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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】マグネット吸着式壁面家具
(51)【国際特許分類】
   A47B 55/00 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
A47B55/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018033600
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019146781
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-02-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日:平成29年8月30日~平成29年9月2日 展示会名、開催場所:第84回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋 2017、東京ビッグサイト東7.8ホール(東京都江東区有明3-10-1)
(73)【特許権者】
【識別番号】518068350
【氏名又は名称】溝口 一成
(73)【特許権者】
【識別番号】518068361
【氏名又は名称】野村 和史
(73)【特許権者】
【識別番号】000110893
【氏名又は名称】ニチレイマグネット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】溝口 一成
(72)【発明者】
【氏名】野村 和史
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-040018(JP,A)
【文献】実開昭50-097736(JP,U)
【文献】特開2003-299539(JP,A)
【文献】国際公開第2015/004694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 55/00、57/32、96/06
A47G 29/00
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気吸着可能な壁面に吸着可能な一対の方立体と、当該一対の方立体に亘って掛止可能な家具部品とを備えたマグネット吸着式壁面家具であって、
前記方立体は、
長手方向と短手方向とを備えた磁気吸着部と、
当該磁気吸着部の長手方向に沿って、短手方向の一方の端部側に立設された支柱部とからなり、
前記一対の方立体の前記支柱部には、支柱部同士の対向面に、前記支柱部の長手方向に沿う方向に同じ間隔で複数の角溝又はあり溝が水平又は斜めに形成されており、
前記家具部品は、端部の形状が前記角溝又はあり溝に合致し、前記角溝又はあり溝に着脱自在に挿入される掛合端面を両端に備えている棚板であり、前記掛合端面の前方に、支持される前記支柱部の厚さを跨ぐようにU字状に側方に張り出された張出し部が形成されていることを特徴とするマグネット吸着式壁面家具。
【請求項2】
前記家具部品は、前記一対の方立体の支柱部間に差し渡された1つ以上の平板状の棚板であることを特徴とする請求項1に記載のマグネット吸着式壁面家具。
【請求項3】
前記家具部品は、前記一対の方立体の支柱部間に差し渡された1つ以上の階段状の棚であることを特徴とする請求項1に記載のマグネット吸着式壁面家具。
【請求項4】
前記家具部品は、前記一対の方立体の支柱部間に差し渡された1つ以上の凹状又は凸状の棚板であることを特徴とする請求項1に記載のマグネット吸着式壁面家具。
【請求項5】
前記一対の方立体の少なくとも1つ方立体が、複数の方立体の支柱部の長手方向端部同士を連結された状態で壁面に吸着されたものであることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のマグネット吸着式壁面家具。
【請求項6】
