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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20230912BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G21/00 370
G03G21/00 310
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019050774
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020154068
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003443
【氏名又は名称】弁理士法人TNKアジア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】所 義多賀
(72)【発明者】
【氏名】東一 哲也
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-018040(JP,A)
【文献】特開2007-086659(JP,A)
【文献】特開2005-156904(JP,A)
【文献】特開2007-233049(JP,A)
【文献】特開2012-088557(JP,A)
【文献】特開2013-221951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラーに架け渡されて周回移動される無端状のベルトであって、記録紙に転写されるトナー像を担持する中間転写ベルトと、
トナー像を形成して前記中間転写ベルト上に転写する画像形成部と、
前記中間転写ベルトに接して、該中間転写ベルト上に担持されて帯電している残留トナーを除去するブラシローラーと、
前記帯電している残留トナーを前記中間転写ベルトから前記ブラシローラーに移行させるバイアスを、前記中間転写ベルトと前記ブラシローラーの間に印加するバイアス印加部と、
前記画像形成部に備えられる像担持体の表面をリフレッシュする像担持体メンテナンスの期間においては、前記バイアス印加部を制御して、前記中間転写ベルトに残留トナーが生じた状態となる規定の時間帯にのみ前記バイアスの印加量を予め定められた第1の値とし、前記規定の時間帯を除く他の時間帯に前記バイアスの印加量を前記第1の値よりも小さい予め定められた第2の値とする制御部と、を備え、
前記像担持体メンテナンスの期間は、前記像担持体が帯電される時間帯である帯電エージング時間帯と、トナーが前記像担持体から前記中間転写ベルトに転写される時間帯であるトナー吐き出し時間帯とを1組として当該1組が予め定められた数だけ繰り返される時間帯と、最後の帯電エージング時間帯と、を含み、
前記制御部は、前記規定の時間帯を、前記最後の帯電エージング時間帯とし、前記規定の時間帯を除く他の時間帯を、前記繰り返される時間帯とする、画像形成装置。
【請求項2】
複数のローラーに架け渡されて周回移動される無端状のベルトであって、記録紙に転写されるトナー像を担持する中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトにトナー像を転写する像担持体と、
トナー像を形成して前記中間転写ベルト上に転写する画像形成部と、
前記中間転写ベルトに接して、該中間転写ベルト上に担持されて帯電している残留トナーを除去するブラシローラーと、
前記帯電している残留トナーを前記中間転写ベルトから前記ブラシローラーに移行させるバイアスを、前記中間転写ベルトと前記ブラシローラーの間に印加するバイアス印加部と、
前記画像形成部に備えられる現像部における劣化トナーを排出する現像部メンテナンスの期間においては、前記バイアス印加部を制御して、前記中間転写ベルトに残留トナーが生じた状態となる規定の時間帯にのみ前記バイアスの印加量を予め定められた第1の値とし、前記規定の時間帯を除く他の時間帯に前記バイアスの印加量を前記第1の値よりも小さい予め定められた第2の値ととする制御部と、を備え、
前記現像部メンテナンスの期間は、前記現像部のエージングが行われる時間帯である現像エージング時間帯と、前記トナーが前記像担持体から前記中間転写ベルトに転写される時間帯であるトナー吐き出し時間帯とを1組として当該1組が予め定められた数だけ繰り返される時間帯と、最後の現像エージング時間帯と、を含み、
前記制御部は、前記規定の時間帯を、前記最後の現像エージング時間帯とし、前記規定の時間帯を除く他の時間帯を、前記繰り返される時間帯とする、画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記残留トナーの濃度が高くなるほど前記第1の値を大きな値に設定する、請求項1又は請求項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合機やプリンター等の画像形成装置に関し、特に、中間転写ベルトの片寄りを抑制するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、トナー像を像担持体(感光体ドラム)の表面に形成し、複数のローラーに架け渡された無端状の中間転写ベルトを像担持体に押圧させた状態で周回移動させて、トナー像を像担持体から中間転写ベルトに一次転写させ、更にトナー像を中間転写ベルトから記録紙に二次転写させている。また、中間転写ベルトにファーブラシローラーを当て、ファーブラシローラーにバイアスを印加し、ファーブラシローラーにより中間転写ベルト上の帯電している残留トナーを除去している。中間転写ベルトとファーブラシローラーの間には、中間転写ベルトからファーブラシローラーへと残留トナーを移行させるためのバイアスが印加されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-180102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置においては、様々なキャリブレーション又はメンテナンスを実施しており、キャリブレーション又はメンテナンス別に、中間転写ベルトとファーブラシローラーの間に印加されるバイアスを適宜設定している。