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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】積層体および樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230912BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20230912BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B7/022
C08F299/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019073443
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2019181949
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2018075169
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 康之
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大橋 純平
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-111929(JP,A)
【文献】特開2016-097668(JP,A)
【文献】特開2013-256105(JP,A)
【文献】特開2012-091498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と支持基材とを有する積層体であって、前記樹脂層が、化学式1および化学式2のセグメントを含み、前記樹脂層が、アクリル共重合体系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、またはフッ素系レベリング剤を含み、支持基材が、樹脂層側の面に離型層を有し、前記離型層は反応性部位を有するシリコーン系樹脂、または有機樹脂変性シリコーンレジンと反応性部位を有するポリアルキレンオキサイドを含む樹脂とそれらと反応可能な有機樹脂成分を含み、以下の条件1、2、および5を満たすことを特徴とする積層体。
条件1: 積層体を支持基材と樹脂層とに剥離する際に、前記樹脂層を180°方向に剥離して得られる剥離力N1(以下、N1)と前記支持基材を180°方向に剥離して得られる剥離力N2(以下、N2)とが以下の式を満たす。
1.2 < N1/N2 < 10.0
条件2: 前記樹脂層の5μm角の範囲における支持基材と反対側の面(以下、表面)の弾性率Es[GPa]と支持基材側の面(以下、裏面)の弾性率Er[GPa]および厚みT[μm]が以下の式を満たす。
0.5 < (Es - Er)/T < 2.0
条件5: 樹脂層の厚みTが0.5μm以上5μm以下である。
R1は、水素、またはメチル基である。
R2 R3は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記支持基材が、前記樹脂層側の面に離型層を有する支持基材であり、前記支持基材が以下の条件3および4を満たすことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
条件3: 前記支持基材のJIS Z 1522:2009で規定されるテープによる剥離力が3.0N/25mm以上である。
条件4: 前記N2が0.01N/25mm以下である。
【請求項3】
前記樹脂層が更に以下の条件6を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の積層体
件6: 5μm角の範囲における前記表面の表面粗さsRaと前記裏面の表面粗さrRaが以下の式を満たす。
-0.5 < (rRa-sRa)/sRa < 1.5
【請求項4】
前記樹脂層が、化学式3のセグメントを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層体。
R4は、水素、またはメチル基である。
【化3】
【請求項5】
前記樹脂層が、官能基当量が異なる2種類の樹脂前駆体を架橋させてなる硬化物を含み、
前記2種類の樹脂前駆体のうち、官能基当量が小さい方の樹脂前駆体(樹脂前駆体Aとする)と官能基当量が大きい方の樹脂前駆体(樹脂前駆体Bとする)が、以下の条件7を満たすことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
条件7: 樹脂前駆体Aの官能基当量(QA) と、樹脂前駆体Bの官能基当量(QB)が、以下の式を満たす。
0.01< QA/QB <0.05
100(g/eq) < QA < 400(g/eq)
【請求項6】
前記樹脂前駆体A及び前記樹脂前駆体Bが、化学式2及び化学式3のセグメントを含むことを特徴とする、請求項5に記載の積層体。
R4は、水素、またはメチル基である。
R3は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
【化4】
【化5】
【請求項7】
前記樹脂層を被着体に貼合し前記支持基材を樹脂層から剥離する用途に用いられる、請求項1~6のいずれかに記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐傷性や様々な機能を他の物品の表面に付与可能な樹脂層、および樹脂層を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にプラスチックスや金属の表面は、ガラスに比べると傷が付きやすく、製品として使用される際には、表面の光沢感や透明性を維持することが供給される。そこでプラスチックスや金属の成形体においては、表面に耐傷性を付与する層を設けることがある。具体的には非特許文献1に挙げられるような「ハードコート」と呼ばれる高硬度の樹脂層の層で表面を被覆する方法が知られている。さらに、ハードコート層は耐傷性以外の機能、たとえば耐候性やガスバリア性、ブロッキング防止性などの機能を成形体付与するために用いられることもある。
【0003】
前述のハードコート層は、一般には成形体を構成するプラスチックスや金属の表面に直接塗布、硬化させることで形成したり、あらかじめハードコート層を形成したプラスチックフィルムを貼り付けたり、成形体を構成するプラスチックスや金属と一体化に成形したりすることにより設けられる。また、成形体を構成する材料の耐熱性や加工温度、耐溶剤性から直接塗布が不可能な場合や、耐傷性以外の機能、たとえば光学機能層や、意匠層などと合わせて形成する点から、成形体を構成するとは別の支持基材上にハードコート層を形成し、それを成形体表面に転写する方法もある。
【0004】
また、前述のような成形体の他に、電子機器やディスプレイなどの用途にて、工程材料の削減、製品の薄膜化、製品形態の自由度向上のため、耐傷性に加え、光学特性、電気特性などのさまざまな機能を有したハードコートフィルムを用いる代わりに、例えば特許文献1には「仮支持体の一方の表面上に、少なくとも1層のハードコート層と少なくとも1層の光学異方層とを有する、光学異方性ハードコート転写フィルム」のように機能を有した薄膜のハードコート層を転写する工法も検討されている。
【0005】
このような、基材フィルム上にハードコート層を含む機能層を作成し、支持基材から転写する工法としては他にも、例えば特許文献2には物品の平らな面、曲面およびコーナーに転写しても外観上の劣化や耐傷性等の物性のないハードコート層を転写する技術として「剥離性基材シートの一方の表面に、硬質の電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層と軟質の電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層とをこの記載の順序に積層したことを特徴とするハードコート転写箔。」が、特許文献3にはハードコート層などを含む転写物を剥離したときにその転写物にクラック(ひび割れ)現象が発生しない、といった離型特性を有する転写用離型ポリエステルフィルムとして、「二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に(1)軟化点60℃以上105℃以下である変性ワックス、(2)バインダー樹脂成分および(3)架橋成分を含有する離型層を有してなる離型ポリエステルフィルムであり、該離型層に対するハードコート層の剥離力が4.0mN/mm以上20mN/mm以下であることを特徴とする転写用離型ポリエステルフィルム。」が、それぞれ提案されている。
【0006】
一方、機能層と支持基材の界面の剥離性に着目した技術として、特許文献4にはとして「基材フィルムの一方の面に、少なくとも離型層、ハードコード層、接着層を順次積層してなる転写フィルムであって、前記離型層が、炭素数10以上30以下の長鎖アルキル基を有するアクリルウレタン樹脂であることを特徴とする転写フィルム。」が、特許文献5には界面で剥離不良が起こることなくスムーズに剥離できる転写シートとして「剥離層にシリコン架橋を形成することにより強固な硬化膜となるシリコンアクリル樹脂を主材として用い、副材としてポリジメチルシロキサン系共重合体を用いることを特徴とする転写シート。」が、それぞれ提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-184410号公報
【文献】特開平3-130199号公報
【文献】特開2014-162045号公報
【文献】特開2014-104705号公報
【文献】特開2004-034385号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】プラスチックハードコート応用技術 株式会社シーエムシー出版 2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような機能層を含むハードコート層の転写における本質的な課題としては、まず加工工程での機能層の浮きや変形が無く、取り扱いが容易であることが求められる。加えて、より薄膜で耐傷性や耐候性などのハードコート層の機能を付与できること、透明性の不足や厚みムラなどにより部材の品位を損なわないことが求められる。この課題に対し、特許文献1の技術は、確かに転写により光学的な品位を高めることができるが、本発明者らが確認したところ、ハードコート層加工時の収縮応力による変形(=カール)が大きく、また特に薄膜で割れやすいため、安定した加工が困難であることが分かった。
【0010】
一方、特許文献2の技術は転写により成形体に耐擦傷性を付与することができるが、本発明者らが確認したところ、転写前後でハードコート層に求められる他の機能、耐溶媒性や耐移染性などの機能が大幅に低下することがわかった。この原因は、転写時のハードコート層の変形により、目視では不可能だが、電子顕微鏡にて観察できるレベルの微細なクラックが生じるためであった。さらに、特許文献3の技術は、剥離時のハードコート層への微細なひび割れ抑制に有効であったが、不完全硬化状態であり必要な耐摩耗性が得られない。また、必要な耐摩耗性を得るには、転写後に再度被着体を含めて加熱して硬化する必要があり、煩雑な作業を必要とする上、被着体の耐熱性を必要とする。さらに本発明者らが確認したところ、剥離前に完全硬化させてから転写すると、特許文献2と同様に微細なクラックが生じ、これにより耐溶媒性やバリア性などの樹脂層が持つべき機能が大幅に低下することもわかった。
【0011】
また特許文献4および特許文献5に記載の方法を本発明者らが検証したところ、確かに剥離をスムーズに行うことが可能であったが、ハードコート層の厚みを薄くした際には塗布時に微細なハジキを生じたり、ハジキは無くとも厚みのムラにより干渉模様が形成され外観品位を損ねる問題が確認された。加えて転写前の支持基材とハードコート層を取り扱う際に端部が浮き上がり、転写不良や千切れた箔による工程汚染の懸念があることが分かった。
