(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ヘッドユニット、及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20230912BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/175 503
B41J2/175 501
(21)【出願番号】P 2019010414
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 宏行
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-245737(JP,A)
【文献】特開2007-276393(JP,A)
【文献】特開2012-171319(JP,A)
【文献】特開2015-107569(JP,A)
【文献】特開2009-000859(JP,A)
【文献】国際公開第2013/077170(WO,A1)
【文献】特開2012-066390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0182386(US,A1)
【文献】特開2010-162895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに前記インクを供給する管状部材であって、前記記録ヘッドに接続する一端を有し、前記記録ヘッドから延びる管状部材と、
前記記録ヘッドとは別体であり、前記記録ヘッドとの間に空間を開けて配置され、前記管状部材の他端に接続し、前記管状部材の他端から前記管状部材に前記インクを供給するインク供給部と
を備え、
前記インク供給部は、
前記管状部材の他端に向けて前記インクが流れる流路と、
前記流路に対向する加熱部材と
を有し、
前記加熱部材は、前記インク供給部に対して前記記録ヘッドが配置される側とは反対側に配置さ
れ、
前記流路は、
前記管状部材側に配置される幅狭部と、
前記幅狭部と比べて前記流路の幅が広い幅広部と
を有し、
前記加熱部材は、前記幅広部に対向する、ヘッドユニット。
【請求項2】
インクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに前記インクを供給する管状部材であって、前記記録ヘッドに接続する一端を有し、前記記録ヘッドから延びる管状部材と、
前記記録ヘッドとは別体であり、前記記録ヘッドとの間に空間を開けて配置され、前記管状部材の他端に接続し、前記管状部材の他端から前記管状部材に前記インクを供給するインク供給部と
を備え、
前記インク供給部は、
前記管状部材の他端に向けて前記インクが流れる流路と、
前記流路に対向する加熱部材と
を有し、
前記加熱部材は、前記インク供給部に対して前記記録ヘッドが配置される側とは反対側に配置され、
前記インク供給部は、薄膜部材を有し、
前記薄膜部材は、前記流路を構成する面の一部を構成し、
前記薄膜部材は、前記流路を挟んで前記加熱部材と対向し、前記記録ヘッドと前記インク供給部との間の前記空間に面して配置される
、ヘッドユニット。
【請求項3】
前記インク供給部は、薄膜部材を有し、
前記薄膜部材は、前記幅広部を構成する面の一部を構成し、
前記薄膜部材は、前記流路を挟んで前記加熱部材と対向し、前記記録ヘッドと前記インク供給部との間の前記空間に面して配置される、請求項
1に記載のヘッドユニット。
【請求項4】
インクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに前記インクを供給する管状部材であって、前記記録ヘッドに接続する一端を有し、前記記録ヘッドから延びる管状部材と、
前記記録ヘッドとは別体であり、前記記録ヘッドとの間に空間を開けて配置され、前記管状部材の他端に接続し、前記管状部材の他端から前記管状部材に前記インクを供給するインク供給部と
を備え、
前記インク供給部は、
前記管状部材の他端に向けて前記インクが流れる流路と、
前記流路に対向する加熱部材と
を有し、
前記加熱部材は、前記インク供給部に対して前記記録ヘッドが配置される側とは反対側に配置され、
前記インク供給部は、ベース体を有し、
前記ベース体は、前記流路を構成する壁部を有し、
前記加熱部材は、前記壁部の外側に配置され、
前記壁部の外側の面には凹部が設けられ、
前記加熱部材は前記凹部に配置される
、ヘッドユニット。
【請求項5】
前記インク供給部は、前記加熱部材を覆う蓋体を更に有する、請求項
4に記載のヘッドユニット。
【請求項6】
前記ベース体は、前記蓋体よりも熱伝導率が高い、請求項
5に記載のヘッドユニット。
【請求項7】
インクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに前記インクを供給する管状部材であって、前記記録ヘッドに接続する一端を有し、前記記録ヘッドから延びる管状部材と、
前記記録ヘッドとは別体であり、前記記録ヘッドとの間に空間を開けて配置され、前記管状部材の他端に接続し、前記管状部材の他端から前記管状部材に前記インクを供給するインク供給部と
を備え、
前記インク供給部は、
前記管状部材の他端に向けて前記インクが流れる流路と、
前記流路に対向する加熱部材と
を有し、
前記加熱部材は、前記インク供給部に対して前記記録ヘッドが配置される側とは反対側に配置され、
前記記録ヘッドと前記インク供給部との間の前記空間は、前記インク供給部のうち、前記流路を挟んで前記加熱部材と対向する部位と、前記記録ヘッドとの間に存在する
、ヘッドユニット。
【請求項8】
複数の前記記録ヘッドと、
前記複数の記録ヘッドの各々に対して設けられる複数の前記管状部材と
を備え、
前記流路は、前記複数の管状部材の少なくとも1つの一端に向けて前記インクを流す、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載のヘッドユニット。
【請求項9】
請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載のヘッドユニットを備える、インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドユニット、及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、ノズルからインクを吐出して、記録媒体に画像を記録する。インクは、低温環境下において粘度が高くなる。したがって、低温環境下では、インクの吐出性能が所期の性能を示さない可能性がある。そこで、インクを吐出する前にヒーターによってインクを加熱する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インクの温度を上昇させる構成については改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクの温度を効率的に上昇させることができるヘッドユニット、及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヘッドユニットは、記録ヘッドと、管状部材と、インク供給部とを備える。前記記録ヘッドは、インクを吐出する。前記管状部材は、前記記録ヘッドに前記インクを供給する。前記インク供給部は、前記管状部材に前記インクを供給する。前記インク供給部は、前記管状部材の一端に向けて前記インクが流れる流路を有する。前記インク供給部は、前記流路に対向する加熱部材を有する。
【0007】
本発明のインクジェット記録装置は、上記のヘッドユニットを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヘッドユニット及びインクジェット記録装置によれば、インクの温度を効率的に上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るヘッドユニットを示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るヘッドユニットを示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るダンパー部材を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るダンパー部材を示す上面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るヘッドユニットの一部を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るインク供給ユニットの構成を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合がある。なお、図面には、理解を容易にするために、前後方向、上下方向、及び左右方向を記載しているが、本発明に係るヘッドユニット及びインクジェット記録装置の製造時及び使用時の向きを限定する意図はない。
【0011】
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態のヘッドユニット1を説明する。
図1及び
図2は、本実施形態に係るヘッドユニット1を示す斜視図である。詳しくは、
図1は、右斜め前の上方から見たヘッドユニット1を示す。
図2は、右斜め前の下方から見たヘッドユニット1を示す。
図1及び
図2に示すように、本実施形態のヘッドユニット1は、複数の記録ヘッド2と、複数の供給管状部材3と、複数の循環管状部材4と、ダンパー部材6と、複数の第1カップリング部材51と、複数の第2カップリング部材52とを備える。
