(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】リン化合物及び有機硫黄化合物の存在下でのアルキンからアルケンへの選択的水素化
(51)【国際特許分類】
C07C 29/17 20060101AFI20230912BHJP
C07C 33/02 20060101ALI20230912BHJP
C07C 33/025 20060101ALI20230912BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20230912BHJP
B01J 27/232 20060101ALI20230912BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
C07C29/17
C07C33/02
C07C33/025
B01J23/44 Z
B01J27/232 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021568560
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2020064497
(87)【国際公開番号】W WO2020239721
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-14
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】メドロック, ジョナサン アラン
(72)【発明者】
【氏名】モリナリ, リーズ マリカ
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-500112(JP,A)
【文献】特開昭59-078126(JP,A)
【文献】特開2002-145814(JP,A)
【文献】特開平10-168021(JP,A)
【文献】米国特許第03715404(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/17
C07C 33/02
C07C 33/025
B01J 23/44
B01J 27/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機リン化合物である少なくとも1つの添加物(AP)
と
有機硫黄化合物である少なくとも1つの添加物(AS)
との添加物の混合物の存在下で、担体に担持されたパラジウムである水素化触媒を使用して、アルキンを水素化して選択的にアルケンにする方法であって、
前記添加物(AP)が式(III)
[式中、Rは、アルキル基又はシクロアルキル基又はアリール基のいずれかであり、点線は、式(III)の置換基が前記添加物(AP)の残部に結合している結合を表す]
のホスフィノ基を1つ又は2つ以上有し、
前記添加物(AS)がチオエーテルであり、
前記アルキンが、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含み、前記少なくとも炭素-炭素三重結合が選択的に水素化されて、それぞれの炭素-炭素二重結合になって前記アルケンを形成することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アルキンが、少なくとも1つの化学官能
基をさらに含み、前記少なくともさらなる化学官能基が、前記水素化による変化はしていないままであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rがフェニル基又はトリル基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機リン化合物が、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-オルトトリルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ)メチル-2-メチルプロパン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフタレン、ビス(2-ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン及び1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンからなる群から選択さ
れることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記
チオエーテルが、少なくとも1つのヒドロキシル基を
有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記チオエーテルが、2,2’-(エタン-1,2-ジイルビス(スルファンジイル))ビス(エタン-1-オール)
であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記添加物(AP)の、前記添加物(AS)に対するモル比は、10:1~1:10の範
囲であることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記添加物の混合物の、触媒に対する重量比は、0.01:1~100:1の範
囲であることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アルキンが
、式(I)
のアルキノールであり、
前記アルケンが、式(II)
のアルケノールであり、
式中、
R
1は、H又はメチル基又はエチル
基を表し、並びに
R
2は、少なくとも1つの化学官能
基を任意選択により含む、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基を表すか、
又は
R
1及びR
2は、一緒に5~7員環を形成しているアルキレン基を表すか、
のいずれかであり、
但し、R
1は、式(I)及び(II)において同じ意味を有し、R
2は、式(I)及び(II)において同じ意味を有する
ことを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
R
2が、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)、(R2-IV)、(R2-V)、(R2-VI)及び(R2-VII)
からなる群から選択され、
式中、点線は、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)、(R2-IV)、(R
2-V)、(R2-VI)又は(R2-VII)の置換基が、式(I)又は式(II)の化合物の残部に結合している結合を表し、
点線
