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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】透光量制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/264 20060101AFI20230912BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
E06B9/264 C
E06B9/24 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019223089
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021092069
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 徹
(72)【発明者】
【氏名】花岡 郁哉
(72)【発明者】
【氏名】福西 英知
(72)【発明者】
【氏名】市倉 隆平
(72)【発明者】
【氏名】平野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 成
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-144907(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179407(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179285(WO,A1)
【文献】特開2008-266900(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0088324(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/24 - 9/388
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽の位置を示す位置情報、透光量制御の対象とする建物の形状を示す建物形状情報、及び当該建物の屋外に存在する、太陽からの当該建物に対する直達日射を遮蔽する遮蔽物の形状を示す遮蔽物形状情報に基づいて、前記建物に設けられた開口部に対する前記直達日射の入射率を示す直達日射入射率を導出する入射率導出部と、
前記屋外に設けられた日射センサによって検出された日射量に基づいて、前記開口部の方位角及び傾斜角に対応した直達日射量を導出する日射量導出部と、
前記直達日射入射率と前記直達日射量とを乗算して得られる直達日射入射量と所定閾値との比較結果に基づいて、前記開口部に設けられた透光量調整部による前記直達日射の透光量を制御する制御部と、
を備えた透光量制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記建物の内部の人の存在状況に応じて、前記透光量の制御を行う、
請求項1に記載の透光量制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記建物の内部を複数の領域に分割し、各分割領域毎の前記直達日射の入射状況に応じて、前記透光量の制御を行う、
請求項1又は請求項2に記載の透光量制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、中間期の場合、及び前記建物の内部の空調状態が冷房状態の場合の少なくとも一方の場合に、前記透光量の制御を行う、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の透光量制御装置。
【請求項5】
前記入射率導出部は、コンピュータ・シミュレーションにより前記直達日射入射率を導出する、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の透光量制御装置。
【請求項6】
前記透光量調整部は、調光フィルム及び電動ブラインドの少なくとも一方である、
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の透光量制御装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の透光量制御装置の各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光量制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物内における適切な光環境を実現するために適用することのできる技術として、従来、次の2つの技術があった。
【0003】
すなわち、特許文献1には、建物への日射量を測定する固定設置された日射量計と、前記日射量計から得られた計測結果から、直達日射量を算出する直散分離計算部と、前記直散分離計算部によって得られた直達日射量と閾値とを比較し、比較結果に基づいて、前記建物近傍の天候が曇天であるか否かを判定する曇天判定部と、前記曇天判定部の判定結果に応じて前記建物に設置されたブラインドの制御を行う制御部と、を有することを特徴とするブラインド制御装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、建物における消費電力の削減を支援する消費電力削減支援システムにおいて、前記建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測する計測部と、前記計測された外光照度に基づいて前記光による室内照度を算出する室内照度算出部と、前記算出された室内照度に基づいて、前記室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する電力削減可能量算出部とを具備する、消費電力削減支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-14961号公報
