(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/195 20060101AFI20230912BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20230912BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B41J2/195
B41J2/165 207
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2019035133
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 善一郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
(72)【発明者】
【氏名】戸田 雄太
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-079186(JP,A)
【文献】特開2018-149764(JP,A)
【文献】特開平05-331394(JP,A)
【文献】特開2014-217950(JP,A)
【文献】特開2015-016566(JP,A)
【文献】特開2010-046903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記ノズルからの液滴の吐出に異常が生じているか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ノズルからの第1液滴の吐出に対する前記信号が、前記異常が生じていることを示しているか否かの第1判定と、前記ノズルからの前記第1液滴よりも量の多い第2液滴の吐出に対する前記信号が、前記異常が生じていることを示しているか否かの第2判定と、を行い、
前記第1判定と前記第2判定との両方の結果に基づいて前記液滴吐出ヘッド内の液体の粘度を推定することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
記録指示を取得した際に、前記ノズルから液滴を吐出させ被記録媒体に画像の記録を行い、
前記第1液滴及び前記第2液滴は、前記画像の記録を行う際に用いる液滴であることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
検出用導電部、を備え、
前記信号出力部は、前記ノズルから吐出された液滴によって前記検出用導電部に生じる電気的な変化に基づいて前記信号を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記信号出力部は、少なくとも前記ノズルから液滴が吐出されないときに、前記ノズルからの液滴の吐出に異常が生じていることを示す前記信号を出力することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記液滴吐出ヘッドは、前記ノズルを含む液体流路と、前記ノズルから液滴を吐出するための吐出エネルギーを前記液体流路内の液体に付与するエネルギー付与部と、
を有し、
前記制御部は、
前記ノズルから前記第1液滴を吐出させるための前記吐出エネルギーに関する吐出エネルギー情報、及び、前記ノズルから前記第2液滴を吐出させるための前記吐出エネルギーに関する吐出エネルギー情報が、それぞれ、前記液体流路内の液体の粘度に関する粘度情報と関連付けられた粘度推定用データと、
前記第1判定と前記第2判定との両方の結果と、に基づいて前記液滴吐出ヘッド内の液体の粘度を推定し、
前記粘度情報は、
対応する前記吐出エネルギー情報に基づいて前記エネルギー付与部を制御したときに前記ノズルから吐出させることのできる液体の粘度の最大値に関する情報であることを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記吐出エネルギー情報に基づいて前記エネルギー付与部を制御するときに、
前記第1液滴に対応する前記吐出エネルギー情報及び前記第2液滴に対応する前記吐出エネルギー情報が、それぞれ前記ノズルからの液滴の吐出の難易度に関する難易度情報と関連付けられた吐出難易度データに基づいて、
前記第1液滴に対応する前記吐出エネルギー情報及び前記第2液滴に対応する前記吐出エネルギー情報のうち、難易度が高い前記難易度情報と関連付けられた吐出エネルギー情報から、難易度が低い前記難易度情報と関連付けられた吐出エネルギー情報の順に、前記吐出エネルギー情報に基づいて前記エネルギー付与部を制御し、
前記第1液滴に対応す
る前記吐出エネルギー情報及び前記第2液滴に対応する前記吐出エネルギー情報のうちのある吐出エネルギー情報に基づいて前記エネルギー付与部を制御したときに、初めて前記ノズルに異常が生じていないと判定した場合に、前記ある吐出エネルギー情報に対応する前記粘度情報に基づいて、前記液体流路内の液体の粘度を推定することを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記液滴吐出ヘッドは、前記ノズルを含む液体流路と、前記ノズルから液滴を吐出するための吐出エネルギーを前記液体流路内の液体に付与するエネルギー付与部と、
を有し、
前記制御部は、
前記ノズルから前記第1液滴を吐出させるための前記吐出エネルギーに関する吐出エネルギー情報、及び、前記ノズルから前記第2液滴を吐出させるための前記吐出エネルギーに関する吐出エネルギー情報が、それぞれ、前記液体流路内の液体の粘度に関する粘度情報と関連付けられた粘度推定用データと、
前記第1判定と前記第2判定との両方の結果と、に基づいて前記液滴吐出ヘッド内の液体の粘度を推定し、
電圧生成部をさらに備え、
前記エネルギー付与部は、前記電圧生成部により生成された駆動電圧が印加されることで、前記液体流路内の液体に圧力を付与し、
前記吐出エネルギー情報は、前記駆動電圧についての電圧情報を含み、
前記制御部は、前記電圧生成部に前記電圧情報に対応する前記駆動電圧を生成させ、当該駆動電圧を前記エネルギー付与部に印加させることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記液滴吐出ヘッドは、前記ノズルを含む液体流路と、前記ノズルから液滴を吐出するための吐出エネルギーを前記液体流路内の液体に付与するエネルギー付与部と、
を有し、
前記制御部は、
前記ノズルから前記第1液滴を吐出させるための前記吐出エネルギーに関する吐出エネルギー情報、及び、前記ノズルから前記第2液滴を吐出させるための前記吐出エネルギーに関する吐出エネルギー情報が、それぞれ、前記液体流路内の液体の粘度に関する粘度情報と関連付けられた粘度推定用データと、
前記第1判定と前記第2判定との両方の結果と、に基づいて前記液滴吐出ヘッド内の液体の粘度を推定し、
前記第1液滴に対応する波形信号及び前記第2液滴に対応する波形信号のうちのいずれかを選択的に前記エネルギー付与部に出力して、前記ノズルから前記第1液滴及び前記第2液滴のいずれかを選択的に吐出させ、
各吐出エネルギー情報は、前記第1液滴及び前記第2液滴のうちのいずれの液滴であるかについての液滴種類情報を含み、
前記制御部は、
前記液滴種類情報に対応する前記波形信号を前記エネルギー付与部に出力させることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
電圧生成部、をさらに備え、
