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特許7346959排ガス処理装置および排ガス処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】排ガス処理装置および排ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/78 20060101AFI20230912BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20230912BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20230912BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20230912BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20230912BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20230912BHJP
   F01N 3/08 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
B01D53/78 ZAB
B01D53/50 270
B01D53/50 230
B01D53/18 150
F23J15/00 B
F01N5/02 A
F01N5/02 J
F01N3/24 L
F01N3/08 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019131159
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021013909
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦幸
(72)【発明者】
【氏名】乾 貴誌
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-046575(JP,A)
【文献】特開2017-012951(JP,A)
【文献】特開2012-237242(JP,A)
【文献】特開2017-210963(JP,A)
【文献】特開2018-155484(JP,A)
【文献】特開2005-098552(JP,A)
【文献】特開2005-279331(JP,A)
【文献】特開2013-213658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
B01D 53/14-53/18
F23J 13/00-99/00
F01N 1/00-1/24,5/00-5/04、13/00-99/00
F01N 3/00,3/02,3/04-3/38,9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが導入され、前記排ガスを処理する液体が供給される反応塔と、
前記排ガスを処理することにより前記排ガスの熱を吸収した前記液体を、一または複数の熱利用機器に提供する回収部と、
を備え
前記回収部は、低温回収部および高温回収部を有し、
前記高温回収部が提供する前記液体の温度は、前記低温回収部が提供する前記液体の温度よりも高く、
前記低温回収部は、前記液体を一の前記熱利用機器に提供し、
前記高温回収部は、前記液体を他の前記熱利用機器に提供し、
前記一の前記熱利用機器に提供された前記液体と、前記他の前記熱利用機器に提供された前記液体とを混合する液体混合部をさらに備え
排ガス処理装置。
【請求項2】
前記反応塔は、前記排ガスを導入するガス導入開口を有し、
前記高温回収部は、前記低温回収部よりも前記ガス導入開口に近い位置に配置される、
請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
排ガスが導入され、前記排ガスを処理する液体が供給される反応塔と、
前記排ガスを処理することにより前記排ガスの熱を吸収した前記液体を、一または複数の熱利用機器に提供する回収部と、
を備え、
前記回収部は、低温回収部および高温回収部を有し、
前記反応塔は、前記排ガスを導入するガス導入開口を有し、
前記高温回収部は、前記低温回収部よりも前記ガス導入開口に近い位置に配置され、
前記低温回収部は、前記液体を一の前記熱利用機器に提供し、
前記高温回収部は、前記液体を他の前記熱利用機器に提供し、
前記一の前記熱利用機器に提供された前記液体と、前記他の前記熱利用機器に提供された前記液体とを混合する液体混合部をさらに備える、
排ガス処理装置。
【請求項4】
前記高温回収部が提供する前記液体の温度は、前記低温回収部が提供する前記液体の温度よりも高い、請求項3に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記反応塔の内部に設けられ、前記反応塔の内部において前記液体を噴出する複数の噴出部をさらに備え、
前記低温回収部は、前記排ガスの導入側から排出側への方向において、最も前記排ガスの導入側に配置される前記噴出部と、最も前記排ガスの排出側に配置される前記噴出部との中央よりも前記排ガスの導入側に配置される、
請求項2から4のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記反応塔の内部に設けられ、前記反応塔の内部において前記液体を噴出する複数の噴出部をさらに備え、
前記低温回収部は、前記排ガスの導入側から排出側への方向において、前記ガス導入開口と、最も前記導入側に配置される前記噴出部との間に配置される、
請求項2から4のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記反応塔の内部に設けられ、前記反応塔の内部において前記液体を噴出する複数の噴出部をさらに備え、
前記低温回収部は、前記排ガスの導入側から排出側への方向において、最も前記導入側に配置される前記噴出部よりも前記排出側に配置される、
請求項2から4のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
前記反応塔の内部に設けられ、前記液体が供給され、前記排ガスの前記導入側から前記排出側に延伸し、前記複数の噴出部が接続された幹管をさらに備え、
前記幹管は、前記排ガスの前記導入側に設けられた第1の幹管および前記第1の幹管よりも前記排ガスの前記排出側に設けられた第2の幹管を含み、
前記幹管が延伸する方向に直交する方向において、前記第1の幹管の断面積は前記第2の幹管の断面積よりも大きく、
前記第1の幹管に接続された前記噴出部における、前記液体を噴出する開口の面積は、前記第2の幹管に接続された前記噴出部における、前記液体を噴出する開口の面積よりも大きい、
請求項からのいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項9】
記液体混合部は、前記液体混合部が混合する前記液体を前記排ガス処理装置の外部に排出する、請求項からのいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項10】
前記一の前記熱利用機器の温度と、前記他の前記熱利用機器の温度とに基づいて、前記液体混合部において混合された前記液体の温度を制御する温度制御部をさらに備え
請求項1から9のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項11】
記排ガスの温度、前記排ガスの流量、前記液体混合部から排出された前記液体の温度、または、前記排ガスを排出する動力装置の稼働状況の少なくともいずれかに基づいて、前記液体混合部において混合された前記液体の温度を制御する温度制御部をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項12】
前記排ガスを排出する動力装置に投入される燃料に含まれる硫黄成分量および前記動力装置の稼働状況の少なくとも一方に基づいて、前記液体の流量を制御する流量制御部をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項13】
前記反応塔に、前記排ガスに含まれる硫黄成分を中和可能な化学当量以上の前記液体が供給される、請求項1から12のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項14】
前記反応塔の外部に設けられ、前記排ガスを処理する前記液体を噴霧する噴霧部をさらに備え、
前記噴霧部は、前記反応塔に導入される前記排ガスに、前記液体を噴霧する、
請求項1から13のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項15】