を有する結合はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合のいずれかを表し、
波線はいずれも、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を、互いから独立して表し、
nは、1、2、3、4、5又は
6を表す
ことを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記水素化が、いずれの有機溶媒も使用せずに実行されることを特徴とする、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記担体が、炭素又は無機担
体であることを特徴とする、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
- アルキン、
- 担体に担持されたパラジウムである水素化触媒、並びに
- 有機リン化合物である少なくとも1つの添加物(AP)、及び
- 有機硫黄化合物である少なくとも1つの添加物(AS)
を含む
組成物であって、
前記添加物(AP)が式(III)
[式中、Rは、アルキル基又はシクロアルキル基又はアリール基のいずれかであり、点線は、式(III)の置換基が前記添加物(AP)の残部に結合している結合を表す]
のホスフィノ基を1つ又は2つ以上有し、
前記添加物(AS)がチオエーテルである、組成物。
【請求項14】
Rがフェニル基又はトリル基である、請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、アルキンからアルケンへの水素化に関する。
【0002】
[発明の背景]
貴金属触媒の存在下で、アルキンを、水素により水素化してアルケンにすることができる。アルキンからアルケンへの水素化に、パラジウム触媒を使用することができる。
【0003】
アルキンの重要な種類はアルキノールであり、アルケンの重要な種類はアルケノールである。アルキノール又はアルケノールは、それぞれ、工業規模で製造される物質であり、特にビタミン及び香料の分野で重要性が高い。そのような重要なアルキノール及びアルケノールの非網羅的な例は、2-メチルブタ-3-イン-2-オール、2-メチルブタ-3-エン-2-オール、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール、3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-1-イン-3-オール及び3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-1-エン-3-オールである。
【0004】
アルキン及びアルキノールの水素化においては複数の問題がある。問題の1つは、炭素-炭素三重結合の次に、最終的に存在している他の化学基も、水素化される場合があるということである。この問題は、保護基を使用することによって、ある程度まで解決することができる。しかしながら、これには保護及び脱保護の追加のステップが必要であり、追加の時間、コスト及び廃棄物の形成の点から不都合である。
【0005】
別の問題は、高転化率での選択率が十分に高くないことである。どの化学反応においても同様であるが、目標は、出発材料のうち可能な限り多くを所望の生成物に変換することである。本件の場合、可能な限り高い転化率を得るために、さらなる奮闘がある。なぜなら、アルキン、アルキノール(即ち出発材料)はそれぞれ、及びアルケノール(即ち選択的水素化の生成物)は、分離するのが極めて困難であるからである。このため、部分転化で反応を行った後で未反応の出発材料を分離し、反応を繰り返すことは極めて困難である。
【0006】
アルキン、アルキノールのそれぞれの選択的水素化において、特に問題となる態様は、過水素化である。過水素化とは、アルキン、アルキノールのそれぞれの水素化が、アルケン、アルケノールのそれぞれの段階で停止せず、引き続いて、かなりの量のアルカン、アルカノールのそれぞれをもたらすという効果、即ち、水素化反応が、選択的に炭素-炭素三重結合を水素化して炭素-炭素二重結合にするだけでなく、炭素-炭素二重結合もまた水素化されて、かなりの量で炭素-炭素単結合になるという効果のことである。過水素化された化合物は、所望の生成物から分離するのが極めて困難であり得る。
【0007】
リンドラー(Lindlar)は、米国特許第2,681,938号明細書の中で、鉛又はビスマスで修飾されているパラジウム触媒を使用する、アルキンからアルケンへの選択的水素化を開示している。
【0008】
米国特許第3,715,404号明細書では、幾つかの特定の有機硫黄化合物によって部分的に非活性化されているパラジウム触媒を使用する、選択的水素化が開示されている。
【0009】
国際公開第2016/038454A1号パンフレットは、トリフェニルホスフィンスルフィドの存在下で、担体に担持されたパラジウムである水素化触媒を使用して、アセチレンを水素化して選択的にエチレンにする方法を開示している。
【0010】
さらに、アルキンの、特にアルキノールの水素化は、不所望な副生成物の形成、例えば、アルキン又はアルケン、アルキノール又はアルケノールのそれぞれから誘導されるダイマー又はオリゴマーの形成などにつながる。
【0011】
[発明の概要]
したがって、本発明によって解決されようとする課題は、アルキンを、特にアルキノールを水素化して、選択的にアルケンに、特にアルケノールにする方法であって、高転化率、高選択率及び低い過水素化をもたらす方法を提供することである。
【0012】
驚くべきことに、請求項1に記載の方法は、この課題に対する解決策を提供した。特に2つ以上のホスフィノ基を有する添加物の使用が、この所望の性質の組合せの提供において極めて有利であることが判明した。
【0013】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の主題である。特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0014】
[発明の詳細な説明]
第1の態様において、本発明は、
有機リン化合物である少なくとも1つの添加物(AP)
と
有機硫黄化合物である少なくとも1つの添加物(AS)
との添加物の混合物の存在下で、担体に担持されたパラジウムである水素化触媒を使用して、アルキンを水素化して選択的にアルケンにする方法であって、
アルキンが、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含み、前記少なくとも炭素-炭素三重結合が選択的に水素化されて、それぞれの炭素-炭素二重結合になって前記アルケンを形成する方法に関する。
【0015】
明確にするために、本明細書で使用されている幾つかの用語を以下のように定義する。
