(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】放電ランプおよびオゾン生成方法
(51)【国際特許分類】
H01J 65/00 20060101AFI20230911BHJP
H01J 61/30 20060101ALI20230911BHJP
H01J 61/54 20060101ALI20230911BHJP
H01J 61/76 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
H01J65/00 C
H01J61/30 Q
H01J61/54 N
H01J61/76
(21)【出願番号】P 2022146006
(22)【出願日】2022-09-14
(62)【分割の表示】P 2021081080の分割
【原出願日】2017-03-28
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
(72)【発明者】
【氏名】今井 正人
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和泉
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-316041(JP,A)
【文献】特開2008-135194(JP,A)
【文献】特開2017-059321(JP,A)
【文献】米国特許第06858988(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 65/00
H01J 61/30
H01J 61/54
H01J 61/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンを生成する紫外線を放射可能なエキシマランプであって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、前記放電容器の両端部付近において前記放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え、
前記放電容器の軸方向長さが10mm~30mmであり、
前記放電容器の外径が3mm~10mmであり、
前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において、一方の放電容器端部付近から他方の放電容器端部付近にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器の軸方向に関して前記放電容器内の両端部側に放電が偏っている誘電体バリア放電が生じることを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記放電容器の肉厚が、0.2mm~4mmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエキシマランプを備えたことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のエキシマランプを備えたことを特徴とするオゾン発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプなどの放電ランプに関し、特に、人に対して安全に低濃度オゾンを生成可能なランプ構成に関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプでは、放電容器の外表面などに電極対を配置し、放電容器内に希ガスなどを封入する、電極間に電圧を印加させることで誘電体バリア放電が生じ、放電容器からランプ外に向けて紫外線を放射する。紫外線照射によって生じるオゾンは、殺菌能力(酸化力)があるため、脱臭装置、除菌/殺菌装置などの光源としてエキシマランプを使用することができる。
【0003】
例えば、2つのエキシマランプを容器内に配置し、第1のエキシマランプから紫外線を照射してオゾンを生成させるとともに、第2のエキシマランプから異なる波長の紫外線を照射することで、活性酸素を生成する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
殺菌、脱臭などを行う場合、その対象物に対して効果のある範囲でオゾンを生成すればよい。したがって、対象物のサイズや構成によっては、エキシマランプを小型化するのが望ましい。しかしながら、従来のエキシマランプでは、必要以上に高濃度(多量)のオゾンが生成されるので、低濃度(少量)のオゾンを生成するためには複雑なランプ点滅制御回路を必要としている。そのため、装置故障により連続点灯状態や過電力点灯状態となったときには、高濃度のオゾンが流出するおそれがある。また、高濃度オゾンの流出を防ぐために、オゾンセンサを用いる等の安全対策が必要となり、装置が大型化して大きな消費電力を伴う。
【0006】
したがって、余剰なオゾンを生成させないように紫外線を照射することが可能なエキシマランプなどの放電ランプが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様であるエキシマランプは、オゾンを生成する紫外線を放射可能なエキシマランプであって、放電ガスが封入された筒状の放電容器と、それぞれ放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、放電容器の両端部付近において放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え、放電容器の軸方向長さが10mm~30mmであり、放電容器の外径が3mm~10mmであり、一対の電極が、それぞれ、放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され、一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、放電容器内において、一方の放電容器端部付近から他方の放電容器端部付近にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、放電容器の軸方向に関して放電容器内の両端部側に放電が偏っている誘電体バリア放電が生じる。例えば、放電容器の肉厚が、0.2mm~4mmの範囲内である。本発明の他の態様である紫外線照射装置は、上記エキシマランプを備える。本発明の他の態様であるオゾン発生装置は、上記エキシマランプを備える。
【0008】
本発明の他の態様である放電ランプは、放電ガスが封入された筒状の放電容器と、放電容器の外周面に沿って、それぞれ軸方向に延びる一対の電極とを備える。例えば、放電容器の外径は、3mm~10mmの範囲であり、放電容器の軸方向長さが、10mm~30mmの範囲であり、放電ガスが、0.1kPa~30kPaの範囲内に定められた希ガスで構成することが可能である。本発明の放電ランプでは、放電容器内において局所的に生じた放電から放射された紫外線が、少なくとも一方の電極により遮られる。ここで、「局所的に生じた放電」とは、電極軸に関して、両端部側などに偏った放電を示す。
