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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20230912BHJP
   B29C 33/72 20060101ALI20230912BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20230912BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/72
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019143804
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021024193
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 昭彦
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-271710(JP,A)
【文献】特開2016-034707(JP,A)
【文献】特開平04-226715(JP,A)
【文献】特開2014-108540(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104368564(CN,A)
【文献】特開2008-062633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 33/72
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの外面を形づけるための成形面を有するモールドが取り付けられた加硫機を用いて、生タイヤからタイヤを形成するタイヤの製造方法であって、
前記成形面にレーザーを照射して前記成形面を洗浄する、洗浄工程と、
洗浄後の成形面に離型剤を塗布する、塗布工程と、
前記成形面に塗布された離型剤を乾燥する、乾燥工程と、
乾燥後の成形面を有するモールドに前記生タイヤを投入し、前記モールド内で前記生タイヤを加圧及び加熱する、加硫工程と
を含み、
前記洗浄工程が、前記加硫機から取り外されたモールドに対して行われ、
前記乾燥工程の後に、前記モールドが前記加硫機に取り付けられ、
前記離型剤が、シリコーンオイル、カーボンブラック及び希釈剤を含み、
前記離型剤が、前記希釈剤の主成分として、100℃未満の沸点を有する有機溶剤を含み、
前記離型剤の前記成形面への塗り斑が目視で確認され、前記離型剤の塗布が不十分な部分が確認された場合、前記離型剤の塗布が不十分な部分に前記離型剤が改めて塗布される、タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記塗布工程において、前記離型剤を前記成形面に向けて噴霧することで、前記離型剤が前記成形面に塗布される、請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程は常温で行われる、請求項1又は2に記載のタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造は、未加硫状態のタイヤ(以下、生タイヤとも称される。)をモールド内で加圧及び加熱する、加硫工程を含む。加硫工程では、生タイヤに含まれるゴムが加硫反応を起こす。加硫反応は、副生成物の生成を伴う。副生成物は、モールドの成形面に付着する。タイヤの製造では、一つのモールドにおいて多数のタイヤが製造される。モールドの成形面には、副生成物が堆積する。堆積の程度によっては、タイヤの外観が損なわれることが懸念される。このため、モールドは定期的に洗浄される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-119819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モールドの洗浄方法として、レーザーを成形面に照射して成形面に付着した堆積物を除去するレーザークリーニングが知られている。このレーザークリーニングでは、研磨剤を成形面に吹き付けて成形面に付着した堆積物を除去するブラストクリーニングに比べて洗浄能力が高い。
【0005】
