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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】シート供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/14 20060101AFI20230912BHJP
   B65H 1/24 20060101ALI20230912BHJP
   F16D 11/04 20060101ALI20230912BHJP
   F16D 28/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B65H1/14 322B
B65H1/24 C
F16D11/04 C
F16D28/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019144780
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021024710
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 寛明
(72)【発明者】
【氏名】池田 将士
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-000653(JP,A)
【文献】特開2003-020129(JP,A)
【文献】特開2008-169027(JP,A)
【文献】特開2001-213530(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0151314(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101962127(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/14
B65H 1/24
F16D 11/04
F16D 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に引き出し可能に設けられ、昇降される積載部を有したトレイと、
前記装置本体に取り付けられ、前記トレイを経由して供給されるシートの一部を積載するための延長部と、
前記積載部を昇降する昇降部及び該昇降部を介して前記積載部を上昇し保持する駆動部を有した上昇機構と、
前記トレイが前記装置本体に収容された状態で解除操作を受け付けた場合及び前記トレイが前記装置本体から引き出されることにより解除操作を受け付けた場合に前記昇降部と前記駆動部とを切り離す切離し部と、
を備えたシート供給装置。
【請求項2】
前記切離し部は、
前記駆動部で回転される駆動側カップリングと、
該駆動側カップリングの回転力を前記昇降部に伝達するための被駆動側カップリングと、
前記駆動側カップリング及び前記被駆動側カップリングが結合する結合方向に力を付与する付与部と、
前記駆動側カップリング又は前記被駆動側カップリングを解除方向へ移動して前記駆動側カップリング及び前記被駆動側カップリングの結合を解除する解除部と、
を有する請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項3】
前記解除部は、前記駆動側カップリング又は前記被駆動側カップリングに接して前記解除方向への移動を行うカム面を有したカムを備え、
前記カム面には、前記解除方向への移動を行う第一傾斜領域と前記結合方向への移動を許容する第二傾斜領域とが当該カムの周方向に順に形成されている請求項2に記載のシート供給装置。
【請求項4】
装置本体に引き出し可能に設けられ、昇降される積載部を有したトレイと、
前記装置本体に取り付けられ、前記トレイを経由して供給されるシートの一部を積載するための延長部と、
前記積載部を昇降する昇降部及び該昇降部を介して前記積載部を上昇し保持する駆動部を有した上昇機構と、
前記トレイが前記装置本体に収容された状態で解除操作を受け付けた場合に前記昇降部と前記駆動部とを切り離し、
前記駆動部で回転される駆動側カップリングと、
該駆動側カップリングの回転力を前記昇降部に伝達するための被駆動側カップリングと、
前記駆動側カップリング及び前記被駆動側カップリングが結合する結合方向に力を付与する付与部と、
前記駆動側カップリング又は前記被駆動側カップリングを解除方向へ移動して前記駆動側カップリング及び前記被駆動側カップリングの結合を解除し、前記駆動側カップリング又は前記被駆動側カップリングに接して前記解除方向への移動を行うカム面を有したカムを有し、前記カム面には、前記解除方向への移動を行う第一傾斜領域と前記結合方向への移動を許容する第二傾斜領域とが当該カムの周方向に順に形成されている解除部と、を有する切離し部と、
を備えたシート供給装置。
【請求項5】
