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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】脱臭装置および便座装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/30 20060101AFI20230912BHJP
   E03D 9/08 20060101ALI20230912BHJP
   A47K 17/00 20060101ALI20230912BHJP
   E03D 9/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A47K13/30 B
E03D9/08 B
A47K17/00
E03D9/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019123474
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021007669
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本並 洋二
(72)【発明者】
【氏名】梶野 真一
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-49577(JP,U)
【文献】特開平5-222756(JP,A)
【文献】特開2008-81928(JP,A)
【文献】特開平4-300556(JP,A)
【文献】特開平4-146339(JP,A)
【文献】特開2015-206184(JP,A)
【文献】特開2007-224714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/30
A47K 17/00-17/02
E03D 9/00
E03D 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座装置の臭気を脱臭する脱臭装置であって、
吸気口と排気口とを有する流路に配置されたファンと、
前記流路に配置された活性炭フィルタと、
前記流路に配置された光触媒フィルタと、
前記光触媒フィルタに光を照射するランプと、
使用者による前記便座装置の使用に基づいて前記吸気口から前記流路に空気を吸入して前記活性炭フィルタで脱臭するように前記ファンを制御する第1脱臭制御と、前記便座装置の非使用中前記光触媒フィルタで脱臭するように前記ランプを制御する第2脱臭制御とを実行可能な制御部と、
を備え
前記制御部は、前記第1脱臭制御の実行を終了した場合と前記第2脱臭制御の実行を終了した場合に脱臭終了後の経過時間の計測を開始し、前記便座装置の非使用中に前記経過時間が所定時間になると前記第2脱臭制御を実行する脱臭装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脱臭装置であって、
前記制御部は、前記第2脱臭制御では、前記ファンの駆動を停止した状態で前記光触媒フィルタで脱臭するように前記ファンと前記ランプとを制御する
脱臭装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の脱臭装置を本体内部に備え、便器に設置される便座装置。
【請求項4】
請求項に記載の便座装置であって、
人体局部への洗浄水の噴射位置と待機位置との間を進退移動する洗浄ノズルと、
前記洗浄ノズルが前記待機位置にある場合に閉状態となり、前記洗浄ノズルが前記噴射位置に進出する場合に開状態となる開閉式のシャッターと、
を備え、
前記流路として、前記吸気口と前記排気口とを有する主流路と、前記吸気口とは異なる副吸気口を有し前記主流路に合流する副流路と、が設けられ、
前記主流路は、前記吸気口が閉状態の前記シャッターに閉塞されるように構成され、前記光触媒フィルタよりも前記吸気口側に前記活性炭フィルタが配置されると共に前記光触媒フィルタよりも前記排気口側に前記ファンが配置されており、
前記副流路は、前記副吸気口が前記シャッターに閉塞されずに開放されるように構成され、前記活性炭フィルタと前記光触媒フィルタとの間で前記主流路に合流しており、
前記制御部は、前記シャッターが開状態のときに前記第1脱臭制御を実行し、前記シャッターが閉状態のときに前記第2脱臭制御を実行可能である
