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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】アウトリガ装置および作業車
(51)【国際特許分類】
   B60S 9/12 20060101AFI20230912BHJP
   B66C 23/78 20060101ALI20230912BHJP
   B66F 9/075 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B60S9/12
B66C23/78 F
B66F9/075 L
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019120272
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021004013
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 昌宏
【審査官】川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-088732(JP,A)
【文献】特開2000-007282(JP,A)
【文献】特開2008-307925(JP,A)
【文献】特開平10-287216(JP,A)
【文献】実開昭59-037158(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 9/12
B66C 23/78
B66F 9/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車に設けられるアウトリガ装置であって、
前記作業車の上下方向に沿って配置されるジャッキシリンダを有するアウトリガジャッキと、
ジャッキアップ時に接地するフロートと、
前記アウトリガジャッキと前記フロートとを連結する連結部と、を備え、
前記連結部は、
前記アウトリガジャッキに設けられた上部材と、
前記フロートに設けられた下部材と、
前記上部材と前記下部材とを回転可能に連結する第1連結軸と、を備え、
前記第1連結軸は、前記作業車の前後方向に沿って配置されているとともに、前記ジャッキシリンダの中心軸よりも車幅方向外側に配置されており、
前記第1連結軸は、前記上部材および前記下部材の一方に固定され、他方に形成された軸受孔に挿入されており、
前記第1連結軸は上向きに幅狭となる楔部を有し、
前記軸受孔は前記楔部が嵌まる差込部を有し、
前記楔部と前記差込部との間には上下方向に隙間が設けられている
ことを特徴とするアウトリガ装置。
【請求項2】
作業車に設けられるアウトリガ装置であって、
前記作業車の上下方向に沿って配置されるジャッキシリンダを有するアウトリガジャッキと、
ジャッキアップ時に接地するフロートと、
前記アウトリガジャッキと前記フロートとを連結する連結部と、を備え、
前記アウトリガジャッキに対する前記フロートの回転軸であって、前記作業車の前後方向に沿った第1回転軸が、前記ジャッキシリンダの中心軸よりも車幅方向外側に配置されており、
前記アウトリガジャッキは、
前記ジャッキシリンダのロッドに連結された外殻と、
前記ジャッキシリンダのシリンダチューブおよび前記外殻の一方に固定されたスライダと、
前記シリンダチューブおよび前記外殻の他方に固定され、嵌められた前記スライダを案内する全体が上下方向に沿った直線状のレールと、を備える
ことを特徴とするアウトリガ装置。
【請求項3】
前記連結部は、
前記アウトリガジャッキに設けられた上部材と、
前記フロートに設けられた下部材と、
前記上部材と前記下部材とを回転可能に連結する第1連結軸と、を備え、
前記第1連結軸は、前記作業車の前後方向に沿って配置されているとともに、前記ジャッキシリンダの中心軸よりも車幅方向外側に配置されている
ことを特徴とする請求項記載のアウトリガ装置。
【請求項4】
前記連結部は、前記上部材に対する前記下部材の前記第1連結軸周りの回転を所定の角度範囲に制限する回転制限部を備える
ことを特徴とする請求項記載のアウトリガ装置。
【請求項5】
前記第1連結軸は、前記上部材および前記下部材の一方に固定され、他方に形成された軸受孔に挿入されており、
前記第1連結軸は上向きに幅狭となる楔部を有し、
前記軸受孔は前記楔部が嵌まる差込部を有し、
