(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】新規なホウ素化合物及びこれを含む有機発光素子
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20230911BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230911BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20230911BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230911BHJP
C07D 213/16 20060101ALI20230911BHJP
C07D 333/76 20060101ALI20230911BHJP
C07D 209/86 20060101ALI20230911BHJP
C07D 307/91 20060101ALI20230911BHJP
C07D 493/04 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
C07F5/02 A CSP
H05B33/14 B
H05B33/02
C09K11/06 660
C07D213/16
C07D333/76
C07D209/86
C07D307/91
C07D493/04 101A
(21)【出願番号】P 2022530902
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 KR2021001503
(87)【国際公開番号】W WO2021162347
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0017609
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507074834
【氏名又は名称】エスエフシー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,セ-ジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ヨン-テ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョンテ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョン-ヒョン
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2053569(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第107417715(CN,A)
【文献】特許第5935199(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[化学式A]で表されるホウ素化合物。
【化1】
(前記[化学式A]中、
前記Q
1乃至Q
3は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~
30の芳香族炭化水素
環であり、
前記Q
1
に結合されたX及び窒素(N)原子は、Q
1
芳香族環内の互いに隣接する炭素原子にそれぞれ結合され、
前記Q
2
に結合されたX及び窒素(N)原子は、Q
2
芳香族環内の互いに隣接する炭素原子にそれぞれ結合され、
Q
3
に結合されたX、Q
1
に結合された窒素(N)原子及びQ
2
に結合された窒素(N)原子は、Q
3
芳香族環内の3つの互いに隣接する炭素原子にそれぞれ結合され、
前記Xは、
Bであり、
前記置換
基Rは
、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロゲン化された直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基
、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは無置換の炭素数5~30のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記置換基Ar
1
及びAr
2
はそれぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~18のアリール基または置換もしくは無置換の炭素数2~18のヘテロアリール基であり、
前記Ar
1は、Q
2又はQ
3に連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
nは1~7の整数であり、nが2以上である場合、それぞれのRは互いに同一でも異なってもよく、
前記連結基Lは、単結合、
及び置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリーレン
基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記「Cy1」は、窒素(N)原子及び前記Q
1環内の芳香族炭素原子とそれぞれ連結されて縮合環を形成し、このとき、
前記[化学式A]中のCy2に形成される環を含むCy1の構造は、下記[構造式E]で表される連結基であり、
【化2】
前記[構造式E]における「-*」は、Q
1
における芳香族環内の炭素と結合するか、或いは窒素原子と結合するための結合サイトを意味し、
前記Bは、単結合であり、
前記置換基R
61
~R
62
は、同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは無置換の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~20のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリールシリル基の中から選択でき、
前記「Cy2」は、前記Cy1に付加されて飽和炭素水素環を形成し、前記Cy2によって形成される環は、Cy1に含まれる炭素原子を除外すると、置換もしくは無置換の炭素数
3~
5のアルキレン基であり、
ここで、前記[化学式A]中の前記「置換もしくは無置換の」における「置換」は、重水素、シアノ基、ハロゲン基
、ニトロ基、炭素数1~24の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、炭素数1~24のハロゲン化された直鎖状、分岐状又は環状アルキル基
、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアリールアルキル基、炭素数7~24のアルキルアリール基、炭素数2~24のヘテロアリール基、炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基
、炭素数1~24のアルキルアミノ基、炭素数12~24のジアリールアミノ基、炭素数2~24のジヘテロアリールアミノ基、炭素数7~24のアリール(ヘテロアリール)アミノ基、炭素数1~24のアルキルシリル基、
及び炭素数6~24のアリールシリル
基よりなる群から選択された一つ以上の置換基で置換されることを意味する。)
【請求項2】
前記連結基Lは、単結合又は置換もしくは無置換の炭素数6~18のアリーレン基の中から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のホウ素化合物。
【請求項3】
前記[化学式A]における置換基Ar
1は、下記[構造式A]で表される置換基であることを特徴とする、請求項
1に記載のホウ素化合物。
【化3】
(前記[構造式A]中、「-*」は、前記置換基Ar
1が窒素(N)原子と結合するための結合サイトを意味し、
前記[構造式A]中の前記R
41乃至R
45は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~24の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリール基、置換もしくは無置換の炭素2~24のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキルアミン基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールシリル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記R
41~R
45は、互いに隣接する置換基、またはQ
2又はQ
3と連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができる。)
【請求項4】
前記[化学式A]におけるQ
2の芳香族炭化水素環は、下記[構造式B]又は[構造式C]で表される環であることを特徴とする、請求項
1に記載のホウ素化合物。
【化4】
(前記[構造式B]及び[構造式C]における「-*」は、Q
2における芳香族環中の炭素がX、連結基-N(Ar
