(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】粘着シート、剥離シート付き粘着シート及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230912BHJP
C09J 123/16 20060101ALI20230912BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230912BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20230912BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230912BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J123/16
C09J11/08
C09J4/00
C09J11/06
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2019095027
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 万智
(72)【発明者】
【氏名】黒田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 滋呂
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 誠司
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509481(JP,A)
【文献】特表2011-526629(JP,A)
【文献】特開2010-209295(JP,A)
【文献】特公昭47-003254(JP,B1)
【文献】特開2015-040240(JP,A)
【文献】特開昭57-159864(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047289(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
B32B 27/00
C09J 4/00
C09J 11/06
C09J 11/08
C09J 123/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤と、
水素添加環状オレフィン系重合体と
、プロピレン・エチレン共重合体と、を含む粘着剤組成物を熱乾燥させてなる粘着シートであって、
前記粘着シートの
活性エネルギー線硬化前のゲル分率は2%未満であり、
前記粘着シートは活性エネルギー線硬化性を有し、
前記粘着シートに積算光量が1500mJ/cm
2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後、23℃1MHzにおける比誘電率が2.8未満であり、
ゲル分率は37%以下である、粘着シート。
【請求項2】
前記粘着シートは、多官能単量体及び光重合開始剤をさらに含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
下記測定方法(a)で測定される、前記粘着シートのズレ量が15mm以上であり、積算光量が1500mJ/cm
2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後の粘着シートのズレ量が5mm未満である、請求項1
又は2に記載の粘着シート;
測定方法(a):粘着シートの一方の面にPETフィルムを貼合した後、粘着シートを25mm×50mmのサイズに切り出し、粘着シートの他方の面に、SUS板表面との接触面が25mm×25mmになるようにSUS板を貼り付ける;SUS板からはみ出した粘着シートに1kgのおもりを装着し、40℃、dry環境下に24時間放置する;粘着シートとSUS板界面における、ズレ量(mm)を測定する。
【請求項4】
前記粘着シートの1000%引張り時の応力が0.15MPa以下であり、積算光量が1500mJ/cm
2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後の粘着シートの1000%引張り時の応力が0.17MPa以上である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着シートの25℃における貯蔵弾性率が1.0×10
6未満であり、積算光量が1500mJ/cm
2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後の粘着シートの140℃における貯蔵弾性率が1.0×10
4以上である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを備える剥離シート付き粘着シート。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の粘着シートを被着体に貼合し半硬化状態の粘着剤層と被着体を備える積層前駆体を得た後、前記積層前駆体に活性エネルギー線を照射して前記半硬化状態の粘着剤層を後硬化させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、剥離シート付き粘着シート及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられている。これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合せる用途に透明な粘着シートが使用されており、表示装置と入力装置との貼合にも透明な粘着シートが使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明両面粘着シートを介して画像表示装置構成部材が積層されてなる構成を備えた画像表示装置構成用積層体の製造方法が開示されており、ここでは透明両面粘着シートにアクリル系粘着剤が用いられている。
【0004】