レーザークリーニングで洗浄したモールドでは、ブラストクリーニングで洗浄したモールドに比べて、生タイヤの加硫成形物であるタイヤの、モールドに対する密着力が高い。このため、モールドからタイヤを取り出す際に、一部が成形面から離れず、タイヤに欠け等の傷が生じることが懸念される。
【0006】
モールドからタイヤを取り出しやすくするために、離型剤が成形面に塗布される。脱型時の傷の発生を防止し、高品質なタイヤを安定に製造するには、塗り斑が生じないように、離型剤を成形面に塗布する必要がある。しかし、通常離型剤は無色であることから、この塗り斑の存在を確認するのは容易でない。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、高品質なタイヤを安定に製造できる、タイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るタイヤの製造方法は、タイヤの外面を形づけるための成形面を有するモールドが取り付けられた加硫機を用いて、生タイヤからタイヤを形成するタイヤの製造方法である。この製造方法は、
(1)前記成形面にレーザーを照射して前記成形面を洗浄する、洗浄工程、
(2)洗浄後の成形面に離型剤を塗布する、塗布工程、
(3)前記成形面に塗布された離型剤を乾燥する、乾燥工程、及び
(4)乾燥後の成形面を有するモールドに前記生タイヤを投入し、前記モールド内で前記生タイヤを加圧及び加熱する、加硫工程
を含む。前記離型剤は、シリコーンオイル、カーボンブラック及び希釈剤を含む。
【0009】
好ましくは、このタイヤの製造方法では、前記洗浄工程は、前記加硫機から取り外されたモールドに対して行われる。前記乾燥工程の後に、前記モールドは前記加硫機に取り付けられる。
【0010】
好ましくは、このタイヤの製造方法では、前記塗布工程において、前記離型剤を前記成形面に向けて噴霧することで、前記離型剤が前記成形面に塗布される。
【0011】
好ましくは、このタイヤの製造方法では、前記離型剤は、前記希釈剤として、常温で揮発する有機溶剤を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタイヤの製造方法によれば、成形面全体に斑なく離型剤が塗布されたモールドを用いてタイヤが形成される。このタイヤでの製造方法では、レーザークリーニングを採用しているにも関わらず、タイヤの成形面への密着が抑えられる。この製造方法では、脱型時の傷の発生が防止される。このタイヤの製造方法は、高品質なタイヤを安定に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法で用いられる製造装置の一例を示す断面図である。
図2図2は、洗浄工程を説明する概略図である。
図3図3は、塗布工程を説明する概略図である。
図4図4は、モールドが開かれた状態が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法で用いられる製造装置2の一例を示す。この製造装置2は、加硫機4と、モールド6と、ブラダー8とを備える。この製造装置2では、モールド6とブラダー8との間に形成されたキャビティ10において、未加硫状態のタイヤ12(以下、生タイヤ12rとも称される。)が加圧及び加熱され、タイヤ12が形成される。タイヤ12は、生タイヤ12rの加硫成形物である。
【0016】
モールド6は、タイヤ12の外面を形づけるための成形面14を有する。モールド6は、加硫機4に取り付けられる。図示されないが、この製造装置2では、加硫機4に設けられた、モールド6の固定手段に、モールド6は取り付けられる。
【0017】
モールド6は、トレッドリング16と、一対のサイドプレート18と、一対のビードリング20とを備える。図1に示されたモールド6は、トレッドリング16、一対のサイドプレート18及び一対のビードリング20が組み合わされた状態、すなわち閉じられた状態にある。このモールド6は、割モールドである。ツーピースモールドがモールド6として用いられてもよい。
【0018】
トレッドリング16は、モールド6の一部をなす。トレッドリング16は、その内面に、トレッド成形面22を備える。トレッド成形面22は、タイヤ12のトレッド面を形づける。トレッド成形面22は、モールド6の成形面14の一部をなす。このモールド6のトレッドリング16は、多数のセグメント24により構成される。これらセグメント24は、リング状に配置される。
【0019】
