(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/501 20060101AFI20230911BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/41 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/7072 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/70 20060101ALI20230911BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230911BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
A61K31/501
A61K31/4709
A61K31/496
A61K31/122
A61K31/706
A61K31/551
A61K31/41
A61K31/7048
A61K31/7072
A61K31/70
A61P31/14
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2022506385
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 KR2021005306
(87)【国際公開番号】W WO2021221435
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0052509
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0127319
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514291196
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】522040229
【氏名又は名称】アンスティテュ パストゥール コリア
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】イ サンヨプ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウデ
(72)【発明者】
【氏名】キム スンテク
(72)【発明者】
【氏名】チョン サンウン
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】Advanced Herbal Medicine,2019年,Vol.5,No.2,pp.42-53
【文献】International Journal of Antimicrobial Agents,2020年,Vol.55,pp.1-3
【文献】Cell Research,Vol.30,2020年,pp,269-271
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 31/14
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2
のRdRPに特異的に結合する化合物を含む新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療に使用するための組成物であって
、
前記RdRPに特異的に結合する化合物は
、オミパリシブ(Omipalisib)
及びチピファルニブ(Tipifarnib
)からなる群から選ばれる、医薬組成物。
【請求項2】
ブロナンセリン(Blonanserin)、エモジン(Emodin)
、及びレムデシビル(Remdesivir)からなる群から選ばれる
1つ以上の化合物を
更に含む
、請求項1に記載の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療に使用するための組成物。
【請求項3】
チピファルニブ及びブロナンセリンを含み、
前記チピファルニブは2.75μM~11μMの濃度で含み、
前記ブロナンセリンは1.50μM~47.87μMの濃度で含むことを特徴とする、請求項
1又は2に記載の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療に使用するための組成物。
【請求項4】
チピファルニブ及びエモジンを含み、
前記チピファルニブは0μM超過11μM以下の濃度で含み、前記エモジンは1.97μM~31.45μMの濃度で含むことを特徴とする、請求項
1又は2に記載の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療に使用するための組成物。
【請求項5】
チピファルニブ及びオミパリシブを含み、
前記チピファルニブは1.38μM~11μMの濃度で含み、前記オミパリシブは0.25μM~1.97μMの濃度で含むか;又は
前記チピファルニブは0μM超過11μM以下の濃度で含み、前記オミパリシブは0μM超過0.25μM以下の濃度で含むことを特徴とする、請求項
1又は2に記載の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療に使用するための組成物。
【請求項6】
レムデシビル及びチピファルニブを含み、
前記レムデシビルは0μM超過20.18μM以下の濃度で含み、前記チピファルニブは0μM超過11μM以下の濃度で含むことを特徴とする、請求項
1又は2に記載の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療に使用するための組成物。
【請求項7】
ブロナンセリン及びオミパリシブを含み、
前記ブロナンセリンは1.5μM~47.87μMの濃度で含み、前記オミパリシブは0μM超過0.49μM以下の濃度で含むか;又は
前記ブロナンセリンは0μM超過47.87μM以下の濃度で含み、前記オミパリシブは0.49μM~1.97μMの濃度で含むことを特徴とする、請求項
1又は2に記載の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療に使用するための組成物。
【請求項8】
エモジン及びオミパリシブを含み、
前記エモジンは0μM超過125.81μM以下の濃度で含み、前記オミパリシブは0μM超過1.97μM以下の濃度で含むことを特徴とする、請求項
1又は2に記載の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療に使用するための組成物。
【請求項9】
レムデシビル及びオミパリシブを含み、
前記レムデシビルは0μM超過40.36μM以下の濃度で含み、前記オミパリシブは0μM超過1.97μM以下の濃度で含むことを特徴とする、請求項
1又は2に記載の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療に使用するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用医薬組成物に関し、より具体的には、薬物仮想スクリーニング技術を用いた既存薬再開発技術で導出した新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルスは、外皮を持つ一本鎖の陽性RNAウイルスであり、ゲノムサイズが25~32kbであって、いままで知られたRNAウイルスの中では比較的大きいウイルスに属する。外皮に棍棒状の突起であるスパイク(spike)タンパク質が突き出して火炎又は王冠様の特異的構造を有し、ラテン語で王冠という意味であるコロナ(Corona)からウイルス名が付けられた。1937年に鶏から初めて発見されて以来、コウモリ、鳥、猫、犬、牛、豚、ネズミなどの様々な鳥類と動物から発見されたコロナウイルスは、4個のグループ(アルファ-、ベータ-、ガンマ-、デルタ-コロナウイルス)に分けられる。アルファとベータコロナウイルスグループは、哺乳類に主に感染し、ガンマとデルタコロナウイルスグループは鳥類から発見することができる。コロナウイルスは動物において胃腸病及び呼吸器疾患のような様々な疾患を起こすことが知られている。人に感染するヒトコロナウイルスは、1960年代に発見されたHCoV-229E及びHCoV-OC43、SARSの大流行以降に発見されたHCoV-NL63(2004年)及びHCoV-HKU1(2005年)であり、これらは一般に上気道感染症と関係があると知られているが、免疫欠乏患者には深刻な肺疾患を招くこともある。主として冬や早春にコロナウイルスへの感染率が増加すると報告されており、成人風邪患者においてコロナウイルスが原因病原体である比率が非常に高いと知られている。
【0003】
新型コロナウイルス感染症は、2019年12月に中国武漢市で発生したウイルス性呼吸器疾患である。‘武漢肺炎’、‘COVID-19’、‘新型コロナ’とも呼ばれる。新種コロナウイルスによる流行性疾患であって、呼吸器から感染し、症状がほとんどない感染初期に伝染性が強いという特徴を示す。感染後には咽喉痛、高熱、せき、呼吸困難などの症状を経て肺炎に発展する。世界各地で感染が拡大し、2020年3月世界保健機構はこの疾患に対してパンデミックを宣言した。
【0004】
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)は主に呼吸器で感染する。感染すると、ウイルスは肺を侵犯し、高熱とせき、呼吸困難などの症状が発生し、肺炎と類似の症状を示すが、深刻な場合、肺胞が損傷して呼吸不全によって死亡に至ることもある。潜伏期は3~7日であるが、最長14日になることもある。2020年1月30日、中国では潜伏期が23日まで増えた事例があると発表した。新型コロナウイルス感染症は、症状が現れない潜伏期にも伝染する事例があると報告されている。
【0005】
第2型重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2,Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)は、新型コロナウイルス感染症流行の原因ウイルスである。当該ウイルスの人から人への感染は学界で確認され[4]、このコロナウイルスは、特に2m半径内のせきや鼻水による呼吸器飛沫への密接接触によって主に伝播される(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/about/transmission.html)。汚染した表面や物を接触後に目、鼻、口を触ることも、当該感染症にかかり得る他の原因である。このウイルスのRNAは、感染した患者の大便検査標本からも発見された(ML.Holshue et al.,N Engl J Med.Vol.382,pp.929-936,2020.)。
【0006】
