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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】液体冷却のためのヒートシンク
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20230911BHJP
   H01L 23/40 20060101ALI20230911BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L23/40 E
H05K7/20 N
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022528682
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 GB2020052931
(87)【国際公開番号】W WO2021099770
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】1916771.7
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520018266
【氏名又は名称】アイスオトープ・グループ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ICEOTOPE GROUP LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロングハースト,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】マッテソン,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】アモス,デイビッド
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-277669(JP,A)
【文献】実開平03-061349(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0103620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H01L 23/40
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスと冷却液とを収容するためのモジュールであって、前記モジュールは、
前記電子デバイスと前記冷却液とを収容するための封止可能な内部容積を画定する筐体を備え、前記封止可能な内部容積はベースを有し、前記モジュールはさらに、
前記封止可能な内部容積内の、前記ベースとほぼ平行な基板を備え、前記電子デバイスのうちの1つの電子デバイスは、前記基板の、前記ベースの近位側に配置され、前記モジュールはさらに、
前記冷却液を受け前記冷却液を内部に蓄積するように配置された内部容積を画定する容器部を含むヒートシンクデバイスを備え、前記ヒートシンクデバイスは、前記1つの電子デバイスが、または前記1つの電子デバイスに熱伝導的に結合された構成要素が、少なくとも部分的に前記内部容積の中に入るように、装着されており、
少なくとも1つの他の電子デバイスが、前記基板の、前記ベースの近位側に装着された前記1つの電子デバイスよりも、前記ベースに近くになるように装着され、前記少なくとも1つの他の電子デバイスは、少なくとも部分的に前記ベース内の冷却液のレベルによって浸漬される、モジュール。
【請求項2】
前記ヒートシンクデバイスは伝導部をさらに含み、前記伝導部は、前記1つの電子デバイスの上に、前記1つの電子デバイスからの熱を伝導によって受けるように装着され、前記伝導部は、少なくとも部分的に、前記ヒートシンクデバイスの前記内部容積の中に入っている、請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記伝導部は、前記ヒートシンクデバイスの前記内部容積の内部に延びる突出部を含む、請求項2に記載のモジュール。
【請求項4】
前記突出部は、前記伝導部から、前記1つの電子デバイスの遠位側の、前記ヒートシンクデバイスの内部容積の表面に、延びている、請求項3に記載のモジュール。
【請求項5】
前記容器部の幅は、前記1つの電子デバイスおよび/または前記1つの電子デバイスに熱伝導的に結合された構成要素の幅よりも大きい、請求項1~4のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項6】
