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特許7346997ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
B25J19/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019151184
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021030339
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 一馬
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-208002(JP,A)
【文献】特開昭61-252096(JP,A)
【文献】特開2019-010704(JP,A)
【文献】特開2016-109542(JP,A)
【文献】特開2009-162709(JP,A)
【文献】国際公開第2013/105264(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者と協働で作業を行うロボットの制御装置であって、
前記作業者と前記ロボットとが協働で作業を行う領域である協働エリアにレーダ波を送信するとともに、該レーダ波が前記協働エリア内の物体に反射することで生成される反射波を受信するレーダ送受信部と、
前記レーダ送受信部によって受信された前記反射波に基づいて、前記協働エリア内に存在する物体を検知し、前記検知された物体の位置及び反射パワーの情報を出力するレーダデータ処理部と、
前記検知された物体の反射パワーが所定の閾値未満である場合に、前記検知された物体の位置と前記ロボットの間の距離に応じて前記ロボットの動作速度を制御する処理を実行し、前記検知された物体の反射パワーが前記所定の閾値以上である場合に、前記検知された物体の位置にかかわらず、前記ロボットと前記作業者との干渉を抑制するための処理である干渉抑制処理を実行する制御部と、
を備える、ロボットの制御装置。
【請求項2】
前記干渉抑制処理は、前記ロボットの動作を停止させる処理を含む、
請求項1に記載のロボットの制御装置。
【請求項3】
前記干渉抑制処理は、前記作業者へ注意喚起を促す処理を含む、
請求項1又は2に記載のロボットの制御装置。
【請求項4】
前記協働エリアには、前記ロボットと前記作業者とが協働で作業を行う際に使用される設備である作業用設備が設置されており、
前記所定の閾値は、前記レーダ送受信部が適正な状態で設置されている場合における前記作業用設備の反射パワーより大きい値に設定される、
請求項1から3の何れか1項に記載のロボットの制御装置。
【請求項5】
前記レーダデータ処理部によって演算される反射パワーが所定の閾値以上である物体が前記協働エリアに存在する場合に、該物体が前記作業用設備であれば、前記制御部は、前
記干渉抑制処理に加え、前記レーダ送受信部の設置状態の調整を前記作業者に促す処理を実行する、
請求項4に記載のロボットの制御装置。
【請求項6】
作業者と協働で作業を行うロボットの制御方法であって、
前記作業者と前記ロボットとが協働で作業を行う領域である協働エリアにレーダ波を送信するとともに、該レーダ波が前記協働エリア内の物体に反射することで生成される反射波を受信するレーダ送受信ステップと、
前記レーダ送受信ステップで受信された前記反射波に基づいて、前記協働エリア内に存在する物体を検知し、前記検知された物体の位置及び反射パワーの情報を出力するレーダデータ処理ステップと、
前記検知された物体の反射パワーが所定の閾値未満である場合に、前記検知された物体の位置と前記ロボットの間の距離に応じて前記ロボットの動作速度を制御する処理を実行し、前記検知された物体の反射パワーが前記所定の閾値以上である場合に、前記検知された物体の位置にかかわらず、前記ロボットと前記作業者との干渉を抑制するための処理である干渉抑制処理を実行する制御ステップと、
を有する、ロボットの制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載のロボットの制御方法における各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場等の製造現場では、産業用のロボットの導入が進められている。ロボットの導入に伴い、ロボットと作業者との協働で部品の組み付け等の作業を行う工程も生じ得る。斯様な工程においては、ロボットと作業者との協働エリアを監視することで、ロボットと作業者との干渉を抑制する必要がある。斯様な要求に対し、従来では、協働エリアにおけるロボットと作業者の各々の位置等を監視し、ロボットと作業者等との距離が所定の距離以下となったときにはロボットの動作速度を遅くさせたり、ロボットの動作を停止させたりする技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-208002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、協働エリアにおけるロボットや作業者等の位置を検知する方法としては、レーダセンサを利用して、協働エリア内を三次元的にセンシングする方法が考えられる。レーダセンサは、例えば、ミリ波帯の電波(レーダ波)を照射して、照射範囲に存在する物体で反射された電波(反射波)を受信することで、物体の有無や物体の位置等を検出する。
【0005】