【文献】特開2013-58395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、対象とする建物の周囲に隣接する建造物、樹木等や、建物そのものに設けられている庇等といった、対象とする建物に対する直達日射を遮蔽する遮蔽物に関しては考慮されていないため、必ずしも建物内における適切な光環境を実現することができるとは限らない、という問題点があった。
【0007】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、建物内における適切な光環境を実現することのできる透光量制御装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る透光量制御装置は、太陽の位置を示す位置情報、透光量制御の対象とする建物の形状を示す建物形状情報、及び当該建物の屋外に存在する、太陽からの当該建物に対する直達日射を遮蔽する遮蔽物の形状を示す遮蔽物形状情報に基づいて、前記建物に設けられた開口部に対する前記直達日射の入射率を示す直達日射入射率を導出する入射率導出部と、前記屋外に設けられた日射センサによって検出された日射量に基づいて、前記開口部の方位角及び傾斜角に対応した直達日射量を導出する日射量導出部と、前記直達日射入射率と前記直達日射量とを乗算して得られる直達日射入射量と所定閾値との比較結果に基づいて、前記開口部に設けられた透光量調整部による前記直達日射の透光量を制御する制御部と、を備える。
【0009】
請求項1に記載の本発明に係る透光量制御装置によれば、太陽の位置を示す位置情報、透光量制御の対象とする建物の形状を示す建物形状情報、及び当該建物の屋外に存在する、太陽からの当該建物に対する直達日射を遮蔽する遮蔽物の形状を示す遮蔽物形状情報に基づいて、前記建物に設けられた開口部に対する前記直達日射の入射率を示す直達日射入射率を導出し、かつ、前記屋外に設けられた日射センサによって検出された日射量に基づいて、前記開口部の方位角及び傾斜角に対応した直達日射量を導出し、導出した前記直達日射入射率と前記直達日射量とを乗算して得られる直達日射入射量と所定閾値との比較結果に基づいて、前記開口部に設けられた透光量調整部による前記直達日射の透光量を制御することで、建物内における適切な光環境を実現することができる。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係る透光量制御装置は、請求項1に記載の透光量制御装置であって、前記制御部は、前記建物の内部の人の存在状況に応じて、前記透光量の制御を行う。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る透光量制御装置によれば、前記建物の内部の人の存在状況に応じて、前記透光量の制御を行うことで、建物の内部の人にとっての快適性を向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の本発明に係る透光量制御装置は、請求項1又は請求項2に記載の透光量制御装置であって、前記制御部は、前記建物の内部を複数の領域に分割し、各分割領域毎の前記直達日射の入射状況に応じて、前記透光量の制御を行う。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係る透光量制御装置によれば、前記建物の内部を複数の領域に分割し、各分割領域毎の前記直達日射の入射状況に応じて、前記透光量の制御を行うことで、より効率的に建物内における光環境を制御することができる。
【0014】
請求項4に記載の本発明に係る透光量制御装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の透光量制御装置であって、前記制御部は、中間期の場合、及び前記建物の内部の空調状態が冷房状態の場合の少なくとも一方の場合に、前記透光量の制御を行う。
【0015】
請求項4に記載の本発明に係る透光量制御装置によれば、中間期の場合、及び前記建物の内部の空調状態が冷房状態の場合の少なくとも一方の場合に、前記透光量の制御を行うことで、建物内の空調設備に対する省エネルギー効果を得ることができる。
【0016】
請求項5に記載の本発明に係る透光量制御装置は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の透光量制御装置であって、前記入射率導出部は、コンピュータ・シミュレーションにより前記直達日射入射率を導出する。
【0017】
請求項5に記載の本発明に係る透光量制御装置によれば、コンピュータ・シミュレーションにより前記直達日射入射率を導出することで、より簡易に直達日射入射率を導出することができる。
【0018】
請求項6に記載の本発明に係る透光量制御装置は、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の透光量制御装置であって、前記透光量調整部は、調光フィルム及び電動ブラインドの少なくとも一方である。
【0019】
請求項6に記載の本発明に係る透光量制御装置によれば、前記透光量調整部を、調光フィルム及び電動ブラインドの少なくとも一方とすることで、調光フィルム及び電動ブラインドの少なくとも一方を用いて、建物内における適切な光環境を実現することができる。
【0020】
請求項7に記載の本発明に係るプログラムは、コンピュータを、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の透光量制御装置の各部として機能させるためのものである。
【0021】