便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭装置および便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の脱臭装置としては、臭気を分解除去可能な光触媒と、光触媒に光を照射するランプとを備えるものが提案されている。例えば、特許文献1には、便座装置を使用する使用者を検知すると、ランプの点灯により光触媒に光を照射して脱臭を開始し、使用者を検知しなくなってから数分が経過するとランプを消灯して脱臭を終了するものが記載されている。また、特許文献2には、光触媒の他に、活性炭が空気の吸気通路に配置されるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2960733号
【文献】CN第205935117U号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、光触媒は、臭気の吸着効率が活性炭よりも低く、臭気の分解にも時間がかかるため、上述した特許文献1の脱臭装置のように、光触媒のみを用いて、使用者を検知しなくなってから数分間脱臭するものでは、十分に脱臭することができない場合がある。そのため、特許文献2のように、光触媒と活性炭とを併用することが考えられるが、特許文献2では活性炭と光触媒とを具体的にどのように用いるかについては言及されていない。例えば、活性炭は、便座装置の使用中に吸着した臭気をその後に放出することがあり、放出された臭気によって、かえって使用者に不快感を与える場合がある。
【0005】
本発明は、活性炭と光触媒とを併用する脱臭を、より適切に行うことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の脱臭装置は、
便座装置の臭気を脱臭する脱臭装置であって、
吸気口と排気口とを有する流路に配置されたファンと、
前記流路に配置された活性炭フィルタと、
前記流路に配置された光触媒フィルタと、
前記光触媒フィルタに光を照射するランプと、
使用者による前記便座装置の使用に基づいて前記吸気口から前記流路に空気を吸入して前記活性炭フィルタで脱臭するように前記ファンを制御する第1脱臭制御と、前記便座装置の非使用中の所定タイミングで前記光触媒フィルタで脱臭するように前記ランプを制御する第2脱臭制御とを実行可能な制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の脱臭装置は、使用者による便座装置の使用に基づいて吸気口から流路に空気を吸入して活性炭フィルタで脱臭するようにファンを制御する第1脱臭制御と、便座装置の非使用中の所定タイミングで光触媒フィルタで脱臭するようにランプを制御する第2脱臭制御とを実行可能である。これにより、便座装置の使用時には、比較的吸着効率の高い活性炭フィルタで効率よく脱臭することができる。また、便座装置の非使用中の所定タイミングでは、非使用中に活性炭フィルタから放出された臭気を光触媒フィルタで分解除去することができるから、経年劣化などにより活性炭フィルタの吸着力が低下して流路内に臭気が放出されても適切に脱臭することができる。したがって、活性炭と光触媒とを併用して、便座装置の臭気をより適切に脱臭することができる。なお、「使用者による便座装置の使用に基づいて」とは、便座装置が配置されたトイレ室内への使用者の入室や便座装置の便座への使用者の着座を検知手段により検知したことに基づいてもよいし、局部洗浄や脱臭などの便座装置に対する操作指示がなされたことに基づいてもよい。また、第1脱臭制御は、使用者による便座装置の使用が終了するか使用終了から一定時間が経過すると実行を終了するものとし、第2脱臭制御は、所定の脱臭時間が経過すると実行を終了するものなどとすればよい。
【0009】
本発明の脱臭装置において、前記制御部は、前記第2脱臭制御では、前記ファンの駆動を停止した状態で前記光触媒フィルタで脱臭するように前記ファンと前記ランプとを制御するものとしてもよい。こうすれば、活性炭フィルタから流路内に放出された臭気を、ファンの駆動によって拡散させることなく光触媒フィルタで適切に除去することができる。
【0010】
本発明の脱臭装置において、前記制御部は、前記第1脱臭制御と前記第2脱臭制御とを含む脱臭制御を実行してから所定時間が経過したタイミングを前記所定タイミングとして、前記第2脱臭制御を実行するものとしてもよい。こうすれば、活性炭フィルタから流路内に放出された臭気を、所定時間毎のタイミングで適切に除去して、流路内に滞留するのを防止することができる。
【0011】
本発明の便座装置は、上述したいずれかの脱臭装置を本体内部に備え、便器に設置されることを要旨とする。