SARS-CoV-2の細胞への進入は、ウイルス外皮にあり、外形上に‘コロナ’のように外部に突き出た1273個アミノ酸で構成されたスパイク(S)ウイルスタンパク質がアンギオテンシン転換酵素2(ACE2)受容体と結合してなされる。ACE2は、3種のコロナウイルス菌株であるSARS-CoV、NL63及びSARSCoV-2の細胞進入を媒介し、特に、SARS-CoV及びSARS-CoV2はアミノ酸配列において76%の同一性を共有することにより、ACE2との結合に対するそれらのウイルスの傾向を説明する。ウイルス進入過程の第一の段階は、ウイルスタンパク質単位S1のN末端部分がACE2受容体のポケットに結合することである。ウイルス進入において最も重要とされる第二の段階は、S1とS2単位間のタンパク質切断であり、Hepsin/TMPRSSサブファミリーの構成員である受容体膜貫通タンパク質セリン2(TMPRSS2)によって媒介されると知られている(Polo V.et al.,European Journal of Internal Medicine,2020)。
【0007】
一方、既存薬再開発は、既に市販中であるか、或いは臨床段階で安定性以外の理由で失敗した薬物を対象に、新しい適応症を究明する新薬開発戦略の一つである。既存薬再開発は、同一の薬物ターゲットから新しい適応症の効果を確認したり、或いは新規薬物ターゲットを見つけ出して新しい適応症に効果があることを立証することである。既存薬再開発は、薬物候補物質の発掘にかかる費用と時間を画期的に減らすことができ、既に臨床的に安全性が確保された候補物質を対象とするため、薬物の安全性問題から臨床中間段階で失敗することを解決できるという長所がある。
【0008】
薬物仮想スクリーニング技術は、実際の化合物ライブラリー製造に先立ち、薬効があると予想される活性化合物で構成された化合物ライブラリーをコンピュータを用いて迅速に作製することを目標とする。薬物仮想スクリーニングは、リガンドベース、薬物作用発生団(pharmacophore)ベース、タンパク質構造ベースのスクリーニングのように様々な戦略を一般に順次適用して行われる。リガンドベースのスクリーニングは、薬物ターゲットに既に知られた活性化合物の構造をレファレンスにして化合物の2次元又は3次元構造類似度が高い化合物をデータベースから探索する。薬物作用発生団ベースのスクリーニング方式は、薬理作用を示す分子の特定作用基の3次元配列情報が類似な化合物をスクリーニングする方式である。タンパク質構造ベースのスクリーニングは、薬物ターゲットに対する化合物の親和力をドッキングシミュレーションで計算して候補物質を評価する方式である。この過程でエネルギーを計算する評価関数は、力場ベース(force-field based)、経験上(empirical)、知識ベース(knowledge-based)、コンセンサス・スコアリング(consensus scoring)方式などを用いることができる。
【0009】
薬物仮想スクリーニングを用いた既存薬再開発方法は、少ない費用で最大限の効果が得られる効率的な新薬開発方法の一つであり、ウイルス大流行のような緊急状況で迅速に薬物候補物質を導出するための最適の技術として評価されている。
【0010】
新型コロナウイルス感染症は2021年4月基準で全世界に1億4千万人を超える感染者と300万人以上の死亡者が発生しており、人類の健康に致命的な脅威になっている状況である。しかし、まだ、明確な抗ウイルス効果が立証された治療剤やワクチンが開発されていない実情である。現在、カレトラ、クロロキン、シクレソニド、ナファモスタット、レボビル、レムデシビルなどの薬物が既存薬再開発技術によって新型コロナウイルス感染症治療用途に臨床試験中である。
【0011】
カレトラは、ロピナビル/リトナビル(Lopinavir/ritonavir,LPV/r)の商標名を有し、エイズ治療剤としてHIVウイルスの複製を防ぐタンパク質分解酵素抑制剤として知られている(https://www.drugs.com/monograph/lopinavir-and-ritonavir.html)。
【0012】
クロロキンは、マラリアの影響力がある地域でマラリアの予防及び治療に用いられる薬物であり、特定の種類のマラリア、耐性菌、複合的なケースには一般に、他の薬物又は追加の薬物と共に使用し、腸外で発生するアメーバ性感染、リウマチ関節炎、ループス病にも間欠的に使用するものと知られている(http://www.drugs.com/monograph/aralen-phosphate.html)。
【0013】
シクレソニドは、喘息及びアレルギー性鼻炎を治療するために用いられるグルココルチコイドと知られており、頭痛、鼻腔出血及び鼻腔内感染などの副作用があると知られている(Mutch E et al.,Biochemical Pharmacology,Vo.73(10)、pp.1657-64,2007.)。
【0014】
ナファモスタットは、セリンプロテアーゼ阻害剤であり、短時間作用(short-acting)抗凝固剤、抗ウイルス剤及び抗癌剤としての機能が知られており、フィブリノーゲンがフィブリンに分解されることを阻害するのに用いられ、デング熱において血球が破壊されることを防止するものと知られている(Chen X et al.,Front Oncol.Vol.9,pp.852,2019)。
【0015】
レボビルは、活動性ウイルスの複製が確認され、血清アミノ転移酵素の上昇が確認された慢性B型肝炎ウイルス感染症患者のウイルス増殖抑制用の抗ウイルス剤として知られている(http://www.health.kr/searchDrug/result_drug.asp・drug_cd=A11AOOOOO9960)。
【0016】
レムデシビルは、特定ヌクレオチド類似体プロドラッグとして作られた抗ウイルス剤である。もともとはギリアドサイエンシズ社がエボラ出血熱とマールブルグウイルス治療のための薬品として開発したが、以降の様々な実験から、一本鎖RNAウイルスである呼吸器細胞融合ウイルス、フニンウイルス、ラッサ熱ウイルス、ヘニパウイルス、コロナウイルス(MERS及びSARSウイルスを含む)の抗ウイルス効果を発揮するものとして知られた(Michael K.Lo et al.,Scientific reports,Vol.7,pp.43395,2017)。
【0017】
そこで、本発明者らは、上記の問題点を解決し、新型コロナウイルス感染症を治療するための薬物を開発するために鋭意努力した結果、薬物仮想スクリーニングを用いた既存薬再開発により、SARS-コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)のMpro又はRdRPと結合してそれぞれの機能を阻害する治療剤候補物質を導出した。導出された治療剤候補物質を、霊長類細胞(Vero)及びヒト肺細胞であるCalu-3に、SARS-CoV-2ウイルスと共に処理し、低いIC50値において優れた抗SARS-CoV-2効果を示す治療剤物質を導出した。さらに、導出された薬物のシナジー効果を検証し、優れたシナジー効果を示す薬物の組合せ及び濃度を確認し、本発明を完成した。
【0018】
本背景技術の部分に記載された上記情報は単に本発明の背景に関する理解を向上させるためのものであり、したがって、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に既に知られた先行技術を形成する情報を含まなくてもよい。
【発明の概要】
【0019】
本発明の目的は、新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用医薬組成物を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、前記組成物を用いた新型コロナウイルス感染症を治療する方法に関する。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、前記組成物の新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用用途に関する。
【0022】
上記の目的を達成するために、本発明は、SARS-CoV-2のMproに特異的に結合する化合物又はRdRPに特異的に結合する化合物を含む新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明は、また、ブロナンセリン(Blonanserin)、エモジン(Emodin)、オミパリシブ(Omipalisib)、チピファルニブ(Tipifarnib)及びレムデシビル(Remdesivir)からなる群から選ばれる2つ以上の化合物を含む新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0024】
本発明は、また、前記組成物を投与する段階を含む新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療方法を提供する。
【0025】
本発明は、また、患者にMproに特異的に結合する化合物又はRdRPに特異的に結合する化合物を投与する段階を含む新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の治療方法を提供する。
【0026】
本発明は、また、ブロナンセリン、エモジン、オミパリシブ、チピファルニブ及びレムデシビルからなる群から選ばれる2つ以上の化合物を併用投与する段階を含む新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療方法を提供する。
【0027】
本発明は、また、前記組成物の新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用用途を提供する。
【0028】
本発明は、また、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療用薬剤の製造のための前記組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明で用いられる薬物仮想スクリーニング手順を示す図である。
【
図2】本発明で用いられる薬物ターゲットであるMproの構造を示す図である。
【
図3】本発明で用いられる薬物ターゲットであるRdRpの構造を示す図である。
【
図4】本発明で用いられる薬物ターゲットであるRdRpに結合すると予測された薬物候補物質の結合様相を示す図である。
【
図5】本発明で用いられる薬物ターゲットであるMproに結合すると予測された薬物候補物質の結合様相を示す図である。
【
図6】本発明で用いられる薬物の抗ウイルス効果を比較するために用いられたレファレンス薬物3種(クロロキン(chloroquine)、ロピナビル(lopinavir)、レムデシビル(Remdesivir))の容量反応曲線(dose-response curve)を示す図である。
【
図7】Aは、本発明で用いられる薬物の抗ウイルス効果実験過程を示し、Bは、各薬物の容量による抗ウイルス効果を示し、Cは、Vero細胞における単一薬物のそれぞれの容量反応曲線を示す図である。
