(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】安全帯フック着脱検知システム
(51)【国際特許分類】
A62B 35/00 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
A62B35/00 A
(21)【出願番号】P 2022029367
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2022-03-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】四ツ家 泰平
(72)【発明者】
【氏名】増田 洋人
(72)【発明者】
【氏名】今岡 静男
(72)【発明者】
【氏名】藤原 遼児
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130134(JP,A)
【文献】特開2022-026673(JP,A)
【文献】特開2009-165517(JP,A)
【文献】特開2015-196590(JP,A)
【文献】特開2014-025330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全帯フックの着脱を検出する検知センサと、前記検知センサにより作業者が前記安全帯フックを
Dカンから取り外したことを検知した検出信号を受信して前記作業者に前記安全帯フックの使用を促す通知を行う通知部と、前記作業者が現場に前記安全帯フックを取り付けた後に前記通知部による前記安全帯フックの使用を促す通知を停止するために押下するセット確認ボタン
を有し、作業者が着用する安全帯又はベルトに取り付けるフックホルダーと、
前記検知センサにより前記作業者が前記安全帯フックを前記フックホルダーから取り外したことを検知した検出信号を受信して準備中を示す第1発光し、前記セット確認ボタンを押下すると使用中を示す第2発光し、前記作業者に取り付ける発光部と、
前記検知センサの検出信号を受信して前記安全帯フックを使用する作業者の前記準備中又は前記使用中の回数又は時間を記録する記録部を備えたことを特徴とする安全帯フック着脱検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が現場作業時に安全帯フック(以下、単にフックということあり)を正しく使用しているか否かを検知する安全帯フック着脱検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業で作業者に着用することを義務付けている安全帯は、作業者が装着するベルト又はハーネスと、命綱と、フックと、フックホルダーからなる。作業者は、ベルト又はハーネスを装着し、高所作業所に配置された親綱や足場単管パイプなどにフックを掛けて安全を確保してから作業を行う。
従来、フックの着脱を検知して作業者のフック掛け忘れによる転落事故を防止する種々の技術が提案されている。このうち着脱を検知するセンサ及び配線をフック側に備えた技術が多数有るが、センサ及び配線を備えたフックは着脱時に邪魔になり、頻繁に行う着脱作業の衝撃で破損や紛失のおそれがあった。また特許文献1に開示の安全帯フック着脱確認システムは、フックに磁石を取り付けて着脱を検知する構成でフックがフックホルダーに掛けられているか否かを検知している。しかし作業者が高所作業領域にいることを検知する構成が別途必要となり、装置全体がコスト高となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、安価な構成で現場内の複数作業者間で安全意識の向上が図れる安全帯フック着脱検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、安全帯フックの着脱を検出する検知センサと、前記検知センサにより作業者が前記安全帯フックをDカンから取り外したことを検知した検出信号を受信して前記作業者に前記安全帯フックの使用を促す通知を行う通知部と、前記作業者が現場に前記安全帯フックを取り付けた後に前記通知部による前記安全帯フックの使用を促す通知を停止するために押下するセット確認ボタンを有し、作業者が着用する安全帯又はベルトに取り付けるフックホルダーと、
前記検知センサにより前記作業者が前記安全帯フックを前記フックホルダーから取り外したことを検知した検出信号を受信して準備中を示す第1発光し、前記セット確認ボタンを押下すると使用中を示す第2発光し、前記作業者に取り付ける発光部と、
前記検知センサの検出信号を受信して前記安全帯フックを使用する作業者の前記準備中又は前記使用中の回数又は時間を記録する記録部を備えたことを特徴とする安全帯フック着脱検知システムを提供することにある。
上記第1の手段によれば、現場にフックを取り付けた後のセット確認ボタンを押すことにより、指差し確認と同様の視点で作業前に確実にフック取り付け作業を行ったことを習慣化させて、作業者自身の安全意識の向上を図ることができる。
また、作業者が装着している発光部によりフック取り付け後に発光することにより、現場内の他の作業者は、その作業者がフック取り付け作業を行っていることを容易かつ確実に視認できる。従って周囲の作業者を含めて作業現場全体の安全性の向上を働きかけることができる。
