(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】粘着シート、剥離シート付き粘着シート及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230912BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20230912BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20230912BHJP
C09J 133/08 20060101ALI20230912BHJP
C09J 133/10 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/10
C09J133/14
C09J133/08
C09J133/10
(21)【出願番号】P 2019001096
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2021-12-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴迪
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-053135(JP,A)
【文献】特開2018-035290(JP,A)
【文献】国際公開第2019/004107(WO,A1)
【文献】特開2017-066295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性アクリル重合体(A)と、架橋剤(B)と、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)とを含有する粘着剤組成物から形成される粘着シートであって、
前記アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)は、(メタ)アクリル酸アルコキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコール、フェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート又は2-エチルヘキシルEO変性アクリレートをそれぞれ
のみで重合させてなるものであり、
前記アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)の含有量は、前記架橋性アクリル重合体(A)100質量部に対して、0.05~6質量部である、粘着シート。
【請求項2】
周波数1MHzでの比誘電率が3.0未満である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着シートを介してガラス板及びPETフィルムを貼合して積層体とし、前記積層体を60℃、相対湿度95%の条件下に240時間置き、23℃、相対湿度50%の環境下に1時間静置した後のヘーズが2%以下である、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)の重量平均分子量が1000~50000未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記架橋性アクリル重合体(A)は、炭素数が5~9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記架橋性アクリル重合体(A)は、アクリル酸エステルに由来する単位と、メタクリル酸エステルに由来する単位を含み、前記アクリル酸エステルに由来する単位と前記メタクリル酸エステルに由来する単位のエステル構造は同一である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記架橋性アクリル重合体(A)を構成する単位において、前記アクリル酸エステルに由来する単位と前記メタクリル酸エステルに由来する単位の質量比が25:75~50:50である、請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを備える剥離シート付き粘着シート。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着シートと、前記粘着シートの少なくとも一方の面側に被着体と、を備える積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、剥離シート付き粘着シート及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの表示装置及び入力装置を組み合わせた装置が広く用いられている。中でも、静電容量方式のタッチパネルはその機能性から急速に普及してきている。これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合せる用途に粘着シートが使用されており、表示装置と入力装置との貼合にも粘着シートが使用されている。
【0003】
静電容量タッチパネルにおいては、表面に指を近づけると複数の電極間の静電容量が同時に変化し、電流量の比率を測定することで高精度に位置検出することを可能にしている。ただし、この方式を大型化するとタッチパネルの誤作動が多くなる。このような問題に対応するためには、比誘電率を制御した粘着シートを用いることが検討されている。その中でも画像表示装置とタッチパネルを有する静電容量タッチパネルにおいては、画像表示装置からの電気的なノイズによりタッチパネルの誤作動が生じやすいため、画像表示装置とタッチパネルの貼り合わせに用いる粘着シートとして、比誘電率の低い粘着シートを使用することが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、比誘電率の低い粘着剤層を形成し得る粘着剤組成物が開示されている。特許文献1には、炭素数が5~9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレートに由来する構成単位(A)を全構成単位に対して40質量%以上、及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位(B)を全構成単位に対して5質量%以上15質量%以下含む(メタ)アクリル系重合体と、スチレン系重合体と、を含有する粘着剤組成物が開示されている。また、特許文献2には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、シクロデキストリン類(B)とを含有する粘着性組成物が開示されている。ここでは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、該重合体を構成するモノマー単位として水酸基を有するモノマーおよび/またはカルボキシ基を有するモノマーを有しており、耐湿熱白化性を抑制することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-172865号公報
