(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】保守点検時の熱中症対策支援システムおよび熱中症対策支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20230911BHJP
G16H 50/30 20180101ALI20230911BHJP
【FI】
G06Q10/20
G16H50/30
(21)【出願番号】P 2022025476
(22)【出願日】2022-02-22
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】平井 紅加
【審査官】庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-027893(JP,A)
【文献】特開2018-130531(JP,A)
【文献】特開2017-120600(JP,A)
【文献】特開2019-073810(JP,A)
【文献】特開2021-039637(JP,A)
【文献】特開2019-185386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G16H 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守点検を行う第1作業者の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記第1作業者が保守点検作業を行う作業空間の環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記環境情報取得部で取得した情報に基づいて前記第1作業者の熱中症のなり易さを判断するとともに、前記生体情報取得部で取得した情報に基づいて前記第1作業者が熱中症の疑いがあるか否かを判断する判断部と、
前記判断部による前記第1作業者の熱中症のなり易さの判断結果のレベルに応じた熱中症対策のための報知情報、および前記第1作業者が熱中症の疑いがあるか否かの判断結果に基づく熱中症対策のための報知情報を出力する報知情報処理部と
を備えた、保守点検時の熱中症対策支援システム。
【請求項2】
前記報知情報処理部は、前記判断部により前記第1作業者が熱中症の疑いがあると判断されると、前記第1作業者に関する情報の通知先として予め設定された通知先の端末、および前記第1作業者の周辺にいる第2作業者が携帯する作業者端末に、前記第1作業者が熱中症の疑いがあることを通知する、請求項1に記載の保守点検時の熱中症対策支援システム。
【請求項3】
前記報知情報処理部は、前記第1作業者が熱中症になりやすい状態であると判断したときに、前記第1作業者が携帯する作業者端末に休憩促進メッセージを出力し、
前記保守点検作業を行う作業空間内に設置されたブザー鳴動部に接続され、前記判断部により前記第1作業者が熱中症の疑いがあると判断されたとき、または、前記報知情報処理部が前記休憩促進メッセージを出力したにも関わらず前記第1作業者が休憩をとらなかった回数が所定値を超えたときに、前記ブザー鳴動部にブザーを鳴動させるブザー鳴動処理部をさらに備える、請求項1または2に記載の保守点検時の熱中症対策支援システム。
【請求項4】
保守点検の作業項目ごとの作業負荷の度合いを示す作業負荷値を算出する作業負荷値算出部と、
保守点検の作業項目ごとの実行順序、および前記作業負荷値算出部で算出された前記作業項目ごとの作業負荷値を含む、保守点検作業を支援するための支援シナリオ情報を生成する支援情報生成部と、
前記支援情報生成部で生成された支援シナリオ情報で示される作業項目の実行順序と、保守点検の進捗状況とに基づいて、所定のタイミングで次に実施すべき作業項目に関する報知情報を出力する作業支援処理を実行し、前記生体情報取得部で取得した情報に基づいて前記第1作業者の体調が不調になったと判断すると、前記支援シナリオ情報内の作業項目ごとの実行順序を、前記作業負荷値が小さい順に並べ替えて前記作業支援処理を実行する支援情報処理部をさらに備える、請求項1~3いずれか1項に記載の保守点検時の熱中症対策支援システム。
【請求項5】
前記第1作業者の識別情報と、前記第1作業者と同一建物の同一設備において共同で保守点検作業を行う第3作業者の識別情報とを紐づけた共同作業者の情報を設定する設定部と、
前記報知情報処理部は、前記判断部により前記第1作業者が熱中症の疑いがあると判断されると、前記設定部で設定された共同作業者の情報に基づいて、前記第1作業者の共同作業者として前記第3作業者を特定し、前記第3作業者が携帯する携帯端末に、前記第1作業者が熱中症の疑いがあることを通知する情報を送信する、請求項1~4いずれか1項に記載の保守点検時の熱中症対策支援システム。
【請求項6】
保守点検時の熱中症対策を支援するシステムを構成する装置が、
保守点検を行う第1作業者の生体情報を取得し、
前記第1作業者が保守点検作業を行う作業空間の環境情報を取得し、
取得した環境情報に基づいて前記第1作業者の熱中症のなり易さを判断するとともに、取得した生体情報に基づいて前記第1作業者が熱中症の疑いがあるか否かを判断し、
前記第1作業者の熱中症のなり易さの判断結果のレベルに応じた熱中症対策のための報知情報、および前記第1作業者が熱中症の疑いがあるか否かの判断結果に基づく熱中症対策のための報知情報を出力する、保守点検時の熱中症対策支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、保守点検時の熱中症対策支援システムおよび熱中症対策支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇降機やエスカレータの保守点検作業は、閉鎖された空間の中で行う項目が多数ある。このような空間は夏場には気温が高温になるため、作業者は熱中症予防のための対策をとって保守点検作業を行う必要がある。
【0003】
作業者の熱中症対策を支援するための技術として、作業空間の環境状態に応じて作業者の熱中症のなり易さを判断し、判断に基づいて警告を発するシステムがある。このシステムを利用することにより、作業者は熱中症予防のための適切な行動をとることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/150486
【文献】特開2007-249778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱中症のなり易さは作業空間の環境状況のみならず、作業者の体調も大きく影響する。
しかし、上述したシステムでは熱中症のなり易さの判断に作業者の体調は考慮されておらず、高い精度での熱中症予防のための対策支援を行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、保守点検の作業者に対し、高い精度で熱中症対策のための支援を行うことが可能な、保守点検時の熱中症対策支援システムおよび熱中症対策支援方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための実施形態によれば保守点検時の熱中症対策支援システムは、生体情報取得部と環境情報取得部と判断部と報知情報処理部とを備える。生体情報取得部は、保守点検を行う作業者の生体情報を取得する。環境情報取得部は、作業者が保守点検作業を行う作業空間の環境情報を取得する。判断部は、取得した情報に基づいて作業者の熱中症のなり易さを判断するとともに、作業者が熱中症の疑いがあるか否かを判断する。報知情報処理部は、判断部による作業者の熱中症のなり易さの判断結果のレベルに応じた熱中症対策のための報知情報、および作業者が熱中症の疑いがあるか否かの判断結果に基づく熱中症対策のための報知情報を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1~第5実施形態による保守点検時の熱中症対策支援システムの機能を備えた、保守点検の作業支援システムの構成を示す全体図。
【
図2】第1実施形態による作業支援システム内のセンターシステムを示すブロック図。
【