前記楔部と前記差込部との間には上下方向に隙間が設けられている
ことを特徴とする請求項記載のアウトリガ装置。
【請求項6】
前記連結部は、前記アウトリガジャッキと前記上部材とを回転可能に連結する第2連結軸を備え、
前記第2連結軸は、車幅方向に沿って配置されている
ことを特徴とする請求項1、3~5のいずれかに記載のアウトリガ装置。
【請求項7】
前記連結部は、
前記アウトリガジャッキに設けられた上リングと、
前記フロートに設けられ、前記上リングの孔に通った下リングと、を備え、
前記上リングおよび前記下リングの一方は、前記作業車の前後方向に沿った鉛直面であって、前記ジャッキシリンダの中心軸よりも車幅方向外側に配置された鉛直面に沿って配置されており、
前記上リングおよび前記下リングの他方は、車幅方向に沿った鉛直面に沿って配置されている
ことを特徴とする請求項記載のアウトリガ装置。
【請求項8】
前記アウトリガジャッキは、
前記ジャッキシリンダのシリンダチューブおよびロッドの一方と連結した角筒状の外筒と、
前記シリンダチューブおよび前記ロッドの他方と連結し、前記外筒に挿入された角筒状の内筒と、を備える
ことを特徴とする請求項記載のアウトリガ装置。
【請求項9】
前記内筒は前記外筒の下端の開口部から挿入されており、
前記ジャッキシリンダを収縮すると、前記連結部は前記外筒の内部に収容され、前記フロートが前記開口部を閉塞する
ことを特徴とする請求項記載のアウトリガ装置。
【請求項10】
前記連結部は、前記連結部が前記外筒の内部に挿入される際に、前記外筒に当接して前記フロートを水平にするガイドを備える
ことを特徴とする請求項記載のアウトリガ装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のアウトリガ装置を備える
ことを特徴とする作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトリガ装置および作業車に関する。さらに詳しくは、本発明は、アウトリガ装置、およびそのアウトリガ装置を備える作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーン、高所作業車などの作業車には、転倒に対する安定を確保するためにアウトリガ装置が設けられる(例えば、特許文献1)。アウトリガ装置は、通常、アウトリガジャッキを車幅方向に張り出す張出機構を有する。アウトリガジャッキを車幅方向に張り出せば、安定モーメントが増し、作業車の安定性能を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-1861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、作業車の周囲の状況によっては、アウトリガジャッキの張り出し幅が制限される。場合によっては、アウトリガジャッキを車幅内に収めたまま、ジャッキアップしなければならないことがある。このような場合、作業車の安定性能が低下する。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、安定性能を向上できるアウトリガ装置、およびそのアウトリガ装置を備える作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明のアウトリガ装置は、作業車に設けられるアウトリガ装置であって、前記作業車の上下方向に沿って配置されるジャッキシリンダを有するアウトリガジャッキと、ジャッキアップ時に接地するフロートと、前記アウトリガジャッキと前記フロートとを連結する連結部と、を備え、前記連結部は、前記アウトリガジャッキに設けられた上部材と、前記フロートに設けられた下部材と、前記上部材と前記下部材とを回転可能に連結する第1連結軸と、を備え、前記第1連結軸は、前記作業車の前後方向に沿って配置されているとともに、前記ジャッキシリンダの中心軸よりも車幅方向外側に配置されており、前記第1連結軸は、前記上部材および前記下部材の一方に固定され、他方に形成された軸受孔に挿入されており、前記第1連結軸は上向きに幅狭となる楔部を有し、前記軸受孔は前記楔部が嵌まる差込部を有し、前記楔部と前記差込部との間には上下方向に隙間が設けられていることを特徴とする。