【0012】
以上の点から、従来技術では、機能層を含む樹脂層の転写における本質的な課題の解決は困難な状況にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、前述の課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)
樹脂層と支持基材とを有する積層体であって、以下の条件1および2を満たすことを特徴とする積層体。
【0014】
条件1: 積層体を支持基材と樹脂層とに剥離する際に、前記樹脂層を180°方向に剥離して得られる剥離力N1(以下、N1)と前記支持基材を180°方向に剥離して得られる剥離力N2(以下、N2)とが以下の式を満たす。
【0015】
1.2 < N1/N2 < 10.0
条件2: 前記樹脂層の5μm角の範囲における支持基材と反対側の面(以下、表面)の弾性率Es[GPa]と支持基材側の面(以下、裏面)の弾性率Er[GPa]および厚みT[μm]が以下の式を満たす。
【0016】
0.5 < (Es - Er)/T < 2.0
(2)
前記支持基材が、前記樹脂層側の面に離型層を有する支持基材であり、前記支持基材が以下の条件3および4を満たすことを特徴とする(1)に記載の積層体。
【0017】
条件3: 前記支持基材のJIS Z 1522:2009で規定されるテープによる剥離力が3.0N/25mm以上である。
【0018】
条件4: 前記N2が0.01N/25mm以下である。
(3)
前記樹脂層が更に以下の条件5および6を満たすことを特徴とする(1)または(2)に記載の積層体。
【0019】
条件5: 厚みTが0.5μm以上5μm以下である。
【0020】
条件6: 5μm角の範囲における前記表面の表面粗さsRaと前記裏面の表面粗さrRaが以下の式を満たす。
【0021】
-0.5 < (rRa-sRa)/sRa < 1.5
(4)
前記樹脂層が、化学式1から化学式3のセグメントを含むことを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の積層体。
【0022】
R1、R4は、水素、またはメチル基である。
【0023】
R2 R3は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
【0024】
【化1】
【0025】
【化2】
【0026】
【化3】
【0027】
(5)
前記樹脂層が、官能基当量が異なる2種類の樹脂前駆体を架橋させてなる硬化物を含み、
前記2種類の樹脂前駆体のうち、官能基当量が小さい方の樹脂前駆体(樹脂前駆体Aとする)と官能基当量が大きい方の樹脂前駆体(樹脂前駆体Bとする)が、以下の条件7を満たすことを特徴とする、(1)から(4)のいずれかに記載の積層体。
【0028】
条件7: 樹脂前駆体Aの官能基当量(QA) と、樹脂前駆体Bの官能基当量(QB)が、以下の式を満たす。
【0029】
0.01< QA/QB <0.05
100(g/eq) < QA < 400(g/eq)
(6)
前記樹脂前駆体A及び前記樹脂前駆体Bが、化学式2及び化学式3のセグメントを含むことを特徴とする、(5)に記載の積層体。
【0030】
R4は、水素、またはメチル基である。
【0031】
R3は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
(7)
化学式1のセグメントを含む樹脂フィルムであって、以下の条件8、9および10を満たすことを特徴とする樹脂フィルム。
【0035】
条件8: 厚みTが0.5μm以上5μm以下である。
【0036】
条件9: 5μm角の範囲における一方の面の弾性率Es[GPa]と他方の面の弾性率Er[GPa]および厚みT[μm]が以下の式を満たす。
【0037】
0.5 < |Es - Er|/T < 2.0
条件10: 5μm角の範囲における表面粗さの数値がより小さい面の表面粗さsRaと表面粗さの数値がより大きい面の表面粗さrRaが以下の式を満たす。
【0038】
(rRa-sRa)/sRa < 1.5
【0039】
【化6】
【0040】
R1は、水素、またはメチル基である。
【0041】
R2は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
(8)
前記樹脂フィルムが、化学式2及び化学式3のセグメントを含むことを特徴とする(7)に記載の樹脂フィルム。
【0042】
R4は、水素、またはメチル基である。
【0043】
R3は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
【0044】
【化7】
【0045】
【化8】
【0046】
(9)
前記樹脂フィルムが、官能基当量が異なる2種類の樹脂前駆体を架橋させてなる硬化物を含み、
前記2種類の樹脂前駆体のうち、官能基当量が小さい方の樹脂前駆体(樹脂前駆体Aとする)と官能基当量が大きい方の樹脂前駆体(樹脂前駆体Bとする)が、以下の条件11を満たすことを特徴とする、(7)または(8)に記載の樹脂フィルム。
【0047】
条件11: 樹脂前駆体Aの官能基当量(Q)と、樹脂前駆体Bの官能基当量(Q)が以下の式を満たす。
【0048】
0.01< Q/Q <0.05
100< Q < 400
(10)
前記樹脂前駆体A及び前記樹脂前駆体Bが、化学式2及び化学式3のセグメントを含むことを特徴とする、(9)に記載の樹脂フィルム。
【0049】
R4は、水素、またはメチル基である。
【0050】
R3は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
【0051】
【化9】
【0052】
【化10】
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、樹脂層に耐傷性や透明性などの基本的なハードコート機能を付与しつつ、積層体をロール工程にて作成・搬送する際に樹脂層と支持基材の間の浮きが生じにくく、樹脂層の厚み均一性に優れ、かつ樹脂層のカールを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】樹脂層の層構成の例を示す断面図である。
図2】樹脂層の層構成の例を示す断面図である。
図3】樹脂層の層構成の例を示す断面図である。
図4】樹脂層の層構成の例を示す断面図である。
図5】本発明に用いられるダイコート法の一例(多層スライドダイコート)を示す断面図である。
図6】本発明に用いられるダイコート法の一例(多層スロットダイコート)を示す断面図である。
図7】本発明に用いられるダイコート法の一例(ウェット-オン-ウェットコート)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明者らは、前述の課題を解決するため、支持基材と樹脂層の物性を特定の関係にすることにより、前述の課題を解決できることを見いだした。すなわち、樹脂層と支持基材とを有する積層体であって、以下の条件1および2を満たすことを特徴とする積層体。
【0056】
条件1: 積層体を支持基材と樹脂層とに剥離する際に、前記樹脂層を180°方向に剥離して得られる剥離力N1(以下、N1)と前記支持基材を180°方向に剥離して得られる剥離力N2(以下、N2)とが以下の式を満たす。
【0057】
1.2 < N1/N2 < 10.0
条件2: 前記樹脂層の5μm角の範囲における支持基材と反対側の面(以下、表面)の弾性率Es[GPa]と支持基材側の面(以下、裏面)の弾性率Er[GPa]および厚みT[μm]が以下の式を満たす。
【0058】
0.5 < (Es - Er)/T < 2.0
条件1は積層体の剥離を行う際に向きによる剥離性の変化に関するパラメータである。本来、支持基材と樹脂層の界面エネルギーから、剥離に要する仕事量は一定の値となるべきである。しかしながら本発明者らが検証した結果、特に樹脂層の厚みが薄膜となる場合には、剥離力が保持する層によって偏りが生じ得ることを見出した。すなわちN1/N2とは積層体の剥離力の不均一さを示すパラメータであり、N1が大きいことは樹脂層に付加が掛かった際に脱落が起こりにくくなることに相当し、N2が小さいことは少ない力での転写を容易にすることに相当する。反対にN1が小さく、かつN2が大きくなる構成(すなわち、N1/N2が0.5以下となるような場合)では、転写時に剥がれにくく、搬送時に剥がれやすくなるため、本発明の課題に対する効果としてはふさわしくない場合がある。
【0059】
上記のような剥離力の不均一さは、例えば支持基材の弾性率設計や、支持基材-樹脂層に界面形状を付与し、特定の方向に対して擬似的に剥離力を低減させるなどの方法で制御することが考えられるが、後述する樹脂層の弾性率および厚みの設計によっても制御することが可能である。
【0060】
詳しい測定方法については実施例の項に後述するが、前記樹脂層を180°方向に剥離して得られる剥離力N1と前記支持基材を180°方向に剥離して得られる剥離力N2との比であるN1/N2が1.2を超えて10.0未満である。N1/N2が1.2以下の場合には転写時の剥離力が不安定となり、全面に均一に転写を行うことが困難となる場合がある。一方で、10.0以上の場合には本発明の積層体の搬送時に樹脂層の浮きが起こり、転写不良や千切れた箔による工程汚染が発生する場合がある。また、より好ましい条件としては、N1/N2が2.0以上5.0以下である。上記の範囲に収めることにより例えばより高速の加工であっても、搬送時の浮きを抑制しつつ、均一に転写を行うことが可能となる。
【0061】
一方、条件2は前述の剥離力の偏りが生じる樹脂層の特徴を表している。具体的には、樹脂層の表面と裏面の弾性率が不均一となっており、かつ樹脂層の厚みに対して一定の比率で傾斜させることで、前述の剥離力を制御し得ることを見出した。具体的には前記樹脂層の5μm角の範囲における支持基材と反対側の面(表面)の弾性率Es[GPa]と支持基材側の面(裏面)の弾性率Er[GPa]および厚みT[μm]から求められるパラメータ(Es - Er)/Tが0.5を超えて2.0未満であれば、カールを抑制しつつ、搬送の安定性、厚みの均一性等を両立することができる。すなわち、(Es - Er)/Tとは樹脂層における厚み方向への弾性率の変化具合を端的に表現するパラメータである。樹脂層の表面と裏面の弾性率に理想的に差が生じない条件では(Es - Er)/Tが0となり、前述の剥離力の不均一により生じる効果が得られない。反面(Es - Er)/Tが大きすぎることは、樹脂層の表面と裏面での収縮応力の歪みが生じることに相当し、樹脂層のカールが増長される。一方で、パラメータ(Es - Er)/Tが負の値になる場合については、裏面、すなわち樹脂層と支持基材との界面側に応力が集中する形になるため、搬送中に浮きが生じやすくなる傾向にある。
【0062】
パラメータ(Es - Er)/Tの制御は樹脂材料の選定や、硬化方法の選択によって設計することが可能であるが、好ましい製造方法として記載する同時コートによって、材料の濃度勾配を設けることでも好適に設計することが可能である。
【0063】
具体的には、前記(Es - Er)/Tが0.5以下の場合には、前述の剥離力の偏りを十分に設けることができず、搬送時の安定性が得られない場合がある。また、加えて厚みが厚くなれば、カールを誘発する場合がある。一方(Es - Er)/Tが2.0以上となる場合には、樹脂層の表裏での弾性率のバランスが取れず、カールを誘発しやすくなる場合がある。その他、支持基材の詳細や離型層の詳細、具体的な達成方法、測定・解析方法については、後述する。
【0064】
[本発明の形態]
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
[積層体、および樹脂層]
