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▶ 富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】光半導体素子及び光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20230912BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20230912BHJP
【FI】
H01L31/10 A
H01L31/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019082207
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020181850
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】安岡 奈美
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0035948(US,A1)
【文献】特開2018-157032(JP,A)
【文献】特開2001-289711(JP,A)
【文献】特開2018-074104(JP,A)
【文献】特開昭62-291979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0243800(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0092785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を吸収し、電荷を生じさせる第1の半導体層を備えた受光部と、
前記第1の半導体層を加熱する加熱部と、
前記加熱部が発した熱により暗電流が変化する第2の半導体層を備えたモニタ部と、
前記受光部、前記加熱部及び前記モニタ部に共通の電極と、
を有し、
前記受光部は、前記電極がオーミック接触する第1導電型の第1の半導体領域を有し、
前記加熱部は、前記電極がオーミック接触する第1導電型の第2の半導体領域を有し、
前記モニタ部は、前記電極がオーミック接触する第1導電型の第3の半導体領域を有し、
前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間に第2導電型の第4の半導体領域を有し、
前記第2の半導体領域と前記第3の半導体領域との間に第2導電型の第5の半導体領域を有することを特徴とする光半導体素子。
【請求項2】
前記電極との間で前記加熱部に電力を印加する第2の電極を有し、
前記第4の半導体領域及び前記第5の半導体領域は、前記第2の電極に電気的に接続されていることを特徴とする請求項に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記第4の半導体領域と接地との間に設けられた第1のスイッチと、
前記第5の半導体領域と接地との間に設けられた第2のスイッチと、
を有することを特徴とする請求項に記載の光半導体素子。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の光半導体素子と、
前記暗電流に基づいて前記加熱部の制御を行う制御部と、
を有することを特徴とする光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光半導体素子及び光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Ge層を光吸収層とする光半導体素子は、高速動作が可能で高感度な受光素子として期待されている。但し、波長域が1530nm~1565nmのC帯の一部では、十分な受光感度が得られないことがある。そこで、光吸収係数を増加させるためにGe層を加熱するヒータをモノリシック集積した光半導体素子が提案されている。
【0003】
しかしながら、従来の光半導体素子では、ヒータによる加熱に伴って逆に特性が低下することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-74104号公報
【文献】特開2017-152434号公報
【文献】特開2000-174397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、広い帯域にわたって安定して優れた受光感度を得ることができる光半導体素子及び光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、光を吸収し、電荷を生じさせる第1の半導体層を備えた受光部と、前記第1の半導体層を加熱する加熱部と、前記加熱部が発した熱により暗電流が変化する第2の半導体層を備えたモニタ部と、前記受光部、前記加熱部及び前記モニタ部に共通の電極と、を有し、前記受光部は、前記電極がオーミック接触する第1導電型の第1の半導体領域を有し、前記加熱部は、前記電極がオーミック接触する第1導電型の第2の半導体領域を有し、前記モニタ部は、前記電極がオーミック接触する第1導電型の第3の半導体領域を有し、前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間に第2導電型の第4の半導体領域を有し、前記第2の半導体領域と前記第3の半導体領域との間に第2導電型の第5の半導体領域を有する光半導体素子が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、広い帯域にわたって安定して優れた受光感度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域のレイアウトを示す図である。
図2】第1の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図(その1)である。
図3】第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図(その1)である。
