(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】移動体、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 5/00 20060101AFI20230911BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230911BHJP
B64C 27/04 20060101ALI20230911BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20230911BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230911BHJP
【FI】
G08G5/00 A
B64C39/02
B64C27/04
B64C13/18 Z
G05D1/02 L
(21)【出願番号】P 2022084750
(22)【出願日】2022-05-24
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】519265251
【氏名又は名称】株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】大久保 英徹
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 賢司
(72)【発明者】
【氏名】アハマヂネジャド ファルザド
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-002839(JP,A)
【文献】国際公開第2021/210302(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/18
27/04
39/02
G05D 1/02
G08G 1/00-99/00
H02G 1/00- 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体であって、
レーザ光を照射することで対象物を検出し、検出した対象物の位置を示す位置情報を出力する2次元LiD
ARと、
前記2次元LiD
ARが照射するレーザ光を反射する反射部と、
前記反射部によって反射されたレーザ光によって、前記2次元LiD
ARによって検出された対象物の位置を示す反射位置情報と、前記反射部によって反射されないレーザ光によって、前記2次元LiD
ARによって検出された対象物の位置を示す非反射位置情報とにもとづいて前記移動体の移動方向を検出する検出部と、
を備えた移動体。
【請求項2】
前記非反射位置情報および前記反射位置情報は対象物の位置を角度で示す情報であり、 前記検出部は、前記非反射位置情報が示す第1角度から第1基準角度を減算した値と、前記反射位置情報が示す第2角度から第2基準角度を減算した値と、を加算した値の符号にもとづいて前記移動体の移動方向を検出する請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
レーザ光を照射することで対象物を検出し、検出した対象物の位置を示す位置情報を出力する2次元LiD
ARと、前記2次元LiD
ARが照射するレーザ光を反射する反射部と、を備えた移動体の制御方法であって、
前記反射部によって反射されたレーザ光によって、前記2次元LiD
ARによって検出された対象物の位置を示す反射位置情報を取得し、
前記反射部によって反射されないレーザ光によって、前記2次元LiD
ARによって検出された対象物の位置を示す非反射位置情報を取得し、
前記反射位置情報と前記非反射位置情報とにもとづいて前記移動体の移動方向を検出する制御方法。
【請求項4】
レーザ光を照射することで対象物を検出し、検出した対象物の位置を示す位置情報を出力する2次元LiD
ARと、前記2次元LiD
ARが照射するレーザ光を反射する反射部と、を備えた移動体のコンピュータに、
前記反射部によって反射されたレーザ光によって、前記2次元LiD
ARによって検出された対象物の位置を示す反射位置情報を取得するステップ、
前記反射部によって反射されないレーザ光によって、前記2次元LiD
ARによって検出された対象物の位置を示す非反射位置情報を取得するステップ、
前記反射位置情報と前記非反射位置情報とにもとづいて前記移動体の移動方向を検出するステップ、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電線等の空中架線の劣化箇所を目視確認することは、検査対象である架線が長距離にわたり、また高所にあるため容易ではない。その解決策として、架線につり下がりながら走行する装置にカメラを搭載し、その映像データを地上局や移動局で受信して確認する方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、最近では自律飛行可能な無人飛行体を用いた巡視が提案されている。例えば、無人ヘリコプターに自動飛行装置、監視カメラ、離隔検出カメラ、およびテレメータ手段を搭載し、地上局との間でデータの送受信をして、送電線の状態を監視する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、自律飛行可能な無人飛行体による点検においては、カメラやソナーを利用して障害物に接触しないようにする機能が搭載されている(例えば、特許文献3参照)。また無人飛行体の航路設定も工夫が必要であり、実航路を設定する、向かう鉄塔の順序を指定する等の手法がとられている(例えば、特許文献4、5参照)。