ところで、物体がレーダ波を反射する際の反射パワーは、物体の材質や形状等によって異なる。例えば、ロボットと作業者との協働エリアに反射パワーの強い材質(例えば、金属等)で形成された作業台等の作業用設備が配置される場合には、作業用設備の反射パワーが作業者(人体)の反射パワーより大きくなる可能性がある。そのため、作業用設備の近傍に作業者の腕等が位置していても、作業者の腕等からの微弱な反射波が作業用設備からの強い反射波に埋もれてしまう可能性がある。特に、レーダセンサの設置位置が不適切であると、上記のような現象が発生し易くなる。斯様な場合、作業用設備の近傍に存在する作業者の腕等の位置を適切に検知することができない可能性があり、それによってロボットと作業者との干渉を適切に抑制することができなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記したような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロボットと作業者とが協働で作業を行う場合において、ロボットと作業者との不用意な干渉を抑制可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するために、ロボットと作業者との協働エリアを、レーダ波を利用して監視するとともに、その監視結果に基づいてロボットを制御する、ロボットの制御装置において、協働エリア内に存在する作業者(又は、作業者の人体の一部)の位置を適切に検知することが困難となる程の強い反射パワーを持つ物体が協働エリア内で検知された場合に、ロボットと作業者との不用意な干渉を抑制するための処理(干渉抑制処理)を実行するようにした。
【0008】
詳細には、本発明は、作業者と協働で作業を行うロボットの制御装置である。該制御装置は、作業者とロボットとが協働で作業を行う領域である協働エリアにレーダ波を送信するとともに、該レーダ波が前記協働エリア内の物体に反射することで生成される反射波を受信するレーダ送受信部と、前記レーダ送受信部によって受信された前記反射波に基づいて、前記協働エリア内に存在する物体を検知し、前記検知された物体の位置及び反射パワーの情報を出力するレーダデータ処理部と、前記検知された物体の反射パワーが所定の閾値未満である場合に、前記検知された物体の位置と前記ロボットの間の距離に応じて前記ロボットの動作速度を制御する処理を実行し、前記検知された物体の反射パワーが前記所定の閾値以上である場合に、前記検知された物体の位置にかかわらず、前記ロボットと前記作業者との干渉を抑制するための処理である干渉抑制処理を実行する制御部と、を備える。ここでいう「所定の閾値」は、例えば、該所定の閾値以上の反射パワーを持つ物体の近傍に作業者の人体の一部(例えば、腕等)が存在すると、レーダ送受信部によって受信される反射波に基づいて作業者の腕等の位置を検知することが困難になると想定される値であり、実験やシミュレーションの結果等に基づく適合作業によって予め定められる値である。
【0009】
協働エリア内に所定の閾値以上の反射パワーを持つ物体(以下、「強反射体」と記す場合もある。)が存在する場合に、レーダ送受信部から協働エリアへ向けてレーダ波が照射されると、たとえ前記強反射体の近傍に作業者の腕等が存在していても、その腕等からの反射波が前記強反射体からの反射波に埋もれてしまうことで、作業者の腕等からの反射波と前記強反射体からの反射波とを分離することが困難になる可能性がある。斯様な場合、協働エリア内に存在する作業者の腕等の位置を検知することが困難になる可能性がある。これに対し、本発明に係る制御装置は、強反射体が前記協働エリア内に存在することが検知されると、干渉抑制処理を実行する。これにより、強反射体の近傍に存在する作業者の腕等の位置を適切に検知することが困難な場合であっても、ロボットと作業者との不用意な干渉を抑制することができる。
【0010】
本発明に係るロボットの制御装置において、前記干渉抑制処理は、前記ロボットの動作を停止させる処理を含むようにしてもよい。これによれば、強反射体の近傍に存在する作業者の腕等の位置を適切に検知することが困難な場合において、ロボットと作業者との干渉を抑制することができる。
【0011】
また、前記干渉抑制処理は、前記作業者へ注意喚起を促す処理を含むようにしてもよい。前記作業者へ注意喚起を促す処理は、例えば、警告音を鳴動させる処理、警告灯を点灯させる処理、警告メッセージを表示若しくは音声出力させる処理等である。これにより、強反射体の近傍に存在する作業者の腕等の位置を適切に検知することが困難な場合に、作業者は、協働エリアから離間する動作や、ロボットとの干渉を回避する動作等を取ることができる。その結果、ロボットと作業者との不用意な干渉を抑制することができる。
【0012】
ところで、上記した協働エリアには、ロボットや作業者が作業を行う際に使用される作業用設備が配置されることも想定される。そして、上記したような作業用設備は、反射パワーが強くなり易い材質(例えば、金属等)や形状(例えば、外壁面のうち平らな面が占める割合が大きい形状等)を有する場合もある。そのため、上記の作業用設備に対して垂直な状態(例えば、レーダ送受信部から照射されるレーダ波の一部が作業用設備に対して垂直に当たる状態(入射角が直角になる状態))でレーダ送受信部が設置されると、作業用設備の反射パワーが所定の閾値以上になってしまう可能性がある。これに対し、作業用設備に対して傾斜した状態(例えば、レーダ送受信部から照射されるレーダ波が作業用設備に対して垂直に当たらない状態(入射角が垂直にならない状態))でレーダ送受信部が設置されると、作業用設備のレーダ反射断面積(RCS: Radar cross-section)が小さくなるため、作業用設備の反射パワーを所定の閾値未満に下げることができる。これにより、上記したような作業用設備が協働エリアに配置される環境においても、作業用設備の近傍に存在する作業者の腕等の位置を検知することが可能になる。しかしながら、工場等でレーダ送受信部が設置される際には、レーダ送受信部の状態(例えば、作業用設備に対する傾斜角や、作業用設備との距離等)が適正な状態で設置されるとは限らない。