【0016】
本明細書において、「Cx~y-アルキル」基とは、x~y個の炭素原子を含むアルキル基であり、即ち、例えば、C1~3-アルキル基は、1~3個の炭素原子を含むアルキル基である。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖とすることができる。例えば、-CH(CH3)-CH2-CH3は、C4-アルキル基とみなされる。
【0017】
本明細書の任意の式中の波線はいずれも、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す。
【0018】
本明細書において、複数の式の中に、記号又は基についての同じ標識が存在する場合、1つの特定の式の内容においてなされた前記基又は記号の定義が、同じ前記標識を含む他の式にも適用される。
【0019】
本明細書において、「アルキン」とは、その化学式の中に少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する化合物である。アルキンは、少なくとも1つのさらなる/追加の化学官能基、特にヒドロキシル基、及び/又は炭素-炭素二重結合を含む場合がある。
【0020】
本明細書において、「アルキノール」とは、その化学式の中に少なくとも1つの炭素-炭素三重結合及び少なくとも1つのヒドロキシル基を有する化合物である。換言すると、アルキノールは、ヒドロキシ官能化アルキンである。
【0021】
同様に、「アルケン」とは、その化学式の中に少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する化合物である。アルケンは、少なくとも1つのさらなる/追加の化学官能基、特にヒドロキシル基を含む場合がある。
【0022】
「アルケノール」とは、その化学式の中に少なくとも1つの炭素-炭素二重結合及び少なくとも1つのヒドロキシル基を有する化合物である。換言すると、アルケノールは、ヒドロキシ官能化アルケンである。
【0023】
本明細書において、「ヒドロカルビル」基とは、形式上、炭化水素から水素原子を除去することによって形成される1価の基である。
【0024】
[アルキン]
この方法において、アルキンは、選択的に水素化されて、それぞれのアルケンになる。
【0025】
炭素-炭素三重結合を還元してそれぞれの炭素-炭素二重結合にする水素化が選択的であることは本発明にとって重要である。換言すると、アルキンの中に存在し得る他の化学基は、前記水素化反応によって改変されない。特に、水素化は、アルケンの炭素-炭素二重結合が、さらに水素化されて炭素-炭素単結合になる(「過水素化」)ことがないか、又は少なくとも著しくはそうならないという意味においても、選択的である。
【0026】
さらに、(過水素化された生成物の形成が低減されることに加えて)他の副生成物の形成、例えば、出発材料又は生成物から誘導されるダイマー又はオリゴマーの形成なども、上記の方法によって、有意に低減されることが認められた。
【0027】
一実施形態では、アルキンは、好ましくは少なくとも1つの炭素-炭素三重結合、及び任意選択により少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する炭化水素である。好ましくは、この実施形態では、前記アルキンは、芳香族置換基を有する。アルキンは、好ましくは式(A)
【化1】
[式中、Arは芳香族基を表し、幾つかのアルキル基又はアルケニル基をさらに担持することができ、R
0は、H又はアルキル、好ましくはC
1~4-アルキル基、又はアルケニル基、好ましくはC
1~4-アルケニル基、又はAr
1のいずれかであり、Ar
1は芳香族基を表し、幾つかのアルキル基、好ましくはC
1~4-アルキル基、又はアルケニル基、好ましくはC
1~4-アルケニル基をさらに担持することができる。Ar
1=Arであるのが好ましい。Arはフェニル基であるのがさらに好ましい。]
を有する。
【0028】
好ましくは、式(A)のアルキンは、フェニルアセチレン(=エチニルベンゼン)又はジフェニルアセチレン(=1,2-ジフェニルエチン=トラン)である。
【0029】
アルキンは、好ましくは、少なくとも1つの追加の化学官能基、特に、少なくとも1つのヒドロキシル基、及び/又は少なくとも1つの炭素-炭素二重結合をさらに含み、少なくともさらなる化学官能基は、水素化による変化はしていないままである。
【0030】
極めて好ましい実施形態では、アルキンはアルキノールである。好ましくは、アルキノールは、アルキノールの炭素-炭素三重結合に対してアルファ位にある炭素に結合しているヒドロキシル基を有するアルキノールであり、即ち、アルキノールは、好ましくはアルファ-アルキノールである。
【0031】
アルキノールは、好ましくは、次の構造要素
【化2】
を、その構造式の中に有し、*は、さらなる置換基の位置を示す。
【0032】
より一層好ましい実施形態では、アルキノールは、炭素-炭素三重結合が末端の炭素-炭素三重結合であるアルキノールである。
【0033】
極めて好ましい実施形態では、アルキノールは、次の構造要素
【化3】
を、その構造式の中に有し、*は、さらなる置換基の位置を示す。
【0034】
極めて好ましい実施形態では、アルキンはアルキノールであり、前記アルキノールは、式(I)
【化4】
[式中、
R
1は、H又はメチル基又はエチル基、好ましくは、メチル基又はエチル基を表し、並びに
R
2は、少なくとも1つの化学官能基、特に、少なくとも1つのヒドロキシル基を任意選択により含む、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基を表すか、
又は
R
1及びR
2は、一緒に5~7員環を形成しているアルキレン基を表すか、
のいずれかであり、
但し、R
1は、式(I)及び(II)において同じ意味を有し、R
2は、式(I)及び(II)において同じ意味を有する]
のアルキノールである。
【0035】
式(I)において、好ましい置換基R1はメチル基である。
【0036】
式(I)において、置換基R2はメチル基であることがさらに好ましい。
【0037】
極めて好ましい式(I)のアルキノールは、2-メチルブタ-3-イン-2-オール(即ちR1=R2=メチル)である。
【0038】
別の実施形態では、R1及びR2は、一緒に5~7員環を形成しているアルキレン基を表す。アルキレン基は、直鎖でも又は分岐鎖でもよく、少なくとも1つの化学官能基を任意選択により含み、及び/又はオレフィン性不飽和である。
【0039】
好ましくは、アルキレン基はペンチレン基である。この実施形態の好ましいアルキノールの1つは、1-エチニルシクロヘキサン-1-オールである。
【0040】
別の好ましい実施形態では、置換基R
