(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】7xxx系半連続(DC)鋳造インゴットの低下した割れ感受性
(51)【国際特許分類】
B22D 11/049 20060101AFI20230911BHJP
B22D 11/00 20060101ALI20230911BHJP
B22D 11/115 20060101ALI20230911BHJP
B22D 21/04 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B22D11/049
B22D11/00 E
B22D11/115 A
B22D21/04 A
(21)【出願番号】P 2022536647
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 US2020065919
(87)【国際公開番号】W WO2021127378
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-14
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ワグスタッフ,サミュエル ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ワグスタッフ,ロバート ブルース
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/106254(WO,A1)
【文献】特表2006-507950(JP,A)
【文献】特開2012-006062(JP,A)
【文献】特表2019-513082(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235613(WO,A1)
【文献】特表2009-513357(JP,A)
【文献】国際公開第2019/099480(WO,A1)
【文献】特開平07-068345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/049
B22D 11/00
B22D 11/115
B22D 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
7xxx系アルミニウム合金を半連続鋳造する方法であって、前記方法が、
金属供給源から、鋳型に鋳込まれつつあるエンブリオニックインゴットの金属溜まりへと
7xxx系アルミニウム合金である溶湯を送達することと;
前記金属溜まりから熱を除去することによって凝固金属の外部固体殻を形成することであって、凝固界面が前記外部固体殻と前記金属溜まりとの間に位置する、前記形成することと;
前記溶湯を送達しながら及び前記外部固体殻を形成しながら前記エンブリオニックインゴットを前記鋳型から遠ざかる進行方向に鋳造速度で前進させることと;
前記鋳造速度を用いて撹拌の強度を決定するこ
とと;
前記決定された強度で溶湯溜まり内での撹拌を誘発
し、前記鋳造速度において、溶湯コア、凝固界面、及び固体殻の隣接部分の底部に、一様なU字形または放物線形の輪郭を為すことと、を含
み、
前記撹拌を誘発することが、給送管の反対側に配置された非接触磁気撹拌器を使用して前記金属溜まりの中の前記溶湯に撹拌力を加えることを含む、方法。
【請求項2】
前記溶湯を送達することが、
複数のノズルを介して前記溶湯を質量流速で送達すること
を含み、前記撹拌を誘発することが、
前記複数のノズルの中を通るときの前記質量流速を維持しながら前記複数のノズルのうちの少なくとも1つの中を通る前記溶湯の流速を増加させること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鋳造速度を変更すること;
更新された前記鋳造速度を用いて撹拌の更新された強度を決定することであって、前記撹拌の更新された強度が、前記更新された鋳造速度におい
て溶湯コア、凝固界面、及び固体殻の隣接部分の底部に、一様なU字形または放物線形の輪郭を
為すのに適する、前記決定することと;
前記更新された強度で前記溶湯溜まり内での撹拌を誘発することであって、前記更新された強度で前記溶湯溜まり内での撹拌を誘発することが、前記更新された鋳造速度において
前記溶湯コア、前記凝固界面、
前記固体殻の隣接部分の底部が一様なU字形または放物線形の輪郭を呈することを誘発する、前記誘発することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エンブリオニックインゴットの温度を測定すること
をさらに含み、前記鋳造速度を用いて前記撹拌の強度を決定することが、前記測定された温度を用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記進行方向に対して垂直でありかつ内部溶融コアと交差する前記エンブリオニックインゴットの断面において、前記外部固体殻内に高強度領域を連続的に形成することをさらに含み、前記高強度領域が前記外部固体殻の外面と前記内部溶融コアとの間に位置しており、前記高強度領域を形成することが、前記断面において前記外部固体殻を再加熱して前記外部固体殻における分散質析出を誘発すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶湯溜まり内での撹拌を誘発することが、前記溶湯の噴流が前記金属溜まりの底部において前記凝固界面を浸食して窪みを形成するように前記金属溜まりの中への前記溶湯の送達を制御することを含み、前記窪みが、前記金属溜まりの前記底部の直径と一致するように寸法決めされた直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
7xxx系アルミニウム合金を半連続鋳造する方法であって、前記方法が、
金属供給源から、鋳型に鋳込まれつつあるエンブリオニックインゴットの金属溜まりへと
7xxx系アルミニウム合金である溶湯を送達することと;
前記金属溜まりから熱を除去することによって凝固金属の外部固体殻を形成することであって、凝固界面が前記外部固体殻と前記金属溜まりとの間に位置する、前記形成することと;
前記溶湯を送達しながら及び前記外部固体殻を形成しながら前記エンブリオニックインゴットを前記鋳型から遠ざかる進行方向に鋳造速度で前進させることと;
前記金属溜まりの中への前記溶湯の送達を制御して、前記金属溜まりの底部において前記凝固界面の少なくとも一部を浸食するのに十分な前記溶湯の噴流を発生させることと
を含
み、
前記溶湯を送達することが、
複数のノズルを介して前記溶湯を質量流速で送達すること
を含み、前記溶湯の噴流を発生させることが、
前記複数のノズルの中を通るときの前記質量流速を維持しながら前記複数のノズルのうちの少なくとも1つの中を通る前記溶湯の流速を増加させること
を含む、方法。
【請求項8】
前記溶湯の送達を制御することが、
前記溶湯の噴流が前記凝固界面を10mm以下の厚さに浸食するように前記溶湯の送達を制御すること
を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
非接触磁気撹拌器を使用して前記金属溜まりの中の前記溶湯に撹拌力を加えることをさらに含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記鋳造速度を変更すること
をさらに含み、前記溶湯の送達を制御することが、
前記変更された鋳造速度に基づいて前記溶湯の送達を、前記溶湯の噴流が前記金属溜まりの前記底部において前記凝固界面の少なくとも前記一部を浸食し続けるように動的に調整すること
を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
前記エンブリオニックインゴットの温度を測定すること
をさらに含み、前記溶湯の送達を制御することが、
前記測定された温度に基づいて前記溶湯の送達を、前記溶湯の噴流が前記金属溜まりの前記底部において前記凝固界面の少なくとも前記一部を浸食し続けるように動的に調整すること
を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
前記進行方向に対して垂直でありかつ前記金属溜まりと交差する前記エンブリオニックインゴットの断面において、前記外部固体殻内に高強度領域を連続的に形成すること
をさらに含み、前記高強度領域が前記外部固体殻の外面と前記金属溜まりとの間に位置しており、前記高強度領域を形成することが、
前記断面において前記外部固体殻を再加熱して前記外部固体殻における分散質析出を誘発すること
を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項13】
凝固界面から鋳造方向に底端部まで延びる
7xxx系アルミニウム合金の凝固殻、及び
上面から前記凝固界面まで延びる前記
7xxx系アルミニウム合金の液体溶融コア
を含み、
溶湯コア、凝固界面、及び固体殻の隣接部分の底部に、一様なU字形または放物線形の輪郭を有する、エンブリオニックインゴット。
【請求項14】
前記液体溶融コアが前記凝固界面からの再懸濁結晶粒を含む、請求項
13に記載のエンブリオニックインゴット。
【請求項15】
前記液体溶融コアが前記凝固界面からの再懸濁水素を含む、請求項
13に記載のエンブリオニックインゴット。
【請求項16】
前記凝固殻が、前記凝固殻の外面と、前記液体溶融コアの中心及び前記凝固殻の中心を通って前記鋳造方向に延びる中心線との間に配置された高強度領域を含み、前記高強度領域が、前記凝固殻の残部に比べてより高い濃度の分散質を有する、請求項
13に記載のエンブリオニックインゴット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月20日に出願された米国仮出願第62/951,883号に基づく利益及び優先権を主張するものであり、これをもって参照によりその全体を援用する。
【0002】
本開示は、概して金属鋳造に関し、より具体的には、扱い難いアルミニウム合金の半連続鋳造に関する。
【背景技術】
【0003】
半連続(DC)鋳造では、上げ底または可動底を有する鋳型空隙部に溶湯を通す。溶湯が鋳型空隙部に、一般的には頂部から進入すると、上げ底は溶湯の流れの速度と関係付いた速度で降下する。側面付近で凝固した溶湯は、液体及び部分的に液体である金属を溶湯溜まりの中に保持するために用いられ得る。金属は、99.9%固体(例えば完全に固体)、100%液体、及びこれらの間の範囲内であり得る。溶湯が冷えるにつれて固体領域の厚さが増加するため、溶湯溜まりはV字形状、U字形状またはW字形状を呈し得る。固体金属と液体金属との間の界面は、時には凝固界面と呼称される。
【0004】
溶湯溜まりの中の溶湯がおよそ0%固体~およそ5%固体になると、核形成が起こり得、金属の小さな結晶が形成され得る。これらの小さな(例えばナノメートルサイズの)結晶は核を形成し始め、この核は溶湯が冷えるにつれて優先方向に成長し続けて樹枝状晶を形成する。溶湯が樹枝状晶整合点(例えば、飲料缶端部のために使用される5182アルミニウムでは632℃)にまで冷えると、樹枝状晶は貼り付き合い始める。溶湯の温度及び固体パーセントに応じて結晶は、種々の粒子(例えば金属間化合物または水素気泡)、例えば、アルミニウムの特定の合金ではFeAl6、Mg2Si、FeAl3、Al8Mg5及び気体状H2の粒子を含み得る、または捕捉し得る。
【0005】
加えて、凝固しつつあるアルミニウムが最初に冷え始めると、それは合金元素をそのアルファ相にちょうどそれだけ支持することができず、このため、凝固界面を取り囲む溶湯は比例的に合金元素の濃度がより高くなり得る。したがって、凝固界面またはその近傍では異なる組成及び粒子が形成され得る。加えて、液溜まり内には、これらの粒子の優先的蓄積をもたらし得るものであるよどみ領域が存在し得る。
【0006】
結晶粒の長さ規模での合金元素の不均一な分布は、微細偏析として知られている。対照的に、マクロ偏析は、結晶粒よりも大きな(または数個の結晶粒の)長さ規模、例えば数メートルまでの長さ規模にわたる化学的不均一性である。
【0007】
特定のアルミニウム合金、例えば7xxx系合金は、鋳造するのが特に困難であり得る。7xxx系合金は一般に、多数の合金元素、例えば、亜鉛、マグネシウム、銅、クロム、ジルコニウム及び他の合金元素のうちの1つ以上の組合せを含有する。7xxx系合金を鋳込む時及びその直後には大きな内部応力(例えば圧縮応力及び時には引張応力)が蓄積し得、鋳造物が割れやすいものになり得る。これらの類の合金に使用される特定の合金元素、例えば亜鉛は、アルミニウムとははるかに異なる速度で収縮及び膨張する。特に亜鉛は、アルミニウムよりも著しく大きく収縮及び膨張する。このため、同程度の温度(例えば600℃)において同一体積である亜鉛及びアルミニウムは、(例えば凝固の最終段階において)冷却されると、各々異なった体積の亜鉛及びアルミニウムとなり得る。合金元素とアルミニウムとで相違するこれらの膨張及び収縮速度は、7xxx系合金から鋳造された鋳物の中の大きな内部力の原因、したがって応力の原因となり得る。
【0008】
加えて、7xxx系合金は、凝固しつつある溶融合金からガスの微小気泡として追い出されていく溶存水素に起因する鋳巣問題の影響を極めて受けやすい。ガスの気泡によって発生する空所はしばしば割れ開始部位となり、相当な割れを招き得る。加えて、7xxx系合金は、溶湯が凝固する時の収縮率の差に少なくとも部分的に起因する引け巣の影響を極めて受けやすいことがある。
【0009】
従来の製造環境において、凝固中の大きな内部応力は鋳造物における熱間割れまたは冷間割れを引き起こし得、鋳造物をさらなる製造に適さないものにする。7xxx系合金に関して従来の製造環境は、他のより簡単に鋳造される鋳物、例えば6xxx系合金と比較して全体的インゴット損失量の増加を招く。
【0010】
加えて、7xxx系合金鋳造物は、鋳造応力を低減しながら所望の析出物を有する所望の内部構造を実現するためには鋳造後の長期の均質化工程に依存し得る。均質化は、鋳造後の微細偏析を軽減するために用いられ得る。場合によっては、7xxx系合金鋳造物はより小さな標準寸法に熱間圧延され得、溶体化処理され得、次いで時効され得る。場合によっては、より望ましい微細構造を得ようとして長期間の時効及びさらなる処理(例えば溶体化または再結晶)が用いられることがあるが、そのような技術は、相当な設備ならびに、相当な時間、資源及びエネルギーの消費を必要とする。
【発明の概要】
【0011】
