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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】ダンプトラックの制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20230911BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20230911BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230911BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230911BHJP
【FI】
G08G1/09 R
G08G1/00 X
G08G1/16 C
G05D1/02 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022563717
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2021041606
(87)【国際公開番号】W WO2022107682
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2020191084
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】日田 真史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】魚津 信一
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/058247(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/119711(WO,A1)
【文献】特開2015-194933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
G08G 1/00
G08G 1/16
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行型のダンプトラックの走行経路であって、前記ダンプトラックのベッセルに積込機械が積荷を積み込む位置として指定された積込指定位置を終点とする走行経路のデータと、前記ダンプトラックの位置データとに基づいて、前記ダンプトラックが前記走行経路上を走行して前記積込指定位置で停止するように前記ダンプトラックを制御する制御信号を出力する制御装置を備えたダンプトラックの制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記ダンプトラックが前記走行経路上を走行して前記積込指定位置で停止した場合における前記ダンプトラックの前後方向である第1停止方向を前記走行経路のデータに基づいて演算し、
前記積込機械の位置データと前記積込指定位置とに基づいて、前記積込機械が前記積込指定位置で前記ダンプトラックに積荷を積み込む際の前記積込機械の作業装置の動作平面を演算し、
前記走行経路を補正した走行経路であって前記積込指定位置を終点とする走行経路である補正後走行経路上を前記ダンプトラックが走行して前記積込指定位置で停止した場合における前記ダンプトラックの前後方向である第2停止方向と前記作業装置の動作平面との成す角がゼロに近づくように、前記作業装置の動作平面と前記第1停止方向との成す角と、前記ダンプトラックの左右に位置する第1後輪及び第2後輪の距離である後輪間距離とに基づいて、前記走行経路を補正して前記補正後走行経路を演算する
ことを特徴とするダンプトラックの制御システム。
【請求項2】
請求項のダンプトラックの制御システムにおいて、
前記積込機械の位置データは、前記積込機械の旋回中心の位置データである
ことを特徴とするダンプトラックの制御システム。
【請求項3】
請求項のダンプトラックの制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記後輪間距離と、前記第1停止方向と前記作業装置の動作平面との成す角とに基づいて、前記走行経路上を前記ダンプトラックが走行して前記積込指定位置で停止した場合における前記第1後輪の位置である第1位置と、前記補正後走行経路上を前記ダンプトラックが走行して前記積込指定位置で停止した場合における前記第1後輪の位置である第2位置との前記第1停止方向における距離である第1距離を演算し、
前記後輪間距離と、前記第1停止方向と前記作業装置の動作平面との成す角とに基づいて、前記第1位置と前記第2位置との前記第1停止方向に直行する方向における距離である第2距離を演算し、
前記走行経路上で前記積込指定位置から前記第1距離だけ離れた第1の点と、前記走行経路上で前記第1の点からさらに所定の距離だけ離れた第2の点と、前記走行経路上で前記第2の点からさらに所定の距離だけ離れた第3の点とを算出し、
前記第1の点と前記第2の点と間における前記走行経路を前記第1停止方向に直行する方向に前記第2距離だけ平行移動し、その平行移動した経路を前記第3の点及び前記積込指定位置に接続して得られる経路を前記補正後走行経路として算出する
ことを特徴とするダンプトラックの制御システム。
【請求項4】
自律走行型のダンプトラックの走行経路であって、前記ダンプトラックのベッセルに積込機械が積荷を積み込む位置として指定された積込指定位置を終点とする走行経路のデータと、前記ダンプトラックの位置データとに基づいて、前記ダンプトラックが前記走行経路上を走行して前記積込指定位置で停止するように前記ダンプトラックを制御する制御信号を出力する制御装置を備えたダンプトラックの制御システムにおいて、
前記ダンプトラックの進行方向に存在する障害物を検出する障害物センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記ダンプトラックが前記走行経路上を走行して前記積込指定位置で停止した場合における前記ダンプトラックの前後方向である第1停止方向を前記走行経路のデータに基づいて演算し、
演算した前記第1停止方向と、前記積込指定位置の位置データと、前記積込機械の位置データとに基づいて、前記走行経路を補正した走行経路であって前記積込指定位置を終点とする走行経路である補正後走行経路上を前記ダンプトラックが走行して前記積込指定位置で停止した場合における前記ダンプトラックの前後方向である第2停止方向の延長線上に前記積込機械が位置するように前記走行経路を補正して前記補正後走行経路を演算し、
