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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】配送システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20230912BHJP
   G06Q 10/083 20230101ALI20230912BHJP
   G05D 1/00 20060101ALI20230912BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230912BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230912BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G06Q10/083
G05D1/00 B
G05D1/02 H
G06Q10/04
G01C21/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019015180
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020123192
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 充宏
(72)【発明者】
【氏名】蜂須賀 譲二
(72)【発明者】
【氏名】岩田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 生
(72)【発明者】
【氏名】末次 恵久
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】落合 博敏
(72)【発明者】
【氏名】能勢 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】堀 智
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 利治
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-142265(JP,A)
【文献】特開2018-122650(JP,A)
【文献】特開2015-89801(JP,A)
【文献】特開2018-147158(JP,A)
【文献】特開2010-96890(JP,A)
【文献】特開2018-180771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0154906(US,A1)
【文献】国際公開第2018/235273(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G06Q 10/00 - 10/30
G06Q 30/00 - 30/08
G06Q 50/00 - 99/00
G05D 1/00 - 1/12
G01C 21/00 - 21/36
B60W 10/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物の配送経路に関する配送経路情報を生成するサーバーと、
前記荷物を運搬する移動体であって、周囲の状況を表す環境情報を取得する環境情報取得手段及び前記サーバーから前記配送経路情報を取得する通信手段を備え、前記環境情報及び配送経路情報、並びに所定のコンピュータプログラムによって規定された行動パターンに基づいて、目的地へ向かって自律的に走行可能な移動体と、
前記移動体が自律的に回避不能な状況に遭遇したとき、前記移動体を遠隔操作する遠隔操作装置と、を備えた配送システムであって、
前記サーバーは、前記遠隔操作の態様に基づいて、前記移動体の新たな制御態様を学習し、その学習結果に基づいて前記移動体を制御可能であり、
前記遠隔操作装置は、
操作子と、
前記操作子の操作態様を表す操作子操作情報を、前記サーバーを介して前記移動体へ送信する通信手段と、
少なくとも前記操作子操作情報が送信されてから前記移動体に伝達されるまでの伝達時間を検出し、前記伝達時間が大きいほど、前記移動体の最高速度を小さく設定する制御手段と、
を含み、
前記制御手段は、前記検出した伝達時間に応じて、前記移動体の第1最高速度を計算するとともに、遠隔操作時に、前記環境情報に基づいて、前記移動体の走行経路上の障害の有無を判断し、前記走行経路上に障害があると判断したとき、前記移動体と前記障害との距離に基づいて前記移動体の第2最高速度を計算し、前記移動体の最高速度を前記第1最高速度及び前記第2最高速度のうちのいずれか一方に制限、又は前記第1最高速度及び前記第2最高速度のうちの低い速度に制限する、配送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の配送システムにおいて、
前記遠隔操作装置は、前記移動体が自律的に走行している途中で前記移動体の車体に生じた変動が所定値より大きいことを当該移動体が検知したとき、前記移動体を遠隔操作可能であり、
前記サーバーは、前記遠隔操作の態様に基づいて、前記移動体の新たな制御態様を学習し、その学習結果に基づいて前記移動体を制御可能である、配送システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のうちのいずれか1つに記載の配送システムにおいて、