前記第一傾斜領域の傾斜角度は、前記第二傾斜領域の傾斜角度より緩やかである請求項3又は請求項4のいずれか一項に記載のシート供給装置。
【請求項6】
前記延長部を含んで構成されたシート収容部のカバーを備え、
前記解除操作の受け付けは、前記カバーの開操作に基づいて行われる請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシート供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、給紙装置が示されている。
【0003】
この給紙装置には、給紙トレイのトレイ底板を延長して長尺紙を搭載できるようにする延長底板を有する長尺オプションが着脱自在に設けられている。取手本体は、給紙トレイをスライドさせるときにユーザに掴まれて操作される。第2ロック構造部が、取手本体のスライド操作に連動して給紙トレイをスライドできない第2ロック位置から給紙トレイをスライドできる第2ロック解除位置に移動する。第1ロック構造部が、長尺オプションを取り付けたときに給紙トレイをスライドできない第1ロック位置に保持でき、第2ロック構造部を第2ロック位置から第2ロック解除位置に移動できないようにロックする。また、第1ロック構造部は、長尺オプションを取り外したときに給紙トレイをスライドできる第1ロック解除位置に保持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-000653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、装置本体にトレイを収容した状態で積載部を下降することができない場合と比較して、積載部を上昇するモータを逆転制御することなく、積載部の下降動作をトレイ引き出し時と合わせることが可能となるシート供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様1は、装置本体に引き出し可能に設けられ、昇降される積載部を有したトレイと、前記装置本体に取り付けられ、前記トレイを経由して供給されるシートの一部を積載するための延長部と、前記積載部を昇降する昇降部及び該昇降部を介して前記積載部を上昇し保持する駆動部を有した上昇機構と、前記トレイが前記装置本体に収容された状態で解除操作を受け付けた場合に前記昇降部と前記駆動部とを切り離す切離し部と、を備えたシート供給装置。
【0007】
態様2は、前記切離し部は、前記駆動部で回転される駆動側カップリングと、該駆動側カップリングの回転力を前記昇降部に伝達するための被駆動側カップリングと、前記駆動側カップリング及び前記被駆動側カップリングが結合する結合方向に力を付与する付与部と、前記駆動側カップリング又は前記被駆動側カップリングを解除方向へ移動して前記駆動側カップリング及び前記被駆動側カップリングの結合を解除する解除部と、を有する態様1に記載のシート供給装置。
【0008】
態様3は、前記解除部は、前記駆動側カップリング又は前記被駆動側カップリングに接して前記解除方向への移動を行うカム面を有したカムを備え、前記カム面には、前記解除方向への移動を行う第一傾斜領域と前記結合方向への移動を許容する第二傾斜領域とが当該カムの周方向に順に形成されている態様2に記載のシート供給装置。
【0009】
態様4は、前記第一傾斜領域の傾斜角度は、前記第二傾斜領域の傾斜角度より緩やかである態様3に記載のシート供給装置。
【0010】
態様5は、前記切離し部は、前記駆動部が前記昇降部に接続された接続状態を形成するクラッチを有し、該クラッチは、前記接続状態を解除する際に作動する解除部を有する態様1に記載のシート供給装置。
【0011】
態様6は、前記切離し部は、前記解除操作を受け付けた場合に前記解除部を作動するアクチュエータをさらに有する態様5に記載のシート供給装置。
【0012】
態様7は、前記延長部を含んで構成されたシート収容部のカバーを備え、前記解除操作の受け付けは、前記カバーの開操作に基づいて行われる態様1から態様6のいずれかに記載のシート供給装置。
【発明の効果】
【0013】
態様1は、装置本体にトレイを収容した状態で積載部を下降することができない場合と比較して、積載部を上昇するモータを逆転制御することなく、積載部の下降動作をトレイ引き出し時と合わせることが可能となる。
【0014】
態様2は、切離し部がクラッチで構成された場合と比較して、駆動力の伝達ロスの抑制が可能となる。
【0015】
態様3は、モータでラックを駆動してカップリングの結合解除を行う場合と比較して、同一方向にカムを回転してカップリングの結合解除を行うことが可能となる。
【0016】
態様4は、第一傾斜領域の傾斜角度が第二傾斜領域の傾斜角度より急な場合と比較して、カップリングの結合を解除する際の負担の抑制が可能となる。
【0017】
態様5は、切離し部がカップリングで構成された場合と比較して、接続時の衝撃の軽減が可能となる。
【0018】
態様6は、解除レバーの操作力を解除部に伝達して作動する場合と比較して、構成の簡素化が可能となる。