【0012】
本発明の便座装置は、上述したいずれかの脱臭装置を本体内部に備えるから、上述した本発明の脱臭装置と同様の効果、即ち活性炭と光触媒とを併用して、便座装置の臭気をより適切に脱臭する効果を奏するものとなる。
【0013】
本発明の便座装置において、人体局部への洗浄水の噴射位置と待機位置との間を進退移動する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルが前記待機位置にある場合に閉状態となり、前記洗浄ノズルが前記噴射位置に進出する場合に開状態となる開閉式のシャッターと、を備え、前記流路として、前記吸気口と前記排気口とを有する主流路と、前記吸気口とは異なる副吸気口を有し前記主流路に合流する副流路と、が設けられ、前記主流路は、前記吸気口が閉状態の前記シャッターに閉塞されるように構成され、前記光触媒フィルタよりも前記吸気口側に前記活性炭フィルタが配置されると共に前記光触媒フィルタよりも前記排気口側に前記ファンが配置されており、前記副流路は、前記副吸気口が前記シャッターに閉塞されずに開放されるように構成され、前記活性炭フィルタと前記光触媒フィルタとの間で前記主流路に合流しており、前記制御部は、前記シャッターが開状態のときに前記第1脱臭制御を実行し、前記シャッターが閉状態のときに前記第2脱臭制御を実行可能であるものとしてもよい。これにより、第1脱臭制御と第2脱臭制御とで異なる流路を用いることができる。また、第2脱臭制御においてファンを駆動させても、吸気口がシャッターに閉塞されており吸気口を介して主流路に空気が流入することがないから、活性炭フィルタに多量の空気を流通させないようにすることができる。また、第2脱臭制御においてファンを駆動させなければ、活性炭フィルタに多量の空気が流通することはない。したがって、第2脱臭制御で活性炭フィルタに空気が流通することで活性炭フィルタの寿命が短くなるのを抑えつつ、活性炭フィルタから放出される臭気を適切に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】洗浄便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図である。
図2】洗浄便座装置10の構成図である。
図3】脱臭処理の一例を示すフローチャートである。
図4】脱臭処理が行われる様子の一例を示すタイムチャートである。
図5】変形例の脱臭ユニット30Bの構成図である。
図6】吸気口32a,32bの位置関係の説明図である。
図7】閉状態のシャッター28で吸気口32aが閉塞される様子の説明図である。
図8】変形例の脱臭処理を示すフローチャートである。
図9】洗浄ノズル22の位置とシャッター28の開閉状態とを示す説明図である。
図10】変形例の脱臭ユニット30Cの構成図である。
図11】変形例の脱臭処理を示すフローチャートである。
図12】変形例の脱臭ユニット30Dの構成図である。
図13】変形例の脱臭ユニット30Eの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
図1は洗浄便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図であり、図2は洗浄便座装置10の構成図である。便器1は、洋式便器であり、便器1の上面に洗浄便座装置10が設置されている。洗浄便座装置10は、図1に示すように、便器1の後方に設置される便座装置本体11と、便座装置本体11に回動自在に支持された便座12と、便座装置本体11に回動自在に支持された便蓋13と、使用者により操作される操作パネル14とを備える。
【0017】
便座装置本体11は、図2に示すように、使用者の局部洗浄を行うノズルユニット20と、臭気を脱臭する脱臭ユニット30と、洗浄便座装置10全体を制御する制御装置50とを備える。
【0018】
ノズルユニット20は、おしり洗浄ノズルやビデ洗浄ノズルなどの洗浄ノズル22と、洗浄ノズル22を前後方向に進退移動させる洗浄ノズル駆動部24とを備える他、洗浄水を加熱するヒータや洗浄水の流量を調整する流量調整弁、洗浄水の供給先を切り替える流路切替弁などを備える。洗浄ノズル駆動部24は、図示は省略するが、モータと、モータにより回転するピニオンギヤと、ピニオンギヤに噛み合うと共に洗浄ノズル22に先端部が接続されピニオンギヤの回転に伴って移動可能なラック(フレキシブルラック)とを備え、モータの正回転または逆回転により洗浄ノズル22を前方または後方に移動させる。
【0019】
