状態から回転したことを音で認識できる。
【0043】
第2のハウジング60および外管30は、第2の当接部67Bに押される移動部材70が、第1の溝部58の延在方向の時計回り側の端部58Aへ到達するまで、第1のハウジング50に対して回転できる。移動部材70は、第1の溝部58の延在方向の端部58Aへ到達すると、これ以上周方向へ移動できない。これにより、移動部材70は、第2のハウジング60の第2の当接部67Bと、第1の溝部58の延在方向の端部58Aに挟まれる。このため、第2のハウジング60は、基端側から見て、これ以上第1のハウジング50に対して時計回り側へ回転することが制限される。
【0044】
また、例えば、図6に示すように、基端側から見て第2のハウジング60が第1のハウジング50に対して反時計回りに回転すると、第2のハウジング60に連結された外管30も反時計回りに回転する。これにより、外管30の湾曲部34の方向が変わり、切削部40の位置を変更できる。
【0045】
第2のハウジング60が第1のハウジング50に対して反時計回りに回転すると、第2のハウジング60に形成される第2の溝部66の、第2のハウジング60の回転方向と反対側(時計回り側)の第1の当接部67Aが、第1の溝部58に収容された移動部材70に当接する。これにより、移動部材70は当接部67により押されて、第1の溝部58を周方向へ移動する。また、移動部材70は、第2の溝部66を先端側へ移動する。このとき、移動部材70は球体であるために転がることができ、第1の溝部58および第2の溝部66を円滑に移動できる。移動部材70は、2つの突出部59の間の基準位置に保持された初期状態から、第1の溝部58を移動して突出部59を超える。このとき、移動部材70は、突出部59から抵抗を受けるため、術者は、第1のハウジング50が初期状態から回転したことを手や指の感覚(触覚)で認識できる。また、移動部材70が突出部59を超える際に音を発する場合には、術者は、第1のハウジング50が初期状態から回転したことを音で認識できる。第2のハウジング60および外管30は、第1の当接部67Aに押される移動部材70が、第1の溝部58の延在方向の反時計回り側の端部58Bへ到達するまで、第1のハウジング50に対して回転できる。移動部材70は、第1の溝部58の延在方向の端部58Bへ到達すると、これ以上周方向へ移動できない。これにより、移動部材70は、第2のハウジング60の第1の当接部67Aと、第1の溝部58の延在方向の端部58Bに挟まれる。このため、第2のハウジング60は、基端側から見て、これ以上第1のハウジング50に対して反時計回り側へ回転することが制限される。
【0046】
第2のハウジング60が第1のハウジング50に対して回転することが制限されると、ガイドワイヤルーメン33が、外管30に絡まることを抑制できる。また、外管30が、破損するまで捩れることを抑制できる。
【0047】
次に、術者は、図2に示すように、駆動デバイス100に医療デバイス10を接続する。これにより、回転駆動軸121は、回転入力部24に接続される。また、吸引チューブ131は、吸引ポート54に接続される。この後、術者は、駆動デバイス100を作動させる。これにより、回転駆動軸121の回転と、吸引チューブ131の吸引が開始される。回転駆動軸121は、回転入力部24を回転させる。これにより、回転入力部24に固定された駆動シャフト20および切削部40が回転する。回転する切削部40は、血管内で病変部を切削する。
【0048】
吸引チューブ131は、吸引ポート54を介して内部空間51Aに陰圧を作用させる。このため、内部空間51Aに位置する基端開口部25から、駆動シャフト20の吸引ルーメン22に陰圧が作用する。したがって、図3に示すように、切削部40の刃41により切削された病変部は、デブリとなって、切削部40の内側を基端側へ移動する。デブリは、駆動シャフト20の先端開口部26から吸引ルーメン22に吸引される。
【0049】
駆動シャフト20が回転すると、駆動シャフト20を収容している外管30は、駆動シャフト20からの摩擦力により回転力を受ける。これにより、外管30および外管30に連結された第2のハウジング60は、第1のハウジング50に対して相対的に回転する可能性がある。しかしながら、前述したように、第1の溝部58および第2の溝部66に収容された移動部材70によって、第2のハウジング60は、第1のハウジング50に対して、所定の角度以上の回転が制限される。このため、外管30は、駆動シャフト20から回転力を受けても必要以上に回転しないため、ガイドワイヤルーメン33を通るガイドワイヤWが、外管30に絡まることを抑制できる。また、外管30は、駆動シャフト20から回転力を受けても必要以上に回転しないため、破損するまで捩れることを抑制できる。
【0050】