図3】第1~第5実施形態による作業支援システムが実行する事前処理の流れを示すフローチャート。
【
図4A】第1実施形態による作業支援システムが作業空間の環境情報に基づいて実行する熱中症対策支援処理の流れを示すフローチャート。
【
図4B】第1実施形態による作業支援システムが作業空間の環境情報に基づいて実行する熱中症対策支援処理の流れを示すフローチャート。
【
図5A】第1実施形態による作業支援システムが作業者の体調監視結果に基づいて実行する熱中症対策支援処理の流れを示すフローチャート。
【
図5B】第1実施形態による作業支援システムが作業者の体調監視結果に基づいて実行する熱中症対策支援処理の流れを示すフローチャート。
【
図6】第2実施形態による作業支援システム内の第2作業者端末、第3作業者端末、およびセンターシステムの構成を示すブロック図。
【
図7】第2実施形態による作業支援システムが作業を中止した後に実行する処理の流れを示すフローチャート。
【
図8】第3実施形態による作業支援システム内の遠隔監視装置、昇降機、およびセンターシステムの構成を示すブロック図。
【
図9】第3実施形態による作業支援システムが、作業者の体調不良をブザー鳴動で報知する場合の処理の流れを示すフローチャート。
【
図10】第4実施形態による作業支援システム内のセンターシステムの構成を示すブロック図。
【
図11】(a)、(b)、および(c)は、第4実施形態による作業支援システム内で利用する属性区分マスタの例。
【
図12】第4実施形態による作業支援システムが支援シナリオ情報を生成する処理の流れを示すフローチャート。
【
図13】第4実施形態による作業支援システムが生成した支援シナリオ情報の一例。
【
図14】第4実施形態による作業支援システムが、作業者の体調が不調になったときに実行する作業項目並べ替え処理の流れを示すフローチャート。
【
図15】第5実施形態による作業支援システム内の第4作業者端末および第2計測装置の構成を示すブロック図。
【
図16】第5実施形態による作業支援システム内のセンターシステムの構成を示すブロック図。
【
図17A】第4実施形態による作業支援システムが、作業者の体調が不調になったときに共同作業者に報知し、共同作業者の体調も併せて監視する処理の流れを示すフローチャート。
【
図17B】第4実施形態による作業支援システムが、作業者の体調が不調になったときに共同作業者に報知し、共同作業者の体調も併せて監視する処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態として、保守点検時の熱中症対策支援システムの機能を備えた、保守点検の作業支援システムについて説明する。
【0010】
《第1実施形態》
〈第1実施形態による保守点検時の作業支援システムの構成〉
本発明の第1実施形態による保守点検の作業支援システムの構成について、
図1を参照して説明する。
【0011】
本実施形態による保守点検時の作業支援システム1Aは、所定の建物内のエレベータやエスカレータの保守点検を行う第1作業者である作業者Xが携帯する第1計測装置10および第1作業者端末20と、建物から遠隔地にある保守センター等に設置されるセンターシステム30Aとを備える。第1計測装置10と第1作業者端末20とは通信ネットワーク101を介して無線接続され、第1作業者端末20とセンターシステム30Aとは通信ネットワーク102を介して無線接続されている。
【0012】
第1計測装置10は、生体情報取得部11と、環境情報取得部12と、計測-第1端末通信部13と、監視部14とを有する。生体情報取得部11は、作業者Xの生体情報として、脈拍を測定する脈拍測定部111と、体温を測定する体温測定部112とを有する。環境情報取得部12は、作業者Xが保守点検を行う作業空間の環境情報として、温度を測定する温度測定部121と、湿度を測定する湿度測定部122とを有する。計測-第1端末通信部13は、通信ネットワーク101を介して第1作業者端末20との通信を行う。監視部14は、脈拍測定部111、体温測定部112、温度測定部121、および湿度測定部122で測定された値に基づいて、作業者Xの体調監視処理および作業現場の環境監視処理を行う。
【0013】
第1作業者端末20は、第1端末-計測通信部21と、第1端末-センター通信部22と、第1端末測定結果記憶部23と、第1端末入力部24と、第1端末表示部25と、第1端末音声出力部26と、第1端末CPU27とを有する。第1端末-計測通信部21は、通信ネットワーク101を介して第1計測装置10との通信を行う。第1端末-センター通信部22は、通信ネットワーク102を介してセンターシステム30Aとの通信を行う。第1端末測定結果記憶部23は、第1計測装置10から取得した各種測定結果を一時記憶する。第1端末入力部24は、作業者Xによる操作情報を入力する。第1端末表示部25は、モニタで構成され、第1端末CPU27からの指示に基づいて表示情報を出力する。第1端末音声出力部26は、スピーカで構成され、第1端末CPU27からの指示に基づいて音声情報を出力する。
【0014】
第1端末CPU27は、事前処理部271と支援情報処理部272とを有する。事前処理部271は、保守点検作業前に所定の事前処理を実行する。事前処理の詳細内容については後述する。支援情報処理部272は、保守点検作業に関する作業支援処理および熱中症対策支援処理を実行する。
【0015】
センターシステム30Aの構成について、
図2を参照して説明する。センターシステム30Aは、センター-第1端末通信部31と、平常時情報記憶部32と、センター表示部33と、センターCPU34Aとを有する。センター-第1端末通信部31は、通信ネットワーク102を介して第1作業者端末20との通信を行う。平常時情報記憶部32は、作業員の平常時の生体情報を記憶する。センター表示部33は、モニタで構成され、センターCPU34Aからの指示に基づいて表示情報を出力する。
【0016】
センターCPU34Aは、平常時情報取得部341と、支援情報生成部342と、判断部343と、報知情報処理部344とを有する。平常時情報取得部341は、第1計測装置10から第1作業者端末20を介して取得した作業員の平常時の生体情報を取得し、平常時情報記憶部32に記憶させる。
【0017】
支援情報生成部342は、保守点検の作業項目、その実行順序、作業の進捗状況に応じて出力する音声メッセージの情報、および音声メッセージごとの出力タイミングの情報等を含む支援シナリオ情報を生成し、センター-第1端末通信部31から第1作業者端末20に送信させる。
【0018】
判断部343は、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:暑さ指数)と作業現場の環境情報とに基づいて作業者Xの熱中症のなり易さのレベルを判断するとともに、平常時情報記憶部32に記憶された平常時情報と保守点検作業中の作業者Xの生体情報とに基づいて作業者Xが熱中症の疑いがあるか否かを判断する。WBGTは、人間の熱バランスに影響の大きい気温、湿度、および輻射熱の、3つを取り入れた温度の指標である。報知情報処理部344は、判断部343が注意または警告が必要と判断すると、該当する報知情報を生成し、センター表示部33に表示させるとともに、センター-第1端末通信部31から第1作業者端末20に送信させる。
【0019】
〈第1実施形態による作業支援システムの動作〉
次に、作業者Xが昇降機やエスカレータの保守点検作業を行う際に、作業支援システム1Aが実行する動作について、
図3、
図4A、
図4B、
図5A、および
図5Bのフローチャートを参照して説明する。
【0020】
まず作業支援システム1Aが、保守点検作業の前に事前処理として、作業者Xの平常時の生体情報を登録する処理を実行する。作業支援システム1Aが実行する事前処理について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0021】
まず作業者Xが着席した状態で第1計測装置10を身体に装着し(S1-1)、第1計測装置10と第1作業者端末20とを通信ネットワーク101を介して通信接続させる(S1-2)。
【0022】