実施形態という用語及び類似する用語は、広義に本開示及び以下の特許請求の範囲の主題の全てを指すことを意図する。これらの用語が入った語句が本明細書に記載の主題の限定または以下の特許請求の範囲もしくは意味の限定をするものでないことは理解されるべきである。本明細書に包含される本開示の実施形態は、この概要ではなく以下の特許請求の範囲によって画定される。この概要は本開示の様々な態様の大まかな概説であり、以下の発明を実施するための形態の節においてさらなる記載がなされる概念のいくつかを紹介するものである。この概要は、特許請求される主題の肝要または必須な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲を決定するために単独で用いられることも意図していない。主題は、本開示の明細書全体の適切な部分、任意または全ての図面、及び各請求項を参照することによって理解されるべきである。
【0012】
本開示の実施形態は、鋳造方法であって、溶湯を鋳込み型に供給し、外部固体殻及び内部溶融コアを含むエンブリオニックインゴットを形成すること;鋳込み型にさらなる溶湯を供給しながら、エンブリオニックインゴットを鋳込み型から遠ざかる進行方向に前進させること;液体冷却剤の供給を外部固体殻の外面に差し向けることによって鋳込み型と移行場所との間でエンブリオニックインゴットから熱を除去すること;ならびに移行場所にあるエンブリオニックインゴットの外部固体殻の少なくとも一部が、分散質の析出に適した温度であって溶湯の均質化温度よりも低い温度(例えば再加熱温度)に達するように、移行場所においてエンブリオニックインゴットを再加熱することを含み、移行場所が、進行方向に対して垂直な面であって内部溶融コアと交差する当該面内にある、当該方法を含む。
【0013】
場合によっては、例えば摂氏で表したときの再加熱温度は、溶湯の例えば摂氏で表された均質化温度の80~98%である。場合によっては、例えば摂氏で表したときの当該温度は、溶湯の例えば摂氏で表された均質化温度の85~90%である。任意選択的に、摂氏で表したときの温度は、溶湯の摂氏で表された均質化温度の80~95%、80~90%、80~85%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%である。場合によっては、温度は400~460℃である。場合によっては、温度は410~420℃である。場合によっては、温度は、400~410℃、400~420℃、400~430℃、400~440℃、400~450℃、400~460℃、410~420℃、410~430℃、410~440℃、410~450℃、410~460℃、420~430℃、420~440℃、420~450℃、420~460℃、430~440℃、430~450℃、430~460℃、440~450℃、440~460℃、または450~460℃である。場合によっては、方法は、外部固体殻の一部において温度を少なくとも3時間、例えば3~4時間、3~5時間、3~6時間、3~7時間、3~8時間、3~9時間、3~10時間、4~5時間、4~6時間、4~7時間、4~8時間、4~9時間、4~10時間、5~6時間、5~7時間、5~8時間、5~9時間、5~10時間、6~7時間、6~8時間、6~9時間、6~10時間、7~8時間、7~9時間、7~10時間、8~9時間、8~10時間、9~10時間またはそれよりも長い間にわたって維持することをさらに含む。場合によっては、エンブリオニックインゴットを再加熱することは、外部固体殻の外面から液体冷却剤を取り除くことを含む。場合によっては、エンブリオニックインゴットを再加熱することは、外部固体殻の外面に熱を印加して内部溶融コアからの潜熱加熱を補完することをさらに含む。場合によっては、方法は、エンブリオニックインゴットの温度測定を行うこと、及び温度測定に基づいて移行場所を動的に調整することをさらに含む。場合によっては、方法は、内部溶融コアと外部固体殻との間の界面に隣接する内部溶融コアにおいて撹拌を誘発することをさらに含む。場合によっては、方法は、エンブリオニックインゴットの温度測定を行うことをさらに含み、内部溶融コアにおいて撹拌を誘発することは、温度測定に基づいて撹拌の強度を動的に調整することを含む。場合によっては、面内で外面からエンブリオニックインゴットの中心まで延びる線のおよそ3分の1をエンブリオニックインゴットの外部固体殻が占めている断面において面がエンブリオニックインゴットと交差するように、移行場所が選択される。場合によっては、面内で外面からエンブリオニックインゴットの中心まで延びる線の50%以下をエンブリオニックインゴットの外部固体殻が占めている断面において面がエンブリオニックインゴットと交差するように、移行場所が選択される。場合によっては、溶湯は7xxx系アルミニウム合金である。場合によっては、再加熱される部分は、中心に液体を含有する金属の面を含んでおり、表面に隣接してインゴットの外周において再加熱領域が上記析出物を成長させている。
【0014】
本開示の実施形態は、方法であって、溶湯を鋳型に供給すること及び溶湯から熱を除去して外部固体殻を形成することによって、エンブリオニックインゴットを形成すること;エンブリオニックインゴットが鋳型から遠ざかる進行方向に前進し、さらなる溶湯が鋳型に供給される時に、エンブリオニックインゴットの内部溶融コアを凝固させることを含み、内部溶融コアを凝固させることが、外部固体殻を介して内部溶融コアから熱を除去することを含み;さらに、エンブリオニックインゴットの断面であって進行方向に対して垂直であり内部溶融コアと交差する当該断面において、外部固体殻内に高強度領域を連続的に形成することを含み、高強度領域が外部固体殻の外面と内部溶融コアとの間に位置しており、高強度領域を形成することが、断面において外部固体殻を再加熱して外部固体殻における分散質析出を誘発することを含む、当該方法を含む。
【0015】
場合によっては、断面において外部固体殻を再加熱することは、外部固体殻の一部を分散質の析出に適した温度に再加熱することを含み、当該温度は溶湯の均質化温度よりも低い。場合によっては、例えば摂氏で表したときの当該温度は、溶湯の例えば摂氏で表された均質化温度の80~98%である。場合によっては、例えば摂氏で表したときの温度は、溶湯の例えば摂氏で表された均質化温度の85~90%である。場合によっては、温度は300~460℃、例えば400~460℃である。場合によっては、温度は410~420℃である。場合によっては、400~460℃、及び410~420℃の温度範囲は7xxx系合金のために特に適し得る。場合によっては、他の温度範囲が例えば6xxx系合金に用いられ得る。場合によっては、方法は、外部固体殻の一部において温度を少なくとも3時間、または3~10時間にわたって維持することをさらに含む。場合によっては、外部固体殻を介して内部溶融コアから熱を除去することは、外部殻の外面に液体冷却剤を供給することを含み、外部固体殻を再加熱することは、外部固体殻の外面から液体冷却剤を取り除くことを含む。場合によっては、外部固体殻を再加熱することは、外部固体殻の外面に熱を印加して内部溶融コアからの潜熱加熱を補完することをさらに含む。場合によっては、方法は、エンブリオニックインゴットの温度測定を行うこと、及び温度測定に基づいて鋳型と断面との間の距離を動的に調整することをさらに含む。場合によっては、方法は、内部溶融コアと外部固体殻との間の界面に隣接する内部溶融コアにおいて撹拌を誘発することをさらに含む。場合によっては、方法は、エンブリオニックインゴットの温度測定を行うことをさらに含み、内部溶融コアにおいて撹拌を誘発することは、温度測定に基づいて撹拌の強度を動的に調整することを含む。場合によっては、断面においてエンブリオニックインゴットの外部固体殻は、外面からエンブリオニックインゴットの中心まで延びる線のおよそ3分の1を占めている。場合によっては、断面においてエンブリオニックインゴットの外部固体殻は、外面からエンブリオニックインゴットの中心まで延びる線の50%以下を占めている。場合によっては、溶湯は7xxx系アルミニウム合金である。場合によっては、高強度領域は、外部固体殻の残部に比べてより高い濃度の分散質を含む。
【0016】
本開示の実施形態は、アルミニウム金属製品であって、2つの端部及び外面を有する凝固アルミニウム合金の塊を含み、凝固アルミニウム合金の塊が、凝固アルミニウム合金の塊の中心を内包するコア領域;外面と一体になった外側領域;及びコア領域と外側領域との間に配置された高強度領域を含み、高強度領域が、コア領域及び外側領域の各々に比べてより高い濃度の分散質を有する、当該アルミニウム金属製品を含む。
【0017】
場合によっては、凝固アルミニウム合金の塊は、半連続鋳造プロセスからの保持された熱を含む。場合によっては、高強度領域は、凝固アルミニウム合金の塊の断面に沿って外面から凝固アルミニウム合金の塊の中心まで延びる線のおよそ3分の1の深さに位置する。場合によっては、高強度領域は、凝固アルミニウム合金の塊の断面に沿って外面から凝固アルミニウム合金の塊の中心まで延びる線の2分の1以下の深さに位置する。場合によっては、凝固アルミニウム合金の塊の形状は円柱状である。場合によっては、凝固アルミニウム合金の塊の断面であって凝固アルミニウム合金の塊の鋳造方向に対して垂直である当該断面の形状は長方形である。場合によっては、凝固アルミニウム合金の塊は凝固7xxx系アルミニウム合金の塊である。
【0018】
本開示の実施形態は、エンブリオニックインゴットであって、上面から凝固界面まで延びるアルミニウム合金の液体溶融コア、及びアルミニウム合金の凝固殻を含み、凝固殻が、凝固界面から鋳造方向に底端部まで延びる外面を含むものであり、凝固殻が、外面と、液体溶融コアの中心及び凝固殻の中心を通って鋳造方向に延びる中心線との間に配置された高強度領域を含み、高強度領域が、凝固殻の残部に比べてより高い濃度の分散質を有する、当該エンブリオニックインゴットを含む。
【0019】
場合によっては、高強度領域は、外面から中心線まで延びる線のおよそ3分の1の深さに位置する。場合によっては、高強度領域は、外面から中心線まで延びる線の2分の1以下の深さに位置する。場合によっては、凝固殻の形状は円柱状である。場合によっては、凝固殻の断面であって鋳造方向に対して垂直である当該断面の形状は長方形である。場合によっては、アルミニウム合金は7xxx系アルミニウム合金である。場合によっては、エンブリオニックインゴットは、上記方法のいずれかに従って作られたものである。
【0020】
本開示の実施形態は、方法であって、金属供給源から、鋳型に鋳込まれつつあるエンブリオニックインゴットの金属溜まりへと溶湯を送達すること;金属溜まりから熱を除去することによって凝固金属の外部固体殻を形成することを含み、凝固界面が外部固体殻と金属溜まりとの間に位置しており;溶湯を送達しながら及び外部固体殻を形成しながらエンブリオニックインゴットを鋳型から遠ざかる進行方向に鋳造速度で前進させること;鋳造速度を用いて撹拌の強度を決定することを含み、撹拌の強度が、鋳造速度において目標凝固界面プロファイルをもたらすのに適したものであり;さらに、決定された強度で溶湯溜まり内での撹拌を誘発することを含み、溶湯溜まり内での撹拌を誘発することが、鋳造速度において凝固界面が目標凝固界面プロファイルを呈することをもたらす、当該方法を含む。
【0021】
場合によっては、撹拌を誘発することは、非接触磁気撹拌器を使用して金属溜まりの中の溶湯に撹拌力を加えることを含む。場合によっては、溶湯を送達することは、複数のノズルを介して溶湯を質量流速で送達することを含み、撹拌を誘発することは、複数のノズルの中を通るときの質量流速を維持しながら複数のノズルのうちの少なくとも1つの中を通る溶湯の流速を増加させることを含む。場合によっては、方法は、鋳造速度を変更すること;更新された鋳造速度を用いて撹拌の更新された強度を決定することをさらに含み、撹拌の更新された強度は、更新された鋳造速度において目標凝固プロファイルをもたらすのに適しており;さらに、更新された強度で溶湯溜まり内での撹拌を誘発することを含み、更新された強度で溶湯溜まり内での撹拌を誘発することは、更新された鋳造速度において凝固界面が目標凝固界面プロファイルを呈することをもたらす。場合によっては、溶湯は7xxx系アルミニウム合金である。場合によっては、方法は、エンブリオニックインゴットの温度を測定することをさらに含み、鋳造速度を用いて撹拌の強度を決定することは、測定された温度を用いることを含む。場合によっては、目標凝固界面プロファイルは、割れのリスクを最小限に抑えるように予め決められている。場合によっては、方法は、エンブリオニックインゴットの断面であって進行方向に対して垂直であり内部溶融コアと交差する当該断面において、外部固体殻内に高強度領域を連続的に形成することをさらに含み、高強度領域は外部固体殻の外面と内部溶融コアとの間に位置しており、高強度領域を形成することは、断面において外部固体殻を再加熱して外部固体殻における分散質析出を誘発することを含む。場合によっては、溶湯溜まり内での撹拌を誘発することは、溶湯の噴流が金属溜まりの底部において凝固界面を浸食して窪みを形成するように金属溜まりの中への溶湯の送達を制御することを含み、窪みは、金属溜まりの底部の直径と一致するように寸法決めされた直径を有する。
【0022】
本開示の実施形態は、方法であって、金属供給源から、鋳型に鋳込まれつつあるエンブリオニックインゴットの金属溜まりへと溶湯を送達すること;金属溜まりから熱を除去することによって凝固金属の外部固体殻を形成することを含み、凝固界面が外部固体殻と金属溜まりとの間に位置しており;溶湯を送達しながら及び外部固体殻を形成しながらエンブリオニックインゴットを鋳型から遠ざかる進行方向に鋳造速度で前進させること;ならびに金属溜まりの中への溶湯の送達を制御して、金属溜まりの底部において凝固界面の少なくとも一部を浸食するのに十分な溶湯の噴流を発生させることを含む、当該方法を含む。
【0023】
場合によっては、溶湯の送達を制御することは、溶湯の噴流が凝固界面を10mm以下の厚さに浸食するように溶湯の送達を制御することを含む。場合によっては、溶湯を送達することは、複数のノズルを介して溶湯を質量流速で送達することを含み、溶湯の噴流を発生させることは、複数のノズルの中を通るときの質量流速を維持しながら複数のノズルのうちの少なくとも1つの中を通る溶湯の流速を増加させることを含む。場合によっては、方法は、非接触磁気撹拌器を使用して金属溜まりの中の溶湯に撹拌力を加えることをさらに含む。場合によっては、方法は、鋳造速度を変更することをさらに含み、溶湯の送達を制御することは、変更された鋳造速度に基づいて溶湯の送達を、溶湯の噴流が金属溜まりの底部において凝固界面の少なくとも一部を浸食し続けるように動的に調整することを含む。場合によっては,溶湯は7xxx系アルミニウム合金である。場合によっては、方法は、エンブリオニックインゴットの温度を測定することをさらに含み、溶湯の送達を制御することは、測定された温度に基づいて溶湯の送達を、溶湯の噴流が金属溜まりの底部において凝固界面の少なくとも一部を浸食し続けるように動的に調整することを含む。場合によっては、方法は、エンブリオニックインゴットの断面であって進行方向に対して垂直であり金属溜まりと交差する当該断面において、外部固体殻内に高強度領域を連続的に形成することをさらに含み、高強度領域は外部固体殻の外面と金属溜まりとの間に位置しており、高強度領域を形成することは、断面において外部固体殻を再加熱して外部固体殻における分散質析出を誘発することを含む。