また、特許文献2及び3では、光学部材貼合用に用いられる粘着シートにゴム系粘着剤組成物を用いることが検討されている。特許文献2には、ゴムと、重合性モノマーと、光重合開始剤と、粘着付与剤と、を含有する粘着シート形成用組成物を硬化させてなるタッチパネル用粘着シートが開示されている。ここでは、粘着シート形成用組成物を光硬化させることで粘着シートが形成されている。また、特許文献3には、ゴム系ベースポリマーを含むゴム系粘着剤組成物が開示されており、セパレーター上に塗工したゴム系粘着剤組成物に紫外線を照射することで粘着シートが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/032995号
【文献】特開2016-135832号公報
【文献】特開2018-39863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、表示装置の使用環境は多様化しており、例えば、高温高湿環境下においても高耐久性や低水蒸気透過率を発揮することが求められる場合がある。また、光学部材の形状も複雑化しており、光学部材に凹凸構造が形成されている場合においても、粘着シートはその段差に追従して密着することが求められる。しかしながら、従来の粘着シートにおいては、これらのすべての条件を高いレベルで満たすことが困難であった。
【0007】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、段差追従性及び耐久性に優れ、かつ水蒸気透過率の低い粘着シートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、溶剤と、オレフィン系重合体とを含む粘着剤組成物を熱乾燥させてなる粘着シートに、活性エネルギー線硬化性を持たせることにより、段差追従性、高耐久性及び低水蒸気透過率を兼ね備えた粘着シートが得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] 溶剤と、オレフィン系重合体とを含む粘着剤組成物を熱乾燥させてなる粘着シートであって、
粘着シートのゲル分率は2%未満であり、
前記粘着シートは活性エネルギー線硬化性を有し、
前記粘着シートに積算光量が1500mJ/cm2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後、23℃1MHzにおける比誘電率が2.8未満である、粘着シート。
[2] 粘着シートは、多官能単量体及び光重合開始剤をさらに含む、[1]に記載の粘着シート。
[3] オレフィン系重合体は、オレフィン系エラストマーである、[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[4] 下記測定方法(a)で測定される、粘着シートのズレ量が15mm以上であり、積算光量が1500mJ/cm2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後の粘着シートのズレ量が5mm未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の粘着シート;
測定方法(a):粘着シートの一方の面にPETフィルムを貼合した後、粘着シートを25mm×50mmのサイズに切り出し、粘着シートの他方の面に、SUS板表面との接触面が25mm×25mmになるようにSUS板を貼り付ける;SUS板からはみ出した粘着シートに1kgのおもりを装着し、40℃、dry環境下に24時間放置する;粘着シートとSUS板界面における、ズレ量(mm)を測定する。
[5] 粘着シートの1000%引張り時の応力が0.15MPa以下であり、積算光量が1500mJ/cm2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後の粘着シートの1000%引張り時の応力が0.17MPa以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の粘着シート。
[6] 粘着シートの25℃における貯蔵弾性率が1.0×106未満であり、積算光量が1500mJ/cm2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後の粘着シートの140℃における貯蔵弾性率が1.0×104以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の粘着シート。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを備える剥離シート付き粘着シート。
[8] [1]~[6]のいずれかに記載の粘着シートを被着体に貼合し半硬化状態の粘着剤層と被着体を備える積層前駆体を得た後、積層前駆体に活性エネルギー線を照射して半硬化状態の粘着剤層を後硬化させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、段差追従性及び耐久性に優れ、かつ水蒸気透過率の低い粘着シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、剥離シート付き粘着シートの構成の一例を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
(粘着シート)
本発明は、溶剤と、オレフィン系重合体とを含む粘着剤組成物を熱乾燥させてなる粘着シートに関する。ここで、本発明の粘着シートのゲル分率は2%未満である。さらに、本発明の粘着シートは、活性エネルギー線硬化性を有し、粘着シートに積算光量が1500mJ/cm2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後、23℃1MHzにおける比誘電率が2.8未満である。
【0014】
粘着シートのゲル分率は、2%未満であればよく、1%以下であることが好ましい。なお、粘着シートのゲル分率は、0%であってもよい。ここで、粘着シートのゲル分率は、以下の方法で測定される値である。まず、粘着シート約0.1gをサンプル瓶に採取し、トルエン30mlを加えて24時間振とうする。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥質量(g)を測定する。そして、得られた乾燥質量から下記式1によりゲル分率を求める。
ゲル分率(%)=(乾燥質量/粘着シートの採取質量)×100・・・式1
【0015】
粘着シートは、半硬化状態であり、活性エネルギー線硬化性を有している。ここで、半硬化状態とは、粘着シートに活性エネルギー線を照射することで、そのゲル分率が10%以上高くなる状態を言う。すなわち、本発明の粘着シートは、熱硬化により形成された半硬化状態の粘着シートであって、そこにさらに活性エネルギー線を照射することで後硬化(完全硬化)する粘着シートである。