【0012】
複数の記録ヘッド2はそれぞれインクを吐出する。具体的には、複数の記録ヘッド2は、同色のインクを吐出する。記録ヘッド2は、左右方向に延びる。本実施形態において、複数の記録ヘッド2は、第1記録ヘッド2a~第3記録ヘッド2cを含む。第1記録ヘッド2a~第3記録ヘッド2cは、左右方向に沿って千鳥状に配置される。詳しくは、第2記録ヘッド2bが、第1記録ヘッド2a及び第3記録ヘッド2cと比べて後ろ側に配置される。
【0013】
複数の記録ヘッド2はそれぞれ、ノズル面21を有する(
図2)。記録ヘッド2は、ノズル面21からインクを吐出する。具体的には、ノズル面21に多数のノズル孔が形成されており、ノズル孔からインクが吐出される。
【0014】
複数の供給管状部材3は、複数の記録ヘッド2へインクを供給する。複数の供給管状部材3のそれぞれの一端(下端)は、対応する記録ヘッド2の左側の端部に接続する。供給管状部材3は、記録ヘッド2から上方向に延びる。本実施形態において、複数の供給管状部材3は、第1供給管状部材3a~第3供給管状部材3cを含む。第1供給管状部材3aは、第1記録ヘッド2aにインクを供給する。第2供給管状部材3bは、第2記録ヘッド2bにインクを供給する(
図2)。第3供給管状部材3cは、第3記録ヘッド2cにインクを供給する。
【0015】
複数の循環管状部材4のそれぞれの一端(下端)は、対応する記録ヘッド2の右側の端部に接続する。循環管状部材4は、記録ヘッド2から上方向に延びる。本実施形態において、複数の循環管状部材4は、第1循環管状部材4a~第3循環管状部材4cを含む。第1循環管状部材4aは、第1記録ヘッド2aに接続する。第2循環管状部材4bは、第2記録ヘッド2bに接続する。第3循環管状部材4cは、第3記録ヘッド2cに接続する。
【0016】
複数の循環管状部材4には、パージ動作時に、複数の記録ヘッド2からインクが流入する。パージ動作は、ノズル孔からインクが吐出しない程度にインクを加圧して記録ヘッド2にインクを供給する動作である。パージ動作は、例えば、インクから気泡を抜くことを目的として実行される。パージ動作が実行されると、複数の記録ヘッド2から複数の循環管状部材4にインクが排出される。詳しくは、供給管状部材3から記録ヘッド2に流入したインクが、記録ヘッド2の内部に形成されている循環流路を介して循環管状部材4に流出する。このとき、インクと共に、気泡が供給管状部材3から記録ヘッド2に流入する。気泡は、インクと共に循環流路を介して循環管状部材4に流出する。複数の循環管状部材4に流入したインク及び気泡は、
図6を参照して説明するインク供給ユニット15へ戻る。
【0017】
ダンパー部材6は、複数の記録ヘッド2の上方に配置される。ダンパー部材6は、複数の供給管状部材3にインクを供給する。換言すると、ダンパー部材6は、複数の供給管状部材3を介して、複数の記録ヘッド2にインクを供給する。ダンパー部材6は、インク供給部の一例である。
【0018】
複数の第1カップリング部材51は、複数の供給管状部材3の他端(上端)をダンパー部材6に連結する。複数の第2カップリング部材52は、複数の循環管状部材4の他端(上端)を、
図6を参照して説明する循環配管164に連結する。本実施形態において、複数の第1カップリング部材51は、3つの第1カップリング部材51を含む。複数の第2カップリング部材52は、3つの第2カップリング部材52を含む。
【0019】
続いて
図1を参照して、本実施形態のダンパー部材6を更に説明する。
図1に示すように、ダンパー部材6は、ベース体61、流路62、及びインク流入部63を有する。
【0020】
ベース体61は、板状部材である。ベース体61は、左右方向に延びる。換言すると、ベース体61は、複数の記録ヘッド2が並ぶ方向に延びる。本実施形態のベース体61は、金属を材料として含む。ベース体61は、上壁611を有する。
【0021】
インク流入部63は、ベース体61の上壁611に設けられる。また、インク流入部63は、ベース体61の左右方向における略中央に設けられる。インク流入部63には、
図6を参照して説明するインク供給ユニット15からインクが供給される。
【0022】
流路62は、ベース体61の内部に形成される。ベース体61は、その内部に、流路62の側面を構成する内壁612を有する。流路62には、インク流入部63からインクが流入する。流路62は、複数の供給管状部材3の他端(上端)にインクを導く。なお、ベース体61の上壁611の一部は、流路62の天井面を構成する。上壁611は、壁部の一例である。
【0023】
続いて
図3を参照して、本実施形態のダンパー部材6を更に説明する。
図3は、本実施形態に係るダンパー部材6を示す斜視図である。詳しくは、