【0024】
本開示の実施形態は、エンブリオニックインゴットであって、凝固界面から鋳造方向に底端部まで延びるアルミニウム合金の凝固殻、及び上面から凝固界面まで延びるアルミニウム合金の液体溶融コアを含み、液体溶融コアが、液体溶融コアの底部において凝固界面に衝突して凝固界面に窪みを形成するアルミニウム合金の噴流を含む、当該エンブリオニックインゴットを含む。
【0025】
場合によっては、液体溶融コアは凝固界面からの再懸濁結晶粒を含む。場合によっては、液体溶融コアは凝固界面からの再懸濁水素を含む。場合によっては、凝固殻は、凝固殻の外面と、液体溶融コアの中心及び凝固殻の中心を通って鋳造方向に延びる中心線との間に配置された高強度領域を含み、高強度領域は、凝固殻の残部に比べてより高い濃度の分散質を有する。場合によっては、アルミニウム合金は7xxx系アルミニウム合金である。
【0026】
本開示の実施形態は、上記方法のいずれかに従って作られたアルミニウム金属製品を含む。
【0027】
他の目的及び利点は、非限定的な例についての以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0028】
本明細書は以下の添付図を参照するが、異なる図の中の類似する参照番号は、類似するまたは同様の構成要素を示すことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本開示の特定の態様による、原位置分散質析出のための金属鋳造システムの部分的断面図である。
【
図2】本開示の特定の態様による、液溜まり深さ制御を伴う原位置分散質析出のための金属鋳造システムの部分的断面図である。
【
図3】本開示の特定の態様による、流量制御された強撹拌のための金属鋳造システムの部分的断面図である。
【
図4】本開示の特定の態様による、複数の給送管を備えた流量制御された強撹拌のための金属鋳造システムの部分的断面図である。
【
図5】本開示の特定の態様による、磁気撹拌器による強撹拌のための金属鋳造システムの部分的断面図である。
【
図6】強撹拌がないときの溶湯溜まりの底部の拡大模式図である。
【
図7】本開示の特定の態様による、強撹拌を受けている溶湯溜まりの底部の拡大模式図である。
【
図8】本開示の特定の態様による、原位置分散質析出のためのプロセスを示す流れ図である。
【
図9】本開示の特定の態様による、半連続鋳造インゴットにおいて析出分散質の高強度領域を生成するためのプロセスを示す流れ図である。
【
図10】本開示の特定の態様による、高強度領域を描いたインゴットの立断面模式図である。
【
図11】本開示の特定の態様による、高強度領域を描いたインゴットの平断面模式図である。
【
図12】本開示の特定の態様による、強撹拌型半連続鋳造インゴットを製造するためのプロセスを示す流れ図である。
【
図13】A及びBは、試料採取場所の位置を示した7xxx系インゴットの断面の模式図を示す。
【
図14】様々な試料採取場所での基準インゴットの組成を示したデータを示す。
【
図15】様々な試料採取場所での第1試料インゴットの組成を示したデータを示す。
【
図16】様々な試料採取場所での第1比較試料インゴットの組成を示したデータを示す。
【
図17】様々な試料採取場所での基準インゴットの鋳巣率を示したデータを示す。
【
図18】様々な試料採取場所での第1試料インゴットの鋳巣率を示したデータを示す。
【
図19】第2試料インゴットから作製された板金の機械特性を示したデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示の特定の態様及び特徴は、特定の合金、例えば7xxx系合金の半連続鋳造インゴットの割れ感受性を低下させることに関する。7xxx系合金の半連続鋳造の間の、凝固最前部に沿う強撹拌のプロセス制御、及び鋳造速度の調整は、インゴットの割れ感受性を低下させ得る。強撹拌は、凝固最前部(例えば、「凝固遷移領域」として知られる、およそ0%超~100%未満が固体金属である領域)の厚さを減少させ、凝固最前部で追い出された水素ガスの凝集を促進し、凝固最前部で追い出された不純物を除去し、結晶粒度を改善する。強撹拌は、凝固最前部の厚みを増加させるリスクを伴うことなくより速い鋳造速度を可能にし得る。分散質形成を促進するための鋳造中の任意選択の再加熱はインゴットの外周部に分散質強化凝固金属の保護領域を生成し得るが、これが割れに対するインゴットの感受性をさらに低下させ得る。
【0031】
半連続(DC)鋳造では、上げ底または可動底を有する鋳型空隙部に溶湯を通す。溶湯が鋳型空隙部に、一般的には頂部から進入すると、上げ底は溶湯の流れの速度と関係付いた速度で降下する。側面付近で凝固した溶湯は、液体及び部分的に液体である金属を溶湯溜まりの中に保持するために用いられ得る。金属は、99.9%固体(例えば完全に固体)、100%液体、及びこれらの間の範囲内であり得る。溶湯が冷えるにつれて固体領域の厚さが増加するため、溶湯溜まりはV字形状、U字形状またはW字形状を呈し得る。固体金属と液体金属との間の界面は凝固界面または凝固最前部と呼称され得る。DC鋳造プロセスから得られる金属物品はインゴットと呼称され得る。インゴットは一般的には長方形の断面を有し得るが、他の断面、例えば円形、もっと言えば非対称な断面が用いられてもよい。インゴットという用語は、本明細書中で使用される場合、ビレットを含めた任意のDC鋳造金属物品を適切に包含し得る。
【0032】
上記のとおり、金属が凝固最前部において凝固するとき、特定の不純物及びガスが溶液から追い出され得、凝固しつつある金属の中に捕捉され得る。ガス、例えば水素は集まって、凝固金属中の空所をもたらす気泡を形成し得るが、この空所は一般にインゴットの鋳巣として知られ得る。加えて、凝固界面において不純物が追い出されることでインゴットの全体にわたる不純物の分布が一様でなくなり得る。
【0033】
本開示の特定の態様は、溶湯溜まりを撹拌することを含む。そのような撹拌は、多くの方法で、例えば、接触撹拌器、非接触磁気撹拌器の使用、または液溜まりへの液体金属の進入し方の調整によって成し遂げられ得る。接触撹拌器はアルミニウム合金との使用のためには望ましくないことが多く、なぜなら、少なくとも、不純物及び酸化物のリスクがあるからである。非接触撹拌器には、溶湯中に運動を誘発するように設計された電磁石及び永久磁石システムが含まれ得る。場合によっては、溶湯溜まりは、液溜まりへの液体金属の進入し方を調整すること、例えば、液体金属を液体金属の強力な噴流、例えば液溜まりの底部まで貫入するのに十分に強力な噴流として供給することによって、撹拌され得る。液体金属噴流は、液体金属を供給する圧力を増加させること、金属を供給するノズルの直径を調整すること、または他の技術、例えば、新たに追加される液体金属によって作り出された噴流の中に既存の溶湯溜まりを注入するために使用されるエダクターノズルによって、もたらされ得る。
【0034】
溶湯溜まりにおける強撹拌は、凝固最前部に沿う撹拌を提供するために用いられ得る。この撹拌は、形成されつつある金属結晶もしくはその一部、不純物、ガスを、もっと言えば凝固最前部の領域からの液体金属のいくらかを、押し流し得る。形成されつつある金属結晶(例えば自由に移動する結晶粒)を押し流すことは、より細かくより均一な結晶粒度をもたらすのに役立ち得る、というのも、形成されつつある結晶またはその破片は溶湯溜まりの中に再懸濁してさらなる核形成部位としての役割を果たし得るからである。さらには、十分な強度の撹拌は溶湯溜まりのバルク液体温度を低下させ得、かくして、微細な球状結晶粒の生成のための好都合な環境を作り出し得る。この微細な球状微細構造は、DC鋳造インゴットにみられる典型的な微細構造よりも強い。本開示の特定の態様、例えば強撹拌を用いて鋳造されたインゴットは、強撹拌を伴わずに鋳造されたインゴットと比較して、より高い降伏強度を有し得、冷間割れの影響をより受けにくいものとなり得る。
【0035】
凝固最前部から不純物を押し流すことは、より少ないマクロ偏析(より低い度合いのマクロ偏析)、よって向上した均質性を実現するのに役立ち得る。撹拌によって実現されるこのより少ないマクロ偏析は、インゴット内に望ましい保護領域をもたらす上で有益であり得る。本明細書中にさらに詳しく記載されているように、保護領域は、鋳造されているインゴットの外側の凝固部分を再加熱することによって確立され得る。再加熱は、インゴット内での微細分散質の形成を促し得るが、これは凝固金属を有益に強化するものであり得、かくして、割れに対するインゴットの感受性が最小限に抑えられ得る。これらの微細分散質は直径がおよそ30nmであり得るが、それ以外の大きさであってもよい。場合によっては、これらの微細分散質は直径がおよそ10~50nm、20~40nm、または25~35nmであり得る。
【0036】
予想外なことに、溶湯溜まり内での強撹拌が鋳造インゴットにおける鋳巣を減少させ得るかまたは最小限に抑え得ることが見出された。強撹拌は、追い出された水素を凝固界面から遠ざかるように押し流し得、結果的にそれを溶湯溜まりの残部の中に再懸濁させ得る。再懸濁した水素は他の水素と共に凝集し得、結果的に、ガスが溶湯溜まりの表面へと広がりゆくことが可能になり得、それはそこで留まるかまたは溶湯溜まりから排出される。このように、追い出された水素が鋳造品中の望ましくない鋳巣となるはずであった場合に、強撹拌を用いることで、鋳造品中の鋳巣が減少するかまたは最小限に抑えられることが見出された。
【0037】
溶湯における不純物及び溶存ガスの存在は、鋳造中に問題となり得るので、従来の鋳造技術は一般に、液体金属から不純物を濾別するため及び/または液体金属中の溶存ガス(例えば水素)の量を低減するためにかなりの上流における調製に依存している。本開示の特定の態様を用いれば、不純物を濾別するため及び/または溶存ガスを除去するためのこの類の上流調製は大幅に軽減され得るかまたは排除され得る。
【0038】
凝固最前部の適度な制御は、とりわけ7xxx系合金のような扱い難い合金を使用する場合に、鋳造の成功を実現するために重要となり得る。従来のDC鋳造では、凝固最前部を制御するために鋳造速度が用いられ得る。鋳造速度の増加は凝固最前部を厚くし得るが、他方、鋳造速度の減少は凝固最前部を狭くし得る。凝固最前部が厚すぎると溶湯は凝固最前部の凝固領域に完全には浸透しないことがあり、これが引け巣及び空所を生み得る。凝固最前部が薄すぎると熱間割れが発生することがあり、この場合、裂け目または割れ目は、内部応力、例えば収縮に関係する応力のために結晶粒間に形成する。したがって、引け巣に対する感受性と熱間割れに対する感受性との間にはしばしばトレードオフが存在し、これが鋳造速度を規定または制限し得る。熱間割れの傾向が特にある特定の合金、例えば7xxx系合金においては、このトレードオフは利用可能な鋳造速度を有効に制限し、それゆえ、1日に鋳造され得るインゴットの本数に有効最大値が設けられる。
【0039】
本開示の特定の態様によれば、凝固最前部の制御は、撹拌制御と鋳造速度制御との組合せによって成し遂げられ得る。強撹拌は、高い鋳造速度を可能にしながら熱間割れの軽減を可能にする多数の利点を提供し得る。上記のとおり、強撹拌は、凝固最前部を狭くするのに役立ち得る。かくして、強撹拌を伴うDC鋳造プロセスは、強撹拌を伴わないDC鋳造プロセスと比較して、凝固最前部の同じ厚さを維持しながらより高い鋳造速度で稼働され得る。かくして、強撹拌は、より速い鋳造、したがって1日あたりのより大きな生産能力を可能にし得る。加えて、撹拌は、本明細書中でエンブリオニックインゴットとも称される鋳造されているインゴットの中に溶湯溜まりがより深く拡張されることをもたらし得る。DC鋳造では溶湯の静力学的圧力が、凝固最前部にある結晶粒間の間隙の中に液体金属を浸透させるための実質的な駆動力を提供する。強撹拌によってもたらされたより深い溶湯溜まりは、液溜まりの底部の近傍において、より大きな静力学的圧力を有する頭部領域を提供する。この、より大きな静力学的圧力を有する頭部領域は、凝固最前部にある結晶粒間の間隙を埋めることを容易にし得、結果的に、引け巣または空所のリスクの低減または非存在を伴わないより厚い凝固最前部を可能にし得る。強撹拌を採用した場合、より厚い凝固最前部を用いることができるので、鋳造速度を、撹拌せずに利用可能であったはずの鋳造速度よりもさらにいっそう増加させることができる。
【0040】
増強された撹拌は、凝固最前部(例えば凝固界面)の厚さにおいて数ミリメートル程度、例えば、およそ1~5mm、またはおよそ10mm以下の公称厚さへの公称減少をもたらすように制御され得る。場合によっては、厚さの公称減少は、およそ20mm以下、19mm以下、18mm以下 17mm以下、16mm以下、15mm以下、14mm以下、13mm以下、12mm以下、11mm以下、10mm以下、9mm以下、8mm以下、7mm以下、6mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下または1mm以下の公称厚さへの減少であり得る。本明細書中で使用する場合、撹拌を制御して特定の公称厚さへの公称減少をもたらすことに対する言及は、鋳造速度を一定と仮定して特定の厚さへの減少をもたらすであろう程度に撹拌を制御することを意味し得る。したがって、鋳造速度の増加が付随する増強された撹拌は、凝固界面の厚さに有効な変化がほとんどまたは全くもたらさないものであり得るが、その増強された撹拌は、凝固界面の厚さにおいて公称厚さへの特定の公称減少をもたらすものとして表現されることがある。加えて、本明細書中で使用する場合、凝固界面の厚さは、最小厚さ、最大厚さ及び平均厚さ、またはエンブリオニックインゴット内の適用可能な点もしくは領域での厚さを指し得る。例えば、10mm以下の厚さを有する凝固界面は、凝固界面の任意の点での最大厚さが10mm以下である凝固界面;凝固界面の任意の点での最小厚さが10mm以下の厚さに達する凝固界面;凝固界面の全体にわたる平均厚さが10mm以下に留まる凝固界面;あるいは、凝固界面の底部もしくはその近傍にある領域(例えば、鋳型から最も遠い領域)または他の任意の適切な点もしくは領域にある領域での平均厚さが10mm以下に留まる凝固界面を含み得る。
【0041】
DC鋳造の間、エンブリオニックインゴットが鋳型から出てくる時に冷却剤(例えば水)をインゴットの表面に噴霧してインゴットから熱を除去する。ワイパーまたは他の技術を用いて冷却剤が取り除かれ得、かくして、インゴットの一部は再加熱が可能になり得る。この再加熱は、ある場合には、インゴットを原位置で(鋳造中に)均質化するために用いられ得る。ある場合には、この原位置での均質化は、金属がおよそ470℃~およそ480℃の回復温度に達する時に起こり得る。他方、本開示の特定の態様によれば、再加熱はより析出に適したより低い温度をもたらすように制御され得、結果的に、インゴットの外周部に分散質を形成するのを可能にする。鋳造中に析出物形成を促進するためにエンブリオニックインゴットを再加熱することは、本明細書において原位置析出と呼称され得る。
【0042】