前記容器部は、前記冷却液を前記内部容積に受け入れるための液体入口を含み、前記液体入口は、前記1つの電子デバイスの遠位側の、前記容器部の部分に位置する、請求項1~5のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項7】
前記液体入口は、前記容器部の表面領域の中央部分に位置する、請求項6に記載のモジュール。
【請求項8】
前記液体入口は、前記容器部の側面に位置する、請求項6に記載のモジュール。
【請求項9】
前記容器部は、前記冷却液を前記内部容積に受け入れるための液体入口を含み、前記モジュールはさらに、
前記冷却液を前記液体入口の中に導くように配置されたノズル構成、および
前記冷却液を前記液体入口に導くように配置されたパイプ、
のうちの一方または双方を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項10】
前記ベース内の前記冷却液が前記容器部に向かって導かれるように、前記冷却液が動作中に流れるように配置された、請求項1~9のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項11】
前記冷却液の流れを引き起こすように構成されたポンプをさらに備える、請求項1~10のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項12】
前記ヒートシンクデバイスは、前記ヒートシンクデバイスの前記容器部を、前記基板、前記1つの電子デバイス、および、前記1つの電子デバイスに熱伝導的に結合された前記構成要素、のうちの1つ以上に装着するための、固定具をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項13】
前記固定具は、前記ヒートシンクデバイスの前記容器部を、前記基板上で、または前記1つの電子デバイスに熱伝導的に結合された前記構成要素上で保持するように配置されたクリップを含む、請求項12に記載のモジュール。
【請求項14】
前記ヒートシンクデバイスは、前記冷却液が前記容器部から流れ出て前記封止可能な内部容積の前記ベースに導かれるように、構成されている、請求項1~13のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項15】
前記モジュールは、前記容器部の中の冷却液のレベルが前記ベースの中の冷却液のレベルよりも高くなるように構成されている、請求項1~14のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項16】
前記冷却液を受けて前記冷却液から二次冷却剤に熱を伝達するように前記モジュール内に配置された熱交換器をさらに備える、請求項1~15のいずれか1項に記載のモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術分野
本開示は、ヒートシンクデバイスを含む、電子デバイスと冷却液とを収容するためのモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
データ処理(情報技術またはITと呼ばれる)に使用されるコンピュータ、サーバ、およびその他のデバイスは、典型的にプリント回路基板(PCB)を含む。これらのPCBの上に、中央処理装置(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、グラフィック処理装置(GPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)などを含み得る、集積回路(IC)と呼ばれる小型装置がある。これらの電子構成要素またはデバイスはすべて、使用中に熱を発生する。ITのパフォーマンスを最大にするためには、中の要素を最適温度に保つべく熱を逃がす必要がある。これらの考察は他の種類の電子デバイスまたはシステムにも当てはまる。
【0003】
通常、ITは、ケース、密閉箱、または筐体に収容される。例としてサーバの場合、この密閉箱はサーバシャーシを呼ばれることがある。サーバシャーシは、典型的に、1RU(1ラック単位)または1OU(1オープン単位)と呼ばれ1Uまたは1OUとも略される、各シャーシの高さを指定する複数の業界規格に準拠する。これら2つの主な規格のうち、小さい方は1RU/1Uであり、高さ44.45mmまたは1.75インチである。そのような単位は、形状およびスタイルの観点から「ブレード」サーバと呼ばれることがあるが、そのようなサーバシャーシは、たとえばバックプレーンに挿入または差し込む必要がない場合もある。