第2発明のアウトリガ装置は、作業車に設けられるアウトリガ装置であって、前記作業車の上下方向に沿って配置されるジャッキシリンダを有するアウトリガジャッキと、ジャッキアップ時に接地するフロートと、前記アウトリガジャッキと前記フロートとを連結する連結部と、を備え、前記アウトリガジャッキに対する前記フロートの回転軸であって、前記作業車の前後方向に沿った第1回転軸が、前記ジャッキシリンダの中心軸よりも車幅方向外側に配置されており、前記アウトリガジャッキは、前記ジャッキシリンダのロッドに連結された外殻と、前記ジャッキシリンダのシリンダチューブおよび前記外殻の一方に固定されたスライダと、前記シリンダチューブおよび前記外殻の他方に固定され、嵌められた前記スライダを案内する全体が上下方向に沿った直線状のレールと、を備えることを特徴とする。
第3発明のアウトリガ装置は、第2発明において、前記連結部は、前記アウトリガジャッキに設けられた上部材と、前記フロートに設けられた下部材と、前記上部材と前記下部材とを回転可能に連結する第1連結軸と、を備え、前記第1連結軸は、前記作業車の前後方向に沿って配置されているとともに、前記ジャッキシリンダの中心軸よりも車幅方向外側に配置されていることを特徴とする。
第4発明のアウトリガ装置は、第3発明において、前記連結部は、前記上部材に対する前記下部材の前記第1連結軸周りの回転を所定の角度範囲に制限する回転制限部を備えることを特徴とする。
第5発明のアウトリガ装置は、第3発明において、前記第1連結軸は、前記上部材および前記下部材の一方に固定され、他方に形成された軸受孔に挿入されており、前記第1連結軸は上向きに幅狭となる楔部を有し、前記軸受孔は前記楔部が嵌まる差込部を有し、前記楔部と前記差込部との間には上下方向に隙間が設けられていることを特徴とする。
第6発明のアウトリガ装置は、第1、第3~第5発明のいずれかにおいて、前記連結部は、前記アウトリガジャッキと前記上部材とを回転可能に連結する第2連結軸を備え、前記第2連結軸は、車幅方向に沿って配置されていることを特徴とする。
第7発明のアウトリガ装置は、第2発明において、前記連結部は、前記アウトリガジャッキに設けられた上リングと、前記フロートに設けられ、前記上リングの孔に通った下リングと、を備え、前記上リングおよび前記下リングの一方は、前記作業車の前後方向に沿った鉛直面であって、前記ジャッキシリンダの中心軸よりも車幅方向外側に配置された鉛直面に沿って配置されており、前記上リングおよび前記下リングの他方は、車幅方向に沿った鉛直面に沿って配置されていることを特徴とする。
第8発明のアウトリガ装置は、第1発明において、前記アウトリガジャッキは、前記ジャッキシリンダのシリンダチューブおよびロッドの一方と連結した角筒状の外筒と、前記シリンダチューブおよび前記ロッドの他方と連結し、前記外筒に挿入された角筒状の内筒と、を備えることを特徴とする。
第9発明のアウトリガ装置は、第8発明において、前記内筒は前記外筒の下端の開口部から挿入されており、前記ジャッキシリンダを収縮すると、前記連結部は前記外筒の内部に収容され、前記フロートが前記開口部を閉塞することを特徴とする。
第10発明のアウトリガ装置は、第9発明において、前記連結部は、前記連結部が前記外筒の内部に挿入される際に、前記外筒に当接して前記フロートを水平にするガイドを備えることを特徴とする。
11発明の作業車は、第1~第10発明のいずれかのアウトリガ装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、フロートの第1回転軸がジャッキシリンダの中心軸よりも車幅方向外側に配置されているため、その分作業車の転倒支点が車幅方向外側に移動する。これにより、作業車の安定モーメントが増し、安定性能を向上できる。また、アウトリガジャッキが伸長する過程において、フロートを水平に保てるので、フロートが地面に接触するときに突き刺さることがない。
第2発明によれば、スライダをレールに嵌めることで、ロッドに対するシリンダチューブの軸周りの回転が制限される。そのため、フロートの第1回転軸を車幅方向外側に配置した状態を維持できる。
第3発明によれば、上部材と下部材とを連結する第1連結軸をジャッキシリンダの中心軸よりも車幅方向外側に配置することにより、フロートの第1回転軸を車幅方向外側に配置できる。
第4発明によれば、アウトリガジャッキが伸長する過程において、フロートの傾きを抑えることができるので、フロートが地面に接触するときに突き刺さることがない。
第5発明によれば、アウトリガジャッキが伸長する過程において、フロートを水平に保てるので、フロートが地面に接触するときに突き刺さることがない。