前記ダンプトラックが補正前の前記走行経路を走行中に前記障害物センサで検出された障害物と前記補正後走行経路との距離に基づいて、前記ダンプトラックが前記補正後走行経路を走行したときに前記障害物センサで検出された障害物と接触するか否かを判定し、
前記ダンプトラックが前記障害物センサで検出された障害物と接触すると判定された場合には、前記ダンプトラックが前記走行経路上を走行するように前記ダンプトラックを制御する制御信号を出力する
ことを特徴とするダンプトラックの制御システム。
【請求項5】
自律走行型のダンプトラックの走行経路であって、前記ダンプトラックのベッセルに積込機械が積荷を積み込む位置として指定された積込指定位置を終点とする走行経路のデータと、前記ダンプトラックの位置データとに基づいて、前記ダンプトラックが前記走行経路上を走行して前記積込指定位置で停止するように前記ダンプトラックを制御する制御信号を出力する制御装置を備えたダンプトラックの制御システムにおいて、
前記ダンプトラックの進行方向に存在する障害物を検出する障害物センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記ダンプトラックが前記走行経路上を走行して前記積込指定位置で停止した場合における前記ダンプトラックの前後方向である第1停止方向を前記走行経路のデータに基づいて演算し、
演算した前記第1停止方向と、前記積込指定位置の位置データと、前記積込機械の位置データとに基づいて、前記走行経路を補正した走行経路であって前記積込指定位置を終点とする走行経路である補正後走行経路上を前記ダンプトラックが走行して前記積込指定位置で停止した場合における前記ダンプトラックの前後方向である第2停止方向の延長線上に前記積込機械が位置するように前記走行経路を補正して前記補正後走行経路を演算し、
前記ダンプトラックが前記補正後走行経路を走行中に前記障害物センサで検出された障害物と前記補正後走行経路との距離に基づいて、前記ダンプトラックが前記補正後走行経路を走行中に前記ダンプトラックが前記障害物センサで検出された障害物と接触するか否かを判定し、
前記ダンプトラックが前記障害物センサで検出された障害物と接触すると判定された場合には、前記ダンプトラックが前記走行経路上を走行するように前記ダンプトラックを制御する制御信号を出力する
ことを特徴とするダンプトラックの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダンプトラックの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の鉱山運用において、人件費の削減や安全性の向上を目的として、衛星経由で受信した走行経路に沿って無人で走行する自律走行型のダンプトラック(自律走行ダンプトラック)の運用要求が高まっている。鉱山における基本的な動作の一つに、オペレータが操縦するショベルが自律走行ダンプトラックに積荷を積み込む、という積込作業がある。積込作業中のショベルは切羽と呼ばれる台地の上にいることが多いため、自律走行ダンプトラックはショベルが積込作業をしやすいよう、この切羽にできるだけ近付いて停車することが望ましい。
【0003】
特許文献1に記載の自律走行ダンプトラックは、ダンプトラックに積荷を積み込むためにショベル(積込機械)のオペレータ(ショベルオペレータ)が指定した積込指定位置に向かって引かれた経路を無線通信で受信し、その経路上を走行する。そして、停車の際には積込指定位置と後方認識装置が検知する切羽の位置とを比較して、ショベルにより近い位置で停車するよう車体を制御することを提案している。この制御により、切羽にぶつかることなくできるだけ積込指定位置に近い位置、すなわちショベルオペレータが積込作業をしやすい位置でダンプトラックが停止することとなるので積込作業効率が向上し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-142113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉱山環境には様々なシチュエーションがある。そのため、ショベルオペレータが積み込みやすい方向でダンプトラックが積込指定位置に停止できる走行経路が必ず引けるとは限らない。
【0006】
特許文献1の自律走行ダンプトラックは、切羽に衝突することなく可能な限り積込指定位置に近づいて停車できる。しかし、その停止位置でのダンプトラック(荷台)の方向がショベルオペレータにとって積み込みやすい方向であるとは限らない。例えば、ダンプトラックの荷台にショベルで積荷を積み込む際には、フロント作業装置の前後方向(長手方向)を荷台の前後方向に揃えてフロント作業装置を荷台の前後方向に沿って動かしながらバケットをダンプ操作することで、荷台の一か所に積荷が集中しないように積み込むことが一般的である。この時、ショベルのフロント作業装置の前後方向に対して荷台の前後方向が交差するように自律走行ダンプトラックが停車した場合には、フロント作業装置を荷台の前後方向に沿って動かそうとすると、それと同時に旋回動作も複合しなければならず、操作難易度の上昇、ショベルオペレータの疲労、サイクルタイムの増加などを招く懸念がある。
【0007】
そこで、積込指定位置が指定された際には、フロント作業装置の前後方向に可能な限り平行に経路を引き、自律走行ダンプトラックが停車した際に車体の向き(前後方向)とフロント作業装置の前後方向との関係が平行に近づくようにすることが望ましい。しかし、積込場周辺の環境は逐次変わり得るため、自律走行ダンプトラックに地図を送信する役割の上位の地図生成システム(具体例としてはサーバ)で積込場周辺の変化を全て把握した上で各自律走行ダンプトラックの走行経路を設定することは難しい。
【0008】
したがって、上記のようにショベルのフロント作業装置の前後方向と自律走行ダンプトラックの前後方向が平行に近づくように停車しようとする場合、自律走行ダンプトラック自身で外界を認識しながら臨機応変に経路を調整する必要がある。
【0009】
