IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シー.アール.エフ. ソシエタ コンソルティレ ペル アツィオニの特許一覧

特許7346791手の人間工学的分析に関し、特に作業者の手の人間工学的分析用のセンサ搭載手袋及び対応する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】手の人間工学的分析に関し、特に作業者の手の人間工学的分析用のセンサ搭載手袋及び対応する方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 19/015 20060101AFI20230912BHJP
   A41D 19/04 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A41D19/015 140
A41D19/015 210A
A41D19/015 210Z
A41D19/04 Z
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018142920
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2019127677
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】18153288.8
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513318515
【氏名又は名称】シー.アール.エフ. ソシエタ コンソルティレ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディ パルド マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】パスケッタ ジョルジオ
(72)【発明者】
【氏名】モンフェリノ ロセッラ
(72)【発明者】
【氏名】ガロ フランチェスカ
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-523387(JP,A)
【文献】特開昭62-044827(JP,A)
【文献】特表2017-506169(JP,A)
【文献】特表2017-530452(JP,A)
【文献】国際公開第2004/114107(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/015
A41D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間工学的分析のために設計されたセンサ搭載手袋であって、
作業者の手の部分間の相対運動を検出するために構成された複数の伸縮計センサ(EXT)を有する内側手袋と、
掌側面全体に配置され、前記掌側面の対応する領域に加わる圧力を検出するために構成された複数の圧力センサ(PS)を有する外側手袋と
を含み、
前記内側手袋は背側面と掌側面とを含み、
第1の複数のポケットであって、それらのポケットの内側には対応する線状伸縮計(EXT)が収容される、第1の複数のポケットと、
第2の複数のポケットであって、実質的にU字形状をしており、前記手の掌面の部分の相対運動を検出するために構成された対応する線状伸縮計を収容する第2の複数のポケットと、を有し、
前記第1の複数のポケット及び前記第2の複数のポケットは前記内側手袋の前記背側面に設けられ、
前記外側手袋は背側面と掌側面とを含み、前記掌側面には第3の複数のポケットが含まれ、前記第3の複数のポケットは対応する圧力センサ(PS)を収容するために構成され、
握り方の複数のタイプを決定するべく、前記複数の伸縮計センサ(EXT)が、検出された前記相対運動に関する情報を出力し、前記複数の圧力センサ(PS)が、検出された前記圧力に関する情報を出力するように構成される、
センサ搭載手袋。
【請求項2】
前記外側手袋の前記掌側面は、前記第3の複数のポケットが設けられた、滑り防止材料で作られた層を有する、請求項1に記載のセンサ搭載手袋。
【請求項3】
各圧力センサ(PS)は、前記手の予め設定された領域に個々のセンサ(PS)を付けることなどを可能にするレイアウトを有するセンサーネットワークの一部である、請求項2に記載のセンサ搭載手袋。
【請求項4】
前記外側手袋そのものと、滑り防止材料で作られた前記層との間に、前記外側手袋の前記掌側面に広がる低摩擦係数の材料、好ましくはポリアミドで作られた層を含み、低摩擦係数の材料で作られた前記層は、前記第3の複数のポケットの各ポケットの壁を提供する、請求項2又は請求項3に記載のセンサ搭載手袋。
【請求項5】
前記外側手袋の前記背側面に配置された慣性センサを含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のセンサ搭載手袋。
【請求項6】
前記複数の伸縮計センサ(EXT)と、前記複数の圧力センサ(PS)とが、少なくとも部分的に重なり合った領域を有する、請求項1に記載のセンサ搭載手袋。
【請求項7】
粘着性材料で作られた複数のバンドを有し、前記複数のバンドは前記外側手袋の指に配置され、前記センサーネットワークの電気配線を抑えつけ、前記外側手袋の前記指に沿って前記電気配線の経路を設定するために構成される、請求項3に記載のセンサ搭載手袋。
【請求項8】
前記第3の複数のポケットは、個々の圧力センサ(PS)の挿入を容易にするための開口部を一辺に含み、
前記複数のバンドのうちの1つ又は複数が、前記第3の複数のポケットの対応するポケットの開口部のところまで、前記ポケットをふさいで前記圧力センサが偶発的に抜け出る可能性を抑制するような方法で円周方向に伸長する、請求項7に記載のセンサ搭載手袋。
【請求項9】
前記握り方の複数のタイプが、GRIP型(しっかり握る)、PALMAR型(掌で握る)、HOOK型(引っ掛けて握る)、及びPINCH型(つまんで握る)を含む、請求項1から8の何れか一項に記載のセンサ搭載手袋
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のセンサ搭載手袋によって、作業者の手の人間工学的分析を行うための方法であって、
前記内側手袋の前記複数の伸縮計センサ(EXT)から第1のセンサデータを受信する段階と、
前記第1のセンサデータを前記手のベクトルマップに関連付ける段階であって、前記ベクトルマップは、前記手の対応する関節に関連付けられた複数のノードと、前記複数のノードを互いに接合する複数の部分とを含み、ノードに関連付けられた1つ又は複数の伸縮計センサ(EXT)が、前記ノードに接続された一対の部分の間の相対角度位置を検出するために構成されており、それぞれの第1のセンサデータは、対応する前記ノードに接続された前記一対の部分の間の相対角度位置を含む、段階と、
前記外側手袋の前記複数の圧力センサ(PS)から第2のセンサデータを受信する段階であって、それぞれの第2のセンサデータは、その対応する圧力センサの領域で検出された圧力の情報を含む、段階と、
圧力センサ(PS)ごとに、前記ベクトルマップの前記複数のノードに対して、対応する前記第2のセンサデータの関数である合成力が加わる点の位置を決定する段階と
前記第1のセンサデータに基づき、前記第2のセンサデータと組み合わせて、前記手によって使用される握り方の複数のタイプを決定する段階と
を備える、方法。
【請求項11】
前記手によって使用される握り方のタイプを決定する前記段階は、
前記外側手袋の対応する圧力センサ(PS)に関連付けられた複数のマップ領域を含む圧力マップを定義する段階であって、各マップ領域はそれぞれの影響範囲を有する複数の高精度素子(SS)からなる配列であり、各高精度素子(SS)は、対応する前記圧力センサ(PS)の対応する影響範囲において検出された圧力値を表す情報に関連付けられる、段階と、
マップ領域ごとに関与閾値を定義する段階であって、各関与閾値は異なるタイプの握り方を代表する、段階と、
各マップ領域の前記複数の高精度素子(SS)によって提供された前記情報を記録し、前記情報を前記異なるタイプの握り方に適用され得る前記関与閾値と比較する段階と、
各マップ領域の前記複数の高精度素子(SS)によって提供された前記情報と、前記異なるタイプの握り方に適用され得る前記関与閾値との前記比較の結果に基づいて、握り方の前記タイプを決定する段階とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
決定された握り方の前記タイプを、前記第1のセンサデータに基づいて決定された姿勢情報と比較することで、握り方の前記タイプの前記決定に関して確認を行う段階をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記握り方の複数のタイプが、GRIP型(しっかり握る)、PALMAR型(掌で握る)、HOOK型(引っ掛けて握る)、及びPINCH型(つまんで握る)を含み、
前記GRIP型が、手の全ての領域にわたって存在する検出された前記圧力に基づいて決定され、
前記PALMAR型が、5本全ての指の中節骨及び末節骨に存在する検出された前記圧力に基づいて決定され、
前記HOOK型が、4本の指の基節骨及び中節骨並びに掌の上部に存在する検出された前記圧力に基づいて決定され、
前記PINCH型が、母指、示指、及び中指の中節骨及び末節骨に存在する検出された前記圧力に基づいて決定される、請求項10から12の何れか一項に記載の方法
【請求項14】
前記握り方の複数のタイプを決定する段階が、全体の圧力に対する残留圧力の比を考慮する段階を含む、請求項10から13の何れか一項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者、特に作業者の人間工学的分析用のシステムに関し、より具体的には、車両の組み立てに携わるライン作業者の動き、動作、姿勢の分析に適用されるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造産業及び金属工学産業では、作業者が一定の順序に並んだ繰り返し作業を行うように要求され、それについては、作業員の健康と身体に対する危険を防ぐために、人との間に最低限の人間工学的な適合性を保証することが必要になる。