1)-内の窒素(N)原子及び連結基Lに結合された窒素(N)原子とそれぞれ結合するための結合サイトを意味し、
前記[構造式B]及び[構造式C]における前記R
55~R
57は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~24の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2~24のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキルアミン基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールシリル基、シアノ基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記R
55~R
57は、それぞれ互いに隣接する置換基と互いに連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができる。)
【請求項5】
前記[化学式A]におけるQ
1及びQ
3の芳香族炭化水素環は、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、下記[構造式D]で表される環であることを特徴とする、請求項
1に記載のホウ素化合物。
【化5】
(前記[構造式D]における「-*」は、Q
1における芳香族環内の炭素がX、窒素(N)原子及びCy1環内の炭素原子とそれぞれ結合するための結合サイトを意味するか、或いはQ
3における芳香族環中の炭素がX及び2つの窒素(N)とそれぞれ結合するための結合サイトを意味し、
前記[構造式D]における前記R
58~R
60は、請求項
4で定義されたR
55~R
57と同一である。)
【請求項6】
前記化学式A中のCy1、Cy2、窒素原子及びQ
1によって形成される環は、下記構造式Fで表される環であることを特徴とする、請求項1に記載のホウ素化合物。
【化6】
(前記[構造式F]における「-*」は、Q
3における芳香族環内の炭素と結合するための結合サイト、又はXと結合するための結合サイトを意味し、
前記連結基Bは、単結
合であり、
前記置換基R
73~
R
74
は、同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは無置換の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリール基
、置換もしくは無置換の炭素数1~20のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリールシリル基の中から選択でき、
前記Cy4は、両末端がメチレン基(-CH
2-)からなる置換もしくは無置換の炭素数
3~5のアルキレン基であって、前記Cy4によって形成される環は、窒素原子及び連結基Bを含む環と縮合環を形成し、
ここで、前記置換もしくは無置換における「置換」は、請求項1で定義されたのと同様である。)
【請求項7】
前記連結基Lは、単結合であるか、或いは下記[構造式22]~
[構造式23]、[構造式25]、[構造式27]、[構造式28]及び[構造式30]の中から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のホウ素化合物。
【化7】
(前記連結基における芳香族環の炭素サイトは、水素又は重水素が結合されることができる。)
【請求項8】
前記ホウ素化合物は、下記<化合物1>~
<化合物95>及び<化合物99>~<化合物
125>の中から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のホウ素化合物。
【化8】
【請求項9】
第1電極と、
第1電極に対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に介在する有機層と、を含み、前記有機層が請求項1~
8のいずれか1項に記載のホウ素化合物を1種以上含む、有機発光素子。
【請求項10】
前記有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入機能及び正孔輸送機能を同時に有する機能層、電子遮断層、発光層、電子輸送層、電子注入層及びキャッピング層のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項
9に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記第1電極と前記第2電極との間に介在する有機層が発光層を含み、
前記発光層は、ホストとドーパントからなり、前記[化学式A]で表されるホウ素化合物がドーパントとして用いられることを特徴とする、請求項
9に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記発光層は、下記化学式Dで表されるアントラセン誘導体をホストとして用いることを特徴とする、請求項
11に記載の有機発光素子。
【化9】
(前記[化学式D]中、
前記置換基R
11乃至R
18は、同一でも異なってもよく、それぞれ請求項1におけるRで定義されたのと同様であり、
前記置換基Ar
9及びAr
10は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基
、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基
、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基
、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールシリル基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記連結基L
13は、単結合であるか、或いは置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリーレン基、又は置換もしくは無置換の炭素数2~20のヘテロアリーレン基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記kは1~3の整数であり、前記kが2以上である場合に、それぞれのL
13は互いに同一でも異なってもよく、
前記置換もしくは無置換における「置換」は、請求項1で定義されたのと同様である。)
【請求項13】
前記化学式D内のAr
9は、下記化学式D-1で表される置換基であることを特徴とする、請求項
12に記載の有機発光素子。
【化10】
(前記置換基R
81~R
85は、それぞれ同一でも異なってもよく、請求項1におけるRで定義されたのと同様であり;互いに隣接する置換基と結合して飽和或いは不飽和環を形成することができる。)
【請求項14】
前記連結基L
13が単結合であるか、或いは置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリーレン基であることを特徴とする、請求項
12に記載の有機発光素子。
ここで、前記kは1~2の整数であり、前記kが2以上である場合に、それぞれのL
13は互いに同一でも異なってもよい。
【請求項15】
前記アントラセン誘導体は、下記[化学式D1]~[化学式D48]の中から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項
12に記載の有機発光素子。
【化11】
【請求項16】
前記それぞれの層の中から選択される1つ以上の層は、蒸着工程又は溶液工程によって形成されることを特徴とする、請求項
10に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記有機発光素子は、フラットパネルディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置、単色又は白色のフラットパネル照明装置、及び単色又は白色のフレキシブル照明用装置の中から選択されるいずれか一つに使用されることを特徴とする、請求項
9に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子に使用できる新規なホウ素化合物に係り、より詳細には、有機発光素子内のドーパント材料として使用でき、これにより高い発光効率及び低電圧駆動などの素子特性を実現することができる新規なホウ素化合物、及び前記ホウ素化合物を含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(organic light emitting diode、OLED)は、自己発光現象を利用したディスプレイであって、視野角が大きく、液晶ディスプレイに比べて軽薄化、短小化でき、速い応答速度などの利点を持っており、フル-カラー(full-color)ディスプレイ又は照明への応用が期待されている。
【0003】