前記サーバーは、少なくとも前記移動体の位置情報及び前記環境情報に関連付けられた前記操作子操作情報を記憶し、前記操作子操作情報に基づいて、前記移動体の新たな行動パターンを学習し、前記移動体が前記新たな行動パターンに従って自律的に動作可能なように、前記移動体のコンピュータプログラムの更新及び配送経路情報の修正のうちの少なくとも一方を実行可能であり、そのコンピュータプログラムの更新又は配送経路情報の修正に関する情報を複数の移動体で共有可能である、配送システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1つに記載の配送システムにおいて、
前記移動体は、前記配送経路情報に基づく経路に沿った走行が不能であると判断したとき、又は前記コンピュータプログラムに従って行動パターンを決定するに十分な情報が前記環境情報から得られないとき、自律走行不能であると判断し、その旨を前記遠隔操作装置へ通知し、遠隔操作の動作モードに切り替える、配送システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちのいずれか1つに記載の配送システムにおいて、
前記移動体は、全方位カメラを備え、
前記遠隔操作装置は、前記全方位カメラによって撮影された映像に、前記移動体と前記所定の目的地との位置関係を表す文字又は図形を重畳して表示する表示手段を備えた、配送システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちのいずれか1つに記載の配送システムにおいて、
前記サーバーは、
前記移動体が通過した地点に基づいて、前記移動体の経由可能な地点を表す経由地情報を生成して記憶し、
新たな目的地を表す目的地情報及び前記経由地情報に基づいて、前記新たな目的地への配送経路情報を生成可能である、配送システム。
【請求項7】
請求項6に記載の配送システムにおいて、
前記経由地情報は、
前記移動体が直接的に移動可能な他の地点を表すリンク情報を含む、配送システム。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の配送システムにおいて、
前記サーバーは、
単一又は複数の移動体から得られた、所定の範囲内に位置する複数の地点をそれぞれ表す前記経由地情報を1つの経由地情報に集約して、新たな前記経由地情報として記憶する、配送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を目的地へ配送する配送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に記載されているように、自律的に走行可能な移動体を用いて、荷物を目的地へ配送する配送システムは知られている。この配送システムは、移動体に加え、荷物の配送に関する情報を管理するサーバー(配送制御手段)を含む。この配送システムにおいて、移動体の機械構成要素(電動モーター、トランスミッションなど)の状態を表す情報が、移動体からサーバーへ逐次送信される。サーバーは、移動体から受信した情報に基づいて、移動体の故障の有無を判定する。これにより、作業者が移動体の故障の有無を確認する手間を省くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-58656号公報
【発明の概要】
【0004】
特許文献1の配送システムの移動体は、所定のコンピュータプログラムに従って自律的に走行する。つまり、前記コンピュータプログラムは、移動体の走行を阻む様々な状況に対する回避行動の態様(行動パターン)を予め規定している。しかし、移動体が走行する環境(道路の状況)は地域ごとに異なる特徴を有し、また、その環境が頻繁に変化する。したがって、前記コンピュータプログラムにおいて想定されていない状況に移動体が遭遇すると、その移動体は、自律的にその状況を回避することができず、それ以上、配送を継続することができない。この場合、例えば、作業者が、移動体を回収し、移動体から荷物を取り出して、目的地へ荷物を持参する必要がある。なお、作業者が移動体を回収し、別の配送経路を設定して、移動体を再び自律走行させてもよいが、その別の配送経路において、移動体が、想定されていない状況に再び遭遇する虞がある。これらの場合、目的地への荷物の到着時刻が、予定時刻に対して大きくずれる虞がある。そのため、消費者が荷物の受け取り時刻として指定可能な時間帯(時間幅)を比較的大きくせざるを得ない。したがって、実際には、特許文献1の配送システムを導入し難く、配送業務の省人化及び配送業務の質的向上を実現し難い。
【0005】
本発明は上記課題に対処するためになされたもので、その目的は、荷物の配送業務における省人化及び配送業務の質的向上を実現可能な配送システムを提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る配送システム(1)は、荷物(P)の配送経路に関する配送経路情報(RD)を生成するサーバー(10)と、前記荷物を運搬する移動体(20)であって、周囲の状況を表す環境情報を取得する環境情報取得手段及び前記サーバーから前記配送経路情報を取得する通信手段(273)を備え、前記環境情報及び配送経路情報、並びに所定のコンピュータプログラムによって規定された行動パターンに基づいて、目的地(DP)へ向かって自律的に走行可能な移動体と、前記移動体が自律的に回避不能な状況(OB、BA、SG)に遭遇したとき、前記移動体を遠隔操作する遠隔操作装置(30)と、を備えた配送システムであって、前記サーバーは、前記遠隔操作の態様(OD)に基づいて、前記移動体の新たな