2は、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)、(R2-IV)、(R2-V)、(R2-VI)及び(R2-VII)
【化5】
からなる群から選択され、
式中、点線は、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)、(R2-IV)、(R2-V)、(R2-VI)又は(R2-VII)の置換基が、式(I)又は式(II)の化合物の残部に結合している結合を表し、点線
【化6】
を有する結合はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合のいずれかを表し、
波線はいずれも、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を、互いから独立して表し、
nは、1、2、3、4、5又は6、特に、1又は2又は3、好ましくは3又は2、最も好ましくは2を表す。
【0041】
アルキノールは、好ましくは、3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ペンタ-1-イン-3-オール、(E)-3-メチル-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ペンタ-1-エン-4-イン-3-オール、(Z)-3-メチル-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ペンタ-1-エン-4-イン-3-オール、(E/Z)-3-メチル-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ペンタ-1-エン-4-イン-3-オール、3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ペンタ-1-イン-3-オール、(E)-3-メチル-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ペンタ-1-エン-4-イン-3-オール、(Z)-3-メチル-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ペンタ-1-エン-4-イン-3-オール、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール、3,7-ジメチルオクタ-1-イン-3-オール、(E)-3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イン-3-オール、(Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イン-3-オール、(E/Z)-3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イン-3-オール、3,7-ジメチルノナ-1-イン-3-オール、3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オール、(E)-3,7,11-トリメチルドデカ-6-エン-1-イン-3-オール、(Z)-3,7,11-トリメチルドデカ-6-エン-1-イン-3-オール、(E/Z)-3,7,11-トリメチルドデカ-6-エン-1-イン-3-オール、3,7,11-トリメチルドデカ-10-エン-1-イン-3-オール、(E)-3,7,11-トリメチルドデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール、(Z)-3,7,11-トリメチルドデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール、(E/Z)-3,7,11-トリメチルドデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-1-イン-3-オール、(E)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6-エン-1-イン-3-オール、(Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6-エン-1-イン-3-オール、(E/Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6-エン-1-イン-3-オール、(E)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-10-エン-1-イン-3-オール、(Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-10-エン-1-イン-3-オール、(E/Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-10-エン-1-イン-3-オール、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-14-エン-1-イン-3-オール、(6E,10E)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール、(6E,10Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール、(6Z,10E)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール、(6Z,10Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール、(E)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-10,14-ジエン-1-イン-3-オール、(Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-10,14-ジエン-1-イン-3-オール、(6E,10E/Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール、(6Z,10E/Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール、(6E/Z,10E)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール、(6E/Z,10Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール、(6E/Z,10E/Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール、(E)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