【0013】
そこで、本発明に係るロボットの制御装置では、前記ロボットと前記作業者とが協働で作業を行う際に使用される作業用設備が前記協働エリアに設置される場合に、前記所定の閾値が、前記レーダ送受信部が適正な状態で設置されている場合における前記作業用設備の反射パワーより大きな値に設定されるようにしてもよい。これにより、前記レーダ送受信部が適正な状態で設置されていないことに起因して、作業用設備の反射パワーが所定の閾値以上になる場合であっても、ロボットと作業者との不用意な干渉を抑制することができる。なお、強反射体が前記協働エリア内に存在することが検知された場合に、該強反射体が前記作業用設備であれば、制御部は、前記干渉抑制処理に加え、前記レーダ送受信部の設置状態の調整を前記作業者に促す処理(以下、「調整要求処理」と記す場合もある。)を実行するようにしてもよい。調整要求処理は、例えば、前記レーダ送受信部の設置状態の調整を前記作業者に促す文字情報等をディスプレイ等に表示させる処理、又は前記レーダ送受信部の設置状態の調整を前記作業者に促す音声メッセージ等をスピーカ等から出力する処理等である。これにより、作業者は、レーダ送受信部の設置状態を調整することができるため、その後の作業効率の低下を抑制することができる。
【0014】
なお、上記の作業用設備は、例えば、作業台、工具を収納するための箱又は棚、部品を収納するための箱又は棚、各種機器を操作するための操作パネル、協働エリアを仕切るための壁又は柵等である。
【0015】
本発明は、作業者と協働で作業を行うロボットの制御方法として捉えることもできる。
例えば、本発明は、前記作業者と前記ロボットとが協働で作業を行う領域である協働エリアにレーダ波を送信するとともに、該レーダ波が前記協働エリア内の物体に反射することで生成される反射波を受信するレーダ送受信ステップと、前記レーダ送受信ステップで受信された前記反射波に基づいて、前記協働エリア内に存在する物体を検知し、前記検知された物体の位置及び反射パワーの情報を出力するレーダデータ処理ステップと、前記検知された物体の反射パワーが所定の閾値未満である場合に、前記検知された物体の位置と前記ロボットの間の距離に応じて前記ロボットの動作速度を制御する処理を実行し、前記検知された物体の反射パワーが前記所定の閾値以上である場合に、前記検知された物体の位置にかかわらず、前記ロボットと前記作業者との干渉を抑制するための処理である干渉抑制処理を実行する制御ステップと、を有する、ロボットの制御方法として捉えることもできる。また、本発明は、かかる方法を実現するためのプログラムやそのプログラムを非一時的に記録した記録媒体として捉えることもできる。なお、上記構成及び処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロボットと作業者とが協働で作業を行う場合において、ロボットと作業者との不用意な干渉を抑制可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る制御装置の適用例を示す図である。
図2】実施形態における制御装置の構成例を示すブロック図である。
図3】レーダ送受信部の構成例を示す図である。
図4】作業台の上面近傍に作業者の腕が存在している状態でレーダ送受信部からレーダ波を送信したときの、作業台からの反射波の強度と作業者の腕からの反射波の強度とを示す図である。
図5】制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
図6】実施形態に係る制御装置による処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<適用例>
図1を参照して、本発明に係るロボットの制御装置の適用例について説明する。制御装置1は、ロボット2と作業者3とが協働で作業を行うエリア(協働エリアAc)の上方(
例えば、天井5)に設置されたレーダセンサ10により得られるデータ(協働エリアAc内に存在する物体の位置や物体の反射パワー等)に応じて、ロボット2を制御する装置である。斯様な制御装置1は、ロボット2と作業者3との協働により部品の組み付け作業等が行われる工場等において、ロボット2の動作速度等を制御する。例えば、協働エリアAcにおけるロボット2と作業者3との距離が比較的近い場合等に、制御装置1が、ロボット2の動作速度を低下させたり、又はロボット2の動作を停止させたりする。
【0019】