前記方立体の前記壁面側又は前記家具部品の前記壁面側に前記壁面に対する滑りを抑制する樹脂部が形成されていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のマグネット吸着式壁面家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネット吸着化粧建材等を使用した建築物の壁面等に設置する家具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建物室内の壁面表面、側面等にマグネット吸着可能な化粧板が使用されている(例えば、特許文献1参照)。また、室内に設置されたパーティーション自体が、マグネット吸着可能であるものが存在する。吸着力については、ネオジム磁石のように磁束密度が高く、非常に強い吸着力を有する永久磁石が安価に手に入るようになってもいる。
【0003】
そして、当該化粧板を利用した家具として、建物室内の壁面に設置するマグネットを備えた棚等の家具が考案されている。当該マグネットを利用した棚等の家具は、その保持力を保つために吸着力が可能な限り強力となるようにマグネットを設置面に対応する家具の背板に設けることが主流となっている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
図9は従来のマグネット家具の一実施例の構成を示す説明図である。図9に示した例の従来のマグネット家具90は、用具基体の1つとしての上面が開口した物置箱体91の貼着側の一面にマグネット層92が設けられており、重量として1~50kgに対応できる磁力層を有したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-36650号公報
【文献】実用新案登録第3107754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、あまりに吸着力が強力となるようなマグネットを設置面に対応する家具の背板等に使用すると、一旦設置をした棚等の家具を取り外したり、設置位置の細かな調整を行うことが困難であった。
【0007】
これは、設置面から棚等の家具を動かす場合には、マグネットの吸着力が強力である場合には、最初に当該家具全体を設置面に対して斜めにしてから、当該家具全体を取り外したり、当該家具を設置面に対して斜めの状態を保持しつつ細かな調整を行うが、特に細かな調整を行おうとした場合、マグネットの吸着力が強力であるが故に、すぐに当該家具全体が設置面に吸着してしまい細かな設置が非常に難しかった。
【0008】
また、家具自体が大きくなると、家具自体の大きさや重量のため、手で保持しながら設置位置を調整することもより難しくなっていた。加えて、吸着力をあまりに強くすると、家具を取り外したり、設置位置の調整を行う際に無理に力を加えると、家具自体が破損してしまうこともあった。
【0009】
更に、吸着力を強力にして保持力を高めることが考えられたため、設置する際に家具が破損しないように一体に構成された家具とされ、使用者が使い勝手の良い形状の家具とする等選択できる自由度は小さかった。
【0010】
本発明は、磁性体が吸着可能な壁面から、離れ難い構造を持つことにより、結果的に大きな荷重に耐えられる家具となりながらも、着脱時の力をかける方向によって容易に磁気吸着部を離脱することが可能となり、スムーズな微調整を行うことができ、また、結果的に強力な吸着力の磁石を用いる必要がないマグネット吸着式壁面家具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された発明に係るマグネット吸着式壁面家具は、 磁気吸着可能な壁面に吸着可能な一対の方立体と、当該一対の方立体に亘って掛止可能な家具部品とを備えたマグネット吸着式壁面家具であって、
前記方立体は、
長手方向と短手方向とを備えた磁気吸着部と、
当該磁気吸着部の長手方向に沿って、短手方向の一方の端部側に立設された支柱部とからなり、
前記一対の方立体の前記支柱部には、支柱部同士の対向面に、前記支柱部の長手方向に沿う方向に同じ間隔で複数の角溝又はあり溝が水平又は斜めに形成されており、