【0004】
さまざまなサーバ製品が、シャーシに対して一度に2つ以上のRU/OUを利用することができ、たとえば2Uシャーシは2つのラックユニットを使用する。各サーバシャーシのサイズは、通常、1サーバラック当たりの計算能力量を最大にするために最小に維持される(サーバラックは、サーバシャーシをそれに追加するメインの筐体である)。
【0005】
典型的に、IT上またはIT内で使用される電子構成要素またはデバイスは、空気で冷却される。これは、通常、ある種のヒートシンクを含み、フィンまたはそれに類似するものが、チップ面と直接接触するように配置される、または2つの構成要素間にTIM(熱界面材料)を挟んで配置される。ヒートシンクに加えて、各密閉箱は、一連のファンを使用して、空気を密閉箱を通して引き込み、熱をヒートシンクから取り除いてシャーシから放出する。このタイプのヒートシンクは、空調のような、サーバ設備側の冷却と組み合わせて使用される。この冷却方法は、特に効率的な訳ではなく、ランニングコストが高く、冷却に使用される空気を管理するために大量の空間を使用する。
【0006】
このIT冷却方法は、大量生産されたITおよびサーバ機器に対してほぼ独占的に使用されてきた。しかしながら、より最近になって、発熱するチップのピーク性能は、空気によるデバイスの冷却の限界により、抑えられている。(ムーアの法則によって例示されるように)同じ性能に対して技術サイズが2年ごとに2分の1になると、チップから発生する熱は、構成要素のフットプリントの減少に伴って増加する。これは、空気冷却用に設計されたヒートシンクのサイズおよび複雑さの増加につながる。その結果、必要とされるサーバシャーシサイズが増加することが多く、そのために、1つのラック内の計算能力が低下する。
【0007】
空気冷却に代わるものとして液体冷却を使用することができる。液体冷却は、場合によっては、電子構成要素またはデバイスからのより効率的な熱伝達、したがってより大きな冷却力を提供することができる。これらの液体は、いくつかの例として、誘電性流体、鉱油および水を含む。液体冷却を使用するいくつかの既存の手法が知られている。たとえば、譲受人が本開示と共通する国際特許公開第2018/096362号は、液浸冷却手法を開示しており、この場合、一次冷却液、典型的には誘電性液体が、封止されたシャーシ内に、一次冷却液が内部に留まるようにポンプ輸送される。熱交換器も、シャーシ内にあり、熱を一次冷却液から二次冷却液に伝達し、これはシャーシの外に流れ(複数のシャーシ間で共有される場合もある)、典型的には、水または水系(高い比熱容量を有するので有利)である。
【0008】
これに基づいて、同様に譲受人が本開示と共通する国際特許公開第2019/048864号は、電子デバイスの上、周囲、もしくは隣に装着することができる複数種類のヒートシンク、またはヒートシンクの上もしくは周囲に装着することができる電子デバイスについて説明している。ヒートシンクは、1つの電子デバイス(または複数の電子デバイス)の隣に、一次冷却液を蓄積し保持するための内部容積を画定する。一次冷却液は、(ポンピングおよび/または対流によって)シャーシ内で流れると、ヒートシンクの内部容積に導かれ、電子デバイス(たとえば、動作中に特に高温になるICまたは電源ユニット)の冷却を改善する。その後、一次冷却液は、ヒートシンクの内部容積から(たとえば、溢れておよび/または当該容積内の穴を通って)流出し、他の電子デバイス(たとえばPCB上のまたはシャーシ内に他の方法で装着された、他の構成要素またはIC)を冷却するために、シャーシ内の残りの一次冷却液とともに集められる。一次冷却液は、シャーシ内で熱交換器によって再び冷却され、熱は二次冷却液に伝達される。この手法において、シャーシ内の一次冷却液のレベルは、低く保つことができ、確実に、ヒートシンクの内部容積内の一次冷却液のレベルよりも低く保つことができる。これは、複数のレベル(高さ)における液体冷却を構成し、必要な冷却液の量を低減し、電子デバイスの効率的な単相(すなわち液相のみの)冷却を可能にする。一次冷却液は、高価で収容が難しく汚染し易い可能性があるので、この手法は、コストおよび複雑性の低減において重要な利益を提供することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、この有効な手法を構成要素の他の構成に拡大することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の概要