なお、図1に示すように、作業者3の人体より大きな比誘電率を有する材質(例えば、金属等)で構成され、且つレーダ波のレーダ反射断面積が大きくなり易い形状(例えば、上面が水平方向に延在する平らな面で形成された形状)を有する作業台4が協働エリアAc内に設置される環境においては、レーダセンサ10が適正な状態で設置されなければ、作業台4からの反射波と作業者3の人体からの反射波とをレーダセンサ10によって分離することが困難になる可能性がある。例えば、レーダセンサ10から照射されるレーダ波の一部が作業台4の上面に対して垂直に当たる状態(入射角が垂直になる状態)でレーダセンサ10が設置されてしまうと、作業台4のレーダ反射断面積が比較的大きくなることで、作業台4の反射パワーが作業者3の人体の反射パワーに比して過大になる可能性がある。それにより、作業台4の近傍に作業者3の腕等が存在する場合であっても、作業者3の腕等からの反射波が作業台4からの強い反射波に埋もれてしまい、作業者3の腕等の位置を適切に検知することが困難になる可能性がある。よって、レーダセンサ10から照射されるレーダ波が作業台4の上面に対して垂直に当たらない(入射角が垂直とならない)ように、作業台4の上面に対してレーダセンサ10を傾斜させた状態で設置することが好ましい。しかしながら、工場等においては、レーダセンサ10が必ずしも適切な状態で設置されるとは限られず、それによって作業台4の近傍に存在する作業者3の腕等の位置を適切に検知することが難しくなる可能性もある。
【0020】
これに対し、本例における制御装置1は、レーダセンサ10により得られたデータから、所定の閾値以上の反射パワーを有する物体が協働エリアAc内に存在することを検知すると、ロボット2と作業者3との干渉を抑制するための処理(干渉抑制処理)を行う点に特徴を有する。これにより、レーダセンサ10の設置状態が適切ではないこと等に起因して、協働エリアAc内に存在する作業者3の人体の一部(例えば、腕等)の位置を適切に検知することが困難な状況が発生しても、ロボット2と作業者3との不用意な干渉を抑制することができる。また、レーダセンサ10の設置状態がたとえ適切であっても、作業工程で使用しない想定外の物品等が協働エリアAc内に置かれたり、又は作業用設備の設置位置や設置方向等が変更されたりすることで、所定の閾値以上の反射パワーを有する物品の存在が検知される状態が発生しても、ロボット2と作業者3との不用意な干渉を抑制することができる。
【0021】
<実施形態>
以下では、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、前述の図1に示したように、本発明に係る制御装置を、工場等で作業者と協働で作業を行うロボットに適用する例について述べる。
【0022】
(制御装置の概略構成)
図2は、本実施形態における制御装置1の構成例を示すブロック図である。制御装置1は、レーダセンサ10と制御部11とを含んで構成される。レーダセンサ10は、例えば、ミリ波帯の電波(レーダ波)を用いて、対象エリア内に存在する物体の位置や物体の反射パワーを検知するセンサである。本例では、レーダセンサ10は、図1に示したように、ロボット2と作業者3との協働エリアAcを対象エリアとして、物体の位置や物体の反射パワー等を検知する。制御部11は、レーダセンサ10により検知された物体の反射パワーに基づいて、協働エリアAc内に存在する作業者3の腕等の位置を適正に検知するこ
とが可能であるかを判定する。そして、協働エリアAc内に存在する作業者3の腕等の位置を適切に検知することができないと判定された場合には、制御部11は、ロボット2と作業者3との不用意な干渉を抑制するための処理(干渉抑制処理)を実行する。
【0023】
(レーダセンサの構成)
レーダセンサ10は、例えば、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方
式のレーダセンサである。なお、レーダセンサ10は、FMCW方式以外のレーダセンサ(例えば、パルスドップラ方式のレーダセンサ)であってもよい。本例におけるレーダセンサ10は、図2に示すように、レーダ送受信部10aとレーダデータ処理部10bとを備える。
【0024】
レーダ送受信部10aは、例えば、図3に示すように、シンセサイザ101、送信アンテナ102、受信アンテナ103、ミキサ104を含んで構成される。シンセサイザ101は、チャープ信号を生成する。チャープ信号は、時間と共に周波数が増加又は減少する信号である。送信アンテナ102は、チャープ信号に応じた周波数のレーダ波を送信する。その際、送信アンテナ102は、協働エリアAcへ向けてレーダ波を送信する。受信アンテナ103は、送信アンテナ102から送信されたレーダ波が協働エリアAc内の物体で反射することで生成される反射波を受信する。なお、受信アンテナ103は、複数のアンテナを含んで構成されてもよい。例えば、受信アンテナ103は、水平方向にずらして配置される複数のアンテナ、及び垂直方向にずらして配置されるアンテナを含んで構成されてもよい。その場合、受信アンテナ103は、協働エリアAc内に存在する物体の位置を三次元で検知することができる。ミキサ104は、シンセサイザ101により生成されるチャープ信号と、受信アンテナ103により受信された反射波の信号とを組み合わせて、中間周波数信号を生成する。中間周波数信号は、受信アンテナ103で受信された反射波の信号等と共に後述のレーダデータ処理部10bに出力される。なお、レーダ送受信部10aは、中間周波数信号から不要な信号成分を除去するフィルタや、A/D変換器を有していてもよい。
【0025】
ところで、前述の図1に示したように、協働エリアAc内に作業台4が配置される環境においては、レーダ送受信部10aは、作業台4の上面に対して傾斜した状態で設置されることが好ましい。ここで、レーダ送受信部10aが作業台4の上面に対して傾斜した状態で設置されることが望ましい理由について、図4に基づいて説明する。図4は、作業台4の上面の近傍に作業者3の腕が存在している状態でレーダ送受信部10aからレーダ波を送信したときの、作業台4からの反射波の強度と作業者3の腕からの反射波の強度とを示す図である。図4中の横軸は、協働エリアAcの一端からの距離を示し、図4中の縦軸は、反射波の強度を示す。また、図4中(a)は、レーダ送受信部10aが作業台4の上面に対して垂直な状態で設置された場合を示し、図4中(b)は、レーダ送受信部10aが作業台4の上面に対して傾斜した状態で設置された場合を示している。なお、図4中のd1~d2は、協働エリアAcのうち、作業台4が設置されている範囲を示す。