一般に、有機発光現象とは、有機物質を用いて電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象をいう。有機発光現象を利用する有機発光素子は、通常、陽極、陰極、及びこれらの間の有機物層を含む構造を持つ。ここで、有機物層は、有機発光素子の効率と安定性を高めるために、それぞれ異なる物質からなる多層の構造を持つ場合が多く、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などからなってもよい。このような有機発光素子の構造で二つの電極の間に電圧をかけると、陽極では正孔、陰極では電子が有機物層に注入され、注入された正孔と電子とが結合するときに励起子(exciton)が生成され、この励起子が再び基底状態に落ちるときに発光する。このような有機発光素子は、自発光、高輝度、高効率、低い駆動電圧、広い視野角、高いコントラスト、高速応答性などの特性を有することが知られている。
【0004】
有機発光素子において有機物層として使用される材料は、機能によって、発光材料と電荷輸送材料、例えば、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料などに分類され得る。必要に応じて、電子遮断層又は正孔遮断層などが付加されてもよい。
【0005】
前記発光材料は、分子量によって高分子型と低分子型に分類され、発光メカニズムによって、電子の一重項励起状態に由来する蛍光材料と電子の三重項励起状態に由来する燐光材料に分類され得る。
【0006】
一方、発光材料として一つの物質のみを使用する場合、分子間の相互作用によって最大発光波長が長波長に移動し、色純度が低下し、発光減衰効果により素子の効率が減少するなどの問題が発生するので、色純度の増加とエネルギー転移による発光効率を増加させるために、発光材料としてホスト-ドーパントシステムを使用することができる。
【0007】
その原理は、発光層を形成するホストよりもエネルギー帯域間隙が小さいドーパントを発光層に少量混合すると、発光層から発生した励起子がドーパントに輸送されて効率の高い光を出すことである。このとき、ホストの波長がドーパントの波長帯に移動するので、用いるドーパントの種類に応じて所望の波長の光を得ることができる。
【0008】
最近、このような発光層中のドーパント化合物としてホウ素化合物について研究されており、これに関連する従来技術として、韓国公開特許第10-2016-0119683号公報(2016年10月14日)には、ホウ素原子と酸素原子などで複数の芳香族環を連結した多環芳香族化合物、及びこれを含む有機発光素子が開示されており、国際公開第2017/188111号パンプレット(2017年11月2日)には、複数の縮合芳香族環がホウ素原子と窒素によって連結された構造の化合物を発光層内のドーパントとして使用し、且つホストとしてアントラセン誘導体を使用した有機発光素子が開示されている。
【0009】
しかし、これらの従来技術を含めて、有機発光素子の発光層に使用するための様々な形態の化合物が製造されたにも拘らず、未だ有機発光素子用として応用可能であるうえ、低電圧駆動が可能で、かつ安定性及び高効率特性を有する新規な化合物、及びこれを含む有機発光素子の開発の必要性が継続的に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、有機発光素子内の発光層のドーパント物質として使用可能である新規な構造のホウ素化合物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記ホウ素化合物を有機発光素子内のドーパント物質に適用することにより、高い発光効率及び低電圧駆動などの素子特性に優れた有機発光素子(organic light emitting diode、OLED)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記[化学式A]で表されるホウ素化合物を提供する。
【0013】
【0014】
前記[化学式A]中、
前記Q1乃至Q3は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環であり、
前記Xは、B、P、P=O及びP=Sの中から選択されるいずれか一つであり、
前記置換基Ar1、Ar2及びRは、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロゲン化直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは無置換の炭素数5~30のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記Ar1は、それぞれQ2又はQ3に連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
nは1~7の整数であり、nが2以上である場合に、それぞれのRは互いに同一でも異なってもよく、
前記連結基Lは、単結合、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のヘテロアリーレン基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記「Cy1」は、窒素(N)原子及び前記Q1環内の芳香族炭素原子とそれぞれ連結されて縮合環を形成し、このとき、前記Cy1によって形成される環は、窒素(N)原子、前記窒素(N)原子が結合されたQ1環内芳香族炭素原子、及び前記Cy1と結合されるQ1環内芳香族炭素原子を除外すると、置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
前記「Cy2」は、前記Cy1に付加されて飽和炭素水素環を形成し、前記Cy2によって形成される環は、Cy1に含まれる炭素原子を除外すると、置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレン基である。
【発明の効果】
【0015】
本発明による新規なホウ素化合物を有機発光素子内のドーパント物質として用いる場合に、従来技術による有機発光素子に比べて低電圧駆動が可能であるうえ、より改善された効率を示す有機発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による有機発光素子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の各図面において、構造物のサイズ又は寸法は、本発明の明確性を期するために実際よりも拡大又は縮小して示したものであり、特徴的構成が現れるように公知の構成は省略して図示したので、図面に限定されない。
【0018】
また、図示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意に示したので、本発明は、必ずしも図示に限定されず、また、図面において複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。そして、図面において、説明の便宜のために、一部の層及び領域の厚さを誇張して示した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上に」あるとするとき、これは他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、それらの間に別の部分がある場合も含む。
【0019】
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。また、明細書全体において、「~の上に」とは、対象部分の上又は下に位置することを意味するものであり、必ずしも、重力方向を基準として上側に位置することを意味するものではない。
【0020】
本発明は、下記[化学式A]で表されるホウ素化合物を提供する。
【0021】
【0022】
前記[化学式A]中、
前記Q1乃至Q3は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環であり、
前記Xは、B、P、P=O及びP=Sの中から選択されるいずれか一つであり、
前記置換基Ar1、Ar2及びRは、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロゲン化された直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは無置換の炭素数5~30のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記Ar1は、それぞれQ2又はQ3に連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
nは1~7の整数であり、nが2以上である場合に、それぞれのRは互いに同一でも異なってもよく、
前記連結基Lは、単結合、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のヘテロアリーレン基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記「Cy1」は、窒素(N)原子及び前記Q1環内の芳香族炭素原子とそれぞれ連結されて縮合環を形成し、このとき、前記Cy1によって形成される環は、窒素(N)原子、前記窒素(N)原子が結合されたQ1環内芳香族炭素原子、及び前記Cy1と結合されるQ1環内芳香族炭素原子を除外すると、置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
