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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】リブレットを製造する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/359 20140101AFI20230912BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20230912BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20230912BHJP
   B64C 1/12 20060101ALI20230912BHJP
   B64F 5/10 20170101ALI20230912BHJP
【FI】
B23K26/359
B23K26/364
B05D3/06 Z
B64C1/12
B64F5/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019559079
(86)(22)【出願日】2018-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018060583
(87)【国際公開番号】W WO2018197555
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】102017206968.6
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521227779
【氏名又は名称】4ジェット マイクロテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェッター、ハインツ レオンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ディック、トビアス
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-139900(JP,A)
【文献】特開2017-062348(JP,A)
【文献】国際公開第2010/047322(WO,A1)
【文献】特開平05-077068(JP,A)
【文献】特開平07-148583(JP,A)
【文献】特開2003-181658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0243586(US,A1)
【文献】特開2017-068444(JP,A)
【文献】特開2003-334683(JP,A)
【文献】特表2018-531785(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0062004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B05D 3/06
B64C 1/12
B64F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リブレットを製造する方法であって、
前記リブレットが、レーザー干渉構造化によって、表面内へ導入され、前記レーザー干渉構造化に用いられるレーザーはCOレーザーであり、
前記表面が、塗料系から形成され、
前記レーザーが、連続波でまたは0.1マイクロ秒より大きいパルス時間でパルス化して稼働し、
前記塗料系が前記レーザーによって部分的に除去されて前記リブレットを製造する、方法。
【請求項2】
前記塗料系は、ポリウレタン成分、エポキシ成分およびアクリル成分のうち1または複数を基礎とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザーが、連続的に励起されること、または
前記レーザーが、連続波でまたは1ミリ秒より小さいパルス時間でパルス化して稼働すること
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法はさらに、2つの干渉する部分ビームを用いて前記表面上に、周期的間隔Lで強度最大を有する干渉構造を作製する段階
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記干渉構造を作製する段階は、
第1の干渉構造を第2の干渉構造に対してL/2だけ変位する段階
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
干渉構造のラテラル方向の運動と同時のレーザーアブレーションにより、塗料表面上に平行の溝を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記表面が外側のトップコート層および、前記トップコート層の下に配置されたベースコート層によって形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザーが、連続波でまたは0.1マイクロ秒より大きいパルス時間でパルス化して稼働し、
前記トップコート層が前記レーザーによって部分的に除去されて前記リブレットを製造する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ベースコート層は、前記COレーザーのレーザー放射に対して前記トップコート層より低い吸収を示す、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記ベースコート層は干渉する前記レーザー放射を用いて部分的に露出される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記リブレットの急峻な側面を作製するために、当初のレーザービームを少なくとも3つまたは4つの部分ビームに分割し、前記部分ビームをまた、塗料表面上に干渉構造を作製するためにオーバーラップさせる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記部分ビームは同一の部分ビームである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リブレットの製造の間に、2つの干渉する部分ビームの間の統合角θを適切に変化させる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記統合角θの適切な変更により、前記リブレットの溝間隔aを適切に変更することができる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記統合角θの適切な変更のために、少なくとも1つの傾斜可能な偏向ミラーを、部分ビームの偏向のために傾斜させる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記傾斜可能な偏向ミラーが、部分ビームを、前記表面に向けるか、または前記表面に偏向するための光学偏向体に向ける、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
部分ビームを偏向するための前記光学偏向体は、
前記傾斜可能な偏向ミラーの傾斜角変化分δに依存して前記統合角θを適切に変化させ、
特に前記傾斜角変化分δとは無関係の加工間隔を保つために、
二次元的に湾曲した偏向面を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
部分ビームを偏向するための前記光学偏向体は、
前記部分ビームを前記表面上に集束させるために、および/または
前記傾斜可能な偏向ミラーの傾斜角変化分δに依存して前記統合角θを適切に変化させ、
特に前記傾斜角変化分δとは無関係の加工間隔を保つために、
三次元的に湾曲した偏向面を有する、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
COレーザーによるレーザー干渉構造化によって、部材の表面内へリブレットを導入する装置であり、
前記表面が、塗料系から形成され、
前記COレーザーが、連続波でまたは0.1マイクロ秒より大きいパルス時間でパルス化して稼働し、
前記塗料系が前記レーザーによって部分的に除去されることで、前記リブレットを製造する装置。
【請求項20】
レーザーと、ビーム分割装置および集束装置を含む加工ヘッドと、運動ユニットとを備え、前記運動ユニットは、前記加工ヘッドが加工されるべき表面上を運動することができるように設置されていて、前記加工ヘッドは、2つの干渉する部分ビームを用いて、特に塗装されかつ硬化された表面上に、周期的間隔Lで強度最大Imaxを有する干渉構造を作製することができるように設置されていて、前記装置は、前記リブレットの製造の間に、前記2つの干渉する部分ビームの間の統合角θを適切に変更することができるように設置されている、リブレットを導入する装置であって、前記装置は、前記リブレットを前記表面に導入する間に、前記2つの干渉する部分ビームの間の統合角θを適切に変化させることができるように設置されている、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リブレットを製造する方法および装置、ならびに相応して製造可能なリブレットを備えた部材に関する。
【0002】
約30年来、乱流中での表面における摩擦をリブレットにより低減できることは公知である。リブレット(この概念は、「小さなリブ」または「小リブ」の英語の単語に依拠し、かつ流体力学の分野での一般的な専門用語として確立されている)の発見は、とりわけ、高速で泳ぐサメの鱗の表面幾何学形状の研究に起因し、このサメは頻繁に、極めて鋭利なリブ先端を有する極めて微細な溝もしくはリブを有する。平滑な表面と比べて、リブレットにより流動抵抗を頻繁に10%まで低減することができ、この場合、基本的に、リブレットのサイズが媒体および流動速度に適合されていることが当てはまり、かつさらにリブレットのリブは鋭利であればそれだけ、流動抵抗の可能な低減が大きくなることが当てはまる。
【0003】
長距離航空機は、高い高度をほぼ一定の相対速度で飛行し、風力原動機は、狭い回転数範囲内で稼働し、かつ商船は、一定の巡航速度で長距離を運航する。したがって、これらの場合には、適合するリブレットにより有利な作用を期待することができる。意外にも、流体力学計算および実験室研究は、極めて多様な使用様式にもかかわらず、これらの全ての場合でリブレットの適切なサイズが40~200μmの範囲内にあることを示した。しかしながら、最適な値は、基本的には特徴的な使用条件に適合させなければならない。より大きな逸脱は、有利な効果の低減を引き起こすことがあり、それどころか場合によっては逆効果となることもある。
【0004】
リブレットのこの流体力学的利点を、航空機、船舶および風力原動機のローターブレードのような、稼働時に流体に曝されるために設置されている別の部材の場合でも利用するために、微細なリブレット構造を、大面積でかつ経済的に許容可能な加工時間内で適用することができることが望ましい。
【0005】
現在公知の方法には、エンボス加工されたリブレット構造を有する接着シートを航空機表面に貼り付けることが挙げられる。しかしながら、この方法の場合には、リブレットのリブは、限られた先端を提供できるにすぎないので、リブレットによる流動抵抗の低減の潜在能力は、しばしば比較的わずかな部分でしか発揮できていない。さらに、エンボス加工された接着シートは、通常の塗装と比較して相対的に厚くかつ重いため、接着された部材の重量が増加することになる。さらに、この接着シートは、補修処理または再塗装のために手間を掛けて手動で除去しなければならない。
【0006】
航空機表面にリブレットを製造する別の公知の方法は、航空機表面用の特別な塗装系と、まだ硬化されていない塗料内にリブレット構造をエンボス加工するための循環するシリコーンベルトと、引き続いてのこのようにエンボス加工された表面のUV光硬化とを基本としている。リブレット構造は、シリコーンシート内にネガ型像としてエンボス加工されている。シリコーンシートを航空機表面に密着し、塗布したてのまだ軟質の塗料層内に構造を転写する。さらに、こうして作製されたリブレットを備えた航空機表面は、完全に架橋しかつ航空運転用に必要な靭性および耐摩耗性を達成するために、常に室温で数時間さらに硬化しなければならない。しかしながら、この方法は、極めて手間が掛かり、かつ欠陥が生じやすい、それというのも、シリコーンシートをしばしば狭く定義された接触圧力で、好ましくは厳密に平行の軌道で、部分的に自由に成形された航空機表面上を案内しなければならないためである。毎分約1平方メートルの加工速度は、千平方メートルを超えるサイズの航空機表面を考えると、比較的遅く、かつ多くの場合不経済である。