次に、第1計測装置10の脈拍測定部111が作業者Xの平常時の生体情報として、1分間の脈拍を測定する(S1-3)とともに、体温測定部112が体温を測定する(S1-4)。次に、計測-第1端末通信部13が、作業者Xの脈拍および体温の測定結果を作業者Xの平常時生体情報として第1作業者端末20に送信する。第1作業者端末20では、第1計測装置10から送信された平常時生体情報を事前処理部271が取得する。事前処理部271は、取得した平常時生体情報を第1端末測定結果記憶部23に一時記憶させるとともに、第1端末-センター通信部22からセンターシステム30Aに送信させる(S1-5)。
【0023】
センターシステム30Aでは、第1作業者端末20から取得した平常時生体情報を平常時情報取得部341が取得し、平常時情報記憶部32に記憶させる(S1-6)。以上で、事前処理を終了する。
【0024】
保守点検作業を行う際には、センターシステム30Aの支援情報生成部342が、実行対象の保守点検作業の手順を含む支援シナリオ情報を生成し、第1作業者端末20に送信する。第1作業者端末20では、センターシステム30Aから送信された支援シナリオ情報を支援情報処理部272が取得する。
【0025】
支援情報処理部272は、支援シナリオ情報を取得すると作業支援処理を開始し、支援シナリオ情報で示される作業項目の実行順序と、保守点検作業の進捗状況とに基づいて、所定のタイミングで次に実施すべき作業項目に関する報知情報を表示させるとともに、音声で出力させる。具体的には、支援情報処理部272は、取得した当該支援シナリオ情報内の保守点検作業の手順を示す表示情報を第1端末表示部25に表示させる。そして作業者Xが所定項目の作業を開始する際に、当該作業の開始を通知する操作を行うと、対応する操作情報が第1端末入力部24から入力され、支援情報処理部272が、該当する作業が開始したことを認識する。支援情報処理部272は、所定の作業が開始したことを認識すると、当該作業が実行中であることを第1端末表示部25に明示させる。また作業者Xが所定項目の作業を終了した際に、当該作業の終了を通知する操作を行うと、対応する操作情報が第1端末入力部24から入力され、支援情報処理部272が、当該作業が終了したことを認識する。支援情報処理部272は、所定の作業が終了したことを認識すると、支援シナリオ情報に基づいて次に実施すべき作業の項目特定し、第1端末表示部25に明示させる。
【0026】
また支援情報処理部272は、作業支援処理として、取得した支援シナリオ情報に基づいて音声アシスト用のアプリケーションを用いて、支援情報処理部272で所定の作業が開始したことが認識されたタイミング、および所定の作業が終了したことが認識されたタイミングで、対応する音声メッセージ情報を第1端末音声出力部26から出力させる。例えば、所定の作業が終了したことが認識されたタイミングで、次の作業項目に関する音声メッセージ情報を出力させる。
【0027】
また支援情報処理部272は、支援シナリオ情報を取得すると熱中症対策支援処理を開始するために、当該支援シナリオ情報を取得したことを第1計測装置10に通知する。作業支援システム1Aが作業空間の環境情報に基づいて実行する熱中症対策支援処理について、
図4Aおよび
図4Bのフローチャートを参照して説明する。
【0028】
第1計測装置10では、支援シナリオ情報取得の通知を受信すると(S2-1)、所定時間間隔で温度測定部121が温度を測定し、湿度測定部122が湿度を測定する(S2-2)。
【0029】
計測-第1端末通信部13は、温度測定部121で測定された温度情報および湿度測定部122で測定された湿度情報を、作業現場の環境情報として第1作業者端末20に送信する。第1計測装置10から送信された環境情報を事前処理部271が取得し、センターシステム30Aに送信する(S2-3)。センターシステム30Aでは、第1作業者端末20から取得した環境情報を判断部343が取得する。
【0030】
次に、判断部343がWBGTに基づいて、取得した作業現場の環境情報から、保守作業者Xへの注意または警告の要否を判断する。
【0031】
具体的には判断部343は、作業現場が、WBGT 31℃以上の環境であると判断すると(S 2-4の「YES」)、作業者Xが熱中症になる危険度が非常に高いことにより作業中止を警告する必要があると判断する(S2-5)。報知情報処理部344は、判断部343の判断結果に基づいて作業中止を警告するための報知情報を生成し、センター表示部33に表示させるとともに、第1作業者端末20に送信する。第1作業者端末20では、センターシステム30Aから送信された報知情報を支援情報処理部272が取得し、第1端末表示部25に表示させる(S2-6)。
【0032】
また判断部343は、作業現場が、WBGT 28℃以上31℃未満の環境であると判断すると(S2-4の「NO」→S2-7の「YES」)、作業者Xが熱中症になる危険度が高いことにより作業者Xにレベル「高」の注意喚起をする必要があると判断する。報知情報処理部344は、判断部343の判断結果に基づいて作業者Xにレベル「高」の注意喚起をするための報知情報を生成し、センター表示部33に表示させるとともに、第1作業者端末20に送信する。第1作業者端末20では、センターシステム30Aから送信された報知情報を支援情報処理部272が取得する。
【0033】
支援情報処理部272は、取得した報知情報に基づいて支援シナリオ情報に、各項目の作業が終了したタイミングおよび各項目の作業開始前のタイミングで、休憩促進メッセージを出力させる情報を挿入する(S2-8、S2-9)。また支援情報処理部272は、熱中症注意メッセージの表示情報を生成し、第1端末表示部25に表示させる(S2-10)。
【0034】
また支援情報処理部272は、取得した支援シナリオ情報の項目に部品交換作業が含まれているか否かを判断する(S2-11)。ここで、生成した支援シナリオ情報の項目に部品交換作業が含まれていないと判断されたとき(S2-11の「NO」)には、支援情報処理部272は、作業工数が1時間以上の作業が含まれているか否かをさらに判断する(S2-12)。ステップS2-11またはS2-12で該当する作業が含まれていると判断すると(S2-11の「YES」またはS2-12の「YES」)、その作業は中断しにくい作業であると判断し(S2-13)、当該作業の開始前のタイミングで、休憩促進メッセージを強調して出力させる情報を挿入する(S2-14)。
【0035】
また判断部343は、作業現場が、WBGT 25℃以上28℃未満の環境であると判断すると(S2-7の「NO」→S2-15の「YES」)、作業者Xが熱中症になる危険度がやや高いことにより作業者Xにレベル「中」の注意喚起をする必要があると判断する。この場合、上述したステップS2-9~S2-14の処理が実行される。
【0036】
また判断部343は、作業現場が、WBGT 21℃以上25℃未満の環境であると判断すると(S2-16の「YES」)、作業者Xが熱中症になるリスクが若干あることにより作業者Xにレベル「低」の注意喚起をする必要があると判断する。この場合、上述したステップS2-10~S2-14の処理が実行される。このようにステップS2-2~S2-16の処理が実行されることにより、作業現場の環境から判断される作業者の熱中症のなり易さのレベルに応じた報知情報が、適切なタイミングで出力される。
【0037】
また判断部343は、作業現場が、21℃未満の環境であると判断すると(S2-16の「NO」→S2-17の「YES」)、作業者Xが熱中症になるリスクは低いと判断する(S2-18)。この場合、作業者Xへの注意喚起は行わないと判断し(S2-19)、当該判断結果を含む報知情報を生成し、センター表示部33に表示させるとともに、第1作業者端末20に送信する。第1作業者端末20では、センターシステム30Aから送信された報知情報を取得すると、支援情報処理部272が当該情報を第1計測装置10に送信する。
【0038】
第1計測装置10では、第1作業者端末20から送信された報知情報を監視部14が取得し、所定時間間隔で脈拍測定部111および体温測定部112で測定された値に基づいて、作業者Xの体調監視処理を開始する。監視部14による体調監視結果に基づいて作業支援システム1Aが実行する作業者Xの熱中症対策支援処理について、