請求項7に記載の本発明に係るプログラムによれば、太陽の位置を示す位置情報、透光量制御の対象とする建物の形状を示す建物形状情報、及び当該建物の屋外に存在する、太陽からの当該建物に対する直達日射を遮蔽する遮蔽物の形状を示す遮蔽物形状情報に基づいて、前記建物に設けられた開口部に対する前記直達日射の入射率を示す直達日射入射率を導出し、かつ、前記屋外に設けられた日射センサによって検出された日射量に基づいて、前記開口部の方位角及び傾斜角に対応した直達日射量を導出し、導出した前記直達日射入射率と前記直達日射量とを乗算して得られる直達日射入射量と所定閾値との比較結果に基づいて、前記開口部に設けられた透光量調整部による前記直達日射の透光量を制御することで、建物内における適切な光環境を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、建物内における適切な光環境を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る透光量制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る透光量制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る建物の構成の一例を示す斜視図である。
図4】実施形態に係る建物の構成の一例を示すと共に、各部の配置位置の説明に供する側面断面図である。
図5】実施形態に係る窓部の構成の一例を示す断面図である。
図6】実施形態に係る建物関連情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図7】実施形態に係る太陽位置情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図8】第1実施形態に係る透光量制御処理の一例を示すフローチャートである。
図9】実施形態に係る初期情報入力画面の構成の一例を示す正面図である。
図10】実施形態に係る調光フィルム群及び直達日射入射率の導出方法の説明に供する図である。
図11】第2実施形態に係る透光量制御処理の一例を示すフローチャートである。
図12】第2実施形態に係る対象ゾーンへの陽の差し込み状況の判定方法の説明に供する側面断面図である。
図13】他の実施形態に係る透光量制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図14】他の実施形態に係る透光量制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0025】
[第1実施形態]
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る透光量制御装置10の構成を説明する。なお、透光量制御装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の情報処理装置が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係る透光量制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16及び通信I/F部18はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0027】
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、透光量制御プログラム13Aが記憶されている。透光量制御プログラム13Aは、透光量制御プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの透光量制御プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、透光量制御プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、透光量制御プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0028】
また、記憶部13には、建物関連情報データベース13B及び太陽位置情報データベース13Cが記憶される。建物関連情報データベース13B及び太陽位置情報データベース13Cについては、詳細を後述する。
【0029】
一方、図1に示すように、本実施形態に係る透光量制御装置10の通信I/F部18には、日射センサ50、空調装置52、カメラ54及び透光量調整部としての調光フィルム56が接続されている。従って、CPU11は、日射センサ50により得られた日射量、及びカメラ54による撮影によって得られた画像情報を、通信I/F部18を介して取得することができる。また、CPU11は、空調装置52による空調動作の制御、及び調光フィルム56の透過量の制御の各制御を行うことができる。なお、日射センサ50、空調装置52、カメラ54及び調光フィルム56については、詳細を後述する。
【0030】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る透光量制御装置10の機能的な構成について説明する。図2に示すように、透光量制御装置10は、入射率導出部11A、日射量導出部11B及び制御部11Cを含む。透光量制御装置10のCPU11が透光量制御プログラム13Aを実行することで、入射率導出部11A、日射量導出部11B及び制御部11Cとして機能する。
【0031】
本実施形態に係る入射率導出部11Aは、太陽の位置を示す位置情報(以下、「太陽位置情報」という。)、透光量制御の対象とする建物(以下、「制御対象建物」という。)の形状を示す建物形状情報、及び当該制御対象建物の屋外に存在する、太陽からの当該制御対象建物に対する直達日射を遮蔽する遮蔽物の形状を示す遮蔽物形状情報に基づいて、制御対象建物に設けられた開口部に対する上記直達日射の入射率を示す直達日射入射率を導出する。本実施形態に係る入射率導出部11Aでは、太陽位置情報を記憶部13に予め構築された太陽位置情報データベース13Cから取得し、上記建物形状情報及び上記遮蔽物形状情報を、記憶部13に予め構築された建物関連情報データベース13Bから取得する。
【0032】
そして、本実施形態に係る入射率導出部11Aでは、コンピュータ・シミュレーションにより直達日射入射率を導出する。なお、本実施形態で適用する上記コンピュータ・シミュレーションについては、詳細を後述する。