【0007】
実験室規模では、レーザーアブレーションを用いた別の方法で、リブレット構造が、ターボ圧縮機用のタービンブレード内に導入された。この場合、集束されたレーザービームが、スキャナーを用いてリブレット溝に沿って案内された。達成された加工速度は、この例の場合に30mm/minであった。この場合、特に靭性の鋼が加工されたことを考慮したとしても、この方法を航空機表面に経済的に転用することはほとんど考えられない。集束されたレーザービームの走査により航空機の塗料表面にリブレットを作製すべき場合、それによって達成可能な加工速度は限定され、かつ特定の用途の場合には経済的な利用として遅すぎることがある。等間隔の100μm幅の溝を有する1mのサイズのリブレット面は、10m=10kmの溝長さを有する。この溝長さを作製するために単一のレーザービームを利用する場合、それにより例えば1m/minの面積速度を実現するためには、このために平均走査速度として167m/sが必要であり、この実現のためには多大な技術的手間が伴うことになる。というのも今日通常の走査速度は、原則として、毎秒数メートルの範囲内であるためである。上述の面積効率は、理論的に、複数の平行する部分ビームにより、例えば十本または二十本の部分ビームを用いて達成することができる。しかしながら、起源レーザービームを相応して正確に分割することおよび各々の個々の部分ビームを個別に集束することは、多大な技術的手間と、その他に相互に妨げになる多数の構成要素に基づき高い調整費用を有する複雑な装置を伴う可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、装置および部材とともにさらに発展した方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、主請求項によるリブレットの製造方法、ならびに独立請求項による装置および部材が用いられる。有利な実施形態は、従属請求項から明らかになる。
【0010】
この課題を解決するために、レーザー干渉構造化またはDLIP(直接レーザー干渉パターニング(Direct Laser Interference Patterning))を用いて表面内に、特にすでに塗装されかつ硬化された表面内にリブレットを導入するリブレットの製造方法が用いられる。
【0011】
リブレットは、周知のように、極めて鋭利なリブ先端を有する微細なリブを備えた表面幾何学形状を指し、リブレット構造とも言われる。
【0012】
リブレット(「小さなリブ」または「小リブ」とも意訳される)は、原則として縦方向に延びている。特に、部材に沿った縦方向は、予定された流動方向に対して平行に配向されている。
【0013】
隣接する2つのリブから、この隣接する両方のリブの間の溝が決まる。この溝は、基本的に、隣接する両方のリブの対峙する側面の間隔に相当する溝幅を有する。基本的に、溝の内法の幅、つまり例えば、第一のリブの右側の側面から、第一のリブの右側に配置された第二のリブの左側の側面までの間隔を意味する。1つのリブは、両側にそれぞれ1つの溝を有する。
【0014】
これらの溝は、基本的に、リブ高さに相当する溝深さを有する。基本的に、隣接する2つのリブは、互いに縦方向に平行してまたはほぼ平行して、つまり特に<5°の角度偏差で配向している。
【0015】
隣接する2つの溝は、原則として、隣接する2つの溝の溝中心から溝中心までで測定される溝間隔を有する。基本的に、リブレットは、近似的に、<30%の偏差で、溝間隔の半分に相当する溝深さを有する。
【0016】
リブレットは、特に、上述の用途にとってそれぞれ、40μm~200μmの一般的な溝間隔を有する。長距離航空機(つまり一般的には10,000mの高度で約850km/hの相対速度)の場合、例えば溝の間隔は、有利に100μmであるのが好ましい。
【0017】
この実施態様または有利な実施形態の場合に、溝間隔は約100μmである。特に、この場合、これらの溝は、理想的には50μmの深さで、かつ長方形の横断面を有するのが好ましい。溝の間のランドは、できる限り狭いのが好ましい。この空気力学的要件と機械的安定性との間に頻繁に生じる妥協として、ランドの横断面形状について垂直に立つ三角形が生じ、この三角形の上端部は、特に30°のフランク角を有する。このようなリブレットは、上述のように、長距離航空機の場合、つまり約10,000mの高度で約850km/hの一般的に予定される速度で、特に流動抵抗を低減するために有効に使用することができる。
【0018】
レーザー干渉構造化によるリブレットの製造は、特に高い処理加工速度でリブレット構造の大面積での適用を可能にし、かつ航空機、船舶および風力原動機に、特に経済的に、簡単でかつフレキシブルに適用可能なリブレットを製造することを可能にする。例えば研削のような付加的な機械加工プロセスを削除する。
【0019】
DLIPは、直接レーザー干渉パターニング(Direct Laser Interference Patterning)(「Direktes Laser Interferenz Musterung」と逐語訳される)の略語であり、かつ表面の微細構造化のために意図的に干渉が使用される公知のマルチビームレーザー干渉技術である。テストは、二本ビームのレーザー干渉構造化が、リブレット構造の作製のために特に適していることを示した。DLIPについて、基本的に、十分にコヒーレントなレーザー光を使用するので、このレーザー光を、互いに干渉することができる2つの理想的な部分ビームに分割することができる。この場合、これらの部分ビームを、塗料表面上で定義された角度でオーバーラップさせる。部分ビームの波構造は同一であるため、オーバーラップ領域では、構成的な干渉と破壊的な干渉と有する、つまり最大の光強度と最小の光強度とを有する規則的な区域が形成される。したがって、塗料表面上に、強度に依存するレーザーアブレーションにより平行な溝が形成され、この溝の間隔aは、レーザー光の波長λと、両方の部分ビームの間の合流角2αとに依存し、ここで、Lは、溝間隔aに対応する隣接する2つの強度最大の間隔であり、L=λ/2sinαである(図3図6参照)。
【0020】
所与の波長λに対して、角度αの変更により、間隔Lを、ひいては溝間隔aを有するリブレット構造を、有利に多様な使用分野に適合させることができる。さらに、構造の細かさは、レーザービームに相応して強い集束によって達成されるのではなく、干渉自体によって生成されることが有利である。それにより、構造の細かさは、加工ヘッドまたは光学ヘッドの作業間隔とは十分に無関係となる。
【0021】
有利には、ビームの集束のために円柱レンズを利用することにより、部分ビームのオーバーラップ領域は、細長い長方形(例えば100:1)として構成される。これにより、リブレット構造を備えた、比較的幅広のストリップが得られ、このストリップは、毎秒メートルの範囲の速度で横方向に走行する。これにより、特に高いプロセス速度で、リブレットの大面積の適用が可能となる。この場合、この方法は、特に簡単でかつフレキシブルに適用可能で、かつそれにより航空機、船舶および風力原動機でのリブレットの経済的使用を可能にする。
【0022】
レーザー光が塗料により十分に強く吸収される場合が、特に効果的なレーザー構造化にとって有利である。つまり、レーザーの波長は、塗料のスペクトル吸収帯とオーバーラップする。レーザーアブレーションの深さは、一実施形態の場合に、ビームの強度および作用時間によって調節することができる。
【0023】
作用時間は、一実施態様の場合に、レーザーアブレーションが、熱伝導によるエネルギーの散逸よりも早く行われるように選択することができる。それにより、微細構造が、「ぼやける」ことを避けることができる。熱伝導について関連する材料依存性の熱拡散長さが<10μmである場合、例えばa=L=100μmを有するリブレット構造は、原則として実質的に損なわれない。一般的な塗料系の場合、このことを、一実施形態の場合にレーザービームの作用時間が<1msecである場合に有利に保証することができる。(金属の場合、この値は、例えば<1μsecである。)
【0024】
航空機および風力原動機の場合のトップコードも、船舶の場合に水中塗料も、主にポリウレタン系(PUR)である。しかしながら、エポキシ系およびアクリル系も使用される。これら全ての系または一般的塗料系について、吸収スペクトルは、程度に差はあるが、COレーザーの放射範囲と顕著なオーバーラップを示す。このレーザーは、9μm~11μmの範囲内の選択波長で作動することができる。したがって、40~200μmのリブレット構造は、一実施形態の場合に、合流角2αを有する上述の式に従って、25°~3°の範囲内で作製することができる。したがって、COレーザーは、上述の塗料系を構造化するために特に適切なツールである。一実施態様の場合に、レーザービームの作用時間は、<1msecである。このプロセスは、有利に、この時間内で塗料により吸収されるエネルギーが、所望の深さで材料除去を引き起こすために十分であるように設定されている。
【0025】
COレーザーの場合に、パルス時間<1msecは、パルス化された電気的励起により達成することができる。あるいは、連続的に放射するレーザーの場合、作用時間が<1msecとなるように、加工フィールドの大きさと走査速度とを互いに調節することができる。
【0026】
塗料の所定の厚み内で吸収されるエネルギーは、基本的に、波長固有の吸収係数およびレーザー光の強度に依存する。COレーザーは、一般的に、10.6μmと9.6μmとで2つの特に強い輝線を有する。PUR系において、吸収係数は、9.6μmの場合に、10.6μmの場合よりも五倍大きい。つまり、定義された層厚内で同じエネルギーを蓄積するために、λ=10.6μmの場合、9.6μmの場合よりも五倍高いレーザー強度を使用しなければならない。9.6μmレーザーラインによりPUR表面上にリブレット構造を生成するために、エネルギー密度は好ましくは約1J/cmであり、この場合、この値は、所望のアブレーション深さに応じて適合させることができる。例えば、1J/cmで、1kWのレーザーおよび1msの作用時間を前提とする場合、このことから、部分ビームのオーバーラップ領域について、1cmの面積が生じる。この面積が細長い長方形(100:1)として構成される場合、干渉像として10cmの幅で1mmの高さのストリップが生じ、このストリップは、1m/sの速度で表面上を案内される。これは、0.6m/minの面積効率または加工速度に相当する。
【0027】
有利に、表面処理についての全体の構造は、コンパクトで一体式のブロックとして、塗料表面に沿って案内される。この場合、この方法を非接触でかつ無摩耗で作業することが有利である。特に部分ビームが塗料表面上に十分に強くオーバーラップする限り作業間隔は重要ではない。したがって、自由成形された表面でさえも、極端に複雑なCP制御なしで加工することができる。
【0028】
COレーザーのミリ秒パルスによるか、または連続波COレーザーにより、塗料の微細構造化が可能なことは、この専門分野にとって意外なことである。そこでは、ポリマーを基礎とする(例えばPUR)塗料の場合、比較的緩慢なエネルギー導入で、行われた観察とは反対に、カーボンブラック生成等の所望でない分解効果および溶融効果が生じるとの見解が支配的であった。明らかに、微細構造化の場合にいつもレーザーアブレーションは誤って考えられている。これは、ナノ秒パルスを用いて局所的に急激な温度上昇を生じるプロセスであり、カーボンブラック生成なしで材料の剥ぎ取りが生じる。
【0029】
マイクロメートル範囲の構造を達成するために、塗装された表面のレーザーによる構造化またはテクスチャー付与について、レーザービームの作用時間は、特に<1msであり、それによりこの構造化は、熱拡散の結果として「ぼやける」ことはない。走査速度および加工領域の幾何学形状を適合するように選択するか、またはレーザーの電気的励起を時間制御することにより、相応する作用時間を達成することができる。