場合によっては、所望の原位置析出を成し遂げるための再加熱温度(例えば、鋳造中にエンブリオニックインゴットの表面を再加熱する温度)は、およそ400℃~およそ460℃、およそ405℃~およそ425℃、またはおよそ410℃~およそ420℃であり得る。場合によっては、再加熱温度を合金のための最終均質化温度の百分率として表すことがあり、この場合、例えば摂氏で表したときの再加熱温度は、合金の例えば摂氏で表された最終均質化温度のおよそ80~およそ90%、またはおよそ85%~およそ98%であり得る。例えば、480℃の最終均質化温度の場合、再加熱温度は当該温度のおよそ88%、またはおよそ422℃であり得る。別の例を挙げると、480℃の最終均質化温度の場合、再加熱温度は当該温度のおよそ96%、またはおよそ460℃であり得る。
【0043】
望ましい原位置析出は、上に同定されるエンブリオニックインゴットを再加熱すること及び、一定温度を維持するかあるいはインゴットをある期間にわたって室温にまたはそれに向かって冷えさせることによって成し遂げられ得る。当該期間は、およそ3時間~およそ5時間であり得るが、場合によっては当該時間がより長いかまたはより短くてもよく、例えば、どちらかの端点から10%以内で逸れていてもよい。原位置析出プロセスは、インゴットの鋳造中に開始され得、インゴットが鋳造された後に終了し得る。原位置析出を用いて鋳造されたインゴットは鋳造直後に焼入れを経ることなく室温にまたはそれに向かって冷やされ得る。場合によっては、原位置析出を用いる場合に後の均質化工程を、短縮された時間にわたって実施してもよい。例えば、410℃での3時間の原位置析出が475℃でおよそ8時間にわたって均質化されて所望の小さな析出物をもたらし得るのに対して、原位置析出なしで鋳造されたインゴットは、475℃で10時間の均質化期間を必要とし得、望ましくない大型の析出物をもたらすことしかできないものであり得る。
【0044】
エンブリオニックインゴットを再加熱することは、外部熱の印加などの任意の好適な様式で起こり得る。しかしながら、原位置均質化のためにエンブリオニックインゴットを再加熱することは、通常、エンブリオニックインゴットの表面で起こっている熱除去の量を減らすこと、及びインゴットの潜熱、特に溶湯溜まりの熱にインゴットの外部を再加熱させることによって起こり得る。所望の原位置析出温度を実現するためには、再加熱を開始する点(例えば、冷却剤を取り除くワイパーの位置)が制御され得、及び/または溶融コアの深さが制御され得る。例えば、ワイパーの位置を高くすること(ワイパーを鋳型に近づくように移動させること)によって固体殻は、鋳型からもっと遠い断面と比較して溶湯溜まりがより広くなっている断面においてより早期に再加熱を開始することができ、かくして、よりいっそう多くの溶湯溜まりの潜熱が固体殻を再加熱することが可能になる。再加熱を開始する点を制御することに加えて、またはそれの代わりに、溶湯溜まり深さ自体を制御して固体殻の再加熱の正確な制御をもたらしてもよい。例えば、溶湯の噴流を凝固界面の底部へと導くことなどによって撹拌を誘発することによって、金属溜まりは、追加の撹拌を誘発しない場合と比較して鋳型からより遠ざかった距離に拡張され得る。溶融コアの深さが鋳型からより遠くへと拡張されるにつれて固体殻は、冷却剤が取り除かれた後により長い期間にわたって溶融コアの潜熱に供されることになる。
【0045】
加えて、再加熱を開始する場所及び/または溶融コアの深さの制御は、原位置分散質析出の間に形成される分散質の表面深度の制御を可能にし得る。本明細書中で使用する場合、表面深度という用語は、外面(例えば圧延面及び側面)からインゴットの中心(例えば、インゴットの中心を通って鋳造方向に延びる縦方向中心線)に向かうインゴット内の深さを指し得る。場合によっては、固体殻の再加熱及び/または溶融コアの深さの制御は、インゴットの表面から縦方向中心線に向かう道程のおよそ1/3(33%)に該当する領域(例えば高強度領域)に最高濃度の分散質をもたらし得る。場合によっては、この領域は、インゴットの表面から縦方向中心線に向かう道程の1/2(50%)またはおよそ1/2(50%)の所にあり得る。場合によっては、この領域は、インゴットの表面から縦方向中心線に向かう道程のおよそ5%、10%、15%、20%または25%、及びおよそ25%、30%、35%、40%、45%または50%の所に該当し得る。場合によっては、この領域は、インゴットの表面から上記深さまで延在し得る。
【0046】
場合によっては、最高濃度の分散質及び/または高強度領域は、インゴット全体の分散質の平均濃度よりも大きい分散質の濃度を有するインゴットの領域であり得る。場合によっては、最高濃度の分散質及び/または高強度領域は、インゴット全体の分散質の平均濃度を少なくとも0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5または4標準偏差だけ上回る分散質の濃度を有するインゴットの領域として定義され得る。高強度領域(例えば、相対的に高い濃度の析出分散質を有する領域)は、インゴットが室温に向かって冷える時の割れからの保護としての役割を果たし得る。
【0047】
初期鋳造微細構造と最終展伸材微細構造との間には関係性がないことがしばしばあり、これは、少なくとも部分的には、熱間加工中及びその後の加工中の微細構造の再結晶が原因となっている。しかしながら、特定の合金、例えば特定の7xxx系合金では、分散質を用いることによって、例えばCrまたはZrなどの元素添加することによって、再結晶が阻害され得る。鋳造微細構造におけるそのような分散質の形成を誘発することによって、分散質は再結晶を、または少なくとも再結晶中の平均結晶粒度の大幅な変化を抑制し得る。再結晶が抑制されるので、最終展伸材微細構造は、初期鋳造微細構造に関連付いたもの、より具体的にはそれに類似するものになり得る。
【0048】
鋳造微細構造を最終展伸物微細構造に関連付けるこの能力によって、鋳造微細構造を改良する技術は特に有益なものになり得る。結晶粒度を特定の程度に低減するために結晶粒微細化剤の添加が用いられることがあるが、飽和限界に達した後の付加的な結晶粒微細化剤の効果には限界がある。他方、本開示の態様、例えば強撹拌を用いると、さらなる及びより望ましい結晶粒微細化が成し遂げられ得る。このより微細な鋳造微細構造は、最終製品のためのより微細な微細構造をもたらし、これは多くの利点、例えば耐食性及び強度の利点を有し得る。
【0049】
ある場合には、本開示の特定の態様は7xxx系合金に特に適し得るが、5xxx系または他の系統の合金に用いるためにも有用であることがある。本開示の特定の態様は、例えば7xxx系において、「オレンジピール」欠陥に耐えるのにも役立ち得る。この「オレンジピール」欠陥は、金属物品の変形後にみられる表面欠陥であり、オレンジの外面の外観を有する鋳肌荒れを特徴とする。この欠陥は、大きい結晶粒度の結果であることが多い。最終結晶粒度を低減することによって、この欠陥は変形後により目立たないものになり得る。
【0050】
本明細書中で使用する場合、「発明」、「本発明(the invention)」、「本発明(this invention)」及び「本発明(the present invention)」という用語は、広義にこの特許出願及び以下の特許請求の範囲の主題の全てを指すことを意図する。これらの用語が入った語句が本明細書に記載の主題の限定または以下の特許請求の範囲もしくは意味の限定をするものでないことは理解されるべきである。
【0051】
本書では、AA番号及び他の関係する名称、例えば「系」または「7xxx」によって同定される合金に言及する。アルミニウム及びその合金の命名及び同定において最も一般的に使用されている番号名称体系の理解のためには、共にThe Aluminum Associationによって刊行されたものである「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」を参照されたい。
【0052】
本明細書中で使用する場合、「室温」の意味は、約15℃~約30℃、例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃または約30℃の温度を含み得る。本明細書中で使用する場合、「周囲条件」の意味は、おおよその室温の温度、約20%~約100%の相対湿度、及び約975ミリバール(mbar)~約1050mbarの大気圧を含み得る。例えば、相対湿度は、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、または間にある任意の値であり得る。例えば、大気圧は、約975mbar、約980mbar、約985mbar、約990mbar、約995mbar、約1000mbar、約1005mbar、約1010mbar、約1015mbar、約1020mbar、約1025mbar、約1030mbar、約1035mbar、約1040mbar、約1045mbar、約1050mbar、または間にある任意の値であり得る。
【0053】
本明細書に開示される全ての範囲は、その中のありとあらゆる小範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」と記された範囲は、最小値の1と最大値の10との間(端点を含む)のありとあらゆる小範囲、すなわち、1以上の最小値、例えば1~6.1から始まって10以下、例えば5.5~10の最大値で終わる全ての小範囲を含むとみなされるべきである。特に記されていない限り、元素の組成上の量に言及するときの「以下」という表現は、元素が任意選択されるものでありその特定元素のゼロパーセント組成を含むことを意味する。特に記されていない限り、全ての組成上の百分率は重量パーセント(wt.%)で表したものである。
【0054】
本明細書中で使用する場合、「a」、「an」及び「the」の意味は単数形及び複数形の意味を含み、但し、そうでないことを文脈が明らかに示している場合を除く。
【0055】
以下の例において、アルミニウム合金製品及びその構成要素は、重量パーセント(wt.%)で表したそれらの元素組成によって表される。各合金において残部はアルミニウムであり、全ての不純物の合計は0.15%のwt.%を最大とする。
【0056】
付随的元素、例えば結晶粒微細化剤及び脱酸素剤、または他の添加剤が本発明中に存在していてもよく、本明細書に記載の合金または本明細書に記載の合金の特質から逸脱するかまたはそれを著しく変化させることを伴わずにそれ自体で他の特質を付加してもよい。しかしながら、本開示において望まれる特性を変化させないであろう量の1つまたは複数の付随的元素の単なる付加によって本開示の範囲が回避されてはならない/回避され得ないことは、理解されるべきである。
【0057】
アルミニウムの固有の特性または加工設備との接触からの溶脱に起因して物質または元素を含めた不可避不純物が合金中に少量存在していてもよい。アルミニウムに典型的にみられるいくつかの不純物には、鉄及びケイ素が含まれる。記載される合金は、合金元素、付随的元素及び不可避不純物の他に約0.25wt.%以下の任意の元素を含有し得る。
【0058】
本明細書中で使用する場合、「スラブ」という用語は、15mmよりも大きい合金厚さを表す。例えば、スラブは、15mmよりも大きい、20mmよりも大きい、25mmよりも大きい、30mmよりも大きい、35mmよりも大きい、40mmよりも大きい、45mmよりも大きい、50mmよりも大きい、または100mmよりも大きい厚さを有するアルミニウム製品を指し得る。
【0059】
本明細書中で使用する場合、平板は一般に5~50mmの範囲の厚さを有する。例えば、平板は、約5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mmまたは50mmの厚さを有するアルミニウム製品を指し得る。
【0060】
本明細書中で使用する場合、shate(板金とも呼称される)は一般に約4mm~約15mmの厚さを有する。例えば、shateは、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mmまたは15mmの厚さを有し得る。
【0061】
本明細書中で使用する場合、薄板は一般に、約4mm未満の厚さを有するアルミニウム製品を指す。例えば、薄板は、4mm未満、3mm未満、2mm未満、1mm未満、0.5mm未満、0.3mm未満または0.1mm未満の厚さを有し得る。
【0062】
鋳造されたインゴットは、当業者に知られている任意の手段によって加工され得る。任意選択的に、薄板を作製する加工工程が用いられ得る。そのような加工工程としては、当業者に知られているように、均質化、熱間圧延、冷間圧延、溶体化熱処理、及び任意選択の予備時効工程が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
均質化工程において、本明細書に記載の鋳造品は、約400℃~約500℃の範囲の温度に加熱される。例えば、製品は、約400℃、約410℃、約420℃、約430℃、約440℃、約450℃、約460℃、約470℃、約480℃、約490℃または約500℃の温度に加熱され得る。その後、製品をある期間にわたって灼熱させる(つまり、指定の温度に保つ)。いくつかの例では、均質化工程のための合計時間は、加熱及び灼熱期間を含めて24時間以下であり得る。例えば、製品は、均質化工程のために18時間以下の合計時間にわたって500℃以下の加熱及び灼熱がなされ得る。場合によっては、製品は、均質化工程のために18時間以下の合計時間にわたって490℃未満の加熱及び灼熱がなされ得る。場合によっては、均質化工程は複数のプロセスを含む。いくつかの非限定的な例において、均質化工程は、製品を第1期間にわたって第1温度に加熱し、続いて第2期間にわたって第2温度に加熱することを含む。例えば、製品は、約3.5時間にわたって約465℃に加熱され得、その後、約6時間にわたって約480℃に加熱され得る。
【0064】
均質化工程に続いて熱間圧延工程が実施され得る。熱間圧延を開始する前に、均質化製品は300~450℃の温度に冷まされ得る。例えば、均質化製品は、325~425℃、または350~400℃の温度に冷まされ得る。製品はその後、300~450℃の温度で熱間圧延されて、3~200mm(例えば、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、110mm、120mm、130mm、140mm、150mm、160mm、170mm、180mm、190mm、200mm、または間にある任意の値)の標準寸法を有する熱間圧延平板、熱間圧延shateまたは熱間圧延薄板を形成し得る。
【0065】
