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  • 特許-運転支援方法及び運転支援装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】運転支援方法及び運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20230911BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20230911BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20230911BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W60/00
B60W40/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022514036
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 IB2020000325
(87)【国際公開番号】W WO2021205191
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 明之
(72)【発明者】
【氏名】福重 孝志
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101101(JP,A)
【文献】特開2016-060240(JP,A)
【文献】特開2020-040515(JP,A)
【文献】特開2010-241320(JP,A)
【文献】特開2017-102638(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193577(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017217441(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
B62D 6/00 - 6/10
B60K 31/00 - 31/18
B60R 21/00 - 21/017
B60R 99/00
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
F02D 29/00 - 29/06
B60G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標走行軌道に沿って自車両が走行するようにコントローラによって前記自車両を制御する運転支援方法であって、
前記自車両が走行する車線に沿って存在する段差の段差情報を取得し、
前記段差情報より前記自車両が前記段差を乗り越えると判定した場合に、前記段差と前記目標走行軌道とのなす角度である段差乗り越え角が閾値よりも大きくなるように、前記目標走行軌道を生成
前記段差が高いほど、又は前記段差の傾斜が大きいほど、より大きな前記閾値を設定することを特徴とする運転支援方法。
【請求項2】
前記自車両の周囲の物体の検出結果に応じて前記目標走行軌道を生成し、
前記自車両が走行する車線に沿って存在する段差の段差情報を取得し、前記段差情報より前記段差を乗り越えると判定した場合に、生成した前記目標走行軌道と前記段差とがなす前記段差乗り越え角が前記閾値以下である場合に、前記段差乗り越え角が前記閾値よりも大きくなるように前記目標走行軌道を再生成又は修正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運転支援方法。
【請求項3】
前記自車両のタイヤの扁平率が低いほど、又は前記タイヤの外径が小さいほど、より大きな前記閾値を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の運転支援方法。
【請求項4】
前記自車両の周囲の障害物の障害物情報を取得し、
前記段差を乗り越えた後の前記自車両が走行する予定の前記目標走行軌道の近傍に障害物がある場合に、より大きな前記閾値を設定する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項5】
前記自車両が前記段差を通過する時点の目標車速を徐行速度に設定することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項6】
前記段差が高いほど、又は前記段差の傾斜が大きいほど、前記自車両が前記段差を通過する時点の目標速度をより低く設定することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項7】
前記自車両のタイヤの扁平率が低いほど、又は前記タイヤの外径が小さいほど、前記自車両が前記段差を通過する時点の目標速度をより低く設定することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項8】
前記自車両の周囲の障害物の障害物情報を取得し、
前記段差を乗り越えた後の前記自車両が走行する予定の前記目標走行軌道の近傍に障害物がある場合に、前記自車両が前記段差を通過する時点の目標速度をより低く設定する、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項9】
前記段差を乗り越えた後に前記自車両が走行する予定の車線の車線幅が狭いほど、前記自車両が前記段差を通過する時点の目標速度をより低く設定することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項10】
前記自車両が走行する車線の走路境界を検出し、
前記自車両が前記走路境界の内側を走行し且つ前記段差乗り超え角が前記閾値よりも大きくなるように前記目標走行軌道を生成できない場合に、前記自車両が前記段差を通過する時点の目標車速を徐行速度に設定する、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項11】