【0030】
一実施形態の場合に、リブレットは、稼働時に流動に曝されるために適したすでに塗装された表面内に、後からレーザー干渉構造化を用いて導入される。すでに塗装された表面とは、塗料がすでに硬化されていてかつ表面は基本的に後の稼働のために準備ができていることを意味する。リブレットの後からの導入により、単に流動抵抗が低減されるだけである。
【0031】
一実施形態の場合、レーザーは、COレーザーである。この場合、慣用の塗料、特にPURを基礎とする塗料の場合に、特に高い吸収率を達成することができる。
【0032】
一実施形態の場合に、レーザーは、連続波COレーザーである。相応する集束特性およびコヒーレンス特性を有するこのようなレーザーは、工業的使用において、材料加工用に数キロワットまでの出力範囲である。
【0033】
一実施形態では、レーザー、特にCOレーザーは、9.3μm、9.6μmまたは10.6μmの波長を有するレーザービームの放射用に設置されていて、かつリブレットは、ポリウレタンまたはアクリルまたはエポキシを基礎とする塗料内に、好ましくは透明塗料内に導入される。この場合、特にきれいな溝およびリブを有する特に高い品質を有するリブレットを製造することができる。特に、001~020帯で波長λ=9.6μmで作動するCOレーザーを使用する際に、リブレットを、ポリウレタン系の形の表面塗料内に、特に速いプロセス速度でかつ高い品質で導入することができる。
【0034】
干渉するレーザービームは、好ましくは2つのビーム束を含み、この2つのビーム束は、この両方のビーム束が相互に干渉するように表面に向けられる。両方のビーム束、つまりは干渉するレーザービームは、特に出力レーザービームのビーム分割により得ることができるので、干渉するレーザービームは、表面上に、相応して分配されたエネルギーを導入する。この干渉するレーザービームは、表面上に正弦波の干渉構造を、互いに間隔Lで周期的に互いに並んで配置された強度最大で作製する。両方のビーム束が縦方向に同期して運動する場合、互いに並んで配置された多数の溝が作製される。
【0035】
強度に合った材料除去を前提とする場合、正弦波強度プロフィールは、塗料表面上に同様に正弦波高さプロフィールを作製する。
【0036】
理想的には、一実施形態の場合に、リブレットの溝では、幅対深さの比率が2対1であるのが好ましく、ランドは特にできる限り狭いのが好ましい。2/1の幅対深さを有する正弦波高さプロフィールでは、山と谷が極端に浅い。つまり、原則として明らかなランドが存在しない。したがって、このようなリブレットは、限定的に効果的であるにすぎない。鋭利な先端を有する正弦プロフィールを望む場合には、特に波の振幅を、その周期に対して大きく調節する必要がある。しかしながら、例えば溝幅、つまりは周期が100μmで固定する場合、これにより、溝深さについては、理論値>500μmを生じ、このことはまたリブレットの機能性と矛盾する。
【0037】
慣用の航空機塗装は、特に100~150μmの厚みであり、つまり上述の理論的アブレーション深さよりも明らかに薄い。この塗装は、本質的にはプライマーと、有色顔料を含むベースコートと、クリアトップコートとからなる多層系である。多様な層の透過特性は、レーザー光に対して極めて多様である。例えば、波長λ=9.6μmを有するIR線は、PURクリアコート層内では、相応するPUR吸収帯に基づきかなりの部分まで吸収され、そこで相応する強度で比較的鋭利なランドを有する溝が作製される。その下にあるエポキシベースコート内では、9.6μmのビームの吸収は遙かに小さいので、初めからわずかな材料しか除去されない。さらに、ベースコートは、微細に懸濁された二酸化チタン顔料を含み、この顔料がその強い散乱特性に基づき光の強度の均一化、つまりは干渉構造のぼやけを引き起こす。したがって、ベースコート層内での本質的な材料除去は行われない。したがって、この層はバリアを形成し、それにより溝内へのさらに深いアブレーションを限定させる。一実施形態の場合に、リブレット溝の深さは、したがって、クリアコート層の厚みにより決定される。
【0038】
一実施形態の場合に、リブレットは、レーザービームおよび付加的なレーザービームにより製造され、この場合、レーザービームと付加的なレーザービームとは、リブレットの製造のために、送り方向に対して横方向にまたはリブレットの縦方向に対して横方向にずれ幅ΔLだけ位置的にずらして表面に入射される。リブレットの縦方向とは、リブレットのリブおよび/または溝の縦方向を意味する。送り方向とは、表面に対して相対的にレーザービームおよび/または付加的なレーザービームの相対運動の方向を意味する。特に急峻な側面、つまり壁部、および特に細いリブ、つまりランドを有するリブレットは、このように製造することができる。
【0039】
一実施形態の場合に、付加的なレーザービームは、付加的なレーザーから放射されるか、または付加的なレーザービームは、レーザービームの分割によるかもしくはレーザービームの分離または分岐により作製される。別の実施形態の場合に、付加的なレーザービームは、レーザービームに相当するが、例えば同じ表面領域上で後の加工軌道において時間的にずらされている。これらの3つの全ての実施形態の場合、1つまたはそれ以上のレーザーを用いて、レーザービーム、付加的なレーザービームおよび/または部分ビームの送り方向に対して横方向に間隔Lで、少なくとも2つの強度最大を作製し、しかも同時にまたは時間的にずらすことが可能となる。これらの強度最大は、送り方向における相対運動の際に、表面上に溝として写し取られる。このような2つの溝の間の特に狭いリブは、このように作製することができる。さらに、送り方向に対して横方向にオーバーラップする溝を作製することができ、この場合、このようなオーバーラップする2つの溝の間のリブの両方の側面は、それぞれ時間的にずらされて作製されるかまたは異なるレーザービームまたは部分ビームにより作製される。
【0040】
一実施形態の場合に、レーザーを用いて、リブレットは、外側のトップコート層内に導入される、および/またはトップコート層の下に配置されたベースコート層は、トップコート層と比べて、レーザーの波長に対して、つまりレーザーにより放射されるレーザービームまたは干渉するレーザービームの波長に対してわずかな吸収率を有する。
【0041】
好ましくは、トップコート層は、特にポリウレタンベースのクリアコート層である。ベースコート層は、有利に、プラスチックおよび/または樹脂、特に好ましくはエポキシ樹脂である。
【0042】
一実施形態の場合に、トップコート層の下に配置されたベースコート層は、レーザーを用いて部分的に露出される。別の実施態様の場合に、材料層の下に配置された下層は、レーザーを用いて部分的に露出され、この場合、材料層がトップコート層でありおよび/または下層がベースコート層であってよい。部分的に露出とは、1つまたは複数の部分で、下層が材料層により覆われていないか、またはベースコート層がトップコート層により覆われていないことを意味する。この表面は、この部分でまたはこれらの部分で、下層またはベースコート層により形成されていてよい。下層またはベースコート層の部分的な露出によりリブレットの溝の、特に平坦な谷面または平らな底部を可能にすることができる。特に効果的な流動抵抗の低減が可能である。
【0043】
一発展形態の場合に、ベースコート層の吸収率は、トップコート内では、材料除去のために予定された加工閾値またはレーザービームもしくは干渉するレーザービームの閾値強度が達成されるかまたはそれを越えるが、ベースコート層内では達成されないかまたはそれを越えない程度に、トップコート層の吸収率よりも低い。
【0044】
一発展形態の場合に、例えばCOレーザーの波長λ=9.6μmに対して、トップコート層と比べて低い吸収を達成するためおよび/または材料除去について加工閾値または閾値強度の達成を避けるために、ベースコート層はTiO粒子を含む。
【0045】
レーザーによってトップコート層または材料層内に導入されるエネルギーは、レーザービームまたは干渉構造の強度分布が、これに少なくとも近似して対応する凹部または溝の形状でトップコート層または材料層内に写し取られるように材料除去を提供する。
【0046】
特にベースコート層内での材料除去にとって加工閾値または閾値強度を下回る低い吸収により、ベースコート層内に強度分布は写し取られない。トップコート層に隣接しかつレーザーにより少なくとも部分的に露出させられるベースコート層の特に平坦な上面は、このように維持することができる。
【0047】
これは、以下に説明する理由から有利である。
【0048】
基本的に、断面が長方形になればそれだけ、流動抵抗の低減もより大きくなると見なされる。
【0049】
さらに、基本的に、溝の間の特にランド状のリブまたはランドが鋭利になればそれだけ、つまり狭くなればそれだけ、流動抵抗の低減もより大きくなると見なされる。
【0050】
一実施形態の場合に、リブレットは、航空機、船舶または風力原動機のローターブレードの表面内に導入される。それにより、流動抵抗の特に効果的な低減が可能になることができる。
【0051】
本発明の別の態様は、リブレットの製造のために設置されたレーザーまたは連続波レーザー、特にCOレーザーを備えた、リブレットを製造する上記方法を実施するための装置に関する。この装置の実施形態は、方法の説明からすでに明らかである。特に、この装置は、少なくとも1つのレーザーと、少なくとも1つのビーム分割装置を有する光学ヘッドと、少なくとも1つの集束装置とを備える。
【0052】
連続波レーザーにより製造されたリブレットは、連続的に作製された溝を示し、この場合、散発的な溶融の痕跡および/または分解効果が観察可能であってよい。
【0053】
特に、レーザーを用いて、特に図5に示されているように、縦方向に対して横方向に測定して、最大で1μmまたは2μmのリブ先端幅bを有する、および/または正確に測定して、リブ先端の最も高い点の下で1μmを有する、極めて鋭利なリブを備えたリブレットを製造することができる。
【0054】
特に、レーザーを用いて、溝間隔の最大で30%または40%のリブの幅を有する極めて鋭利なリブを備えたリブレットを製造することができ、ここで、リブの幅とは、縦方向に対する横方向の広がりを意味しており、しかもリブ先端の最も高い点の下での間隔で測定して、特に溝深さまたはリブ高さの三分の一未満である。
【0055】
特に、リブレットは、溝の間のリブの側面を有し、このリブレットは、レーザービームの強度分布または干渉構造の強度分布を写し取る、つまり送り方向に対して横方向の表面上の軸x上での強度Iの相応する測定曲線の部分を写し取る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】すでに塗装された航空機表面上に後からレーザーを用いてリブレットを製造する概略図を示す。
図2】表面上に干渉構造を作製するためのビーム分割装置と集束装置との概略図を示す。
図3】材料層内へ干渉構造を写し取る概略図を示す。
図4】トップコート層とその下にあるベースコート層内へ干渉構造を写し取る概略図を示す。
図5】材料層内へレーザービームを位置的にずらして導入することによりリブレットを製造する概略図を示す。
図6】トップコート層とベースコート層とを有する表面内へレーザービームを位置的にずらして導入することによりリブレットを製造する概略図を示す。
図7】表面に部分ビームを偏向するために、二枚の傾斜可能な偏向ミラーを備えた光学構造の概略図を示す。
図8】表面に部分ビームを偏向するために、四枚の傾斜可能な偏向ミラーを備えた光学構造の概略図を示す。
図9】二枚の傾斜可能な偏向ミラーと1つの光学偏向体とを備えた光学構造の概略正面図を示す。
図10】細長いレーザースポットの上面図を示す。
図11】二枚の傾斜可能な偏向ミラーと1つの光学偏向体とを備えた光学構造の概略空間側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明を、次に図面により概略的に示された実施例に基づき詳細に説明し、かつ図面を参照して実施形態および付加的な有利な実施態様を詳細に説明する。
【0058】
図1は、例えば再塗装または変更塗装の後にまたはメンテナンス時に、航空機10のすでに塗装された表面3内にリブレット1を製造するための例示的な装置を示し、ここで、リブレット1は、連続波レーザー2、特にCOレーザーを用いて製造される。つまり、表面3は、レーザー加工の開始時にすでに乾燥および硬化されている。例えば研削のような材料除去する別の工具は使用されない。