前記反応塔の側壁の少なくとも一部を覆う断熱材をさらに備え、
前記断熱材の熱伝導率は、前記側壁の熱伝導率よりも低く、
前記断熱材は、前記反応塔における前記排ガスの導入側から排出側への方向において、前記側壁の前記導入側の端部から前記排出側の端部までの中央よりも前記導入側に設けられる、
請求項1から14のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項16】
前記排ガスにより流体を加熱するエコノマイザーと、
前記エコノマイザーにより加熱された前記流体が提供される熱利用機器と、
をさらに備える、
請求項1から15のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の前記排ガス処理装置と、前記熱利用機器とを備える排ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置および排ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼル機関の排熱を利用した排ガス処理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2012-159074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
排ガス処理システムにおいては、排ガスの脱硫をしつつ排熱を利用することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、排ガス処理装置を提供する。排ガス処理装置は、排ガスが導入され排ガスを処理する液体が供給される反応塔と、排ガスを処理することにより排ガスの熱を吸収した前記液体を、一または複数の熱利用機器に提供する回収部と、を備える。
【0005】
反応塔は、排ガスを導入するガス導入開口を有してよい。回収部は、低温回収部および高温回収部を有してよい。高温回収部が提供する液体の温度は、低温回収部が提供する液体の温度よりも高くてよい。高温回収部は、低温回収部よりもガス導入開口に近い位置に配置されてよい。
【0006】
排ガス処理装置は、反応塔の内部に設けられ反応塔の内部において液体を噴出する複数の噴出部をさらに備えてよい。低温回収部は、排ガスの導入側から排出側への方向において、最も排ガスの導入側に配置される噴出部と、最も排ガスの排出側に配置される噴出部との中央よりも排ガスの導入側に配置されてよい。
【0007】
排ガス処理装置は、反応塔の内部に設けられ反応塔の内部において液体を噴出する複数の噴出部をさらに備えてよい。低温回収部は、排ガスの導入側から排出側への方向において、ガス導入開口と、最も導入側に配置される噴出部との間に配置されてよい。
【0008】
排ガス処理装置は、反応塔の内部に設けられ反応塔の内部において液体を噴出する複数の噴出部をさらに備えてよい。低温回収部は、排ガスの導入側から排出側への方向において、最も導入側に配置される噴出部よりも排出側に配置されてよい。
【0009】
排ガス処理装置は、反応塔の内部に設けられ、液体が供給され、排ガスの導入側から排出側に延伸し、複数の噴出部が接続された幹管をさらに備えてよい。幹管は、排ガスの導入側に設けられた第1の幹管および第1の幹管よりも排ガスの排出側に設けられた第2の幹管を有してよい。幹管が延伸する方向に直交する方向において、第1の幹管の断面積は第2の幹管の断面積よりも大きくてよい。第1の幹管に接続された噴出部における、液体を噴出する開口の面積は、第2の幹管に接続された噴出部における、液体を噴出する開口の面積よりも大きくてよい。
【0010】
排ガス処理装置は、液体混合部をさらに備えてよい。低温回収部は、液体を一の熱利用機器に提供してよい。高温回収部は、液体を他の熱利用機器に提供してよい。液体混合部は、一の熱利用機器に提供された液体と、他の熱利用機器に提供された液体とを混合し、排ガス処理装置の外部に排出してよい。
【0011】
排ガス処理装置は、排ガスを排出する動力装置と、液体混合部において混合された液体の温度を制御する温度制御部と、をさらに備えてよい。温度制御部は、排ガスの温度、排ガスの流量、液体混合部から排出された液体の温度、または、動力装置の稼働状況の少なくともいずれかに基づいて、一の熱利用機器の温度および他の熱利用機器の温度の少なくとも一方を制御してよい。
【0012】
排ガス処理装置は、排ガスを排出する動力装置と、液体混合部において混合された液体の温度を制御する温度制御部と、をさらに備えてよい。温度制御部は、排ガスの温度、排ガスの流量、液体混合部から排出された液体の温度、または、動力装置の稼働状況の少なくともいずれかに基づいて、一の熱利用機器に提供された液体の量と他の熱利用機器に提供された液体の量とを調整することにより、混合された液体の温度を制御してよい。
【0013】
排ガス処理装置は、排ガスを排出する動力装置と、液体の流量を制御する流量制御部と、をさらに備えてよい。流量制御部は、動力装置に投入される燃料に含まれる硫黄成分量および動力装置の稼働状況の少なくとも一方に基づいて、液体の流量を制御してよい。
【0014】
反応塔には、排ガスに含まれる硫黄成分を中和可能な化学当量以上の液体が供給されてよい。
【0015】
排ガス処理装置は、反応塔の外部に設けられ、排ガスを処理する液体を噴霧する噴霧部をさらに備えてよい。噴霧部は、反応塔に導入される排ガスに、液体を噴霧してよい。
【0016】
排ガス処理装置は、反応塔の側壁の少なくとも一部を覆う断熱材をさらに備えてよい。断熱材の熱伝導率は、側壁の熱伝導率よりも低くてよい。断熱材は、反応塔における排ガスの導入側から排出側への方向において、側壁の導入側の端部から排出側の端部までの中央よりも導入側に設けられてよい。
【0017】
排ガス処理装置は、排ガスにより流体を加熱するエコノマイザーと、エコノマイザーにより加熱された流体が提供される熱利用機器と、をさらに備えてよい。
【0018】
本発明の第2の態様においては、排ガス処理システムを提供する。排ガス処理システムは、排ガス処理装置と熱利用機器とを備えてよい。
【0019】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の一例を示す図である。
図2図1に示される排ガス処理装置100の上面の一例を示す図である。
図3】本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。
図4図3に示される排ガス処理装置100の上面の一例を示す図である。
図5】噴出部14-1Aにおける開口110-1の一例を示す図である。
図6】噴出部14-5Aにおける開口110-2の一例を示す図である。
図7】噴出部14-9Aにおける開口110-3の一例を示す図である。
図8】本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。
図9】本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。
図10】本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。
図11】本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。
図12】本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。
図13】本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の一例を示す図である。排ガス処理システム300は、排ガス処理装置100と熱利用機器200を備える。熱利用機器200は、排ガス処理装置100の外部に配置されてよい。排ガス処理装置100は、排ガス処理装置100から排出される熱を熱利用機器200に提供する。
【0023】
排ガス処理装置100は、反応塔10と回収部20とを備える。排ガス処理装置100は、排ガス導入管32、動力装置50およびポンプ60を備えてよい。動力装置50は、例えばエンジン、ボイラー等である。本例の排ガス導入管32は、動力装置50と反応塔10とを接続する。本例において、動力装置50から排出された排ガス30は、排ガス導入管32を通り反応塔10に導入される。本例のポンプ60は、液体40を反応塔10に供給する。液体40は、排ガス30を処理する。排ガス30を処理するとは、排ガス30に含まれる有害物質(後述)を除去することを指す。
【0024】
排ガス処理装置100が船舶向けスクラバである場合、当該スクラバは、サイクロン式であってよい。サイクロン式スクラバの詳細については、後述する。排ガス処理装置100が船舶向けスクラバである場合、動力装置50は例えば当該船舶のエンジン、ボイラー等であり、排ガス30は例えば当該動力装置50から排出される排ガスであり、排ガス30を処理する液体40は例えば海水である。液体40は、水酸化ナトリウム(NaOH)および炭酸水素ナトリウム(NaCO)の少なくとも一方を添加したアルカリ性の水であってもよい。