【0019】
態様7は、スイッチ操作に基づいて解除操作を受け付ける場合と比較して、操作性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一実施形態に係るシート供給装置を備えた画像形成装置を示す斜視図である。
図2】第一実施形態の上段トレイの内部を示す斜視図である。
図3図1のA矢視図である。
図4】第一実施形態のカップリングの結合された状態を示す側方から見た図である。
図5】第一実施形態のカップリングの結合が解除された状態を示す斜視図である。
図6】第一実施形態のカップリングの結合が解除された状態を示す側方から見た図である。
図7】第一実施形態のカップリングの解除部を示す拡大図である。
図8】第二実施形態のクラッチを示す一部断面図である。
図9】第二実施形態のクラッチが接続された状態を示す一部断面図である。
図10】第二実施形態のクラッチの接続が解除された状態を示す一部断面図である。
図11】第二実施形態のクラッチの接続状態を制御するアクチュエータを示す側面図である。
図12】第二実施形態のアクチュエータが非作動の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一実施形態)
以下、第一実施形態を図面に従って説明する。以下の説明では、図面に矢印Xで示す方向を装置幅方向、矢印Yで示す方向を装置高さ方向とする。また、装置幅方向及び装置高さ方向のそれぞれに直交する方向(矢印Z方向)を装置奥行き方向とする。
【0022】
図1は、本実施形態に係るシート供給装置10が設けられた画像形成装置12を示す斜視図である。画像形成装置12は、シートPに画像を形成する装置であり、画像形成装置12の装置本体14は、シートPに画像を形成する図示しない画像形成手段と、画像形成手段にシートPを搬送する図示しない搬送手段とを備えている。
【0023】
シート供給装置10の装置本体14には、シートPを収容するための上段トレイ16と下段トレイ18とが装置本体14より引き出し可能に設けられている。また、装置本体14は、オプションで幅方向一方側HIの一面20に延長部22を取り付け可能に構成されており、図1には、延長部22を取り付けた状態が示されている。
【0024】
この延長部22を装置本体14に取り付けることによってシート供給装置10が構成されており、シート供給装置10により長尺のシートPの供給を可能とするとともに、当該長尺のシートPへの画像形成を可能とする。
【0025】
ここで、シートPは、画像形成が行われる媒体やフィルムと言い換えることができる。このシートPとしては、紙製の用紙やPET樹脂からなるOHPシートが挙げられる。画像形成が行われる用紙は、各トレイ16、18より供給される通常用紙と延長部22を用いて供給される長尺のシートPとしての長尺用紙とが挙げられる。
【0026】
通常用紙は、延長部22を取り付けることなく上段トレイに収容される長さの用紙をいい、一例として、長さ寸法が488mm以下の用紙をいう。また、長尺用紙は、延長部22の取り付けを必要とする長さ用紙をいい、一例として、長さ寸法が488mmを超え、かつ1500mm以下の長さの用紙と定義することができる。
【0027】
延長部22は、一例として上段トレイ16に配置された嵩上げ部材24と共に長尺のシートPを収容する為のシート収容部26を構成し、延長部22は、上段トレイ16を経由して供給されるシートPの一部が積載される。
【0028】
シート収容部26は、装置本体14に支持されたカバー30及び延長部22に支持された延長カバー32によって開閉可能とされており、カバー30には、装置本体14より延びるダンパ34が接続され開閉操作が補助される。
【0029】
カバー30の裏面からは、作動バー36が延びており、装置本体14には、作動バー36が挿入される挿入部38が設けられている。挿入部38には、カバー30の開閉状態を検出する図示しない開閉センサが設けられており、開閉センサは、一例として作動バー36が挿入部38に挿入された際にオン作動するスイッチが挙げられる。
【0030】
開閉センサは、作動バー36が挿入部38に挿入された状態をカバー閉状態として検出し、作動バー36が挿入部38から離脱した状態をカバー開状態として検出し、その信号を制御部40(図3参照)へ出力する。
【0031】
制御部40は、開閉センサからの信号に基づいて、カバー30が開放されたカバー開状態と、カバー30が閉鎖されたカバー閉状態とを把握する。制御部40は、カバー30が開操作されカバー開状態となったことを検出した際に、解除操作を受け付けたと認識し、後述する昇降部72と駆動部74とを切り離す。このとき、後述する駆動部74が作動中の場合、駆動部74の作動を停止する。
なお、延長カバー32が開操作された際に解除操作を受け付けたと認識してもよい。
【0032】