その後、平板、shateまたは薄板は従来の冷間圧延機及び技術を用いて冷間圧延されて薄板となり得る。冷間圧延薄板は、約0.5~10mm、例えば約0.7~6.5mmの標準寸法を有し得る。任意選択的に、冷間圧延薄板は、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、5.0mm、5.5mm、6.0mm、6.5mm、7.0mm、7.5mm、8.0mm、8.5mm、9.0mm、9.5mmまたは10.0mmの標準寸法を有し得る。冷間圧延は、85%以下の標準寸法減少(例えば、10%以下、20%以下、30%以下、40%以下、50%以下、60%以下、70%以下、80%以下または85%以下の減少)に相当する最終標準厚さ寸法をもたらすように実施され得る。任意選択的に、冷間圧延工程中に中間焼鈍工程が実施され得る。中間焼鈍工程は、約300℃~約450℃(例えば、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、約400℃、約410℃、約420℃、約430℃、約440℃または約450℃)の温度で実施され得る。場合によっては、中間焼鈍工程は複数のプロセスを含む。いくつかの非限定的な例において、中間焼鈍工程は、平板、shateまたは薄板を第1期間にわたって第1温度に加熱してこれに続いて第2期間にわたって第2温度に加熱することを含む。例えば、平板、shateまたは薄板は、約1時間にわたって約400℃に加熱され得、次いで約2時間にわたって約330℃に加熱され得る。
【0066】
その後、平板、shateまたは薄板は溶体化熱処理工程を受け得る。溶体化熱処理工程は、薄板のための、結果的に可溶性粒子の溶体化をもたらす任意の従来の処理であり得る。平板、shateまたは薄板は、590℃以下(例えば400~590℃)のピーク金属温度(PMT)に加熱され得、ある期間にわたって当該温度で灼熱され得る。例えば、平板、shateまたは薄板は、30分以下(例えば、0秒、60秒、75秒、90秒、5分、10分、20分、25分または30分)の灼熱時間にわたって480℃で灼熱され得る。加熱及び灼熱の後、平板、shateまたは薄板は、100℃/秒を上回る速度で500~200℃の温度に急冷される。一例において、平板、shateまたは薄板の焼入れ速度は450~200℃の温度において200℃/秒を上回る。任意選択的に、他の例において冷却速度がより速くてもよい。
【0067】
焼入れ後、平板、shateまたは薄板は、巻取り前に平板、shateまたは薄板を再加熱することによる予備時効処理を任意選択的に受け得る。予備時効処理は、6時間以下の期間にわたって約70℃~約125℃の温度で実施され得る。例えば、予備時効処理は、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃または約125℃の温度で実施され得る。任意選択的に、予備時効処理は、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間または約6時間にわたって実施され得る。予備時効処理は、加熱装置、例えば、放射熱、対流熱、誘導熱、赤外熱などを発する装置の中に平板、shateまたは薄板を通すことによって行われ得る。
【0068】
本明細書に記載の鋳造品は、平板の形態の製品または他の好適な製品を作るためにも使用され得る。例えば、本明細書に記載の製品を含めて平板は、均質化工程とこれに続く熱間圧延工程においてインゴットを加工することによって作製され得る。熱間圧延工程では、鋳造製品は、200mm以下(例えば約10mm~約200mm)の標準厚さ寸法に熱間圧延され得る。例えば、鋳造製品は、約10mm~約175mm、約15mm~約150mm、約20mm~約125mm、約25mm~約100mm、約30mm~約75mm、または約35mm~約50mmの最終標準厚さ寸法を有する平板に熱間圧延され得る。
【0069】
本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、自動車用途及び他の輸送機関用途、例えば航空機及び鉄道用途に使用され得る。例えば、本開示のアルミニウム合金製品は、自動車構造部品、例えば、バンパー、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラー補強材(例えばAピラー、Bピラー及びCピラー)、内側パネル、外側パネル、サイドパネル、内側フード、外側フードまたはトランクリッドパネルを作製するために使用され得る。本明細書に記載のアルミニウム合金製品及び方法は、航空機または鉄道車両用途においても、例えば外部及び内部パネルを作製するために用いられ得る。
【0070】
本明細書に記載のアルミニウム合金製品及び方法は、電子機器用途にも用いられ得る。例えば、本明細書に記載のアルミニウム合金製品及び方法は、携帯電話及びタブレット型コンピュータを含めた電子デバイスの筐体を作製するためにも用いられ得る。いくつかの例において、アルミニウム合金製品は、携帯電話(例えばスマートホン)の外側枠、タブレット底部台枠、及び他の携帯型電子機器のための筐体を作製するために使用され得る。
【0071】
これらの実例は、本明細書において述べられている全体的主題を読者に紹介するために与えられており、本開示の概念の範囲を限定する意図はない。以下の節は、類似する数字が類似する要素を示している図面を参照しながら様々な付加的特徴及び例を記載しており、指示的な記載は、例示的な実施形態を説明するために使用されているが、例示的実施形態と同様に、本開示を限定するために用いられるべきではない。本明細書における例示に含まれる要素は、縮尺どおりに描かれていないことがある。例えば、金属溜まりを描いた図は、例示目的のために誇張された特徴部を含んでいることがある。
【0072】
図1は、本開示の特定の態様による、原位置分散質析出のための金属鋳造システム100の部分的断面図である。金属供給源102、例えばタンディッシュは溶湯を、給送管104を下ってノズル106から出るように供給し得る。任意選択のスキマー108は、溶湯を分配し溶湯溜まり110の上面における金属酸化物の生成を軽減するのを助けるために、給送管104の周りに使用され得る。底部ブロック120は、水圧式シリンダー122によって持ち上げられて鋳型空隙部112の壁面に合わせられ得る。溶湯が鋳型内で凝固し始めると、底部ブロック120は鋳造速度で定常的に下げられ得る。エンブリオニックインゴット116は、凝固した側面118含み得る一方、鋳型に添加される溶湯は、エンブリオニックインゴット116を継続的に長くするために用いられ得る。エンブリオニックインゴット116は底端部136を含み得る。場合によっては、鋳型空隙部112の壁面は中空空間を画定しており、冷却剤114、例えば水を収容し得る。冷却剤114は、中空空間から噴流として出てエンブリオニックインゴット116の側面118を流下してエンブリオニックインゴット116の凝固を助け得る。エンブリオニックインゴット116は、外部固体殻128、移行金属領域(例えば凝固界面126)、及び溶湯コア124を含み得る。
【0073】
分散質析出の促進を開始するためには、鋳型空隙部112の底部(例えば、エンブリオニックインゴット116が鋳型空隙部112から脱する所)から、固体殻118の再加熱が開始される場所までの距離として定義される再加熱器距離130においてエンブリオニックインゴット116の凝固殻128の再加熱を開始する。再加熱器距離130は、鋳型と、再加熱が開始される場所(例えば、冷却剤114を取り除くために使用されるワイパー142などの再加熱装置の場所)との間の距離であり得る。再加熱を開始する場所は、移行場所として知られ得る。
【0074】
固体殻128を再加熱するために様々な技術が用いられ得るが、
図1ではエンブリオニックインゴット116から冷却剤114を取り除くためのワイパー142の使用が描かれている。
図1のワイパー142は固体ワイパーとして描かれているが、他のワイパー、例えば、流体系ワイパー(例えばエアーナイフ)も同様に使用され得る。冷却剤114は、エンブリオニックインゴット116のコアが未だ溶融している断面においてエンブリオニックインゴット116から取り除かれる。かくして、溶湯コア124からの、特に、再加熱器距離130と溶湯距離132(以下に定義される)との間の溶湯コア124の領域からの潜熱は、固体殻128を再加熱し得る。したがって、本明細書にさらに詳しく記載されるとおり、再加熱器距離130及び/または溶湯距離132を調整することによって再加熱のタイミング及び量が正確に制御され得る。
【0075】
再加熱器距離130は、溶湯距離132及び液溜まり距離134よりも短くされ得る。溶湯距離132は、鋳型空隙部112の底部から溶湯コア124の底部までの距離として定義され得る。液溜まり距離134は、鋳型空隙部112の底部から凝固界面126の底部までの距離として定義され得る。
【0076】
場合によっては、例えば溶湯コア132の形状の変化を(例えば鋳造速度を変化させること及び/または撹拌を誘発することによって)誘発して溶湯距離132を調整することによって、またはワイパー142を移動させて再加熱器距離130を調整することによって、溶湯距離132と再加熱器距離130との差が制御され得る。そのような鋳造速度、撹拌及び/またはワイパー142の調整は、任意の適切な作動装置に連結されたコントローラ138によって制御され得る。場合によっては、コントローラ138は、予め設定されたルーチンに基づく操作を実施し得る。場合によっては、コントローラ138は、鋳造プロセスからの、例えばセンサ144によって行われた温度測定からの動的フィードバックに基づく操作を実施し得る。センサ144は、任意の好適な温度センサ、例えば、接触型または非接触型センサであり得る。
図1のセンサ144は、固体殻128の表面の測定を行うために固体殻128に隣接した状態で描かれているが、そうである必要があるというわけではない。場合によっては、センサ(複数可)が他の場所に配置され得、他のインゴット測定、例えば液溜まり温度または冷却剤温度の測定を行い得る。
【0077】
任意選択の流量コントローラ140は、給送管104の中を通る溶湯の流量を制御するために配置され得る。好適な流量コントローラ140の例には、金属の流れを減速及び/または停止させるための格納式ピン、磁気ポンプ、電気ポンプ、あるいは給送管104の中を通る金属の流れを増加及び/または減少させるための任意の好適な装置が含まれる。
【0078】
図1ではワイパーシステムが描かれているが、ワイパーシステムの代わりに、またはそれに加えて、再加熱器距離130において他の種類の再加熱技術を用いてもよい。例えば、溶湯コア124からの任意の潜熱に加えて直接火炎衝撃、回転式磁気ヒータまたは他の装置を使用して熱を固体殻128に印加してもよい。場合によっては、熱を固体殻128に加えるためのこれらの技術は制御がなされ得、例えば、提供される熱の量及び/または熱が提供される場所が制御され得る。そのような制御は、コントローラ138によって実施され得る。
【0079】
図2は、本開示の特定の態様による、液溜まり深さ制御を伴う原位置分散質析出のための金属鋳造システム200の部分的断面図である。金属鋳造システム200は、
図1の金属鋳造システム100に類似し得る。金属供給源202は溶湯を、給送管204を下って流量コントローラ240の中を通ってノズル206から出るように供給し得る。流量コントローラ240は、金属供給源202からの増加した流れを溶湯コア224中に供給し得る。給送管204の中を通る溶湯のこの増加した流れは、増加した流れ246を溶湯コア224内にもたらし得る。増加した流れ246は、例えば
図1に描かれる流動配置と比較したとき、増加した体積流速、増加した線流速、または増加した体積流速と増加した線流速との両方であり得るかまたはそれに対応し得る。
【0080】
そのような増加した流れ246は強撹拌をもたらし得、凝固界面226の一部を浸食することができる噴流としての役割を果たし得る。噴流は、金属溜まりの底部(例えば液体金属コア224の最下部分)において固体殻228内及び凝固界面226内に窪みを作り出し得る。そうすることによって、溶湯距離232も液溜まり距離234も増加し得る。
【0081】
かくして、鋳型212からの同じ再加熱器距離230に位置するワイパー242及び
図1のワイパー142に関して、エンブリオニックインゴット216の固体殻228は、
図1に描かれているよりも多くの加熱を溶湯コア224から受け得る、というのも、溶湯距離232と再加熱器距離230との差がより大きいからである。
【0082】
撹拌の強度及び/または流れ246の量は、任意の適切な作動装置(例えば流量コントローラ240)に連結されたコントローラ238によって制御され得る。場合によっては、コントローラ238は、予め設定されたルーチンに基づく操作を実施し得る。場合によっては、コントローラ238は、鋳造プロセスからの、例えばセンサ244によって行われた温度測定からの動的フィードバックに基づく操作を実施し得る。センサ244は、任意の好適な温度センサ、例えば、接触型または非接触型センサであり得る。
図2のセンサ244は、固体殻228の表面の測定を行うために固体殻228に隣接した状態で描かれているが、そうである必要があるというわけではない。場合によっては、センサ(複数可)が他の場所に配置され得、他のインゴット測定、例えば液溜まり温度または冷却剤温度の測定を行い得る。
【0083】
図3は、本開示の特定の態様による、流量制御された強撹拌のための金属鋳造システム300の部分的断面図である。金属鋳造システム300の様々な態様は
図1の金属鋳造システム100の適切な態様に類似し得る。金属供給源302は溶湯を、給送管304を下って流量コントローラ340の中を通ってノズル306から出るように供給し得る。流量コントローラ340は、金属供給源302からの増加した流れを溶湯コア324中に供給し得る。給送管304の中を通る溶湯のこの増加した流れは、増加した流れ346を溶湯コア324内にもたらし得る。
【0084】
そのような増加した流れ346は強撹拌をもたらし得、凝固界面326の一部を浸食することができる噴流としての役割を果たし得る。噴流は、金属溜まりの底部(例えば液体金属コア324の最下部分)において固体殻328内及び凝固界面326内に窪みを作り出し得る。流れ346の強さ、よって得られる噴流の強さは、望ましい形状の窪みをもたらすように制御され得る。流れが弱すぎると、窪みが作り出されないか、小さな直径の窪みが作り出されるかのどちらかとなり得る。流れが強すぎると、窪みは大きすぎる直径を有し得る。他方、望ましい窪みは、液溜まりの底部の直径と一致する直径を有し得、結果的に液溜まりは滑らかで漸進的な形状となる。窪みを有する液溜まりの形状は、溶湯が凝固界面326の側面を上って流れるのを容易にし得るが、これは、凝固界面326から追い出された不純物及び水素を除去すること、ならびに結晶粒を再懸濁させ結晶粒構造を改善してより微細な結晶粒をもたらすことを容易にし得る。
【0085】