【0003】
この状況において、金属工学産業、特に自動車産業は、複数の仕事が互いに全く異なり、それらの仕事が、製造の必要性によって決まる回数で1日の間に何回も行われることが特徴である。したがって、これらの動作について、必要に応じて、また必要な場合に、姿勢の矯正並びに/又は動き及び/若しくは動作の矯正を行うために、人間工学的評価を慎重に行うことが重要になる。
【0004】
先行技術に基づいて、本システム及び本方法を用いて行われ得る人間工学的分析は、概して以下の技法を利用する。
・人間工学的監視に携わる作業員によって行われる作業者の視覚的分析であり、このプロセスは、作業中の作業者の画像取得、及び作業員によるその後の分析に基づいており、このプロセスは大部分が手動で/経験的に行われ、その結果、主観的なバラツキに悩まされ、そのバラツキは制御可能ではあるが完全に除去することはできない。これはさらに時間的リソースの観点から、かなり要求が厳しい。
・画像及びビデオクリップによって、身体及び/又は長骨の一部の位置を取得し、こうして得られたデータを処理することであり、この方法は、主観的なバラツキが実質的になくても、人体の一部しかカバーされないという事実によって、及び/又は(人間工学的な目的にとって)読み取り分解能が低すぎるという事実によって著しく不利な立場になる。このことは、この方法が、人間工学的な主要指標を推定することに関連した必要性を満足させるには程遠いことを意味している。
【0005】
最後に、前述したことの一部結果として、現在知られているシステム及び方法を用いると、作業者の手に対して行われる人間工学的分析のあらゆる活動は実質的に実行不可能であり、リアルタイムで、且つ人間工学的監視に携わる作業員の主観性に関連しない客観的な手段で、この分析を実施することはさらに不可能である。
[本発明の目的]
【0006】
本発明の目的は、前述の技術的問題を解決することである。
【0007】
具体的には、本発明の目的は、観察段階での人間工学的分析用の方法サポートツール、及び同時に客観的で時間をかけずに実装できる設計を提供することを含む。作業者が作業場所で行う活動の分析方法の進展を詳細に参照して、組み立てラインの製品/プロセスパラメータを設計段階で改善するのに有用な因子、及び/又は作業場所の特性を最適化するのに有用な因子をこの分析から抽出する。
【0008】
さらに、本発明の目的は、本システムの一部を形成する複数の装置、例えば、身体の動きをキャプチャするための装置である表示装置、及び/又は手の動き及び力をキャプチャするための装置(例えば、加速度計、圧力センサなど)から人間工学的なデータを収集するための単一のインタフェースを提供することであってよい。
【0009】
さらに本発明の目的は、作業活動中の重要な動作を特定すること、及び/又は人間工学的観点から重要である主要な特徴を特定すること、及び/又は社内規格及び国際規格に準拠した人間工学的評価を提供すること、及び/又は姿勢データ及び動的データを高い再現性で収集し、その後、作業者の手に適用されるこれらのデータを分析するためのシステム及び方法を提供することを含む。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、センサ搭載手袋と、以降の特許請求の範囲の主題を形成する特徴を有する方法とによって実現され、これらは、本発明に関連して本明細書で提供される技術的教示の不可欠な部分を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
ここで、本発明は、単に非限定的な例として提供される添付図を参照して説明される。
図1】例として提供される、本発明の実施形態によるシステムのブロック図である。
図2】作業者、特にライン作業者の手に適用され得る、力のデータ及び位置データを収集するための装置の全体図である。
図2A図2の装置のキャリブレーションの位置を示す。
図3図2の装置の構成要素の頂面図である。
図3A図3Aの装置のセンサ要素の配置と、参照用の人体構造との間の相関関係を示す。
図4図2の矢印IVに基づく図である。
図4A】センサーネットワークの一例を示す。
図5図2の矢印Vに基づく図である。
図6図2の装置の特に指の軸に沿った、例として提供される断面図である。
図7】本発明による方法の前提を示す機能スキームを示す。
図8】本発明による方法の前提を示す機能スキームを示す。
図9A図2の装置の動作中に得られ得る、例として提供された結果を示す。
図9B図2の装置の動作中に得られ得る、例として提供された結果を示す。
図9C図2の装置の動作中に得られ得る、例として提供された結果を示す。
図10A図2の装置の動作中に得られ得る、例として提供された結果を示す。
図10B図2の装置の動作中に得られ得る、例として提供された結果を示す。
図10C図2の装置の動作中に得られ得る、例として提供された結果を示す。
図11A図2の装置の動作中に得られ得る、例として提供された結果を示す。
図11B図2の装置の動作中に得られ得る、例として提供された結果を示す。
図11C図2の装置の動作中に得られ得る、例として提供された結果を示す。
図12A図2の装置の動作中に得られ得る、例として提供された結果を示す。
図12B図2の装置の動作中に得られ得る、例として提供された結果を示す。
図12C図2の装置の動作中に得られ得る、例として提供された結果を示す
図13図2の装置及び本発明による方法を用いて検出され得る4つの状態を示す図である。
図14】本発明によるシステムのさらなる要素の概略図である。
図15図14に概略的に表された要素の好ましい実施形態を示す。
図16】本発明によるシステムの管理用ソフトウェアのインタフェース画面を示す。
図17】本発明によるシステムの管理用ソフトウェアのインタフェース画面を示す。
図18】本発明によるシステムの管理用ソフトウェアのインタフェース画面を示す。
図19】本発明によるシステムの管理用ソフトウェアのインタフェース画面を示す。
図20】部分「A」及び部分「B」をそれぞれ含み、作業者が行う仕事の一連の画像を取得するモードを示す。
図21】部分「A」及び部分「B」をそれぞれ含み、作業者が行う仕事の一連の画像を取得するモードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、人体又はその一部の動きを分析するための、具体的には、任せられた仕事を実行中の作業者の動きを分析するための、より具体的には、自動車部門の組み立てラインの作業者の動きを分析するための本発明によるシステムが全体として番号1で示されている。
【0013】
システム1は、以下のものを備える。
・好ましくは着用可能なセンサ搭載手袋として提供され、作業者の手によって行われる動きと、その動きによって加わる力とを検出するための少なくとも1つの装置2(図1のA)。
・センサ、好ましくは慣性センサのウェアラブルネットワーク4(図1のB)。当該センサは、対応する人体の関節に関連付けるようにネットワーク内に位置している。ウェアラブルネットワークは好ましくは、衣服又は衣服一式(一着の作業ズボンなど)に組み込まれている。
・後の人間工学的評価の目的で、作業エリア内の作業者の画像を取得するように構成された1つ又は複数のカメラを含む画像取得システム6(図1のC)。複数のカメラが提供される場合、異なるカメラが異なる撮影角度に関連付けられてよい。
・センサ搭載手袋2及び/又はウェアラブルセンサネットワーク4及び/又は画像取得システム6からのデータ及び/又は信号を受信するように構成され、また当該データ及び/又は信号を処理して、人間工学的な指標を推定する、並びに/又は行われた作業及び/若しくは姿勢に関する局所的な情報を取得するように構成された処理部8。
【0014】
図2を参照すると、本発明による装置2の実施形態が示されている。本装置は、二重構造のセンサ搭載手袋として提供される。具体的には、手袋2は、内側手袋10(図3)と外側手袋12(図2図2A図4図5)とを含み、全ての場合において、手袋10の存在を暗に含んでいる。
【0015】
図3を参照すると、内側手袋10(例えば、Cyberglove(登録商標)のブランド名で市販されているセンサ搭載手袋であってよい)は、人の手の様々な部分(手首の骨、中手骨、及び指骨)の位置及び相対運動を検出し、それらに関するデータを処理部6に送信するように構成されている。このために、手袋10は、第1の複数のポケット14を含む。それらのポケットは、手袋の変形を追従するという危険を冒すことなく、手の動きをより忠実に追従するように手袋10の内側に縫いつけられており、好ましくは長方形の形状を有し、対応する線状伸縮計EXTを内部に収容する(図6)。
【0016】
その代わりに、実質的にU字形状をした第2の複数のポケット16が手袋10の外面に縫いつけられており、対応する線状伸縮計を収容する。線状伸縮計は、ポケットがU字形状であるために、手の様々な部分、例えば掌面の相対運動(例えば、指を大きく広げる動き)を検出することが可能である。
【0017】
図3Aは、手袋10に取り付けられた伸縮計によって提供されるデータとのインタフェースに用いられ得るベクトルマッピングの一例を示す。ベクトルマップは、図8を参照して後述されるように、本発明による、作業者の手の動きを検出するための方法の基礎をなす。
【0018】
さらに図3Aのベクトルマップには、好ましくは手袋10の伸縮計によって検出された動きの座標を関係づけるために採用され得る局所系の軸が存在する。具体的には、平面XZは掌面であり、平面XYは横断面であり、平面YZは矢状面である。
【0019】
図2図4、及び図5を参照すると、外側手袋12は、掌と(図4)その裏面(図5)の両方が、例えば(好ましくは手袋10のように)伸縮性コットンなどの繊維材料で作られている。これにより、外側手袋12と内側手袋10との結合がより安定且つ正確になる。握りを改善するために設計された、例えばAlcantara(登録商標)などの滑り防止材料で作られた第2の層18が掌4に付けられている。
【0020】