図4】第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図(その2)である。
図5】第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図(その3)である。
図6】第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図(その4)である。
図7】第1の実施形態に係る光半導体素子を備えた光半導体装置の構成を示すブロック図である。
図8】光半導体素子の波長と受光感度との関係を示す図である。
図9】i型Ge層の温度と暗電流との関係を示す図である。
図10】雰囲気温度と波長が1575nmの光の受光感度との関係を示す図である。
図11】第1の実施形態の変形例に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域のレイアウトを示す図である。
図12】第1の実施形態の変形例に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
図13】第2の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域のレイアウトを示す図である。
図14】第2の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
図15】第3の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
図16】第3の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
図17】第3の実施形態の変形例に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
図18】第3の実施形態の変形例に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
図19】第1の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図(その2)である。
図20】第1の実施形態におけるバンド構造を示す図(その1)である。
図21】第1の実施形態におけるバンド構造を示す図(その2)である。
図22】第1の実施形態におけるバンド構造を示す図(その3)である。
図23】第4の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
図24】第4の実施形態におけるバンド構造を示す図である。
図25】第5の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
図26】第5の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
図27】第5の実施形態におけるバンド構造を示す図である。
図28】第6の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
図29】第6の実施形態におけるバンド構造を示す図である。
図30】第7の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
図31】第8の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
図32】第9の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。また、本開示においては、X1-X2方向、Y1-Y2方向、Z1-Z2方向を相互に直交する方向とする。なお、便宜上、Z1-Z2方向を上下方向とする。また、平面視とは、Z1側から対象物を見ることをいう。
【0010】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、光半導体素子に関する。図1は、第1の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域のレイアウトを示す図である。図2は、第1の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。図3図6は、第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。図3は、図1及び図2中のI-I線に沿った断面図に相当する。図4は、図1及び図2中のII-II線に沿った断面図に相当する。図5は、図1及び図2中のIII-III線に沿った断面図に相当する。図6は、図1及び図2中のIV-IV線に沿った断面図に相当する。
【0011】
図1図6に示すように、第1の実施形態に係る光半導体素子100は、シリコン(Si)基板111、Si酸化膜112及びSi層113を含むSOI基板110を有する。光半導体素子100は、導波路領域141と、モード変換部142と、光電変換部143とを含む。導波路領域141では、Si層113が光導波路の形状に加工されている。モード変換部142では、Si層113が光モード変換器の形状に加工されている。導波路領域141、モード変換部142及び光電変換部143は、この順でX2側からX1側に向かって配列し、光信号はX2側からX1側に向かって伝播する。導波路領域141、モード変換部142及び光電変換部143は、SOI基板110にモノリシックに集積されている。
【0012】
光電変換部143において、例えば、Si層113は矩形の平面形状に加工されている。光電変換部143は、受光部150と、加熱部160と、モニタ部170とを有する。受光部150、加熱部160及びモニタ部170は、この順でX2側からX1側に向かって配列する。
【0013】
受光部150において、Si層113は、pSi領域151と、pSi領域152と、pSi領域153と、pSi領域154と、pSi領域155とを含む。pSi領域151、pSi領域152、pSi領域153、pSi領域154及びpSi領域155は、この順でY1側からY2側に向かって配列する。つまり、pSi領域151、pSi領域152、pSi領域153、pSi領域154及びpSi領域155は、受光部150への光の入射方向に垂直な方向に順に並ぶ。pSi領域152及びpSi領域154は、pSi領域151、pSi領域153及びpSi領域155より高濃度でp型不純物、例えばボロンを含有する。Si層113は第3の半導体層の一例である。