なお、本実施形態では、カバー30の開操作に基づいて解除操作の受け付けを行う場合を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。例えば、装置本体14に設けられた操作パネルの解除操作に基づいて解除操作を受け付けてもよい。
【0033】
図2は、上段トレイ16を示す図であり、上段トレイ16の正面を覆う被覆部16Aが外された状態が示されている。上段トレイ16は、底板42と、底板42の装置奥行き方向Zの正面側より上方へ延びる前板44と、底板42の装置奥行き方向Zの背面側より上方へ延びる後板46とを有している。また、上段トレイ16は、底板42の装置幅方向Xの幅方向一方側HIより上方へ延びる一側板48と、底板42の装置幅方向Xの幅方向他方側HTより上方へ延びる他側板50とを有している。一側板48及び他側板50は、前板44及び後板46の高さ寸法より低く設定されており、他側板50の上部には、供給するシートPが通過する通過空間52が確保されている。
【0034】
一側板48及び他側板50には、装置奥行き方向Zに延びる被支持レール54が設けられており(一方のみ図示)、被支持レール54は、装置本体14に設けられた対応する支持レール56に沿って移動自在に支持されている。これにより、上段トレイ16を装置本体14に引き出し可能に収容し、延長部22非装着時には、上段トレイ16を引き出し可能とする。一方、延長部22装着時は、上段トレイ16の引き出しが不能となる。
【0035】
上段トレイ16の内側には、シートPが積載される積載部60が昇降可能に設けられている。積載部60は、積載板で構成されており、積載板は、一例として金属板で構成されている。
【0036】
積載部60を構成する積載板の上面は、シートPが積載される積載面を構成し、積載部は、積載面と言い換えることができる。積載部60は、通常用紙又は嵩上げ部材24を積載可能である。
【0037】
積載部60の装置奥行き方向Z両側からは、第一ガイド突起62及び第二ガイド突起64が延び出している(一方のみ図示)。各第一ガイド突起62、64は、前板44及び後板46に形成された第一長穴66を通っており(前板44側のみ図示:以下同じ)、各第一ガイド突起62は、第一長穴66に沿って移動できる。各第二ガイド突起64は、前板44及び後板46に形成された第二長穴68を通っており、各第二ガイド突起64は、第二長穴68に沿って移動できる。これにより、積載部60が昇降可能とされている。
【0038】
シート供給装置10は、図3に示すように、積載部60を上昇する上昇機構70を備えている。上昇機構70は、積載部60を昇降する昇降部72と、昇降部72を介して積載部60を上昇するとともに積載部60を上昇位置に保持する駆動部74とを備えている。
【0039】
また、シート供給装置10は、上段トレイ16が装置本体14に収容された状態で解除操作を受け付けた場合に昇降部72と駆動部74とを切り離す切離し部76を備えている。切離し部76は、駆動部74及び昇降部72を切断可能に結合するカップリング部78と、カップリング部78を作動して駆動部74及び昇降部72の結合状態を解除する解除部80とを備えている。
【0040】
(駆動部)
駆動部74は、装置本体14に設けられた駆動モータで構成されており、駆動モータの一例としては、被通電時に保持力が発生し大きな空転トルクを有するステッピングモータが挙げられる。
【0041】
駆動部74の出力は、図4にも示すように、駆動部74の出力軸82に設けられた駆動ギア84、及び駆動ギア84と噛み合う中間ギア86(図3及び図5参照)を介して、切離し部76のカップリング部78を構成するギア付回転軸88に伝達される。中間ギア86及びギア付回転軸88は、装置本体14に支持されている。
【0042】
(カップリング部)
切離し部76を構成するカップリング部78は、図3に示したように、ギア付回転軸88の駆動部74側である基端側に配置され、ギア付回転軸88と共に回転する円板部90を備えている。また、カップリング部78は、円板部90より先端側に配置され、ギア付回転軸88に沿って移動可能に支持された駆動側カップリング92を備えている。カップリング部78は、駆動側カップリング92と解除可能に結合される被駆動側カップリング94と、円板部90及び駆動側カップリング92の間に設けられた付与部96とを備えている(図4参照)。
【0043】
〔円板部〕
円板部90は、図3及び図5に示すように、円板状に形成されており、円板部90には、ギア付回転軸88の周りの四か所に矩形状の円板側開口部90Aが形成されている。また、円板部90には、駆動側カップリング92へ向けて突出する円板側爪90Bが各円板側開口部90Aの間に形成されている。
【0044】
〔駆動側カップリング〕
駆動側カップリング92は、円柱状に形成されており、円板部90側の端部からは、側方へ向けて延び出すフランジ98が形成されている。
【0045】
駆動側カップリング92には、円板部90の円板側爪90Bが抜き差し可能に挿入されるカップリング側開口部92Aがギア付回転軸88の周りの四か所に形成されている。また、駆動側カップリング92には、円板部90へ向けて突出するカップリング側爪92Bが各カップリング側開口部92Aの間に形成されており、カップリング側爪92Bは、円板部90の円板側開口部90Aに抜き差し可能とされている。