便座装置本体11には、待機位置(収容位置)にある洗浄ノズル22の先端部を覆う開閉可動式のシャッター28が設けられている。シャッター28は、左右に延びる平板状部材であり、上辺部に設けられた回動軸回りに回動可能に便座装置本体11に支持される。シャッター28は、洗浄ノズル駆動部24の駆動により洗浄ノズル22が便座装置本体11から進出する際に、洗浄ノズル22に裏面が押されて回動軸回りに回動することで開状態となる(図1参照)。また、シャッター28は、図示しないスプリングによって閉方向に付勢されており、洗浄ノズル22が後方に移動して便座装置本体11内の待機位置に移動すると、スプリングの付勢力により閉状態となる。なお、シャッター28は、リンク機構などを介して洗浄ノズル22の進出に連動して開状態となるものなどとしてもよい。
【0020】
脱臭ユニット30は、吸気口32から吸入されユニット内の流路31を流通して排気口33から排出される臭気(空気)を脱臭する。本実施形態では、例えば、吸気口32は便器1の便鉢内に開口するように形成されており、流路31の吸気口32(上流)側から、活性炭フィルタ34とLEDランプ38と光触媒フィルタ35とファン36とが順に配置されている。
【0021】
活性炭フィルタ34は、活性炭が基材に担持されたフィルタであり、活性炭によりアンモニアや硫化水素、メルカプタン類などの臭気成分を吸着除去することが可能となっている。光触媒フィルタ35は、例えば酸化チタンなどの光触媒が基材に担持されたフィルタであり、紫外線などの光が照射されることにより励起して臭気成分を分解除去することが可能となっている。ファン36は、吸気口32から流路31内に空気を吸入し、排気口33から排出するように送風する。なお、吸気口32から流路31内に吸入された空気は、活性炭フィルタ34と光触媒フィルタ35とを流通して排気口33から排気される。LEDランプ38は、光触媒フィルタ35に紫外線などの光を照射する。このLEDランプ38は、光触媒フィルタ35が臭気成分を分解除去可能となるように光触媒を励起させる波長の光を照射するものであればよく、紫外線に限られるものではない。また、ランプは、LEDランプに限られず、ハロゲンランプや蛍光ランプなどの他のランプとしてもよい。
【0022】
制御装置50は、CPU52を中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPU52の他にROM54やRAM56,タイマ58,入出力ポートなどを備える。制御装置50には、図2に示すように、操作パネル14からの操作信号や着座センサ15からの検知信号などが入力ポートを介して入力される。また、制御装置50からは、ノズルユニット20(洗浄ノズル駆動部24など)への駆動信号、脱臭ユニット30のファン36への駆動信号,脱臭ユニット30のLEDランプ38への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、操作パネル14には、おしり洗浄を指示するおしり洗浄スイッチやビデ洗浄を指示するビデ洗浄スイッチ、洗浄の強さを調整する洗浄強さ調整スイッチ、洗浄の停止を指示する洗浄停止スイッチ、脱臭ユニット30により開始される脱臭の停止を指示する脱臭停止スイッチなどが設けられている。
【0023】
次に、こうして構成された洗浄便座装置10の脱臭ユニット30の動作について説明する。図3は、脱臭処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、制御装置50のCPU52により実行される。
【0024】
この脱臭処理では、制御装置50のCPU52は、まず、使用者による洗浄便座装置10の使用が開始されたか否か(S100)、脱臭ユニット30の作動停止後の経過時間Tが所定時間T0以上であるか否か(S110)、をそれぞれ判定する。S100では、例えば着座センサ15からの検知信号により使用者の着座を検知したことに基づいて使用開始を判定する。なお、洗浄便座装置10が配置されたトイレ室内への使用者の入室を検知するセンサを備える場合、使用者の入室を検知したことに基づいて使用開始を判定してもよい。制御装置50は、S100で使用が開始されたと判定すると、LEDランプ38をオフのままファン36をオフからオンとして駆動させることで使用時脱臭を開始する(S120)。使用時脱臭では、ファン36を駆動させて流路31内に空気を流通させながら、活性炭フィルタ34で臭気を吸着除去することになる。活性炭フィルタ34は、比較的流速の速い臭気であっても吸着することができるから、洗浄便座装置10の使用中の臭気を適切に除去することができる。一方、光触媒フィルタ35は、活性炭フィルタ34よりも吸着効率が低いことから、光触媒フィルタ35を使用しても脱臭効率の大幅な上昇は見込めない。このため、本実施形態では、使用時脱臭で光触媒フィルタ35による脱臭を行わず、LEDランプ38を点灯させないことで、省エネルギ化を図っている。