【
図8】Calu-3細胞における単一薬物(オミパリシブ、チピファルニブ、ブロナンセリン、ヒペリシン(Hypericin)、LGH-447、NS-3728及びエモジン)のそれぞれの容量反応曲線を示す図である。
【
図9】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、ブロナンセリン)の容量による抗ウイルス効果を示す図である。左側はそれぞれ、単一薬物の容量反応曲線であり、右側は、各単一薬物の容量による容量反応マトリックス(dose-response matrix)である。
【
図10】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、ブロナンセリン)の抗ウイルス薬物シナジー効果をロエベ相加性(Loewe additivity)モデルベースで示す図である。
【
図11】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、ブロナンセリン)の抗ウイルス薬物シナジー効果をブリス独立性(Bliss independence)モデルベースで示す図である。
【
図12】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、ブロナンセリン)の抗ウイルス薬物シナジー効果をZIP(Zero Interaction Potency)モデルベースで示す図である。
【
図13】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、ブロナンセリン)の抗ウイルス薬物シナジー効果をHSA(Highest Single Agent)モデルベースで示す図である。
【
図14】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、エモジン)の容量による抗ウイルス効果を示す図である。左側はそれぞれ、単一薬物の容量反応曲線であり、右側は、各単一薬物の容量による容量反応マトリックス(dose-response matrix)である。
【
図15】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、エモジン)の抗ウイルス薬物シナジー効果をロエベ相加性モデルベースで示す図である。
【
図16】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、エモジン)の抗ウイルス薬物シナジー効果をブリス独立性モデルベースで示す図である。
【
図17】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、エモジン)の抗ウイルス薬物シナジー効果をZIPモデルベースで示す図である。
【
図18】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、エモジン)の抗ウイルス薬物シナジー効果をHSAモデルベースで示す図である。
【
図19】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、オミパリシブ)の容量による抗ウイルス効果を示す図である。左側はそれぞれ、単一薬物の容量反応曲線であり、右側は、各単一薬物の容量による容量反応マトリックスである。
【
図20】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、オミパリシブ)の抗ウイルス薬物シナジー効果をロエベ相加性モデルベースで示す図である。
【
図21】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、オミパリシブ)の抗ウイルス薬物シナジー効果をブリス独立性モデルベースで示す図である。
【
図22】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、オミパリシブ)の抗ウイルス薬物シナジー効果をZIPモデルベースで示す図である。
【
図23】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、オミパリシブ)の抗ウイルス薬物シナジー効果をHSAモデルベースで示す図である。
【
図24】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、レムデシビル)の容量による抗ウイルス効果を示す図である。左側はそれぞれ、単一薬物の容量反応曲線であり、右側は、各単一薬物の容量による容量反応マトリックスである。
【
図25】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をロエベ相加性モデルベースで示す図である。
【
図26】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をブリス独立性モデルベースで示す図である。
【
図27】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をZIPモデルベースで示す図である。
【
図28】本発明で用いられる組合せ薬物(チピファルニブ、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をHSAモデルベースで示す図である。
【
図29】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、エモジン)の容量による抗ウイルス効果を示す図である。左側はそれぞれ、単一薬物の容量反応曲線であり、右側は、各単一薬物の容量による容量反応マトリックスである。
【
図30】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、エモジン)の抗ウイルス薬物シナジー効果をロエベ相加性モデルベースで示す図である。
【
図31】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、エモジン)の抗ウイルス薬物シナジー効果をブリス独立性モデルベースで示す図である。
【
図32】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、エモジン)の抗ウイルス薬物シナジー効果をZIPモデルベースで示す図である。
【
図33】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、エモジン)の抗ウイルス薬物シナジー効果をHSAモデルベースで示す図である。
【
図34】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、オミパリシブ)の容量による抗ウイルス効果を示す図である。左側はそれぞれ、単一薬物の容量反応曲線であり、右側は、各単一薬物の容量による容量反応マトリックスである。
【
図35】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、オミパリシブ)の抗ウイルス薬物シナジー効果をロエベ相加性モデルベースで示す図である。
【
図36】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、オミパリシブ)の抗ウイルス薬物シナジー効果をブリス独立性モデルベースで示す図である。
【
図37】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、オミパリシブ)の抗ウイルス薬物シナジー効果をZIPモデルベースで示す図である。
【
図38】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、オミパリシブ)の抗ウイルス薬物シナジー効果をHSAモデルベースで示す図である。
【
図39】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、レムデシビル)の容量による抗ウイルス効果を示す図である。左側はそれぞれ、単一薬物の容量反応曲線であり、右側は、各単一薬物の容量による容量反応マトリックスである。
【
図40】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をロエベ相加性モデルベースで示す図である。
【
図41】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をブリス独立性モデルベースで示す図である。
【
図42】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をZIPモデルベースで示す図である。
【
図43】本発明で用いられる組合せ薬物(ブロナンセリン、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をHSAモデルベースで示す図である。
【
図44】本発明で用いられる組合せ薬物(エモジン、オミパリシブ)の容量による抗ウイルス効果を示す図である。左側はそれぞれ、単一薬物の容量反応曲線であり、右側は、各単一薬物の容量による容量反応マトリックスである。
【
図45】本発明で用いられる組合せ薬物(エモジン、オミパリシブ)の抗ウイルス薬物シナジー効果をロエベ相加性モデルベースで示す図である。
【
図46】本発明で用いられる組合せ薬物(エモジン、オミパリシブ)の抗ウイルス薬物シナジー効果をブリス独立性モデルベースで示す図である。
【
図47】本発明で用いられる組合せ薬物(エモジン、オミパリシブ)の抗ウイルス薬物シナジー効果をZIPモデルベースで示す図である。
【
図48】本発明で用いられる組合せ薬物(エモジン、オミパリシブ)の抗ウイルス薬物シナジー効果をHSAモデルベースで示す図である。
【
図49】本発明で用いられる組合せ薬物(エモジン、レムデシビル)の容量による抗ウイルス効果を示す図である。左側はそれぞれ、単一薬物の容量反応曲線であり、右側は、各単一薬物の容量による容量反応マトリックスである。
【
図50】本発明で用いられる組合せ薬物(エモジン、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をロエベ相加性モデルベースで示す図である。
【
図51】本発明で用いられる組合せ薬物(エモジン、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をブリス独立性モデルベースで示す図である。
【
図52】本発明で用いられる組合せ薬物(エモジン、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をZIPモデルベースで示す図である。
【
図53】本発明で用いられる組合せ薬物(エモジン、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をHSAモデルベースで示す図である。
【