【0025】
排ガス30には硫黄酸化物(SO)等の有害物質が含まれる。硫黄酸化物(SO)は、例えば亜硫酸ガス(SO)である。本例においては、液体40が排ガス30に含まれる当該有害物質を除去する。動力装置50から排出される排ガス30は、所定の熱を有する。当該排ガス30の温度は、例えば250℃以上400℃以下である。
【0026】
液体40は、排ガス30を処理することにより排ガス30の熱を吸収する。本例においては、液体40は排ガス30の熱を熱交換により吸収する。排ガス30の熱を熱交換により吸収した後の液体を、排液45とする。排液45の温度は、例えば30℃以上95℃以下である。
【0027】
回収部20は、排液45を熱利用機器200に提供する。回収部20は、例えば排液45を熱利用機器200に提供する配管である。回収部20は、熱交換器を含んでもよい。
【0028】
本例の排ガス処理装置100においては、回収部20が排ガス30の熱を吸収した液体40(即ち排液45)を熱利用機器200に提供するので、熱利用機器200は排ガス30の熱を利用できる。また、本例の排ガス処理装置100においては、液体40が排ガス30の熱を吸収するので、排ガス処理装置100に排熱回収のための排ガス熱交換器を別途設ける必要が無い。
【0029】
排ガス処理装置100に排熱回収のための排ガス熱交換器を別途設けた場合、排ガス30の硫酸露点まで排ガス30の熱を回収すると排ガス熱交換器が硫酸により腐食しやすい。このため、排ガス処理装置100に排熱回収のための排ガス熱交換器を別途設けた場合、排ガス30の脱硫が困難である。これに対し、本例の排ガス処理装置100においては液体40が排ガス30の熱を吸収する。このため、本例の排ガス処理装置100は排ガス30の温度が液体40の温度に近い温度(例えば、液体40の温度+1~5℃)になるまで排ガス30の熱を回収できる。液体40が海水の場合、本例の排ガス処理装置100は排ガス30の温度が海水の温度(例えば5~30℃)になるまで排ガス30の熱を回収できる。即ち、本例の排ガス処理装置100は、排ガス30を脱硫しつつ排ガス30の熱を回収できる。
【0030】
また、排ガス処理装置100に排熱回収のための排ガス熱交換器を別途設けた場合、排ガス30の硫酸露点未満まで排ガス30の熱を回収するためには、硫酸露点以上まで排ガス30の熱を回収する場合よりも排ガス熱交換器の伝熱面積を大きくする必要がある。このため、排ガス処理装置100に排熱回収のための排ガス熱交換器を別途設けた場合、排ガス処理装置100が大型化しやすく、高コスト化しやすい。
【0031】
また、本例の排ガス処理装置100は、液体40が排ガス30を脱硫しつつ排ガス30の熱を回収するので、排ガス30の温度を、例えば海水の温度まで低下させやすい。このため、本例の排ガス処理装置100においては、ガス排出口17(後述)は耐熱性を有する材料で形成されなくてもよい。このため、本例の排ガス処理装置100はガス排出口17(後述)に用いられる材料のコストを低下させやすい。
【0032】
本例の反応塔10は、側壁15、底面16、ガス排出口17およびガス処理部18を有する。本例の反応塔10は、円柱状である。本例において、側壁15および底面16は、それぞれ円柱状の反応塔10の側面および底面である。
【0033】
本例のガス処理部18は、側壁15、底面16およびガス排出口17に囲まれた空間である。反応塔10に導入された排ガス30は、ガス処理部18において液体40により処理される。ガス処理部18の内壁は、排ガス30、液体40(海水またはアルカリ性の液体)および排液45に対して耐久性を有する材料で形成される。当該材料は、SS400等の鉄材、ネバール黄銅等の銅合金、アルミニウムブラス等のアルミニウム合金、キュープロニッケル等のニッケル合金、または、SUS316L等のステンレスであってよい。
【0034】
液体40により処理された排ガス30は、ガス排出口17から排出される。本例において、排ガス30を処理した液体40(即ち排液45)は液体排出口19から排出される。排液45は底面16に滞留してもよい。液体排出口19は、底面16に設けられてよい。液体排出口19は、側壁15の底面16付近に設けられてもよい。
【0035】
熱利用機器200に提供される液体40の温度は、例えば30℃以上95℃以下である。熱利用機器200は、例えば燃料油タンク、吸着式冷温水器、吸収式冷温水器、ヒートポンプ、バイナリー発電機、デシカント空調機およびスターリングエンジンの少なくとも一つである。熱利用機器200が燃料油タンクである場合、排液45は当該燃料油タンクに貯蔵された燃料(例えばC重油)を加熱してよい。熱利用機器200が吸着式冷温水器または吸収式冷温水器である場合、当該冷温水器は排液45を熱源として冷熱を取得してよい。熱利用機器200がヒートポンプである場合、当該ヒートポンプは排液45の熱を吸熱してよい。熱利用機器200がデシカント空調機である場合、当該デシカント空調機は排液45を熱源として空気を乾燥させてよい。熱利用機器200がスターリングエンジンである場合、当該スターリングエンジンは排液45を熱源として排ガス30の熱から動力エネルギーを取得してよい。
【0036】
本明細書においては、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書においては、反応塔10の底面16と平行な面をXY面とし、底面16からガス排出口17へ向かう方向(底面16に垂直な方向)をZ軸とする。本明細書において、XY面内における所定の方向をX軸方向とし、XY面内においてX軸に直交する方向をY軸方向とする。
【0037】
本明細書においては、ガス排出口17の側を「上」、底面16の側を「下」と称する。本例においてはZ軸方向を重力方向としているが、「上」、「下」の方向は重力方向に限定されない。本明細書において上面視とは、排ガス処理装置100をZ軸方向にガス排出口17から底面16の方向に見た場合を指す。
【0038】
本例において、底面16(XY面)は水平面であってよく、底面16に垂直な方向(Z軸方向)は高さ方向であってよい。排ガス処理装置100が船舶等に搭載される場合、底面16が船舶に載置されてよい。
【0039】
本例の反応塔10は、排ガス30を導入するガス導入開口11を有する。本例において、排ガス30は反応塔10の外部からガス導入開口11を通り、ガス処理部18に導入される。ガス導入開口11は側壁15に設けられてよい。
【0040】
本例の排ガス処理装置100は、幹管12、枝管13および噴出部14をさらに備える。噴出部14は、幹管12に接続されてよい。本例において、枝管13は幹管12と接続され、噴出部14は枝管13と接続されている。幹管12には、反応塔10の外部からポンプ60により液体40が供給される。幹管12に供給された液体40は、Z軸方向に底面16からガス排出口17側に向けて幹管12の内部を流れる。幹管12の内部を流れる液体40は枝管13に流れ、枝管13を流れた液体40は噴出部14からガス処理部18に噴出される。
【0041】
幹管12および枝管13は、排ガス30及び液体40(海水またはアルカリ性の液体)に対して耐久性を有する材料で形成される。当該材料は、例えばSS400等の鉄材、ネバール黄銅等の銅合金、アルミニウムブラス等のアルミニウム合金、キュープロニッケル等のニッケル合金、または、SUS316L等のステンレスである。
【0042】
幹管12は、反応塔10の内部(ガス処理部18)に設けられる。幹管12は、排ガス30の導入側(底面16側)から排出側(ガス排出口17側)に延伸している。即ち、本例の幹管12はZ軸方向に延伸している。
【0043】
枝管13は、幹管12に固定されていてよい。反応塔10は、複数の枝管13を有してよい。本例において、枝管13-1は、最も底面16側に設けられる枝管13であり、枝管13-12は最もガス排出口17側に設けられる枝管13である。本例において、枝管13-2、枝管13-4、枝管13-6、枝管13-8、枝管13-10および枝管13-12はX軸方向に延伸し、枝管13-1、枝管13-3、枝管13-5、枝管13-7、枝管13-9および枝管13-11はY軸方向に延伸している。
【0044】
枝管13-2、枝管13-4、枝管13-6、枝管13-8、枝管13-10および枝管13-12は、幹管12のX軸方向における両側に配置されてよい。枝管13-2を例に説明すると、枝管13-2Aおよび枝管13-2Bは、それぞれ幹管12のX軸方向における一方側および他方側の枝管13-2である。X軸方向において、枝管13-2Aおよび枝管13-2Bは幹管12を挟むように設けられてよい。
【0045】