以上を踏まえ、本発明は、積込指定位置に積込機械のオペレータが積込しやすい向きに停車できる自律走行型ダンプトラックの制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、自律走行型のダンプトラックの走行経路であって、前記ダンプトラックのベッセルに積込機械が積荷を積み込む位置として指定された積込指定位置を終点とする走行経路のデータと、前記ダンプトラックの位置データとに基づいて、前記ダンプトラックが前記走行経路上を走行して前記積込指定位置で停止するように前記ダンプトラックを制御する制御信号を出力する制御装置を備えたダンプトラックの制御システムにおいて、前記制御装置は、前記ダンプトラックが前記走行経路上を走行して前記積込指定位置で停止した場合における前記ダンプトラックの前後方向である第1停止方向を前記走行経路のデータに基づいて演算し、前記積込機械の位置データと前記積込指定位置とに基づいて、前記積込機械が前記積込指定位置で前記ダンプトラックに積荷を積み込む際の前記積込機械の作業装置の動作平面を演算し、前記走行経路を補正した走行経路であって前記積込指定位置を終点とする走行経路である補正後走行経路上を前記ダンプトラックが走行して前記積込指定位置で停止した場合における前記ダンプトラックの前後方向である第2停止方向と前記作業装置の動作平面との成す角がゼロに近づくように、前記作業装置の動作平面と前記第1停止方向との成す角と、前記ダンプトラックの左右に位置する第1後輪及び第2後輪の距離である後輪間距離とに基づいて、前記走行経路を補正して前記補正後走行経路を演算する
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積込機械のオペレータが積込しやすい向きに自律走行型ダンプトラックを積込指定位置に停止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る運搬車両の一例である自律走行ダンプトラックの外観図。
図2】本発明の実施形態に係るダンプトラックの制御システムの概略構成図。
図3】本発明の実施形態に係るコントローラの機能ブロック図。
図4】自律走行型ダンプトラックの走行経路の説明図。
図5】補正経路生成部31による補正後走行経路生成ロジックを説明するための幾何学的な説明図。
図6】フロント作業装置50の動作平面56が積込指定位置P0を通過するような姿勢に保持されたショベル200の上面図。
図7】LIDAR(障害物センサ)の検知範囲の説明図。
図8】補正後走行経路62を生成した後にダンプトラック100が補正前の走行経路61を走行中に障害物が検知された場合を示す図。
図9】ダンプトラック100が補正後走行経路62を走行しようとする際、または補正後走行経路62を走行中に、補正前の走行経路61の走行中には検出されなかった障害物が検知された場合を示す図。
図10】走行制御部33の機能ブロック図。
図11】本実施形態に係るコントローラ30が実行する処理のフローチャートの一例。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る運搬車両の一例である自律走行ダンプトラックの外観図(斜視図)である。図1のダンプトラック100は、車体フレーム2と、車体フレーム2上に支持軸(図示せず)により回動可能に支持されたベッセル(荷台)3と、車体フレーム2上の前方に取り付けられたキャビン4と、車体フレーム2の前方に取り付けられた複数の前輪5と、車体フレーム2の後方に取り付けられた複数の後輪6とを備えている。
【0015】
キャビン4はその内部に運転席(図示せず)を備える。当該運転席にはオペレータ(運転者)が着座してブレーキペダルやアクセルペダルなどの操作が行われることがある。すなわちダンプトラック100は有人手動運転されることがある。ベッセル3には、油圧ショベルやホイールローダなどの積込機械(建設機械)によって積荷(運搬物)である土砂が積載される。また、ダンプトラック100の運搬先(放土場)においては、ベッセルシリンダ15(図2参照)を伸ばしてベッセル3後端の支持軸を中心にベッセル3を回動しながらベッセル3の前端を上昇させて傾けることで、ベッセル3の上に積載した積荷をベッセル3の後端から排出することが可能となっている。
【0016】
前輪5(5L,5R)は、車体フレーム2の前部下側に回転可能に設けられている。前輪5Lは車体フレーム2の左側に配置され、前輪6Rは車体フレーム2の右側に配置されている。これら左,右の前輪5L,5Rは、操舵装置によって操舵角θが変化する舵取り車輪を構成している。左,右の前輪5L,5Rは、ダンプトラック100のハンドルの回転角度に応じて操舵装置によって舵取り操作される。
【0017】
後輪6(6L,6R)は、車体フレーム2の後部側に回転可能に設けられている。後輪6Lは車体フレーム2の左側に配置され、後輪6Rは車体フレーム2の右側に配置されている。これら左,右の後輪6L,6Rは、ダンプトラック100の駆動輪を構成し、左右の電動走行モータ19L,19R(図2参照)により回転駆動される。左右の後輪6L,6Rを回転駆動することにより、ダンプトラック100は走行駆動する。
【0018】
車体フレーム2にはさらに、後輪6の加速と減速を制御する加速減速装置である電動モータ19(図2参照)や、前輪5及び後輪6を上下動可能に支持するサスペンション(懸架装置)等の主要構成要素が搭載されており、前輪5及び後輪6によって車両が路面上を自由に走行可能な構成となっている。
【0019】
図2は本発明の実施形態に係るダンプトラックの制御システムの概略構成図である。自律走行ダンプトラック100は、エンジン11と、エンジン11によって駆動されるオルタネータ(発電機)12及び油圧ポンプ13と、油圧ポンプ13から各油圧アクチュエータ(例えば、ベッセルシリンダ15,ステアリングシリンダ16)に供給される作動油(圧油)の流れを制御する油圧回路14と、油圧回路14から作動油の供給を受けて伸縮することでベッセル(荷台)3を上昇又は下降させるベッセルシリンダ15と、ハンドル(図示せず)に連結されたコラムシャフト(図示せず)に操舵トルクを入力してステアリングバルブ(図示せず)を作動させる電動ステアリングモータ17と、ステアリングバルブを介して給排される作動油によって左右の前輪5L,5Rの操舵角を変化させる左右のステアリングシリンダ16と、左右の後輪6(6L,6R)にトルクを加えてダンプトラック100の加減速を制御する左右の電動走行モータ19(19L,19R)と、オルタネータ12で発電された電力をコントローラ30からの制御信号に基づいて左右の電動走行モータ19及び電動ステアリングモータ17等へ供給するインバータ18と、入力される各種情報に基づいてインバータ18等に制御信号を出力するコントローラ(制御装置)30とを備えている。
【0020】
(コントローラ30)