前記エネルギー付与部は、前記電圧生成部により生成された駆動電圧が印加されることで、前記液体流路内の液体に圧力を付与し、
前記制御部は、
前記駆動電圧の大きさを調整するように前記電圧生成部を制御し、さらに、前記第1液滴に対応する波形信号及び前記第2液滴に対応する波形信号のうちのいずれかを選択的に前記エネルギー付与部に出力して、前記エネルギー付与部に前記駆動電圧を印加するように制御し、
各吐出エネルギー情報は、
前記駆動電圧についての電圧情報と、
前記第1液滴及び前記第2液滴のうちのいずれの液滴であるかについての液滴種類情報と、を含み、
前記制御部は、
前記電圧情報に対応する前記駆動電圧を生成させるように前記電圧生成部を制御し、
前記液滴種類情報に対応する前記波形信号を前記エネルギー付与部に出力し、
前記吐出難易度データは、
低い駆動電圧に対応する前記電圧情報を含む前記吐出エネルギー情報ほど、難易度が高い難易度情報に関連付けられ、且つ、
体積が小さい液滴に対応する前記液滴種類情報を含む吐出エネルギー情報ほど、難易度が高い難易度情報に関連付けられたデータであることを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記ノズルから前記液滴吐出ヘッド内の液体を排出させるパージを行うパージ手段、を備え、
前記制御部は、
推定した液体の粘度に基づいて、前記パージ手段に前記パージを行わせることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
前記液滴吐出ヘッドは、前記ノズルを含む液体流路と、前記ノズルから液滴を吐出するための吐出エネルギーを前記液体流路内の液体に付与するエネルギー付与部と、を有し、
前記制御部は、
推定したインクの粘度に基づいて、前記エネルギー付与部を制御して前記ノズルから液体を排出させるフラッシングを行わせることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項12】
前記液滴吐出ヘッドは、前記ノズルを含む液体流路と、前記ノズルから液滴を吐出するための吐出エネルギーを前記液体流路内の液体に付与するエネルギー付与部と、
を有し、
前記制御部は、
前記エネルギー付与部を制御して、前記ノズルから被吐出媒体に向けて液滴を吐出させるときに、
推定したインクの粘度に基づいて前記エネルギー付与部を制御することを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項13】
電圧生成部、をさらに備え、
前記エネルギー付与部は、前記電圧生成部により生成された駆動電圧が印加されることで、前記液体流路内の液体に圧力を付与し、
前記制御部は、
前記エネルギー付与部を制御して、前記ノズルから被吐出媒体に向けて液滴を吐出させるときに、
前記電圧生成部に、推定したインクの粘度に応じた前記駆動電圧を生成させ、当該駆動電圧を前記エネルギー付与部に印加させることを特徴とする請求項12に記載の液滴吐出装置。
【請求項14】
ノズルをそれぞれ含む複数の個別流路と、前記複数の個別流路と連通する共通流路と、前記複数の個別流路内の液体に前記ノズルから液滴を吐出するための吐出エネルギーとしての圧力を付与する複数のエネルギー付与部と、有する液滴吐出ヘッドと、
前記ノズルに異常が生じているか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記信号出力部からの信号に基づいて、前記ノズルに異常が生じているか否かの判定を行い、
前記複数のエネルギー付与部を個別に制御し、
前記複数の個別流路のうち一部の個別流路については、
前記吐出エネルギーに関する吐出エネルギー情報と、前記個別流路内の液体の粘度に関する粘度情報と、が関連付けられた粘度推定用データと、
前記吐出エネルギー情報に基づいて前記エネルギー付与部を制御して前記個別流路内の液体に前記吐出エネルギーを付与させたときの前記判定の結果と、に基づいて前記個別流路内の液体の粘度を推定し、
前記複数の個別流路のうち前記一部の個別流路以外の個別流路については、推定された前記一部の個別流路内の液体の粘度に基づいて、前記個別流路内の液体の粘度を推定することを特徴とする液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液滴を吐出する液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液滴を吐出する液滴吐出装置の一例として、特許文献1には、ノズルからインク滴を吐出して記録を行うインクジェット記録装置が記載されている。特許文献1のインクジェット記録装置では、圧電素子によって圧力発生室内のインクを加圧してノズルからインク滴を吐出させる。そして、インク滴の吐出後に圧力発生室内に発生する残留圧力波に対応する情報に基づいてインクの粘度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1では、インクの粘度の変化を推定するために、残留圧力波に対応する情報を取得する必要があるが、その取得のために様々な処理が必要となる。そのため、インクの粘度を行うために必要な処理が複雑なものとなる。
【0005】
本発明の目的は、液滴吐出ヘッド内の液体の粘度を簡単に推定することが可能な液滴吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液滴吐出装置は、ノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記ノズルからの液滴の吐出に異常が生じているか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記ノズルからの第1液滴の吐出に対する前記信号が、前記異常が生じていることを示しているか否かの第1判定と、前記ノズルからの前記第1液滴よりも量の多い第2液滴の吐出に対する前記信号が、前記異常が生じていることを示しているか否かの第2判定と、を行い、前記第1判定と前記第2判定との両方の結果に基づいて前記液滴吐出ヘッド内の液体の粘度を推定する。
また、本発明の液滴吐出装置は、ノズルをそれぞれ含む複数の個別流路と、前記複数の個別流路と連通する共通流路と、前記複数の個別流路内の液体に前記ノズルから液滴を吐出するための吐出エネルギーとしての圧力を付与する複数のエネルギー付与部と、有する液滴吐出ヘッドと、前記ノズルに異常が生じているか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記信号出力部からの信号に基づいて、前記ノズルに異常が生じているか否かの判定を行い、前記複数のエネルギー付与部を個別に制御し、前記複数の個別流路のうち一部の個別流路については、前記吐出エネルギーに関する吐出エネルギー情報と、前記個別流路内の液体の粘度に関する粘度情報と、が関連付けられた粘度推定用データと、前記吐出エネルギー情報に基づいて前記エネルギー付与部を制御して前記個別流路内の液体に前記吐出エネルギーを付与させたときの前記判定の結果と、に基づいて前記個別流路内の液体の粘度を推定し、前記複数の個別流路のうち前記一部の個別流路以外の個別流路については、推定された前記一部の個別流路内の液体の粘度に基づいて、前記個別流路内の液体の粘度を推定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、吐出エネルギー情報と粘度情報とが関連付けられた粘度推定用データと、吐出エネルギー情報に基づいてエネルギー付与部を制御して液体流路内の液体に吐出エネルギーを付与させたときの、ノズルに異常が生じているか否かの判定の結果と、に基づいて液体流路内の液体の粘度を推定することができる。このとき、粘度推定用データと上記判定の結果とに基づいて簡単に液体流路内の液体の粘度を推定できるので、複雑な処理が必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図2】