図3は、右斜め前の下方から見たダンパー部材6を示す。
図3に示すように、ベース体61は、下壁613を有する。ベース体61の下壁613の一部は、流路62の底面を構成する。また、ダンパー部材6は、ベース体61の下壁613に設けられた複数のインク流出部64を有する。
【0024】
複数のインク流出部64は、ベース体61の下壁613から下方向に突出する。複数のインク流出部64は、
図1及び
図2を参照して説明した複数の供給管状部材3の他端(上端)に連通する。ダンパー部材6は、複数のインク流出部64からインクを流出させて、複数の供給管状部材3にインクを供給する。
【0025】
具体的には、
図1及び
図2を参照して説明した複数の第1カップリング部材51によって、複数の供給管状部材3の他端に複数のインク流出部64が連結される。本実施形態において、複数のインク流出部64は、第1インク流出部64a~第3インク流出部64cを含む。第1インク流出部64aは、第1カップリング部材51によって、第1供給管状部材3aの他端に連結される。したがって、第1インク流出部64aから第1供給管状部材3aにインクが供給される。第2インク流出部64bは、第1カップリング部材51によって、第2供給管状部材3bの他端に連結される。したがって、第2インク流出部64bから第2供給管状部材3bにインクが供給される。第3インク流出部64cは、第1カップリング部材51によって、第3供給管状部材3cの他端に連結される。したがって、第3インク流出部64cから第3供給管状部材3cにインクが供給される。
【0026】
図3に示すように、流路62は、第1流路62aと、第2流路62bとを含む。具体的には、流路62は、左右方向に延びる。第1流路62aは、流路62の左右方向における略中央から左側の部分である。第2流路62bは、流路62の左右方向における略中央から右側の部分である。第1流路62aの一端は、第1インク流出部64aの上端開口に連通する。第2流路62bの一端は、第3インク流出部64cの上端開口に連通する。なお、以下の説明において、流路62の左右方向における略中央を、「流路62の中央」と記載する場合がある。
【0027】
図1を参照して説明したインク流入部63に供給されたインクは、インク流入部63から流路62の中央に流出する。インク流入部63から流路62に流出したインクの一部は、第1流路62aに沿って流れる。インク流入部63から流路62に流出したインクの他の一部は、第2流路62bに沿って流れる。インク流入部63から流路62に流出したインクの残りは、流路62を介して、第2インク流出部64bの上端開口まで流れる。
【0028】
詳しくは、第1流路62aに流入したインクは、第1流れ方向D1に沿って、第1インク流出部64aの上端開口まで流れる。第2流路62bに流入したインクは、第2流れ方向D2に沿って、第3インク流出部64cの上端開口まで流れる。この結果、第1流路62aから第1インク流出部64aにインクが流入し、
図1及び
図2を参照して説明した第1記録ヘッド2aにインクが供給される。同様に、第2流路62bから第3インク流出部64cにインクが流入し、
図1及び
図2を参照して説明した第3記録ヘッド2cにインクが供給される。
【0029】
図3に示すように、ベース体61の下壁613は、開口614を有する。開口614は、第1流路62aに対向する。ダンパー部材6は、開口614を覆うフィルム65を更に有する。フィルム65は、流路62に対向する。詳しくは、フィルム65は、流路62の底面の一部を構成する。具体的には、フィルム65は、第1流路62aの底面の一部を構成する。フィルム65は、薄膜部材の一例である。
【0030】
フィルム65は、弾性を有する。フィルム65は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを基材として含む。フィルム65が、流路62を構成する面の一部を構成することにより、インクの圧力の変化をフィルム65によって吸収することができる。換言すると、インクの圧力の変化量が抑制される。具体的には、フィルム65は、インクの圧力の変化に応じて、膨らんだり、凹んだりする。この結果、インクの圧力の変化が吸収される。
【0031】
インクの圧力の変化は、インクの吐出停止時に、ノズルからインクが垂れる原因となり得る。また、インクの圧力の変化は、インクの吐出停止時に、
図1及び
図2を参照して説明した循環管状部材4にインクが流入する原因となり得る。
【0032】
具体的には、記録ヘッド2は、記録対象の画像に応じてインクを吐出する。詳しくは、画像は、印字部分と非印字部分とを含む。記録ヘッド2は、印字部分に対応してインクを吐出し、非印字部分に対応してインクの吐出を停止させる。インクの圧力の変化は、非印字部分に対応してインクの吐出を停止させた際に発生する。より詳しくは、記録ヘッド2は圧電素子を備える。圧電素子が駆動することにより、インクが吐出される。また、圧電素子の駆動が停止することにより、インクの吐出が停止する。インクの圧力の変化は、圧電素子の駆動が停止することに起因して発生する。