コントローラ(制御装置)30は、演算処理装置(例えばCPU等のプロセッサ)と、記憶装置(例えばROM,RAM等の半導体メモリ)と、入出力回路と、通信回路とを備える制御装置(例えばマイクロコンピュータ)であり、記憶装置に記憶されたプログラムを演算処理装置で実行することで当該プログラムが規定する各種処理を実行可能に構成されている。コントローラ30は、ダンプトラック100の自律走行の実行のためにインバータ18に制御信号を出力して行う電動走行モータ19L,19Rや電動ステアリングモータ17の制御(すなわち、ダンプトラック100の加減速と操舵の制御)や、ダンプトラック100が自律走行する際の走行経路の補正処理等を行っている。
【0021】
コントローラ30には、無線機83(図3参照)が接続されており、外部の端末(例えば、管制センタに設置されたサーバ(コンピュータ)300や、ショベル200(図6参照)に搭載されたコントローラ)と相互に無線通信可能になっている。無線機83はコントローラ30から出力されるデータを無線機アンテナ(図示せず)から送信し、一方、当該無線機アンテナで受信されたデータ(例えば後述する走行経路データ)をコントローラ30に入力している。
【0022】
コントローラ30には、積込機械であるショベル200の位置データである旋回中心位置データと、障害物センサ(例えば、LIDAR(図3,4等参照))21で検出されたダンプトラック100の進行方向(後方)に位置する障害物の位置データ(障害物座標)である障害物位置データと、ダンプトラック100に搭載されたGNSS受信機84で演算されるダンプトラックの位置データ(自己位置データ)と、ダンプトラック100に搭載されたIMU(図示せず)やGNSS受信機84の出力によって演算されるダンプトラック100の姿勢データ(ダンプトラックの方位データを含む)と、ダンプトラック100に搭載された操舵角センサ81によって取得される操舵角データと、ダンプトラック100に搭載された速度センサ82によって取得される速度データなどが入力されている。
【0023】
コントローラは、管制センタのサーバ300から無線で受信したダンプトラック100用の走行経路データと、ショベル200の位置データ(旋回中心位置データ)と、ダンプトラック100の進行方向に存在する障害物を検出する障害物センサ21によって検知された障害物の位置データと、GNSS受信機84で演算されるダンプトラック100の位置データと、複数のGNSSアンテナ(図示せず)を利用したGNSS受信機84の測位結果から演算されるダンプトラック100の姿勢データ(方位データ)と、速度センサ82によって検出されるダンプトラック100の走行速度と、操舵角センサ81によって検出される前輪5の操舵角などに基づいて、ダンプトラック100が走行経路上を走行するように左右の走行モータ19と、電動ステアリングモータ17との駆動トルクを演算し、その演算結果通りに各モータ17,19が動作するようインバータ18を制御する。オルタネータ12で発電された電力はインバータ18を介して各モータ17,19へ供給され、各モータ17,19は指令に基づいた動作を行う。油圧ポンプ13から送られる圧油は油圧回路14を介してベッセルシリンダ15やステアリングシリンダ16に供給される。とくに、電動ステアリングモータ17の駆動により油圧回路14内のステアリングバルブが動作し、油圧ポンプ13からステアリングシリンダ16までの油路が開くことで、前輪5の操舵を行う構成となっている。
【0024】
図3はコントローラ30で実行される演算をブロックで分類して示した機能ブロック図である。コントローラ30は、補正経路生成部31と、後方障害物判定部32と、走行制御部33として機能する。
【0025】
補正経路生成部31は、ショベル200が積込作業を行い易い位置と向き(方位)でダンプトラック100が停止できるように、走行経路データと、ショベル200の位置データ(旋回中心位置データ)と、ダンプトラック100の位置データ及び姿勢データとに基づいて、サーバ300から受信した走行経路データが規定する走行経路61(図5参照)を補正して補正後走行経路62(図5参照)を生成する。
【0026】
後方障害物判定部32は、ダンプトラック100の進行方向に存在する障害物を検出する障害物センサ21によって検出される障害物の位置データと、補正経路生成部31で生成された補正後走行経路62のデータ(補正走行経路データ)とに基づいて、ダンプトラック100が補正経路生成部31で生成された補正後走行経路62を走行した際に障害物に衝突する可能性があるかどうかを判定する。この判定で障害物と接触する可能性があると判定された場合には、後方障害物判定部32は、補正後走行経路62はダンプトラック100の走行経路として使用できない旨(補正経路使用判定)を走行制御部33に出力する。
【0027】
走行制御部33は、補正前の走行経路61又は補正後の走行経路62上をダンプトラック100が走行するように、ダンプトラック100の目標速度と目標操舵角を算出し、算出したそれらを実現するように左右の電動走行モータ19L,19Rと電動ステアリングモータ17へのトルク指令を生成し、生成したトルク指令を対応するモータ19L,19R,17に出力する。
【0028】
なお、補正前と補正後の走行経路61,62はノードと呼ばれる点列で与えられる。つまり、各走行経路を構成する複数のノードの位置データの集合が走行経路データとなる。各ノードの位置は、例えば、東を+x方向、北を+y方向とする、鉱山内のある点を原点とする直交座標系(現場座標系)上に定義できる。図4は走行経路の説明図である。この図のように、走行経路データにおける各ノードn(但し、nは自然数)には、その座標(Xn,Yn)だけでなく、そのノードn上をダンプトラック100が通るときの目標速度Vnも設定されている。コントローラ30は速度センサ82によって取得される実速度と目標速度Vnの偏差に基づいて電動走行モータ19の加速又は減速の制御を行う。
【0029】
(補正経路生成部31)
次に補正経路生成部31で行われる補正後走行経路62の生成処理について、図5を用いてさらに詳細に説明する。図5は補正経路生成部31のロジックを説明するための幾何学的な説明図である。図中の複数の大きな黒点は、サーバ300から受信した元々の走行経路61のノードをそれぞれ示す。
【0030】
図中の点P0は積込指定位置のノードを表す。積込指定位置P0とは、ショベル200がフロント作業装置51(図6参照)を使ってダンプトラック100のベッセル3に積荷を積み込む際の基準位置としてショベル200のオペレータが指定する点であり、コントローラ30にはショベル200のコントローラから直接または間接的に無線送信される。
【0031】