対応する圧力センサPS(図4Aを参照)を収容するように構成された、好ましくは四角形の複数のポケット20が、(外側の)層18に縫い付けられている(又は別の方法で付けられている)。実質的にフィルム型支持材上に設けられるセンサの挿入を容易にするために、各ポケット20は、複数の辺のうち少なくとも1つの辺が縫われていない(ポケットが四角形の場合、好ましくは、3つの辺だけが縫われている)。さらに、外側手袋12の掌に対応する部分の層18の下に、好ましくはポリアミド層が設けられる。ポリアミド層は、センサをポケット20に挿入するのを容易にする。
【0021】
各圧力センサは、個々のセンサPSを手の所定の部分に付けることを可能にするようなレイアウトを有するセンサーネットワーク22の一部を形成する。そのようなセンサーネットワークの一例が(外に広がった、実質的にツリー状の構成で)図4Aに示されており、好ましくは、Tekscan(登録商標)のブランド名で市販されている製品に対応してよい。このセンサネットワークはさらに、図2において部分的に見えている。センサーネットワーク22は圧力センサPSに接続された複数の電気配線部を含み、全ての電気配線部はインタフェースユニット24につながり、これにより、処理部8又はいずれにせよ意図的に構成されたあらゆる処理部とのデータの交換が可能になる。
【0022】
センサーネットワーク22の一部を形成する電気配線のより規則的で合理的な経路設定を確実にするために、1つ又は複数のバンド26が外側手袋12、特に裏面の指の部分に付けられる。これらのバンド26は好ましくは、Velcro(登録商標)などの粘着性材料で作られており、ネットワーク22の電気配線を抑えつけ、外側手袋12の指に沿って電気配線の経路を選択的に設定する。本発明の有利な態様によれば、バンド26が外側手袋12に配置された瞬間に、ポケット20をふさぐような方法で、ポケット20のうちの1つの開口部まで円周方向に伸長してよい。これにより、ネットワーク22の圧力センサが偶発的に抜け出る可能性が抑制又は排除される。
【0023】
繰り返しになるが、好ましくは、外側手袋12には、指に対応する位置に伸縮性リボンを用いて得られ、指自体の長手方向に向かう挿入部が設けられてよい。これにより、異なる指の太さの範囲にうまく適合することが可能になる。
【0024】
外側手袋12の裏面(背側面)にはさらに、粘着性材料(例えば、Velcro)で作られた固定部分が設けられ、これにより、慣性センサ28を迅速な方法で固定することが可能になり、後の図14及び図15を参照して説明されることになるシステムなどのより複雑なシステムの枠組みで手袋が用いられる場合に、手袋2に絶対的な位置基準を設けることを可能にする。
【0025】
インタフェース24は、図2に示されるように、作業者の手首にバンドで固定される。
【0026】
再度図3を参照すると、ポケット14、16の線状伸縮計EXTとポケット20の圧力センサPSとの間の相対位置を強調するように、ポケット20のマップが、内側手袋10の図に重ね合わされている(破線と二点鎖線で示されている)。
【0027】
ここで、内側手袋10のセンサ(伸縮計EXT)によって提供される位置/動きのデータと、手袋12のセンサPSによって提供される圧力データとを統合する好ましいモードの説明が続く。データ伝送プロトコル、例えば、UDPタイプのデータ伝送プロトコルを用いて、手袋10のセンサと手袋12のセンサとの通信を設定することが可能である。
【0028】
手袋10のセンサは、図3Aの参照符号Jで特定された22箇所の手関節の角度及び座標を出力データとして提供する。しかしながら、これらのセンサは、指の先端の座標に関する情報を提供するような方法で構成されていない。後者は、計算が必要なデータである。
【0029】
[指の先端の座標計算]
この計算のために、下記に列挙された仮説が採用される(図7を参照)。
i)中手骨から始まる指の各部分の参照用語は、基節骨(付け根部分)、中節骨(中間部分)、末節骨(先端部分)である。
ii)半径Rが既知の別個の球体が5個あると考える。半径Rの値は、各末節骨の予め設定された長さ(この長さは、統計的に最も代表的な末節骨の寸法に基づいて推定される)に等しく、nは1~5の範囲のインデックスである。5個の球体のそれぞれは、対応する中節骨の端部、したがって、TD、ID、MD、RD、及びPD(最初の文字は、「母指(Thumb)」、「示指(Index finger)」、「中指(Middle finger)」、「薬指(Ring finger)」、「小指(Pinky)」を表す)の点を中心とする(図8を参照)。
iii)中節骨に対する末節骨の外転運動と、基節骨に対する中節骨の外転運動は0であるとみなされる。
【0030】
再度図7を参照すると、それぞれの指は完全にまっすぐであり、それぞれの指の先端(P)は中節骨の2つの端部(P及びP)を通過する直線に属する点であると仮定する。ここで、Pは中節骨と末節骨とが接触する端点である。この状態は、(Pによっても満たされる)連立方程式の形で書き表すことができ、座標y及び座標zをxの関数として表すことを可能にする(基準系は、内側手袋10に用いられたものと同じである)。
(x-x)/(x-x)=(z-z)/(z-z
(x-x)/(x-x)=(y-y)/(y-y
【0031】
も、Pを中心とする半径Rの球体に属し、半径Rは既知の(既定の)長さであり、末節骨の長さに対応する。
【0032】
生理学的には、末節骨(PとPの間)は中節骨(PとPの間)より短い。したがって、R<Lと考えることができる。
R=dist(P,P)=[(x-x+(y-y+(z-z1/2
L=dist(P,P)=[(x-x+(y-y+(z-z1/2
注記:長さを扱っていると考えれば、2つの解のうち、正符号を持つ解が選択される。
【0033】
前述の直線(中節骨の2つの端部を通過する直線)を、Pを中心とする半径Rの球体と交差させることで、2つの点が求められ、その1つが点Pである。
【0034】
上記に提供された直線の式を用いて、y及びzをxの関数として以下のように表す。
(x-x[1+(y-y/(x-x+(z-z/(x-x]=R
これを解くと、xA1及びxA2という解が得られる。
A1=x+R/L、及び、xA2=x-R/L
【0035】
正しい解は、次の条件を満たす方の解である。
dist(P,P)>L
ここで、
A1=P(xA1,yA1,zA1)=(x+R/L,y+(y-y)(xA1-x)/(x-x),z+(z-z)(xA1-x)/(x-x))
A2=P(xA2,yA2,zA2)=(x-R/L,y+(y-y)(xA2-x)/(x-x),z+(z-z)(xA2-x)/(x-x))
【0036】
は既知であるため、三角法により、次式が得られる。
dist(P,P)=2Rsin(β/2)=R
ここで、βは、対応する伸縮計EXTによって与えられる屈曲角である。
【0037】
の座標を求めるために、PとPとの間の距離(dist(P,P))に等しい半径を持ち、Pを中心とする球体を、次のように考察してみる。
[(x-x+(y-y+(z-z]=dist(P,P)=R
【0038】
上記式は、P=(x,y,z)の座標を得るために、次のようにも書き改めることができる。
[(x-x)-(x-x)]+[(y-y)-(y-y)]+[(z-z)-(z-z)]=R
(x-x-2(x-x)(x-x)+(x-x+(y-y-2(y-y)(y-y)+(y-y+(z-z-2(z-z)(z-z)+(z-z=R
dist(P,P)+dist(P,P)-2[(x-x)(x-x)+(y-y)(y-y)+(z-z)(z-z)]=R
+R-2x(x-x)+2x(x-x)-2y(y-y)+2y(y-y)-2z(z-z)+2z(z-z)=R =4Rsin(β/2)
【0039】
は、P、P、Pの点を通過する平面π(ax+by+cz+d=0)にあるとすれば、
a=-2x(x-x) => x=a/2(x-x
b=-2y(y-y) => y=b/2(y-y
c=-2z(z-z) => z=c/2(z-z
したがって、
=(x,y,z)=(a/2(x-x),b/2(y-y),c/2(z-z))
【0040】
これは、とりわけ母指のP及びPの定義に関しては近似解であるが、問題の計算のためには許容できるとみなされる。
【0041】
[手に加わる力ベクトルの計算]
最初に、力ベクトルの基準方向及び向きを定義することが必要であり、これらの力ベクトルはそれぞれ、各指骨の中点、あるいは掌の場合には、図8の縁取り矢印で表されるベクトルに関連した点に加わるものとみなされる。
【0042】
方向を定義するために、3つの指骨の3つの点(例えば、中手骨と基節骨との間の点IM、基節骨と中節骨との間の点IP、及び中節骨と末節骨との間の点ID)を通過する平面πと、中点において各指骨を通過しπと直交する平面π´との交差部分が求められる(これは、指骨の直交性の状態を示唆し、つまり、指骨が柔軟ではなく、他の指骨に隣接していると考えれば、指骨を含む平面と直交する平面は、指骨と直交する)。
【0043】
πがIM、IP、及びIDの点を通過するとすれば、平面の式(ax+by+cz+d=0)は、次のようになる。
(x-xIM)[(yIP-yIM)(zIP-zIM)-(yID-yIM)(zIP-zIM)]+(y-yIM)[(xIP-xIM)(zID-zIM)-(xID-xIM)(zIP-zIM)]+(z-zIM)[(xIP-xIM)(yID-yIM)-(xID-xIM)(yIP-yIM)]=0
したがって、
a=(yIP-yIM)(zIP-zIM)-(yID-yIM)(zIP-zIM
b=(xIP-xIM)(zID-zIM)-(xID-xIM)(zIP-zIM
c=(xIP-xIM)(yID-yIM)-(xID-xIM)(yIP-yIM
d=-xIM[(yIP-yIM)(zIP-zIM)-(yID-yIM)(zIP-zIM)]-yIM[(xIP-xIM)(zID-zIM)-(xID-xIM)(zIP-zIM)]-zIM[(xIP-xIM)(yID-yIM)-(xID-xIM)(yIP-yIM)]
【0044】
平面πと直交する第2の平面π´を決定するには、各平面を特定する2つのベクトルの直交性の条件(法線ベクトル、すなわち2つのベクトルのスカラー積は0でなければならない)と、問題の指骨の中点(例えば、点IMM)を通る第2の平面π´の経路a´x+b´y+c´z+d´=0を指定すれば十分である。
【0045】
ベクトル(a,b,c)に対する直交性の条件を満たすベクトルも、前に定義された平面に属してよく、したがって、指骨の部分(例えば、IP-IM)も、そのようなベクトルを構成してよい。すなわち、