図1のインクジェットヘッドの平面図である。
【
図4】キャップ内に配置された検出用電極、及び、検出用電極と高電圧電源回路及び判定回路との接続関係を説明するための図である。
【
図5】(a)はノズルからインクが吐出された場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図であり、(b)はノズルからインクが吐出されなかった場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図である。
【
図6】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】インクの粘度を推定するための処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】(a)は、駆動電圧及びインク滴の種類と、吐出可能なインクの粘度の最大値とを関連付けたテーブルを示す図であり、(b)は、駆動電圧及びインク滴の種類と、これらの設定の順序とを関連付けたテーブルを示す図である。
【
図9】一変形例の
図7に対応するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0010】
<プリンタ全体の構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液滴吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液滴吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ6、7、メンテナンスユニット8などを備えている。
【0011】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(
図6参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、
図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0012】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1には、カートリッジホルダ14が設けられており、カートリッジホルダ14に4つのインクカートリッジ15が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ15には、走査方向の右側に配置されたものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されている。サブタンク3は、4本のチューブ13を介してカートリッジホルダ14に装着された4つのインクカートリッジ15と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ15からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0013】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に長さLにわたって配列されることによってノズル列9を形成しており、インクジェットヘッド4は、走査方向に並んだ4列のノズル列9を有する。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0014】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙P(本発明の「被記録媒体」)の全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(
図6参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0015】
メンテナンスユニット8は、後述するように吸引パージを行って複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるためのものである。メンテナンスユニット8については後程詳細に説明する。
【0016】
<インクジェットヘッド>
次に、インクジェットヘッド4について詳細に説明する。
図2、
図3に示すように、インクジェットヘッド4は、流路ユニット21と圧電アクチュエータ22とを備えている。
【0017】
<流路ユニット>
流路ユニット21は、4枚のプレート31~34が上からこの順に積層されることによって形成されている。プレート31~33は、ステンレスなどの金属材料からなる。プレート34は、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる。
【0018】
プレート34には、複数のノズル10が形成されている。複数のノズル10は、上述したような4列のノズル列9を形成している。そして、プレート34の下面が、インクジェットヘッド4のノズル面4aとなっている。プレート31には複数の圧力室40が形成されている。圧力室40は、走査方向を長手方向とする楕円の平面形状を有している。また、複数の圧力室40は、複数のノズル10に個別のものであり、走査方向の左側の端部がノズル10と上下方向に重なっている。これにより、プレート31には、複数の圧力室40が搬送方向に配列されることによってそれぞれ形成され、走査方向に並んだ4列の圧力室列29が形成されている。
【0019】
プレート32には、各圧力室40の走査方向の右側の端部と上下方向に重なる部分に円形の貫通孔42が形成されている。また、プレート32には、各圧力室40の走査方向の左側の端部及びノズル10と上下方向に重なる部分に、円形の貫通孔43が形成されている。
【0020】
プレート33には、4つのマニホールド流路41が形成されている。4つの圧力室列29に対応している。マニホールド流路41は、搬送方向に延び、対応する圧力室列29を構成する複数の圧力室40の走査方向の右側の部分と上下方向に重なっている。これにより、各圧力室40が、貫通孔42を介してマニホールド流路41と連通する。また、各マニホールド流路41の搬送方向の上流側の端部には供給口39が設けられている。インクジェットヘッド4は、供給口39においてサブタンク3内の流路と接続されている。これにより、マニホールド流路41には、供給口39からインクが供給される。また、プレート33には、各貫通孔43及びノズル10と上下方向に重なる部分に、円形の貫通孔44が形成されている。これにより、各ノズル10が貫通孔43,44を介して圧力室40と連通する。
【0021】
そして、流路ユニット21では、ノズル10と、圧力室40と、ノズル10と圧力室40とを接続する貫通孔43、44と、圧力室40をマニホールド流路41に接続する貫通孔42とによって、個別流路46が形成される。また、各ノズル列9に対応する複数の個別流路46が、それぞれ、対応する1つのマニホールド流路41に接続されている。なお、本実施形態では、複数の個別流路46と4つのマニホールド流路41とを合わせた、インクジェットヘッド4内のインク流路が、本発明の「液体流路」に相当する。