また、図5では、ダンプトラック100が走行経路61上を走行して積込指定位置P0で停止した場合(図の例では、積込指定位置P0上にダンプトラック100の後輪6の車軸(後車軸)の中心が位置する場合)の右後輪6Rの位置をPR、左後輪6Lの位置をPLとし、左右の後輪6L,6Rを接続する車軸を2点PR,PLを接続する実線で描いている。点PRと点PLの距離を後輪間距離と称することがあり、その距離をlとする。また、この場合(ダンプトラック100が走行経路61上を走行して積込指定位置P0で停止した場合)におけるダンプトラック100の前後方向を第1停止方向と称することがある。第1停止方向は、現場座標系におけるxy平面上で、ダンプトラック100の長手方向においてダンプトラック100の中心を通過し、積込指定位置P0を通過する直線である。第1停止方向は、ダンプトラック100の後車軸に直交する面と現場座標系におけるxy平面との交線でもある。また、第1停止方向は、走行経路61の終点のノードである積込指定位置P0と終点の1つ前のノードPzとを接続した線分を延長した直線L1でもある。第1停止方向は走行経路データ(例えば走行経路データに含まれる積込指定位置P0とノードPzの位置データ)に基づいて演算され得る。
【0032】
ここでショベル200に関連する点として旋回中心位置Psと点Ps’について図6を用いて説明する。図6はフロント作業装置50の動作平面56が積込指定位置P0を通過するような姿勢に保持されたショベル200の上面図である。図6のショベル200は、下部走行体55と、下部走行体55の上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体54と、上部旋回体54に取り付けられブーム51、アーム52及びバケット53から成るフロント作業装置50とを備えている。フロント作業装置50の動作平面56は、フロント作業装置50を構成する全てのフロント部材51,52,53が動作し得る平面であり、図6の例ではフロント作業装置50の左右方向における中心を通過している。点Psは上部旋回体54の旋回中心の位置である。点Ps’は、フロント作業装置50の動作平面56に対して旋回中心位置Psから垂線を下ろしたときの当該垂線の足である。ここでは当該垂線の長さをmとする。図5に示した旋回中心位置Ps及び点Ps’は、動作平面56が積込指定位置P0を通過するようにフロント作業装置50の姿勢を保持したときのものである。
【0033】
なお、本実施形態ではショベル200の位置を旋回中心位置Psで定義したが、上部旋回体54に取り付けられた2つのGNSSアンテナ(図示せず)からの位置が既知の点であればどこでも良い。旋回中心位置Ps及びフロント作業装置50(上部旋回体54)の方位は、ショベル200に搭載されたGNSS受信機(図示せず)で当該2つのGNSSアンテナで受信される複数の測位衛星の信号(航法信号)に基づいて演算できる。
【0034】
図5に戻り、破線で示す直線L2は、現場座標系におけるxy平面上の直線であって、動作平面56が積込指定位置P0を通過するようにショベル200のフロント作業装置50の姿勢を保持したときの点Ps’と積込指定位置P0とを接続する直線である。この直線L2が、積込指定位置P0で停止した場合におけるダンプトラック100の前後方向(「第2停止方向」と称する)と一致する場合の右後輪6Rの位置をPR’、左後輪6Lの位置をPL’とし、その時の車輪軸を2点PR’,PL’を接続する点線で描いている。
【0035】
ショベル200の旋回中心位置が図5の点Psに位置し積込指定位置P0でダンプトラック100を停止する場合に、ダンプトラック100の方向を第2停止方向(直線L2)に保持して停止させれば、フロント作業装置50の動作平面56とダンプトラック100の前後方向がxy平面上で一致するのでショベル200による積荷作業が容易になる。
【0036】
そこで、本実施形態の補正経路生成部31は、補正後走行経路62上をダンプトラック100が走行(後退)して積込指定位置P0で停止した場合のダンプトラック100の前後方向(第2停止方向)が直線L2(積込指定位置P0を通過する動作平面56)に一致するように又は第2停止方向と直線L2の成す角がゼロに近づくように、走行経路61を補正して補正後走行経路62を生成する。より具体的には、補正経路生成部31は、ダンプトラック100が補正前の走行経路61上を走行(後退)して積込指定位置P0で停止した場合におけるダンプトラック100の前後方向である第1停止方向L1をダンプトラック100が積込指定位置P0に到達する前に走行経路データに基づいて演算し、演算した第1停止方向L1と、積込指定位置P0の位置データと、ショベル200の位置データ(図5の例では旋回中心位置のデータ)Psとに基づいて、第2停止方向が直線L2(積込指定位置P0を通過する動作平面56)に一致するように又は第2停止方向と直線L2の成す角がゼロに近づくように、走行経路61を補正して補正後走行経路62を演算する。
【0037】
本実施形態の補正経路生成部31は、走行経路61を補正後走行経路62に補正するに際して、図5中に示した2つの距離であるd1(第1距離)及びd2(第2距離)を利用する。d1(第1距離)は、補正前の走行経路61上をダンプトラック100が走行して積込指定位置P0で停止した場合におけるダンプトラック左右方向における一方の後輪(第1後輪)6Rの位置であるPR(第1位置)と、補正後の走行経路62上をダンプトラック100が走行して積込指定位置P0で停止した場合における前記一方の後輪(第1後輪)6Rの位置であるPR’(第2位置)との第1停止方向(後車軸と直交する方向)における距離(偏差)である。d2(第2距離)は、第1位置PRと第2位置PR’との第1停止方向に直交する方向(後車軸の方向)における距離(偏差)である。次に補正経路生成部31によるd1(第1距離)及びd2(第2距離)の演算プロセスについて説明する。
【0038】
直線L1(第1停止方向)と直線L2(積込指定位置P0を通過する動作平面56)の成す角をθとする。積込指定位置P0の座標を(x0,y0)、ノードPzの座標を(x1,y1)とし、旋回中心位置Psの座標を(xs,ys)、旋回中心位置Psから動作平面56に下ろした垂線の足Ps’の座標を(xs’,ys’)、当該垂線の長さをmとし、直線L1がy軸と成す角をθ1、直線L2がy軸と成す角をθ2とすると、θはθ1とθ2の差であり、下記の式(1)で算出できる。
【0039】
【数1】
【0040】
d1(第1距離)及びd2(第2距離)は、上記式(1)で演算したθと後輪間距離lとを用いて、下記式(2)及び(3)で表せる。すなわち、d1及びd2は、積込指定位置P0の座標(x0,y0)、ノードP1の座標(x1,y1)、旋回中心位置Psから動作平面56に下ろした垂線の足Ps’の座標(xs’,ys’)、後輪間距離lから演算できる。