また、術者は、駆動シャフト20および切削部40が回転している際に、操作部64を指や手で回転操作して、切削部40の位置を周方向へ任意に変更できる。このため、切削部40により切削する位置を、容易かつ高精度に調節できる。
【0051】
吸引ルーメン22に吸引されたデブリは、導出部25、内部空間51A、吸引チューブ131を通ってポンプ132に到達する。ポンプ132に到達したデブリは、図1に示すように、廃液パック135に排出される。病変部の切削およびデブリの吸引が完了した後、術者は、駆動デバイス100の動作を停止させる。これにより、駆動シャフト20の回転が停止し、かつポンプ132の吸引が停止する。このため、切削部40による切削およびデブリの排出が停止される。この後、術者は、医療デバイス10を血管から抜去し、処置を完了する。
【0052】
以上のように、第1実施形態に係る医療デバイス10は、生体管腔内の物体を除去する医療デバイス10であって、回転可能である駆動シャフト20と、駆動シャフト20を回転可能に収容する外管30と、駆動シャフト20の先端部に連結されて物体を切削する切削部40と、駆動シャフト20を回転可能に収容し、外周面に第1の対向面57を有する第1のハウジング50と、第1の対向面57と対向する第2の対向面65を有し、外管30の基端部に連結される第2のハウジング60と、第1の対向面57および前記第2の対向面65の間に位置する移動部材70と、を有し、第1の対向面57または第2の対向面65に周方向へ第1の溝部58が形成され、移動部材70は、第1の溝部58に収容され、移動部材70の一部は、第1の溝部58から突出し、第1の溝部58と対向する第1の対向面57または第2の対向面65は、駆動シャフト20の軸心Xに沿って形成されて、移動部材70と当接可能な当接部67を有し、第2のハウジング60は駆動シャフト20の軸心Xを中心に第1のハウジング50に対して回転可能で、移動部材70は、第1の溝部58の端部58A、58Bまたは当接部67の端部67C、67Dに当接することで、第2のハウジング60は第1のハウジング50に対する回転を制限される。なお、駆動シャフト20の軸心Xに沿う当接部67は、駆動シャフト20の軸心Xと平行な方向成分を有して形成される当接部67を意味する。したがって、駆動シャフト20の軸心Xに沿う当接部67は、駆動シャフト20の軸心Xと垂直でなければ、駆動シャフト20の軸心Xと平行である場合に限定されない。すなわち、当接部67は、駆動シャフト20の軸心Xに対して傾斜しても、駆動シャフト20の軸心Xと平行な方向成分を有する。第1の溝部58の端部58A、58Bは、第1の溝部58の延在方向の始点および終点である。または、第1の溝部58の端部は、第1の溝部58の始点と終点との間に配置される壁でもよい。当接部67の端部67C、67Dは、当接部67の先端面および基端面である。または、当接部67の端部は、当接部67の先端面と基端面の間に配置される壁でもよい。
【0053】
上記のように構成した医療デバイス10は、移動部材70が第1の溝部58の延在方向の端部または当接部67の延在方向の端部に当接するまでは、第2のハウジング60が第1のハウジング50に対して回転可能である。そして、移動部材70が、第1の溝部58の延在方向の端部または当接部67の延在方向の端部に当接することで、第2のハウジング60は第1のハウジング50に対する回転を制限される。このため、切削部40を駆動する駆動シャフト20を回転可能に収容する外管30の回転量を、所定の範囲に制限できる。このため、外管30が回転しすぎることによって、破損するまで捩れることを抑制できる。また、外管30が回転しすぎることによってガイドワイヤW等と絡まることを抑制できる。
【0054】
第1の溝部58は、突出部59または凹部59Bが形成されている。これにより、突出部59または凹部59Bは、移動部材70が第1の溝部58を移動することを抑制して、移動部材70を第1の溝部58の所定の位置に保持できる。このため、移動部材70は、当接部67により押された場合に第1の溝部58を移動する。そして、移動部材70は、当接部67に当接しない場合には、突出部59に隣接する位置または凹部59Bに保持される。また、術者は、移動部材70が突出部59を超えることを、指や手の感覚(触覚)や聴覚によって認識できる。
【0055】
また、第1の溝部58は、少なくとも2つの突出部59を有する。これにより、移動部材70を2つの突出部59の間に良好に保持できる。このため、移動部材70は、当接部67により押された場合に、突出部59を超えて第1の溝部58を移動する。そして、移動部材70は、当接部67に当接しない場合には、2つの突出部59の間に保持される。
【0056】
また、第1の溝部58は、第2の対向面65に螺旋状に形成される。これにより、第1の溝部58は、360°以上の範囲に形成できる。このため、外管30を、第1のハウジング50に対して360°以上回転可能に構成できる。
【0057】