前記家具部品は、端部の形状が前記角溝又はあり溝に合致し、前記角溝又はあり溝に着脱自在に挿入される掛合端面を両端に備えている棚板であり、前記掛合端面の前方に、支持される前記支柱部の厚さを跨ぐようにU字状に側方に張り出された張出し部が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載された発明に係るマグネット吸着式壁面家具は、請求項1に記載の前記家具部品は、前記一対の方立体の支柱部間に差し渡された1つ以上の平板状の棚板であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載された発明に係るマグネット吸着式壁面家具は、請求項1に記載の前記家具部品は、前記一対の方立体の支柱部間に差し渡された1つ以上の階段状の棚であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載された発明に係るマグネット吸着式壁面家具は、請求項1に記載の前記家具部品は、前記一対の方立体の支柱部間に差し渡された1つ以上の凹状又は凸状の棚板であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載された発明に係るマグネット吸着式壁面家具は、請求項1~4の何れか1項に記載の一対の方立体の少なくとも1つ方立体が、複数の方立体の支柱部の長手方向端部同士を連結された状態で壁面に吸着されたものであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に記載された発明に係るマグネット吸着式壁面家具は、請求項1~5の何れか1項に記載の方立体の前記壁面側又は前記家具部品の前記壁面側に前記壁面に対する滑りを抑制する樹脂部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、磁性体が吸着可能な壁面から、離れ難い構造を持つことにより、結果的に大きな荷重に耐えられる家具となりながらも、着脱時の力をかける方向によって容易に磁気吸着部を離脱することが可能となり、スムーズな微調整を行うことができ、また、結果的に強力な吸着力の磁石を用いる必要がないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例の壁面家具の方立体の構成を示す説明図である。
図2】本発明の壁面家具の一実施例の構成を示す説明図である。
図3】本発明の壁面家具の別の実施例の構成を示す説明図である。
図4】本発明の壁面家具の更に別の実施例の構成を示す説明図である。
図5図2図4の壁面家具を組み合わせた1つの配置例を示す正面図である。
図6図2図4を壁面家具を組み合わせた別の配置例を示す正面図である。
図7図2図4を壁面家具を組み合わせた更に別の配置例を示す正面図である。
図8】本発明の壁面家具の別の実施例の構成を示す説明図である。
図9】従来のマグネット家具の一実施例の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明においては、磁気吸着可能な壁面に吸着可能な一対の方立体と、当該一対の方立体に亘って掛止可能な家具部品とをマグネット吸着式壁面家具であって、方立体は、長手方向と短手方向とを備えた磁気吸着部と、当該磁気吸着部の長手方向に沿って立設された支柱部とからなり、前記家具部品は、前記一対の方立体の支柱部の各々に掛止されるものである。これにより、磁気吸着可能な壁面から、離れ難い構造を持つことにより、結果的に大きな荷重に耐えられる家具となりながらも、着脱時の力をかける方向によって容易に磁気吸着部を離脱することが可能となり、スムーズな微調整を行うことができる。
【0020】
即ち、本発明では、長手方向と短手方向とを備えた磁気吸着部と、この磁気吸着部の長手方向に沿って立設された支柱部とからなる方立体を一対として、家具部品をこれら一対の方立体に亘って係止可能に取付けられることによって1つの壁面家具を構成する。このため、長手方向との短手方向とを備えた磁気吸着部の長手方向が、鉛直方向になるように設置されることより、家具部材の重さや家具部材に乗せられた物品の荷重を上下に亘って壁面に吸着した磁気吸着部によって支持することができ、結果的に大きな荷重に耐えられることとなる。
【0021】
また、長手方向と短手方向とを備えた磁気吸着部と、磁気吸着部の長手方向に沿って立設された支柱部とを備えることにより、1つの方立体を吸着された壁面から脱離する場合には、支柱部を立設している磁気吸着部の長手方向に沿った部位又は短手方向に沿った部位を支点として、支柱部を持ち上げるように回動させることにより、磁気吸着部が支点を中心にして壁面から浮き上がり、容易に脱離させることができ、スムーズな微調整を行うことができる。
【0022】
しかも、本発明では、互いの支柱部同士が平行となるように壁面に吸着配置される一対の方立体の間に亘って家具部品が掛止可能に装着されることにより、互いの支柱部同士の動きが制限されることとなるため、前述の方立体の支柱部が立設された磁気吸着部の長手方向に沿った部位又は短手方向に沿った部位を支点として支柱部を磁気吸着部が浮き上がる方向に回動することを阻害し、磁気吸着可能な壁面から、離れ難い構造となる。このため、結果的に強力な吸着力の磁石を用いる必要がなく、加えて、吸着力を強力にする必要がないため、家具の破損も少なく、使用者が使い勝手の良い形状の家具とする等選択できる自由度も高い家具を得ることができる。