前記段差乗り越え角が小さいほど、前記自車両が前記段差を通過する時点の目標車速をより低く設定する、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項12】
前記目標走行軌道として前記自車両の転舵輪の車軸の中心位置が通る軌道を用いて、前記段差と前記目標走行軌道とのなす前記段差乗り越え角を算出することを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項13】
目標走行軌道に沿って自車両が走行するように前記自車両を制御する運転支援装置であって、
前記自車両の周囲の物体を検出するセンサと、
前記自車両が走行する車線に沿って存在する段差の段差情報を取得し、前記段差情報より前記自車両が前記段差を乗り越えると判定した場合に、前記段差と前記目標走行軌道とのなす角度である段差乗り越え角が閾値よりも大きくなるように、前記目標走行軌道を生成するコントローラと、
を備え
前記段差が高いほど、又は前記段差の傾斜が大きいほど、より大きな前記閾値が設定されることを特徴とする運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援方法及び運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、道路から施設に進入するときに車両が通過する必要のある施設の入口の段差に関する段差情報と、施設に関する施設情報とが関連付けて記憶される地図データ記憶部が記載されている。施設に入るために、記憶した段差の位置が地物情報と提供されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-144030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が段差を乗り越える際に、段差の延在方向に対して車両の進行方向が傾いていると、車両の転舵輪に外乱が加わって車両の進行方向にズレが発生する。このため、自動運転制御において予め設定された目標走行軌道に沿って車両を自動的に走行させる場合には、目標走行軌道からの乖離が発生する。
本発明は、目標走行軌道に沿って自車両が走行するように自車両を制御する運転支援において、段差を乗り越える際の目標走行軌道からの乖離を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、目標走行軌道に沿って自車両が走行するようにコントローラによって自車両を制御する運転支援方法が与えられる。運転支援方法では、自車両が走行する車線に沿って存在する段差の段差情報を取得し、段差情報より自車両が段差を乗り越えると判定した場合に、段差と目標走行軌道とのなす角度である段差乗り越え角が閾値よりも大きくなるように、目標走行軌道を生成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、目標走行軌道に沿って自車両が走行するように自車両を制御する運転支援において、乗り越える際の目標走行軌道からの乖離を低減できる。
本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に示した要素及びその組合せを用いて具現化され達成される。前述の一般的な記述及び以下の詳細な記述の両方は、単なる例示及び説明であり、特許請求の範囲のように本発明を限定するものでないと解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の運転支援装置の概略構成図である。
図2A】実施形態の運転支援方法の一例の説明図である。
図2B】実施形態の運転支援方法の一例の説明図である。
図3】実施形態の運転支援装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4】段差乗り越え角θsの算出例の説明図である。
図5A】段差乗り越え角θsの閾値Thの設定の一例の説明図である。
図5B】段差乗り越え角θsの閾値Thの設定の他の一例の説明図である。
図6】実施形態の運転支援方法の一例のフローチャートである。
図7】第1実施形態の軌道生成処理の一例のフローチャートである。
図8A】自車両が段差を通過する時点の目標速度が低く設定される状況の一例の説明図である。
図8B】自車両が段差を通過する時点の目標速度が低く設定される状況の他の一例の説明図である。
図9】第2実施形態の軌道生成処理の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
(構成)
図1を参照する。自車両1は、自車両1の運転支援を行う運転支援装置10を備える。運転支援装置10による運転支援には、例えば自車両1の周辺の走行環境に基づいて、運転者が関与せずに自車両1を自動で運転する自動運転制御を含んでよい。
運転支援装置10による自動運転制御の一例は、市街地において自車両1を予め設定された目標走行軌道に沿って自動的に走行させる運転制御であってよい。
【0009】
運転支援装置10は、物体センサ11と、車両センサ12と、測位装置13と、地図データベース14と、通信装置15と、コントローラ16と、アクチュエータ17とを備える。図面において地図データベースを「地図DB」と表記する。
物体センサ11は、自車両1に搭載されたレーザレーダやミリ波レーダ、カメラ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)など、自車両1の周辺の物体を検出する複数の異なる種類の物体検出センサを備える。
【0010】