また、安全帯フックの正しい使用を記録として残すことができる。また作業者の評価、表彰、育成教育などに利用することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現場にフックを取り付けた後のセット確認ボタンを押すことにより、指差し確認と同様の視点で作業前に確実にフック取り付け作業を行ったことを習慣化させて、作業者自身の安全意識の向上を図ることができる。
また、作業者が装着している発光部によりフック取り付け後に発光することにより、現場内の他の作業者は、その作業者がフック取り付け作業を行っていることを容易かつ確実に視認できる。従って周囲の作業者を含めて作業現場全体の安全性の向上を働きかけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の安全帯フック着脱検知システムの構成概略図である。
【
図2】本発明の安全帯フック着脱検知システムのブロック図である。
【
図3】フックホルダーにフックを取り付けた説明図である。
【
図4】フックホルダーからフックを取り外した説明図である。
【
図5】変形例のフックホルダーにフックを取り付けた説明図である。
【
図6】本発明の安全帯フック着脱検知システムの処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の安全帯フック着脱検知システムの実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0011】
[安全帯フック着脱検知システム10]
図1は本発明の安全帯フック着脱検知システムの構成概略図である。
図2は本発明の安全帯フック着脱検知システムのブロック図である。
図1に示すように安全帯12はハーネス14又はベルト(
図1ではハーネス14を示す)と、命綱16と、安全帯フック18と、フックホルダー20からなる。
本発明の安全帯フック着脱検知システム10は、作業者のフックホルダー20に取り付けた安全帯フック18の着脱を検出する検知センサ22と、検知センサ22により作業者が安全帯フック18をフックホルダー20から取り外したことを検知した検出信号を受信して作業者に安全帯フック18の使用を促す通知を行う通知部24と、作業者が現場に安全帯フック18を取り付けた後に押下するセット確認ボタン26を備えている。
【0012】
(フックホルダー20)
図3はフックホルダーにフックを取り付けた説明図である。
図4はフックホルダーからフックを取り外した説明図である。
フックホルダー20は、安全帯フック18の着脱を検知する検知センサ22と、作業者が現場に配置された親綱に安全帯フック18を取り付けた後に押下するセット確認ボタン26と、作業者に安全帯フック18の使用を促す通知を行う通知部24となるスピーカと、発光部30及び記録部40に安全帯フック18の着脱の検出信号送信する送信部28と、これらを制御する制御部29を備えている。
検知センサ22は、フックホルダー20のDカン21付近に取り付けて、磁性体となる安全帯フック18をフックホルダー20のDカン21に留めた状態と(
図3参照)、Dカン21から安全帯フック18を取り外した状態(
図4参照)との間で生じる磁力の強弱を検知して安全帯フック18の着脱状態を検出するマグネットスイッチである。
【0013】
制御部29は、検知センサ22による安全帯フック着脱の検出信号に基づいて、Dカン21から安全帯フック18を取り外したときに作業者に現場に安全帯フック18を取り付けることを促す通知部24となるスピーカで通知する制御を行う。また制御部29は、検知センサ22による安全帯フック着脱の検出信号を発光部30及び記憶部40に送信する。
セット確認ボタン26は、作業者が安全帯フック18を現場の親綱に取り付けた後に自身で押下する手動式のボタンである。制御部29は、セット確認ボタン26が押下されると、スピーカからの安全帯フック18の使用を促す通知を停止する制御を行う。
【0014】
図5は変形例のフックホルダーにフックを取り付けた説明図である。図示のように変形例のフックホルダー20は作業者が着用するベルト15に取り付けている。フックホルダー20の背面にはベルト15又はハーネス14を通す2つのベルト通し(ループ)が設けてあり、ハーネス14の場合には縦向き、ベルト15の場合には横向きに取り付けることができる。その他のフックホルダー20の構成は
図2に示す構成と同一である。
【0015】
(発光部30)
発光部30は制御部29からの発光信号を受信する受信部と、制御信号により発光又は消灯する発光素子、本実施形態では例えばLEDを備えた構成である。具体的には、安全帯フック18をフックホルダー20から取り外して現場に設置するまでの準備状態(準備中)と、安全帯フック18を現場に取り付けた使用状態(使用中)と、現場作業終了後に安全帯フック18をフックホルダー20のDカン21に留めた不使用状態(使用中の停止)のときに制御部29から出力される。発光部30は、作業者が着用するヘルメット13に取り付けた構成(
図1参照)のほか、フックホルダー20に取り付けた発光素子25の構成であっても良い。また発光部30は、作業者が着用するヘルメット13とフックホルダー20の両方に取り付けた構成であっても良い。
【0016】
(記録部40)
記録部40は検知センサ22の検出信号を受信する受信部42と、検出信号を記録するデータベース44と、データベース44のデータを抽出して安全帯フック18の着脱回数、使用時間の累積値などを算出するソフトウェアプログラムとなる演算処理部46(CPU:Centoral Processing Unit)と、演算処理部46の出力結果を表示する表示部48を備えている。記録部40は、コンピュータ装置を用いて、データベース44からプログラムを読み取り、そのプログラムを実行することで実現できるほか、作業者の携帯端末、フックホルダー20に取り付けた構成などであっても良い。
