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特許7346640抗免疫チェックポイントナノボディ及びその核酸コード配列、並びにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】抗免疫チェックポイントナノボディ及びその核酸コード配列、並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230911BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230911BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230911BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230911BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230911BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230911BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230911BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/46
C07K16/28
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/02
G01N33/53 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022046598
(22)【出願日】2022-03-23
(65)【公開番号】P2022151799
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】63/165,274
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/692,701
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516144245
【氏名又は名称】中國醫藥大學附設醫院
【氏名又は名称原語表記】China Medical University Hospital
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周 徳陽
(72)【発明者】
【氏名】邱 紹智
(72)【発明者】
【氏名】黄 士維
(72)【発明者】
【氏名】潘 志明
(72)【発明者】
【氏名】陳 美智
(72)【発明者】
【氏名】林 育全
(72)【発明者】
【氏名】陳 曄
【審査官】中根 知大
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-531039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラム細胞死リガンド1(programmed cell death ligand 1、PD-L1)に特異的に結合する抗免疫チェックポイントナノボディであって、
配列番号1又は配列番号3に示されるアミノ酸配列からなことを特徴とする、
抗免疫チェックポイントナノボディ。
【請求項2】
PD-L1と前記PD-L1の受容体との相互作用を遮断し、
前記受容体は、プログラム細胞死タンパク質-1(programmed cell death protein-1、PD-1)であることを特徴とする、
請求項に記載の抗免疫チェックポイントナノボディ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の抗免疫チェックポイントナノボディのアミノ酸配列をコードする単離された核酸であって、
配列番号4又は配列番号6に示されるヌクレオチド配列からなることを特徴とする、
単離された核酸。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の抗免疫チェックポイントナノボディ、及び医薬上許容可能な担体を含むことを特徴とする、
医薬組成物。
【請求項5】
がんを治療するための医薬品を製造するための請求項1又は2に記載の抗免疫チェックポイントナノボディの使用。
【請求項6】
サンプルに請求項1又は2に記載の抗免疫チェックポイントナノボディを添加することを含む、PD-L1の発現レベルを検出するための方法であって、
前記サンプルは、血液、尿液、痰液、唾液又は体液であることを特徴とする、
PD-L1の発現レベルを検出するための方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の抗免疫チェックポイントナノボディと、
フラグメント結晶化可能領域(fragment crystallizable region、Fc region)と、を含む抗体共役物であって、
前記抗免疫チェックポイントナノボディは、前記フラグメント結晶化可能領域に共役されることを特徴とする、
抗体共役物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の抗免疫チェックポイントナノボディと、
第2の抗体と、を含む抗体共役物であって、
前記抗免疫チェックポイントナノボディは、前記第2の抗体に共役されることにより、二重特異性T細胞エンゲージャー(bispecific T-cell engager、BiTE)、三重特異性T細胞エンゲージャー(triple specific T-cell engager、TriTE)、二重特異性キラー細胞エンゲージャー(bispecific killer cell engager、BiKE)、三重特異性キラー細胞エンゲージャー(triple specific killer cell engager、TriKE)、又は、任意の二重特異性抗体を形成することを特徴とする、