【0025】
こうして使用時脱臭を開始すると、使用時脱臭の終了条件が成立するのを待つ(S130)。この終了条件は、例えば、着座センサ15からの検知信号により使用者が便座12から退座したことを検知してから、数十秒から数分などの一定時間が経過した場合に成立する条件とする。このため、本実施形態では、使用者が便座12に着座している使用中と使用直後の一定時間にわたり、使用時脱臭で活性炭フィルタ34による脱臭が行われて臭気を除去することができる。なお、操作パネル14に設けられた脱臭停止スイッチが操作された場合に、使用時脱臭の終了条件が成立するものとしてもよい。S130で終了条件が成立すると判定すると、ファン36やLEDランプ38などをいずれもオフとして脱臭ユニット30の作動を停止することで脱臭を終了し(S140)、タイマ58により脱臭終了後の経過時間Tの計測を開始して(S150)、S100に戻る。
【0026】
S150で計測を開始した経過時間Tが所定時間T0以上であるとS110で判定すると、ファン36をオフのままLEDランプ38をオフからオンとして点灯させることで非使用時脱臭(待機時脱臭)を開始する(S160)。ここで、所定時間T0は、例えば数十分から数時間程度の時間に定めることができる。本実施形態の非使用時脱臭では、ファン36を駆動させないため、流路31内に空気を流通させることなく、光触媒フィルタ35で主に流路31内の臭気を分解除去することになる。非使用時脱臭を開始すると、洗浄便座装置10の使用が開始されたか否か(S170)、洗浄便座装置10の使用開始以外に非使用時脱臭の終了条件が成立したか否か(S180)、をそれぞれ判定する。非使用時脱臭の終了条件は、例えば、予め定められた所定の脱臭時間(非使用時脱臭時間)が経過した場合に成立する条件などとする。S170で洗浄便座装置10の使用が開始されたと判定すると、S120で使用時脱臭を開始する。即ち、非使用時脱臭から使用時脱臭に切り替える。また、S180で非使用時脱臭の終了条件が成立すると判定すると、S140で脱臭ユニット30の作動を停止することで脱臭を終了し、S150で脱臭終了後の経過時間Tの計測を開始して、S100に戻る。
【0027】
ここで、図4は脱臭処理が行われる様子の一例を示すタイムチャートである。図示するように、時刻t11で着座センサ15が使用者の着座を検知して洗浄便座装置10が使用開始されると(使用中になると)、LEDランプ38をオフとしたままファン36をオンとして活性炭フィルタ34による使用時脱臭を開始する。上述したように、使用時脱臭は、着座センサ15が使用者を検知しなくなってから(時刻t12)、一定時間が経過する時刻t13まで行われる。その後、所定時間T0の経過前に、時刻t14で着座センサ15が再び使用者の着座を検知して洗浄便座装置10が使用開始されると、再び使用時脱臭を開始する。この使用時脱臭も、着座センサ15が使用者を検知しなくなってから(時刻t15)、一定時間が経過する時刻t16まで行われる。そして、洗浄便座装置10が使用されない非使用中に経過時間Tが所定時間T0以上となった時刻t17で、ファン36をオフとしたままLEDランプ38をオンとして光触媒フィルタ35による非使用時脱臭を開始する。非使用時脱臭は、例えば数十分から数時間程度の所定の脱臭時間にわたり行われる。ここで、活性炭フィルタ34は、経年劣化などにより吸着力が低下したり使用時脱臭で多くの臭気を吸着したりすると、吸着した臭気成分を放出する場合がある。本実施形態の非使用時脱臭は、ファン36を駆動させないため、活性炭フィルタ34から放出された臭気を拡散させることなく光触媒フィルタ35で適切に分解除去することができる。このため、次に使用時脱臭が行われた際に、活性炭フィルタ34から放出された臭気がファン36の駆動により拡散されて使用者に不快感を与えるのを防止することができる。
【0028】
