(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】磁気式リニアセンサ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
G01D5/245 110A
G01D5/245 E
(21)【出願番号】P 2019070439
(22)【出願日】2019-04-02
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】清水 哲也
(72)【発明者】
【氏名】木戸 崚平
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219547(JP,A)
【文献】特開平11-223505(JP,A)
【文献】特開2006-17533(JP,A)
【文献】特開2005-156348(JP,A)
【文献】特開平9-210611(JP,A)
【文献】特開2002-148002(JP,A)
【文献】特開2008-286667(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0174396(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位検出方向における測定対象物の変位を検出する磁気式リニアセンサであって、
リニアスケールと、
前記リニアスケールに対して前記変位検出方向で相対変位可能に設けられたセンサヘッドと、
を備え、
前記センサヘッドは、前記変位検出方向と垂直な方向である第1方向において、前記リニアスケールの一方側に設けられ、
前記リニアスケールは、前記センサヘッドに対面する側に配置される第1磁気応答部を備え、
前記第1磁気応答部は、前記センサヘッドに対する磁気的な影響の変化が、前記変位検出方向で第1ピッチごとに交互に繰り返し現れるように構成され、
前記センサヘッドは、
少なくとも1つの絶縁板から構成されたベース基板部と、
前記絶縁板に配置され、前記第1ピッチに基づく第2ピッチで前記変位検出方向に並べられた複数の検出部と、
を備え、
それぞれの前記検出部は、
第1導電パターンと、
前記第1導電パターンと前記絶縁板の厚み方向で異なる位置に形成された第2導電パターンと、
前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとを電気的に導通するスルーホールと、
を備え、
前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンは、前記変位検出方向及び前記第1方向の何れとも直交する第2方向に細長い領域にコイル要素を並べて配置するように形成され、
前記第1導電パターンは、前記コイル要素を構成する複数の第1単位要素を接続した一筆書き形状を有し、
前記第2導電パターンは、前記コイル要素を構成する複数の第2単位要素を接続した一筆書き形状を有し、
前記第1単位要素と前記第2単位要素は、前記ベース基板部の厚み方向で見たとき、閉じた形状の前記コイル要素を構成することを特徴とする磁気式リニアセンサ。
【請求項2】
変位検出方向における測定対象物の変位を検出する磁気式リニアセンサであって、
リニアスケールと、
前記リニアスケールに対して前記変位検出方向で相対変位可能に設けられたセンサヘッドと、
を備え、
前記センサヘッドは、前記変位検出方向と垂直な方向である第1方向において、前記リニアスケールの一方側に設けられ、
前記リニアスケールは、前記センサヘッドに対面する側に配置される第1磁気応答部を備え、
前記第1磁気応答部は、前記センサヘッドに対する磁気的な影響の変化が、前記変位検出方向で第1ピッチごとに交互に繰り返し現れるように構成され、
前記センサヘッドは、
少なくとも1つの絶縁板から構成されたベース基板部と、
前記絶縁板に配置され、前記第1ピッチに基づく第2ピッチで前記変位検出方向に並べられた複数の検出部と、
を備え、
それぞれの前記検出部は、
第1導電パターンと、
前記第1導電パターンと前記絶縁板の厚み方向で異なる位置に形成された第2導電パターンと、
前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとを電気的に導通するスルーホールと、
を備え、
前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンは、前記変位検出方向及び前記第1方向の何れとも直交する第2方向に細長い領域にコイル要素を並べて配置するように形成され、
前記第1導電パターンは、前記コイル要素を構成する複数の第1単位要素を接続した一筆書き形状を有し、
前記第2導電パターンは、前記コイル要素を構成する複数の第2単位要素を接続した一筆書き形状を有し、
前記第1単位要素と前記第2単位要素は、前記ベース基板部の厚み方向で見たとき、閉じた形状の前記コイル要素を構成し、
前記磁気式リニアセンサは、前記第1導電パターンと前記第2導電パターンと前記スルーホールとから構成された検出セットを複数備え、
複数の前記検出部のそれぞれは、前記ベース基板部の厚み方向に積層した複数の前記検出セットを備えることを特徴とする磁気式リニアセンサ。
【請求項3】
変位検出方向における測定対象物の変位を検出する磁気式リニアセンサであって、
リニアスケールと、
前記リニアスケールに対して前記変位検出方向で相対変位可能に設けられたセンサヘッドと、
を備え、
前記センサヘッドは、前記変位検出方向と垂直な方向である第1方向において、前記リニアスケールの一方側に設けられ、
前記リニアスケールは、前記センサヘッドに対面する側に配置される第1磁気応答部を備え、
前記第1磁気応答部は、前記センサヘッドに対する磁気的な影響の変化が、前記変位検出方向で第1ピッチごとに交互に繰り返し現れるように構成され、
前記センサヘッドは、
少なくとも1つの絶縁板から構成されたベース基板部と、
前記絶縁板に配置され、前記第1ピッチに基づく第2ピッチで前記変位検出方向に並べられた複数の検出部と、
を備え、
それぞれの前記検出部は、
第1導電パターンと、
前記第1導電パターンと前記絶縁板の厚み方向で異なる位置に形成された第2導電パターンと、
前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとを電気的に導通するスルーホールと、
を備え、
前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンは、前記変位検出方向及び前記第1方向の何れとも直交する第2方向に細長い領域にコイル要素を並べて配置するように形成され、
前記第1導電パターンは、前記コイル要素を構成する複数の第1単位要素を接続した一筆書き形状を有し、
前記第2導電パターンは、前記コイル要素を構成する複数の第2単位要素を接続した一筆書き形状を有し、
前記第1単位要素と前記第2単位要素は、前記ベース基板部の厚み方向で見たとき、閉じた形状の前記コイル要素を構成し、
前記磁気式リニアセンサは、前記第1導電パターンと前記第2導電パターンと前記スルーホールとから構成された検出セットを複数備え、
複数の前記検出部のそれぞれは、前記ベース基板部の厚み方向に積層した複数の前記検出セットを備え、
複数の前記検出セットは、
交流磁界を発生する1次コイルを構成する第1検出セットと、
交流磁界によって誘起される交流信号を出力する2次コイルを構成する第2検出セットと、
を含み、
前記1次コイルと前記2次コイルは、前記ベース基板部の厚み方向で対面することを特徴とする磁気式リニアセンサ。
【請求項4】
変位検出方向における測定対象物の変位を検出する磁気式リニアセンサであって、
リニアスケールと、
前記リニアスケールに対して前記変位検出方向で相対変位可能に設けられたセンサヘッドと、
を備え、
前記センサヘッドは、前記変位検出方向と垂直な方向である第1方向において、前記リニアスケールの一方側に設けられ、
前記リニアスケールは、前記センサヘッドに対面する側に配置される第1磁気応答部を備え、
前記第1磁気応答部は、前記センサヘッドに対する磁気的な影響の変化が、前記変位検出方向で第1ピッチごとに交互に繰り返し現れるように構成され、
前記センサヘッドは、
少なくとも1つの絶縁板から構成されたベース基板部と、
前記絶縁板に配置され、前記第1ピッチに基づく第2ピッチで前記変位検出方向に並べられた複数の検出部と、
を備え、
それぞれの前記検出部は、
第1導電パターンと、
前記第1導電パターンと前記絶縁板の厚み方向で異なる位置に形成された第2導電パターンと、
前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとを電気的に導通するスルーホールと、
を備え、
前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンは、前記変位検出方向及び前記第1方向の何れとも直交する第2方向に細長い領域にコイル要素を並べて配置するように形成され、