制御態様を学習し、その学習結果に基づいて前記移動体を制御可能であり、前記遠隔操作装置は、操作子(31)と、前記操作子の操作態様を表す操作子操作情報を、前記サーバーを介して前記移動体へ送信する通信手段(333)と、少なくとも前記操作子操作情報が送信されてから前記移動体に伝達されるまでの伝達時間を検出し、前記伝達時間が大きいほど、前記移動体の最高速度を小さく設定する制御手段(332)と、を含み、前記制御手段は、前記検出した伝達時間に応じて、前記移動体の第1最高速度を計算するとともに、遠隔操作時に、前記環境情報に基づいて、前記移動体の走行経路上の障害の有無を判断し、前記走行経路上に障害があると判断したとき、前記移動体と前記障害との距離に基づいて前記移動体の第2最高速度を計算し、前記移動体の最高速度を前記第1最高速度及び前記第2最高速度のうちのいずれか一方に制限、又は前記第1最高速度及び前記第2最高速度のうちの低い速度に制限する。
この場合、前記遠隔操作装置は、前記移動体が自律的に走行している途中で前記移動体の車体に生じた変動が所定値より大きいことを当該移動体が検知したとき、前記移動体を遠隔操作可能であり、前記サーバーは、前記遠隔操作の態様に基づいて、前記移動体の新たな制御態様を学習し、その学習結果に基づいて前記移動体を制御可能である。
【0007】
本発明に係る配送システムにおいて、自律的に走行可能な移動体により、荷物が目的地へ配送される。移動体が、その自律走行を阻む状況に遭遇した場合には、遠隔操作装置を用いて、作業者が移動体を手動操作可能である。すなわち、移動体が、その自律走行を阻む状況に遭遇した場合であっても、作業者が移動体を回収する必要がなく、移動体を遠隔地から手動操作して、移動体の自律走行を阻む状況を回避させ、移動体を目的地へ到達させることができる。よって、本発明に係る配送システムを用いた場合には、予め指定された荷物の配送日時に対する、目的地への荷物の実際の到着日時のずれが小さい。これによれば、配送業務の省人化及び配送業務の質的向上を実現できる。
【0008】
本発明の配送システムの一態様において、前記サーバーは、少なくとも前記移動体の位置情報及び前記環境情報に関連付けられた前記遠隔操作の態様を表す情報を記憶し、前記遠隔操作の態様を表す情報に基づいて、前記移動体の新たな行動パターンを学習し、前記移動体が前記新たな行動パターンに従って自律的に動作可能なように、前記移動体のコンピュータプログラムの更新及び配送経路情報の修正のうちの少なくとも一方を実行可能であり、そのコンピュータプログラムの更新又は配送経路情報の修正に関する情報を複数の移動体で共有可能である。
【0009】
これによれば、当初は自律的には回避不能であった状況を、自律的に回避可能とする移動体の行動パターンが増加していき、作業者が移動体を遠隔操作する機会が減少していく。そのため、配送システムにおいて、省人化を促進できる。
【0010】
本発明の配送システムの他の態様において、前記移動体は、前記配送経路情報に基づく経路に沿った走行が不能であると判断したとき、又は前記コンピュータプログラムに従って行動パターンを決定するに十分な情報が前記環境情報から得られないとき、自律走行不能であると判断し、その旨を前記遠隔操作装置へ通知し、遠隔操作の動作モードに切り替える。
【0011】
これによれば、作業者が移動体の動作を常時監視する必要が無い。
【0013】
移動体を遠隔操作する際、遠隔操作装置と移動体との間の通信速度が比較的遅い場合、操作子の操作タイミングと移動体の動作タイミングとの間にずれが生じる。そこで、本発明では、遠隔操作装置と移動体との間の通信速度に応じて、移動体の走行速度を制限できる。つまり、通信速度が比較的遅い場合には、制御手段は、移動体の走行速度の最大値を比較的小さく設定する。また、遠隔操作時であっても、制御手段は、移動体に搭載された環境情報取得手段により走行進路上に障害を検知すると、障害との距離に適した移動体の走行速度の最大値を設定する。これにより、より安全に、移動体を遠隔操作できる。
【0014】
本発明の配送システムの他の態様において、前記移動体は、全方位カメラを備え、前記遠隔操作装置は、前記全方位カメラによって撮影された映像に、前記移動体と前記所定の目的地との位置関係を表す文字又は図形(AR)を重畳して表示する表示手段(32)を備える。
【0015】
これによれば、作業者は、表示手段の表示を見れば、移動体を移動させるべき方向を簡単に把握できる。よって、作業者が移動体を遠隔操作し易い。
【0016】
本発明の配送システムの他の態様において、前記サーバーは、前記移動体が通過した地点に基づいて、前記移動体の経由可能な地点(TP)を表す経由地情報(TPD)を生成して記憶し、新たな目的地を表す目的地情報及び前記経由地情報に基づいて、前記新たな目的地への配送経路情報を生成可能である。
【0017】
これによれば、サーバーは、経由地情報を用いて、複雑な配送経路を設計できる。
【0018】
本発明の配送システムの他の態様において、前記経由地情報は、前記移動体が直接的に移動可能な他の地点を表すリンク情報(LPD)を含む。
【0019】
これによれば、サーバーは、道路に沿った実用的な配送経路を設計できる。
【0020】
本発明の配送システムの他の態様において、前記サーバーは、単一又は複数の移動体から得られた、所定の範囲内に位置する複数の地点をそれぞれ表す前記経由地情報を1つの経由地情報に集約して、新たな前記経由地情報として記憶する。
【0021】