【0033】
本実施形態によれば、フィルム65がインクの圧力の変化を吸収する。したがって、インクの吐出停止時にノズルからインクが垂れ難くなる。また、インクの吐出停止時に、
図1及び
図2を参照して説明した循環管状部材4にインクが流入し難くなる。
【0034】
続いて
図4を参照して、本実施形態のダンパー部材6を更に説明する。
図4は、本実施形態に係るダンパー部材6を示す上面図である。
図4に示すように、ダンパー部材6は、流路62に対向するヒーター66を有する。ヒーター66は、加熱部材の一例である。ヒーター66は、例えばセラミックヒーターである。セラミックヒーターは、通電されることで熱を発生する。
【0035】
以上、
図1~
図4を参照して、本実施形態のヘッドユニット1を説明した。本実施形態によれば、ヒーター66は、流路62に対向する。したがって、流路62を流れるインクを効率よく加熱することができる。この結果、インクを吐出する前に、インクの温度を効率よく上昇させることができる。よって、本実施形態によれば、低温環境下においても、インクの粘度が高くなることを抑制することができる。その結果、インクの吐出性能が所期の性能を示さなくなる可能性を低減できる。
【0036】
続いて
図4を参照して、本実施形態のダンパー部材6を更に説明する。
図4に示すように、第1流路62aは、幅広部621と、幅狭部622とを有する。
【0037】
幅狭部622は、
図3を参照して説明した第1インク流出部64a側に配置される。換言すると、幅狭部622は、
図1及び
図2を参照して説明した第1供給管状部材3a側に配置される。幅広部621は、幅狭部622に接続する。換言すると、幅広部621と幅狭部622とは連通する。幅広部621は、幅狭部622に対して、インクの流れの上流側に位置する。
【0038】
幅広部621の幅W1は、幅狭部622の幅W2よりも大きい。したがって、幅広部621の流路断面積は、幅狭部622と比べて大きい。その結果、幅広部621を流れるインクの流速は、幅狭部622を流れるインクの流速と比べて遅くなる。
【0039】
図3を参照して説明したフィルム65は、幅広部621に対向する。換言すると、フィルム65は、幅広部621の底面の一部を構成する。したがって、フィルム65は、インクの流れが遅い箇所において、インクの圧力の変化を吸収する。その結果、インクの圧力の変化を効率よく吸収することができる。
【0040】
また、
図4に示すように、ヒーター66は、第1流路62aに対向する。具体的には、ヒーター66は、幅広部621に対向する。したがって、ヒーター66は、インクの流れが遅い箇所においてインクを昇温させることができる。この結果、インクの温度を効率よく上昇させることができる。
【0041】
なお、第2流路62bを流れるインクも、ヒーター66から発生する熱によって昇温する。具体的には、ヒーター66がベース体61を加熱することにより、ベース体61が昇温し、その結果、第2流路62bを流れるインクが昇温する。本実施形態において、ベース体61は、金属を材料として含む。換言すると、ベース体61は、熱伝導性が比較的高い材料によって構成される。したがって、ベース体61は、ヒーター66から発生する熱によって昇温し易い。その結果、第2流路62bを流れるインクの温度を効率よく上昇させることができる。
【0042】
図4に示すように、ヒーター66は、ベース体61の上壁611の外側に配置される。換言すると、ヒーター66は、流路62の外側に配置される。より具体的には、ベース体61の上壁611は、凹部611aを有する。凹部611aの外形は、ヒーター66の外形に対応しており、ヒーター66は、凹部611aに配置される。ヒーター66を凹部611aに配置することにより、ヒーター66と流路62との距離を縮めることができる。その結果、インクの温度を効率よく上昇させることができる。
【0043】
なお、ヒーター66は、流路62内に配置されてもよい。但し、ヒーター66が流路62内に配置された場合、流路断面積が狭くなり、インクの流速が速くなる。その結果、インクを効率よく昇温できない可能性がある。これに対し、本実施形態によれば、流路62の外側にヒーター66が配置される。したがって、インクを効率よく昇温させることができる。
【0044】
続いて
図5を参照して、本実施形態のダンパー部材6を更に説明する。
図5は、本実施形態に係るヘッドユニット1の一部を示す斜視図である。詳しくは、
図5は、右斜め前の上方から見たヘッドユニット1を示す。
【0045】
