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  • 特許-水力発電設備制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】水力発電設備制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20230912BHJP
   E02B 7/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
E02B7/20 105
E02B7/00 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019154548
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2021031989
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】安達 怜史
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-143165(JP,A)
【文献】特開2012-082646(JP,A)
【文献】特開2001-172945(JP,A)
【文献】特開平11-343616(JP,A)
【文献】特開2014-148843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20
E02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の水を溜める水槽と、
前記水槽の水位を計測する水槽水位計測器と、
前記水槽水位計測器の計測結果に基づいて、前記水槽の水を用いて運転される発電機と、
前記発電機の運転に供された水が放水されるダムと、
前記ダムの水位を計測するダム水位計測器と、
前記ダム水位計測器の計測結果に基づいて、前記ダムの水位が警報出力水位に達したことに応じて起動して放流警報を発する放流警報装置と、
前記ダムの水を取水する取水口の開度を調整する取水口ゲートと、
前記水槽の水を前記発電機の運転に供することなく前記ダムに導水する余水路と、
を備えた水力発電設備を制御する制御装置に、
渇水による前記発電機の運転停止中に、前記水槽よりも前記河川の上流側の水力発電設備が運転を開始してからの経過時間が、当該上流側の水力発電設備の運転に供された水が前記水槽に到達するまでに要する所要到達時間に達したか否かを判断し、
前記経過時間が前記所要到達時間に達した場合に、前記ダム水位計測器の計測結果に基づいて、前記ダムの水位が前記警報出力水位以下であるか否かを判断し、
前記ダムの水位が前記警報出力水位以下である場合に、前記放流警報装置の起動を遅延させる起動遅延時間を設定し、
前記経過時間が前記所要到達時間に達した場合に、前記取水口ゲートの開度が所定開度以上であるか否かを判断し、
前記ダムの水位が前記警報出力水位以下であって前記取水口ゲートの開度が所定開度以上である場合に、前記発電機を起動させる、
処理を実行させることを特徴とする水力発電設備制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水力を用いて発電する水力発電設備を制御する水力発電設備制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
流れ込み式水力発電所などの水力発電設備では、水槽に溜めた河川の水を用いて発電機による発電をおこない、発電に用いた水を、放水路を介して河川における水力発電設備よりも下流側に放水する。このような水力発電設備においては、渇水に起因して水槽の水位が低い場合、発電機の運転を停止する。
【0003】
ダムには、開度の調整が可能な取水口ゲートが設けられており、取水口ゲートの開度を調整することによってダムよりも河川の下流側における流量を調整している。ダムには、ダムの水位がダムの天端の高さと同じになった場合に起動して、越流を報知する警報を発する放流警報装置が設けられている。
【0004】
また、このような水力発電設備においては、発電機の運転停止中に、当該水力発電設備よりも河川における上流側に設けられた別の水力発電設備(以下「上流側の水力発電設備」という)での発電に用いられた水が水槽に流れ込むことによって水槽の水位が上昇すると、発電機を起動させる。発電機の起動にともない、発電機の下流側に設けられたダムには余水路および放水路の双方から水が流れ込む。
【0005】