抗体共役物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗免疫チェックポイントナノボディ及びその核酸コード配列、並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、悪性腫瘍とも呼ばれ、細胞の分裂・増殖の制御機能不全による疾患であり、細胞が異常に増殖し、また、異常増殖した細胞が体の他の部分に侵入可能である。世界中でがん患者がどんどん増加しており、台湾でも死因トップ10の1つであり、かつ、長年に死因トップ10の1位を占めている。
【0003】
従来の腫瘍治療方法は、外科手術、放射線療法、化学療法及び標的療法等が挙げられる。腫瘍免疫治療は、上記の治療法以外の腫瘍を治療する方法であり、患者自身の免疫系を活性化させ、腫瘍細胞又は腫瘍抗原物質を利用して生体の特異的細胞性免疫及び体液性免疫反応を誘導し、生体の抗がん能力を高め、腫瘍の成長、拡散、再発を抑制することで、腫瘍の除去又は制御という目的を達成することができる。しかしながら、現在の腫瘍治療方法は、効果が低く、副作用が強いという問題があり、他の免疫関連疾患を引き起こすことさえ可能性がある。
【0004】
プログラム細胞死リガンド1(programmed cell death ligand 1、PD-L1)は、様々な固形腫瘍の細胞の表面に大量に発見されるため、腫瘍を特定する標的分子として用いられ、抗がん剤として利用する可能性が検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の問題を解決するために、当業者は、がん及び免疫関連疾患をより効果的に治療することができる新規な医薬品を研究開発している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記を鑑み、本発明は、プログラム細胞死リガンド1(programmed cell death ligand1、PD-L1)に特異的に結合する抗免疫チェックポイントナノボディを提供することを目的とする。前記抗免疫チェックポイントナノボディは、配列番号1又は配列番号3に示されるアミノ酸配列からなり、大腸菌(E.coli)菌株HB2151から生成及び精製される
【0007】
本発明の1つの実施例において、前記アミノ酸配列は、前記抗免疫チェックポイントナノボディの重鎖可変ドメイン(heavy chain variable domain、VHH)のアミノ酸配列である。
【0008】
本発明の1つの実施例において、前記抗免疫チェックポイントナノボディは、フラグメント結晶化可能領域(fragment crystallizable region、Fc region)に共役される。
【0009】
本発明の1つの実施例において、前記抗免疫チェックポイントナノボディは、第2の抗体に共役されることにより、二重特異性T細胞エンゲージャー(bispecific T-cell engager、BiTE)、三重特異性T細胞エンゲージャー(triple specific T-cell engager、TriTE)、二重特異性キラー細胞エンゲージャー(bispecific killer cell engager、BiKE)、三重特異性キラー細胞エンゲージャー(triple specific killer cell engager、TriKE)、又は任意の二重特異性抗体を形成する。
【0010】
本発明の1つの実施例において、前記抗免疫チェックポイントナノボディは、前記PD-L1と前記PD-L1の受容体との相互作用及び/又は結合を遮断する。
【0011】
本発明の1つの実施例において、前記受容体は、プログラム細胞死タンパク質-1(programmed cell death protein-1、PD-1)である。
【0012】
また、本発明のもう1つの目的は、前記抗免疫チェックポイントナノボディのアミノ酸配列をコードする単離された核酸を提供することである。前記単離された核酸は、配列番号4又は配列番号6に示されるヌクレオチド配列からなる
【0013】
また、本発明のもう1つの目的は、前記抗免疫チェックポイントナノボディ及び医薬上許容可能な担体を含む医薬組成物を提供することである。
【0014】
また、本発明のもう1つの目的は、がんを治療するための医薬品を製造するための前記抗免疫チェックポイントナノボディの使用を提供することである。
【0015】
また、本発明のもう1つの目的は、サンプルに前記抗免疫チェックポイントナノボディを投与することを含む、PD-L1の発現レベルを検出するための方法を提供することである。
【0016】
本発明の1つの実施例において、前記サンプルは、血液、尿液、痰液、唾液、又は体液である。
【発明の効果】
【0017】
上記をまとめると、本発明の抗免疫チェックポイントナノボディの効果は、以下の通りである。
【0018】
表面プラズモン共鳴結合分析(surface plasmon resonance binding assay、SPR binding assay)により、抗PD-L1ナノボディがそれぞれ0.27及び0.41nM以内のKD値でPD-L1タンパク質に有効に結合することを証明し、
PD-1/PD-L1遮断バイオアッセイキット(Blockade Bioassay kit)によるPD-L1ナノボディのPD-1/PD-L1の軸遮断(axis blockade)の測定により、抗PD-L1ナノボディがPD-L1、APC/PD-1エフェクター共培養系においてPD-L1/PD-1の信号伝達を遮断すること、及び、抗PD-L1ナノボディがγδT細胞で誘導された腫瘍細胞(MDA-MB-231)に対する細胞毒性を向上させることを証明し、
ウエスタンブロッティング(Western blotting)により、抗PD-L1ナノボディがPD-L1に結合した後に、OKT3(抗CD3モノクローナル抗体)誘導性T細胞増殖を回復することを証明し、及び、
フローサイトメトリー及び免疫細胞化学(immunocytochemistry)の分析により、PDL-1ナノボディが細胞サンプル中のPD-L1の発現を検出するために用いられることを証明する。
【0019】