図5Aおよび
図5Bのフローチャートを参照して説明する。
【0039】
まず、監視部14は、脈拍測定部111で測定された作業者Xの1分間ごとの脈拍数を、作業者Xの心拍数として取得する(S3-1)。次に監視部14は、取得した作業者Xの1分間の心拍数が数分間(例えば5分間)継続して、「180から作業者Xの年齢を引いた値」を超えるか否かを判断する(S3-2)。超えていなければ(S3-2の「NO」)、監視部14はステップS3-1に戻り、作業者Xの心拍数の監視を継続する。
【0040】
監視部14は、作業者Xの1分間の心拍数が所定期間継続して、「180から作業者Xの年齢を引いた値」を超えると判断すると(S3-2の「YES」)、休憩促進メッセージを出力する必要があると判断する。監視部14は、当該判断に基づいて、休憩促進出力要求を第1作業者端末20に送信する。第1作業者端末20は、第1計測装置10から送信された休憩促進出力要求を支援情報処理部272が取得する。
【0041】
支援情報処理部272は、取得した休憩促進出力要求に基づいて、休憩促進メッセージの出力準備を行う(S3-3)。そして支援情報処理部272は、現在実行中の作業が終了したタイミングで、休憩促進メッセージの出力を開始する(S3-4)。このとき、支援情報処理部272は、休憩促進メッセージを5回連続して出力させる(S3-5)。
【0042】
支援情報処理部272が休憩促進メッセージを5回出力させている間に、利用者Xがこの休憩促進メッセージに応答する操作、つまり休憩をとる意思を示す操作を行うと、当該操作情報が第1端末入力部24から入力される。
【0043】
休憩促進メッセージに対する応答操作の情報が入力されると(S3-6の「YES」)、支援情報処理部272は、休憩促進メッセージの出力および作業支援処理による次に実施すべき作業項目に関する音声メッセージの出力を停止する(S3-7)。この間、作業者Xは休憩する。
【0044】
次に、監視部14が、作業者Xの休憩開始から1分経過後から脈拍測定部111による作業者Xの心拍数の取得を開始し、取得した作業者Xの1分間の心拍数が数分間(例えば5分間)継続して、120を超えるか否かを判断する(S3-8、S3-9)。
【0045】
監視部14は、作業者Xの1分間の心拍数が数分間継続して120を超えると判断すると、作業者Xが熱中症の疑いがあると判断し(S3-10)、作業中止させる必要があると判断する。監視部14は、作業中止させる必要があると判断すると、作業中止出力要求を第1作業者端末20に送信する。第1作業者端末20は、第1計測装置10から送信された作業中止出力要求を支援情報処理部272が取得する。
【0046】
支援情報処理部272は、取得した作業中止出力要求に基づいて、作業中止メッセージを5回連続して出力させる(S3-11)。
【0047】
支援情報処理部272が作業中止メッセージを5回出力させている間に、利用者Xがこの作業中止メッセージに応答する操作、つまり作業を中止する意思を示す操作を行うと、当該操作情報が第1端末入力部24から入力される。作業中止メッセージに対する応答操作の情報が入力されると(S3-12の「YES」)、支援情報処理部272は、作業者Xの本日の保守点検作業は中止すると判断し、当該判断結果をセンターシステム30Aに送信して、処理を終了する(S3-13)。
【0048】
ステップS3-9において、取得した作業者Xの1分間の心拍数が120を超えないと判断すると(S3-9の「NO」)、監視部14は、体温測定部112による作業者Xの体温の測定結果を取得し(S3-14)、第1作業者端末20を介してセンターシステム30Aに送信する(S3-15)。
【0049】
センターシステム30Aでは、第1計測装置10から送信された作業者Xの体温の測定結果を判断部343が取得する。判断部343は、取得した作業者Xの体温の測定結果と、平常時情報記憶部32に記憶された作業者Xの平常時生体情報内の体温の情報とを比較する(S3-16)。判断部343は、測定結果の体温と平常時の体温との差分が所定値以下であれば、これらは「ほぼ同値である」と判断する。
【0050】
比較の結果、取得した体温の測定結果が平常時の体温の情報とほぼ同値である場合には(S3-17の「YES」)、判断部343は、作業再開前に積極的な水分補給を促す水分補給促進メッセージを出力すると判断する。判断部343は、作業再開前に水分補給促進メッセージを出力すると判断すると、水分補給促進出力要求を生成し、センター表示部33に表示させるとともに、第1作業者端末20に送信する。第1作業者端末20は、センターシステム30Aから送信された水分補給促進出力要求を支援情報処理部272が取得する。
【0051】
支援情報処理部272は、取得した水分補給促進要求に基づいて、水分補給促進メッセージを第1端末表示部25に出力させ(S3-18)、その後、作業支援処理により、次に実施すべき作業項目に関する音声メッセージの出力を再開する(S3-19)。
【0052】
また、ステップS3-6において、出力した休憩促進メッセージに対する応答操作の情報が入力されなかったときには(S3-6の「NO」)、支援情報処理部272は作業者Xが意識不明の疑いがあると判断し(S3-20)、発報要求をセンターシステム30Aに送信する。
【0053】
センターシステム30Aは、第1作業者端末20から送信された発報要求を報知情報処理部344が取得し、センター表示部33に、作業者Xが意識不明の疑いがあることを報知するメッセージを表示させる(S3-21)。センターシステム30Aの管理者は、表示されたメッセージを認識することで、作業者Xの救助に向かうことができる。また、第1作業者端末20が発報要求をセンターシステム30Aに送信したことで、第1作業者端末20およびセンターシステム30Aは、作業者Xの本日の保守点検作業は中止すると判断する(S3-13)。
【0054】
また、ステップS3-12において、作業中止メッセージに対する応答操作の情報が入力されなかったときにも(S3-12の「NO」)、ステップS3-20に移行して発報を行い、保守点検作業を中止すると判断する。
【0055】
上述したステップS2-2~2-20の処理、およびS3-1~3-21の処理は、作業員Xによる保守点検作業中、繰り返し実行される。
【0056】
以上の第1実施形態によれば、保守点検の作業現場の環境および作業者の体調に基づく作業者の熱中症のなり易さのレベルに応じて設定された、熱中症対策のための報知情報を適切なタイミングで出力することで、適切に作業員に対する熱中症対策を実施することができる。また作業者が熱中症の疑いがあるか否かを適切に判断し、熱中症の疑いがあると判断した場合にはセンターシステムで発報処理を行うことで、早期に救助活動を行うことができる。
【0057】
《第2実施形態》
〈第2実施形態による保守点検時の作業支援システムの構成〉
本発明の第2実施形態による保守点検時の作業支援システム1Bの構成は、通信ネットワーク102に第2作業者端末40および第3作業者端末50が接続され、センターシステム30Aに替えてセンターシステム30Bを備えることを除いては、第1実施形態で説明した作業支援システム1Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0058】
第2作業者端末40、第3作業者端末50、およびセンターシステム30Bの構成について、
図6を参照して説明する。
【0059】
第2作業者端末40は、予め作業者Xに関する情報の通知先として設定された作業者Xの勤務先の責任者、例えば所属している営業所の所長が携帯する端末であり、第2端末-センター通信部41と、第2端末表示部42とを有する。第2端末-センター通信部41は、通信ネットワーク102を介してセンターシステム30Bとの通信を行う。第2端末表示部42は、モニタで構成され、第2端末-センター通信部41を介してセンターシステム30Bから取得した情報を表示する。
【0060】
第3作業者端末50は、作業者Xが作業している地点周辺にいる第2作業者である作業者Yが携帯する端末であり、第3端末-センター通信部51と、第3端末表示部52とを有する。第3端末-センター通信部51は、通信ネットワーク102を介してセンターシステム30Bとの通信を行う。第3端末表示部52は、モニタで構成され、第3端末-センター通信部51を介してセンターシステム30Bから取得した情報を表示する。