図54】本発明で用いられる組合せ薬物(オミパリシブ、レムデシビル)の容量による抗ウイルス効果を示す図である。左側はそれぞれ、単一薬物の容量反応曲線であり、右側は、各単一薬物の容量による容量反応マトリックスである。
【
図55】本発明で用いられる組合せ薬物(オミパリシブ、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をロエベ相加性モデルベースで示す図である。
【
図56】本発明で用いられる組合せ薬物(オミパリシブ、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をブリス独立性モデルベースで示す図である。
【
図57】本発明で用いられる組合せ薬物(オミパリシブ、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をZIPモデルベースで示す図である。
【
図58】本発明で用いられる組合せ薬物(オミパリシブ、レムデシビル)の抗ウイルス薬物シナジー効果をHSAモデルベースで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
別に断りのない限り、本明細書で使われる技術的及び科学的用語はいずれも、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書における命名法及び以下に記述する実験方法は、本技術分野でよく知られており、通常用いられるものである。
【0031】
本発明では、既存に承認されたか或いは臨床試験が進行中である薬物の構造をデータベース化し、様々な基準でSARS-CoV-2の特定ターゲットタンパク質との結合の有無を分析することによって、SARS-CoV-2に対して高い抗ウイルス効果を示す薬物を導出し、新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用薬物を確認した。
【0032】
コロナウイルスは変異型が発見し続いており、変異による薬物の抵抗性問題が発生する恐れもある。したがって、本発明者らは、ウイルス複製に中枢的な役割を担うと同時に、他のコロナ系列ウイルス(SARS-CoV、MERS-CoV)と比較して配列が保存的である2種の酵素(Mpro、RdRp)を、治療に適する薬物ターゲットとして決めた(Zhou,P.et al.Nature,(2020)579(7798)、270-273.)。
【0033】
すなわち、本発明の一実施例では、様々なデータベースから収集した6,218個の化合物とSARS-CoV-2のタンパク質であるMproとRdRpが結合する3次元構造物(1,865,400)のリガンド形態を比較し、一定の類似度以上を有する化合物を選別し、ドッキングエネルギー、相互作用パターンの類似度などを基準に薬物候補群をスクリーニングした。
【0034】
その後、選別した候補群をそれぞれSARS-CoV-2に感染した細胞に処理し、抗ウイルス効果を示す化合物を最終新型コロナウイルス感染症治療剤として選別した(
図1)。また、最終選別された新型コロナウイルス感染症治療剤の組合せの併用投与に対して各薬物の容量による抗ウイルス効果又は薬物組合せの抗ウイルス効果を確認した。
【0035】
したがって、本発明は、一観点において、SARS-CoV-2のMproに特異的に結合する化合物又はRdRPに特異的に結合する化合物を含む新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療用医薬組成物に関し、
【0036】
前記Mproに特異的に結合する化合物は、アロブレシブ(Alobresib)、CE-326597、ブロナンセリン(Blonanserin)及びエモジン(Emodin)からなる群から選ばれ、
【0037】
前記RdRPに特異的に結合する化合物は、ヒペリシン(Hypericin)、オミパリシブ(Omipalisib)、LGH-447、NS-3728、チピファルニブ(Tipifarnib)、バロピシタビン(Valopicitabine)、エルサミトルシン(Elsamitrucin)、NRC-AN-019、デヌホソル(Denufosol)及びイサトリビン(Isatoribine)からなる群から選ばれる、医薬組成物に関する。
【0038】
本発明の用語“Mpro”とは、タンパク質分解酵素(protease)であり、ウイルスのポリペプチドを分解し、ウイルスを構成するタンパク質と複製に必須なタンパク質を生成する役割を担う(Jin,Z.et al.Nature,(2020)1-5.)。本発明では、Mproの活性部位(active site)の阻害剤はウイルス増殖に必須なタンパク質の合成を抑制させることができ、抗ウイルス効果を示すことができる。本発明の用語“RdRp”とは、RNA複製酵素(RNA replicase)であり、ウイルスのRNA複製に直接的な役割を担う酵素である。RdRpを阻害する代表薬物がレムデシビルであり、作用機序がタンパク質3次元構造で究明された(Yin,W.et al.Science(2020).)。本発明では、RdRpの活性部位阻害剤はウイルス複製過程を抑制して抗ウイルス効果を示すことができる。
【0039】
本発明において、SARS-CoV-2のMpro又はRdRPに結合する化合物の例は、実施例の表7に示す通りであるが、これに制限されない。
【0040】
本発明において、前記Mproに特異的に結合する化合物は、Mproに-7.0kcal/mol以下の結合エネルギー(docking energy)を有することを特徴とし、より好ましくは、-7.5kcal/mol以下の結合エネルギを有することを特徴とし得る。
【0041】
本発明において、前記Mproに特異的に結合する化合物は、SARS-CoV-2のMproタンパク質に特異的に結合してタンパク質の合成を阻害することを特徴とし得る。
【0042】
本発明において、前記RdRPに特異的に結合する化合物は、RdRPに-6.4kcal/mol以下の結合エネルギーを有することを特徴とし、より好ましくは、-6.7kcal/mol以下の結合エネルギーを有することを特徴とし得る。
【0043】
本発明において、前記RdRPに特異的に結合する化合物は、SARS-CoV-2のRdRPタンパク質に特異的に結合してウイルスの複製を阻害することを特徴とし得る。
本発明において、前記Mproに特異的に結合する化合物は、好ましくはブロナンセリン又はエモジン、より好ましくはエモジンであることを特徴とし得る。
【0044】
本発明において、前記RdRPに特異的に結合する化合物は、好ましくはヒペリシン、オミパリシブ、LGH-447、NS-3728、及びチピファルニブからなる群から選ばれるものであり、より好ましくはオミパリシブ、又はチピファルニブであることを特徴とし得る。
【0045】
一方、本発明の他の実施例では、最終選別された単一候補薬物(ブロナンセリン、エモジン、オミパリシブ及びチピファルニブ)及び臨床承認されたコロナ治療剤であるレムデシビルを任意に組み合わせて細胞株に注入した後、各薬物の容量による抗ウイルス効果又は薬物組合せの抗ウイルス効果を確認した。確認された候補薬物組合せの濃度反応マトリックス及び4つのシナジー評価モデル(1.ロエベ相加性(Loewe additivity)モデル;2.ブリス独立性(Bliss independence)モデル、3)ZIP(Zero Interaction Potency)モデル、4)HSA(Highest Single Agent)モデル)に基づいてシナジー効果を評価し、高いシナジー効果を示す最適の化合物の組合せ及び濃度を導出した。特に、ブロナンセリン、エモジン、オミパリシブ、チピファルニブ及びレムデシビルのうちの任意の2つの化合物を組み合わせる10通りの場合に、CoVid-19の予防又は治療に対して、単独使用による期待効果よりも10%~80%優れたシナジー効果を示した(
図7~
図54)。
【0046】
したがって、本発明は、他の観点において、ブロナンセリン、エモジン、オミパリシブ、チピファルニブ及びレムデシビルからなる群から選ばれる2つ以上の化合物を含む新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療用医薬組成物に関する。
【0047】
本発明において、好ましくは、前記ブロナンセリン、エモジン、オミパリシブ、チピファルニブ及びレムデシビルからなる群から選ばれる2つの化合物を含むことを特徴とし得る。
【0048】
本発明において、(1)前記組成物がチピファルニブ及びブロナンセリンの組合せを含む場合、前記チピファルニブは2.75~11μMの濃度で含まれ、前記ブロナンセリンは1.50~47.87μMの濃度で含まれることを特徴とし得る。
【0049】
本発明において、(2)前記組成物がチピファルニブ及びエモジンの組合せを含む場合、前記チピファルニブは0超過11以下μMの濃度で含まれ、前記エモジンは1.97~31.45μMの濃度で含まれることを特徴とし得る。
【0050】
本発明において、(3)前記組成物がチピファルニブ及びオミパリシブの組合せを含む場合、前記チピファルニブは0超過11以下μMの濃度で含まれ、前記オミパリシブは0超過0.25以下μMの濃度で含まれたり、或いは前記チピファルニブは1.38~11μMの濃度で含まれ、前記オミパリシブは0超過0.25以下μMの濃度で含まれることを特徴とし得る。
【0051】
本発明において、(4)前記組成物がチピファルニブ及びレムデシビルの組合せを含む場合、前記チピファルニブは0超過11以下μMの濃度で含まれ、前記レムデシビルは0超過20.18以下μMの濃度で含まれることを特徴とし得る。
【0052】
本発明において、(5)前記組成物がブロナンセリン及びエモジンの組合せを含む場合、前記ブロナンセリンは0超過5.98以下μMの濃度で含まれ、前記エモジンは7.86~62.9μMの濃度で含まれたり、或いは前記ブロナンセリンは5.98~47.87μMの濃度で含まれ、前記エモジンは0超過62.9以下μMの濃度で含まれることを特徴とし得る。
【0053】
本発明において、(6)前記組成物がブロナンセリン及びオミパリシブの組合せを含む場合、前記ブロナンセリンは0超過47.87以下μMの濃度で含まれ、前記オミパリシブは0.49~1.97μMの濃度で含まれたり、或いは前記ブロナンセリンは1.5~47.87μMの濃度で含まれ、前記オミパリシブは0超過0.49以下μMの濃度で含まれることを特徴とし得る。
【0054】
本発明において、(7)前記組成物がブロナンセリン及びレムデシビルの組合せを含む場合、前記ブロナンセリンは0超過1.5以下μMの濃度で含まれ、前記レムデシビルは0超過40.36以下μMの濃度で含まれたり、或いは前記ブロナンセリンは5.0~40μMの濃度で含まれ、前記レムデシビルは0超過40.36以下μMの濃度で含まれることを特徴とし得る。
【0055】
本発明において、(8)前記組成物がエモジン及びオミパリシブの組合せを含む場合、前記エモジンは0超過125.81以下μMの濃度で含まれ、前記オミパリシブは0超過1.97以下μMの濃度で含まれることを特徴とし得る。