ここで、本願の発明者は、そのようなバイアスの最適値を実験などで求めようとしているときに、バイアスの印加量に応じて中間転写ベルトがその周回方向と直交する方向(複数のローラーに架け渡されて周回移動される無端状の中間転写ベルトの幅方向)に変位すること、つまり上記ローラー上において中間転写ベルトに片寄りが生じることを発見した。そして、中間転写ベルトを常に片寄ることなく定位置で周回移動させることが好ましいことから、そのようなバイアスの印加量に応じた片寄りを抑制するための技術を提案するに至った。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、キャリブレーション又はメンテナンスを実行する期間において、残留トナーを中間転写ベルトからブラシローラーに移行させるために中間転写ベルト及びファーブラシローラー間に印加されるバイアスを要因として生じる中間転写ベルトの片寄りを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、複数のローラーに架け渡されて周回移動される無端状のベルトであって、記録紙に転写されるトナー像を担持する中間転写ベルトと、トナー像を形成して前記中間転写ベルト上に転写する画像形成部と、前記中間転写ベルトに接して、該中間転写ベルト上に担持されて帯電している残留トナーを除去するブラシローラーと、前記帯電している残留トナーを前記中間転写ベルトから前記ブラシローラーに移行させるバイアスを、前記中間転写ベルトと前記ブラシローラーの間に印加するバイアス印加部と、前記画像形成部に備えられる現像部のバイアスを調節するための現像キャリブレーションを実行する期間においては、前記バイアス印加部を制御して、前記中間転写ベルトに残留トナーが生じた状態となる規定の時間帯にのみ前記バイアスの印加量を予め定められた第1の値とし、前記規定の時間帯を除く他の時間帯に前記バイアスの印加量を前記第1の値よりも小さい予め定められた第2の値とする制御部と、を備え、前記現像キャリブレーションを行わせる期間は、前記バイアスを放電が生じない程度に調節する時間帯である放電調節時間帯と、トナー像が形成されて前記中間転写ベルトに転写される時間帯であるトナー吐き出し時間帯と、前記現像部の動作を安定化させるための時間帯であるエージング時間帯とを含み、前記制御部は、前記規定の時間帯を、前記エージング時間帯とし、前記規定の時間帯を除く他の時間帯を、前記放電調節時間帯及び前記トナー吐き出し時間帯とするものである。
本発明の他の一局面に係る画像形成装置は、複数のローラーに架け渡されて周回移動される無端状のベルトであって、記録紙に転写されるトナー像を担持する中間転写ベルトと、トナー像を形成して前記中間転写ベルト上に転写する画像形成部と、前記中間転写ベルトに接して、該中間転写ベルト上に担持されて帯電している残留トナーを除去するブラシローラーと、前記帯電している残留トナーを前記中間転写ベルトから前記ブラシローラーに移行させるバイアスを、前記中間転写ベルトと前記ブラシローラーの間に印加するバイアス印加部と、前記画像形成部に備えられる像担持体の表面をリフレッシュする像担持体メンテナンスの期間においては、前記バイアス印加部を制御して、前記中間転写ベルトに残留トナーが生じた状態となる規定の時間帯にのみ前記バイアスの印加量を予め定められた第1の値とし、前記規定の時間帯を除く他の時間帯に前記バイアスの印加量を前記第1の値よりも小さい予め定められた第2の値とする制御部と、を備え、前記像担持体メンテナンスの期間は、前記像担持体が帯電される時間帯である帯電エージング時間帯と、トナーが前記像担持体から前記中間転写ベルトに転写される時間帯であるトナー吐き出し時間帯とを1組として当該1組が予め定められた数だけ繰り返される時間帯と、最後の帯電エージング時間帯と、を含み、前記制御部は、前記規定の時間帯を、前記最後の帯電エージング時間帯とし、前記規定の時間帯を除く他の時間帯を、前記繰り返される時間帯とするものである。
本発明の他の一局面に係る画像形成装置は、複数のローラーに架け渡されて周回移動される無端状のベルトであって、記録紙に転写されるトナー像を担持する中間転写ベルトと、トナー像を形成して前記中間転写ベルト上に転写する画像形成部と、前記中間転写ベルトに接して、該中間転写ベルト上に担持されて帯電している残留トナーを除去するブラシローラーと、前記帯電している残留トナーを前記中間転写ベルトから前記ブラシローラーに移行させるバイアスを、前記中間転写ベルトと前記ブラシローラーの間に印加するバイアス印加部と、前記画像形成部に備えられる現像部における劣化トナーを排出する現像部メンテナンスの期間においては、前記バイアス印加部を制御して、前記中間転写ベルトに残留トナーが生じた状態となる規定の時間帯にのみ前記バイアスの印加量を予め定められた第1の値とし、前記規定の時間帯を除く他の時間帯に前記バイアスの印加量を前記第1の値よりも小さい予め定められた第2の値ととする制御部と、を備え、前記現像部メンテナンスの期間は、前記現像部のエージングが行われる時間帯である現像エージング時間帯と、トナーが前記像担持体から前記中間転写ベルトに転写される時間帯であるトナー吐き出し時間帯とを1組として当該1組が予め定められた数だけ繰り返される時間帯と、最後の現像エージング時間帯と、を含み、前記制御部は、前記規定の時間帯を、前記最後の現像エージング時間帯とし、前記規定の時間帯を除く他の時間帯を、前記繰り返される時間帯とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、キャリブレーション又はメンテナンスを実行する期間において、残留トナーを中間転写ベルトからブラシローラーに移行させるために中間転写ベルト及びファーブラシローラー間に印加されるバイアスを要因として生じる中間転写ベルトの片寄りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置を示す断面図である。
図2】本実施形態の画像形成装置における中間転写ユニット等を示す側面図である。