【0046】
駆動側カップリング92の各カップリング側爪92Bは、円板部90の各円板側爪90Bの間に配置されており、駆動部74で回転される円板部90の回転力が各爪90B、92Bを介して駆動側カップリング92に伝達される。これにより、駆動側カップリング92は、駆動部74で回転可能とされている。
【0047】
また、駆動側カップリング92は、カップリング側開口部92Aに円板部90の円板側爪90Bが挿入されるとともに、カップリング側爪92Bが円板部90の円板側開口部90Aに挿入されることにより、ギア付回転軸88に沿って円板部90側へ移動可能とされている。
【0048】
これにより、駆動側カップリング92は、図3及び図4に示したように、先端側へ配置されて被駆動側カップリング94と結合された結合状態J1を形成する。また、駆動側カップリング92は、図5及び図6に示すように、基端側へ移動され被駆動側カップリング94との結合が解除された解除状態J2とを形成する。
【0049】
駆動側カップリング92の先端面には、図6に示したように、被駆動側カップリング94へ向けて延び出す円弧状の駆動歯92Cが二か所に離間して形成されている。
【0050】
〔被駆動側カップリング〕
被駆動側カップリング94は、上段トレイ16に回転自在に支持されており、上段トレイ16と共に引き出し方向に移動する。
【0051】
被駆動側カップリング94は、円柱状に形成されており、駆動側カップリング92側の端面には、駆動側カップリング92へ向けて延び出す円弧状の被駆動歯94Cが二か所に離間して形成されている。両被駆動歯94C間には、駆動側カップリング92の駆動歯92Cを抜き差しできるように構成されており、両駆動歯92C間には、被駆動側カップリング94の駆動歯94Cを抜き差しできるように構成されている。
【0052】
これにより、図3及び図4に示したように、両被駆動歯94C間に駆動歯92Cが配置された結合状態J1において、被駆動側カップリング94を駆動側カップリング92と共に回転できる。また、被駆動側カップリング94は、駆動側カップリング92の回転力を昇降部72に伝達する。
【0053】
また、図5及び図6に示したように、両被駆動歯94C間から駆動歯92Cが離脱した解除状態J2において、被駆動側カップリング94と駆動側カップリング92とが独立して回転できるように構成されている。
【0054】
〔付与部〕
円板部90及び駆動側カップリング92間に設けられた付与部96は、弾性体で構成されており、弾性体の一例としてコイルスプリングが挙げられる。付与部96は、図4に示したように、駆動側カップリング92が被駆動側カップリング94に結合する結合方向H1へ向けた力を駆動側カップリング92に付与する。
【0055】
(解除部)
切離し部76を構成する解除部80は、図4及び図6に示したように、装置本体14に設けられたカム駆動部100と、カム駆動部100で回転駆動されるカム部102とを備えている。この解除部80は、上段トレイ16が装置本体14に収納された状態において、駆動側カップリング92を解除方向H2へ移動することで、駆動側カップリング92と被駆動側カップリング94との結合を解除する。
【0056】
〔カム駆動部〕
カム駆動部100は、制御部40で制御される駆動モータで構成されており、カム駆動部100を構成する駆動モータは、一例としてステッピングモータが挙げられる。カム駆動部100は、回転及び停止を制御するとともに、回転速度を制御する。
【0057】
カム駆動部100の出力軸100Aには、出力ギア104が設けられており、出力ギア104は、カム部102に接続されている。
【0058】
〔カム部〕
カム部102は、カム駆動部100の出力ギア104と噛み合う被駆動ギア106と、被駆動ギア106と共に回転する回転軸108と、回転軸108の先端側に固定されたカム110とを備えている。
【0059】
カム110の被駆動ギア106側の端面は、駆動側カップリング92のフランジ98に被駆動側カップリング94側から接して、駆動側カップリング92を解除方向H2への移動するカム面112を構成する。
【0060】
なお、本実施形態では、カム面112が駆動側カップリング92に接して駆動側カップリング92を解除方向H2へ移動する場合について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、カム面112が被駆動側カップリング94に接して被駆動側カップリング94を解除方向へ移動することで、駆動側カップリング92と被駆動側カップリング94との結合を解除してもよい。
【0061】
このカム面112には、図7に示すように、解除方向H2への移動を行う第一傾斜領域120と、結合方向H1への移動を許容する第二傾斜領域122とが周方向に順に形成されている。カム駆動部100でカム110を回転した際に第一傾斜領域120と第二傾斜領域122との順で駆動側カップリング92のフランジ98に接するように第一傾斜領域120と第二傾斜領域122とが配置されている。