【0061】
本実施形態においては、説明を簡略化するため、作業者X以外の作業者が携帯する端末として第2作業者端末40および第3作業者端末50のみが通信ネットワーク102に接続されている場合を示しているが、これには限定されず、さらに多くの作業員の作業者端末が通信ネットワーク102に接続されていてもよい。
【0062】
センターシステム30Bは、センターCPU34Bが通知先検索部345を有する他は、第1実施形態で説明したセンターシステム30Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0063】
通知先検索部345は、第1計測装置10で作業者Xが熱中症の疑いがあると判断されたときに、作業者Xがいる地点周辺にいる他の作業者および作業者Xの所属する営業所を、通知先として検索する。報知情報処理部344は、通知先検索部345が検索した通知先に対応する携帯端末に、作業者Xが熱中症の疑いがあることを通知する情報および巡回を指示する情報を送信する。
【0064】
〈第2実施形態による作業支援システムの動作〉
次に、第2実施形態による作業支援システム1Bの動作について説明する。本実施形態において、作業者Xの平常時生体情報をセンターシステム30Bに記憶させる処理、および保守点検作業時に実行するステップS2-1~2-20の処理、およびS3-1~3-21の処理は、第1実施形態で説明した処理と同様あるため、詳細な説明は省略する。
【0065】
本実施形態において、ステップS3-13で作業者Xの本日の作業を中止した後に実行する処理について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0066】
第1作業者端末20の支援情報処理部272が作業者Xの本日の作業を中止する(S3-13)と、センターシステム30Bに作業者Xが熱中症の疑いがあることを通知する(S3-22)。センターシステム30Bでは、第1作業者端末20から作業者Xの熱中症の疑いがある旨の通知を受信すると(S3-23)、通知先検索部345が、作業者Xの作業現場周辺にいる他の作業者および作業者Xの所属営業所を、通知先として検索する(S3-24)。
【0067】
検索の結果、作業者Xの作業現場周辺にいる他の作業者Yを特定できたときには(S3-25の「YES」)、報知情報処理部344が、作業者Yが携帯する第3作業者端末50に、作業者Xの作業現場の巡回を指示するメッセージを送信する(S3-26)。第3作業者端末50では、センターシステム30Bから送信されたメッセージの情報を第3端末-センター通信部51を介して受信し、第3端末表示部52に表示させる。
【0068】
その後、報知情報処理部344が、作業者Xの所属営業所の所長が携帯する第2作業者端末40に、作業者Xが熱中症の疑いがあることを通知するとともに周辺の作業者Yに現場巡回を指示したことを通知するメッセージを送信する(S3-27)。第2作業者端末40では、センターシステム30Bから送信されたメッセージの情報を第2端末-センター通信部41を介して受信し、第2端末表示部42に表示させる。
【0069】
ステップS3-25において、作業者Xの作業現場周辺にいる他の作業者を特定できなかったときには(S3-25の「NO」)、報知情報処理部344が、作業者Xの所属営業所の所長が携帯する第2作業者端末40に、作業者Xの作業現場の巡回を指示するメッセージを送信する(S3-28)。第2作業者端末40では、センターシステム30Bから送信されたメッセージの情報を第2端末-センター通信部41を介して受信し、第2端末表示部42に表示させる。
【0070】
以上の第2実施形態によれば、保守点検の作業者が熱中症の疑いがあると判断したときに、当該判断の内容を周辺にいる他の作業者や、所属する営業所の所長に報知して巡回を指示することで、適切に作業員の救助活動を支援することができる。
【0071】
《第3実施形態》
〈第3実施形態による保守点検時の作業支援システムの構成〉
本発明の第3実施形態による保守点検時の作業支援システム1Cの構成は、通信ネットワーク102に遠隔監視装置60および昇降機70が接続され、センターシステム30Aに替えてセンターシステム30Cを備えることを除いては、第1実施形態で説明した作業支援システム1Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0072】
遠隔監視装置60、昇降機70、およびセンターシステム30Cの構成について、
図8を参照して説明する。
【0073】
遠隔監視装置60は、昇降機70を遠隔から監視する装置であり、遠隔-センター通信部61と、ブザー鳴動指示部62とを有する。遠隔-センター通信部61は、通信ネットワーク102を介してセンターシステム30Cとの通信を行う。ブザー鳴動指示部62は、センターシステム30Cから取得する要求に基づいて昇降機70にブザー鳴動指示を送信する。
【0074】
昇降機70は、作業者Xが保守点検作業を行う昇降機であり、昇降機制御部71と、ブザー鳴動部72とを有する。昇降機制御部71は、ブザー鳴動部72を含む昇降機70内の機器を制御する。ブザー鳴動部72は、保守点検作業を行う作業空間である昇降機70の昇降路内に設置され、昇降機制御部71の制御によりブザーを鳴動させる。
【0075】
本実施形態において第1作業者端末20の支援情報処理部272は、休憩促進メッセージを出力したにも関わらず作業者が休憩をとらずに休憩促進メッセージをスキップ操作した回数(休憩スキップ回数)を計測し、休憩スキップ回数が所定値を超えると、新たな報知情報を第1端末表示部25に表示させるとともに、センターシステム30Cに作業者Xの休憩スキップ回数が所定値を超えたことを通知する。また支援情報処理部272は、休憩スキップ回数が所定値を超えたと判断すると、新たな休憩促進メッセージを第1端末音声出力部26から出力させる。
【0076】
センターシステム30Cは、センターCPU34Cがブザー鳴動処理部346を有する他は、第1実施形態で説明したセンターシステム30Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0077】
ブザー鳴動処理部346は、第1計測装置10で作業者Xが熱中症の疑いがあると判断されたことが通知されたとき、または、第1作業者端末20から作業者Xの休憩スキップ回数が所定値を超えたことが通知されたときに、ブザー鳴動要求を遠隔監視装置60に送信する。
【0078】
〈第3実施形態による作業支援システムの動作〉
次に、第3実施形態による作業支援システム1Cの動作について、
図9のフローチャートを参照して説明する。本実施形態において、作業者Xの平常時生体情報をセンターシステム30Cに記憶させる処理、および保守点検作業時に実行するステップS2-1~2-20の処理、およびS3-1~3-6の処理は、第1実施形態で説明した処理と同様あるため、詳細な説明は省略する。
【0079】
ステップS3-6において休憩促進メッセージに対する応答操作の情報が入力されなかったとき(S3-6の「NO」)、またはステップS3-12において作業中止メッセージに対する応答操作の情報が入力されなかったとき(S3-12の「NO」)には、支援情報処理部272は、作業者Xが熱中症により意識不明の疑いがあると判断する(S3-29)。
【0080】
そして支援情報処理部272は、作業者Xが熱中症の疑いがある旨の報知情報をセンターシステム30Cに送信する(S3-30)。センターシステム30Cでは、第1作業者端末20から送信された報知情報を報知情報処理部344が取得し、ブザー鳴動処理部346がブザー鳴動要求を遠隔監視装置60に送信する(S3-31)。
【0081】
遠隔監視装置60では、センターシステム30Cから送信されたブザー鳴動要求を遠隔-センター通信部61を介してブザー鳴動指示部62が取得する。ブザー鳴動指示部62は、取得したブザー鳴動要求に基づいて、昇降機70にブザー鳴動指示を送信する(S3-32)。
【0082】