図3】中間転写ユニットの中間転写ベルト等を下方から見て概略的に示す斜視図である。
図4】中間転写ユニットのテンションローラー及びバックアップローラー等を拡大して示す側面である。
図5】画像形成装置の主要内部構成を示すブロック図である。
図6】(A)は現像キャリブレーションの期間における放電調節時間帯、トナー吐き出し時間帯、及びエージング時間帯を示す図であり、(B)は本実施形態における中間転写ベルトとファーブラシローラーの間に印加されるバイアスの遷移を示す図であり、(C)は従来のバイアスを示す図である。
図7】(A)はドラムリフレッシュの期間における帯電エージング時間帯及びトナー吐き出し時間帯を示す図であり、(B)は本実施形態における中間転写ベルトとファーブラシローラーの間に印加されるバイアスの遷移を示す図であり、(C)は従来のバイアスを示す図である。
図8】(A)は現像リフレッシュの期間における現像エージング時間帯及びトナー吐き出し時間帯を示す図であり、(B)は本実施形態における中間転写ベルトとファーブラシローラーの間に印加されるバイアスの遷移を示す図であり、(C)は従来のバイアスを示す図である。
図9】(A)はフルキャリブレーション及びT/C補正の期間におけるフルキャリブレーションの時間帯及びT/C補正の時間帯を示す図であり、(B)は本実施形態における中間転写ベルトとファーブラシローラーの間に印加されるバイアスの遷移を示す図であり、(C)は従来のバイアスを示す図である。
図10】現像キャリブレーション、ドラムリフレッシュ、現像リフレッシュ、フルキャリブレーション別に、本実施形態における中間転写ベルトとファーブラシローラーの間に印加されるバイアス及び印加時間と、従来のバイアス及び印加時間を整理して示す図表である。
図11】(A)は、同一構成の中間転写ユニットを3組用意して、本実施形態のようにバイアスの印加量及び印加時間を設定した場合における、中間転写ベルトの片寄りに対応する距離、及びローラー上の凸部に対する中間転写ベルトの乗り上げの有無を、実験で調べた結果を示す表である。(B)は、従来のようにバイアスの印加量及び印加時間を設定した場合とで、中間転写ベルトの片寄りに対応する距離、及びローラー上の凸部に対する中間転写ベルトの乗り上げの有無を、実験で調べた結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態にかかる画像形成装置について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態にかかる画像形成装置を示す断面図である。この画像形成装置10は、例えばコピー機能、プリンター機能、ファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えたMFP(複合機)である。この画像形成装置10は、画像読取部11と、画像形成部12とを備えている。
【0011】
画像読取部11は、原稿の画像を光学的に読み取る撮像素子を有しており、この撮像素子のアナログ出力がデジタル信号に変換されて、原稿の画像を示す画像データが生成される。
【0012】
画像形成部12は、感光体ドラム、現像部、ドラムクリーニング部、及び帯電部などを各色別にそれぞれ備えている。画像形成部12は、上記画像データによって示される画像を記録紙に形成するものであり、マゼンタ用の画像形成ユニット3M、シアン用の画像形成ユニット3C、イエロー用の画像形成ユニット3Y、及びブラック用の画像形成ユニット3Bkを備えている。各画像形成ユニット3M、3C、3Y、及び3Bkのいずれにおいても、感光体ドラム4の表面を均一帯電させ、感光体ドラム4の表面を露光して、感光体ドラム4の表面に静電潜像を形成し、感光体ドラム4の表面の静電潜像をトナー像に現像する。
【0013】
中間転写ベルト5は、無端状のベルトであって、駆動ローラー23、テンションローラー24、及びバックアップローラー25の複数のローラーに架け渡されて、駆動ローラー23により駆動されて周回移動する。この中間転写ベルト5の周回移動に際し、それぞれの1次転写ローラー21により各感光体ドラム4の表面のトナー像が中間転写ベルト5の表面に1次転写されて重ね合わされ、中間転写ベルト5の表面にカラーのトナー像が形成される。中間転写ベルト5の表面に形成されたカラーのトナー像は、2次転写ローラー22と駆動ローラー23の間のニップ部Nで給紙部14から搬送路8を通じて搬送されてきた記録紙Pに2次転写される。ベルトクリーニング部18は、ファーブラシローラー19(図2乃至図4に示す)を備え、ファーブラシローラー19により中間転写ベルト5上の帯電している残留トナーを除去する。
【0014】
この後、定着部15で記録紙Pが加熱及び加圧されて、記録紙P上のトナー像が熱圧着により定着され、更に記録紙Pが排出ローラー16を通じて排出トレイ17に排出される。
【0015】
次に、中間転写ベルト5、各1次転写ローラー21、駆動ローラー23、テンションローラー24、バックアップローラー25、及びベルトクリーニング部18を備える中間転写ユニット20について詳しく説明する。
【0016】
図2は、中間転写ユニット20等を示す側面図である。図3は、中間転写ユニット20の中間転写ベルト5等を下方から見て概略的に示す斜視図である。図4は、中間転写ユニット20の1次転写ローラー21、テンションローラー24、及びベルトクリーニング部18等を拡大して示す側面図である。
【0017】
図2乃至図4に示すように中間転写ユニット20においては、各1次転写ローラー21、駆動ローラー23、テンションローラー24、及びバックアップローラー25が設けられ、これらのローラー21、23、24、及び25に中間転写ベルト5が架け渡され、各1次転写ローラー21が中間転写ベルト5を介してそれぞれの感光体ドラム4に押圧されている。ベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19は、テンションローラー24に沿って湾曲した中間転写ベルト5の部位に接触している。
【0018】