【0059】
レーザービーム15、干渉するレーザービーム16、付加的なレーザービーム17および/または付加的な干渉するレーザービーム18が、好ましくは駆動系を用いて動力化されておよび/または駆動系用の制御系を用いて自動的に、表面3に対して相対運動することができるように設置されている5軸ロボット14の様式の運動ユニットが予定されている。こうして、大面積レーザー構造化または特に大きな面積速度を有するDLIPを実現することができる。運動ユニット14は、有利にコンパクトな構造ユニットとして、集束装置20および/またはビーム分割装置21を含むので、表面3上に定義されたスポット直径を調節することができ、このスポット直径は特に相対運動の間でも一定のままである。連続波レーザー2は、可動ビームガイド装置を介して集束装置20および/またはビーム分割装置21と接続されているので、運動ユニット14は、固定された連続波レーザー2とは無関係に運動することができる。加工は、図1に示すように送り方向9で行われる。
【0060】
一般に、航空機塗装は多層系である。本質的に、航空機塗装用のこのような多層系は、防食材および定着剤としてのプライマー、特に顔料を有するベースコート層5のベースコート、および/またはトップコート層4のクリアコートからなる。ベースコートは、原則として、多成分エポキシ樹脂被覆である。クリアコートは、それに対して、好ましくはポリウレタン系(PUR)を基礎とする。航空機表面の視覚的印象が損なわれることがないように、特に透明なトップコート層4内にリブレット構造を導入することが有利である。トップコート層がポリウレタンを基礎として仕上げられている場合、COレーザーの放射領域内にIR吸収構造を有する。特に、特徴付けられるPUR吸収帯は、COレーザーの特に強いビーム波長(λ=9.6μm)とオーバーラップする。リブレット構造、つまりリブレット1を溝間隔a=100μmで製造すべき場合、波長λ=9.6μmで両方の部分ビーム6、7の間の角度θについて、式2θ=5°30′が当てはまる。
【0061】
図2は、レーザービーム15を干渉するレーザービーム16に変換するための、ビーム分割装置21と集束装置20との例示的な光学構造を示す。次の説明は、付加的に干渉するレーザービーム18に変換される付加的なレーザービーム17にも同様に当てはまる。
【0062】
入射するレーザービーム15は、図2に示すように、好ましくは非偏光ビームスプリッター、有利に部分透過ミラー22で、第一の部分ビーム6と、第二の部分ビーム7とに分割される。
【0063】
同様に、入射するレーザービーム15は、別のまたは補足的な実施態様の場合に、それぞれ1つだけの強度最大Imaxを有する2つの異なるレーザービームが、表面3内に溝13を引くことができるように分割される。
【0064】
図2の例示的な光学構造の場合、部分ビーム6、7は、光学ミラー23を用いて、予め設定された角度αで部分ビームが当たるように、表面3に偏向される。間隔Lは、基本的に、レーザー光の波長λと、両方の部分ビーム6、7の間の合流角2αとに依存し、しかも特に式L=λ/2sinαに従う。好ましくは式θ=2αが当てはまり、つまり両方の部分ビーム6、7は、同じ角度αで表面3に当たる。
【0065】
特に、コンパクトな一体式のブロックとして、ビーム分割装置21および/または集束装置20を備えた全体の光学構造が作製される。したがって、この光学構造を航空機10または航空機部品の表面3に沿って特に簡単に案内することができる。アブレーション方法は、ローラーを除いて、非接触でかつ無摩耗で作業されることが有利である。一発展形態の場合に、運動ユニットは表面上を非接触で運動する。したがって、表面の接触自体は、ローラーにより回避される。干渉するビームを使用することにより、作業間隔、つまり表面3に対して相対的な焦点位置に関して特に大きな許容範囲を可能にすることができる。
【0066】
表面3に対して垂直方向で一定の領域にわたる作業間隔は、許容範囲内にあることが有利であり、この許容範囲内では部分ビーム6、7が、計画通りのアブレーションのために表面3上で十分に強くオーバーラップする、つまり例えば、強度最大Imaxは所望の閾値強度に依然として達している。したがって、自由成形された表面でさえも、原則として表面の高低差に関して集束位置を合わせるために集束装置により決定される極端に複雑な軌道制御なしでも、加工することができる。
【0067】
レーザーを用いて所望なリブレット構造またはリブレット1を製造するために、いくつかのアプローチを選択することができ、このアプローチを次に別のまたは補足的実施形態を用いて説明する。一実施形態の場合に、自由にかつ連続的に調節可能な角度αにより、表面3上でリブレットの送り方向9または縦方向8に対して垂直方向で横軸xにわたり、レーザー強度I(x)の特別な周期分布の強度最大値Imaxの間隔Lを調節することができる。一実施態様の場合に、特別な周期強度分布は、補正された正弦関数であり、正弦状または正弦形であることができる。
【0068】
図3は、横軸xの位置での強度I(x)がアブレーション深さとどのように相関するのかを表すため、この強度分布を表面3の高さプロフィールに移すことができる。
【0069】
一実施態様の場合に、特にPURを基礎とするクリアコートからなるトップコート4の厚みは、リブレット1の所望の溝深さd、つまりリブ12の高さと同じかまたはより大きい。
【0070】
図4は、材料層またはトップコート層4の下にアンダーコートまたはベースコート層5が配置されている表面3を示し、この場合、強度最大Imaxでのレーザービームの強度I(x)は、材料層またはトップコート層4が部分的に完全に除去されかつアンダーコートまたはベースコート層5はそれゆえ部分的に完全に露出する程度に高い。部分的にとは、ここでは、レーザーのエネルギーが強度最大Imaxで導入される表面3の箇所を意味する。
【0071】
図3および/または4では、レーザービームは、特に、好ましくはレーザービーム15の変換により得られた干渉するレーザービーム16である。あるいはまたは補足的に、基本的に、図3および4に示された溝を、時間的におよび/または位置的にずらされた、干渉しないレーザービームにより作製し、このレーザービームは全体として示された強度分布を作製することも可能である。
【0072】
一実施態様の場合に、レーザーから放射されるレーザー光の波長は、トップコート層4内で吸収されるが、ベースコート層5内へはTiO顔料での著しい散乱によりほとんど侵入できないように選択されるため、レーザーを用いて作用するアブレーションプロセスはベースコート層5自体で停止する(図4参照)。
【0073】
この場合、溝の深さdは、トップコート層4の厚みに相当し、溝間隔aは、強度最大Imaxの間隔Lに相当する。特に平坦な底面、つまり平坦な溝底を有する溝13、およびリブ12の急峻な側面11は、アンダーコートまたはベースコート層5での自己停止するアブレーションプロセスの利用により達成することができる。
【0074】
図5は、第一の加工段階でのレーザービーム16と、第二の加工段階での付加的なレーザービーム18との位置的にずらした導入によるリブレット1の二段階の製造方法を概略的に示す。
【0075】
明瞭さの理由から、図5において、第二の加工段階の実施前の第一の加工段階による中間製品が示されている。しかしながら、この第一の加工段階と第二の加工段階とは、同時に行われてもよい。この二段階の加工プロセスは、特に急峻な側面11と鋭利なリブ12とを備えたリブレットの製造を可能にする。
【0076】
溝幅、溝の深さ、溝間隔および/または溝の深さ対溝間隔の比率は、好ましくは、部材の表面3上でのエネルギー消費する渦の大きさに適合させることができ、この渦は、部材の稼働時に一般的な流動速度で平滑な表面上に生じる。理想的には、例えば、長距離航空機の場合、2μmの幅の、好ましくは溝13の間に長方形のまたは長方形状のリブ12が設けられている。
【0077】
しかしながら、このようなリブレット構造は、今日ではほとんど経済的には製造可能でなく、その機械的安定性は、さらに実際上の使用のために大抵は十分ではない。したがって、リブレットにおいて、通常では、理想的な構造に近づけつつ、空気力学と機械的安定性の間で妥協がなされる。エネルギーを消費する渦は、基本的に、流動媒体の流動速度、粘度および密度に依存する。
【0078】
好ましくは約100μmの溝間隔100μm、および/または約50μmの溝の深さを有するリブレット1を備えた表面3を有する部材により、長距離航空機の場合、ある程度の一定の飛行速度の期間において、表面摩擦によって引き起こされるだけでない全体の流動抵抗を、3%まで低減することができる。したがって、燃料消費も軽減することができる。
【0079】
風力原動機(WKA)の場合、理想的な摩擦のない流動で、風力エネルギーの60%までをローターの機械エネルギーに変換することができる。制限事項は、ローターの背後で風速は低下するが、空気がさらに流れ去らなければならず、それにより背圧がローターをブロックしないことにある。
【0080】
WKAでは、ローターブレードでの渦形成および壁面摩擦のような空気力学的損失が、実際に利用可能な機械的エネルギーを約50%に低下させる。確かに、ローター先端の周速は、航空機速度の約3分の一にすぎないが、大地での空気密度は10,000mの高度よりも3倍高い。レイノルズ数は、リブレット1の有利なサイズに影響を及ぼし、かつレイノルズ数は密度と速度の積を含むため、リブレットのサイズは、基本的に100~200μmの範囲内にある。正確なサイズは、特にWKAの計画された回転数に依存し、かつローターブレードに関して回転軸までの距離とともに変化する。それにより、壁面摩擦を10%まで低減することができ、それにより、WKAの効率を1%~2%改善することができる。
【0081】
一実施形態の場合に、リブレット1は、特に両方の部分ビーム6、7の重なり角αの連続的または段階的な増加または減少により、リブレットが、特に縦軸8に対して横方向で、より小さくなるかまたは増大する溝幅Lを有するように製造される。ローターブレード(図示されていない)上のリブレット1は、ハブまでの増加する距離とともに高まる周速に、特に簡単にかつ効果的に適合させることができる。
【0082】
さらに実施形態の場合に、商船において、リブレット1を有する水中表面が設けられていてよい。この船舶の10~20ノットの一般的な巡航速度について、80~200μmの溝幅を有するリブレットが前提となる。このようなリブレット1は、DLIPを用いて水中塗装内に導入することができる。
【0083】
上述の実施形態および例示的な用途は、この方法、装置およびそれにより製造可能な部材もしくは表面を広範囲に使用することができることを示す。
【0084】
この場合、特に好ましいのは、
-リブレット1のサイズを、部分ビーム6、7の角度αの簡単な変更によって変えることができること、
-リブレット1の溝の深さdを、強度および送り速度により調節することができること、
-特に急峻な側面11、細く鋭利なリブ12を有するリブレット1を、特に実質的に同一の干渉構造の、わずかにずらされたオーバーラップにより、好ましくはずらされた光学ヘッドにより、特に簡単に作製できること、
-この加工は、特に非接触でおよび/または摩耗なしであり、つまり長い耐用時間が可能となること、
-基本的に定量的に検出することができる粉塵および/または蒸気は特にわずかにしか生じないこと、
-この加工は全自動でおよび/または遠隔操作で行うことができること、
-CO連続波レーザーの使用により、毎分数平方メートルの面積出力までスケーラビリティが可能であること、および/または
-9.6μmの波長でのCO連続波レーザーの稼働時に、原則として特に酷使に耐えられかつ耐候性のポリウレタン塗料を、特に迅速にかつ高品質で加工できることである。
【0085】
有利な実施形態の場合に、リブレットは、後から、標準的に硬化された塗装内に導入される。これは、特にリブレットのフレキシブルな導入を可能にする。
【0086】
有利な実施形態の場合に、リブレット構造は、干渉するレーザービームまたは干渉パターニングにより作製される。それにより、リブレットは、特に高い加工速度で導入することができる。
【0087】