昇降機70では、遠隔監視装置60から送信されたブザー鳴動指示を昇降機制御部71が取得する。昇降機制御部71は、ブザー鳴動指示を取得すると、昇降機70のかご上またはビットに設置された点検スイッチが「点検中」を示す状態(ON状態)か否かを判断する(S3-33)。かご上またはビットに設置された点検スイッチが「点検中」を示す状態(ON状態)のときには(S3-33の「YES」)、昇降機制御部71は、かご上またはビットに他の作業者がいる可能性があると判断してブザー鳴動部72を起動後(S3-34)、ブザーを鳴動させて異常発生を報知する(S3-35)。
【0083】
ここで昇降機制御部71は、かご上またはビットの点検スイッチが「点検中」のままであれば(S3-36の「NO」)ブザーの鳴動を継続させる。また昇降機制御部71は、ブザーの鳴動中に点検スイッチが「通常運転」を示す状態(OFF状態)に切り替えられ(S3-36の「YES」)、昇降機70のかご戸およびホール戸がすべて閉まっている場合(S3-37)には、昇降路内に他の作業者がいないと判断してブザー鳴動を停止する(S3-38)。昇降機制御部71がブザーの鳴動を停止させると、ステップS3-13の処理に移行する。ブザーの鳴動中に点検スイッチが「通常運転」を示す状態(OFF状態)に切り替えられていても(S3-36の「YES」)、昇降機70のかご戸またはホール戸のいずれかが空いている場合(S3-37の「NO」)には、昇降機制御部71は、昇降路内および乗場に他の作業者がいる可能性があると判断して、ブザーの鳴動を継続させる。
【0084】
またステップS3-6において休憩促進メッセージに対する応答操作の情報が入力されると(S3-6の「YES」)、支援情報処理部272は、作業者Xが休憩をとったか否かを判断する(S3-29)。支援情報処理部272は、休憩促進メッセージが出力されてから作業者Xが次の作業開始の操作を行うまでの時間が所定値以上であれば作業者Xが休憩をとったと判断し、作業者Xが休憩促進メッセージに対してスキップ操作した場合には、作業者Xが休憩をとらなかったと判断する。ここで、作業者Xが休憩をとったと判断したときには(S3-39の「YES」)、支援情報処理部272は、ステップS3-7の処理に移行する。
【0085】
作業者Xが休憩をとらなかったと判断したときには(S3-39の「NO」)、支援情報処理部272は、作業者Xによる休憩促進メッセージに対するスキップ操作が所定回数繰り返されたか、例えば今回が4回目であるかを判断する(S3-40)。支援情報処理部272が、今回のスキップ操作が3回目以下であると判断したときには(S3-40の「NO」)、ステップS3-1の処理に移行する。
【0086】
支援情報処理部272が、今回のスキップ操作が4回目であると判断したときには(S3-40の「YES」)、支援情報処理部272が、「休憩をとっていない場合は一定時間昇降機のブザーが鳴動し続ける」旨のメッセージを第1端末音声出力部26から出力させる(S3-41)。このメッセージを出力したことにより作業者Xが休憩をとったと判断した場合、具体的には、次の作業を開始する操作を行うまでに所定時間以上経過したときには(S3-42の「YES」)、ステップS3-7の処理に移行する。また、当該メッセージを出力しても作業者Xが休憩をとらずに作業を開始する操作を行ったときには(S3-42の「NO」)、ステップS3-31に移行して昇降機70のブザーを鳴動させる。
【0087】
以上の第3実施形態によれば、作業者が熱中症で意識不明の疑いがあるときにブザーを鳴動させることで、他の作業員に対して異常事態の発生を報知して救助支援を行うことができる。また、作業者に休憩促進メッセージを出力したにも関わらず当該作業者が休憩をとらなかった回数が所定値を超えたときにもブザーを鳴動させることで、強制的に休憩をとらせて熱中症対策を行うことができる。
【0088】
《第4実施形態》
〈第4実施形態による保守点検時の作業支援システムの構成〉
本発明の第4実施形態による保守点検時の作業支援システム1Dの構成は、センターシステム30Aに替えてセンターシステム30Dを備えることを除いては、第1実施形態で説明した作業支援システム1Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。センターシステム30Dの構成について、
図10を参照して説明する。
【0089】
センターシステム30Dは、センターCPU34Dが作業負荷値算出部347を有する他は、第1実施形態で説明したセンターシステム30Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0090】
作業負荷値算出部347は、保守点検作業の作業項目ごとの作業者の作業負荷の度合いを示す作業負荷値を算出する。支援情報生成部342は、作業負荷値算出部347で算出された作業負荷値を付加した作業項目の情報に基づいて支援シナリオ情報を作成し、第1作業者端末20に送信する。
【0091】
本実施形態において第1作業者端末20の支援情報処理部272は、センターシステム30Dから取得した支援シナリオ情報の作業項目の実行順序を、当該支援シナリオ情報に含まれる作業負荷値に基づいて変更する機能を有する。
【0092】
〈第4実施形態による作業支援システムの動作〉
次に、第4実施形態による作業支援システム1Dの動作について説明する。本実施形態において、センターシステム30Dの作業負荷値算出部347は、保守点検作業における作業者の負荷に関する属性である「作業難易度」、「危険度」、および「作業工数」の度合いごとの出力区分を示す属性区分マスタ情報を保持する。出力区分とは、各属性について作業者の負荷の度合いに対応して出力される数値を示し、作業者の負荷が高い程、数値が大きくなる。
【0093】
属性区分マスタの具体例について、
図11を参照して説明する。
図11(a)は、保守点検作業の各作業項目に関する作業難易度ごとの出力区分を示す情報である。具体的には、若手作業者の技術力でも実施可能と認定される作業項目は作業難易度「低」であり、該当する作業項目に対する出力区分は「1」と設定されている。また、中堅作業者の技術力が必要な作業項目は作業難易度「中」であり、該当する作業項目に対する出力区分は「2」と設定されている。また、バテラン作業者の技術力が必要な作業項目は作業難易度「高」であり、該当する作業項目に対する出力区分は「3」と設定されている。
【0094】
また
図11(b)は、保守点検作業の各作業項目に関する危険度ごとの出力区分を示す情報である。具体的には、危険度が低い作業項目に対する出力区分は「1」と設定され、危険度が中程度の作業項目に対する出力区分は「2」と設定され、危険度が高い作業項目に対する出力区分は「3」と設定されている。
【0095】
また
図11(c)は、保守点検作業の各作業項目に関する作用工数の大きさごとの出力区分を示す情報である。具体的には、作業工数0.5時間未満の作業項目に対する出力区分は「1」と設定され、作業工数0.5時間以上1時間未満の作業項目に対する出力区分は「2」と設定され、作業工数1時間以上の作業項目に対する出力区分は「3」と設定されている。
【0096】
次に、保守点検作業の開始前に、作業負荷値算出部347がこれらの保持した属性区分マスタ情報を用いて作業項目ごとの作業負荷値を算出し、支援情報生成部342が作業負荷値を付加した支援シナリオ情報を生成する処理について、
図12のフローチャートを参照して説明する。
【0097】
まず、作業負荷値算出部347が、支援情報生成部342で生成された支援シナリオ情報を取得し、当該支援シナリオ情報に含まれる作業項目を抽出する(S4-1)。ここでは、作業項目として、「〇〇ステッカー貼り付け」、「〇〇基板の電圧測定」、および「〇〇交換」を抽出したものとする。作業負荷値算出部347は、「〇〇ステッカー貼り付け」を項目No.1001の作業項目とし、「〇〇基板の電圧測定」を項目No.1002の作業項目とし、「〇〇交換」を項目No.1003の作業項目として認識する。
【0098】