【0017】
記録部40は検知センサ22の検出信号を受信して安全帯フック18を使用する作業者の使用回数と使用時間のいずれか1つ以上を記録する。
図7は画面表示の説明図である。表示部48による画面表示は、例えば、作業者が安全帯フックを使用した回数及び使用時間の一日分のデータ(
図7(1)参照)、一週間のデータ(
図7(2)参照)、月間データ、所定期間の集計(
図7(3)参照)などの形式で表示させることができる。
なおフックホルダー20と、発光部30と、記録部40はそれぞれバッテリーを備えている。
【0018】
[作用]
図6は本発明の安全帯フック着脱検知システムの処理フローである。
(ステップ1)
現場で作業者がフックホルダー20から安全帯フック18を取り外す。
(ステップ2)
作業者が安全帯フック18をフックホルダー20から取り外したことを検知センサ22が検知すると、制御部29に検出信号を出力して制御部29から通知部24に作業者に安全帯フック18を取り付けることを促す制御信号を出力する。一例として本実施形態では「フックを取り付けて下さい」とスピーカから音声で通知される。また制御部29は、作業者が安全帯フック18を現場に取り付けようとしていることを示す準備中の発光をするように発光部30へ発光信号を出力し、準備中の制御信号を記録部40へ出力する。
【0019】
(ステップ3)
発光部30は、準備中を示す第1発光、本実施形態では速い点滅を行う。
(ステップ4)
記録部40は、準備中の制御信号を受信すると、準備中の時間を記録する。
(ステップ5)
作業者は安全帯フック18を現場に取り付けたあと、自身でフックホルダー20のセット確認ボタン26を押下する。これにより、指差し確認と同様の視点で作業前に確実にフック取り付け作業を行ったことを習慣化させて、作業者自身の安全意識の向上を図ることができる。
(ステップ6)
作業者がセット確認ボタン26を押下したか否かを判断する。
【0020】
(ステップ7)
ステップ6で作業者がセット確認ボタン26を押下していない場合(NO)、所定時間、本実施形態では一例として30秒待ってからステップ2以降を再度行う。
(ステップ8)
セット確認ボタン26を押下すると、制御部29は通知部24へ使用開始を示す通知の制御信号を出力する。通知部24は、作業者へ使用開始を示す通知、例えば、「フックの取り付けよし、ご安全に」と音声で通知する。
また制御部29は、作業者が現場で安全帯フック18を使用していることを示す使用中の発光をするように発光部30へ発光信号を出力し、使用中の制御信号を記録部40へ出力する。
【0021】
(ステップ9)
発光部30は、使用中を示す第2発光、本実施形態では速い点滅よりも遅いゆっくりの点滅を行う。
(ステップ10)
記録部40は、使用中の制御信号を受信すると、使用中の時間を記録する。
(ステップ11)
作業者は現場で作業を開始する。作業中、作業者はフックホルダー20のLED25の点滅により、自身が安全帯フック18を正しく使用していることを認識でき安全意識を高めることができる。また現場の他の作業者は作業者が装着しているヘルメット13の発光部30及びフックホルダー18のLED25の点滅を見て、安全帯フック18を正しく取り付けていることを認識でき、作業者間で安全意識の向上を図ることができる。
【0022】
(ステップ12)
現場作業が完了すると作業者は安全帯フック18を現場の親綱から取り外し、フックホルダー20のDカン21に安全帯フック18を留める。
(ステップ13)
作業者が安全帯フック18をフックホルダー20に留めたことを検知センサ22が検知すると、制御部29に検出信号を出力して制御部29から通知部24に作業者に安全帯フック18の使用状態の停止を示す制御信号を出力する。一例として本実施形態では「フックの収納を確認。お疲れ様でした」とスピーカから音声で通知される。また制御部29は、作業者が安全帯フック18をフックホルダー20に留めて戻したことを示す使用中の停止、換言すると消灯をするように発光部30へ消灯信号を出力し、使用中の停止の制御信号を記録部40へ出力する。
【0023】
(ステップ14)
発光部30は、使用中を示す第2発光を停止して消灯する。
(ステップ15)
記録部40は、使用中の停止の制御信号を受信すると、使用中の記録を停止する。
このような本発明によれば、現場にフックを取り付けた後のセット確認ボタンを押すことにより、指差し確認と同様の視点で作業前に確実にフック取り付け作業を行ったことを習慣化させて、作業者自身の安全意識の向上を図ることができる。
また、作業者が装着している発光部によりフック取り付け後に発光することにより、現場内の他の作業者は、その作業者がフック取り付け作業を行っていることを容易かつ確実に視認できる。従って周囲の作業者を含めて作業現場全体の安全性の向上を働きかけることができる。
【0024】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 安全帯フック着脱検知システム
12 安全帯
13 ヘルメット
14 ハーネス
15 ベルト
16 命綱
18 安全帯フック
20 フックホルダー
21 Dカン
22 検知センサ
24 通知部
25 発光素子(LED)
26 セット確認ボタン
28 送信部
29 制御部
30 発光部
40 記録部
42 受信部
44 データベース
46 演算処理部
48 表示部