【0023】
本発明における壁面としては、方立体が壁面に対して磁気吸着されるものであればよい。例えば、壁面に磁石を備える場合には、方立体の磁気吸着部に対抗する磁極が表出した磁石又は磁性体を備えればよい。逆に、方立体の磁気吸着部に磁石を備える場合には、これに対向する磁石又は磁性体の層を有するものであればよい。壁面に対する家具の取付け位置の自由度を上げるためには、方立体の磁気吸着部に磁石を配置し、好ましくは壁面家具を吸着させる壁面の全面又は一部の面に鉄板、鉄粉等の強磁性体の層を配置する。
【0024】
本発明における方立体としては、長手方向と短手方向とを備えた磁気吸着部と、この磁気吸着部の長手方向に沿って立設された支柱部とを備えたものであればよく、その素材としては、支柱部を立設している磁気吸着部の長手方向に沿った部位又は短手方向に沿った部位を支点として、支柱部を持ち上げるように回動させた場合に、磁気吸着部がその支点を中心にして壁面から浮き上がる強度を有していれば、如何なる素材で構成されてもよい。例えば、木製、金属製、樹脂製、これらの複合材等の素材で構成される。
【0025】
本発明の磁気吸着部を構成する磁石としては、市販の永久磁石を使用することができる。例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石等の永久磁石を薄い柱状、板状又は層状の形状として、磁気吸着部の裏面に全面又は一部に配置すればよく、一部には位置する場合には、長手方向に沿って複数配置することにより、家具部材の重さや家具部材に乗せられた物品の荷重を上下に亘って壁面に吸着した磁気吸着部によって支持することができ、結果的に大きな荷重に耐えられることとなる。尚、磁石の磁気吸着部への取付けは、接着剤等の既存の種々の方法で行うことができる。特に、磁気吸着部と磁石との間にゴム等のクッション材を介して取り付けられることにより、細かな凹凸のある壁面であっても貼着状態を良好に維持することができる。
【0026】
本発明の長手方向と短手方向とを備えた磁気吸着部は、多くの場合には支柱部が壁面上で鉛直方向に配置されるため、長尺状の長手方向が上下に配され、下方向の荷重に対して良好に対抗することができる。加えて、一対の方立体の間に家具部材を差し渡すことにより、支柱部の回動を阻害されることにより、下方向の荷重に対抗する力が低減することがなく良好に維持される。また、位置の変更は家具部材を支柱部から取り外して、個々の支柱部を回動させることにより、容易にすることができる。
【0027】
本発明の支柱部としては、磁気吸着部の長手方向に沿って立設され、壁面に吸着した際に壁面に対して立設させて家具部品の両側部を支持するものであればよい。より具体的な方立体の支柱部の形状としては、デザイン次第で種々に変更可能であるが、長手方向と短手方向とを備えた磁気吸着部の長手方向に沿って立設されるものであればよく、より好ましくは、支柱部は、磁気吸着部の短手方向の一方の端部側に沿って立設されるものでよい。
【0028】
尚、長手方向と短手方向とを備えた磁気吸着部と、支柱部とについては、貼着される壁面の状態によって種々に変更されてもよい。磁気吸着部は、上下の荷重に対抗するように配置されればよく、短手方向に沿った部位のみを支点として回動させて取外してもよいため、厳密な直線とする必要はない。例えば、壁面が平面でなく緩やかに湾曲していれば、その湾曲の状況に応じて磁気吸着部の形状を壁面の状態に応じて鉛直方向に伸長させた支柱部を得るように、湾曲に応じて緩やかに曲げてもよい。更に、2つの平面状の壁同士が90°で出合う入隅部に配される場合には、磁気吸着部に対して90°に立設するものでは無く、例えば、45°又は135°に立設させることにより、平行な一対の支柱部となる。
【0029】
また、支柱部の壁面に対する立設高さについては、長手方向に沿った部位を支点として磁気吸着部が浮き上がる方向に支柱部を回動させる場合に、回動による力がてこの原理で大きくなるため、支柱部の高さをより高くすると、より小さい力で磁気吸着部による吸着を解除することができる。
【0030】