【文献】国際公開第2015/151224号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが特許文献1における粘着剤層を、高温高湿条件下に置いた場合、粘着剤層が白化する場合があり、耐湿熱白化性が不十分であることがわかった。また、特許文献2の粘着性組成物から粘着シートを形成した場合、耐湿熱白化性が不十分であったり、誘電率を十分に低くできない場合があることがわかった。
【0007】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、比誘電率の低い粘着シートであって、耐湿熱白化性に優れた粘着シートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、架橋性アクリル重合体(A)と、架橋剤(B)と、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)とを含有する粘着剤組成物から粘着シートを形成することにより、比誘電率の低い粘着シートであって、耐湿熱白化性に優れた粘着シートが得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] 架橋性アクリル重合体(A)と、架橋剤(B)と、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)とを含有する粘着剤組成物から形成される粘着シートであって、
アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)の含有量は、架橋性アクリル重合体(A)100質量部に対して、0.05~6質量部である、粘着シート。
[2] 周波数1MHzでの比誘電率が3.0未満である、[1]に記載の粘着シート。
[3] 粘着シートを介してガラス板及びPETフィルムを貼合して積層体とし、積層体を60℃、相対湿度95%の条件下に240時間置き、23℃、相対湿度50%の環境下に1時間静置した後のヘーズが2%以下である、[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[4] アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)の重量平均分子量が1000~50000未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の粘着シート。
[5] 架橋性アクリル重合体(A)は、炭素数が5~9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の粘着シート。
[6] 架橋性アクリル重合体(A)は、アクリル酸エステルに由来する単位と、メタクリル酸エステルに由来する単位を含み、アクリル酸エステルに由来する単位とメタクリル酸エステルに由来する単位のエステル構造は同一である、[1]~[5]のいずれかに記載の粘着シート。
[7] 架橋性アクリル重合体(A)を構成する単位において、アクリル酸エステルに由来する単位とメタクリル酸エステルに由来する単位の質量比が25:75~50:50である、[6]に記載の粘着シート。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを備える剥離シート付き粘着シート。
[9] [1]~[7]のいずれかに記載の粘着シートと、粘着シートの少なくとも一方の面側に被着体と、を備える積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比誘電率が低く、かつ耐湿熱白化性に優れた粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の剥離シート付き粘着シートの構成の一例を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
本明細書において、“(メタ)アクリル”はアクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表す。また、本明細書において、“単量体”と“モノマー”とは同義であり、“重合体”と“ポリマー”とは同義である。
【0014】
(粘着シート)
本発明は、架橋性アクリル重合体(A)と、架橋剤(B)と、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)とを含有する粘着剤組成物から形成される粘着シートに関する。ここで、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)の含有量は、架橋性アクリル重合体(A)100質量部に対して、0.05~6質量部である。
【0015】
本発明の粘着シートは、上述した粘着剤組成物の硬化物である粘着剤層からなるシートである。本発明の粘着シートは、上記構成を有する粘着剤組成物から形成されるものであるため、比誘電率が低く、かつ耐湿熱白化性にも優れている。このため、本発明の粘着シートは、タッチパネルを搭載した表示装置を構成する光学部材等の接着に好ましく用いられる。
【0016】
粘着シートの周波数1MHzでの比誘電率は3.0未満であることが好ましく、2.9以下であることがより好ましい。なお、粘着シートの周波数1MHzでの比誘電率の下限値は特に限定されるものではないが、2.0であることが好ましい。このように、本発明の粘着シートは、低い比誘電率を有している。なお、粘着シートの比誘電率は、1MHzの周波数における比誘電率であって、JIS C 2138に規定される方法で算出される値を用いる。
【0017】
粘着シートの耐湿熱白化性は、粘着シートを介してガラス板及びPETフィルムを貼合して積層体として、積層体を60℃、相対湿度95%の条件下に240時間置き、23℃、相対湿度50%の環境下に1時間静置した後のヘーズ値が低い場合に良好であると判定できる。具体的には、粘着シートの一方の面を厚さ1.2mmのガラス板(松浪硝子工業社製、S9112)に貼合し、他方の面をPETフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300)に貼合し、積層体とし、該積層体を60℃、相対湿度95%の環境下で240時間放置し、取り出した後、23℃、相対湿度50%にて1時間冷却した後にヘーズを測定する。なお、ヘーズの測定装置としては、例えば、日本電色株式会社製のNDH 4000を用いることができる。上記条件で測定したヘーズは、2%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましく、1.6%以下であることがさらに好ましく、1.4%以下であることが特に好ましい。
【0018】
本発明の粘着シートは、両面粘着シートであることが好ましいが、粘着シートの片面に基材等を備えた片面粘着シートであってもよい。本発明の粘着シートは、さらに他の粘着剤層を備えるものであってもよく、粘着剤層と粘着剤層の間に支持体を積層したものであってもよい。この場合、支持体として透明な支持体を用いたものが好ましい。このような両面粘着シートは、粘着シート全体としての透明性にも優れることから、光学部材同士の接着に好適に用いることができる。本発明の粘着シートは上述した中でも、支持体を有さない基材レスタイプが好ましく、粘着剤層からなる単層の両面粘着シートであることが好ましい。
【0019】