本発明における樹脂層とは、単層でもよいし、複数の層からなる樹脂層であってもよい。例えば樹脂材料を層状に成形、硬化することによって得られる箔、シートもしくはフィルムを意味する。あるいは支持基材上に形成された層であって、支持基材上より剥離可能な層を指す。支持基材上に形成された層であっても支持基材より剥離不可能な層、例えば後述する離型層は、樹脂層に含まれず支持基材の一部とする。この剥離可能、不可能の判断基準は、JIS K5600-5-6:1999に記載のクロスカット法にて評価を行い、分類4以上であるものを剥離可能、分類0から3であるものを剥離不可能とする。前記樹脂層および支持基材を含む全て統合したものを積層体とする。支持基材上に層が1層のみ形成されている場合は、当該1層が樹脂層となり、支持基材上に層が2層以上形成されている場合は、支持基材を除いた当該2層以上の層を1つの樹脂層とする。
【0065】
また、支持基材を有さない構成は樹脂フィルムと表記し、該樹脂フィルムは積層体から支持基材を剥離して得られる樹脂層単体の構成に相当する。
【0066】
ここで層とは、積層体の表面側から厚み方向に向かって、厚み方向に隣接する部位と境界面を有することにより区別でき、かつ有限の厚みを有する部位を指す。より具体的には、前記積層体の断面を電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、不連続な境界面の有無により区別されるものを指す。そのため、樹脂層の厚み方向に組成が変わっていても、その間に前述の境界面がない場合には、1つの層として取り扱う。
【0067】
以下、本発明の積層体の構成の例について図を用いて説明する。本発明の積層体は、支持基材が、樹脂層側の面に離型層を有することが好ましい。そこでこの図1においては、本発明の積層体1は、支持基材3の少なくとも一方の面に離型層4と、離型層から剥離可能な樹脂層5を、支持基材側からこの順に有する。離型層は、図2のように支持基材8の両方の面にあってもよい。また図3の積層体12のように、樹脂層16の離型層15と接している面と反対面に、粘着層18を有する保護フィルム17が貼合されていてもよいし、図4の積層体20のように、樹脂層24の離型層23と接している面とは反対面に機能層25が積層されていてもよい。
【0068】
本発明の積層体は、前述の物性を示す樹脂層を有していれば平面状態、または3次元形状のいずれであってもよい。
【0069】
前記本発明の積層体中の樹脂層の厚みT、及び、本発明の樹脂フィルムの厚みTは、0.5μm以上5μm以下(条件5:厚みTが0.5μm以上5μm以下)(条件8:厚みTが0.5μm以上5μm以下)が好ましく、1μm以上、3μm以下がより好ましい。一方、樹脂成形体全体の厚みが5μmを超える場合には、均一塗布が困難となり、樹脂層の外観品位やカールが悪化する可能性がある。
【0070】
前記樹脂層は、光沢性、耐指紋性、成型性、意匠性、耐傷性、防汚性、耐溶剤性、反射防止、帯電防止、導電性、熱線反射、近赤外線吸収、電磁波遮蔽、易接着等の他の機能を有してもよい。
【0071】
また、前記樹脂層の上に、さらに1つ以上の層を形成してもよく、例えば前述の機能を有する機能層、粘着層、電子回路層、印刷層、光学調整層等や他の機能層を設けてもよい。前記樹脂層が複数層からなる場合には、各層を形成する樹脂材料の硬度や厚さを設計することで本発明の積層体および樹脂層が満たすべき前述のパラメータを調整することが容易となる。
【0072】
[支持基材]
本発明の積層体に用いられる支持基材を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、ホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。支持基材を構成する樹脂は、成形性が良好であれば好ましく、その点から熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0073】
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂・3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂・4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体・フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂などを用いることができる。熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂は、十分な延伸性と追従性を備える樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、強度・耐熱性の観点から、特に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、もしくはメタクリル樹脂であることがより好ましい。
【0074】
本発明におけるポリエステル樹脂とは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、酸成分およびそのエステルとジオール成分の重縮合によって得られる。具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。またこれらに酸成分やジオール成分として他のジカルボン酸およびそのエステルやジオール成分を共重合したものであってもよい。これらの中で透明性、寸法安定性、耐熱性などの点でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートが特に好ましい。
【0075】
また、支持基材には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。支持基材は、単層構成、積層構成のいずれであってもよい。
【0076】
前記樹脂層を形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。また、支持基材の表面は、易接着層、帯電防止層、アンダーコート層、紫外線吸収層などの複数の機能性層をあらかじめ設けることも可能である。
【0077】
なお支持基材の粗さについては特に限定されないが後述する樹脂層の表面粗さに影響する可能性があるため、5μm四方の領域の平均粗さRaが8.0nm以下であることが好ましい。
【0078】
支持基材としては、樹脂層の転写が可能であれば特に限定されないが、樹脂層と接する面に離型層を有する支持基材を用いることが好ましい。離型層の詳細については後述する。
【0079】
[離型層]
本発明の積層体は離形層を含むことができる。離型層は少なくとも支持基材の一方の面にあり、離型層の支持基材とは反対の面に、樹脂層を設けることにより使用される。離型層は、密着性や帯電防止性、耐溶剤性等を付与する観点から複数の層から構成されていてもよく、支持基材の両面にあってもよい。
【0080】
離型層の厚みは、本発明の積層体が満たすべき条件に適合するものであれば、特に限定されないが、離型層の面内均一性、品位、剥離力の面から10~500nmであることが好ましく、20~300nmであることがより好ましい。一方、離形層の表面粗さについても。同様に特に限定されないが、後述する樹脂層の表面粗さに影響する可能性があるため、5μm四方の領域の平均粗さRaが概ね、5.0nm以下であることが好ましい。
【0081】
また離型層の材料は特に限定されないが、後述する離型層用塗料組成物により形成されていることが好ましく、後述する離型層の製造方法により、塗布、乾燥、硬化することにより支持基材の表面に形成することが好ましい。
【0082】
[離型層を有する支持基材のテープ剥離力]
本発明の積層体および本発明の樹脂層の製造に好適に使用される離型層を有する支持基材には好ましい剥離力の範囲が存在する。具体的には、支持基材はJIS Z 1522:2009で規定されるテープによる剥離力が3.0N/25mm以上(条件3)であることが好ましい。3.0N/25mmに満たない場合には、搬送時に樹脂層の浮きが起こり、転写不良や千切れた箔による工程汚染が発生する場合がある。詳細な評価方法については実施例の項に後述する。
【0083】
[支持基材の樹脂層との剥離力]
一方、前記積層体の支持基材を樹脂層から180°方向に剥離して得られる剥離力(前述のN2)にも好ましい数値範囲が存在する。具体的にはN2が0.01N/25mm以下であることが好ましい。N2が0.01N/25mmを超える場合には、樹脂層を転写する際に剥離不良が起こるなど、均一な転写が難しくなる場合がある。
【0084】
[樹脂層の組成]
更に本発明の積層体中の樹脂層には、好ましい組成があり、具体的には化学式1から3のセグメントを含むことが好ましい。樹脂層に化学式1から3で表されるセグメントを含むかどうかは、例えば赤外線分光法(IR-spectroscopy)などの手法で化学式1~3の構造に起因する吸収ピークを検出することで判定できるほか、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)を用いて、以下の条件で分析することで、化学式1から3で表される樹脂成分の有無を判別することができる。
【0085】
【化11】
【0086】
【化12】
【0087】
【化13】
【0088】
、Rは水素、またはメチル基である。
【0089】
、Rは、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
樹脂層が、化学式1のセグメントを含むことで、耐溶媒性などの後工程に対する耐性を付与すること、化学式2や化学式3のセグメントを含むことにより、それぞれのセグメントの相互作用をもたらすことができるため、強靭さを付与することができる。
【0090】
樹脂層の好ましい組成については後述する塗料組成物を変更することにより調整を行うことができる。具体的な好ましい材料の形態については[樹脂前駆体]の項に後述する。
【0091】
また本発明の樹脂フィルムは、本発明の積層体から樹脂層のみ剥がして得られるフィルムなので、本発明の樹脂フィルムは、前述の本発明の積層体中の樹脂層と基本的に同様の組成を用いることができる。つまり、本発明の樹脂フィルムは、前述の化学式1のセグメントを含むことが好ましい。さらに本発明の樹脂フィルムは、前述の化学式2及び化学式3のセグメントを含むことがより好ましい。これの理由などは、樹脂層の項で説明したとおりである。
【0092】
[離型層用塗料組成物]
離型層用塗料組成物は、得られた積層体が満たすべき条件に適合するものであれば、その材料に特に限定されないが、反応性部位を有するシリコーン系樹脂または有機樹脂変性シリコーンレジンと、反応性部位を有するポリアルキレンオキサイドを含む樹脂と、それらと反応可能な有機樹脂成分から構成されることが好ましい。
【0093】
反応性部位を有するシリコーン系樹脂としては、反応性部位で変性したポリジメチルシロキサン、または反応性部位で変性したシリコーンオリゴマーが好ましい。変性部位は、ポリマー、オリゴマーの側鎖、両末端、片末端のいずれでもよく、反応性部位はアミノ、エポキシ、カルビノール、ジオール、メルカプト、カルボキシル、フェノール、シラノール、(メタ)アクリル、カルボン酸無水物、などのいずれでもよく、後述する、ジメチルシロキサンの部分の分子量や、変性部位の官能基当量は適宜選択される。
【0094】
有機樹脂変性シリコーンレジンは、シリコーン系樹脂の粘弾性や、表面自由エネルギー調整のため、に用いられ、エポキシ、アルキッド、ポリエステステル等の樹脂などで変性された、シリコーンレジンが挙げられる。
【0095】
ポリアルキレンオキサイドを含む樹脂としては、アルキレンオキサイドセグメントを含むポリオールや、(メタ)アクリレート、エポキシ、カルボン酸などの反応性部位で変性された変性ポリオールが挙げられる。また、前述のシリコーン樹脂と一体化したものとして、ポリエーテルが反応性部位となった、変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0096】