図5に示すように、本実施形態のダンパー部材6は、蓋体67を更に有する。蓋体67は、ヒーター66を覆う。具体的には、蓋体67は、ベース体61の上壁611に配置される。本実施形態によれば、蓋体67により、ヒーター66の熱が外気へ放熱され難くなる。その結果、ベース体61を効率よく昇温させることができる。したがって、流路62を流れるインクを効率よく昇温させることができる。
【0046】
本実施形態において、蓋体67は、ベース体61よりも熱伝導率が低い材料によって構成される。換言すると、蓋体67は、放熱性が比較的低い材料によって構成される。この結果、ヒーター66の熱が外気へ放熱され難くなる。したがって、流路62を流れるインクを効率よく昇温させることができる。例えば、ベース体61は、樹脂を材料として含む。
【0047】
続いて
図6を参照して、本実施形態のインクジェット記録装置100を説明する。
図6は、本実施形態に係るインク供給ユニット15の構成を示す図である。
【0048】
図6に示すように、インクジェット記録装置100は、ヘッドユニット1と、インク供給ユニット15と、制御部101とを備える。インク供給ユニット15は、ダンパー部材6にインクを供給する。具体的には、インク供給ユニット15は、
図1を参照して説明したインク流入部63にインクを供給する。制御部101は、インク供給ユニット15を制御する。また、制御部101は、記録ヘッド2を制御する。
【0049】
本実施形態のインク供給ユニット15は、インクタンク151と、供給ポンプ152と、サブタンク153と、シリンジポンプ154と、第1配管161と、第2配管162と、第3配管163と、循環配管164と、第1バルブ162aと、第2バルブ163aと、循環バルブ164aとを備える。
【0050】
インクタンク151はインクを収容する。インクタンク151は、第1配管161を介してサブタンク153に連結される。第1配管161はインクタンク151からサブタンク153へインクを流通させる。サブタンク153は、インクタンク151から供給されるインクを貯留する。サブタンク153は、第2配管162を介してシリンジポンプ154に連結される。第2配管162は、サブタンク153からシリンジポンプ154へインクを流通させる。シリンジポンプ154は、第3配管163を介してダンパー部材6(インク流入部63)に連結される。第3配管163は、シリンジポンプ154からダンパー部材6(インク流入部63)へインクを流通させる。
【0051】
供給ポンプ152は、第1配管161に配置される。供給ポンプ152は、制御部101の指示に従って、インクタンク151に貯留されているインクをサブタンク153に供給する。
【0052】
シリンジポンプ154は、第2配管162を介して、サブタンク153に貯留されたインクを吸引する。シリンジポンプ154は、サブタンク153から吸引したインクを第3配管163に吐出する。具体的には、シリンジポンプ154は、シリンダーと、ピストンとを有する。シリンダーは、サブタンク153から吸引したインクを貯留する。シリンダーは、例えば、円筒状である。シリンダーの底部には、流入口と流出口とが形成されている。流入口は、第2配管162と接続する。流出口は、第3配管163と接続する。
【0053】
ピストンは、シリンダーに挿入されている。ピストンは、制御部101の指示に従って、シリンダーの底部から離れる方向に移動する。また、ピストンは、制御部101の指示に従って、シリンダーの底部へ近づく方向に移動する。
【0054】
ピストンがシリンダーの底部から離れる方向に移動すると、シリンダーにインクが吸引される。具体的には、サブタンク153から第2配管162にインクが流出し、第2配管162を介してシリンダーにインクが流入する。
【0055】
ピストンがシリンダーの底部へ近づく方向に移動すると、シリンダーから第3配管163にインクが流出し、第3配管163を介してダンパー部材6(インク流入部63)にインクが供給される。
【0056】
また、ピストンは、
図1を参照して説明したパージ動作の実行時に、ノズル面21からインクが吐出しない圧力でダンパー部材6(インク流入部63)にインクが供給されるように、シリンダーの底部へ近づく方向に移動する。具体的には、ノズル面21からインクが吐出しない圧力でダンパー部材6(インク流入部63)にインクが供給されるように、制御部101が、ピストンの移動速度を制御する。
【0057】
第1バルブ162aは、第2配管162に配置される。第2バルブ163aは、第3配管163に配置される。第1バルブ162a及び第2バルブ163aは、制御部101の指示に従って開閉する。具体的には、ピストンがシリンダーの底部から離れる方向に移動する間、第1バルブ162aは開状態となり、第2バルブ163aは閉状態となる。ピストンがシリンダーの底部へ近づく方向に移動する間、第1バルブ162aは閉状態となり、第2バルブ163aは開状態となる。