前記第1導電パターンは、前記コイル要素を構成する複数の第1単位要素を接続した一筆書き形状を有し、
前記第2導電パターンは、前記コイル要素を構成する複数の第2単位要素を接続した一筆書き形状を有し、
前記第1単位要素と前記第2単位要素は、前記ベース基板部の厚み方向で見たとき、閉じた形状の前記コイル要素を構成し、
前記磁気式リニアセンサは、
交流信号を出力する第1検出部と、
前記第1検出部と位相が90°異なる交流信号を出力する第2検出部と、
前記第1検出部と位相が180°異なる交流信号を出力する第3検出部と、
前記第1検出部と位相が270°異なる交流信号を出力する第4検出部と、
を含み、
前記第1検出部と前記第3検出部は、前記変位検出方向で互いに隣接して設けられ、
前記第2検出部と前記第4検出部は、前記変位検出方向で互いに隣接して設けられることを特徴とする磁気式リニアセンサ。
【請求項5】
変位検出方向における測定対象物の変位を検出する磁気式リニアセンサであって、
リニアスケールと、
前記リニアスケールに対して前記変位検出方向で相対変位可能に設けられたセンサヘッドと、
を備え、
前記センサヘッドは、前記変位検出方向と垂直な方向である第1方向において、前記リニアスケールの一方側に設けられ、
前記リニアスケールは、前記センサヘッドに対面する側に配置される第1磁気応答部を備え、
前記第1磁気応答部は、前記センサヘッドに対する磁気的な影響の変化が、前記変位検出方向で第1ピッチごとに交互に繰り返し現れるように構成され、
前記センサヘッドは、
少なくとも1つの絶縁板から構成されたベース基板部と、
前記絶縁板に配置され、前記第1ピッチに基づく第2ピッチで前記変位検出方向に並べられた複数の検出部と、
を備え、
それぞれの前記検出部は、
第1導電パターンと、
前記第1導電パターンと前記絶縁板の厚み方向で異なる位置に形成された第2導電パターンと、
前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとを電気的に導通するスルーホールと、
を備え、
前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンは、前記変位検出方向及び前記第1方向の何れとも直交する第2方向に細長い領域にコイル要素を並べて配置するように形成され、
前記第1導電パターンは、前記コイル要素を構成する複数の第1単位要素を接続した一筆書き形状を有し、
前記第2導電パターンは、前記コイル要素を構成する複数の第2単位要素を接続した一筆書き形状を有し、
前記第1単位要素と前記第2単位要素は、前記ベース基板部の厚み方向で見たとき、閉じた形状の前記コイル要素を構成し、
前記第1導電パターンは、複数の前記第1単位要素が前記第2方向に並べられた第1要素列を、前記変位検出方向に複数並べて構成され、
前記第2導電パターンは、複数の前記第2単位要素が前記第2方向に並べられた第2要素列を、前記変位検出方向に複数並べて構成され、
前記磁気式リニアセンサは、
交流信号を出力する第1検出部と、
前記第1検出部と位相が90°異なる交流信号を出力する第2検出部と、
前記第1検出部と位相が180°異なる交流信号を出力する第3検出部と、
前記第1検出部と位相が270°異なる交流信号を出力する第4検出部と、
を含み、
前記第1検出部が備える前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンを構成する前記第1要素列及び前記第2要素列から構成された第1コイル要素列と、
前記第3検出部が備える前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンを構成する前記第1要素列及び前記第2要素列から構成された第3コイル要素列と、
が前記変位検出方向に交互に並べられており、
前記第2検出部が備える前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンを構成する前記第1要素列及び前記第2要素列から構成された第2コイル要素列と、
前記第4検出部が備える前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンを構成する前記第1要素列及び前記第2要素列から構成された第4コイル要素列と、
が前記変位検出方向に交互に並べられていることを特徴とする磁気式リニアセンサ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の磁気式リニアセンサであって、
前記第1導電パターンと前記第2導電パターンと前記スルーホールとから構成された検出セットを複数備え、
複数の前記検出セットは、
交流磁界を発生する1次コイルを構成する第1検出セットと、
交流磁界によって誘起される交流信号を出力する2次コイルを構成する第2検出セットと、
を含み、
前記ベース基板部の厚み方向において、前記1次コイルを構成する前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとの間に、前記2次コイルを構成する前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとが配置されていることを特徴とする磁気式リニアセンサ。
【請求項7】
請求項1から
3までの何れか一項に記載の磁気式リニアセンサであって、
前記複数の検出部は、
交流信号を出力する第1検出部と、
前記第1検出部と位相が90°異なる交流信号を出力する第2検出部と、
前記第1検出部と位相が180°異なる交流信号を出力する第3検出部と、
前記第1検出部と位相が270°異なる交流信号を出力する第4検出部と、
を含み、
前記第1検出部、前記第2検出部、前記第3検出部、及び前記第4検出部は、前記変位検出方向に順に並べられて設けられていることを特徴とする磁気式リニアセンサ。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の磁気式リニアセンサであって、
前記第1検出部、前記第2検出部、前記第3検出部、及び前記第4検出部から出力された信号を処理する信号処理部を備え、
前記信号処理部は、
前記第1検出部と前記第3検出部の出力の差分に相当する第1交流信号と、
前記第2検出部と前記第4検出部の出力の差分に相当する第2交流信号と、
に基づいて、前記測定対象物の変位を取得することを特徴とする磁気式リニアセンサ。
【請求項9】
請求項1から5までの何れか一項に記載の磁気式リニアセンサであって、
前記リニアスケールは、第2磁気応答部を備え、
前記第2磁気応答部は、前記センサヘッドに対する磁気的な影響の変化が、前記変位検出方向で前記第1ピッチとは異なる磁気変化ピッチごとに交互に繰り返し現れるように構成され、
前記センサヘッドは、複数の磁気検出部を備え、
複数の前記磁気検出部は、前記磁気変化ピッチに基づくピッチで前記変位検出方向に並べられていることを特徴とする磁気式リニアセンサ。
【請求項10】
請求項1から5までの何れか一項に記載の磁気式リニアセンサであって、
前記リニアスケールは、前記第1方向において、前記センサヘッドを挟むように、当該センサヘッドの両側のそれぞれに設けられていることを特徴とする磁気式リニアセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の変位を検出する磁気式リニアセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁誘導現象を利用して測定対象物の変位を測定する変位センサが知られている。特許文献1は、この種の変位センサを開示する。
【0003】