また、第1の溝部58と対向する第2の対向面65は、第2の溝部66が形成され、当接部67は、第2の溝部66の内壁面である。これにより、外管30および第2のハウジング60が第1のハウジング50に対して回転する際に、いずれの回転方向においても、第2の溝部66は、移動部材70に当接できる。このため、第2のハウジング60に連結された外管30の第1のハウジング50に対する回転量を、いずれの回転方向においても、所定の範囲に制限できる。
【0058】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る医療デバイス200は、図7に示すように、移動部材210の構造が、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0059】
第1のハウジング50の第1の溝部58は、2つの突出部59の間に、突出部59よりも低い高さで突出する第2の突出部220を有している。第2のハウジング60は、第2の溝部66から径方向の外側へ延在する貫通孔230が形成されている。貫通孔230は、第2のハウジング60の外面へ貫通している。貫通孔230は、軸心Xに沿う方向へ長くスリット状に形成される。第2のハウジング60は、第2の溝部66に、移動部材210を第1の対向面57へ向かって付勢する付勢部材240が配置される。付勢部材240は、例えば板ばねであるが、コイルばねや、ゴムやエラストマー等の高弾性率材料であってもよい。なお、付勢部材240は、移動部材210と摺動可能であり、移動部材210が第1の溝部58の延在方向へ移動することを制限しない。
【0060】
移動部材210は、球状であって第1の溝部58に配置される主部材211と、第2の溝部66および貫通孔230に配置される補助部材212とを備えている。補助部材212は、第2の溝部66に配置される内側補助部213と、貫通孔230に配置される外側補助部214とを備えている。内側補助部213は、第2の溝部66の延在方向へ移動可能である。内側補助部213は、第1の対向面57と対向する面に、主部材211を回転可能に保持する保持孔215が形成されている。保持孔215は、主部材211の半径よりも多少大きい半径の略半球形状の面で形成される。外側補助部214は、内側補助部213と一体的に形成されている。外側補助部214は、貫通孔230を通り、径方向の外側において、第2のハウジング60の外面の近傍まで延在している。
【0061】
主部材211が、2つの突出部59に挟まれる基準位置である第2の突出部220に位置する場合、移動部材210は、付勢部材240によって付勢されつつ、全体的に径方向の外側へ突出する。これにより、外側補助部214の径方向の外側の一部は、貫通孔230を貫通して、第2のハウジング60の外面よりも外側へ突出する。このため、術者は、主部材211が基準位置に配置されていることを容易に認識できる。
【0062】
図8に示すように、主部材211が、基準位置から移動していずれかの突出部59を超えると、主部材211は、第1の溝部58の突出部59および第2の突出部220とは異なる低い位置に配置される。これにより、移動部材210は、付勢部材240によって第1の対向面57側へ付勢されて、全体的に径方向の内側へ移動する。このため、外側補助部214の径方向の外側の部位は、第2のハウジング60の外面よりも外側へ突出しない位置に配置される。すなわち、外側補助部214の径方向の外側の部位は、第2のハウジング60の外面と略同じ高さに配置されるか、第2のハウジング60の外面よりも低く配置される。これより、術者は、第2のハウジング60および外管30が第1のハウジング50に対して回転し、主部材211が基準位置から移動したことを容易に認識できる。なお、外側補助部214の径方向の外側の部位は、主部材211が基準位置に配置される場合に、第2のハウジング60の外面と略同じ高さに配置され、主部材211が基準位置から移動した場合に、第2のハウジング60の外面よりも低く配置されてもよい。また、第1の溝部58は、基準位置に凹部59Bが形成されてもよい。これにより、主部材211が基準位置にある場合、外側補助部214の径方向の外側の部位は、第2のハウジング60の外面と略同じ高さ、または第2のハウジング60の外面よりも低く配置される。そして、主部材211が基準位置から移動した場合に、外側補助部214の径方向の外側の部位は、第2のハウジング60の外面よりも突出し、または第2のハウジング60の外面と略同じ高さに配置されてもよい。
【0063】