【0026】
図4に示すように、レーダ送受信部10aが作業台4の上面に対して傾斜した状態で設置された場合(図4中(b))は、レーダ送受信部10aが作業台4の上面に対して垂直な状態で設置された場合(図4中(a))に比べ、作業台4からの反射波の強度(図4中の実線)が小さくなる。これは、レーダ送受信部10aが作業台4の上面に対して傾斜した状態で設置された場合は、レーダ送受信部10aが作業台4の上面に対して垂直な状態で設置された場合に比べ、作業台4の上面におけるレーダ波のレーダ反射断面積が小さくなり、それに伴って作業台4の上面におけるレーダ波の反射率が小さくなるためである。よって、レーダ送受信部10aが作業台4の上面に対して傾斜した状態で設置された場合は、レーダ送受信部10aが作業台4の上面に対して垂直な状態で設置された場合に比べ、作業台4からの反射波の強度と作業者3の腕からの反射波の強度(図4中の一点鎖線)
との差が小さくなる。これにより、レーダ送受信部10aが作業台4の上面に対して傾斜した状態で設置された場合は、レーダ送受信部10aが作業台4の上面に対して垂直な状態で設置された場合に比べ、作業台4からの反射波と作業者3の腕等からの反射波とを分離し易いと言える。斯様な理由により、作業台4が協働エリアAc内に設置される環境では、作業台4の上面に対して傾斜した状態でレーダ送受信部10aを設置することで、作業台4の上面近傍に存在する作業者3の腕等の位置を適切に検知することが可能になる。なお、作業台4の上面に対するレーダ送受信部10aの適切な傾斜角度は、作業台4の材質及び形状、レーダセンサ10の分離分解能、レーダ送受信部10aと作業台4との距離等に応じて異なるため、それらの要素を考慮して決定されることが好ましい。また、協働エリアAc内に複数の作業用設備が配置される環境においては、それら全ての作業用設備から反射波と作業者3の人体からの反射波と分離可能になる状態で、レーダ送受信部10aが設置されればよい。
【0027】
なお、レーダ送受信部10aの設置場所は、作業台4の上方に限定されるものではなく、作業台4の側方であってもよい。要するに、作業用設備からの反射波と該作業用設備の近傍に存在する作業者3の人体からの反射波とを分離することが可能な状態でレーダ送受信部10aが設置される限り、レーダ送受信部10aの設置場所を適宜変更することが可能である。
【0028】
ここで図3の説明に戻り、レーダデータ処理部10bは、レーダ送受信部10aから出力される中間周波数信号や反射波の信号等に基づいて、協働エリアAc内に存在する物体の検知処理を行う。例えば、レーダデータ処理部10bは、レーダ送受信部10aからの中間周波数信号及び反射波の信号を解析することで、協働エリアAc内に存在する物体の位置や、物体の反射パワー等を演算する。これらの演算には、公知の技術を用いることができる。なお、本例における反射パワーとは、物体から受信アンテナ103へ向けて反射される反射波の強度(受信アンテナ103によって受信される反射波の電波強度)であり、レーダ反射断面積に相関するパラメータである。なお、反射パワーに相関するパラメータとして、受信アンテナ103が反射波を受信した際の受信電力や、反射率(送信アンテナ102からレーダ波が送信される際の送信電力に対する、受信アンテナ103が反射波を受信した際の受信電力との比率)等を用いてもよい。
【0029】
(制御部の構成)
次に、制御部11について説明する。制御部11は、例えば、プロセッサ及びメモリを含んで構成されるコンピュータである。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等である。メモリは、コンピュータ
で読み取り可能な記録媒体であり、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドラ
イブ(HDD、Hard Disk Drive)、リムーバブルメディア等である。メモリには、各種
プログラム等が格納される。メモリに格納されたプログラムをプロセッサが実行し、このプログラムの実行を通じて種々の機能構成が実現される。これにより、所定の目的に合致した機能を制御部11が実現する。なお、制御部11は複数のコンピュータによって構成されていてもよい。
【0030】
ここで、制御部11の機能構成の一例を図5に示す。本例における制御部11は、その機能構成要素として、判定部11a、データ出力部11b、ロボット制御部11c、及び警告部11dを含む。これらの機能構成要素は、例えば、プロセッサが、メモリに記憶された各種プログラムを実行することで実現される。
【0031】
判定部11aは、レーダデータ処理部10bによって演算される反射パワーに基づいて、協働エリアAc内に存在する作業者3の腕等の位置を適切に検知することができるかを