枝管13-1、枝管13-3、枝管13-5、枝管13-7、枝管13-9および枝管13-11は、幹管12のY軸方向における両側に配置されてよい。枝管13-1を例に説明すると、枝管13-1Aおよび枝管13-1Bは、それぞれ幹管12のY軸方向における一方側および他方側の枝管13-1である。Y軸方向において、枝管13-1Aおよび枝管13-1Bは幹管12を挟むように設けられてよい。なお図1において、枝管13-1A、枝管13-3A、枝管13-5A、枝管13-7A、枝管13-9Aおよび枝管13-11Aは幹管12と重なる位置に配置されているので、図示されていない。
【0046】
噴出部14は、枝管13に固定されてよい。反応塔10は、複数の噴出部14を有してよい。本例において、枝管13-1~13-12は、それぞれ2個の噴出部14を有する。2個の噴出部14は、それぞれの枝管13が延伸する方向における両端に設けられてよい。本例において、噴出部14―1および噴出部14-12は、反応塔10における排ガス30の導入側(底面16側)から排出側(ガス排出口17側)への方向(Z軸方向)において、それぞれ最も排ガス30の導入側、および、最も排ガス30の排出側に配置される。
【0047】
本例において、噴出部14-2A、噴出部14-4A、噴出部14-6A、噴出部14-8A、噴出部14-10Aおよび噴出部14-12Aは、枝管13-2A、枝管13-4A、枝管13-6A、枝管13-8A、枝管13-10Aおよび枝管13-12Aのそれぞれの端部に設けられる。本例において、噴出部14-2B、噴出部14-4B、噴出部14-6B、噴出部14-8B、噴出部14-10Bおよび噴出部14-12Bは、枝管13-2B、枝管13-4B、枝管13-6B、枝管13-8B、枝管13-10Bおよび枝管13-12Bのそれぞれの端部に設けられる。
【0048】
本例において、噴出部14-1A、噴出部14-3A、噴出部14-5A、噴出部14-7A、噴出部14-9Aおよび噴出部14-11Aは、枝管13-1A、枝管13-3A、枝管13-5A、枝管13-7A、枝管13-9Aおよび枝管13-11Aのそれぞれの端部に設けられる。本例において、噴出部14-1B、噴出部14-3B、噴出部14-5B、噴出部14-7B、噴出部14-9Bおよび噴出部14-11Bは、枝管13-1B、枝管13-3B、枝管13-5B、枝管13-7B、枝管13-9Bおよび枝管13-11Bのそれぞれの端部に設けられる。なお図1において、噴出部14-1A、噴出部14-3A、噴出部14-5A、噴出部14-7A、噴出部14-9Aおよび噴出部14-11Aは幹管12と重なる位置に配置されているので、図示されていない。
【0049】
本例の噴出部14は、液体40を噴出する開口面を有する。図1において、当該開口面は「×」印にて示されている。1つの枝管13において、2つの噴出部14のそれぞれの開口面は、枝管13の延伸方向に直交する一方の方向および他方の方向を指してよい。当該開口面が指す方向とは、噴出部14から液体40が噴出される方向を指す。即ち、噴出部14-2A、噴出部14-4A、噴出部14-6A、噴出部14-8A、噴出部14-10Aおよび噴出部14-12Aは液体40をY軸方向における一方の方向に噴出してよく、噴出部14-2B、噴出部14-4B、噴出部14-6B、噴出部14-8B、噴出部14-10Bおよび噴出部14-12Bは液体40をY軸方向における他方の方向に噴出してよい。また、噴出部14-1A、噴出部14-3A、噴出部14-5A、噴出部14-7A、噴出部14-9Aおよび噴出部14-11Aは液体40をX軸方向における一方の方向に噴出してよく、噴出部14-1B、噴出部14-3B、噴出部14-5B、噴出部14-7B、噴出部14-9Bおよび噴出部14-11Bは液体40をX軸方向における他方の方向に噴出してよい。噴出部14が液体40をX軸方向およびY軸方向に噴出するとは、液体40がそれぞれX軸方向およびY軸方向に平行に噴出される場合に限らず、液体40がそれぞれX軸方向成分およびY軸方向成分を含む方向に噴出される場合も含んでよい。
【0050】
幹管12に供給された液体40は、Z軸方向に底面16からガス排出口17側に向けて幹管12の内部を流れる。幹管12の内部を流れる液体40は枝管13-1~枝管13-12に流れ、それぞれ噴出部14-1~噴出部14-12からガス処理部18に噴出される。
【0051】
液体40が水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液の場合、排ガス30に含まれる亜硫酸ガス(SO)と水酸化ナトリウム(NaOH)との反応は、下記の化学式1で示される。
[化1]
SO+Na+OH→Na+HSO
【0052】
化学式1に示されるように、亜硫酸ガス(SO)は化学反応により亜硫酸イオン(HSO )となる。亜硫酸イオン(HSO )は化学式1に示される化学反応後の排液45に含まれて反応塔10の底面16に設置された回収部20から排出される。
【0053】
排ガス処理装置100は、流量制御部70をさらに備えてよい。流量制御部70は、液体40の流量を制御する。流量制御部70は、バルブ72を有してよい。本例の流量制御部70は、ポンプ60から幹管12に供給される液体40の流量をバルブ72により制御する。
【0054】
流量制御部70は、動力装置50に投入される燃料に含まれる硫黄成分量および動力装置50の稼働状況の少なくとも一方に基づいて、液体40の流量を制御してよい。燃料に含まれる硫黄成分量は、燃料により異なり得る。動力装置50に、硫黄成分を単位体積または単位重量当たり第1の量含む燃料Aと、当該第1の量よりも多い第2の量含む燃料Bがそれぞれ投入される場合、流量制御部70は、動力装置50に燃料Bが投入される場合の液体40の流量を、燃料Aが投入される場合の液体40の流量よりも多くしてよい。
【0055】
動力装置50がエンジンである場合、動力装置50の稼働状況とは、例えばエンジンの単位時間当たりの回転数、エンジンの回転数の単位時間当たりの増加率等である。流量制御部70は、単位時間当たりのエンジンの回転数およびエンジンの回転数の増加率の少なくとも一方に基づいて液体40の流量を制御してよい。動力装置50の稼働状況に基づく液体40の流量の制御については後述する。流量制御部70は、動力装置50に投入される燃料に含まれる硫黄成分および動力装置50の稼働状況の両方に基づいて、液体40の流量を制御してもよい。
【0056】
反応塔10には、排ガス30に含まれる硫黄成分を中和可能な化学当量以上の液体40が供給されてよい。排ガス処理システム300は、動力装置50に投入される燃料に含まれる単位体積または単位重量当たりの硫黄成分量と、動力装置50の稼働状況に基づいて、単位体積当たりの排ガス30に含まれる硫黄成分量を算出できる。流量制御部70は、当該硫黄成分を中和可能な化学当量の液体40の量を算出できる。流量制御部70は、当該量以上の液体40が反応塔10に供給されるように、液体40の流量を制御してよい。
【0057】
排ガス30に含まれる硫黄成分を中和可能な化学当量以上の液体40が反応塔10に供給されることで、排液45のpHは4以上になりやすい。回収部20がpH4以上の排液45を熱利用機器200に提供する場合、排液45から硫黄酸化物(SO)が発生しにくい。反応塔10に供給される液体40の量が、排ガス30に含まれる硫黄成分を中和可能な化学当量未満である場合、排液45のpHは4未満になりやすい。回収部20がpH4未満の排液45を熱利用機器200に提供する場合、排液45から硫黄酸化物(SO)等の有害物質が発生しやすい。
【0058】
図2は、図1に示される排ガス処理装置100の上面の一例を示す図である。図2において、動力装置50、ポンプ60、流量制御部70およびガス排出口17は省略されている。図2は、反応塔10の内部の上面視における一例である。
【0059】
本例の反応塔10は、上面視で円状である。反応塔10の内部には幹管12が設けられている。本例の幹管12は、Z軸方向に中心軸を有する円柱状である。幹管12の中心軸は、反応塔10の中心軸と一致してよい。即ち、幹管12および反応塔10は、上面視で同心円状に配置されてよい。
【0060】
排ガス処理装置100は、排ガス30が反応塔10における排ガス30の導入側から排出側へ、反応塔10の内部を螺旋状に進むサイクロン式スクラバであってよい。排ガス導入管32は、反応塔10の側壁15に接続される。上面視において排ガス導入管32は、排ガス導入管32の延伸方向における延長線が反応塔10の中心と重ならない位置に設けられてよい。排ガス導入管32の延伸方向とは、ガス導入開口11を通る排ガス30の進行方向を指す。排ガス導入管32がこのような位置に設けられることで、排ガス30はガス処理部18を螺旋状(サイクロン状)に旋回し、排ガス30の導入側(底面16側)から排出側(ガス排出口17側)に進行する。
【0061】