【0022】
<圧電アクチュエータ>
圧電アクチュエータ22は、振動板51と、圧電層52と、共通電極53と、複数の個別電極54とを備えている。振動板51は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなり、流路ユニット21の上面に配置され、複数の圧力室40を覆っている。なお、振動板51は、次に説明する圧電層52とは異なり、圧電材料以外の絶縁性材料からなるものであってもよい。
【0023】
圧電層52は、上記圧電材料からなり、振動板51の上面に配置され、複数の圧力室40にわたって連続的に延びている。共通電極53は、振動板51と圧電層52との間に配置され、複数の圧力室40にわたって連続的に延びている。共通電極53は、図示しない配線部材などを介してヘッド電源回路89(
図6参照)に接続され、グランド電位に保持されている。
【0024】
複数の個別電極54は、複数の圧力室40に個別のものである。個別電極54は、圧力室40よりも一回り小さい楕円の平面形状を有し、圧電層52の上面に配置され、圧力室40の中央部と上下方向に重なっている。また、個別電極54の走査方向の右側の端部は、圧力室40と上下方向に重ならない位置まで走査方向の右側まで延び、その先端部が接続端子54aとなっている。接続端子54aには図示しない配線部材が接続され、個別電極54は、この配線部材を介してドライバIC59(
図6参照)に接続されている。
【0025】
ドライバIC59には、ヘッド電源回路89(
図6参照、本発明の「電圧生成部」)が生成されている。ヘッド電源回路89は、駆動電圧を生成する。ドライバIC59は、波形信号を生成し、生成した波形信号を複数の個別電極54に個別に出力することによって、ヘッド電源回路89で生成された駆動電圧を複数の個別電極54に個別に印加する。例えば、波形信号がパルス信号であり、波形信号のレベルが閾値以上のときに、ヘッド電源回路89で生成した駆動電圧を個別電極54に印加し、波形信号のレベルが閾値未満のときに、個別電極54への駆動電圧の印加を解除する。
【0026】
また、共通電極53及び複数の個別電極54がこのように配置されているのに対応して、圧電層52の共通電極53と各個別電極54とに挟まれた部分が、それぞれ、厚み方向に分極されている。そして、以上のような構造の圧電アクチュエータ22では、振動板51、圧電層52及び共通電極53の、各圧力室40と上下方向に重なる部分と、個別電極54とによって形成される部分が、それぞれ、圧力室40内のインクに圧力を付与する駆動素子50(本発明の「エネルギー付与部」)となっている。
【0027】
<メンテナンスユニット>
次に、メンテナンスユニット8について説明する。
図1に示すように、メンテナンスユニット8は、キャップ61と、吸引ポンプ62と、廃液タンク63とを備えている。キャップ61は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ61と対向する。
【0028】
また、キャップ61は、キャップ昇降機構88(
図6参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させて複数のノズル10とキャップ61とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ61を上昇させると、キャップ61の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ61に覆われる。なお、キャップ61はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ61は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0029】
吸引ポンプ62はチューブポンプなどであり、キャップ61及び廃液タンク63と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上述したように複数のノズル10がキャップ61によって覆われた状態で吸引ポンプ62を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。インクジェットヘッド4から排出されたインクは廃液タンク63に貯留される。
【0030】
なお、ここでは、便宜上、キャップ61が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ61が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えていており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。
【0031】
また、
図1、
図4に示すように、キャップ61内には、矩形の平面形状を有する検出用電極66が配置されている。検出用電極66は、抵抗69を介して高電圧電源回路67に接続されている。そして、検出用電極66には、高電圧電源回路67により所定の正の電位(例えば300V程度)が付与される。一方で、インクジェットヘッド4の流路ユニット21は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と検出用電極66との間に所定の電位差が生じる。検出用電極66には、判定回路68(本発明の「信号出力部」)が接続されている。判定回路68は、検出用電極66から出力された電圧信号の電圧値と、閾値Vtとを比較し、その結果に応じた信号を出力する。
【0032】
より詳細に説明すると、インクジェットヘッド4と、検出用電極66との間には電位差が生じているため、ノズル10から吐出されたインクは帯電している。キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させると、
図5(a)に示すように、帯電したインクが検出用電極66に近づき、検出用電極66にインクが着弾するまで、検出用電極66の電圧値が上昇し、インクジェットヘッド4が駆動されていないときの電圧値Vaと比べて高い電圧値Vbに達する。そして、帯電したインクが検出用電極66に着弾した後、検出用電極66の電圧値が徐々に電圧値Vaまで低下する。すなわち、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極66の電圧値が変化する。
【0033】
一方で、ノズル10からインクが吐出されていない場合には、
図5(b)に示すように、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極66から出力される電圧信号の電圧値は、電圧値Vaからほとんど変化しない。そこで、判定回路68は、これらを区別するために閾値Vt(Va<Vt<Vb)が設定されている。そして、判定回路68は、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極66から出力される電圧信号の最大の電圧値と閾値Vtとを比較し、その判定結果に応じた信号を出力する。
【0034】
なお、ここでは、高電圧電源回路67により、検出用電極66に正の電位が付与されているが、高電圧電源回路67により、検出用電極66に負の電位(例えば-300V程度)が付与されていてもよい。この場合には、上述したのとは逆に、キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させると、帯電したインクが検出用電極66に近づき、検出用電極66にインクが着弾するまで、検出用電極66の電圧値が低下する。