撹拌の強度及び/または流れ346の量は、任意の適切な作動装置(例えば流量コントローラ340)に連結されたコントローラ338によって制御され得る。場合によっては、コントローラ338は、予め設定されたルーチンに基づく操作を実施し得る。場合によっては、コントローラ338は、鋳造プロセスからの、例えばセンサ344によって行われた温度測定からの動的フィードバックに基づく操作を実施し得る。場合によっては、センサ344からのフィードバックは、凝固界面プロファイル(例えば凝固界面の形状)を推測するために、及び所望の凝固界面プロファイルをもたらすかまたは維持するための動作を実施するために用いられ得る。センサ344は、任意の好適な温度センサ、例えば、接触型または非接触型センサであり得る。
図3のセンサ344は、固体殻328の表面の測定を行うために固体殻328に隣接した状態で描かれているが、そうである必要があるというわけではない。場合によっては、センサ(複数可)が他の場所に配置され得、他のインゴット測定、例えば液溜まり温度または冷却剤温度の測定を行い得る。
【0086】
図4は、本開示の特定の態様による、複数の給送管を備えた流量制御された強撹拌のための金属鋳造システム400の部分的断面図である。金属鋳造システム400は、
図3の金属鋳造システム300に類似し得る。金属供給源402は溶湯を、複数の給送管404、450、454を下るように供給し得る。
図4に描かれているように3つの給送管が使用されているが、いかなる数の給送管が使用されてもよい。各給送管404、450、454はそれぞれコントローラ440、456、452に結び付けられ得る。流量コントローラ440、456、452はピンバルブとして描かれているが、いかなる好適な流量コントローラが使用されてもよい。複数の給送管404、450、454を使用して溶湯を溶湯コア424に供給した場合、1つ以上の給送管(例えば給送管450、454)を中を通る流れを減少させること及び残りの1つ以上の給送管(例えば給送管404)の中を通る流れを増加させることによって、増加した流れ446がもたらされ得る。
図4に描かれているように、流量コントローラ452及び456が閉じられている一方、流量コントローラ440は開いており、結果的に、より多くの流体が中央の給送管404から流れ出ることが可能になり、かくして、増加した流れ446が溶湯コア424内に作り出される。
【0087】
そのような増加した流れ446は強撹拌をもたらし得、凝固界面426の一部を浸食することができる噴流としての役割を果たし得る。噴流は、金属溜まりの底部(例えば液体金属コア424の最下部分)において固体殻428内及び凝固界面426内に窪みを作り出し得る。流れ446の強さ、よって得られる噴流の強さは、望ましい形状の窪みをもたらすように(例えば流量コントローラ452、440、456のいずれかを作動させることによって)制御され得る。流れが弱すぎると、窪みが作り出されないか、小さな直径の窪みが作り出されるかのどちらかとなり得る。流れが強すぎると、窪みは大きすぎる直径を有し得る。他方、望ましい窪みは、液溜まりの底部の直径と一致する直径を有し得、結果的に液溜まりは滑らかで漸進的な形状となる。窪みを有する液溜まりの形状は、溶湯が凝固界面426の側面を上って流れるのを容易にし得るが、これは、凝固界面426から追い出された不純物及び水素を除去すること、ならびに結晶粒を再懸濁させ結晶粒構造を改善してより微細な結晶粒をもたらすことを容易にし得る。
【0088】
撹拌の強度及び/または流れ446の量は、任意の適切な作動装置(例えば流量コントローラ440、452、456)に連結されたコントローラ438によって制御され得る。場合によっては、コントローラ438は、予め設定されたルーチンに基づく操作を実施し得る。場合によっては、コントローラ438は、鋳造プロセスからの、例えばセンサ444によって行われた温度測定からの動的フィードバックに基づく操作を実施し得る。場合によっては、センサ444からのフィードバックは、凝固界面プロファイル(例えば凝固界面の形状)を推測するために、及び所望の凝固界面プロファイルをもたらすかまたは維持するための動作を実施するために用いられ得る。センサ444は、任意の好適な温度センサ、例えば、接触型または非接触型センサであり得る。
図4のセンサ444は、固体殻428の表面の測定を行うために固体殻428に隣接した状態で描かれているが、そうである必要があるというわけではない。場合によっては、センサ(複数可)が他の場所に配置され得、他のインゴット測定、例えば液溜まり温度または冷却剤温度の測定を行い得る。
【0089】
図5は、本開示の特定の態様による、磁気撹拌器による強撹拌のための金属鋳造システム500の部分的断面図である。金属鋳造システム500は、
図3の金属鋳造システム300に類似し得る。金属供給源502は溶湯を、給送管504を下ってノズル506から出るように供給し得る。
図5には描かれていないが、場合によっては流量コントローラが使用され得る。
【0090】
非接触磁気撹拌器560は溶湯コア524に隣接して配置されて表面流566、568を発生させる。非接触磁気撹拌器560は、電磁石または永久磁石であり得る。一例において、永久磁石非接触磁気撹拌器560は給送管504の反対側に配置され得、給送管504に向かう表面流566、568を発生させるのに適した方向562、564に回転し得る。表面流556、568は、給送管504から流れ出る溶湯と相互作用し得、増加した流れ546を溶湯コア524内にもたらし得る。
【0091】
そのような増加した流れ546は強撹拌をもたらし得、凝固界面526の一部を浸食することができる噴流としての役割を果たし得る。噴流は、金属溜まりの底部(例えば液体金属コア524の最下部分)において固体殻528内及び凝固界面526内に窪みを作り出し得る。流れ546の強さ、よって得られる噴流の強さは、望ましい形状の窪みをもたらすように制御され得る。流れが弱すぎると、窪みが作り出されないか、小さな直径の窪みが作り出されるかのどちらかとなり得る。流れが強すぎると、窪みは大きすぎる直径を有し得る。他方、望ましい窪みは、液溜まりの底部の直径と一致する直径を有し得、結果的に液溜まりは滑らかで漸進的な形状となる。窪みを有する液溜まりの形状は、溶湯が凝固界面526の側面を上って流れるのを容易にし得るが、これは、凝固界面526から追い出された不純物及び水素を除去すること、ならびに結晶粒を再懸濁させ結晶粒構造を改善してより微細な結晶粒をもたらすことを容易にし得る。
【0092】
撹拌の強度及び/または流れ546の量は、任意の適切な作動装置(例えば非接触撹拌器560)に連結されたコントローラ538によって制御され得る。場合によっては、コントローラ538は、予め設定されたルーチンに基づく操作を実施し得る。場合によっては、コントローラ538は、鋳造プロセスからの、例えばセンサ544によって行われた温度測定からの動的フィードバックに基づく操作を実施し得る。場合によっては、センサ544からのフィードバックは、凝固界面プロファイル(例えば凝固界面の形状)を推測するために、及び所望の凝固界面プロファイルをもたらすかまたは維持するための動作を実施するために用いられ得る。センサ544は、任意の好適な温度センサ、例えば、接触型または非接触型センサであり得る。
図5のセンサ544は、固体殻528の表面の測定を行うために固体殻528に隣接した状態で描かれているが、そうである必要があるというわけではない。場合によっては、センサ(複数可)が他の場所に配置され得、他のインゴット測定、例えば液溜まり温度または冷却剤温度の測定を行い得る。
【0093】
図6は、強撹拌がないときの溶湯溜まり600の底部の拡大模式図である。溶湯コア624及び凝固界面626の底部、ならびに固体殻628の隣接部分は、一様でない積層形状を呈し得るが、これは、懸濁した結晶粒の沈降、及び他の因子に起因している可能性がある。結果として溶湯は、この領域の付近にいくぶんよどんだままとなり得る。溶湯溜まりのこの底部領域は、凝固界面626の傾斜壁面が最大深さに到達する領域同士の間で大まかに定義され得るものである幅670を有し得る。
【0094】
図7は、本開示の特定の態様による、強撹拌を受けている溶湯溜まり700の底部の拡大模式図である。溶湯コア724及び凝固界面726の底部、ならびに固体殻728の隣接部分は、溶湯の増加した流れ746に起因して、一様でないU字形または放物線形の輪郭を呈し得る。溶湯の流れ746は、凝固界面726及び固体殻728を浸食して窪み774を形成し得る。窪み774は、(例えば
図6にみられるような)撹拌前の底部から、(例えば
図7にみられるような)撹拌中の窪み774の底部まで延びる深さ772を有し得る。窪み774は、撹拌前の液溜まりの直径(例えば
図6の直径670)と近似的に等しい直径770(例えば最大直径)を有し得る。
【0095】
溶湯の流れ746は、少なくとも凝固界面726の底部またはそれに隣接する所において、凝固界面726を数ミリメートル程度、例えばおよそ1~5mm、またはおよそ10mm以下の厚さに浸食するように制御され得る。場合によっては、流れ746は、少なくとも凝固界面726の底部またはそれに隣接する所において、凝固界面726をおよそ20mm以下、19mm以下、18mm以下 17mm以下、16mm以下、15mm以下、14mm以下、13mm以下、12mm以下、11mm以下、10mm以下、9mm以下、8mm以下、7mm以下、6mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下または1mm以下の厚さに浸食するように制御され得る。
図8は、本開示の特定の態様による、原位置分散質析出のためのプロセス800を示す流れ図である。ブロック802では、溶湯を鋳型に供給する。ブロック804では、型内で形成されようとしているエンブリオニックインゴットを鋳造方向に漸進させる。ブロック806では、エンブリオニックインゴットが鋳型から出てくるときの鋳型の底部と、再加熱位置との間の殻から熱を継続的に除去する。ブロック808では、エンブリオニックインゴットを再加熱する。再加熱は再加熱位置において開始され得る。場合によっては、再加熱は、ブロック806の最中にエンブリオニックインゴットの表面に供給された冷却剤を取り除くことを含み得る。ブロック810では、エンブリオニックインゴットは、ある期間、例えばおよそ3時間にわたって再加熱温度に保たれ得る。場合によっては、インゴットを再加熱温度に保つ代わりに、ブロック812においてインゴットを徐々に冷ます。インゴットは、例えば少なくともおよそ3時間の期間にわたって、徐々に室温に冷え得る
【0096】
場合によっては、ブロック816において任意選択的に撹拌が誘発され得る。撹拌は、鋳放しインゴットの様々な特質を改善するため及び溶湯溜まりの深さをより深くしてそれゆえにブロック808で実施される再加熱に影響を与えるために誘発され得る。
【0097】
場合によっては、ブロック814において任意選択的に温度計測監視が実施され得る。温度計測監視の結果は、ブロック816において誘発される撹拌の量、及びブロック808に関して用いられる再加熱位置を調整するために用いられ得る。ブロック814における温度計測監視は継続的に起こり得る。
【0098】
図9は、本開示の特定の態様による、半連続鋳造インゴットにおいて析出分散質の高強度領域を生成するためのプロセス900を示す流れ図である。ブロック902では、エンブリオニックインゴットが形成され得るかまたは形成され始め得る。ブロック904では、エンブリオニックインゴットの内部溶融コアの少なくともいくらかが凝固してエンブリオニックインゴットの固体殻を形成し得る。ブロック906では、析出分散質の高強度領域が連続的に形成され得る。
【0099】
ブロック906において析出分散質の高強度領域を連続的に形成することは、ブロック908において再加熱器距離で外部固体殻を再加熱することを含み得る。場合によっては、ブロック910においてインゴットの温度が測定され得る。この測定は、ブロック912において再加熱器距離を調整するため及び/またはブロック916において溶湯距離を調整するために用いられ得る。ブロック912において再加熱器距離を調整することは、ブロック914において再加熱器(例えばワイパー)を移動させることを含み得る。ブロック916において溶湯距離を調整することは、ブロック918において撹拌を誘発することを含み得る。
【0100】
図10は、本開示の特定の態様による、高強度領域1074を描いたインゴット1016の立断面模式図である。高強度領域1074は、インゴット1016の表面またはその付近から、インゴット1016の表面からインゴット1016の縦方向中心線1016までの半分未満の表面深度まで延びていることが描かれている。
【0101】
図11は、本開示の特定の態様による、高強度領域1174を描いたインゴット1116の平断面模式図である。高強度領域1174は、インゴット1016の表面またはその付近(例えば、圧延表面及び/または側面)から、インゴット1116の表面から関連する中心線までの半分未満、例えばインゴット1116の圧延表面から横方向中心線1180までの及びインゴット1116の側面から圧延面中心線1178までの半分未満の表面深度まで、延びていることが描かれている。
【0102】
図12は、本開示の特定の態様による、強撹拌型半連続鋳造インゴットを製造するためのプロセス1200を示す流れ図である。ブロック1202では、溶湯が鋳型に送達され得る。ブロック1204では、溶湯から熱が除去される時に外部固体殻が形成され得る。ブロック1206では、インゴットは鋳造速度で鋳型の外へと前進し得る。ブロック1208では、鋳造速度を用いて撹拌強度が決定され得る。撹拌強度は、検知されたかあるいは既知である鋳造速度に基づき得る。ブロック1210では、ブロック1208において決定された強度で撹拌が誘発され得る。撹拌を誘発することは、流量コントローラ及び/または非接触撹拌器を使用することを含み得るが、他の技術を用いてもよい。ブロック1212では、鋳造速度が変更され得る。鋳造速度を変化させた時点で、ブロック1212からの更新された鋳造速度に基づいてブロック1208において撹拌強度が再び決定され得る。その後、撹拌は新たに決定された強度で誘発され得る。任意選択のブロック1214では、エンブリオニックインゴットの温度が計測監視され得る。インゴット温度が計測監視された時点で、ブロック1214において測定された温度にも少なくとも部分的に基づいてブロック1208において撹拌強度が再び決定され得る。その後、撹拌は新たに決定された強度で誘発され得る。
【0103】
任意選択のブロック1216では、析出分散質の高強度領域は、本明細書に開示されているように連続的に形成され得る。
【0104】
本発明の態様は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに理解され得る。
【実施例】
【0105】
実施例1-インゴットの分析
基準インゴット、及び鋳造中に撹拌が誘発される本明細書に記載の技術に従って作製された試料インゴットを含む、いくつかの異なるアルミニウム合金インゴットを得た。インゴットは全て7xxx系アルミニウム合金であった。
【0106】