粘着シートの表面は剥離シートによって覆われていることが好ましい。すなわち、本発明は、剥離シート付き粘着シートに関するものであってもよい。
図1は、剥離シート付き粘着シートの構成の一例を表す断面図である。
図1に示された粘着シート11は剥離シート(12a、12b)を有している。なお、
図1の粘着シート11は、基材レスタイプの単層の粘着シートであり、両面粘着シートである。
【0020】
剥離シートとしては、剥離シート用基材とこの剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-4527、SD-7220等や、信越化学工業(株)製のKS-3600、KS-774、X62-2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO2単位と(CH3)3SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH3)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-843、SD-7292、SHR-1404等や、信越化学工業(株)製のKS-3800、X92-183等が挙げられる。
【0021】
剥離シート付き粘着シートは、粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを備えることが好ましい。すなわち、粘着シートの一方の表面に第1の剥離シートを備え、粘着シートの他方の表面に第2の剥離シートを備え、第1の剥離シート及び第2の剥離シートの剥離力が互いに異なることが好ましい。
図1の例では、剥離シートを剥離しやすくするために、剥離シート12aと剥離シート12bとの剥離性を異なるものとすることが好ましい。つまり、一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シート12だけを先に剥離することが容易となる。その場合、貼合方法や貼合順序に応じて剥離シート12aと剥離シート12bの剥離シート12の剥離性を調整すればよい。
【0022】
なお、本発明の粘着シートは、異物を埋め込むための柔らかさと、高温環境下での硬さのバランスが良好なため、異物埋まり性にも優れている。ここで、異物埋まり性は、粘着シートを、ガラスビーズを散布した被着体に貼合し、高温高湿条件に置いた際、異物であるガラスビーズの周辺の気泡の発生の有無により評価することができる。具体的には、偏光板の表面に中心粒径30μmのガラスビーズを約0.05mg散布した被着体に粘着シートを貼合し、85℃、相対湿度85%の環境下で24時間処理した後に、ガラスビーズ周辺より気泡が発生していない場合に異物埋まり性が良好であると判定できる。
【0023】
通常、光学用途に用いられる粘着シートにおいては、粘着シートの凝集力や耐久性を高めるために、例えば、水酸基等の架橋性官能基をアクリル系重合体の全質量に対して1~20質量%配合した粘着シートが用いられている。しかし、このような粘着シートを高温高湿条件下に置いた場合、粘着シートが白化する場合があり、問題となっていた。また、粘着シートの白化を抑制するために水酸基等の架橋性基を20質量%以上有するアクリル系重合体を用いた場合には、低誘電化が十分に達成されなかった。しかし、本発明者らは、鋭意検討の末、架橋性アクリル重合体(A)と、架橋剤(B)と、所定量のアルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)とを含有する粘着剤組成物から粘着シートを形成することにより、粘着シートの凝集力や耐久性を高めつつも、粘着シートの比誘電率を低下させ、さらに耐湿熱白化性を高めることに成功した。
【0024】
粘着シートの対ガラスの粘着力は、15N/25mm以上であることが好ましく、20N/25mm以上であることがより好ましく、25N/25mm以上であることがさらに好ましい。また、粘着シートの対ガラスの粘着力の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、40N/25mmとすることが好ましい。本発明の粘着剤組成物から形成される粘着シートは、このように高い粘着力を発揮し得るものである。なお、粘着シートの対ガラスの粘着力は、JIS Z 0237の「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて測定した値である。具体的には粘着シートを、23℃、相対湿度50%の環境下で、被着体であるソーダガラス板に貼合し、2kgロールを1往復させて圧着する。その後、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置し、その環境下で180°方向に300mm/minの速度で粘着シートをソーダガラス板から剥離することで測定する。
【0025】
粘着シートのゲル分率は、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。
粘着シートのゲル分率は、以下の方法で算定できる。まず、粘着シート約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて40℃環境下で24時間振とうする。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥重量W(g)を測定する。得られた乾燥重量から下記式1によりゲル分率を求める。
ゲル分率(%)=(乾燥重量/粘着シートの採取重量)×100・・・式1
【0026】
粘着シートの厚みは、用途に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10μm以上500μm以下の範囲内であることが好ましく、20μm以上450μm以下であることがより好ましく、30μm以上450μm以下であることがさらに好ましく、40μm以上400μm以下であることが一層好ましく、40μm以上350μm以下であることがより一層好ましく、40μm以上300μm以下であることが特に好ましい。粘着シートの厚みを上記範囲内とすることにより、異物埋まり性を十分に確保することができ、さらに耐久性を高めることができる。また、粘着シートの厚さを上記範囲内とすることにより、粘着シートの製造が容易となる。
【0027】
(粘着剤組成物)
本発明の粘着シートは、架橋性アクリル重合体(A)と、架橋剤(B)と、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)とを含有する粘着剤組成物から形成される。架橋剤(B)は、熱硬化型架橋剤であることが好ましく、この場合、粘着剤組成物は熱硬化型であると言える。本発明の粘着剤組成物は、加熱により硬化し、粘着シートを形成するものである。
【0028】
<架橋性アクリル重合体(A)>
粘着剤組成物は、架橋性アクリル重合体(A)を含む。架橋性アクリル重合体(A)としては、公知の架橋性アクリル重合体を用いることができる。なお、架橋性アクリル重合体(A)は、表示装置の視認性を低下させない程度の透明性を有するものが好ましい。
【0029】