有利な実施態様の場合に、干渉するレーザービームまたは干渉パターニングの干渉構造は、特に容易にシフトして作製される。特に尖った鋭利なリブレット先端は、特にわずかにシフトされた干渉構造の重なり合いにより作製することができる。
【0088】
有利な実施態様の場合に、COレーザーが使用される。慣例の塗料系および特に有利なリブレットサイズを、極めて正確でかつ効果的に作製することができる。
【0089】
有利な実施態様の場合に、9.6μmの波長を有するレーザーが使用される。PUR塗料内での特に高い吸収を可能にすることができる。
【0090】
すでに上述したように、稼働時の部材の流動抵抗は、部材の多様な箇所に導入されたリブレット1を、そこに稼働時に存在する流動条件に、つまり流動速度および/または空気圧に適合させることにより、全体として改善して低減することができる。ローターブレードの流動速度が、ハブからの距離が増大するとともに上昇するような風力原動機の場合、上述の実施形態の1つにおいて説明したように、自由にかつ連続的に調節可能な角度αにより、表面3上で、送り方向9またはリブレットの縦方向8に対して垂直方向に横軸xにわたたるレーザー強度I(x)の特に周期的分布の強度最大Imaxの間隔Lを相応して調節することができる。
【0091】
こうして、流動の壁面摩擦を、格別に、全体として抑制することができる。航空機の場合には、例えば燃料消費を軽減することができるか、または風力原動機の場合には、その効率を高めることができる。したがって、例えばリブレットのサイズ、間隔Lに相当する溝幅または溝間隔aのような、リブレット1の少なくとも1つの幾何学的パラメーターを、部材の稼働時の局所的流動条件に適合させることは、特に有利である。
【0092】
したがって、航空機の場合に、稼働時の局所的に異なる流動条件に基づき、リブレット1の11つまたは複数の幾何学的パラメーターを、航空機に沿った、胴部の上部および下部でのならびに/または主翼または尾翼に沿った一般的な局所的流動挙動に適合させることが有利である。風力原動機またはWKAの稼働時に、空気圧およびローター回転数はほぼ一定であり、その際、ローターブレード上の接線方向の流動速度はローターハブまでの距離とともに線形に増加する。ここで、リブレット1の導入の際に、ハブから先端まで、作製されたリブレット1は、例えば連続的に微細になることが特に有利である。さらに、最適なリブレット構造は、ローターの前面と背面とでは異なる。
【0093】
したがって、流動抵抗の低減に関するリブレットの潜在能力を改善して活用するために、有利な実施形態の場合に、部材にとって、稼働時に存在する局所的流動条件に適合するリブレット構造を作製することが予定されている。これは、予めエンボス加工された接着シートまたはスタンプを用いても不可能であるかまたは不経済的な手間を掛けてのみ可能である。
【0094】
好ましい実施形態の場合には、リブレット製造の間に、特に表面3内へリブレット1を導入する間に、2つの干渉する部分ビーム6、7の間の統合角θが適切に変更されることが予定されている。
【0095】
統合角θは、部分ビームが再び統合される際の、または言い換えるとこれらの部分ビームが交差するかまたは互いに出合う際の、2つの干渉する部分ビーム6、7により囲まれる角度を表す。以後、これらの部分ビームが再び統合される点、交差する点または互いに出合う点を、「交差点」と言う。「加工間隔」は、以後、少なくとも2つの部分ビームの交差点の、加工ヘッドまたは固定された偏向ミラー24の傾斜軸27からの距離を表す。
【0096】
特に、交差点は、表面3上に置かれる。2つの干渉する部分ビーム6、7の間の統合角θは、この場合、表面3上に当たる際に測定することができる。中心軸26を中心として、両方の干渉する部分ビーム6、7が対称的に出合う場合、θ=2αであり、この場合、αは、中心軸26と第一または第二の部分ビーム6、7とが囲む角度である。統合角θは、干渉角であるかまたは干渉角とも言うことができる。
【0097】
統合角θの適切な変更は、所望の統合角θを得るための計画的な変更を意味する。この適切な変更は、特に、利用者を含めて半自動的に、または制御系を用いて全自動で行われる。2つの干渉する部分ビーム6、7は、上述で説明したように、コヒーレントレーザービーム15の分割により得られた。干渉する部分ビーム6、7は、材料除去によりリブレット1を製造するために、干渉するレーザービーム16を形成し、および/または表面3上に相応して分配されたエネルギーを導入する。
【0098】
統合角θの適切な変更は、適切に変更された統合角θで表面3内に導入されるリブレット1の少なくとも1つの幾何学的パラメーターの適切な適合を可能にする。特に、統合角θの適切な変更により適切に適合させることができるリブレット1の幾何学的パラメーターには、とりわけ、溝間隔a、溝幅、および溝の深さd対溝間隔aの比率が含まれる。
【0099】
一実施形態の場合に、統合角θの適切な変更により、リブレット1の溝間隔a、溝幅、および/または溝の深さd対溝間隔aの比率を適切に変更することができる。
【0100】
一実施形態の場合に、統合角θの適切な変更により、リブレット1の溝間隔a、溝幅、および/または溝の深さd対溝間隔aの比率を、稼働時に表面3の加工されるべき領域で一般的に生じる流動条件に適切に適合させることができる。加工されるべき領域とは、表面3の局所的に限られた領域を意味する。統合角θの適切な変更の間にすでに、または加工ヘッドが送り方向9に運動するかもしくは送り運動が行われるとすぐに、この加工されるべき領域内にリブレット1の導入が行われる。流動条件については、流動速度および/または空気圧を考慮することができる。稼働時に一般的に存在する流動条件は、測定、計算および/または推定により決定することができる。有利に、一般的に存在する流動条件については、平均値または重み付けされた平均値が用いられる。
【0101】
一実施態様の場合に、表面3の領域の位置または加工点29の位置に依存して統合角θを提供する制御系が予定されているので、表面3上での加工ヘッドの運動の際に、表面3の現在加工される領域または現在の加工点29について予定されている制御系によって、自動的に統合角θが調節される。特に、距離センサが設けられているので、この制御系は、表面3に対して相対的に加工ヘッドまたは加工点29の現在の位置に関する情報を得る。特に、この制御系は、統合角θの変更または調節のために、傾斜可能な偏向ミラー24をモーターにより傾けるための駆動系を制御することができる。
【0102】
一実施態様において、表面3の加工されるべき領域に対して、稼働時にそこで予想される比較的大きな流動速度に基づき、この領域内に製造されるべきリブレット1について計画通りに、比較的狭い溝間隔aが予定されている場合に、統合角θは大きくされる。
【0103】
一実施態様において、表面3の加工されるべき領域に対して、稼働時にそこで予想される比較的小さな流動速度に基づき、この領域内に製造されるべきリブレット1について計画通りに、比較的大きな溝間隔aが予定されている場合に、統合角θは小さくされる。
【0104】
例えば主翼またはローターブレードのような部材の各位置では、抵抗の低減を最大化するために、この特別に効果的でかつ経済的な様式で、リブレット1を、稼働時にその箇所に存在する流動条件に適合させることができる。
【0105】
一実施形態の場合に、加工ヘッドは、レーザーから加工ヘッド内へ到達するレーザービーム15が、複数の部分ビーム6、7に分割され、引き続き所望の干渉構造を有する干渉する干渉ビーム16の生成のために再び合一されるように設置されている。同様に、これは付加的なレーザービーム17に置き換えられてもよい。よって、リブレットは、特に容易に取扱可能な一体式の加工ヘッドを用いて製造することができる。レーザービーム15または付加的なレーザービーム17を部分ビーム6、7に分割するために、ビーム分割装置またはビームスプリッターを使用することができる。部分ビーム6、7の合一のために、偏向ミラー23、傾斜可能な偏向ミラー24および/または光学偏向体30を使用することができる。
【0106】
一実施形態の場合に、ビームスプリッターは、回折光学素子(DOE)であるか、またはビーム分割装置は、DOEを含む。それにより、レーザービーム15または付加的なレーザービーム17を、ほぼエネルギー損失なしに、2つまたはそれ以上の部分ビーム6、7に、好ましくは正確に2つまたは正確に4つの部分ビーム6、7に分割することができる。DOE内部での干渉効果により、入射するレーザービームは、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の部分ビーム6、7に分割される。2つ、3つ、4つまたはそれ以上の部分ビーム6、7は、所定の角度で偏向される。一実施態様の場合に、DOEは、透過型DOEである。部分ビーム6、7は、この場合、DOEを透過する。あるいは、DOEは、反射型DOEである。部分ビーム6、7は、この場合、DOEにより反射される。
【0107】
好ましくは、DOEは、反射型または透過型位相格子25である。それにより加工ヘッドの特にコンパクトな構造を実現することができる。反射型位相格子25は、特にロバストでありかつ比較的高い破壊閾値を有する。透過型位相格子25は、加工ヘッドの特にスリムな構造を可能にする。位相格子25を用いて、単色レーザービーム15を、異なる部分ビーム6、7に分割することができ、この場合、格子定数は、位相格子25直後の部分ビーム6、7の偏向角を決定し、部分ビーム6、7の強度は、レーザーの出力の相応する調節により、リブレットの数および幾何学形状に合わせることができる。反射型または透過型位相格子は、一実施態様の場合に、特に格子パラメーターの相応する選択により、入射するレーザービーム15を、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の同一の部分ビーム6、7に分割することができるように設置されていてよい。特に、同一の部分ビーム6、7は、レーザービーム15の当初の放射方向に対して対称的に偏向される。有利に、レーザービーム15が反射型または透過型位相格子に入射する、レーザービーム15の当初の放射方向は、中心軸26に沿って延びる。同様に、一実施形態の場合に、反射型または透過型位相格子は、付加的なレーザービーム17用に使用される。
【0108】
別のまたは補足的な実施形態の場合に、ビームスプリッターは、部分反射型ミラーであるか、またはビーム分割装置は、部分反射型ミラーを含む。入射するレーザービーム15は、この場合、部分的に透過しかつ部分的に反射される。
【0109】
一実施形態の場合に、統合角θの適切な変更のために、少なくとも1つの傾斜可能な偏向ミラー24は、部分ビーム6、7の偏向のために傾斜される。こうして、統合角θの特に簡単でかつ確実な適切な変更が可能になる。
【0110】
一実施形態の場合に、統合角θの適切な変更のために、2つまたは4つの傾斜可能な偏向ミラー24は、部分ビーム6、7の偏向のために傾斜される。特に、その都度、正確に1つの部分ビーム6、7のために、1つだけの傾斜可能な偏向ミラー24が設けられている。あるいはまたは補足的に、傾斜可能な偏向ミラー24は、2つの部分ビーム6、7をそれにより計画通りに偏向することができる用に形成または構成されていてよい。別のまたは補足的な実施形態の場合に、全ての傾斜可能な偏向ミラー24は同期してのみ傾斜可能である。特に、同期してのみ傾斜可能な2つまたは4つの偏向ミラー24が、統合角θの適切な変更のために設けられている。傾斜の際に、傾斜角変化分δだけの、偏向ミラー24の傾斜角の変更が行われる。
【0111】
2つの隣接する強度最大Imaxの間のリブレット1の周期的間隔Lは、部分ビーム6、7の統合角θにより決定される。傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜角を、傾斜角変化分δだけ特に同期的に変更することにより、角度θひいては間隔Lを適切に変更することができる。特に、偏向ミラー24の傾斜は、傾斜軸27を中心として行われる。有利に、傾斜軸27は、中心軸26に対して垂直方向に向けられている。
【0112】