これによれば、経由地情報を記憶する記憶装置の記憶領域が不足することを防止できるとともに、効率的な配送経路設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る配送システムを用いて商品を配送する例を示す概略図である。
図2】コンピュータ装置の構成を示すブロック図である。
図3A】移動体を斜め前方から見た斜視図である。
図3B】移動体を斜め後方から見た斜視図である。
図4】移動体の構成を示すブロック図である。
図5】遠隔操作装置の構成を示すブロック図である。
図6A】初期状態の配送システムにおいて設計された配送経路を示す概略図である。
図6B】十分な配送実績を有する配送システムにおいて設計された配送経路を示す概略図である。
図7A】移動体が自律的に回避不能な状況に遭遇した例であって、物体により自律走行が阻まれた際の表示装置の表示例である。
図7B図7Aに示した状態から移動体を遠隔操作して物体を回避させる例を示す平面図である。
図8】移動体が袋小路に入り込んだ状態から移動体を遠隔操作して、目的地へ到達させる例を示す概略図である。
図9】移動体が自律的に回避不能な状況に遭遇した例であって、信号により自律走行が阻まれた際の表示装置の表示例である。
図10】本発明の変形例に係る配送システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る配送システム1は、図1に示すように、サーバー10、複数の移動体20及び遠隔操作装置30を含む。ここで、配送システム1の概略について簡単に説明しておく。配送システム1は、電子商取引における商品P(荷物)の配送業務(又は配送業務の一部)を実行する。配送システム1は、商品Pを、指定された目的地DPへ、移動体20を用いて配送する。移動体20は、各種センサを備え、それらのセンサを用いて取得した、移動体20の周囲の情報(環境情報)に基づいて自律的に走行可能である。すなわち、移動体20は、障害(物体、段差など)を自律的に回避しながら走行して、目的地DPへ向って走行する。移動体20が自律的に回避不能な状況に遭遇したとき、遠隔操作装置30を用いて移動体20を遠隔操作可能である。
【0024】
つぎに、配送システム1の構成について説明する。サーバー10は、図2に示すように、コンピュータ装置11を備える。コンピュータ装置11は、記憶装置111、演算装置112及び通信装置113を含む。記憶装置111は、各種コンピュータプログラムを記憶している。演算装置112は、記憶装置111に記憶された各種コンピュータプログラムに従って動作する。通信装置113は、演算装置112から各種データを取得し、そのデータを、電気通信回線(例えば、インターネット)を介して、外部装置(移動体20及び遠隔操作装置30)へ送信する。また、通信装置113は、電気通信回線を介して、外部装置(移動体20及び遠隔操作装置30)から各種データを受信し、そのデータを演算装置112に引き渡す。
【0025】
移動体20は、図3A及び図3B並びに図4に示すように、車輪21、電動モーター22、バッテリー23、操舵装置24、収納庫25、センサ26及びコンピュータ装置27を備えた電気自動車である。車輪21は、図示しない減速装置を介して電動モーター22に接続されている。電動モーター22は、例えば、三相交流モーターであり、バッテリー23から供給された電力を回転駆動力に変換する。また、車輪21は、操舵装置24に接続されている。電動モーター22及び操舵装置24がコンピュータ装置27によって制御される。収納庫25は、略直方体型の箱状部である。収納庫25は、開閉可能な蓋部25aを備える。蓋部25aは、施錠装置が組み込まれている。上記の収納庫25に、商品Pが収容される。なお、商品Pが収納庫25に収容される前に、商品Pに固有の識別情報IDを含む電子タグTGが付される。電子タグTGは、商品Pの識別情報IDを送信する無線通信装置を含む。
【0026】
センサ26は、例えば、移動体20の現在地(緯度及び経度)を検出する位置センサ、光、音波などを用いて対象物までの距離を測定する測距センサ、周囲の映像を撮影する全方位カメラなどを含む。さらに、センサ26は、商品Pの電子タグTGから送信された識別情報IDを受信する電子タグリーダーを含む。
【0027】
コンピュータ装置27の構成は、コンピュータ装置11の構成と同一である。すなわち、コンピュータ装置27は、記憶装置271、演算装置272及び通信装置273を含む(図2参照)。記憶装置271は、各種コンピュータプログラムを記憶している。演算装置272は、記憶装置271に記憶された各種コンピュータプログラムに従って動作する。通信装置273は、演算装置272から各種データを取得し、そのデータを、電気通信回線を介して、外部装置(サーバー10及び遠隔操作装置30)へ送信する。また、通信装置273は、電気通信回線を介して、外部装置(サーバー10及び遠隔操作装置30)から各種データを受信し、そのデータを演算装置272に引き渡す。
【0028】
移動体20は、2つの動作モード(自律走行モード及び遠隔操作モード)を備える。自律走行モードは、移動体20の走行を阻む様々な状況を自律的に回避しながら、目的地DPへ向かって走行する動作モードである。遠隔操作モードは、遠隔操作装置30からの指令(遠隔操作情報OD)に従って走行するモードである。
【0029】
遠隔操作装置30は、操作子31、表示装置32及びコンピュータ装置33を備える。操作子31は、移動体20の移動方向(操舵角度)を指定するレバー、及び移動体20の走行速度を指定するレバーを含む。操作子31は、コンピュータ装置33に接続されている。
【0030】