粘着剤組成物は、架橋性アクリル重合体(A)を主成分として含む。粘着剤組成物中における架橋性アクリル重合体(A)の含有量は、粘着剤組成物の架橋性アクリル重合体(A)と、架橋剤(B)と、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)の合計質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。なお、粘着剤組成物中における架橋性アクリル重合体(A)の含有量は、粘着剤組成物の(A)、(B)及び(C)成分の合計質量に対して、99.9質量%以下であることが好ましい。
【0030】
架橋性アクリル重合体(A)は、非架橋性(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位(a1)及び架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する単位(a2)を含有することが好ましい。この場合、非架橋性(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位(a1)は、炭素数が5~9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位であることが好ましい。架橋性アクリル重合体(A)が炭素数5~9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位を含有する場合、架橋性アクリル重合体(A)を含む粘着剤組成物から比誘電率が十分に低い粘着シートを形成しやすくなる。なお、本明細書において、「単位」は重合体を構成する繰り返し単位(単量体単位)である。
【0031】
炭素数5~9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位は、炭素数が5以上のアルキル基を有し、かつこのようなアルキル基は分岐した構造であるため、モル体積が大きく、密度が小さい。このため、架橋性アクリル重合体(A)が、炭素数が5~9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位を含む場合、架橋性アクリル重合体(A)のモル体積を大きくし、密度を小さくすることができる。また、炭素数5~9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位が炭素数9以下のアルキル基を有することにより、ポリマーとしたときの体積収縮率を抑えることができ、架橋性アクリル重合体(A)のモル体積を大きく維持することができるものと考えられる。これらの結果、比誘電率の低い粘着シートを形成しやすくなる。
【0032】
炭素数が5~9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル等が挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、炭素数が5~9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルであることが好ましい。
【0033】
非架橋性(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位(a1)が有する分岐アルキル基の炭素数は5~9であればよいが、7~9であることが好ましい。分岐アルキル基の炭素数を上記範囲内とすることにより、比誘電率が十分に低い粘着剤層を形成しやすくなる。また、分岐アルキル基の炭素数を上記範囲内とすることにより、架橋性アクリル重合体(A)の重合度を制御しやすく、加工性に優れた粘着剤組成物を得ることができる。
【0034】
架橋性アクリル重合体(A)における炭素数が5~9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有量は、架橋性アクリル重合体(A)の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。炭素数が5~9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの比誘電率を十分に低下させることができ、さらに粘着シートの耐久性を高めることができる。
【0035】
架橋性アクリル重合体(A)は、非架橋性(メタ)そして、アクリル酸エステルに由来する単位とメタクリル酸エステルに由来する単位のエステル構造は同一であることが好ましい。ここで、エステル構造が同一であるとは、エステル結合を含む側鎖(この場合の側鎖とは重合体にした時の側鎖になる部分をさす)を構成する部分の構造が同一であることをいう。
【0036】
エステル構造が同一であるアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのうち、いずれか一方をホモポリマーとした時のガラス転移温度は-60℃以下であることが好ましく、他方をホモポリマーとした時のガラス転移温度は-15℃以上であることが好ましい。エステル構造が同一であるアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとしては、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)と2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)との組み合わせが挙げられる。このように2種のアクリル酸エステルを用い、かつ2種のアクリル酸エステルにおいてエステル構造を同一とすることにより、粘着剤組成物の均一混合性が高まるため、粘着シートの白化が抑制され、また、粘着物性のばらつきが少ない粘着シートを得ることができる。
【0037】
さらに、架橋性アクリル重合体(A)に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーにおけるアクリル酸エステルに由来する単位と、メタクリル酸エステルに由来する単位の質量比は、25:75~50:50であることが好ましく、25:75~40:60であることがより好ましい。アクリル酸エステルに由来する単位とメタクリル酸エステルに由来する単位の質量比を上記範囲内とすることにより、粘着シートの耐湿熱白化性をより効果的に高めることができる。
【0038】
架橋性アクリル重合体(A)は、非架橋性(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位(a1)及び架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する単位(a2)を含有することが好ましい。架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体は、カルボキシ基含有(メタ)単量体、ヒドロキシ基含有(メタ)単量体、アミノ基含有(メタ)単量体、グリシジル基含有(メタ)単量体であることが好ましい。
【0039】
カルボキシ基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
ヒドロキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
アミノ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、アリルアミン等が挙げられる。