【0016】
後硬化後の粘着シートの23℃1MHzにおける比誘電率は2.8未満であればよく、2.7以下であることがより好ましい。ここで、後硬化後の粘着シートの比誘電率は、以下の方法で測定される値である。まず、50mm×50mmの寸法に切り出した粘着シートを100mm×100mm×18μmの寸法の銅箔の光沢面側に貼り合わせ、次いで、積算光量が1500mJ/cm2となるように活性エネルギー線を照射する。その後、粘着シートの他方の面に20mm×20mm×18μmの寸法の銅箔の光沢面側を貼り合わせ、各銅箔のそれぞれのほぼ中央部に端子を接触させて、誘電率測定装置により、23℃、相対湿度50%、周波数1MHzの条件で静電容量(C)を測定する。そして、以下の式により誘電率εrを算出する。
C=ε0×εr×(20mm×20mm)/d
なお、ε0は真空の誘電率、dは粘着シートの厚さである。
誘電率測定装置としては、Solartoron製、SI1260等を用いることができる。
【0017】
本発明の粘着シートは、上記構成を有するため、段差追従性及び耐久性に優れている。粘着シートの段差追従性は、段差を有する被着体に粘着シートを貼合した後に、積算光量が1500mJ/cm2となるように活性エネルギー線を照射し、高温環境下に静置した際の気泡発生の有無により評価できる。高温環境に置いた場合であっても段差部から気泡の発生が抑制されている場合に、段差追従性に優れていると言える。
【0018】
また、粘着シートの耐久性は、粘着シートとSUS板の界面のズレ量(ずれた距離(mm))を測定することで判定できる。具体的には、保持力をJIS Z 0237に準拠して測定する。まず、粘着シートの一方の面にPETフィルムを貼合した後、粘着シートを25mm×50mmのサイズに切り出し、粘着シートの他方の面に、SUS板表面との接触面が25mm×25mmになるようにSUS板を貼り付ける。SUS板からはみ出した粘着シートに1kgのおもりを装着し、40℃、dry環境下に24時間放置する。粘着シートとSUS板界面における、ズレ量(mm)を測定する。このように測定した活性エネルギー線を照射する前の粘着シートの保持力のズレ量は15mm以上であることが好ましい。一方で、積算光量が1500mJ/cm2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後の粘着シートのズレ量は5mm未満であることが好ましい。活性エネルギー線を照射した後の粘着シートのズレ量は、粘着シートとSUS板を貼合した後、高圧水銀ランプを積算光量が1500mJ/cm2となるように照射しおもりを装着して上記と同様に測定を行う。粘着シートの耐久性は、活性エネルギー線を照射した後のズレ量(ずれた距離(mm))が5mm未満であることをもって良好であると判定できる。
【0019】
さらに、本発明の粘着シートは上記構成を有するため、水蒸気透過率が低い。水蒸気透過率は、積算光量が1500mJ/cm2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後の粘着シートについて、JIS Z 0208に準拠して測定される値である。具体的には、水蒸気透過率は、カップ法により40℃、相対湿度90%の条件で24時間測定した値である。本発明の粘着シートの水蒸気透過率は、100g/m2・day以下であることが好ましく、50g/m2・day以下であることがより好ましく、10g/m2・day以下であることがさらに好ましい。
【0020】
活性エネルギー線を照射する前の粘着シートの1000%引張り時の応力は0.15MPa以下であることが好ましく、0.10MPa以下であることがより好ましい。一方で、積算光量が1500mJ/cm2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後の粘着シートの1000%引張り時の応力は、0.17MPa以上であることが好ましく、0.20MPa以上であることがより好ましく、0.25MPa以上であることがさらに好ましい。このように本発明の粘着シートにおいては、1000%引張り時の応力が活性エネルギー線の照射前後で大きく変化する。これにより、優れた段差追従性と耐久性が発揮される。
【0021】
活性エネルギー線を照射する前の粘着シートの引張応力は以下のようにして測定される値である。まず、粘着シートを800~1000μm厚みになるよう積層した後、幅10mmに裁断し、サンプルの上端及び下端を、厚み188μm、縦25mm、横50mmのPETフィルム2枚(合計4枚)でフィルム間距離が15mmとなるように挟みこみ、固定する。その後、測定温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張速度300mm/分の条件で引張伸び率が1000%となるまで引っ張る。この際の応力値を引張応力とする。
【0022】
活性エネルギー線を照射する前の粘着シートの25℃における貯蔵弾性率は1.0×106未満であることが好ましい。一方で、積算光量が1500mJ/cm2の条件となるように活性エネルギー線を照射した後の粘着シートの140℃における貯蔵弾性率は1.0×104以上であることが好ましい。このように本発明の粘着シートにおいては、その弾性が活性エネルギー線の照射前後で大きく変化する。これにより、優れた段差追従性と耐久性が発揮される。
【0023】
粘着シートの貯蔵弾性率は、動的粘弾性装置を用いて測定することができる。この場合、測定条件は、周波数1Hz、昇温速度2℃/minとし、ステップ温度1℃での-30℃から160℃の範囲の測定を行う。なお、動的粘弾性装置としては、株式会社ユービーエム製のRheogel-E4000等を用いることができる。
【0024】
粘着シートは、単層の粘着剤層からなる両面粘着シートであることが好ましいが、粘着剤層と粘着剤層の間に支持体を積層した複層の両面粘着シートであってもよい。粘着シートが支持体を有する場合、支持体としては透明な支持体を用いることが好ましい。
【0025】
粘着シートの厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、粘着シートの厚みは、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。粘着シートの厚みを上記範囲内とすることにより、耐久性を高めることができ、被着体との密着性をより効果的に高めることができる。また、粘着シートの厚さを上記範囲内とすることにより、粘着シートの製造が容易となる。