上記の材料と反応可能な有機樹脂は特に限定されず、アクリルポリオールなどのアクリル樹脂、アルキド樹脂などのポリエステルや、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0097】
[離型層の製造方法]
本発明の積層体および樹脂層を製造するのに好ましい離形層は、その製造方法には特に限定されないが、離型層用塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより塗布することにより塗布層を形成することが好ましく、グラビアコート法またはダイコート法が好ましい。
【0098】
次いで、支持基材等の上に塗布された塗布層を乾燥する。得られる塗布層中から完全に溶媒を除去することに加え、塗膜の硬化を促進する観点からも、乾燥工程では塗膜の加熱を伴うことが好ましい。
【0099】
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
【0100】
さらに、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。
【0101】
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)であることが好ましい。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100~3,000(mW/cm)、好ましくは200~2,000(mW/cm)、さらに好ましくは300~1,500(mW/cm)、となる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が、100~3,000(mJ/cm)、好ましくは200~2,000(mJ/cm)、さらに好ましくは300~1,500(mJ/cm)となる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
【0102】
上述のようにして、支持基材上に形成した塗布層を乾燥、硬化することにより支持基上に離型層を形成することが好ましい。
【0103】
[樹脂層の表面粗さ]
本発明の樹脂層の持つ2つの面の粗さには好ましい数値範囲が存在する。具体的な測定方法については実施例の項に後述するが、本発明の積層体において、樹脂層の支持基材と反対側の面(表面)の表面粗さをsRa、支持基材側の面(裏面)の表面粗さをrRaとした場合、(rRa-sRa)/sRaが以下の式を満たすことが好ましい。
【0104】
-0.5 < (rRa-sRa)/sRa < 1.5 (条件6)
同様に、本発明の樹脂フィルムにおいても、表面粗さsRa、rRaについて好ましい値が存在し、以下の条件10を満たすことが好ましい。
【0105】
条件10: 5μm角の範囲における表面粗さの数値がより小さい面の表面粗さsRaと表面粗さの数値がより大きい面の表面粗さrRaが以下の式を満たす。
【0106】
(rRa-sRa)/sRa < 1.5
ここで(rRa-sRa)/sRaとは樹脂層の表面および裏面粗さの差を比率で表現するパラメータである。平均表面粗さRaは樹脂層の各面の表面積と相関するパラメータであり、片方の面の表面積に偏りが生じることは、収縮応力の不均衡によるカールの発生や、前述の剥離力の不均一差に影響を制御する因子となり得る。加えて、表面粗さは樹脂層の透明性などの品位に直接影響するパラメータでも有り、両面の粗さに大きな差があることは、品位の面からも好ましくない。
【0107】
パラメータ(rRa-sRa)/sRaを制御する方法としては例えば支持基材の表面粗さの設計や、粒子材料の添加、レベリング材や乾燥設計による調整や、樹脂層硬化時の表面へのパターン転写などの方法を用いることができる。またパラメータ(rRa-sRa)/sRaは0に近い値を有することが好ましいが、(rRa-sRa)が負の値を有する側が不安定になりやすい傾向にある。これは積層体における支持基材-樹脂層界面が相対的に粗い方が安定であることを意味し、当該界面が平滑な場合には剥離力が低下しやすく、搬送時の浮きが生じやすくなることに相当する。
【0108】
具体的な数値範囲しては(rRa-sRa)/sRaが-0.5より大きく、1.5より小さいことが好ましく、-0.3より大きく、1.0より小さいことがより好ましい。(rRa-sRa)/sRaが-0.5以下となる場合には搬送時の浮きが生じやすくなる場合がある。一方1.5以上となる場合には、特定の面の粗さが大きく、樹脂層の品位の低下や、収縮の原因になる場合がある。
【0109】
一方、樹脂層単体の場合には、表面粗さの数値がより大きい面の値をrRa、表面粗さの数値がより小さい面の値をsRaとしたとき、(rRa-sRa)/sRa < 1.5が好ましい。1.5以上となる場合には、特定の面の粗さが大きく、樹脂層の品位の低下や、収縮の原因になる場合がある。
【0110】
[樹脂層の弾性率]
樹脂層単体の場合、つまり本発明の樹脂フィルムは、以下の条件9を満たすことが好ましい。
【0111】
条件9: 5μm角の範囲における一方の面の弾性率Es[GPa]と他方の面の弾性率Er[GPa]および厚みT[μm]が以下の式を満たす。
【0112】
0.5 < |Es - Er|/T < 2.0
|Es - Er|/Tが0.5を超えて2.0未満であれば、よりカールを抑制しつつ、搬送の安定性、厚みの均一性等を両立することができるため好ましい。
【0113】
|Es - Er|/Tが0.5以下の場合には、厚みが厚くなれば、カールを誘発する場合がある。一方(Es - Er)/Tが2.0以上となる場合には、樹脂層の表裏での弾性率のバランスが取れず、やはりカールを誘発する場合がある。
【0114】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は支持基材上に前述の条件1および2、または得られる樹脂層が条件7、8および9をすべて満たすことができれば特に限定されないが、前述の好ましい支持基材の離型層の上に、樹脂組成が厚み方向に異なる樹脂層を形成できる製造方法が好ましい。樹脂組成が厚み方向に異なる樹脂層を形成するには、少なくとも2種類以上の塗料組成物を、逐次または同時に塗布し、次いで乾燥、硬化することで樹脂層を形成する、積層体の製造方法であることが好ましく、少なくとも2種類以上の塗料組成物を同時に塗布する積層体の製造方法の方がより好ましい。
【0115】
ここで「逐次に塗布する」もしくは「逐次塗布」とは、1種類の塗料組成物を塗布して塗布層を形成後、乾燥-硬化し、次いで異なる種類の塗料組成物を同様に、塗布-乾燥-硬化することで、複数の層からなる樹脂層を形成することを意図しているものである。塗布方法は、特に限定されないが、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などから適宜、選択できる。この「逐次塗布」において形成される樹脂層は、用いる塗料組成物の種類、数を適宜選択することにより、樹脂層内の厚み方向に樹脂組成の異なる樹脂層を形成することができる。乾燥、硬化方法については後述する。
【0116】
また、「同時に塗布する」もしくは「同時塗布」とは、2種類以上の塗料組成物を支持基材上に塗布して、2層以上の塗布層を有する塗膜を支持基材上に形成し、次いで、乾燥、硬化することにより形成する方法である。2層以上の塗布層を有する塗膜を支持基材上に形成できれば、塗布方法は特に限定されないが、2種類以上の塗料組成物をダイコート法により、支持基材上にして塗布し、2層以上の塗布層を有する塗膜を形成する方法が好ましい。
【0117】
ここで塗布層とは、支持基材上に塗布された個々の塗料組成物により形成された「液体の層」を指し、「塗膜」とは支持基材上に形成された塗布層全体を指し、塗膜が前述の乾燥・硬化工程を経て、液体から固体になることにより、前述の樹脂層が形成される。塗料組成物の定義については後述する。
【0118】
前述の同時塗布が可能なダイコート法には、各塗料組成物がダイのスロットを経て層状に吐出し、スライド面上で積層させてから塗布することで、複数層の塗布層からなる塗膜を形成する「多層スライドダイコート」(図5)や、複数のスロットを有するダイに複数の塗料組成物を供給することで、基材上に塗布と同時に複数の塗布層からなる塗膜を形成する「多層スロットダイコート」(図6)、支持基材上に1層の塗布層を形成後、未乾燥の状態でもう1層の塗布層を積層させて塗膜を形成する「ウェット-オン-ウェットコート」(図7)等があり、いずれの方法を用いてもよい。
【0119】
以下、各種ダイコート法および塗布層の例について、図面を用いて説明する。
【0120】
図5は、多層スライドダイコートの一例で、4層同時塗布の断面図を示す。各塗布層を形成する塗料組成物は、4層スライドダイ26の最も上流側のスロット27、上流側から2番目のスロット28、上流側から3番目のスロット29、最も下流側のスロット30に供給され、スライド面31上に吐出される。スライド面31は傾斜しているため、吐出された各塗料組成物はスライド面上を流下する過程で積層される。支持基材は上流側33から下流側34に向かって搬送され、ダイリップ32にてスライド面31を流下してきた塗料組成物が支持基材上に塗布され、支持基材上に4つの塗布層を有する塗膜が形成される。
【0121】
図6は、多層スロットダイコートの一例で、2層同時塗布の断面図である。各塗布層を形成する塗料組成物は、2層スロットダイ35の上流側のスロット36と、下流側のスロット37に供給される。これらの塗料組成物は、スロットから吐出された後、ダイリップ部38で合流する。
【0122】
支持基材は、上流側39から下流側40に向かって搬送される、ダイリップ部38で支持基材上に塗布され、2つの塗布層を有する塗膜が形成される。
【0123】
図7は、ウェット-オン-ウェットコートの一例を示す断面図である。この例では、上流側単層スロットダイ41、下流側単層スロットダイ42に、各塗布層を形成する塗料組成物を供給する。まず、上流側単層スロットダイ41より吐出された塗料組成物は、上流側43から支持基材の下流側44に向かって搬送される支持基材上に塗布されて、1層の塗布層を有する塗膜が形成される。次いで下流側単層スロットダイ42より吐出された塗料組成物が、上記単層スロットダイ41より塗布された塗膜上に塗布されて、2層の塗布層を有する塗膜が形成される。
【0124】
乾燥では、支持基材等の上に塗布された塗膜を乾燥する。得られる積層体中から完全に溶媒を除去することに加え、乾燥工程では塗膜の加熱を伴うことが好ましい。
【0125】
乾燥工程における加熱方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などの方法が挙げられる。この中でも、精密に幅方向も乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方法が好ましい。
【0126】
乾燥工程に続いて、熱または活性エネルギー線を照射することによる、さらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。
【0127】