【0005】
さらに、無人飛行体の自律飛行による架線点検を可能とするために、支持部材(枠)を用いた飛行体が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-248130号公報
【文献】特開平4-49803号公報
【文献】特開2005-265699号公報
【文献】特開2017-131019号公報
【文献】特開2019-209861号公報
【文献】特開2021-115913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献6に開示された技術では、架線上に存在する障害物(例えば電線に引っかかった凧等)が枠よりも大きい場合には対応できない。また、カメラや3次元LiDARを利用して架線に沿った飛行を行う方法が考えられるが、移動体には一般的に搭載重量の制限があり、複雑な構造の機器や複数の機器を搭載するのは燃費の面からも困難である。
【0008】
さらに3次元LiDARは高価であり、かつ複数投光器を搭載していることから重量が大きい。2次元LiDARを利用すれば距離検知は可能であるが、架線に沿った航行を行わせるためには相対角度検知の必要もあるため、従来技術では2次元LiDARを2台以上搭載する必要があり、重量的に問題となる。
【0009】
このように、より軽量でコストをかけずに架線などの対象物から一定の距離を保ちつつ対象物に沿った移動を移動体に行わせることは困難であった。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、1つの2次元LiDARで対象物に沿った移動を可能とする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、移動体であって、レーザ光を照射することで対象物を検出し、検出した対象物の位置を示す位置情報を出力する2次元LiDARと、前記2次元LiDARが照射するレーザ光を反射する反射部と、前記反射部によって反射されたレーザ光によって、前記2次元LiDARによって検出された対象物の位置を示す反射位置情報と、前記反射部によって反射されないレーザ光によって、前記2次元LiDARによって検出された対象物の位置を示す非反射位置情報とにもとづいて前記移動体の移動方向を検出する検出部と、を備えた。
【0012】
本発明の一態様は、上記の移動体であって、前記非反射位置情報および前記反射位置情報は対象物の位置を角度で示す情報であり、前記検出部は、前記非反射位置情報が示す第1角度から第1基準角度を減算した値と、前記反射位置情報が示す第2角度から第2基準角度を減算した値と、を加算した値の符号にもとづいて前記移動体の移動方向を検出する。
【0013】
本発明の一態様は、レーザ光を照射することで対象物を検出し、検出した対象物の位置を示す位置情報を出力する2次元LiDARと、前記2次元LiDARが照射するレーザ光を反射する反射部と、を備えた移動体の制御方法であって、前記反射部によって反射されたレーザ光によって、前記2次元LiDARによって検出された対象物の位置を示す反射位置情報を取得し、前記反射部によって反射されないレーザ光によって、前記2次元LiDARによって検出された対象物の位置を示す非反射位置情報を取得し、前記反射位置情報と前記非反射位置情報とにもとづいて前記移動体の移動方向を検出する制御方法。
【0014】
本発明の一態様は、レーザ光を照射することで対象物を検出し、検出した対象物の位置を示す位置情報を出力する2次元LiDARと、前記2次元LiDARが照射するレーザ光を反射する反射部と、を備えた移動体のコンピュータに、前記反射部によって反射されたレーザ光によって、前記2次元LiDARによって検出された対象物の位置を示す反射位置情報を取得するステップ、前記反射部によって反射されないレーザ光によって、前記2次元LiDARによって検出された対象物の位置を示す非反射位置情報を取得するステップ、前記反射位置情報と前記非反射位置情報とにもとづいて前記移動体の移動方向を検出するステップ、を実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、1つの2次元LiDARで対象物に沿った移動を可能とする技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図14A】ドローンを上方向から見た場合のA面、B面を示す図。
【
図14B】ドローンを上方向から見た場合のA面、B面を示す図。
【
図14C】ドローンを上方向から見た場合のA面、B面を示す図。
【
図14D】ドローンを上方向から見た場合のA面、B面を示す図。
【
図15】制御部の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、実施形態の移動体の斜視図である。以下の説明では、移動体の一例としてドローン100が用いられる。
【0018】
ドローン100は、1つの2次元LiD