特許文献1の電磁誘導型変位センサは、円弧状の第1導電パターンを同心円状に複数形成し、中心に孔を有する第1シートと、第1導電パターンを相補する第2導電パターンを複数形成し、中心に孔を有する第2シートと、から構成されたペアシートを複数積層した構成となっている。孔の積層によって形成された中空部に磁性体が挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より大きい検出信号を得るために、上記特許文献1の構成においては、1つのペアシートにおいて、第1導電パターンで形成される同心円の数を増やすことが考えられる。しかし、この場合、第1導電パターンの径方向におけるサイズが増大してしまう。積層されるペアシートの数を増やすことも考えられるが、この場合、軸方向におけるサイズが増大してしまう。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、磁気式リニアセンサにおいて、検出精度の向上と小型化を同時に実現することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の磁気式リニアセンサが提供される。即ち、この磁気式リニアセンサは、変位検出方向における測定対象物の変位を検出する。前記磁気式リニアセンサは、リニアスケールと、センサヘッドと、を備える。前記センサヘッドは、前記リニアスケールに対して前記変位検出方向で相対変位可能に設けられる。前記センサヘッドは、前記変位検出方向と垂直な方向である第1方向において、前記リニアスケールの一方側に設けられる。前記リニアスケールは、前記センサヘッドに対面する側に配置される第1磁気応答部を備える。前記第1磁気応答部は、前記センサヘッドに対する磁気的な影響の変化が、前記変位検出方向で第1ピッチごとに交互に繰り返し現れるように構成される。前記センサヘッドは、ベース基板部と、複数の検出部と、を備える。前記ベース基板部は、少なくとも1つの絶縁板から構成される。前記検出部は、前記絶縁板に配置され、前記第1ピッチに基づく第2ピッチで前記変位検出方向に並べられる。それぞれの前記検出部は、第1導電パターンと、第2導電パターンと、スルーホールと、を備える。前記第2導電パターンは、前記第1導電パターンと前記絶縁板の厚み方向で異なる位置に形成される。前記スルーホールは、前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとを電気的に導通する。前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンは、前記変位検出方向及び前記第1方向の何れとも直交する第2方向に細長い領域にコイル要素を並べて配置するように形成される。前記第1導電パターンは、前記コイル要素を構成する複数の第1単位要素を接続した一筆書き形状を有する。前記第2導電パターンは、前記コイル要素を構成する複数の第2単位要素を接続した一筆書き形状を有する。前記第1単位要素と前記第2単位要素は、前記ベース基板部の厚み方向で見たとき、閉じた形状の前記コイル要素を構成する。
【0009】
これにより、精密加工が容易な導電パターンによって検出部が構成されるので、センサヘッドにおける検出部の配置ピッチを小さくすることができる。従って、リニアセンサの検出ピッチである第1ピッチを小さくすることができ、リニアセンサの小型化を実現できるとともに、検出精度を向上することができる。そして、第1パターンと第2パターンから複数のコイル要素を構成することができ、大きな検出信号を得ることができる。特に、第2方向に細長い領域にコイル要素を並べるレイアウトにより、コイル要素の数を多く確保することが容易である。
【0010】
前記の磁気式リニアセンサにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この磁気式リニアセンサは、前記第1導電パターンと前記第2導電パターンと前記スルーホールとから構成された検出セットを複数備える。複数の前記検出部のそれぞれは、前記ベース基板部の厚み方向に積層した複数の前記検出セットを備える。
【0011】
これにより、検出部を多層構造とすることで、コンパクトな構成を実現することができる。
【0012】
前記の磁気式リニアセンサにおいては、以下の構成とすることができる。即ち、複数の前記検出セットは、第1検出セットと、第2検出セットと、を含む。前記第1検出セットは、交流磁界を発生する1次コイルを構成する。前記第2検出セットは、交流磁界によって誘起される交流信号を出力する2次コイルを構成する。前記1次コイルと前記2次コイルは、前記ベース基板部の厚み方向で対面する。
【0013】
これにより、交流磁界を発生する1次コイルと、交流信号を出力する2次コイルと、を全体としてコンパクトに構成することができる。また、1次コイルと2次コイルが近接して配置されることで、感度が良好な構成とすることができる。
【0014】
前記の磁気式リニアセンサにおいては、以下の構成とすることができる。即ち、前記第1導電パターンと前記第2導電パターンと前記スルーホールとから構成された検出セットを複数備える。複数の前記検出セットは、第1検出セットと、第2検出セットと、を含む。前記第1検出セットは、交流磁界を発生する1次コイルを構成する。前記第2検出セットは、交流磁界によって誘起される交流信号を出力する2次コイルを構成する。前記ベース基板部の厚み方向において、前記1次コイルを構成する前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとの間に、前記2次コイルを構成する前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとが配置されている。
【0015】
これにより、1次コイルと2次コイルのコンパクトな配置を実現できる。
【0016】
前記の磁気式リニアセンサにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1導電パターンは、複数の前記第1単位要素が前記第2方向に並べられた第1要素列を、前記変位検出方向に複数並べて構成される。前記第2導電パターンは、複数の前記第2単位要素が前記第2方向に並べられた第2要素列を、前記変位検出方向に複数並べて構成される。
【0017】
これにより、コイル要素のマトリクス配置を容易に実現できる。
【0018】
前記の磁気式リニアセンサにおいては、以下の構成とすることができる。即ち、前記複数の検出部は、第1検出部と、第2検出部と、第3検出部と、第4検出部と、を含む。前記第1検出部は、交流信号を出力する。前記第2検出部は、前記第1検出部と位相が90°異なる交流信号を出力する。前記第3検出部は、前記第1検出部と位相が180°異なる交流信号を出力する。前記第4検出部は、前記第1検出部と位相が270°異なる交流信号を出力する。前記第1検出部、前記第2検出部、前記第3検出部、及び前記第4検出部は、前記変位検出方向に順に並べられて設けられている。
【0019】
これにより、複数の検出部を全体として簡素に構成することができる。
【0020】
前記の磁気式リニアセンサにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、磁気式リニアセンサは、第1検出部と、第2検出部と、第3検出部と、第4検出部と、を含む。前記第1検出部は、交流信号を出力する。前記第2検出部は、前記第1検出部と位相が90°異なる交流信号を出力する。前記第3検出部は、前記第1検出部と位相が180°異なる交流信号を出力する。前記第4検出部は、前記第1検出部と位相が270°異なる交流信号を出力する。前記第1検出部と前記第3検出部は、前記変位検出方向で互いに隣接して設けられる。前記第2検出部と前記第4検出部は、前記変位検出方向で互いに隣接して設けられる。
【0021】
これにより、例えばレイアウトの物理的な限界によって検出部の間隔を小さくすることが難しくても、第1ピッチを小さくすることが容易になる。従って、検出精度を高めることができる。
【0022】
前記の磁気式リニアセンサにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、磁気式リニアセンサは、第1検出部と、第2検出部と、第3検出部と、第4検出部と、を含む。前記第1検出部は、交流信号を出力する。前記第2検出部は、前記第1検出部と位相が90°異なる交流信号を出力する。前記第3検出部は、前記第1検出部と位相が180°異なる交流信号を出力する。前記第4検出部は、前記第1検出部と位相が270°異なる交流信号を出力する。第1コイル要素列と、第3コイル要素列と、が前記変位検出方向に交互に並べられている。前記第1コイル要素列は、前記第1検出部が備える前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンを構成する前記第1要素列及び前記第2要素列から構成される。前記第3コイル要素列は、前記第3検出部が備える前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンを構成する前記第1要素列及び前記第2要素列から構成される。第2コイル要素列と、第4コイル要素列と、が前記変位検出方向に交互に並べられている。前記第2コイル要素列は、前記第2検出部が備える前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンを構成する前記第1要素列及び前記第2要素列から構成される。前記第4コイル要素列は、前記第4検出部が備える前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンを構成する前記第1要素列及び前記第2要素列から構成される。
【0023】
これにより、例えばレイアウトの物理的な限界によって検出部の間隔を小さくすることが難しくても、第1ピッチを小さくすることが容易になる。従って、検出精度を高めることができる。