活性エネルギー線としては、汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)が好ましい。紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化することがより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、表面の硬化が弱くなり、靭性が低くなる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いる場合、紫外線の照度が好ましくは100~3,000mW/cm、より好ましくは200~2,000mW/cm、さらに好ましくは300~1,500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましい。紫外線の積算光量は、好ましくは100~3,000mJ/cm、より好ましくは200~2,000mJ/cm、さらに好ましくは300~1,500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましい。ここで、紫外線の照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計および被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
【0128】
[樹脂層用塗料組成物]
本発明の積層体の製造方法は特に限定されないが、本発明の積層体は、前述の支持基材の少なくとも一方に塗料組成物を塗布し、必要に応じて乾燥・硬化する工程を経て得ることができる。
【0129】
ここで「塗料組成物」とは、溶媒と溶質からなる液体であり、前述の支持基材上に塗布し、溶媒を乾燥する工程で揮発、除去、さらに必要に応じて硬化させることにより樹脂層を形成可能な材料を指す。ここで、塗料組成物の「種類」とは、塗料組成物を構成する溶質の種類が一部でも異なる液体を指す。この溶質は、樹脂もしくは塗布プロセス内でそれらを形成可能な材料(以降これを樹脂前駆体と呼ぶ)、粒子、および重合開始剤、硬化剤、触媒、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤からなる。
【0130】
[樹脂前駆体]
樹脂前駆体は、それ自身、もしくは溶媒に溶解することで塗料組成物を調製することができ、溶媒の揮発、およびそれ自身の重合、架橋反応により塗膜を硬化可能な材料を指す。
【0131】
すなわち、本発明の積層体の樹脂層、および積層体から離型フィルムを剥がしてなる樹脂フィルムは、樹脂前駆体を、架橋してなる硬化物を含む。
【0132】
また、前述の本発明の積層体の製造方法において、樹脂前駆体は、活性エネルギー線により、それ自身もしくは活性エネルギー線により開裂可能な光重合開始剤を併用することで重合し、塗膜を硬化可能な材料が好ましい。
【0133】
具体的には、活性エネルギー線として紫外線を用い、光重合開始剤を併用する場合に好ましい樹脂前駆体は、多官能(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン、(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン加水分解物、(メタ)アクリル基を有するアルコキシシランオリゴマー、(メタ)アクリル基を有するアクリル系ポリマー、(メタ)アクリル基を有するウレタン系ポリマー、(メタ)アクリル基を有するエポキシ系ポリマー、(メタ)アクリル基を有するシリコーン系ポリマーである。
【0134】
多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0135】
また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”(登録商標)シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”(登録商標)シリーズなど)、新中村化学株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“UNIDIC”(登録商標)など)、東亞合成株式会社;(“アロニックス”(登録商標)シリーズなど)、日油株式会社;(“ブレンマー”(登録商標)シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”(登録商標)シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0136】
(メタ)アクリル基を有するアクリル系ポリマーとしては、多官能アクリレートモノマー(例、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系ポリマーの例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコーン系ポリマーとしては、シラン化合物(例、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)と反応性基(例、エポキシ、メタクリル)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。また、各種ポリマーは、不飽和基を含有せず、重量平均分子量が5,000~200,000で、ガラス転移温度が20~200℃のものを用いることができる。
【0137】
本発明の積層体の樹脂層、および樹脂フィルムは、官能基当量が異なる2種類の樹脂前駆体を架橋させてなる硬化物を含むことが好ましく、さらに樹脂前駆体の組み合わせが特定の範囲であることがより好ましい。
【0138】
具体的には、官能基当量が異なる2種類の樹脂前駆体のうち、官能基当量が小さい方の樹脂前駆体(樹脂前駆体Aとする)と官能基当量が大きい方の樹脂前駆体(樹脂前駆体Bとする)が、以下の条件を満たすことが好ましい。
【0139】
条件7(条件11): 樹脂前駆体Aの官能基当量(QA)と、樹脂前駆体Bの官能基当量(QB)が、以下の式を満たす。
【0140】
0.01< QA/QB <0.05
100(g/eq)< QA < 400(g/eq)
ここで官能基当量とは、樹脂前駆体の重量平均分子量を官能基の数で割った値を指す。ここでいう官能基は架橋反応を起こす官能基を指す。
【0141】
2種類の樹脂前駆体が、条件7(条件11)を満たすことにより、パラメータ(Es - Er)/Tの調製や、樹脂層や樹脂フィルムの、耐溶媒性が向上する。
【0142】
さらに、樹脂前駆体A及び樹脂前駆体Bは、前述の化学式2および化学式3のセグメントを含むことが好ましい。化学式2および3のセグメントを含むことにより、それぞれのセグメントの相互作用をもたらすことができるため、強靭さを付与することができる。
【0143】
[粒子材料、粒子成分]
本発明の積層体の樹脂層は、粒子成分を含んでもよい。ここで、粒子とは無機粒子、有機粒子のいずれでもよいが、耐傷性の観点から無機粒子が好ましい。
【0144】
無機粒子の種類数としては、1種類以上20種類以下が好ましい。無機粒子の種類数は1種類以上10種類以下がさらに好ましく、1種類以上4種類以下が特に好ましい。ここで、「無機粒子」とは表面処理を施したものも含む。この表面処理とは、粒子表面に化合物を化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)によって導入することを指す。
【0145】
ここで無機粒子の種類とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まり、何らかの表面処理を行う場合には、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。例えば、酸化チタン(TiO2)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2-x)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の無機粒子である。また、同一の元素、例えばZnおよびOのみからなる粒子(ZnO)であれば、その数平均粒子径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。
【0146】
ここで、本発明にて用いられる塗料組成物中に存在する粒子を「粒子材料」、前記塗料組成物を塗工、乾燥、硬化処理もしくは蒸着等の処理により形成された前記樹脂層に存在する粒子を「粒子成分」という。
【0147】
無機粒子は特に限定されないが、金属や半金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩であることが好ましく、2種類の金属、半金属を含む複合酸化物や、格子間に異元素が導入されたり、格子点が異種元素で置換されたり、格子欠陥が導入されていてもよい。
【0148】
無機粒子はSi、Al、Ca、Zn、Ga、Mg、Zr、Ti、In、Sb、Sn、BaおよびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属や半金属が酸化された酸化物粒子であることがさらに好ましい。
【0149】
具体的にはシリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)およびインジウムスズ酸化物(In)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物や半金属酸化物である。特に好ましくはシリカ(SiO)である。
【0150】
[溶媒]
本発明の積層体の製造方法に用いる塗料組成物は溶媒を含んでもよく、塗膜を面内に均一に形成し、また1つの層のなかで徐々に組成をかえていくためには、溶媒を含む方が好ましい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下、特に好ましくは1種類以上4種類以下である。
【0151】
ここで「溶媒」とは、塗布後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。
【0152】
ここで、溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2-プロパノールと、n-プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
【0153】
さらに、溶媒を含む場合には以下の特性を示す溶媒であることが好ましい。
【0154】
[塗料組成物中のその他の成分]
また、塗料組成物は、重合開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。重合開始剤および触媒は、樹脂層の硬化を促進するために用いられる。重合開始剤としては、塗料組成物に含まれる成分をアニオン、カチオン、ラジカル重合反応等による重合、縮合または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
【0155】
重合開始剤、硬化剤および触媒は種々のものを使用できる。また、重合開始剤、硬化剤および触媒はそれぞれ単独で用いてもよく、複数の重合開始剤、硬化剤および触媒を同時に用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。また、ウレタン結合の形成反応を促進させる架橋触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどが挙げられる。
【0156】
また、前記塗料組成物は、アルコキシメチロールメラミンなどのメラミン架橋剤、3-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸などの酸無水物系架橋剤、ジエチルアミノプロピルアミンなどのアミン系架橋剤などの他の架橋剤を含むことも可能である。
【0157】
光重合開始剤としては、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましい。アルキルフェノン形化合物の具体例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタン、1-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-エトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン、およびこれらの材料を高分子量化したものなどが挙げられる。
【0158】