本発明における家具部品としては、壁面に吸着する磁石を備えた一対の方立体の間に着脱自在に配置されてマグネット吸着式壁面家具を構成するものであればよい。好ましくは、一対の方立体を壁面に対向して貼着することにより、これら一対の方立体を跨いだ無目(むめ)状や横桟状等の家具部品を配置することができる。この場合、具体的には家具部品としては、一対の方立体の支柱部間に差し渡された1つ以上の平板状の棚板であるもの、家具部品が、一対の方立体の支柱部間に差し渡された1つ以上の階段状の棚であるもの、家具部品が、前記一対の方立体の支柱部間に差し渡された1つ以上の凹状又は凸状の棚板であるものが挙げられる。
【0031】
少なくとも一対の方立体の壁面に対する貼着距離を支柱部間に差し渡される幅を同じにし、高さを調整すれば、これら平板状の棚板、階段状の棚、凹状又は凸状の棚板については、自由に配置させることができる。また、方立体についても、一対だけでなく、3本以上を棚が渡される距離に配置することにより、自由に平板状の棚板、階段状の棚、凹状又は凸状の棚板等の棚を配置することができる。
【0032】
平板状の棚板、階段状の棚、凹状又は凸状の棚板等の棚と支柱部との掛合は、好ましくは着脱自在に掛合する機構が選択される。例えば、方立体の支柱部にL字状の金具を配してこの金具の上面に平板状の棚板、階段状の棚、凹状又は凸状の棚板等の棚の端部を載置させる構成のものが最も簡易な掛合となる。更に、デザイン性を重視するのであれば、方立体の支柱部に支柱部の長手方向に対して水平又は斜めに角溝又はあり溝を形成し、これらの溝に合致する形状の端部を備えた平板状の棚板、階段状の棚、凹状又は凸状の棚板等の棚を備えたものを掛合させたり、方立体の支柱部と棚との掛合部分を互いの材料の厚みを欠き取って組み合わせる相欠き継ぎ等で掛合させてもよい。尚、相欠き継ぎの欠き取り厚みは、任意ではあるが強度の関係上から半分ずつが良好である場合が多い。
【0033】
本発明の方立体は、好ましくは、複数の方立体の支柱部の長手方向端部同士を連結された状態で壁面に吸着されたものとすることにより、壁面上で鉛直方向に亘った長手方向に沿って支柱部と磁気吸着部とを長くすることができる。これにより、家具自体の荷重や棚板に載せる物品を合わせた荷重に対抗することができる。この場合、磁気吸着可能な壁面が床面近くにまで配置されていれば、最下端に配置される方立体の支柱部を床面で支持するように載置させるようにしてもよく、この場合には、磁気吸着部による吸着力は、荷重による下方への対抗力を必要とせず、方立体の横方向又は前後方向への対抗力を得るものであればよくなり、弱い吸着力を発生させる磁石や磁性体を用いることができる。更に、磁気吸着部や永久磁石は、鉛直方向に長く設置する必要はなく、断続的に配置することが可能となる。
【0034】
更に、好ましくは、方立体の壁面側又は家具部品の壁面側に壁面に対する滑りを抑制する樹脂部が形成されている。この樹脂層により、磁気吸着力による吸着力に加えて、すべりを抑制させて下方向の荷重に対して良好に対抗することができるため、強すぎる吸着力を発生させる磁力でなくても十分に保持することができる。尚、方立体の磁気吸着部の磁気吸着を補助するため、これら棚板、階段状の棚、凹状又は凸状の棚板等の棚の壁面側に補助磁石を配してもよく、磁気吸着が広くなるため、強すぎる吸着力を発生させる磁力でなくても十分に保持することができる。
【実施例
【0035】
図1は本発明の一実施例の壁面家具の方立体の構成を示す説明図であり、a図は平面図、b図は左側面図、c図は正面図、d図は右側面図、e図は背面図である。図2は本発明の壁面家具の一実施例の構成を示す説明図であり、a図は平面図、b図は正面図、c図は背面図、d図は右側面図、e図はd図に示した要部の拡大図である。図3は本発明の壁面家具の別の実施例の構成を示す説明図であり、a図は平面図、b図は正面図、c図は背面図、d図は右側面図である。図4は本発明の壁面家具の更に別の実施例の構成を示す説明図であり、a図は平面図、b図は正面図、c図は背面図、d図は右側面図である。
【0036】
図2図4に示された壁面家具20、30、40は、図1に示した方立体と同じ一対の方立体11を用いたものを開示している。即ち、方立体11は長手方向に沿った部位としての1つの長手辺12bと、短手方向に沿った部位としての2つの短手辺12cとを備えた長尺状の五角形状の磁気吸着部12と、この磁気吸着部12の長手辺12bに沿って立設された支柱部とを備えている。この方立体11は左右に配される一対の状態で使用され、その間に家具部品としての平板状の棚板25が差し渡されて配置される。
