(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230912BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 607
B41J2/14 603
B41J2/18
B41J2/14
(21)【出願番号】P 2019105314
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-111282(JP,A)
【文献】特開2019-155768(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0201019(US,A1)
【文献】特開2018-103602(JP,A)
【文献】特開2012-143948(JP,A)
【文献】特開2008-254196(JP,A)
【文献】国際公開第2020/189695(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に配列された複数の個別流路と、
前記第1方向に延びる第1共通流路及び第2共通流路と、
前記複数の個別流路で構成される第1個別流路群と、
前記複数の個別流路で構成され、前記第1共通流路及び前記第2共通流路の幅方向である第2方向に前記第1個別流路群と並ぶ第2個別流路群と、を備え、
前記複数の個別流路は、それぞれ、ノズルと、前記第1方向に並ぶ第1圧力室及び第2圧力室と、前記ノズル、前記第1圧力室及び前記第2圧力室を互いに接続する接続流路と、を含み、前記第1圧力室に第1アクチュエータ、前記第2圧力室に第2アクチュエータがそれぞれ設けられており、
前記第1共通流路は、前記第1圧力室及び前記第2圧力室に連通し、
前記第2共通流路は、前記接続流路に連通
し、
前記接続流路は、
前記第1圧力室に接続する第1接続部と、
前記第2圧力室に接続する第2接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部とを連結し、前記第1方向と前記第2方向とに平行な面に沿って延びる連結部と、を含み、
前記第1共通流路及び前記第2共通流路の高さ方向である第3方向において、前記連結部に対して前記第1圧力室及び前記第2圧力室と反対側に、前記ノズルが位置することを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1個別流路群において、前記連結部は、前記第2方向において前記第2個別流路群から離れる方向に後退した凹形状を有し、
前記第2個別流路群において、前記連結部は、前記第2方向において前記第1個別流路群から離れる方向に後退した凹形状を有することを特徴とする、請求項
1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1圧力室及び前記第2圧力室から前記連結部までの前記第3方向の長さは、前記連結部から前記ノズルまでの前記第3方向の長さ未満であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1圧力室及び前記第2圧力室から前記連結部までの前記第3方向の長さは、前記連結部から前記ノズルまでの前記第3方向の長さ以上であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記複数の個別流路は、それぞれ、前記接続流路と前記第2共通流路とを連通させる連通流路を含み、
前記連通流路は、前記第1方向と前
記第2方向とに平行な面に沿って延びる部分を有し、
前記部分は、前記面において、湾曲形状を有することを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1共通流路にフィルタが設けられ、
前記第2共通流路にフィルタが設けられないことを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第2共通流路に第2ダンパが設けられ、
前記複数の個別流路は、それぞれ、前記第1圧力室と前記第1共通流路とを結合する結合流路を含み、
前記第2ダンパは、前記結合流路を構成するプレートで構成されたことを特徴とする、請求項1~
6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の共通流路を備えた液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(
図1等)には、ノズルと、第1圧力室及び第2圧力室と、ノズル、第1圧力室及び第2圧力室を互いに接続する接続流路とを含む、個別流路が示されている。第1圧力室に第1アクチュエータ、第2圧力室に第2アクチュエータがそれぞれ設けられている。第1圧力室は第1共通流路に連通し、第2圧力室は第2共通流路に連通している。インク循環時には、第1共通流路から第1圧力室、接続流路、第2圧力室、第2共通流路へとインクが流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、第1圧力室が第1共通流路に連通し、第2圧力室が第2共通流路に連通している。そのため、液体循環時に、第1圧力室と第2圧力室とで負圧の大きさに差が生じ、この負圧の影響によって第1アクチュエータ及び第2アクチュエータの変形量にも差が生じ得る。この場合、液体吐出の際に、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータに対し、同一の波形を印加したとしても、初期の変形量に差があるため、同一の変形量を得難く、吐出に乱れが生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、液体循環時における第1アクチュエータ及び第2アクチュエータの変形量の差を抑制できる、液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に配列された複数の個別流路と、前記第1方向に延びる第1共通流路及び第2共通流路と、を備え、前記複数の個別流路は、それぞれ、ノズルと、前記第1方向に並ぶ第1圧力室及び第2圧力室と、前記ノズル、前記第1圧力室及び前記第2圧力室を互いに接続する接続流路と、を含み、前記第1圧力室に第1アクチュエータ、前記第2圧力室に第2アクチュエータがそれぞれ設けられており、前記第1共通流路は、前記第1圧力室及び前記第2圧力室に連通し、前記第2共通流路は、前記接続流路に連通することを特徴とする。