反応塔10の外部から幹管12に供給された液体40は、Z軸方向に底面16側からガス排出口17側に向けて幹管12の内部を流れる。幹管12の内部を流れる液体40は枝管13-1~枝管13-12に流れ、それぞれ噴出部14-1~噴出部14-12からガス処理部18に噴出される。図2において、噴出部14からガス処理部18に噴出される液体40の向きが破線矢印にて示されている。本例においては、噴出部14-11A、並びに噴出部14-11Aの下方に配置された噴出部14-9A、噴出部14-7A、噴出部14-5A、噴出部14-3Aおよび噴出部14-1Aから、X軸方向における一方の方向に液体40が噴出される。本例においては、噴出部14-11B、並びに噴出部14-11Bの下方に配置された噴出部14-9B、噴出部14-7B、噴出部14-5B、噴出部14-3Bおよび噴出部14-1Bから、X軸方向における他方の方向に液体40が噴出される。また、本例においては噴出部14-12A、並びに噴出部14-12Aの下方に配置された噴出部14-10A、噴出部14-8A、噴出部14-6A、噴出部14-4Aおよび噴出部14-2Aから、Y軸方向における一方の方向に液体40が噴出される。また、本例においては噴出部14-12B、並びに噴出部14-12Bの下方に配置された噴出部14-10B、噴出部14-8B、噴出部14-6B、噴出部14-4Bおよび噴出部14-2Bから、Y軸方向における他方の方向に液体40が噴出される。
【0062】
図3は、本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。排ガス処理システム300は、排ガス処理装置100と熱利用機器200を備える。本例の排ガス処理システム300は、熱利用機器200-1および熱利用機器200-2を有する点で、図1に示される排ガス処理システム300と異なる。また、本例の排ガス処理装置100は低温回収部20-1および高温回収部20-2を有する点で、図1に示される排ガス処理装置100と異なる。
【0063】
高温回収部20-2が提供する排液、および、低温回収部20-1が提供する排液を、それぞれ高温排液46および低温排液47とする。高温排液46および低温排液47は、排ガス30の熱を吸収した液体である。高温排液46の温度は、低温排液47の温度よりも高い。なお、高温排液46は、図1の例における排液45に等しい。
【0064】
低温回収部20-1は、低温排液47を熱利用機器200-1に提供する。高温回収部20-2は、高温排液46を熱利用機器200-2に提供する。本例の低温回収部20-1は、反応塔10の側壁15に設けられる。また、本例の高温回収部20-2は、反応塔10の底面16に設けられる。
【0065】
反応塔10の内部には、導入部22が設けられてよい。導入部22は、噴出部14から噴出された液体40の一部を低温回収部20-1に導入する。導入部22は、Z軸方向において低温回収部20-1よりもガス排出口17側に配置された噴出部14から噴出された液体40の一部を、低温回収部20-1に導入してよい。本例においては、導入部22は噴出部14-5~噴出部14-12から噴出された液体40を、低温回収部20-1に導入する。
【0066】
導入部22は、底面24および側面26を有してよい。底面24は、XY面と平行であってよい。XZ面内において、側面26はZ軸方向に対して所定の角度を有する方向に延伸していてよく、Z軸方向に延伸していてもよい。本例の側面26は、XZ面内においてZ軸方向に対して所定の角度を有する方向に延伸している。側面26が、XZ面内においてZ軸方向に対して所定の角度を有する方向に延伸していることで、導入部22の上方から落下した液体40は側面26上に落下しやくなる。このため、側面26上に落下した液体40が低温回収部20-1に導入されやすくなる。
【0067】
導入部22は、反応塔10の内部において、上面視で、低温回収部20-1への液体40の入口を含む、側壁15の少なくとも一部に設けられていてよい。導入部22は、反応塔10の内部において、上面視で、低温回収部20-1への液体40の入口を含む、側壁15の全面に設けられていてもよい。言い換えると、導入部22は、反応塔10の内部において、上面視で側壁15を一周するように設けられていてもよい。導入部22が上面視で側壁15を一周するように設けられていることで、導入部22は、反応塔10の内部における側壁15の全面において、導入部22の上方から落下した液体40を回収できる。このため、導入部22は、当該液体40を効率的に回収しやすくなる。
【0068】
また、本例の排ガス処理装置100は、1つのポンプ60および3つのバルブ72を有する点で図1に示される排ガス処理装置100と異なる。ポンプ60は、液体40を幹管12-1、幹管12-2および幹管12-3に供給する。また、本例の流量制御部70は、バルブ72-1、バルブ72-2およびバルブ72-3により、それぞれポンプ60から幹管12-1、幹管12-2および幹管12-3に供給される液体40の流量を制御する。
【0069】
幹管12は、排ガス30の導入側(底面16側)に設けられた第1の幹管および第1の幹管よりも排ガス30の排出側(ガス排出口17側)に設けられた第2の幹管を含んでよい。本例においては、幹管12は排ガス30の導入側に設けられた幹管12-1、幹管12-1よりも排ガス30の排出側に設けられた幹管12-2、および、幹管12-2よりも排ガス30の排出側に設けられた幹管12-3を含む。本例において、上記した第1の幹管および第2の幹管は、それぞれ幹管12-1および幹管12-2であってよく、それぞれ幹管12-2および幹管12-3であってもよい。
【0070】
幹管12が延伸する方向(Z軸方向)に直交する方向(XY面内)において、第1の幹管の断面積は第2の幹管の断面積よりも大きくてよい。本例においては、幹管12-1の断面積は幹管12-2の断面積よりも大きく、幹管12-2の断面積は幹管12-3の断面積よりも大きい。本例において、枝管13-1~13-4は幹管12-1に固定され、枝管13-5~13-8は幹管12-2に固定され、枝管13-9~13-12は幹管12-3に固定されている。
【0071】
幹管12に供給された液体40は、Z軸方向に底面16からガス排出口17側に向けて幹管12-1、幹管12-2、幹管12-3の内部をそれぞれ流れる。幹管12-1の内部を流れる液体40は枝管13-1~枝管13-4に流れ、それぞれ噴出部14-1~噴出部14-4からガス処理部18に噴出される。幹管12-2の内部を流れる液体40は枝管13-5~枝管13-8に流れ、それぞれ噴出部14-5~噴出部14-8からガス処理部18に噴出される。幹管12-3の内部を流れる液体40は枝管13-9~枝管13-12に流れ、それぞれ噴出部14-9~噴出部14-12からガス処理部18に噴出される。
【0072】
Z軸方向において、最も底面16側に配置される噴出部14-1の位置、および、最もガス排出口17側に配置される噴出部14-12の位置を、それぞれ位置P1および位置P2とする。Z軸方向において、位置P1と位置P2との距離を距離Lとする。Z軸方向において、位置P1と位置P2との間の中央の位置を位置P3とする。Z軸方向において、ガス導入開口11、低温回収部20-1および底面16の位置を、それぞれ位置P4、位置P5および位置P6とする。なお、低温回収部20-1のZ軸方向における位置は、低温回収部20-1のZ軸方向における中央であってよく、上端であってもよく、下端であってもよい。ガス導入開口11のZ軸方向における位置は、ガス導入開口11のZ軸方向における中央であってよく、上端であってもよく、下端であってもよい。
【0073】
本例において、高温回収部20-2は低温回収部20-1よりもガス導入開口11に近い位置に配置される。言い換えると、本例において位置P4と位置P6との間の距離は、位置P4と位置P5との間の距離よりも小さい。
【0074】
低温回収部20-1は、低温排液47を熱利用機器200-1に提供する。高温回収部20-2は、高温排液46を熱利用機器200-2に提供する。本例の排ガス処理装置100においては、高温回収部20-2は低温回収部20-1よりもガス導入開口11に近い位置に配置される。このため、排ガス導入管32からガス処理部18に導入され、底面16側を進んでいる排ガス30の熱は、低温回収部20-1よりも高温回収部20-2により回収されやすい。このため、本例の排ガス処理装置100においては、低温回収部20-1が高温回収部20-2よりもガス導入開口11に近い位置に配置される場合よりも、高温回収部20-2は排ガス30の熱をより効率的に回収できる。
【0075】
高温排液46は、高温回収部20-2において排ガス30の熱の一部を回収する。低温排液47は、低温回収部20-1において排ガス30の熱の他の一部を回収する。排ガス30の熱は、高温回収部20-2において回収された後、低温回収部20-1において回収される。このため、低温回収部20-1が提供する低温排液47の温度は、高温回収部20-2が提供する高温排液46の温度よりも低くなりやすい。高温回収部20-2が提供する高温排液46の温度は、例えば40℃以上95℃以下である。低温回収部20-1が提供する低温排液47の温度は、例えば10℃以上50℃以下である。