【0037】
図1に示す通り、一辺が最も長い五角形状の磁気吸着部12は4mm厚のシナベニア製の板材からなり、壁面側の裏面に永久磁石板12aが接着剤で貼着されている。尚、永久磁石板12aの壁面側にはすべりを抑制する樹脂層が形成されている。壁面に対して最も長い辺を鉛直方向に貼着させた五角形状の磁気吸着部12は、その最長辺に沿って90°で立設されるように18mm厚のパイン集成材製の板材からなる支柱部13に対して図示しない木ねじと接着剤とで接合されている。本実施例では結果的に側面から見ると中央部に凹状に剔れた貫通孔13bが形成され、この貫通孔13bの上下の接合部13cで壁面側に磁気吸着部12と接合されている。貫通孔13bは取外しの際に取手として利用することができる。
【0038】
1つの方立体11を吸着された壁面から脱離させる場合には、磁気吸着部12の長手方向に沿った長手辺12b又は長手方向に沿った短手辺12cを支点として、支柱部13を支点を中心にして回動させることにより、磁気吸着部12が支点を中心にして壁面から浮き上がり、容易に脱離させることができ、スムーズな微調整を行うことができる。支柱部13の他の方立体11の対向面には3本の角溝13aが同じ間隔で形成されている。これにより、後述する階段状の棚板37のように、両端部で高さが相違する棚を掛止する場合に角溝13aの間隔で棚板の高さを合わせておくことにより、スムーズな掛止が可能となる。
【0039】
この方立体11について、磁気吸着可能な壁面に対して、長手辺12bを鉛直方向に沿わせて貼着した際に、脱落し易さを検証した。即ち、1つの方立体11について、貫通孔13bの下端にバネ秤を掛けて直下に荷重をかけた場合にズレを生じる荷重を検証したところ、4kg重の荷重をかけた際に下方にずれを生じた。このような磁気吸着の状態に対して、貫通孔13bの中央にバネ秤を掛けて壁面に対して垂直な荷重をかけて外れる荷重を検証したところ、2.5kg重の荷重をかけた際に外れた。更に、貫通孔13bの上端部にバネ秤を掛けて壁面に対して垂直な荷重をかけて下方の短手辺12cを支点として回動させて外れる荷重を検証したところ、1.7kg重の荷重をかけた際に外れた。即ち、耐荷重に対して、その半分以下の力で取り外すことができることが検証された。
【0040】
この方立体11を用いて壁面家具を作成した。1つの例としては、図2に示す通り、図1に示した方立体11を一対とし、これら一対の方立体11の間に平板状の棚板25を差し渡して壁面家具20が構成されている。具体的に、支柱部13の角溝13aに挿入される掛合端面25eが両端に形成され、これら両端の掛合端面25e間の距離は一対の方立体11の角溝13a間の距離と合致するように一対の方立体11が設置される。棚板25の掛合端面の前方は支持される支柱部13の厚さを跨ぐようにU字状に側方に張り出された張出し部25fが形成されている。
【0041】
この壁面家具20の壁面14への取付けに際しては、一対の方立体11の一方を壁面14の所望の位置に取り付ける。この際に気をつけることは、方立体11の支柱部13の鉛直方向を垂直方向とすることである。尚、壁面14は鉄板14aが壁面の全面に亘って配置され、鉄板14aの表面にはカバー材14bが配された構造である。
【0042】
一方の方立体11の位置が決定した後、作業者は他方の方立体11の角溝13aと棚板25の他方の掛合端面25eと張出し部25fとを合致させた状態で棚板25の一方の掛合端面25eと張出し部25fとを一方の方立体11の角溝13aに合わせて他方の方立体11の磁気吸着部12を壁面14に吸着させる。棚板25の掛合端面25eが一対の角溝13aに嵌合されるため、支柱部13が支点を中心に回動することが阻害されるため、しっかりと磁気吸着される。
【0043】
取外しに際しては、先ず、棚板25を一対の方立体11の角溝13aから取外し、一方の方立体11の支柱部13の貫通孔13bの上部又は下部を持ち、壁面に対して垂直に引いて、対向する位置の短手辺12cを支点として回動することにより、「てこの原理」で磁気吸着部12が壁面14から浮き上がり、容易に脱離させることができる。また、支柱部13を長手辺12bを支点として、磁気吸着部12が浮き上がる方向に回動させることにより、同じく「てこの原理」で磁気吸着部12が壁面から浮き上がり、容易に脱離させることができる。
【0044】