次に、作業負荷値算出部347は、保持した属性区分マスタ情報に基づいて、抽出した作業項目ごとの各属性「作業難易度」、「危険度」、「作業工数」に関する属性区分を判定する(S4-2)。具体的には、作業負荷値算出部347は、No.1001の作業項目「〇〇ステッカー貼り付け」に関しては、作業難易度「1」、危険度「1」、作業工数「1」と判定し、No.1002の作業項目「〇〇基板の電圧測定」に関しては、作業難易度「1」、危険度「2」、作業工数「2」と判定し、No.1003の作業項目「〇〇交換」に関しては、作業難易度「2」、危険度「3」、作業工数「3」と判定する。
【0099】
次に、作業負荷値算出部347は、作業項目ごとに、判定した各属性の出力区分の値を掛け合わせることで、作業項目ごとの負荷数値を算出する(S4-3)。具体的には、作業負荷値算出部347は、No.1001の作業項目「〇〇ステッカー貼り付け」に関しては、作業難易度「1」×危険度「1」×作業工数「1」により負荷数値を「1」と算出し、No.1002の作業項目「〇〇基板の電圧測定」に関しては、作業難易度「1」×危険度「2」×作業工数「2」により負荷数値を「4」と算出し、No.1003の作業項目「〇〇交換」に関しては、作業難易度「2」×危険度「3」×作業工数「3」により負荷数値を「18」と算出する。
【0100】
次に、支援情報生成部342が、各作業項目に、該当する負荷数値を付加した支援シナリオ情報を作成する(S4-4)。作成した支援シナリオ情報の一例を、
図13に示す。
図13の支援シナリオ情報では、該当する音声メッセージ情報を出力させる順序を示す音声シナリオNo.ごとに、該当する作業項目の項目No.、作業項目名、作業難易度の属性区分、危険度の属性区分、作業工数の属性区分、および負荷数値が示されている。
【0101】
支援情報生成部342は、作成した支援シナリオ情報を第1作業者端末20に送信する(S4-5)。第1作業者端末20では、センターシステム30Dから送信された支援シナリオ情報が支援情報処理部272で取得され、保持される。
【0102】
次に、作業者Xの体調が不調になったときに、作業支援システム1Dが実行する処理について、
図14のフローチャートを参照して説明する。
【0103】
保守点検作業の実行中、第1計測装置10の監視部14は所定時間間隔で、脈拍測定部111による測定値および体温測定部112による測定値に基づいて作業者Xの体調監視処理を行う。監視部14が、脈拍測定部111による測定値または体温測定部112による測定値が予め設定された基準値を超えたことにより作業者Xの体調が不調になったと判断すると、当該判断結果を、第1作業者端末20を介してセンターシステム30Dに通知する(S5-1)。ここで設定される基準値は、熱中症の発症が認識される値よりも低い値であり、作業の継続は可能であるが作業内容を軽減することが望まれるレベルの値である。
【0104】
センターシステム30Dでは、作業者Xの体調が不調になった通知を報知情報処理部344が取得する。報知情報処理部344は、作業者Xの体調が不調になった通知を取得すると、作業項目の実行順序を作業者Xの負荷が低い順に並べ替える指示を生成し、第1作業者端末20に送信する(S5-2)。
【0105】
第1作業者端末20では、作業項目の実行順序を並べ替える指示を支援情報処理部272が取得する。支援情報処理部272は、当該指示を取得すると、作業手順の変更を作業者Xに通知する音声メッセージを生成し、第1端末音声出力部26から出力させる(S5-3)。
【0106】
ここで、作業者Xが作業手順の変更を認証する操作を行うと(S5-5の「YES」)、支援情報処理部272は、支援シナリオ情報内の作業項目を、負荷数値が小さい順に並べ替える(S5-6)。そして支援情報処理部272は、並び替えた作業項目の順序の情報を、第1端末表示部25に表示させる(S5-7)。以降、支援情報処理部272は、変更後の支援シナリオ情報に基づいて作業支援処理を実行する。
【0107】
ステップS5-5において、作業者Xが作業手順の変更を認証しなかったときには(S5-5の「NO」)、支援情報処理部272は作業項目の並び替えを中止し(S5-8)、休憩促進メッセージを第1端末音声出力部26から出力させる(S5-9)。以降、ステップS3-1に移行して処理が継続される。
【0108】
以上の第4実施形態によれば、作業者の体調不調を認識した際に、作業者の負荷が低い作業から実施するように、作業項目の実施順序を変更することができる。
【0109】
《第5実施形態》
〈第5実施形態による保守点検時の作業支援システムの構成〉
本発明の第5実施形態による保守点検時の作業支援システム1Eの構成は、通信ネットワーク102に第4作業者端末80が接続され、第4作業者端末80に第2計測装置90が接続され、センターシステム30Aに替えてセンターシステム30Eを備えることを除いては、第1実施形態で説明した作業支援システム1Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0110】
第4作業者端末80および第2計測装置90の構成について、
図15を参照して説明する。第4作業者端末80は、作業者Xと同一建物の同一設備である昇降機において共同で保守点検作業を行う第3作業者である作業者Zが携帯する端末であり、第4端末-センター通信部81と、第4端末-計測通信部82と、第4端末入力部83と、第4端末表示部84と、第4端末音声出力部85と、ブザー鳴動部86と、第4端末CPU87とを有する。
【0111】
第4端末-センター通信部81は、通信ネットワーク102を介してセンターシステム30Eとの通信を行う。第4端末-計測通信部82は、通信ネットワーク103を介して第2計測装置90との通信を行う。第4端末入力部83は、作業者Zによる操作情報を入力する。第4端末表示部84は、モニタで構成され、第4端末CPU87からの指示に基づいて表示情報を出力する。第4端末音声出力部85は、第4端末CPU87からの指示に基づいて音声メッセージを出力させる。ブザー鳴動部86は、第4端末CPU87からの指示に基づいてブザーを鳴動させる。第4端末CPU87は、保守点検作業に関する作業支援処理および熱中症対策支援処理を実行する支援情報処理部871を有する。
【0112】
第2計測装置90は、生体情報取得部91と、環境情報取得部92と、計測-第4端末通信部93と、監視部94とを有する。生体情報取得部91は、作業者Zの生体情報として脈拍を測定する脈拍測定部911と、体温を測定する体温測定部912とを有する。環境情報取得部92は、保守点検の作業現場空間の温度を測定する温度測定部921と、湿度を測定する湿度測定部922とを有する。計測-第4端末通信部93は、通信ネットワーク103を介して第4作業者端末80との通信を行う。監視部94は、脈拍測定部911、体温測定部912、温度測定部921、および湿度測定部922で測定された値に基づいて、作業者Zの体調監視処理および作業現場の環境監視処理を行う。
【0113】
センターシステム30Eの構成について、
図16を参照して説明する。センターシステム30Eは、センターCPU34Eが設定部348を有し、共同作業者情報記憶部35を新たに有する他は、第1実施形態で説明したセンターシステム30Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0114】
設定部348は、同一建物の同一昇降機で保守点検作業を行っている作業員同士の識別情報を紐づけた共同作業者の情報を設定する。共同作業者情報記憶部35は、設定部348で設定された共同作業者の情報を記憶する。
【0115】
〈第5実施形態による作業支援システムの動作〉
次に、第5実施形態による作業支援システムの動作について説明する。本実施形態において、作業者Xの平常時生体情報をセンターシステム30Eに記憶させる処理、および保守点検作業時に実行するステップS2-1~2-20の処理は、第1実施形態で説明した処理と同様あるため、詳細な説明は省略する。本実施形態においては、作業者Zに関しても、ステップS1-1~S1-6の処理によりセンターシステム30Eの平常時情報記憶部32に平常時の生体情報を登録する事前処理を実行する。
【0116】
本実施形態において、保守点検作業中に作業支援システム1Eが実行する作業者Xおよび作業者Zの熱中症対策支援処理について、
図17Aおよび
図17Bのフローチャートを参照して説明する。