【0009】
本発明では、偏った放電による紫外線が電極によって遮光されるため、余剰のオゾン生成を抑えることができる。例えば、少なくとも一方の電極が、放電容器の軸方向もしくは径方向に関して偏って強い放電が生じる空間領域に対向する位置に配置されている。
【0010】
例えば一対の電極が、放電容器の軸方向に沿って対向配置され、それぞれ、放電容器と面接触する筒状電極で構成され、筒状電極の電極軸方向長さが2mm~15mmの範囲に定めることが可能である。
【0011】
本発明の他の態様のおける放電ランプは、放電ガスが封入された放電容器内で放電容器の軸方向もしくは径方向に関して偏って生じた強い放電から放電容器の外部に向けて放射された紫外線の少なくとも一部を遮ることによって局所的にオゾンを生成する。
【0012】
本発明の他の態様におけるオゾン生成方法は、放電ガスが封入された筒状の放電容器の外周面に沿ってそれぞれ軸方向に延びる一対の電極を配置し、局所的にオゾンが生成されるように、一対の電極の間に高周波電圧を印加することによって放電容器内において生じた放電から放射された紫外線を少なくとも一方の電極により遮る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、不要なオゾンを生成させないように、局所的に紫外線を照射して、局所的にオゾンを生成することで、高濃度のオゾンが生成されて流出することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態である放電ランプの概略的側面図である。
【
図2】放電ランプを端部側から見た概略的正面図である。
【
図3】
図2のラインA-A’に沿った放電ランプの概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態である放電ランプの概略的側面図である。
図2は、放電ランプを端部側から見た概略的正面図である。
【0017】
放電ランプ10は、内部に放電空間Sを形成し、石英ガラスなどで成形される筒状の放電容器20を備える。放電容器20の両端部20T1、20T2側には、互いに極性の異なる一対の電極30、40が配置されている。放電ランプ10は、ここでは小型エキシマランプとして構成されており、放電容器の軸方向長さWは、10mm~30mmの範囲、放電容器20の外径Dは、3mm~10mmの範囲であり、一対の電極30、40の間の軸方向距離(電極間距離L)は、2mm~15mmの範囲にそれぞれ設定することが可能である。
【0018】
例えば、放電容器の軸方向長さWを20mm、放電容器20の外径Dを5.2mm、電極間距離Lを10mmに定めることができる。ただし、放電容器20の軸方向長さWは、一対の電極30、40の外側両端間の距離を表す。また、一対の電極30、40は同じ形状であり、例えば各電極の軸方向長さMを3mm~10mm未満の範囲(例えば5mm)に定めることができる。
【0019】
放電容器20の放電空間Sには、キセノンガス1Torr~225Torr(0.1kPa~30kPa、更に好ましくは7kPa~20kPa)が封入されている。一対の電極30、40には、直流電源部(図示せず)と接続される一対の導線(図示せず)が接続されており、一対の電極30、40間には高周波(1kHz~500kHz、更に好ましくは1kHz~100kHzの範囲であり、例えば60kHz)の高電圧(5kV~10kV)が印加される。放電容器20と電極30、40は、図示しない保持部材によってそれぞれ保持されている。
【0020】
図2に示すように、一対の電極30、40は、放電容器20の外周面20Sに沿って周方向全体に渡り密接する筒状電極として構成されており、光を透過するような隙間が設けられていない曲面状の電極部材によって構成されている。一対の電極30、40は、放電容器の軸方向Xに沿って対向配置されており、軸方向Xに対して互いに異なる極性をもつ電極配置となっている。なお、
図2では、放電容器20の肉厚部分を省略しているが、肉厚については、0.2mm~4mmの範囲(例えば1.5mm)に定めることができる。
【0021】
一対の電極30、40に対して高周波電圧を印加すると、放電容器20内において誘電体バリア放電が生じ、紫外線が放電容器20の外部へ向けて放射される。本実施形態では、一対の電極30、40が放電容器20の中央部を間に挟んで軸方向Xに沿って対向配置されていることによって、放電容器20内において局所的な放電が生じる。以下、これについて説明する。
【0022】
図3は、
図2のラインA-A’に沿った放電ランプの概略的断面図である。
【0023】
図3に示すように、放電容器20の中央部付近においては、細い領域(放電容器の中心軸付近のみ)で微弱な放電CCが生じる。一方、一対の電極30、40で覆われている空間領域では、太い領域(放電容器の径方向全体)で強い放電CCが生じる。放電容器20内において、放電状態が電極30、40付近の空間領域と中央部付近の空間領域との間で相違して、放電が放電容器20の両端部側に偏っていることにより、局所的な放電が放電容器20内において生じる。
【0024】
一対の電極30、40に覆われていない放電容器20の中央部付近では、細い領域で微弱な放電が生じて、放射される紫外線の照度が低い。一方、放電容器20の両端部側では、太い領域で強い放電CCが生じて、放射される紫外線の照度は高いが、一対の電極30、40が放電容器の外周面20Sを覆う位置に対向配置されて、放電から放射される紫外線を遮る遮光部となるため、強い放電CCから放射された紫外線の一部が一対の電極30、40によって遮光される。電極以外の非導電性部材により紫外線を遮る遮光部として、放電容器の外周面を覆っても良い。
【0025】
その結果、放電容器20の中央部付近から、局所的に紫外線が放電容器20外へ放射される。これにより、中央部付近においてのみオゾンが生成し、不要なオゾンが生成されず、局所的にオゾンが生成される。
【0026】
このように本実施形態によれば、筒状の放電容器20を備えた放電ランプ10に対して、互いに極性の異なる一対の電極30、40が放電容器20の両端部20T1、20T2の外周面に沿って配置され、電圧を印加することにより、放電容器20内において局所的な放電が生じ、局所的にオゾンが生成される。その結果、放電ランプを最大電力で点灯させ続けたとしても、生成できるオゾンの最大濃度は制限されているので、高濃度のオゾンが生成されて流出することを防ぐことができる。よって、安全で信頼性の高い放電ランプを提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 放電ランプ
20 放電容器
30 電極
40 電極