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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ロータリースクリーン
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20230912BHJP
   B01D 33/04 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
E02B5/08 102B
B01D33/04 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019129137
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021014708
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】兼重 友典
(72)【発明者】
【氏名】三戸 利幸
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3192999(JP,U)
【文献】特開2004-060353(JP,A)
【文献】特開2005-194751(JP,A)
【文献】特開平11-152729(JP,A)
【文献】実開昭60-058625(JP,U)
【文献】実開平04-126930(JP,U)
【文献】実開昭51-137831(JP,U)
【文献】特開2016-169539(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0020443(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/00-7/18
E02B 8/00
E02B 8/06-8/08
E02B 15/00-15/10
B01D 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続回転式除塵装置のキャリングチェーンに取り付ける網枠と、
前記網枠に取り付けて水中の塵芥を捕捉するスクリーンパネルを有し、
前記スクリーンパネルは前記網枠の幅方向に複数分割し、前記網枠の塵芥捕捉面側から少なくとも一部取り外し可能とし
前記網枠の幅方向の両端部に前記網枠の背面側から締結手段により固定した固定スクリーンと、
前記網枠の幅方向の中央部の内周に沿って設けた取付金具に、前記塵芥捕捉面側に突出した締結手段を取り付けて着脱可能に設けた着脱スクリーンと、を有することを特徴とするロータリースクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載されたロータリースクリーンであって、
前記着脱スクリーンは、前記網枠の幅サイズに応じて幅方向の長さを任意に設定変更可能なことを特徴とするロータリースクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海や河川からの取水又は水の浄化処理の際に、水中の塵芥等の異物を取り除く目的で設置される連続回転式除塵装置のスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に火力発電所などの発電プラントにおいては、河川や海などから冷却水として使用するため取水場が配置されている。しかし、取水した水の中には塵芥や水生生物が含まれていることがあり、そのまま使用することができない。そのため取水場では水中の塵芥や水生生物などを捕捉する働きをする除塵装置が設置されている。
除塵装置は、取水路を幅方向に横切るように水流に対して垂直もしくは所定角度の傾斜をつけて設置されており、取水量の多い発電所等ではスクリーン(金網ともいう)を周回転させて連続的に塵芥等を捕捉している連続回転式のトラベリングスクリーンが利用されている。図4は連続回転式除塵装置の説明図である。図示のように除塵装置1は、駆動装置2から上下左右のスプロケットホイール3を介して、左右一対の無端状のキャリングチェーン4を周回転させており、このキャリングチェーン4にスクリーン5が接合した網枠6が、取水路を横切るように取り付けられている。
【0003】
また上部のスプロケットホイールは地上に、下部のスプロケットホイールは水路底に設置されている。これら左右一対の上下のスプロケットホイールにおいて、取水路を挟み込むようにして左右のスプロケットホイールが設置されており、左右のスプロケットホイール間に水路を横切るように回転軸(頭軸と尾軸)を有している。
またキャリングチェーンは2枚のリンクプレートをブッシュと、ローラと、ピンで平行に接合したものを1組とし、この接合箇所を起点としてさらにリンクプレート1組(平行に接合した2枚)を繋いでおり、ブッシュと、ローラと、ピンで2枚のリンクプレートを繰り返し繋ぐことで無端状の構造に形成している。このとき、平行に接合した2枚のリンクプレート間の距離は接合部のローラ幅によって決まる。
【0004】
そしてキャリングチェーンを構成する平行に接合した2枚のリンクプレートの水路の両端の左右2組に対して、網枠1枚を挟み込むように網枠の左右両端をボルトナット4か所で締結している。このとき、1枚の網枠の短手方向(取水路幅を長手方向としたとき)の長さはキャリングチェーンを構成するリンクプレートを接合するリンク間の距離によって決まる。