表示装置32は、例えば、液晶ディスプレイを含む。表示装置32は、コンピュータ装置33に接続されている。
【0031】
コンピュータ装置33の構成は、コンピュータ装置11の構成と同一である。すなわち、コンピュータ装置33は、記憶装置331、演算装置332及び通信装置333を含む(図2参照)。記憶装置331は、各種コンピュータプログラムを記憶している。演算装置332は、記憶装置331に記憶された各種コンピュータプログラムに従って動作する。通信装置333は、演算装置332から各種データを取得し、そのデータを、電気通信回線を介して、外部装置(サーバー10及び移動体20)へ送信する。また、通信装置333は、電気通信回線を介して、外部装置(サーバー10及び移動体20)から各種データを受信し、そのデータを演算装置332に引き渡す。
【0032】
上記のように、演算装置112、演算装置272及び演算装置332が、それぞれ通信装置113、通信装置273及び通信装置333を介して、電気通信回線に接続されている。これにより、サーバー10と移動体20との間、及びサーバー10と遠隔操作装置30との間において、各種情報が授受される。
【0033】
つぎに、配送システム1の動作について説明する。図1に示すように、消費者Cが通信販売業者Xに商品を注文すると、その商品P(荷物)が、通信販売業者Xから配送業者Yに引き渡される。そして、配送業者Yによって、商品Pが目的地DPへ配送される。この配送業者Yによる商品Pの配送業務の一部が、配送システム1によって実行される。
【0034】
まず、消費者Cは、携帯型情報端末(スマートフォン)を用いて、通信販売業者Xのホームページにアクセスし、商品Pを選択して代金を支払うとともに、目的地DP及び配送日時DTを設定する。すると、商品Pの識別情報ID、目的地DPを表す目的地情報DPD及び配送日時DTを表す配送日時情報DTDを含む配送情報DDが、消費者Cの携帯型情報端末から通信販売業者Xに送信される。通信販売業者Xは、商品P(荷物)及び配送情報DDを配送業者Yに引き渡す。その際、電子タグTG(図4参照)が商品Pに付されるとともに識別情報IDが電子タグTGに記憶される。さらに、配送情報DDがサーバー10に送信される。配送情報DDは、記憶装置111によって記憶される。
【0035】
配送業者Yは、まず、目的地DPを管轄する配送センターDCへ商品Pを配送(第1配送業務)し、その後、配送センターDCから目的地DPへ配送(第2配送業務)する。この例では、第1配送業務は、通常の配送システムを用いて実行される。すなわち、運転手が運転するトラックTKによって。商品Pが、通信販売業者Xの倉庫から配送センターDCまで運ばれる。そして、配送センターDCにて、商品PがトラックTKから下ろされて、配送センターDCにて一時的に保管される。第2配送業務は、以下説明するように、配送システム1を用いて実行される。なお、配送センターDCは、配送業者Yの営業所であってもよいし、配送業者Yと提携している業者(例えば、コンビニエンスストア)であってもよい。なお、配送センターDCは、複数の移動体20を備えている。
【0036】
商品Pが配送センターDCに到着すると、作業者により、1つの移動体20が選択され、商品Pが、前記選択された移動体20(以下、移動体20Aと記載する)の収納庫25に収容される(図4参照)。すると、移動体20Aの演算装置272は、収納庫25内のタグリーダーを介して、商品Pの電子タグTGから識別情報IDを取得する。つぎに、演算装置272は、収納庫25の蓋部25aを施錠する。つぎに、演算装置272は、識別情報IDをサーバー10に送信する。これにより、サーバー10の演算装置112は、移動体20Aが配送(走行)開始可能であることを認識する。すると、演算装置112は、電子メール、ソーシャルネットワーキングサービスなどを用いて、消費者Cに、配送準備が整ったことを通知するとともに、配送日時DTの確認を要求する。消費者Cは、注文時に指定した配送日時DTに商品Pを受け取ることを希望する場合には、配送業務(第2配送業務)をそのまま継続することを承認する旨をサーバー10へ送信する。一方、消費者Cが商品Pの配送日時DTの変更を希望する場合には、消費者Cは、新たな配送日時DTをサーバー10へ送信する。
【0037】
つぎに、演算装置112は、識別情報IDに対応する配送情報DDの目的地情報DPD、及び配送センターDCが管轄する領域における過去の配送実績に基づいて、配送経路Rを設計する(図6A及び図6B参照)。つまり、配送経路情報RDは、目的地情報DPDを含み、さらに、1つ又は複数の経由地点TP(TP1,TP2,・・・)を表す経由地点情報TPD(TPD1,TPD2,・・・)を含んでもよい。配送システム1が構築された直後(初期状態)においては、配送実績が無いので、配送経路情報RDは、目的地情報DPDのみを含む。以下、まず、初期状態(配送経路情報RDが目的地情報DPDのみを含む場合(図6A))の配送システム1の動作について説明する。十分な配送実績を有していて、配送経路情報RDが複数の経由地点情報TPDを含む場合(図6B)の配送システム1の動作については後述する。
【0038】
演算装置112は、配送経路Rの設計に加え、現在の日時、指定された配送日時、配送経路Rに沿った移動体20Aの走行予定距離及び移動体20Aの平均走行速度(既定値又は予測値)に基づいて、移動体20Aの出発日時を計算する。
【0039】