【0035】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。プリンタ1の動作は、制御装置80によって制御される。
図6に示すように、制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、フラッシュメモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなり、キャリッジモータ86、搬送モータ87、ドライバIC59、キャップ昇降機構88、高電圧電源回路67、吸引ポンプ62、ヘッド電源回路89などの動作を制御する。また、制御装置80には、判定回路68から上述の信号が入力される。
【0036】
なお、制御装置80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0037】
<記録時の制御>
次に、プリンタ1において記録用紙Pに画像を記録するときの処理について説明する。プリンタ1では、キャリッジモータ86を駆動させてキャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド4を駆動させて複数のノズル10からインク滴を吐出させる記録パスと、搬送モータ87を駆動させて搬送ローラ6,7に記録用紙Pを搬送させる搬送動作とを交互に行うことにより、記録用紙Pに画像の記録を行う。また、各記録パスの直前に、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させた状態で、インクジェットヘッド4を駆動させることにより、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるフラッシングを行う。
【0038】
記録パスでは、制御装置80の制御により、ドライバIC59は、記録される画像の画像データに基づいて、複数の個別電極54に対して個別に、ノズル10から大玉、中玉、小玉の体積が異なる3種類のインク滴に対応する3種類の波形信号のうちのいずれかを選択的に生成し、圧電アクチュエータ22の複数の個別電極54に出力する。ここで、中玉とは小玉よりも体積が大きく、大玉は中玉よりも体積が大きい。また、制御装置80の制御により、ヘッド電源回路89は、V1,V2,V3のうちのいずれかの駆動電圧を選択的に生成し、ドライバIC59に印加する。これにより、複数の個別電極54には、ヘッド電源回路89から、ドライバIC59において生成された波形信号に基づいて、駆動電圧が印加される。なお、本実施形態では、制御装置80とドライバIC59とを合わせたものが、本発明の「制御部」に相当する。
【0039】
<インクの粘度の推定時に処理>
次に、プリンタ1において各個別流路46内のインクの粘度を推定するときの処理について説明する。プリンタ1において各個別流路内のインクの粘度を推定するときには、制御装置80は
図7のフローに沿って処理を行う。なお、この処理は、プリンタ1において記録用紙Pへの画像の記録を行っていないときに行う。
【0040】
より詳細に説明すると、制御装置80は、まず、インクジェットヘッド4の複数の個別流路46のうちの1つを、粘度推定の対象となる個別流路46に設定する(S101)。S101では、いずれの個別流路46を、粘度推定の対象となる個別流路46に設定してもよい。一例を挙げると、例えば、最も右側のノズル列9に対応する複数の個別流路46のうち、搬送方向の最も上流側の個別流路46を粘度推定の対象となる個別流路46に設定する。
【0041】
続いて、制御装置80は、ヘッド電源回路89で生成する駆動電圧をV1に設定し、インク滴の種類を小玉に設定する(S102)。続いて、制御装置80は、S102の設定で、インクジェットヘッド4を駆動させる(S103)。S103では、ヘッド電源回路89からドライバIC59に設定した駆動電圧を印加させ、ドライバIC59から対象となる個別流路46に対応する個別電極54に、設定したインク滴の種類に応じた波形信号を出力することで、この個別電極54に駆動電圧を印加させる。
【0042】
続いて、制御装置80は、判定回路68からの信号に基づいて、ノズル10からインクが吐出されたか否か(ノズル10に異常が生じたか否か)を判定する(S104)。ノズル10からインクが吐出されたと判定された場合には(S104:YES)、制御装置80は、続いて、粘度推定処理を実行する(S105)。
【0043】
S105の粘度推定処理について説明する。本実施形態では、フラッシュメモリ84に、
図8(a)に示すように、駆動電圧(V1,V2,V3)及びインク滴の種類(小玉、中玉、大玉)と、ノズル10から吐出可能なインク滴の粘度の最大値(W1a,W1b,W1c,W2a,W2b,W2c,W3a,W3b,W3c)とが関連付けられたテーブルのデータ(本発明の「粘度推定用データ」)が記憶されている。
【0044】
なお、本実施形態では、
図8(a)の駆動電圧(V1,V2,V3)の情報、及び、インク滴の種類(小玉、中玉、大玉)の情報が、本発明の「吐出エネルギー情報」に相当する。また、このうち、駆動電圧(V1,V2,V3)の情報が、本発明の「電圧情報」に相当し、インク滴の種類(小玉、中玉、大玉)の情報が、本発明の「液滴種類情報」に相当する。また、
図8(a)のテーブルにおけるインクの粘度(W1a,W1b,W1c,W2a,W2b,W2c,W3a,W3b,W3c)が、本発明の「粘度情報」に相当する。
【0045】
ここで、個別電極54に印加する駆動電圧が高いほど、圧力室40内のインクに大きな吐出エネルギーが付与される。したがって、個別電極54に印加する駆動電圧が高いほど、ノズル10からインクを吐出され易く、ノズル10から吐出可能なインクの粘度の最大値が大きい。また、ノズル10から吐出させるインク滴の体積が大きいほど、圧力室40内のインクに大きな吐出エネルギーが付与される。したがって、体積の大きいインク滴ほど、ノズル10からインクが吐出され易く、ノズル10から吐出可能なインクの粘度の最大値が大きい。
【0046】
これらのことから、
図8(a)のテーブルでは、粘度W1a,W1b,W1c,W2a,W2b,W2c,W3a,W3b,W3cが、W1a<W1b<W1c、W2a<W2b<W2c、W3a<W3b<W3c、W1a<W2a<W3a、W1b<W2b<W3b、W1c<W2c<W3cの大小関係となっている。すなわち、駆動電圧が高く、吐出されるインク滴の体積が小さいほど、ノズル10から吐出可能なインク滴の粘度の最大値が大きくなっている。そして、S105の粘度推定処理では、
図8(a)のテーブルの粘度のうち、現在設定されている駆動電圧及びインク滴の種類に対応する粘度を、個別流路46内のインクの粘度と推定する。
【0047】
一方、ノズル10からインクが吐出されなかった場合には(S104:NO)、制御装置80は、駆動電圧がV3に設定され且つインク滴の種類が大玉に設定されている場合を除いて(S106:NO)、駆動電圧及び波形信号の設定を次の設定に変更し(S107)、S103に戻る。
【0048】
S107の処理について説明する。本実施形態では、フラッシュメモリ84に、