上記の効果によれば、がん及び免疫関連疾患を治療する効果を達成することができる。特に、従来の抗体は、遺伝子をベクターによって細胞にトランスフェクトしてから抗体の機能を発揮することができるため、収率が低くて効果が低いという欠点がある。本発明の抗免疫チェックポイントナノボディは、インビトロで大量に製造してそのまま投与すべき個体に投与して治療を行うことができる。なお、本発明によれば、PD-L1の発現レベルを検出できる効果も達成することができる。
【0020】
以下、本発明の実施形態についてさらに説明する。下記の実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、改良や変更することができる。よって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲を基準とすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1A及び図1Bは、抗PD-L1ナノボディの表面プラズモン共鳴結合分析の結果を示す。cloneは、クローン株を示し、nbは、ナノボディを示し、RUは、応答ユニット(response unit)、即ちPD-L1組換えタンパク質(Sino Biological、Cat:10084-H05H)が塗布されたCM5チップを示す。
図2】PD-1/PD-L1遮断バイオアッセイキット(Blockade Bioassay kit)による抗PD-L1ナノボディのPD-1/PD-L1の軸遮断(axis blockade)の測定結果を示す。cloneは、クローン株を示し、PD-L1 nbは、抗PD-L1ナノボディを示す。アテゾリズマブ(Atezolizumab)は、尿路上皮がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、トリプルネガティブ乳がん、小細胞肺がん及び肝細胞がんを治療するためのIgG1アイソタイプ完全ヒト化抗PD-L1モノクローナル抗体である。
図3】抗PD-L1ナノボディのT細胞増殖の分析結果を示す。**は、p<0.01を示し、***は、p<0.001を示す。
図4】抗PD-L1ナノボディによるヒト乳がん細胞株MDA-MB-231に対するγδT(GDT)細胞誘導性細胞毒性の向上効果を示す。一番左の群は、いずれの抗体を併用していない純粋なγδT細胞処理群を示す。*は、p<0.05を示し、**は、p<0.01を示す。
図5】抗PD-L1ナノボディのウエスタンブロッティング(Western blotting)の結果を示す。矢印は、PD-L1タンパク質の位置、即ち分子量が市販の抗体と一致する位置を示す。使用される細胞株は、非小細胞肺がん細胞株H1975(NCI-H1975 [H-1975、H1975]、ATCC)である。mAbは、モノクローナル抗体を示し、Nbは、ナノボディを示す。市販の抗体は、PD-L1モノクローナル抗体(66248-1-Ig、Proteintech)である。市販抗体群の一次抗体は、PD-L1モノクローナル抗体(1:2500)であり、二次抗体は、抗ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ(anti-rabbit-horseradish peroxidase、anti-Rab-HRP)(1:10000)である。実験群の抗PD-L1ナノボディの濃度は、1ng/mlであり、二次抗体は、抗VHH-HRP(1:10000)である。
図6図6A及び図6Bは、抗PD-L1ナノボディのフローサイトメトリーの結果を示す。図6Aの(a)において、nbは、ナノボディを示し、Abは、抗体を示し、FITCは、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)を示す。図6Aの(b)において、mAbは、モノクローナル抗体を示し、H1975は、一種類の非小細胞肺がん細胞株であり、Alexa Fluor 488-Hは、488nmのレーザー光で励起される明るい緑色の蛍光色素である。図6Bの(a)において、A549は、ヒト非小細胞肺がん細胞株である。図6Bの(b)において、MDA-MB-231は、ヒト乳がん細胞株である。
図7】抗PD-L1ナノボディの免疫細胞化学の分析結果を示す。H1975は、一種類の非小細胞肺がん細胞株であり、cloneは、クローン株を示し、抗PDL-1ナノボディの濃度は、1ng/mlであり、二次抗体は、抗VHH-フルオレセイン(fluorescein、FITC)(1:5000)であり、pan-カドヘリン(pan-cadherin)は、一種類の細胞膜マーカーである。pan-カドヘリン及びPD-L1の共局在は、特異的ナノボディによって膜結合型(membrane bound)のPD-L1を検出することを説明するために用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本明細書に記載の数値は、概算値である。全ての実験データは、その数値の±20%、好ましいは±10%、より好ましくは±5%の範囲を示す。
【0023】
本明細書において、「抗プログラム細胞死リガンド1(programmed cell death ligand 1、PD-L1)ナノボディ(nanobody、NB)」及び「抗免疫チェックポイントナノボディ」という用語は、相互交換可能に使用される。
【0024】