【0033】
また、本実施形態に係る日射量導出部11Bは、上記屋外に設けられた日射センサ50によって検出された日射量に基づいて、上記開口部の方位角及び傾斜角に対応した直達日射量を導出する。なお、日射量導出部11Bによる直達日射量の導出方法については、詳細を後述する。
【0034】
そして、本実施形態に係る制御部11Cは、入射率導出部11Aによって導出された直達日射入射率と、日射量導出部11Bによって導出された直達日射量とを乗算して得られる直達日射入射量と所定閾値との比較結果に基づいて、上記開口部に設けられた調光フィルム56による直達日射の透光量を制御する。
【0035】
本実施形態に係る制御部11Cでは、制御対象建物の内部の人の存在状況に応じて、上記透光量の制御を行う。また、本実施形態に係る制御部11Cでは、中間期の場合、及び制御対象建物の内部の空調装置52による空調状態が冷房状態の場合に、上記透光量の制御を行う。なお、本実施形態に係る制御部11Cでは、カメラ54から取得される画像情報が示す画像を用いて、制御対象建物の内部の人の存在状況を把握する。
【0036】
次に、図3図5を参照して、本実施形態に係る制御対象建物の構成について説明する。
【0037】
図3及び図4に示すように、本実施形態に係る制御対象建物30は、地盤Gに設けられた図示しない基礎上に構築されている。なお、図4は断面図であるが、錯綜を回避するために、断面を表すハッチング(斜線)の図示を省略している。
【0038】
制御対象建物30は、屋根部32及び外周壁部34を有している。本実施形態の屋根部32は、傾斜屋根とされている。なお、屋根部32は、傾斜屋根に限らず、平屋根であってもよい。この屋根部32には、室内20に太陽Tの光(以下、「太陽光P」を記す。)を採光するための開口部40が形成されている。開口部40には、複数の窓部42が格子状に設けられている。なお、後述する図12の説明図では、判りやすくするため、開口部40及び窓部42を水平方向及び垂直方向に沿って図示している。
【0039】
図5に示すように、窓部42は、図示しない窓枠と、この窓枠内に設けられたガラス部44と、を有している。本実施形態では、ガラス部44は、二枚の透明なガラス板43、45を含んで構成された二重ガラス構造になっている。
【0040】
ガラス部44を構成する外側のガラス板43の室内20側の内面には、上述した調光フィルム56が貼られている。なお、調光フィルム56は、ガラス板43、45の少なくとも一方に貼られていればよい。また、ガラス部44は、二重ガラスでなく、一重ガラスであってもよいし、三重以上のガラスで構成されていてもよい。
【0041】
調光フィルム56は、印加される電圧に応じて、その透過率が増減する。具体的には、調光フィルム56に印加される電圧が大きくなると、調光フィルム56の透過率が増加し、ガラス部44が透明に近づく。一方、調光フィルム56に印加される電圧が小さくなると、調光フィルム56の透過率が減少し、ガラス部44が曇りガラスのようになる。なお、調光フィルム56に電圧が印加されていない状態では、調光フィルム56の透過率が最小となる。
【0042】
本実施形態の制御対象建物30では、通常は、CPU11による制御により、調光フィルム56に最大電圧を印加して、調光フィルム56の透過率を最大とし、ガラス部44が透明の状態になっている。よって、通常は、太陽光Pが室内20に採光される。
【0043】
図4に示すように、室内20には、上述したカメラ54が複数個所、本実施形態では室内20の隅部にそれぞれ設けられている。本実施形態のカメラ54は、室内20に存在する人Hを検出するために用いられる。なお、本実施形態では、カメラ54が複数個所(本実施形態では4箇所)に設けられているが、これに限定されない。カメラ54は、少なくとも室内20に1箇所以上設けられていればよい。また、室内20に存在する人Hを検出するために用いるものとして、カメラ54に代えて赤外線センサ、超音波センサ等の人感センサを用いる形態としてもよい。
【0044】
また、図4に示すように、制御対象建物30の室内20には、上述した空調装置52が設けられている。なお、本実施形態では、錯綜を回避するために、室内20に空調装置52が1台のみ設置されている場合について説明するが、これに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0045】
更に、制御対象建物30の屋根部32における頂部で、かつ、制御対象建物30の屋外に存在する遮蔽物によって太陽からの直達日射が遮蔽されない位置には、上述した日射センサ50が設けられている。本実施形態に係る日射センサ50は、水平面全天の日射量を測定することができるものとされている。なお、本実施形態では、錯綜を回避するために、日射センサ50が1個のみ設置されている場合について説明するが、これに限定されるものではないことも言うまでもない。
【0046】
次に、図6を参照して、本実施形態に係る建物関連情報データベース13Bについて説明する。図6に示すように、本実施形態に係る建物関連情報データベース13Bは、透光量制御装置10が取り扱い対象としている建物毎に、建物名称、建物位置情報及び3次元CAD(Computer Aided Design)情報の各情報が関連付けられて記憶されている。
【0047】
上記建物名称は、対応する建物の名称を示す情報であり、上記建物位置情報は、対応する建物の建設位置を示す情報である。なお、本実施形態では、上記建物位置情報として、対応する建物の住所を適用しているが、これに限定されるものではない。上記建物位置情報として、緯度及び経度の各情報を適用する形態としてもよいし、これらの住所や、緯度及び経度に対して高度を付加して適用する形態等としてもよい。
【0048】
一方、上記3次元CAD情報は、対応する建物の形状を示す建物形状情報、及び当該建物の屋外に存在する、太陽からの当該建物に対する直達日射を遮蔽する遮蔽物の形状を示す遮蔽物形状情報を含むモデル(以下、「建物関連モデル」という。)を示す情報とされている。本実施形態に係る上記遮蔽物には、対応する建物に隣接する建物、電柱、橋等の建造物や、樹木、当該建物の周囲に設けられた塀等の他、当該建物の外壁に設けられた庇等が含まれる。