【0014】
Si領域153の上にi型ゲルマニウム(Ge)層156が形成され、i型Ge層156の表面にnGe領域157が形成されている。i型Ge層156のバンドギャップは、Si層113のバンドギャップよりも小さい。また、i型Ge層156の屈折率及び光吸収係数は、Si層113の屈折率及び光吸収係数よりも大きい。i型Ge層156は第1の半導体層(光吸収層)の一例である。
【0015】
加熱部160において、Si層113は、pSi領域161と、pSi領域162と、pSi領域163と、pSi領域164と、pSi領域165とを含む。pSi領域161、pSi領域162、pSi領域163、pSi領域164及びpSi領域165は、この順でY1側からY2側に向かって配列する。つまり、pSi領域161、pSi領域162、pSi領域163、pSi領域164及びpSi領域165は、受光部150への光の入射方向に垂直な方向に順に並ぶ。pSi領域163は、平面視で、i型Ge層156のX2側に位置する。pSi領域162及びpSi領域164は、pSi領域161、pSi領域163及びpSi領域165より高濃度でp型不純物、例えばボロンを含有する。
【0016】
モニタ部170において、Si層113は、pSi領域171と、pSi領域172と、pSi領域173と、pSi領域174と、pSi領域175とを含む。pSi領域171、pSi領域172、pSi領域173、pSi領域174及びpSi領域175は、この順でY1側からY2側に向かって配列する。つまり、pSi領域171、pSi領域172、pSi領域173、pSi領域174及びpSi領域175は、受光部150への光の入射方向に垂直な方向に順に並ぶ。pSi領域172及びpSi領域174は、pSi領域171、pSi領域173及びpSi領域175より高濃度でp型不純物、例えばボロンを含有する。
【0017】
Si領域173の上にi型Ge層176が形成され、i型Ge層176の表面にnGe領域177が形成されている。i型Ge層176のバンドギャップは、Si層113のバンドギャップよりも小さい。また、i型Ge層176の屈折率及び光吸収係数は、Si層113の屈折率及び光吸収係数よりも大きい。i型Ge層176は第2の半導体層の一例である。
【0018】
i型Ge層176は、例えば、X1-X2方向にて、加熱部160を対称の軸として、i型Ge層156と面対称の構造を有することが好ましい。また、加熱部160はi型Ge層156とi型Ge層176との中心に位置することが好ましい。また、i型Ge層176は、i型Ge層156と同じ材料からなることが好ましく、nGe領域177は、nGe領域157と同じ材料からなり、同じ量の不純物を含有することが好ましい。i型Ge層156及びi型Ge層176の温度が、加熱部160により互いに等しく上昇するようにするためである。
【0019】
なお、厳密な面対称になっていない場合であっても、3次元シミュレーション等で数値解析した値から、加熱部160による温度上昇で、受光部150とモニタ部170との間に相関関係が確認できる程度の対称性があることが好ましい。
【0020】
Si領域171、pSi領域172、pSi領域173、pSi領域174及びpSi領域175は、例えば、X1-X2方向にて、加熱部160を対称の軸として、pSi領域151、pSi領域152、pSi領域153、pSi領域154及びpSi領域155と面対称の構造を有する。pSi領域151及びpSi領域171が、互いに、同じ材料からなり、同じ量の不純物を含有してもよい。pSi領域152及びpSi領域172が、互いに、同じ材料からなり、同じ量の不純物を含有してもよい。pSi領域153及びpSi領域173が、互いに、同じ材料からなり、同じ量の不純物を含有してもよい。pSi領域154及びpSi領域174が、互いに、同じ材料からなり、同じ量の不純物を含有してもよい。pSi領域155及びpSi領域175が、互いに、同じ材料からなり、同じ量の不純物を含有してもよい。
【0021】
Si層113と、nGe領域157を含むi型Ge層156と、nGe領域177を含むi型Ge層176を覆うようにSi酸化膜11が形成されている。Si酸化膜11には、pSi領域162に達する開口部62Aと、pSi領域164に達する開口部64Aとが形成されている。開口部62Aを通じてpSi領域162にオーミック接触する金属配線62と、開口部64Aを通じてpSi領域164にオーミック接触する金属配線64とがSi酸化膜11上に形成されている。金属配線62及び金属配線64は、例えばアルミニウム(Al)を含む。金属配線62は第1のヒータ電極として機能し、金属配線64は第2のヒータ電極として機能する。
【0022】
Si酸化膜11には、更に、pSi領域172に達する開口部72Aと、pSi領域174に達する開口部74Aと、nGe領域177に達する開口部77Aとが形成されている。開口部72Aを通じてpSi領域172にオーミック接触し、開口部74Aを通じてpSi領域174にオーミック接触する金属配線72がSi酸化膜11上に形成されている。開口部77Aを通じてnGe領域177にオーミック接触する金属配線77がSi酸化膜11上に形成されている。金属配線72及び金属配線77は、例えばAlを含む。金属配線72は第1のモニタ電極として機能する。金属配線77は第2のモニタ電極として機能する。
【0023】
Si酸化膜11上にSi酸化膜12が形成されている。Si酸化膜11及び12には、pSi領域152に達する開口部52Aと、pSi領域154に達する開口部54Aと、nGe領域157に達する開口部57Aとが形成されている。開口部52Aを通じてpSi領域152にオーミック接触し、開口部54Aを通じてpSi領域154にオーミック接触する金属配線52がSi酸化膜12上に形成されている。開口部57Aを通じてnGe領域157にオーミック接触する金属配線57がSi酸化膜12上に形成されている。金属配線52及び金属配線57は、例えばAlを含む。金属配線52はPIN型フォトダイオード(photo diode:PD)のp側電極として機能する。金属配線57はPIN型PDのn側電極として機能する。