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、樹脂層を形成するために用いる塗料組成物にレベリング剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を加えてもよい。これにより、樹脂層はレベリング剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を含有することができる。レベリング剤の例としては、アクリル共重合体またはシリコーン系、フッ素系のレベリング剤が挙げられる。紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シュウ酸アニリド系、トリアジン系およびヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が挙げられる。帯電防止剤の例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩が挙げられる。
【0159】
上述のようにして、支持基材上または離型層上に形成した塗布層を乾燥、硬化することにより樹脂層を形成することが好ましい。
【0160】
[用途]
本発明の積層体は耐傷性、表面形状への追従性等を活かし、例えばプラスチックスや金属で構成された成型体の表面保護に好適に用いることができる。さらに、本発明の樹脂層は、例えば成型体の保護層として好適に用いることができる。
【実施例
【0161】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0162】
[離型層用塗料組成物1]
下記材料を混合し、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度5質量%の離型層用塗料組成物1を得た。
・片末端型カルビノール変性反応型シリコーンオイル
(X-22-170DX信越化学工業(株) 固形分濃度 100質量%):1質量部
・両末端型ポリエーテル変性反応型シリコーンオイル
(X-22-4952信越化学工業(株) 固形分濃度 100質量%):5質量部
・アクリル変性アルキド樹脂
(ハリフタール KV-905 ハリマ化成株式会社 固形分濃度 53質量%) 100質量部
・イソブチルアルコール変性メラミン樹脂
(メラン2650L 日立化成株式会社 固形分濃度 60質量%):20質量部
・パラトルエンスルホン酸: 5質量部。
【0163】
[離型層用塗料組成物2]
下記材料を混合し、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度5質量%の離型層用塗料組成物2を得た。
・側鎖型カルビノール変性反応型シリコーンオイル
(X-22-4015信越化学工業(株) 固形分濃度 100質量%):5質量部
・両末端型ポリエーテル変性反応型シリコーンオイル
(X-22-4952信越化学工業(株) 固形分濃度 100質量%):5質量部
・アクリル変性アルキド樹脂
(ハリフタール KV-905 ハリマ化成株式会社 固形分濃度 53質量%) 100質量部
・イソブチルアルコール変性メラミン樹脂
(メラン2650L 日立化成株式会社 固形分濃度 60質量%):20質量部
・パラトルエンスルホン酸: 5質量部。
【0164】
[離型層用塗料組成物3]
下記材料を混合し、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度5質量%の離型層用塗料組成物3を得た。
・長鎖アルキル基含有アミノアルキド樹脂のトルエン/キシレン/イソブタノール/メタノール混合溶液
(日立化成(株)社製、テスファイン305、固形分濃度 50質量%)。
【0165】
[樹脂層用塗料組成物の作成]
[樹脂層用塗料組成物1]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物1を得た。
・樹脂前駆体A: 多官能アクリレート樹脂 80質量部
(STAR-501 大阪有機合成化学株式会社 固形分濃度100質量% 官能基数:100)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー 20質量部
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量% 官能基数:2)
・レベリング剤 1質量部
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%)
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0166】
[樹脂層用塗料組成物2]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物2を得た。
・樹脂前駆体A: 多官能アクリレート樹脂 50質量部
(STAR-501 大阪有機合成化学株式会社 固形分濃度100質量% 官能基数:100)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー 50質量部

(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量% 官能基数:2)
・レベリング剤 1質量部
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%)
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0167】

[樹脂層用塗料組成物3]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物3を得た。
・樹脂前駆体A: 多官能アクリレート樹脂 80質量部
(ビスコート#1000 大阪有機合成化学株式会社 固形分濃度100質量% 官能基数:14)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー 20質量部
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量% 官能基数:2)
・レベリング剤 1質量部
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%)
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0168】

[樹脂層用塗料組成物4]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物4を得た。
・樹脂前駆体A: 多官能アクリレート樹脂 95質量部
(STAR-501 大阪有機合成化学株式会社 固形分濃度100質量% 官能基数:100)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー 5質量部
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量% 官能基数:2)
・レベリング剤 1質量部
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%)
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0169】

[樹脂層用塗料組成物5]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物5を得た。
・樹脂前駆体A: 多官能アクリレート樹脂 70質量部
(STAR-501 大阪有機合成化学株式会社 固形分濃度100質量% 官能基数:100)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー 20質量部
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量% 官能基数:2)
・シリカ粒子分散液 22質量部
(MEK-AC-2140Z 日産化学工業株式会社製 固形分濃度46質量%)
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0170】

[樹脂層用塗料組成物6]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物6を得た。
・樹脂前駆体A: 多官能アクリレート樹脂 80質量部
(EBECRYL8528 ダイセル・オルネクス株式会社製 固形分濃度100質量% 官能基数:4)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー 5質量部
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量% 官能基数:2)
・レベリング剤 1質量部
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%)
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0171】

[樹脂層用塗料組成物7]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物7を得た。
・多官能アクリレート樹脂 100質量部
(STAR-501 大阪有機合成化学株式会社 固形分濃度100質量% 官能基数:100)
・レベリング剤 1質量部
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%)
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0172】

[樹脂層用塗料組成物8]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物8を得た。
・ 多官能アクリレート樹脂 100質量部
(“KAYARAD”(登録商標) DPHA 日本化薬株式会社製 官能基数:4)
・レベリング剤 1質量部
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%)
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0173】

[樹脂層用塗料組成物9]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物6を得た。
・ 多官能アクリレート樹脂 100質量部
(EBECRYL8402 ダイセル・オルネクス株式会社製 固形分濃度100質量% 官能基数:2)
・レベリング剤 1質量部
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%)
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0174】

[樹脂層用塗料組成物10]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物10を得た。
・ウレタンアクリレートオリゴマー 100質量部
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量% 官能基数:2)
・レベリング剤 1質量部
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%)
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0175】
[樹脂層用塗料組成物11]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物11を得た。
・樹脂前駆体A: ウレタンアクリレートオリゴマーA1 80質量部