AR200、反射部210、および4つのブレード152を備える。なお、
図1に示されるブレード152は回転中の状態を示している。ドローン100は、ブレード152を回転させるモータの回線数を制御することで、ドローン100を推進させたり、上下移動、左右移動(ロール)、前後移動(ピッチ)、回転(ヨー)させることができる。
【0019】
2次元LiDAR200は、ドローン100の進行方向に向けて設けられる。2次元LiDAR200は、レーザ光を照射することで、基準方向(本実施形態では移動方向)に対して交差する平面を走査する。そして、2次元LiDAR200は、レーザ光を照射することで対象物を検出し、検出した対象物の位置を示す位置情報を出力する。具体的に、2次元LiDAR200は、対象物の距離と、対象物を検出した時の角度を出力する。本実施形態では、対象物の位置を示す位置情報として角度を用いる。
【0020】
なお、2次元LiDAR200の解像度にもよるが、1つの対象物であっても、対象物には大きさがあるので、複数の角度で対象物が検出されることが一般的である。例えば、30度方向に対象物が1つある場合、29度から31度といった範囲内の角度が複数検出される。この場合、連続して検出された角度のうちから定まる1つの角度を出力するものとする。例えば、2次元LiDAR200は、連続して検出された角度の平均値が対象物の角度として出力する。なお、2次元LiDAR200は複数の角度を出力し、ドローン100のファームウェアにおいて、出力された複数の角度から1つの角度を導出してもよい。
【0021】
反射部210は、2次元LiDAR200から照射されたレーザ光を反射する。反射方向は、ドローン100の上方向である。よって、2次元LiDAR200は、反射されないレーザ光(「非反射レーザ光」ともいう)と、反射されたレーザ光(「反射レーザ光」ともいう)による2つの走査平面で対象物を検出する。2つの走査平面の詳細については後述する。また、本実施形態では2次元LiDAR200は上記のようにレーザ光を照射するが、レーザ光に代えて、LED(Light Emitting Diode)による光を照射してもよい。
【0022】
以下の説明において、Z軸の正方向を上方向又は単に上と称し、Z軸の負方向を下方向又は単に下と称し、X軸の正方向を右方向又は単に右と称し、X軸の負方向を左方向又は単に左と称し、Y軸の正方向を後方向又は単に後ろと称し、Y軸の負方向を前方向又は単に前と称することがある。例えば、
図1において、移動方向は前方向となる。
【0023】
図2は、ドローン100を上方向から見た図であり、
図3は、ドローン100を前方向から見た図であり、
図4は、ドローン100を右方向から見た図である。
【0024】
次に、2つの走査平面について説明する。上述したようにLiDAR200は、基準方向に対して交差する平面を走査するが、
図5、6、7に示されるように、反射部210によってレーザ光が反射される。
図5、
図6、
図7は、2つの走査平面を示す図である。非反射レーザ光により走査される走査平面をA面と表現する。反射レーザ光により走査される走査平面をB面と表現する。
【0025】
図5は、A面とB面を斜め右の前方向から見た図である。
図6は、A面とB面を右方向から見た図である。
図7は、A面とB面を前方向から見た図である。
【0026】
図5、
図6、
図7に示されるように、A面はドローン100の真上方向に広がる平面であり、B面はドローン100の斜め前方向に広がる平面である。したがって、移動方向に移動している場合に先に対象物が検出される面はB面である。
【0027】
次に、ドローン100の機能構成について説明する。
図8は、ドローン100の機能構成を表す機能ブロック図である。ドローン100は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、ドローン制御プログラムを実行することによって通信部110、2次元LiD
AR200、ロータ150、カメラ170、および制御部120を備える装置として機能する。なお、通信部110、および制御部120の各機能の全てまたは一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。ドローン制御プログラムは、上述したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。ドローン制御プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。カメラ170は、例えば全天球カメラであり、ドローン100の前後左右上下方向を撮影可能である。
【0028】
通信部110は、ネットワークインタフェースである。通信部110は、GPS(Global Positioning System)通信部111、およびリモコン通信部112で構成される。GPS通信部111は、GPS等の人工衛星から受信された電波を受信する。受信された電波により、ドローン100の位置が測定される。リモコン通信部112は、ドローン100を操縦するリモコンと通信する。これらの他に、無線LANにより通信や、5G(5th Generation)やLTE(Long Term Evolution)などによる通信を行うための機能を設けてもよい。