また、中間転写ユニット20の下方において、各感光体ドラム4別に、現像部26、ドラムクリーニング部27、及び帯電部28などが各色別に設けられている。各感光体ドラム4のいずれも矢印方向に回転駆動され、感光体ドラム4の回転に伴い、帯電部28により感光体ドラム4の表面が均一に帯電され、露光装置(図示せず)により感光体ドラム4の表面が露光されて、感光体ドラム4の表面に静電潜像が形成され、現像部26により感光体ドラム4の表面の静電潜像がトナー像に現像され、1次転写ローラー21により感光体ドラム4の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト5へと一次転写される。この後、感光体ドラム4の表面が除電され、ドラムクリーニング部27により感光体ドラム4の表面の残留トナーが除去される。
【0019】
そして、中間転写ベルト5上には、各感光体ドラム4の表面のトナー像を重ね合わせてなるカラーのトナー像が形成され、2次転写ローラー22と駆動ローラー23の間のニップ部N(図1に示す)でカラーのトナー像が中間転写ベルト5から記録紙Pに2次転写され、中間転写ベルト5上の帯電している残留トナーがベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19により除去される。
【0020】
次に、図5は、本実施形態の画像形成装置10の主要内部構成を示すブロック図である。この図5に示すように本実施形態の画像形成装置10は、画像読取部11と、画像形成部12と、表示部31と、操作部32と、タッチパネル33と、バイアス印加部37と、記憶部38と、制御ユニット39とを備えている。これらの構成要素は、互いにバスを通じてデータ又は信号の送受信が可能とされている。
【0021】
表示部31は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(OLED:Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイなどから構成される。
【0022】
操作部32は、テンキー、決定キー、スタートキーなどの物理キーを備えている。
【0023】
表示部31の画面には、タッチパネル33が配置されている。タッチパネル33は、所謂抵抗膜方式や静電容量方式などのタッチパネルであって、タッチパネル33に対するユーザーの指などの接触(タッチ)をその接触位置とともに検知して、その接触位置の座標を示す検知信号を制御ユニット39の後述する制御部41などに出力する。このタッチパネル33は、操作部32と共に表示部31の画面に対するユーザー操作が入力される操作部としての役割を果たす。
【0024】
バイアス印加部37は、ファーブラシローラー19にバイアス電流を供給して、ベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19にバイアスを印加するバイアス電源を備える電源装置である。バイアス印加部37は、このバイアス電源として、中間転写ベルト5とファーブラシローラー19の間にバイアスBIを印加するバイアス電源BDを備える。
【0025】
記憶部38は、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)などの大容量の記憶装置であって、各種のアプリケーションプログラムや種々のデータを記憶している。
【0026】
制御ユニット39は、プロセッサー、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)などから構成される。プロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はMPU(Micro Processing Unit)等である。制御ユニット39は、上記のROM又は記憶部38に記憶された制御プログラムが上記のプロセッサーで実行されることにより、制御部41として機能する。
【0027】
制御部41は、画像形成装置10を統括的に制御する。制御ユニット39は、画像読取部11、画像形成部12、表示部31、操作部32、タッチパネル33、バイアス印加部37、及び記憶部38などと接続されている。制御部41は、これらの構成要素の動作制御や、該各構成要素との間での信号またはデータの送受信を行う。
【0028】
制御部41は、画像形成装置10による画像形成に必要な各種の処理などを実行する処理部としての役割を果たす。また、制御部41は、表示部31の表示動作を制御する機能、及びバイアス印加部37における各バイアス電源を制御する機能を有する。
【0029】
ここで、上記構成の画像形成装置10において、制御部41は、様々なキャリブレーション又はメンテナンスを実行するためにキャリブレーション又はメンテナンス毎に、バイアス印加部37における各バイアス電源を制御する。制御部41は、感光体ドラム4、中間転写ベルト5、現像部26の現像ローラー、ベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19などに印加されるバイアスを調節する。
【0030】
一方、本願の発明者は、中間転写ベルト5とベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19の間のバイアスBIの印加量に応じて中間転写ベルト5がその周回方向と直交する方向(上述した複数のローラーの長手方向であり、当該複数のローラーに架け渡された状態の中間転写ベルト5の幅方向)に変位すること、つまり中間転写ベルト5が上述した複数のローラーの周面において上記方向における定位置からずれて片寄りが生じることを発見した。中間転写ベルト5は常に片寄ることなく上記定位置で周回移動させることが好ましく、そのようなバイアスBIの印加量に応じた片寄りを抑制する必要がある。
【0031】