グリシジル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0040】
中でも、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体は、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル単量体であることが好ましく、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルであることがより好ましい。このようなアクリル単量体をさらに用いることで、粘着シートの比誘電率を下げ、さらに耐湿熱白化性をより効果的に高めることができる。なお、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体は、粘着剤組成物の比誘電率を高くしないという観点からアクリル単量体よりメタクリル単量体の方が好ましく、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルであることが特に好ましい。
【0041】
架橋性アクリル重合体(A)における架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する単位(a2)の含有量は、架橋性アクリル重合体(A)の全質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが特に好ましい。また、単位(a2)の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が特に好ましい。単位(a2)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、架橋性を十分に有しており、上記範囲の上限値以下であれば、必要な粘着物性を維持でき、かつ比誘電率が十分に低い粘着剤層を形成することができる。
【0042】
架橋性アクリル重合体(A)の重量平均分子量は、10万以上200万以下が好ましく、30万以上150万以下がより好ましい。重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、十分な段差追従性を確保することができる。なお、架橋性アクリル重合体(A)の重量平均分子量は架橋剤で架橋される前の値である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。架橋性アクリル重合体(A)としては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
【0043】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件は以下のとおりである。
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Shodex KF801、KF803L、KF806L、(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI-2031plus(JASCO製)
ポンプ:RI-2080plus(JASCO製)
流量(流速):0.8ml/min
注入量:10μl
較正曲線:標準ポリスチレンShodex standard ポリスチレン(昭和電工(株)製)Mw=1320~2,500,000迄の10サンプルによる較正曲線を使用した。
【0044】
架橋性アクリル重合体(A)は、必要に応じて非架橋性(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位(a1)及び架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体単位(a2)以外の他の単量体単位を有してもよい。他の単量体としては、非架橋性(メタ)アクリル酸エステルおよび架橋性官能基を有するアクリル単量体と共重合可能なものであればよく、例えば(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等が挙げられる。架橋性アクリル重合体(A)における他の単量体単位の含有量は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
架橋性アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、-80℃以上-10℃以下であることが好ましく、-75℃以上-15℃以下であることがより好ましく、-70℃以上-18℃以下であることがさらに好ましい。架橋性アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)を上記範囲内とすることにより、粘着剤層としたときの凝集力をより高めることができる。これにより、耐久性に優れ、かつ粘着力に優れた粘着剤層が得られる。
【0046】
<架橋剤>
粘着剤組成物は、架橋剤を含有する。架橋剤は、熱により架橋性アクリル重合体(A)と反応する架橋剤であることが好ましく、熱硬化型架橋剤であることが好ましい。
【0047】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤の中から、架橋性アクリル重合体(A)が有する架橋性官能基との反応性を考慮して適宜選択できる。たとえば架橋性官能基としてヒドロキシ基を含む場合は、ヒドロキシ基との反応性から、イソシアネート化合物を用いることができる。架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体単位(a2)を容易に架橋できるという観点からは、イソシアネート化合物、エポキシ化合物を用いることが好ましい。本発明では、架橋剤が二官能性以上のエポキシ化合物及び二官能性以上のイソシアネート化合物から選択される1種類又は2種類以上であることが好ましく、二官能性以上のイソシアネート化合物であることがより好ましい。
【0048】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。ジイシアネートは2官能のまま用いてもよいし、アダクト、ヌレート、ビュレットなどの3官能誘導体にして用いても良い。
エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
架橋剤としては、市販品を使用できる。市販品の例としては、キシリレンジイソシアネート化合物(三井化学(株)製、タケネートD-110N)等が挙げられる。
【0049】
架橋剤としては1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、所望とする接着物性等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、架橋性アクリル重合体(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.03質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。
【0050】
<アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)>