前記「Cy2」は、前記Cy1に付加されて飽和炭素水素環を形成し、前記Cy2によって形成される環は、Cy1に含まれる炭素原子を除外すると、置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
ここで、前記[化学式A]中の前記「置換もしくは無置換の」における「置換」は、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数1~24の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、炭素数1~24のハロゲン化された直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数2~24のアルキニル基、炭素数1~24のヘテロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアリールアルキル基、炭素数7~24のアルキルアリール基、炭素数2~24のヘテロアリール基、炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~24のアルコキシ基、炭素数1~24のアルキルアミノ基、炭素数12~24のジアリールアミノ基、炭素数2~24のジヘテロアリールアミノ基、炭素数7~24のアリール(ヘテロアリール)アミノ基、炭素数1~24のアルキルシリル基、炭素数6~24のアリールシリル基、炭素数6~24のアリールオキシ基、及び炭素数6~24のアリールチオニル基よりなる群から選択された一つ以上の置換基で置換されることを意味する。
【0023】
一方、本発明における前記「置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基」、「置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基」などにおける前記アルキル基又はアリール基の範囲を考慮すると、前記炭素数1~30のアルキル基及び炭素数6~50のアリール基の炭素数の範囲は、それぞれ、前記置換基が置換された部分を考慮せずに、無置換のものと見做したときのアルキル部分又はアリール部分を構成する全炭素数を意味する。例えば、パラ位にブチル基が置換されたフェニル基は、炭素数4のブチル基で置換された炭素数6のアリール基に該当するものと見做すべきである。
【0024】
本発明の化合物で使用される置換基であるアリール基は、一つの水素除去によって芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであって、前記アリール基が置換基を持つ場合、隣接する置換基と互いに融合(fused)して環をさらに形成することができる。
【0025】
前記アリール基の具体例としては、フェニル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、o-テルフェニル基、m-テルフェニル基、p-テルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロナフチル基、ペリレニル基、クリセニル基、ナフサセニル、フルオランテニル基などの芳香族基を挙げることができ、前記アリール基中の一つ以上の水素原子は、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シリル基、アミノ基(-NH2、-NH(R)、-N(R’)(R’’)、R’及びR’’は、互いに独立して炭素数1~10のアルキル基であり、この場合、「アルキルアミノ基」という。)、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のハロゲン化アルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、炭素数1~24のアルキニル基、炭素数1~24のヘテロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数6~24のアリールアルキル基、炭素数2~24のヘテロアリール基、又は炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基で置換できる。
【0026】
本発明の化合物で使用される置換基であるヘテロアリール基は、N、O、P、Si、S、Ge、Se、Teの中から選ばれた1つ、2つ又は3つのヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である炭素数2~24の環芳香族系を意味し、これらの環は、融合(fused)して環を形成することができる。そして、前記ヘテロアリール基中の一つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0027】
また、本発明において、前記芳香族複素環は、芳香族炭化水素環において芳香族炭素のうちの一つ以上がヘテロ原子で置換されたものを意味し、前記芳香族複素環は、好ましくは芳香族炭化水素内の芳香族炭素1つ~3つが、N、O、P、Si、S、Ge、Se、Teの中から選択された一つ以上のヘテロ原子で置換できる。
【0028】
本発明で使用される置換基であるアルキル基は、別途の定義がない限り、直鎖状、分岐状または環状の飽和脂肪族炭化水素基を意味し、このとき、前記環状は、環状のみからなるアルキル基だけでなく、環状アルキル基が連結された直鎖状または分岐状アルキル基を含む。
【0029】
例えば、炭素数1~5の直鎖状、分岐状アルキル基は、アルキル鎖に1~5個の炭素原子、すなわち、アルキル鎖はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、n-イソペンチル、sec-ペンチル、iso-アミル、ヘキシル及びt-ブチルメチルなどよりなる群から選択でき、前記アルキル基のうちの1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0030】
本発明の化合物で使用される置換基である環状アルキル基の具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロペンチル、エチルシクロヘキシル、アダマンチル、ジシクロペンタジエニル、デカヒドロナフチル、ノルボルニル、ボルニル、イソボルニルなどが挙げられ、前記シクロアルキル基の一つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0031】
本発明の化合物で使用される置換基であるアルコキシ基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基に酸素原子が結合された置換基を意味し、前記アルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、ペンチルオキシ、iso-アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロブチルオキシ、アダマンタンオキシ、ジシクロペンタンオキシ、ボルニルオキシ、イソボルニルオキシなどを挙げることができ、前記アルコキシ基中の一つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0032】
本発明の化合物で使用される置換基であるアリールアルキル基の具体例としては、フェニルメチル(ベンジル)、フェニルエチル、フェニルプロピル、ナフチルメチル、ナフチルエチルなどを挙げることができ、前記アリールアルキル基中の一つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0033】
本発明の化合物で使用される置換基であるシリル基の具体例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、トリメトキシシリル、ジメトキシフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、ジフェニルビニルシリル、メチルシクロブチルシリル、ジメチルフリルシリルなどを挙げることができ、前記シリル基中の一つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0034】
また、本発明において、アルケニル基は、2つの炭素原子によって構成される1つの炭素-炭素二重結合を含むアルキル置換基を意味し、アルキニル(alkynyl)は、2つの炭素原子によって構成される一つの炭素-炭素三重結合を含む置換基を意味する。
【0035】