【0029】
ロータ150は、姿勢制御部122の制御に応じて、ドローン100を空中自在に飛行させるための揚力を発生させる動力部である。本実施形態では、ロータ150を4基備えているが、ドローン100が備えるロータ350の数は、ドローン100に要求される飛行性能等に応じて、3基、4基、6基、8基等の複数であってよい。
【0030】
ロータ150は、モータ151、およびブレード152を備える。モータ151は、例えばDCブラシレスモータである。モータ351の回転軸にはブレード352が取り付けられている。モータ351は、制御部120の制御に応じてブレード352を回転させる。ブレード352は回転することによりドローン100に揚力を発生させる。ロータ350の駆動によってドローン100を移動させる方法については公知であるため詳細な説明を省略する。
【0031】
図8における制御部120はドローン100の各部の動作を制御する。制御部120は、例えばCPU等のプロセッサ、およびRAMを備えた装置により実行される。制御部120は、ドローン制御プログラムを実行することによって、検出部121、および姿勢制御部122として機能する。
【0032】
検出部121は、ドローン100が対象物(本実施形態では架線)に対して平行に移動しているか否か、左に傾いて移動しているか否か、または右に傾いて移動しているか否かを検出する。なお、本実施形態において、ドローン100は、ロール方向およびピッチ方向のいずれにも傾いていない(0度)ものとする。
【0033】
姿勢制御部122は、モータ151の回転数を制御することで、上述したような、ドローン100の推進、上下移動、左右移動、前後移動、回転などを行い、ドローン100を制御する。特に本実施形態では検出部121によってドローン100が対象物に対して左右に傾いている場合には、対象物に対して平行に移動するようにドローン100を制御する。
【0034】
次に、検出部121による検出方法について説明する。
図9は、検出方法を説明するための図である。
図9は、LiDAR200の走査範囲をドローン100の前方向から見た図である。本実施形態におけるLiDAR200の走査範囲は、前方向からみて円形状となる範囲のうち、右側の90度分の扇型部分を除いた範囲としている。なお、レーザ光は徐々に減衰するため、走査範囲は明確な円を示すわけではないが、本実施形態では便宜的に範囲を円は用いて示している。
【0035】
LiDAR200は、対象物が位置する角度として、右斜め下を0度として、時計回りに増加していき、右斜め上の270度までの角度を検出し、出力する。
図9の矢印は、角度が増加する方向を示している。以下の説明において、
図9に示される座標を基本座標と表現する。
【0036】
基本座標におけるA度は、ドローン100の真上方向の角度を示す。A度は、右下の0度から数えた場合に225度となる。B度方向のレーザ光は反射されることから、B度方向も結果的にドローン100の上方向となるが、角度で表すとB度は0度から数えた場合に45度となる。A度は、第1基準角度の一例である。B度は、第2基準角度の一例である。
【0037】
図9に示される走査範囲のうち、A面は、領域CDEに対応し、B面は領域FGHJに対応する。なお、B面における線分FJは反射部210の反射面に対応する。そして、
図5などで示したように、実際に走査される平面としては、弧GHの方が、線分FJよりも上の位置になる。
【0038】
次に、上記方法で架線がどのように検出されるかを、例を用いて説明する。
図10、
図11は、ドローン100が架線に平行して移動しており、かつ架線がドローン100の右上に存在する場合の検出例を示す図である。
【0039】
図10は、検出例において、ドローン100と架線をドローン100の右方向から見た図である。
図11は、検出例において、ドローン100を前方向から見た図である。
図12Aは、A面における架線の検出位置を示す図である。
図12Bは、B面における架線の検出位置を示す図である。なお、
図12Bの矢印に示されるように、B面は反射されるので、角度が増加する方向がA面とは逆の方向になる。
【0040】
図13は、検出位置を基本座標に示した図である。A面における検出位置の角度をa度とする。B面における検出位置の角度をb度とする。そして、M=a-A+b-Bとする。また、α=a-Aとし、β=b-Bとする。よってM=α+βである。a度は、第1角度の一例である。b度は、第2角度の一例である。したがって、αは、第1角度から第1基準角度を減算した値である。βは、第2角度から第2基準角度を減算した値である。よって、Mは、第1角度から第1基準角度を減算した値αと、第2角度から第2基準角度を減算した値βと、を加算した値である。
【0041】
図13には、丸で囲んだプラスとマイナスが示されているが、これはαとβの符号を示す。具体的に、αは、A面において検出位置が線分Lより基本座標において右側に位置する場合にプラスとなり、検出位置が線分Lより基本座標において左側に位置する場合にマイナスとなる。したがって、A面における線分Lの右側をプラスとし、左側をマイナスとしている。
【0042】
同様に、βは、B面において検出位置が線分Lより基本座標において右側に位置する場合にマイナスとなり、検出位置が線分Lより基本座標において左側に位置する場合にプラスとなる。したがって、B面における線分Lの右側をマイナスとし、左側をプラスとしている。