,14-ジエン-1-イン-3-オール、(Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,14-ジエン-1-イン-3-オール、(E/Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,14-ジエン-1-イン-3-オール、(E)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-10,14-ジエン-1-イン-3-オール、(Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-10,14-ジエン-1-イン-3-オール、(E/Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-10,14-ジエン-1-イン-3-オール、(6E,10E)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10,14-トリエン-1-イン-3-オール、(6E,10Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10,14-トリエン-1-イン-3-オール、(6Z,10E)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10,14-トリエン-1-イン-3-オール、(6Z,10Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10,14-トリエン-1-イン-3-オール、(6E,10E/Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10,14-トリエン-1-イン-3-オール、(6E/Z,10E)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10,14-トリエン-1-イン-3-オール、(6Z,10E/Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10,14-トリエン-1-イン-3-オール、(6E/Z,10Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10,14-トリエン-1-イン-3-オール、及び(6E/Z,10E/Z)-3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-6,10,14-トリエン-1-イン-3-オールからなる群から選択されるアルキノールである。
【0042】
[水素化触媒]
本方法は、担体に担持されたパラジウムである水素化触媒を使用する。
【0043】
そのような水素化触媒は、大抵は当業者に公知である。パラジウムは貴金属である。本発明において、パラジウムは担体に担持されている。即ち、パラジウムは、担体に付着、又は沈着している。担体は、固体材料である。
【0044】
好ましくは、前記担体は、炭素又は無機担体である。好ましい無機担体は、酸化物又は炭酸塩である。好ましい酸化物は、ケイ素、アルミニウム又はチタン又はセリウムの、酸化物である。二酸化ケイ素、アルミナ及び二酸化チタン及びセリアが特に好ましい。
【0045】
二酸化ケイ素は、焼成シリカ又は沈降シリカ若しくは粉砕シリカとして、担体として使用することができる。好ましくは、担体として使用される二酸化ケイ素は、焼成シリカ又は沈降シリカである。最も好ましい二酸化ケイ素は、実質的に純粋なSiO2である二酸化ケイ素である。換言すると、二酸化ケイ素担体は、重量で、95%より多い、より好ましくは98%より多い、より一層好ましくは99%より多いSiO2からなるのが好ましい。
【0046】
炭酸カルシウムは、好ましい炭酸塩である。好ましい炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムである。
【0047】
使用される担体を混合酸化物とすることが可能である。
【0048】
さらに、担持されたパラジウム触媒は、他の金属、例えば鉛をドープすることができる。よく知られているこのタイプの触媒は、鉛をドープしたパラジウム担持炭酸カルシウムである「リンドラー触媒」である。そのようなリンドラー触媒は、例えば、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、エボニック(Evonik)、ジョンソン・マッセイ(Johnson-Matthey)又はHindustan Platinumから市販されている。
【0049】
より好ましい水素化触媒は、パラジウム担持炭素、パラジウム担持シリカ、及びパラジウム担持アルミナ、及びパラジウム担持炭酸塩であり、パラジウム担持炭酸カルシウムがより一層好ましく、鉛をドープしたパラジウム担持炭酸カルシウムが最も好ましい。
【0050】
水素化触媒中のパラジウムの量は、水素化触媒の総重量を基準にして、好ましくは0.5~20重量%の範囲、より好ましくは2~5重量%の範囲、最も好ましくはおよそ5重量%の範囲である。
【0051】
一実施形態では、水素化触媒は、コロイド懸濁液の形態で使用される。
【0052】
極めて好適な水素化触媒は、国際公開第2009/096783A1号パンフレット、又はPeter T.Witteら、Top Catal(2012)55:505~511に開示されており、BASFによって商品名NanoSelect(商標)で商品化されている触媒である。
【0053】
別の好ましい実施形態では、水素化触媒は、いずれの有機第四級アンモニウム化合物も含まない。
【0054】
[添加物の混合物]
本方法は、添加物の混合物の存在下で実行される。前記添加物の混合物は、有機リン化合物である少なくとも1つの添加物(AP)と、有機硫黄化合物である少なくとも1つの添加物(AS)との混合物である。
【0055】
添加物(AP)と添加物(AS)との添加物の混合物が、2つの異なる添加物の混合物であることを強調することは重要である。換言すると、トリフェニルホスフィンスルフィド(Ph3P=S)など、PとSとを同じ分子中に有する添加物は、本明細書において、添加物(AP)と添加物(AS)との混合物とはみなされない。さらに強調すべきであるが、そのような分子(PとSとを同じ分子中に有する)はまた、有機リン化合物である添加物(AP)とも有機硫黄化合物である添加物(AS)ともみなされない。
【0056】
[添加物(AP)]
有機リン化合物である添加物(AP)は、好ましくは、ホスフィノ基又はホスフィンオキシド基のいずれかを担持する。
【0057】
有機リン化合物である添加物(AP)は、硫黄原子を含まない。
【0058】