【0024】
前記の磁気式リニアセンサにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、磁気式リニアセンサは、前記第1検出部、前記第2検出部、前記第3検出部、及び前記第4検出部から出力された信号を処理する信号処理部を備える。前記信号処理部は、第1交流信号と、第2交流信号と、に基づいて、前記測定対象物の変位を取得する。前記第1交流信号は、前記第1検出部と前記第3検出部の出力の差分に相当する。前記第2交流信号は、前記第2検出部と前記第4検出部の出力の差分に相当する。
【0025】
これにより、第1ピッチ内における測定対象物の変位を精度良く検出することができる。
【0026】
前記の磁気式リニアセンサにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記リニアスケールは、第2磁気応答部を備える。前記第2磁気応答部は、前記センサヘッドに対する磁気的な影響の変化が、前記変位検出方向で前記第1ピッチとは異なる磁気変化ピッチごとに交互に繰り返し現れるように構成される。前記センサヘッドは、複数の磁気検出部を備える。複数の前記磁気検出部は、前記磁気変化ピッチに基づくピッチで前記変位検出方向に並べられている。
【0027】
これにより、互いに異なるピッチで磁気的な影響が変化する2つの磁気応答部を用いて、測定対象物の位置をより適切に得ることができる。
【0028】
前記の磁気式リニアセンサにおいては、前記リニアスケールは、前記第1方向において、前記センサヘッドを挟むように、当該センサヘッドの両側のそれぞれに設けられていることが好ましい。
【0029】
これにより、より大きな検出信号を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る磁気式リニアセンサの構成を示す斜視図。
【
図2】磁気検出ヘッドの構成を模式的に示す側面図。
【
図3】第1導電パターン及び第2導電パターンの対応関係を説明する図。
【
図4】第1導電パターン及び第2導電パターンの形状を示す斜視図。
【
図6】磁気式リニアセンサの構成を示すブロック図。
【
図7】第1変形例の磁気検出ヘッドの構成を示す正面図。
【
図8】第2変形例の磁気検出ヘッドの構成を示す正面図。
【
図9】第2実施形態の磁気式リニアセンサを示す斜視図。
【
図10】変形例のプリント基板の構成を模式的に示す側面図。
【
図11】変形例の第1導電パターン及び第2導電パターンの構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る磁気式リニアセンサ100の構成を示す斜視図である。
【0032】
図1に示す磁気式リニアセンサ100は、測定対象物の所定の方向での変位を検出するために用いられる。以下の説明では、測定対象物の変位が検出される方向を変位検出方向と呼ぶことがある。
【0033】
磁気式リニアセンサ100は、主として、スケール(リニアスケール)1と、磁気検出ヘッド(センサヘッド)2と、を備える。
【0034】
スケール1及び磁気検出ヘッド2のうち何れかが、測定対象物に取り付けられる。本実施形態では、スケール1が図略の固定部材に取り付けられ、磁気検出ヘッド2が、測定対象物である図略の可動部材に取り付けられている。可動部材は、変位検出方向と平行な経路に沿って直線的に移動可能である。
【0035】
ただし、測定対象物である可動部材にスケール1が取り付けられ、固定部材に磁気検出ヘッド2が取り付けられても良い。更に、スケール1と磁気検出ヘッド2の両方が、互いに相対変位する可動部材にそれぞれ取り付けられても良い。この場合、磁気式リニアセンサ100は、測定対象物の相対変位を検出する。
【0036】
スケール1は、
図1に示すように、細長いブロック状に形成される。スケール1は、測定対象物が当該スケール1の長手方向における変位を検出するための目盛として用いられる。スケール1は、可動部材の移動に伴う磁気検出ヘッド2の移動ストロークを含むように、当該移動ストロークと平行な方向に細長く形成されている。
【0037】
スケール1は、細長い矩形板状に形成されている。スケール1の長手方向は変位検出方向と一致している。板状のスケール1の厚み方向及び幅方向は、何れも変位検出方向と直交している。以下では、スケール1の長手方向をスケール長手方向と呼び、厚み方向をスケール厚み方向と呼び、幅方向をスケール幅方向と呼ぶことがある。スケール厚み方向は第1方向に相当し、スケール幅方向は第2方向に相当する。
【0038】
スケール1は、ベース部11と、磁気応答部(第1磁気応答部)12と、を備える。
【0039】
ベース部11は、例えば、顕著な磁性を有しない金属、又は、磁性を有しないプラスチック等の材料からなる細長い板状部材として構成されている。
【0040】
磁気応答部12は、
図1に示すように、ベース部11の厚み方向一方側の面に設けられている。磁気応答部12は、ベース部11の長手方向に多数並べて固定された強磁性部13から構成される。それぞれの強磁性部13は、スケール幅方向に延びる細長い板状に形成されている。
【0041】
強磁性部13は、例えば、強磁性を有する金属等から構成される。ただし、強磁性部13は、板状に限定されず、例えば直方体、棒状等に形成することもできる。
【0042】
強磁性部13は、予め定められた第1ピッチC1毎に、スケール1の長手方向に並べて設けられている。強磁性部13は所定の間隔を形成しながら並べて配置されているので、互いに隣接する2つの強磁性部13の間には、磁性がない(又は、弱い)部分が形成される。従って、磁気応答部12においては、スケール1の長手方向で第1ピッチC1毎に、磁気応答性の有無又は強弱が交互に繰返し現れる。
【0043】
磁気検出ヘッド2は、
図1に示すように、磁気応答部12と対面するように、スケール厚み方向における当該スケール1の一方側に設けられている。磁気検出ヘッド2は、スケール厚み方向にスケール1と所定の間隔をあけて配置される。
【0044】
磁気検出ヘッド2は、主として、ケース20に収容されたプリント基板21を備える。プリント基板21に形成された後述の導電パターンには、磁気応答部12で強められた磁界によって誘起された誘導電流が流れる。磁気検出ヘッド2は、この誘導電流に基づく電気信号(例えば電圧信号)を検出することができる。
【0045】
本実施形態のプリント基板21は、
図1に示すように、その厚み方向がスケール厚み方向と一致するように設けられている。プリント基板21は、例えば、
図2に示すように、3つの絶縁板22aと、4つの導体層と、が厚み方向に交互に積層された4層基板から構成される。
【0046】
信号検出の観点から見れば、プリント基板21は、ベース基板部(絶縁基板)22と、複数の信号出力部(検出部)6と、から構成される。ベース基板部22は、上記3つの絶縁板22aから構成される。
【0047】
各信号出力部6は、上記導体層に形成された第1導電パターン3及び第2導電パターン4と、第1導電パターン3と第2導電パターン4とを電気的に導通するスルーホール5と、を備える。以下の説明では、導体層のそれぞれを特定するために、スケール1から遠い側から順に、第1導体層21a、第2導体層21b、第3導体層21c、及び第4導体層21dと呼ぶことがある。
【0048】
第1導電パターン3は、
図2に示すように、ベース基板部22の厚み方向一方側に位置する第1導体層21aに形成されている。具体的には、第1導電パターン3は、第1導体層21aを構成する銅箔等からなる導体を、パターンエッチング等により所定の形状に形成することによって構成されている。
【0049】
第1導電パターン3は、
図1に示すように、スケール幅方向に細長い領域に配置されている。第1導電パターン3は、
図3から
図5までに示すように、複数の第1単位要素30から構成された一筆書き形状を有する。
【0050】
それぞれの第1単位要素30は、半円孤状に形成されている。第1単位要素30は、スケール幅方向に細長い領域に、p×qのマトリクス状に並べて配置されている。
図3には、p=38、q=3の例が示されている。全ての第1単位要素30の径は同一である。第1単位要素30は、行方向にも列方向にも等間隔で並べて配置される。
【0051】
スケール幅方向の端部に位置する第1単位要素30を除いて考えると、スケール幅方向で互いに隣接する任意の2つの第1単位要素30に着目したとき、この2つの第1単位要素30は互いに反転した形状を有する。言い換えれば、スケール幅方向での第1単位要素30の並びに着目したとき、それぞれの第1単位要素30に相当する半円孤は、1つ毎に位相が180°ずつ交互に変化している。それぞれの第1単位要素30において、半円弧のパターン線の両端部は、当該半円弧の中心に対して、スケール幅方向の両側に位置している。
【0052】