【0007】
本発明の第2観点に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に配列された複数の個別流路と、前記第1方向に延びる第1共通流路、第2共通流路及び第3共通流路と、を備え、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路の幅方向である第2方向に並び、前記第2方向において前記第1共通流路と前記第3共通流路との間に前記第2共通流路が位置し、前記複数の個別流路は、それぞれ、ノズルと、前記第2方向に並ぶ第1圧力室及び第2圧力室と、前記ノズル、前記第1圧力室及び前記第2圧力室を互いに接続する接続流路と、を含み、前記第1圧力室に第1アクチュエータ、前記第2圧力室に第2アクチュエータがそれぞれ設けられており、前記第1共通流路は、前記第1圧力室に連通し、前記第2共通流路は、前記接続流路に連通し、前記第3共通流路は、前記第2圧力室に連通することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッド1を備えたプリンタ100の平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿ったヘッド1の断面図である。
【
図4】ヘッド1内に形成された流路の一部を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るヘッド201の平面図である。
【
図6】
図5のVI-VI線に沿ったヘッド201の断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係るヘッド301の平面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線に沿ったヘッド301の断面図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係るヘッド401の平面図である。
【
図10】本発明の第5実施形態に係るヘッド501の
図4に対応する斜視図である。
【
図11】本発明の第6実施形態に係るヘッド601の平面図である。
【
図12】本発明の第7実施形態に係るヘッド701内に形成された流路の一部を示す、
図4に対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
先ず、
図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るヘッド1を備えたプリンタ100の全体構成について説明する。
【0010】
プリンタ100は、4つのヘッド1を含むヘッドユニット1x、プラテン3、搬送機構4及び制御部5を備えている。
【0011】
プラテン3の上面に、用紙9が載置される。
【0012】
搬送機構4は、搬送方向にプラテン3を挟んで配置された2つのローラ対4a,4bを有する。制御部5の制御により搬送モータ(図示略)が駆動されると、ローラ対4a,4bが用紙9を挟持した状態で回転し、用紙9が搬送方向に搬送される。
【0013】
ヘッドユニット1xは、紙幅方向(搬送方向及び鉛直方向の双方と直交する方向)に長尺であり、位置が固定された状態でノズル21(
図2~
図4参照)から用紙9に対してインクを吐出するライン式である。4つのヘッド1は、それぞれ紙幅方向に長尺であり、紙幅方向に千鳥状に配列されている。
【0014】
制御部5は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)を有する。ASICは、ROMに格納されたプログラムに従い、記録処理等を実行する。記録処理において、制御部5は、PC等の外部装置から入力された記録指令(画像データを含む。)に基づき、各ヘッド1のドライバIC及び搬送モータ(共に図示略)を制御し、用紙9上に画像を記録する。
【0015】
次いで、
図2~
図4を参照し、ヘッド1の構成について説明する。
【0016】
ヘッド1は、
図3に示すように、流路基板11及びアクチュエータ基板12を有する。
【0017】
流路基板11は、鉛直方向に積層されかつ互いに接着された12枚のプレート11a~11lで構成されている。各プレート11a~11lには、流路を構成する貫通孔が形成されている。当該流路は、複数の個別流路20、供給流路31及び帰還流路32を含む。
【0018】
複数の個別流路20は、
図2に示すように、紙幅方向(第1方向)に千鳥状に配列され、第1個別流路群20A及び第2個別流路群20Bを構成している。各個別流路群20A,20Bは、第1方向に並ぶ複数の個別流路20で構成されている。第1個別流路群20Aと第2個別流路群20Bとは、搬送方向と平行な方向(第2方向:供給流路31及び帰還流路32の幅方向であり、第1方向と直交する方向)に並んでいる。
【0019】
供給流路31及び帰還流路32は、それぞれ、第1方向に延びている。供給流路31は、本発明の「第1共通流路」に該当する。帰還流路32は、本発明の「第2共通流路」に該当する。本実施形態において、供給流路31及び帰還流路32は、鉛直方向(第3方向:供給流路31及び帰還流路32の高さ方向であり、第1方向及び第2方向の双方と直交する方向)に並び、鉛直方向に互いに重なっている。供給流路31及び帰還流路32は、長さ(第1方向の長さ)、幅(第2方向の長さ)及び高さ(第3方向の長さ)が互いに略同じである。
【0020】
供給流路31及び帰還流路32は、それぞれの第1方向の一端(
図2の下端)において、互いに連結されている。
【0021】
供給流路31及び帰還流路32は、それぞれの第1方向の他端(
図2の上端)に設けられた供給口31x及び帰還口32xを介して、サブタンク(図示略)に連通している。供給口31xは、本発明の「第1共通流路の開口」に該当する。帰還口32xは、本発明の「第2共通流路の開口」に該当する。
【0022】