第6発明によれば、第1、第2連結軸によりフロートを全方向に傾斜させることができるため、フロートが地面に合わせて傾斜できる。
第7発明によれば、上リングまたは下リングをジャッキシリンダの中心軸よりも車幅方向外側に配置することにより、フロートの第1回転軸を車幅方向外側に配置できる。
第8発明によれば、角筒状の外筒に角筒状の内筒を挿入することで、シリンダチューブに対するロッドの軸周りの回転が制限される。そのため、フロートの第1回転軸を車幅方向外側に配置した状態を維持できる。
第9発明によれば、連結部が外筒の内部に収容できるので、車両走行中の水跳ねなどから連結部を保護できる。
第10発明によれば、アウトリガジャッキを収縮する際に、フロートの姿勢をスムーズに水平にできる。
11発明によれば、作業車の転倒支点が車幅方向外側に移動するため、作業車の安定モーメントが増し、安定性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る高所作業車の側面図である。
図2】第1実施形態に係るアウトリガ装置の正面図である。
図3図2のアウトリガ装置の縦断面図である。
図4】連結部の斜視図である。
図5】連結部の正面図である。
図6図5におけるVI-VI線矢視断面図である。
図7】図(A)はフロートを傾けた状態における連結部の縦断面図である。図(B)はフロートを他の向きに傾けた状態における連結部の縦断面図である。
図8】図(A)はアウトリガジャッキを収縮させる途中のアウトリガ装置の縦断面図である。図(B)はアウトリガジャッキを完全に収縮させた状態のアウトリガ装置の縦断面図である。
図9】第2実施形態における、フロートが接地した状態の連結部の側面図である。
図10】第2実施形態における、フロートが接地していない状態の連結部の側面図である。
図11】第3実施形態に係るアウトリガ装置の縦断面図である。
図12図11におけるXII-XII線矢視断面図である。
図13図11におけるXIII-XIII線矢視断面図である。
図14】第3実施形態の連結部の正面図である。
図15図14の連結部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔第1実施形態〕
(作業車)
本発明の第1実施形態に係るアウトリガ装置は作業車に搭載される。作業車としてはアウトリガ装置が必要なものであれば特に限定されないが、移動式クレーン、高所作業車、軌陸車などが挙げられる。移動式クレーンとしてはオールテレーンクレーン、ラフテレーンクレーン、トラッククレーン、積載形トラッククレーンなどが挙げられる。以下、高所作業車の場合を例に説明する。
【0010】
本明細書では、図1に示すように、作業車の前後、左右、上下を基準としてx軸、y軸、z軸を定義する。x軸は作業車の前後方向に沿っている。y軸は作業車の車幅方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に沿っている。z軸は作業車の上下方向に沿っている。
【0011】
図1に示すように、高所作業車AAは車体10を有する。車体10の前方部分は運転室11であり、後方部分は荷台12である。車体10には、車両走行用の駆動源、車輪などが設けられている。
【0012】
荷台12には旋回台13が搭載されている。旋回台13は旋回モータにより上下方向を軸として旋回可能である。旋回台13にはブーム14が起伏自在に設けられている。旋回台13とブーム14との間には起伏シリンダが設けられている。起伏シリンダが伸縮することでブーム14が起伏する。ブーム14はテレスコピック状に構成されている。ブーム14は内部に設けられた伸縮シリンダにより伸縮する。
【0013】
ブーム14の先端にはレベリングシリンダにより姿勢が水平に維持されたデッキ15が設けられている。ブーム14の旋回、起伏、伸縮を組み合わせることで、立体空間内の任意の位置にデッキ15を移動させることができる。これにより、デッキ15に乗り込んだ作業員による高所での作業が可能となる。
【0014】
作業中の安定を確保するため、車体10にはアウトリガ装置1が設けられている。アウトリガ装置1の数は特に限定されないが、例えば、車体10の前後左右の4箇所に設けられる。
【0015】
(アウトリガ装置)
つぎに、アウトリガ装置1の構成を説明する。