【0056】
本発明において、(9)前記組成物がエモジン及びレムデシビルの組合せを含む場合、前記エモジンは0超過125.81以下μMの濃度で含まれ、前記レムデシビルは0超過40.36以下μMの濃度で含まれることを特徴とし得る。
【0057】
本発明において、(10)前記組成物がオミパリシブ及びレムデシビルを含む場合、前記オミパリシブは0超過1.97以下μMの濃度で含まれ、前記レムデシビルは0超過40.36以下μMの濃度で含まれることを特徴とし得る。
【0058】
本発明において、前記薬学組成物は、好ましくは、霊長類の治療用途に用いられる場合、前記10通りの組合せを含むことを特徴とし、より好ましくは、i)レムデシビル及びチピファルニブ、ii)オミパリシブ及びエモジン、iii)レムデシビル及びエモジン、iv)レムデシビル及びオミパリシブ、v)オミパリシブ及びチピファルニブ、又はvi)オミパリシブ及びブロナンセリンの組合せを含むことを特徴とし得る。
【0059】
本発明において、前記薬学組成物は、より好ましくは、人の治療用途に用いられる場合、レムデシビル、チピファルニブ、オミパリシブ及びエモジンからなる群から選ばれる2つ以上の化合物、好ましくは、前記群から選ばれる2つの化合物を含むことを特徴とし得る。
【0060】
本発明に係る組成物は、特に、新型コロナウイルス感染症(CoVid-19)を治療するために使用することが意図される。
【0061】
本発明において用語“新型コロナウイルス感染症”は、人間又は動物有機体がSARS-CoV-2(SARS-CoV-2)に感染される細胞を有することを意味する。感染は、特に、呼吸器サンプルから検出する及び/又はウイルス滴定を行うか或いは血液-循環SARS-CoV-2特異的抗体を検定することによって確立することができる。このような特定ウイルスに感染された個体における検出は、当業者に周知の、特に分子生物学の通常の診断方法(PCR)によってなされる。
【0062】
本発明の用語“予防”及び“治療”は、最広義の概念で解釈されるべきであり、“予防”とは、疾患に露出されたり或いは疾患にかかりやすいが、疾患の症状をまだ経験又は表出していない患者において疾患の臨床的症状の一つ以上が進行されないようにすることを意味する。“治療”とは、疾患又はその一つ以上の臨床的症状の発達を阻止又は減少させるあらゆる行為を意味する。
【0063】
本発明において、用語“治療”とは、人間又は動物有機体においてSARS-CoV-2感染と戦うことを意味する。本発明に係る少なくとも一つの組成物の投与によって、有機体でのウイルス感染率(感染力価)は減少するはずであり、好ましくは、ウイルスは有機体から完全に消えることができる。本発明において、用語“治療”とは、また、ウイルス感染に関連した症状(呼吸器症候群、腎不全、熱)を弱化させることを意味する。
【0064】
本発明の前記新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができ、担体と共に製剤化されてよい。
【0065】
本発明において、用語“薬学的に許容可能な担体”とは、生物体を刺激しなく、投与化合物の生物学的活性及び特性を阻害しない担体又は希釈剤のことを指す。液状溶液に製剤化される組成物において許容される薬剤学的担体としては、滅菌及び生体に適するものとして、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用でき、必要によって、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤をさらに添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤として製剤化してもよい。
【0066】
本発明の前記化合物及び薬学的に許容可能な担体を含む新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用組成物は、これを有効成分として含むいかなる剤形も適用可能であり、経口用又は非経口用の剤形にすることができる。本発明の薬学的剤形は、吸入(inhalation)、口腔(oral)、直腸(rectal)、鼻腔(nasal)、局所(topical;頬及び舌下を含む)、皮下、膣(vaginal)又は非経口(parenteral;筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与に適当なもの又は注入(insufflation)による投与に適当な形態を含む。
【0067】
本発明の組成物を有効成分として含む経口投与用剤形には、例えば、錠剤、トローチ剤、ロジェンジ、水溶性又は油性懸濁液、調製粉末又は顆粒、エマルジョン、ハード又はソフトカプセル、シロップ、又はエリキシル剤として製剤化できる。錠剤及びカプセルなどの剤形に製剤化するために、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アミロペクチン、セルロース又はゼラチンのような結合剤、リン酸二カルシウムのような賦形剤、トウモロコシ澱粉又はサツマイモ澱粉のような崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム又はポリエチレングリコールワックスのような潤滑油を含むことができ、カプセル剤形の場合、前記言及した物質の他にも、脂肪油のような液体担体をさらに含有することができる。
【0068】
本発明の組成物を有効成分として含む非経口投与用剤形には、皮下注射、静脈注射又は筋肉内注射などの注射用形態、坐剤注入方式、又は呼吸器を通して吸入可能にするエアゾール剤などのスプレー用に製剤化できる。注射用剤形として製剤化するためには、本発明の組成物を安定剤又は緩衝剤と共に水で混合して溶液又は懸濁液として製造し、これをアンプル又はバイアルの単位投与用に製剤化できる。坐剤で注入するためには、ココアバター又は他のグリセリドなどの通常の坐薬ベースを含む坐薬又は浣腸剤のような直腸投与用組成物として製剤化できる。エアゾール剤などのスプレー用に剤形化する場合、水分散された濃縮物又は湿潤粉末が分散されるように推進剤などが添加剤と共に配合されてもよい。
【0069】
本発明は、さらに他の観点において、前記新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療用医薬組成物を投与することを含む、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療する方法に関する。
【0070】
本発明において、用語“投与”は、いずれかの適切な方法で患者に本発明の医薬組成物を導入することを意味する。本発明の組成物の投与経路は、目的組織に到達できる限り、経口又は非経口の様々な経路で投与されてよく、具体的に、吸入(inhalation)、口腔、直腸、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、経皮、鼻内、眼球内又は血内経路で通常の方式によって投与されてよい。
【0071】
本発明の治療方法は、本発明の新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用組成物を薬学的有効量で投与することを含む。適切な総1日使用量は、正確な医学的判断範囲内で処置医によって決定可能であることは、当業者には明らかであろう。特定患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって別の製剤が使用されるか否かをはじめとする具体的組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と共に使用されるか同時使用される薬物をはじめとする様々な因子と医薬分野に周知の類似因子によって個別に適用することが好ましい。したがって、本発明の目的に適する新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用組成物の有効量は、前述した事項を考慮して決定することが好ましい。
【0072】
また、本発明の治療方法は、新型コロナウイルス感染症が発生し得る任意の動物に適用可能であり、動物は、ヒト及び霊長類の他、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ及びネコなどの家畜も含む。
【0073】
本発明に係る使用のための組成物は、前記化合物を含み、これはさらに、適切な薬学的に許容される担体以外に他の活性化合物も含むことができることは明らかである。これは、このような化合物の活性を改善可能にする化合物であってもよく、ひいては特定活性として公知されたその他活性剤であってもよい。このような追加の活性化合物は、国際出願WO2015/157223に言及された作用剤の薬学的部類、すなわち、抗菌剤、抗寄生虫剤、神経伝達抑制剤、エストロゲン受容体抑制剤、DNA合成及び複製抑制剤、タンパク質成熟抑制剤、キナーゼ経路抑制剤、細胞骨格抑制剤、脂質代謝抑制剤、抗炎症剤、イオンチャンネル抑制剤、細胞自滅死(apoptosis)抑制剤及びカテプシン抑制剤から選ばれてよい。このような活性化合物は、特に、抗菌剤、イオンチャネル抑制剤、免疫抑制剤及び抗ウイルス剤から選ばれてよい。抗ウイルス剤としてアシクロビルを特に挙げることができる。
【0074】
本発明の医薬組成物は、前記化合物の他に、少なくともさらに他の抗ウイルス剤も含むことができる。前記抗ウイルス剤は、抗ウイルス作用を有するのに必要な投薬量で使用されるはずであり、このような投薬量は“有効”なものと示され、このような投薬量は当業者にとって容易に決定可能であることが理解される。抗ウイルス剤は、本発明の目的のために、関連したウイルス感染の抑制及び/又は減速及び/又は予防によってウイルスに作用する化合物のことを指す。
【0075】
抗ウイルス剤は、その作用方式によって異なるカテゴリーに分類される。これは、特に下記を含む:
- DNA又はRNA合成を妨害又は中断させるヌクレオチド類似体;及びDNA又はRNA合成に関与する酵素の抑制剤(ヘリカーゼ、レプリカーゼ);
- それの複製サイクル中にウイルス成熟段階を抑制する化合物;
- 細胞膜結合又は宿主細胞におけるウイルス進入を妨害する化合物(融合又は進入抑制剤);
- ウイルスがそれの進入後に宿主細胞内で発現することを、細胞内におけるそれの分解を遮断することによって防止する作用剤;
- 他の細胞へのウイルス伝播を制限する作用剤。
【0076】
標的細胞におけるプロテアーゼ抑制剤、ヘリカーゼ抑制剤及びSARS-CoV-2ウイルス細胞進入抑制剤のようなRNAウイルスと戦うように意図された、当業者に公知の抗ウイルス剤を特に挙げることができる。
【0077】
当業者に公知の抗ウイルス剤のうち、より正確にはリバビリン、広い抗ウイルススペクトルを有するグアノシンヌクレオシド類似体;及び宿主細胞においてウイルス複製を抑制することによって作用するインターフェロンを挙げることができる。
【0078】