また、本発明で使用されるアルキレン(alkylene)基は、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素であるアルカン(alkane)分子内の2つの水素除去によって誘導された有機ラジカルであり、アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、iso-アミレン基、ヘキシレン基などが挙げられ、前記アルキレン基のうちの一つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0036】
また、本発明におけるジアリールアミノ基は、上述した同一又は異なる2つのアリール基が窒素原子に結合したアミン基を意味し、また、本発明においてジヘテロアリールアミノ基は、同一又は異なる2つのヘテロアリール基が窒素原子に結合したアミン基を意味する。さらに、前記アリール(ヘテロアリール)アミノ基は、アリール基とヘテロアリール基がそれぞれ窒素原子に結合したアミン基を意味する。
【0037】
一方、前記[化学式A]内の前記「置換もしくは無置換の」における「置換」に対するより好適な例として、これは、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、炭素数1~12のハロゲン化された直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数1~12のヘテロアルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数2~18のヘテロアリール基、炭素数2~18のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~12のアルキルアミノ基、炭素数12~18のジアリールアミノ基、炭素数2~18のジヘテロアリールアミノ基、炭素数7~18のアリール(ヘテロアリール)アミノ基、炭素数1~12のアルキルシリル基、炭素数6~18のアリールシリル基、炭素数6~18のアリールオキシ基、炭素数6~18のアリールチオニル基よりなる群から選択された一つ以上の置換基で置換されるものであり得る。
【0038】
本発明において、前記[化学式A]で表されるホウ素化合物は、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環であるQ1~及びQ3環が中心原子(X)にそれぞれ連結され、前記Q1及びQ3環は窒素(N)原子によって互いに連結され、Q2及びQ3環は連結基-N(Ar1)-内の窒素(N)原子によって互いに連結されるが、前記窒素原子とQ1環が飽和アルキレン連結基Cy1によって縮合環を形成し、これに加えて前記Cy1に飽和アルキレン連結基Cy2が追加されて追加の縮合環を形成する構造の化合物において、前記Q2環に少なくとも一つの置換もしくは無置換のナフチル基を含むアミン基が結合されたことを技術的特徴とし、このような構造的特徴によって高効率と長寿命の有機発光素子を提供することができる。
【0039】
ここで、前記化学式Aにおける前記Cy1及びCy2で構成される縮合環の構成について詳細に説明すると、前記Cy1は、窒素(N)原子及び前記Cy1に結合されるQ1環内芳香族炭素原子とそれぞれ連結されることにより、窒素(N)原子、前記窒素(N)原子が結合されたQ1環内芳香族炭素原子、及び前記Cy1に結合されるQ1環内芳香族炭素原子を含んで縮合環を形成し、前記Cy1によって形成される環は、窒素(N)原子、前記窒素(N)原子が結合されたQ1環内芳香族炭素原子、及び前記Cy1に結合されるQ1環内芳香族炭素原子を除外すると、置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数2~7のアルキレン基、より好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数2~5のアルキレン基であり得る。
【0040】
また、前記化学式Aにおける前記「Cy2」は、両末端が、Cy1の置換もしくは無置換のアルキレン基中の2つの炭素元素とそれぞれ連結されることにより、前記Cy1に付加されてCy1内の前記2つの炭素原子を含んで縮合環を形成し、前記Cy2によって形成される環は、Cy1に含まれる炭素原子を除外すると、置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数2~7のアルキレン基、より好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数2~5のアルキレン基であり得る。
【0041】
一実施形態として、前記置換基Ar1は、置換もしくは無置換の炭素数6~18のアリール基、又は置換もしくは無置換の炭素数2~18のヘテロアリール基であり得る。
ここで、前記置換基Ar1が置換もしくは無置換の炭素数6~18のアリール基に該当する場合、前記置換基Ar1は、下記[構造式A]で表される置換基であり得る。
【0042】
【0043】
前記[構造式A]中、「-*」は、前記置換基Ar1が窒素(N)原子と結合するための結合サイトを意味し、
ここで、前記[構造式A]中の前記R41乃至R45は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~24の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリール基、置換もしくは無置換の炭素2~24のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキルアミン基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールシリル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか一つであり、前記R41~R45は、互いに隣接する置換基、またはQ2又はQ3と連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができる。
【0044】
一実施形態として、前記[化学式A]における前記置換基Ar2は、置換もしくは無置換の炭素数6~18のアリール基、又は置換もしくは無置換の炭素数2~18のヘテロアリール基であり得る。
【0045】
一実施形態として、前記[化学式A]における前記連結基Lは、単結合又は置換もしくは無置換の炭素数6~18のアリーレン基であり得る。
また、本発明の前記[化学式A]における中心原子(X)は、ホウ素(B)原子であり得る。
【0046】
一方、本発明による前記[化学式A]における中心原子(X)にそれぞれ結合されるQ1~Q3環は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環であり、好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素環であり、さらに好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数6~18の芳香族炭化水素環であり得る。
【0047】
この場合、前記[化学式A]におけるQ2の芳香族炭化水素環は、下記[構造式B]又は[構造式C]で表される環であり得る。
【0048】
【0049】
前記[構造式B]及び[構造式C]における「-*」は、Q2における芳香族環中の炭素がX、連結基-N(Ar1)-内の窒素(N)原子及び連結基Lに結合された窒素(N)原子とそれぞれ結合するための結合サイトを意味し、
前記[構造式B]及び[構造式C]における前記R55~R57は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~24の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2~24のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキルアミン基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールシリル基、シアノ基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか一つであり、前記R55~R57は、それぞれ互いに隣接する置換基と互いに連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができる。
【0050】
また、前記Q1~Q3環がそれぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環である場合に、前記化学式A中のQ1及びQ3の芳香族炭化水素環は、同一でも異なってもよく、互いに独立して、下記[構造式D]で表される環であり得る。
【0051】
【0052】
前記[構造式D]における「-*」は、Q1における芳香族環内の炭素がX、窒素(N)原子及びCy1環内の炭素原子とそれぞれ結合するための結合サイトを意味するか、或いはQ3における芳香族環中の炭素がX及び2つの窒素(N)とそれぞれ結合するための結合サイトを意味し、
前記[構造式D]における前記R58~R60は、上記で定義したのと同様である。
【0053】
また、本発明における前記化学式A中のCy2に形成される環を含むCy1の構造は、下記構造式Eで表される連結基であり得る。
【0054】
【0055】