本実施形態の第1導電パターン3においては、多数の第1単位要素30の全てが、隣接する他の第1単位要素30と一体的に接続される。原則として、第1単位要素30は、スケール幅方向で隣り合う第1単位要素30と接続される。上述したように、スケール幅方向で隣り合う2つの第1単位要素30は互いに反転して配置されているので、これらが互いに接続されると、2つの第1単位要素30は全体としてS字状となる。
【0053】
ただし、スケール幅方向の端部に位置する第1単位要素30は、例外的に、変位検出方向で隣接する第1単位要素30と接続される。
【0054】
スケール幅方向での第1単位要素30の並びに着目すると、第1導電パターン3のパターン線は、S字を繰り返すようにして第1単位要素30を数珠繋ぎに次々に接続しながら、スケール幅方向の一側の端部から反対側の端部に到達する。このように、細かい湾曲部分の繰返しを含んでいるが全体としてスケール幅方向に細長いパターン線が形成されている。
【0055】
第1導電パターン3は、このようにスケール幅方向に延びるパターン線が、変位検出方向に3つ配置されることで構成されている。3つのパターン線は、実質的に互いに平行に向けられている。それぞれのパターン線は、スケール幅方向の端部で、隣のパターン線と一体的に接続される。
【0056】
第1導電パターン3は、スケール幅方向の一端から他端までを1往復半するように、3本のパターン線の長手方向端部同士を接続して構成されている。具体的に説明すると、第1導電パターン3の一側の端部は、スケール幅方向の一端側(
図3の下側)の適宜の位置に配置されている。以下では、この位置を始端部(パターン第1端部)と呼ぶことがある。第1導電パターン3は、始端部から、他端側(
図3の上側)に向かって延びる。第1導電パターン3がスケール幅方向の他端側に到達すると、当該第1導電パターン3は、変位検出方向で少し位置を変えながら折り返して、スケール幅方向の一端側(始端部がある側)に向かって延びる。第1導電パターン3がスケール幅方向の一端側に到達すると、当該第1導電パターン3は変位検出方向で少し位置を変えながら再び折り返して、スケール幅方向の他端側(始端部と反対側)に向かって延びる。第1導電パターン3がスケール幅方向の他端側に到達すると、当該位置が第1導電パターン3の他側の端部となる。以下では、この位置を終端部(パターン第2端部)と呼ぶことがある。第1導電パターン3は、この終端部で、スルーホール5に接続される。
【0057】
始端部と終端部は、スケール幅方向で互いに反対側となる端部にそれぞれ位置する。第1導電パターン3は、始端部と終端部とを、一筆書き状の1本の線で互いに接続するように形成されている。
【0058】
スケール幅方向での第1単位要素30の並びに着目すると、第1導電パターン3は、複数(本実施形態においては3つ)の第1要素列31を有する。それぞれの第1要素列31は、1つ毎に互いに反転した形状を有する第1単位要素30を並べて構成される。変位検出方向で互いに隣接する2つの第1要素列31は、延びる方向の一端側で互いに接続されている。
【0059】
図3に示すように、第1導電パターン3の始端部は、例えば、図略のテストランド等に接続され、電圧信号等を出力するために用いられる。第1導電パターン3の終端部は、スルーホール5を介して、第2導電パターン4と電気的に接続される。
【0060】
第2導電パターン4は、
図2に示すように、第2導体層21bに形成されている。第2導体層21bは、絶縁板22aにおいて、第1導電パターン3が形成された第1導体層21aと、厚み方向で反対側の面に位置する。第2導電パターン4は、第2導体層21b(例えば、銅箔等)を、パターンエッチング等により所定の形状に形成することにより構成される。
図3及び
図4に示すように、第2導電パターン4は、複数の第2単位要素40から構成された一筆書き形状を有する。
【0061】
第2導電パターン4は、
図4に示すように、スケール幅方向に細長い領域に配置されている。第2導電パターン4は、
図3及び
図4に示すように、複数の第2単位要素40から構成された一筆書き形状を有する。第2単位要素40は、スケール幅方向に細長い領域に、p×qのマトリクス状に並べて配置されている。第2導電パターン4は、3つの第2要素列41を有する。それぞれの第2要素列41は、スケール幅方向に並んだ第2単位要素40により構成される。
【0062】
第2導電パターン4は、
図4に示すように、当該第2導電パターン4に電気的に接続される第1導電パターン3と、ベース基板部22(絶縁板22a)の厚み方向で対応する領域に形成されている。第2導電パターン4の形状は、第1導電パターン3と、上述のパターン線のそれぞれの細かい湾曲が互いに対称となっている点を除いて、実質的に同一である。第2導電パターン4の構成は第1導電パターン3と良く似ているので、詳細な説明を省略する。
【0063】
第2導電パターン4に含まれる多数の第2単位要素40のそれぞれは、第1導電パターン3に含まれる第1単位要素30と、1対1で対応している。ベース基板部22の厚み方向で見たとき、互いに対応する第1単位要素30と第2単位要素40の間で、半円孤の中心同士が一致している。
【0064】
図5に示すように、ベース基板部22の厚み方向で互いに対応する第1単位要素30と第2単位要素40の間で、それぞれの形状である半円弧が相補の関係となっている。従って、第1単位要素30と第2単位要素40は、ベース基板部22の厚み方向で見たとき、半円孤同士の両端同士が接続されるように合わせられて、閉じた形状(具体的には、円状)のコイル要素50を実質的に構成する。第1導電パターン3と第2導電パターン4の組合せにより、p×qのマトリクス状に並んだ多数のコイル要素50が形成される。第1導電パターン3と第2導電パターン4が一筆書きで形成されているので、一筆書きで接続されるコイル要素50同士の間で、隙間を実質的にゼロにすることができる。本実施形態では、スケール幅方向で互いに隣接するコイル要素50の間の隙間を実質的にゼロとすることで、コイル要素50の高密度配置を実現している。
【0065】
1つのコイル要素50は、1巻きのコイルとして考えることができる。
図4等では絶縁板22aの厚みが大きくなるように誇張して描かれているが、実際には絶縁板22aの厚みは小さい。従って、コイルのコイル面は、当該コイル要素50がマトリクス状に並べられる平面と平行である。
【0066】
スルーホール5は、第1導電パターン3と第2導電パターン4とを相互に電気的に接続する。スルーホール5は、プリント基板21を貫通する孔から構成され、孔の内壁には導体のメッキが付けられている。
【0067】
電流は、1つの第1導電パターン3と、1つの第2導電パターン4と、当該第1導電パターン3及び第2導電パターン4を導通するスルーホール5と、から形成される経路を流れる。これに着目すると、第1導電パターン3と、第2導電パターン4と、スルーホール5と、をまとめて、1つの単位検出セット(検出セット)Sとして捉えることができる。
【0068】
電流と磁場の向きの関係は、右ネジの法則に従う。本実施形態では、右ネジの法則を考慮して、単位検出セットSに仮に電流を流したときに各コイル要素50に発生する磁場が隣り合うコイル要素50同士で互いに逆向きとなるように、第1導電パターン3の第1単位要素30及び第2導電パターン4の第2単位要素40が配置されている。
【0069】
図2に示すように、単位検出セットSは、ベース基板部22の厚み方向で互いに対応するように、2つ1組で配置されている。一方の単位検出セットSは、第1導体層21aと第2導体層21bの部分に形成され、もう一方の単位検出セットSは、第3導体層21cと第4導体層21dの部分に形成されている。2つの単位検出セットSの構成は互いに同一である。
【0070】
図5に示すように、プリント基板21においては、上記のように厚み方向で積層された2つの単位検出セットSからなる組が、変位検出方向において予め定められた第2ピッチC2毎に並べて4つ設けられている。
【0071】
当該第2ピッチC2は、前述の第1ピッチC1との間で所定の関係を有するように、第1ピッチC1に基づいて定められる。具体的に説明すると、以下の式で示すように、第2ピッチC2は、第1ピッチC1の整数倍と、第1ピッチC1の1/4と、の和となるように設定される。
C2=(n+1/4)×C1
ただし、nは整数である。本実施形態においては、n=0であるが、これに限定されない。
【0072】
本実施形態の磁気式リニアセンサ100においては、
図2に示す2つの単位検出セットSのうち、スケール1から遠い側に位置する単位検出セットSが、交流磁界を発生する1次コイル61を構成している。スケール1に近い側に位置する単位検出セットSは、交流磁界によって誘起される誘導電流に関する検出信号(例えば、電圧信号)を出力する2次コイル62を構成している。
【0073】
このように、本実施形態の信号出力部6は、プリント基板21の厚み方向において、1次コイル61と2次コイル62とが積層された構造を有する。