【0062】
言い換えると、第一傾斜領域120では、カム駆動部100による回転方向KHと逆側へ向かうに従って突出高さが高くなり、第一傾斜領域120の最も高い終端120Aでは、駆動側カップリング92と被駆動側カップリング94との結合が解除される。また、第二傾斜領域122では、カム駆動部100による回転方向KHと逆側へ向かうに従って突出高さが低くなり、第二傾斜領域122の最も低い終端122Aでは、駆動側カップリング92と被駆動側カップリング94とが結合可能な位置まで移動する。
【0063】
図4に示したように、カム110の先端側の端縁(軸直交面)と第一傾斜領域120を構成する面とが成す第一傾斜角度αは、図6に示したように、カム110の先端側の端縁と第二傾斜領域122を構成する面とが成す第二傾斜角度βより緩やかである。
【0064】
これにより、駆動側カップリング92が被駆動側カップリング94から離れる解除方向H2への移動はゆっくりと行われる。一方、駆動側カップリング92が被駆動側カップリング94と結合する結合方向H1への移動は速やかに行われる。
【0065】
カム部102の被駆動ギア106の端面には、遮蔽板126が設けられており、遮蔽板126には、切り欠き128が形成されている。
【0066】
また、装置本体14には、カム部102の回転角度を検出する角度センサ103が設けられており、角度センサ130は制御部40に接続されている。この角度センサ130は、一例として光センサで構成されており、角度センサ130は、遮蔽板126が配置される凹部130Aを有する。
【0067】
角度センサ130は、凹部130Aに配置された遮蔽板126の一面側へ向けて光を出力する発光部130Bと、その光を遮蔽板126の他面側で受ける受光部130Cとを有する。角度センサ130は、発光部130Bと受光部130Cとの間の光が遮蔽板126で遮断されるか否かによって遮蔽板126の切り欠き128の位置を検出し、回転されるカム部102の回転角度を得る。
【0068】
遮蔽板126の切り欠き128は、図6に示したように、駆動側カップリング92と被駆動側カップリング94との結合が解除されている間、角度センサ130の凹部130A内を移動する。これにより、制御部40は、角度センサ130からの出力に基づいて駆動側カップリング92及び被駆動側カップリング94の結合状態J1又は解除状態J2を把握する。また、制御部40は、角度センサ130からの出力に基づいてカム駆動部100を回転制御することで、駆動側カップリング92及び被駆動側カップリング94を結合又は解除することができる。
【0069】
(昇降部)
昇降部72は、図3に示したように、上段トレイ16に設けられており、上段トレイ16の後板46に回転自在に支持された前述の被駆動側カップリング94を備えて構成されている。
【0070】
被駆動側カップリング94の基端側に形成されたギア部94Dは、伝達ギア140を介して回転ギア142に接続されている。回転ギア142には、プーリ軸144の一端部が固定されており、プーリ軸144の他端部には、図2に示したように、前板44に回転自在に支持された巻上プーリ146が固定されている。
【0071】
巻上プーリ146には、第一ワイヤ148及び第二ワイヤ150が引き出し可能に巻き付けられている。巻上プーリ146より引き出された第一ワイヤ148は、第一長穴66の上部に設けられた第一プーリ152で方向転換され下方へ延びている。第一ワイヤ148の先端は、第一長穴66を通った第一ガイド突起62に固定されている。
【0072】
また、巻上プーリ146より引き出された第二ワイヤ150は、第二長穴68の上部に設けられた第二プーリ154で方向転換され下方へ延びている。第二ワイヤ150の先端は、第二長穴68を通った第二ガイド突起64に固定されている。
【0073】
なお、各ワイヤ148、150による積載部60の支持構造は、後板46側でも同様に構成されている。
【0074】
これにより、第一ガイド突起62及び第二ガイド突起64が延び出した積載部60は、各ワイヤ148、150で吊り上げ可能とされている。上段トレイ16が装置本体14に収容されカップリング部78が結合された状態で駆動部74を回転駆動することで、昇降部72を介して積載部60を上昇することができる。この状態で、駆動部74を非通電としても、駆動部74が有する空転トルクによって積載部60を上昇位置に保持する。
【0075】
一方、上段トレイ16が装置本体14より引き出され、被駆動側カップリング94が駆動側カップリング92から離れて結合状態J1が解除された際には、積載部60は、自重によって降下する。
【0076】
また、上段トレイ16が装置本体14に収容された状態でも、制御部40が解除操作を受け付けてカム駆動部100を回転駆動し被駆動側カップリング94と駆動側カップリング92との結合状態J1を解除することができる。これにより、昇降部72と駆動部74とを切り離し、積載部60を自重で降下させることが可能となる。