これを背景として、請求項1に係る、電子デバイスと冷却液とを収容するためのモジュールが提供される。さらに好ましいおよび/または好都合な特徴が、従属請求項および本明細書の残りの開示において特定される。そのステップが本明細書に記載の構造的特徴に対応する、電子デバイスおよび冷却液を収容するためのモジュールを製造するおよび/または動作させる方法も考慮される場合がある。
【0011】
基板の下面(回路基板の下面等)上に装着された電気または電子デバイスを冷却するためのヒートシンクが提供される。ヒートシンクは、冷却される構成要素の周りに、または、冷却されるデバイスに取り付けられたまたは当該デバイス上に装着された熱伝導部(たとえば空冷型の従来のヒートシンク)の周りに延在するように構成された容器部を有する。ヒートシンクは、冷却液が容器を満たすとデバイスおよび/または熱伝導部と接触してデバイスを冷却するように、構成される。冷却液は(対流および/またはポンピングによって)流れ、容器部から出るときに熱をデバイスから運び去る。冷却液は、容器部の側面から溢れ出してもよくおよび/またはその側面またはベースの1つ以上の穴を通って流出してもよい(容器部が満たされるよう、各穴およびすべての穴を合わせたものは、典型的には任意の液体入口のサイズと比較して、相対的に小さい)。
【0012】
ヒートシンクは、電子デバイスおよび冷却液を収容するための、封止可能な内部容積(たとえばサーバブレードの一部としての、封止可能なシャーシまたはそれに類似するもの等)を有するモジュール内に設けられる。冷却液は、一般的に、絶縁性であるが熱を伝導するように、誘電体である。冷却液は、封止可能な内部容積のベースに(一般的には重力により)沈み、ベース内における冷却液のレベルは、典型的には、封止可能な内部容積内に収容された他の電子デバイスを少なくとも部分的に浸漬させるのに十分である。容器部内の冷却液のレベルは、好都合にはベース内の冷却液のレベルよりも高い。この手法は、他の電子デバイスが装着される別の基板(たとえばマザーボード)と比較して、基板がベースから高くされている場合に、重要な利点を有し得る。したがって、ヒートシンクは、回路基板の下側に装着されたデバイスに対しても、複数レベルの冷却液を提供することができる。
【0013】
熱伝導部は、一般的に、たとえば電子デバイスの上に装着された平坦部を有する従来のヒートシンクの形態を取る。突出部(ピンおよび/またはフィン)が、熱伝導部(特にその平坦部)から容器部の内部容積の中に延びていてもよい。(好ましくは熱伝導部と一体化された)これらの突出部は、容器部の遠位面まで延びていてもよい。容器部は、有利には、冷却されるデバイスおよび/または熱伝導部よりも幅(高さでない任意の寸法という意味)が広く、冷却液の流れのための間隙が提供される。
【0014】
冷却液は、1つ以上の液体入口を通して容器部に受け入れられてもよく、たとえば、各液体入口は、容器部において開口または孔を含み、これは、容器部の、底部(ベース側すなわち冷却されるデバイスの遠位側)にあってもよく、または側面にあってもよい。実施形態において、液体入口は、容器部の底面(すなわちベースに最も近い面)の中心の周りに配置されてもよく、またはそこからオフセットされていてもよい。液体入口の位置は、動作中の冷却される装置の最も高温の部分の反対側であってもよい。冷却液は、たとえばポンプまたはベースから、パイプおよび/またはノズルを通して容器部に提供されてもよい。
【0015】
容器部は、基板に、冷却されるデバイスに、および/または熱伝導部に固定されてもよい。例として、これは、ねじ、ボルト、または同様の固定手段によって実現されてもよい。これに加えてまたはこれに代えて、容器部は、例としてその上に適切なグリップを有する弾性的に付勢されたアームを使用してクリップ留めされてもよい。
【0016】
熱交換器が、熱を冷却液から二次冷却剤(液)に伝えてもよく、(好都合には水系であってもよい)二次冷却剤は、典型的にはモジュールの外部から受けたものであり、伝達された熱をモジュールから運び出す。
【0017】
本開示は複数のやり方で実施することができ、以下、好ましい実施形態を、例示のみを目的として添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示に係る実施形態の等角概略図を示す。
図2図1に示される設計の分解等角図を示す。
図3図1に示される設計を含む、本開示に係るある実施形態の断面図を模式的に示す。
図4図1に示される設計の変形の一部の等角概略図を示す。
図5図1に示される設計の変形の等角概略図を示す。