粘着剤組成物は、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)を含む。本発明においては、粘着剤組成物が、親水性を有するアルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)を所定量含有することにより、余分な水分を取り込むことができ、その結果耐湿熱白化性が高められる。
【0051】
アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)は、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを2個以上重合することで得られる。ここで、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)の重量平均分子量は、50000未満であることが好ましく、分子量の上限値が50000未満となるように重合度の上限値が決定される。なお、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)の重量平均分子量は1000以上であることが好ましい。
【0052】
アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルが有するアルキレングリコール基としては、エチレングリコール基、プロピレングリコール基、ブチレングリコール基等を挙げることができる。中でも、(メタ)アクリル酸エステルが有するアルキレングリコール基は、エチレングリコール基であることが好ましい。
【0053】
エチレングリコール基とは、-CH2CH2O-で表される基である。エチレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、1分子中にエチレングリコール基を1つ有するものであってもよく、2つ以上有するものであってもよい。中でも、エチレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステル1分子中におけるエチレングリコール基の数は1~50であることが好ましく、1~40であることがより好ましく、1~30であることがさらに好ましく、1~23であることが特に好ましい。
【0054】
エチレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコール、フェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、2-エチルヘキシルEO変性アクリレートを挙げることができる。中でも、エチレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルコキシエチレングリコール及び(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルコキシエチレングリコール及び(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種に由来する単位であることが好ましい。
【0055】
(メタ)アクリル酸アルコキシエチレングリコール及び(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールが有するアルコキシ基の炭素数は10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。中でも、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び(メタ)アクリル酸エトキシポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種に由来する単位であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル及び(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種に由来する単位であることがさらに好ましい。
【0056】
アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)は、溶媒と、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、重合開始剤を重合させることで得られる。また、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)として、市販品を用いることもできる。
【0057】
アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)の含有量は、架橋性アクリル重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることがさらに好ましい。また、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)の含有量は、架橋性アクリル重合体(A)100質量部に対して、6質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C)の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの比誘電率を低く抑えつつも、粘着シートが湿熱白化することをより効果的に抑制することができる。
【0058】
<溶剤>
粘着剤組成物は、溶剤を含んでいてもよい。この場合、溶剤は、粘着剤組成物の塗工適性の向上のために用いられる。溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0059】
粘着剤組成物中の溶剤の含有量は、特に限定されないが、架橋性アクリル重合体(A)100質量部に対し、25~500質量部が好ましく、30~400質量部がより好ましい。
【0060】
<任意成分>
粘着剤組成物は、上述した成分以外の任意成分を含んでいてもよく、任意成分としては、例えば可塑剤を挙げることができる。粘着剤組成物に可塑剤が含まれる場合は、可塑剤の含有量は、架橋性アクリル重合体(A)100質量部に対し、50質量部以下とすることが好ましく、30質量部以下とすることがより好ましく、10質量部以下とすることがさらに好ましい。
【0061】
可塑剤としては、例えば、無官能性アクリル重合体を用いることができる。無官能性アクリル重合体とは、アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位のみからなる重合体、又はアクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位と官能基を有しない非アクリル単量体単位とからなる重合体を意味する。官能基を有しない非アクリル単量体単位としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルのようなカルボン酸ビニルエステル類やスチレン等が挙げられる。
【0062】