【0041】
【数2】
【0042】
【数3】
【0043】
補正経路生成部31は、補正前の走行経路61上で積込指定位置P0から距離d1(第1距離)だけ離れた点P1(第1の点)と、同走行経路61上で点P1(第1の点)からさらに所定の距離X1だけ離れた点P2(第2の点)と、同走行経路61上で点P2(第2の点)からさらに所定の距離X2だけ離れたP3(第3の点)とを算出する。そして、補正経路生成部31は、点P1(第1の点)と点P2(第2の点)の間の走行経路61を第1停止方向に直行する方向に距離d2(第2距離)だけ平行移動し、2点P1,P2を平行移動した後の補正後走行経路62上の点をP1’,P2’とする。そして、補正経路生成部31は、点P1’を積込指定位置P0と点PR’を円の中心とする円弧で接続し、点P2’を点P3と滑らかに接続して得られる経路(点P3,点P2’,点P1’,点P0を接続した線)を補正後走行経路62として算出する。
【0044】
なお、補正後走行経路62上の各ノードに規定される目標速度は、補正前の走行経路61の各ノードに対応するノードから引き継ぐことができる。補正後走行経路62で新たに生成されるノードの目標速度は、例えば、目標速度が既知のノードの値に基づいて補完することで設定できる。また、上記で用いたX1,X2は後進の位置合わせ時は車体がごく低速であることと、車体の操舵性能を鑑みて、補正後走行経路62を走行しようとする際に十分操舵が間に合う長さで設定するとよい。
【0045】
(後方障害物判定部32)
後方障害物判定部32は障害物センサ21から後方障害物座標(障害物位置データ)を受信し、その後方障害物座標と補正後走行経路62の位置データとに基づいて、ダンプトラック100が補正後走行経路62を走行したときにまたは補正後走行経路62を走行中に障害物と接触するか否かを判定し、その判定結果に応じた補正経路使用判定(TRUE又はFALSE)を出力する。補正経路使用判定はダンプトラック100に補正前の走行経路61と補正後走行経路62のいずれの走行経路を走らせるかの判断に利用される。障害物センサ21は、広範囲の障害物を検知できるセンサであることが望ましいが、本実施形態では図7のように、1/2×車体幅W+α[m]の範囲を車体前後方向(縦方向)にスキャン可能な2台のLIDARを障害物センサ21として搭載する。図中の二重線がLIDARのスキャン面を表す。
【0046】
図8は補正後走行経路62を生成した後にダンプトラック100が補正前の走行経路61を走行中に障害物センサ21で障害物が検知された場合を示す。図8のように、障害物センサ21から受信した後方障害物座標Po1から補正後走行経路62に下した垂線の長さがダンプトラック100の車体幅W以下である場合には、補正後走行経路62を使用して走行するとダンプトラック100が当該障害物に衝突する恐れがあると判断して、後方障害物判定部32は補正経路使用判定としてFALSEを出力する。すなわち、ダンプトラック100は補正前の走行経路61を走行するように制御される。一方、垂線の長さが車体幅Wより大きい場合、または障害物センサ21によって障害物が検知されなかった場合には、後方障害物判定部32は補正経路使用判定としてTRUEを出力する。
【0047】
図9は、ダンプトラック100が補正後走行経路62を走行しようとする際、または補正後走行経路62を走行中に、補正前の走行経路61の走行中には検出されなかった障害物が障害物センサ21で検知された場合を示す。この場合も図8の場合と同様に、補正後走行経路62を使用して走行するとダンプトラック100が当該障害物に衝突する恐れがあると判断して、後方障害物判定部32は補正経路使用判定としてFALSEを出力する。すなわち、ダンプトラック100は補正前の走行経路61を走行するように制御される。また、図8の場合と同様に、垂線の長さが車体幅Wより大きい場合、もしくは障害物センサ21によって障害物が検知されなかった場合には、後方障害物判定部32は補正経路使用判定としてTRUEを出力する。
【0048】
なお、ここでは垂線の長さが車体幅W以下のときに衝突の可能性があると後方障害物判定部32が判定したが、車体幅Wは一例に過ぎず、その他の閾値を利用しても良い。また、ここでは補正後走行経路62との距離(垂線の長さ)だけに着目して補正経路使用判定を行ったが、補正後走行経路62との距離が車体幅W以下の場合(補正後走行経路62を走行した場合に障害物と衝突する場合)には、当該後方障害物座標Po1と補正前の走行経路61との距離が車体幅W以下か否かを判定し、当該距離が車体幅Wより大きい場合には補正前の走行経路61を走行するようにしても良い。補正前の走行経路61を走行しても障害物と衝突する場合にはその手前で停車するようにしても良い。
【0049】
(走行制御部33)
走行制御部33は、後方障害物判定部32が出力する補正経路使用判定がTRUEの場合には補正後走行経路62を、FALSEの場合には補正前の走行経路61を使用してダンプトラック100の走行を制御する。
【0050】
図10は走行制御部33の機能ブロック図である。この図に示すように走行制御部33は、ダンプトラック100の操舵角を制御するステアリング制御部41と、ダンプトラック100の速度を制御する速度制御部42とを備える。
【0051】
(A)走行経路61の点P0までと補正後走行経路62の点P1’までを走行する場合
補正前の走行経路61の積込指定位置P0まで、または補正後走行経路62の点P1’までダンプトラック100を走行させる場合の走行制御部33による速度制御及びステアリング制御は以下のようになる。
【0052】
速度制御部42は、速度センサ82のセンサ値(速度データ)から演算されるダンプトラック100の実際の速度と、走行経路の各ノードに規定されている目標速度とに基づくフィードバック制御を行い、ダンプトラック100の実際の速度が目標速度に近づくように左右の電動走行モータ19L,19Rのトルクを演算する。ただし、ここでは、後進で位置合わせを行う事を想定しているため、目標速度は車体の最低速度を想定し、例えば5[km/h]とする。また、積込指定位置P0付近に到達した場合は目標速度を0[km/h]にしてフルブレーキを駆動して、停車したい位置で停車する。
【0053】