【0058】
循環配管164は、
図1を参照して説明した複数の循環管状部材4と、サブタンク153とを連通させる。具体的には、
図1を参照して説明したように、複数の第2カップリング部材52によって、複数の循環管状部材4の他端(上端)が循環配管164に連結される。循環配管164は、パージ動作の実行時に、複数の記録ヘッド2(複数の循環管状部材4)から流出したインク及び気泡をサブタンク153へ流通させる。サブタンク153は、貫通孔を有する。貫通孔は大気と連通する。貫通孔は、サブタンク153に貯留されるインクの液面より上部に設けられる。したがって、パージ動作によってヘッドユニット1からサブタンク153へ排出された気泡は、サブタンク153の貫通孔から大気へ排出される。
【0059】
循環バルブ164aは、循環配管164に配置される。循環バルブ164aは、制御部101の指示に従って開閉する。具体的には、循環バルブ164aは、パージ動作の実行時に開状態となり、画像の記録時に閉状態となる。
【0060】
制御部101は、記憶装置102と、処理装置103とを含む。記憶装置102は、データ及びプログラムを記憶する。記憶装置102は、例えば、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)のような半導体メモリーを備える。記憶装置102は、HDD(Hard Disk Drive)のようなストレージデバイスを更に備えてもよい。処理装置103は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)のようなプロセッサーを備える。処理装置103は、記憶装置102に記憶されたプログラムに基づいてインクジェット記録装置100の各部の動作を制御する。
【0061】
次に、
図7を参照して、本実施形態のインクジェット記録装置100を更に説明する。
図7は、本実施形態に係るインクジェット記録装置100の構成を示す図である。
【0062】
図7に示すように、インクジェット記録装置100は、給紙部110と、シート搬送部120と、排出部130と、メンテナンスユニット140とを備える。また、インクジェット記録装置100は、4つのヘッドユニット1を備える。
【0063】
給紙部110は、シート搬送部120にシートSを給紙する。本実施形態の給紙部110は、給紙カセット111と、給紙ローラー112とを有する。給紙カセット111は、少なくとも1枚のシートSを収容する。給紙ローラー112は、給紙カセット111からシート搬送部120へシートSを送り出す。なお、シートSは記録媒体の一例である。
【0064】
シート搬送部120は、シートSを排出部130まで搬送する。詳しくは、シート搬送部120は、複数の搬送ガイド121と、複数の搬送ローラー対122と、レジストローラー対123とを有する。搬送ガイド121はシートSの搬送路を構成する。搬送ローラー対122は、搬送路に沿ってシートSを搬送する。レジストローラー対123は、4つのヘッドユニット1と対向する領域へのシートSの搬送タイミングを調整する。
【0065】
本実施形態のシート搬送部120は、第1搬送ユニット124と、第2搬送ユニット125とを有する。第1搬送ユニット124は、4つのヘッドユニット1と対向する。第1搬送ユニット124は、4つのヘッドユニット1の直下の領域においてシートSを搬送する。第2搬送ユニット125は、第1搬送ユニット124から送り出されたシートSを、排出部130へ向けて搬送する。
【0066】
4つのヘッドユニット1の各々に設けられた記録ヘッド2は、第1搬送ユニット124によって搬送されているシートSに向けて、インクを吐出する。具体的には、4つのヘッドユニット1のそれぞれの記録ヘッド2は、互いに異なる色のインクを吐出する。本実施形態において、4つのヘッドユニット1は、第1ヘッドユニット11~第4ヘッドユニット14を含む。例えば、第1ヘッドユニット11の記録ヘッド2は、ブラック色のインクを吐出する。第2ヘッドユニット12の記録ヘッド2は、シアン色のインクを吐出する。第3ヘッドユニット13の記録ヘッド2は、マゼンタ色のインクを吐出する。第4ヘッドユニット14の記録ヘッド2は、イエロー色のインクを吐出する。
【0067】
なお、インクジェット記録装置100は、
図6を参照して説明したインク供給ユニット15を4つ備える。4つのインク供給ユニット15のそれぞれのインクタンク151は、互いに異なる色のインクを収容する。具体的には、4つのインク供給ユニット15は、第1インク供給ユニット~第4インク供給ユニットを含む。例えば、第1インク供給ユニットは、第1ヘッドユニット11のダンパー部材6にブラック色のインクを供給する。第2インク供給ユニットは、第2ヘッドユニット12のダンパー部材6にシアン色のインクを供給する。第3インク供給ユニットは、第3ヘッドユニット13のダンパー部材6にマゼンタ色のインクを供給する。第4インク供給ユニットは、第4ヘッドユニット14のダンパー部材6にイエロー色のインクを供給する。