また、任意成分としては、粘着剤用の添加剤として公知の成分、例えば酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤を挙げることができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
金属腐食防止剤としては、ベンゾリアゾール系樹脂を挙げることができる。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。
【0063】
(粘着シートの製造方法)
粘着シートの製造工程は、剥離シート上に粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程と、この塗膜を加熱により硬化物とする工程を含むことが好ましい。
【0064】
上述した工程では、塗膜の加熱により、架橋性アクリル重合体及び架橋剤の反応が進行して硬化物(粘着シート)が形成される。粘着剤組成物を硬化状態とするためには、塗工後溶剤を除去した後に、一定温度で一定期間粘着シートを静置するエージング処理を施してもよい。エージング処理は例えば、23℃で7日間静置して行うことができる。
【0065】
粘着シートを形成する粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
また、塗膜の加熱は、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いて実施できる。
【0066】
(積層体)
本発明は、上述した粘着シートと、粘着シートの少なくとも一方の面側に被着体と、を備える積層体に関するものであってもよい。ここで、被着体は段差部または段差に由来する凹凸を有していてもよい。被着体は液晶モジュールを有する画像表示装置を構成する光学部材又はタッチパネルを構成する光学部材であることが好ましい。積層体は、粘着シートを被着体表面に接触させる工程を経て得られることが好ましい。
【0067】
光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材を挙げることができる。
タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。本発明の粘着シートは、タッチパネルと画像表示装置の積層用であることが好ましく、タッチペンを用いるタッチパネルと画像表示装置の積層用であることがより好ましい。この観点から、本発明の粘着シートの被着体としては、透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルムが好ましく、これらガラスやフィルムの裏面(導電層が無い面)に粘着シートを貼着することが好ましい。
画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。
これらの部材に用いられる材料としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリイミド、セルロースアシレートなどが挙げられる。なお、これらのフィルムの粘着シートに接する側にはハードコート層などの機能層を設けていても良い。
【0068】
本発明の粘着シートが両面粘着シートである場合は、2つの被着体の貼合に用いることができる。この場合、本発明の粘着シートは、タッチパネルの内部におけるITOフィルム同士の貼合、ITOフィルムとITOガラスとの貼合、タッチパネルのITOフィルムと液晶パネルとの貼合、カバーガラスとITOフィルムとの貼合、カバーガラスと加飾フィルムとの貼合などに用いられる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0070】
(架橋性アクリル重合体(A-1)の合成)
2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、2-エチルヘキシルメタクリレート(2-EHMA)及び2-ヒドロキシエチルメタアクリレート(2-HEMA)を質量比で25:65:10となるように配合し、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を溶液へ溶解した。溶液を60℃に加熱してランダム共重合させ、架橋性アクリル重合体(A-1)を得た。架橋性アクリル重合体(A-1)の重量平均分子量は50万であった。
【0071】
(架橋性アクリル重合体(A-2)の合成)
2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、2-エチルヘキシルメタクリレート(2-EHMA)及び2-ヒドロキシエチルメタアクリレート(2-HEMA)の質量比を30:60:10となるように変更した以外は(A-1)と同様にして、架橋性アクリル重合体(A-2)を得た。架橋性アクリル重合体(A-2)の重量平均分子量は50万であった。
【0072】
(架橋性アクリル重合体(A-3)の合成)
2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、2-エチルヘキシルメタクリレート(2-EHMA)及び2-ヒドロキシエチルメタアクリレート(2-HEMA)の質量比を40:50:10となるように変更した以外は(A-1)と同様にして、架橋性アクリル重合体(A-3)を得た。架橋性アクリル重合体(A-3)の重量平均分子量は50万であった。
【0073】
(アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C-1)の合成)
攪拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、温度計を備えた反応装置に酢酸エチル50質量部を加えて加熱し、還流温度で10分間維持した。次いで還流温度条件下で2-エチルへキシルEO変性アクリレート(東亞合成社製、M-120)を100質量部、酢酸エチル20質量部及びジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製、V-601)6質量部の単量体混合物を200分間にわたって逐次滴下し、滴下終了後に、更に180分間重合反応を行うことでエチレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C-1)を得た。エチレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C-1)の重量平均分子量は8000であった。
【0074】
(アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C-2)の合成)
2-エチルへキシルEO変性アクリレート(東亞合成社製、M-120)をエトキシ-ジエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレートEC-A)に変更した以外は(C-1)と同様にしてエチレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C-2)を得た。エチレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー(C-2)の重量平均分子量は7500であった。
【0075】
(実施例1)
<粘着剤組成物の作製>