【0049】
本実施形態では、建物関連モデルを、予め定められた3次元CADソフトウェアを用いて作成している。本実施形態では、上記3次元CADソフトウェアとして、ライノセラス(Rhinoceros)(登録商標)を適用しているが、これに限定されるものではない。例えば、レビット(Revit)(登録商標)等の他のソフトウェアを上記3次元CADソフトウェアとして適用する形態としてもよい。
【0050】
上述したように、制御対象建物30には多数の窓部42の各々毎に調光フィルム56が設けられており、各々の調光フィルム56は予め定められた領域毎にグループ分けされている。そして、建物関連情報データベース13Bの3次元CAD情報には、各調光フィルム56が属するグループを特定するための特定情報も含まれている。
【0051】
次に、図7を参照して、本実施形態に係る太陽位置情報データベース13Cについて説明する。図7に示すように、本実施形態に係る太陽位置情報データベース13Cは、予め定められた複数の地域毎で、かつ、日時毎に、上述した太陽位置情報が記憶されている。
【0052】
なお、本実施形態では、上記地域として、住所を示す情報を適用しているが、これに限定されるものではない。当該地域として、対応する位置の緯度及び経度の各情報を適用する形態としてもよい。また、本実施形態では、上記日時として、対応する地域における1月1日から12月31日までの日の出時刻から日没時刻までの日時帯で、かつ、所定時間(本実施形態では、5分)間隔の時刻を適用しているが、これに限定されるものでないことは言うまでもない。更に、本実施形態では、上記太陽位置情報として、対応する地域の地表面における、対応する時刻での太陽に対する方位角及び傾斜角の2つの角度で表される情報を適用しているが、これに限定されるものでないことも言うまでもない。ここで、太陽位置情報は、拡張アメダス気象データ等から得ることができる。また、太陽位置情報は、対応する位置の緯度及び経度から各種近似式を用いて算出することもできる。
【0053】
次に、図8図10を参照して、本実施形態に係る透光量制御装置10の作用を説明する。ユーザによって透光量制御プログラム13Aの実行を開始する指示入力が入力部14を介して行われた場合に、透光量制御装置10のCPU11が当該透光量制御プログラム13Aを実行することにより、図8に示す透光量制御処理が実行される。なお、ここでは、錯綜を回避するために、建物関連情報データベース13B及び太陽位置情報データベース13Cが構築済みである場合について説明する。
【0054】
図8のステップ200で、入射率導出部11Aは、予め定められた構成とされた初期情報入力画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ202で、入射率導出部11Aは、所定情報が入力されるまで待機する。
【0055】
図9には、本実施形態に係る初期情報入力画面の一例が示されている。図9に示すように、本実施形態に係る初期情報入力画面では、対象とする制御対象建物30の名称(上述した建物名称)の入力を促すメッセージと共に、当該建物名称を入力するための入力領域15Aが表示される。
【0056】
一例として図9に示す初期情報入力画面が表示部15に表示されると、ユーザは、入力部14を介して、対象とする制御対象建物30の建物名称を入力領域15Aに入力した後、終了ボタン15Eを指定する。これに応じて、ステップ202が肯定判定となって、ステップ204に移行する。
【0057】
ステップ204で、入射率導出部11Aは、初期情報入力画面において入力された建物名称に対応する建物位置情報及び3次元CAD情報を建物関連情報データベース13Bから読み出す。ステップ206で、入射率導出部11Aは、読み出した建物位置情報が示す建設位置に対応する地域で、かつ、この時点から当日の日没時刻までの日時に対応する全ての太陽位置情報を太陽位置情報データベース13Cから読み出す。ここで、入射率導出部11Aは、建物位置情報が示す建設位置と同一の地域が太陽位置情報データベース13Cに登録されている場合は当該地域を適用する一方、上記建設位置と同一の地域が太陽位置情報データベース13Cに登録されていない場合には、当該建設位置の最寄りの地域を適用する。
【0058】
ステップ208で、入射率導出部11Aは、太陽位置情報データベース13Cから読み出した各時刻別で、かつ、調光フィルム56のグループ別に、次の式(1)により直達日射入射率DRを算出する。なお、一例として図10に示されるように、式(1)におけるSAは、対応するグループに属する調光フィルム56に対して直達日射が入射される面積を表し、GAは、対応するグループに属する調光フィルム56全体の面積を表す。
【0059】
DR=SA/GA (1)
【0060】
すなわち、式(1)により算出される直達日射入射率DRは、対応するグループに属する調光フィルム56全体の面積GAに対する、上述した遮蔽物形状情報及び太陽位置情報等によって特定される、当該調光フィルム56全体に対して太陽光が直接入射される面積SAの割合を示す。
【0061】
なお、本実施形態では、面積SAを、上記ライノセラス(登録商標)に設けられている機能であるグラスホッパー(Grasshopper)(登録商標)によるコンピュータ・シミュレーションによって得ているが、これに限らない。例えば、ダイナモ(Dynamo)(登録商標)等の他のソフトウェアを、面積SAを導出するソフトウェアとして適用する形態としてもよいし、透光量制御装置10のユーザが入力部14を介して面積SAを入力する形態等としてもよい。
【0062】