本発明の医薬組成物が他の抗ウイルス剤を含む場合、前記他の抗ウイルス剤は、下記化合物:リバビリン、インターフェロン又はこれら両者の組合せから選ばれることを特徴とし得る。
【0079】
本発明の目的のために、“インターフェロン”は、免疫システムの細胞によって分泌される糖タンパク質であるインターフェロン系列に属する化合物を意味する。
【0080】
インターフェロンは、約15000~21000ダルトンの分子量を有する小さなタンパク質分子の系列である。下記3つの主要インターフェロン部類が識別されている:アルファ、ベータ及びガンマ。このような3つの主要部類は、それ自体が相同するのではなく、様々な異なるインターフェロン分子種を集めることができる。14個超過の遺伝的に異なるヒトアルファインターフェロンが識別されている。
【0081】
本発明に係る医薬組成物において、インターフェロンとしては、実験室で合成される組換えポリペプチドを使用できることが理解される。
【0082】
特に、使用されるインターフェロンは、生体内(in vivo)及び試験管内(in vitro)ウイルス複製に対する効率が立証された組換えインターフェロンアルファ-2bであってよい。
【0083】
本発明は、さらに他の観点において、前記組成物を投与する段階を含む新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療方法に関する。
【0084】
本発明は、さらに他の観点において、SARS-CoV-2のMproに特異的に結合する化合物又はRdRPに特異的に結合する化合物を患者に投与する段階を含む、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療方法に関する。
【0085】
本発明において、前記Mproに特異的に結合する化合物は、Mproに-7.0kcal/mol以下の結合エネルギー(docking energy)を有することを特徴とし、より好ましくは、-7.5kcal/mol以下の結合エネルギーを有することを特徴とし得る。
【0086】
本発明において、前記Mproに特異的に結合する化合物は、SARS-CoV-2のMproタンパク質に特異的に結合してタンパク質の合成を阻害することを特徴とし得る。
【0087】
本発明において、前記RdRPに特異的に結合する化合物は、RdRPに-6.4kcal/mol以下の結合エネルギーを有することを特徴とし、より好ましくは、-6.7kcal/mol以下の結合エネルギーを有することを特徴とし得る。
【0088】
本発明において、前記RdRPに特異的に結合する化合物は、SARS-CoV-2のRdRPタンパク質に特異的に結合してウイルスの複製を阻害することを特徴とし得る。
【0089】
本発明において、前記Mproに特異的に結合する化合物は、アロブレシブ、CE-326597、ブロナンセリン及びエモジンからなる群から選ばれることを特徴とし得る。
【0090】
本発明において、前記RdRPに特異的に結合する化合物は、ヒペリシン、オミパリシブ、LGH-447、NS-3728、チピファルニブ、バロピシタビン、エルサミトルシン、NRC-AN-019、デヌホソル及びイサトリビンからなる群から選ばれることを特徴とし得る。
【0091】
本発明において、前記Mproに特異的に結合する化合物は、好ましくはブロナンセリン又はエモジン、より好ましくはエモジンであることを特徴とし得る。
【0092】
本発明において、前記RdRPに特異的に結合する化合物は、好ましくはヒペリシン、オミパリシブ、LGH-447、NS-3728、及びチピファルニブからなる群から選ばれるものであり、より好ましくはオミパリシブ、又はチピファルニブであることを特徴とし得る。
【0093】
本発明はさらに他の観点において、ブロナンセリン、エモジン、オミパリシブ、チピファルニブ及びレムデシビルからなる群から選ばれる2つ以上の化合物を併用投与する段階を含む新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療方法に関する。
【0094】
本発明において、それぞれの化合物は、前記組成物において記載された濃度で投与されることを特徴とし得る。
【0095】
本発明において、前記ブロナンセリン、エモジン、オミパリシブ、チピファルニブ及びレムデシビルからなる群から選ばれる2つ以上の化合物を2つ以上併用投与することによって、単一薬物使用時と比較して、優れた相乗効果を得ることができる。
【0096】
本発明において、前記併用投与は、ブロナンセリン、エモジン、オミパリシブ、チピファルニブ及びレムデシビルからなる群から選ばれる2つ以上の化合物の有効量を混合した混合剤(例えば、本発明の医薬組成物)を投与することによって行うことができる。
【0097】
(1)本発明において、チピファルニブ及びブロナンセリンの組合せを併用投与する場合、前記チピファルニブは2.75~11μMの濃度で投与し、前記ブロナンセリンは1.50~47.87μMの濃度で投与することを特徴とし得る。
【0098】
(2)本発明において、チピファルニブ及びエモジンの組合せを併用投与する場合、前記チピファルニブは0超過11以下μMの濃度で投与し、前記エモジンは1.97~31.45μMの濃度で投与することを特徴とし得る。
【0099】
(3)本発明において、チピファルニブ及びオミパリシブの組合せを併用投与する場合、前記チピファルニブは0超過11以下μMの濃度で投与し、前記オミパリシブは0超過0.25以下μMの濃度で投与するか、或いは前記チピファルニブは1.38~11μMの濃度で投与し、前記オミパリシブは0超過0.25以下μMの濃度で投与することを特徴とし得る。
【0100】
(4)本発明において、チピファルニブ及びレムデシビルの組合せを併用投与する場合、前記チピファルニブは0超過11以下μMの濃度で投与し、前記レムデシビルは0超過20.18以下μMの濃度で投与することを特徴とし得る。
【0101】
(5)本発明において、ブロナンセリン及びエモジンの組合せを併用投与する場合、前記ブロナンセリンは0超過5.98以下μMの濃度で投与し、前記エモジンは7.86~62.9μMの濃度で投与するか、或いは前記ブロナンセリンは5.98~47.87μMの濃度で投与し、前記エモジンは0超過62.9以下μMの濃度で投与することを特徴とし得る。
【0102】
(6)本発明において、ブロナンセリン及びオミパリシブの組合せを併用投与する場合、前記ブロナンセリンは0超過47.87以下μMの濃度で投与し、前記オミパリシブは0.49~1.97μMの濃度で投与するか、或いは前記ブロナンセリンは1.5~47.87μMの濃度で投与し、前記オミパリシブは0超過0.49以下μMの濃度で投与することを特徴とし得る。
【0103】
(7)本発明において、ブロナンセリン及びレムデシビルの組合せを併用投与する場合、前記ブロナンセリンは0超過1.5以下μMの濃度で投与し、前記レムデシビルは0超過40.36以下μMの濃度で投与するか、或いは前記ブロナンセリンは5.0~40μMの濃度で投与し、前記レムデシビルは0超過40.36以下μMの濃度で投与することを特徴とし得る。
【0104】
(8)本発明において、エモジン及びオミパリシブの組合せを併用投与する場合、前記エモジンは0超過125.81以下μMの濃度で投与し、前記オミパリシブは0超過1.97以下μMの濃度で投与することを特徴とし得る。
【0105】
(9)本発明において、エモジン及びレムデシビルの組合せを併用投与する場合、前記エモジンは0超過125.81以下μMの濃度で投与し、前記レムデシビルは0超過40.36以下μMの濃度で投与することを特徴とし得る。
【0106】
(10)本発明において、オミパリシブ及びレムデシビルを併用投与する場合、前記オミパリシブは0超過1.97以下μMの濃度で投与し、前記レムデシビルは0超過40.36以下μMの濃度で投与することを特徴とし得る。
【0107】
本発明において、前記併用投与される化合物は、同時又は順次に投与でき、順次に投与する場合、その順序は制限されない。
【0108】
前記患者は、ヒト、サルなどを含む霊長類、マウス、ラットなどを含む齧歯類などを含む哺乳類であってよい。また、前記患者は、コロナウイルスに感染した患者でよく、より好ましくはSARS-CoV-2に感染した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者でよい。
【0109】
本発明において、前記方法が霊長類の治療のために用いられる場合、前記10通りの組合せで投与されることを特徴とし、より好ましくは、i)レムデシビル及びチピファルニブ、ii)オミパリシブ及びエモジン、iii)レムデシビル及びエモジン、iv)レムデシビル及びオミパリシブ、v)オミパリシブ及びチピファルニブ、又はvi)オミパリシブ及びブロナンセリンの組合せで投与されることを特徴とし得る。
【0110】
本発明において、前記方法がヒトの治療のために用いられる場合、レムデシビル、チピファルニブ、オミパリシブ及びエモジンからなる群から選ばれる2つ以上の化合物、好ましくは前記群から選ばれる2つの化合物の組合せで投与されることを特徴とし得る。
本発明は、さらに他の観点において、前記組成物の新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用用途に関する。
【0111】
本発明は、さらに他の観点において、SARS-CoV-2のMproに特異的に結合する化合物又はRdRPに特異的に結合する化合物の新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用用途に関する。
本発明は、さらに他の観点において、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療用薬剤の製造のための前記組成物の使用に関する。
【0112】
本発明は、さらに他の観点において、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の予防又は治療用薬剤の製造のための前記SARS-CoV-2のMproに特異的に結合する化合物又はRdRPに特異的に結合する化合物の使用に関する。
本発明の各観点の具体的な具現例は、本発明の上述した他の観点で開示したのと同じ特徴を共有することができる。
【0113】
本明細書に記載の各化合物の好ましい濃度は、“超過”、“未満”などのように、意図的に除外されない限り、その臨界範囲を含むものであり、本発明は、上に記載された濃度範囲の他に、本明細書の記載から通常の技術者によって導出可能な実質的に同じものと理解され得る範囲も含むと解釈されるべきである。
【実施例】
【0114】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0115】
実施例1:薬物仮想スクリーニングのための化合物ライブラリー構築
既存に承認されたか或いは臨床が進行された薬物を収集するために、DrugBank(https://www.drugbank.ca/)、ZINC15(https://zinc15.docking.org/)及びChEMBL(https://www.ebi.ac.uk/chembl/)データベースを用いて重複無しで6,218個の化合物を収集した。