それぞれのサイドプレート18は、トレッドリング16の径方向内側に位置する。サイドプレート18は、モールド6の一部をなす。サイドプレート18は、トレッドリング16の端に連なる。サイドプレート18は、その内面に、サイドウォール成形面26を備える。サイドウォール成形面26は、タイヤ12のサイド面を形づける。サイドウォール成形面26は、モールド6の成形面14の一部をなす。
【0020】
それぞれのビードリング20は、サイドプレート18の径方向内側に位置する。ビードリング20は、モールド6の一部をなす。ビードリング20は、サイドプレート18の端に連なる。ビードリング20は、その内面に、ビード成形面28を備える。ビード成形面28は、タイヤ12のビードの部分、具体的には、リムに嵌め合わされる部分を形づける。ビード成形面28は、モールド6の成形面14の一部をなす。
【0021】
このモールド6では、多数のセグメント24、一対のサイドプレート18及び一対のビードリング20が組み合わされることにより、タイヤ12の外面を形づけるモールド6の成形面14(キャビティ面とも称される。)が構成される。このモールド6の成形面14は、トレッド成形面22、一対のサイドウォール成形面26及び一対のビード成形面28から構成される。
【0022】
ブラダー8は、袋状の架橋ゴムからなる。ブラダー8の内部には、加熱媒体(例えば、スチーム)又は加圧媒体(例えば、窒素ガス)が充填される。これにより、ブラダー8は膨張し、生タイヤ12rの内面に当接する。この加硫機4では、膨張したブラダー8の外面が、タイヤ12の内面を形づける。図示されないが、ブラダー8に代えて剛性中子が用いられてもよい。
【0023】
この製造装置2では、ブラダー8はモールド6の内側に位置する。図示されないが、加硫機4に設けられたブラダー8の固定手段に、ブラダー8の端部が固定されることにより、ブラダー8は加硫機4に取り付けられる。
【0024】
この製造方法では、生タイヤ12rからタイヤ12を形成できるのであれば、加硫機4に特に制限はない。タイヤ12の製造で使用される一般的な加硫機が、このタイヤ12の製造方法にも用いられる。詳述しないが、この加硫機4は、前述のモールド6の固定手段及びブラダー8の固定手段以外に、例えば、モールド6を開閉するための開閉手段、キャビティ10に収容された生タイヤ12rを加圧するための加圧手段、この生タイヤ12rを加熱するための加熱手段、そして、これら手段の動作を制御する制御手段を備える。なお、このタイヤ12の製造方法では、温度、圧力、時間等の加硫条件に特に制限はなく、一般的な加硫条件が採用される。
【0025】
この製造方法は、タイヤ12の外面を形づけるための成形面14を有するモールド6が取り付けられた加硫機4、すなわち、製造装置2を用いて、生タイヤ12rからタイヤ12を形成する。次に、タイヤ12を製造したことによりモールド6の成形面14が汚れた状態にある時点を、開始の時点として、このタイヤ12の製造方法について説明する。
【0026】
この製造方法は、モールド6を洗浄する洗浄工程、離型剤を塗布する塗布工程、離型剤を乾燥する乾燥工程及び生タイヤ12rを加圧及び加熱する加硫工程を含む。
【0027】
洗浄工程では、洗浄ユニット30を用いて、先のタイヤ12の製造で汚れた成形面14が洗浄される。この製造方法では、成形面14の洗浄にレーザークリーニングが採用される。例えば、図2に示されるように、セグメント24がテーブル32にセットされる。セグメント24のトレッド成形面22に対向するように、洗浄ユニット30のレーザーヘッド34がセットされる。レーザーヘッド34からトレッド成形面22に向けてレーザーが照射される。この洗浄工程では、図示されない移動手段により、レーザーヘッド34が成形面14上を動かされる。これにより、成形面14全体が洗浄される。この洗浄工程では、成形面14にレーザーを照射して、この成形面14が洗浄される。
【0028】
この製造方法では、モールド6の成形面14にレーザーを照射してこの成形面14を洗浄できるのであれば、この洗浄ユニット30に特に制限はない。この製造方法では、モールド6の洗浄用として市販されている、一般的なレーザークリーニング装置が、洗浄ユニット30として用いられる。
【0029】
この製造方法では、洗浄工程の後に、すなわち、洗浄工程を経たモールドに塗布工程が行われる。後述するが、離型剤は液体である。この塗布工程では、塗布ユニット36を用いて、洗浄後の成形面14に離型剤が塗布される。詳述しないが、この塗布ユニット36は、市販のスプレーカートである。この塗布ユニット36は、離型剤を貯留するタンク(図示されず)と、このタンク内の離型剤を圧送する圧送手段(図示されず)と、離型剤を噴出するノズル38とを備える。
【0030】