図8(b)に示すように、駆動電圧(V1,V2,V3)及びインク滴の種類(小玉、中玉、大玉)と、駆動電圧及びインク滴の種類の設定の順序(1,2,3,・・,9)とが関連付けられたテーブルのデータ(本発明の「吐出難易度データ」)が記憶されている。なお、本実施形態では、
図8(b)の駆動電圧及びインク滴の種類の設定の順序(1,2,3,・・,9)の情報が、本発明の「難易度情報」に相当し、ノズル10からのインク滴の吐出の難易度を示している。具体的には、駆動電圧及びインク滴の種類の設定の順序(1,2,3,・・,9)は値が大きいほど、ノズル10からのインク滴が吐出の難易度が低いことを示している。
【0049】
図8(b)のテーブルでは、駆動電圧が同じであれば、体積の大きいインク滴ほど順序が先になっている。また、インク滴の種類が同じであれば、駆動電圧が低いほど順序が先になっている。これにより、駆動電圧がより低く、インク滴の体積がより小さい、ノズル10からのインク滴の吐出難易度が高い設定から、駆動電圧がより高く且つインク滴の体積がより大きい、ノズル10からのインク滴の吐出の難易度が低い設定の順に、電圧情報及びインク滴の種類が設定される。ここで、
図8(b)のテーブルでは、駆動電圧V1で小玉の波形信号の順序が「1」である(ノズル10からのインク滴の吐出の難易度が最も高い)ため、S102において、上記の通り、駆動電圧をV1に設定し、インク滴の種類を小玉に設定している。そして、S107では、
図8(b)のテーブルに基づいて、駆動電圧及びインク滴の種類の設定を、現在のものから次のものに変更する。
【0050】
一方、ノズル10からインクが吐出されず(S104:NO)、且つ、駆動電圧がV3に設定され、且つ、インク滴の種類が大玉に設定されている場合には(S106:YES)、制御装置80は、個別流路46内のインクの粘度がW0であると推定する(S108)。粘度W0は、
図8(a)のテーブルに示す、駆動電圧がV3で、インク滴の種類が大玉である場合にノズル10から吐出可能なインク滴の粘度の最大値W3cよりも高い粘度である。
【0051】
S105又はS108で個別流路46内のインクの粘度が推定された後、インクジェットヘッド4の全ての個別流路46についてのインクの粘度の推定が完了していなければ(S109:NO)、制御装置80は、続いて、粘度推定の対象となる個別流路46を変更し(S110)、S102に戻る。
【0052】
S110では、粘度の推定がまだ行われていない個別流路46を、粘度推定の対象に設定してもよい。一例をあげると、例えば、現在、あるノズル列9に対応する複数の個別流路46のうち、搬送方向の最も下流側の個別流路46以外の個別流路46が粘度推定の対象に設定されているときには、S110において、この個別流路46の搬送方向の下流側に隣接する個別流路46を粘度推定の対象に設定する。また、あるノズル列9に対応する複数の個別流路46のうち、搬送方向の最も下流側の個別流路46が粘度推定の対象に設定されているときには、S110において、上記あるノズル列9の左側に隣接するノズル列9に対応する複数の個別流路46のうち、搬送方向の最も上流側の個別流路46を粘度推定の対象に設定する。
【0053】
そして、全ての個別流路46についてのインクの粘度の推定が完了したときに(S109:YES)、制御装置80は、推定したインクの粘度に基づいて、記録用紙Pに画像を記録するときの設定を行い(S111)、吸引パージの設定を行い(S112)、駆動素子50を駆動させてノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるフラッシングの設定を行い(S113)、処理を終了する。
【0054】
S111では、制御装置80は、例えば、複数の個別流路46内のインクの粘度の平均値が高いほど、複数のノズル10からインクを吐出させて記録用紙Pに画像を記録させるときの、ヘッド電源回路89からドライバIC59に印加する駆動電圧を高い電圧に設定する。あるいは、例えば、各個別流路46について、インクの粘度が高いほど、大玉、中玉、小玉のうち少なくとも一部の波形信号を、より体積の大きいインク滴に対応する波形信号に変更する。
【0055】
S112では、制御装置80は、例えば、複数の個別流路46内のインクの粘度の平均値が高いほど、吸引パージによって排出するインクの量を多くする(吸引ポンプ62の駆動時間を長くする)。
【0056】
S113では、制御装置80は、例えば、インクの粘度が高い個別流路46ほど、初回の記録パスの直前に行うフラッシングの回数を多くしてインクの排出量を多くさせる。
【0057】
<効果>
本実施形態では、駆動素子50に印加される駆動電圧、及び、インク滴の種類と、この駆動電圧及びインク滴の種類に対応する波形信号で駆動素子50を駆動したときにノズル10から吐出可能なインクの粘度の最大値の情報とを関連付けた、
図8(a)に示すようなテーブルのデータを記憶させておく。そして、駆動電圧及びインク滴の種類(波形信号)の設定を変えて駆動素子50を駆動させ、ノズル10からインクが吐出されたか否かと、
図8(a)のテーブルとに基づいて、個別流路46内のインクを推定する。このとき、ノズル10からインクが吐出されたか否かと、上記テーブルとに基づいて個別流路46内のインクの粘度を簡単に推定することができ、インクの粘度を推定するのに複雑な処理が必要ない。
【0058】
また、本実施形態では、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させたときの検出用電極66の電圧値の変化(電気的な変化)に基づいて、判定回路68から、ノズル10が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上述したように、他の条件が同じであれば、駆動電圧が高いほど、駆動素子50を駆動したときに、ノズル10からインク滴が吐出され易く、ノズル10からより高い粘度のインクを吐出することができる。また、他の条件が同じであれば、吐出される液滴の体積が大きいほど、駆動素子50を駆動したときに、ノズル10からインク滴が吐出され易く、より高い粘度のインクを吐出することができる。したがって、本実施形態では、駆動電圧がより低く且つインク滴の体積がより小さい、ノズル10からのインク滴の吐出の難易度が高い設定から、駆動電圧がより高く且つインク滴の体積がより大きい、ノズル10からのインク滴の吐出の難易度が低い設定の順に、電圧情報及びインク滴の種類(波形信号)を設定して、駆動素子50を駆動する。そして、初めてノズル10からインクが吐出されたときの、駆動電圧及びインク滴の種類と、
図8(a)のテーブルとに基づいて、個別流路46内のインクの粘度を推定する。この場合には、この後、これよりもノズル10からのインク滴の吐出の難易度が低い駆動電圧及びインク滴の種類の設定で、駆動素子50を駆動する必要がない。したがって、個別流路46内の液体の粘度を推定するために消費されるインクの量を少なくすることができ、個別流路46内のインクの粘度を推定するのにかかる時間を極力短くすることができる。
【0060】
ここで、本実施形態とは異なり、ノズル10からインクが吐出されたか否かを判定する代わりに、例えば、駆動電圧及びインク滴の種類(波形信号)の設定を変えて駆動素子50を駆動させ、ノズル10から吐出されたインクの飛翔速度に基づいて(例えば、所定速度以上であるか否かに基づいて)、ノズルに異常が生じているか否かを判定することが考えられる。しかしながら、インクの飛翔速度は外乱の影響を受けやすいため、この判定結果に基づいてインクの粘度を正確に推定するためには、飛翔速度についての判定結果から、外乱の影響を除去するための処理等が必要になる。これに対して、本実施形態のノズル10からインクが吐出されたか否かの判定結果は、上記外乱の影響を受けにくく、この判定結果に基づいて、簡単且つ正確に、個別流路46内のインクの粘度を推定することができる。