ステアリング制御部41は、現在位置からダンプトラック100の進行方向に向かって一定距離(前方注視距離)前方の経路上の点(前方注視点)を目標にして、現在位置と前方注視点をつなぐ直線と、現在の車体ヨー角のなす角から操舵の目標値を決定する。ここでは車速が遅いことを考慮して前方注視距離は10[m]とする。操舵の目標値が決まったら、ステアリング制御部41は、操舵目標値と現在の操舵角のフィードバック制御によって電動ステアリングモータ17のトルク指令を算出する。
【0054】
以上で算出した走行電動モータトルク指令と電動ステアリングモータトルク指令をインバータに出力して各モータを駆動することで、経路上を外れることなく走行する。
【0055】
(B)補正後走行経路62の点P1’から点P0までを走行する場合
補正後走行経路62で点P1’から積込指定位置P0まで走行する場合の速度制御は以下のようになる。
【0056】
ダンプトラック100が補正後走行経路62上の点P1’に到達した時点で左右どちらかの後輪6が前述の点PL’または点PR’に先に到達しているため、速度制御部42は、まだ到達してない方の後輪6の目標速度を5[km/h]とし、到達している方の後輪6の目標速度を0[km/h]として左右の電動走行モータ19L,19Rのトルクを演算する。これと同時に、ステアリング制御部41は、操舵角がダンプトラック100の車体の向きに並行になるように電動ステアリングモータ17のトルク指令を出力する。このときダンプトラック100は、点PL’または点PR’に到達している一方の後輪6を中心に円運動し、点PL’または点PR’にまだ到達していない他方の後輪6が点PL’または点PR’に近づく。最後に、左右両方の後輪6が点PL’と点PR’のそれぞれに到着して操舵角が車体に平行になった時点で、ステアリング制御部41は各電動走行モータ19L,19Rのトルク指令を0にして停車完了とする。
【0057】
一方で、補正経路使用判定がTRUEの状態で補正後走行経路62上を走行している場合に、当該補正経路使用判定がFALSEに切り替わった場合には、速やかに走行経路を補正前の走行経路61に戻し、上記の制御を同様に行う事とする。
【0058】
また、速度制御部42においては、補正後走行経路62かどうかにかかわらず、後方障害物座標とダンプトラック100の現在座標(位置データ)とを比較し、両者の距離が一定距離以下になった場合には速やかにフルブレーキによって停車し、後方障害物との衝突を回避する。
【0059】
(フローチャート)
ここで、上記のように構成されるコントローラ30によって実行されるダンプトラック100の制御フローの一例について説明する。図11は本実施形態に係るコントローラ30が実行する処理のフローチャートの一例である。コントローラ30は所定の周期で図11のフローを実行する。
【0060】
S101では、コントローラ30(補正経路生成部31)は無線機83を介して管制センタのサーバ300から走行経路データを受信する。
【0061】
S102では、コントローラ30(補正経路生成部31)はS101で受信した走行経路データが示す走行経路の終端のノードが積込指定位置P0か否かを判定する。終端のノードが積込指定P0であると判定された場合にはS103に進み、そうでない場合には処理を終了する。
【0062】
S103では、コントローラ30(補正経路生成部31)は、ショベル200の位置データ(旋回中心位置Psの座標(xs,ys))を例えばショベル200から受信し、その座標(xs,ys)と積込指定位置P0の座標(x0,y0)とから点Ps’の座標(xs’,ys’)を演算する。そして、コントローラ30(補正経路生成部31)は、演算した点Ps’の座標(xs’,ys’)と、積込指定位置P0の座標(x0,y0)と、ノードPzの座標(x1,y1)と、上記式(1)からθを演算する。なお、言うまでも無いが、直線L1(第1停止方向)を規定する積込指定位置P0の座標(x0,y0)とノードPzの座標(x1,y1)はS101で受信した走行経路データに含まれている。
【0063】
S104では、コントローラ30(補正経路生成部31)は、S103で演算したθが0か否かを判定する。θ≠0と判定された場合にはS105に進み、θ=0の場合には走行経路を補正する必要がないので処理を終了する。
【0064】
S105では、コントローラ30(補正経路生成部31)は、S103で演算したθと上記式(2)及び(3)を利用して距離d1,d2を演算し、上記で説明した方法を利用して走行経路61から補正後走行経路62を生成する。
【0065】
S106では、コントローラ30(後方障害物判定部32)は、障害物センサ21から後方障害物座標(障害物位置データ)を受信し、S105で生成した補正後走行経路62の位置データと後方障害物座標とに基づいてダンプトラック100に補正後走行経路62を走行させた場合に障害物に衝突するか否かを判定する。補正後走行経路62を走行させた場合に障害物に衝突すると判定された場合にはS107に進み、障害物に衝突しないと判定された場合にはS116に進む。
【0066】
ステップS111では、コントローラ30(走行制御部33)は、補正後走行経路62に沿ってダンプトラック100を走行させ、左右どちらかの後輪6が点PL’と点PR’(図5参照)のいずれかに到着するまでダンプトラック100の走行を制御する。
【0067】
ステップS112では、コントローラ30(走行制御部33)は、左右の後輪6のうち点PL’と点PR’(図5参照)のいずれかに先に到着した一方の後輪6の駆動を止め、到着していない他方の後輪6を目標速度(5[km/h])に従って駆動し、当該他方の後輪6が点PL’と点PR’のいずれかに到着した場合にはダンプトラックを停止して(S113)、処理を終了する。これによりダンプトラック100の前後方向が直線L2に沿った状態で積込停止位置P0にダンプトラック100を停止させることができ、ショベル200による積込作業が容易になる。
【0068】
一方、S106でダンプトラック100に補正後走行経路62を走行させた場合に障害物に衝突すると判定された場合には、補正後走行経路62を破棄し(S107)、ステップS108に進む。
【0069】
ステップS108では、コントローラ30(後方障害物判定部32)は、S101で受信した補正前の走行経路61の位置データと後方障害物座標とに基づいてダンプトラック100に走行経路61を走行させた場合に障害物に衝突するか否かを判定する。走行経路61を走行させた場合に障害物に衝突すると判定された場合にはS109に進み、障害物に衝突しないと判定された場合にはS110に進む。
【0070】
ステップS109では、コントローラ30(走行制御部33)は、補正前の走行経路61に沿ってダンプトラック100を走行させ、後方障害物の手前でダンプトラック100を停止させ、処理を終了する。
【0071】