本明細書において、「第2の抗体」という用語は、ナノボディに共役されることにより、二重特異性T細胞エンゲージャー(bispecific T-cell engager、BiTE)、三重特異性T細胞エンゲージャー(triple specific T-cell engager、TriTE)、二重特異性キラー細胞エンゲージャー(bispecific killer cell engager、BiKE)、三重特異性キラー細胞エンゲージャー(triple specific killer cell engager、TriKE)、又は任意の二重特異性抗体を形成することができる抗体を意味する。好ましくは、前記第2の抗体は、抗CD3ε、CD3、ヒト白血球抗原-G(human leukocyte antigen-G、HLA-G)、プログラム細胞死リガンド2(programmed cell death ligand 2、PD-L2)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(T-cell immunoglobulin domain and mucin domain 3、Tim3)、表皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor、EGFR)、EGFRvIII、ヒト表皮成長因子受容体2(human epidermal growth factor receptor 2、Her2)、B細胞成熟抗原(B-cell maturation antigen、BCMA)、CD19、CD20、CD34、CD16、Fc、上皮細胞接着分子(epithelial cell adhesion molecule、EpCAM)、メソテリン(mesothelin)、ニューヨーク食道扁平上皮細胞がん-1(New York esophageal squamous cell carcinoma-1、NY-ESO-1)、糖タンパク質100(glycoprotein 100、gp100)、及びムチン1(Muc1)抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書において、「治療(treating又はtreatment)」という用語は、疾患(disease)又は障害(disorder)の1つ又は複数の臨床徴候(clinical sign)を緩和(alleviating)、減少(reducing)、改善(ameliorating)、軽減(relieving)、又は制御(controlling)すること、及び、治療中の病態(condition)又は症状(symptom)の重症度(severity)の進展(progression)を低下(lowering)、停止(stopping)又は逆転(reversing)させることを意味する。
【0026】
本発明に係る医薬品は、通常の知識に基づいて、非経口(parenterally)投与の剤形(dosage form)に製造されてもよい。前記非経口投与の剤形は、例えば、注射剤(injection)(例えば、滅菌水溶液(sterile aqueous solution)又は分散液(dispersion)、滅菌粉末(sterile powder)、錠剤(tablet)、トローチ剤(troche)、ロゼンジ剤(lozenge)、丸薬(pill)、カプセル(capsule)、分散性粉末(dispersible powder)又は顆粒(granule)、溶液、懸濁液(suspension)、乳剤(emulsion)、シロップ(syrup)、エリキシル剤(elixir)、スラリー剤(slurry)及び類似のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明に係る医薬品は、非経口経路(parenteral routes)で投与してもよい。前記非経口経路は、腹腔内注射(intraperitoneal injection)、皮下注射(subcutaneous injection)、表皮内注射(intraepidermal injection)、皮内注射(intradermal injection)、筋肉内注射(intramuscular injection)、静脈内注射(intravenous injection)及び病巣内注射(intralesional injection)からなる群から選ばれる。
【0028】
本発明に係る医薬品は、医薬上許容可能な担体を含んでもよい。前記医薬上許容可能な担体は、例えば、溶剤(solvent)、乳化剤(emulsifier)、懸濁化剤(suspending agent)、分解剤(decomposer)、結合剤(binding agent)、賦形剤(excipient)、安定剤(stabilizing agent)、キレート剤(chelating agent)、希釈剤(diluent)、ゲル化剤(gelling agent)、防腐剤(preservative)、滑剤(lubricant)、吸収遅延剤(absorption delaying agent)、リポソーム(liposome)及び類似のものからなる群から選ばれる1つ又は複数の試薬を含んでもよい。前記試薬の選用及び数量は、当業者の専門知識及び技術的範囲に属する。
【0029】
本発明に係る前記医薬上許容可能な担体は、溶剤を含んでもよい。前記溶剤は、水、生理食塩水(normal saline)、リン酸塩緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)、糖含有溶液、アルコール含有水溶液(aqueous solution containing alcohol)、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0030】
本明細書において、「核酸」、「核酸配列」又は「核酸フラグメント」等の用語は、一本鎖又は二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチド配列又はリボヌクレオチド配列を意味し、かつ、既知の天然に存在するヌクレオチド(naturally occurring nucleotides)又は人工の化学的模倣物を含む。本明細書において、「核酸」という用語は、「遺伝子」、「cDNA」、「mRNA」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」と相互交換可能に使用される。
【実施例
【0031】
実施例1.抗PD-L1ナノボディの製造
本実施例において、抗プログラム細胞死リガンド1(programmed cell death ligand 1、PD-L1)ナノボディ(nanobody、NB)の製造プロセスは、以下の通りである。
【0032】
重鎖可変ドメイン(heavy chain variable domain、VHH)の生成プロセスは、以下の通りである。
【0033】