現在時刻が、前記計算した出発日時に一致すると、演算装置112は、配送経路情報RD及び配送日時情報DTDを移動体20Aに送信する。すると、移動体20Aの演算装置272は、記憶装置271から自律走行プログラムを読み出して実行する。つまり、移動体20Aは、自律走行モードにて動作を開始する。これにより移動体20Aは、目的地DPへ向かって自律的に走行し始める。自律走行プログラムは、移動体20Aが、原則として、下記のルールを遵守して走行することを規定している。
・現在地から目的地DP(経由地点TPが設定されている場合には、次の経由地点TP)へ向かって直線的に移動する。
・障害(走行を阻むような物体、所定の高低差より大きな段差、及び所定の振幅より大きな振動)を検知した場合に停止して、サーバー10を介して遠隔操作装置30に通知する。
・信号機を検知した場合に停止して、サーバー10を介して遠隔操作装置30に通知する。
【0040】
詳しくは後述するように、上記の自律走行プログラムを更新して、上記のルールを変更すること、及び新たなルールを追加することができるが、配送システム1の初期状態においては、自律走行プログラムは、上記の原則的なルールのみを規定している。
【0041】
すなわち、移動体20Aは、原則として、センサ26を用いて環境情報を取得しながら、現在地から目的地DPへ向かって直線的に走行する(図6A参照)。移動体20Aは、自律的に回避不能な状況に遭遇すると停止し、その旨を遠隔操作装置30に通知する。
【0042】
例えば、図7Aに示すように、移動体20Aは、測距センサを用いて、その走行を阻む物体OBを検知すると、物体OBの手前で停止し、表示装置32に、停止した理由を表示する。次に、移動体20Aは、その動作モードを、自律走行モードから遠隔操作モードに切り替える。つぎに、移動体20Aは、センサ26の検出内容を表す情報を、サーバー10を介して、遠隔操作装置30へ送信する。具体的には、移動体20Aは、現在地、物体OBとの距離、全方位カメラによって撮影した物体OB及びその周辺の映像などを表す情報を遠隔操作装置30へ送信する。遠隔操作装置30の演算装置332は、移動体20Aの全方位カメラによって撮影された映像を表す情報に基づいて、映像を表示装置32に表示させる。その際、演算装置332は、目的地情報DPD及び移動体20Aの現在地を表す情報に基づいて、移動体20Aと目的地DPとの位置関係を表す文字、図形(例えば、目的地DPへ向けられた矢印AR)を、前記映像に重畳して表示させる。作業者は、表示装置32に表示された映像を見ながら、遠隔操作装置30の操作子31を操作して、移動体20Aを遠隔操作する。この例では、図7Bに示すように、作業者は、移動体20Aを遠隔操作して、物体OBの右側から物体OBを追い越しさせている。上記のようにして物体OBを回避した後、作業者は、移動体20Aの動作モードを自律走行モードに切り替える。なお、作業者は、遠隔操作を継続して、移動体20Aを目的地DPへ到達させてもよい。
【0043】
また、図8の例では、移動体20Aが、同図において実線で示した経路に沿って自律走行して、袋小路BA(例えば、前方、右方及び左方への移動を阻む壁により構成された領域)に進入した例を示している。この例では、作業者は、表示装置32に表示された映像を見ながら、同図において破線で示した経路(迂回経路)を探しつつ、移動体20Aを遠隔操作して走行させ、目的地DPへ到達させている。
【0044】
また、例えば、移動体20Aは、全方位カメラを用いて撮影した映像に基づいて、信号機SGを検知すると、信号機SGの手前で停止(図9参照)して、センサ26の検出内容を表す情報を、サーバー10を介して、遠隔操作装置30へ送信する。具体的には、移動体20Aは、現在地、全方位カメラによって撮影した信号機SGの映像などを表す情報を遠隔操作装置30へ送信する。作業者は、表示装置32に表示された映像を見ながら、遠隔操作装置30の操作子31を操作して、移動体20Aを遠隔操作する。すなわち、作業者は、信号機SGが進行可能であることを示す状態(青信号)になるまで、移動体20Aを停止させる。そして、作業者は、信号機SGが進行可能であることを示す状態(青信号)になると、移動体20Aを前進させる。その後、作業者は、移動体20Aの自律走行プログラムを再開させる。なお、作業者は、遠隔操作を継続して、移動体20Aを目的地DPに到達させてもよい。
【0045】
上記のような、作業者による遠隔操作の態様を表す遠隔操作情報ODが、少なくとも現在地、物体OBとの距離、全方位カメラによって撮影した物体OB及びその周辺の映像などを表す情報に関連付けられて、サーバー10の記憶装置111に記憶される(図1参照)。なお、遠隔操作装置30は、移動体20Aへ遠隔操作情報ODを送信してから、その遠隔操作情報ODが移動体20Aに伝達されるまでの時間(通信ディレイ)を定期的に検出する。例えば、遠隔操作装置30は、応答要求情報を、サーバー10を介して移動体20Aに送信する。移動体20Aは、応答要求情報を受信すると、即座に、応答情報を、サーバー10を介して遠隔操作装置30に送信する。遠隔操作装置30が応答要求情報を送信してから応答情報を受信するまでの時間を計測し、前記計測した時間に基づいて、移動体20Aの走行速度を制限する。具体的には、前記計測した時間が大きいほど、移動体20Aの最高速度を小さく設定する。
【0046】
また、移動体20Aは、自律走行モードにおいて、一定時間間隔をおいて、現在地を表す情報(通過地点情報PD)をサーバー10に送信する。それらの通過地点情報PDが、記憶装置111に記憶される。
【0047】