図6図5に示される設計の断面図を模式的に示す。
図7】第1の実装形態に係る追加の詳細とともに、図1に示される設計の等角概略図を示す。
図8図7に示される設計の断面図を模式的に示す。
図9】第2の実装形態に係る追加の詳細とともに、図1に示される設計の等角概略図を示す。
図10図9に示される設計の断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましい実施形態の詳細な説明
本開示は、国際特許公開第2019/048864号に記載されているタイプのヒートシンクを、回路基板またはPCB等の基板の下面に装着された電気または電子デバイスの冷却に拡張する。先に述べたように、電子デバイスは、例としてマザーボードと集積回路(IC)とその他の関連する構成要素とを含むコンピュータサーバを形成してもよい。基板の下面は、(好ましくはたとえば上記ブレードサーバである)シャーシを通常の動作の向きにした場合、デバイスの方向に向けられた冷却液が、重力のためにデバイスの周りに集まらない、任意の表面を意味し得る。上記ヒートシンクデバイスは、冷却剤を、冷却対象のデバイスの上、隣、または周囲の体積の上に導くが、これは、表面が上記デバイスの上に位置するときは簡単ではない。むしろ、他の電子デバイス(典型的にはヒートシンクデバイスを用いて冷却されるものよりも動作温度が低い)液浸冷却のために設けられた、シャーシのベース内の冷却剤のレベルを用いて、基板の下面の電子デバイスを冷却してもよい。しかしながら、この手法は、そうでなければ必要なレベルよりも高い、ベース内の冷却剤のレベルを必要とする。先に述べたように、シャーシ内の冷却液の量を減じることは、コスト、重量、複雑さ、頑強さ、ならびに、サーバシャーシを保持および/または担持し易い、という点で、有利である。
【0020】
上記ヒートシンクデバイスと同様に、基板の、特に、ベースからの距離が主基板(回路基板、たとえばマザーボード)からの距離よりも遠い基板の、下面上の発熱する構成要素を冷却することができる冷却液のための容積(「バス」と呼ばれることもある)は、このデバイスの冷却に多大な改善をもたらすことができる。これはとりわけ、たった1つの構成要素を収容するために冷却液のレベルを大幅に高くする必要はないことを、意味し得る。
【0021】
先ず図1を参照して、ある実施形態の等角概略図が示され、これは特に、基板6(典型的には回路基板、PCB、マザーボードまたはドーターボード)、ヒートシンク容器部3、ノズル1、およびホース(またはパイプ)2を示す。さらに他の詳細については図2を参照すると、図1に示される設計の分解等角図が示されている。同一の特徴が示される場合は同一の参照番号が使用される。追加して示されているのは、熱伝導部4および容器液体入口10である。熱伝導部4は空冷ヒートシンクの形態であり、これは、従来、プロセッサがその一種である高発熱電子デバイスたとえば集積回路(IC)上に設けられるタイプのものである。
【0022】
冷却液は、ホース2の端部のノズル1から、容器部3内に送られる。これは、以下でさらに説明するように、「バス」または液体保持容積の形態を取り、熱伝導部4または基板6上に取り付けられる。液体入口10が、(図示されていない冷却される電子デバイスと同じまたは典型的にはそれよりも大きい二次元寸法を有する)熱伝導部4の底部(または下面)の中心からオフセットされて示されており、これは軸16で示される。
【0023】
好都合なことに、既存の空冷ヒートシンク(熱伝導部4)の周囲にフィットする容器部3の形態の「バス」ヒートシンクを使用することは、この技術を現在のITハードウェアに追加設置するのが容易であることを意味する。
【0024】
広い意味で、冷却液を受けて内部にこの冷却液を蓄積するように配置された内部容積を画定する容器部を含むヒートシンクデバイスが考えられる。ヒートシンクは、電子デバイス(具体的にはモジュールに収容された電子デバイスのうちの1つ)、または電子デバイスに熱伝導的に結合された構成要素が、少なくとも部分的に内部容積内に入るように、装着される。このようにして、内部容積に蓄積された冷却液を、電子デバイスの内部におよび/またはこの電子デバイスに熱伝導的に結合された構成要素の内部に直接接触させて、熱を冷却液に伝達させる。例として、容器部は、1面(その上面)を除いてすべての面が実質的に閉じられていてもよく、電子デバイスおよび/または電子デバイスに熱伝導的に結合された構成要素は、開いている(閉じられていない)面を通して内部容積内に延在する。
【0025】