IP-IM=[(xIP-xIM),(yIP-yIM),(zIP-zIM)]
【0046】
指骨の中点(IMM=[(xIP+xIM)/2,(yIP+yIM)/2,(zIP+zIM)/2])を通る経路を指定すると、第2の平面の式を次のように書き表すことが可能である。
a´(xIMM)+b´(yIMM)+c´(zIMM)+d´=0
(xIP-xIM)(xIP+xIM)/2+(yIP-yIM)(yIP+yIM)/2+(zIP-zIM)(zIP+zIM)/2+d´=0 =>
a´=(xIP-xIM
b´=(yIP-yIM
c´=(zIP-zIM
d´=(xIM -xIP )/2+(yIM -yIP )/2+(zIM -zIP )/2
【0047】
2つの平面の式を1つの系に集約すると、ベクトルの方向を特定し、指骨の中点(この例ではIMM)を通過する交差直線が解として求まる。
【0048】
力ベクトルを定義する向きも特定することが必要なので、直線と球体との交差点を考察することが可能であり、球体はその点(そのような交差点は2つある)に加わる力の絶対値に等しい半径を有する。
【0049】
この点は、中点PIMMを中心とし、ポケット20に対応する点のセンサPSにより検出される圧力の総和に等しい半径Rを有する、球体の南極(South pole)、すなわち、指の先端に関連付けられる点として定義されてよい。
【0050】
デカルト座標では、PIMMを中心とする半径Rの球体は、以下の式で表される。
(x-xIMM+(y-yIMM+(z-zIMM=R
【0051】
前述の2つの平面の交差直線との交差点は、2つのベクトルの端部を定義し、求められるベクトルは、それらの間に含まれる(力の向きの定義)。
【0052】
2つの平面の式を1つの系に集約すると、第1の式からx=(-by-cz-d)/aが得られ、第2の平面の式y=(-a´x-c´z-d´)/b´に代入すると、y及びxの両方をzの関数として表し、次式を得ることが可能である。
y=z(a´c-c´a)/(b´a-ab´)+(a´d-d´a)/(a´c-c´a)=Az+B
x=z[(b(a´c-c´a)+c(b´a-a´b))/a(a´b-b´a)]+[(b(d´a-a´d)+d(c´a-a´c))/a(a´c-c´a)]=Cz+D
ここで、
A=(a´c-c´a)/(b´a-ab´)
B=(a´d-d´a)/(a´c-c´a)
C=[(b(a´c-c´a)+c(b´a-a´b))/a(a´b-b´a)]
D=[(b(d´a-a´d)+d(c´a-a´c))/a(a´c-c´a)]
【0053】
上記の式は、a≠0且つa´c≠c´a且つa´b≠b´aの場合にだけ用いられる。
【0054】
x及びyを球体の式に代入すると、2つの座標z及びzが得られる(これらの座標は、実数の集合に属し、この式の判別式はどのような場合でも正、すなわち、(β-4αγ)>0であることを確認することが望ましい)。
【0055】
α=(C+A+1)
β=2[C(D-xIMM)+A(B-yIMM)-zIMM)]
γ=-R+(D-xIMM+(B-yIMM+zIMM
と仮定すると、
=[-β-(β-4αγ)1/2]/2α
=[β-(β-4αγ)1/2]/2α
が得られる。
したがって、
=P(x,y,z)=(C[-β-(β-4αγ)1/2]/2α+D,A[-β-(β-4αγ)1/2]/2α+B,[-β-(β-4αγ)1/2]/2α)
=P(x,y,z)=(C[+β-(β-4αγ)1/2]/2α+D,A[+β-(β-4αγ)1/2]/2α+B,[+β-(β-4αγ)1/2]/2α)
【0056】
正しい三つ組(triad)は、母指の先端PTXに対応する座標からの距離が短い方、すなわち、
IMMF(x,y,z)=min(dist(P,PTX),dist(P,PTX))
である。ここで、
dist(P,PTX)=[(x-xIMMF+(y-yIMMF+(z-zIMMF1/2
であり、
dist(P,PTX)=[(x-xIMMF+(y-yIMMF+(z-zIMMF1/2
である。
【0057】
デカルト形式の平面であるためには、それを特定する全ての係数(この平面と直交するベクトル)は、同時に0になることはあり得ず、したがって、同時にa=b=c=0にはなり得ない。
【0058】
a=0の場合、以下の興味深い非退化のケースが求められ得る。すなわち、
a=b=0且つc≠0
a=0且つb≠0且つcは任意の値
【0059】
a=b=0且つc≠0であると、z=-d/cとなり、b´≠0とb´=0の2つのサブケースが可能になる。
【0060】
a=b=0且つc≠0の場合、zをπ´に代入すると、a´が0になる可能性があるか、b´が0になる可能性があるかに基づいて、xの関数としてy(又はyの関数としてx)を求めることが可能になる。
【0061】
a´=0且つb´≠0の場合、y=(c´d-d´c)/cb´とz=-d/cとが得られ、これらを球体の式に代入すると、次式で表されるx及びxという解が与えられる。
=xIMM-[(R-(-d/c-zIMM-((c´d-cd´)/cb´-yIMM1/2
=xIMM+[(R-(-d/c-zIMM-((c´d-cd´)/cb´-yIMM1/2
したがって、
=P(x,y,z)=(xIMM-[(R-(-d/c-zIMM-((c´d-cd´)/cb´-yIMM1/2,(c´d-cd´)/cb´,-d/c)
=P(x,y,z)=(xIMM+[(R-(-d/c-zIMM-((c´d-cd´)/cb´-yIMM1/2,(c´d-cd´)/cb´,-d/c)
【0062】
正しい三つ組は、母指の先端PTXに対応する座標からの距離が短い方、すなわち、
IMMF(x,y,z)=min(dist(P,PTX),dist(P,PTX))
である。ここで、
dist(P,PTX)=[(x-xIMMF+(y-yIMMF+(z-zIMMF1/2
であり、
dist(P,PTX)=[(x-xIMMF+(y-yIMMF+(z-zIMMF1/2
である。
【0063】
a´≠0且つb´=0の場合、x=(c´d-d´c)/a´cとz=-d/cとが得られ、これらを球体の式に代入すると、次式で表されるy及びyという解が与えられる。
=yIMM-[(R-(-d/c-zIMM-((d´c-cd´)/ca´-xIMM1/2
=yIMM+[(R-(-d/c-zIMM-((d´c-cd´)/ca´-xIMM1/2
したがって、
=P(x,y,z)=(yIMM-[(R-(-d/c-zIMM-((d´c-cd´)/ca´-xIMM1/2,(c´d-d´c)/a´c,-d/c)
=P(x,y,z)=(yIMM+[(R-(-d/c-zIMM-((d´c-cd´)/ca´-xIMM1/2,(c´d-d´c)/a´c,-d/c)
【0064】
正しい三つ組は、母指の先端PTXに対応する座標からの距離が短い方、すなわち、
IMMF(x,y,z)=min(dist(P,PTX),dist(P,PTX))
である。ここで、
dist(P,PTX)=[(x-xIMMF+(y-yIMMF+(z-zIMMF1/2
であり、
dist(P,PTX)=[(x-xIMMF+(y-yIMMF+(z-zIMMF1/2
である。
【0065】
したがって、この計算に続いて、関節Jの位置に対してセンサPSが示す値から得られる力が手の様々な領域に加わる中点が知られており、これらの姿勢データは伸縮計EXTによって収集される。
【0066】
これにより、力そのものの方向を定義することが可能になる。
【0067】
手袋2の作用が以下に説明されている。
【0068】
手袋2は、(慣性センサ28が手袋に存在する場合に)手に関する姿勢情報を取得するために、圧力が作用する面の対応する向き(様々なセンサにかかる力の方向)を伴った圧力の強度値が、合成力に関連する場合、合成力の方向を取得するために、そして主として、指の姿勢が、検出されている姿勢に最も関係している指によって加えられる圧力に関連している場合、作業者によって使用される握り方のタイプを認識するために用いられてよい。
【0069】
具体的には、4つの異なるタイプの握り方が検出され得る。
a)しっかり握る(GRIP):これは例えば、関節に対応する位置に置かれたアングルナットランナを握るときに使用される握り方のタイプである。試験目的で(その結果が図9A図9Cに現れている)、この握り方は、中立姿勢から始まる3秒の間のねじ締め作業をシミュレーションして行われた(「中立姿勢」とは、静止状態の手、すなわち、どのタイプの握り方も使用せず、いかなる負荷もセンサで検出されていない姿勢をした手を意味する)。
b)掌で握る(PALMER):これは例えば、標準分銅を持ち上げるときに使用される握り方のタイプである。試験目的で(その結果が図10A図10Cに現れている)、2kgの標準分銅が選択されており、その分銅を(中立姿勢から始まり)ベンチから拾い上げて持ち上げ、この姿勢を3秒間維持し、その後、分銅をベンチの元の位置に戻す。
c)引っ掛けて握る(HOOK):これは例えば、加工された取っ手が付いた既知の重量を有するバケツを持ち上げるときに使用される握り方のタイプである。試験目的で(その結果が図11A図11Cに現れている)、5.8kgの重量を有するバケツが選択されており、このバケツを(中立姿勢から始めて)腕が完全に伸びる地点に達するまで地面から持ち上げ、この姿勢を3秒間維持し、バケツを床に戻す。
d)つまんで握る(PINCH):これは例えば、ねじを作業面から拾い上げる瞬間に使用される握り方のタイプである。試験目的で(その結果が図12A図12Cに現れている)、(中立姿勢から始まる)以下の作業を含む順序が検討された。つまり、ねじを作業面から拾い上げ、そのねじをナットに置き、手動でそのねじをナットに5回転締め付けてねじ締めする。
【0070】
握り方のタイプを認識するための情報を集めるために、複数の作業員に対してキャリブレーションテストが行われる。
【0071】
例として提供される場合において、以下の作業方式に従って、12人の作業員に対してキャリブレーションが行われた。
1)力の範囲を評価するために、各作業員の最大の力を求める。これは、握力計及びピンチメータなどの器具を最大の力まで用いることを想定し、3回繰り返した。
2)5kgの力で握力計を握って3秒間一定に保ち、これを5回繰り返すことで、力のデータを取得する際の正確さとバラツキ(期待値からの偏差と平均値)を求める。