そこで、本実施形態の画像形成装置10では、キャリブレーション又はメンテナンスの期間において、制御部41は、バイアス印加部37におけるバイアス電源BDを制御して、中間転写ベルト5上に残留トナーが生じた状態となる規定の時間帯にのみ中間転写ベルト5とファーブラシローラー19の間に印加されるバイアスBIの印加量を予め定められた第1の値とし、当該規定の時間帯を除く他の時間帯にバイアスBIの印加量を当該第1の値よりも小さい予め定められた第2の値とする制御を行う。中間転写ベルト5上の残留トナーは帯電しているので、当該規定の時間帯にバイアスBIの印加量を第1の値として大きくすることで、ファーブラシローラー19により中間転写ベルト5上の残留トナーを良好に除去する。また、その規定の時間帯を除く他の時間帯にバイアスBIの印加量を第2の値として小さくしているので、中間転写ベルト5の片寄りを抑制する。つまり、第1の値は、ファーブラシローラー19により中間転写ベルト5上の残留トナーを良好に除去可能となる予め定められたバイアス値である。
【0032】
なお、画像を記録紙に記録する通常動作のときには、中間転写ベルト5上の残留トナーが少ないため、バイアスBIの印加量を大きくする必要はなく、例えば、上記第2の値と同程度の値からなるバイアス印加量でよい。
【0033】
次に、現像キャリブレーション、ドラムリフレッシュ、現像リフレッシュ、フルキャリブレーションを例に挙げて、中間転写ベルト5とファーブラシローラー19の間のバイアスBIの調整について説明する。
<現像キャリブレーション>
【0034】
現像キャリブレーションを実行するとき、制御部41は、現像部26を制御して、各色用の現像部26により感光体ドラム4の表面にトナー像を形成させる。各色のトナー像は、それぞれの感光体ドラム4から中間転写ベルト5に転写される。この現像キャリブレーション時には、中間転写ベルト5上に帯電した状態で残留する各色の残留トナーをベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19により除去する必要がある。このため、制御部41は、バイアス印加部37におけるバイアス電源BDによりファーブラシローラー19にバイアス電流を供給させて、中間転写ベルト5とベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19の間にバイアスBIを印加させる。
【0035】
このとき、バイアスBIの印加量を、残留トナーが中間転写ベルト5からファーブラシローラー19に移動するのに十分な値とすることが好ましい。しかしながら、上記のように、中間転写ベルト5とファーブラシローラー19の間のバイアスBIの印加により中間転写ベルト5はその周回方向と直交する方向(中間転写ベルト5の幅方向)に変位するため、現像キャリブレーションの全期間を通じて、そのバイアスの印加量を上記十分な値に維持し続けると、中間転写ベルト5の片寄りが大きくなる。
【0036】
そこで、図6(A)、(B)に示すように、現像キャリブレーションの期間ΔTAにおいては、現像バイアスとして現像ローラーと供給ローラーの間に印加される交流及び直流のバイアスを放電が生じない程度に調節する時間帯を放電調節時間帯Δta1とし、各色のトナー像が形成されて各感光体ドラム4から中間転写ベルト5に転写される時間帯をトナー吐き出し時間帯Δta2とし、更に現像部26の動作を安定化させるための時間帯をエージング時間帯Δta3とすると、制御部41は、最後のエージング時間帯Δta3にのみ、中間転写ベルト5とファーブラシローラー19の間に印加されるバイアスBIを第1の値としての60μAと大きく設定し、放電調節時間帯Δta1及びトナー吐き出し時間帯Δta2ではバイアスBIを第2の値としての15μAと小さく設定する。放電調節時間帯Δta1は、予め設定された規定長さの期間であって、例えば150secである。トナー吐き出し時間帯Δta2は、例えば、放電調節時間帯Δta1の終了時点からの中間転写ベルト5の予め定められた周回移動距離に応じた一定の時間帯である。エージング時間帯Δta3は、トナー吐き出し時間帯Δta2の終了時点より中間転写ベルト5が例えば2周するまでの一定の時間帯である。
【0037】
この場合、制御部41は、現像キャリブレーションを実行し、放電調節時間帯Δta1の開始時点からの経過時間を計時しつつ、バイアス印加部37におけるバイアス電源BDを制御して、その経過時間に基づき放電調節時間帯Δta1及びトナー吐き出し時間帯Δta2にバイアスBIを15μAと比較的小さく設定し、各感光体ドラム4から中間転写ベルト5への各色のトナーの転写が終了した後のエージング時間帯Δta3にのみバイアスBIを60μAと比較的大きく設定する。すなわち、エージング時間帯Δta3は、中間転写ベルト5上に残留トナーが載っている時間帯でもある。現像キャリブレーション及び当該バイアス印加は、各色の現像ユニット26及び感光体ドラム4において同時に行われる。なお、上記の「中間転写ベルト5が2周するまでの一定の時間帯」とは、感光体ドラム4及び一次転写ローラー21のニップ部に位置してトナー像が転写された中間転写ローラー5部分が、トナー像が転写された時点から、2周してニップ部に2度目に戻ってくるまでの期間である。なお、各色の現像ユニット26及び感光体ドラム4のうち、いずれかの色についての現像ユニット26及び感光体ドラム4において現像キャリブレーション及び当該バイアス印加を行う場合もエージング時間帯Δta3の定義は同様である。
【0038】
このように、現像キャリブレーションの期間ΔTAにおいて、バイアスBIが60μAに設定される時間帯を短くすることで、中間転写ベルト5上の残留トナーを良好に除去しつつ、中間転写ベルト5の片寄りを抑制することができる。また、中間転写ユニット20における部品は、バイアスBIを大きくするほど劣化し易いので、バイアスBIが15μAに設定される時間帯を長くしたことにより部品の劣化が抑制される。
【0039】
これに対して従来は、図6(C)に示すように現像キャリブレーションの期間ΔTAの全てを通して、バイアスBIを比較的大きな値である60μAに設定していたので、中間転写ベルト5上の残留トナーを良好に除去することができても、中間転写ベルト5の片寄りが生じていた。
【0040】
なお、ここでは、バイアスBIを比較的低くする第2の値を15μAとしたが、第2の値はこれに限られず、例えば、第1の値よりも低い他の値や、0μAを採用してもよい。以下に示すドラムリフレッシュ、現像リフレッシュ、及びフルキャリブレーション・T/C補正の場合も同様である。
<ドラムリフレッシュ>
【0041】