図2に示すように、アウトリガ装置1はアウトリガジャッキ20を有する。アウトリガジャッキ20は車体10に対して固定されている。アウトリガジャッキ20は、車体10に設けられたブラケットに固定されてもよいし、車幅方向(y軸方向)に張り出し可能な張出機構を介して車体10に設けられてもよい。
【0016】
アウトリガジャッキ20は上下方向(z軸方向)に沿って配置されている。したがって、アウトリガジャッキ20は上下方向(z軸方向)に伸縮する。アウトリガジャッキ20の下端には連結部30を介してフロート40が連結されている。ジャッキアップ時には、アウトリガジャッキ20を伸長し、フロート40を接地させる。
【0017】
図3に示すように、アウトリガジャッキ20はジャッキシリンダ21を有する。ジャッキシリンダ21は油圧シリンダであり、シリンダチューブ22と、その内部に挿入されたロッド23とを有する。ジャッキシリンダ21はロッド側を下向きとして、上下方向(z軸方向)に沿って配置されている。すなわち、ジャッキシリンダ21の中心軸Oは上下方向(z軸方向)に沿っている。なお、ジャッキシリンダ21の中心軸Oは厳密に上下方向(z軸方向)に沿う必要はなく、多少傾斜してもよい。
【0018】
ジャッキシリンダ21は外筒24および内筒25の内部に設けられている。外筒24は断面矩形の角筒状の部材であり、下端に開口部を有している。外筒24は車体10に対して固定されている。内筒25は断面矩形の角筒状の部材であり、外筒24よりも幅狭である。内筒25は外筒24の下端の開口部から挿入されている。
【0019】
外筒24の上端とシリンダチューブ22のキャップ側端部とはピン26を介して連結されている。また、内筒25の下端とロッド23の先端部とは、後述の第2連結軸34を介して連結されている。したがって、ジャッキシリンダ21を伸縮させると、内筒25が外筒24に対して上下動し、アウトリガジャッキ20が伸縮する。
【0020】
なお、ジャッキシリンダ21のロッド側を上向きとしてもよい。この際、ロッド23と外筒24とを連結し、シリンダチューブ22と内筒25とを連結すればよい。通常、外筒24を車体10に対して固定し、内筒25を外筒24の下端の開口部から挿入する。これとは逆に、外筒24の上端の開口部から挿入した内筒25を車体10に対して固定してもよい。また、外筒24および内筒25の断面形状は、通常矩形であるが、六角形など他の形状でもよい。
【0021】
通常、ジャッキシリンダ21のロッド23はシリンダチューブ22に対して軸周りに回転する。これに対して、内筒25は外筒24に対して軸周りに回転することはない。角筒状の外筒24に角筒状の内筒25を挿入しているからである。ジャッキシリンダ21はこのような外筒24および内筒25に連結されているので、シリンダチューブ22に対するロッド23の軸周りの回転が制限される。つまり、外筒24および内筒25は、ロッド23の軸周りの回転を防止する回転防止手段としての機能を有する。
【0022】
図4に示すように、連結部30は主に上部材31と下部材32とからなる。上部材31はアウトリガジャッキ20の下端に設けられている。下部材32はフロート40の上面に設けられている。上部材31と下部材32とは第1連結軸33を介して、回転可能に連結されている。
【0023】
図6に示すように、上部材31は車幅方向(y軸方向)に並んだ2つの第1板35、35を有する。2つの第1板35、35は所定間隔を隔てて互いに平行に配置されている。2つの第1板35、35の間にはロッド23の先端部が挿入されている。各第1板35には孔35hが形成されている。また、ロッド23の先端部には孔23hが形成されている。これらの孔35h、23hに第2連結軸34が通されている。
【0024】
上部材31は第2連結軸34を介してアウトリガジャッキ20に対して回転可能に連結されている。フロート40は第2連結軸34を中心として回転可能である。ここで、第2連結軸34は車幅方向(y軸方向)に沿って配置されている。したがって、フロート40は車幅方向(y軸方向)に沿った第2回転軸A2の周りに回転可能である。第2回転軸A2は第2連結軸34の中心軸と一致する。
【0025】
第2連結軸34の両端部は第1板35、35より外側に突出している。この突出部分は内筒25の下端に形成された孔に通される(図3参照)。これにより、内筒25とロッド23とが連結されている。
【0026】
図5に示すように、上部材31はさらに前後方向(x軸方向)に並んだ2つの第2板36、36を有する。2つの第2板36、36は所定間隔を隔てて互いに平行に配置されている。2つの第1板35、35と2つの第2板36、36とが接合されて上部材31が形成されている。