【0076】
低温回収部20-1は、Z軸方向において噴出部14-1と噴出部14-12との中央よりも排ガス30の導入側に配置されてよい。即ち、Z軸方向において低温回収部20-1の位置P5は、位置P1と位置P2との間の中央の位置P3よりも位置P1側であってよい。
【0077】
本例において、排ガス30は位置P1側から位置P2側に向かってガス処理部18を進む。Z軸方向において位置P1側では、排ガス30の熱の一部が高温排液46により吸収される。排ガス30の熱の他の一部は、位置P1よりも位置P2側で低温排液47により吸収される。本例においては、Z軸方向において低温回収部20-1の位置P5が位置P3よりも位置P1側であるので、低温回収部20-1は排ガス30の熱の当該他の一部を回収しやすくなる。
【0078】
低温回収部20-1は、Z軸方向において噴出部14-1よりもガス排出口17側に配置されてよい。即ち、Z軸方向において低温回収部20-1の位置P5は、位置P1よりも位置P2側であってよい。これにより、高温回収部20-2は、排ガス30の熱の全体量に占める、高温排液46が回収する熱の割合を増やすことができる。
【0079】
図4は、図3に示される排ガス処理装置100の上面の一例を示す図である。図2において、動力装置50、ポンプ60、流量制御部70およびガス排出口17は省略されている。図4は、反応塔10の内部の上面視における一例である。
【0080】
反応塔10の内部には幹管12-1、幹管12-2および幹管12-3が設けられている。幹管12-1、幹管12-2および幹管12-3は、Z軸方向に中心軸を有する円柱状であってよい。幹管12-1、幹管12-2および幹管12-3の中心軸は、反応塔10の中心軸と一致してよい。即ち、幹管12-1、幹管12-2および幹管12-3、並びに反応塔10は、上面視で同心円状に配置されてよい。本例において、幹管12-2は幹管12-3の下方に配置され、幹管12-1は幹管12-2の下方に配置される。
【0081】
本例の幹管12は、Z軸方向に延伸している。幹管12の延伸方向に直交するXY平面内において、排ガス30の導入側における第1の幹管12の断面積は、排ガス30の排出側における第2の幹管12の断面積よりも大きくてよい。本例においては、幹管12-1は最も排ガス30の導入側に配置され、幹管12-3は最も排ガス30の排出側に配置される。本例において、幹管12-1の断面積は幹管12-2の断面積よりも大きく、幹管12-2の断面積は幹管12-3の断面積よりも大きい。
【0082】
反応塔10の外部から幹管12に供給された液体40は、Z軸方向に底面16側からガス排出口17側に向けて幹管12-1、幹管12-2、幹管12-3の内部を順に流れる。幹管12-1の内部を流れる液体40の一部は枝管13-1~枝管13-4に流れ、それぞれ噴出部14-1~噴出部14-4からガス処理部18に噴出される。図4において、噴出部14からガス処理部18に噴出される液体40の向きが破線矢印にて示されている。
【0083】
図5~7は、噴出部14における開口110の一例を示す図である。図5は、噴出部14-1Aにおける開口110-1の一例を示す図である。図6は、噴出部14-5Aにおける開口110-2の一例を示す図である。図7は、噴出部14-9Aにおける開口110-3の一例を示す図である。
【0084】
開口110-1は、噴出部14-1Aに設けられた開口110である。図5は、YZ面内において噴出部14-1Aを枝管13-1Aの延伸方向(Y軸方向)に直交する方向(X軸方向)から見た図である。開口110-2は、噴出部14-5Aに設けられた開口110である。図6は、YZ面内において噴出部14-5Aを枝管13-5Aの延伸方向に直交する方向から見た図である。開口110-3は、噴出部14-9Aに設けられた開口110である。図7は、YZ面内において噴出部14-9Aを枝管13-9Aの延伸方向に直交する方向から見た図である。本例において噴出部14-3A、噴出部14-7Aおよび噴出部14-11Aの形状は、それぞれ図5図6および図7に示される形状に等しい。
【0085】
噴出部14は、枝管13に接続される。図3および図4に示される例において、噴出部14-1Aおよび噴出部14-3Aは、それぞれ枝管13-1Aおよび枝管13-3Aに接続され、枝管13-1Aおよび枝管13-2Aは幹管12-1に接続される。また、噴出部14-5Aおよび噴出部14-7Aは、それぞれ枝管13-5Aおよび枝管13-7Aに接続され、枝管13-5Aおよび枝管13-7Aは幹管12-2に接続される。また、噴出部14-9Aおよび噴出部14-11Aは、それぞれ枝管13-9Aおよび枝管13-11Aに接続され、枝管13-9Aおよび枝管13-11Aは幹管12-3に接続される。
【0086】
本例の開口110は、円状である。噴出部14は、開口110から液体40を噴出する。図5は、噴出部14-1Aにおける開口110-1の一例を示している。図6は、噴出部14-5Aにおける開口110-2の一例を示している。図7は、噴出部14-9Aにおける開口110-3の一例を示している。
【0087】
第1の幹管に接続された噴出部14における開口110の面積は、第2の幹管に接続された噴出部14における開口110の面積よりも大きくてよい。本例においては、幹管12-1に接続された噴出部14-1における開口110-1の面積は、幹管12-2に接続された噴出部14-5における開口110-2の面積よりも大きい。また、本例においては幹管12-2に接続された噴出部14-5における開口110-2の面積は、幹管12-3に接続された噴出部14-9における開口110-3の面積よりも大きい。
【0088】
開口110-2の面積は、開口110-1の面積の1/4以上3/4以下であってよい。本例において、開口110-2の面積は開口110-1の面積の1/2である。開口110-3の面積は、開口110-1の面積の1/8以上1/4以下であってよい。本例において、開口110-3の面積は開口110-1の面積の1/6である。
【0089】
化学式1に示されるように、亜硫酸ガス(SO)と液体40との反応は亜硫酸ガス(SO)の濃度に比例する。このため、ガス処理部18において、底面16側における亜硫酸ガス(SO)の濃度は、ガス排出口17側における亜硫酸ガス(SO)の濃度よりも高くなりやすい。本例においては、開口110-1の面積が開口110-2の面積よりも大きく、開口110-2の面積が開口110-3の面積よりも大きいので、開口110から噴出される液体40の量は、開口110-3、開口110-2および開口110-1の順に多くなりやすい。即ち、本例の排ガス処理装置100は、底面16側に設けられる噴出部14の開口110から噴出される液体40の量を、ガス排出口17側に設けられる噴出部14の開口110から噴出される液体40の量よりも多くしやすい。このため、本例の排ガス処理装置100は、底面16側における亜硫酸ガス(SO)と液体40とを化学反応させるのに十分な量の液体40を供給しやすい。
【0090】
図8は、本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。排ガス処理システム300は、排ガス処理装置100と熱利用機器200を備える。本例の排ガス処理装置100においては、低温回収部20-1はZ軸方向においてガス導入開口11と噴出部14-1との間に配置される。
【0091】
本例の低温回収部20-1のZ軸方向における位置を位置P5'とする。本例の排ガス処理装置100において、低温回収部20-1の位置P5'はZ軸方向において位置P4と位置P1との間に位置する。本例の排ガス処理装置100は、係る点において図3に示される排ガス処理装置100と異なる。本例においては、Z軸方向において低温回収部20-1の位置P5'が位置P4と位置P1との間に位置するので、低温回収部20-1は、上述した排ガス30の熱の他の一部を、図3に示される例よりもさらに回収しやすくなる。
【0092】
図9は、本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。排ガス処理システム300は、排ガス処理装置100と熱利用機器200を備える。本例の排ガス処理装置100においては、低温回収部20-1はZ軸方向において位置P3と位置P2との間に配置される。本例の排ガス処理装置100は、係る点において図3に示される排ガス処理装置100と異なる。位置P1は、Z軸方向において最も底面16側に配置される噴出部14-1の位置である。位置P2は、Z軸方向において最もガス排出口17側に配置される噴出部14-12の位置である。位置P3は、Z軸方向において位置P1と位置P2との間の中央の位置である。
【0093】
本例の低温回収部20-1のZ軸方向における位置を位置P5''とする。本例の排ガス処理装置100において、低温回収部20-1の位置P5''はZ軸方向において位置P2と位置P3との間に位置する。このため、本例の低温回収部20-1は、Z軸方向において位置P3から位置P2の間を旋回する排ガス30の熱を、回収しやすくなる。また、本例の高温回収部20-2は、排ガス30の熱の全体量に占める、高温排液46が回収する熱の割合を、図8に示される例よりも増加できる。