車両センサ12は、自車両1に搭載され、自車両1から得られる様々な情報(車両信号)を検出する。車両センサ12には、例えば、自車両1の走行速度(車速)を検出する車速センサ、自車両1が備える各タイヤの回転速度を検出する車輪速センサ、自車両1の3軸方向の加速度(減速度を含む)を検出する3軸加速度センサ(Gセンサ)、操舵角(転舵角を含む)を検出する操舵角センサ、自車両1に生じる角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ、自車両のアクセル開度を検出するアクセルセンサと、運転者によるブレーキ操作量を検出するブレーキセンサが含まれる。
【0011】
測位装置13は、全地球型測位システム(GNSS)受信機を備え、複数の航法衛星から電波を受信して自車両1の現在位置を測定する。GNSS受信機は、例えば地球測位システム(GPS)受信機等であってよい。測位装置13は、例えば慣性航法装置であってもよい。
地図データベース14は、自動運転用の地図として好適な高精度地図データ(以下、単に「高精度地図」という。)を記憶してよい。高精度地図は、ナビゲーション用の地図データ(以下、単に「ナビ地図」という。)よりも高精度の地図データであり、道路単位の情報よりも詳細な車線単位の情報を含む。
【0012】
例えば、高精度地図は車線単位の情報として、車線基準線(例えば車線内の中央の線)上の基準点を示す車線ノードの情報と、車線ノード間の車線の区間態様を示す車線リンクの情報を含む。
車線ノードの情報は、その車線ノードの識別番号、位置座標、接続される車線リンク数、接続される車線リンクの識別番号を含む。車線リンクの情報は、その車線リンクの識別番号、車線の種類、車線の幅員、車線境界線の種類、車線の形状、車線区分線の形状、車線基準線の形状を含む。高精度地図は更に、車線上又はその近傍に存在する信号機、停止線、標識、建物、電柱、縁石、横断歩道等の地物の種類及び位置座標と、地物の位置座標に対応する車線ノードの識別番号及び車線リンクの識別番号等の地物の情報を含む
【0013】
高精度地図は、車線単位のノード及びリンク情報を含むため、走行ルートにおいて自車両1が走行する車線を特定可能である。高精度地図は、車線の延伸方向及び幅方向における位置を表現可能な座標を有する。高精度地図は、3次元空間における位置を表現可能な座標(例えば経度、緯度及び高度)を有し、車線や上記地物は3次元空間における形状として記述されてもよい。
通信装置15は、自車両1の外部の通信装置との間で無線通信を行う。通信装置15による通信方式は、例えば公衆携帯電話網による無線通信や、車車間通信、路車間通信、又は衛星通信であってよい。
【0014】
コントローラ16は、自車両1の運転支援制御を行う電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。コントローラ16は、プロセッサ18と、記憶装置19等の周辺部品とを含む。プロセッサ18は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。
記憶装置19は、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置19は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
【0015】
以下に説明するコントローラ16の機能は、例えばプロセッサ18が、記憶装置19に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
なお、コントローラ16を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。
例えば、コントローラ16は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばコントローラ16はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバ Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
【0016】
アクチュエータ17は、コントローラ16からの制御信号に応じて、自車両のステアリングホイール、アクセル開度及びブレーキ装置を操作して、自車両の車両挙動を発生させる。アクチュエータ17は、ステアリングアクチュエータと、アクセル開度アクチュエータと、ブレーキ制御アクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、自車両のステアリングの操舵方向及び操舵量を制御する。
アクセル開度アクチュエータは、自車両のアクセル開度を制御する。ブレーキ制御アクチュエータは、自車両1のブレーキ装置の制動動作を制御する。
【0017】
次に、コントローラ16による運転支援制御の一例を説明する。図2A及び図2Bを参照する。参照符号20は、自車両1が走行する車線を示し、参照符号21及び22は、車線20の境界を示す区画線を示す。本明細書の例では、区画線21は車線20の車線外側線であり、区画線22は車線境界線である。これら区画線21及び22は、特許請求の範囲に記載の「走路境界」の一例である。走路境界は、区画線に限られず、例えば縁石やガードレールなどの地物であってもよく路肩でもよい。
【0018】
車線20の側方には車線20に面して通路23が接続されており、車線20と通路23との間には段差24が車線20と平行に延在している。通路23は、例えば施設や私有地などに侵入する通路であってよい。通路23は、明確に設けられた通路である必要はなく、例えば施設や私有地などの入口と車線20との間に存在する歩道の一部分などであってもよい。
いま、自動運転制御を実行するコントローラ16が、図2Aに示すように車線20から外れて通路23に侵入する目標走行軌道25を生成した場合を想定する。目標走行軌道25に沿って走行する自車両1は、段差24を乗り越えて通路23に侵入する。
【0019】