【0043】
なお、基本座標は、ドローン100を前方向から見た図であるため、基本座標において右側に位置することは、ドローン100を後ろから観測する人にとっては、検出位置は左側に存在する。同様に、基本座標において左側に位置することは、ドローン100を後ろから観測した人にとっては、検出位置は右側に存在する。
【0044】
上述したαとβの符号に関する性質を踏まえ、Mの符号について説明する。
図14A、
図14B、
図14C、
図14Dは、ドローン100を上方向から見た場合のA面、B面を示す図である。また、矢印はドローン100の中心線と移動方向を示す。
図14A、
図14B、
図14C、
図14Dにおけるドローン100の移動方向は概ね図における上方向である。W1~W8は架線を示す。
【0045】
また、丸で囲まれたプラスとマイナスは、架線を検出した場合のαとβ符号を示す。
図14Aに示されるように、B面の右側で架線を検出した場合には、βはプラスとなり、左側で架線を検出した場合には、βはマイナスとなる。A面の右側で架線を検出した場合には、αはプラスとなり、左側で架線を検出した場合には、αはマイナスとなる。また、A面における検出位置と中心線の距離をd1としたとき、この関数d1は、αの絶対値が増加するにつれて増加する単調増加関数である。B面における検出位置と中心線の距離をd2としたとき、この関数d2は、βの絶対値が増加するにつれて増加する単調増加関数である。よって、d1、d2の逆関数も単調増加関数である。したがって、検出位置が中心線から遠くなるほど、αの絶対値とβの絶対値は大きくなる。
【0046】
以上を踏まえ、M(=α+β)の符号について説明する。Mは、ドローン100が架線と平行に移動している場合には0となり、架線に対して左に傾いている場合にはプラスとなり、架線に対して右に傾いている場合にはマイナスとなる。これらについて
図14B、
図14C、
図14Dを用いて説明する。
【0047】
まずドローン100が架線と平行に移動している場合について、
図14Bを用いて説明する。
図14Bにおいて、B面において架線W1が検出された場合、βはマイナスとなり、A面において架線W1が検出された場合、αはプラスとなる。また、B面における架線W1の検出位置と中心線との距離と、A面における架線W1の検出位置と中心線との距離は等しい。したがって、αとβの絶対値は等しい。よってα+β=0となる。
【0048】
図14Bにおいて、B面において架線W2が検出された場合、βはプラスとなり、A面において架線W2が検出された場合、αはマイナスとなる。また、B面における架線W1の検出位置と中心線との距離と、A面における架線W1の検出位置と中心線との距離は等しい。したがって、αとβの絶対値は等しい。よってα+β=0となる。このように、ドローン100が架線と平行に移動している場合には、M=0となる。
【0049】
次に、ドローン100が架線に対して左に傾いている場合について、
図14Cを用いて説明する。
図14Cにおいて、B面において架線W3が検出された場合、βはマイナスとなり、A面において架線W3が検出された場合、αはプラスとなる。また、B面における架線W1の検出位置と中心線との距離は、A面における架線W1の検出位置と中心線との距離より小さい。したがって、αの絶対値はβの絶対値より大きい。よってα+β>0となる。
【0050】
図14Cにおいて、B面において架線W4が検出された場合、βはプラスとなり、A面において架線W3が検出された場合、αはプラスとなる。よってα+β>0となる。
【0051】
図14Cにおいて、B面において架線W5が検出された場合、βはプラスとなり、A面において架線W3が検出された場合、αはマイナスとなる。また、B面における架線W1の検出位置と中心線との距離は、A面における架線W1の検出位置と中心線との距離より大きい。したがって、αの絶対値はβの絶対値より小さい。よってα+β>0となる。
【0052】
このようにドローン100が架線に対して左に傾いている場合には、M>0となる。
【0053】
次に、ドローン100が架線に対して右に傾いている場合について、
図14Dを用いて説明する。
図14Dにおいて、B面において架線W6が検出された場合、βはマイナスとなり、A面において架線W6が検出された場合、αはプラスとなる。また、B面における架線W1の検出位置と中心線との距離は、A面における架線W1の検出位置と中心線との距離より大きい。したがって、αの絶対値はβの絶対値より小さい。よってα+β<0となる。
【0054】
図14Dにおいて、B面において架線W7が検出された場合、βはマイナスとなり、A面において架線W7が検出された場合、αはマイナスとなる。よってα+β<0となる。
【0055】
図14Dにおいて、B面において架線W8が検出された場合、βはプラスとなり、A面において架線W3が検出された場合、αはマイナスとなる。また、B面における架線W1の検出位置と中心線との距離は、A面における架線W1の検出位置と中心線との距離より小さい。したがって、αの絶対値はβの絶対値より大きい。よってα+β<0となる。
【0056】
このようにドローン100が架線に対して右に傾いている場合には、M<0となる。
【0057】