供給口31x及び帰還口32xは、第1方向において複数の個別流路20に対して互いに同じ側にあり、第1方向に並んでいる。第1方向において、複数の個別流路20と帰還口32xとの間に、供給口31xがある。つまり、帰還口32xと複数の個別流路20との第1方向の間隔は、供給口31xと複数の個別流路20との第1方向の間隔よりも大きい。
【0023】
供給口31x及び帰還口32xは、流路基板11の上面に開口している。供給口31xにはフィルタ31fが設けられているが、帰還口32xにはフィルタが設けられていない。
【0024】
サブタンクは、インクを貯留するメインタンクに連通し、メインタンクから供給されたインクを貯留する。サブタンク内のインクは、制御部5の制御によりポンプ(図示略)が駆動されることで、供給口31xから供給流路31に流入する。供給流路31に流入したインクは、供給流路31内を第1方向の他端(
図2の上端)から一端(
図2の下端)に向かって移動しつつ、各個別流路20に供給される。供給流路31の第1方向の一端(
図2の下端)に到達したインク、及び、各個別流路20から流出したインクは、帰還流路32に流入する。帰還流路32に流入したインクは、帰還流路32内を第1方向の一端(
図2の下端)から他端(
図2の上端)に向かって移動し、帰還口32xを介してサブタンクに戻される。
【0025】
図3に示すように、供給流路31は、プレート11e,11fに形成された貫通孔で構成されている。帰還流路32は、プレート11iに形成された貫通孔で構成されている。第3方向において供給流路31と帰還流路32との間には、ダンパ室33が設けられている。ダンパ室33は、プレート11gに形成された凹部と、プレート11hに形成された凹部とで構成されている。プレート11gにおける凹部の底部は、供給流路31のダンパ膜31dとして機能する。プレート11hにおける凹部の底部は、帰還流路32のダンパ膜32dとして機能する。
【0026】
各個別流路20は、
図2に示すように、1つのノズル21と、2つの圧力室(第1圧力室22a及び第2圧力室22b)と、1つの接続流路23と、2つの流入流路(第1流入流路24a及び第2流入流路24b)と、1つの流出流路25とを含む。
【0027】
図3に示すように、ノズル21は、プレート11lに形成された貫通孔で構成され、流路基板11の下面に開口している。第1圧力室22a及び第2圧力室22bは、プレート11aに形成された貫通孔で構成され、流路基板11の上面に開口している。
【0028】
第1圧力室22a及び第2圧力室22bは、
図2に示すように、互いに同じ形状及びサイズを有し、第1方向に並んでいる。各圧力室22a,22bは、第1方向と第2方向とに平行な面(第3方向と直交する面)において、第2方向に長尺な略矩形状である。第1圧力室22aに対し、第2方向の一端に接続流路23が接続し、第2方向の他端に第1流入流路24aが接続している。第2圧力室22bに対し、第2方向の一端に接続流路23が接続し、第2方向の他端に第2流入流路24bが接続している。
【0029】
接続流路23は、ノズル21、第1圧力室22a及び第2圧力室22bを互いに接続している。具体的には、接続流路23は、
図4に示すように、第1圧力室22aに接続する第1接続部23aと、第2圧力室22bに接続する第2接続部23bと、第1接続部23aと第2接続部23bとを連結する連結部23cと、連結部23cから下方に延びかつ下端にノズル21が配置された延出部23dとを含む。
【0030】
各接続部23a,23bは、本実施形態では、各圧力室22a,22bの第2方向の一端から下方に延びる円柱状の流路であり、
図3に示すように、プレート11b~11dに形成された貫通孔で構成されている。しかしながら、これに限定されず、例えば、後述する第7実施形態(
図12)のように、連結部23cが圧力室22a,22bの直下に位置し(即ち、連結部23cと圧力室22a,22bとの間に、円柱状の流路等の他の流路が介在せず)、各接続部23a,23bが、各圧力室22a,22bと連結部23cとの界面(各圧力室22a,22bの下面に形成された開口)で構成されてもよい。
【0031】
連結部23cは、
図3に示すように、プレート11eに形成された貫通孔で構成され、第3方向と直交する面に沿って、第1方向に延びている。
【0032】
延出部23dは、
図3に示すように、プレート11f~11kに形成された貫通孔で構成され、第3方向に延びている。第3方向において、連結部23cに対して下方(第1圧力室22a及び第2圧力室22bと反対側)に、ノズル21が位置している。
【0033】
本実施形態では、
図4に示すように、第1圧力室22a及び第2圧力室22bから連結部23cまでの第3方向の長さH1は、連結部23cからノズル21までの第3方向の長さH2未満である。つまり、連結部23cは、接続流路23が占める領域の上部(圧力室22a,22bに近い側)に位置している。
【0034】
図2に示すように、第1個別流路群20Aに属する各圧力室22a,22bは、供給流路31及び帰還流路32と第3方向に重なる部分と、供給流路31及び帰還流路32と第3方向に重ならず、供給流路31及び帰還流路32に対して第2方向の一方に位置する部分とを有する。第2個別流路群20Bに属する各圧力室22a,22bは、供給流路31及び帰還流路32と第3方向に重なる部分と、供給流路31及び帰還流路32と第3方向に重ならず、供給流路31及び帰還流路32に対して第2方向の他方に位置する部分とを有する。
【0035】
第1個別流路群20Aに属する接続流路23及びノズル21は、供給流路31及び帰還流路32に対して第2方向の一方に位置する。第2個別流路群20Bに属する接続流路23及びノズル21は、供給流路31及び帰還流路32に対して第2方向の他方に位置する。
【0036】
第1流入流路24aは、第1圧力室22aの第2方向の他端(接続流路23が接続する端部とは反対側の端部)に接続する一端と、供給流路31に接続する他端とを有する。第2流入流路24bは、第2圧力室22bの第2方向の他端(接続流路23が接続する端部とは反対側の端部)に接続する一端と、供給流路31に接続する他端とを有する。供給流路31は、第1流入流路24a及び第2流入流路24bのそれぞれを介して、第1圧力室22a及び第2圧力室22bに連通している。
【0037】