関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、河川の水面位置が上昇してフロートが所定の高さに到達した時に、上下方向にスライド移動自在であって河川に設けられた取水口を開閉することにより導水路に対する河川の水の導入および遮断をおこなう遮断ゲートのロック状態を解除し、取水口を閉鎖することによって、簡易な機構により取水口を開閉し、取水量制御を自動的におこなうとともに超過取水を防止するようにした取水口遮断ゲート装置に関する技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-148843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術は、渇水のため発電機の運転を停止している状態で、上流側の水力発電設備での運転開始に起因する水槽の水位の上昇にともなって発電機を起動した場合、余水路および放水路の双方からダムに水が流れ込み、ダムの水位に基づく自動制御による取水口ゲートの動作が追従できずに、ダムの水位が一時的に急上昇する。放流警報装置は、ダムの水位がダムの天端の高さと同じになった場合に起動するように設定されている。ダムは、その形式などによっては、ダムの水位が天端の高さよりも高くなっても越流が生じないにもかかわらず、ダムの水位がダムの天端の高さと同じになると放流警報装置が起動して放流警報が発せられてしまう。したがって、警報の信頼性を確保することが難しいという問題があった。
【0008】
また、上述した従来の技術は、渇水のため取水口ゲートを閉じている状態において上流側の水力発電設備が運転を開始することによるダムの水位の急上昇や、発電機の運転に起因するダムへの流入量の急激な減少によるダムの水位の急下降などの、ダムの水位の急激な増減に自動制御による取水口ゲートの動作が追従できず、ダムの水位に変動が生じて、河川におけるダムよりも下流側の維持流量を確保することが難しいという問題があった。
【0009】
このように、従来の技術は、河川におけるダムよりも下流側の維持流量の確保や放流警報の信頼性の確保を実現することが難しく、適切な河川管理をおこなうことが難しいという問題があった。
【0010】
また、上述した特許文献1に記載された従来の技術は、超過取水を防止することができるものの、越流が生じないにもかかわらず放流警報装置が起動してしまうという不具合を解消することはできず、河川におけるダムよりも下流側の維持流量の確保と、放流警報装置を実情に即して起動させることによる警報の信頼性の確保とを両立した適切な河川管理をおこなうことが難しいという問題があった。
【0011】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、適切な河川管理をおこなうことができる水力発電設備制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる水力発電設備制御プログラムは、河川の水を溜める水槽と、前記水槽の水位を計測する水槽水位計測器と、前記水槽水位計測器の計測結果に基づいて、前記水槽の水を用いて運転される発電機と、前記発電機の運転に供された水が放水されるダムと、前記ダムの水位を計測するダム水位計測器と、前記ダム水位計測器の計測結果に基づいて、前記ダムの水位が警報出力水位に達したことに応じて起動して放流警報を発する放流警報装置と、前記ダムの水を取水する取水口の開度を調整する取水口ゲートと、前記水槽の水を前記発電機の運転に供することなく前記ダムに導水する余水路と、を備えた水力発電設備を制御する制御装置に、渇水による前記発電機の運転停止中に、前記水槽よりも前記河川の上流側の水力発電設備が運転を開始してからの経過時間が、当該上流側の水力発電設備の運転に供された水が前記水槽に到達するまでに要する所要到達時間に達したか否かを判断し、前記経過時間が前記所要到達時間に達した場合に、前記ダム水位計測器の計測結果に基づいて、前記ダムの水位が前記警報出力水位以下であるか否かを判断し、前記ダムの水位が前記警報出力水位以下である場合に、前記放流警報装置の起動を遅延させる起動遅延時間を設定し、前記経過時間が前記所要到達時間に達した場合に、前記取水口ゲートの開度が所定開度以上であるか否かを判断し、前記ダムの水位が前記警報出力水位以下であって前記取水口ゲートの開度が所定開度以上である場合に、前記発電機を起動させる、処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明にかかる水力発電設備制御プログラムによれば、適切な河川管理をおこなうことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明にかかる実施の形態の水力発電設備制御プログラムを用いた制御対象の水力発電設備の構成を概略的に示す説明図である。
図2】制御装置の処理手順を示すフローチャート(その1)である。