【0027】
下部材32は前後方向(x軸方向)に並んだ2つの第3板37、37からなる。各第3板37はフロート40の上面に立設されている。2つの第3板37、37は2つの第2板36、36の間に挿入されている。各第2板36には孔36hが形成されている。また、各第3板37には孔37hが形成されている。これらの孔36h、37hに第1連結軸33が通されている。
【0028】
フロート40は第1連結軸33を中心として回転可能である。ここで、第1連結軸33は前後方向(x軸方向)に沿って配置されている。したがって、フロート40は前後方向(x軸方向)に沿った第1回転軸A1の周りに回転可能である。第1回転軸A1は第1連結軸33の中心軸と一致する。
【0029】
フロート40は互いに直行する第1、第2連結軸33、34を介してアウトリガジャッキ20に連結されている。したがって、フロート40を全方向に傾斜させることができる。傾斜面に対してジャッキアップした場合、フロート40は地面に合わせて傾斜する。
【0030】
ところで、ジャッキアップ時の高所作業車AAの転倒支点はアウトリガジャッキ20に対するフロート40の回転軸の位置によって決まる。従来のアウトリガ装置はジャッキシリンダのロッドの先端部に形成された球体部をフロート側の凹部で受ける構成であり、転倒支点はジャッキシリンダの中心軸上に位置する。これに対して、本実施形態のアウトリガ装置1は、以下に説明するとおり、転倒支点がジャッキシリンダ21の中心軸Oよりも車幅方向(y軸方向)外側に配置されている。
【0031】
図6に示すように、第1連結軸33はジャッキシリンダ21の中心軸Oよりも車幅方向(y軸方向)外側に配置されている。すなわち、フロート40の第1回転軸A1はジャッキシリンダ21の中心軸Oよりも車幅方向(y軸方向)外側に配置されている。第1回転軸A1は前後方向(x軸方向)に沿って配置されていることから、高所作業車AAの横転の転倒支点となる。第1回転軸A1がジャッキシリンダ21の中心軸Oよりも車幅方向(y軸方向)外側に配置されているということは、その分、高所作業車AAの転倒支点が車幅方向外側に移動することを意味する。
【0032】
そうすると、転倒支点がジャッキシリンダ21の中心軸O上に位置する場合に比べ、高所作業車AAの重心と転倒支点との距離が長くなる。そのため、高所作業車AAの安定モーメントが増し、安定性能を向上できる。これは、アウトリガジャッキ20の張り出し幅を同一として、従来技術と比較した場合に、安定性能が高くなることを意味する。
【0033】
このように、高所作業車AAの安定性能が向上することから、カウンタウエイトの重量を削減することもできる。高所作業車AAの構成にもよるが、例えば、転倒支点を車幅方向外側に50mm移動させれば、カウンタウエイトの重量を200~300kg軽くできる。
【0034】
第1回転軸A1を車幅方向(y軸方向)外側に配置した状態を維持するため、連結部30が中心軸O周りに回転しない構成とすることが好ましい。この点、本実施形態のアウトリガジャッキ20は内筒25が外筒24に挿入された構成であり、外筒24に対して内筒25が軸周りに回転することはない。そのため、第1回転軸A1を車幅方向(y軸方向)外側に配置した状態を維持できる。
【0035】
図7(A)に示すように、第1連結軸33はフロート40の中心(重心)から車幅方向にずれた位置に配置されている。第3板37は第1連結軸33が挿入された側の上部に突出部37aを有する。フロート40を図7(A)における反時計回りに回転させると、突出部37aが第1板35に係止する。これにより、フロート40がそれ以上回転しないように制限されている。
【0036】
接地していない状態のフロート40は自重により回転する。突出部37aが第1板35に係止することにより、この回転が制限され、フロート40が過度に傾斜することがない。アウトリガジャッキ20が伸長する過程において、フロート40の傾きを抑えることができるので、フロート40が地面に接触するときに突き刺さることがない。
【0037】
図7(B)に示すように、第3板37の上端面は傾斜面37bとなっている。フロート40を図7(B)における時計回りに回転させると、傾斜面37bが第1板35に当接する。これにより、フロート40がそれ以上回転しないように制限されている。
【0038】
このように、第3板37の突出部37aおよび傾斜面37bは、上部材31に対する下部材32の第1連結軸33周りの回転を所定の角度範囲に制限する回転制限部を構成する。