基準インゴットは、0.08wt.%のSi、0.15wt.%のFe、1.58wt.%のCu、0.02wt.%のMn、2.52wt.%のMg、0.193wt.%のCr、0.01wt.%のNi、5.61wt.%のZn、0.012wt.%のV、0.019wt.%のTi、0.001wt.%のCa、0.010wt.%のZr、及び残余のアルミニウムの組成を有していた。基準インゴットは、従来のDC鋳造とこれに続く従来の均質化プロセスを用いて鋳造された。50インチ、100インチ及び150インチの鋳物長さにおいて厚さ1インチの薄片を得、下記のとおりに分析した。
【0107】
第1試料インゴットは、0.09wt.%のSi、0.20wt.%のFe、1.45wt.%のCu、0.04wt.%のMn、2.35wt.%のMg、0.20wt.%のCr、0.004wt.%のNi、5.45wt.%のZn、0.019wt.%のV、0.03wt.%のTi、0.005wt.%のCa、0.010wt.%のZr、及び残余のアルミニウムの組成を有していた。第1試料インゴットは、本明細書に記載の非接触撹拌とこれに続く480℃で4時間にわたる均質化を用いて鋳造された。比較第1試料インゴットは、鋳放し特性の評価を可能にするために均質化を伴わずに本明細書に記載の非接触撹拌を用いて鋳造された。50インチ、100インチ及び150インチの鋳物長さにおいて厚さ1インチの薄片を得、下記のとおりに分析した。
【0108】
第2試料インゴットは、0.11wt.%のSi、0.20wt.%のFe、1.57wt.%のCu、0.05wt.%のMn、2.39wt.%のMg、0.18wt.%のCr、5.73wt.%のZn、0.03wt.%のTi、0.02wt.%のZr、0.02wt.%のSr、及び残余のアルミニウムの組成を有していた。第2試料インゴットは、本明細書に記載の非接触撹拌とそれに続く多段階均質化を用いて鋳造された:まず、第2試料インゴットを約50℃/時の速度で465℃に加熱し、465℃で4時間保ち;次いで、第2試料インゴットを465℃から480℃まで5℃/時で加熱し、480℃で16時間保った。第2試料インゴットを従来の圧延プロセスに供して板金試料を得た。
【0109】
基準インゴット1300及び第1試料インゴット1350の厚さ1インチの薄片の断面描写をそれぞれ
図13のA及びBに示す。基準インゴット1300の薄片は、約1690mmの幅1301、及び約602mmの厚さ1302を有しており;基準インゴット1350の薄片は、約1750mmの幅1351、及び約519mmの厚さ1352を有していた。9列(第1~9列)及び4行(第A~D行)の範囲にわたる試料採取場所のグリッドを使用して基準インゴット1300及び第1試料インゴット1350の分析を実施した。基準インゴット1300の5番目の第E行は、この行が部分的に切断されており基準インゴット1300の縁部にあったため、十分には分析されなかった。基準インゴット1300において試料採取場所は直径およそ45mmであり、位置9Aは基準インゴット1300及び第1試料インゴット1350の中心に対応していた。
【0110】
基準インゴット1300において第1列の試料採取場所が縁部から約30mmの所に位置していた一方、第1列の試料採取場所は第1試料インゴット1350の縁部から約58mmの所に位置していた。基準インゴット1300において列は互いに約62mm離隔しており、基準インゴット1300において行は互いに約42mm離隔していた。第1試料インゴット1350において列は互いに約61mm離隔しており、第1試料インゴット1350において行は互いに約28mm離隔していた。
【0111】
基準インゴット1300及び第1試料インゴット1350の試料採取場所を横切ってFe、Zn、Cr、Mg及びCuのマクロ偏析を、蛍光x線(XRF)分光分析法を用いて分析した。第1試料インゴット(50インチ、100インチ、150インチ)の薄片の各々についてFe、Zn、Cr、Mg及びCuの組成は第A~D行及び第1~9列を横切って概して安定していた。
【0112】
基準インゴットは、これらの元素のほとんどについて穏当な量のマクロ偏析を呈した。基準インゴットの100インチ薄片についてFe、Zn、Cr、Mg及びCu組成を位置の関数として示したグラフを
図14に示す。対照的に、第1試料インゴットにおけるマクロ偏析は制限されていた。第1試料インゴットの100インチ薄片についてFe、Zn、Cr、Mg及びCu組成を位置の関数として示したグラフを
図15に示す。
【0113】
しかしながら、第1試料インゴットは鋳造に続いて均質化に供されたものであったため、第1比較試料インゴットについても組成を同じ方法で分析して、均質化前の鋳放しインゴットにおけるマクロ偏析を評価した。Fe、Zn、Cr、Mg及びCuの濃度は第1試料インゴットと第1比較試料インゴットとの間でわずかに異なっていたが、第1比較試料インゴットにおいてマクロ偏析は同様に制限され、非接触撹拌を用いる鋳造がマクロ偏析を制限する上で有益となり得ることを示していた。第1比較試料インゴットの100インチ薄片についてFe、Zn、Cr、Mg及びCu組成を位置の関数として示したグラフを
図16に示す。
【0114】
インゴットの薄片の表面を横切って3D表面プロファイラ-を走査すること、及び表面プロファイルが鋳巣として所与の深さよりも大きな凹部を有している領域を同定することによって、基準インゴット及び第1試料インゴットの鋳巣の特性評価も行った。基準インゴット及び第1試料インゴットの100インチ薄片の試料採取場所の各々についての全鋳巣率のグラフをそれぞれ
図17及び
図18に示す。第1試料インゴットに比べて基準インゴットはより大きな鋳巣率を呈した。
【0115】
基準インゴット及び第1試料インゴットの結晶粒構造についても特性評価を行った。試料採取場所の各々について光学顕微鏡画像を得て結晶粒構造を評価した。どちらのインゴットも、インゴット中心に近づくにつれて比較的より粗くなる一次Al結晶粒構造、及びインゴット表面に向かって比較的より微細になる結晶粒構造を示した。結晶粒界析出物及び微細なMgZn2析出物が基準インゴット及び第1試料インゴットにおいて観察され。第1比較試料インゴットではより大きな割合の結晶粒界析出物が観察された。
【0116】
基準インゴット、第1試料インゴット及び第2試料インゴットについて、示差走査熱量測定(DSC)及びx線回折(XRD)を用いた特性評価も行って、金属間化合物、析出物及び共晶の存在及び組成を評価した。DSCは、表面により近い位置(例えば、第B、C及びD行)における低温融解相(例えばMgZn2及びAl2CuMg)の明確な存在を示した一方、インゴットの中心により近い位置(例えば第A行)は、DSCデータにおいて低温融解の証拠を示さなかった。しかしながら、XRDデータは、インゴットの中心により近い位置(例えば第A行)においておそらく微細な析出物の形態であるMgZn2の存在を示した。第1比較試料インゴットについてのXRD及びDSCデータは、インゴットの中心に近い位置も含めて、MgZn2、Al2MgC及びMg2Siを含むいくつかの低温融解相の証拠を示した。
【0117】
第2試料インゴットからの圧延板金の試料を、分析のための機械試験に供した。圧延板金は2つの条件で作製された:T6焼戻し条件、及びT6焼戻し条件とこれに続く塗装焼付け(T6+PB)。インゴットの中心及び両縁部からの試料を評価した。T6焼戻し条件の中心試料については横方向(T)、縦方向(L)及び対角線方向(D)に沿って評価した。縁部試料及びT6+PB試料については縦方向のみに沿って評価した。測定された特性、平均降伏応力(YS)(オフセット0.2%)、平均最大引張応力(TS)、平均最大軸ひずみ(AS)、及び平均一様伸び(UE)を、
図19に示されるグラフにまとめる。
【0118】
例示的態様
以下において使用する場合、一連の態様に対するいかなる言及も、それらの例の各々に対する別個な言及と理解されるべきである(例えば、「態様1~4」は「態様1、2、3または4」として理解されるべきである)。
【0119】
態様1は、鋳造方法などの方法であって、溶湯を鋳込み型に供給し、外部固体殻及び内部溶融コアを含むエンブリオニックインゴットを形成すること;前記鋳込み型にさらなる溶湯を供給しながら、前記エンブリオニックインゴットを前記鋳込み型から遠ざかる進行方向に前進させること;液体冷却剤の供給を前記外部固体殻の外面に差し向けることによって前記鋳込み型と移行場所との間で前記エンブリオニックインゴットから熱を除去すること;ならびに前記移行場所にある前記エンブリオニックインゴットの前記外部固体殻の少なくとも一部が、分散質の析出に適した温度であって前記溶湯の均質化温度よりも低い前記温度に達するように、前記移行場所において前記エンブリオニックインゴットを再加熱することを含み、前記移行場所が、前記進行方向に対して垂直な面であって前記内部溶融コアと交差する前記面内にある、前記方法である。
【0120】
態様2は、例えば摂氏で表したときの前記温度が、前記溶湯の例えば摂氏で表された前記均質化温度の80~90%である、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0121】
態様3は、例えば摂氏で表したときの前記温度が、前記溶湯の例えば摂氏で表された前記均質化温度の85~90%である、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0122】
態様4は、前記温度が400~460℃である、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0123】
態様5は、前記温度が410~420℃である、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0124】
態様6は、前記外部固体殻の前記一部において前記温度を少なくとも3時間にわたって維持することをさらに含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0125】
態様7は、前記エンブリオニックインゴットを再加熱することが、前記外部固体殻の前記外面から前記液体冷却剤を取り除くことを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0126】
態様8は、前記エンブリオニックインゴットを再加熱することが、前記外部固体殻の前記外面に熱を印加して前記内部溶融コアからの潜熱加熱を補完することをさらに含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0127】
態様9は、前記エンブリオニックインゴットの温度測定を行うこと、及び前記温度測定に基づいて前記移行場所を動的に調整することをさらに含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0128】
態様10は、前記内部溶融コアと前記外部固体殻との間の界面に隣接する前記内部溶融コアにおいて撹拌を誘発することをさらに含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0129】
態様11は、前記エンブリオニックインゴットの温度測定を行うことをさらに含み、前記内部溶融コアにおいて撹拌を誘発することが、前記温度測定に基づいて撹拌の強度を動的に調整することを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0130】
態様12は、前記面内で前記外面から前記エンブリオニックインゴットの中心まで延びる線のおよそ3分の1を前記エンブリオニックインゴットの前記外部固体殻が占めている断面において前記面が前記エンブリオニックインゴットと交差するように、前記移行場所が選択される、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0131】
態様13は、前記面内で前記外面から前記エンブリオニックインゴットの中心まで延びる線の50%以下を前記エンブリオニックインゴットの前記外部固体殻が占めている断面において前記面が前記エンブリオニックインゴットと交差するように、前記移行場所が選択される、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0132】
態様14は、前記溶湯が7xxx系アルミニウム合金である、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0133】
態様15は、方法であって、溶湯を鋳型に供給すること及び前記溶湯から熱を除去して外部固体殻を形成することによって、エンブリオニックインゴットを形成すること;前記エンブリオニックインゴットが前記鋳型から遠ざかる進行方向に前進し、さらなる溶湯が前記鋳型に供給される時に、前記エンブリオニックインゴットの内部溶融コアを凝固させることを含み、前記内部溶融コアを凝固させることが、前記外部固体殻を介して前記内部溶融コアから熱を除去することを含み;さらに、前記エンブリオニックインゴットの断面であって前記進行方向に対して垂直であり前記内部溶融コアと交差する前記断面において、前記外部固体殻内に高強度領域を連続的に形成することを含み、前記高強度領域が前記外部固体殻の外面と前記内部溶融コアとの間に位置しており、前記高強度領域を形成することが、前記断面において前記外部固体殻を再加熱して前記外部固体殻における分散質析出を誘発することを含む、前記方法である。
【0134】
態様16は、前記断面において前記外部固体殻を再加熱することが、前記外部固体殻の一部を分散質の析出に適した温度に再加熱することを含み、前記温度が前記溶湯の均質化温度よりも低い、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0135】
態様17は、例えば摂氏で表したときの前記温度が、前記溶湯の例えば摂氏で表された前記均質化温度の80~98%である、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0136】
態様18は、前記温度が、前記溶湯の前記均質化温度の85~90%である、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0137】
態様19は、前記温度が400~460℃である、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0138】
態様20は、前記温度が410~420℃である、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0139】
態様21は、前記外部固体殻の前記一部において前記温度を少なくとも3時間、例えば3~10時間にわたって維持することをさらに含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0140】
態様22は、前記外部固体殻を介して前記内部溶融コアから熱を除去することが、前記外部殻の前記外面に液体冷却剤を供給することを含み、前記外部固体殻を再加熱することが、前記外部固体殻の前記外面から前記液体冷却剤を取り除くことを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0141】