粘着剤組成物中の(A)、(B)及び(C)成分の合計質量に対する各成分割合が表1に記載された割合となるように、各成分を配合して、粘着剤組成物を得た。すなわち、架橋性アクリル重合体(A-1)100質量部に対して、熱架橋剤コロネートL-55E、オリゴマー(C-1)を100:0.1:0.7となるように配合して、粘着剤組成物を得た。
【0076】
(実施例2)
<粘着剤組成物の作製>
架橋性アクリル重合体(A-1)100質量部に対して、熱架橋剤コロネートL-55E、オリゴマー(C-1)を100:0.1:1.5となるように配合して、粘着剤組成物を得た。
【0077】
(実施例3)
<粘着剤組成物の作製>
架橋性アクリル重合体(A-1)100質量部に対して、熱架橋剤コロネートL-55E、オリゴマー(C-1)を100:0.1:5.0となるように配合して、粘着剤組成物を得た。
【0078】
(実施例4)
<粘着剤組成物の作製>
架橋性アクリル重合体(A-1)100質量部に対して、熱架橋剤コロネートL-55E、オリゴマー(C-2)を100:0.1:0.7となるように配合して、粘着剤組成物を得た。
【0079】
(実施例5)
<粘着剤組成物の作製>
架橋性アクリル重合体(A-1)100質量部に対して、熱架橋剤コロネートL-55E、オリゴマー(C-2)を100:0.1:1.5となるように配合して、粘着剤組成物を得た。
【0080】
(実施例6)
<粘着剤組成物の作製>
架橋性アクリル重合体(A-1)100質量部に対して、熱架橋剤コロネートL-55E、オリゴマー(C-2)を100:0.1:5.0となるように配合して、粘着剤組成物を得た。
【0081】
(実施例7)
<粘着剤組成物の作製>
架橋性アクリル重合体(A-1)を(A-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0082】
(実施例8)
<粘着剤組成物の作製>
架橋性アクリル重合体(A-1)を(A-3)に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0083】
(比較例1)
<粘着剤組成物の作製>
オリゴマー(C)を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0084】
(比較例2)
<粘着剤組成物の作製>
架橋性アクリル重合体(A-1)100質量部に対して、熱架橋剤コロネートL-55E、オリゴマー(C-1)を100:0.1:7.5となるように配合して、粘着剤組成物を得た。
【0085】
<粘着シートの作製>
実施例及び比較例で作製した粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第1の剥離シート)(王子エフテックス社製:100RL-07(2))の表面に、乾燥後の塗工厚みが150μmになるようにアプリケーターで均一に塗工した。その後、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥し、第1の剥離シートの表面に粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層の表面に厚さ75μmの第2の剥離シート(王子エフテックス社製:75RL-07(L))を貼合して、粘着シートが剥離力差のある1対の剥離シートに挟まれた第1の剥離シート/粘着シート/第2の剥離シートの構成を備える剥離シート付き粘着シートを得た。この粘着シートに対し、23℃、相対湿度50%の条件で7日間静置するエージング処理を施した。
【0086】
(実施例9)
上記<粘着シートの作製>における粘着剤層の厚みを100μmに変更した以外は、実施例1と同様にして剥離シート付き粘着シートを作製した。
【0087】
(実施例10)
上記<粘着シートの作製>における粘着剤層の厚みを200μmに変更した以外は、実施例1と同様にして剥離シート付き粘着シートを作製した。
【0088】
[評価]
<比誘電率>
粘着シートの比誘電率の評価は以下の手順で実施した。粘着シート(粘着シートから第1の剥離シート及び第2の剥離シートを剥離したもの)を2枚の銅箔の間に挟み、オートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、30分間)を実施した。その後、誘電体測定システム((株)東陽テクニカ製、1260型)によりJIS C 2138に基づいて比誘電率を測定した。周波数、測定環境は下記条件で測定した。
周波数:1MHz
測定環境:23℃、相対湿度50%
【0089】
<耐湿熱白化性>
幅50mm×長さ50mmのサイズに切り取った粘着シートから、第1の剥離シート(軽剥離フィルム)を剥がして、厚さ1.2mmのガラス板(松浪硝子工業社製、S9112)に貼合した。その後、第2の剥離シート(重剥離フィルム)を剥がして、粘着シートにPETフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300)を貼合し、試験用試料を作製した。試験用試料を60℃、相対湿度95%の環境下で240時間放置し、取り出した後、23℃、相対湿度50%にて1時間冷却した後にヘーズを測定した。なお、ヘーズは日本電色株式会社製のNDH 4000を用いて測定した。そして、以下の基準で耐湿熱白化性を評価した。
○:ヘーズ≦2.0%
×:ヘーズ>2.0%
【0090】
<異物埋まり性>
粘着シートを、縦50mm×横25mmの形状に裁断し、第1の剥離シートを剥離し厚さ100μmの透明PETフィルム(品名:コスモシャインA4300、東洋紡社製)に貼合した。被着体として、偏光板(ポラテクノ(株)製、SKN-18243T)を予めガラス板(縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の片面と同寸法に切り出し、上記偏光板の表面に中心粒径30μmのガラスビーズを約0.05mg散布したものを作製した。次いで、上記透明PETフィルムと一体化されている粘着シートの第2の剥離シートを剥がし、ラミネーターを用いて、上記被着体の偏光板のガラスビーズが散布された表面に貼合した。その後、オートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、30分間)を実施して積層体を得た。
積層体を85℃、相対湿度85%の環境下で24時間処理し、処理後のガラスビーズ散布部分をマイクロスコープ(倍率:25倍)で観察し、粘着シートの異物埋まり性を以下の基準で評価した。
○:ガラスビーズ周辺より気泡が発生していない。
×:ガラスビーズ周辺より気泡が発生している。
【0091】
【0092】
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
2EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
2HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
【0093】
実施例で得られた粘着剤組成物は、比誘電率の低い粘着シートであって、耐湿熱白化性に優れた粘着シートを形成していた。また、実施例で得られた粘着剤組成物は、異物埋まり性にも優れた粘着シートを形成していた。
【符号の説明】
【0094】
1 剥離シート付き粘着シート
11 粘着シート(粘着剤層)
12a、12b 剥離シート