図3】制御装置の処理手順を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる水力発電設備制御プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
まず、この発明にかかる実施の形態の水力発電設備制御プログラムによる制御を適用する水力発電設備の構成について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態の水力発電設備制御プログラムを用いた制御対象の水力発電設備の構成を概略的に示す説明図である。図1に示すように、この発明にかかる実施の形態の水力発電設備制御プログラムを用いた制御対象の水力発電設備100は、水槽101と、水槽水位計測器102と、発電機103と、放水路104と、河川111を堰き止めて作られたダム105と、ダム水位計測器106と、放流警報装置107と、取水口ゲート108と、余水路109と、制御装置110と、を備えている。
【0017】
水槽101は、河川111の水を溜める。河川111(具体的には、河川111のダム105よりも上流側)の水は、その一部が導水路111aを介して水槽101に溜められる。また、河川111の水のうち、導水路111aを介して水槽101に溜められなかった水は、ダム105へ到達する。河川111には、水槽101よりも河川111の上流側の水力発電設備112の運転に供された水が放水される。水槽水位計測器102は、水槽101の水位を計測する。水槽水位計測器102は、計測した水槽101の水位に関する情報を制御装置110に出力する。発電機103は、水槽水位計測器102の計測結果に基づいて、所定水位以上である場合に、水槽101の水を用いて運転される。所定水位は、水槽101の水を用いた発電機103による発電が可能な量の水が水槽101にある状態の水槽101の水位である。発電機103の運転に供された水は、放水路104を介してダム105に放流される。
【0018】
ダム105は、到達した河川111の水を含むダム105の水を天端から越流させることによって河川111(具体的には、河川111のダム105よりも下流側)へ放流する。ダム水位計測器106は、ダム105の水位を計測する。ダム水位計測器106は、計測したダム105の水位に関する情報を制御装置110に出力する。放流警報装置107は、ダム105の水位が警報出力水位に達したことに応じて起動して放流警報を発する。警報出力水位は、ダム105の天端の高さと同じ高さ位置に設定される。取水口ゲート108は、ダム105の水を取水する取水口に設けられており、取水口を全閉する位置と全開する位置との間で取水口の開度を調整する。余水路109は、水槽101とダム105とを接続し、水槽101の水を発電機103の運転に供することなくダム105に導水する。
【0019】
制御装置110は、水槽水位計測器102やダム水位計測器106から出力される情報に基づいて、発電機103、放流警報装置107および取水口ゲート108を駆動制御する。制御装置110は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、通信インターフェイスを備えている。制御装置110が備えるメモリには、この発明にかかる実施の形態の水力発電設備制御プログラムがインストールされている。また、制御装置110が備えるメモリには、警報出力水位、所定水位、所要到達時間、所定開度など、水力発電設備制御プログラムの実行にかかる情報が記憶されている。所要到達時間は、上流側の水力発電設備112の運転に供された水が水槽101に到達するまでに要する時間である。所定開度は、上流側の水力発電設備112の運転に供された水がダム105に到達した状態において、ダム105からの越流を生じさせることなく、取水口からダム105の水を取水することができる取水口ゲート108の開度である。取水口から取水された水は、たとえば、導水路111bを通り、最終的には、ダム105を越流して放流された河川111の水に合流する。取水口から取水された水が河川111に合流するまでの過程は、本実施の形態とは直接関係しないので、その詳細な説明および図示は省略する(具体的には、たとえば、単に、取水した水を河川111まで導水するようにしてもよく、また、取水した水で発電機を運転するようにしてもよい。このように、取水した水の用途については、本実施の形態においては、何ら限定されるものではない)。
【0020】
また、制御装置110が備えるメモリには、放流警報装置107の起動遅延時間を設定するエリアが確保されている。起動遅延時間は、放流警報装置107の起動を遅延させる時間である。制御装置110は、起動遅延時間が設定されていない状態では、ダム105の水位が警報出力水位に達した場合に直ちに放流警報装置107を起動させる。これに対し、起動遅延時間が設定されている場合、制御装置110は、ダム105の水位が警報出力水位に達してから、起動遅延時間分、ダム105の水位が警報出力水位に達した状態が連続した場合に放流警報装置107を起動させる。