段差24を乗り越える時点における自車両1の進行方向と段差24の延在方向とのなす角θsは、段差24と平行な直線と目標走行軌道25とのなす角度、すなわち段差24と目標走行軌道25とが交差する角度によって決まる。以下、段差24と目標走行軌道25とが交差する角度θsを「段差乗り越え角」と表記する。
段差乗り越え角θsが90度よりも小さい場合、すなわち段差24の延在方向に対して自車両1の進行方向が傾いている場合には、段差24を乗り越える自車両1の転舵輪に対して、転舵軸周りの外乱が加わる。本明細書において、転舵輪とは操舵機構によって転舵される車輪を意味する。
【0020】
この外乱は、段差乗り越え角θsが90度から離れるほど大きくなる。大きな外乱が転舵輪に加わると、目標走行軌道25に応じて設定された目標転舵角から実転舵角が外れて、自車両1が目標走行軌道25から逸脱し、自車両1が周囲の障害物に接近し易くなるおそれがある。
そこでコントローラ16は、段差24を乗り越える目標走行軌道を生成する場合に、段差乗り越え角θsが所定の閾値Thよりも大きくなるように目標走行軌道を生成する。
【0021】
図2Bに、段差乗り越え角θsが所定の閾値Thよりも大きくなるように生成された目標走行軌道27の一例を示す。所定の閾値Thよりも段差乗り越え角θsが大きくなるように目標走行軌道27を生成することにより、自車両1は90度に近い角度で段差24を乗り越えることができる。
【0022】
これにより、段差24を乗り越える際に転舵輪に加わる転舵軸周りの外乱を低減して、目標走行軌道27からの逸脱を低減できる。この結果、目標走行軌道27からの逸脱することによる障害物への接近を軽減できる。
なお、本明細書では、段差24が車線20と通路23との間に存在する場合について説明するが、本発明はこれに限定されない。本発明は、自動運転制御において、段差24乗り越える目標走行軌道が生成される場合に広く適用可能である。
【0023】
続いて図3を参照して、コントローラ16の機能を詳しく説明する。コントローラ16は、物体検出部30と、自車両位置推定部31と、地図取得部32と、検出統合部33と、物体追跡部34と、地図内位置演算部35と、運転行動計画決定部36と、走行可能領域決定部37と、目標走行軌道生成部38と、段差判定部39と、段差乗り越え角算出部40と、再生成判定部41と、車両制御部42を備える。
【0024】
物体検出部30は、物体センサ11の検出信号に基づいて、自車両1の周辺の物体、例えば車両やバイク、歩行者、障害物などの位置、姿勢、大きさ、速度などを検出する。物体検出部30は、例えば自車両1を空中から眺める天頂図(平面図ともいう)において、物体の2次元位置、姿勢、大きさ、速度などを表現する検出結果を出力する。
【0025】
自車両位置推定部31は、測位装置13による測定結果や、車両センサ12からの検出結果を用いたオドメトリに基づいて、自車両1の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する自車両1の位置、姿勢及び速度を計測する。
地図取得部32は、地図データベース14から自車両1が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。地図取得部32は、通信装置15により外部の地図データサーバから地図情報を取得してもよい。
【0026】
検出統合部33は、複数の物体検出センサの各々から物体検出部30が得た複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。
具体的には、物体検出センサの各々から得られた物体の挙動から、各物体検出センサの誤差特性などを考慮した上で最も誤差が少なくなる最も合理的な物体の挙動を算出する。
具体的には、既知のセンサ・フュージョン技術を用いることにより、複数種類のセンサで取得した検出結果を総合的に評価して、より正確な検出結果を得る。
【0027】
物体追跡部34は、物体検出部30によって検出された物体を追跡する。具体的には、検出統合部33により統合された検出結果に基づいて、異なる時刻に出力された物体の挙動から、異なる時刻間における物体の同一性の検証(対応付け)を行い、かつ、その対応付けを基に、物体の速度などの挙動を予測する。
【0028】
地図内位置演算部35は、自車両位置推定部31により得られた自車両1の絶対位置、及び地図取得部32により取得された地図情報から、地図上における自車両1の位置及び姿勢を推定する。
運転行動計画決定部36は、検出統合部33及び物体追跡部34により得られた検出結果と、地図内位置演算部35により特定された自車両1の位置に基づいて、運転支援装置10により実行する自車両1の概略的な運転行動を決定する。
【0029】
運転行動計画決定部36が決定する運転行動は、例えば、自車両1の停止、一時停止、走行速度、減速、加速、進路変更、右折、左折、直進、合流区間や複数車線における車線変更、車線維持、追越、障害物への対応などの行動が含まれる。
運転行動計画決定部36は、地図内位置演算部35が推定した自車両1の位置及び姿勢と、自車両1の周囲の物体の位置及び姿勢と、高精度地図とに基づいて、自車両1の周辺の経路や物体の有無を表現する経路空間マップと、走行場の危険度を数値化したリスクマップを生成する。運転行動計画決定部36は、経路空間マップ及びリスクマップに基づいて、自車両1の運転行動計画を生成する。
【0030】
走行可能領域決定部37は、運転行動計画決定部36が決定した運転行動計画、自車両1の運動特性、経路空間マップに基づいて、自車両1を走行させることができる走行可能領域を決定する。
目標走行軌道生成部38は、運転行動計画決定部36が決定した運転行動、走行可能領域決定部37が決定した走行可能領域に基づいて、自車両1を走行させる走行軌道及び速度プロファイルの候補を生成する。
目標走行軌道生成部38は、リスクマップに基づいて各候補の将来リスクを評価して、最適な走行軌道及び速度プロファイルを選択し、自車両1に走行させる目標走行軌道及び目標速度プロファイルとして設定する。
【0031】