【0024】
受光部150には、例えば-3V~-2V程度の逆バイアスが印加される。すなわち、金属配線57に金属配線52よりも2V~3V程度高い電圧が印加される。導波路領域141を伝播し、モード変換部142にてモード変換された光が受光部150に入射すると、i型Ge層156が光を吸収し、電荷を発生する。i型Ge層156にて発生した電荷のうち、電子はpSi領域152及び154を通じて金属配線52から取り出され、正孔はnGe領域157を通じて金属配線57から取り出される。
【0025】
加熱部160では、金属配線62と金属配線64との間の電位差に応じて、pSi領域163がヒータとして機能し、発熱する。pSi領域163の発熱量は、電位差が大きいほど大きくなる。
【0026】
モニタ部170では、i型Ge層176の温度に応じた暗電流が流れる。暗電流は、i型Ge層176の温度が高いほど大きくなる。暗電流は、金属配線72と金属配線77との間を流れる。
【0027】
ここで、第1の実施形態に係る光半導体素子100を備えた光半導体装置について説明する。図7は、第1の実施形態に係る光半導体素子100を備えた光半導体装置の構成を示すブロック図である。
【0028】
図7に示すように、光半導体装置190は、受光部150と、加熱部160と、モニタ部170とを有する光半導体素子100を備える。光半導体装置190は、更に、電流-電圧変換器(IV変換器)191と、制御回路192と、トランスインピーダンスアンプ(transimpedance amplifier:TIA)193とを有する。
【0029】
IV変換器191は、金属配線77を通じてモニタ部170のnGe領域177に接続される。モニタ部170のpSi領域172及び174は金属配線72を通じて接地される。IV変換器191は、i型Ge層176で生じた暗電流を電圧に変換し、制御回路192に出力する。
【0030】
制御回路192は、金属配線64を通じて加熱部160のpSi領域164に接続される。加熱部160のpSi領域162は金属配線62を通じて接地される。制御回路192は、IV変換器191から入力された電圧に応じて加熱部160に印加する電圧を調整する。
【0031】
TIA193は、金属配線52を通じて受光部150のpSi領域152及び154に接続され、金属配線57を通じて受光部150のnGe領域157に接続される。TIA193は、i型Ge層156で生じた電荷の量を検出し、増幅して出力する。
【0032】
ここで、光半導体装置190の動作について、具体例に基づいて説明する。
【0033】
図8は、光半導体素子100の波長と受光感度との関係を示す図である。GeのΓ点の基礎吸収の波長は1550nm近傍であり、長波長側ほど光吸収係数が小さい。例えば、雰囲気温度が25℃である場合、図8に示すように、受光感度は長波長側のC帯端で0.9A/W以下となる。このような場合、加熱部160によってi型Ge層156を50℃~65℃程度に加熱することで、i型Ge層156の吸収端を長波長側にずらすことができる。この結果、図8に示すように、長波長側のC帯端での受光感度を1.0A/W以上とすることができる。加熱部160がi型Ge層156を加熱すると、モニタ部170のi型Ge層176も同程度に加熱される。つまり、i型Ge層156の温度が50℃~65℃であれば、i型Ge層176の温度も50℃~65℃となる。加熱部160を軸とするi型Ge層156とi型Ge層176との間の対称性が高いほど、i型Ge層156及びi型Ge層176の温度が互いに等しく上昇する。
【0034】
図9は、i型Ge層176の温度と暗電流との関係を示す図である。図9に示すように、暗電流は、i型Ge層176の温度が高いほど大きい。この例では、i型Ge層176の温度が50℃~65℃程度であれば、暗電流は5×10-5mA~10×10-5mA程度である。従って、i型Ge層156の温度を直接測定することができなくても、暗電流が5×10-5mA~10×10-5mA程度となるように加熱部160を制御すれば、雰囲気温度に拘わらず、長波長側のC帯端でも受光感度を1.0A/W以上とすることができる。
【0035】
図10は、雰囲気温度と波長が1575nmの光の受光感度との関係を示す図である。
【0036】
雰囲気温度が-5℃の場合、図9に示すように、初期状態での暗電流は1×10-5mA程度であり、図10に示すように、波長が1575nmの光の受光感度は0.8A/W程度である。この場合、制御回路192が、暗電流が5×10-5mA~10×10-5mA程度となるように加熱部160を制御する。この具体例では、例えば金属配線62と金属配線64との間の電位差(ヒータ電圧)を、例えば3.0Vとする。この結果、暗電流が5×10-5mA~10×10-5mA程度となると共に、波長が1575nmの光の受光感度が1.05A/W程度となる。波長が1575nmの光の受光感度が1.05A/W程度であれば、C帯の全体で適切な受光感度が得られる。
【0037】
雰囲気温度が25℃の場合、図9に示すように、初期状態での暗電流は3×10-5mA程度であり、図10に示すように、波長が1575nmの光の受光感度は0.92A/W程度である。この場合も、制御回路192が、暗電流が5×10-5mA~10×10-5mA程度となるように加熱部160を制御する。この具体例では、例えば金属配線62と金属配線64との間の電位差(ヒータ電圧)を、例えば1.4Vとする。この結果、暗電流が5×10-5mA~10×10-5mA程度となると共に、波長が1575nmの光の受光感度が1.05A/W程度となる。波長が1575nmの光の受光感度が1.05A/W程度であれば、C帯の全体で適切な受光感度が得られる。
【0038】
雰囲気温度が65℃以上の場合、図9に示すように、初期状態での暗電流は10×10-5mA以上であり、波長が1575nmの光の受光感度は1.0A/W以上である(図10に図示せず)。この場合、制御回路192は加熱部160を稼働させず、i型Ge層156の意図的な加熱は行わない。この具体例では、例えば金属配線62と金属配線64との間の電位差(ヒータ電圧)を0Vとする。この結果、暗電流は10×10-5mA以上に維持され、波長が1575nmの光の受光感度が1.0A/W以上に維持される。i型Ge層156の温度が高すぎると、例えば85℃以上であると、暗電流の上昇や応答速度の低下等の素子特性の劣化が生じ得るところ、本実施形態では、i型Ge層156の最適温度を含む好ましい温度範囲での動作が可能となり良好な特性を維持することができる。