有利に、2つまたは4つの傾斜可能な偏向ミラー24は、中心軸26を中心として対称的に配置されている。この場合、それぞれ2つの対称に配置された傾斜可能な偏向ミラー24からなる一組のミラー対または二組のミラー対が得られる。同期してのみ傾斜可能とは、同期してのみ傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜運動が、互いに固定された関係にあるか、または同じ傾斜変化を有することを意味する。変更された幾何学形状を有するリブレットを導入するために、同期して傾斜可能な偏向ミラー24は、相応して同期して、好ましくは2つのまたは4つの全ての傾斜可能な偏向ミラー24が同量の傾斜角変更分δだけ傾斜される。正確に2つの傾斜可能な偏向ミラー24が設けられている場合、統合角θを適切に変更するために、両方の傾斜可能な偏向ミラー24は、好ましくは同じ傾斜角だけ傾斜される。正確に2つのミラー対が設けられている場合、統合角θを適切に変更するために、各ミラー対の両方の傾斜可能な偏向ミラー24は、好ましくは常に、同じ傾斜角だけ傾斜される。基本的に、一組のミラー対の傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜は中心軸26に対して鏡面対称で行われる。
【0113】
一実施形態の場合、2つの傾斜可能な偏向ミラー24は、ジンバルに傾斜可能な偏向ミラー24である。ジンバルに傾斜可能な偏向ミラーは、入射するビーム、例えばレーザービームまたは部分ビームの衝突点を中心としてミラー表面を用いて傾けることができるので、ビームの旋回点を常に同じままにすることが可能である。
【0114】
一実施形態の場合に、2つの傾斜可能な偏向ミラー24を、モーターを用いて、特に11つまたは複数の異なる方向に向けられた傾斜軸に傾斜するために、駆動系が設けられている。こうして、高い自動化度を達成することができる。
【0115】
一実施態様の場合に、少なくとも2つの部分ビーム6、7を、特に正確に2つまたは正確に4つの部分ビーム6、7を、その都度1つの傾斜可能な偏向ミラー24により、リブレット1を導入するために表面3にまたは光学偏向体30に直接偏向することができる。こうして、加工ヘッドの特に簡単な構造を達成することができる。
【0116】
一実施形態の場合に、少なくとも1つの傾斜可能な偏向ミラー24は、部分ビーム6、7を表面3に向ける。特に、1つの部分ビーム6、7の方向を合わせ、つまり偏向は、傾斜可能な1つの偏向ミラー24により直接表面に向けて行われる。こうして、加工ヘッドの特に簡単な構造を達成することができる。
【0117】
一実施態様の場合に、加工ヘッドまたは光学素子の配置は、傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜により、加工間隔が変化するように設置されている。加工ヘッドまたは固定された偏向ミラー24の傾斜軸27の、統合角θで互いに出合う2つの干渉する部分ビーム6、7の交差点からの間隔は、この場合、傾斜可能な偏向ミラー24を傾ける際に変化する。
【0118】
特に、統合角θの適切な変更のために加工間隔の変更を補償するために、加工ヘッドのフォローアップが設けられている。こうして、部分ビーム6、7の交差点は、ほぼ表面3の高さにおよび/または所望の加工点29内にあることが保証される。有利に、集束装置は、部分ビーム6、7の集束位置が、ほぼ表面3の高さにおよび/または所望の加工点29内にあるように調節および/またはフォローアップされる。集束位置は、ビーム伝播方向を基準として、加工されるべき表面3上の加工点29に対して相対的な、ビーム経路内で最も狭いスポット直径の位置を表す。加工間隔および/または集束位置の変更により、加工されるべき表面3上のスポット直径またはレーザースポット36(図10参照)に影響を及ぼすことができる。それにより、また、加工点29に作用する、干渉するレーザービーム16の強度は変化し、このことが、基本的に、例えば溝の深さdまたはギャップ幅に影響を及ぼすことができる。
【0119】
傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜により加工間隔が変化する別の実施態様の場合に、こうして変更された加工間隔により、リブレット1の溝の深さdおよび/または溝幅を適切に変えるために、加工ヘッドのフォローアップは予定されていない。
【0120】
一実施形態の場合に、傾斜可能な偏向ミラー24は、それぞれ1つの部分ビーム6、7を、表面3に偏向するために、光学偏向体30に向ける。傾斜可能な偏向ミラー24と加工されるべき表面3との間のビーム経路内に光学偏向体30を置くことにより、加工ヘッドの特にコンパクトな構造を達成でき、かつ光学部材の数を減らすことができる。特に、光学偏向体30により、特に傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜により統合角θを適切に変更する間に、加工間隔を同じに保つことを達成することができる。
【0121】
一実施形態の場合に、光学偏向体30は、部分ビーム6、7の偏向のために、二次元的に湾曲したまたは三次元的に湾曲した偏光面31を有する。一実施態様の場合に、二次元的または三次元的に湾曲した表面は、楕円形に湾曲されている。こうして、特に傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜により統合角θを適切に変更する間に、加工間隔を同じに保つことを達成することができる。
【0122】
一実施態様の場合に、光学偏向体30および/または偏光面31は、部分ビーム6、7に対して反射性であり、つまり透過性ではない。有利に、光学偏向体30および/または偏光面31は、金属、好ましくは銅からなる。
【0123】
一実施形態の場合に、部分ビーム6、7の偏向のための光学偏向体30は、傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜角変化分δに依存して統合角θを適切に変更するために、二次元的に湾曲した偏向面31を有する。特に、この場合、加工間隔は、傾斜角変化分δとは無関係である。
【0124】
こうして二次元的に湾曲した偏向面31を設けることにより、統合角θを適切に変更するために、傾斜可能な偏向ミラー24を傾斜角変化分δだけ傾斜する間でも、同じに保たれた加工間隔を得ることができる。したがって、加工ヘッドのフォローアップは省くことができる。加工ヘッドが、例えばローラーにより、表面3に対する一定の距離で送り方向に運動させられる場合、統合角θは、この場合、間隔調整なしで、適切に、連続的に、迅速にかつ確実に変更することができる。
【0125】
一実施態様の場合に、二次元的に湾曲した偏向面31は、傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜平面内で、つまり傾斜軸27に対して垂直方向に延びる。
【0126】
一実施態様の場合に、二次元的に湾曲した偏向面31は、楕円32の部分に相当する楕円形の輪郭の推移を有する。一実施態様の場合に、この楕円32は、傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜軸27中に第一の焦点を有する。一実施態様の場合に、この楕円32は、部分ビームの交差点中におよび/または加工されるべき表面3上の加工点29内に第二の焦点を有する。統合角θの変更の際に、特に確実に、同じに保たれる加工間隔が可能になる。
【0127】
有利に、集束のためのレンズ33が、ビームスプリッターまたはビーム分割装置の前方のビーム経路内に設けられているため、光学変更体10により、集束なしの単なる偏向が行われる。
【0128】
一実施形態の場合に、部分ビーム6、7の偏向のための光学偏向体30は、部分ビーム6、7を表面3上に集束するためおよび/または傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜角変化分δに依存して統合角θを適切に変更するために、三次元的に湾曲した偏向面31を有する。特に、この場合、加工間隔は、傾斜角変化分δとは無関係である。特に、三次元的に湾曲した偏向面31は、楕円形の、好ましくは放物線状または球面状の湾曲を有する。
【0129】
一実施態様の場合に、三次元的に湾曲した偏向面31は、2つのオーバーラップする二次元的な湾曲に相当し、この場合両方の二次元的な湾曲の平面は互いに垂直方向に配向されている。
【0130】
特に、第一の二次元的な湾曲は、傾斜軸27に対して垂直方向で平面内に延び、および/または傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜角変化分δに依存した統合角θの適切な変更のための上述の二次元的な湾曲に相当する。好ましくは、第一の二次元的な湾曲は、楕円32の上述の第一の焦点および/または第二の焦点を有する。
【0131】
特に、第二の二次元的な湾曲は、中心軸26に対して垂直方向で平面内に延び、および/または好ましくは入射する一方の部分ビームを他方の部分ビームとの交差点に集束するためおよび/または加工されるべき表面3上の加工点29に集束するために、好ましくは放物線状のもしくは部分円の形状の輪郭の推移を有する。
【0132】
一実施態様の場合に、三次元的に湾曲した偏向面31は、傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜軸27に対して垂直方向で第一の平面内に楕円形の湾曲を含み、ならびにこれに対して垂直方向で放物線状または球面状の湾曲を含む。「これに対して垂直方向」の表現は、この場合特に、第一の平面に対して垂直でかつあらゆる点で平面の法線に沿っていることを意味する。三次元的に湾曲した偏向面31の放物線状のまたは球面状の湾曲は、部分ビーム6、7を表面3上で集束するために用いられる。楕円形の湾曲は、特に上述の第一の二次元的湾曲に相当する。
【0133】
放物線状の湾曲は、この湾曲が部分ビーム6、7を一方の軸だけで集束することができるという利点を有する。こうして、加工ヘッドに含まれかつ放射経路内で光学偏向体30の前方に配置されている、レーザービーム15の集束のための予備集束または集束レンズ33を省くことができ、光学部材の数を減らすことができる。さらに、表面に大きく近づけることにより、改善されて集束することができる。球面状の湾曲は、特に正確な集束を、特に簡単でかつ確実に行うことができるという利点を有する。
【0134】
それにより、傾斜可能な偏向ミラー24により偏向面31に向けられた部分ビーム6、7を、適切に調節可能でかつ偏向可能な統合角θで、表面3上に集束することができ、この場合、統合角θは、傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜角に依存する。
【0135】
特に、三次元的に湾曲した偏向面31を有する光学偏向体30は、集束装置20に所属するか、または一実施態様の場合に集束装置20である。
【0136】
一実施形態の場合に、集束装置20および/または光学偏向体30は、干渉するレーザービーム16が細長いビーム横断面35を有するように、ほぼ円形のビーム横断面34を有するレーザービーム15を集束するように設置されている。したがって、加工されるべき表面3上の加工点29内に、リブレット1の導入のための細長いビーム横断面35を有する干渉するレーザービーム16が作用する。別の表現では、細長い表面部分は、干渉するレーザービーム16により同時に照射される。いわゆる細長いレーザースポット36が生じる。レーザースポット36は、この細長い広がりの方向に長辺を有し、かつ長辺に対して垂直方向に延びる短辺を有する。レーザースポット36の長さ(以後、「スポット長さ」と言う)は、長辺を測定することができ、かつレーザースポット36の幅(以後、「スポット幅」と言う)は、短辺を測定することができる。レーザースポット36の幅、つまりその短辺は、縦方向8に延びる。
【0137】
特に、細長いビーム横断面35は、楕円形またはほぼ長方形に形成されている。
【0138】
一実施態様の場合に、細長いビーム横断面35は、集束装置内で、少なくとも5対1、好ましくは20対1、および/または最大で500対1、好ましくは200対1、特に好ましくは約50対1の長さ対幅のアスペクト比を有する。例えば、焦点位置内の表面3上でのレーザースポット36は、長さ5cmおよび幅1mmである。
【0139】
一実施態様の場合に、ビーム横断面35の細長い広がり方向は、リブレット1または溝13の縦方向8に対して横方向に配向している。