判定する。例えば、判定部11aは、先ず、所定の閾値以上の反射パワーを有する物体(強反射体)が協働エリアAc内に存在するかを判別する。ここでいう「所定の閾値」は、例えば、作業台4等の作業用設備の反射パワーが該所定の閾値以上になると、該作業用設備の近傍に存在する作業者3の腕等の位置をレーダセンサ10によって検知することが困難になると想定される値である。言い換えると、所定の閾値は、作業台4等の作業用設備の反射パワーが該所定の閾値以上になると、作業用設備からの反射波と該作業用設備の近傍に存在する作業者3の腕等からの反射波とを、レーダセンサ10によって分離することが困難になると想定される値である。斯様な所定の閾値の最適値は、作業台4等の作業用設備の材質及び形状、レーダセンサ10の分離分解能、レーダ送受信部10aと作業用設備との距離等に応じて異なる。ただし、レーダセンサ10の分離分解能は、予め把握可能であるため、工場等にレーダセンサ10を設置する際に、作業台4等の作業用設備の反射パワーや作業者3の腕等の反射パワー等を実測し、それらの実測値に基づいて所定の閾値が決定されてもよい。そして、斯様にして決定される所定の閾値以上の反射パワーを有する物体が協働エリアAc内に存在する場合には、判定部11aが、当該協働エリアAc内に存在する作業者3の腕等の位置を適切に検知することができないと判定する。
【0032】
なお、前述の図1に示したように、協働エリアAc内に作業台4が配置される環境においては、当該所定の閾値は、レーダセンサ10が適正な状態(例えば、作業台4の上面に対して傾斜した状態)で設置されている場合における作業台4の反射パワーより大きな値に設定されてもよい。このように所定の閾値が設定された場合において、作業台4の反射パワーが当該所定の閾値以上であれば、判定部11aは、レーダセンサ10の設置状態が適切ではないと判定することもできる。
【0033】
データ出力部11bは、判定部11aによる判定結果に応じて、ロボット制御部11cや警告部11dに対する指令を出力する。例えば、判定部11aによって、協働エリアAc内に存在する作業者3の腕等の位置を適切に検知することができると判定された場合(又は、レーダセンサ10の設置状態が適正であると判定された場合)には、データ出力部11bは、ロボット2を通常通りに動作させるための指令を、後述のロボット制御部11cへ出力する。
【0034】
なお、判定部11aによって、協働エリアAc内に存在する作業者3の腕等の位置を適切に検知することができると判定された場合であっても、レーダセンサ10におって検知されたロボット2の位置と作業者3の腕等の位置とが比較的近ければ(例えば、双方の距離が所定の距離以下であれば)、データ出力部11bは、ロボット2の動作速度を通常よりも遅くさせるための指令を、ロボット制御部11cへ出力するようにしてもよい。ここでいう「所定の距離」は、例えば、ロボット2がその後の動作を行ったり、作業者3が現在の位置から移動したりすると、ロボット2と作業者3とが干渉する可能性があると想定される距離、又はその距離に所定のマージンを加算した距離であり、実験やシミュレーションの結果に基づく適合作業によって予め定められる距離である。
【0035】
また、判定部11aによって、協働エリアAc内に存在する作業者3の腕等の位置を適切に検知することができないと判定された場合(又は、レーダセンサ10の設置状態が適正ではないと判定された場合)には、データ出力部11bは、干渉抑制処理を行うための指令を、ロボット制御部11cや警告部11dに出力する。干渉抑制処理は、例えば、ロボット2の動作を停止させる処理や、作業者3に対して注意喚起を促す警告を行う処理等である。なお、本例では、これらの処理の全てが干渉抑制処理として実行されてもよく、これらの処理のうちの1つのみが干渉抑制処理として実行されてもよい。よって、協働エリアAc内に存在する作業者3の腕等の位置を適切に検知することができないと判定された場合には、データ出力部11bは、ロボット2の動作を停止させるための指令をロボット制御部11cへ出力する処理と、作業者3に対して注意喚起を促す警告を行うための指
令を警告部11dへ出力する処理との少なくとも一方を実行すればよい。また、判定部11aによって、レーダセンサ10の設置状態が適切ではないと判定された場合には、データ出力部11bは、上記の処理に加え、レーダセンサ10の設置状態の調整を作業者3に促す警告を行うための指令を警告部11dへ出力する処理を行うようにしてもよい。
【0036】
ロボット制御部11cは、データ出力部11bから出力される指令に従ってロボット2を制御する。例えば、ロボット2の動作速度を通常よりも遅くさせるための指令がデータ出力部11bから出力された場合は、ロボット制御部11cは、ロボット2の動作速度が通常よりも遅くなるように、ロボット2を制御する。また、ロボット2の動作を停止させるための指令がデータ出力部11bから出力された場合は、ロボット制御部11cは、ロボット2が停止するように、ロボット2を制御する。
【0037】
警告部11dは、データ出力部11bから出力される指令に従って警告を出力する。例えば、警告部11dは、警告灯およびまたはスピーカを備え、データ出力部11bからの指令に従って、警告灯を点灯させたり、スピーカから警告音を鳴動させたり、スピーカから警告メッセージの音声を出力させたりする。これにより、協働エリアAc内に存在する作業者3の腕等の位置を適切に検知することができないとの判定が上記判定部11aによって為された場合には、作業者3に対して、ロボット2との干渉についての注意喚起を促すことができる。また、レーダセンサ10の設置状態の調整を作業者3に促す警告を行う場合には、警告部11dは、レーダセンサ10の設置状態の調整を促す音声メッセージをスピーカから出力させてもよく、レーダセンサ10の設置状態の調整を促す文字情報をディスプレイ等に表示させてもよい。これにより、作業者3は、レーダセンサ10の設置状態を調整することができる。