ドラムリフレッシュを実行するとき、制御部41は、現像部26及びドラムクリーニング部27などを含む画像形成部12を制御して、感光体ドラム4の表面全体にトナー層を形成させ、感光体ドラム4の表面のトナー層をドラムクリーニング部27により除去させて、感光体ドラム4の表面の付着物をトナーと共に回収させる。これにより、感光体ドラム4の表面をリフレッシュさせる。
【0042】
このとき、各色のトナーがそれぞれの感光体ドラム4から中間転写ベルト5へと転写されるので、中間転写ベルト5上の帯電している各色の残留トナーをベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19により除去する必要がある。このため、制御部41は、バイアス印加部37におけるバイアス電源BDによりファーブラシローラー19にバイアス電流を供給させて、中間転写ベルト5とベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19の間にバイアスBIを印加させる。
【0043】
このようなバイアス印加時には、例えば、図7(A)、(B)に示すように、ドラムリフレッシュの期間ΔTBにおいて、各感光体ドラム4が帯電される時間帯を各帯電エージング時間帯Δtb1、tb2、tb3とし、各色のトナーが各感光体ドラム4から中間転写ベルト5に転写される時間帯をトナー吐き出し時間帯Δtbbとすると、制御部41は、最後の帯電エージング時間帯Δtb3にのみ、中間転写ベルト5とファーブラシローラー19の間に印加されるバイアスBIを第1の値である60μAとして大きく設定し、最後の帯電エージング時間帯Δtb3を除く他の各帯電エージング時間帯Δtb1、Δtb2及び各トナー吐き出し時間帯ΔtbbではバイアスBIを第2の値として15μAと小さく設定する。各帯電エージング時間帯Δtb1、Δtb2、Δtb3は、予め設定されたそれぞれの規定長さの時間であって、最後の帯電エージング時間帯Δtb3は、例えば中間転写ベルト5が9周する一定の時間帯である。すなわち、エージング時間帯Δta3は、中間転写ベルト5上に残留トナーが載っている時間帯でもある。トナー吐き出し時間帯Δtbbは、帯電エージング期間の終了時点からの中間転写ベルト5の予め定められた周回移動距離に応じた一定の時間帯である。
【0044】
この場合、制御部41は、ドラムリフレッシュを実行し、帯電エージング時間帯Δtb1の開始時点からの経過時間を計時しつつ、バイアス印加部37におけるバイアス電源BDを制御して、その経過時間に基づき各帯電エージング時間帯Δtb1、Δtb2及び各トナー吐き出し時間帯Δtbbに中間転写ベルト5とファーブラシローラー19の間に印加されるバイアスBIを比較的15μAと小さく設定し、各感光体ドラム4から中間転写ベルト5への各色のトナーの転写が終了した後の最後の帯電エージング時間帯Δtb3にのみバイアスBIを比較的60μAと大きく設定する。
【0045】
従って、各トナー吐き出し時間帯Δtbbにおける各感光体ドラム4から中間転写ベルト5へのそれぞれのトナーの転写が全て終了した後に、最後の帯電エージング時間帯Δtb3で中間転写ベルト5上の各色の残留トナーがファーブラシローラー19により除去されることとなる。
【0046】
これにより、ドラムリフレッシュの期間ΔTBにおいて、バイアスBIが60μAに設定される時間帯を短くして、中間転写ベルト5の片寄りを抑制しながらも、中間転写ベルト5上の残留トナーを良好に除去することができる。また、バイアスBIが15μAに設定される時間帯を長くしたことにより部品の劣化が抑制される。
【0047】
これに対して従来は、図7(C)に示すようにドラムリフレッシュの期間ΔTBを通して、バイアスBIを60μAに設定していたので、中間転写ベルト5上の残留トナーを良好に除去することができても、中間転写ベルト5の片寄りが生じた。
<現像リフレッシュ>
【0048】
現像リフレッシュにおいて、制御部41は、現像部26及びドラムクリーニング部27などを含む画像形成部12を制御して、現像部26における劣化トナーを感光体ドラム4に排出させ、感光体ドラム4の表面の劣化トナーをドラムクリーニング部27により除去させて回収させる。
【0049】
このとき、各色のトナーがそれぞれの感光体ドラム4から中間転写ベルト5へと転写されるので、中間転写ベルト5上の帯電している各色の残留トナーをベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19により除去する必要がある。
【0050】
そこで、図8(A)、(B)に示すように現像リフレッシュの期間ΔTCにおいて、現像部26のエージングが行われる時間帯を各現像エージング時間帯Δtc1、tc2、tc3、tc4とし、各色のトナーが各感光体ドラム4から中間転写ベルト5に転写される時間帯をトナー吐き出し時間帯Δtccとすると、制御部41は、最後の現像エージング時間帯Δtc4にのみ、中間転写ベルト5とファーブラシローラー19の間に印加されるバイアスBIを60μAと大きく設定し、最後の現像エージング時間帯Δtc4を除く他の各現像エージング時間帯Δtc1~Δtc3及び各トナー吐き出し時間帯ΔtccではバイアスBIを15μAと小さく設定する。各現像エージング時間帯Δtc1~Δtc3は、予め設定されたそれぞれの規定長さの時間帯であって、最後の現像エージング時間帯Δtc4が、中間転写ベルト5が2周する一定の時間帯である。トナー吐き出し時間帯Δtccは、現像エージング時間帯の終了時点からの中間転写ベルト5の所定の周回移動距離に応じた一定の時間帯である。
【0051】
この場合、制御部41は、現像リフレッシュを実行し、現像エージング時間帯Δtc1の開始時点からの経過時間を計時しつつ、バイアス印加部37におけるバイアス電源BDを制御して、その経過時間に基づき各現像エージング時間帯Δtc1~Δtc3及び各トナー吐き出し時間帯ΔtccにバイアスBIを15μAと小さく設定し、各色のトナーが各感光体ドラム4から中間転写ベルト5に転写された後の最後の帯電エージング時間帯Δtc4にのみバイアスBIを60μAと大きく設定する。すなわち、最後の帯電エージング時間帯Δtc4は、中間転写ベルト5上に残留トナーが載っている時間帯でもある。