図2Aを参照する。目標走行軌道25のように、自車両1を旋回させる目標走行軌道を生成する場合には、目標走行軌道生成部38は、目標走行軌道25の曲率を徐々に最大曲率まで増加させて、その後に徐々に減少させる。
例えば目標走行軌道生成部38は、クロソイド曲線やスプライン曲線に従う目標走行軌道25を生成する。ただし、目標走行軌道25は、このような既知の算出式で計算される曲線に限定されない。目標走行軌道25は、徐々に曲率が最大曲率まで増加して、その後に徐々に減少する曲線であればよい。
【0032】
目標走行軌道生成部38は、目標走行軌道の曲率変化率を、特定のパラメータによって決定してよい。目標走行軌道の曲率変化率を決定するパラメータを、以下「曲率緩和パラメータ」と表記する。曲率緩和パラメータの一例は、クロソイド曲線おけるクロソイドパラメータである。曲率緩和パラメータが大きいほど、より緩やかに曲率が変化する目標走行軌道25が生成される。曲率緩和パラメータが小さいほど、より急峻に曲率が変化する目標走行軌道25が生成される。
【0033】
図3を参照する。段差判定部39は、車線20と平行に存在する段差24の段差情報を取得する。例えば段差判定部39は、カメラの撮像画像の画像認識結果に基づいて段差情報を取得してもよい。また、段差判定部39は、レーザレーダやミリ波レーダ、LIDARの検出結果に基づいて段差情報を取得してもよい。
段差判定部39は、例えば段差24の位置、高さ、傾斜(車線20の路面や水平面に対する段差24の上面の傾斜角)を段差情報として取得してよい。
【0034】
また、例えば段差判定部39は、地図データベース14の地図情報に基づいて、目標走行軌道25上に存在する公道と私有地との境界を検出することにより、公道と私有地との境界に設けられた段差24の段差情報を取得してよい。
また、例えば段差判定部39は、自車両1や他車両が実際に走行した際に記憶した走行履歴に基づいて、目標走行軌道25上に存在する段差24の段差情報を取得してよい。
【0035】
段差乗り越え角算出部40は、目標走行軌道25が段差24を乗り越えるか否か(目標走行軌道25が段差24と交差するか否か)を判定する。目標走行軌道25が段差24を乗り越える場合に、段差乗り越え角θsを算出する。図4を参照する。符号2FL及び2FRは自車両1の転舵輪を示し、符号2RL及び2RRは転舵輪以外の車輪を示す。本明細書の例では、転舵輪2FL及び2FRはそれぞれ左前輪及び右前輪であり、車輪2RL及び2RRは、それぞれ左後輪及び右後輪である。
【0036】
段差乗り越え角算出部40は、目標走行軌道25として、転舵輪2FL及び2FRの車軸3の中心位置Cが通る軌道を用いて、段差24と平行な直線と目標走行軌道25とのなす段差乗り越え角(段差24と目標走行軌道25とが交差する段差乗り越え角)θsを算出する。
このように、転舵輪2FL及び2FRの車軸3の中心位置Cが通る軌道と、段差24と平行な直線とのなす角を、段差乗り越え角θsとして算出することにより、転舵輪2FL及び2FRの向きと段差24の伸びる方向とのなす角をより適切に算出できる。
【0037】
図3を参照する。再生成判定部41は、目標走行軌道生成部38が生成した目標走行軌道25について算出した段差乗り越え角θsに応じて、目標走行軌道を再生成するか否かを判定する。
段差乗り越え角θsが所定の閾値Th以下の場合に、再生成判定部41は、目標走行軌道を再生成すると判定する。段差乗り越え角θsが所定の閾値Thより大きい場合に、再生成判定部41は、目標走行軌道を再生成しないと判定する。再生成判定部41は、判定結果を目標走行軌道生成部38に出力する。
【0038】
さらに再生成判定部41は、閾値Thを動的に変更してもよい。例えば再生成判定部41は、段差24の段差情報に応じて変化する閾値Thを設定してもよい。例えば再生成判定部41は、段差24が高いほどより大きな閾値Thを設定してよい。例えば再生成判定部41は、段差24の傾斜が大きいほどより大きな閾値Thを設定してよい。
【0039】
例えば再生成判定部41は、自車両1のタイヤの扁平率又は外径に応じて変化する閾値Thを設定してもよい。例えば再生成判定部41は、タイヤの扁平率が低いほどより大きな閾値Thを設定してよい。例えば再生成判定部41は、タイヤの外径が小さいほどより大きな閾値Thを設定してよい。
また、再生成判定部41は、物体センサ11から自車両1の周囲の障害物の障害物情報を取得してもよい。例えば図5Aに示す状況では、障害物である柱40a及び40bが存在している。
【0040】
再生成判定部41は、段差24を乗り越えた後の自車両1が走行する予定の目標走行軌道27の近傍に障害物40a及び40bが存在する場合に、より大きな閾値Thを設定してよい。
図5Bを参照する。再生成判定部41は、段差24を乗り越えた後に自車両1が走行する予定の車線23の車線幅W1が狭いほど、大きな閾値Thを設定してよい。車線幅W1の情報は、例えば地図データベース14から取得してよい。
【0041】
図3を参照する。目標走行軌道を再生成すると再生成判定部41が判定した場合に、目標走行軌道生成部38は目標走行軌道を再生成する。
目標走行軌道を再生成する際に、目標走行軌道生成部38は、再生成した目標走行軌道の段差乗り越え角θsが増大するように、目標走行軌道を再生成する。
【0042】
例えば、目標走行軌道生成部38は、段差24に向かって自車両1を旋回させる目標走行軌道の曲緩和パラメータを低減することにより、段差乗り越え角θsが増大するように目標走行軌道を再生成する。
一方で、目標走行軌道を再生成しないと再生成判定部41が判定した場合に、目標走行軌道生成部38は、目標走行軌道と目標速度プロファイルを車両制御部42へ出力する。
【0043】
これによって、目標走行軌道生成部38は、段差乗り越え角θsが閾値Thよりも大きくなるまで目標走行軌道の再生成を繰り返すので、段差乗り越え角θsが閾値Thよりも大きい目標走行軌道が生成される。
さらに、目標走行軌道生成部38は、自車両1が段差24を通過する時点の目標車速が所定の徐行速度(例えば10[km/h])以下となるように、目標速度プロファイルを設定してもよい。