【0074】
本実施形態の磁気式リニアセンサ100においては、
図1及び
図5に示すように、変位検出方向において等間隔で並べられた4つの信号出力部6を備える。当該4つの信号出力部6は、第2ピッチC2毎に設けられている。
【0075】
なお、以下の説明において、当該4つの信号出力部6のそれぞれを特定するために、
図5に示す左側から順に、第1信号出力部(第1検出部)6a、第2信号出力部(第2検出部)6b、第3信号出力部(第3検出部)6c、及び第4信号出力部(第4検出部)6dと呼ぶことがある。
【0076】
各信号出力部6で出力する信号(例えば、電圧信号)について、簡単に説明する。1次コイル61に適宜の周波数の交流電流を流すと、1次コイル61には、向き及び強さが周期的に変化する磁界が発生する。一方、2次コイル62には、コイルの磁界の変化を妨げる向きの誘導電流が発生する。1次コイル61の近傍に強磁性体が存在すると、この強磁性体は、1次コイル61が発生させる磁界を強めるように作用する。この作用は、強磁性体が1次コイル61に近づく程大きくなる。
【0077】
磁気応答部12が備える1つの強磁性部13に着目すると、磁気検出ヘッド2がストロークの一側から他側へ移動するにつれて、1次コイル61及び2次コイル62が当該強磁性部13に近づいていくが、最も近づいた後は離れていく。2次コイル62に発生する誘導電流は交流電流であるが、その振幅の大きさは、信号出力部6と、磁気応答部12のうち強磁性部13と、の位置関係に応じて異なる。
【0078】
強磁性部13は実際には第1ピッチC1ごとに並べて配置されるので、振幅の大きさの変化は、第1ピッチC1ごとの繰り返しになる。即ち、横軸に磁気検出ヘッド2の位置をとり、縦軸に振幅の大きさをとると、振幅と位置との関係は、第1ピッチC1を周期とする周期曲線(具体的には、正弦曲線y=sinθ)となる。このθを求めることができれば、繰返し単位である第1ピッチC1の中で磁気検出ヘッド2がどの位置にあるかを取得することができる。
【0079】
しかし、正弦曲線y=sinθの1周期分を考えると、特別な場合を除いてyに対応するθの値は2つ考えられ、ただ1つに定まらない。そこで、本実施形態では、信号出力部6を、最も近い強磁性部13との位置関係が第1ピッチC1の1/4ずつ実質的にズレるように、上述の第2ピッチC2で定められる間隔をあけて4つ配置している。
【0080】
第1信号出力部6a、第2信号出力部6b、第3信号出力部6c、第4信号出力部6dのそれぞれは、互いに第1ピッチC1の1/4だけ離れているので、互いに位相が90°ズレている電圧信号を出力する。第1信号出力部6aが出力する電圧信号をcos+相と表現した場合、第2信号出力部6bはsin+相の電圧信号を出力し、第3信号出力部6cはcos-相の電圧信号を出力し、第4信号出力部6dはsin-相の電圧信号を出力することとなる。
【0081】
詳細は後述するが、本実施形態では、この4つの信号に基づいて、磁気検出ヘッド2が第1ピッチC1の中のどの位置にあるかを検出することができる。
【0082】
続いて、本実施形態の磁気式リニアセンサ100による測定対象物の変位の検出について簡単に説明する。
【0083】
本実施形態の磁気式リニアセンサ100は、
図6に示すように、信号処理部7を備える。信号処理部7は、第1信号出力部6a、第2信号出力部6b、第3信号出力部6c、第4信号出力部6dから出力された電圧信号を処理する。
【0084】
信号処理部7は、例えば、A/Dコンバータ71と、D/Aコンバータ72と、演算部73と、を備える。信号処理部7は、1次コイル61への基準交流信号asinωtを出力しながら、第1信号出力部6a、第2信号出力部6b、第3信号出力部6c、第4信号出力部6dから出力された電圧信号に基づいて、磁気検出ヘッド2のスケール1に対する変位量を算出して出力する。
【0085】
1次コイル61においては、信号処理部7から出力された基準交流信号で励磁することで交流磁界が発生する。
【0086】
第1信号出力部6a、第2信号出力部6b、第3信号出力部6c、第4信号出力部6dのそれぞれにおいて、2次コイル62には、強磁性部13との相対位置に応じて振幅が異なる交流信号が誘起される。
【0087】
信号処理部7は、第1信号出力部6a及び第3信号出力部6cの出力の差分を取り出すことにより、第1交流信号を得る。出力の差分に相当する信号は、公知の差動結合によって容易に得ることができる。第1交流信号は、磁気検出ヘッド2の変位を表す位相をθとしたとき、以下の式で表すことができる。
y1=acosθ・sinωt
【0088】
信号処理部7は、第2信号出力部6b及び第4信号出力部6dの差分を取り出すことにより、第2交流信号を得る。第2交流信号は、以下の式で表すことができる。
y2=asinθ・sinωt
【0089】
演算部73は、第2交流信号y2を第1交流信号y1で除算する。この結果は、tanθの値に相当する。その後、演算部73は、計算結果のarctanの値を求める。これにより、θを得ることができる。
【0090】
上記の計算では、繰返し単位である第1ピッチC1の中での磁気検出ヘッド2の位置を求めることはできるが、磁気検出ヘッド2が何れの第1ピッチC1に位置しているかを特定することができない。そこで、演算部73は、磁気検出ヘッド2が幾つの磁気応答部12を通過したかをカウントするカウント処理を別途行う。このカウント値と、θの値に基づいて、磁気検出ヘッド2の移動ストロークにおける位置を出力することができる。
【0091】
本実施形態の磁気式リニアセンサ100においては、各信号出力部6は、第1単位要素30及び第2単位要素40から構成されるコイル要素50をマトリクス配置により多数備えている。これは、1次コイル61及び2次コイル62の実質的な巻き数を大きくできることを意味するので、大きい信号を出力することができる。
【0092】
また、第1信号出力部6a、第2信号出力部6b、第3信号出力部6c、及び第4信号出力部6dのそれぞれは、プリント基板21を構成するパターンから構成されているので、極めて小さく形成することができる。従って、磁気応答部12の配置ピッチである第1ピッチC1を小さく(例えばmm単位に)することができる。
【0093】
第1ピッチC1を小さくすれば、それに伴って第2ピッチC2も小さくしなければならない。一方で、コイル要素50を多く配置しないと、信号強度を確保することが難しい。この点、本実施形態では、スケール幅方向に細長い領域にコイル要素50を並べて配置するように形成されている。従って、第2ピッチC2を小さくすることと、コイル要素50を多く配置することと、を両立することができる。
【0094】
この結果、本実施形態の磁気式リニアセンサ100は、大きい検出信号を得ることができるとともに、信号処理部7が処理する対象ピッチ(第1ピッチC1)を小さくすることができるので、A/Dコンバータ71の分解能を向上させなくても、測定可能な最小単位を小さくすることができる。即ち、検出精度を向上することができる。
【0095】
以上に説明したように、本実施形態の磁気式リニアセンサ100は、変位検出方向における測定対象物の変位を検出する。磁気式リニアセンサ100は、スケール1と、磁気検出ヘッド2と、を備える。磁気検出ヘッド2は、スケール1に対して変位検出方向で相対変位可能に設けられる。磁気検出ヘッド2は、変位検出方向と垂直な方向であるスケール厚み方向において、スケール1の一方側に設けられる。スケール1は、磁気検出ヘッド2に対面する側に配置される磁気応答部12を備える。磁気応答部12は、磁気検出ヘッド2に対する磁気的な影響の変化が、変位検出方向で第1ピッチC1ごとに交互に繰り返し現れるように構成される。磁気検出ヘッド2は、ベース基板部22と、複数の信号出力部6と、を備える。ベース基板部22は、少なくとも1つの絶縁板22aから構成される。信号出力部6は、絶縁板22aに配置され、第1ピッチC1に基づく第2ピッチC2で変位検出方向に並べられる。それぞれの信号出力部6は、第1導電パターン3と、第2導電パターン4と、スルーホール5と、を備える。第2導電パターン4は、第1導電パターン3と絶縁板22aの厚み方向で異なる位置に形成される。スルーホール5は、第1導電パターン3と第2導電パターン4とを電気的に導通する。第1導電パターン3及び第2導電パターン4は、変位検出方向及びスケール厚み方向の何れとも直交するスケール幅方向に細長い領域にコイル要素50を並べて配置するように形成される。第1導電パターン3は、コイル要素50を構成する複数の第1単位要素30を接続した一筆書き形状を有する。第2導電パターン4は、コイル要素50を構成する複数の第2単位要素40を接続した一筆書き形状を有する。第1単位要素30と第2単位要素40は、ベース基板部22の厚み方向で見たとき、閉じた形状のコイル要素50を構成する。
【0096】