第1流入流路24a及び第2流入流路24bは、それぞれ、第1圧力室22a及び第2圧力室22bと供給流路31とを結合する流路であり、本発明の「結合流路」に該当する。本実施形態において、各流入流路24a,24bは、第1方向及び第2方向の双方に対して交差する斜め方向に延びている。
【0038】
各流入流路24a,24bは、
図3に示すように、プレート11b~11dに形成された貫通孔で構成されている。
【0039】
流出流路25は、
図3に示すように、プレート11j,11kに形成された貫通孔で構成され、延出部23dの下端に接続する一端と、帰還流路32に接続する他端とを有する。帰還流路32は、流出流路25を介して、接続流路23に連通している。
【0040】
流出流路25は、接続流路23と帰還流路32とを連通させる流路であり、本発明の「連通流路」に該当する。本実施形態において、流出流路25は、
図2に示すように、第2方向に延びている。
【0041】
流入流路24a,24b及び流出流路25は、それぞれ、各圧力室22a,22bの幅(第1方向の長さ)よりも小さい幅を有し、絞りとして機能する。
【0042】
供給流路31から各個別流路20に供給されたインクは、第1流入流路24a及び第2流入流路24bを通って第1圧力室22a及び第2圧力室22bにそれぞれ流入し、各圧力室22a,22b内を略水平に移動して、接続流路23に流入する。接続流路23に流入したインクは、第1接続部23a及び第2接続部23bを通って連結部23cに至り、延出部23dを通って下方に移動し、一部がノズル21から吐出され、残りが流出流路25を通って帰還流路32に流入する。
【0043】
このようにサブタンクと流路基板11との間でインクを循環させることで、流路基板11に形成された供給流路31及び帰還流路32、さらには個別流路20における、エアの排出やインクの増粘防止が実現される。また、インクが沈降成分(沈降が生じ得る成分。顔料等)を含む場合、当該成分が攪拌されて沈降が防止される。
【0044】
アクチュエータ基板12は、
図3に示すように、下から順に、振動板12a、共通電極12b、複数の圧電体12c及び複数の個別電極12dを含む。
【0045】
振動板12a及び共通電極12bは、流路基板11の上面(プレート11aの上面)に配置され、プレート11aに形成された全ての圧力室22a,22bを覆っている。一方、圧電体12c及び個別電極12dは、圧力室22a,22b毎に設けられており、圧力室22a,22bのそれぞれと第3方向に重なっている。
【0046】
共通電極12b及び複数の個別電極12dは、ドライバIC(図示略)と電気的に接続されている。ドライバICは、共通電極12bの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極12dの電位を変化させる。具体的には、ドライバICは、制御部5からの制御信号に基づいて駆動信号を生成し、当該駆動信号を個別電極12dに付与する。これにより、個別電極12dの電位が所定の駆動電位とグランド電位との間で変化する。このとき、振動板12a及び圧電体12cにおいて個別電極12dと圧力室22a,22bとで挟まれた部分(アクチュエータ12x)が、圧力室22a,22bに向かって凸となるように変形することにより、圧力室22a,22bの容積が変化し、圧力室22a,22b内のインクに圧力が付与され、ノズル21からインクが吐出される。アクチュエータ基板12は、圧力室22a,22bのそれぞれに対応する複数のアクチュエータ12xを有する。
【0047】
以上に述べたように、本実施形態によれば、供給流路31は第1圧力室22a及び第2圧力室22bに連通し、帰還流路32は接続流路23に連通している(
図2~
図4参照)。つまり、第1圧力室22a及び第2圧力室22bに対し、同一の共通流路(供給流路31)が連通している。この場合、インク循環時に、第1圧力室22aと第2圧力室22bとで負圧の大きさに差が生じ難く、この負圧の影響による各アクチュエータ(第1圧力室22aに対応するアクチュエータ12xと、第2圧力室22bに対応するアクチュエータ12x)の変形量の差を抑制できる。したがって、各アクチュエータ12xに対して同一の波形を印加すれば、同一の変形量を得易く、吐出に乱れが生じ難い。
【0048】
また、特許文献1において、ノズルから個別流路に侵入したエアは、第2共通流路に至るまで、接続流路と第2圧力室とを通る比較的長い経路を通過する必要がある。これに対し、本実施形態では、ノズル21から個別流路20に侵入したエアは、帰還流路32に至るまで、第2圧力室22bを通過する必要がなく、経路が短いため、エア排出性が向上する。また、本実施形態では、後述する第2実施形態(
図5)や第3実施形態(
図7)に比べ、共通流路(供給流路及び帰還流路)の数を低減できる。したがって、構成の簡素化や小型化を実現できる。
【0049】
第1圧力室22a及び第2圧力室22bから連結部23cまでの第3方向の長さH1は、連結部23cからノズル21までの第3方向の長さH2未満である(
図4参照)。この場合、各圧力室22a,22bから連結部23cまでの第3方向の長さが短いため、接続流路23全体のコンプライアンスが小さくなる。これにより、インク吐出時の圧力が効率よくノズル21に伝搬し、吐出効率を高められる。
【0050】
供給流路31にフィルタ31fが設けられ、帰還流路32にフィルタが設けられていない(
図2参照)。帰還流路32にフィルタが設けられていると、フィルタによって帰還流路32を介したエアの排出が妨げられる。これに対し、本実施形態では、帰還流路32にフィルタが設けられていないため、上記問題を抑制できる。(なお、帰還側のバルブを閉じた上でのパージ(ポンプの駆動によりノズル21から強制的にインクを排出させる動作)時には、供給流路31から各個別流路20にインクが供給され、帰還流路32からは各個別流路20にインクが供給されない。したがって、個別流路20への異物侵入を防止するため、供給流路31にはフィルタが必要であるが、帰還流路32にはフィルタが不要である。)
【0051】
<第2実施形態>
続いて、
図5及び
図6を参照し、本発明の第2実施形態に係るヘッド201について説明する。
【0052】
第1実施形態(
図2及び
図3)では、供給流路31及び帰還流路32が、第3方向に並び、それぞれの第1方向の一端において互いに連結されているが、本実施形態(