【0044】
また、目標走行軌道生成部38は、自車両1が段差24を通過する時点の目標車速を動的に変更してもよい。
例えば目標走行軌道生成部38は、自車両1が段差24を通過する時点の目標車速が段差24の段差情報に応じて変化するように、目標速度プロファイルを設定してもよい。
例えば目標走行軌道生成部38は、段差24が高いほど自車両1が段差24を通過する時点の目標速度をより低く設定してよい。また例えば目標走行軌道生成部38は、段差24の傾斜が大きいほど自車両1が段差24を通過する時点の目標速度をより低く設定してよい。
【0045】
例えば目標走行軌道生成部38は、自車両1が段差24を通過する時点の目標車速が、自車両1のタイヤの扁平率又は前記タイヤの外径に応じて変化するように、目標速度プロファイルを設定してもよい。例えば目標走行軌道生成部38は、扁平率が低いほど自車両1が段差24を通過する時点の目標速度をより低く設定してよい。また例えば目標走行軌道生成部38は、タイヤの外径が小さいほど自車両1が段差24を通過する時点の目標速度をより低く設定してよい。
【0046】
また、目標走行軌道生成部38は、物体センサ11から自車両1の周囲の障害物の障害物情報を取得してもよい。
図5Aを参照する。段差24を乗り越えた後の自車両1が走行する予定の目標走行軌道27の近傍に障害物40a及び40bが存在する場合に、自車両1が段差24を通過する時点の目標速度がより低くなるように目標速度プロファイルを設定してよい。
【0047】
図5Bを参照する。目標走行軌道生成部38は、段差24を乗り越えた後に自車両1が走行する予定の車線23の車線幅W1が狭いほど、自車両1が段差24を通過する時点の目標速度がより低くなるように目標速度プロファイルを設定してよい。
また、目標走行軌道生成部38は、自車両1が段差24を通過する時点の目標車速が、段差乗り越え角θsに応じて変化するように、目標速度プロファイルを設定してもよい。
【0048】
例えば目標走行軌道生成部38は、段差乗り越え角θsが小さいほど自車両1が段差24を通過する時点の目標速度をより低く設定してよい。
図3を参照する。車両制御部42は、目標走行軌道生成部38から出力された目標速度プロファイルに従う速度で自車両1が目標走行軌道を走行するように、アクチュエータ17を駆動する。
【0049】
(動作)
次に、図6を参照して、実施形態における運転支援装置10の動作の一例を説明する。
ステップS1において物体検出部30は、複数の物体検出センサを用いて、自車両1の周辺における物体の位置、姿勢、大きさ、速度などを検出する。
ステップS2において検出統合部33は、複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。物体追跡部34は、検出及び統合された各物体を追跡し、自車両1の周辺の物体の挙動を予測する。
【0050】
ステップS3において自車両位置推定部31は、測位装置13による測定結果や、車両センサ12からの検出結果を用いたオドメトリに基づいて、所定の基準点に対する自車両1の位置、姿勢及び速度を計測する。
ステップS4において地図取得部32は、自車両1が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。
ステップS5において地図内位置演算部35は、ステップS3で計測された自車両1の位置、及びステップS4で取得された地図データから、地図上における自車両1の位置及び姿勢を推定する。
【0051】
ステップS6において運転行動計画決定部36は、ステップS2で得られた検出結果(自車両1の周辺の物体の挙動)と、ステップS5で特定された自車両1の位置に基づいて、運転支援装置10により実行する自車両1の運転行動を決定する。
ステップS7において走行可能領域決定部37、目標走行軌道生成部38、段差判定部39、段差乗りえ角算出部40及び再生成判定部41は、自車両1の目標走行軌道を生成するための軌道生成処理を実行する。
【0052】
図7を参照して、第1実施形態の軌道生成処理を説明する。ステップS10において走行可能領域決定部37は、運転行動計画決定部36が決定した運転行動計画に従って、自車両1の運動特性、経路空間マップに基づいて、自車両1を走行させることができる走行可能領域を決定する。目標走行軌道生成部38は、運転行動計画決定部36が決定した運転行動、走行可能領域決定部37が決定した走行可能領域に基づいて、目標走行軌道及び目標速度プロファイルを生成する。
【0053】
ステップS11において段差判定部39は、車線20と平行に存在する段差24の段差情報を取得する。
ステップS12において段差乗り越え角算出部40は、目標走行軌道25が段差24を乗り越えるか否か(目標走行軌道25が段差24と交差するか否か)を判定する。目標走行軌道25が段差24を乗り越える場合に、段差乗り越え角θsを算出する。
【0054】
再生成判定部41は、段差乗り越え角θsが所定の閾値Th以下であるか否かを判定する。段差乗り越え角θsが所定の閾値Th以下の場合(ステップS12:Y)に処理はステップS13へ進む。
ステップS13において目標走行軌道生成部38は、段差24に向かって自車両1を旋回させる目標走行軌道の曲緩和パラメータを低減する。
【0055】
ステップS14において目標走行軌道生成部38は、ステップS13で設定した曲緩和パラメータを用いて、段差24を乗り越える目標走行軌道を再生成する。その後に処理はステップS12へ戻る。
一方でステップS12において、段差乗り越え角θsが所定の閾値Th以下でない場合(ステップS12:N)に、目標走行軌道生成部38は、目標走行軌道及び目標速度プロファイルを車両制御部42へ出力して軌道生成処理は終了し、処理は図6のステップS8へ進む。
図6を参照する。ステップS8において車両制御部42は、ステップS7で生成した目標走行軌道や速度プロファイルに従って自車両1が走行するように自車両1を制御する。