3)握り方のタイプ(GRIP/PINCH/PALMAR/HOOK)の認識を評価する。一連の4つのタイプの握り方が連続して行われ(各タイプの握り方の間は、中立姿勢をとる)、これを3回繰り返した。
【0072】
PINCHの場合(ピンチメータを用いる)とGRIPの場合(握力計を用いる)の両方について、各作業員によって加えられる最大の力を求める(上記の項目1)を参照)ことで、以下のことが可能になる。
・キャリブレーションテストとその結果(及び、一般に今後取得される結果)が統計的に位置する力の範囲を求める。
・握り方のタイプごとに利用可能なサンプルについて、様々な被験者間の力を加える能力のばらつきを求める。
・最も力の弱い作業員の最大の力より低い最小閾値を定義し、握り方のタイプを認識するソフトウェアの論理に用いられる基準に関連付ける。
【0073】
このサンプルにおいて、最も力の弱い作業員が最小閾値を超えることが可能な場合、サンプルの全ての構成要素に対して所与のタイプの握り方を特定することが可能であるという妥当な確実性がある。すなわち、最も力の弱い被験者が最小閾値に達する場合、最も力の強い被験者は確実に、その作動値に達し、これを(十分に)超えることができる。最小閾値によって、握り方のタイプの認識が有効になり、あらゆる背景雑音、又は握り方のタイプに起因しないセンサの作動をフィルタリングする。
【0074】
次に、センサ(PS)によって取得された圧力マップが、様々なタイプの握り方に関係する手の領域を特定するために、12人の被験者全ての様々な姿勢に対して分析された。
【0075】
様々なタイプの握り方の間に様々な被験者によって加えられた圧力/力の値が、試験の実行の主観性に起因する値のばらつきを評価するために求められた。
【0076】
センサPSによって取得された圧力マップから得られる結果は、様々なタイプの握り方の定義を可能にする圧力に部分的に関係する様々な姿勢を強調している。これが意味することは、姿勢及び圧力からなる所与の構成によって、どのタイプの握り方が使用されているかを自動的に認識するために、特定のタイプの握り方の特定に(役立つ)こと、したがって(手段として)その基準状態を定義することが可能になるということである。
【0077】
[握り方のタイプ「GRIP」(図9A及び図9B)]
図9Aの圧力マップは、ハンドピースに圧力を加えた際の、一般化された手全体の関与を示す。図9Bの図を参照すると、様々な作業者に対して検出された力の値に、一定の変動が認められ得る。図9Bの図には(次の図10B図11B図12Bにも当てはまることだが)、手の掌に加えられ、圧力センサによって検出された力の平均値のプロットがグラフに表されている(その等高線図が、色の濃淡に基づく活性化の相対強度を用いた図9Aに見ることができる)。各センサの平均圧力を検出に関わる面積で乗じると、平均的な力の値(F)が与えられ、様々なセンサで検出された力(F)の平均値は、時系列で表された力Fである。これは、圧力を取得する器具によって与えられるデータである。
【0078】
[握り方のタイプ「PALMAR」(図10A及び図10B)]
図10Aの圧力マップは、圧力を加えることに概ね関わる領域は、5本全ての指の中節骨及び末節骨であることを示している。手のその他の部分のノイズは、概して、手によって加えられる全体の力の20~30%以下であることが分かる。
【0079】
図10Bのグラフを参照すると、様々な作業者の検出された力の値に、一定の変動が認められ得る。
【0080】
[握り方のタイプ「HOOK」(図11A及び図11B)]
図11Aの圧力マップは、圧力を加えることに概ね関わる領域は、4本の指の中節骨及び末節骨並びに掌の上部であることを示している。手のその他の部分のノイズは、手によって加えられる全体の力の20%以下である。
【0081】
図11Bのグラフを参照すると、様々な作業者の検出された力の値に、一定の変動が認められ得る。
【0082】
[握り方のタイプ「PINCH」(図12A及び図12B)]
図12Aの圧力マップは、圧力を加えることに概ね関わる領域は、母指、示指、及び中指の中節骨及び末節骨であることを示している。手のその他の部分のノイズは常に存在し、それは概して、手によって加えられる全体の力のおよそ30~40%である。
【0083】
図12Bのグラフを参照すると、様々な作業者の検出された力の値に、一定の変動が認められ得る。
【0084】
[握り方のタイプを認識する論理]
握り方のタイプごとに、前述の圧力マップの分析に基づいて、手そのものによって加えられる圧力の大部分が集中するはずである所与の手の領域が選択された。
【0085】
握り方のタイプの認識については、その握り方に関わる手の領域の圧力及び位置が分析され、検証として、手の残りの領域の圧力及び姿勢も分析された。それが図9C図10C図11C、及び図12Cに示されている。特に、閾値よりも高い圧力の測定値が確認されると予測される領域が線で囲まれている。
【0086】
代わりに、握り方のタイプごとに、ノイズの集中(該当する場合)が予測される圧力マップの領域が、ぎざぎざの輪郭で囲まれている。このグループの図の各図に見える圧力マップは、ポケット20のセンサPSにそれぞれ関連付けられた一組のマトリックスとして配置されている。各マトリックスの各セル(SSによって示される、いわゆるセンセル(sensel))は、対応する影響範囲のセンサPSの高精度素子によって検出された値を含む。
【0087】
[GRIP型の握り方]
図9Cを参照すると、GRIP型の握り方の場合、圧力は手の17箇所全ての領域にわたって存在するはずである。センセルSSは全て、すなわち、本明細書で示される具体例の361個のセンセルは、GRIP型の握り方に関係している。このタイプの握り方の場合に加えられる全体の圧力は、中立姿勢の圧力値よりも少なくとも30%高くなるはずである。大部分の場合では、圧力は、指の部分及び掌の外側下部の部分(L字型センサ)に集中する。手の姿勢は、握り方に対応するはずである。
【0088】
[PALMAR型の握り方]
PALMAR型の握り方の場合、圧力は、主に5本全ての指の中節骨及び末節骨に集中するはずである。掌の領域といかなる接触もあってはならない。この具体例におけるPALMAR型の握り方に関係するセンセルSSは、全部で140個(全体の領域のうち38%)である。この領域では、圧力は、全体の圧力の少なくとも51%になるはずである。
【0089】
手のその他の部分には、残留圧力(ノイズ)が残る場合があるが、全体の圧力の49%を超えてはならない。4本の指の間の外転運動の角度は、PINCH型の握り方の角度と区別するために、5度よりも大きくなるはずであり、手の姿勢はこの握り方に対応するはずである。
【0090】
[HOOK型の握り方]
HOOK型の握り方の場合、圧力は、4本の指の基節骨及び中節骨並びに掌の上部に集中するはずである(吊り上げ)。この具体例におけるHOOK型の握り方に関係するセンセルSSは、全部で172個(全体の領域の48%)である。この領域では、圧力は、全体の圧力の少なくとも51%になるはずである。母指には圧力がかかっていてはならない。すなわち、母指に存在するあらゆるノイズは、中立姿勢で取得された値を超えてはならない。手のその他の部分(特に末節骨)では、残留圧力が残る場合があるが、全体の圧力の49%を超えてはならない。手の姿勢は、握り方に対応するはずである。
【0091】
[PINCH型の握り方]
3本の指を使ったPINCH型の握り方の場合、圧力は、母指、示指、及び中指の中節骨及び末節骨に主に集中するはずである。この具体例における3本の指を使ったPINCH型の握り方に関係するセンセルSSは、全部で84個(全体の領域の23%)である。この領域では、圧力は、全体の圧力の少なくとも51%になるはずである。母指には、圧力が常にかかっているはずである。手のその他の部分には、手の曲げに起因して、残留圧力(ノイズ)が残ることがたびたびあるが、全体の圧力の49%を超えてはならない。示指と中指との間の外転運動の角度は、5度未満のはずである。手の姿勢は、握り方に対応するはずである。
【0092】
手の姿勢を説明する角度は、内側手袋10の伸縮計EXTを介して収集されたデータのおかげで、試験中に求められた。被験者内の試験の様々な繰り返しにおいて、手の関節の角度に一定の再現性が検出された。例として、図13は関節MPJについて取得された角度を示す。関節MPJは、図3で用いられたのと同じ参照符号でマークされ、中指と掌とが出会う点に対応する。
【0093】
要するに、センサ搭載手袋2によって、作業者の手の人間工学的分析のための方法を提供することが可能であり、本方法は次の段階を含む。
・内側手袋10の複数の伸縮計センサEXTから第1のセンサデータを受信する段階。
・前述されたように、手の対応する関節に関連付けられた複数のノードを含む手のベクトルマップと、当該ノードを互いに接合する複数の部分とに第1のセンサデータを関連付ける段階であって、ノードに関連付けられた1つ又は複数の伸縮計センサ(EXT)は、当該ノードに接続された一対の部分間の相対角度位置を検出するために構成され、それぞれの第1のセンサデータは、対応するノードに接続された一対の部分間の相対角度位置を含む、段階。
・外側手袋12の複数の圧力センサPSから第2のセンサデータを受信する段階であって、それぞれの第2のセンサデータは、対応する圧力センサPSの領域で検出された圧力に関する情報を含む、段階。
・圧力センサPSごとに、対応する第2のセンサデータの関数である、上記ベクトルマップ(前述の説明を参照)のノード(関節J)に対する合成力が加わる点の位置を決定する段階。
・第2のセンサデータと組み合わせた第1のセンサデータに基づいて、手によって使用される握り方のタイプを決定する段階。
【0094】
具体的には、手によって使用される握り方のタイプを決定する、本発明の一部を形成する本方法は、以下の段階を含む。
・外側手袋12の対応する圧力センサPSに関連付けられた複数のマップ領域を含む圧力マップを定義する段階であって、各マップ領域はそれぞれの影響範囲を有する高精度素子SSからなる配列であり、各高精度素子SSは、対応する圧力センサPSの対応する影響範囲において検出された圧力値を表す情報に関連付けられる、段階。