図5及び
図6)では、供給流路231及び帰還流路232が、第2方向に並び、それぞれの第1方向の一端において互いに連結されていない。また、第1実施形態のヘッド1は1つの供給流路31を有するが、本実施形態のヘッド201は2つの供給流路231を有する。本実施形態では、第2方向において2つの供給流路231の間に1つの帰還流路232が配置され、2つの供給口231x及び1つの帰還口232xが第2方向に並んでいる。
【0053】
第1実施形態(
図3)では、第3方向において供給流路31と帰還流路32との間にダンパ室33が設けられているが、本実施形態(
図6)では、供給流路231に対して下方(第3方向の一方)及び帰還流路232に対して上方(第3方向の他方)にそれぞれダンパ室233が設けられている。
【0054】
本実施形態の流路基板211は、
図6に示すように、第3方向に積層されかつ互いに接着された9枚のプレート211a~211iで構成されている。各プレート211a~211iには、複数の個別流路220、供給流路231及び帰還流路232を構成する貫通孔が形成されている。
【0055】
供給流路231及び帰還流路232は、プレート211e,211fに形成された貫通孔で構成されている。各供給流路231に対するダンパ室233は、プレート211gに形成された凹部で構成されている。プレート211gにおける凹部の底部は、供給流路231のダンパ膜231dとして機能する。帰還流路232に対するダンパ室233は、プレート211dに形成された凹部で構成されている。プレート211dにおける凹部の底部は、帰還流路232のダンパ膜232dとして機能する。
【0056】
複数の個別流路220は、
図5に示すように、第1方向に千鳥状に配列され、第1個別流路群220A及び第2個別流路群220Bを構成している。各個別流路群220A,220Bは、第1方向に並ぶ複数の個別流路220で構成されている。第1個別流路群220Aと第2個別流路群220Bとは、第2方向に並んでいる。
【0057】
第1個別流路群220Aに属する各個別流路220は、流入流路24a,24bを介して2つの供給流路231の一方(
図5及び
図6において左側の供給流路231)に連通し、流出流路25を介して帰還流路232に連通している。第2個別流路群220Bに属する各個別流路220は、流入流路24a,24bを介して2つの供給流路231の他方(
図5及び
図6において右側の供給流路231)に連通し、流出流路25を介して帰還流路232に連通している。
【0058】
第1個別流路群220Aに属する各圧力室22a,22bは、2つの供給流路231の一方(
図5及び
図6において左側の供給流路231)と第3方向に重なる部分と、当該供給流路231と第3方向に重ならず、第2方向において当該供給流路231と帰還流路232との間に位置する部分とを有する。第2個別流路群220Bに属する各圧力室22a,22bは、2つの供給流路231の他方(
図5及び
図6において右側の供給流路231)と第3方向に重なる部分と、当該供給流路231と第3方向に重ならず、第2方向において当該供給流路231と帰還流路232との間に位置する部分とを有する。
【0059】
第1個別流路群220Aに属する接続流路23及びノズル21は、第2方向において、一方の供給流路231と帰還流路232との間に位置する。第2個別流路群220Bに属する接続流路23及びノズル21は、第2方向において他方の供給流路231と帰還流路232との間に位置する。
【0060】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1実施形態と流路構成が異なるものの、第1実施形態と同様の要件(各個別流路220の第1圧力室22a及び第2圧力室22bに対して同一の共通流路(供給流路231)が連通すること等)を満たすことで、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0061】
さらに、本実施形態では、帰還流路232のダンパ膜232d(第2ダンパ)が、各流入流路24a,24bを構成するプレート211dで構成されている(
図6参照)。この場合、部品点数の低減、構成の簡素化を実現できると共に、ヘッド201の第3方向の厚みを抑えることができる。(供給流路231のダンパ膜231dが流出流路25を構成するプレート211gで構成されていることによっても、上記と同様の効果が得られる。)
【0062】
<第3実施形態>
続いて、
図7及び
図8を参照し、本発明の第3実施形態に係るヘッド301について説明する。
【0063】
第1実施形態(
図2及び
図3)では、供給流路31及び帰還流路32が、第3方向に並び、それぞれの第1方向の一端において互いに連結されているが、本実施形態(
図7及び
図8)では、第2実施形態と同様、供給流路331及び帰還流路332が、第2方向に並び、それぞれの第1方向の一端において互いに連結されていない。また、第1実施形態のヘッド1は1つの供給流路31を有するが、本実施形態のヘッド301は、第2実施形態と同様、2つの供給流路331を有する。本実施形態では、第2実施形態と同様、第2方向において2つの供給流路331の間に1つの帰還流路332が配置され、2つの供給口331x及び1つの帰還口332xが第2方向に並んでいる。
【0064】
2つの供給流路331の一方(
図7及び
図8において左側の供給流路331)が本発明の「第1共通流路」に該当し、帰還流路332が本発明の「第2共通流路」に該当し、2つの供給流路331の他方(
図7及び
図8において右側の供給流路331)が本発明の「第3共通流路」に該当する。2つの供給流路331には、互いに同じ圧力が付与される。
【0065】
第1実施形態(
図3)では、第3方向において供給流路31と帰還流路32との間にダンパ室33が設けられているが、本実施形態(
図8)では、第2実施形態と同様、供給流路331に対して下方(第3方向の一方)及び帰還流路332に対して上方(第3方向の他方)にそれぞれダンパ室333が設けられている。
【0066】
本実施形態の流路基板311は、
図8に示すように、第3方向に積層されかつ互いに接着された8枚のプレート311a~311hで構成されている。各プレート311a~311hには、複数の個別流路320、供給流路331及び帰還流路332を構成する貫通孔が形成されている。