【0056】
(変形例)
上記の例では、目標走行軌道生成部38が生成した目標走行軌道の段差乗り越え角θsが所定の閾値Th以下であるか否かを判定し、段差乗り越え角θsが所定の閾値Th以下である場合に目標走行軌道を再生成したが、本発明はこれに限定されない。目標走行軌道生成部38は、段差24を乗り越える目標走行軌道を生成する場合に、段差乗り越え角θsが所定の閾値Thよりも大きくなるように、曲率緩和パラメータを適宜設定して目標走行軌道を生成してもよい。この場合に、図3に示す段差乗り越え角算出部40と再生成判定部41を省略してもよい。
【0057】
例えば、目標走行軌道生成部38は、運転行動計画決定部36が決定した運転行動計画と、段差判定部39が取得した段差情報とに基づき、段差24を乗り越える目標走行軌道を生成するか否かを判定してよい。
段差24を乗り越える目標走行軌道を生成する場合に、目標走行軌道生成部38は、段差24を乗り越えない目標走行軌道を生成する場合よりも小さな曲率緩和パラメータを適宜設定することにより、段差乗り越え角θsが所定の閾値Thよりも大きな目標走行軌道を生成してよい。
【0058】
(第1実施形態の効果)
(1)コントローラ16は、目標走行軌道に沿って自車両1が走行するようにコントローラによって自車両1を制御する。段差判定部39は、自車両1が走行する車線20と平行に存在する段差24の段差情報を取得する。目標走行軌道生成部38は、段差24を乗り越える目標走行軌道を生成する場合に段差乗り越え角θsが閾値Thよりも大きくなるように、目標走行軌道を生成する。
これにより、自車両1の転舵輪が段差24を乗り越える角度が小さくなり、外乱が小さくなり、目標走行軌道に対する追従誤差を小さくすることができる。これにより、路外障害物との衝突の可能性を下げることができる。
【0059】
(2)目標走行軌道生成部38は、自車両1の周囲の物体の検出結果に応じて目標走行軌道を生成する。目標走行軌道生成部38は、生成した目標走行軌道と段差24と平行な直線とがなす段差乗り越え角θsが閾値Th以下である場合に、段差乗り越え角θsが閾値Thよりも大きくなるように目標走行軌道を再生成する。
これにより、自車両1の転舵輪が段差24を乗り越える角度が小さくなり、外乱が小さくなり、目標走行軌道に対する追従誤差を小さくすることができる。これにより、路外障害物との衝突の可能性を下げることができる。
【0060】
(3)再生成判定部41は、段差24が高いほど、又は段差24の傾斜が大きいほど、より大きな閾値Thを設定してよい。
段差が高い、傾斜角が大きいほど、段差24からタイヤに入力される抵抗力が大きくなり、目標走行軌道に対する追従誤差が大きくなるため、閾値Thを大きくすることで、誤差を抑制できる。
【0061】
(4)再生成判定部41は、自車両1のタイヤの扁平率が低いほど、又はタイヤの外径が小さいほど、より大きな閾値Thを設定してよい。
転舵輪が外乱からの影響の受けやすさはタイヤ扁平率が低いほど、タイヤ外径が小さいほど、目標走行軌道に対する追従誤差が大きくなるため、閾値Thを大きくすることで、誤差を抑制できる。
【0062】
(5)再生成判定部41は、自車両1の周囲の障害物の障害物情報を取得し、段差24を乗り越えた後の自車両1が走行する予定の目標走行軌道の近傍に障害物がある場合に、より大きな閾値Thを設定してよい。
段差24を乗り越え後に目標走行軌道に対して近い位置に障害物があれば、閾値Thを大きくすることで、誤差を抑制し衝突を回避できる。
【0063】
(6)再生成判定部41は、段差24を乗り越えた後に自車両1が走行する予定の車線の車線幅が狭いほど、より大きな閾値Thを設定してよい。
段差24を乗り越えた後の走路幅が狭ければ、閾値Thを大きくすることで、誤差を抑制し走路外に逸脱し、障害物との衝突を回避できる。
【0064】
(7)目標走行軌道生成部38は、自車両1が段差24を通過する時点の目標車速を徐行速度に設定してよい。
車速を低くすることで、段差24を乗り越えた後の軌道修正を早く実施でき、誤差が大きい状態が継続せずに、目標走行軌道に対する追従性が向上する。
【0065】
(8)目標走行軌道生成部38は、段差24が高いほど、又は段差24の傾斜が大きいほど、自車両1が段差24を通過する時点の目標速度をより低く設定してよい。
段差24が高いほど、傾斜が大きいほど、段差24を乗り越えた後の逸脱量が大きくなるため、車速を低くすることで、段差24を乗り越えた後の軌道修正を早く実施でき、誤差が大きい状態が継続せずに、目標走行軌道に対する追従性が向上する。
【0066】
(9)目標走行軌道生成部38は、自車両1のタイヤの扁平率が低いほど、又はタイヤの外径が小さいほど、自車両1が段差24を通過する時点の目標速度をより低く設定してよい。
タイヤ扁平率が小さいほど、タイヤ外径が小さいほど、段差24を乗り越えた後の逸脱量が大きくなるため、車速を低くすることで、段差24を乗り越えた後の軌道修正を早く実施でき、誤差が大きい状態が継続せずに、目標走行軌道に対する追従性が向上する。
【0067】
(10)目標走行軌道生成部38は、自車両1の周囲の障害物の障害物情報を取得し、段差24を乗り越えた後の自車両1が走行する予定の目標走行軌道の近傍に障害物がある場合に、自車両1が段差24を通過する時点の目標速度をより低く設定してよい。
段差24を乗り越えた後に障害物があれば、乗り越え後の衝突リスクが高くなるので、車速を低くすることで、段差24を乗り越えた後の修正を早く実施でき、誤差が大きい状態が継続せずに、衝突を回避できる。
【0068】
(11)目標走行軌道生成部38は、段差24を乗り越えた後に自車両1が走行する予定の車線の車線幅が狭いほど、自車両1が段差24を通過する時点の目標速度をより低く設定してよい。
車線幅が狭いほど、段差24を乗り越え後の路外逸脱リスクが高くなるので、車速を低くすることで、段差24を乗り越えた後の修正を早く実施でき、誤差が大きい状態が継続せずに、衝突を回避できる。