【0140】
有利に、送り方向9は、ビーム横断面35の細長い広がり方向に対して横方向に向けられている。このように、表面3上で、溝13の縦方向9に相当する送り方向9に加工ヘッドが運動することにより、互いに並んだ複数の溝13を、ひいては複数の平行のリブレット1を、連続的に表面3内に導入することができる。
【0141】
こうして、縦方向8が連続的に、しかも稼働時にそれぞれの位置で一般的に存在する流動条件に依存して変化する溝間隔aを表面3に有するリブレット1を有する部材を製造することができる。
【0142】
一実施態様の場合に、少なくとも10の、好ましくは50の、特に好ましくは100の、および/または最大で5000の、好ましくは最大で1000の、特に好ましくは最大で500の平行な溝13またはリブレット1が、加工されるべき表面3上に集束された干渉構造により同時に導入される。この実施態様の発展態様の場合に、加工されるべき表面3上に集束された干渉構造により同時に導入される平行の溝13またはリブレット1の数は、レーザースポット36の大きさ、特にレーザースポットの長さに適合される。レーザースポット36の長さは、上述のように、加工ヘッドが表面3上を運動する縦方向8に対して垂直に測られる。特に、1ミリメートルのスポット長さあたり少なくとも5つの溝13および/または最大で二十の溝13が予定されている。1mmの狭いスポット幅でかつ1:10~1:200の例示的な範囲のアスペクト比で、これは、10~200ミリメートルの溝長さ、したがって表面3内に同時に導入される50~4000の溝13に相当する。
【0143】
一実施態様の場合に、集束は1つだけの軸を中心として行われるので、ビーム横断面34の長さがほぼ幅に相当するレーザービーム15は、細長いビーム横断面35に変換される。
【0144】
特に、1つだけの軸を中心とした集束は、集束装置の11つまたは複数のレンズにより、ビーム分割の前もしくは後で、または光学偏向体30により行われる。
【0145】
一実施形態の場合に、湾曲した偏向面31は、実質的に円形のビーム横断面34で湾曲した偏向面31に当たる部分ビーム6、7が、細長いビーム横断面35で加工されるべき表面3上に偏向および/または集束されるように成形されている。特に、レーザースポット36の長軸は、加工されるべき表面3上に入射する部分ビーム6、7の平面に沿って延びる。
【0146】
こうして、変化する統合角θの場合の一定の加工間隔は、加工ヘッドのフォローアップなしでも、光学偏向体30によって可能にすることができる。さらに、三次元的に湾曲した偏向面31を有する偏向体30により、より短い焦点距離、ひいては集束位置でより狭いスポット直径でより強い集束を可能にすることができる。より短い焦点距離は、光学偏向体30が、レンズ33と比べて、傾斜可能な偏向ミラー24の前方での集束のために表面3付近に配置することができるために可能である。同様に短い焦点距離で集束するためのレンズ33の場合に、つまりそうしないと、光学偏向体30を収納するために、ビームスプリッターと表面3との間に場所がほとんどないかまたは場所がない。
【0147】
一実施形態の場合に、光学偏向体30は、特に中心軸26および/または傾斜軸27に対して、対称的に成形されているおよび/または構成されている。好ましくは、光学偏向体30についての対称面として、中心軸26と傾斜軸27とを通って広がる平面が用いられる。好ましくは、2つの対峙する湾曲した偏向面31が設けられているおよび/または対称面に対して鏡像対称に設けられている。
【0148】
一実施形態の場合に、光学偏向体30は、特に旋回軸28を中心に旋回可能に取り付けられている。部分ビーム6、7を、このようにして、送り方向9または送り方向9とは反対の方向に偏向することができる。それにより、部材の表面3上の加工点29は、加工ヘッドに対して相対的に運動することができる。これは、例えば、送り運動の不正確さを補償するために役立つことがある。特に、旋回軸28は、中心軸26および/または傾斜軸27に対して垂直に延びている。有利に、2つの傾斜可能な偏向ミラー24は、旋回軸28の方向で光学偏向体30から同じ間隔を有する。
【0149】
本発明の他の態様は、リブレット1を、レーザー干渉構造化またはDLIP(直接レーザー干渉パターニング)を用いて表面3内に、特に塗装されかつ硬化された表面3内に導入し、2つの干渉する部分ビーム6、7によって、特に塗装されかつ硬化されている表面3上に、周期的間隔Lで強度最大Imaxを有する干渉構造を作製し、リブレット製造の間に、特にリブレット1を表面3内に導入する間に、2つの干渉する部分ビーム6、7の間の統合角θを適切に偏向する、リブレット1の製造方法に関する。リブレット1を、稼働時に存在する流動条件に適合させ、かつ特に効果的に製造することができる。上述の説明は、本発明のこの態様にも関連する。
【0150】
本発明の他の態様は、レーザーと、ビーム分割装置21および集束装置20を含む加工ヘッドと、運動ユニット14とを備えた、レーザー干渉構造化またはDLIP(直接レーザー干渉パターニング)を用いて、部材の表面3内に、特に塗装されかつ硬化された表面3内にリブレット1を導入する装置において、運動ユニット14は、加工ヘッドが、特に制御系により制御されおよび/または駆動系により駆動されて、加工されるべき表面3上を運動することができるように設置されていて、加工ヘッドは、2つの干渉する部分ビーム6、7を用いて、特に塗装されかつ硬化されている表面3上に、周期的間隔Lで強度最大Imaxを有する干渉構造を作製することができるように設置されていて、装置は、リブレットの製造の間に、特にリブレット1を表面3内に導入する間に、2つの干渉する部分ビーム6、7の間の統合角θを適切に変更することができるように設置されている、リブレット)を導入する装置に関する。この装置により、リブレット1は、特に経済的に、大面積で、リブレット1の幾何学形状が、稼働時に局所的に異なる流動条件に合わせることができるように作製することができる。
【0151】
本発明の別の態様は、部材の表面3がリブレット1を有し、リブレット1およびリブレット1の間の溝13は、連続的に、つまり中断せずに縦方向8に延び、直接隣接する2つの溝13の間の溝間隔aは、縦方向8で、特に連続的に変化する、特に上述のように製造された部材に関する。連続的に縦方向8に延びるリブレット構造の溝間隔aの連続的な変化の際に、リブレット1は、連続的におよび/または部分的に揺動して延びるが、中断されないか、または複数の予め仕上げられた部分からつなぎ合わされている。このようにして、稼働時に存在する流動による摩擦抵抗の特に効果的な低減を可能にすることができる。上述の説明は、本発明のこの態様にも関連する。
【0152】
図7は、部分ビーム6、7がそれぞれ傾斜可能な偏向ミラー24に当たる対称構造を示す。これらの傾斜可能な偏向ミラー24は、部分ビーム6、7を表面3上でオーバーラップさせる。それにより、そこに、レーザーアブレーションにより、特に表面3の塗装内にリブレット構造、ひいてはリブレット1を作製する干渉構造が形成される。風力原動機(WKA)の例では、装置の構造および機能は例示的に記載されている。
【0153】
風力原動機の場合に、ローター先端の周速は100m/sの範囲内である。風洞調査は、この速度にとって、流動抵抗を特に効果的に低減するために、リブレット1が、好ましくはおおよそ間隔a=60μmを有することを明らかにした。WKAの生産高の約75%は、ローター半径の外側の半分から張り出す面によりもたらされる。この領域内で、周速はローター先端に比べて半分にまで低下する。したがって、好ましくは、周期的間隔Lを二倍にすることが予定されている。つまり、生産高のために重要な領域内で、リブレットのサイズは60μmから120μmにまでできる限り連続的に増大するのが好ましい。ローターのハブに近い部分にとっては、さらに大きなリブレット構造が好ましい。このリブレット1は、基本的に、上述の方法により作製することができる。
【0154】
図8は、図7に示された構造の拡張を示す。周期的間隔LおよびL/2を有する干渉構造の位相どおりの重なり合いが、この構造により可能となる。図7の構造と同様に、透過型位相格子33が使用されるが、ここでは図7と同じの2つの対称的な部分ビーム6、7ではなく、それぞれ2つの部分ビーム6、7の2つの対称的な対が、つまり4つの部分ビームが生じる。傾斜可能な偏向ミラー24の傾斜角は、一方の対については、周期的間隔Lに対して統合角θが生じるように、かつ他方のペアについては、周期的間隔L/2に対して統合角θが生じるように調節される。
【0155】
関係L=λ/2sinαおよびレーザーの波長λ=9.4μmから、重要なローター領域をカバーするために、半分の統合角はα60=4.4°~α120=2.2°の範囲内で変化することが推定される。両方の対称の偏向ミラー(図7参照)は、このために好ましくはそれぞれ差分Δα=(4.4°-2.2°)=2.2°の半分、つまり1.1°だけ調整される。同時に、有利に、加工ヘッドは、表面3に対して相対的に相応してフォローアップされ、つまりスライドされる。一実施形態の場合に、この微調整は、電気機械式にまたは圧電アクチュエータによってオンラインで実現される。こうして、WKAローターまたは航空機部材に関して適合する周期的間隔Lで局所的に相応する溝間隔を有するリブレット構造を作製することができる。
【0156】
図9は、部分ビーム6、7がそれぞれ、傾斜可能な偏向ミラー24によりそれぞれ湾曲する偏向面31に向けられ、かつそこで表面3に偏向される光学構造を示す。特に、図9の構造の湾曲する偏向面31は、二次元的に湾曲している。レンズ33は、レーザービームを表面3に集束するために設けられている。レンズ33による集束は、1つだけの軸を中心として行われるので、加工点29内には、細長く形成されたビーム横断面が生じ、このビーム横断面は、図10に示されるようなレーザースポット36を生じることができる。
【0157】
図11は、空間側面図での光学偏向体30を示す。湾曲した偏向面31は、前面に図9で示されたものと同じ湾曲を有する。しかしながら、図11の偏向面31は、図11で示唆されているように、少なくとも1つの他の平面で球面状または放物線状に湾曲している。それにより、光学偏向体30を用いて、同時に集束することができる。したがって、この種の三次元的に成形された偏向面31を有する光学的偏向体30には、二重の機能が付与される。それにより、集束のためのレンズ33を省くことができる。
【0158】
図7、8、9および11に示された構造の場合、統合角θは、傾斜可能な偏向ミラー24の同期的な傾斜角変化分δに依存して適切に変更することができ、ひいてはリブレットサイズ、特に溝間隔aを、加工プロセスの間に、予め測定された目標値に連続的に合わせることができる。
【0159】
図10は、干渉するレーザービームの強度分布を写し取る細長いレーザースポットを示す。レーザースポットは、マット内へ、例えば表面3の高さで焼き付けることによるか、またはレーザービームもしくは干渉するレーザービームの強度分布の位置分解検出のための装置により測定することができる。2つの強度最大Imaxの間の間隔の測定により、さらに、そこから間隔Lを測定することができる。一実施態様の場合に、表面上のレーザースポット36は、少なくとも0.3mmおよび/または最大で3mmの、好ましくは約1mmのスポット幅を有する。図7、8、9および11に示された構造の場合、好ましくは、当初の円形のビーム横断面34の集束は、加工点29内で、特に図10で例示的に示されたようなレーザースポット36が生じることができるような細長く形成されたビーム横断面35を得るために設けられる。互いに並んだ複数のリブレット1は、このように、干渉するレーザービームを、表面3上を送り方向9に運動させることにより作製することができる。
【0160】
このリブレットの製造は、全体の製造プロセスに関する。まず、加工ヘッドを、所望の幾何学形状を有するリブレットを作製することができるように調節する。リブレット幾何学形状を変更するために、リブレット製造の範囲内で、加工ヘッドの適合が、リブレットの導入の間に連続的に行われる。基本的に、加工ヘッドを適合のために停止し、この時間ではレーザーを結合解除することが可能である。しかしながら、それにより加工時間は失われるため、好ましくは、この調節を所望のリブレット幾何学形状に連続的に合わせることが予定されている。