【0026】
(オレフィン系重合体)
粘着剤組成物は、オレフィン系重合体を含む。本実施形態において、オレフィン系重合体の種類は特に限定されず、例えば、公知のオレフィン系重合体を広く採用することができる。粘着剤組成物がオレフィン系重合体を含むことで、粘着シートは、より低い水蒸気透過率を達成することができる。
【0027】
オレフィン系重合体は、オレフィン系エラストマーであることが好ましい。オレフィン系エラストマーは、α-オレフィンに由来する単位を含む。本発明で用いるオレフィン系エラストマーは、α-オレフィンを重合させることで得られるポリ-α-オレフィン系エラストマーであってもよい。オレフィン系エラストマーとしては、例えば、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、1-ブテン単独重合体、1-ブテン・エチレン共重合体、1-ブテン・プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1単独重合体、4-メチルペンテン-1・プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1・1-ブテン共重合体、4-メチルペンテン-1・プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体等が挙げられる。また、オレフィン系エラストマーは、2-メチル-1,3-ブタジエン単独重合体(ポリイソプレン)、2-メチル-1,3-ブタジエン共重合体、1,3ブタジエン単独重合体(ポリブタジエン)などのポリマー鎖に不飽和結合を含有するエラストマーであってもよい。また、耐候性の観点からポリイソプレン、ポリブタジエンの水添化合物を用いてもよく、水添化合物を併用することも好ましい。
【0028】
オレフィン系エラストマーは、ブロック共重合体であることが好ましい。オレフィン系エラストマーがブロック共重合体である場合、ブロック共重合体としては、例えば、プロピレン/エチレンブロック共重合体、プロピレン/エチレン/1-ブテンブロック共重合体、1-ブテン/エチレンブロック共重合体、1-ブテン/プロピレンブロック共重合体、4-メチルペンテン-1/プロピレンブロック共重合体、4-メチルペンテン-1/1-ブテンブロック共重合体、4-メチルペンテン-1/プロピレン/1-ブテンブロック共重合体、プロピレン/1-ブテンブロック共重合体、イソプレン/ブタジエン共重合体等が挙げられる。また、耐候性の観点からポリマー鎖に不飽和結合を有するエラストマーを用いてもよく、このようなエラストマーに関してはその水添化合物も例示される。また、上述した共重合体と、その水添化合物を併用した態様も好ましい。
【0029】
オレフィン系エラストマーがブロック共重合体である場合、ブロック共重合体は、α-オレフィンを重合させることで得られるブロックと、他のポリマーから構成されるブロックとを含む。この場合、他のポリマーから構成されるブロックとしては、例えば、スチレン系ポリマーから構成されるブロック、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーから構成されるブロック等が挙げられる。中でも、他の、ポリマーから構成されるブロックはスチレン系ポリマーから構成されるブロックであることが好ましい。すなわち、オレフィン系エラストマーがブロック共重合体である場合、ブロック共重合体は、その一部にスチレン系ポリマーから構成されるブロックを有するものであることが好ましい。
【0030】
オレフィン系重合体は、上述したような共重合体に加えて、水素添加環状オレフィン系重合体を含むことが好ましい。水素添加環状オレフィン系重合体としては、水素添加したC5系、C9系、ジシクロペンタジエン系の重合体を挙げることができる。市販品としては、アルコンPシリーズ(商品名:荒川化学社製)、T-REZ-Hシリーズ(商品名:東燃ゼネラル社製)、ESCOREZ(商品名:エクソンケミカル社製)、EASTOTAC(商品名:イーストマンケミカル社製)などを用いることができる。
【0031】
オレフィン系重合体の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対して、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。オレフィン系重合体の含有量を上記範囲とすることにより、本発明の粘着シートの水蒸気透過率をより低下させることもできる。
【0032】
(溶剤)
粘着剤組成物は、溶剤を含む。溶剤は、粘着剤組成物の塗工適性を向上させることができる。溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0033】
溶剤の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対して、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
(多官能単量体)
粘着シートは、多官能単量体をさらに含むことが好ましい。多官能単量体は分子内に反応性二重結合を2つ以上有するものである。反応性二重結合の数は、2個以上5個以下であることが好ましく、2個以上3個以下であることがより好ましい。また、多官能単量体は、(メタ)アクリル系モノマーであることが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0035】
多官能単量体としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,9-ノナンジオール、ジアクリル酸1,6-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクレート、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、メタクリル酸ビニル等が挙げられる。
【0036】