【0069】
(12)目標走行軌道生成部38は、段差乗り越え角θsが小さいほど、自車両1が段差24を通過する時点の目標車速をより低く設定してよい。
段差乗り越え角θsが小さい場合でも、車速を落とすことで経路の修正を素早く実施でき、誤差が大きい状態を継続せずに、衝突を回避できる。
【0070】
(13)段差乗り越え角算出部40は、目標走行軌道として自車両1の転舵輪の車軸の中心位置が通る軌道を用いて、段差24と平行な直線と目標走行軌道とのなす段差乗り越え角θsを算出してよい。
車体中心ではなく、転舵輪の車軸の中心位置の軌道を考慮することで、転舵輪が段差24を乗り越える際のタイヤ角度の厳密性を向上できる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。段差乗り越え角θsをどの程度90度に近づけることができるかは、自車両1の走行シーンや、周囲環境等に依存する。すなわち、段差乗り越え角θsを90度に近づけるために調整可能な曲率緩和パラメータの許容範囲は、自車両1の走行シーンや、周囲環境等に依存する。このため、段差乗り越え角θsが閾値Thよりも大きくなるように目標走行軌道を生成できない場合がある。
【0072】
図8Aを参照する。車線20から段差24を乗り越えて分岐車線28へ車線変更する目標走行軌道27が生成されている場合を想定する。この場合には、分岐車線28へ車線変更した後に反対側に転舵する必要があり、段差乗り越え角θsを90度に近づけると、曲率緩和パラメータの許容範囲を超えて、段差24を乗り越えた後に分岐車線28の走路境界の内側を走行できなくなる。このため、段差乗り越え角θsを90度に近づけることができない。
【0073】
図8Bを参照する。自車両1が段差24を乗り越える前に走行している車線20の車線幅W2が狭い場合にも、段差乗り越え角θsを90度に近づけると、曲率緩和パラメータの許容範囲を超えて、段差24を乗り越える前に車線20の走路境界の内側を走行できなくなる。この場合にも、段差乗り越え角θsを90度に近づけることができない。
【0074】
そこで、第2実施形態の目標走行軌道生成部38は、自車両1が走路境界の内側を走行し且つ段差乗りえ角θsが閾値Thよりも大きくなるように目標走行軌道を生成できるか否かを判定する。
自車両1が走路境界の内側を走行し且つ段差乗りえ角θsが閾値Thよりも大きくなるように目標走行軌道を生成できない場合には、目標走行軌道生成部38は、自車両1が段差24を通過する時点の目標車速を所定の徐行速度に設定する。
これにより、段差乗りえ角θsが閾値Thよりも大きくなるように目標走行軌道を生成できない場合であっても、段差24を乗り越えた後の目標走行軌道からの逸脱量を抑え、段差24を乗り越えた後の修正を素早くできる。
【0075】
図9を参照して第2実施形態の軌道生成処理を説明する。ステップS20~S23の処理は、図7を参照して説明したステップS10~S13の処理と同様である。
ステップS24において目標走行軌道生成部38は、ステップS23で低減した曲緩和パラメータが所定の許容範囲内であるか否かを判定する。例えば、目標走行軌道生成部38は、ステップS23で低減した曲緩和パラメータを使用して、自車両1が走路境界の内側を走行する目標走行軌道が生成できるか否かを判定する。
緩和パラメータが所定の許容範囲内でない場合(ステップS24:N)に処理はステップS26へ進む。
【0076】
ステップS26において目標走行軌道生成部38は、自車両1が段差24を通過する時点の目標速度がより低くなるように目標速度プロファイルを設定する。例えば、自車両1が段差24を通過する時点の目標速度が徐行速度となるように目標速度プロファイルを設定する。その後に軌道生成処理は終了し、処理は図6のステップS8へ進む。
緩和パラメータが所定の許容範囲内である場合(ステップS24:Y)に処理はステップS25へ進む。ステップS25の処理は図7を参照して説明したステップS14の処理と同様である。その後に処理はステップS22に戻る。
【0077】
(第2実施形態の効果)
物体検出部30は、自車両1が走行する車線20の走路境界を検出する。目標走行軌道生成部38は、自車両1が走路境界の内側を走行し且つ段差乗りえ角θsが閾値Thよりも大きくなるように目標走行軌道を生成できない場合に、自車両1が段差24を通過する時点の目標車速を徐行速度に設定する。
これにより、段差乗りえ角θsが閾値Thよりも大きくなるように目標走行軌道を生成できない場合であっても、段差24を乗り越えた後の目標走行軌道からの逸脱量を抑え、段差24を乗り越えた後の修正を素早くできる。
【0078】
ここに記載されている全ての例及び条件的な用語は、読者が、本発明と技術の進展のために発明者により与えられる概念とを理解する際の助けとなるように、教育的な目的を意図したものであり、具体的に記載されている上記の例及び条件、並びに本発明の優位性及び劣等性を示すことに関する本明細書における例の構成に限定されることなく解釈されるべきものである。本発明の実施例は詳細に説明されているが、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であると解すべきである。
【符号の説明】
【0079】
1…自車両、2FL、2FR…転舵輪、2RL、2RR…車輪、3…車軸、10…運転支援装置、11…物体センサ、12…車両センサ、13…測位装置、14…地図データベース、15…通信装置、16…コントローラ、17…アクチュエータ、18…プロセッサ、19…記憶装置、30…物体検出部、31…自車両位置推定部、32…地図取得部、33…検出統合部、34…物体追跡部、35…地図内位置演算部、36…運転行動計画決定部、37…走行可能領域決定部、38…目標走行軌道生成部、39…段差判定部、40…段差乗りえ角算出部、41…再生成判定部、42…車両制御部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9