移動体20Aは、目的地DPに到着すると、その旨を、電子メール、ソーシャルネットワーキングサービスなどを介して通知する。その際、移動体20Aは、到着した地点の周囲の映像を添付する。消費者Cは、移動体20Aに対し、本人確認情報を提示(送信)する。なお、本人確認情報としての暗証番号、画像などが、配送業者Yから、消費者Cに予め提供されている。移動体20Aの演算装置272は、提示された本人確認情報と識別情報IDとを照合して、蓋部25aを解錠する。消費者Cは、収納庫25から商品Pを取り出し、商品Pの内容を確認した後、蓋部25aを閉じる。すると、移動体20Aは、商品Pの配送が完了したことを表す配送完了情報をサーバー10へ送信する。移動体20Aは、往路とは反対向きの経路に沿って自律的に走行して、配送センターDCへ帰還する。なお、移動体20Aは、そのバッテリー23の蓄電量を検出し、バッテリー23の蓄電量が比較的少ない場合には、目的地DPから最も近い充電スタンドへ移動して充電した後、配送センターDCへ帰還してもよい。
【0048】
なお、複数の移動体20がそれぞれの第2配送業務を同時に実行可能である。すなわち、複数の移動体20が、同時間帯に、異なる目的地DPへそれぞれの商品Pを配送可能である。また、複数の移動体20に対し、1つの遠隔操作装置30が設けられている。複数の移動体20が自律的に回避不能な状況に遭遇した場合には、それらの移動体20のうちの1つの移動体20を選択して遠隔操作可能である。
【0049】
上記のような第2配送業務を繰り返す(配送実績が増加する)ことにより、多数の遠隔操作情報OD及び多数の通過地点情報PDが記憶装置111に記憶された状態になる。
【0050】
サーバー10の演算装置112は、記憶装置111に記憶された多数の遠隔操作情報ODに基づいて、移動体20の走行を阻む状況を回避する移動体20の行動パターンを学習する。そして、サーバー10は、前記学習した行動パターンに基づいて、すべての移動体20の自動走行プログラムの内容(ルール)を追加及び/又は変更する。例えば、演算装置112は、図7A及び図7Bに示したような、物体OBを追い越すという新たな行動パターンを学習し、移動体20が自律的に追い越し動作を試みるように、自動走行プログラムを更新する。また、例えば、演算装置112は、図9に示したような、信号機SGの表示に従って前進又は停止するという新たな行動パターンを学習し、移動体20が自律的に信号機SGの表示に従って前進又は停止するように、自律走行プログラムを更新する。
【0051】
また、演算装置112は、多数の通過地点情報PDに基づいて、移動体20が安定的に走行可能な地点を検出する。例えば、平均走行速度以上の走行速度にて走行した区間内の1つ又は複数の地点を検出する。そして、演算装置112は、前記検出した地点を、移動体20が経由可能な経由地点TPとして認識し、経由地点TPを表す情報(緯度及び経度)を、経由地点情報TPDとして記憶装置111に記憶させる。なお、経由地点情報TPDは、移動体20が直接的に移動可能な移動先の経由地点TPを表すリンク情報LPDを含む。例えば、図6Bに示す例において、経由地点TP2の経由地点情報TPD2は、リンク情報LPD2を含んでいる。この例において、リンク情報LPD2は、経由地点TP1及び経由地点TP3を含んでいるが、経由地点TP4を含んでいない。このリンク情報LPD2は、経由地点TP2から経由地点TP1又は経由地点TP2から経由地点TP3への移動体20の直接的な移動を許容するが、経由地点TP2から経由地点TP4への直接的な移動を禁止することを表している。
【0052】
また、演算装置112は、配送センターDCが管轄する領域を複数の区画に細分化し、各区画に含まれる複数の経由地点TPを表す経由地点情報TPDであって、単一又は複数の移動体20から得られた複数の経由地点情報TPDを、1つの経由地点情報TPDに集約する。例えば、演算装置112は、前記複数の経由地点TPの重心を計算する。その際、各経由地点情報TPDに対し、それらが記憶装置111に記憶された日時に相当する重み(係数)を乗算する。すなわち、比較的古い経由地点情報TPDの重みが小さく、比較的新しい経由地点情報TPDの重みが大きく設定される。そのため、前記重心の計算結果に、古い経由地点情報TPDの影響があまり及ばない。そして、演算装置112は、前記重心の計算結果を、各区画の経由地点情報TPDとして記憶装置111に記憶させ、その他の経由地点情報TPDを記憶装置111から削除する。
【0053】
複数の経由地点情報TPDが記憶装置111に記憶された状態では、演算装置112は、配送経路Rに、経由地点TPを含むことができる。例えば、演算装置112は、図6Bに示すように、4つの経由地点TP1,TP2,TP3,TP4を、この順に経由して目的地DPに到達する配送経路Rを設計できる。この例では、配送経路情報RDは、経由地点TP1,TP2,TP3,TP4を表す経由地点情報TPD1,TPD2,TPD3,TPD4を含むとともに、目的地情報DPDを含んでいる。なお、配送経路情報RDの引数(TPD1,TPD2,TPD3,TPD4,DPD)の順番が、移動体20Aが経由する地点の順序に対応している。経由地点情報TPD1,TPD2,TPD3,TPD4は、リンク情報LPD1,LPD2,LPD3,LPD4をそれぞれ含む。この例において、リンク情報LPD1は、経由地点TP2を含む。リンク情報LPD2は、経由地点TP1及び経由地点TP3を含む。リンク情報LPD3は、経由地点TP2及び経由地点TP4を含む。リンク情報LPD4は、経由地点TP3を含む。
【0054】