【0116】
DrugBankからは“approved drugs”と“investigated drugs”の項目に分類された化合物構造をそれぞれダウンロードした。ZINC15からは“in-trials”の項目に分類された全ての化合物構造をダウンロードした。ChEMBLからは“polymerase”、“protease”、“antiviral”の項目のうち少なくとも一つに活性を有し、少なくとも臨床1相が進行された化合物に対してダウンロードした。
【0117】
3つのデータベースから収集した化合物構造は、InChIに変換した後、重複性の有無を検査した。データベースから得た核酸類似体薬物はプロドラッグ(prodrug)の形態で存在する場合が多かったため、実際に体内で作用する活性形態に変換する作業を行った。分子内でリボースをサブ構造として含む場合、5’-炭素位置に三リン酸(triphosphate)を付ける作業を自動方式で行った。活性形態に転換された核酸類似体薬物の場合、プロドラッグと活性形態の両構造とも、薬物仮想スクリーニングのためのデータベースに含めた。化合物構造変換過程は、オープンソースであるRDKitパッケージを用いてパイソン自体スクリプトで行った(
図1)。
【0118】
実施例2:タンパク質-リガンドドッキングのためのウイルス薬物ターゲット3次元構造確保
実施例2-1:SARS-CoV-2Mpro構造
SARS-CoV-2の核心プロテアーゼ(Mpro)の3次元構造は、Protein Data Bankデータベースに複数個保存されており、その中でも、結晶構造の解像度が1.95Åと優れており、活性リガンドが付いている構造を選定した(
図2、PDB ID:6Y2F)。活性部位の付近に欠失したアミノ酸が2個(Glu47、Asp48)確認され、その部分を挿入した後、GROMACS 4.5パッケージを用いて最急降下法(steepest descent method)でエネルギー最適化過程を行った。
【0119】
実施例2-2:SARS-CoV-2 RdRp構造
SARS-CoV-2のRdRp構造は、Protein Data Bankデータベースに低温電子顕微鏡(cryo-Electron Microscopy)方式で解釈された構造を使用した(
図3、PDB ID:6M71)。この構造は、解像度が2.90Åであり、RNAが結合する活性部位に、RNAが結合する空間が十分でないことが確認された。したがって、GROMACS 4.5パッケージを用いて分子動力学(molecular dynamics)シミュレーションを行った後、RMSD(root mean-square deviation)値を基準に、複数の時間によるタンパク質構造のスナップショットに対するクラスタリング分析を行った。
【0120】
高い頻度で確認されるタンパク質構造のうち、RNAが結合する活性部位に十分の空間が確保される構造を、最終ドッキングシミュレーションに使用する構造として選定した。実際に薬物がタンパク質の活性部位に結合時の構造を最大限に摸写した。
【0121】
実施例3:薬物仮想スクリーニングを用いたSARS-CoV-2Mpro阻害剤予測
実施例3-1:リガンド形態類似度(ligand shape similarity)を用いたスクリーニング
SARS-CoV-2Mproに結合するものと知られた活性物質を、タンパク質共結晶構造(co-crystal structure)から得ることができ、それらをレファレンス構造とし、実施例1で得た化合物ライブラリーの化合物とリガンド形態の類似度を比較した。実施例1で得た化合物ライブラリーは、3次元構造ではなく2次元構造で保存されているため、3次元構造に変換する作業を先行した。RDKitパッケージの ETKDG(experimental-torsion basic knowledge distance geometry)方法を用いて実験的に最も可能性の高い3次元構造コンフォーマー(conformer)を各化合物当たりに最大で300個ずつ生成した。6,218個の化合物に対して総1,865,400個の3次元構造コンフォーマーが生成された。これらのコンフォーマーは、知られた活性リガンドとリガンド形態類似度計算が行われた。リガンド形態類似度計算方法は、USR(Ultrafast Shape Recognition)、USRCAT(USR with Credo Atom Types)、ElectroShapeの合計3つの方式を用いた。3つの方法の平均値を計算した後、0.4以上の値を有する化合物4,019個に対して、次の段階であるドッキングシミュレーション分析を行った。
【0122】
実施例3-2:ドッキングシミュレーション(docking simulations)を用いたスクリーニング
タンパク質と化合物間の結合様相及び結合力強度を予測するために、AutoDock Vinaを用いて分子ドッキングシミュレーションを行った。AutoDock Vinaプログラムの入力(input)ファイルであるPDBQTファイルを、OpenBabelとMGLToolsパッケージを用いてタンパク質とリガンドに対してそれぞれ生成した。タンパク質の活性部位にリガンドが結合している結晶構造(PDB ID:6Y2F)を参照して、リガンドの中心からグリッドボックスを設定した(12Å*12Å*12Å)。ドッキング結合エネルギー値-7.0kcal/molを基準に、より小さいか等しい化合物30個を選別した(表1)。
【0123】
【0124】
さらに、ドッキング結合エネルギー値-7.5kcal/molを基準に、より小さいか等しい化合物19個を選別した(表2)。
【0125】
【0126】
実施例3-3:タンパク質-リガンド相互作用類似度(interaction similarity)を用いたスクリーニング
SARS-CoV-2Mpro結合するものと知られた活性リガンドのタンパク質-リガンド3次元相互作用パターンとドッキングシミュレーションから得た30個の化合物を対象にタンパク質-リガンド3次元相互作用パターンの類似度を比較し、相互作用が類似する化合物をさらに選別した。総6個の相互作用を考慮した(水素結合(hydrogen bonds)、疎水性接触(hydrophobic contacts)、π-スタッキング(pi-stacking)、π-カチオン相互作用(pi-cation interactions)、塩橋(salt bridges)、及びハロゲン結合(halogen bonds))。相互作用類似度は、谷本類似度測定方式を用いて定量的な比較を行った。相互作用類似度が0.5以上である候補薬物20個を対象にタンパク質-リガンド間の結合様相が化学的に可能であるか確認する過程を経て最終候補薬物10個を選定した(表3)。
【0127】
【0128】
実施例4:薬物仮想スクリーニングを用いたSARS-CoV-2 RdRp阻害剤予測
実施例4-1:リガンド形態類似度(ligand shape similarity)を用いたスクリーニング
SARS-CoV-2のRdRpと類似な他のウイルスのRdRpに結合するものと知られた活性物質を、タンパク質共結晶構造(co-crystal structure)から得ることができ、それらをレファレンス構造とし、実施例1で得た化合物ライブラリーの化合物とリガンド形態の類似度を比較した。実施例1で得た化合物ライブラリーは、3次元構造ではなく2次元構造で保存されているため、3次元構造に変換する作業を先行した。RDKitパッケージのETKDG方法を用いて実験的に最も可能性の高い3次元構造コンフォーマー(conformer)を、各化合物当たりに最大で300個ずつ生成した。これらのコンフォーマーは、知られた活性リガンドとリガンド形態類似度計算が行われた。リガンド形態類似度計算方法は、USR(Ultrafast Shape Recognition)、USRCAT(USR with Credo Atom Types)、ElectroShapeの合計3つの方式を用いた。3つの方法の平均値を計算した後、0.4以上の値を有する化合物4,554個に対して、次の段階であるドッキングシミュレーション分析を行った。
【0129】
実施例4-2:ドッキングシミュレーション(docking simulations)を用いたスクリーニング
タンパク質と化合物間の結合様相及び結合力強度を予測するために、AutoDock Vinaを用いて分子ドッキングシミュレーションを行った。AutoDock Vinaプログラムの入力ファイルであるPDBQTファイルを、OpenBabelとMGLToolsパッケージを用いてタンパク質とリガンドに対してそれぞれ生成した。タンパク質の活性部位にリガンドが結合されている結晶構造(PDB ID:3N6M)を参照して、リガンドの中心からグリッドボックスを設定した(12Å*12Å*12Å)。ドッキング結合エネルギー値-6.4kcal/molを基準に、より小さいか等しい化合物36個を選別した(表4)。
【0130】
【0131】
さらに、ドッキング結合エネルギー値-6.7kcal/molを基準に、より小さいか等しい化合物18個を選別した(表5)。
【0132】
【0133】
実施例4-3:タンパク質-リガンド相互作用類似度(interaction similarity)を用いたスクリーニング
SARS-CoV-2のRdRpと類似する他のウイルスのRdRp結合するものと知られた活性リガンドのタンパク質-リガンド3次元相互作用パターンとドッキングシミュレーションから得た38個の化合物を対象にタンパク質-リガンド3次元相互作用パターンの類似度を比較し、相互作用が類似する化合物をさらに選別した。総6個の相互作用を考慮した(水素結合(hydrogen bonds)、疎水性接触(hydrophobic contacts)、π-スタッキング(pi-stacking)、π-カチオン相互作用(pi-cation interactions)、塩橋(salt bridges)、及びハロゲン結合(halogen bonds))。相互作用類似度は、谷本類似度測定方式を用いて定量的な比較を行った。相互作用類似度が0.5以上である候補薬物24個を対象にタンパク質-リガンド間の結合様相が化学的に可能であるか確認する過程を経て最終候補薬物10個を選定した(表6)。
【0134】
【0135】
実施例5:候補物質細胞実験
実施例5-1:Vero細胞における単一候補薬物性能検証
Vero細胞(サル腎臓細胞、ATCC(American Type Culture Collection)から購入)に、SARS-CoV-2と実施例3及び4で導出した候補薬物のうち、Mproに特異的に結合する化合物15種及びRdRPに特異的に結合する化合物23種の合計38種の薬物を注入した後、免疫蛍光法(immunofluorescence)でウイルスの感染程度と細胞数をイメージ分析により定量的に測定した(表7)。現在臨床で使用中である新型コロナウイルス感染症治療剤3種(クロロキン、ロピナビル、レムデシビル)をレファレンス薬物として使用した(