VHH遺伝子は、発現ベクターpET22b(Amp耐性)又はpSB-init(CmR耐性)に構築され、プラスミドは、制限エンドヌクレアーゼ消化及び配列決定によって同定される。1μLの同定されたプラスミド(約50ng)をBL21(DE3)に添加し、37℃で一晩作用させる。耐性含有LB培地に単一コロニーを接種し、37℃、220r/minで一晩培養する。
【0034】
一晩培養したものを1:100の比例で新鮮な耐性含有LB培地(10L~20L)に接種し、37℃、220r/minで培養する。OD600が0.8に達すと、室温まで冷却する。最終濃度が0.1mMであるイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside、IPTG)を添加し、20℃、220r/minで一晩誘導する。遠心分離(20mM Tris pH8.0、150mM NaCl)によって細胞を破壊した後、細胞及び上清が得られる。
【0035】
フロースルー(flow-through)によって上清をNi-NTAビーズ(1mL)に結合させる。適切な濃度勾配を有するイミダゾール(imidazole)(10mM、20mM、50mM、100mM、250mM、及び500mM)を含有する緩衝液によって洗浄してNi-NTAビーズを溶出する。溶出部分をSDS-PAGEによって分析する。タンパク質の純度と収量(イオン交換クロマトグラフィー又はゲル濾過クロマトグラフィー)に基づいて後の精製方法を決める。要件を満たすタンパク質をゲル濾過クロマトグラフィーで単離精製し、緩衝液をPBS緩衝液に置換する。SDS-PAGEでタンパク質の成分を分析し、要件を満たす成分を合併濃縮し、0.22μmのフィルターで濾過して容器に詰める。その後、タンパク質を-20℃以下で保存する。
【0036】
ナノボディは、大腸菌(E.coli)から生成及び精製される。ナノボディを生成するための大腸菌の生成方法として、文献Microb Cell Fact. 2019 Mar 11、18(1):47を参照することができる。要するに、大腸菌株HB2151を利用する。アンピシリン(ampicillin)耐性をコードするプラスミドpET(Creative Biolab)は、細胞質タンパク質の生成に用いられる。
【0037】
PD-L1又はPD-L1多重特異性ナノボディのプラスミドで新たに形質転換された大腸菌HB2151を50μg/mLのアンピシリンを含有する培地5mLに接種し、37℃で一晩培養する。その後、1mLの前記培養物を100mLの培地に接種し、37℃で成長させる。一晩培養した後、100mLの培養物ごとにEnPresso Booster錠剤2枚及び追加のグルコース放出酵素(0.6 U/L)を添加すると共に、1mMのIPTGを添加し、組換えナノボディのタンパク質を24時間誘導発現させる。
【0038】
そして、培養物を回収して氷上で5分間冷却した後に、6,000×g、4℃で15分間遠心分離する。上清を除去した後に、大容量Myc-tag結合樹脂を用いて、細胞ペレットを固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(immobilized metal affinity chromatography、IMAC)によって精製する。メーカー(Clontech Laboratories)の操作手順に従って、自然条件下でグラビティフロー式クロマトグラフィー(gravity-flow-based chromatography)を行う。
【0039】
200mgの細菌細胞ペレットごとに1mLのxTractor細胞溶解緩衝液(Clontech Laboratories)を添加し、EDTAを含有しないプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Diagnostics)、及び25Uのエンドヌクレアーゼ(Thermo Scientific Pierce)を追加することで、細胞溶解を有効に行うことができる。氷上で15分間作用させ、10,000×g、4℃で20分間遠心分離して細胞破片を除去した後、上清を1mLの樹脂を充填したグラビティフローカラムに添加し、室温で30分間作用させる。
【0040】
300mMのイミダゾールを含有する溶出緩衝液を添加することによってナノボディを溶出する前に、カラムを20及び40mMのイミダゾールで2回洗浄する。分子量カットオフが3.5~5kDaであるセルロースエステル膜(cellulose ester membrane)(Spectrum(R) Laboratories)を用いて、PBSに対して透析を行うことにより、イミダゾールを除去して緩衝液を置換する。
【0041】
抗PD-L1ナノボディの各クローン株の相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)のアライメント(alignment)及びアミノ酸配列は、表1に示されている。抗PD-L1ナノボディクローン株#1のアミノ酸配列は、配列番号1である。抗PD-L1ナノボディクローン株#14のアミノ酸配列は、配列番号2である。抗PD-L1ナノボディクローン株#67のアミノ酸配列は、配列番号3である。抗PD-L1ナノボディクローン株#1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列番号4である。抗PD-L1ナノボディクローン株#14のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列番号5である。抗PD-L1ナノボディクローン株#67のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列番号6である。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例2.抗PD-L1ナノボディの表面プラズモン共鳴結合分析(surface plasmon resonance binding assay、SPR binding assay)の結果