このように除塵装置は、多数の機器、パーツ等から構成された複合体であることから、装置の機能維持や、長寿命化を図るためには定期的な点検及びメンテナンスが必須となる。
発電プラントに設置した連続回転式の除塵装置は、点検又はメンテナンスで動作を停止すると供給電力量に大きな影響を与える。特に電力消費量の多い夏場に動作を停止することは供給量に支障を与えてしまう。そのため点検及びメンテナンスは可能な限り簡便で短時間で行うことが望ましい。
【0005】
従来、取水時に流木などの大型流下物が衝突したり噛み込まれると、除塵装置のスクリーンの変形や破損が引き起こされるといった問題が生じていた。また連続回転式のトラベリングスクリーンにおいては、水中と地上を周回転しており、スクリーンなどの乾湿交番部や常に水中にある尾軸などに貝や藻が付着し腐食されたりする問題も生じていた。これらの問題は除塵装置の正常運転を阻害するため、点検を行いスクリーンの交換などのメンテナンスを行う必要があった。
しかしながら、スクリーンの交換を水路内で行うことは構造上困難であった。スクリーンを接合した網枠を固定しているボルトナットは水路壁面との隙間が少なく取り外す作業が非常に困難であり、仮に取り外せたとしても重い網枠を吊り上げるための吊り具を設置することは不可能であった。そのため、この作業は地上で行う必要があり、まず上部スプロケットホイールを覆うように設置されているハウジングの分割カバー(下流側)をクレーンによって取り外した後に、下流側からスクリーンが取り付けられた網枠を交換していたため手間がかかっていた。このとき網枠を外す枚数は、キャリングチェーンの回転バランスを考慮すると2枚が最適である。
【0006】
また、除塵装置のキャリングチェーンは、頭軸と尾軸の回転を上下のスプロケットホイールを介して伝達し、水路の深さ方向に対して上下に周回転させており、このとき尾軸と下部スプロケットホイールは常に水中に配置された状態であるため、点検する際には水路を止水したうえでスクリーンが取り付けられた網枠を取り外した隙間を利用して水路内にて点検を行う必要がある。このとき、スクリーンが取り付けられた網枠を取り外すためには前述したように事前に地上で作業を行う。
さらに、水中で起こる金属腐食を防ぐために犠牲陽極としてアルミ陽極が複数個所取り付けられており、定期的(例えば2年毎)に交換作業が必要となる。そのうち、スクリーンフレーム内側に取り付けられているものは、スクリーンが取り付けられた網枠を取り外さないと交換作業ができないため、前述したような事前に地上で網枠を取り外す作業が必要となる。
このように点検・メンテナンスにはクレーンが必須であるうえ、手間もかかり、作業に長時間を要していた。
【0007】
特許文献1に開示の技術によれば、腐食等損傷の激しいスクリーンユニットを選択的に交換することができる。しかし、分割スクリーンユニットは、自動細目除塵機のバースクリーンであり、上下に複数分割(二分割、三分割)した構成である。このためもともとプレート単位でスクリーンを(上下方向に)分割している連続回転式の除塵装置では網枠があるためそのまま適用することはできず、前述のような水路幅方向の網枠単位で(網枠内の全スクリーンを)一括交換する作業となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-183443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、除塵装置又はスクリーンの点検、メンテナンス、交換作業が容易なロータリースクリーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、連続回転式除塵装置のキャリングチェーンに取り付ける網枠と、
前記網枠に取り付けて水中の塵芥を捕捉するスクリーンパネルを有し、
前記スクリーンパネルは前記網枠の幅方向に複数分割し、前記網枠の塵芥捕捉面側から少なくとも一部取り外し可能とし
前記網枠の幅方向の両端部に前記網枠の背面側から締結手段により固定した固定スクリーンと、
前記網枠の幅方向の中央部の内周に沿って設けた取付金具に、前記塵芥捕捉面側に突出した締結手段を取り付けて着脱可能に設けた着脱スクリーンと、を有することを特徴とするロータリースクリーンを提供することにある。
上記第1の手段によれば、スクリーンの点検時においては、網枠内で部分的に損傷している対象箇所のスクリーンパネルのみを選択的に交換することができる。
また除塵装置の点検時においては、点検対象箇所の近くのスクリーンパネルのみを選択的に取り外すことができる。このため従来のようにクレーン等を用いるなど地上での前処理作業が必要なく点検時間の大幅な短縮化及び効率化が図れる。
また水流によって塵芥が集中する水路の中央部を着脱スクリーンとし、これ以外を取り外しができない固定スクリーンの組み合わせ等が可能となり、水路の中央部のスクリーンの損傷が激しい箇所のメンテナンス・取り外し・交換作業を容易に行うことができ、網枠のスクリーン全部を交換する必要がない。さらにアルミ電極の定期的な交換作業の際にも電極近くの着脱スクリーンを取り外すことにより容易に交換作業が行える。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記着脱スクリーンは、前記網枠の幅サイズに応じて幅方向の長さを任意に設定変更可能なことを特徴とするロータリースクリーンを提供することにある。