熱伝導的に結合された部分である上記構成要素は、伝導部または(上述の)熱伝導部を含み得る(または伝導部もしくは熱伝導部と呼ぶこともできる)。好都合には、この伝導部は、冷却される電子デバイス上に、この電子デバイスからの熱を伝導によって受けるために、装着される。好ましくは、伝導部は、少なくとも部分的にヒートシンクデバイスの内部容積の中にある。
【0026】
伝導部は、既存の空冷型ヒートシンクの形態および/または材料を有していてもよい。たとえば、伝導部は、ヒートシンクデバイスの内部容積の内部に延びる突出部を含み得る。突出部は、ピンおよび/またはフィンの形態を取ることができる。突出部は、例として、冷却される電子デバイスの上に装着された(および/または固定された)、伝導面のうちの比較的平坦な部分から延びていてもよい。
【0027】
好ましくは、容器部は、冷却液を内部容積の中に受け入れるための液体入口を含む。好都合には、液体入口は、電子デバイス(または容器部の開放端)の遠位側の容器部の部分に位置する。実施形態において、液体入口は、容器部の表面領域の中央部分に位置する。例として、液体入口は、電子デバイスの反対側(すなわちその開いている側の反対側)の容器部の表面に位置していてもよい。
【0028】
好ましくは、(任意で液体入口から分離しておりもしくは分離可能であり、および/または液体入口に結合可能なもしくは結合されている)ノズル構成が、冷却液を液体入口に導くように配置される。これに加えてまたはこれに代えて、(ノズル構成に結合することができる)パイプまたはホースが設けられてもよい。
【0029】
次に具体的な実装形態のさらなる詳細について説明する。しかしながら、以下ではこの広い意味に再び言及する。
【0030】
次に図3を参照すると、上記設計を含む、ある実施形態の断面図が模式的に示されている。先の図面と同一の特徴は同一の参照番号で示される。この図面にさらに示されているのは、基板6の上に装着された、冷却される電子デバイス5(たとえばICまたはプロセッサ)、サーバシャーシベース9、メインPCBまたはマザーボード19、冷却すべき他の電子デバイス18、他の電子デバイス18からより遠い誘電体冷却剤7、および他の電子デバイス18により近い誘電体冷却剤8である。
【0031】
ホース2およびノズル1を通過した冷却液は、容器部3に蓄積される。よって、熱伝導部4は、実質的に冷却液に浸漬され、熱は、熱い電子デバイス5から熱伝導部4を通して容器部3内の冷却液に伝達される。図示のように、容器部3は、冷却液が熱伝導部4の表面領域全体の周りで循環しこの表面領域全体と接触することができるようにする空隙17を、熱伝導部4の周囲に有する。この空隙は、容器部が、熱伝導部4の大きさよりも幅広である(すなわちPCB6に平行な面の寸法)ことによる。この設計において、空隙17は、熱伝導部4の下方にも延びている。すなわち、突出部15は、その反対側にある容器部3の表面まで延びていない。
【0032】
冷却剤は容器部3から溢れ出てシャーシベース9に集められる。シャーシベース9における誘電体冷却剤7、8のレベルが示されている。このレベルは容器部3内の冷却液のレベルよりも下にある(または容器部3の底部よりも下ですらある)ことがわかる。それでもなお、シャーシベース9における誘電体冷却剤7、8のレベルは、PCB19上の冷却すべき他の電子(または電気)デバイス18を浸漬させるのに十分である。
【0033】
PCB6の下面上の熱い構成要素5および/またはその空冷ヒートシンクは、公称冷却剤レベル7、8よりも上にある。それでもなお、これらのうちの一方または双方は、このようにして少なくとも部分的に浸漬される。よって、容器部3(「バス」)は、ベースから上に向かって充填され、冷却剤が容器部3のトップに到達し溢れ出てメインPCB(またはマザーボード)19上に存在する他の構成要素18を冷却する前に、熱伝導部4のすべての突出部15を冷却しこれらの突出部に行き渡る。よって、熱い構成要素5からの熱は、サーバシャーシ内の誘電体冷却剤7、8に伝達される。熱交換器(図示せず)が、サーバシャーシの外部から二次(水系)冷却剤を受け、冷却液7、8からの熱を二次冷却剤に伝達し、二次冷却剤はこの熱をサーバシャーシから逃がす。冷却液の流れは、典型的にはポンプ(これも図示せず)によって作られる。
【0034】