・マップ領域ごとに関与閾値を定義する段階であって、各関与閾値は、マップ領域の高精度素子SSの総数全体に含まれる一部の高精度素子SSとして定義され、異なるタイプの握り方を代表する、段階。
・各マップ領域の高精度素子SSによって提供された情報を記録し、その情報を異なるタイプの握り方に適用され得る関与閾値と比較する段階であって、これに関連して、それぞれの握り方のタイプは、問題となっている握り方に対して予測される状況を説明した一組の独自の関与閾値を含み得る、段階。
・各マップ領域の高精度素子SSによって提供された情報と、異なるタイプの握り方に適用され得る関与閾値との比較結果に基づいて、握り方のタイプを決定する段階。
【0095】
最後に、握り方のタイプの決定をクロスチェックするために、第1のセンサデータ及び第2のセンサデータを用いることが可能であることに留意されたい。具体的には、圧力マップのマッピング領域からの情報の記録に基づいて決定された情報は、内側手袋10の伸縮計センサEXTによって再構成された姿勢データに基づいて決定された情報と一致するはずである。
【0096】
図14及び図15を参照すると、本発明によるシステムに用いられ得るウェアラブルセンサネットワーク4が、好ましくは1本のセンサ搭載作業ズボン(ワンピース又はツーピース)として、又は1つ若しくは複数の慣性センサ(又は一般にセンサ)をそれぞれ保持し、姿勢の角度及び身体の所定の点におけるデカルト座標に関する指標を提供するように設計された着用可能な付属品30(例えば、バンド、ベルト、ジャケットなど)一式として提供される。そのようなウェアラブルネットワークの一例が、Xsens Technologies B.V.社(オランダ、エンスヘーデ7500、私書箱559)製のセンサ搭載スーツによって代表される。
【0097】
ウェアラブルネットワーク4に取り付けられ得るセンサは、以下のものを組み合わせて、又は互いの代替品として含む。すなわち、3次元空間で加速度を測定するための加速度計、地球の重力の向きを測定するためのジャイロスコープ、及び/又は系の共通基準(すなわち地球の磁場)を有するための磁気計である。
【0098】
ウェアラブルセンサネットワーク4は、センサ30が作業員の身体の対応する部分に位置していることを想定する。作業員の身体にこれらの部分は、図14に示され4RIFで表示される人体骨格の基準体系と一致する。
【0099】
基準体系4RIFは、人体骨格の関節を定義するための関節要素によって接続された人体骨格の骨を定義するための線分要素を含む。関節要素は好ましくは、点状の要素であり、基準であるjC1Head、jT1C7、jT9T8、jL1T12、jL4L3、jL5S1、Root、jRightC7Shoulder、jRightShoulder、jRightElbow、jRightWrist、jLeftC7Shoulder、jLeftShoulder、jLeftElbow、jLeftWrist、jRightHip、jLeftHip、jRightKnee、jRightAnkle、jRightBallFoot、jLeftKnee、jLeftAnkle、jLeftBallFootによって特定される。同じ参照符号が図15にも再現されており、凡例を含む表が下記に表示されている。
【表1】
【0100】
慣性センサ30は、それぞれの線分要素を代表する点に配置されており、具体的には、ネットワーク4を介して監視される図14の関節要素によって(ソフトウェアレベルで)特定される線分要素を代表する点に対応する位置の身体のそれぞれの部分に(概して、前述のバンドまたは他のタイプの着用可能な付属品によって)固定されてよい。
【0101】
ネットワーク4によって、人(代表例では作業者)の身体の運動力学を取得することが可能になる。換言すると、ネットワーク4によって、身体の各線分要素及び関節要素があらゆる活動中に、具体的には作業活動中に想定する軌道、姿勢、回転角度の取得が可能になる。ネットワーク4は、空間における回転(すなわち、x軸、y軸、及びz軸を中心とした回転)を表す出力値と、監視される点ごとの空間座標とを提供するために構成される。
【0102】
上記の値は、処理部8によって取得されてよく、処理部8は、作業サイクル全体にわたって作業者がとる姿勢を自動的に評価してよい。例えば、人間工学的基準に規定された指標に従って、関節の座標を処理し、身体の関節の回転角度を取得することが可能である。
【0103】
ネットワーク4によって行われ得る分析は、手袋2を介して作業者の手について行われる分析と統合されてよい。一般に、1つ又は複数の手袋2と通信するネットワーク4を設定することが可能である。
【0104】
人間工学的評価のために用いられる姿勢の角度が検出される関節の標準分布は、図14に概略的に表されている。本発明によるシステムが作用するよう設計されている人間工学的に重要な角度は、次のようになる。すなわち、胴の角度、肩の角度、並びに肘及び膝の角度である。
【0105】
これらの角度では、いくつかの定義といくつかの仮説が導入される。すなわち、
i)鉛直線:これは、矢状面と前額面との間の線である。
ii)臀部線:これは、点(関節)jRightHipとjLeftHipとの間の線である。
iii)胴線:これは、Xsensの点(関節)jT1C7とRootとの間の線である。
iv)肩線:これは、Xsensの点(関節)jRightShoulderとjLeftShoulderとの間の線である。
v)上腕線:これは、Xsensの点(関節)jRightShoulderとjRightElbowとの間の線である。
vi)前腕線:これは、点(関節)jRightElbowとjRightWristとの間の線である。
vii)大腿線:これは、点(関節)jRightHipとjRightKneeとの間の線である。
viii)脚線:これは、点(関節)jRightKneeとjRightAnkleとの間の線である。
【0106】
[胴の動きの計算/解法]
条件:
・臀部線は、水平面及び前額面にそろっている。
・胴の屈曲角度は、鉛直線と矢状面に投影した胴線との間の角度である。
・胴の側方の傾きは、鉛直線と前額面に投影した胴線との間の角度である。
・胴のねじれは、肩線(胴が鉛直線にそろった後に測定)と水平面に投影した臀部線との間の角度である。
【0107】
[胴-前屈:参照ジオメトリの計算]
【0108】
[胴ベクトルの計算]
【数1】
【数2】
【数3】
【0109】
[臀部ベクトルの計算]
【数4】
【0110】
[矢状面Ωの計算]
初めに、臀部ベクトル
【数5】
は、水平面に投影され、すなわち、
【数6】
となり、この成分は、
【数7】
である。
次に、矢状面Ωは、
【数8】
で計算され、
【数9】
であり、
【数10】
である。
【0111】
[解法の適用]
【0112】
[胴ベクトルの矢状面への投影]
次の条件が与えられたとする。
【数11】
(a,b,c)=矢状面Ωの方向係数
【数12】
これにより、
【数13】
を通過する直線を含む平面
【数14】
の方向係数は次のように計算される。
【数15】
【0113】
したがって、求められる胴ベクトルの投影は、2つの平面Π及びΩの交差部分に対応する。すなわち、
【数16】
である。
【0114】
[矢状面と水平面との交差部分のベクトル]
【数17】
【0115】

【数18】

【数19】
との間の角度による前屈の計算]
【数20】
【0116】
提案された方法は、取得システムの基準の三つ組に対する被験者の位置と無関係である。さらに、アークコサインの確認によって、胴の屈曲(正符号)及び伸展(負符号)の場合に、値の正しい符号を区別することが可能になる。
【0117】
[前屈の計算の概略解法]
A.参照ジオメトリの計算
i.胴ベクトルの計算
ii.臀部ベクトルの計算
iii.矢状面の計算
B.解法の適用
i.V=胴ベクトルの矢状面への投影
ii.V=矢状面と水平面との間の交差部分のベクトル
iii.VとVとの角度による前屈(T)の計算
【0118】
[肩の動きの計算/解法]
条件:
・肩線は、水平面及び矢状面にそろっている。
・腕の屈伸は、鉛直線と矢状面に投影された上腕線との間の角度である。
・腕の外転運動は、鉛直線と前額面に投影された上腕線との間の角度である。
・手が臀部線の後ろにある場合は、伸展状態である。
・肩線と水平面に投影された上腕線との間の角度が45度未満の場合、屈曲状態である。そうでなければ、外転運動である。
【0119】
[肘及び膝の動きの計算/解法]
条件:
・肘の屈伸は、上腕線と前腕線との間の立体角である。
・膝の屈伸は、大腿線と脚線との間の立体角である。
【0120】
[他の動きの計算/解法]
骨格の終点(頭の上部、手の端部、足の端部)の位置が利用できないので、手や頭の側方運動、屈伸運動、回内回外運動(ねじり運動)は、ウェアラブルネットワーク4のセンサから得られる情報に基づいて計算される。
【0121】
代わりに、手の回内回外運動が肘の回転から計算される。生体力学的に見て、手首は回転しない。換言すると、手は(手首をヒンジとして用いる)前腕に対して回転しない。手の回内回外運動が起こるのは、肘から始まり、尺骨が橈骨に対して回転するからであり、この2本の長骨は常に、手首と肘の両方の同じ点に固定されているが、互いに交差することができる。こうして、手の回内回外運動が引き起こされる。したがって、手の回内回外運動は、肘から始まる長骨が「回転」することにより引き起こされる。
【0122】
本発明によるシステム1の目的は、観察段階及び設計段階において、人間工学的分析用の方法上のサポート手段を創造することであり、これは同時に客観的且つ時間をかけず用いられるものである。
【0123】
支援分析の方法の開発は、組み立てラインの製品/プロセスパラメータを設計段階で改善するのに有用な主要因子を、検証段階から導き出すことによって、作業場所で行われる活動を詳細且つ客観的に評価することを目的としている。
【0124】
全体の目的は、得られるデータ及び情報を新たな作業場所の設計段階又は既存の作業場所の再設計/改修の段階にも適用するために、プロセスの人間工学的評価用の方法を具体化し開発することである。
【0125】
このために、システム1は、作業活動から入ってくる、すなわち、
a)画像取得システム6(図1のC)-aviファイル、mpgファイルなど
b)ウェアラブルセンサネットワーク4
c)センサ搭載手袋2