【0067】
供給流路331は、プレート311e,311fに形成された貫通孔で構成されている。帰還流路332は、プレート311eに形成された貫通孔で構成されている。各供給流路331に対するダンパ室333は、プレート311gに形成された凹部で構成されている。プレート311gにおける凹部の底部は、供給流路331のダンパ膜331dとして機能する。帰還流路332に対するダンパ室333は、プレート311dに形成された凹部で構成されている。プレート311dにおける凹部の底部は、帰還流路332のダンパ膜332dとして機能する。
【0068】
複数の個別流路320は、
図7に示すように、第1方向に一列に配列されている。各個別流路320は、1つのノズル21と、2つの圧力室(第1圧力室22a及び第2圧力室22b)と、1つの接続流路23と、2つの流入流路(第1流入流路324a及び第2流入流路324b)と、1つの流出流路325とを含む。
【0069】
第1実施形態(
図2)では、各個別流路20の第1圧力室22a及び第2圧力室22bが、第1方向に並んでいるが、本実施形態(
図7)では、各個別流路320の第1圧力室22a及び第2圧力室22bが、第2方向に並んでいる。第1圧力室22aに対し、第2方向の一端に接続流路23が接続し、第2方向の他端に第1流入流路324aが接続している。第2圧力室22bに対し、第2方向の他端に接続流路23が接続し、第2方向の一端に第2流入流路324bが接続している。
【0070】
本実施形態において、第1圧力室22aは、2つの供給流路331の一方(
図7及び
図8において左側の供給流路331)と第3方向に重なる部分と、当該供給流路331と第3方向に重ならず、第2方向において当該供給流路331と帰還流路332との間に位置する部分とを有する。第2圧力室22bは、2つの供給流路331の他方(
図7及び
図8において右側の供給流路331)と第3方向に重なる部分と、当該供給流路331と第3方向に重ならず、第2方向において当該供給流路331と帰還流路332との間に位置する部分とを有する。
【0071】
第1圧力室22aは、第1流入流路324aを介して、2つの供給流路331の一方(
図7及び
図8において左側の供給流路331)に連通している。第2圧力室22bは、第2流入流路324bを介して、2つの供給流路331の他方(
図7及び
図8において右側の供給流路331)に連通している。各流入流路324a,324bは、第2方向に延びている。
【0072】
各個別流路320において、第1流入流路324a。第2流入流路324b、接続流路23、第1圧力室22a及び第2圧力室22bは、
図7に示すように、第2方向に一列に並んでいる。各個別流路320において、一方の供給流路331に連通する一端320aと、他方の供給流路331に連通する他端320bとは、第1方向において互いに同じ位置にある。
【0073】
接続流路23は、第2方向において、2つの供給流路331の間に位置する。ノズル21は、第2方向において2つの供給流路331の間に位置し、第3方向において帰還流路332と重なる。
【0074】
接続流路23の各接続部23a,23bは、
図8に示すように、第3方向において、第1実施形態の各接続部23a,23b(
図4)よりも長く、供給流路331及び帰還流路332の高さよりも長い。
【0075】
第1実施形態(
図2)では、連結部23cが第1方向に延びているが、本実施形態(
図7)では、連結部23cが第2方向に延びている。
【0076】
第1実施形態(
図4)では、接続流路23が延出部23dを有するが、本実施形態では、接続流路23が延出部23dを有さず、連結部23cの直下にノズル21が位置する(即ち、連結部23cとノズル21との間に他の流路が介在しない)。
【0077】
本実施形態では、
図8に示すように、第1圧力室22a及び第2圧力室22bから連結部23cまでの第3方向の長さH1が、連結部23cからノズル21までの第3方向の長さH2以上である。つまり、連結部23cは、接続流路23が占める領域の下部(ノズル21に近い側)に位置している。この場合、各圧力室22a,22bから連結部23cまでの第3方向の長さが長いため、接続流路23全体の抵抗が小さくなる。これにより、インクの循環量を増大できる。
【0078】
流出流路325は、
図8に示すように、プレート311fに形成された貫通孔で構成され、第3方向に延びており、連結部23cに接続する下端と、帰還流路332に接続する上端とを有する。つまり、帰還流路332は、流出流路325を介して、接続流路23に連通している。流出流路325は、連結部23cから上方に延び、帰還流路332に至る。ノズル21は、鉛直方向(第3方向)において流出流路325と重なる。
【0079】
各供給流路331から各個別流路320に供給されたインクは、第1流入流路324a及び第2流入流路324bを通って第1圧力室22a及び第2圧力室22bにそれぞれ流入し、各圧力室22a,22b内を略水平に移動して、接続流路23に流入する。接続流路23に流入したインクは、第1接続部23a及び第2接続部23bを通って、連結部23cの第2方向の一端及び他端に至る。そしてインクは、連結部23cの第2方向の両端から中央に向かって移動し、一部がノズル21から吐出され、残りが流出流路325を通って帰還流路332に流入する。
【0080】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1圧力室22aが一方の供給流路331に連通し、第2圧力室22bが他方の供給流路331に連通し、接続流路23が帰還流路332に連通している(
図7及び
図8参照)。この場合、インク循環時に、第1圧力室22aと第2圧力室22bとで負圧の大きさに差が生じ難い構成を実現でき、この負圧の影響による各アクチュエータの変形量の差を抑制できる。
【0081】
また、特許文献1において、ノズルから個別流路に侵入したエアは、第2共通流路に至るまで、接続流路と第2圧力室とを通る比較的長い経路を通過する必要がある。これに対し、本実施形態では、ノズル21から個別流路320に侵入したエアは、帰還流路332に至るまで、第2圧力室22bを通過する必要がなく、経路が短いため、エア排出性が向上する。