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマーB1 20質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0176】
ウレタンアクリレートオリゴマーA1の合成方法は、以下の通りである。 ビスフェノールA型ジエポキシ樹脂(YD-8125 新日鐵化学株式会社製)108質量部、(メタ)アクリル酸誘導体として,アクリル酸45質量部、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部、触媒としてジメチルアミノエチルメタアクリレート0.8質量部を入れ、攪拌しながら95℃まで昇温させ、95℃に保持した状態で14時間反応を続けた。酸価が1mgKOH/g以下になったところで一段目の反応を終了し、2個の水酸基を有するエポキシアクリレートを得た。
【0177】
次に、60℃まで降温した後、希釈溶剤として酢酸エチルを添加し、触媒としてジラウリン酸ジ-n-ブチル錫0.03質量部を添加し、攪拌しながら、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート83質量部を、2時間に渡って滴下し、続いてペンタエリスリトールトリアクリレート 94質量部を1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、5官能、重量平均分子量の1200のウレタンアクリレートオリゴマーA1を得た。
【0178】
ウレタンアクリレートオリゴマーB1の合成方法は以下の通りである。ポリテトラメチレングリコール(PTMG1000 三菱ケミカル株式会社製)70質量部、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(ニューポールBPE-40 三洋化成株式会社製)33質量部、酢酸エチルを入れ、内温60℃になるように加温した。合成触媒としてジラウリン酸ジ-n-ブチル錫0.03質量部を添加し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート31質量部を1時間かけて滴下、滴下終了後2時間反応を続行した。
【0179】
続いて、2-ヒドロキシエチルアクリレート2.4質量部を、1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、2官能の重量平均分子量14000のウレタンアクリレートオリゴマーB1を得た。
【0180】
[樹脂層用塗料組成物12]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物12を得た。
・樹脂前駆体A:ウレタンアクリレートオリゴマーA1 60質量部
・樹脂前駆体B:ウレタンアクリレートオリゴマーB1 40質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0181】
[樹脂層用塗料組成物13]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物13を得た。
・樹脂前駆体A: ウレタンアクリレートオリゴマーA1 80質量部
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマーB2 20質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0182】
樹脂前駆体B2の合成方法は、以下の通りである。ポリテトラメチレングリコール(PTMG1000 三菱ケミカル株式会社製)70質量部、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(ニューポールBPE-40 三洋化成株式会社製)33質量部、酢酸エチルを入れ、内温60℃になるように加温した。合成触媒としてジラウリン酸ジ-n-ブチル錫0.03質量部を添加し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート31質量部を1時間かけて滴下、滴下終了後2時間反応を続行した。
【0183】
続いて、2-ヒドロキシエチルアクリレート1.2質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート3.0質量部、を1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、樹脂前駆体Bとして、4官能の重量平均分子量15000のウレタンアクリレートオリゴマーB2溶液を得た。
【0184】
[樹脂層用塗料組成物14]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物12を得た。
・樹脂前駆体A: ウレタンアクリレートオリゴマー 8090質量部
(EBCRYL3701 ダイセルオルネクス株式会社 官能基数:2)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー B1 2010質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0185】
[離型層付き支持基材1~4の作成]
前述の離型層用塗料組成物と支持基材を用いて、以下の方法を用いて離型層を形成し、離型層付き支持基材を作成した。使用する離型層用塗料組成物と離型層の形成方法、離型層厚みの組み合わせは、表1に記載の通りである。
【0186】
[離型層の形成方法1]
小径グラビアコーターを有する塗布装置を用い、厚み50μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R75X)に、離型層用塗料組成物を表1に記載の離型層厚みになるように、グラビア線数、周速、固形分濃度を調整して塗布し、次いで熱風温度140℃にて30秒保持することで、乾燥と硬化を行い離型層付き支持基材を得た。
【0187】
[離型層の形成方法2]
小径グラビアコーターを有する塗布装置を用い、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム(株)製TD40UL)に、離型層用塗料組成物を表1に記載の離型層厚みになるように、グラビア線数、周速、固形分濃度を調整して塗布し、次いで熱風温度140℃にて30秒保持することで、乾燥と硬化を行い離型層付き支持基材を得た。
【0188】
[積層体の作成]
前述の樹脂層用塗料組成物と離型層付き支持基材を用いて、樹脂層を形成し、積層体を作成した。使用する樹脂層用塗料組成物と樹脂層の形成方法、樹脂層厚みの組み合わせは、表1に記載の通りである。
【0189】
[樹脂層の形成方法1]
単層スロットダイコーターを有する連続塗布装置を用い、表1に記載の支持基材と塗料組成物の組み合わせについて、表1に記載の樹脂層厚みになるようにスロットからの吐出流量を調整して塗布し、次いで乾燥、硬化を行い、樹脂層を形成した。乾燥、硬化条件は以下の通りである。
【0190】
(乾燥条件)
送風温湿度 : 温度:80℃、相対湿度:1%以下
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
乾燥時間 : 2分間
(硬化条件)
照射出力 : 400W/cm
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 0.1体積%以下。
【0191】
[樹脂層の形成方法2]
図6に記載の2層スロットダイコーターを有する連続塗布装置を用い、表1に記載の支持基材と2種類の塗料組成物の組み合わせについて、表1に記載の2層の樹脂層厚みになるように、上流側、下流側の各スロットからの吐出流量を調整して塗布し、次いで乾燥、硬化を行い、樹脂層を形成した。乾燥、硬化の条件は、積層体の作成方法1と同じである。
【0192】
以上の方法により実施例1~16、比較例1~3の積層体を作成した。各実施例、比較例に対応する上記積層体の作成方法は、表1に記載した。
【0193】
【表1】
【0194】
[樹脂前駆体Aと樹脂前駆体Bの官能基当量QA、ABついて]
樹脂前駆体Aと樹脂前駆体Bの官能基当量QA、ABは、樹脂前駆体の設計上の官能基数で、JIS K 7252-1(2016)に基づく重量平均分子量を除して算出した。
[積層体の物性評価]
実施例1~16および比較例1~3で作製した積層体について、以下に示す物性評価を実施し、得られた結果を表2および3にまとめた。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
【0195】
【表2】
【0196】
【表3】
【0197】
[樹脂層と支持基材との180°剥離力:N1およびN2]
積層体の樹脂層側の表面に、粘着フィルム(パナック株式会社 パナクリーンPD-S1 25μm品)の一方のセパレーターを剥がした面を気泡が入らないように貼合し、次いで、10mm幅×150mm長の矩形に、端部にクラックが入らないように切り出し、次いで前記粘着フィルムのもう一方の面のセパレーターを剥がして気泡が入らないように、PETフィルム(188μm 東レ(株)“ルミラー”(登録商標) T60)に貼り付け積層サンプルを作成した(PET/粘着フィルム/樹脂層/支持基材が積層)。
【0198】
続いて上記積層サンプルの長手方向が引っ張り試験機の引っ張り方向と一致するように、上記積層サンプルのPETフィルム側の面を引張試験機で固定し、さらに引っ張り試験器に固定した積層サンプル支持基材側の面に日東電工社製ポリエステル粘着テープNO.31B(幅:10mm)を貼り合わせた。次いで支持基材ごとNO.31Bの一部を剥がして、180°曲げて引っ張り試験器のもう一方のアームに固定した。次いで、23℃65%RH環境下にて、引張試験機を用いて300(mm/分)の速度で180度剥離した時の抵抗値(N)を測定した。抵抗値(N)を支持基材および樹脂層の幅(m)で除して、180°剥離力N1(N/25mm)に換算した。
【0199】
続いて、樹脂層と支持基材面を入れ替えて同様の測定を実施した。積層サンプルの構成はPET/粘着フィルム/支持基材/樹脂層となり、NO.31Bを用いて樹脂層の一部を剥離することで剥離力を測定した。得られた抵抗値(N)を支持基材および樹脂層の幅(m)で除して、180°剥離力N2(N/25mm)に換算した。なお、以下で樹脂層の裏面および支持基材の測定、評価に当たっては、上記N1を算出する条件(すなわち、積層体を支持基材と樹脂層とに剥離する際に、前記樹脂層を180°方向に剥離する条件)によって樹脂層を剥離した後の樹脂層の裏面または支持基材について測定、評価を行った。
【0200】
また、樹脂フィルム(支持基材を有さない樹脂層単体の構成)を測定、評価する際には、積層体における測定、評価に準じて測定、評価を行った。
【0201】
[支持基材におけるテープ剥離力]
支持基材から樹脂層を剥離した後の支持基材を使用して、測定を実施した。支持基材の評価に使用しない側の面に、粘着フィルム(パナック株式会社 パナクリーンPD-S1 25μm品)の一方のセパレーターを剥がした面を気泡が入らないように貼合した。次いで、20mm幅×150mm長の矩形に、端部にクラックが入らない方法で切り出し、粘着フィルムのもう一方の面のセパレーターを剥がして気泡が入らないように、PETフィルム(188μm 東レ(株)“ルミラー”(登録商標) T60)に貼り付け積層サンプルを作成した(PET/粘着フィルム/支持基材(離形層がむき出し)の順)。
【0202】
続いて長手方向が引っ張り試験機の引っ張り方向と一致するように、上記積層サンプルの樹脂層が貼り付けられていない面を引張試験機で固定し、さらに引っ張り試験器に固定した積層サンプル支持基材側の面にJIS Z 1522:2009を満たすテープであるニチバン社製セロテープ(登録商標)No.405AP-15を貼り合わせた。次いでNo.405AP-15の一部を剥がして、180°曲げて引っ張り試験器のもう一方のアームに固定した。次いで、23℃65%RH環境下にて、引張試験機を用いて300(mm/分)の速度で180度剥離した時の抵抗値(N)を測定した。抵抗値(N)をNo.405AP-15の幅(15mm)で除した上で、180°剥離力(N/25mm)に換算し、JIS Z 1522:2009で規定されるテープによる剥離力とした。