ステップS110では、コントローラ30(走行制御部33)は、補正前の走行経路61に沿ってダンプトラック100を走行させ、積込指定位置P0でダンプトラック100を停止させ、処理を終了する。
【0072】
なお、図11のフローチャートでは障害物の存在によって補正後走行経路62が破棄され補正前の走行経路61が利用される場合の処理(S106,107,108,109,110)も含めたが、障害物が存在しないことが明白な場合には当該処理は省略可能である。
【0073】
(効果)
以上で説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0074】
(1)本実施形態では、ショベル200のフロント作業装置50(バケット53)を積込指定位置P0に移動した際のフロント作業装置50の動作平面56(直線L2)と、ダンプトラック100の積込指定位置P0での前後方向(第2停止方向)とが一致するように補正後走行経路62を生成し、その補正後走行経路62を走行して積込指定位置P0で停止するようにダンプトラックを制御することとした。これにより積込作業を行うショベルオペレータの作業難易度や疲労軽減、サイクルタイムの余計な増加を防止することができる。
【0075】
ただし、第2停止方向と動作平面56(直線L2)は完全に一致させる必要はなく、xy平面上で両者が成す角をゼロに近づければ良い。この観点に依れば、第2停止方向(直線L2)の延長線上にショベル200が位置さえすれば、そうでない場合と比較してショベル200による積込作業は容易になる。つまり、補正経路生成部31は、ダンプトラック100が補正前の走行経路61上を走行(後退)して積込指定位置P0で停止した場合におけるダンプトラック100の前後方向である第1停止方向L1を走行経路データに基づいて演算し、演算した第1停止方向L1と、積込指定位置P0の位置データと、ショベル200の位置データ(図5の例では旋回中心位置のデータ)Psとに基づいて、補正後走行経路62上をダンプトラック100が走行(後退)して積込指定位置P0で停止した場合におけるダンプトラック100の前後方向である第2停止方向L2の延長線上にショベル200が位置するように走行経路61を補正して補正後走行経路62を演算しても良い。
【0076】
(2)本実施形態では、補正前の走行経路61の一部の区間を平行移動した線分を基準にすることで補正後走行経路62を生成することとした。これにより最低限の経路補正で補正後走行経路62を生成することができ、補正前の走行経路61と全く異なるルートを走行する可能性が低減する。そのため、当初想定していなかった障害物に接触する可能性が抑制できる。
【0077】
(3)本実施形態では、ダンプトラック100が補正前の走行経路61を走行中に障害物が検出された場合、その障害物とダンプトラック100とが補正後走行経路62を走行したときに接触する可能性の有無を判定し、接触する可能性がある場合には補正後走行経路62を走行せずに元の走行経路61を走行することとした。これにより、補正後走行経路62を走行したために障害物に接触する可能性や当該障害物との接触を回避するためにその手前でダンプトラック100を停止させなければならないといった事態の発生を回避できる。
【0078】
(4)本実施形態では、ダンプトラック100が補正後走行経路62を走行中に障害物が検出された場合、その障害物とダンプトラック100とが補正後走行経路62を走行中に接触する可能性の有無を判定し、接触する可能性がある場合には走行経路を元の走行経路61に切り替えることとした。これにより補正後走行経路62を走行したために障害物に接触する可能性や当該障害物との接触を回避するためにその手前でダンプトラック100を停止させなければならないといった事態の発生を回避でき
(その他)
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
【0079】
上記ではダンプトラック100を制御するコントローラ30がダンプトラック100に搭載されている場合について説明したが、コントローラ30をダンプトラック100に搭載する必要はなく、例えば、管制センタ300に設置してダンプトラック100の車両制御を無線で行うように構成しても良い。
【0080】
上記では、ダンプトラック100を積込停止位置P0で停止させる際、後車軸の中点が積込停止位置P0上に位置するようにダンプトラック100を制御したが、後車軸の中点以外の他の点を基準にしてダンプトラック100を制御しても良い。
【0081】
また、上記のコントローラ30に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は、それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また、上記のコントローラ30に係る構成は、演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることでコントローラ30の構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は、例えば、半導体メモリ(フラッシュメモリ、SSD等)、磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク、光ディスク等)等に記憶することができる。
【0082】
また、上記の各実施の形態の説明では、制御線や情報線は、当該実施の形態の説明に必要であると解されるものを示したが、必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0083】
2…車体フレーム,3…ベッセル(荷台),5…前輪,6…後輪,11…エンジン,12…オルタネータ(発電機),13…油圧ポンプ,14…油圧回路,15…ベッセルシリンダ,16…ステアリングシリンダ,17…電動ステアリングモータ,18…インバータ,19…電動走行モータ,21…障害物センサ,30…コントローラ(制御装置),31…補正経路生成部,32…後方障害物判定部,33…走行制御部,41…ステアリング制御部,42…速度制御部,50…フロント作業装置,51…ブーム,52…アーム,53…バケット,54…上部旋回体,55…下部走行体,56…動作平面,61…補正前の走行経路,62…補正後走行経路,81…操舵角センサ,82…速度センサ,83…無線機,84…GNSS受信機,100…自律走行ダンプトラック,200…ショベル,300…サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11