【0082】
個別流路320において、一方の供給流路331に連通する一端320aと、他方の供給流路331に連通する他端320bとは、第1方向において互いに同じ位置にある(
図7参照)。この場合、第1圧力室22aと第2圧力室22bとで圧力を揃えることができ、インク循環時にノズル21のメニスカスが壊れるのを防止できる。
【0083】
流出流路325は、連結部23cから上方に延びて帰還流路332に至る(
図8参照)。この場合、流出流路325に至ったエアが、浮力の作用により、帰還流路332にスムーズに排出される。したがって、不吐出を迅速に解消できる。
【0084】
ノズル21は、連結部23cの直下に位置する(
図8参照)。この場合、ノズル21から侵入したエアが、すぐに連結部23cに至り、流出流路325を通って帰還流路332に排出される。したがって、不吐出をより迅速に解消できる。
【0085】
ノズル21は、鉛直方向(第3方向)において流出流路325と重なる(
図7参照)。この場合、ノズル21から侵入したエアが、連結部23cを介して、すぐに流出流路325に至り、帰還流路332に排出される。したがって、不吐出をより迅速に解消できる。
【0086】
供給流路331にフィルタ31fが設けられ、帰還流路332にフィルタが設けられていない(
図7参照)。帰還流路332にフィルタが設けられていると、フィルタによって帰還流路332を介したエアの排出が妨げられる。これに対し、本実施形態では、帰還流路332にフィルタが設けられていないため、上記問題を抑制できる。(なお、パージ(ポンプの駆動によりノズル21から強制的にインクを排出させる動作)時には、供給流路331から各個別流路320にインクが供給され、帰還流路332からは各個別流路320にインクが供給されない。したがって、個別流路320への異物侵入を防止するため、供給流路331にはフィルタが必要であるが、帰還流路332にはフィルタが不要である。)
【0087】
2つの供給流路331のそれぞれに、ダンパ膜331d(第1ダンパ)が設けられている(
図8参照)。この場合、インク循環時における各ダンパ膜331dの圧力を略同一にできる。ひいては、各ダンパ膜331dのコンプライアンスが揃うことで、安定した吐出を実現できる。
【0088】
帰還流路332のダンパ膜332d(第2ダンパ)が、流入流路324a,324bを構成するプレート311dで構成されている(
図8参照)。この場合、部品点数の低減、構成の簡素化を実現できると共に、ヘッド301の第3方向の厚みを抑えることができる。(供給流路331のダンパ膜331dが流出流路325を構成するプレート311gで構成されていることによっても、上記と同様の効果が得られる。)
【0089】
<第4実施形態>
続いて、
図9を参照し、本発明の第4実施形態に係るヘッド401について説明する。
【0090】
第1実施形態(
図2)のヘッド1は、2つの個別流路群20A,20Bと、当該2つの個別流路群20A,20Bに連通し、第3方向に並ぶ供給流路31及び帰還流路32との組を有するが、本実施形態(
図9)のヘッド401は、2つの個別流路群420A,420Bと、当該2つの個別流路群420A,420Bに連通し、第3方向に並ぶ供給流路31及び帰還流路32との組と、2つの個別流路群420C,420Dと、当該2つの個別流路群420C,420Dに連通し、第3方向に並ぶ供給流路31及び帰還流路32との組とを有する。
【0091】
各個別流路群420A~420Dは、第1方向に並ぶ複数の個別流路420で構成されている。4つの個別流路群420A~420Dは、第2方向に並んでいる。第2方向において個別流路群420Aと個別流路群420Dとの間に、個別流路群420B,420Cが位置する。
【0092】
個別流路群420A,420Bに属する個別流路420と、個別流路群420C,420Dに属する個別流路420とは、互いに異なる供給流路31に連通し、かつ、互いに異なる帰還流路32に連通している。
【0093】
各個別流路420の連結部23cは、第3方向と直交する面において、湾曲している。具体的には、個別流路群420Aに属する個別流路420の連結部23cは、第2方向の一方に後退した凹形状を有し、個別流路群420Bに属する個別流路420の連結部23cは、第2方向の他方に後退した凹形状を有し、個別流路群420Cに属する個別流路420の連結部23cは、第2方向の一方に後退した凹形状を有し、個別流路群420Dに属する個別流路420の連結部23cは、第2方向の他方に後退した凹形状を有する。
【0094】
個別流路群420B,420Cにおいて、連結部23cは、互いに離れる方向に後退している。即ち、個別流路群420Bに属する個別流路420の連結部23cは、第2方向において個別流路群420Cから離れる方向に後退した凹形状を有し、個別流路群420Bに属する個別流路420の連結部23cは、第2方向において個別流路群420Bから離れる方向に後退した凹形状を有する。個別流路群420Bが本発明の「第1個別流路群」に該当し、個別流路群420Cが本発明の「第2個別流路群」に該当する。
【0095】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1実施形態と流路構成が異なるものの、第1実施形態と同様の要件を満たすことで、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0096】
さらに、本実施形態では、個別流路群420Bに属する個別流路420の連結部23cは、第2方向において個別流路群420Cから離れる方向に後退した凹形状を有し、個別流路群420Cに属する個別流路420の連結部23cは、第2方向において個別流路群420Bから離れる方向に後退した凹形状を有する。この場合、個別流路群420Bと個別流路群420Cとの第2方向の距離がゼロとなるように、又は、個別流路群420Bと個別流路群420Cとが第1方向に部分的に重なるように、個別流路420を配置できる(例えば、個別流路群420Bの連結部23cの凹部の中に、個別流路群420Cの連結部23cの一端を挿入し、かつ、個別流路群420Cの連結部23cの凹部の中に、個別流路群420Bの連結部23cの一端を挿入できる)。ひいては、ノズル21の高密度化を実現できる。