また、上述した所定時間T0は、一定の時間としてもよいし、活性炭フィルタ34の使用期間(劣化程度)や洗浄便座装置10の使用頻度に応じて変更可能な可変の時間としてもよい。例えば、活性炭フィルタ34の経年劣化に伴う吸着力の低下により放出される臭気が増えやすくなるから、活性炭フィルタ34の使用期間が長いほど所定時間T0を短くしてもよい。また、洗浄便座装置10が頻繁に使用されると活性炭フィルタ34が多くの臭気を吸着して放出される臭気が増えやすくなるから、洗浄便座装置10の使用頻度が高いほど所定時間T0を短くしてもよい。所定時間T0を短くすると、非使用時脱臭の実行頻度を高めて、活性炭フィルタ34から放出された臭気をさらに適切に脱臭することができる。また、非使用時脱臭の脱臭時間は、一定の時間としてもよいし、活性炭フィルタ34の使用期間(劣化程度)などに応じて変更可能な可変の時間としてもよく、活性炭フィルタ34の使用期間が長いほど脱臭時間を長くしてもよい。言い換えると、活性炭フィルタ34の使用期間が短く、放出される臭気が少ないと考えられる場合には、脱臭時間を短くしてもよい。これにより、LEDランプ38の省エネルギ化を図りつつ、活性炭フィルタ34から放出された臭気を適切に除去することができる。
【0029】
以上説明した洗浄便座装置10の脱臭ユニット30では、洗浄便座装置10の使用中に流路31に吸入した空気を活性炭フィルタ34で脱臭する使用時脱臭(第1脱臭制御)と、非使用中の所定タイミングで光触媒フィルタ35で脱臭する非使用時脱臭(第2脱臭制御)とを実行可能である。このため、洗浄便座装置10の使用時には、吸着効率の高い活性炭フィルタ34で効率よく脱臭することができ、非使用時には、活性炭フィルタ34から流路31内に放出された臭気を光触媒フィルタ35で分解除去することができる。
【0030】
また、ファン36の駆動を停止したまま非使用時脱臭を行うから、活性炭フィルタ34から流路31内に放出された臭気を、拡散させることなく適切に除去することができる。また、使用時脱臭と非使用時脱臭のいずれかを実行してから所定時間T0が経過すると非使用時脱臭を実行するから、活性炭フィルタ34から放出された臭気を所定時間T0毎に除去して流路31内に臭気が滞留するのを防止することができる。また、LEDランプ38を用いることで、小型化および低コスト化を図ることができる。
【0031】
上述した実施形態では、1の流路31が設けられるものを例示したが、これに限られるものではない。図5は変形例の脱臭ユニット30Bの構成図であり、図6は吸気口32a,32bの位置関係の説明図であり、図7は閉状態のシャッター28で吸気口32aが閉塞される様子の説明図である。なお、図6では、おしり洗浄用とビデ洗浄用の2の洗浄ノズル22を示し、図示の都合上、開状態のシャッター28の図示を省略する。また、変形例では、実施形態と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。この変形例では、図5に示すように、吸気口32aと排気口33とを有し、実施形態の流路31に相当する主流路31aと、主流路31aの途中に合流する副流路31bとが設けられている。なお、吸気口32a,32bのいずれも便器1の便鉢内に向けて開口するものとする。主流路31aは、吸気口32a(上流)側から、活性炭フィルタ34とLEDランプ38と光触媒フィルタ35とファン36とが順に配置されている。副流路31bは、例えば便器1の便鉢内に向けて開口する吸気口32bを有し、活性炭フィルタ34と光触媒フィルタ35との間で主流路31aに合流する。また、図6図7に示すように、吸気口32aは、閉状態のシャッター28で覆われる位置、即ち閉状態のシャッター28で覆われて見えなくなる位置(図7では点線で図示)に形成されており、吸気口32bは、シャッター28で覆われることなく常時開放される位置に形成されている。シャッター28は洗浄ノズル22の進退移動に伴って開閉するから、吸気口32aは、洗浄ノズル22が待機位置にあると閉状態のシャッター28で閉塞され、洗浄ノズル22が洗浄位置に移動してシャッター28が開状態になると開放されることになる。
【0032】
図8は変形例の脱臭処理を示すフローチャートであり、図9は洗浄ノズル22の位置とシャッター28の開閉状態とを示す説明図である。変形例では、実施形態の脱臭処理と同じ処理には同じステップ番号を付して説明を省略する。この脱臭処理では、S100で洗浄便座装置10の使用が開始されると、洗浄ノズル22の待機位置(図9(a))から、シャッター28を開状態とする位置(図9(b))に洗浄ノズル22が移動した状態で、使用時脱臭を開始する(S103)。使用時脱臭は、S120と同様に、LEDランプ38をオフのままファン36をオンとして行われる。このように、局部洗浄が開始される前から、シャッター28を開けて吸気口32aを開放すると共にファン36を駆動することで、脱臭することができる。