本実施例において、抗PD-L1ナノボディの表面プラズモン共鳴結合分析(surface plasmon resonance binding assay、SPR binding assay)の操作手順は、以下の通りである。BIAcore T200(Biacore-GE Healthcare、Piscataway、NJ)により、CM5又はNTAチップをSPR分析する。
【0044】
つまり、10mMの緩衝溶液(pHが4.0、5.5又は6.0)中に、20μg/mLの濃度範囲でタンパク質(PD-L1組換えタンパク質)サンプルを希釈することにより、最大の表面が得られ、チップに固定させるために保留される。表面製造プロセスに従ってリガンド(PD-L1又はPD-L1多重特異性ナノボディ、25、12.5、6.25、3.125、1.5625及び0.78125nM)を選択してチップに塗布する。
【0045】
そして、再生条件検討実験(regeneration scouting)及び表面性能試験(surface performance test)を行った後、再生方法を選択して実験を実行する。そして、結合分析(BINDINGANALYSIS)及び直接結合(DIRECT BINDING)を選択してタンパク質の結合を解析する。動力学的分析(KINETIC ANALYSIS)及び物質移動(MASS TRANSFER)を選択し、実験と結合した動力学的分析を行う。その後、データの分析及び動力学的定数の確定を行う。
【0046】
図1A図1Bは、抗PD-L1ナノボディの表面プラズモン共鳴結合分析の結果を示している。cloneは、クローン株を示し、nbは、ナノボディを示し、RUは、応答ユニット(response unit)を示す。図1A図1Bから分かるように、抗PD-L1ナノボディは、それぞれ0.27及び0.41nM以内のKD値でPD-L1タンパク質に有効に結合することができる
実施例3.PD-1/PD-L1遮断バイオアッセイキット(Blockade Bioassay kit)による抗PD-L1ナノボディのPD-1/PD-L1の軸遮断(axis blockade)の測定
本実施例において、PD-1/PD-L1遮断バイオアッセイキット(Blockade Bioassay kit)による抗PD-L1ナノボディのPD-1/PD-L1の軸遮断(axis blockade)の測定の操作手順は、以下の通りである。1×104のPD-L1 aAPC/CHO-K1細胞を96ウェルプレートに接種し、一晩静置する。翌日、PD-L1 aAPC/CHO-K1細胞を含有するウェルに1×104のPD-1エフェクター細胞を添加する。
【0047】
その後、異なる濃度を有する抗PD-L1ナノボディ(クローン株#1又はクローン株#67)又はアテゾリズマブ(Atezolizumab)(尿路上皮がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、トリプルネガティブ乳がん、小細胞肺がん及び肝細胞がんを治療するためのIgG1アイソタイプ完全ヒト化抗PD-L1モノクローナル抗体)を添加する。6時間後、Bio-GloTM試薬を添加し、GloMax(R) Discoverシステムによって発光を測定し、Sigmaplotソフトウェアを利用してデータを4PL曲線にフィッティングする。
【0048】
図2には、本実施例の結果を示している。cloneは、クローン株を示し、アテゾリズマブ(Atezolizumab)は、尿路上皮がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、トリプルネガティブ乳がん、小細胞肺がん及び肝細胞がんを治療するためのIgG1アイソタイプ完全ヒト化抗PD-L1モノクローナル抗体である。図2から分かるように、抗PD-L1ナノボディクローン株#1及び#67は、PD-L1、APC/PD-1エフェクター共培養系においてPD-L1/PD-1の信号伝達を遮断する。
【0049】
実施例4.抗PD-L1ナノボディのT細胞増殖分析(T cell proliferation assay)の結果
本実施例において、抗PD-L1ナノボディのT細胞(即ち、末梢血単核細胞)増殖分析(T cell(i.e.、peripheral blood mononuclear cell、PBMC)proliferation assay)の操作手順は、以下の通りである。
【0050】
1×106のPBMC細胞を12ウェルプレートに接種する。組換えヒトPD-L1(10μg/ml、Sino Biological、Cat. 10084-H05H)は、存在しても存在しなくてもよい。そして、1μg/mlの抗PD-L1ナノボディ(クローン株#1又はクローン株#67)を添加する。7日後、総細胞数を記録し、FITC共役CD3モノクローナル抗体(Cat#11-0037-42)によって染色する。そして、フローサイトメトリーによって分析する。CD3陽性細胞の数は、CD3細胞パーセンテージ(%)×総細胞数である。CD3モノクローナル抗体単独群を100%とする。
【0051】
図3には、抗PD-L1ナノボディのT細胞増殖分析の結果を示している。**は、p<0.01を示し、***は、p<0.001を示す。図3から分かるように、抗PD-L1ナノボディクローン株#1及び#67は、γδT細胞で誘導された腫瘍細胞(MDA-MB-231)に対する細胞毒性を向上させる。
【0052】
実施例5.抗PD-L1ナノボディによるヒト乳がん細胞株MDA-MB-231に対するgamma delta T(GDT)誘導性細胞毒性の向上効果の評価
本実施例において、抗PD-L1ナノボディによるヒト乳がん細胞株MDA-MB-231(ATCC(American Type Culture Collection)から購入)に対するγδT(GDT)誘導性細胞毒性の向上の実験操作手順は、以下の通りである。エフェクター細胞(effector cell)として、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells、PBMCs)、ナチュラルキラー細胞、又はγδT細胞を使用する。
【0053】