【0117】
まず、センターシステム30Eの設定部348が、同一建物の同一昇降機で保守点検作業をしている作業員の識別情報を紐づけることで、共同作業者を設定する処理を行う(S6-1)。ここでは、設定部348は、作業者Xの識別情報と作業者Zの識別情報とを紐付ける。設定部348は、作業者Xの識別情報と作業者Zの識別情報とを紐付けた共同作業者情報を、共同作業者情報記憶部35に記憶させる。
【0118】
次に、作業者Xの1分間ごとの脈拍数を作業者Xの心拍数として取得し、作業者Zの1分間ごとの脈拍数を作業者Zの心拍数として取得する(S6-2)。次に監視部14は、取得した作業者Xまたは作業者Zの1分間の心拍数が所定期間(例えば5分間)継続して、「180から作業者Xの年齢を引いた値」を超えるか否かを判断する(S6-3)。超えていなければ(S6-3の「NO」)、監視部14はステップS6-2に戻り、作業者Xおよび作業者Zの心拍数の監視を継続する。
【0119】
監視部14は、作業者Xまたは作業者Zの1分間の心拍数が所定期間継続して、「180から作業者Xの年齢を引いた値」を超えると、作業者Xが熱中症の疑いがあると判断し(S6-3の「YES」)、第1実施形態で説明したステップS3-3以降の処理を実行するとともに、共同作業者への報知処理を実行する。
【0120】
共同作業者への報知処理では、監視部14はまず、作業者Xが熱中症の疑いがあると判断した判断結果を、第1作業者端末20を介してセンターシステム30Eに送信する。センターシステム30Eでは、判断部343が、共同作業者情報記憶部35に記憶された情報に基づいて、作業者Xの共同作業者を検索する。ここでは、判断部343は、作業者Xの共同作業者として作業者Zを特定する。
【0121】
次に報知情報処理部344が、特定した作業者Zが携帯する第4作業者端末80に、共同作業者である作業者Xが熱中症の疑いがある旨の通知を送信する(S6-5)。第4作業者端末80では、センターシステム30Eから送信された通知を支援情報処理部871が取得し、ブザー鳴動部86からブザーを鳴動させる(S6-6)。また、支援情報処理部871は、共同作業者である作業者Xが体調不良であることを報知するメッセージ情報を第4端末表示部84に表示させる(S6-7)。
【0122】
次に支援情報処理部871は、実行中の作業支援処理を中断し、共同作業者である作業者Xの状態確認を要求する音声メッセージを第4端末音声出力部85から出力させる(S6-8)。作業者Zは、作業者Xの状態を確認し、確認結果を第4端末入力部83から入力する。
【0123】
ここで、作業者Zが作業者Xの状態を「問題なし」と入力すると(S6-9の「YES」)、支援情報処理部871は、休憩促進メッセージを第4端末表示部84に表示させる(S6-10)。そして、支援情報処理部871は、作業者Zが休憩をとったか否かを判断する(S6-11)。作業者Zが休憩をとったと判断したときには、支援情報処理部871は、作業支援処理による次に実施すべき作業項目に関する音声メッセージ出力を一定時間停止させる(S6-12)。
【0124】
次に、監視部94が、作業者Zの休憩開始から1分経過後から脈拍測定部911による作業者Zの心拍数の取得を開始し、取得した作業者Zの1分間の心拍数が数分間(例えば5分間)継続して、120を超えるか否かを判断する(S6-13、S6-14)。
【0125】
監視部94は、作業者Xの1分間の心拍数が数分間継続して120を超えると判断すると、作業者Zが熱中症の疑いがあると判断し、ステップS3-10の処理に移行する(S6-14の「YES」)。また監視部94は、作業者Zの1分間の心拍数が数分間継続して120を超えないと判断すると、監視部94は、体温測定部912による作業者Zの体温の測定結果を取得し(S6-15)、第4作業者端末80を介してセンターシステム30Eに送信する(S6-16)。
【0126】
センターシステム30Eでは、第2計測装置90から送信された作業者Zの体温の測定結果を判断部343が取得する。判断部343は、取得した作業者Zの体温の測定結果と、平常時情報記憶部32に記憶された作業者Zの平常時生体情報内の体温の情報とを比較する(S6-17)。判断部343は、測定結果の体温と平常時の体温との差分が所定値以下であれば、これらは「ほぼ同値である」と判断する。ここで、作業者Xの共同作業者が複数いた場合には、判断部343は、ステップS6-17の処理をすべての共同作業者に関して実行する。
【0127】
比較の結果、共同作業者全員の体温の測定結果が平常時の体温の情報とほぼ同値である場合には(S6-18の「YES」)、判断部343は、作業再開前に積極的な水分補給を促す水分補給促進メッセージを出力すると判断する。判断部343は、作業再開前に水分補給促進メッセージを出力すると判断すると、水分補給促進出力要求を生成し、センター表示部33に表示させるとともに、第4作業者端末80に送信する。第4作業者端末80は、センターシステム30Eから送信された水分補給促進出力要求を支援情報処理部871が取得する。
【0128】
支援情報処理部871は、取得した水分補給促進要求に基づいて、水分補給促進メッセージを第4端末表示部84に出力させ(S6-19)、その後、作業支援処理により、次に実施すべき作業項目に関する音声メッセージの出力を再開する(S6-20)。
【0129】
ステップS6-11において、支援情報処理部871が、作業者Zが休憩をとっていないと判断した場合には(S6-11の「NO」)、ステップS6-19の処理に移行する。
【0130】
また、ステップS3-9において作業者Xの1分間の心拍数が120を超えないと判断した場合にも(S3-9の「NO」)、ステップS6-15以降の処理を行って共同作業者の体温が平常であるか否かを確認する。
【0131】
以上の第5実施形態によれば、同一建物の同一昇降機で保守点検作業を行う作業者をセンターシステムが共同作業者として認識しておき、いずれかの作業者が体調不良になったと判断した場合に他の共同作業者に通知することで、迅速に作業者の救助活動を支援することができる。また、共同作業者のいずれかが体調不良になったときに他の共同作業者の体調も監視することで、同じ環境で作業をする作業者の熱中症対策を行うことができる。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0133】
1A,1B,1C,1D,1E…作業支援システム、10…第1計測装置、10…第1計測装置、11…生体情報取得部、12…環境情報取得部、13…第1端末通信部、14…監視部、20…第1作業者端末、21…第1端末-計測通信部、22…第1端末-センター通信部、23…第1端末測定結果記憶部、24…第1端末入力部、25…第1端末表示部、26…第1端末音声出力部、27…第1端末CPU、30A,30B,30C,30D,30E…センターシステム、31…第1端末通信部、32…平常時情報記憶部、33…センター表示部、34A,34B,34C,34D,34E…センターCPU、35…共同作業者情報記憶部、40…第2作業者端末、41…第2端末-センター通信部、42…第2端末表示部、50…第3作業者端末、51…第3端末-センター通信部、52…第3端末表示部、60…遠隔監視装置、61…遠隔-センター通信部、62…ブザー鳴動指示部、70…昇降機、71…昇降機制御部、72…ブザー鳴動部、80…第4作業者端末、81…第4端末-センター通信部、82…第4端末-計測通信部、83…第4端末入力部、84…第4端末表示部、85…第4端末音声出力部、86…ブザー鳴動部、87…第4端末CPU、90…第2計測装置、91…生体情報取得部、92…環境情報取得部、93…第4端末通信部、94…監視部、101,102,103…通信ネットワーク、111…脈拍測定部、112…体温測定部、121…温度測定部、122…湿度測定部、271…事前処理部、272…支援情報処理部、341…平常時情報取得部、342…支援情報生成部、343…判断部、344…報知情報処理部、345…通知先検索部、346…ブザー鳴動処理部、347…作業負荷値算出部、348…設定部、871…支援情報処理部、911…脈拍測定部、912…体温測定部、921…温度測定部、922…湿度測定部