上述の広い意味に戻ると、さらに他の局面は、電子デバイスと冷却液とを収容するためのモジュールを考慮することができる。このモジュールは、好ましくは、電子デバイスと冷却液とを収容するための封止可能な内部容積を画定する筐体を備える。封止可能な内部容積は、ベース(たとえば、特に封止可能な内部容積が概ね細長いまたは直方体形状の場合、平坦であってもよい)を有し、このベースを底面と呼ぶこともできる。冷却液は、一般的に、通常動作中は(重力により)ベース内に沈むことができる。好都合には、モジュールはさらに、封止可能な内部容積内において、概ねベースに平行な基板を備える。冷却される電子デバイスは、基板の、ベースの近位側(すなわち下面)に装着される。電子デバイスおよび/またはこの電子デバイスに熱伝導的に結合された構成要素は、有利には、先に述べた(かつ本明細書においてさらに説明する)ヒートシンクの内部容積の中に配置される。
【0035】
実施形態において、容器部は、電子デバイスのうちの1つの電子デバイスおよび/またはこの1つの電子デバイスに熱伝導的に結合された構成要素の幅よりも、幅が広い。この文脈において「幅」という用語は、基板および/またはベースの面に対して概ね平行な、またはこの面内の寸法を意味し得る(したがってたとえば長さまたは半径を意味する可能性もある)。ヒートシンクが適所にあるとき、好ましくは、空隙が、電子デバイスおよび/または電子デバイスのうちの1つに熱伝導的に結合された構成要素の容器部との間に設けられる。
【0036】
冷却液は、動作中、特にベース内の冷却液が容器部に向かって導かれるように、流れるよう配置される。これは、モジュール内の電子デバイスの通常動作中の冷却液の対流によって実現されてもよい。これに加えてまたはこれに代えて、モジュールは、冷却液の流れを引き起こすように構成されたポンプをさらに備えていてもよい。例として、ポンプは(適切な配管により)ベースから冷却液を受けてもよい。
【0037】
好都合には、ヒートシンクデバイスは、冷却液が容器部から流れ出すように(たとえば装着されることによって)構成される。冷却液は、好都合には容器部から溢れ出す。これに加えてまたはこれに代えて、冷却液は、容器部の孔を通って流れてもよい。容器部から流れ出した冷却液は、有利には封止可能な内部容積のベースに導かれる。この冷却液は、モジュールに収容された1つ以上の他の電子デバイスを冷却するために、そこにある他の冷却液とともに集められてもよい。そのような1つ以上の他の電子デバイスは、典型的には、基板の、ベースの近位側(すなわち下面)に装着された電子デバイスよりも、ベースに近くなるように装着される。この1つ以上の他の電子デバイス(一般的にはヒートシンクによって冷却される電子デバイスと同一の包括的なデバイスの、他の構成要素)は、したがって、少なくとも部分的に、ベース内の冷却液のレベルによって浸漬される。容器部内の冷却液のレベルは、ベース内の冷却液のレベルよりも高い(また、大幅に高くてもよく、たとえば少なくとも10%、20%、25%、30%、40%または50%高くてもよい)。
【0038】
モジュールは、冷却液を受け冷却液から二次冷却剤に熱を伝達するためにモジュール内に配置された熱交換器をさらに備えていてもよい。二次冷却剤は、好ましくは液体(例として水系)である。これは、一般的には封止可能な内部容積内の冷却液から分離される。好都合には、二次冷却剤をモジュールの外部から受け、加熱された二次冷却剤はモジュールから離れるように送られる。
【0039】
具体的な実装形態の他の詳細について以下で述べる。続いて、本開示の一般的な意味についてさらに言及し再び検討する。
【0040】
次に、図4を参照すると、上記設計の変形の一部の等角概略図が示されている。先に使用したものと同じ参照番号を同じ特徴を示すために使用する。ここで、液体入口10は、容器部3の底部のより中央に配置されている。熱伝導部4上の突出部15は、対称でもよく、または非対称でもよく、液体入口10の配置を、これらに合うように、たとえば冷却される特定の電子デバイスに向けた冷却が可能になるようにしてもよい。
【0041】
次に図5を参照すると、図1に示される設計の変形の等角概略図が示されている。この点に関して、同じ設計の断面図が模式的に示されている図6も参照する。ここでも他の図面に示される特徴は同じ参照番号で示す。上記液体入口10は容器部3の底に設けられているが、もう1つの方法は、液体入口11を、上記図面に示されるように容器部3の側面に設けることである。液体入口11は、容器部と一体化させることができる。連結部12が、液体入口11とホース2との間に設けられる。そのためノズルは不要である。この設計において、突出部15は、これらの反対側の、容器部3の表面まで延びていてもよい。なぜなら、液体入口11はこの表面ではなく側面に設けられているからである。
【0042】