前記[構造式E]における「-*」は、Q1における芳香族環内の炭素と結合するか、或いは窒素原子と結合するための結合サイトを意味し、
前記Bは、単結合又は-C(R63)(R64)-又は-C(R65)(R66)-C(R67)(R68)-であり、
前記置換基R61~R68は、同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは無置換の炭素数1~24の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2~20のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~20のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリールシリル基の中から選択でき、Cy2は、先立って定義したのと同様であり、ここで、前記置換もしくは無置換における「置換」は、先立って定義されたのと同様である。
【0056】
また、本発明において、前記化学式A中のCy1、Cy2、窒素原子及びQ1によって形成される環は、下記構造式Fで表される環であり得る。
【0057】
【0058】
前記[構造式F]における「-*」は、Q3における芳香族環内の炭素と結合するための結合サイト、又はXと結合するための結合サイトを意味し、
前記連結基Bは、単結合又は-C(R75)(R76)-又は-C(R75)(R76)-C(R77)(R78)-であり、
前記置換基R73~R78は、同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは無置換の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2~20のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~20のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリールシリル基の中から選択でき、
前記Cy4は、両末端がメチレン基(-CH2-)からなる置換もしくは無置換の炭素数2~5のアルキレン基であって、前記Cy4によって形成される環は、窒素原子及び連結基Bを含む環と縮合環を形成し、ここで、前記置換もしくは無置換における「置換」は、先立って定義されたのと同様である。
【0059】
また、本発明における前記化学式A中の前記連結基Lは、単結合であるか、或いは下記[構造式22]~[構造式30]の中から選択されるいずれか一つであり得る。
【0060】
【0061】
前記連結基における芳香族環の炭素サイトは、水素又は重水素が結合されることができる。
【0062】
また、本発明における前記[化学式A]で表されるホウ素化合物の具体的な例示は、下記<化合物1>~<化合物95>及び<化合物99>~<化合物129>の中から選択されるいずれか一つであり得る。
【0063】
【0064】
より好ましい本発明の一実施形態として、本発明は、第1電極と、前記第1電極に対向する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する有機層と、を含み、前記有機層が、[化学式A]で表されるホウ素化合物を1種以上含む、有機発光素子を提供する。
【0065】
一方、本発明における「(有機層が)有機化合物を1種以上含む」とは、「(有機層が)本発明の範疇に属する1種の有機化合物、又は前記有機化合物の範疇に属する互いに異なる2種以上の化合物を含むことができる」と解釈できる。
【0066】
このとき、前記本発明の有機発光素子は、有機層として発光層を含み、前記発光層以外に、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入機能及び正孔輸送機能を同時に有する機能層、電子遮断層、電子輸送層、電子注入層及びキャッピング層のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0067】
より好適な本発明の一実施形態として、本発明は、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する有機層が発光層を含み、前記発光層は、ホストとドーパントからなり、本発明における前記[化学式A]で表されるホウ素化合物のうちの少なくとも一つを発光層内のドーパントとして含むことができ、このとき、本発明の前記ホストとしては、下記化学式Dで表されるアントラセン誘導体を使用することができる。
【0068】
【0069】
前記[化学式D]中、
前記置換基R11乃至R18は、同一でも異なってもよく、それぞれ先立って記載されたホウ素化合物内で定義された前記Rで定義されたのと同様であり、
前記置換基Ar9及びAr10は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~30のシクロアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールシリル基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記連結基L13は、単結合であるか、或いは置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリーレン基、又は置換もしくは無置換の炭素数2~20のヘテロアリーレン基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記kは1~3の整数であり、前記kが2以上である場合に、それぞれのL13は互いに同一でも異なってもよく、ここで、前記置換もしくは無置換における「置換」は、先立って定義されたのと同様である。
【0070】
この場合、好ましくは、前記連結基L13が単結合であるか、或いは置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、前記kは1~2の整数であり、前記kが2以上である場合に、それぞれのL13は互いに同一でも異なってもよい。
【0071】
また、本発明における前記ホスト化合物の具体的な置換基として、前記化学式D内のAr9は、下記化学式D-1で表される置換基であり得る。
【0072】
【0073】
ここで、前記置換基R81~R85は、それぞれ同一でも異なってもよく、先立って記載されたRで定義されたのと同様であり;互いに隣接する置換基と結合して飽和或いは不飽和環を形成することができる。
【0074】
一実施形態として、前記アントラセン誘導体の具体的な化合物としては、下記[化学式D1]~[化学式D48]の中からいずれか一つが選択できる。
【0075】
【0076】
より好適な本発明の一実施形態として、本発明は、第1電極としての陽極;第1電極に対向する第2電極としての陰極;及び前記陽極と前記陰極との間に介在する発光層;を含み、本発明における前記[化学式A]で表されるホウ素化合物の少なくとも一つを発光層内のドーパントとして含み、且つ前記[化学式D]で表される化合物のうちの少なくとも一つを発光層内のホストとして含む有機発光素子であることができ、このような構造的特徴によって、本発明による有機発光素子は、低電圧駆動及び高効率特性を持つことができる。
【0077】
このとき、前記発光層内のドーパントの含有量は、通常、ホスト約100重量部に対して約0.01~約20重量部の範囲で選択でき、これに限定されるものではない。
また、前記発光層は、前記ドーパントとホストの他にも、様々なホストと様々なドーパント物質をさらに含むことができる。
【0078】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による有機発光素子を説明する。
【0079】
図1は本発明の一実施形態による有機発光素子の構造を示す図である。
【0080】
図1に示すように、本発明の実施形態による有機発光素子は、陽極20、正孔輸送層40、ホスト及びドーパントを含む発光層50、電子輸送層60、及び陰極80を順次含む有機発光素子であって、前記陽極を第1電極、陰極を第2電極にして、前記陽極と発光層との間に正孔輸送層を含み、発光層と陰極との間に電子輸送層を含む有機発光素子に該当する。
【0081】
また、本発明の実施形態による有機発光素子は、前記陽極20と正孔輸送層40との間に正孔注入層30を含み、前記電子輸送層60と陰極80との間に電子注入層70を含むことができる。
【0082】
以下、
図1を参照して、本発明の有機発光素子及びその製造方法について説明する。
【0083】
まず、基板10の上部に陽極(アノード)電極用物質をコーティングして陽極20を形成する。ここで、基板10としては、通常の有機EL素子で使用される基板を使用するが、透明性、表面平滑性、扱いやすさ及び防水性に優れた有機基板又は透明プラスチック基板であることが好ましい。そして、陽極電極用物質としては、透明で伝導性に優れた酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などを使用する。
【0084】