【0038】
(制御装置の動作)
次に、本実施例における制御装置1の動作について図6に基づいて説明する。図6は、ロボット2と作業者3とが協働で作業を行っているときに、制御装置1によって繰り返し実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0039】
図6の処理フローでは、先ず、制御装置1が、送受信処理を実行する(ステップS101)。例えば、レーダ送受信部10aのシンセサイザ101によってチャープ信号が生成され、生成されたチャープ信号に応じた周波数のレーダ波が協働エリアAcへ向けて送信アンテナ102から送信される。送信アンテナ102から送信されたレーダ波が協働エリアAc内に存在する物体に反射されることによって反射波が生成されると、その反射波が受信アンテナ103によって受信される。そして、ミキサ104が、送信アンテナ102から送信されたレーダ波と受信アンテナ103で受信された反射波とを組み合わせることで、中間周波数信号を生成する。ミキサ104によって生成された中間周波数信号は、受信アンテナ103で受信された反射波の信号等と共にレーダデータ処理部10bへ渡される。
【0040】
レーダデータ処理部10bは、レーダ送受信部10aから受け取った信号に基づいて、協働エリアAc内に存在する物体の検知処理を実行する(ステップS102)。例えば、レーダデータ処理部10bは、中間周波数信号や反射波の信号等に対して高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)等を利用した周波数解析を行うことにより、協働エ
リアAc内に存在する物体に関する情報を検出する。すなわち、レーダデータ処理部10bは、反射波の信号及び中間周波数信号の周波数分布に基づいて、協働エリアAc内に存在する物体の存在を検知するとともに、検知された物体の位置(距離及び方位)を演算する。また、レーダデータ処理部10bは、レーダ送受信部10aから受け取った信号に基づいて、反射波の反射パワーを演算する。なお、反射パワーに相関するパラメータとして、例えば、受信電力又は反射率が演算されてもよい。これらのパラメータの演算には、公
知の技術を用いることができる。上記した検知処理で検知された物体の位置や反射パワーに関する情報は、制御部11の判定部11aへ渡される。
【0041】
判定部11aは、レーダデータ処理部10bから受け取った情報に基づいて、所定の閾値以上の反射パワーを持つ物体(強反射体)が協働エリアAc内に存在することが検知されたかを判定する(ステップS103)。ここでいう「所定の閾値」は、前述したように、所定の閾値以上の反射パワーを持つ物体が協働エリアAc内に存在すると、その物体の近傍に存在する作業者3の腕等を適切に検知することが困難になると想定される値である。
【0042】
強反射体が協働エリアAc内に存在することが検知されていなければ(ステップS103で否定判定)、制御装置1が、ロボット2を通常通りに制御するための処理(通常処理)を実行する(ステップS107)。例えば、データ出力部11bが、上記の検知処理で検知された物体の位置情報に基づいて、ロボット2と作業者3との距離を演算し、演算された距離が所定の距離以下であるかを判別する。そして、ロボット2と作業者3との距離が所定の距離より大きければ、データ出力部11bは、ロボット2を通常の動作速度で動作させるための指令を、ロボット制御部11cへ出力する。これに伴い、ロボット制御部11cは、ロボット2を通常の動作速度で動作させるべく、ロボット2を制御する。一方、ロボット2と作業者3との距離が所定の距離以下であれば、データ出力部11bは、ロボット2を通常の動作速度より遅い速度で動作させるための指令を、ロボット制御部11cへ出力する。これに伴い、ロボット制御部11cは、ロボット2を通常の動作速度より遅い速度で動作させるべく、ロボット2を制御する。なお、ここでいう「所定の距離」は、前述したように、ロボット2がその後の動作を行ったり、作業者3が現在の位置から移動したりすると、ロボット2と作業者3とが干渉する可能性があると想定される距離、又はその距離に所定のマージンを加算した距離である。上記の手順で通常処理が行われると、ロボット2と作業者3との干渉を抑制しつつ、ロボット2と作業者3との協働による作業を継続することができる。
【0043】
一方、強反射体が協働エリアAc内に存在することが検知された場合(ステップS103で肯定判定された場合)は、強反射体の近傍に存在する作業者3の腕等をレーダセンサ10によって適切に検知することが困難になるため、制御装置1は、干渉抑制処理を実行する(ステップS10)。例えば、データ出力部11bが、ロボット2の動作を停止させるための指令をロボット制御部11cへ出力する処理と、作業者3に対して注意喚起を促す警告を行うための指令を警告部11dへ出力する処理との少なくとも一方を実行する。ロボット2の動作を停止させるための指令がデータ出力部11bからロボット制御部11cに出力された場合には、ロボット制御部11cが、ロボット2の動作を停止させるべく、ロボット2を制御する。また、作業者3に対して注意喚起を促す警告を行うための指令がデータ出力部11bから警告部11dに出力された場合には、警告部11dが、警告灯を点灯させたり、スピーカから警告音を鳴動させたり、スピーカから警告メッセージの音声を出力させたりする。斯様にして干渉抑制処理が行われると、強反射体の近傍に存在する作業者3の腕等をレーダセンサ10によって適切に検知することが困難な状況に陥った場合であっても、ロボット2と作業者3との不用意な干渉を抑制することができる。