【0039】
第1の実施形態によれば、C帯の一部では十分な受光感度が得られない雰囲気温度下では、加熱部160に適切な電力を印加してi型Ge層156の温度を適切に上昇させ、C帯の全体で十分な受光感度を得ることができる。また、C帯の全体で十分な受光感度が得られる雰囲気温度下では、C帯の全体で十分な受光感度を得ながら、最適温度を含む好ましい温度範囲での動作が可能となり良好な特性を維持することができる。
【0040】
光半導体装置190に含まれる光半導体素子100に代えて、以下に説明する変形例や実施形態の光半導体素子を用いることもできる。
【0041】
なお、i型の半導体には意図的な不純物のドーピングが行われていないが、i型の半導体が僅かな不純物、例えば1×1015cm-3以下の濃度の不純物を含んでいてもよい。すなわち、i型Ge層156、i型Ge層176が1×1015cm-3以下の濃度の不純物を含んでいてもよい。
【0042】
(第1の実施形態の変形例)
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。変形例は、モニタ部170の構成の点で第1の実施形態と相違する。図11は、第1の実施形態の変形例に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域のレイアウトを示す図である。図12は、第1の実施形態の変形例に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
【0043】
第1の実施形態の変形例に係る光半導体素子101では、図11図12に示すように、モニタ部170において、Si層113は、pSi領域171と、pSi領域172と、pSi領域173とを含み、pSi領域174及びpSi領域175は含まれていない。pSi領域171、pSi領域172及びpSi領域173は、この順でY1側からY2側に向かって配列する。つまり、pSi領域171、pSi領域172及びpSi領域173は、受光部150への光の入射方向に垂直な方向に順に並ぶ。Si酸化膜11及び12に開口部54Aは形成されておらず、金属配線72は開口部72Aを通じてpSi領域172にオーミック接触する。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0044】
変形例においても、i型Ge層176で発生する暗電流に基づいて、第1の実施形態と同様の制御を行うことができる。従って、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、モニタ部170の構成を簡素化することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、モニタ部170の配置の点で第1の実施形態と相違する。図13は、第2の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域のレイアウトを示す図である。図14は、第2の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
【0046】
第2の実施形態に係る光半導体素子200では、図13図14に示すように、光電変換部143において、受光部150、加熱部160及びモニタ部170がこの順でY2側からY1側に向かって配列する。加熱部160において、pSi領域161、pSi領域162、pSi領域163、pSi領域164及びpSi領域165は、この順でX2側からX1側に向かって配列する。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0047】
第2の実施形態においても、モニタ部170のi型Ge層176で発生する暗電流に基づいて、第1の実施形態と同様の制御を行うことができる。従って、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1の実施形態では、モニタ部170が導波路領域141の光軸の延長線上に位置するのに対し、第2の実施形態では、モニタ部170が導波路領域141の光軸の延長線上からずれて配置されている。このため、受光部150にて吸収しきれない光が存在していても、光の進行方向を考慮すると光軸上にはi型Ge層176が存在しないため信号光がモニタ部170で吸収されることを避けることができる。
【0048】
第2の実施形態において、第1の実施形態の変形例と同様に、pSi領域174及びpSi領域175等が形成されていなくてもよい。この場合も、i型Ge層156及びi型Ge層176の温度が、加熱部160により互いに等しく上昇するように構成されていることが好ましい。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、受光部150と加熱部160との間と、加熱部160とモニタ部170との間とにスリットが形成されている点で第1の実施形態と相違する。図15は、第3の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。図16は、第3の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。図16は、図15中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0050】
第3の実施形態に係る光半導体素子300では、図15図16に示すように、Si層113に、受光部150と加熱部160との間でY1-Y2方向に延びるスリット113Aと、加熱部160とモニタ部170との間でY1-Y2方向に延びるスリット113Bとが形成されている。スリット113A及び113Bは、例えば、Y1-Y2方向で、モード変換部142の光電変換部143側の端部と同程度の寸法又はそれ以上の寸法を有する。スリット113A及び113Bの深さは、Si層113の厚さよりも小さい。従って、スリット113A及び113Bの底にSi層113が残存する。他の構成は第1の実施形態の変形例と同様である。スリット113Aは第1のバリア部の一例であり、スリット113Bは第2のバリア部の一例である。