なお、図9(b)では、洗浄ノズル22が洗浄位置(図9(c))にあるときと同程度にシャッター28を開いた状態とするが、これに限られず、洗浄ノズル22を待機位置から僅かに移動させてシャッター28を少しだけ開いた状態とすることで、吸気口32aを開放してもよい。即ち、この変形例では、使用開始(着座)を検知すると、洗浄ノズル22を洗浄位置までは移動させることなく、シャッター28が吸気口32aを開放するのに必要な位置まで洗浄ノズル22を移動させて、使用時脱臭を開始するのである。こうして使用時脱臭を開始すると、局部洗浄が開始されるのを待つ(S105)。S105では、例えば使用者により操作パネル14のおしり洗浄スイッチやビデ洗浄スイッチが操作された場合に、局部洗浄が開始されると判定する。局部洗浄が開始されると、洗浄ノズル22が洗浄位置に移動した状態で(図9(c))、使用時脱臭を継続する(S120a)。そして、S130aで局部洗浄終了条件が成立すると、S140で脱臭ユニット30の作動を停止する。変形例のS130aでは、例えば使用者により操作パネル14の洗浄停止スイッチが操作された場合に局部洗浄終了条件が成立すると判定したり、洗浄停止スイッチが操作されて洗浄ノズル22が待機位置に戻った場合に局部洗浄終了条件が成立すると判定する。なお、洗浄ノズル22が待機位置に戻ると、シャッター28が閉状態となるから(図9(a))、吸気口32bが閉塞されることになる。
【0033】
また、S110で経過時間Tが所定時間T0以上になると、非使用時脱臭を開始する(S160a)。この非使用時脱臭では、まず、ファン36を駆動せずにLEDランプ38をオンとして脱臭を開始し、途中からファン36を駆動するものなどとしてもよい。即ち、まずファン36を駆動せずに活性炭フィルタ34から放出された臭気を光触媒フィルタ35で脱臭しておき、途中から脱臭ユニット30B内や便鉢内に滞留している臭気を吸引しながら光触媒フィルタ35で脱臭する。この場合、シャッター28が閉状態で吸気口32aが閉塞されているから、ファン36をオンとしても吸気口28aから多量の空気が流入して活性炭フィルタ34を通過することはない。一方で、吸気口32bは開放されているから、ファン36をオンとすると吸気口32bから副流路31bに空気が流入し、主流路31aとの合流箇所に流れて光触媒フィルタ35を通過する。このため、活性炭フィルタ34への空気の流通(吸着)を抑えつつ、脱臭ユニット30B内や便鉢内を含むトイレ室内の臭気を光触媒フィルタ35で適切に除去することができる。即ち、非使用時に臭気を除去するためにファン36を駆動させても、活性炭フィルタ34を使用しないから活性炭フィルタ34の寿命が短くなる防止することができる。なお、S160aでは、光触媒フィルタ35での臭気成分の吸着力を考慮して、S120の使用時脱臭よりもファン36の風速(回転速度)を抑えた制御を行うものとしてもよい。即ち、使用時脱臭では第1の風速でファン36を制御し、非使用時脱臭では第1の風速よりも低速の第2の風速でファン36を制御するものなどとしてもよい。これにより、脱臭ユニット30Bの周辺の臭気を光触媒フィルタ35で適切に除去することができる。
【0034】
また、脱臭ユニット30,30Bのように1のファン36を備えるものに限られず、複数のファンを備えてもよい。図10は変形例の脱臭ユニット30Cの構成図であり、図11は変形例の脱臭処理を示すフローチャートである。脱臭ユニット30Cは、脱臭ユニット30Bと同様に主流路31aと副流路31bとを備える。主流路31aには、吸気口32a側から第1ファン36aと活性炭フィルタ34とLEDランプ38と光触媒フィルタ35とが順に配置されており、副流路31bには、第2ファン36bが配置されている。図11の脱臭処理では、S100で洗浄便座装置10の使用が開始されると、LEDランプ38をオフとし第1ファン36aをオンとして使用時脱臭を開始する(S120a)。また、S110で経過時間Tが所定時間T0以上になると、まず、第2ファン36bを駆動せずにLEDランプ38をオンとして脱臭を開始し、途中から第2ファン36bを駆動する、非使用時脱臭を開始する(S160b)。第2ファン36bをオンとしても活性炭フィルタ34を空気が流通しないから、活性炭フィルタ34の寿命が低減するのを確実に防止しつつ、非使用中に臭気を適切に除去することができる。
【0035】