以上のように、第2実施形態に係る医療デバイス200において、第1の対向面57は、第1のハウジング50の外周面に形成され、第2の対向面65は、第2のハウジング60の内周面に形成され、第2のハウジング60は、第2の溝部66から径方向の外側へ延在して第2のハウジング60の外面へ貫通する貫通孔230が形成され、移動部材210は、貫通孔230に配置されて当該貫通孔230の内部を移動可能である補助部材212を有する。これにより、術者は、補助部材212を、視覚または触覚によって認識できる。このため、術者は、移動部材210が突出部59や凹部59Bを超えることを、容易に認識できる。第1の溝部58に、突出部59または凹部59Bが形成されていれば、術者は、補助部材212の貫通孔230における深さや貫通孔230からの突出量を、視覚または触覚によって容易に認識できる。
【0064】
また、医療デバイス200は、第2の溝部66に配置されて移動部材210を付勢する付勢部材240を有する。これにより、付勢部材240によって移動部材210を第1の溝部58に押し付けることができる。このため、移動部材210は、第1の溝部58の適切な位置に配置され、第1の溝部58に沿って移動しやすい。また、移動部材210は、付勢部材240により付勢されることで、第1の溝部58の深さに応じて第1のハウジング50の径方向へ移動する。このため、貫通孔230に配置される補助部材212の位置(深さや突出量)を、第1の溝部58の形状に応じて確実に変化させることができる。したがって、例えば、術者は、移動部材210が突出部59や凹部59Bを超えることを、容易かつ正確に認識できる。
【0065】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る医療デバイス300は、図9に示すように、制限ワイヤ310が設けられる点で、第1実施形態に係る医療デバイス10と異なる。なお、第1実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0066】
第1のハウジング50の第1の対向面57と、第2のハウジング60の第2の対向面65は、離れて配置される。制限ワイヤ310は、柔軟なワイヤであり、第1の連結部311および第2の連結部312を備えている。第1の連結部311は、第1の対向面57に連結され、第2の連結部312は、第2の対向面65に連結される。第1の連結部311および第2の連結部312が近接する初期状態において、制限ワイヤ310は弛んでいる。
【0067】
第2のハウジング60が第1のハウジング50に対して、基端側から見て時計回りまたは反時計回りに回転すると、制限ワイヤ310が弛みがなくなるまでは、第2のハウジング60は回転可能である。制限ワイヤ310が第1の対向面57に巻き付き、弛みがなくなると、第2のハウジング60は、第1のハウジング50に対してこれ以上回転することが制限される。
【0068】
以上のように、第3実施形態に係る医療デバイス300は、生体管腔内の物体を除去する医療デバイス300であって、回転可能である駆動シャフト20と、駆動シャフト20を回転可能に収容する外管30と、駆動シャフト20の先端部に連結されて物体を切削する切削部40と、駆動シャフト20を回転可能に収容する第1のハウジング50と、外管30の基端部に連結されて駆動シャフト20の軸心を中心に第1のハウジング50に対して回転可能である第2のハウジング60と、第1のハウジング50に連結される第1の連結部311および第2のハウジング60に連結される第2の連結部312を有する柔軟な制限ワイヤ310と、を有し、制限ワイヤ310は、第2のハウジング60が第1のハウジング50に対して所定の回転量を超えて回転することを制限する。
【0069】
上記のように構成した医療デバイス300は、制限ワイヤ310の弛みがなくなるまでは、第2のハウジング60が第1のハウジング50に対して回転可能である。そして、制限ワイヤ310の弛みがなくなることで、第2のハウジング60は第1のハウジング50に対する回転を制限される。このため、駆動シャフト20を回転可能に収容する外管30の回転量を、所定の範囲に制限できる。このため、外管30が回転しすぎることによって、破損するまで捩れることを抑制できる。また、外管30が回転しすぎることによってガイドワイヤW等と絡まることを抑制できる。
【0070】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る医療デバイス400は、図10に示すように、移動部材410がナット形状であり、第1の溝部420がボルト形状である点で、第1実施形態に係る医療デバイス10と異なる。なお、第1実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0071】
第1の溝部420は、第1のハウジング50の第1の対向面57に形成されるボルト形状のネジ溝である。移動部材410は、第1の溝部420と螺合するナットである。移動部材410は、例えば六角ナットである。第2のハウジング60の第2の対向面65は、移動部材410が軸心Xに沿って摺動可能な第2の溝部430が形成される。第2の溝部430は、6面で形成される移動部材410の外面と当接して移動部材410の回転を制限する当接部431が形成される。当接部431は、移動部材410の軸心Xに沿う方向の移動を制限しない。