ステップ210で、日射量導出部11Bは、水平面全天の日射量を示す情報を日射センサ50から入力し、ステップ212で、日射量導出部11Bは、入力した情報が示す水平面全天の日射量を用いて、宇田川/木村の推定式により、調光フィルム56のグループ別に直達日射量を導出する。なお、宇田川/木村の推定式については、「宇田川、木村,「水平面全天日射量観測値よりの直達日射量の推定」,日本建築学会論文報告集第267号昭和53年5月」等にも記載されており、従来既知の技術であるので、これ以上の説明は省略する。但し、直達日射量の導出方法は、宇田川/木村の推定式を用いる方法には限らず、太陽追尾型の日射量計の計測値から算出する方法等の他の方法を用いて導出する形態としてもよい。太陽追尾型の日射量計の計測値から算出する方法では、太陽追尾型の日射量計で直達日射量及び天空日射量を計測し、その計測値に基づき各方位及び傾斜面の日射量を調光フィルム56のグループ別に算出する。
【0063】
ステップ214で、制御部11Cは、調光フィルム56のグループ別に、以上の処理によって得られた直達日射入射率DRと直達日射量とを乗算することにより、調光フィルム56のグループ別の直達日射入射量を算出する。
【0064】
ステップ216で、制御部11Cは、空調装置52が運転中か否かを判定し、否定判定となった場合は中間期に相当するものと見なしてステップ222に移行する一方、肯定判定となった場合はステップ218に移行する。
【0065】
ステップ218で、制御部11Cは、空調装置52が冷房運転中か否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ222に移行する一方、否定判定となった場合はステップ220に移行する。ステップ220で、制御部11Cは、全ての調光フィルム56の透過率を最大値とすることにより、全ての調光フィルム56を全開放の状態とするように各調光フィルム56を制御し、その後にステップ234に移行する。
【0066】
ステップ222で、制御部11Cは、調光フィルム56の各グループにおける何れか1つのクループに属する複数の調光フィルム56(以下、「対象調光フィルム群」という。)について、対応する直達日射入射量が予め定められた閾値より多いか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ224に移行する。
【0067】
本実施形態では、上記閾値として、60W/mを適用している。これは、「井上、松尾,「日射遮蔽装置の使用実態に関する調査研究」,日本建築学会計画系論文報告集第378号昭和62年8月」の第3頁の2)の記載内容を根拠としている。但し、この形態には限定されず、上記閾値は、透光量制御処理に要求される快適性や、省エネルギー効果、透光量制御処理を実行する際の季節等によって適宜変更する形態としてもよい。
【0068】
ステップ224で、制御部11Cは、対象調光フィルム群の各調光フィルム56の透過率を最小値とすることにより、対象調光フィルム群の全ての調光フィルム56を全閉鎖の状態とするように各調光フィルム56を制御し、その後にステップ232に移行する。
【0069】
一方、ステップ222において否定判定となった場合はステップ226に移行し、制御部11Cは、対象ゾーン(本実施形態では、制御対象建物30の内部の全領域)に人が存在しているか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ228に移行する。なお、本実施形態では、対象ゾーンに人が存在するか否かを、カメラ54から得られた画像情報が示す画像に人が写っているか否かを判定することにより行っているが、これに限定されるものではない。例えば、制御対象建物30の出入り口に人感センサを設けておき、当該人感センサによって制御対象建物30の内部への人の入場を検出することで判定する形態等としてもよい。
【0070】
ステップ228で、制御部11Cは、対象調光フィルム群の各調光フィルム56の透過率を最大値とすることにより、対象調光フィルム群の全ての調光フィルム56を全開放の状態とするように各調光フィルム56を制御し、その後にステップ232に移行する。
【0071】
一方、ステップ226で否定判定となった場合はステップ230に移行し、制御部11Cは、対象調光フィルム群の各調光フィルム56の透過率を最小値とすることにより、対象調光フィルム群の全ての調光フィルム56を全閉鎖の状態とするように各調光フィルム56を制御し、その後にステップ232に移行する。
【0072】
ステップ232で、制御部11Cは、調光フィルム56の全てのグループについてステップ222~ステップ230の処理が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ222に戻り、肯定判定となった時点でステップ234に移行する。なお、ステップ222~ステップ232の処理を繰り返し実行する際には、それまでに処理対象としなかった調光フィルム56のグループを上述した対象調光フィルム群とする。
【0073】
以上のステップ222~ステップ232の繰り返し処理により、全ての調光フィルム56について、直達日射入射量と対象ゾーンに対する人の存在状況に応じた好適な開閉状態を設定することができる。
【0074】
ステップ234で、制御部11Cは、予め定められた終了タイミングが到来したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ210に戻る一方、肯定判定となった時点で本透光量制御処理を終了する。なお、本実施形態では、上記終了タイミングとして、ユーザによって透光量制御プログラム13Aを終了する指示入力が入力部14を介して行われたタイミングを適用しているが、これに限定されるものではない。例えば、透光量制御処理の実行当日の日没時刻を越えたタイミングを上記終了タイミングとして適用する形態等としてもよい。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、太陽の位置を示す位置情報、透光量制御の対象とする建物の形状を示す建物形状情報、及び当該建物の屋外に存在する、太陽からの当該建物に対する直達日射を遮蔽する遮蔽物の形状を示す遮蔽物形状情報に基づいて、前記建物に設けられた開口部に対する前記直達日射の入射率を示す直達日射入射率を導出する入射率導出部11Aと、前記屋外に設けられた日射センサによって検出された日射量に基づいて、前記開口部の方位角及び傾斜角に対応した直達日射量を導出する日射量導出部11Bと、前記直達日射入射率と前記直達日射量とを乗算して得られる直達日射入射量と所定閾値との比較結果に基づいて、前記開口部に設けられた透光量調整部による前記直達日射の透光量を制御する制御部11Cと、を備えている。