【0052】
従って、各トナー吐き出し時間帯Δtccにおける各感光体ドラム4から中間転写ベルト5へのそれぞれのトナーの転写が全て終了した後に、最後の帯電エージング時間帯Δtc4で中間転写ベルト5上の各色の残留トナーがファーブラシローラー19により除去されることとなる。
【0053】
これにより、現像リフレッシュの期間ΔTCにおいて、バイアスBIが60μAに設定される時間帯を短くして、中間転写ベルト5の片寄りを抑制しながらも、中間転写ベルト5上の残留トナーを良好に除去することができる。また、バイアスBIが15μAに設定される時間帯を長くしたことにより部品の劣化が抑制される。
【0054】
これに対して従来は、図8(C)に示すように現像リフレッシュの期間ΔTCを通して、バイアスBIを60μAに設定していたので、中間転写ベルト5上の残留トナーを良好に除去することができても、中間転写ベルト5の片寄りが生じた。
<フルキャリブレーション・T/C補正>
【0055】
フルキャリブレーションを実行するとき、制御部41は、現像部26及び露光部(図示せず)などを含む画像形成部12を制御して、感光体ドラム4の表面にテストパターンのトナー像を生成させ、このテストパターンのトナー像を中間転写ベルト5に転写させて、センサー(図示せず)により中間転写ベルト5上のテストパターンのトナー像の濃度を検出させる。そして、制御部41は、そのセンサーにより検出されたテストパターンのトナー像の濃度に基づき現像部26の現像ローラーと供給ローラーの間に印加されるバイアスの最適値を算出し、バイアス印加部37における現像部26用のバイアス電源を制御して、該各ローラー間に印加されるバイアスをその最適値に設定する。
【0056】
このとき、各色のテストパターンのトナー像は、それぞれの感光体ドラム4から中間転写ベルト5に転写されるので、中間転写ベルト5上の帯電している各色のトナー像をベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19により除去する必要がある。
【0057】
また、T/C補正を実行するとき、制御部41は、センサー(図示せず)により現像部26に収容されているトナーの濃度(キャリアに対するトナーの比率、いわゆるT/C)を検出させ、この検出されたトナーの濃度が規定の値となるようにトナーをトナーコンテナーから現像部26に補給させる。
【0058】
このT/C補正の実行時には、トナーが感光体ドラム4から中間転写ベルト5へと転写されることはないので、中間転写ベルトをファーブラシローラー19により除去する必要がない。
【0059】
そこで、図9(A)、(B)に示すようにフルキャリブレーション及びT/C補正の期間ΔTDにおいて、フルキャリブレーションの時間帯を時間帯Δtd1とし、T/C補正の時間帯を時間帯Δtd2とすると、フルキャリブレーションの時間帯Δtd1にのみ、中間転写ベルト5とファーブラシローラー19の間に印加されるバイアスBIを第1の値として60μAに大きく設定し、T/C補正の時間帯Δtd2ではバイアスBIを第2の値として15μAと小さく設定している。すなわち、フルキャリブレーションの時間帯Δtd1は、中間転写ベルト5上に残留トナーが載っている時間帯でもある。フルキャリブレーションの時間帯Δtd1及びT/C補正の時間帯Δtd2のいずれも、予め設定された一定の時間帯である。
【0060】
この場合、制御部41は、フルキャリブレーション及びT/C補正を実行し、フルキャリブレーションの時間帯Δtd1の開始時点からの経過時間を計時しつつ、バイアス印加部37におけるバイアス電源BDを制御して、その経過時間に基づきフルキャリブレーションの時間帯Δtd1に中間転写ベルト5とファーブラシローラー19の間に印加されるバイアスBIを60μAと大きく設定し、T/C補正の時間帯Δtd2にバイアスBIを15μAと小さく設定する。
【0061】
これにより、フルキャリブレーション及びT/C補正の期間ΔTDにおいて、バイアスBIが60μAに設定される時間帯を短くすることで、中間転写ベルト5の片寄りを抑制しながらも、中間転写ベルト5上の残留トナーを良好に除去することができる。また、バイアスBIが15μAに設定される時間帯を長くしたことにより部品の劣化が抑制される。
【0062】
これに対して従来は、図9(C)に示すようにフルキャリブレーション及びT/C補正の期間ΔTDを通して、バイアスBIを60μAに設定していたので、中間転写ベルト5上の残留トナーを良好に除去することができても、中間転写ベルト5の片寄りが生じた。
【0063】
図10は、現像キャリブレーション、ドラムリフレッシュ、現像リフレッシュ、フルキャリブレーション別に、本実施形態における中間転写ベルト5とファーブラシローラー19の間に印加されるバイアスBIの印加量及び印加時間と、従来のバイアスBIの印加量及び印加時間を整理して示す表である。この図10に示す表からも明らかなように、本実施形態では、従来と比較すると、比較的高い値からなる60μAのバイアスBIの印加時間が短くなっている。
【0064】
図11(A)は、同一構成の中間転写ユニット20を3組用意して、本実施形態のようにバイアスBIの印加量及び印加時間を設定して、現像リフレッシュ、ドラムリフレッシュ、現像リフレッシュ、及びフルキャリブレーション・T/C補正の各動作を1回ずつ連続して行った場合における、中間転写ベルト5の片寄りに対応する距離、及び駆動ローラー23やテンションローラー24の端部に対する中間転写ベルト5の乗り上げの有無を、実験で調べた結果を示す表である。図11(B)は、従来のようにバイアスBIの印加量及び印加時間を設定した場合とで、中間転写ベルト5の片寄りに対応する距離、及び駆動ローラー23やテンションローラー24の端部に対する中間転写ベルト5の乗り上げの有無を、実験で調べた結果を示す図表である。
【0065】