【0072】
第2のハウジング60が第1のハウジング50に対して回転すると、第2のハウジング60に形成される第2の溝部430の当接部431が、第1の溝部420に収容された移動部材410に当接する。これにより、移動部材410は当接部431により押されて、第1の溝部420に沿って周方向へ移動する。また、移動部材410は、第2の溝部430に沿って先端側または基端側へ移動する。第2のハウジング60および外管30は、移動部材410が、第1の溝部420の延在方向の端部または第2の溝部430の延在方向の端部へ到達するまで、第1のハウジング50に対して回転できる。移動部材410は、第1の溝部420の延在方向の端部または第2の溝部430の延在方向の端部へ到達すると、これ以上周方向へ移動できない。これにより、第2のハウジング60は、これ以上第1のハウジング50に対して回転することが制限される。
【0073】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、医療デバイス10、200、300、400が挿入される生体管腔は、血管に限定されず、例えば、脈管、尿管、胆管、卵管、肝管等であってもよい。したがって、切削する物体は、血栓でなくてもよい。
【0074】
また、第1の溝部58および/または第2の溝部66の幅および/または深さは、溝部の延在方向の端部へ向かって小さくなってもよい。これにより、移動部材70が第1の溝部58および/または第2の溝部66の延在方向の端部へ向かうほど、第1のハウジング50を第2のハウジング60に対して回転させる際の抵抗が大きくなる。このため、術者は、第1のハウジング50が第2のハウジング60に対してどの程度回転したかを、指や手の感覚によって容易に認識できる。また、第2実施形態のように、移動部材210が、貫通孔230に配置される補助部材212を有していれば、補助部材212の貫通孔230における位置(貫通孔230における深さや、貫通孔230からの突出量)により、回転の程度をより容易かつ正確に認識できる。
【0075】
また、上述の第1、第2実施形態では、螺旋状の第1の溝部58は、第1のハウジング50の外周面である第1の対向面57に形成され、第2の溝部66は、第2のハウジング60の内周面である第2の対向面65に形成される。しかしながら、第1の溝部58は第2の対向面65に形成され、第2の溝部66は第1の対向面57に形成されてもよい。また、第1、第2実施形態では、第1の対向面57は第1のハウジング50の外周面に形成され、第2の対向面65は第2のハウジング60の内周面に形成される。しかしながら、第1の対向面57は第1のハウジング50の内周面に形成され、第2の対向面65は第2のハウジング60の外周面に形成されてもよい。この場合、第2のハウジング60の第2の対向面65は、第1のハウジング50の内側に配置される。このため、第2のハウジング60の指で回転操作する部位は、第2の対向面65が形成される部位とは異なる部位に形成される。
【0076】
また、第2の実施形態において、移動部材70の主部材211および補助部材212は、一体的な部材として形成されてもよい。この場合、主部材211は、補助部材212に対して回転しない。
【0077】
また、第2の実施形態に適用される付勢部材240は、第2の溝部66ではなく、第1の溝部58に配置されて、移動部材70を第2の対向面65へ向かって付勢してもよい。また、付勢部材240は、第1の溝部58および第2の溝部66の両方に配置されてもよい。また、付勢部材240は、移動部材210に連結されて、移動部材210とともに移動可能であってもよい。また、付勢部材240は、第1、第4の実施形態に適用されてもよい。
【0078】
また、医療デバイス10、200、300、400と駆動デバイス100は、一体的に構成されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10、200、300、400 医療デバイス
20 駆動シャフト
30 外管
40 切削部
50 第1のハウジング
51A 内部空間
52 内側接続部
57 第1の対向面
58、420 第1の溝部
58A、58B 第1の溝部の端部
59 突出部
60 第2のハウジング
62 外側接続部
65 第2の対向面
66、430 第2の溝部
67、431 当接部
67A 第1の当接部
67B 第2の当接部
67C、67D 当接部の端部
70、210、410 移動部材
211 主部材
212 補助部材
220 第2の突出部
230 貫通孔
240 付勢部材
310 制限ワイヤ
X 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11