これらの変形例では、吸気口32a,32bのいずれも便器1の便鉢内に向けて開口するものとしたが、これに限られず、例えば吸気口32bが便座装置本体11の側方に開口するものなどとしてもよい。また、これらの変形例では、非使用時脱臭で、まずファンを駆動せずに脱臭を行い途中からファンを駆動するが、これに限られず、非使用時脱臭の開始当初からファン(ファン36,第2ファン36b)を駆動するものとしてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、使用時脱臭ではLEDランプ38を常にオフするものとしたが、これに限られず、LEDランプ38をオンとして活性炭フィルタ34に加えて光触媒フィルタ35による脱臭を行う場合があってもよい。例えば、比較的強力に脱臭させるパワー脱臭スイッチを操作パネル14に備える場合、そのパワー脱臭スイッチが操作された場合には、LEDランプ38をオンするものなどとしてもよい。
【0037】
また、光触媒フィルタ35を次のように構成してもよい。図12は変形例の脱臭ユニット30Dの構成図であり、図13は変形例の脱臭ユニット30Eの構成図である。図12の脱臭ユニット30Dでは、光触媒フィルタ35aの端面を流路31の軸方向に対して斜めになるように配置している。また、LEDランプ38を、光触媒フィルタ35aの中心線上に位置するように流路31の隅に配置している。一方、図13の脱臭ユニット30Eでは、光触媒フィルタ35bが、流路31の上流側に凹状で下流側に凸状となるように湾曲した形状に形成されている。なお、図示は省略するが、光触媒フィルタ35bが、流路31の上流側に凹状で下流側に平坦状となる形状に形成されていてもよい。光触媒フィルタ35a,35bは、実施形態の光触媒フィルタ35よりも表面積が大きく、流通する空気(臭気)と接触する面積を増やすことができるから、臭気の付着量が増えることになる。したがって、光触媒フィルタ35a,35bは、実施形態よりも臭気を効率よく脱臭することができる。なお、変形例の脱臭ユニット30B,30Cにおいて、光触媒フィルタ35a,35bのいずれかを用いてもよい。
【0038】
実施形態では、使用時脱臭や非使用時脱臭などの脱臭動作を行ってから所定時間T0が経過すると、非使用時脱臭を実行するものとしたが、これに限られず、非使用中に予め定められた時刻になると非使用時脱臭を実行するものなどとしてもよい。
【0039】
実施形態では、脱臭ユニット30が洗浄便座装置10の便座装置本体11内に設けられるものとしたが、これに限られず、脱臭ユニット30が洗浄便座装置10とは別に設けられるものなどとしてもよい。例えば、洗浄便座装置10が配置されるトイレ室内の壁や床、備え付けの棚やカウンタ内などに脱臭ユニットが設けられるものなどとしてもよい。
【0040】
本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。本実施形態では、洗浄便座装置10が「便座装置」に相当し、吸気口32が「吸気口」に相当し、排気口33が「排気口」に相当し、流路31が「流路」に相当し、活性炭フィルタ34が「活性炭フィルタ」に相当し、光触媒フィルタ35が「光触媒フィルタ」に相当し、LEDランプ38が「ランプ」に相当し、制御装置50が「制御部」に相当する。また、洗浄ノズル22が「局部洗浄ノズル」に相当し、シャッター28が「シャッター」に相当し、脱臭ユニット30Bの主流路31aが「主流路」に相当し、脱臭ユニット30Bの副流路31bが「副流路」に相当する。
【0041】
なお、本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、本実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、本実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0042】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、脱臭装置や便座装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 便器、10 洗浄便座装置、11 便座装置本体、12 便座、13 便蓋、14 操作パネル、15 着座センサ、20 ノズルユニット、22 洗浄ノズル、24 洗浄ノズル駆動部、28 シャッター、30,30B,30C 脱臭ユニット、31 流路、31a 主流路、31b 副流路、32,32a,32b 吸気口、33 排気口、34 活性炭フィルタ、35,35a,35b 光触媒フィルタ、36 ファン、36a 第1ファン、36b 第2ファン、38 LEDランプ、50 制御装置、52 CPU、54 ROM、56 RAM、58 タイマ。
図1
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