【0094】
図10は、本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。排ガス処理システム300は、排ガス処理装置100と熱利用機器200を備える。本例の排ガス処理装置100は、液体混合部80および温度制御部90をさらに備える点で、図3に示される排ガス処理装置100と異なる。また、本例の排ガス処理装置100は、温度計34、流量計36、温度計42-1、温度計42-2、温度計42-3および稼働状況測定部52をさらに備える点で、図3に示される排ガス処理装置100と異なる。
【0095】
温度計34は、ガス導入開口11から導入される排ガス30の温度を測定する。流量計36は、ガス導入開口11から導入される排ガス30の流量を測定する。流量計36は、排ガス30の圧力を測定することで排ガス30の流量を測定してもよい。
【0096】
温度計42-1は、熱利用機器200-1の温度を測定する。温度計42-2は、熱利用機器200-2の温度を測定する。温度計42-3は、排液54の温度を測定する。
【0097】
稼働状況測定部52は、動力装置50の稼働状況を測定する。動力装置50の稼働状況とは、動力装置50がエンジンである場合、例えばエンジンの単位時間当たりの回転数、エンジンの回転数の単位時間当たりの増加率等である。稼働状況測定部52は、当該回転数、当該増加率等を測定してよい。
【0098】
本例の低温回収部20-1は、低温排液47-1を一の熱利用機器200-1に提供する。本例の高温回収部20-2は、高温排液46-1を他の熱利用機器200-2に提供する。図9において、低温排液47-2および高温排液46-2は、それぞれ低温回収部20-1および高温回収部20-2に提供された後の排液である。
【0099】
液体混合部80は、低温排液47-2と高温排液46-2とを混合する。図10において、排液54は液体混合部80において低温排液47-2と高温排液46-2とが混合された液体である。
【0100】
温度制御部90は、温度計42-1により測定された熱利用機器200-1の温度と、温度計42-2により測定された熱利用機器200-2の温度に基づいて、排液54の温度を制御してよい。液体混合部80は、排液54を排ガス処理装置100の外部に排出してよい。
【0101】
ガス導入開口11から導入された排ガス30は、ガス処理部18を底面16側からガス排出口17側に進むので、高温回収部20-2が吸収する排ガス30の熱量は、低温回収部20-1が吸収する排ガス30の熱量よりも多くなりやすい。このため、高温排液46-2の温度は、低温排液47-2の温度よりも高くなりやすい。高温排液46-2の温度が、公に定められた排出可能な所定温度よりも高い場合、排ガス処理装置100は高温排液46-2を外部に排出できない場合がある。本例においては、液体混合部80が高温排液46-2と低温排液47-2とを混合するので、混合された排液54の温度は、当該所定温度未満になりやすい。本例の排ガス処理装置100においては、温度制御部90が、この排液54の温度を当該所定温度未満に制御してもよい。
【0102】
温度制御部90は、温度計34により測定された排ガス30の温度、流量計36により測定された排ガス30の流量、液体混合部80から排出され温度計42-3により測定された排液54の温度、および、稼働状況測定部52により測定された動力装置50の稼働状況の少なくともいずれかに基づいて、高温排液46-2の量と低温排液47-2の量とを調整することにより、排液54の温度を制御してもよい。
【0103】
また、流量制御部70は、稼働状況測定部52により測定された動力装置50の稼働状況に基づいて液体40の流量を制御してよい。動力装置50がエンジンである場合、動力装置50の稼働状況とは、例えばエンジンの単位時間当たりの回転数、エンジンの回転数の単位時間当たりの増加率等である。例えば、エンジンが第1の回転数と、当該第1の回転数よりも大きい第2の回転数でそれぞれ稼働される場合、流量制御部70は、エンジンが第2の回転数で稼働される場合の液体40の流量を、第1の回転数で稼働される場合の液体40の流量よりも多くしてよい。
【0104】
また、流量制御部70は、温度制御部90に入力された少なくとも一つのデータに基づいて、バルブ72の開閉度を制御してもよい。当該少なくとも一つのデータとは、温度計34により測定された排ガス30の温度、流量計36により測定された排ガス30の流量、液体混合部80から排出され温度計42-3により測定された排液54の温度、および、稼働状況測定部52により測定された動力装置50の稼働状況の少なくとも一つを指す。
【0105】
図11は、本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。排ガス処理システム300は、排ガス処理装置100と熱利用機器200を備える。本例の排ガス処理装置100は、排ガス30を処理する液体40を噴霧する噴霧部38をさらに備える点で、図1に示される排ガス処理装置100と異なる。本例の噴霧部38は、反応塔10の外部に設けられる。図11において、液体41は噴霧部38により噴霧される液体40である。噴霧部38は、動力装置50からガス導入開口11へ進む排ガス30に対して、液体41を噴霧可能な位置に設けられてよい。噴霧部38は、排ガス導入管32に設けられてよい。噴霧部38は、反応塔10の外部から内部への方向に液体41を噴霧してよい。
【0106】
本例の排ガス処理装置100は、反応塔10の外部に設けられた噴霧部38をさらに備えるので、反応塔10に導入される前の排ガス30に対して液体41を噴霧できる。反応塔10に導入される前の排ガス30の温度は、反応塔10に導入され液体40により熱が吸収された後の排ガス30の温度よりも高くなりやすい。このため、本例の排ガス処理装置100は、液体41により排ガス30に含まれる硫黄成分を中和しつつ、排ガス30の熱の一部が吸収された排ガス30を反応塔10に導入できる。
【0107】
図12は、本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。排ガス処理システム300は、排ガス処理装置100と熱利用機器200を備える。本例の排ガス処理装置100は、反応塔10の側壁15の少なくとも一部を覆う断熱材120をさらに備える点で、図1に示される排ガス処理装置100と異なる。
【0108】
断熱材120は、Z軸方向において反応塔10の側壁15の少なくとも一部を覆っていてよい。本例の断熱材120は、Z軸方向において反応塔10の側壁15の全体を覆っている。断熱材120は、XY平面内において反応塔10の側壁15の少なくとも一部を覆っていてよい。本例の断熱材120は、XY平面内において反応塔10の側壁15の全体を覆っている。即ち、本例の断熱材120は、XY平面内において反応塔10の側壁15を周回状に覆っている。
【0109】
断熱材120は、グラスウールまたはロックウール等であってよい。グラスウールは、ガラス繊維からなる綿状の素材である。ロックウールは、例えば玄武岩と石灰の混合物を溶解して生成された人造鉱物繊維である。
【0110】
本例の排ガス処理装置100は断熱材120をさらに備えるので、排ガス30の熱が反応塔10の内部から側壁15を通って反応塔10の外部に放出されることを抑制できる。このため、本例の排ガス処理装置100は、断熱材120を備えない場合に比べて液体40が排ガス30の熱を効率的に吸収できる。このため、本例の排ガス処理装置100は、断熱材120を備えない場合に比べて、排ガス30の熱をより多く吸収した排液45を熱利用機器200に提供できる。
【0111】
断熱材120の熱伝導率は、側壁15の熱伝導率よりも低いことが好ましい。断熱材120の熱伝導率が側壁15の熱伝導率よりも低い場合、本例の排ガス処理装置100は、断熱材120の熱伝導率が側壁15の熱伝導率よりも高い場合に比べて、反応塔10の内部から側壁15を通って反応塔10の外部に放出される熱をより効率的に抑制できる。
【0112】
側壁15のZ軸方向における下端位置(反応塔10の底面16の位置)および上端位置を、それぞれ位置P6および位置P7とする。また、Z軸方向において位置P6と位置P7との中央の位置を位置P8とする。距離Liは、位置P6と位置P7との間のZ軸方向における距離である。
【0113】
断熱材120は、反応塔10における排ガス30の導入側(底面16側)から排出側(ガス排出口17側)への方向(Z軸方向)において、側壁15の当該導入側の端部から当該排出側の端部までの中央よりも導入側に設けられてよい。即ち、断熱材120はZ軸方向において、位置P6と位置P8との間に設けられてよい。本例において、ガス導入開口11はZ軸方向において底面16側(位置P6と位置P8との間)に設けられている。このため、断熱材120がZ軸方向において位置P6と位置P8との間に設けられることで、本例の排ガス処理装置100は、ガス導入開口11から導入される排ガス30の熱が側壁15を通って反応塔10の外部に放出されることを効率的に抑制できる。