【0021】
制御装置110は、渇水のため発電機103の運転を停止している渇水運転時と、渇水運転時以外の通常運転時とで、それぞれ異なる長さの起動遅延時間を設定する。具体的に、制御装置110は、たとえば、渇水運転時の起動遅延時間は「5分」、通常運転時の起動遅延時間は「2分」などのように設定する。また、制御装置110が備えるメモリには、河川111の上流側の水力発電設備112が運転を開始してからの経過時間をカウントするカウンタエリアが確保されている。
【0022】
制御装置110は、水槽水位計測器102やダム水位計測器106から出力された情報を、通信インターフェイスを介して取得する。また、制御装置110は、通信インターフェイスを介して上流側の水力発電設備112の制御装置110と通信をおこなう。制御装置110が通信をおこなうことにより、水力発電設備100の遠隔地においても発電機103の運転可否を判断でき、利便性の向上を図ることができる。
【0023】
(制御装置110の処理手順)
つぎに、制御装置110の処理手順について説明する。図2および図3は、制御装置110の処理手順を示すフローチャートである。図2のフローチャートに示す処理では、まず、上流側の水力発電設備112の運転開始から所要到達時間が経過するまで待機する(ステップS201:No)。上流側の水力発電設備112が運転しているか運転を停止しているかは、たとえば、上流側の水力発電設備112の制御装置110と通信をおこなうことによって判断する。
【0024】
ステップS201において、所要到達時間が経過した場合(ステップS201:Yes)、渇水による発電機103の運転停止中であるか否かを判断する(ステップS202)。ステップS202において、渇水による発電機103の運転停止中ではない場合(ステップS202:No)、ステップS205へ移行する。ステップS202において、渇水による発電機103の運転停止中である場合(ステップS202:Yes)、取水口ゲート108の開度が所定開度以上であるか否かを判断する(ステップS203)。取水口ゲート108の開度が所定開度以上ではない場合(ステップS203:No)、一連の処理を終了する。
【0025】
取水口ゲート108の開度が所定開度以上である場合(ステップS203:Yes)、ダム水位計測器106が計測したダム105の水位が警報出力水位以下であるか否かを判断する(ステップS204)。ステップS204において、ダム105の水位が警報出力水位以下ではない場合(ステップS204:No)、一連の処理を終了する。ステップS204において、ダム105の水位が警報出力水位以下である場合(ステップS204:Yes)、あるいは、ステップS202において渇水による発電機103の運転停止中ではない場合(ステップS202:No)、放流警報装置107の起動遅延時間を設定する(ステップS205)。
【0026】
ステップS205においては、ステップS202:Yesを経由した場合は、渇水運転時の起動時間を設定する。また、ステップS205においては、ステップS202:Noを経由した場合は、通常運転時の起動時間を設定する。これにより、渇水のため発電機103の運転を停止している渇水運転時のみならず、通常運転時の放流警報装置107の起動を遅延させることができる。そして、水槽101の水位が所定水位以上であるか否かを判断する(ステップS206)。ステップS206において、水槽101の水位が所定水位以上ではない場合(ステップS206:No)、一連の処理を終了する。一方、水槽101の水位が所定水位以上である場合(ステップS206:Yes)、発電機103を起動して(ステップS207)、一連の処理を終了する。このように、発電機103の起動を自動化することにより、発電機103の日中運転に制限されることなく夜間運転にも対応することができ、発電機103の運転可否の判断にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
【0027】
図3のフローチャートに示す処理では、まず、ダム105の水位が警報出力水位に達するまで待機する(ステップS301:No)。ステップS301において、ダム105の水位が警報出力水位に達した場合(ステップS301:Yes)、起動遅延時間が設定されているか否かを判断する(ステップS302)。ステップS302において、起動遅延時間が設定されていない場合(ステップS302:No)、ステップS306へ移行する。ステップS302において、起動遅延時間が設定されている場合(ステップS302:Yes)、経過時間のカウントを開始する(ステップS303)。
【0028】