【0051】
第3の実施形態においても、i型Ge層176で発生する暗電流に基づいて、第1の実施形態と同様の制御を行うことができる。従って、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、Si層113にスリット113A及び113Bが形成されているため、受光部150にて吸収しきれない光が存在していても、この光がi型Ge層176まで到達することを避けることができる。更に、スリット113A及び113Bの底にSi層113が残存するため、Si層113を通じて加熱部160で発生した熱をi型Ge層156及び176に伝達させやすい。
【0052】
スリット113Bは、例えば、X1-X2方向にて、加熱部160を対称の軸として、スリット113Aと面対称の構造を有することが好ましい。
【0053】
(第3の実施形態の変形例)
次に、第3の実施形態の変形例について説明する。変形例は、スリットの深さの点で第3の実施形態と相違する。図17は、第3の実施形態の変形例に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。図18は、第3の実施形態の変形例に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。図18は、図17中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0054】
第3の実施形態の変形例に係る光半導体素子301では、図17図18に示すように、スリット113Aに代えてスリット113Cが形成され、スリット113Bに代えてスリット113Dが形成されている。スリット113C及び113Dは、スリット113A及び113Bと同様に、例えば、Y1-Y2方向で、モード変換部142の光電変換部143側の端部と同程度の寸法又はそれ以上の寸法を有する。スリット113C及び113Dの深さは、厚さ方向でSi層113を貫通し、スリット113C及び113Dの底にSi層113は残存せず、スリット113C及び113DからSi酸化膜112が露出する。他の構成は第3の実施形態と同様である。スリット113Cは第1のバリア部の一例であり、スリット113Dは第2のバリア部の一例である。
【0055】
変形例においても、i型Ge層176で発生する暗電流に基づいて、第1の実施形態と同様の制御を行うことができる。従って、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第3の実施形態と同様に、受光部150にて吸収しきれない光が存在していても、この光がi型Ge層176まで到達することを避けることができる。更に、スリット113C及び113Dの底にSi層113が存在しないため、光の伝播をより確実に抑制することができる。
【0056】
第3の実施形態及びその変形例において、第1の実施形態と同様に、pSi領域174及びpSi領域175等が形成されていてもよい。
【0057】
なお、第1の実施形態では、加熱部160において、長時間動作等に伴ってSi層113の表面に電荷が蓄積し、電荷の蓄積が電流に影響を及ぼすことがある。また、加熱部160のパワーが大きい場合、加熱部160からのリーク電流と暗電流とを足し合せた値が電流として出力される。図19は、第1の実施形態におけるリーク電流を示す図である。図20図22は、第1の実施形態におけるバンド構造を示す図である。図20は、図19中の太線L1に沿った断面のバンド構造を示す。図21は、図19中の太線Lに沿った断面のバンド構造を示す。図22は、図19中の太線Lに沿った断面のバンド構造を示す。図20図22では、Si層113のpSi領域152とpSi領域162との間の領域や、pSi領域154とpSi領域164との間の領域の導電型をp--と記しているが、これらの領域をi型の領域とみなしてもよい。以降の図でも同様である。
【0058】
上記のように、受光部150には逆バイアスが印加される。このため、nGe領域157からpSi領域152及び154へとリーク電流LC1が流れる。
【0059】
また、pSi領域162、172及び174も接地され、pSi領域164には金属配線64を通じて正の電位が付与される。図20図22では、pSi領域152、154、162、172及び174の電位が接地電位のときのバンド構造を実線で示す。この状態では、破線L3に沿った断面において、図19に示すように、pSi領域164からpSi領域154及び174へとリーク電流LC2が流れる。
【0060】
長時間動作等に伴ってSi層113の表面に電荷が蓄積すると、pSi領域162及び164の電位が負側に変位することがある。図20図22では、pSi領域162及び164の電位が変位したときのバンド構造を破線で示す。このとき、pSi領域164の電位の変位量は、pSi領域162の電位の変位量よりも大きい。このような変位の結果、リーク電流LC2が増加する。
【0061】
リーク電流LC2はモニタ部170にも流れ込むため、IV変換器191には、暗電流だけでなくリーク電流LC2も流れる。このため、i型Ge層156の温度と、IV変換器191に流れる電流との間の関係にずれが生じ得る。このような現象は、第1の実施形態の変形例、第2の実施形態、第3の実施形態及びその変形例でも同様に生じ得る。
【0062】
以下の第4~第9の実施形態は、このようなリーク電流の影響に伴う精度の低下の抑制を図ったものである。
【0063】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、金属配線の構成の点で第1の実施形態と相違する。図23は、第4の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
【0064】