これにより、精密加工が容易な導電パターンによって信号出力部6が構成されるので、磁気検出ヘッド2における信号出力部6の配置ピッチを小さくすることができる。従って、磁気式リニアセンサ100の検出ピッチである第1ピッチC1を小さくすることができ、磁気式リニアセンサ100の小型化を実現できるとともに、検出精度を向上することができる。そして、第1導電パターン3と第2導電パターン4から複数のコイル要素50を構成することができ、大きな検出信号を得ることができる。特に、スケール幅方向に細長い領域にコイル要素50を並べるレイアウトにより、コイル要素50の数を多く確保することが容易である。
【0097】
また、本実施形態の磁気式リニアセンサ100は、第1導電パターン3と第2導電パターン4とスルーホール5とから構成された単位検出セットSを複数備える。複数の信号出力部6のそれぞれは、ベース基板部22の厚み方向に積層した複数の単位検出セットSを備える。
【0098】
これにより、信号出力部6を多層構造とすることで、コンパクトな構成を実現することができる。
【0099】
また、本実施形態の磁気式リニアセンサ100において、複数の単位検出セットSは、第1検出セットと、第2検出セットと、を含む。第1検出セットは、交流磁界を発生する1次コイル61を構成する。第2検出セットは、交流磁界によって誘起される交流信号を出力する2次コイル62を構成する。1次コイル61と2次コイル62は、ベース基板部22の厚み方向で対面している。
【0100】
これにより、交流磁界を発生する1次コイル61と、交流信号を出力する2次コイル62と、を全体としてコンパクトに構成することができる。また、1次コイル61と2次コイル62が近接して配置されることで、感度が良好な構成とすることができる。
【0101】
また、本実施形態の磁気式リニアセンサ100において、第1導電パターン3は、複数の第1単位要素30がスケール幅方向に並べられた第1要素列31を、変位検出方向に複数(3つ)並べて構成される。第2導電パターン4は、複数の第2単位要素40がスケール幅方向に並べられた第2要素列41を、変位検出方向に複数(3つ)並べて構成される。
【0102】
これにより、コイル要素50のマトリクス配置を容易に実現できる。
【0103】
また、本実施形態の磁気式リニアセンサ100において、複数の信号出力部6は、第1信号出力部6aと、第2信号出力部6bと、第3信号出力部6cと、第4信号出力部6dと、を含む。第1信号出力部6aは、交流信号を出力する。第2信号出力部6bは、第1信号出力部6aと位相が90°異なる交流信号を出力する。第3信号出力部6cは、第1信号出力部6aと位相が180°異なる交流信号を出力する。第4信号出力部6dは、第1信号出力部6aと位相が270°異なる交流信号を出力する。第1信号出力部6a、第2信号出力部6b、第3信号出力部6c、及び第4信号出力部6dが、変位検出方向に順に並べて配置される。
【0104】
これにより、複数の信号出力部6を全体として簡素に構成することができる。
【0105】
また、本実施形態の磁気式リニアセンサ100は、第1信号出力部6a、第2信号出力部6b、第3信号出力部6c、及び第4信号出力部6dから出力された信号を処理する信号処理部7を備える。信号処理部7は、第1交流信号y1と、第2交流信号y2と、に基づいて、測定対象物の変位を取得する。第1交流信号y1は、第1信号出力部6aと第3信号出力部6cの出力の差分に相当する。第2交流信号y2は、第2信号出力部6bと第4信号出力部6dの出力の差分に相当する。
【0106】
これにより、各第1ピッチC1内における測定対象物の変位を精度良く検出することができる。
【0107】
次に、磁気検出ヘッド2の第1変形例を説明する。
図7は、第1変形例の磁気検出ヘッド2xの構成を示す平面図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0108】
本変形例の磁気検出ヘッド2xにおいては、
図7に示すように、4つの信号出力部6が、変位検出方向で、第1信号出力部6a、第3信号出力部6c、第2信号出力部6b、及び第4信号出力部6dの順に並べて設けられている。
【0109】
第1信号出力部6aと第3信号出力部6cは、第3ピッチC3の間隔をあけて並べて設けられている。第2信号出力部6bと第4信号出力部6dは、第3ピッチC3の間隔をあけて並べて設けられている。当該第3ピッチC3は、上記の第1ピッチC1の半分に設定されている(C3=C1/2)。
【0110】
即ち、第1交流信号acosθ・sinωtを差動的に出力する第1信号出力部6aと第3信号出力部6cが、互いに隣接し、変位検出方向の一方側にまとめて設けられる。第2交流信号asinθ・sinωtを差動的に出力する第2信号出力部6bと第4信号出力部6dが、互いに隣接し、変位検出方向の他方側にまとめて設けられる。
【0111】
第3信号出力部6cと第2信号出力部6bの間は、一方の1次コイル61の磁界によって他方の2次コイル62の誘導電流が受ける影響を抑制するために、第4ピッチC4で設けられている。第4ピッチC4を定める式は、第2ピッチC2と全く同じである(C4=(n+1/4)×C1)。ただし、第4ピッチC4では、第2ピッチC2と異なり、nは1以上としている。
【0112】
この構成により、第1交流信号acosθ・sinωtを出力する第1信号出力部6a及び第3信号出力部6cと、第2交流信号asinθ・sinωtを出力する第2信号出力部6b及び第4信号出力部6dと、が互いに影響し合うことを回避しながら、4つの信号出力部6を全体としてコンパクトに配置することができる。
【0113】
なお、第1信号出力部6a及び第3信号出力部6cに関しては、相互の磁気の影響は差動結合により相殺されるため、互いに近接して配置されても問題ない。第2信号出力部6b及び第4信号出力部6dについても同様である。
【0114】
第1信号出力部6a及び第3信号出力部6cの間隔、及び、第2信号出力部6b及び第4信号出力部6dの間隔は、何れも第3ピッチC3であり、上述の第2ピッチC2よりも第1ピッチC1に対して大きい。従って、この第3ピッチC3を、第1実施形態における信号出力部6のピッチ(第2ピッチC2)と同等程度に設定するだけで、第1実施形態よりも第1ピッチC1を実質的に小さくすることができる。この結果、磁気式リニアセンサ100の検出精度を一層向上することができる。
【0115】
以上に説明したように、本変形例では、磁気検出ヘッド2xにおいて、第1信号出力部6aと第3信号出力部6cとが互いに隣接して設けられる。第2信号出力部6bと第4信号出力部6dとが互いに隣接して設けられる。
【0116】
これにより、例えばレイアウトの物理的な限界によって信号出力部6の間隔を小さくすることが難しくても、第1ピッチC1を小さくすることが容易になる。従って、検出精度を高めることができる。
【0117】
次に、磁気検出ヘッド2の第2変形例を説明する。
図8は、第2変形例の磁気検出ヘッド2yの構成を示す平面図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0118】
本変形例の磁気検出ヘッド2yにおいては、変位検出方向の一方側に第1信号出力部6aと第3信号出力部6cとがまとめて設けられ、変位検出方向の他方側に第2信号出力部6bと第4信号出力部6dとがまとめて設けられている。
【0119】
図8に示すように、第1信号出力部6aは、第1コイル要素列51を2列分備えている。それぞれの第1コイル要素列51には、直線状に並ぶコイル要素50が含まれる。
【0120】
第3信号出力部6cは、第3コイル要素列53を2列分備えている。それぞれの第3コイル要素列53には、直線状に並ぶコイル要素50が含まれる。
【0121】
第1コイル要素列51と第3コイル要素列53は、変位検出方向で交互に並べて配置されている。この配置ピッチは、上述の第3ピッチC3に等しい。
【0122】
上記と同様に、第2信号出力部6bは第2コイル要素列52を2列分備える。第4信号出力部6dは第4コイル要素列54を2列分備える。第2コイル要素列52と第4コイル要素列54は、変位検出方向で交互に並べて配置されている。
【0123】
この構成も、
図7の構成と同様に、実質的に第1ピッチC1を小さくすることができる。従って、磁気式リニアセンサ100の検出精度を向上することができる。
【0124】
以上に説明したように、本変形例では、磁気検出ヘッド2yにおいて、第1コイル要素列51と、第3コイル要素列53と、が変位検出方向に交互に並べられる。第1コイル要素列51は、第1信号出力部6aが備える第1導電パターン3及び第2導電パターン4を構成する第1要素列31及び第2要素列41によって構成される。第3コイル要素列53は、第3信号出力部6cが備える第1導電パターン3及び第2導電パターン4を構成する第1要素列31及び第2要素列41によって構成される。磁気検出ヘッド2yにおいて、第2コイル要素列52と、第4コイル要素列54と、が変位検出方向に交互に並べられる。第2コイル要素列52は、第2信号出力部6bが備える第1導電パターン3及び第2導電パターン4を構成する第1要素列31及び第2要素列41によって構成される。第4コイル要素列54は、第4信号出力部6dが備える第1導電パターン3及び第2導電パターン4を構成する第1要素列31及び第2要素列41によって構成される。