【0161】
冒頭に記載した本発明の態様による方法の場合、リブレットは、表面内へ、特に塗装されかつ硬化された表面内へ、レーザー干渉構造化またはDLIPを用いて導入される。特に、この場合、リブレットは、表面上に塗布されかつ硬化された塗料層4、5内へ導入される。表面は、一般に、部材の表面である。表面が塗装されていた場合、表面は、塗料系からなる少なくとも1つの塗料層4、5を有する。塗料系は、複数の内容物質または成分を有する塗料であってよい。好ましくは、表面の複数の塗料層4、5、例えばトップコート層4およびベースコート層5について、異なる塗料系が予定されている。塗装されかつ硬化された表面3は、部材の塗装された表面であり、この塗料系は硬化されているか、またはこれらの塗料系は硬化されている。リブレットは、つまり塗料または塗料系の硬化後に初めて導入される。
【0162】
一実施形態の場合に、表面3の塗料系は、ポリウレタン成分、エポキシ成分および/またはアクリル成分を基礎とし、および/または部材の表面は、ポリウレタン成分、エポキシ成分および/またはアクリル成分を基礎とする塗料系で塗装される。特に、この実施形態の塗料系は、トップコート層4の形成のために用いられる。この実施形態の塗料系は、塗装されかつ硬化された表面に関し、つまり後の硬化を伴う表面の塗装のために用いられる。
【0163】
一実施形態の場合に、レーザーは、十分な空間的および時間的なコヒーレンスを有するので、このビームは、同じ部分ビーム6、7に分割することができ、この部分ビームは後に重ね合わせる際に規則的な干渉構造を作り出す。十分な空間的および時間的なコヒーレンスを有するレーザーは、十分な空間的および時間的コヒーレンスを有するレーザーを作り出すことができるレーザービーム源を表す。ビームとは、ここでは、レーザービーム15および/または付加的なレーザービーム17を意味する。干渉構造は、干渉するレーザービーム16および/または付加的な干渉するレーザービーム18に相当する。
【0164】
一実施形態の場合に、レーザーは、連続的に励起されるおよび/または連続波でまたはパルス時間<1msでパルス化されて稼働される。よって、カーボンブラック形成は、特にCOレーザーの使用の場合および/または塗料層内へのリブレットの導入の場合に回避することができる。一実施形態の場合に、パルス時間は>0.1μs、好ましくは>1μsである。材料の発泡は、このように、特にCOレーザーの使用の場合および/または塗料層内へのリブレットの導入の場合に、低減され、抑制されおよび/または完全に阻止することができる。連続波で稼働するレーザーは、一般に、連続波レーザー2であり、つまり連続的に励起されたレーザーであり、このレーザーは、パルスレーザーとは反対に、中断なくレーザービームを放射する。基本的に、連続波レーザー2は、パルス化されたレーザービームを放射するように設定することができる。
【0165】
一実施形態の場合に、レーザーは、COレーザーであり、この放射は、特に塗料系に応じて、9.3μm、9.4μm、9.6μmまたは10.6μmの波長に設定されている。放射とは、レーザービーム15および/または付加的なレーザービーム17を意味する。レーザーもしくはこの放射を塗料系に応じて設定することは、塗料系の相応する吸収特性に依存して、放射用の複数の可能な波長から、塗料系の波長に依存する吸収特性に従って比較的大きな吸収を有するピーク波長または波長領域に最も近くにある設定用の波長が正確に選択されるように行われる。
【0166】
一実施形態の場合に、リブレット1は、干渉するレーザービーム16、18を用いて、つまり干渉するレーザービーム16および/または付加的な干渉するレーザービーム18を用いて製造される。
【0167】
一実施形態の場合に、2つの干渉する部分ビーム6、7を用いて、塗料表面に、周期的間隔Lで吸収最大Imaxを有する干渉構造が作製される。干渉構造は、干渉するレーザービーム16および/または付加的な干渉するレーザービーム18に相当する。
【0168】
一実施形態の場合に、干渉構造のラテラル方向の運動と同時のレーザーアブレーションにより、塗料表面上に平行の溝13を、つまりリブレット1が流動方向に形成される。こうして得られた溝13は、溝系を形成する。一般に、2つの隣接する溝は、溝間隔aを有し、この溝間隔は、原則として、特に縦方向8に対して横方向に、2つの隣接する溝の溝中心から溝中心までで測定される。ラテラル方向の運動とは、特に送り方向9および/または溝13の縦方向8の送り運動を意味する。流動方向は、基本的に、溝13の縦方向8に対して配向されている。塗料表面とは、すでに塗装されかつ硬化された表面3を意味する。
【0169】
一実施形態の場合に、リブレット1は、外側のトップコート層4内に導入され、この場合、トップコート層4の下に配置されたベースコート層5は、相応するレーザー波長に対して比較的低い吸収を示す。好ましくは、レーザービーム15もしくは付加的なレーザービーム17の波長に対するベースコート層5の吸収率は、トップコート4の吸収率よりも低い。
【0170】
一実施形態の場合に、トップコート層4の下に配置されたベースコート層5は、干渉するレーザービーム16、18を用いて部分的に露出される。
【0171】
一実施形態の場合に、リブレット構造の急峻な側面11の、つまりリブレット1の側面11の作製のために、当初のレーザービーム15を、少なくとも3つまたは4つの部分ビーム6、7、好ましくは同一の部分ビーム6、7に分割し、この部分ビーム6、7、好ましくは同一の部分ビーム6、7をまた、塗料表面上に複数の干渉構造を、第一の干渉構造と第二の干渉構造とを作製するためにオーバーラップさせる。一実施態様の場合に、当初のレーザービームを部分ビームに分割するために、位相格子25が設けられる。一実施態様の場合に、第一の干渉構造と第二の干渉構造とは分離されている。好ましくは、これらの2つの干渉構造は、2つの干渉構造の干渉が生じないように分離される。例えば、これらの2つの干渉構造は、位置的にずらして、加工されるべき表面3上に向けられる。
【0172】
一実施形態の場合に、4つの部分ビームのそれぞれ2つは、2つの別々の光学ユニット内で1つの干渉構造を作製し、および/またはこうして作製された別々の溝系は、互いに相対的にずらされるかまたはずれている。特に、干渉構造は、2つの干渉する部分ビーム6、7を用いて塗料表面上に、周期的間隔Lで強度最大Imaxで作製される。好ましくは、溝系は、干渉構造のラテラル方向の運動と同時のレーザーアブレーションにより、平行な溝を塗料表面上に、つまりリブレットを流動方向に作製することにより生じる。
【0173】
一般に、2つの強度最大Imaxの間の間隔Lは、ビーム強度を測定する機器を用いて測定することができる。
【0174】
一実施態様の場合に、両方の溝系の間隔周期、つまり間隔aは、それぞれ2Lであり、かつ両方の溝系は、溝13に対して横方向に、つまり縦方向8に対して横方向に、相互に距離Lだけずらされているので、このことから、干渉構造の重ね合わせにより、周期Lを有するおよび/または二ビーム干渉の場合よりも明らかにより急峻な側面を有するリブレット構造が生じる。周期Lおよび距離Lとは、2つの隣接する、相互に離間された強度最大Imaxの間の間隔Lの量でのシフトを意味する。
【0175】
一実施形態の場合に、リブレット1は、航空機10、船舶または風力原動機のローターブレードの表面3内に導入される。
【0176】
本発明の別の態様は、冒頭に課せられた課題を解決するための装置に関する。この装置は、特にリブレット1を製造するための上述の方法の実施のために設置されている。この装置は、リブレット1の製造のために設置されたCOレーザーを含む。この装置は、さらに、光学ヘッドとも言われる一体式の加工ヘッドを含む。加工ヘッド内には、1つまたは2つのビームスプリッター、特にビーム分割装置21が組み込まれている。加工ヘッド内には、さらに、11つまたは複数の、微調整可能な、屈折するおよび/または反射する光学部材、特に集束装置20が組み込まれている。この加工ヘッドは、さらに半自動的または全自動的なマニピュレーターを有する。特に、このマニピュレーターは、レーザービーム15、干渉するレーザービーム16、付加的なレーザービーム17および/または付加的な干渉するレーザービーム18を、表面3に対して相対的に運動させることができるように設置された運動ユニットである。好ましくは、運動ユニットは、運動のための複数の軸を備えた多軸ロボット14である。
【0177】
平坦な溝13、比較的急峻な側面および可能な限り鋭利なランドを備えたリブレット1を製造する際に、この構造が機械的運転荷重に耐えられなければならないことに留意する必要がある。二ビーム干渉の場合に、強度プロフィールは正弦波状である、つまり最大値から最小値への移行は比較的穏やかである。まず、この比較的穏やかなプロフィールが、リブレット1についても期待される。しかしながら、部材の表面3の塗料上の除去像はより的確である、というのもレーザーアブレーションによる除去が行われるためである。これは、所定の強度閾値から初めて始まり、かつ特に層構造を有する塗料系の場合に線形には進行しない。溝13の深さおよび側面の勾配を、所定の範囲内で、レーザービームの強度およびその作用時間により制御することができる。
【0178】
さらに、周期Lを有する第二ビーム干渉像にさらに付加的に位相どおりに周期L/2を有する第二の干渉像を重ね合わせる場合に、リブレット形状の別の改善を作り出すこともできることが明らかになった。L/2周期の強度がLの周期の半分の大きさである場合に、間隔L内の最大はより急峻となり、かつその間にある最小はより平坦になる。このように作製されたリブレット1は、空気力学的利益と機械的耐久力との間の良好な妥協を提供する。
【0179】
図5および6には、どのように干渉するレーザービーム16の第一の強度分布I(x)と、それとは別の、付加的に干渉するレーザービーム18の第二の強度分布I(x)とが、特に溝13の縦方向8に対して横方向におよび/または送り方向9に対して横方向に、位置的なずれΔLだけシフトされているかを示す。干渉するレーザービーム16は、第一の干渉構造ということもできる。付加的な干渉するレーザービーム18は、第二の干渉構造ということもできる。
【0180】
一実施形態の場合に、第一の干渉構造は、第二の干渉構造に対してL/2だけシフトされている。この位置的ずれΔLは、つまり、半分の周期的間隔Lに相当する。特に、第一の干渉構造と第二の干渉構造とは、それぞれの強度最大Imaxの同じ周期的間隔Lを有する。未加工の平坦な表面領域は、これにより、特に、第一の加工段階の、つまりは第一の強度分布I(x)による溝の間に中心合わせして、第二の加工段階の、つまりは第二の強度分布I(x)による溝を設けることができる。
【0181】
近似的に溝間隔aの半分に相当する溝深さdを有するリブレットは、こうして、特に簡単にかつ正確に製造することができる。
【0182】
図6は、材料層と下層またはトップコート層4とベースコート層5とを備える場合の二段階製造プロセスを示し、強度分布I(x)とI(x)とは、下層またはベースコート層5が部分的に露出されるように調節される。
【0183】
この二段階製造プロセスは、一実施態様の場合に、2つの互いに直接結合するが、ずれΔLだけずらされた加工ヘッドにより実現することができ、これらの加工ヘッドはそれぞれ少なくとも1つの集束装置20を含む。別のまたは補足的な実施態様の場合に、二段階製造プロセスは、1つまたは2つのビーム分割装置21と少なくとも2つの集束装置20とを備えた加工ヘッドにより実現することができる。基本的に、1つだけの入射するレーザービーム15から、1つのレーザー分割または複数のレーザー分割により、干渉するレーザービーム16と、ずれΔLだけずらされた付加的な干渉するレーザービーム18とを得ることができる。
【0184】
図5および/または6では、第一の加工段階のレーザービームは、特に干渉するレーザービーム16であるか、または好ましくはレーザービーム15の変換により得られた第一の干渉構造である。図5および/または6では、第二の加工段階の付加的なレーザービームは、特に付加的な干渉するレーザービーム18であるか、または好ましくはレーザービーム17の変換により得られた第二の干渉構造である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11