従って、建物内における適切な光環境を実現することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、制御対象建物30の内部の人の存在状況に応じて、調光フィルム56の透光量の制御を行っている。従って、制御対象建物30の内部の人にとっての快適性を向上させることができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、中間期の場合、及び制御対象建物30の内部の空調状態が冷房状態の場合である場合に、調光フィルム56の透光量の制御を行っている。従って、制御対象建物30内の空調設備に対する省エネルギー効果を得ることができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、コンピュータ・シミュレーションにより直達日射入射率を導出している。従って、より簡易に直達日射入射率を導出することができる。
【0079】
更に、本実施形態によれば、透光量調整部として調光フィルム56を適用している。従って、調光フィルム56を用いて、制御対象建物30内における適切な光環境を実現することができる。
【0080】
[第2実施形態]
本第2実施形態では、制御対象建物30の内部を複数の領域に分割し、各分割領域毎の直達日射の入射状況に応じて、調光フィルム56の透光量の制御を行う場合の形態例について説明する。なお、本第2実施形態に係る透光量制御装置10の構成は上記第1実施形態に係る透光量制御装置10(図1図2参照。)と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0081】
次に、図11図12を参照して、本第2実施形態に係る透光量制御装置10の透光量制御処理を実行する場合の作用を説明する。なお、図11における図8と同様の処理を行うステップには図8と同一のステップ番号を付して、その説明を極力省略する。
【0082】
本第2実施形態に係る透光量制御処理は、上記第1実施形態に係る透光量制御処理に対して、ステップ224~ステップ230の処理が、ステップ225、227、229、231の各処理に置き換わる点のみが異なっている。
【0083】
すなわち、図11に示す透光量制御処理においては、ステップ222において否定判定となった場合はステップ231に移行する一方、肯定判定となった場合はステップ225に移行する。
【0084】
ステップ225で、制御部11Cは、人が存在するゾーンに陽が差し込んでいるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ227に移行する。なお、本実施形態では、人が存在するゾーンに陽が差し込んでいるか否かの判定を以下に示すように行う。
【0085】
即ち、一例として図12に示すように、例えば、制御対象建物30の室内20をゾーンa~ゾーンcの3つのゾーンに分け、判定エリアを、床面からの高さの範囲が900mmから2000mmまでの範囲とする。また、ここでは、人Hが存在するゾーンがゾーンaである場合について説明する。
【0086】
この場合、例1に示す状態では、太陽Tからの直達日射がゾーンcの判定エリアには入射しているため、ゾーンcについては「陽が差し込んでいる」との判定となるが、ゾーンa及びゾーンbについては判定エリアに太陽Tからの直達日射が入射していないため、ゾーンa及びゾーンbともに「陽が差し込んでいない」との判定となる。
【0087】
同様に、例2に示す状態では、太陽Tからの直達日射がゾーンb及びゾーンcの判定エリアには入射しているため、ゾーンb及びゾーンcについては「陽が差し込んでいる」との判定となるが、ゾーンaについては判定エリアに太陽Tからの直達日射が入射していないため、ゾーンaは「陽が差し込んでいない」との判定となる。
【0088】
これに対し、例3に示す状態では、太陽Tからの直達日射がゾーンa~ゾーンcの全てのゾーンに入射しているため、各ゾーンともに「陽が差し込んでいる」との判定となる。従って、この場合、例3に示す状況のみがステップ225において肯定判定となる。
【0089】
なお、太陽Tから室内20への直達日射の入射領域は、太陽Tの位置と、対象とする調光フィルム群との位置関係から特定することができる。本実施形態では、この入射領域も、グラスホッパー(登録商標)によるコンピュータ・シミュレーションによって得ているが、これに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0090】
ステップ227で、制御部11Cは、対象調光フィルム群の各調光フィルム56の透過率を最小値とすることにより、対象調光フィルム群の全ての調光フィルム56を全閉鎖の状態とするように各調光フィルム56を制御し、その後にステップ232に移行する。
【0091】
一方、ステップ225において否定判定となった場合はステップ229に移行し、制御部11Cは、対象調光フィルム群の各調光フィルム56の透過率を最大値とすることにより、対象調光フィルム群の全ての調光フィルム56を全開放の状態とするように各調光フィルム56を制御し、その後にステップ232に移行する。
【0092】
更に、ステップ231で、制御部11Cは、対象調光フィルム群の各調光フィルム56の透過率を最大値とすることにより、対象調光フィルム群の全ての調光フィルム56を全開放の状態とするように各調光フィルム56を制御し、その後にステップ232に移行する。
【0093】
本実施形態によれば、制御対象建物30の内部を複数の領域(ゾーン)に分割し、各分割領域毎の直達日射の入射状況に応じて、調光フィルム56の透光量の制御を行っている。従って、より効率的に制御対象建物30内における光環境を制御することができる。