標的細胞(腫瘍細胞株)及びエフェクター細胞を特定の効果/標的(E:T)比率(1:1から50:1まで)で、37℃で24~72時間共培養する。生/死細胞の活性分析について、共培養の前に、全ての腫瘍細胞を緑色蛍光カルセイン-AM(green-fluorescent calcein-AM)によって染色し、そして、共培養した後に、死細胞を赤色蛍光エチジウムホモ二量体-1(red-fluorescent ethidium homodimer-1)によって染色する。メーカーの取扱説明書(Thermo Fisher Scientific)によると、死腫瘍細胞は、緑色蛍光+/赤色蛍光+細胞である。細胞死滅率は、総細胞群のパーセンテージとして表示される。
【0054】
一次γδT細胞の増殖の操作手順は、以下の通りである。ゾレドロン酸(zoledronic acid)(5μM)と1000IU/mlのIL-2とを含有し、かつ10%の多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)を追加してなるX-VIVO15培地(Lonza、Basel、Switzerland)に、ヒトPBMCs(1×107)を2周培養する。細胞数を記録し、蛍光共役CD3、Vγ9、Vδ2及びNKG2D抗体を使用し、フローサイトメトリーによって純度と効力を測定する。
【0055】
一次ナチュラルキラー細胞の増殖の操作手順は、以下の通りである。メーカーの取扱説明書(STEMCELL Technologies Vancouver Canada)に従って、ネガティブセレクションキットを用いてPBMCsからヒトナチュラルキラー細胞を単離する。CD355、CD2抗体(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、ドイツ)、及び500IU/mlのIL-2(PeproTech、Rocky Hill、USA)を含有するX-VIVO15培地(Lonza、Basel、Switzerland)に、ナチュラルキラー細胞を3週間培養し、かつ10%の多血小板血漿(PRP)を追加する。細胞数を記録し、フローサイトメトリーによって純度を測定する。ナチュラルキラー細胞として、蛍光共役CD56及びCD16抗体を使用する。
【0056】
1×105のMDA-MB-231細胞を12ウェルプレートに接種し、一晩静置する。翌日、MDA-MB-231細胞を含有するウェルに3×105の一次γδT細胞を添加する。そして、1μg/mlの抗PD-L1ナノボディ(クローン株#1又はクローン株#67)又は10μg/mlのアテゾリズマブを添加する。48時間後、生/死細胞が媒介する細胞毒性分析により、MDA-MB-231細胞に対する一次γδT細胞の特異的溶解をフローサイトメトリーによって確定する。
【0057】
図4には、抗PD-L1ナノボディによるヒト乳がん細胞株MDA-MB-231に対するγδT(GDT)誘導性細胞毒性の向上の結果を示している。一番左の群は、いずれの抗体を併用していない純粋なγδT細胞処理群を示す。*は、p<0.05を示し、**は、p<0.01を示す。本実施例の結果から分かるように、抗PD-L1ナノボディは、γδT細胞で誘導された腫瘍細胞(MDA-MB-231)に対する細胞毒性を向上させることができる。
【0058】
実施例6.抗PD-L1ナノボディのウエスタンブロッティング(Western blotting)の結果
本実施例において、抗PD-L1ナノボディのウエスタンブロッティング(Western blotting)の操作手順は、以下の通りである。プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有するPRO-PREPタンパク質抽出溶液(iNtRON、台北、台湾)から細胞を取り、4℃で15分間激しく振とうした後、遠心分離をする。上清を回収し、Bio-Rad BCA試薬(Bio-Rad Hercules、CA、USA)を使用してタンパク質の濃度を測定する。30μgの各サンプルのライセートをSDS-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、そして、PVDF膜にエレクトロブロッティングする。TBSTブロッキング剤に5%のBSAを添加し、メンブレン及び一次抗体(TBSTに溶解された)を4℃下で一晩作用させる。
【0059】
そして、4回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase、HRP)共役ヤギ抗マウス又はウサギIgG(Upstate、Billerica、MA、USA)で2時間作用させる。TBSTで4回洗浄した後、転写物とSuperSignal West Pico ECL試薬(Pierce Biotechnology、Rockford、IL、USA)とを一緒に1分間作用させ、そして、Kodak-X-Omatフィルムへの曝露によって化学発光を検出する。
【0060】
図5には、抗PD-L1ナノボディのウエスタンブロッティングの分析結果を示している。矢印は、PD-L1タンパク質の位置、即ち分子量が市販の抗体と一致する位置を示す。使用される細胞株は、非小細胞肺がん細胞株H1975(NCI-H1975 [H-1975、H1975]、ATCC)である。mAbは、モノクローナル抗体を示し、Nbは、ナノボディを示す。市販の抗体は、PD-L1モノクローナル抗体(66248-1-Ig、Proteintech)である。市販抗体群の一次抗体は、PD-L1モノクローナル抗体(1:2500)であり、二次抗体は、抗ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ(anti-rabbit-horseradish peroxidase、anti-Rab-HRP)(1:10000)である。実験群の抗PD-L1ナノボディの濃度は、1ng/mlであり、二次抗体は、抗VHH-HRP(1:10000)である。本実施例の結果から分かるように、抗PD-L1ナノボディクローン株#1及び#67は、PD-L1に結合した後に、OKT3(抗CD3モノクローナル抗体)誘導性T細胞の増殖を回復する。
【0061】
実施例7.抗PD-L1ナノボディのフローサイトメトリー(flow cytometric analysis)の結果