【0061】
また、本実施形態では、例えば、推定した複数の個別流路46内のインクの粘度の平均値が高いほど、吸引パージにおいて排出するインクの量を多くする(吸引ポンプ62の駆動時間を長くする)等、推定したインクの粘度に応じて適切に吸引パージを行うことができる。
【0062】
また、本実施形態では、例えば、推定したインクの粘度が高い個別流路46ほど、初回の記録パスの前に行わせるフラッシングの回数を多くする等、推定したインクの粘度に応じて適切にフラッシングを行わせることができる。
【0063】
また、本実施形態では、例えば、複数の個別流路46内のインクの粘度の平均値が高いほど、ヘッド電源回路89からドライバIC59に印加する駆動電圧を高くする、あるいは、例えば、各個別流路46について、インクの粘度が高いほど、大玉、中玉、小玉のうち少なくとも一部の波形信号を、より体積の大きいインク滴に対応する波形信号に変更するなど、複数のノズル10から記録用紙に向けてインクを吐出するときに、推定したインクの粘度に応じて適切に駆動素子50を駆動させて圧力室40内のインクに圧力を付与することができる。
【0064】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0065】
上述の実施形態では、全ての個別流路46について、それぞれ、駆動電圧及びインク滴の種類を設定して駆動素子50を駆動させたときにノズル10からインクが吐出されたか否かの結果に基づいて、個別流路46内のインクの粘度を推定したが、これには限られない。
【0066】
一変形例では、
図9に示すように、制御装置80は、S201~S210の処理により、各ノズル列9に対応する複数の個別流路46のうち、一部の個別流路46についてのみ、駆動電圧及びインク滴の種類(波形信号)を設定して駆動素子50を駆動させ、初めてノズル10からインクが吐出されたときの、駆動電圧及びインク滴の種類と、
図8(a)のテーブルとに基づいて、インクの粘度を推定する。ここで、S205の第1粘度推定処理は、上述の実施形態のS105の粘度推定処理と同様の処理である。また、S209では、上記一部の個別流路46の全てについて、インク粘度の推定が完了したか否かを判定する。また、S210では、制御装置80は、上記一部の個別流路46のうち、まだ粘度が推定されていない個別流路46を、粘度推定の対象となる個別流路46に設定する。また、S201~S204、S206~S209の処理は、それぞれ、S101~S104、S106~S109の処理と同様である。
【0067】
そして、上記一部の個別流路46の全てについて、インクの粘度の推定が完了したときに(S209:YES)、制御装置80は、続いて、第2粘度推定処理を実行する(S211)。第2粘度推定処理では、制御装置80は、S205の第1粘度推定処理で推定した上記一部の個別流路46内のインクの粘度から、インクジェットヘッド4の複数の個別流路46のうち、上記一部の個別流路46以外の個別流路46内のインクの粘度を推定する。
【0068】
一例を挙げると、例えば、搬送方向において、第1粘度推定処理で粘度が推定された2つの個別流路46の間に、第1粘度推定処理で粘度が推定されていない個別流路46が配置されている場合に、この個別流路46内のインクの粘度を、上記2つの個別流路46内の粘度の間の粘度に推定する。
【0069】
また、別の一例を挙げると、通常、同じマニホールド流路41に接続された複数の個別流路46のうち、供給口39から遠い搬送方向の下流側のものほどインクの粘度が高い。そこで、例えば、第1粘度推定処理で粘度が推定された個別流路46よりも搬送方向の上流側(供給口39側)に、第1粘度推定処理で粘度が推定されていない個別流路46がある場合に、この個別流路46内のインクの粘度を、上記第1粘度推定処理で粘度が推定された個別流路46内のインクの粘度よりも低い粘度と推定する。さらに、このとき、個別流路が搬送方向のより上流側のものである場合ほど、より低い粘度と推定する。
【0070】
また、別の一例を挙げると、例えば、第1粘度推定処理で粘度が推定された個別流路46よりも搬送方向の下流側(供給口39と反対側)に、第1粘度推定処理で粘度が推定されていない個別流路46がある場合に、この個別流路46内のインクの粘度を、上記第1粘度推定処理で粘度が推定された個別流路46内のインクの粘度よりも高い粘度と推定する。さらに、このとき、個別流路46が搬送方向のより下流側のものである場合ほど、より高い粘度と推定する。
【0071】
そして、制御装置80は、S205の第1粘度推定処理と、S211の第2粘度推定処理とで、推定した各個別流路46内のインクの粘度に基づいて、上述の実施形態のS111~S113と同様の設定を行う(S212~S214)。
【0072】
複数の個別流路46が同じマニホールド流路41に接続されている場合、ある個別流路46内のインクの粘度から、他の個別流路46内のインクの粘度を推定することが可能である。そこで、本変形例では、第1粘度推定処理において、インクジェットヘッド4の複数の個別流路46のうち、一部の個別流路46についてのみ、駆動電圧及びインク滴の種類(波形信号)を設定して駆動素子50を駆動させ、初めてノズル10からインクが吐出されたときの、駆動電圧及びインク滴の種類と、
図8(a)のテーブルとに基づいて、インクの粘度を推定する。そして、第2粘度推定処理において、上記一部の個別流路46について推定したインクの粘度に基づいて、上記一部の個別流路46以外の個別流路46内のインクの粘度を推定する、この場合には、上記一部の個別流路46以外の個別流路46のノズル10からインクを吐出しない分、粘度を推定するために消費されるインクの量を少なくすることができる。また、インクの粘度を推定するために必要な処理の時間も短くなる。
【0073】
また、S111で行う設定は、上述の実施形態で説明したものには限られない。例えば、S111において、各ノズル列9に対応する複数の個別流路46を搬送方向に並ぶ複数のグループに分け、推定した粘度に基づいて、グループ毎に波形信号を設定してもよい。あるいは、例えば、プリンタにおいて、複数の駆動素子50の個別電極54に印加する駆動電圧を個別に設定可能な場合には、S111において、インクの粘度が高い個別流路46に対応する個別電極54に印加する駆動電圧ほど高い電圧としてもよい。
【0074】
また、上述の実施形態では、推定した個別流路46内のインクの粘度に基づいて、記録用紙Pに画像の記録を行うときの設定、吸引パージの設定、及び、フラッシングの設定を行ったが、これには限られない。これらの設定のうち一部の設定のみを行ってもよい。あるいは、推定した個別流路46内のインクの粘度を、これらの設定とは別の目的で利用してもよい。
【0075】
また、本実施形態では、吸引パージによって、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させたが、これには限られない。例えば、サブタンク3とインクカートリッジ15とを接続するチューブ13の途中部分に加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ61で覆われた状態で、この加圧ポンプを駆動させることで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。なお、この場合には、キャップ61と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「パージ手段」に相当する。