添加物(AP)がホスフィンオキシド基を担持する場合、前記添加物は、1つ又は2つの、より好ましくは1つのホスフィンオキシド基を有するのが好ましい。
【0059】
ホスフィンオキシドを担持する有機リン化合物である添加物(AP)として特に好ましいものは、ジフェニルホスフィンオキシドである。
【0060】
添加物(AP)がホスフィノ基を担持する場合、添加物はホスフィンである。前記添加物(AP)は、1つ又は複数の、好ましくは1~4つの、より好ましくは1~3つのホスフィノ基を有するのが好ましい。
【0061】
実施形態のうち1つでは、添加物(AP)は式(III)
【化7】
[式中、Rは、アルキル基又はシクロアルキル基又はアリール基のいずれか、特に、フェニル基又はトリル基であり、点線は、式(III)の置換基が添加物(AP)の残部に結合している結合を表す]
のホスフィノ基を1つ有するのが好ましい。
【0062】
アルキル基は、好ましくはC1~6-アルキル基である。シクロアルキル基は、好ましくはC5~8-シクロアルキル基である。
【0063】
実施形態のうち好ましい実施形態である1つでは、添加物(AP)は、式(III)
【化8】
[式中、Rは、アルキル基又はシクロアルキル基又はアリール基のいずれか、特に、フェニル基又はトリル基であり、点線は、式(III)の置換基が添加物(AP)の残部に結合している結合を表す]
のホスフィノ基を2つ以上、好ましくは2つ、有するのが好ましい。
【0064】
アルキル基は、好ましくはC1~6-アルキル基である。シクロアルキル基は、好ましくはC5~8-シクロアルキル基である。
【0065】
好ましい実施形態では、添加物(AP)は、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-オルトトリルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ)メチル-2-メチルプロパン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフタレン、ビス(2-ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン及び1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンからなる群から選択され、好ましくは、トリフェニルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン及び1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンからなる群から選択される。
【0066】
[添加物(AS)]
有機硫黄化合物である添加物(AS)は、好ましくは、チオール、チオエーテル及びジスルフィドからなる群から選択される有機硫黄化合物である。
【0067】
添加物(AS)は、ホスホル(phosphor)原子を含まない。
【0068】
チオールは、少なくとも1つのメルカプト基(SH)を担持する。一実施形態では、チオールは、1つのSH基を担持する。この実施形態の特定の好適なチオールは、アルキルメルカプタン、特に、n-ブチルメルカプタン又はn-ヘキシルメルカプタン;モノチオアルコール、特に、モノチオグリコール、モノチオグリセロール、モノチオエチレングリコール、モノチオプロピレングリコール、モノチオポリエチレングリコール、モノチオールポリプロピレングリコール、モノチオエタノール又はモノチオプロパノール;芳香族チオフェノール、特に、チオフェノール、チオクレゾール、メルカプトピリジン又はメルカプトピリミジンである。
【0069】
別の実施形態では、チオールは、2つ以上のメルカプト基(SH)を担持するポリチオールである。好ましいポリチオールの第1の群は、芳香族ポリチオールである。好ましくは、SH基は、好ましくは芳香族炭化水素に直接結合している(チオフェノール)。芳香族炭化水素は、1つ又は複数の芳香環を有していてもよい。芳香環は、縮合環構造を形成することができるか、又はスペーサーによって、例えば、アルキレン基によって、又は官能基によって、分離することができる。SH基は、同じ芳香環に、又は異なる芳香環に、直接結合することができる。芳香族ポリチオールとして特に好ましいものは、4,4’-ジメルカトビフェニル又は4,4’-チオジベンゼンチオール又はジチオレソルシノール又はジチオトルエンである。
【0070】
チオエーテルは、その化学式の中に、2つの炭素原子に結合している少なくとも1つの構造要素---S---を担持する。チオエーテルは、対称又は非対称のチオエーテルとすることができる。
【0071】
好適なチオエーテルの例は、特に、ジアルキルチオエーテル、特に、ジ-n-ブチルチオエーテル又はジ-第三級ブチルチオエーテル;ジヒドロキシアルキルチオエーテル、特に、チオジエチレングリコール(S(CH2CH2OH)2)又はチオジプロピレングリコール;ジアリールチオエーテル、特に、ジフェニルチオエーテル;ジアラルキルチオエーテル、特に、ジベンジルチオエーテル;アルキルアリールチオエーテル、特に、チオアニソール;環式チオエーテル及びその置換誘導体、特に、エチレンスルフィド、チオフェン、チアゾール、チオピラン、チオキサントン、チオキサントヒドロール、1,4-チオキサン;並びにアルキルヘテロアリールチオエーテル、特に、2-メチル-チオ-4,6-ジアミノピリミジンからなる群から選択される。
【0072】
好ましい実施形態では、チオエーテルは、分子中に少なくとも2つのチオエーテル基を含有する。
【0073】
実施形態のうちの1つでは、チオエーテルは、次式(XI):
【化9】
[式中、Eは、直鎖又は分岐鎖のC
1~6-アルクリエン基(alklyene group)を表し、n1は、0~4の整数、特に0又は1を表し、
R
0は、C
1~6-アルキル基、好ましくは、メチル基又はエチル基を表す]
を有する。
【0074】
Eは、好ましくは、エチレン基又はプロピレン基を表す。
【0075】
この実施形態では、チオエーテルは、好ましくは1,3-ビス(メチルチオ)プロパン
【化10】
である。
【0076】
好ましい実施形態では、チオエーテルは、少なくとも1つのヒドロキシル基、好ましくは2つのヒドロキシル基を担持する。
【0077】
好ましい実施形態では、チオエーテルは、分子中に、少なくとも2つのチオエーテル基を含有し、特に、次式(XII):
【化11】
[式中、Dは、直鎖又は分岐鎖のC
1~6-アルクリエン基(alklyene group)を表し、n2は、1~4の整数、特に1又は2を表す]
を有する。
【0078】
式(XII)の化合物は、1モルの、α、ω-ジハロゲノアルカン又はそれぞれのα、ω-ジハロゲノアルカンチオエーテルと、2モルのモノ-チオアルキレングリコールとの反応によって得ることができる。
【0079】