態様23は、前記外部固体殻を再加熱することが、前記外部固体殻の前記外面に熱を印加して前記内部溶融コアからの潜熱加熱を補完することをさらに含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0142】
態様24は、前記エンブリオニックインゴットの温度測定を行うこと、及び前記温度測定に基づいて前記鋳型と前記断面との間の距離を動的に調整することをさらに含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0143】
態様25は、前記内部溶融コアと前記外部固体殻との間の界面に隣接する前記内部溶融コアにおいて撹拌を誘発することをさらに含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0144】
態様26は、前記エンブリオニックインゴットの温度測定を行うことをさらに含み、前記内部溶融コアにおいて撹拌を誘発することが、前記温度測定に基づいて撹拌の強度を動的に調整することを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0145】
態様27は、前記断面において前記エンブリオニックインゴットの前記外部固体殻が、前記外面から前記エンブリオニックインゴットの中心まで延びる線のおよそ3分の1を占めている、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0146】
態様28は、前記断面において前記エンブリオニックインゴットの前記外部固体殻が、前記外面から前記エンブリオニックインゴットの中心まで延びる線の50%以下を占めている、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0147】
態様29は、前記溶湯が7xxx系アルミニウム合金である、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0148】
態様30は、前記高強度領域が、前記外部固体殻の残部に比べてより高い濃度の分散質を含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0149】
態様31は、アルミニウム金属製品であって、2つの端部及び外面を有する凝固アルミニウム合金の塊を含み、前記凝固アルミニウム合金の塊が、前記凝固アルミニウム合金の塊の中心を内包するコア領域;前記外面と一体になった外側領域;及び前記コア領域と前記外側領域との間に配置された高強度領域を含み、前記高強度領域が、前記コア領域及び前記外側領域の各々に比べてより高い濃度の分散質を有する、前記アルミニウム金属製品である。
【0150】
態様32は、前記凝固アルミニウム合金の塊が、半連続鋳造プロセスからの保持された熱を含む、任意の先行または後行態様に記載のアルミニウム金属製品である。
【0151】
態様33は、前記高強度領域が、前記凝固アルミニウム合金の塊の断面に沿って前記外面から前記凝固アルミニウム合金の塊の前記中心まで延びる線のおよそ3分の1の深さに位置する、任意の先行または後行態様に記載のアルミニウム金属製品である。
【0152】
態様34は、前記高強度領域が、前記凝固アルミニウム合金の塊の断面に沿って前記外面から前記凝固アルミニウム合金の塊の前記中心まで延びる線の2分の1以下の深さに位置する、任意の先行または後行態様に記載のアルミニウム金属製品である。
【0153】
態様35は、前記凝固アルミニウム合金の塊の形状が円柱状である、任意の先行または後行態様に記載のアルミニウム金属製品である。
【0154】
態様36は、前記凝固アルミニウム合金の塊の断面であって前記凝固アルミニウム合金の塊の鋳造方向に対して垂直である前記断面の形状が長方形である、任意の先行または後行態様に記載のアルミニウム金属製品である。
【0155】
態様37は、前記凝固アルミニウム合金の塊が凝固7xxx系アルミニウム合金の塊である、任意の先行または後行態様に記載のアルミニウム金属製品である。
【0156】
態様38は、任意の先行または後行態様に記載の方法に従って作られた、任意の先行または後行態様に記載のアルミニウム金属製品である。
【0157】
態様39は、エンブリオニックインゴットであって、上面から凝固界面まで延びるアルミニウム合金の液体溶融コア、及び前記アルミニウム合金の凝固殻を含み、前記凝固殻が、前記凝固界面から鋳造方向に底端部まで延びる外面を含むものであり、前記凝固殻が、前記外面と、前記液体溶融コアの中心及び前記凝固殻の中心を通って前記鋳造方向に延びる中心線との間に配置された高強度領域を含み、前記高強度領域が、前記凝固殻の残部に比べてより高い濃度の分散質を有する、前記エンブリオニックインゴットである。
【0158】
態様40は、前記高強度領域が、前記外面から前記中心線まで延びる線のおよそ3分の1の深さに位置する、任意の先行または後行態様に記載のエンブリオニックインゴットである。
【0159】
態様41は、前記高強度領域が、前記外面から前記中心線まで延びる線の2分の1以下の深さに位置する、任意の先行または後行態様に記載のエンブリオニックインゴットである。
【0160】
態様42は、前記凝固殻の形状が円柱状である、任意の先行または後行態様に記載のエンブリオニックインゴットである。
【0161】
態様43は、前記凝固殻の断面であって前記鋳造方向に対して垂直である前記断面の形状が長方形である、任意の先行または後行態様に記載のエンブリオニックインゴットである。
【0162】
態様44は、前記アルミニウム合金が7xxx系アルミニウム合金である、任意の先行または後行態様に記載のエンブリオニックインゴットである。
【0163】
態様45は、任意の先行または後行態様に記載の方法に従って作られた、任意の先行または後行態様に記載のエンブリオニックインゴットである。
【0164】
態様46は、方法であって、金属供給源から、鋳型に鋳込まれつつあるエンブリオニックインゴットの金属溜まりへと溶湯を送達すること;前記金属溜まりから熱を除去することによって凝固金属の外部固体殻を形成することを含み、凝固界面が前記外部固体殻と前記金属溜まりとの間に位置しており;前記溶湯を送達しながら及び前記外部固体殻を形成しながら前記エンブリオニックインゴットを前記鋳型から遠ざかる進行方向に鋳造速度で前進させること;前記鋳造速度を用いて撹拌の強度を決定することを含み、前記撹拌の強度が、前記鋳造速度において目標凝固界面プロファイルをもたらすのに適したものであり;さらに、前記決定された強度で前記溶湯溜まり内での撹拌を誘発することを含み、前記溶湯溜まり内での撹拌を誘発することが、前記鋳造速度において前記凝固界面が前記目標凝固界面プロファイルを呈することをもたらす、前記方法である。
【0165】
態様47は、撹拌を誘発することが、非接触磁気撹拌器を使用して前記金属溜まりの中の前記溶湯に撹拌力を加えることを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0166】
態様48は、溶湯を送達することが、複数のノズルを介して溶湯を質量流速で送達することを含み、撹拌を誘発することが、前記複数のノズルの中を通るときの前記質量流速を維持しながら前記複数のノズルのうちの少なくとも1つの中を通る溶湯の流速を増加させることを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0167】
態様49は、前記鋳造速度を変更すること;更新された前記鋳造速度を用いて撹拌の更新された強度を決定することをさらに含み、撹拌の前記更新された強度が、前記更新された鋳造速度において前記目標凝固プロファイルをもたらすのに適しており;さらに、前記更新された強度で前記溶湯溜まり内での撹拌を誘発することを含み、前記更新された強度で前記溶湯溜まり内での撹拌を誘発することが、前記更新された鋳造速度において前記凝固界面が前記目標凝固界面プロファイルを呈することをもたらす、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0168】
態様50は、前記溶湯が7xxx系アルミニウム合金である、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0169】
態様51は、前記エンブリオニックインゴットの温度を測定することをさらに含み、前記鋳造速度を用いて撹拌の前記強度を決定することが、前記測定された温度を用いることを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0170】
態様52は、前記目標凝固界面プロファイルが、割れのリスクを最小限に抑えるように予め決められている、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0171】
態様53は、前記エンブリオニックインゴットの断面であって前記進行方向に対して垂直であり前記内部溶融コアと交差する前記断面において、前記外部固体殻内に高強度領域を連続的に形成することをさらに含み、前記高強度領域が前記外部固体殻の外面と前記内部溶融コアとの間に位置しており、前記高強度領域を形成することが、前記断面において前記外部固体殻を再加熱して前記外部固体殻における分散質析出を誘発することを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0172】
態様54は、前記溶湯溜まり内での撹拌を誘発することが、溶湯の噴流が前記金属溜まりの底部において前記凝固界面を浸食して窪みを形成するように前記金属溜まりの中への前記溶湯の送達を制御することを含み、前記窪みが、前記金属溜まりの前記底部の直径と一致するように寸法決めされた直径を有する、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0173】
態様55は、方法であって、金属供給源から、鋳型に鋳込まれつつあるエンブリオニックインゴットの金属溜まりへと溶湯を送達すること;前記金属溜まりから熱を除去することによって凝固金属の外部固体殻を形成することを含み、凝固界面が前記外部固体殻と前記金属溜まりとの間に位置しており;前記溶湯を送達しながら及び前記外部固体殻を形成しながら前記エンブリオニックインゴットを前記鋳型から遠ざかる進行方向に鋳造速度で前進させること;ならびに前記金属溜まりの中への前記溶湯の送達を制御して、前記金属溜まりの底部において前記凝固界面の少なくとも一部を浸食するのに十分な溶湯の噴流を発生させることを含む、前記方法である。
【0174】
態様56は、前記溶湯の送達を制御することが、溶湯の前記噴流が前記凝固界面を10mm以下の厚さに浸食するように前記溶湯の送達を制御することを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0175】
態様57は、前記溶湯を送達することが、複数のノズルを介して前記溶湯を質量流速で送達することを含み、溶湯の前記噴流を発生させることが、前記複数のノズルの中を通るときの前記質量流速を維持しながら前記複数のノズルのうちの少なくとも1つの中を通る溶湯の流速を増加させることを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0176】
態様58は、非接触磁気撹拌器を使用して前記金属溜まりの中の前記溶湯に撹拌力を加えることをさらに含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0177】
態様59は、前記鋳造速度を変更することをさらに含み、前記溶湯の送達を制御することが、前記変更された鋳造速度に基づいて前記溶湯の送達を、溶湯の前記噴流が前記金属溜まりの前記底部において前記凝固界面の少なくとも前記一部を浸食し続けるように動的に調整することを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0178】
態様60は、前記溶湯が7xxx系アルミニウム合金である、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0179】
態様61は、前記エンブリオニックインゴットの温度を測定することをさらに含み、前記溶湯の送達を制御することが、前記測定された温度に基づいて前記溶湯の送達を、溶湯の前記噴流が前記金属溜まりの前記底部において前記凝固界面の少なくとも前記一部を浸食し続けるように動的に調整することを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0180】
態様62は、前記エンブリオニックインゴットの断面であって前記進行方向に対して垂直であり前記金属溜まりと交差する前記断面において、前記外部固体殻内に高強度領域を連続的に形成することをさらに含み、前記高強度領域が前記外部固体殻の外面と前記金属溜まりとの間に位置しており、前記高強度領域を形成することが、前記断面において前記外部固体殻を再加熱して前記外部固体殻における分散質析出を誘発することを含む、任意の先行または後行態様に記載の方法である。
【0181】
態様63は、任意の先行または後行態様に記載の方法に従って作られたアルミニウム金属製品である。
【0182】
態様64は、エンブリオニックインゴットであって、凝固界面から鋳造方向に底端部まで延びるアルミニウム合金の凝固殻、及び上面から前記凝固界面まで延びる前記アルミニウム合金の液体溶融コアを含み、前記液体溶融コアが、前記液体溶融コアの底部において前記凝固界面に衝突して前記凝固界面に窪みを形成する前記アルミニウム合金の噴流を含む、前記エンブリオニックインゴットである。
【0183】
態様65は、前記液体溶融コアが前記凝固界面からの再懸濁結晶粒を含む、任意の先行または後行態様に記載のエンブリオニックインゴットである。
【0184】
態様66は、前記液体溶融コアが前記凝固界面からの再懸濁水素を含む、任意の先行または後行態様に記載のエンブリオニックインゴットである。
【0185】
態様67は、前記凝固殻が、前記凝固殻の外面と、前記液体溶融コアの中心及び前記凝固殻の中心を通って前記鋳造方向に延びる中心線との間に配置された高強度領域を含み、前記高強度領域が、前記凝固殻の残部に比べてより高い濃度の分散質を有する、任意の先行または後行態様に記載のエンブリオニックインゴットである。
【0186】
態様68は、前記アルミニウム合金が7xxx系アルミニウム合金である、任意の先行または後行態様に記載のエンブリオニックインゴットである。
【0187】
本明細書中で引用される全ての特許及び刊行物は参照によりそれらの全体が援用される。例示された実施形態を含めて、実施形態についての上記説明は、例示及び説明の目的のために提供されているにすぎず、開示される正確な形態に対して網羅的または限定的であるとする意図はない。多数の改変形態、改作形態及びその使用が当業者にとって明らかであろう。