図6)。
【0136】
【0137】
各候補薬物に対する容量反応曲線(dose-response curve)から抗ウイルス活性を定量的に測定した(
図7)。現在基準でFDAが新型コロナウイルス感染症治療剤として正式承認した薬物は、レムデシビルが唯一である。
【0138】
その結果、表8に示すように、オミパリシブはIC50値がレムデシビルの20倍以下と現れ、チピファルニブ及びブロナンセリンはレムデシビルと類似なIC50値を示した。ヒペリシン、LGH-447、NS-3728、及びエモジンは、レムデシビルよりも高いIC50値を示したが、有意の抗ウイルス活性を示し、これら7種の化合物をCoVid-19の治療剤の単一候補薬物として決定した(
図7)。
【0139】
【0140】
実施例5-2:Calu-3細胞における単一候補薬物性能検証
実施例5-1でVero細胞を用いて導出したSARS-CoV-2に抗ウイルス活性を示した化合物7種(表8)が、Calu-3細胞(ヒト肺細胞、ATCC(American Type Culture Collection)から購入)においても優れた抗ウイルス活性を示すか評価した。実施例5-1のVero細胞に対する評価と同じ免疫蛍光法を用いてウイルスの感染程度と細胞数をイメージ分析により定量的に測定した。現在、臨床で新型コロナウイルス感染症治療剤として使用中であるレムデシビルをレファレンス薬物とした。
【0141】
各候補薬物に対する容量反応曲線(dose-response curve)から候補薬物7種に対する抗ウイルス活性を定量的に測定した(
図8)。その結果、7種の候補薬物のうち3種の薬物(オミパリシブ、チピファルニブ、エモジン)は、ヒト肺細胞であるCalu-3においても抗ウイルス活性が確認された。表9に示すように、オミパリシブはIC50値がレムデシビルの200倍以下と現れ、チピファルニブもレムデシビルと類似なレベルのIC50値を示した。
【0142】
【0143】
実施例5-3:薬物のシナジー効果検証
抗ウイルス活性が実験から検証された単一薬物を組合せにより薬物シナジー効果をさらに検証した。薬物組合せの効果を極大化させるために、薬物ターゲット別にIC50基準で抗ウイルス活性に優れていた薬物を2種ずつを選定した(Mpro:ブロナンセリン、エモジン;RdRp:オミパリシブ、チピファルニブ)。また、現在基準で唯一にFDA正式承認を受けたレムデシビルも薬物組合せの候補群に含めた。
【0144】
合計5つの薬物で10通りの薬物組合せを構成し、抗ウイルス活性検証実験を行った(表10)。単一薬物の実験方法と同様に、Vero細胞にSARS-CoV-2と候補組合せ薬物を濃度別(各単一薬物のIC50値の4倍濃度から2倍ずつ希釈して8個ポイントの濃度を使用)に注入した後、免疫蛍光法でウイルスの感染程度と細胞数をイメージ分析により定量的に測定し、それぞれの組合せによる容量反応マトリックス(dose-response matrix)を作成した(それぞれ、
図9、
図14、
図19、
図24、
図29、
図34、
図39、
図44、
図49、
図54の右側)。
【0145】
【0146】
組合せ薬物の容量反応マトリックス(dose-response matrix)に基づいて抗ウイルス活性に対する薬物シナジー効果を評価するために、synergyfinderプログラム(Ianevski,A.et al.,Bioinformatics,Vol.33(15)、pp.2413-2415,2017.)を使用した。
【0147】
薬物シナジー評価モデルは、次のように4つの薬物シナジー評価モデルをそれぞれ適用した;1)ロエベ相加性(Loewe additivity)モデル(Loewe,S.,Arzneimittelforschung,Vol.3,pp.285-290,1953.)、2)ブリス独立性(Bliss independence)モデル(Bliss,C.I.,Annals of applied biology,Vol.26(3)、pp.585-615,1939.)、3)ZIP(Zero Interaction Potency)モデル(Yadav,B.et al.,Computational and structural biotechnology journal,Vol.13,pp.504-513,2015.)4)HSA(Highest Single Agent)モデル(Berenbaum,M.C.,Pharmacological reviews,Vol.41(2)、pp.93-141,1989.)。
【0148】
図9~
図58に示すそれぞれの薬物組合せに対して4つのモデルの平均シナジースコア(synergy score)のうち、最もスコアの高いモデルを選定し、該当のモデルにおいて高いシナジー効果(赤色)を示す濃度を基準に各薬物組合せ別最適の濃度を選定した(表11)。
【0149】
【0150】
チピファルニブ(Tipifarnib)及びブロナンセリン(Blonanserin)組合せのシナジー効果は、薬物組合せ予測モデルを基準に、チピファルニブ濃度が2.75~11μMであるとともにブロナンセリン濃度が1.5~47μMである区間で確認された(
図11~
図13)。特に、チピファルニブ濃度が5.5μMであり、ブロナンセリン濃度が23μMである区間で、薬物組合せ予測モデルの期待効果よりも40%向上した抗ウイルス活性を示した(
図13)。
【0151】
チピファルニブ及びエモジン(Emodin)組合せのシナジー効果は、薬物組合せ予測モデルを基準に、チピファルニブ濃度が0~11μMであるとともにエモジン濃度が1.97~31.45μMである区間で確認された(
図16~
図18)。特に、チピファルニブ濃度が5.5μMであり、エモジン濃度が8μMである区間で、薬物組合せ予測モデルの期待効果よりも20%向上した抗ウイルス活性を示した(
図16~
図18)。
【0152】
チピファルニブ及びオミパリシブ(Omipalisib)組合せのシナジー効果は、薬物組合せ予測モデルを基準に、チピファルニブ濃度が0~11μMであるととともにオミパリシブ濃度が0.5μM以下である区間で確認された(
図20~
図23)。特に、チピファルニブ濃度が5.5μMであり、オミパリシブ濃度が0.06μM付近である区間で、薬物組合せ予測モデルの期待効果よりも30%向上した抗ウイルス活性を示した(
図21~
図23)。
【0153】
チピファルニブ及びレムデシビル(Remdesivir)組合せのシナジー効果は、薬物組合せ予測モデルを基準に、チピファルニブ濃度が0~11μMであるとともにレムデシビル濃度が0~20μMである区間で確認された(
図25~
図28)。特に、チピファルニブ濃度が5.5μMであり、レムデシビル濃度が2.5μM付近である区間で、薬物組合せ予測モデルの期待効果よりも60%向上した抗ウイルス活性を示した(
図26~
図28)。
【0154】
ブロナンセリン及びエモジン組合せのシナジー効果は、薬物組合せ予測モデルを基準に、ブロナンセリン濃度が5.98~47.87μMであるとともにエモジン濃度が0~62.9μMである区間で確認された(
図33)。特に、ブロナンセリン濃度が25μM付近であり、エモジン濃度が15付近である区間で、薬物組合せ予測モデルの期待効果よりも60%向上した抗ウイルス活性を示した(
図33)。
【0155】
ブロナンセリン及びオミパリシブ組合せのシナジー効果は、薬物組合せ予測モデルを基準に、ブロナンセリン濃度が2.99~47.87μMであるととともにオミパリシブ濃度が0~1.97μMである区間で確認された(
図36~
図38)。特に、ブロナンセリン濃度が40μM付近であり、オミパリシブ濃度が0.12μM付近である区間で、薬物組合せ予測モデルの期待効果よりも30~60%向上した抗ウイルス活性を示した(
図36~
図38)。
【0156】
ブロナンセリン及びレムデシビル組合せのシナジー効果は、薬物組合せ予測モデルを基準に、ブロナンセリン濃度が5.98~47.87μMであるとともにレムデシビル濃度が0~40.36μMである区間で確認された(
図40~
図43)。特に、ブロナンセリン濃度が23.94μM付近であり、レムデシビル濃度が2.52μM付近である区間で、薬物組合せ予測モデルの期待効果よりも50%向上した抗ウイルス活性を示した(
図41~
図43)。
【0157】
エモジン及びオミパリシブ組合せのシナジー効果は、薬物組合せ予測モデルを基準に、エモジン濃度が0~125.81μMであるとともにオミパリシブ濃度が0~1.97μMである区間で確認された(
図45~
図48)。特に、エモジン濃度が15μM付近であり、オミパリシブ濃度が0.25μM付近である区間で、薬物組合せ予測モデルの期待効果よりも40%向上した抗ウイルス活性を示した(
図48)。
【0158】
エモジン及びレムデシビル組合せのシナジー効果は、薬物組合せ予測モデルを基準に、エモジン濃度が0~125.81μMであるととともにレムデシビル濃度が0~40.36μMである区間で確認された(
図50~
図53)。特に、エモジン濃度が15μM付近であり、レムデシビル濃度が4μM付近である区間で、薬物組合せ予測モデルの期待効果よりも60%~80%向上した抗ウイルス活性を示した(
図51~
図53)。
【0159】
オミパリシブ及びレムデシビル組合せのシナジー効果は、薬物組合せ予測モデルを基準に、オミパリシブ濃度が0~1.97μMであるととともにレムデシビル濃度が0~40.36μMである区間で確認された(
図55~
図58)。特に、オミパリシブ濃度が0.2μM付近であり、レムデシビル濃度が5μM付近である区間で、薬物組合せ予測モデルの期待効果よりも40%~60%向上した抗ウイルス活性を示した(
図56~
図58)。
【0160】
上記の結果に基づき、Synergyfinderプログラムで計算される平均シナジースコア値を基準に、一つ以上の評価モデルで平均シナジースコアが10以上と最も優れたシナジー効果を示すか或いは特定濃度範囲で高いシナジースコアが確認された6個の薬物組合せを確認した(表12)。一般に、シナジースコア値が10以上である場合、非常に強力なシナジー効果を示すことを意味する。
【0161】
【0162】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好ましい実施様態に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項及びそれらの等価物によって定義されるといえよう。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明に係る新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用医薬組成物は、既存薬再開発技術を用いて、既に薬効が立証された薬物の他の新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用用途を導出したものであり、新しい薬物に比べて副作用が顕著に低く、臨床に早く適用できるので有用である。