【0097】
<第5実施形態>
続いて、
図10を参照し、本発明の第5実施形態に係るヘッド501について説明する。
【0098】
本実施形態では、各個別流路520の接続部23a,23bが、第3方向において、第1実施形態の接続部23a,23b(
図4)よりも長く、供給流路31及び帰還流路32の配置領域よりも長い。
【0099】
第1実施形態(
図4)では、接続流路23が延出部23dを有するが、本実施形態では、接続流路23が延出部23dを有さず、連結部23cの直下にノズル21が位置する(即ち、連結部23cとノズル21との間に他の流路が介在しない)。
【0100】
第1実施形態(
図4)では、第1圧力室22a及び第2圧力室22bから連結部23cまでの第3方向の長さH1が、連結部23cからノズル21までの第3方向の長さH2未満である。つまり、連結部23cは、接続流路23が占める領域の上部(圧力室22a,22bに近い側)に位置している。
【0101】
これに対し、本実施形態(
図10)では、第1圧力室22a及び第2圧力室22bから連結部23cまでの第3方向の長さH1が、連結部23cからノズル21までの第3方向の長さH2以上である。つまり、連結部23cは、接続流路23が占める領域の下部(ノズル21に近い側)に位置している。この場合、各圧力室22a,22bから連結部23cまでの第3方向の長さが長いため、接続流路23全体の抵抗が小さくなる。これにより、インクの循環量を増大できる。
【0102】
<第6実施形態>
続いて、
図11を参照し、本発明の第6実施形態に係るヘッド601について説明する。
【0103】
第1実施形態(
図2)では、各個別流路20の流出流路25が、第2方向に直線状に延びているが、本実施形態(
図11)では、各個別流路620の流出流路625が、第1方向と第2方向とに平行な面(第3方向と直交する面)に沿って延びると共に、当該面において湾曲形状を有する。この場合、流出流路625の抵抗を効率よく上げることができる。ひいては、流出流路625内の流速が高まり、流出流路625を介してエアをスムーズに排出できる。
【0104】
<第7実施形態>
続いて、
図12を参照し、本発明の第7実施形態に係るヘッド701について説明する。
【0105】
第1実施形態(
図4)では、各個別流路20の接続部23a,23bが、各圧力室22a,22bから下方に延びる円柱状の流路であるが、本実施形態(
図12)では、各個別流路720の接続部23a,23bが、各圧力室22a,22bと連結部23cとの界面(各圧力室22a,22bの下面に形成された開口)で構成される。つまり、本実施形態では、連結部23cが圧力室22a,22bの直下に位置する(即ち、連結部23cと圧力室22a,22bとの間に、円柱状の流路等の他の流路が介在しない)。
【0106】
本実施形態によれば、接続流路23の構成が第1実施形態と異なるものの、第1実施形態と同様の要件(各個別流路720の第1圧力室22a及び第2圧力室22bに対して同一の共通流路(供給流路31)が連通すること等)を満たすことで、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0107】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0108】
上述の実施形態では、第1共通流路が供給流路、第2共通流路が帰還流路であるが、これに限定されない。例えば、第1共通流路が帰還流路、第2共通流路が供給流路であってもよい。或いは、第1共通流路及び第2共通流路が共に供給流路であってもよい。つまり、本発明において、第1共通流路及び第2共通流路における液体の流れ方向は特に限定されない。第3実施形態における第3共通流路についても同様であり、第3共通流路は供給流路及び帰還流路のいずれであってもよい。
【0109】
第2共通流路にフィルタが設けられてもよい。第1共通流路にフィルタが設けられなくてもよい。
【0110】
第3実施形態(
図7)において、各個別流路320の一端320aと他端320bとが、第1方向において互いに同じ位置にあることに限定されず、第1方向において互いに異なる位置にあってもよい。
【0111】
第1~第3共通流路に対し、ダンパが設けられなくてもよい。
【0112】
ノズルは、連結部の長手方向の中央に位置することに限定されず、連結部の長手方向の任意の位置(例えば、連結部の長手方向の一端又は他端)に位置してよい。
【0113】
各個別流路に属するノズルの数は、上述の実施形態では1つであるが、2つ以上であってもよい。
【0114】
液体吐出ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式(紙幅方向と平行な走査方向に移動しつつノズルから吐出対象に対して液体を吐出する方式)であってもよい。
【0115】
吐出対象は、用紙に限定されず、例えば布、基板等であってもよい。
【0116】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってよい。
【0117】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0118】
1;201;301;401;501;601;701 ヘッド(液体吐出ヘッド)
12x アクチュエータ
20;220;520;720 個別流路
21 ノズル
22a 第1圧力室
22b 第2圧力室
23 接続流路
23a 第1接続部
23b 第2接続部
23c 連結部
23d 延出部
24a 第1流入流路(結合流路)
24b 第2流入流路(結合流路)
25 流出流路(連通流路)
31;231 供給流路(第1共通流路)
31f フィルタ
31x;231x;331x 供給口(開口)
32;232 帰還流路(第2共通流路)
32x;232x 帰還口(開口)
100 プリンタ
320 個別流路
320a 一端
320b 他端
324a 第1流入流路(結合流路)
324b 第2流入流路(結合流路)
325 流出流路(連通流路)
331 供給流路(第1共通流路、第3共通流路)
332 帰還流路(第2共通流路)
420 個別流路
420B 第1個別流路群
420C 第2個別流路群
620 個別流路
625 流出流路(連通流路)