最も好ましい実施形態では、チオエーテルは、2,2’-(エタン-1,2-ジイルビス(スルファンジイル))ビス(エタン-1-オール)
【化12】
である。
【0080】
ジスルフィドは、その化学式の中に、2つの炭素原子に結合している少なくとも1つの構造要素---S-S---を担持する。ジスルフィドは、対称又は非対称のジスルフィドとすることができる。
【0081】
好適なジスルフィドの例は、特に、ジアルキルジスルフィド、特に、ジ-n-ブチルジスルフィド;ジアリールジスルフィド、特に、ジフェニルジスルフィド、ジ-(o-カルボキシフェニル)-ジスルフィド、及びジアラルキルジスルフィド、特に、ジベンジルジスルフィドからなる群から選択される。
【0082】
ジスルフィド化合物は、それぞれのチオールから、穏やかな酸化剤の作用によって得ることができる。
【0083】
有機硫黄化合物である1つの添加物(AS)は、少なくとも1つのヒドロキシル基を担持するチオエーテルであり、特に、2,2’-(エタン-1,2-ジイルビス(スルファンジイル))ビス(エタン-1-オール)
【化13】
であるのが最も好ましい。
【0084】
添加物の混合物は、好ましくは、
- 有機リン化合物である少なくとも1つの添加物(AP)であって、式(III)
【化14】
[式中、Rは、アルキル基又はシクロアルキル基又はアリール基のいずれか、特に、フェニル基又はトリル基であり、点線は、式(III)の置換基が添加物(AP)の残部に結合している結合を表す]
の、1つの、又は2つ以上のホスフィノ基を有し、
好ましくは、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-オルトトリルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ)メチル-2-メチルプロパン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフタレン、ビス(2-ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン及び1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンからなる群から選択され、
より好ましくは、トリフェニルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン及び1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンからなる群から選択される、
有機リン化合物である少なくとも1つの添加物(AP)
と、
- 有機硫黄化合物である少なくとも1つの添加物1つの添加物(AS)であって、チオール、チオエーテル及びジスルフィドからなる群から選択され、
好ましくはチオエーテルであり、
より好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル基を担持するチオエーテルであり、
最も好ましくは、2,2’-(エタン-1,2-ジイルビス(スルファンジイル))ビス(エタン-1-オール)である、
有機硫黄化合物である少なくとも1つの添加物1つの添加物(AS)
との混合物である。
【0085】
添加物の混合物は、最も好ましくは、トリフェニルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン及び1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンからなる群から選択される少なくとも1つの添加物(AP)と、少なくとも1つのヒドロキシル基を担持する少なくとも1つのチオエーテル、好ましくは2,2’-(エタン-1,2-ジイルビス(スルファンジイル))ビス(エタン-1-オール)との混合物である。
【0086】
添加物(AP)の、添加物(AS)に対するモル比は、10:1~1:10の範囲、好ましくは5:1~1:5の範囲、より一層好ましくは2:1~1:2の範囲であるのが好ましい。
【0087】
添加物(AP)及び/又は(AS)は、水素化反応の開始前、又は水素化プロセスの間に、個々に、又は混合物としてアルキン、特にアルキノールに、又は前溶液としてアルキン、特にアルキノールに、添加することができる。前溶液又は前混合物の場合、添加物(AP)及び/又は(AS)は、少量の、有機溶媒又は好ましくはアルキン、特にアルキノールの中に溶解又は分散される。
【0088】
上記の方法は、アルキンがアルキノールである好ましい実施形態の場合、それぞれのアルケン又はアルケノールを選択的にもたらす。炭素-炭素三重結合は、アルケン、アルケノールのそれぞれにおいては炭素-炭素二重結合であることを除いて、前記アルケン、アルケノールはそれぞれに、アルキン、アルキノールのそれぞれと同じ化学構造を有する。
【0089】
換言すると、好ましいケースの場合、式(I)
【化15】
のアルキノールが水素化され、選択的水素化によって形成されるアルケノールは、式(II)
【化16】
のアルケノールであり、但し、R
1は、式(I)及び(II)において同じ意味を有し、R
2は、式(I)及び(II)において同じ意味を有する。
【0090】
添加物の混合物の、触媒に対する重量比は、0.01:1~100:1の範囲、好ましくは0.1:1~10:1の範囲、より好ましくは0.2:1~3:1の範囲であるのが好ましい。
【0091】
水素化触媒の量(即ち、パラジウムと担体との合計)は、アルキンの重量を基準にして、好ましくは、重量%で0.0001~10%の範囲、より好ましくは0.001~1重量%の範囲、最も好ましくは0.01~0.1重量%の範囲である。
【0092】
パラジウムの量は、水素化触媒の重量を基準にして、好ましくは1~10重量%、好ましくは3~7重量%である。
【0093】
水素化反応は、好ましくは、10~150℃の範囲の温度で、より好ましくは20~100℃の範囲の温度で、最も好ましくは40~90℃の範囲の温度で行われる。
【0094】
水素化反応は、好ましくは、1~25bara(絶対圧bar)水素の範囲の水素圧で、より好ましくは、2~10bara水素の範囲の水素圧で、より一層好ましくは、2~6bara水素の範囲の水素圧で、さらにより好ましくは、2.5~4bara水素の範囲の水素圧で、最も好ましくは、2.5~3bara水素の範囲の水素圧で行われる。
【0095】