前記陽極20電極の上部に正孔注入層物質を真空熱蒸着又はスピンコーティングして正孔注入層30を形成する。その次に、前記正孔注入層30の上部に正孔輸送層物質を真空熱蒸着又はスピンコーティングして正孔輸送層40を形成する。
【0085】
前記正孔注入層の材料は、当該分野における通常使用されるものである限りは、特に制限されずに使用することができ、例えば、2-TNATA[4,4’,4’’-tris(2-naphthylphenyl-phenylamino)-triphenylamine]、NPD[N,N’-di(1-naphthyl)-N,N’-diphenylbenzidine)]、TPD[N,N’-diphenyl-N,N’-bis(3-methylphenyl)-1,1’-biphenyl-4,4’-diamine]、DNTPD[N,N’-diphenyl-N,N’-bis-[4-(phenyl-m-tolyl-amino)-phenyl]-biphenyl-4,4’-diamine]などを使用することができる。しかし、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0086】
また、前記正孔輸送層の材料は、当業分野における通常使用されるものである限りは、特に制限されず、例えば、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)、又はN,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(a-NPD)などを使用することができる。しかし、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0087】
一方、本発明は、前記正孔輸送層の上部に電子遮断層をさらに形成することができる。前記電子遮断層は、電子注入層から注入された電子が発光層を通って正孔輸送層に進入することを防止することにより、素子の寿命と効率を向上させるための層であって、公知の材料を使用するか、或いは必要な場合に2つの公知の材料を混合して使用して発光層と正孔注入層との間における適切な部分に形成でき、好ましくは、発光層と正孔輸送層との間に形成できる。
【0088】
次いで、前記正孔輸送層40又は電子遮断層の上部に発光層50を真空蒸着法又はスピンコーティング法で積層することができる。
【0089】
ここで、前記発光層は、ホストとドーパントからなり得る。これらを構成する材料については、上記で記載したのと同様である。
【0090】
また、本発明の具体例によれば、前記発光層の厚さは50~2,000Åであることが好ましい。
【0091】
以後、前記発光層上に電子輸送層60を真空蒸着法又はスピンコーティング法によって蒸着する。
【0092】
一方、本発明において、前記電子輸送層の材料としては、電子注入電極(カソード(Cathode))から注入された電子を安定的に輸送する機能を果たすものであって、公知の電子輸送物質を用いることができる。公知の電子輸送物質の例としては、キノリン誘導体、特に、トリス(8-キノリノレート)アルミニウム(Alq3)、Liq、TAZ、BAlq、ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラート)(beryllium bis(benzoquinolin-10-olate:Bebq2)、化合物201、化合物202、BCP、オキサジアゾール誘導体であるPBD、BMD、BNDなどの材料を使用することもできるが、これに限定されるものではない。
【0093】
【0094】
また、本発明における有機発光素子は、前記電子輸送層を形成した後に、電子輸送層の上部に、陰極からの電子の注入を容易にする機能を有する物質である電子注入層(EIL)が積層できる。これは、特に材料を制限しない。
【0095】
前記電子注入層形成材料としては、CsF、NaF、LiF、Li2O、BaOなどの電子注入層形成材料として公知になっている任意の物質を用いることができる。前記電子注入層の蒸着条件は、使用する化合物によって異なるが、一般に、正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲の中から選択できる。
【0096】
前記電子注入層の厚さは、約1Å~約100Å、約3Å~約90Åであり得る。前記電子注入層の厚さが上記の範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに満足すべき程度の電子注入特性を得ることができる。
【0097】
また、本発明において、前記陰極は、容易な電子注入のために仕事関数の小さい物質を用いることができる。リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、又はこれらの合金アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)などを使用するか、或いはITO、IZOを用いた透過型陰極を使用することができる。
【0098】
また、本発明における有機発光素子は、380nm~800nmの波長範囲で発光する青色発光材料、緑色発光材料又は赤色発光材料の発光層をさらに含むことができる。すなわち、本発明における発光層は複数の発光層であって、前記さらに形成される発光層内の青色発光材料、緑色発光材料又は赤色発光材料は、蛍光材料又は燐光材料であり得る。
【0099】
また、本発明において、前記それぞれの層の中から選択された一つ以上の層は、単分子蒸着工程又は溶液工程によって形成できる。
【0100】
ここで、前記蒸着工程は、前記それぞれの層を形成するための材料として使用される物質を真空又は低圧状態で加熱などによって蒸発させて薄膜を形成する方法を意味し、前記溶液工程は、前記それぞれの層を形成するための材料として使用される物質を溶媒と混合し、これをインクジェット印刷、ロール・ツー・ロールコーティング、スクリーン印刷、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティングなどの方法によって薄膜を形成する方法を意味する。
【0101】
また、本発明における前記有機発光素子は、フラットパネルディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置、単色又は白色の平板照明用装置、及び単色又は白色のフレキシブル照明装置の中から選択されるいずれか一つの装置に使用できる。
【0102】
以下、好適な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものである。本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されないのは、当業分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0103】
(実施例)
【0104】
合成例1:化学物1の合成
合成例1-1.[中間体1-a]の合成
【0105】
【0106】
丸底フラスコにフェニルヒドラジン100g(0.924mol)、酢酸500mlを仕込んで攪拌した後、60℃に加熱した。2-メチルシクロヘキサノン103.6g(0.924mol)をゆっくり滴加した後、8時間還流させた。反応完了後、水と酢酸エチルを用いて抽出した後、濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離して[中間体1-a]130gを得た。(収率76%)
【0107】
合成例1-2.[中間体1-b]の合成
【0108】
【0109】
窒素雰囲気下でトルエン750ml入りの丸底フラスコに[中間体1-a]75g(405mmol)を入れて零下10℃に冷却させた後、1.6Mのメチルリチウム380ml(608mmol)をゆっくり滴加し、零下10℃で3時間程度攪拌させた。反応終了後、水と酢酸エチルを用いて抽出した後、濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離して[中間体1-b]50.5gを得た。(収率62%)
【0110】
合成例1-3.[中間体1-c]の合成
【0111】
【0112】
窒素雰囲気下で丸底フラスコに[中間体1-b]40g(199mmol)、1-ブロモ-2,3-ジクロロ-5-メチルベンゼン47.7g(251mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム7.3g(7.9mmol)、トリtert-ブチルホスフィン3.2g(15.9mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド38.2g(397mmol)、トルエン400mlを投入し、12時間還流させた。反応終了後、有機層を減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで分離して[中間体1-c]23gを得た。(収率32%)
【0113】
合成例1-4.[中間体1-d]の合成
【0114】
【0115】