【0077】
(作用及び効果)
本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0078】
従来の構造では、装置本体14に延長部22を取り付けた状態において、装置本体14から上段トレイ16を引き出せなくなり、上段トレイ16の引き出しに応じた積載部60の下降できない。このため、本実施形態の解除部80を有しない場合、積載部60を下降するために、駆動部74の逆転制御する必要が生ずる。
【0079】
これに対して、本実施形態では、装置本体14に上段トレイ16を収容した状態で積載部60を下降することができない場合と比較して、積載部60を上昇するモータを逆転制御することなく、積載部60の下降動作をトレイ引き出し時と合わせることが可能となる。
【0080】
このため、モータの逆転制御が不要となり、モータ制御の簡素化が可能となるとともに、積載部60が下限に達したことを検出するセンサも不要となる。
【0081】
また、上段トレイ引き出し時には、積載部60を自重で下降する一方、上段トレイ収容時には、逆転制御されたモータで積載部60を強制下降する場合と比較して、積載部60の下降時間を上段トレイ引き出し時と上段トレイ収納時とで合わせることができる。
【0082】
これにより、積載部60の下降時間が異なることに起因した違和感を和らげることが可能なす。
【0083】
また、昇降部72と駆動部74とを切り離す切離し部76は、駆動側カップリング92と、被駆動側カップリング94と、駆動側カップリング92及び被駆動側カップリング94の結合を解除する解除部80とを備えている。
【0084】
このため、切離し部76がクラッチで構成された場合と比較して、駆動力の伝達ロスの抑制が可能となる。
【0085】
さらに、駆動側カップリング92に接して解除方向H2への移動を行うカム110のカム面112には、解除方向H2への移動を行う第一傾斜領域120と結合方向H1への移動を許容する第二傾斜領域122とがカム110の周方向に順に形成されている。
【0086】
このため、モータでラックを駆動してカップリングの結合解除を行う場合と比較して、同一方向にカム110を回転してカップリングの結合解除を行うことが可能となる。
【0087】
また、第一傾斜領域120の第一傾斜角度αは、第二傾斜領域122の第二傾斜角度βより緩やかである。
【0088】
このため、第一傾斜領域120の第一傾斜角度αが第二傾斜領域122の第二傾斜角度βより急な場合と比較して、カップリングの結合を解除する際の負担(カム駆動部100の負担)の抑制が可能となる。一方、カップリングの結合は、速やかに行われる。
【0089】
そして、解除操作の受け付けは、カバー30の開操作に基づいて行われる。
【0090】
このため、スイッチ操作に基づいて解除操作を受け付ける場合と比較して、操作性の向上が可能となる。
【0091】
なお、本実施形態では、駆動側カップリング92と被駆動側カップリング94との結合解除をカム110で行ったが、これに限定されるものではない。例えば、ソレノイド等のリニア方向に作動するアクチュエータを用いて駆動側カップリング92と被駆動側カップリング94との結合解除を行ってもよい。
【0092】
(第二実施形態)
図8から図11は、第二実施形態を示す図であり、第一実施形態と同一又は同等部分については同符号を付して説明を割愛し、異なる部分について説明する。本実施形態のシート供給装置200は、第一実施形態と比較して、切離し部76の構成が異なる。
【0093】
本実施形態に係る切離し部76は、駆動部74が昇降部72に接続された接続状態S1を形成するクラッチ202を有しており(図9参照)、クラッチ202は、接続状態S1を解除する際に作動する解除部204を有している。また、切離し部76は、解除操作を受け付けた場合に解除部204を作動するアクチュエータ206(図11及び図12参照)をさらに有している。
【0094】
(クラッチ)
すなわち、クラッチ202は、図8に示すように、駆動部74の出力軸82の外周部に固定された固定部210と、固定部210の先端側において出力軸82の外周部に回転可能に支持された出力部212とを備えている。また、クラッチ202は、固定部210及び出力部212間に配置された円筒状の円筒部214と、円筒部214の内側に配置されたトーションスプリング216とを備えている。
【0095】
固定部210は、円板状の基部210Aと、基部210Aより突出した大径円筒部210Bと、大径円筒部210Bより突出した小径円筒部210Cとを備えている。
【0096】
出力部212は、昇降部72を構成するプーリ軸144の回転ギア142と噛み合うギア部212Aと、ギア部212Aより固定部210側へ突出した円筒部212Bとを備えている。円筒部212Bには、固定部210の小径円筒部210Cが内側に嵌合する嵌合凹部212Cが形成されている。