から入ってくる人間工学的なデータを集めるための簡単なインタフェースを提供する。
【0126】
したがってシステム1は、以下の事柄を可能にする。
・ウェアラブルセンサネットワーク4とセンサ搭載手袋2を同期させること、具体的には、こうすることで提供されるデータを同期させて一緒に用いること。
・取得されたデータを人間工学的な結果に統合し変換すること。
・作業者の一連の仕事のうち最も重要な活動を特定すること。
・人間工学的観点から主要な重要側面を特定すること。
・国際(社内)規格に準拠した人間工学的評価を提供すること。
【0127】
評価に利用可能な人間工学的方法は、現在のところ以下のものが含まれる。
・OCRA Checklist(手動及び自動)
・OCRA Index(手動)
・MURI(手動及び自動)
・EM-MURI(手動)
・RULA(手動)
・Sue Rodgers(手動)
・NIOSH(手動)
・Snook & Ciriello(手動)
【0128】
上記に加えて、本システムは、TiCon(自動)として知られる時間分析及び人間工学的分析用の特定のソフトウェアへの転送用に、データを事前準備することを可能にする。
【0129】
システム1の特徴には、以下のことが含まれる。
・案内付きのビデオクリップ観察。
・明確に規定された手順に従ってデータを収集し格納する可能性。
・データ収集を高速化する機能(ネットワーク4や手袋2などのモーションキャプチャシステムにより自動的に収集することも)及び記憶データベースの編成。
・人間工学的な危険因子を特定するために(ビデオクリップから抽出された)データを分析する可能性。
・基本的な人間工学的パラメータのばらつきに基づいて観察されたデータを再処理する可能性。
・作業プロセス中にツールを用いることに起因した局所的な力及び圧力を特徴付けるデータの編成(センサ搭載手袋2による動的分析、及び比較的程度は低いがウェアラブルセンサネットワーク4による動的分析)、及び行われた動作の姿勢及び説明への上記データの関連付け(運動力学分析であり、この場合はウェアラブルセンサネットワークがセンサ搭載手袋2と少なくとも同じ重要性を有する)。
【0130】
システム1は、2つの異なるデータ分析方法、すなわち、
・手動分析(ビデオによる)
・自動分析(ネットワーク4及び/又は手袋2から入ってくるデータに基づく)
を可能にする。
【0131】
手動分析は、1つ又は2つの同期したビデオクリップから始まる支援付き人間工学的分析の実行を、以下のことによって可能にする。
・ビデオクリップが再生されている間に、キーパッドの特定のキーを押すことで重要な姿勢を特定する。
・必要な時間インデックス及び人間工学的インデックスを自動的に計算する。
【0132】
自動分析は、重要な姿勢の大部分を自動的に認識するウェアラブルセンサネットワーク4及び(ユーザの動きを記録する)手袋2からの出力で、データの読み取りを可能にする。
【0133】
上記分析は、一部の人間工学的方法(OCRA Checklist、及び、MURI)向けに一般的に実施されており、さらに、このようにして、一部の入力データは、TiCon(著作権)ソフトウェアにも利用可能である。
【0134】
手動モードでのシステム1の動作の場合、分析される作業場所の少なくとも1つのビデオクリップを取得することが不可欠である。ビデオクリップが唯一の取得されたデータである場合、手動分析だけが可能である。その代わりに、ビデオクリップの取得と、ウェアラブルネットワーク4及び/又はセンサ搭載手袋2からのデータの取得とが組み合わされる場合、自動分析を行うことが可能である。
【0135】
ソフトウェアには、次の2つのインタフェースモードがある。
a)「入力モード」。読み込まれたファイルに従って、ソフトウェアは手動モード又は自動モードを自律的に起動し、手動モードを起動した場合には、手動で実施される人間工学的項目を選択することが可能である。
b)「出力モード」。(表示画面上に)見えるものは、手動で入力されたか、又はネットワーク4及び手袋2のデータ取得ファイルから計算された特性の時間分布である。
【0136】
[本発明によるシステムの作業手順]
本発明によるシステム1は、ソフトウェアによって完全に実装され管理されることが好ましい。人間工学的分析の前提は、分析される作業活動の少なくとも1つのビデオクリップ、あるいは(これと組み合わせるか又は代替として)IVR(Immersive Virtual Reality:没入型仮想現実)システムを利用できることである。
【0137】
第2の選択肢は具体的には、作業員の物理的な作業場所がまだ存在していない設計段階で実施され、レンチ、ねじ回しなどの実際の道具及び物体の使用と、「複合現実」として一般に認識される状況の中の線構造とを組み合わせたIVRシステムに、手袋2及びウェアラブルネットワーク4を統合することを想定している。この選択肢の実行を可能にするには、分析される作業場所のCADモデルを利用可能にすることが必要であり、また、行われる仕事の作業サイクルを把握することも必要である。
【0138】
それによってシステム1の動作が実施されるソフトウェアは、市販されているタイプのビデオファイルの大部分を読み取るために構成される。手動分析に場合には、評価される様々な人間工学的項目の後処理分析を進めることが可能である。
【0139】
IVRモードでの動作の場合には、作業場所で作業する作業員のビデオクリップを利用できることの代わりに、以下の作業手順の実施に続いて、ビデオファイルが提供され、手に入れることができる。
・分析される作業場所のCADモデルを仮想環境に移入する。
・仮想環境で用いられる道具(レンチ、ねじ回しなど)の動きの論理を定義する。
・実際の物体を対応する仮想の物体に割り当てる。
・ネットワーク4及び手袋2の両方を着用するユーザを準備する。
・仕事を再現してデータを記録する。
【0140】
このように、実際の作業場所においてオンラインでキャプチャされたビデオクリップの代わりに用いられる(例えば、mpgフォーマットの)ビデオファイルを生成し、それをネットワーク4及び手袋2によって記録されたデータと統合することが可能である。
【0141】
これに関連して、図20及び図21が参照されてよく、これらの図は、「A」の部分に、ウェアラブルネットワーク4、1双の手袋2(右手用と左手用)、及び1個のVSRグラスを身に着けたユーザUを示している。
【0142】
図20はユーザUを示しており、このユーザは、ユーザが実際の作業環境にいるような姿勢で支持されるように、物理的な作業場所で利用できる支持面を表す構造体Fと相互に作用している。図20のBは、図20のAのユーザUの状態を仮想的に置き換えた形を示しており、一方ではVSRグラスを通してユーザに利用可能なディスプレイに対応している。
【0143】
その代わりに図21は、実際の道具T、例えば、ねじ回しを扱っているユーザUを示す。図21のBは、図21のAのユーザUの状態を仮想的に置き換えた形を示しており、一方ではVSRグラスを通してユーザに利用可能なディスプレイに対応している。
【0144】
IVRシステムで構造体Fやねじ回しTなどの物理要素を用いるのは、姿勢データ、とりわけ握り方のデータの誤った解釈を防ぐために好ましいことに留意されたい。
【0145】
最初に、ソフトウェアが入力モードに設定される。このモードでは、処理部8は、ウェアラブルセンサネットワーク4及び/又はセンサ搭載手袋2から入ってくるデータを自動的に取得するか、又は手動のデータ入力によって入力データを受け取る。このモードでは、評価に用いられる人間工学的方法を選択することが可能である。
【0146】
1つ又は複数の画像取得装置6によって取得されたビデオクリップ、及び/又はIVRシステムによって生成されたビデオクリップ、並びにネットワーク4から入ってくるデータによって得られた作業者に身体の姿勢を復元したもの、及び/又はセンサ搭載手袋2から受け取ったデータを処理することで得られ得る手の姿勢を復元したものを同時に開くことを可能にするインタフェースが、図16に表されている。
【0147】
ビデオファイルとソフトウェアダミーのアニメーションファイルを開いておくと(ソフトウェアダミーは、図16の中央画像に表されており、ソフトウェア環境で生成され、ソフトウェア環境で管理される人型モデルに対応しており、センサーネットワークに関連付けられた人体骨格のモデルとして動作可能である)、例えば、人間工学的分析のためには重要とみなされ得る動作、圧力/力、又は手の握り方のタイプといった、いくつかの動きの分析をディスプレイを用いて同時に表現することを可能にするインタフェースにアクセスできる。
【0148】
[OCRA Checklist法]
OCRA(Occupational Repetitive Actions:労働上の繰り返し動作)Checklist法は、知られているように、上肢の筋骨格障害に影響を及ぼす作業リスク因子を評価するための総合的な指標で構成され、繰り返し作業に起因した上肢の過負荷リスクを特定することができる。
【0149】
ネットワーク4のデータが利用できる場合(すなわち、装置によって取得されたデータファイルが利用できる場合)、既に計算された以下の特徴が自動的に利用できる。
i)ほとんど肩の高さにある腕。
ii)頭の上にある手。
iii)極端な肘の回内回外運動。
iv)極端な手首の屈伸及びゆがみ。
【0150】
センサ搭載手袋2によって取得されたデータも利用できる場合、以下のさらなる特徴も(既に前述された方法に従って)自動的に利用できる。
v)様々なタイプの握り方を認識し、不適当な握り方が存在していることを通知(PINCH型の握り方、PALMAR型の握り方、又はHOOK型の握り方。これに関しては、これらのタイプの握り方は、何度も繰り返された場合、生体力学的な過負荷を生じさせ得るか、又は手の腱の骨液包が圧迫されることに起因して損傷さえ引き起こし得る。したがって、これらのタイプの握り方は検出されなければならず、何度も行われた場合には、人間工学的リスク指標を高める一因になる)。
vi)静的動作の認識。
【0151】
自動的に分析されない人間工学的項目は、ユーザによって手動で分析されてよい。このために用いられ得るグラフィックインタフェースの一例が、図17の部分Aに示されている。
【0152】