窒素雰囲気下で丸底フラスコに1-ブロモ-3-アイオドベンゼン、ナフタレン-1-イルボロン酸、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.8g(1.6mmol)、炭酸カリウム17.6g(127mmol)、テトラヒドロフラン300ml、トルエン300ml、水120mlを投入した後、24時間還流させる。反応が完了して温度を常温に降温した後、抽出する。有機層を減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで分離して[中間体1-d]19gを得た。(収率70.3%)
【0116】
合成例1-5.[中間体1-e]の合成
【0117】
【0118】
丸底フラスコに[中間体1-d]19g(67mmol)、アニリン6.2g(67mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム1.2g(1mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド7.7g(81mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル0.8g(1mmol)、トルエン200mLを入れ、24時間還流攪拌する。反応終了後、抽出して有機層を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離して[中間体1-e]15.2gを得た。(収率77%)
【0119】
合成例1-6.[中間体1-f]の合成
【0120】
【0121】
丸底フラスコに[中間体1-e]15.2g(51mmol)、1-ブロモ-3-ヨードベンゼン18.9g(67mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム0.9g(1mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド6.4g(67mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル0.6g(1mmol)、トルエン150mLを加え、24時間還流攪拌する。反応終了後、抽出して有機層を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離して[中間体1-f]14.9gを得た。(収率64%)
【0122】
合成例1-7.[中間体1-g]の合成
【0123】
【0124】
丸底フラスコに[中間体1-f]14.9g(33mmol)、アニリン3.1g(33mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム0.6g(0.7mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド3.8g(40mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル0.4g(0.7mmol)、トルエン150mLを加え、20時間還流攪拌する。反応終了後、抽出して有機層を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離して[中間体1-g]11.4gを得た。(収率75%)
【0125】
合成例1-8.[中間体1-h]の合成
【0126】
【0127】
丸底フラスコに[中間体1-c]8.9g(25mmol)、[中間体1-g]11.4g(25mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム0.5g(0.5mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド3.6g(37mmol)、トリtert-ブチルホスフィン0.1g(0.5mmol)、トルエン120mLを加え、6時間還流攪拌する。反応終了後、抽出して有機層を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離した。ジクロロメタンとメタノールで再結晶して[中間体1-h]12.7gを得た。(収率65%)
【0128】
合成例1-9.[化合物1]の合成
【0129】
【0130】
窒素雰囲気の反応器に[中間体1-h]12.7g(16mmol)、tert-ブチルベンゼン89mlを入れる。-78℃で1.6Mのtert-ブチルリチウム20.2mL(32mmol)を滴加する。滴加後、60℃で2時間攪拌する。-78℃で三臭化ホウ素8.1mL(32mmol)を滴加する。滴加後、常温で1時間攪拌し、0℃でN,N-ジイソプロピルエチルアミン4.2g(32mmol)を滴加する。滴加後、120℃で3時間攪拌する。反応終了後、常温で酢酸ナトリウム水溶液を入れて攪拌する。酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィーして[化合物1]1.3gを得た。(収率10.6%)
【0131】
合成例2:化合物2の合成
合成例1-5で使用したアニリンの代わりに4-tert-ブチルアニリンを使用した以外は同様の方法で合成して化合物2を得た。(収率13%)
【0132】
合成例3:化合物12の合成
合成例1-7で使用したアニリンの代わりに4-アミノ-ジベンゾフランを使用した以外は同様の方法で合成して化合物12を得た。(収率7%)
【0133】
合成例4:化合物40の合成
合成例1-3で使用した1-ブロモ-2,3-ジクロロ-5-メチルベンゼンの代わりに1-ブロモ-2,3-ジクロロベンゼンを使用した以外は同様の方法で合成して化合物40を得た。(収率12%)
【0134】
合成例5:化合物49の合成
合成例1-4で使用した1-ナフタレンボロン酸の代わりに2-ナフタレンボロン酸を使用した以外は同様の方法で合成して化合物49を得た。(収率10%)
【0135】
合成例6:化合物50の合成
合成例1-4で使用した1-ナフタレンボロン酸の代わりに2-ナフタレンボロン酸を使用し、合成例1-5で使用したアニリンの代わりに4-tert-ブチルアニリンを使用した以外は同様の方法で合成して化合物50を得た。
【0136】
合成例7:化合物58の合成
合成例1-1で使用したフェニルヒドラジンの代わりに4-tert-ブチルフェニルヒドラジンを使用し、合成例1-4で使用した1-ナフタレンボロン酸の代わりに2-ナフタレンボロン酸を使用した以外は同様の方法で合成して化合物58を得た。
【0137】
合成例8:化合物70の合成
合成例1-3で使用した1-ブロモ-2,3-ジクロロ-5-メチルベンゼンの代わりに1-ブロモ-2,3-ジクロロベンゼンを使用し、合成例1-4で使用した1-ナフタレンボロン酸の代わりに2-ナフタレンボロン酸を使用した以外は同様の方法で合成して化合物70を得た。
【0138】
合成例9:化合物85の合成
合成例1-3で使用した1-ブロモ-2,3-ジクロロ-5-メチルベンゼンの代わりに1-ブロモ-2,3-ジクロロ-5-tert-ブチルベンゼンを使用し、合成例1-5で使用した[中間体1-d]の代わりに1-ブロモナフタレンを使用した以外は同様の方法で合成して化合物85を得た。
【0139】
合成例10:化合物90の合成
合成例1-5で使用した[中間体1-d]の代わりに2-ブロモナフタレン、アニリンの代わりに4-アミノ-ジベンゾフランを使用した以外は同様の方法で合成して化合物90を得た。
【0140】
実施例1~10:有機発光素子の製造
ITOガラスの発光面積が2mm×2mmのサイズとなるようにパターニングした後、洗浄した。前記ITOガラスを真空チャンバーに取り付けた後、ベース圧力が1×10-7torrとなるようにし、しかる後に、前記ITO上にDNTPD(700Å)、[化学式H](250Å)の順で成膜した。
【0141】
発光層は、下記のホスト(BH1)と本発明のホウ素化合物(3wt%)とを混合して成膜(250Å)した後、電子輸送層として[化学式E-1]と[化学式E-2]を1:1の比で300Å、電子注入層として[化学式E-1]を5Å、Alを1000Åに順次成膜して有機発光素子を製造した。
【0142】
前記有機発光素子の発光特性は、0.4mAで測定した。
【0143】
【0144】
比較例1及び2
前記実施例1で使用された化合物の代わりに[BD1]及び[BD2]を使用した以外は同様にして有機発光素子を製作した。前記有機発光素子の発光特性は0.4mA/cm2で測定した。前記[BD1]及び[BD2]の構造は、次のとおりである。
【0145】
【0146】
前記実施例1~10及び比較例1~2によって製造された有機発光素子に対して、電圧、外部量子効率及び寿命を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0147】
【0148】
前記実施例1~10に示されているように、本発明によるホウ素化合物は、比較例1及び2よりも高い量子効率と共に長寿命特性を示しており、有機発光素子としての利用可能性が高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明による新規なホウ素化合物は、有機発光素子内のドーパント物質として用いる場合に、既存の物質に比べてより長寿命及び高効率の特性を持っており、有機発光素子に適用する場合に改善された特性を示すため、有機発光素子及びこれに関連する産業分野で産業上の利用可能性が高い。