上述したように、中間転写ベルト5は、駆動ローラー23、テンションローラー24、及びバックアップローラー25の複数のローラーに架け渡され、中間転写ベルト5とベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19の間のバイアスBIの印加量に応じて、中間転写ベルト5はその周回方向と直交する方向に移動する。中間転写ベルト5の当該方向への移動を規制するために、駆動ローラー23、テンションローラー24、及びバックアップローラー25の少なくとも1つの周面に、定位置に掛け渡された中間転写ベルト5のベルト幅方向において、中間転写ベルト5の一端部から例えば10.5mm離れた位置と、端部から例えば10.5mm離れた位置となるローラー周面上に、径方向に突出する凸部(ベルト移動規制部)を設けるものとする。
【0066】
このとき、図11(A)(B)に示す表からも明らかなように、本実施形態では、従来と比較すると、中間転写ベルト5が移動して片寄る距離が短く、また上記凸部に対する中間転写ベルト5の乗り上げが無い。
【0067】
なお、上記実施形態では、現像キャリブレーション、ドラムリフレッシュ、現像リフレッシュ、ルキャリブレーション・T/C補正を例に挙げているが、他の種類のキャリブレーション又はメンテナンスのときにも本発明を適用することが可能である。
【0068】
また、中間転写ベルト5とベルトクリーニング部18のファーブラシローラー19の間に印加されるバイアスBIとしてのとしての第1の値及び第2の値は、第1の値60μA及び第2の値15μAに限定されるものでなく、第1の値>第2の値の関係が保たれることを条件に、適宜変更することができる。更に、キャリブレーション又はメンテナンスの種類に応じて異なる第1の値及び第2の値を設定してもよい。
<変形例1>
【0069】
変形例1では、制御部41は、中間転写ベルト5上のトナーがファーブラシローラー19に接する時間帯を判定し、バイアス印加部37におけるバイアス電源BIを制御して、その判定した時間帯にのみバイアスBIの印加量を大きくする。つまり、上記規定の時間帯を、中間転写ベルト5に残留トナーが生じた状態となる時間帯のうち、中間転写ベルト5上のトナーがファーブラシローラー19に接する時間帯まで限定した時間帯とする。
【0070】
例えば、フルキャリブレーションでは、制御部41は、テストパターンを示す静電潜像を感光体ドラム4の表面に形成させ、現像部26によりテストパターンの静電潜像を現像させて、感光体ドラム4の表面にテストパターンのトナー像を生成させ、このテストパターンのトナー像を中間転写ベルト5に転写させる。制御部41は、そのようなテストパターンのトナー像の生成及び転写のプロセスで、テストパターンのトナー像が感光体ドラム4から中間転写ベルト5へと転写されたタイミングを判定し、この判定したタイミング、テストパターンのトナー像のサイズ、中間転写ベルト5の周回移動速度、及び感光体ドラム4の位置からファーブラシローラー19までの中間転写ベルト5の周回移動距離に基づき、中間転写ベルト5上のトナー像がファーブラシローラー19に接する時間帯を判定する。そして、制御部41は、バイアス印加部37におけるバイアス電源BIを制御して、その判定した時間帯にのみバイアスBIの印加量を大きくする。
【0071】
また、ファーブラシローラー19よりも中間転写ベルト5の周回移動方向の上流側に、中間転写ベルト5上のトナー像を検出するセンサーを設けておき、このセンサーの検出出力に基づき中間転写ベルト5上のトナー像がファーブラシローラー19に接する時間帯を判定してもよい。この場合、制御部41は、センサーの検出出力に基づきトナー像が検出されたタイミングを判定し、この判定したタイミング、トナー像のサイズ、中間転写ベルト5の周回移動速度、及びセンサーの位置からファーブラシローラー19までの中間転写ベルト5の周回移動距離に基づき、中間転写ベルト5上のトナー像がファーブラシローラー19に接する時間帯を判定し、バイアス印加部37におけるバイアス電源BIを制御して、その判定した時間帯にのみバイアスBIの印加量を大きくする。
<変形例2>
【0072】
変形例2では、制御部41は、バイアス印加部37におけるバイアス電源BIを制御して、中間転写ベルト5に残留トナーが生じた状態となる規定の時間帯にのみ、中間転写ベルト5上の残留トナーの濃度が高くなるほどバイアスBIの印加量に応じて大きい値に設定する。
【0073】
例えば、フルキャリブレーションにおいては、感光体ドラム4の表面にテストパターンのトナー像が生成され、このテストパターンのトナー像が中間転写ベルト5に転写され、センサー(図示せず)により中間転写ベルト5上のテストパターンのトナー像の濃度が検出される。制御部41は、バイアス印加部37におけるバイアス電源BIを制御して、その検出された濃度が高くなるほどバイアスBIの印加量に応じて大きい値に設定する。
【0074】
また、制御部41は、現像部26における現像ローラーと供給ローラーの間に印加されるバイアスなどに基づき中間転写ベルト5上のトナーの濃度を判定することができる場合に、バイアス印加部37におけるバイアス電源BIを制御して、中間転写ベルト5に残留トナーが生じた状態となる規定の時間帯にのみ、その判定した濃度が高くなるほどバイアスBIの印加量に応じて大きい値に設定するようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、本発明に係る画像形成装置の一実施形態として画像形成装置(カラー複合機)を用いて説明しているが、これは一例に過ぎず、他の電子機器、例えば、プリンター、コピー機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置でもよい。
【0076】
更に、図1乃至図11を用いて説明した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0077】
4 感光体ドラム
5 中間転写ベルト
10 画像形成装置
11 画像読取部
12 画像形成部
20 中間転写ユニット
21 1次転写ローラー
22 2次転写ローラー
23 駆動ローラー
24 テンションローラー
25 バックアップローラー
31 表示部
32 操作部
33 タッチパネル
37 バイアス印加部
38 記憶部
39 制御ユニット
41 制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11