この塗布工程では、図3に示されるように、セグメント24がテーブル40にセットされる。セグメント24のトレッド成形面22に対向するように、塗布ユニット36のノズル38がセットされる。ノズル38からトレッド成形面22に向けて離型剤が噴出される。この塗布工程では、図示されない移動手段により、ノズル38が成形面14上を動かされる。これにより、成形面14全体に離型剤が塗布される。この塗布工程では、洗浄後のモールド6の成形面14に離型剤が塗布される。
【0031】
この製造方法では、モールド6の成形面14に離型剤を塗布できるのであれば、塗布ユニット36に特に制限はない。この製造方法では、前述のスプレーカート以外に、液体の塗布が可能な塗布装置が塗布ユニット36として用いられる。この製造方法では、前述した塗布ユニット36による塗布以外に、例えば、作業者がスプレーガン等を用いて成形面14に離型剤を塗布してもよい。
【0032】
この製造方法では、塗布工程の後に、すなわち、塗布工程を経たモールドに乾燥工程が行われる。乾燥工程では、モールド6を静置することで、成形面14に塗布された離型剤が乾燥される。これにより、成形面14に離型剤皮膜が形成される。この製造方法では、乾燥工程は常温で行われてもよく、所定の温度に調整された環境下で行われてもよい。
【0033】
この製造方法では、前述の洗浄工程は、加硫機4から取り外されたモールド6に対して行われる。このため、乾燥工程を終えたモールド6は、加硫機4に取り付けられる。この製造方法は、乾燥工程の後に、モールド6を加硫機4に取り付ける取り付け工程を含む。なお、この製造方法では、タイヤ12の製造の予定がなければ、製造予定が入るまで、乾燥工程を終えたモールド6は保管される。
【0034】
加硫工程では、生タイヤ12rが乾燥工程を経たモールド6に投入される。詳述しないが、この生タイヤ12rは、成形機(図示されず)において、トレッド、サイドウォール、ビード等のタイヤ12を構成する要素を組み合わせて準備される。
【0035】
加硫工程では、生タイヤ12rは、モールド6内で加圧及び加熱される。この加硫工程では、乾燥工程を経たモールド6が用いられる。この加硫工程では、乾燥後の成形面14を有するモールド6に生タイヤ12rを投入し、このモールド6内で生タイヤ12rが加圧及び加熱される。予め設定された時間が経過すると、図示されない開閉手段によって、図4に示されるように、セグメント24が径方向外向きに移動させられる。上側のサイドプレート18及びビードリング20は上方に移動させられる。これによりモールド6が開かれ、モールド6からタイヤ12が取り出される。
【0036】
この製造方法では、開かれたモールド6には次の生タイヤ12rが投入される。この製造方法では、加硫工程が繰り返し行われる。製造本数が、予め設定された本数に到達した時点で、加硫工程は終了する。加硫工程の終了後、モールド6は加硫機4から取り外される。この製造方法は、加硫工程の後に、モールド6を加硫機4から取り外す取り外し工程を含む。そして、加硫機4から取り外されたモールド6に対して、前述の洗浄工程が行われる。
【0037】
この製造方法では、離型剤は液体である。離型剤は、シリコーンオイル、カーボンブラック及び希釈剤を含む。この離型剤では、シリコーンオイル及びカーボンブラックは希釈剤に分散している。
【0038】
シリコーンオイルは、タイヤ12のモールド6への密着を抑制する機能を有する成分である。詳述しないが、この製造方法では、タイヤ12のモールド6への密着を抑制できる成分として一般的に使用されるシリコーンオイルが、この離型剤のためのシリコーンオイルとして用いられる。この製造方法では、シリコーンオイルの含有量は、離型剤全質量の1質量%以上5質量%以下である。
【0039】
カーボンブラックは、ゴム組成物に補強剤として配合される薬品である。このカーボンブラックとしては、特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等を、単独または2種以上を組合せて使用することができる。この製造方法では、カーボンブラックの含有量は、離型剤全質量の0.1質量%以上1質量%以下である。
【0040】
希釈剤は、シリコーンオイル及びカーボンブラックを分散させる媒体である。この希釈剤としては、有機溶剤及び水が例示される。有機溶剤としては、イソヘキサン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ナフサ、エチルアルコール、n-プロピルアルコール及びイソプロピルアルコールが例示される。