【0068】
排出部130は、装置本体の外部にシートSを排出する。本実施形態の排出部130は、排出トレイ131と、排出ローラー対132とを有する。排出ローラー対132は、シートSを排出トレイ131に送り出す。
【0069】
メンテナンスユニット140は、第1ヘッドユニット11~第4ヘッドユニット14のそれぞれの記録ヘッド2をメンテナンスする。メンテナンスユニット140は、シートSへの画像の記録時に第2搬送ユニット125の下方に位置し、記録ヘッド2のメンテナンス時に、第1ヘッドユニット11~第4ヘッドユニット14の直下の位置へ移動する。なお、記録ヘッド2のメンテナンス時には、第1搬送ユニット124は、退避位置に移動している。退避位置は、第1搬送ユニット124がメンテナンスユニット140と衝突しない位置である。
【0070】
本実施形態のメンテナンスユニット140は、キャップ部141と、クリーニング部142とを有する。
図2を参照して説明したように、記録ヘッド2はノズル面21を有する。キャップ部141は、キャッピング部材141aを有する。キャッピング部材141aは、記録ヘッド2のノズル面21をキャッピングして、インクが乾燥し難い環境を提供する。
【0071】
クリーニング部142は、記録ヘッド2のノズル面21を清掃する。具体定には、クリーニング部142は、ワイプブレード142aを有する。ワイプブレード142aは、例えば、樹脂を材料として含む。ワイプブレード142aは、ノズル面21を清掃するクリーニング部材である。クリーニング部142は、記録ヘッド2のノズル面21に付着したインクをワイプブレード142aによって拭き取る。
【0072】
以上、
図1~
図7を参照して本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される構成要素は適宜改変可能である。図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0073】
例えば、本発明の実施形態において、ダンパー部材6は1つのヒーター66を有したが、ダンパー部材6は2つ以上のヒーター66を有してもよい。例えば、ダンパー部材6は2つのヒーター66を有してもよい。この場合、2つのヒーター66のうちの一方が第1流路62aに対向し、2つのヒーター66のうちの他方が第2流路62bに対向してもよい。
【0074】
また、本発明の実施形態において、ダンパー部材6は1つのフィルム65を有したが、ダンパー部材6は2つ以上のフィルム65を有してもよい。例えば、ダンパー部材6は、2つのフィルム65を有してもよい。この場合、2つのフィルム65のうちの一方が第1流路62aに対向し、2つのフィルム65のうちの他方が第2流路62bに対向してもよい。
【0075】
また、本発明の実施形態において、第1流路62a及び第2流路62bのうち、第1流路62aのみが幅広部621を有したが、第1流路62a及び第2流路62bの両方が幅広部621を有してもよい。あるいは、第2流路62bのみが幅広部621を有してもよい。
【0076】
また、本発明の実施形態において、ヘッドユニット1は1つのダンパー部材6を備えたが、ヘッドユニット1は、2つ以上のダンパー部材6を備えてもよい。例えば、ヘッドユニット1は、3つのダンパー部材6を備えてもよい。この場合、1つのダンパー部材6は、1つの記録ヘッド2にインクを供給する。
【0077】
また、本発明の実施形態において、インクジェット記録装置100は、4つのヘッドユニット1を備えたが、インクジェット記録装置100は、1つ、2つ、又は3つのヘッドユニット1を備えてもよいし、5つ以上のヘッドユニット1を備えてもよい。
【0078】
また、本発明の実施形態において、ヘッドユニット1は、3つの記録ヘッド2を備えたが、ヘッドユニット1は、1つ、又は2つの記録ヘッド2を備えてもよいし、4つ以上の記録ヘッド2を備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、インクジェット方式で記録媒体に画像を記録する装置の分野に有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 ヘッドユニット
2 記録ヘッド
2a 第1記録ヘッド
3 供給管状部材
3a 第1供給管状部材
6 ダンパー部材
15 インク供給ユニット
61 ベース体
62 流路
62a 第1流路
65 フィルム
66 ヒーター
67 蓋体
100 インクジェット記録装置
101 制御部
611 上壁
613 下壁
621 幅広部
622 幅狭部