【0039】
図8(A)に示すように、接地していない状態のフロート40は自重により回転する。これにより、第3板37の第1連結軸33が挿入された側の側面37cは外側に向かって下がる傾斜面となる。伸長状態のアウトリガジャッキ20を収縮させていくと、外筒24の下縁が第3板37の側面37cと接触する。この状態からさらにアウトリガジャッキ20を収縮させると、外筒24の下縁が側面37cを内側に押し込む。これにより、フロート40が水平になる。
【0040】
図8(B)に示すように、アウトリガジャッキ20が完全に収縮すると、連結部30は外筒24の内部に収容される。また、外筒24の開口部はフロート40により閉塞される。したがって、外筒24とフロート40とにより閉塞された空間の内部に、ジャッキシリンダ21、内筒25、連結部30などの構成部材が収容される。
【0041】
このように、第3板37の側面37cは、連結部30が外筒24の内部に挿入される際に、外筒24に当接してフロート40を水平にするガイドとなる。このガイドにより、アウトリガジャッキ20を収縮する際に、フロート40の姿勢をスムーズに水平にできる。
【0042】
アウトリガ装置1は車輪の後方に配置されることが多い(図1参照)。そのため、車両走行中に車輪が跳ねた水がアウトリガ装置1に掛かることがある。本実施形態のアウトリガ装置1は、アウトリガジャッキ20を完全に収縮すると連結部30などの構成部材が外筒24の内部に収容される。そのため、車両走行中の水跳ねなどから連結部30を保護できる。その結果、連結部30の錆などを防止できる。
【0043】
〔第2実施形態〕
つぎに、第2実施形態に係るアウトリガ装置を説明する。
図9に示すように、本実施形態においても、連結部30は上部材31と下部材32とを有する。第1連結軸33は上部材31に対して回転不能に固定されている。第1連結軸33は下部材32に形成された軸受孔38に挿入されている。なお、第1連結軸33を下部材32に対して回転不能に固定してもよい。この場合、第1連結軸33は上部材31に形成された軸受孔38に挿入される。
【0044】
第1連結軸33は基本的には断面円形の丸棒である。しかし、第1連結軸33は少なくとも軸受孔38に挿入されている部分の上部がハの字に切削されている。これにより、第1連結軸33の上部(中心軸より上側の部分)は上向きに幅狭となる楔部33aとなっている。第1連結軸33の下部33b(中心軸より下側の部分)は断面が半円形である。
【0045】
軸受孔38は基本的には縦に長い長丸孔である。しかし、軸受孔38の上部はハの字に形成されている。これにより、軸受孔38の上部は楔部33aが嵌まる差込部38aとなっている。軸受孔38の下部38bは断面が半円形である。また、軸受孔38は縦に長いため、楔部33aと差込部38aとの間には上下方向に隙間が設けられている。
【0046】
フロート40が接地しているときは、第1連結軸33の半円形の下部33bが軸受孔38の半円形の下部38bと接触する。また、楔部33aと差込部38aとの間には隙間がある。そのため、第1連結軸33は軸受孔38に対して所定の角度範囲で回転できる。すなわち、フロート40は第1連結軸33を中心として回転できる。傾斜面に対してジャッキアップした場合、フロート40は地面に合わせて傾斜する。
【0047】
図10に示すように、フロート40が接地していないとき、フロート40は上部材31に吊り下げられた状態となる。そのため、第1連結軸33の楔部33aが軸受孔38の差込部38aに嵌まり、第1連結軸33は軸受孔38に対して回転不能となる。これにより、フロート40は水平な状態に維持される。アウトリガジャッキ20が伸長する過程において、フロート40を水平に保てるので、フロート40が地面に接触するときに突き刺さることがない。
【0048】
〔第3実施形態〕
つぎに、第3実施形態に係るアウトリガ装置3を説明する。
図11に示すように、アウトリガ装置3はアウトリガジャッキ20を有する。また、アウトリガジャッキ20はジャッキシリンダ21を有する。ジャッキシリンダ21はシリンダチューブ22とロッド23とからなる油圧シリンダである。ジャッキシリンダ21はロッド側を上向きとして、中心軸Oが上下方向(z軸方向)に沿うよう配置されている。
【0049】