【0041】
この製造方法では、前述したように、塗布工程において成形面14に塗布される離型剤は、カーボンブラックを含む。成形面14に離型剤を塗布し乾燥することで形成される離型剤皮膜も、カーボンブラックを含む。前述の加硫工程では、生タイヤ12rの外面がモールド6の成形面14に当接する。タイヤ12の外面をなすトレッド及びサイドウォールは、カーボンブラックを補強剤として含む。したがって、離型剤に含まれるカーボンブラックが外観品質に与える影響は小さい。
【0042】
カーボンブラックは黒色を呈する。この製造方法では、成形面14に塗布した直後の離型剤も、この離型剤を乾燥することで形成される離型剤皮膜も、黒色を呈する。この製造方法は、離型剤の塗り斑を目視で確認できる。この製造方法では、離型剤の塗り斑の把握が容易である。
【0043】
この製造方法では、成形面14において、離型剤の塗布が不十分な部分の特定が可能である。この製造方法では、離型剤の塗布が不十分な部分が確認された場合、この離型剤の塗布が不十分な部分に離型剤を改めて塗布すればよい。この製造方法では、成形面14全体に斑なく離型剤が塗布されたモールド6が、確実にしかも効率よく準備される。
【0044】
この製造方法は、モールド6を加硫機4に取り付ける前に、離型剤の塗り斑を確認できる。言い換えれば、この製造方法では、成形面14全体に斑なく離型剤が塗布されたモールド6が加硫機4に取り付けられる。この製造方法では、成形面14全体に斑なく離型剤が塗布されているので、レーザークリーニングを採用しているにも関わらず、タイヤ12の成形面14への密着が抑えられる。この製造方法では、脱型時の傷の発生が防止される。この製造方法では、高品質なタイヤ12が安定に製造される。
【0045】
この製造方法では、成形面14全体に斑なく離型剤を塗布できるので、タイヤ12の成形面14への密着を抑える効果が持続する。この製造方法では、従来の製造方法において、繰り返し行われる加硫工程の合間に行われていた離型剤の塗布はほぼ不要である。この製造方法は、生産性の向上にも貢献できる。
【0046】
以上、モールド6の一部をなすセグメント24を例に挙げて、この製造方法による作用及び効果が説明されたが、モールド6の他の一部をなすサイドプレート18及びビードリング20においても、セグメント24と同様の効果が奏される。
【0047】
前述したように、この製造方法では、ノズル38から成形面14に向けて離型剤を噴出することで、この成形面14に離型剤が塗布される。離型剤の塗り斑を効果的に抑えることができる観点から、塗布工程において、ノズル38から成形面14にむけて離型剤を霧状に噴出する、すなわち、噴霧することで、離型剤が成形面14に塗布されるのが好ましい。
【0048】
この製造方法では、シリコーンオイル及びカーボンブラックが希釈剤に分散した液体が離型剤として用いられる。塗布工程にて成形面14に塗布した離型剤は、乾燥工程において乾燥させられる。
【0049】
この製造方法では、離型剤の乾燥を早め、液だれを防止できるとの観点から、離型剤は、希釈剤の主成分として、有機溶剤を含むのが好ましく、常温で揮発する有機溶剤を含むのがより好ましい。取り扱いが容易であるとの観点から、この離型剤は、希釈剤の主成分として、水を含んでもよい。なお、希釈剤の主成分が有機溶剤である場合、この希釈剤が水を含んでもよい。希釈剤の主成分が水である場合、この希釈剤が有機溶媒を含んでもよい。「主成分」とは、含有量が希釈剤全質量の50%を超える成分である。常温で揮発する有機溶剤とは、低沸点の有機溶剤を意味する。低沸点の有機溶剤とは、100℃未満の沸点を有する有機溶媒である。
【0050】
以上説明したように、本発明のタイヤ12の製造方法によれば、成形面14全体に斑なく離型剤が塗布されたモールド6を用いてタイヤ12が形成される。このタイヤ12の製造方法では、レーザークリーニングを採用しているにも関わらず、タイヤ12の成形面14への密着が抑えられる。この製造方法では、脱型時の傷の発生が防止される。このタイヤ12の製造方法は、高品質なタイヤ12を安定に製造できる。
【0051】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明された、高品質なタイヤを安定に製造できる技術は、種々のタイヤの製造にも適用できる。
【符号の説明】
【0053】
4・・・加硫機
6・・・モールド
12・・・タイヤ
12r・・・生タイヤ
14・・・成形面
34・・・レーザーヘッド
38・・・ノズル
図1
図2
図3
図4