多官能単量体としては、市販品を用いることができる。市販品の例としては、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製、ライトアクリレートDCP-A)、ビスフェノールA エチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成(株)製、アロニックスM-211B)等が挙げられる。
【0037】
多官能単量体の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対して、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、多官能単量体の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。多官能単量体の含有量を上記範囲とすることにより、本発明の粘着シートの耐久性及び段差追従性をより向上させることもできる。
【0038】
(光重合開始剤)
粘着シートは、光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。光重合開始剤は、活性エネルギー線照射により多官能単量体の重合を開始させるものであることが好ましい。光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができる。ここで、「活性エネルギー線」とは電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
【0039】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミン系開始剤、アシルフォスフィンオキシド系開始剤等が挙げられる。
アセトフェノン系開始剤として具体的には、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
ベンゾインエーテル系開始剤として具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系開始剤として具体的には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤として具体的には、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASFジャパン(株)製、IRGACURE184として市販)等が挙げられる。
チオキサントン系開始剤として具体的には、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
アミン系開始剤として具体的には、トリエタノールアミン、4-ジメチル安息香酸エチル等が挙げられる。
アシルフォスフィンオキシド系開始剤として具体的には、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BASFジャパン(株)製、IRGACURE819として市販)等が挙げられる。
【0040】
光重合開始剤の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対して、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量を上記範囲とすることにより、本発明の粘着シートの耐久性及び段差追従性をより向上させることもできる。
【0041】
(単官能単量体)
粘着シートは、単官能単量体を含んでいてもよい。単官能単量体は、分子内に反応性二重結合を1つ有するものである。また、単官能単量体は、(メタ)アクリル系モノマーであることが好ましい。
【0042】
単官能単量体としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;その他、ベンジル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドンなどを挙げることができる。
【0043】
単官能単量体としては、市販品を用いることができる。市販品の例としては、大阪有機化学工業社製のIBXA、大阪有機化学工業社製のISTA等が挙げられる。
【0044】
(任意成分)
粘着剤組成物は、オレフィン系重合体の他に、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、粘着付与剤、オイル成分、軟化剤、老化防止剤、架橋剤、顔料を挙げることができる。
【0045】
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプト基を含有するメルカプト系シランカップリング剤や、エポキシ基を有するエポキシ系シランカップリング剤、ビニル基を有するビニル系シランカップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、本発明の用途ではメルカプト系シランカップリング剤を用いることが好ましい。メルカプト系シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、トリエトキシ(2-メルカプトエチル)シラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、4-メルカプトブチルトリメトキシシラン、10-メルカプトデシルトリエトキシシラン、11-メルカプトウンデシルトリメトキシシラン、11-メルカプトウンデシルトリエトキシシランなどが例示できる。
【0046】
粘着付与剤としては、例えば、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂などの石油系樹脂を挙げることができる。この中でもスチレン系樹脂が好ましく用いられる。
【0047】
オイル成分としてはパラフィン系やナフテン系のシステムオイルが好ましく、ゴムの劣化が起き難い等の理由から、パラフィン系のシステムオイルがより好ましく用いられる。
【0048】
(剥離シート付き粘着シート)
本発明は、上述した粘着シートの少なくとも一方の面に剥離シートを備えた剥離シート付き粘着シートに関するものであってもよい。
【0049】
図1は、剥離シート付き粘着シート1の構成の一例を表す断面図である。
図1に示されるように粘着シート11は剥離シート(12a、12b)を有している。なお、
図1の粘着シート11は、基材レスタイプの単層の両面粘着シートである。
【0050】
剥離シートとしては、剥離シート用基材とこの剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