第4の実施形態に係る光半導体素子400には、図23に示すように、金属配線52、62及び72に代えて、金属配線52、62及び72を一体化した金属配線452が設けられている。金属配線452は、開口部52Aを通じてpSi領域152にオーミック接触し、開口部54Aを通じてpSi領域154にオーミック接触し、開口部62Aを通じてpSi領域162にオーミック接触し、開口部72Aを通じてpSi領域172にオーミック接触し、開口部74Aを通じてpSi領域174にオーミック接触する。他の構成は第1の実施形態と同様である。pSi領域152及び154は第1の半導体領域の一例であり、pSi領域162は第2の半導体領域の一例であり、pSi領域172及び174は第3の半導体領域の一例であり、金属配線452は電極の一例である。
【0065】
図24は、第4の実施形態におけるバンド構造を示す図である。図24は、図23中の太線L1に沿った断面のバンド構造を示す。第4の実施形態では、pSi領域162が、金属配線452を介して、pSi領域152、154、172及び174に電気的に接続されている。このため、図24に示すように、pSi領域162の価電子帯の上端が、pSi領域152等の価電子帯の上端と一致するようになり、電荷の蓄積を抑制することができる。これにより、電荷の蓄積に伴うリーク電流の増加を抑制することができる。
【0066】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、受光部150と加熱部160との間と、加熱部160とモニタ部170との間とにn領域が形成されている点で第4の実施形態と相違する。図25は、第5の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。図26は、第5の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。図26は、図25中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0067】
第5の実施形態に係る光半導体素子500では、図25図26に示すように、Si層113に、受光部150と加熱部160との間のnSi領域531Aと、加熱部160とモニタ部170との間のnSi領域531Bとが形成されている。他の構成は第4の実施形態と同様である。nSi領域531Aは第4の半導体領域の一例であり、nSi領域531Bは第5の半導体領域の一例である。
【0068】
図27は、第5の実施形態におけるバンド構造を示す図である。図27は、図25中の太線L2に沿った断面のバンド構造を示す。第5の実施形態では、pSi領域154とpSi領域164との間にnSi領域531Aが形成され、pSi領域164とpSi領域174との間にnSi領域531Bが形成されている。このため、図27に示すように、nSi領域531A及び531Bがリーク電流LC2のバリアとして機能する。これにより、リーク電流LC2のモニタ部170への流れ込みを抑制することができる。
【0069】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態は、nSi領域531A及び531Bが金属配線64に接続されている点で第5の実施形態と相違する。図28は、第6の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
【0070】
第6の実施形態に係る光半導体素子600では、図28に示すように、nSi領域531A及び531Bが、pSi領域164と同様に、金属配線64に接続されている。他の構成は第5の実施形態と同様である。金属配線64は第2の電極の一例である。
【0071】
図29は、第6の実施形態におけるバンド構造を示す図である。図29は、図28中の太線L2に沿った断面のバンド構造を示す。第6の実施形態でも、第5の実施形態と同様に、リーク電流LC2のモニタ部170への流れ込みを抑制することができる。また、第6の実施形態では、図29に示すように、nSi領域531A及び531Bの電位を、pSi領域164の電位と同一の電位に維持することができる。
【0072】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。第7の実施形態は、nSi領域531A及び531Bと接地との間にスイッチが設けられている点で第5の実施形態と相違する。図30は、第7の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
【0073】
第7の実施形態に係る光半導体素子700では、図30に示すように、nSi領域531Aと接地との間にスイッチ731Aが設けられ、nSi領域531Bと接地との間にスイッチ731Bが設けられている。他の構成は第5の実施形態と同様である。スイッチ731Aは第1のスイッチの一例であり、スイッチ731Bは第2のスイッチの一例である。
【0074】
第7の実施形態によっても第5の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、スイッチ731A及び731Bが設けられているため、nSi領域が形成したノッチに溜まったキャリアを流すことができ、リーク電流を半永久的に低減することが可能となる。つまり、ノッチにキャリアが溜まるとバンドが変化し、リーク電流の原因となるが、それを除去できるからである。
【0075】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。第8の実施形態は、nSi領域531A及び531Bにスリットが形成されている点で第7の実施形態と相違する。図31は、第8の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
【0076】
第8の実施形態に係る光半導体素子600では、図31に示すように、nSi領域531Aにスリット113Eが形成され、nSi領域531Bにスリット113Fが形成されている。スリット113Eは、スリット113A又は113Cと同様のスリットであり、スリット113Fは、スリット11BA又は113Dと同様のスリットである。他の構成は第7の実施形態と同様である。スリット113Eは第1のバリア部の一例であり、スリット113Fは第2のバリア部の一例である。