【0097】
円筒部214は、固定部210の大径円筒部210B及び出力部212の円筒部212Bを包囲するように配置されており、円筒部214には、側方へ突出する突出部214Aが複数箇所に形成されている(図11及び図12参照)。
【0098】
トーションスプリング216は、固定部210の大径円筒部210B及び出力部212の円筒部212Bの外周部に配置されている。トーションスプリング216の一端部216Aは、円筒部214の端部に固定されており、トーションスプリング216の他端部216Bは、固定部210の基部210Aに固定されている。
【0099】
図11及び図12に示すように、装置本体14の筐体14Aには、スライド板220が長さ方向へスライド自在に支持されており、スライド板220は、長さ方向に延びる長穴220Aを通る固定部材222で筐体14Aに支持されている。スライド板220には、連結部224を介して、アクチュエータ206の作動軸206Aが接続されており、スライド板220は、アクチュエータ206によって長さ方向へ移動される。アクチュエータ206は、一例としてソレノイドで構成される。
【0100】
なお、アクチュエータ206は、モータとカムの組み合わせや、モータとギアとラックとの組み合わせで構成してもよい。また、開操作されるカバー30の操作力を、リンクによってスライド板220に伝達する構造としてもよい。
【0101】
スライド板220には、クラッチ202の円筒部214の突出部214Aに接触可能な操作爪226が固定されている。これにより、図11に示したように、アクチュエータ206でスライド板220を作動することで、操作爪226で円筒部214の突出部214Aを解除方向ULへ回転可能とされている。
【0102】
(接続状態)
図12に示したように、アクチュエータ非作動時において、駆動部74の出力軸82が、図9に示したように、トーションスプリング216の締め付け方向SHに回転すると、トーションスプリング216によって出力部212の円筒部212Bが締め付けられる。すると、出力部212の円筒部212Bと嵌合凹部212Cに嵌合した固定部210の小径円筒部210Cとの摩擦が増大し、駆動部74が昇降部72に接続された接続状態S1が形成され駆動部74の出力が昇降部72に伝達される。
【0103】
(解除状態)
また、制御部40は、カバー30が開操作されカバー開状態となったことを検出した際に、解除操作を受け付けたと認識し、図11に示したように、アクチュエータ206を作動して操作爪226で円筒部214を解除方向ULへ回転する。このとき、アクチュエータ206の作動時間は、積載部60の落下に要する最大時間+規定時間(+α)とする。
【0104】
すると、図10に示したように、トーションスプリング216が大径化して緩むことにより、出力部212の円筒部212Bの締め付けが解除され、駆動部74の出力軸82に対して出力部212が回転自在となる。これにより、駆動部74と昇降部72との接続が解除された解除状態S2が形成される。
【0105】
(作用及び効果)
本実施形態においても、第一実施形態と同一又は同等部分に関しては、第一実施形態と同様の作用効果を奏することが可能となる。
【0106】
また、本実施形態の切離し部76は、クラッチ202を有し、クラッチ202は、接続状態S1を解除する際に作動する解除部204を有する。
【0107】
このため、切離し部76がカップリングで構成された場合と比較して、接続時の衝撃の軽減が可能となる。
【0108】
さらに、切離し部76は、解除操作を受け付けた場合に解除部204を作動するアクチュエータ206をさらに有する。
【0109】
このため、手動操作する解除レバーの操作力を解除部204に伝達して作動する場合と比較して、構成の簡素化が可能となる。
【0110】
なお、上記実施の形態ではシート供給装置10と画像形成装置12との組み合わせを説明したが、この組み合わせに限らず、本実施形態に係るシート供給装置10を画像形成装置12以外の装置に組み合わせてもよい。また、シートPとして、紙製の用紙やPET樹脂からなるOHPシートで説明したが、これらに限らず、布製や金属製のシート、またはシート状の食品等、シート状の媒体であればよい。
【符号の説明】
【0111】
10 シート供給装置
14 装置本体
16 上段トレイ
22 延長部
26 シート収容部
30 カバー
40 制御部
60 積載部
70 上昇機構
72 昇降部
74 駆動部
78 カップリング部
80 解除部
92 駆動側カップリング
94 被駆動側カップリング
96 付与部
100 カム駆動部
102 カム部
110 カム
112 カム面
120 第一傾斜領域
122 第二傾斜領域
200 シート供給装置
202 クラッチ
204 解除部
206 アクチュエータ
α 第一傾斜角度
β 第二傾斜角度
S1 接続状態
S2 解除状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12