上記第2の手段によれば、水路幅に応じて設定される網枠幅に合わせて着脱スクリーンの幅方向の長さを変更できるため、除塵装置の設置作業時の時間短縮が図れる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、網枠内のスクリーンを複数の着脱可能なスクリーンパネルに分割しているため、取り外し又は交換作業が容易で作業時間の大幅な短縮化と効率化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のロータリースクリーンの背面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図1のB-B断面図である。
図4】連続回転式除塵装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のロータリースクリーンの実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。本発明のロータリースクリーンは、連続回転式除塵装置に適用可能なスクリーンである。図1は本発明のロータリースクリーンの背面図である。図2図1のA-A断面図である。図3図1のB-B断面図である。
本発明のロータリースクリーン10は、連続回転式除塵装置のキャリングチェーン12に取り付ける網枠14と、網枠14に取り付けて水中の塵芥を捕捉するスクリーンパネル20を有している。
網枠14は、キャリングチェーン12を構成する平行に接合した2枚のリンクプレートの水路の両端の左右2組により挟み込まれるように網枠14の左右両端をボルトナット4か所でリンクプレートに締結している。
スクリーンパネル20は、網枠14に取り付けて水中の塵芥を捕捉する金網であり、網枠14の幅方向(本実施形態では網枠14の長手方向と同じ)、換言すると水路の幅方向に複数分割している。そして網枠14にボルトナット等の締結手段により取り付けて、一部を塵芥捕捉面側から着脱可能としている。
【0016】
このスクリーンパネル20は、網枠14の幅方向の両端部に固定した固定スクリーン22と、網枠14の幅方向の中央部に着脱可能とした着脱スクリーン24を有している(図1参照)。
固定スクリーン22は、網枠14の幅方向の両端側の2か所に取付金具23を用いて網枠14の背面側から締結手段により固定している(図3参照)。
着脱スクリーン24は、固定スクリーン22の間で網枠14の中央部に網枠14の内周に沿って設けた取付金具25に塵芥捕捉面側から締結手段により着脱可能に取り付けている(図2参照)。
なお着脱スクリーン24の高さサイズは、キャリングチェーンを構成するプレート同士を接合するリンク間距離に相当し、一般的には300mm~600mmの範囲にある。また幅サイズは、吊り具を使用しないで人手によりスクリーンの交換作業が行える適正重量を考慮して、高さサイズの2倍のサイズであることが好ましい。
このような構成のスクリーンパネル20は、従来の地上での作業(スクリーンが取り付けられた網枠の取り外し)は不要であり、止水した後、水流によって塵芥が集まりやすい水路の中央部でスクリーンの損傷が激しい箇所の着脱スクリーン24を容易に取り外して交換作業が行える。このとき着脱スクリーン24の締結手段は、塵芥捕捉面側に突出しているため、容易に取り外すことができる。
【0017】
本発明のスクリーンパネル20は、自身の点検作業での取り外しが容易であるだけではなく、除塵装置の点検作業時においても取り外しが容易となる。例えば、除塵装置には水中で起こる金属腐食を防止するために犠牲電極としてアルミ電極が、周回転する無端状のキャリングチェーンの内側にある除塵装置の構成部材に取り付けられている。このアルミ電極の定期的な交換作業の際にも電極近くの着脱スクリーン24を取り外すことにより、容易に交換作業が行える。また、除塵装置の尾軸の点検作業の際には、止水した後、直ちに尾軸近くの着脱スクリーン24を取り外してメンテナンス作業を行うことができる。これにより従来の尾軸点検作業のように、地上において、ハウジング、スクリーンが取り付けられた網枠を取り外す前処理が必要なくなり、点検時間の大幅な短縮化及び効率化が図れる。
また本発明のスクリーンパネル20は、網枠の幅サイズに応じて幅方向の長さを任意に設定変更可能としている。網枠14に固定スクリーン22を取り付けた後の残りのスペースに嵌めるように、標準化した規定サイズの着脱スクリーン24の取り付け枚数を調整することで幅方向の長さを変更できる。このためスクリーンパネル設置時の時間の短縮化と、メンテナンス等においても部品交換のコスト削減が図れる。
本発明のスクリーンパネル20は、網枠の幅方向に沿って複数分割可能な構成であれば良く、この他、着脱スクリーン24のみの構成であっても良い。この場合、網枠内全てのスクリーンについて容易に交換できる。
【0018】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のロータリースクリーンは、特に連続回転式除塵装置を用いた水処理分野おいて産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0020】
1 連続回転式除塵装置
2 駆動装置
3 スプロケットホイール
4 キャリングチェーン
5 スクリーン
6 網枠
10 ロータリースクリーン
12 キャリングチェーン
14 網枠
20 スクリーンパネル
22 固定スクリーン
23 取付金具
24 着脱スクリーン
25 取付金具
図1
図2
図3
図4