上記のように、特許文献1の配送システムを用いて商品Pを配送する場合には、移動体20が、自律的には回避不能な状況に遭遇すると、作業者が、移動体20を回収し、その作業者自身が、商品Pを目的地DPへ持参する必要がある。これに対し、本実施形態に係る例(図1参照)において、移動体20が、自律的に回避不能な状況に遭遇した場合には、遠隔操作装置30を用いて、作業者が、移動体20を遠隔地から手動操作可能である。すなわち、移動体20が、自律的に走行不能であっても、作業者が移動体20を回収する必要がなく、移動体20を手動操作して、自律走行を阻む状況を回避させ、移動体20を目的地DPへ到達させることができる。よって、配送システム1を用いた場合には、予め指定された商品Pの配送日時DTに対する、目的地DPへの商品Pの実際の到着日時のずれが小さい。
【0055】
また、サーバー10は、遠隔操作装置30による遠隔操作の態様に基づいて、移動体20の走行を阻む状況を回避する移動体20の新たな行動パターンを学習する。そして、その学習結果に基づいて、全ての移動体20の自律走行プログラムが更新される。すなわち、配送システム1が繰り返し利用されることにより、当初は自律的には回避不能であった状況を自律的に回避可能とする移動体20の行動パターンが増加していき、作業者が移動体20を遠隔操作する機会が減少していく。
【0056】
また、移動体20が自律的には回避不能な状況に遭遇すると、その旨が、表示装置32に表示される。したがって、作業者が移動体20の動作を常時監視する必要が無い。また、遠隔操作装置30の表示装置32に、移動体20によって撮影された映像に、移動体20と目的地DPとの位置関係を示す矢印ARが重畳して表示される。よって、作業者は、表示装置32の表示を見れば、移動体20を移動させるべき方向を簡単に把握できる。よって、作業者が移動体20を遠隔操作し易い。
【0057】
また、サーバー10は多数の通過地点情報PDに基づいて、移動体20が経由可能な経由地点TPを認識し、経由地点TPを表す経由地点情報TPDを生成して、記憶装置111に記憶させる。サーバー10は、経由地点情報TPDを用いて、複雑な配送経路Rを設計できる。なお、各経由地点情報TPDには、移動体20が直接的に移動可能な移動先の経由地点TPを表すリンク情報LPDを含む。これによれば、サーバー10は、道路に沿った実用的な配送経路Rを設計できる。また、サーバー10は、細分化された各区画に含まれる多数の経由地点TP(つまり、近接する複数の経由地点TP)をそれぞれ表す多数の経由地点情報TPDを、1つの経由地点情報TPDに集約する。これにより、記憶装置111の記憶領域が不足することを防止できる。また、経由地点TPの状況(道路の状況)は頻繁に変化するので、本実施形態では、前記多数の経由地点情報TPDを1つの経由地点情報TPDに集約する際、古い経由地点情報TPDの影響が小さくなるように構成されている。これにより、サーバーは、現在の道路状況に即した配送経路Rを設計できる。
【0058】
ところで、移動体20を遠隔操作する際、遠隔操作装置30と移動体20との間の通信速度が比較的遅い場合、操作子31の操作タイミングと移動体20の動作タイミングとの間にずれが生じる。そこで、本実施形態では、遠隔操作装置30と移動体20との間の通信速度に応じて、移動体20の走行速度を制限している。つまり、通信速度が比較的遅い場合には、移動体20の走行速度の最大値を比較的小さく設定する。これにより、より安全に、移動体20を遠隔操作できる。
【0059】
上記のように、配送システム1によれば、配送業務の省人化及び配送業務の質的向上を実現できる。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、上記実施形態を変更して実施可能である。
【0061】
例えば、移動体20は、自律走行モードにおいて、コンピュータプログラムに従って、その走行を阻む状況を回避する行動パターンを決定するが、そのために十分な情報がセンサ26から得られないとき、その旨をサーバー10に通知して、遠隔操作モードに移行してもよい。また、上記実施形態では、移動体20とサーバー10との通信速度に基づいて、移動体20の走行速度が制限される。これに加えて、移動体20と障害(物体、段差など)との距離に基づいて、移動体20の走行速度が制限されても良い。この場合、通信速度に基づいて第1最高速度が設定され、障害との距離に基づいて設定された第2最高速度が設定される。そして、移動体20の速度が、第1最高速度及び第2最高速度のうちの低い速度に制限される。
【0062】
例えば、図10に示すように、配送センターDCから複数の移動体20を小型トラックに積み込み、前記複数の移動体20を所定の配送拠点(例えば、複数の目的地の重心)へ搬送し、その配送拠点から前記複数の移動体20をそれぞれの目的地DPへ出発させてもよい。
【0063】
また、第1配送業務に、配送システム1を適用してもよい。また、配送システム1を用いて、通信販売業者Xから目的地DPへ、商品Pを直送してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…配送システム、10…サーバー、11,27,33…コンピュータ装置、20,20A…移動体、26…センサ、30…遠隔操作装置、31…操作子、32…表示装置、111…記憶装置、273…通信装置、C…消費者、DC…配送センター、DD…配送情報、DP…目的地DPD…目的地情報、DT…配送日時、DTD…配送日時情報、ID…識別情報、LPD…リンク情報、OB…物体、OD…遠隔操作情報、P…商品、PD…通過地点情報、R…配送経路、RD…配送経路情報、TP…経由地点、TPD…経由地点情報、X…通信販売業者、Y…配送業者
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10