【0094】
なお、上記各実施形態では、調光フィルム56を各グループ単位で制御する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、調光フィルム56を1つずつ個別に制御する形態としてもよい。この形態によれば、調光フィルム56をグループ分けするための手間を削減することができる。
【0095】
また、上記各実施形態では、透光量調整部として調光フィルム56を適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、電動ブラインドを透光量調整部として適用する形態としてもよい。
【0096】
図13及び図14には、透光量調整部として電動ブラインドを適用した場合の透光量制御装置10の構成例が示されている。なお、図13及び図14における図1及び図2と同様の構成要素には図1及び図2と同一の符号を付している。
【0097】
図13及び図14に示すように、この形態では、調光フィルム56が電動ブラインド58に置き換わっている点のみが上記各実施形態に係る透光量制御装置10と異なっている。なお、この形態における透光量制御装置10の作用は、図8を参照して上述した第1実施形態に係る透光量制御装置10の作用と同様であり、制御部11Cの制御対象が調光フィルム56から電動ブラインド58に置き換わる点のみが異なる。この形態によれば、電動ブラインド58を用いて、制御対象建物30内における適切な光環境を実現することができる。なお、調光フィルム56及び電動ブラインド58以外の透過量調整部としては、電動ロールスクリーン、電動可動ルーバー等を例示することができる。
【0098】
また、上記各実施形態では、空調装置52による空調状態を考慮して調光フィルム56の開閉状態を制御する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、空調状態を何ら考慮することなく、直達日射入射量と閾値との比較結果のみに応じて調光フィルム56の開閉状態を制御する形態としてもよい。同様に、上記各実施形態では、制御対象建物30の内部の人の存在状況を考慮して調光フィルム56の開閉状態を制御する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、当該人の存在状況を何ら考慮することなく、直達日射入射量と閾値との比較結果のみに応じて調光フィルム56の開閉状態を制御する形態としてもよい。これらの形態によれば、上記各実施形態に比較して、制御部11Cによる制御の負荷を軽減することができる。
【0099】
また、上記各実施形態では、複数の建物から制御対象建物30を選択して制御対象とする場合について説明したが、これに限定されない。例えば、単一の制御対象建物30のみを制御対象として想定する形態としてもよいことは言うまでもない。
【0100】
また、上記各実施形態では、調光フィルム56の状態として、全開状態及び全閉状態の2つの状態のみに制御する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、調光フィルム56に印加する電圧を調整することで、調光フィルム56の透過率を中間値とする形態としてもよい。
【0101】
また、上記各実施形態では、日射センサ50を制御対象建物30の屋根部32に設けた場合について説明したが、これに限定されない。例えば、制御対象建物30の敷地内における庭部、他の建物の屋上等、制御対象建物30の屋外に存在する遮蔽物によって太陽からの直達日射が遮蔽されない位置であれば、他の位置に日射センサ50を設ける形態としてもよい。
【0102】
また、上記各実施形態では、日射センサ50を1つのみ用いる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、1箇所のみでは制御対象建物30の屋外に存在する遮蔽物によって太陽からの直達日射が遮蔽される時間帯が存在する場合には、複数の日射センサ50を用いて、当該複数の日射センサ50を時間帯毎に切り替えて用いることにより、上記直達日射が遮蔽される時間帯をなくする形態としてもよい。
また、上記各実施形態では透光量制御装置10の設置場所に関しては特に言及しなかったが、透光量制御装置10は、制御対象建物30の内部に設置したり、制御対象建物30の外部の各種施設等に設置したりする形態としてもよい。また、透光量制御装置10をクラウド・コンピュータとして適用し、透光量制御装置10と、制御対象建物30に設けられた日射センサ50、空調装置52、カメラ54、調光フィルム56等の各部との間で通信を行って、透光量制御処理を実行する形態としてもよい。
【0103】
また、上記各実施形態において、例えば、入射率導出部11A、日射量導出部11B及び制御部11Cの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0104】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0105】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0106】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0107】
10 透光量制御装置
11 CPU
11A 入射率導出部
11B 日射量導出部
11C 制御部
12 メモリ
13 記憶部
13A 透光量制御プログラム
13B 建物関連情報データベース
13C 太陽位置情報データベース
14 入力部
15 表示部
15A 入力領域
15E 終了ボタン
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
20 室内
30 制御対象建物
32 屋根部
34 外周壁部
40 開口部
42 窓部
50 日射センサ
52 空調装置
54 カメラ
56 調光フィルム
58 電動ブラインド
H 人
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14