【0051】
剥離シート付き粘着シートは、粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを備えることが好ましい。すなわち、粘着シートの一方の表面に第1の剥離シートを備え、粘着シートの他方の表面に第2の剥離シートを備え、第1の剥離シート及び第2の剥離シートの剥離力が互いに異なることが好ましい。
図1の例では、剥離シートを剥離しやすくするために、剥離シート12aと剥離シート12bとの剥離性を異なるものとすることが好ましい。つまり、一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シート12だけを先に剥離することが容易となる。その場合、貼合方法や貼合順序に応じて剥離シート12aと剥離シート12bの剥離シート12の剥離性を調整すればよい。
【0052】
(粘着シートの製造方法)
本発明の粘着シートの製造方法は、上述した粘着剤組成物を基材上に塗布して粘着剤組成物の塗膜を形成する工程、及び、該塗膜を熱乾燥処理することで、粘着剤層を形成する工程を含むことが好ましい。なお、熱乾燥処理においては、粘着剤組成物中に含まれる溶剤を揮発させることで除去する。
【0053】
粘着剤組成物を基材上に塗布する方法は特に限定されず、例えば、公知の塗布方法を広く採用することができる。例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の市販の塗布装置を用いて粘着剤組成物を塗布することができる。
【0054】
粘着剤組成物の塗布量は特に限定されず、目的とする粘着剤層の厚みに応じて適宜設定することができる。例えば、粘着剤組成物の塗布量は、熱乾燥処理後に形成される粘着剤層の厚みが5~1000μmとなるように調節することが好ましい。
【0055】
粘着剤組成物を塗布する基材は特に限定されるものではないが、剥離シートであることが好ましい。剥離シートとしては、上述したような剥離シートを採用することが好ましい。
【0056】
粘着シートは、第1の剥離シートの上に形成されることが好ましく、第1の剥離シートの上に上述した方法で粘着シートを形成した後に、第2の剥離シートを積層することが好ましい。このように、粘着シートの両面に剥離シートが積層された剥離シート付き粘着シートを製造することができる。
【0057】
熱乾燥処理の条件は特に限定されず、従来から行われている粘着剤組成物の塗膜の乾燥方法を広く採用することができる。このような熱乾燥処理は、例えば、公知の加熱装置等を用いて行うことができる。加熱温度は、50~200℃であることが好ましく、60~150℃であることがより好ましい。加熱時間は溶剤が揮発し、粘着剤層の残留溶剤濃度が例えば1000ppm以下になるように設定すればよい。このため、粘着剤組成物の濃度、所望する粘着剤層の厚み等に応じて上記温度範囲で1~30分程度の時間内で適宜設定することが好ましい。
【0058】
(用途)
本発明の粘着シートは、耐久性を必要とする光学部材であって、形状が複雑で積層体になってからの打抜き加工が必要な光学部材の貼合用に好ましく用いられる。すなわち、本発明の粘着シートは、光学部材貼合用粘着であることが好ましい。本発明の粘着シートは、被着体に貼合し、後硬化させた後、高温高湿環境下に曝した場合であっても、耐久性に優れているため、浮きや剥がれの発生が抑制される。また、凹凸形状を有する被着体に貼合する場合であっても、凹凸形状に追従し、密着する。
【0059】
本発明の粘着シートは、偏光板などの光学部材に貼合されるものであってもよい。ここで、偏光板とは、偏光子と偏光子保護フィルムを含むものであり、本発明の粘着シートは偏光子保護フィルムに貼合されることが好ましい。偏光子保護フィルムとしては、シクロオレフィン系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースなどの酢酸セルロース系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0060】
本発明の粘着シートは両面粘着シートであることが好ましく、この場合、2つの被着体の貼合に用いることができる。例えば、粘着シートは、タッチパネルの内部における透明光学用フィルム同士の貼合、透明光学用フィルムとガラスとの貼合、タッチパネルの透明光学用フィルムと液晶パネルとの貼合、カバーガラスと透明光学用フィルムとの貼合、カバーガラスと透明光学用フィルムとの貼合などに用いられる。透明光学用フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムやアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光学分野に用いられる一般的なフィルムを挙げることができる。また、透明光学用フィルムやポリカーボネート基材にはハードコート層が設けられていてもよい。
【0061】
(積層体の製造方法)
本発明の粘着シートを用いて積層体を製造する際には、積層体の製造方法は、粘着シートを被着体に貼合し半硬化状態の粘着剤層と被着体を備える積層前駆体を得た後、積層前駆体に活性エネルギー線を照射して半硬化状態の粘着剤層を後硬化させる工程を含むことが好ましい。半硬化状態の粘着シートを被着体に貼合することで、被着体の凹凸形状に追従させことができる。また、活性エネルギー線の照射により粘着剤層を後硬化させることで粘着力及び保持力を高めることができる。
【0062】
活性エネルギー線を照射する際の活性エネルギー線の積算光量は、例えば300~10000mJ/cm2であることが好ましく、750~8000mJ/cm2であることがより好ましく、1000~6000mJ/cm2であることがさらに好ましい。
【0063】
活性エネルギー線の照射方法も特に限定されず、例えば、被着体同士を粘着シートで貼り合せて形成させた積層前駆体の全面に対して活性エネルギー線を照射することができる。この観点から、被着体の少なくとも一方は、透明であることが好ましい。活性エネルギー線の照射にあたっては、例えば、公知の活性エネルギー線照射装置を使用することができる。
【0064】
本発明は、このようにして製造された積層体に関するものであってもよい。積層体は、完全硬化状態の粘着剤層と、粘着剤層の少なくとも一方の面に貼合された被着体を含む。
【実施例】