人間工学的項目は、表示画面の右側に現れているメニュー「項目」で選択されてよい。この実施形態では、最大4つまでの人間工学的項目を一度に分析することが可能であるが、一度に1つの項目だけを選択して分析を行うことも可能である。
【0153】
ネットワーク4が取得することによって生成されたデータファイルが選択されている場合、ユーザが起動コマンドを入力した後に(例えば、「再生」又は「開始」のボタン(図17の参照符号PLを参照のこと。代わりに、参照符号STPは停止キーを特定する)を押すことによって)、ソフトウェアは、前述の項目に対するOCRA Checklist法の人間工学的情報を自動的に計算する。
【0154】
その代わりに、ネットワーク4及び/又は手袋2からのモーションキャプチャファイルが利用できない場合、次のようにして手動分析を進めることが可能である(図17のA及びB)。
1.PLキーを押してビデオクリップを再生するか、ビデオクリップの表示を継続する。もう一度PLキーを押することで、ビデオクリップは一時停止する。
2.キーパッドKYPで、分析中の人間工学的項目に対応する1つ又は複数の文字を、その項目が存在しているビデオの瞬間に押す。この図の例では、代表的な文字は「A」、「S」、「K」、及び「L」である。
3.必要な全ての人間工学的項目の取得が終わると、取得が終了したことを表示し、必要であれば確認して、出力段階に進む。
【0155】
モード選択メニューを用いると、出力モードに進むことが可能であり、こうして、入力されたデータの結果を表示する。
【0156】
これらの結果を含む表示画面の一例が図18に示されており、分析された仕事の各項目の存在と時間分布とを示すグラフが表示されている。具体的には、代表例では、上記の項目i)からiv)及びvi)の項目全てが表示される。すなわち、次の項目である。
i)ほとんど肩の高さにある腕。
ii)頭の上にある手。
iii)極端な肘の回内回外運動。
iv)極端な手首の屈伸及びゆがみ。
vi)人為的な静的動作の認識、つまり、物体を静的把持で少なくとも4秒間維持する。
【0157】
手袋2のデータも収集された場合には、これらの問題の項目に、上記のv)の点の項目が追加される。すなわち、様々なタイプの握り方及び不適当な握り方の認識である。
【0158】
人間工学的項目が存在する点をグラフ上で照会することで(例えば、その点をマウスでクリックすることで)、当該項目が起こったビデオクリップの対応する瞬間を表示することが可能である。ネットワーク4によってモーションキャプチャデータを取得する場合、等価ダミーの対応する姿勢が再現される(図18のB)。
【0159】
取得が終わると、OCRA Checklist法に基づいて計算された時間、すなわち、様々な項目の発生及び延長に関連した時間を再度確認することがさらに可能である。
【0160】
データはさらに、外部の分析用に、互換性が高いフォーマット、例えば、Microsoft(登録商標)のExcel(登録商標)スプレッドシートにエクスポートしてもよい。
【0161】
[OCRA Index法]
第2の人間工学的方法は、ISO11228-3規格に基づいたOCRA Index法であり、これは、身体のさらなる動き、例えば、所定の閾値を超える角度による一部の関節の回転を評価することを可能にし得る。この分析によって、作業者のリスク指標の評価を得ることが可能である。
【0162】
データ取得の動作モード及び人間工学的項目の評価は、既に説明されたものと同じである。
【0163】
[MURI法とEM-MURI法]
さらなる人間工学的方法がMURI法であり、これにより、作業者によって行われる動作を分割するために、観察の時間間隔を複数の調査期間に分割することが可能であり、例えば、自動的に且つ同時に分析される。評価の終わりに、人間工学的分析の単一の評価(すなわち、単一の人間工学的リスク指標に基づく評価)の代わりに、作業者によって行われた動作についての複数の評価を得ることが可能である。
【0164】
他の人間工学的方法と組み合わせて、EM-MURIによる人間工学的方法も用いられてよく、これは、MURI分析の拡張版(すなわち、より多くの評価パラメータを有する)で構成される。この方法の目的は、人間工学的リスクの迅速な評価を可能にし、次の分析を行うことが興味深いかもしれない動作を強調するような方法で、一定の人間工学的リスクを過大評価することである。
【0165】
装置6によって取得されたビデオに対応するビデオファイルを読み込み、利用できるならば、ネットワーク4で取得されたモーションキャプチャファイルも読み込んだ後に、分析される仕事が分割される様々な期間が定義される。
【0166】
ビデオクリップが再生されているとき、キーPL(再生/一時停止)は、仕事が分割された一連の期間の部分を形成する調査期間の最後の瞬間で、ビデオクリップを一時停止するのに用いられてよく、調査期間は専用キーを押すことで特定される。この動作は、全ての調査期間が検討されるまで繰り返される。
【0167】
選択された期間の開始時間と終了時間は、手動で入力された(開始/終了)データから始まる期間の持続時間を計算するソフトウェアによって、自動的に記録される。
【0168】
ネットワーク4のデータが利用できる場合には、移動する負荷に関係しない人間工学的項目は、このソフトウェアによって自動的に分析されることになる。この理由は、MURI法では、説明されたセンサを用いて収集できない1つのデータは、このデータが手動で入力される必要があるため、移動する又は搬送される負荷(重量)であるということである。評価に必要な残りのデータは、センサから自動的に到達し得る。
【0169】
ビデオクリップだけが利用できる場合には、分析される仕事を特定する全ての期間が入力された後に、分析される人間工学的項目を選択することが必要である。次にビデオクリップは再開し、その項目に対応する期間が、自動的に強調され選択される。
【0170】
ある期間が強調されている間、分析を行う作業員は、問題の期間の対応する人間工学的項目にあると考える投票を入力する必要がある。投票システムは以下のスケール、すなわち、1:許容できる、2:調査、3:許容できない、を想定する。これらの投票は、場合によっては色と関連付けられてもよい(例えば、緑:許容できる、黄色:調査、赤:許容できない)。
【0171】
出力モードでは、期間/作業に分割され、分析されたMURIデータを要約したグラフが表示される。このグラフの一例が図19に表示されている。
【0172】
[TiCon法とソフトウェア]
しかし、さらなる人間工学的方法が、EAWS法及び対応するTiConソフトウェアに対応する。このソフトウェアは、仕事の特徴付けのため、すなわち、人間工学的観点から、(時間又は動作の取得において説明された)活動を、当該活動が割り当てられた(バランスを保っている)作業場所に基づいて区別する人間工学的パラメータを定義する活動のためのものである。
【0173】
EAWA法による分析は、TiConソフトウェアを用いて行われ、このソフトウェアには、システム1から得られるデータが供給されてよく、そのデータによって、例えば次のような評価が可能になるので有利である。
・手の握り方のタイプ。
・手首が回転する角度。
・動作が行われる高さ、並びに身体がある動作を行うときの距離、方向、及び力。
【0174】
[システム1を用いて行われる分析から恩恵を得るさらなる人間工学的方法]
RULA(Rapid Upper-Limb Assessment:簡易上肢評価)による人間工学的方法:この方法は、作業活動の間、連続するような又は繰り返すような方法で維持された不適当な姿勢による筋骨格リスクを評価するのに用いられる。
【0175】
NIOSH(National Institute for Occupational Safety and Health:国立労働安全衛生研究所)による人間工学的方法:この方法は、荷物の持ち上げを含むリスクを評価するのに用いられてよい。
【0176】
Snook & Cirielloによる人間工学的方法:この方法は、荷物を平らな面で運ぶ、引っ張る、又は押すことと相関関係にあるリスクを評価するのに用いられる。
【0177】
Sue Rodgersによる人間工学的方法:この方法は、特にブラジルの産業において、筋疲労の分析に用いられる。
【0178】
システム1による人間工学的分析に選択された人間工学的方法に関係なく、システム1を用いた作業者の人間工学的分析の方法について下記に列挙された一般的な段階が、こうして特定され得る。
【0179】
これらの段階には、次の段階が含まれる。
・作業者の仕事の一連の画像を、一連の画像を生成する装置(6)によって取得する段階。この段階は、互いに組み合わせて又は互いの代替として、作業場所の作業員のビデオクリップを取得する段階、及び/又は基準作業員(ユーザU)の仮想現実システム(特に、没入型仮想現実システム)における仮想作業場所(例えば、作業場所のCADモデル)との相互作用を介してビデオクリップを生成する段階を含んでよい。
・センサ搭載手袋2から第1のセットの姿勢データを取得する段階。この段階は、手袋2を用いて手の握り方のタイプと姿勢を決定することに関して既に前述された段階及び方法に対応する。
・ウェアラブルセンサネットワーク4から第2のセットの姿勢データを取得する段階。
・第1のセットのデータ、第2のセットのデータ、及び一連の画像に基づいて、1つ又は複数の人間工学的指標を決定する段階。
【0180】
ウェアラブルセンサネットワーク4から第2のセットの姿勢データを取得する段階は、仕事を実行している間に、上記基準体系の各線分要素及び各関節要素の回転の軌道、姿勢、及び角度を取得する段階を含む。
【0181】
上記方法によって、またシステム1を用いて、人間工学的観点から重要な側面を特定し、及び/又は社内規格及び国際規格に準拠した人間工学的評価を提供する、及び/又は作業員がさらされている人間工学的リスクを抑制するために、作業場所又は作業順序を再計画することが今から概して可能である。
【0182】
もちろん、具体化及び実施形態の詳細は、本明細書で説明され示されたことに対して大きく異なってもよいが、それによって、添付の特許請求の範囲により定められる本発明の保護範囲から逸脱することはないものとする。
図1
図2
図2A
図3
図3A
図4
図4A
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21