【0077】
第8の実施形態によれば、第3の実施形態又はその変形例の効果と、第7の実施形態の効果とを得ることができる。
【0078】
第4~第6の実施形態において、nSi領域531Aにスリット113Eが形成され、nSi領域531Bにスリット113Fが形成されていてもよい。
【0079】
(第9の実施形態)
次に、第9の実施形態について説明する。第9の実施形態は、モニタ部170が設けられていない点で第5の実施形態と相違する。図32は、第9の実施形態に係る光半導体素子に含まれる半導体の領域及び金属配線のレイアウトを示す図である。
【0080】
第9の実施形態によっても、電荷の蓄積に伴うリーク電流LC2の増加の抑制という効果と、n+Si領域531Aによるリーク電流LC2のバリアの効果とを得ることができる。
【0081】
なお、半導体層に含まれる不純物は、例えばイオン注入により導入することができる。
【0082】
受光部に含まれる光吸収層はPIN型PDの光吸収層に限定されない。例えば、アバランシェフォトダイオード(avalanche photo diode:APD)の光吸収層でもよく、単一走行キャリア型フォトダイオード(uni-traveling-carrier photo diode:UTC-PD)の光吸収層でもよい。
【0083】
なお、第1、第2の半導体層の材料はGeに限定されず、例えば、第1、第2の半導体層の材料としてSiGe1-x(0≦x<1)又はGe1-xSn(0≦x<1)を用いることができる。
【0084】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0085】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0086】
(付記1)
光を吸収し、電荷を生じさせる第1の半導体層を備えた受光部と、
前記第1の半導体層を加熱する加熱部と、
前記加熱部が発した熱により暗電流が変化する第2の半導体層を備えたモニタ部と、
を有することを特徴とする光半導体素子。
(付記2)
前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層がSiGe1-x層(0≦x<1)又はGe1-xSn層(0≦x<1)であることを特徴とする付記1に記載の光半導体素子。
(付記3)
前記受光部に光を導く導波路を有し、
前記モニタ部は、前記導波路における光軸の延長線上からずれて配置されていることを特徴とする付記1又は2に記載の光半導体素子。
(付記4)
前記受光部と前記加熱部との間で光の伝播を妨げる第1のバリア部と、
前記加熱部と前記モニタ部との間で光の伝播を妨げる第2のバリア部と、
を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記5)
前記受光部、前記加熱部及び前記モニタ部にわたって設けられ、光が伝播可能な第3の半導体層を有し、
前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層は、前記第3の半導体層上に形成され、
前記第1のバリア部は、前記第3の半導体層に形成された第1のスリットを有し、
前記第2のバリア部は、前記第3の半導体層に形成された第2のスリットを有することを特徴とする付記4に記載の光半導体素子。
(付記6)
前記第1のスリット及び前記第2のスリットは、厚さ方向で前記第3の半導体層を貫通することを特徴とする付記5に記載の光半導体素子。
(付記7)
前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層の温度は、前記加熱部により互いに等しく上昇することを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記8)
前記加熱部は、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との中心に位置することを特徴とする付記7に記載の光半導体素子。
(付記9)
前記受光部及び前記加熱部に共通の電極を有することを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記10)
前記電極は、前記モニタ部にも共通であることを特徴とする付記9に記載の光半導体素子。
(付記11)
前記受光部は、前記電極がオーミック接触する第1導電型の第1の半導体領域を有し、
前記加熱部は、前記電極がオーミック接触する第1導電型の第2の半導体領域を有し、
前記モニタ部は、前記電極がオーミック接触する第1導電型の第3の半導体領域を有し、
前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間に第2導電型の第4の半導体領域を有し、
前記第2の半導体領域と前記第3の半導体領域との間に第2導電型の第5の半導体領域を有することを特徴とする付記10に記載の光半導体素子。
(付記12)
前記電極との間で前記加熱部に電力を印加する第2の電極を有し、
前記第4の半導体領域及び前記第5の半導体領域は、前記第2の電極に電気的に接続されていることを特徴とする付記11に記載の光半導体素子。
(付記13)
前記第4の半導体領域と接地との間に設けられた第1のスイッチと、
前記第5の半導体領域と接地との間に設けられた第2のスイッチと、
を有することを特徴とする付記11に記載の光半導体素子。
(付記14)
付記1乃至13のいずれか1項に記載の光半導体素子と、
前記暗電流に基づいて前記加熱部の制御を行う制御部と、
を有することを特徴とする光半導体装置。
【符号の説明】
【0087】
100、101、200、300、301、400、500、600、700、800、900:光半導体素子
113:Si層
113A、113B、113C、113D、113E、113F:スリット
150:受光部
156:i型Ge層
160:加熱部
170:モニタ部
176:i型Ge層
190:光半導体装置
191:IV変換器
192:制御回路
193:TIA
452:金属配線
531A、531B:nSi領域
731A、731B:スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32