【0065】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0066】
(実施例1)
<粘着剤組成物の作製>
オレフィン系重合体としてEP T7141(JSR社製、EPDM)及びアルコンP-90(荒川化学社製、水添石油樹脂)を、多官能(メタ)アクリレートとしてNKエステルA-DOG(新中村化学工業社製、ジオキサングリコールジアクリレート)を、光重合開始剤としてEsacureTZT(Lanberti社製)を用い、表1に記載の配合とした。そこに固形分濃度が20質量%となるようにトルエンを加え、均一に溶解するまで撹拌し、さらに脱泡することで粘着剤組成物を得た。
【0067】
<粘着シートの作製>
上記で作製した粘着剤組成物を、ナイフコーターを用いて重剥離力側の剥離シート(王子エフテックス社製:RL-07(2))に、乾燥後の厚みが75μmとなるように塗工した後、100℃で4分間乾燥して溶剤のトルエンを揮発させ、両面粘着シートを得た。得られた粘着シートの上に軽剥離力側の剥離シート(王子エフテックス社製:RL-07(L))をラミネートすることにより剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0068】
(実施例2)
<粘着シートの作製>において、乾燥後の厚みが150μmとなるように粘着剤組成物を塗工した以外は実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0069】
(実施例3)
<粘着剤組成物の作製>において、オレフィン系重合体を、EP T7141(JSR社製、EPDM)及びアルコンP-125(荒川化学工業社製、水添石油樹脂)に変更し、多官能(メタ)アクリレートをCN9014NS(サートマー社製、2官能脂肪族系ウレタンアクリレート)に変更した以外は、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0070】
(実施例4)
<粘着剤組成物の作製>において、多官能(メタ)アクリレートをNKエステルA-DOG(新中村化学工業社製、ジオキサングリコールジアクリレート)に変更した以外は、実施例3と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0071】
(比較例1)
実施例1にて作製した剥離シート付き両面粘着シートの一方の剥離シート側から、さらに高圧水銀ランプ(照度90mW/cm2)にて積算光量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射して剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0072】
(比較例2)
実施例1にて作製した剥離シート付き両面粘着シートの一方の剥離シート側から、さらに高圧水銀ランプ(照度90mW/cm2)にて積算光量が2500mJ/cm2となるように紫外線を照射して剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0073】
(比較例3)
実施例3にて作製した剥離シート付き両面粘着シートの一方の剥離シート側から、さらに高圧水銀ランプ(照度90mW/cm2)にて積算光量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射して剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0074】
(比較例4)
実施例4にて作製した剥離シート付き両面粘着シートの一方の剥離シート側から、さらに高圧水銀ランプ(照度90mW/cm2)にて積算光量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射して剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0075】
(比較例5)
オレフィン系重合体を、EP T7141(JSR社製、EPDM)及びアルコンP-125(荒川化学工業社製、水添石油樹脂)に変更し、表1に記載の配合とした。そこに、固形分濃度が20質量%となるようにトルエンを加え、均一に溶解するまで撹拌し、さらに脱泡することで粘着剤組成物を得た。このようにして得た粘着剤組成物を用いた以外は実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0076】
(比較例6)
オレフィン系重合体を、EP T7141(JSR社製、EPDM)及びアルコンP-90(荒川化学工業社製、水添石油樹脂)に変更し、表1に記載の配合とした。そこに、固形分濃度が20質量%となるようにトルエンを加え、均一に溶解するまで撹拌し、さらに脱泡することで粘着剤組成物を得た。このようにして得た粘着剤組成物を用いた以外は実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0077】
(比較例7)
オレフィン系重合体としてUrethane Acrylate13-275(Rahn社製、水素化ブタジエン系ウレタンアクリレート)及びアルコンP-90(荒川化学社製、水添石油樹脂)を、ポリイソプレン系オリゴマーとしてGI-1000(日本曹達社製、末端水酸基含有水素化ポリブタジエン系)を、単官能(メタ)アクリレートとしてライトアクリレートIB-XA(共栄社化学社製、イソボルニルアクリレート)および4-HBA(商品名:大阪有機化学工業社製、4-ヒドロキシブチルアクリレート)を、光重合開始剤としてIrgacure184(商品名:BASFジャパン社製)およびLucirinTPO(商品名:BASFジャパン製)を用い、表1に記載の配合とし、撹拌及び脱泡を行った。その後、実施例1と同様に剥離シート付き両面粘着シートを作製した後、剥離シート付き両面粘着シートの一方の剥離シート側から、さらに高圧水銀ランプ(照度90mW/cm2)にて積算光量が1500mJ/cm2となるように紫外線を照射して剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0078】
(比較例8)
高圧水銀ランプの積算光量を500mJ/cm2に変更した以外は比較例7と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0079】
(比較例9)