別の例として、図3に示す通り、階段状の棚板37は、横板37aと、立板37bと、接合部37c、補助磁石としての永久磁石板37dを備えている。支柱部13の角溝13aに挿入される掛合端面37eが両端に形成され、両端の掛合端部37eの高さ位置は、一対の方立体11の相違する角溝13aの高さ位置と同じとなっている。両端の掛合端面37e間の距離は一対の方立体11の角溝13a間の距離と合致するように一対の方立体11が設置される。棚板37の掛合端面の前方は支持される支柱部13の厚さを跨ぐようにU字状に側方に張り出された張出し部37fが形成されている。
【0045】
更に別の例として、図4に示す通り、凹状の棚板48は、横板48aと、立板48bと、接合部48c、補助磁石としての永久磁石板48dを備えている。支柱部13の角溝13aに挿入される掛合端面48eが両端に形成され、両端の掛合端部48eの高さ位置は、一対の方立体11の対抗する角溝13aの高さ位置と同じとなっている。両端の掛合端面48e間の距離は一対の方立体11の角溝13a間の距離と合致するように一対の方立体11が設置される。
【0046】
棚板48の掛合端面の前方は支持される支柱部13の厚さを跨ぐようにU字状に側方に張り出された張出し部48fが形成されている。尚、図4に示す凹状の棚板48については、180°回転させて凸状に配置してもよい。また、図3及び図4についても、取付け及び取外しは図2に示す棚板と同様に行うことにより容易に着脱可能となることは言うまでもない。
【0047】
図5図2図4の壁面家具を組み合わせた1つの配置例を示す正面図である。図6図2図4を壁面家具を組み合わせた別の配置例を示す正面図である。図7図2図4を壁面家具を組み合わせた更に別の配置例を示す正面図である。
【0048】
図5図2図3図4の壁面家具20、30、40の磁気吸着部12を接するように配置した例である。図6は壁面家具20、30、40を配置し、短い平板状の棚板26で壁面家具20と壁面家具30とを連結した例である。図7は2つの壁面家具20と壁面家具30と壁面家具40とを配置し、短い平板状の棚板26で壁面家具20と壁面家具30とを連結し、更に別の短い平板状の棚板26で壁面家具20と壁面家具40とを連結した例を示している。
【0049】
図8は本発明の壁面家具の一実施例の構成を示す説明図であり、a図は正面図、b図は右側面図、c図は背面図である。図8に示す通り、本実施例のマグネット吸着式壁面家具80は、2本の方立体81を上下に連結した連結方立体81aが一対左右対称に磁気吸着可能な壁面84に配置され、これら一対の連結方立体81aに着脱自在に家具部品としての平板状の棚板85、階段状の棚板87、凹状の棚板88が支持されている。
【0050】
連結方立体81aの下端部には、床面に接地する接地器具81bが配されており、接地器具81bのネジの出入りを調整することにより、一対の連結方立体81aの高さを調整することができる。この接地器具81bによって床面に載置させるため、磁気吸着部82による吸着力は、荷重による下方への対抗力をさほど必要とせず、方立体の横方向又は前後方向への対抗力を得るものであればよくなり、弱い吸着力を発生させる磁石や磁性体を用いることができる。このため、磁気吸着部82は方立体の支柱部83の全長に沿ったものでは無く、1つの方立体81では、壁面84上で鉛直方向に亘った長手方向に沿って2つの磁気吸着部82で吸着される。
【0051】
複数の磁気吸着部82が磁気貼着される壁面84は鉄板84aが壁面の全面に亘って配置され、鉄板84aの表面にはカバー材(図示せず)が配された構造である。五角形状の磁気吸着部82は4mm厚のシナベニア製の板材からなり、壁面84側の裏面に永久磁石板82aが接着剤で貼着されている。尚、永久磁石板12aの壁面側にはすべりを抑制する樹脂層が形成されている。これらの磁気吸着部82としては、同じ永久磁石を用いるのであれば、磁気吸着部82の面積に応じて吸着力が大きくなるため、連結方立体81aの最も高い位置の磁気吸着部82を上下方向に伸ばして大きな面積としている。尚、永久磁石板82aの壁面側にはすべりを抑制する樹脂層が形成されている。
【0052】
壁面84に対して上下方向に立設される40mm厚のパイン集成材製の板材からなる支柱部83は、壁面側に複数の磁気吸着部82と図示しない木ねじと接着剤とで横断面L字状に接合形成されている。これにより、支柱部83の長手方向と同じ方向の五角形状の磁気吸着部82の辺を支点とするか、又は、最上部及び最下部の五角形状の磁気吸着部82の支柱部83の長手方向に直交する辺とを支点とすることにより、これら支点を中心にして支柱部83を持ち上げることにより、磁気吸着部82が支点を中心にして壁面から浮き上がり、容易に脱離させることができ、スムーズな微調整を行うことができる。