水素化反応は、溶媒なしに、又は有機溶媒の存在下で行うことができる。有機溶媒は、好ましくは、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、炭酸塩、アミド、ニトリル及びケトン並びにこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましいものは、C4~10脂肪族炭化水素、C6~10芳香族炭化水素、1つ又は複数の、C1~4直鎖アルキル基又はC3~4分岐鎖アルキル基又はハロゲンで置換されているC6~10芳香族炭化水素、C1~4直鎖アルコール又はC3~4分岐鎖アルコール、非環式及び環式のC4~10エーテル、C3~10エステル、C3~10ケトン並びにこれらの混合物である。特に好ましい有機溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、テトラヒドロフラン、2-メチル-テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、アセトン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましい溶媒はヘプタンである。
【0096】
しかしながら、好ましくは、水素化は、いずれの有機溶媒も使用せずに実行される。
【0097】
好ましい実施形態では、水素化は、いずれの有機第四級アンモニウム化合物も使用せずに実行される。
【0098】
極めて大変好ましい実施形態では、水素化は、いずれの有機溶媒も、いずれの有機第四級アンモニウム化合物も使用せずに実行される。
【0099】
上記の方法は、出発材料として使用されるアルキンがアルキノールである場合、それぞれのアルケン又はそれぞれのアルケノールを選択的にもたらす。前記アルケンは、炭素-炭素三重結合がアルケンにおいては炭素-炭素二重結合であることを除いて、アルキンと同じ化学構造を有する。したがって、前記アルケノールは、炭素-炭素三重結合がアルケノールにおいては炭素-炭素二重結合であることを除いて、アルキノールと同じ化学構造を有する。
【0100】
換言すると、好ましいケースの場合、式(I)
【化17】
のアルキノールが水素化され、選択的水素化によって形成されるアルケノールは、式(II)
【化18】
のアルケノールであり、但し、R
1は、式(I)及び(II)において同じ意味を有し、R
2は、式(I)及び(II)において同じ意味を有する。
【0101】
アルキンを水素化して選択的にアルケンにする上記の方法、アルキノールを水素化して選択的にアルケノールにする上記の方法は、それぞれに、極めて高い転化率で、極めて高い選択率と極めて低い過水素化とを同時に提供することが判明した。
【0102】
さらなる態様において、本発明は、
- アルキン、
- 担体に担持されたパラジウムである水素化触媒、並びに
- 有機リン化合物である少なくとも1つの添加物(AP)、及び
- 有機硫黄化合物である少なくとも1つの添加物(AS)
を含む組成物に関する。
【0103】
アルキン、水素化触媒、並びに添加物(AP)及び(AS)は、上記に極めて詳細に開示され、説明されている。
【0104】
したがって、好ましい実施形態では、前記組成物は、
- 式(I)
【化19】
[式中、
R
1は、H又はメチル基又はエチル基、好ましくは、メチル基又はエチル基を表し、並びに
R
2は、少なくとも1つの化学官能基、特に、少なくとも1つのヒドロキシル基を任意選択により含む、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基を表すか、
又は
R
1及びR
2は、一緒に5~7員環を形成しているアルキレン基を表すか
のいずれかである]
の化合物、
- 担体に担持されたパラジウムである水素化触媒、並びに
- 有機リン化合物である少なくとも1つの添加物(AP)、及び
- 有機硫黄化合物である少なくとも1つの添加物(AS)
を含む。
【0105】
前記組成物は、やはり上に開示されているように、分子状水素によって水素化されるのに極めて適しており、極めて高い選択率で、対応するアルキン、式(II)
【化20】
のアルケノールをそれぞれもたらす。
【0106】
[実施例]
本発明は、以下の実験によってさらに説明される。
【0107】
【0108】
[選択的水素化系列1:
メチルブタ-3-イン-2-オールからメチルブタ-3-エン-2-オールへの水素化]
水素化触媒(5重量%のパラジウムを含有するパラジウム-鉛担持炭酸カルシウム80mg)を、500ml圧力反応器の中に入れた。個々の添加物を表1に記載の量で、及び2-メチルブタ-3-イン-2-オールを合計270g、反応器に添加した。容器を密封し、窒素で3回パージした(6baraまで加圧して解放)。反応器を70℃まで加熱し、水素で3回パージした(4baraまで加圧して解放)。反応器を2.5baraまで加圧し、混合物を撹拌した。反応終了近くで複数回、混合物から試料採取し、転化率が通常で>99.9%に達したのはいつかを決定した。試料をGC(面積%)により分析して、選択率を決定した。
【0109】
【0110】
[選択的水素化系列2:
3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オールから3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オールへの水素化]
水素化触媒(5重量%のパラジウムを含有するパラジウム-鉛担持炭酸カルシウム56mg)を、500ml圧力反応器の中に入れた。個々の添加物を表2に記載の量で、及び3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オールを合計250g、反応器に添加した。容器を密封し、窒素で3回パージした(6baraまで加圧して解放)。反応器を55℃まで加熱し、水素で3回パージした(4baraまで加圧して解放)。反応器を3baraまで加圧し、混合物を撹拌した。反応終了近くで複数回、混合物から試料採取し、転化率が>99.9%に達したのはいつかを決定した。試料をGC(面積%)により分析して、選択率を決定した。
【0111】
【0112】
[選択的水素化系列3:
3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-1-イン-3-オールから3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-1-エン-3-オールへの水素化]
水素化触媒(5重量%のパラジウムを含有するパラジウム-鉛担持炭酸カルシウム50mg)を、500ml圧力反応器の中に入れた。
【0113】
個々の添加物を表3に記載の量で、及び3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-1-イン-3-オールを合計260g、反応器に添加した。容器を密封し、窒素で3回パージした(6baraまで加圧して解放)。反応器を85℃まで加熱し、水素で3回パージした(4baraまで加圧して解放)。反応器を3baraまで加圧し、混合物を撹拌した。反応終了近くで複数回、混合物から試料採取し、転化率が>99.5%に達したのはいつかを決定した。試料をGC(面積%)により分析して、選択率を決定した。
【0114】