先に考慮した広い用語で、液体入口を容器部の側面に配置した実施形態について考える(液体入口は、典型的にはその側面の底部にあるが、この場合の底部は、冷却される電子デバイスおよび/または容器部の開放された側の遠位側を意味し得る)。このようにして、冷却液はなおも容器部を満たし得る。そのような構成においてノズルは必要でない場合がある。液体入口とパイプの少なくとも一部とが一体的に形成されてもよい。
【0043】
好ましくは、これに加えて(であるが任意でこれに代えて)、伝導部の突出部は、伝導部から、電子デバイスのうちの1つの電子デバイスの遠位側の、ヒートシンクデバイスの内部容積(および/または伝導部)の表面まで、延びていてもよい。これは、液体入口が容器部の側面に位置する場合には有利であろう。なぜなら、そのように構成された突出部は、容器部の内部容積の内部への冷却液の流れを妨げないからである。
【0044】
好都合には、ヒートシンクは、ヒートシンクの容器部を、基板、電子デバイスのうちの1つの電子デバイス、および、この1つの電子デバイスに熱伝導的に結合された構成要素、のうちの、1つ以上に装着するための、固定具をさらに含む。適切な固定具の例について以下で述べる。複数の固定具が設けられてもよい。
【0045】
この点に関して、特定の実装形態に戻り、次に図7を参照すると、上記設計の等角概略図が、容器部3の固定のための第1の手法に関する追加の詳細とともに、示されている。また、図8を参照すると、図7に示される設計の断面図が模式的に示されている。先の図面に示された特徴は同一の参照番号で示される。これらの図面に追加で示されているのは、容器部3を熱伝導部4に取り付けるためのクリップ13である。これらのクリップを使用しても、空隙17により、冷却液を容器部3の中で流すことができ、冷却液を容器部3から溢れさせることができる。クリップ13は、熱伝導部4と、電子デバイスの高さであるPCB6との間の空隙を利用する。(空冷型ヒートシンクの形態の)熱伝導部4は、この熱伝導部を装着する電子デバイス5よりも一般的には大きいので、この重なりの利点を利用する。
【0046】
次に図9を参照すると、上記設計の等角概略図が、容器部3の固定のための第2の手法に関する追加の詳細とともに示されている。この点に関して、図9に示される設計の断面図が模式的に示されている図10も参照する。同じく、先の図面と同一の特徴を同一の参照番号で示す。
【0047】
ここで、容器部3は、通常は他の種類のヒートシンクに対して設けられるであろう、PCB6上の固定ポイント14を用いて、PCB6に取り付けられる。
【0048】
上記広い意味において、固定具は、基板上のヒートシンクデバイスの容器部を、または電子デバイスのうちの1つに熱伝導的に結合された構成要素を保持するように配置された、クリップを含み得る。固定具は、ねじ、ボルト、リベット、または同様の取付装置を含み得る。
【0049】
特定の実施形態について説明したが、さまざまな修正および代替形が可能であることを当業者は理解するであろう。ヒートシンクによって冷却される電子デバイスおよび/または他の電子デバイスは大きく異なっていてもよい。ヒートシンクデバイスの正確な形状および/またはサイズを修正することもできる。ヒートシンクデバイスの構造を、たとえば他のマルチパートアセンブリを用いて変更してもよく、または、一体的に構成されたデバイスとしてもよい。
【0050】
液体入口は異なる向きで配置されてもよく、実際、いくつかの実施形態において複数の液体入口が設けられてもよい。これにより、異なるノズルの入口ポイントおよび/または配置が可能になる。突出部が示される場合、ピン、フィンまたはその他の突出部の任意の組み合わせが用いられてもよい。特定のマルチパート冷却板アセンブリについて説明したが、冷却板ヒートシンクハイブリッドデバイスが実現されてもよいことが理解される。
【0051】
容器部から出る冷却液の主な流れを溢れ出すと説明しているが、これに加えてまたはこれに代えて、容器部に孔を設けて冷却液がシャーシの(封止可能な)内部容積の残りの部分に流れ出すようにしてもよい。
【0052】
本明細書に開示されている特徴はすべて、そのような特徴および/またはステップのうちの少なくともいくつかが相互に相反する組み合わせを除く、任意の組み合わせになるように、組み合わされてもよい。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明のすべての局面に適用可能であり、任意の組み合わせで使用できる。同様に、必須ではない組み合わせで記載された特徴は(組み合わせとしてではなく)別々に使用されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10