以上説明したように、Mの符号により、ドローン100が架線と平行か否か、左に傾いているか否か、また右に傾いているか否かを検出できる。よって、検出部121は、Mの符号によって対象物に対して左右に傾いているか否かを検出する。
【0058】
次に、制御部120の処理をフローチャートを用いて説明する。
図15は、制御部120の処理の流れを示すフローチャートである。
図15において、検出部121は、a度を取得し(ステップS101)、続いてb度を取得する(ステップS102)。検出部112は、a度からA度を減算してαを導出する(ステップS103)。検出部112は、b度からB度を減算してβを導出する(ステップS104)。検出部112は、Mを導出する(ステップS105)。
【0059】
検出部112は、Mが0か否かを判定する(ステップS106)。Mが0の場合には(ステップS106:YES)、ドローン100は架線と平行に移動しているため、制御部120は姿勢制御を行うことなく処理を終了する。Mが0ではない場合には(ステップS106:NO)、ドローン100は架線と平行に移動していないため、検出部112は、M>0か否かを判定する(ステップS107)。
【0060】
M>0の場合には(ステップS107:YES)、ドローン100は架線に対して左に傾いているので、検出部112は、ドローン100の移動方向を左として検出する。そのため、検出部121は、姿勢制御部122に対し、右にヨーイングするように指示して(ステップS108)、処理を終了する。M>0ではない場合には(ステップS107:NO)、M<0であることから、ドローン100は架線に対して右に傾いているので、検出部112は、ドローン100の移動方向を右として検出する。そのため、検出部121は、姿勢制御部122に対し、左にヨーイングするように指示して(ステップS109)、処理を終了する。
【0061】
このようにすることで、対象物である架線と平行に移動可能となることから、1台の2次元LiDARで対象物に沿った移動を可能とする技術を提供することができる。なお、上述したステップS101は、反射部によって反射されたレーザ光によって、2次元LiDARによって検出された対象物の位置を示す反射位置情報を取得するステップの一例である。ステップS102は、反射部によって反射されないレーザ光によって、前記2次元LiDARによって検出された対象物の位置を示す非反射位置情報を取得するステップの一例である。ステップS103-105は、反射位置情報と前記非反射位置情報とにもとづいて前記移動体の移動方向を検出するステップの一例である。
【0062】
なお、上記ステップS106では、M=0か否かを判定しているが、Mがほぼ0か否かを判定してもよい。すなわち、適切な正の定数cを用いて|M|<cであるか否かを判定してもよい。これは、a度などの検出された角度自体に誤差があることから、M=0だとしても実際には若干傾いていると考えるのが妥当であるためである。|M|<cであるか否かを判定することにより、M=0か否かを判定する場合と比較して、ステップS107に分岐する回数が大幅に減ることから、姿勢制御部122も含めて処理負荷を軽減することができる。なお、定数cは、実験などにより得られた知見から予め定めておくか、ドローン100の運用者によって設定可能としてもよい。
【0063】
上述した実施形態では、2次元LiDAR200が検出する角度を用いて説明したが、例えば距離を一定に保つように制御することで、平行かつ一定の距離で対象物に沿った移動を可能とする技術を提供することができる。
【0064】
移動体として、本実施形態ではドローンを例に説明したが、対象物に沿って移動する移動体であれば本実施形態を適用できる。例えば、ガードレールや白線に沿って移動する車両などにも適用することができる。
【0065】
上述した実施形態では、架線の検出範囲から外れる走査範囲の一部を鏡を利用して斜め前に反射させることにより架線との位置および架線との相対角度を知ることができるようにした。検出対象が架線であるため広範囲の走査は必要ではなく、走査範囲の略半分を鏡を利用した反射により前方の走査に割り当てることにより1台の2次元LiDARで距離検知と相対角度検知の両方が可能となった。
【0066】
さらに、1台の2次元LiDARで足りるため、ドローン100の軽量化を図ることができるので、ドローン100の燃費を向上することができる。
【0067】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0068】
100…ドローン、110…通信部、120…制御部、121…検出部、122…姿勢制御部、200…2次元LiDAR、210…反射部
【要約】
【課題】1つの2次元LiDARで対象物に沿った移動を可能とする技術を提供すること。
【解決手段】移動体であって、レーザ光を照射することで対象物を検出し、検出した対象物の位置を示す位置情報を出力する2次元LiDARと、前記2次元LiDARが照射するレーザ光を反射する反射部と、前記反射部によって反射されたレーザ光によって、前記2次元LiDARによって検出された対象物の位置を示す反射位置情報と、前記反射部によって反射されないレーザ光によって、前記2次元LiDARによって検出された対象物の位置を示す非反射位置情報とにもとづいて前記移動体の移動方向を検出する検出部と、を備えた。