【0044】
また、制御装置1は、干渉抑制処理を実行した後に、協働エリアAc内で検知された強反射体が作業台4等の作業用設備であるかを判別する(ステップS105)。例えば、判定部11aが、上記検知処理で検知された強反射体の位置と作業用設備の位置とを比較することで、強反射体が作業用設備であるかを判別する。そして、強反射体が作業用設備ではないと判定された場合(ステップS105で否定判定された場合)には、制御装置1は、当該処理フローから一旦抜ける。一方、強反射体が作業用設備であると判定された場合(ステップS105で肯定判定された場合)には、制御装置1は、調整要求処理を実行す
る(ステップS106)。例えば、データ出力部11bが、作業者3に対してレーダ送受信部10aの設置状態の調整を促す警告を行うための指令を、警告部11dに出力する。その場合、警告部11dは、レーダ送受信部10aの設置状態の調整を促す文字情報等をディスプレイ等に表示させる処理、又はレーダ送受信部10aの設置状態の調整を促す音声メッセージ等をスピーカ等から出力する処理等を実行する。これにより、作業者は、レーダ送受信部10aの設置状態を適正な状態にすべく調整することができる。その結果、その後の作業効率の低下を抑制することができる。
【0045】
本実施形態の制御装置1によれば、作業工程で使用しない高反射体が協働エリアAc内に置かれたり、又は作業工程で使用する物体(例えば、部品、工具、部品収納箱、工具収納箱等)がレーダ反射断面積の大きい状態で協働エリアAcに置かれたりすることで、その物体の近傍に存在する作業者の腕等の位置を適切に検知することが困難な状況に陥った場合や、レーダセンサ10(レーダ送受信部10a)の設置状態が適正ではないことに起因して、協働エリアAc内に存在する作業者3の腕等の位置を適切に検知することが困難な状況に陥った場合に、干渉抑制処理が行われることで、ロボット2と作業者3との干渉を抑制することができる。
【0046】
また、レーダセンサ10(レーダ送受信部10a)の設置状態が適正ではないことに起因して、協働エリアAc内に存在する作業者3の腕等の位置を適切に検知することが困難な状況に陥った場合には、作業者3に対して、レーダ送受信部10aの設置状態の調整を促すことができるため、その後の作業効率の低下を抑制することができる。
【0047】
<その他>
上記実施形態は、本発明の構成例を例示的に説明するものに過ぎない。本発明は上記の具体的な形態には限定されることはなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態では、工場等の製造現場において作業者と協働で作業を行うロボットに本発明を適用する例を挙げたが、製造現場以外において作業者と協働するロボットに本発明を適用することも可能である。例えば、医療現場や研究・開発現場等において作業者と協働で作業を行うロボットに、本発明を適用することも可能である。
【0049】
また、本実施形態において説明した処理や構成は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。さらに、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。若しくは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。要するに、制御装置の各機能をどのようなハードウェア構成で実現するかは柔軟に変更可能である。
【0050】
<付記1>
(1) 作業者(3)と協働で作業を行うロボット(2)の制御装置(1)であって、
前記作業者(3)と前記ロボット(2)とが協働で作業を行う領域である協働エリア(Ac)にレーダ波を送信するとともに、該レーダ波が前記協働エリア(Ac)内の物体に反射することで生成される反射波を受信するレーダ送受信部(10a)と、
前記レーダ送受信部(10a)によって受信された前記反射波に基づいて、前記協働エリア(Ac)内に存在する物体の反射パワーを演算するレーダデータ処理部(10b)と、
前記レーダデータ処理部(10b)によって演算される反射パワーが所定の閾値以上である物体が前記協働エリア(Ac)に存在する場合に、前記ロボット(2)と前記作業者(3)との干渉を抑制するための干渉抑制処理を実行する制御部(11)と、
を備える、ロボット(2)の制御装置(1)。
(2) 作業者(3)と協働で作業を行うロボット(2)の制御方法であって、
前記作業者(3)と前記ロボット(2)とが協働で作業を行う領域である協働エリア(Ac)にレーダ波を送信するとともに、該レーダ波が前記協働エリア(Ac)内の物体に反射することで生成される反射波を受信するレーダ送受信ステップ(S101)と、
前記レーダ送受信ステップで受信された前記反射波に基づいて、前記協働エリア(Ac)内に存在する物体の反射パワーを演算するレーダデータ処理ステップ(S102)と、
前記レーダデータ処理ステップで演算された前記反射パワーが所定の閾値以上である物体が前記協働エリア(Ac)に存在する場合に、前記ロボット(2)と前記作業者(3)との干渉を抑制するための処理である干渉抑制処理を実行する制御ステップ(S103、S104)と、
を有する、ロボット(2)の制御方法。
【符号の説明】
【0051】
1 制御装置
2 ロボット
3 作業者
4 作業台(作業用設備)
10 レーダセンサ
10a レーダ送受信部
10b レーダデータ処理部
11 制御部
11a 判定部
11b データ出力部
11c ロボット制御部
11d 警告部
図1
図2
図3
図4
図5
図6