【0114】
図13は、本発明の一つの実施形態に係る排ガス処理システム300の他の一例を示す図である。排ガス処理システム300は、排ガス処理装置100と熱利用機器200を備える。本例の排ガス処理装置100は、エコノマイザー130および熱利用機器210をさらに備える点で、図1に示される排ガス処理装置100と異なる。本例において、エコノマイザー130および熱利用機器210は反応塔10の外部に設けられている。
【0115】
排ガス30-1は、動力装置50から排出されエコノマイザー130に導入される排ガス30である。排ガス30-2は、エコノマイザー130から排出され反応塔10に導入される排ガス30である。
【0116】
エコノマイザー130には流体48が供給される。エコノマイザー130は、排ガス30-1により流体48-1を加熱し、加熱された流体49を排出する。流体49は、熱利用機器210に提供される。流体48は、清水や熱媒体であってよく、海水であってもよい。流体48が海水である場合、流体48の温度は例えば5℃以上30℃以下であり、流体49の温度は例えば70℃以上400℃以下である。流体49は、液相とする場合は、蒸発しない温度とする。本例の排ガス処理装置100は、エコノマイザー130をさらに備えるので、動力装置50から排出される排ガス30-1の熱をさらに回収できる。
【0117】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0118】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
[項目1]
排ガスが導入され、前記排ガスを処理する液体が供給される反応塔と、
前記排ガスを処理することにより前記排ガスの熱を吸収した前記液体を、一または複数の熱利用機器に提供する回収部と、
を備える排ガス処理装置。
[項目2]
前記反応塔は、前記排ガスを導入するガス導入開口を有し、
前記回収部は、低温回収部および高温回収部を有し、
前記高温回収部が提供する前記液体の温度は、前記低温回収部が提供する前記液体の温度よりも高く、
前記高温回収部は、前記低温回収部よりも前記ガス導入開口に近い位置に配置される、
項目1に記載の排ガス処理装置。
[項目3]
前記反応塔の内部に設けられ、前記反応塔の内部において前記液体を噴出する複数の噴出部をさらに備え、
前記低温回収部は、前記排ガスの導入側から排出側への方向において、最も前記排ガスの導入側に配置される前記噴出部と、最も前記排ガスの排出側に配置される前記噴出部との中央よりも前記排ガスの導入側に配置される、
項目2に記載の排ガス処理装置。
[項目4]
前記反応塔の内部に設けられ、前記反応塔の内部において前記液体を噴出する複数の噴出部をさらに備え、
前記低温回収部は、前記排ガスの導入側から排出側への方向において、前記ガス導入開口と、最も前記導入側に配置される前記噴出部との間に配置される、項目2に記載の排ガス処理装置。
[項目5]
前記反応塔の内部に設けられ、前記反応塔の内部において前記液体を噴出する複数の噴出部をさらに備え、
前記低温回収部は、前記排ガスの導入側から排出側への方向において、最も前記導入側に配置される前記噴出部よりも前記排出側に配置される、項目2に記載の排ガス処理装置。
[項目6]
前記反応塔の内部に設けられ、前記液体が供給され、前記排ガスの前記導入側から前記排出側に延伸し、前記複数の噴出部が接続された幹管をさらに備え、
前記幹管は、前記排ガスの前記導入側に設けられた第1の幹管および前記第1の幹管よりも前記排ガスの前記排出側に設けられた第2の幹管を含み、
前記幹管が延伸する方向に直交する方向において、前記第1の幹管の断面積は前記第2の幹管の断面積よりも大きく、
前記第1の幹管に接続された前記噴出部における、前記液体を噴出する開口の面積は、前記第2の幹管に接続された前記噴出部における、前記液体を噴出する開口の面積よりも大きい、
項目3から5のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
[項目7]
液体混合部をさらに備え、
前記低温回収部は、前記液体を一の前記熱利用機器に提供し、
前記高温回収部は、前記液体を他の前記熱利用機器に提供し、
前記液体混合部は、前記一の前記熱利用機器に提供された前記液体と、前記他の前記熱利用機器に提供された前記液体とを混合し、前記排ガス処理装置の外部に排出する、
項目2から6のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
[項目8]
前記排ガスを排出する動力装置と、
前記液体混合部において混合された液体の温度を制御する温度制御部と、
をさらに備え、
前記温度制御部は、前記排ガスの温度、前記排ガスの流量、前記液体混合部から排出された前記液体の温度、または、前記動力装置の稼働状況の少なくともいずれかに基づいて、前記一の前記熱利用機器の温度および前記他の前記熱利用機器の温度の少なくとも一方を制御する、
項目7に記載の排ガス処理装置。
[項目9]
前記排ガスを排出する動力装置と、
前記液体混合部において混合された液体の温度を制御する温度制御部と、
をさらに備え、
前記温度制御部は、前記排ガスの温度、前記排ガスの流量、前記液体混合部から排出された前記液体の温度、または、前記動力装置の稼働状況の少なくともいずれかに基づいて、前記一の前記熱利用機器に提供された前記液体の量と前記他の前記熱利用機器に提供された前記液体の量とを調整することにより、混合された前記液体の温度を制御する、
項目7に記載の排ガス処理装置。
[項目10]
前記排ガスを排出する動力装置と、
前記液体の流量を制御する流量制御部と、
をさらに備え、
前記流量制御部は、前記動力装置に投入される燃料に含まれる硫黄成分量および前記動力装置の稼働状況の少なくとも一方に基づいて、前記液体の流量を制御する、
項目1から9のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
[項目11]
前記反応塔に、前記排ガスに含まれる硫黄成分を中和可能な化学当量以上の前記液体が供給される、項目1から10のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
[項目12]
前記反応塔の外部に設けられ、前記排ガスを処理する前記液体を噴霧する噴霧部をさらに備え、
前記噴霧部は、前記反応塔に導入される前記排ガスに、前記液体を噴霧する、
項目1から11のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
[項目13]
前記反応塔の側壁の少なくとも一部を覆う断熱材をさらに備え、
前記断熱材の熱伝導率は、前記側壁の熱伝導率よりも低く、
前記断熱材は、前記反応塔における前記排ガスの導入側から排出側への方向において、前記側壁の前記導入側の端部から前記排出側の端部までの中央よりも前記導入側に設けられる、
項目1から12のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
[項目14]
前記排ガスにより流体を加熱するエコノマイザーと、
前記エコノマイザーにより加熱された前記流体が提供される熱利用機器と、
をさらに備える、項目1から13のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
[項目15]
項目1から14のいずれか一項に記載の前記排ガス処理装置と、前記熱利用機器とを備える排ガス処理システム。
【符号の説明】
【0119】
10・・・反応塔、11・・・ガス導入開口、12・・・幹管、13・・・枝管、14・・・噴出部、15・・・側壁、16・・・底面、17・・・ガス排出口、18・・・ガス処理部、19・・・液体排出口、20・・・回収部、22・・・導入部、24・・・底面、26・・・側面、30・・・排ガス、32・・・排ガス導入管、34・・・温度計、36・・・流量計、38・・・噴霧部、40・・・液体、41・・・液体、42・・・温度計、45・・・排液、46・・・高温排液、47・・・低温排液、48・・・流体、49・・・流体、50・・・動力装置、52・・・稼働状況測定部、54・・・排液、60・・・ポンプ、70・・・流量制御部、72・・・バルブ、80・・・液体混合部、90・・・温度制御部、100・・・排ガス処理装置、110・・・開口、120・・・断熱材、130・・・エコノマイザー、200・・・熱利用機器、210・・・熱利用機器、300・・・排ガス処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13