【0053】
一対の支柱部83同士の対向面には複数の角溝83aが同じ高さ位置になるように配置されており、これら角溝83aに家具部品としての平板状の棚板85、階段状の棚板87、凹状の棚板88の両端部が支持される。また、角溝83aが形成された支柱部83の反対の外側面にも幾つかの角溝83bが配設されており、これらの角溝83bは、一対の支柱部83の間に配設された棚板間の上下に亘って扉を装着したり、支柱部83の外側に他の棚板を装着したりする場合等に用いられる。
【0054】
具体的な図8の平板状の棚板85は前述の図2のa図の棚板25と同様の形状である。18mm厚のパイン集成材製の板材からなる平板状の棚板85には、支柱部83の角溝83aに挿入される掛合端面85eが両端に形成され、これら両端の掛合端面85e間の距離は一対の連結方立体81aの角溝83a間の距離と合致するように一対の連結方立体81aが設置される。棚板85の掛合端面の前方は支持される支柱部83の厚さを跨ぐようにU字状に側方に張り出された張出し部85fが形成されている。
【0055】
また、図8の階段状の棚板87は前述の図3のa図の棚板37と同様の形状である。棚板87は18mm厚のパイン集成材製の板材からなる階段状に配された3本の横板87aと、同じく18mm厚のパイン集成材製の板材からなる2本の立板87bと、横板と立板とが接合された部分の壁面84側に配された4mm厚のシナベニア製の板材からなる接合部87cと、接合部87cの壁面84側の裏面に接着剤で貼着された補助磁石としての永久磁石板87dとからなる。
【0056】
支柱部83の角溝83aに挿入される掛合端面87eが両端に形成され、両端の掛合端部87eの高さ位置は、一対の連結方立体81aの相違する角溝83aの高さ位置と同じとなっている。両端の掛合端面87e間の距離は一対の連結方立体81aの角溝83a間の距離と合致するように一対の連結方立体81aが設置される。棚板87の掛合端面の前方は支持される支柱部83の厚さを跨ぐようにU字状に側方に張り出された張出し部87fが形成されている。
【0057】
更に、図8の凹状の棚板88は前述の図4のa図の棚板48と同様の形状である。棚板88は18mm厚のパイン集成材製の板材からなる3本の横板88aと、同じく18mm厚のパイン集成材製の板材からなる2本の立板88bと、横板と立板とが凹状に接合された部分の壁面84側に配された4mm厚のシナベニア製の板材からなる接合部88cと、接合部88cの壁面84側の裏面に接着剤で貼着された補助磁石としての永久磁石板88dとからなる。
【0058】
支柱部83の角溝83aに挿入される掛合端面88eが両端に形成され、両端の掛合端部88eの高さ位置は、一対の連結方立体81aの対抗する角溝83aの高さ位置と同じとなっている。両端の掛合端面88e間の距離は一対の連結方立体81aの角溝83a間の距離と合致するように一対の連結方立体81aが設置される。棚板88の掛合端面の前方は支持される支柱部83の厚さを跨ぐようにU字状に側方に張り出された張出し部88fが形成されている。尚、図8に示す凹状の棚板88については、180°回転させて凸状に配置してもよい。
【符号の説明】
【0059】
20、30、40、80…マグネット吸着式壁面家具、
11 、81 …方立体、
81a…連結方立体、
81b…接地器具、
12 、82 …磁気吸着部、
12a、82a…永久磁石板、
12b …長手辺、
12c …短手辺、
13 、83 …支柱部、
13a、83a…角溝、
13b …貫通孔、
83b…角溝、
13c …接合部、
14 、84 …壁面、
14a,84a…鉄板、
14b …カバー材、
25 、85 …平板状の棚板、
25e、85e…掛合端面、
25f、85f…張出し部、
26 …短い平板状の棚板、
37 、87 …階段状の棚板、
37a、87a…横板、
37b、87b…立板、
37c、87c…接合部、
37d、87d…永久磁石板(補助磁石)、
37e、87e…掛合端面、
37f、87f…張出し部、
48 、88 …凹状の棚板(凸状の棚板)、
48a、88a…横板、
48b、88b…立板、
48c、88c…接合部、
48d、88d…永久磁石板(補助磁石)、
48e、88e…掛合端面、
48f、88f…張出し部、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9