【0125】
これにより、例えばレイアウトの物理的な限界によって信号出力部6の間隔を小さくすることが難しくても、第1ピッチC1を小さくすることが容易になる。従って、検出精度を高めることができる。
【0126】
次に、第2実施形態を説明する。
図9は、第2実施形態の磁気式リニアセンサ100xの構成を示す斜視図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0127】
本実施形態の磁気式リニアセンサ100xのスケール1は、
図9に示すように、ベース部11と、磁気応答部12と、第2磁気応答部14と、を備える。磁気応答部12と第2磁気応答部14は、スケール幅方向に並べて配置されている。
【0128】
磁気応答部12の構成は、上述の第1実施形態と同様である。
【0129】
第2磁気応答部14の構成は、磁気応答部12と実質的に同様である。ただし、第2磁気応答部14では、スケール1の長手方向で磁気応答性の有無又は強弱が交互に繰返し現れる間隔(第5ピッチC5、磁気変化ピッチ)が、磁気応答部12の場合の間隔(第1ピッチC1)よりも小さくなっている。
【0130】
本実施形態のプリント基板21は、
図9に示すように、変位検出方向に並べられた4つの信号出力部6と、変位検出方向に並べられた4つの磁気検出信号出力部(磁気検出部)6xと、を備える。信号出力部6は、磁気応答部12に対面するように配置される。磁気検出信号出力部6xは、第2磁気応答部14に対面するように配置される。
【0131】
磁気検出信号出力部6xの構成は、信号出力部6と概ね同様である。磁気検出信号出力部6xは、例えば1つのコイル要素列から構成され、変位検出方向で、予め設定された第6ピッチC6毎に設けられている。なお、磁気検出信号出力部6xは、2つ以上のコイル要素列から構成されても良い。第6ピッチC6と第5ピッチC5との関係は、第2ピッチC2と第1ピッチC1の関係と同様であるので、説明を省略する。
【0132】
信号出力部6は、第1ピッチC1の中での磁気検出ヘッド2の位置を求めるための信号を出力する。磁気検出信号出力部6xは、第5ピッチC5の中での磁気検出ヘッド2の位置を求めるための信号を出力する。第1ピッチC1を第5ピッチC5の整数倍にしないこと等により、2つの位置の組合せから、移動ストロークの中での磁気検出ヘッド2の位置をただ1つに特定することができる。この構成では、上述のカウント処理を行わずに、いわゆるアブソリュート位置を検出することができる。
【0133】
以上に説明したように、本実施形態の磁気式リニアセンサ100xにおいて、スケール1は、第2磁気応答部14を備える。第2磁気応答部14は、磁気検出ヘッド2に対する磁気的な影響の変化が、変位検出方向で第1ピッチC1とは異なる第5ピッチC5ごとに交互に繰り返し現れるように構成されている。磁気検出ヘッド2は、複数の磁気検出信号出力部6xを備える。複数の磁気検出信号出力部6xは、第5ピッチC5に基づく第6ピッチC6で変位検出方向に並べられている。
【0134】
これにより、互いに異なるピッチで磁気的な影響が変化する2つの磁気応答部を用いて、測定対象物の位置をより適切に得ることができる。
【0135】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0136】
プリント基板21は、
図10(a)に示すように、両面基板から構成されても良い。この場合、プリント基板21に形成された第1導電パターン3及び第2導電パターン4は、1次コイル61及び2次コイル62のうち一方のみを構成する。
【0137】
プリント基板21は、
図10(b)に示すように構成されても良い。この構成では、1次コイル61は、第1導体層21aに形成された第1導電パターン3と、第4導体層21dに形成された第2導電パターン4と、から構成される。2次コイル62は、第2導体層21bに形成された第1導電パターン3と、第3導体層21cに形成された第2導電パターン4と、から構成される。
図10(b)では、1次コイル61を構成する第1導電パターン3と第2導電パターン4との間に、2次コイル62の第1導電パターン3と第2導電パターン4が配置される。この例では、1次コイル61と2次コイル62のコンパクトな配置を実現できる。
【0138】
第1導電パターン3と第2導電パターン4の組を、プリント基板21の厚み方向で3組以上配置しても良い。
図10(c)には、プリント基板21が8層基板からなる例が示されている。この例では、2つの単位検出セットSが1次コイル61として用いられ、残りの2つの単位検出セットSが2次コイル62として用いられている。1次コイル61及び2次コイル62としてどの単位検出セットSを用いるかは任意である。
【0139】
図10(b)及び
図10(c)の構成で、第1導電パターン3及び第2導電パターン4の全てから1次コイル61のみを構成することもできるし、2次コイル62のみを構成することもできる。
【0140】
スケール1は、上述の構成に限定されず、互いに異なる磁気的な性質(磁性の強弱、発生する磁界の方向等)が繰り返されるのであれば、適宜の構成とすることができる。例えば、ベース部11と磁気応答部12とを、強磁性体を用いて一体的に形成しても良い。また、磁気応答部12が、強磁性体と弱磁性体/非磁性体を、当該スケール1の長手方向に交互に並べることで構成されても良い。磁石のN極とS極を並べることで、磁気的な性質の変化の繰返しを実現しても良い。
【0141】
スケール1は、磁気検出ヘッド2(プリント基板21)を挟むように、プリント基板21の厚み方向両側のそれぞれに1つずつ設けられても良い。この場合、より大きな検出信号を容易に得ることができる。
【0142】
第1導電パターン3及び第2導電パターン4は、2つ以下又は4つ以上の要素列を有しても良い。それぞれの要素列は、最小2つの単位要素から構成することができる。
【0143】
上記の実施形態においては、
図3に示すように、変位検出方向で隣接するコイル要素50の間に隙間が設けられている。しかし、この隙間が実質的にゼロになるように第1導電パターン3及び第2導電パターン4を形成することもできる。この場合、コイル要素50の一層の高密度化を実現できる。
【0144】
第1導電パターン3及び第2導電パターン4のそれぞれが備える第1単位要素30、第2単位要素40は、半円状に限定されず、例えば、2つ以上の線分から構成された形状に形成されても良い。即ち、第1単位要素30及び第2単位要素40から構成されたコイル要素50は、円に限定せず、例えば、4つ以上の線分で囲まれた多辺形として構成されても良い。
【0145】
第1導電パターン3の一筆書き形状は、
図11(a)に示すように、2×2のマトリクス状の第1単位要素30を接続する単位パターンを反復するように構成されても良い。
図11(b)、
図11(c)に示すように、2×3のマトリクス状の第1単位要素30を接続する単位パターンを反復するように構成されても良い。第2導電パターン4の一筆書き形状についても同様である。
【0146】
演算部73は、tanθを計算する以外の方法で、θを得ることもできる。具体的には、公知のシフト回路により第2交流信号y2の位相が90°シフトされて、第1交流信号y1に加算される。加算後の信号は、周知の三角関数の加法定理により、asin(ωt+θ)と表すことができる。演算部73は、この信号と、基準交流信号asinωtと、の位相差(具体的には、各信号がゼロと交差するタイミングの差)を計測することにより、θを得る。
【符号の説明】
【0147】
1 スケール(リニアスケール)
2 磁気検出ヘッド(センサヘッド)
3 第1導電パターン
4 第2導電パターン
5 スルーホール
6 信号出力部(検出部)
6a 第1信号出力部(第1検出部)
6b 第2信号出力部(第2検出部)
6c 第3信号出力部(第3検出部)
6d 第4信号出力部(第4検出部)
7 信号処理部
12 磁気応答部(第1磁気応答部)
14 第2磁気応答部
22 ベース基板部
22a 絶縁板
30 第1単位要素
31 第1要素列
40 第2単位要素
41 第2要素列
50 コイル要素
51 第1コイル要素列
52 第2コイル要素列
53 第3コイル要素列
54 第4コイル要素列
61 1次コイル
62 2次コイル
100 磁気式リニアセンサ
100x 磁気式リニアセンサ
C1 第1ピッチ
C2 第2ピッチ
S 単位検出セット(検出セット)
y1 第1交流信号
y2 第2交流信号