本実施例において、抗PD-L1ナノボディのフローサイトメトリー(flow cytometric analysis)の操作手順は、以下の通りである。抗PD-L1ナノボディ(1ng/ml)について、Fastlinkフルオレセインマーカーキット(Abnova)を用いてFITCフルオレセインによって前染色を行う。プロセスは、操作手順書に従って行う。FITC共役PD-L1モノクローナル抗体(1:500、BD Pharmingen、クローン株MIH1、Cat.:558065)又はFITC共役抗PD-L1ナノボディ(1ng/ml)によってMDA-MB-231、A549又はH1975細胞を染色する。前記染色は、1%のBSAを含有するPBSで45分間行う。PBSで洗浄した後、FL1チャネルを使用してフローサイトメトリーによって細胞を分析する。
【0062】
図6A及び図6Bには、抗PD-L1ナノボディのフローサイトメトリーの分析結果を示している。図6Aの(a)において、nbは、ナノボディを示し、Abは、抗体を示し、FITCは、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)を示す。図6Aの(b)において、mAbは、モノクローナル抗体を示し、H1975は、非小細胞肺がん細胞株であり、Alexa Fluor 488-Hは、488nmのレーザー光で励起される明るい緑色の蛍光色素である。図6Bの(a)において、A549は、ヒト非小細胞肺がん細胞株である。図6Bの(b)において、MDA-MB-231は、ヒト乳がん細胞株である。本実施例の結果から分かるように、フローサイトメトリーの分析により、抗PDL-1ナノボディクローン株#1(ルシフェリンで標識された)は、細胞サンプル中のPD-L1の発現を検出するために用いられる。
【0063】
実施例8.抗PD-L1ナノボディの免疫細胞化学(immunocytochemistry)の分析結果
本実施例において、抗PD-L1ナノボディの免疫細胞化学(immunocytochemistry)の分析の操作手順は、以下の通りである。腫瘍細胞(1×105)を6ウェルプレートのスライドガラスに接種し、一晩培養する。特定の処理を行った後、細胞を1%のパラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)に固定し、PBSで洗浄し、0.5%のBSAを含有するPBSに0.1% Triton X-100を使用して30分間透過化させ、2%のBSAでブロッキングし、特異的抗体(2%のBSA/0.05%のTween-20を含有するPBS(PBST)に混合された)と作用させる。
【0064】
洗浄した後、細胞とフルオレセイン共役二次抗体とを一緒に作用させる。PBSTで洗浄し、退色剤及び4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(4’,6-diamidino-2-phenylindole、DAPI)を含有する水溶性の封入剤で封入する。Leica TCS SP8 X共焦点顕微鏡(Leica)によって画像を分析する。
【0065】
図7には、抗PD-L1ナノボディの免疫細胞化学の分析結果を示している。H1975は、一種類の非小細胞肺がん細胞株であり、cloneは、クローン株を示し、抗PDL-1ナノボディの濃度は、1ng/mlであり、二次抗体は、抗VHH-フルオレセイン(fluorescein、FITC)(1:5000)であり、pan-カドヘリン(pan-cadherin)は、一種類の細胞膜マーカーである。pan-カドヘリン及びPD-L1の共局在は、特異的ナノボディによって膜結合型(membrane bound)のPD-L1を検出することを説明するために用いられる。本実施例の結果から分かるように、抗PDL-1ナノボディクローン株#1は、細胞サンプル中のPD-L1の発現を検出するために用いられる。
【0066】
上記をまとめると、本発明の抗免疫チェックポイントナノボディ(即ち、抗PD-L1抗体)の効果は、以下の通りである。
【0067】
表面プラズモン共鳴結合分析(surface plasmon resonance binding assay、SPR binding assay)により、抗PD-L1ナノボディがそれぞれ0.27及び0.41nM以内のKD値でPD-L1タンパク質に有効に結合することを証明し、
PD-1/PD-L1遮断バイオアッセイキット(Blockade Bioassay kit)によるPD-L1ナノボディのPD-1/PD-L1の軸遮断(axis blockade)の測定により、抗PD-L1ナノボディがPD-L1、APC/PD-1エフェクター共培養系においてPD-L1/PD-1の信号伝達を遮断すること、及び、抗PD-L1ナノボディがγδT細胞で誘導された腫瘍細胞(MDA-MB-231)に対する細胞毒性を向上させることを証明し、
ウエスタンブロッティング(Western blotting)により、抗PD-L1ナノボディがPD-L1に結合した後に、OKT3(抗CD3モノクローナル抗体)誘導性T細胞増殖を回復することを証明し、及び、
フローサイトメトリー及び免疫細胞化学(immunocytochemistry)の分析により、PDL-1ナノボディが細胞サンプル中のPD-L1の発現の検出するために用いられることを証明する。
【0068】
上記効果によれば、がん及び免疫関連疾患を治療する効果を達成することができる。特に、従来の抗体は、遺伝子をベクターによって細胞にトランスフェクトしてから抗体の機能を発揮することができるため、収率が低くて効果が低いという欠点がある。本発明の抗免疫チェックポイントナノボディは、インビトロで大量に製造してそのまま投与すべき個体に投与して治療を行うことができる。なお、本発明によれば、PD-L1の発現レベルを検出できる効果も達成することができる。
【0069】
上記の内容は、例示的なものであり、本発明を限定するものではない。本発明の精神及び範囲から逸脱しない改良や変更は、いずれも添付の特許請求の範囲に含まれる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
【配列表】
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