【0203】
[樹脂層の表面および裏面の弾性率]
樹脂層の表面および裏面の弾性率の測定は、AFM(Burker Corporation製 DimensionIcon)を用い、PeakForceQNMモードにて測定を実施した。得られたフォースカーブから付属の解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」を用いて、JKR接触理論に基づいた解析を行い、弾性率分布を求めた。
【0204】
具体的にはまず樹脂層の測定面が上面に来るように両面テープを用いて試料台に固定した。この時、樹脂層は樹脂成形体のみの状態であってもよいし、下部に支持基材などの異なる層を含む状態であっても測定に大きな影響はない。次いでPeakForceQNMモードのマニュアルに従い、カンチレバーの反り感度、バネ定数、先端曲率の構成を行った後、下記の条件にて測定を実施し、得られたDMT ModulusチャンネルのデータをB面の弾性率として採用した。なお、バネ定数および先端曲率は個々のカンチレバーによってバラつきを有するが、測定に影響しない範囲として、バネ定数0.3(N/m)以上0.5(N/m)以下、先端曲率半径15(nm)以下の条件を満たすカンチレバーを採用し、測定に使用した。測定条件は下記に示す。
測定装置 : Burker Corporation製原子間力顕微鏡(AFM)
測定モード : PeakForceQNM(フォースカーブ法)
カンチレバー: ブルカーAXS社製SCANASYST-AIR
(材質:Si、バネ定数K:0.4(N/m)、先端曲率半径R:2(nm))
測定雰囲気 : 23℃・大気中
測定範囲 : 5(μm)四方
分解能 : 512×512
カンチレバー移動速度: 10(μm/s)
最大押し込み荷重 : 10(nN)。
【0205】
次いで得られたDMT Modulusチャンネルのデータを解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」にて解析し、Roughnessにて処理することにより得られた、ResultsタブのImage Raw Meanの値を弾性率とし、支持基材と反対側の面(表面)の弾性率をEr、支持基材側の面(裏面)の弾性率をEsとした。
【0206】
[樹脂層の表面および裏面の表面粗さ]
前述の弾性率測定と同様にして得られたデータの、Height Sensorチャンネルのデータを「NanoScopeAnalysis V1.40」にて解析し、Plane Fit(XY、3rd)にて平滑化を施した後、Roughnessにて処理することにより得られた、ResultsタブのRaの値を各面の平均粗さとした。
【0207】
なお積層体に含まれる樹脂層を評価する場合には、樹脂層の離形層と反対側の面(表面)をsRa、離形層と接する側の面(裏面)の平均表面粗さをrRaとした。一方、積層体から剥離済みの樹脂層の場合には、表面粗さの数値がより大きい面の値をrRa、小さい面の値をsRaとした。更に得られたrRa、sRa、rRaおよびsRaを用いてパラメータ (rRa-sRa)/rRaおよび(rRa-sRa)/rRaを算出した。
【0208】
[樹脂層の厚み:T、T
凍結ミクロトーム法により断面を切り出し、当該断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより、樹脂層の層厚みを測定した。具体的には、以下の方法に従い測定した。樹脂層の断面の超薄切片をTEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から、画像処理ソフトウェアImageJ(開発元:アメリカ国立衛生研究所(NIH))にて厚みを読み取った。合計で30点の層厚みを測定して求めた平均値を樹脂層の厚みとした。
【0209】
[パラメータ (Es-Er)/Tおよび(Es-Er)/Tの算出]
上記の方法にて測定した弾性率EsおよびEr、厚みTを用いてパラメータ (Es-Er)/Tを算出した。同様に、上記の方法にて測定した弾性率EsおよびEr、厚みTを用いてパラメータ (Es-Er)/Tを算出した。
【0210】
[積層体の特性評価]
積層体および樹脂層について、次に示す特性評価を実施し、得られた結果を表4に示す。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回評価し、その平均値を求め、少数第一位を四捨五入した。
【0211】
[樹脂層表面の耐擦傷性の評価]
実施例1~16および比較例1~3で作製した積層体について、#0000のスチールウールを用い、平面摩耗試験機(株式会社大栄科学精器製作所製 PA-300A)を用いて、荷重250kg/cmにて、樹脂層の表面を10往復摩擦し、傷の発生の有無を目視により観察し、以下の基準に則り判定を行い、4点以上を合格とした。
10点:0本
7点:1本以上、5本未満
4点:5本以上、10本未満
1点:10本以上。
【0212】
[樹脂層の剥離性の評価]
実施例1~16および比較例1~3で作製した積層体について、積層体の樹脂層の表面に、粘着フィルム(パナック株式会社 パナクリーンPD-S1 25μm品)の一方のセパレーターを剥がした面を気泡が入らないように貼合し、次いで粘着フィルムのセパレーターを剥がして、PETフィルム(188μm 東レ(株)“ルミラー”(登録商標) T60)に貼り付けた。
【0213】
支持基材と樹脂層を予め端部から少し剥離しておき、剥離した樹脂層を180度方向に剥離し、以下の基準に則り判定を行い、4点以上を合格とした。
10点:剥離速度10,000mm/minでも面内均一に剥がすことができる。
7点:剥離速度10,000mm/minでは面内均一に剥がすことができず、1,000mm/minでは面内均一にはがすことができる。
4点:剥離速度1,000mm/minでは面内均一に剥がすことができず、300mm/minでは面内均一にはがすことができる。
1点:300mm/minで面内均一に剥がすことができない。
【0214】
[樹脂層の品位の評価]
実施例1~16および比較例1~3で作製した積層体について、光源を樹脂層表面に映り込ませた状態で、50mを目視にて検査し、そのうち直径1mm以上の変形(ハジキ、異物)が観察された個数について、以下の基準に則り判定を行い、4点以上を合格とした。
10点:1個以下
7点:2個以上5個以下
4点:6個以上10個以下
1点:11個以上。
【0215】
[樹脂層の形状追随性の評価]
実施例1~16および比較例1~3で作製した積層体について、積層体の樹脂層の表面に、粘着フィルム(パナック株式会社 パナクリーンPD-S1 25μm品)の一方のセパレーター剥がした面を気泡が入らないように貼合し、次いで、90mm幅×90mm長の矩形に、端部にクラックが入らない方法で切り出し、もう一方の面のセパレーターを剥がして、直径30mmの円筒に貼り付け、このときの樹脂層の状態を観察し、以下の基準に則り判定を行い、平均点4点以上を合格とした。
10点:樹脂層をクラックや浮きが発生せず、均一に貼り付けることができる
7点:樹脂層の端部に微細なクラックが見られるが、それ以外は均一に貼り付けることができる
4点:樹脂層の端部や中央部に微細なクラックが見られるが、それ以外は均一に貼り付けることができる
1点:樹脂層の中央部にクラックや浮きが入り、均一に貼り付けることができない。
【0216】
[樹脂層の耐クラック性]
実施例1~16および比較例1~3で作製した積層体について、積層体の樹脂層の表面に、粘着フィルム(パナック株式会社 パナクリーンPD-S1 25μm品)の一方のセパレーター剥がした面を気泡が入らないように貼合し、直径6mmの書類用穴開けパンチで、穴を開けた。そして、粘着層のもう一方の面のセパレーターを剥がして、ガラスに貼合した。
【0217】
23℃50%の環境で48時間放置後、穴の周辺部について観察を行い、以下の基準に則り判定を行い、平均点4点以上を合格とした。
10点: 樹脂層の穴の周辺部に、クラック、欠けが見られない
7点: 樹脂層の穴の周辺部に、欠けはあるが、クラックはない
4点: 樹脂層の穴の周辺部に、穴の端部から0.5mm未満のクラックが見られる
1点: 樹脂層の穴の周辺部に、穴の端部から0.5mm以上のクラックが見られる
[樹脂層の浮きの評価]
実施例1~1216および比較例1~3で作製した積層体を、100×200mm角にカッターナイフで切断し、直径5mmの円筒に巻き付けた時に切断部の端部を観察し、以下の基準に則り判定を行い、4点以上を合格とした。
10点:カッターナイフで切断した時の端部、および円筒に巻き付けたときの端部のいずれも、浮きが発生しない。
7点:カッターナイフで切断した時の端部は浮きが発生せず、円筒に巻き付けたときにわずかに端部に浮きが発生する。
4点:カッターナイフで切断した時の端部はわずかに浮きが発生し、円筒に巻き付けたときにわずかに端部に浮きが発生する。
1点:カッターナイフで切断した時の端部に浮きが発生し、円筒に巻き付けたときには、端部全体に浮きが発生する。
【0218】
[樹脂層の干渉ムラの評価]
実施例1~16および比較例1~3で作製した積層体もしくは樹脂層を含む部材から、ヤマト株式会社製ビニールテープNO200-50-21を用いて、テープの粘着面に樹脂層を転写した。次いで転写した樹脂層の裏面に対して、斜めより三波長蛍光灯(FL20SS・EX-N/18(松下電器産業製)の付いた電気スタンド)で照射し、その時に見える干渉縞を目視で評価した。下記のクラス分けを行い、3点以上を合格とした。
5点:干渉ムラが無く、きれいに見える
3点:干渉ムラが確認できるが、使用上問題ないレベル
1点:干渉ムラが確認でき、使用上問題となるレベル
【0219】
【表4】
【符号の説明】
【0220】
1,6,12,20 : 積層体
2,7,13,21 : 離型フィルム
3,8,14,19,22 : 支持基材
4,9,10,15,23 : 離型層
5,11,16,24 : 樹脂層
17 : 保護フィルム
18 : 粘着層
25 : 機能層
26 : 多層スライドダイ
27,36 : 最も上流側のスロット
28,37 : 上流側から2番目のスロット
29 : 上流側から3番目のスロット
30 : 最も下流側のスロット
31 : スライド面
32,38 : ダイリップ
33,39,43 : 支持基材の搬送方向の上流側
34,40,44 : 支持基材の搬送方向の下流側
35 : 多層スロットダイ
41,42 : 単層スロットダイ
【産業上の利用可能性】
【0221】
本発明の樹脂層および積層体は、耐傷性、薄膜での搬送性、表面形状への追従性に優れ、また、たとえば耐候性やガスバリア性、ブロッキング防止性などの機能を有する層を転写するといった利点を活かし、プラスチックスや金属を始めとする成型体に好適に用いることができる。
【0222】
一例を挙げると、メガネ・サングラス、化粧箱、食品容器などのプラスチック成形品、水槽、展示用などのショーケース、スマートフォンの筐体、タッチパネル、カラーフィルター、フラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、フレキシブルデバイス、ウェアラブルデバイス、センサー、回路用材料、電気電子用途、キーボード、テレビ・エアコンのリモコンなどの家電製品、ミラー、窓ガラス、建築物、ダッシュボード、カーナビ・タッチパネル、ルームミラーやウインドウなどの車両部品、および種々の印刷物、医療用フィルム、衛生材料用フィルム、医療用フィルム、農業用フィルム、建材用フィルム等、それぞれの表面材料や内部材料や構成材料や製造工程用材料に好適に用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7