ジャッキシリンダ21は外殻27の内部に設けられている。外殻27は筒状の部材であり、下端に開口部を有している。外殻27は車体10に対して固定されている。外殻27の上端とロッド23の先端部とはピン26を介して連結されている。シリンダチューブ22のキャップ側端部には連結部50を介してフロート40が連結されている。
【0050】
図11および図12に示すように、シリンダチューブ22の両側面にはスライダ28が固定されている。また、図13に示すように、外殻27の内面にはスライダ28と対向する位置にレール29が固定されている。レール29は上下方向(z軸方向)に沿った溝であり、溝の内部にスライダ28が嵌められている。したがって、スライダ28はレール29により上下方向(z軸方向)に案内される。
【0051】
スライダ28をレール29に嵌めることで、ロッド23に対するシリンダチューブ22の軸周りの回転が制限される。つまり、スライダ28およびレール29は、シリンダチューブ22の軸周りの回転を防止する回転防止手段としての機能を有する。なお、スライダ28を外殻27に固定し、レール29をシリンダチューブ22に固定してもよい。
【0052】
図14および図15に示すように、連結部50は上リング51と下リング52とからなる。上リング51は半円形(U字形)のリングであり、アウトリガジャッキ20(シリンダチューブ22)の下端に設けられている。下リング52は半円形(逆U字形)のリングであり、フロート40の上面に設けられている。下リング52は上リング51の孔に通っている。すなわち、上リング51と下リング52とは連結している。
【0053】
上リング51は前後方向(x軸方向)に沿った鉛直面に沿って配置されている。また、下リング52は車幅方向(y軸方向)に沿った鉛直面に沿って配置されている。すなわち、上リング51と下リング52とは互いに直行するよう配置されている。
【0054】
フロート40は前後方向(x軸方向)に沿った第1回転軸A1の周りに回転可能である。第1回転軸A1は上リング51の頂部の中心と一致する。また、フロート40は車幅方向(y軸方向)に沿った第2回転軸A2の周りに回転可能である。第2回転軸A2は下リング52の頂部の中心と一致する。フロート40は互いに直行する第1、第2回転軸A1、A2の周りに回転可能であるから、全方向に傾斜させることができる。
【0055】
図15に示すように、上リング51はジャッキシリンダ21の中心軸Oよりも車幅方向(y軸方向)外側に配置されている。したがって、フロート40の第1回転軸A1はジャッキシリンダ21の中心軸Oよりも車幅方向(y軸方向)外側に配置される。これは、高所作業車AAの転倒支点が車幅方向外側に移動することを意味する。そのため、高所作業車AAの安定モーメントが増し、安定性能を向上できる。
【0056】
なお、上リング51と下リング52の配置を逆にしてもよい。すなわち、下リング52を前後方向(x軸方向)に沿った鉛直面であって、中心軸Oよりも車幅方向外側に配置された鉛直面に沿って配置する。また、上リング51を車幅方向(y軸方向)に沿った鉛直面に沿って配置する。この場合、フロート40の第1回転軸A1は下リング52の頂部の中心と一致し、車幅方向(y軸方向)外側に配置される。そのため、同様に、高所作業車AAの安定モーメントが増し、安定性能を向上できる。
【0057】
第1回転軸A1を車幅方向(y軸方向)外側に配置した状態を維持するため、連結部30が中心軸O周りに回転しない構成とすることが好ましい。この点、本実施形態のアウトリガジャッキ20はスライダ28がレール29に嵌められた構成であり、シリンダチューブ22が軸周りに回転することはない。そのため、第1回転軸A1を車幅方向(y軸方向)外側に配置した状態を維持できる。
【0058】
下リング52の外周面には小片53が固定されている。第1回転軸A1がフロート40の重心からずれた位置に配置されることから、接地していない状態のフロート40は自重により回転する。小片53がシリンダチューブ22の下端に係止することにより、この回転が制限され、フロート40が過度に傾斜することがない。このように、小片53はフロート40の回転を所定の角度範囲に制限する回転制限部を構成する。
【符号の説明】
【0059】
AA 高所作業車
1 アウトリガ装置
20 アウトリガジャッキ
21 ジャッキシリンダ
24 外筒
25 内筒
30 連結部
31 上部材
32 下部材
33 第1連結軸
34 第2連結軸
40 フロート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15