剥離シート付き両面粘着シートとして、新タック化成社製のアクリル系後硬化型粘着シート(両面剥離シート付き)であるAC143を用いた。
【0080】
(比較例10)
剥離シート付き両面粘着シートとして、新タック化成のアクリル系後硬化型粘着シート(両面剥離シート付き)であるDC123を用いた。
【0081】
(測定及び評価方法)
<ゲル分率>
粘着シートのゲル分率は、以下の方法で測定した。まず、粘着シート約0.1gをサンプル瓶に採取し、トルエン30mlを加えて24時間振とうした。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥質量(g)を測定した。得られた乾燥質量から下記式1によりゲル分率(後硬化前)を求めた。なお、後硬化後のゲル分率は、半硬化状態の粘着シートについては切り出した剥離シート付き両面粘着シートの軽剥離力側の剥離シート側から高圧水銀ランプを積算光量が1500mJ/cm2となるように照射した後に同様の測定を行うことでゲル分率(後硬化後)を求めた。
ゲル分率(%)=(乾燥質量/粘着シートの採取質量)×100・・・式1
【0082】
<比誘電率>
実施例及び比較例で得られた剥離シート付き粘着シートを50mm×50mmの寸法に切り出し、軽剥離力側の剥離シートを剥離し、100mm×100mm×18μmの寸法の銅箔(日本電解株式会社製、商品名「SLP-18」)の光沢面側に粘着シートがはみ出さないように貼り合わせた。次いで、半硬化状態の粘着シートについては高圧水銀ランプを積算光量が1500mJ/cm2となるように照射した後、重剥離力側の剥離シートを剥離し、20mm×20mm×18μmの寸法の銅箔(日本電解株式会社製、商品名「SLP-18」)の光沢面側に粘着シートがはみ出さないように貼り合わせた。100mm×100mmの寸法の銅箔及び20mm×20mmの寸法の銅箔のそれぞれのほぼ中央部に端子を接触させて、誘電率測定装置(Solartoron製、商品名「SI1260」)により、23℃、相対湿度50%、周波数1MHzの条件で静電容量(C)を測定し、以下の式により誘電率εrを算出した。
C=ε0×εr×(20mm×20mm)/d
なお、ε0は真空の誘電率、dは粘着シートの厚さである。
【0083】
<保持力>
粘着シートについて、保持力をJIS Z 0237に準拠して、以下の手順で測定した。実施例及び比較例で得られた剥離シート付き粘着シートの軽剥離力側の剥離シートを剥離して、露出した粘着シートにPETフィルム(東洋紡社製 コスモシャインA4300 100μm)を貼合した後、25mm×50mmのサイズに切り出し、重剥離力側の剥離シートを剥離して露出した粘着シートをSUS板表面との接触面が25mm×25mmになるように貼り付けた。SUS板からはみ出した粘着シートに1kgのおもりを装着し、40℃、dry環境下に24時間放置した。その後、粘着シートとSUS板界面における、ずれた距離(mm)を測定し、後硬化前の粘着シートのズレ量とした。
なお、半硬化状態の粘着シートについては、粘着シートとSUS板を貼合した後、高圧水銀ランプを積算光量が1500mJ/cm2となるように照射し、SUS板からはみ出した粘着シートに1kgのおもりを装着し、40℃、dry環境下に24時間放置した。その後、粘着シートとSUS板界面における、ずれた距離(mm)を測定し、後硬化後のズレ量とした。
【0084】
<引張応力・引張最大伸び率>
粘着シートの後硬化前の引張応力は以下のようにして測定した。まず、実施例及び比較例で得た剥離シート付き粘着シートから剥離シートを剥離し粘着シートを800~1000μm厚みになるよう積層した後、幅10mmに裁断し、サンプルの上端及び下端を、厚み188μm、縦25mm、横50mmのPETフィルム2枚(合計4枚)でフィルム間距離が15mmとなるように挟みこみ、固定した。その後、測定温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張速度300mm/分の条件で引張伸び率が1000%となるまで引っ張った。この際の応力値を引張応力とした。
粘着シートの後硬化後の引張応力は、切り出した剥離シート付き両面粘着シートの軽剥離力側の剥離シート側から積算光量が1500mJ/cm2となるように紫外線を照射し、その後、剥離シートを剥離し粘着シートを800~1000μm厚みになるよう積層した後、同様の方法で測定した。
なお、表中において(*)印の付いている値は、サンプルの引張伸び率が1000%に達する前に破断したものであり、破断時の応力を記録したものである。
【0085】
<貯蔵弾性率>
貯蔵弾性率は、株式会社ユービーエム製の動的粘弾性装置(商品名:Rheogel-E4000)を用いて測定をした。測定条件は、周波数1Hz、昇温速度2℃/minとし、ステップ温度1℃での-30℃から160℃の範囲における、25℃、140℃での測定値を貯蔵弾性率とした。
粘着シートの後硬化後の貯蔵弾性率は、切り出した剥離シート付き両面粘着シートの軽剥離力側の剥離シート側から積算光量が1500mJ/cm2となるように紫外線を照射した後に同様の方法で測定した。
【0086】
<段差追従性>
軽剥離力側の剥離シートを剥離した粘着シートをPETフィルム(東洋紡社製 コスモシャインA4300 100μm)に貼合した後、重剥離力側の剥離シートを剥がし、一方の面に10μmの額縁印刷を施したガラスの額縁印刷面上に、ロール貼合した。次いで、40℃、0.5MPaの条件で30分間オートクレーブ処理を行った。その後、半硬化状態の粘着シート(比較例1~7を除く実施例及び比較例)については額縁印刷付ガラス側より高圧水銀ランプを積算光量が1500mJ/cm2となるように照射し、85℃の環境下に24時間置き、気泡の発生有無を確認した。
○:気泡なし
×:気泡有
【0087】
<水蒸気透過率>
剥離シート付き両面粘着シートの軽剥離力側の剥離シート側から積算光量が1500mJ/cm2となるように紫外線を照射した。その後、粘着シートから剥離シートを剥離し、JIS Z 0208に準拠し、カップ法により40℃、相対湿度90%の条件で24時間、水蒸気透過率を測定した。
【0088】
【0089】
【0090】
実施例で得られた粘着シートにおいては、耐久性、段差追従性及び低水蒸気透過率が達成されていた。なお、比較例7と8においては、粘着シートが柔らかく、貯蔵弾性率の測定ができなかった。
【符号の説明】
【0091】
1 剥離シート付き粘着シート
11 粘着シート(粘着剤層)
12a、12b 剥離シート