【0076】
さらには、パージにおいて、吸引ポンプ62による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行ってもよい。この場合には、メンテナンスユニット8と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「パージ手段」に相当する。
【0077】
また、上述の実施形態では、個別流路46内のインクの粘度を推定するために、駆動電圧及びインク滴の種類(波形信号)の両方を変えて、駆動素子50を駆動させたが、これには限られない。
【0078】
例えば、個別流路46内のインクの粘度を推定するために、インク滴の種類(波形信号)は同じとし、駆動電圧のみを変えて、駆動素子50を駆動させてもよい。また、この場合には、駆動電圧がより低い設定から高い設定の順に、駆動電圧を設定すれば、ノズル10からのインク滴の吐出の難易度が高い設定から、ノズル10からのインク滴の吐出の難易度が低い設定の順に、駆動電圧を設定することができる。
【0079】
あるいは、例えば、個別流路46内のインクの粘度を推定するために、駆動電圧は同じとし、インク滴の種類(波形信号)のみを変えて、駆動素子50を駆動させてもよい。また、この場合には、インク滴の体積がより小さい低い設定から大きい設定の順に、インク滴の種類を設定すれば、ノズル10からのインク滴の吐出の難易度が高い設定から、ノズル10からのインク滴の吐出の難易度が低い設定の順に、駆動電圧を設定することができる。
【0080】
また、上述の実施形態では、個別流路46内のインクの粘度を推定するときに、ノズル10からのインク滴の吐出の難易度が高い設定から、ノズル10からのインク滴の吐出の難易度が低い設定の順に、駆動電圧及びインク滴の種類を設定して、駆動素子50を駆動させたが、これには限られない。例えば、駆動電圧及びインク滴の種類についての複数の設定の全てについて、任意の順序で、駆動電圧及びインク滴の種類を設定して駆動素子50を駆動させ、各設定においてノズル10からインクが吐出されたか否かの結果と、
図8(a)のテーブルとに基づいて、個別流路46内のインクの粘度を推定してもよい。
【0081】
また、個別流路46内のインクの粘度を推定するときに、ヘッド電源回路89が、複数種類の駆動電圧のいずれかを選択的に生成することや、ドライバIC59が、インク滴の種類に応じた複数種類の波形信号のいずれかを選択的に生成して個別電極54に出力することにも限られない。例えば、個別流路46内のインクの粘度を推定するときに、ヘッド電源回路89が生成する駆動電圧が1種類のみであり、且つ、ドライバIC59が生成して個別電極54に出力する波形信号が1種類のみであってもよい。この場合でも、上記駆動電圧及び波形信号で駆動素子50を駆動させたときに、ノズル10からインクが吐出されたか否かによって、個別流路46内のインクの粘度がある粘度以上であるか否かを推定することができる。
【0082】
また、上述の実施形態では、個別流路46内のインクの粘度を推定するときに、ノズル10から記録用紙Pに画像を記録するときと同じ駆動電圧及びインク滴の種類を設定したが、これには限られない。個別流路46内のインクの粘度を推定するときに、設定する駆動電圧及びインク滴の種類のうち、少なくとも一部は、ノズル10から記録用紙Pに画像を記録するときのものとは別のものであってもよい。
【0083】
また、上述の実施形態では、駆動電圧及びインク滴の種類と、ノズル10から吐出可能なインクの粘度の最大値とを関連付けたテーブルを記憶させていたが、これには限られない。駆動電圧及びインク滴の種類の情報と、ノズル10から吐出可能なインクの粘度の最大値以外の、インクの粘度に関連する粘度情報とを関連付けたテーブルを記憶させてもよい。
【0084】
また、以上の例では、駆動電圧及びインク滴の種類を設定して駆動素子50を駆動させることで、圧力室40内のインクに吐出エネルギーを付与したが、これには限られない。駆動電圧及びインク滴の種類以外の吐出エネルギー情報を設定することで、圧力室40内のインクに吐出エネルギーを付与してもよい。
【0085】
また、上述の実施形態では、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させたときの検出用電極66の電圧値を用いて、ノズル10からインクが吐出されたか否かを判定したが、これには限られない。
【0086】
例えば、上下方向に延びた検出用電極を配置し、ノズル10から検出用電極と対向する領域を通過するようにインクを吐出させたときの検出用電極の電圧値を用いて、ノズル10からインクが吐出されたか否かを判定してもよい。あるいは、ノズル10から吐出されたインクを検出する光センサを設け、光センサによる検出結果に基づいて、ノズル10からインクが吐出されたか否かを判定してもよい。
【0087】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路(本発明の「信号出力部」)を接続し、電圧検出回路から制御装置80に、ノズル10が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0088】
また、上述の実施形態では、S105において、ノズル10からインクが吐出されたか否かによって、ノズル10に異常が生じているか否かを判定したが、これには限られない。例えば、ノズル10から吐出されたインクの飛翔速度を検出するための構成を設け、上記飛翔速度が所定速度以上であるか否かに基づいてノズルに異常が生じているか否かを判定する等、上記飛翔速度に基づいてノズルに異常が生じているか否かを判定してもよい。
【0089】
また、上述の実施形態では、ヘッド電源回路89がドライバIC59駆動電圧を印加し、ドライバIC59が波形信号を生成して、駆動素子50に出力したが、これには限られない。例えば、ドライバICがなく、ヘッド電源回路89が制御装置80のASIC85に駆動電圧を印加し、ASIC85が波形信号を生成して、駆動素子50に出力することによって、駆動素子50に駆動電圧を印加するようになっていてもよい。
【0090】
また、上述の実施形態では、駆動素子50により圧力室40内のインクに圧力を付与することで、個別流路46内のインクにノズル10からの吐出のための吐出エネルギーを付与したが、これには限られない。例えば、インクを加熱してインク流路内に気泡を発生させることで、インク流路内のインクにノズルからの吐出のための吐出エネルギーを付与してもよい。なお、この場合には、インクを加熱するための発熱素子などが、本発明の「エネルギー付与部」に相当する。
【0091】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液滴吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0092】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
8 メンテナンスユニット
10 ノズル
41 マニホールド流路
46 個別流路
50 駆動素子
68 判定回路
80 制御装置
89 電源回路