つぎに、ダム105の水位が警報出力水位未満であるか否かを判断する(ステップS304)。ステップS304において、ダム105の水位が警報出力水位未満でない場合(ステップS304:No)、経過時間が起動遅延時間に達したか否かを判断する(ステップS305)。ステップS305において、経過時間が起動遅延時間に達していない場合(ステップS305:No)、ステップS304へ戻る。一方、ステップS305において、経過時間が起動遅延時間に達した場合(ステップS305:Yes)、放流警報装置107を起動させ(ステップS306)、経過時間のカウントを停止して(ステップS307)、一連の処理を終了する。ステップS304において、ダム105の水位が警報出力水位未満である場合(ステップS304:Yes)、経過時間のカウントを停止して(ステップS307)、一連の処理を終了する。ステップS302:Noを経由した場合も、ステップS306において放流警報装置107を起動させ、ステップS307において経過時間のカウントを停止する処理をおこなう。ステップS307における経過時間のカウントを停止する処理は、カウンタエリアにおけるカウント値をクリアする処理を含む。
【0029】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の水力発電設備制御プログラムは、河川111の水を溜める水槽101と、水槽101の水位を計測する水槽水位計測器102と、水槽水位計測器102の計測結果に基づいて、水槽101の水を用いて運転される発電機103と、発電機103の運転に供された水が放水されるダム105と、ダム105の水位を計測するダム水位計測器106と、ダム水位計測器106の計測結果に基づいて、ダム105の水位が警報出力水位に達したことに応じて起動して放流警報を発する放流警報装置107と、ダム105の水を取水する取水口の開度を調整する取水口ゲート108と、水槽101の水を発電機103の運転に供することなくダム105に導水する余水路109と、を備えた水力発電設備100を制御する制御装置110に、渇水による発電機103の運転停止中に、水槽101よりも河川111の上流側の水力発電設備112が運転を開始してからの経過時間が、当該上流側の水力発電設備112の運転に供された水が水槽101に到達するまでに要する所要到達時間に達したか否かを判断し、経過時間が所要到達時間に達した場合に、ダム水位計測器106の計測結果に基づいて、ダム105の水位が警報出力水位以下であるか否かを判断し、ダム105の水位が警報出力水位以下である場合に、放流警報装置107の起動を遅延させる起動遅延時間を設定し、経過時間が所要到達時間に達した場合に、取水口ゲート108の開度が所定開度以上であるか否かを判断し、ダム105の水位が警報出力水位以下であって取水口ゲート108の開度が所定開度以上である場合に、発電機103を起動させる、処理を実行させるので、渇水により発電機103の運転を停止し、余水路109を介して水槽101の水をダム105に導水している状態におけるダム105の水位に応じて起動遅延時間を設定し、発電機103を起動させることにより、発電機103の起動によりダム105の水位が一時的に上昇した場合にも、越流が生じないにもかかわらず放流警報装置107が起動して放流警報が発せられることを回避できる。また、この発明にかかる実施の形態の水力発電設備制御プログラムによれば、ダム105の水位が警報出力水位に達した状態が起動遅延時間を経過しても継続する場合には、放流警報装置107が起動して放流警報が発せられるため、放流を確実に報知することができ、放流警報の信頼性を確保することができる。また、この発明にかかる実施の形態の水力発電設備制御プログラムによれば、ダム105の水位が警報出力水位以下であって取水口ゲート108の開度が所定開度以上である場合に発電機103を起動させることによって、発電機103の起動にともなって余水路109および放水路の双方からダム105に水が流れ込む場合にも、河川111におけるダム105よりも下流側の維持流量の確保や放流警報の信頼性の確保を実現し、適切な河川管理をおこなうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、この発明にかかる水力発電設備制御プログラムは、水力発電設備を制御する水力発電設備制御プログラムに有用であり、特に、渇水により運転を停止する水力発電設備を制御する水力発電設備制御プログラムに適している。
【符号の説明】
【0031】
100 水力発電設備
101 水槽
102 水槽水位計測器
103 発電機
104 放水路
105 (河川111を堰き止めて作られた)ダム
106 ダム水位計測器
107 放流警報装置
108 取水口ゲート
109 余水路
110 制御装置
111 河川
111a、111b 導水路
112 上流側の水力発電設備
図1
図2
図3